説明

内視鏡装置及び内視鏡画像歪み補正方法

【課題】基準スコープとユーザスコープとの光学的な特性の違いによって生じる画像の歪みを正確に補正する。
【解決手段】生産工程において、ステレオ光学アダプタ2を基準スコープ23に取り付けた状態で撮影した格子状のチャート24の画像データに基づいて測定した光学データを光学データカード29に記録する。次に、ユーザスコープ27にステレオ光学アダプタ2を取り付けない状態で撮像したチャート24の画像データから求めたユーザスコープ27の歪みパラメータをEEPROM28に記録する。同様に、基準スコープ23の歪みパラメータを光学データカード29に記録する。そして、基準スコープ23の歪みパラメータおよびユーザスコープ27の歪みパラメータを用いて、計測用被写体30を撮像した画像データの歪みを補正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学系を光学アダプタによって変更可能な内視鏡装置に係り、内視鏡の画像の歪みを補正して計測を行う内視鏡装置および内視鏡画像歪み補正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
内視鏡の画像の歪みは、内視鏡と光学アダプタとを組み合わせた光学系の歪みによって生じる。従来の内視鏡装置として、この画像の歪みを、内視鏡装置の歪み補正手段により、歪み補正パラメータを含む光学データに基づいて補正する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。光学データは、光学アダプタの生産工程において、画像処理装置により、光学アダプタと基準スコープとを組み合わせて作成される。この光学アダプタと光学データとは、ユーザスコープとともに組み合わせて使用される。なお、歪み補正した画像は計測に利用され、歪み補正が正確なほど計測の精度が向上する。
【特許文献1】特開2004−049638号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
基準スコープとユーザスコープとには、光学的な特性(例えば、倍率など)の違いがある。光学データは、基準スコープと光学アダプタとの組み合わせで作成されるので、ユーザスコープの特性を反映していない。従って、この特性の違いによって生じる歪みを補正できなかった。
【0004】
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、その目的は、基準スコープとユーザスコープとの光学的な特性の違いによって生じる画像の歪みを正確に補正することができる内視鏡装置および内視鏡画像歪み補正方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決するために、本発明は、光学系の一部を光学アダプタによって変更可能な内視鏡装置において、基準スコープまたはユーザスコープと光学アダプタとを組み合わせた光学系により入力した画像を撮像する撮像手段と、前記基準スコープと前記光学アダプタとを組み合わせた光学系の歪みを補正するための光学データと、前記基準スコープの光学的特性を示す基準スコープの歪みパラメータと、前記ユーザスコープの光学的特性を示すユーザスコープの歪みパラメータとに基づいて、前記ユーザスコープと前記光学アダプタとを組み合わせた際に前記撮像手段によって撮像された画像の歪みを補正する歪み補正手段とを具備することを特徴とする。
【0006】
本発明は、上記の発明において、前記補正手段によって歪みを補正された画像を元に被写体の形状を計測する計測手段をさらに具備することを特徴とする。
【0007】
本発明は、上記の発明において、前記光学アダプタは、前記撮像手段によって異なる視点から撮像するための光学素子を備え、前記計測手段は、前記光学素子を介して前記撮像手段によって異なる視点から撮像された画像を三角測量によって3次元計測することを特徴とする。
【0008】
本発明は、上記の発明において、光学素子は、複数の光路系を有することを特徴とする。
【0009】
本発明は、上記の発明において、前記基準スコープの歪みパラメータと前記ユーザスコープの歪みパラメータとは、それぞれのスコープの倍率を含むことを特徴とする。
【0010】
本発明は、上記の発明において、前記基準スコープの歪みパラメータと前記ユーザスコープの歪みパラメータとは、それぞれのスコープの歪み中心を含むことを特徴とする。
【0011】
また、上述した課題を解決するために、本発明は、光学系の一部を光学アダプタによって変更可能な内視鏡装置において、 基準スコープまたはユーザスコープと光学アダプタとを組み合わせた光学系により入力した画像を撮像する撮像手段と、 前記光学アダプタの光学系の歪みを補正するための光学データと、前記ユーザスコープの光学的特性を示すユーザスコープの歪みパラメータとに基づいて、前記ユーザスコープと前記光学アダプタとを組み合わせた際に前記撮像手段によって撮像された画像の歪みを補正する歪み補正手段とを具備することを特徴とする。
【0012】
また、上述した課題を解決するために、本発明は、光学系の一部を光学アダプタによって変更可能な内視鏡装置によって撮像された画像の歪みを補正する内視鏡画像歪み補正方法であって、基準スコープと前記光学アダプタとを組み合わせた光学系の歪みを補正するための光学データを読み込む第1のステップと、前記基準スコープの光学的特性を示す基準スコープの歪みパラメータを読み込む第2のステップと、ユーザスコープの光学的特性を示すユーザスコープの歪みパラメータを読み込む第3のステップと、前記基準スコープと前記光学アダプタとを組み合わせた光学系の歪みを補正するための光学データと、前記基準スコープの光学的特性を示す基準スコープの歪みパラメータと、前記ユーザスコープの光学的特性を示すユーザスコープの歪みパラメータとに基づいて、前記ユーザスコープと前記光学アダプタとを組み合わせた際に前記撮像手段によって撮像された画像の歪みを補正する第4のステップとを含むことを特徴とする。
【0013】
本発明は、上記の発明において、前記第4のステップは、前記第2のステップあるいは前記第3のステップにおいて、パラメータの読み込みに失敗した場合に、前記光学データのみに基づいて、撮像された画像の歪みを補正する処理を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
この発明によれば、歪み補正手段により、基準スコープと光学アダプタとを組み合わせた光学系の歪みを補正するための光学データと、基準スコープの光学的特性を示す基準スコープの歪みパラメータと、ユーザスコープの光学的特性を示すユーザスコープの歪みパラメータとに基づいて、ユーザスコープと光学アダプタとを組み合わせた際に撮像手段によって撮像された画像の歪みを補正する。したがって、基準スコープとユーザスコープとの光学的な特性の違いによって生じる画像の歪みをより正確に行うことができ、また、これによりステレオ計測の精度を向上させることができるという利点が得られる。
【0015】
また、本発明によれば、計測手段により、補正手段によって歪みを補正された画像を元に被写体の形状を計測する。したがって、基準スコープとユーザスコープとの光学的な特性の違いによって生じる画像の歪みをより正確に行うことができ、また、これによりステレオ計測の精度を向上させることができるという利点が得られる。
【0016】
また、本発明によれば、計測手段により、光学アダプタの光学素子を介して撮像手段によって異なる視点から撮像された画像を三角測量によって3次元計測する。したがって、基準スコープとユーザスコープとの光学的な特性の違いによって生じる画像の歪みをより正確に行うことができ、また、これによりステレオ計測の精度を向上させることができるという利点が得られる。
【0017】
また、本発明によれば、光学素子を複数の光路系を有する素子とする。したがって、光学素子としてプリズムなどの一般的な光学素子を用いることができ、基準スコープとユーザスコープとの光学的な特性の違いによって生じる画像の歪みをより正確に行うことができ、また、これによりステレオ計測の精度を向上させることができるという利点が得られる。
【0018】
また、本発明によれば、基準スコープの歪みパラメータとユーザスコープの歪みパラメータとに、それぞれのスコープの倍率を含める。したがって、基準スコープとユーザスコープとの光学的な特性の違いによって生じる画像の歪みをより正確に行うことができ、また、これによりステレオ計測の精度を向上させることができるという利点が得られる。
【0019】
また、本発明によれば、基準スコープの歪みパラメータとユーザスコープの歪みパラメータとに、それぞれのスコープの歪み中心を含める。したがって、基準スコープとユーザスコープとの光学的な特性の違いによって生じる画像の歪みをより正確に行うことができ、また、これによりステレオ計測の精度を向上させることができるという利点が得られる。
【0020】
また、本発明によれば、歪み補正手段により、光学アダプタの光学系の歪みを補正するための光学データと、ユーザスコープの光学的特性を示すユーザスコープの歪みパラメータとに基づいて、ユーザスコープと光学アダプタとを組み合わせた際に撮像手段によって撮像された画像の歪みを補正する。したがって、基準スコープとユーザスコープとの光学的な特性の違いによって生じる画像の歪みをより正確に行うことができ、また、これによりステレオ計測の精度を向上させることができるという利点が得られる。
【0021】
また、本発明によれば、第1のステップで、基準スコープと光学アダプタとを組み合わせた光学系の歪みを補正するための光学データを読み込み、第2のステップで、基準スコープの光学的特性を示す基準スコープの歪みパラメータを読み込み、第3のステップで、ユーザスコープの光学的特性を示すユーザスコープの歪みパラメータを読み込み、第4のステップで、基準スコープと光学アダプタとを組み合わせた光学系の歪みを補正するための光学データと、基準スコープの光学的特性を示す基準スコープの歪みパラメータと、ユーザスコープの光学的特性を示すユーザスコープの歪みパラメータとに基づいて、ユーザスコープと光学アダプタとを組み合わせた際に撮像手段によって撮像された画像の歪みを補正する。したがって、基準スコープとユーザスコープとの光学的な特性の違いによって生じる画像の歪みをより正確に行うことができ、また、これによりステレオ計測の精度を向上させることができるという利点が得られる。
【0022】
また、本発明によれば、第2のステップあるいは第3のステップにおいてパラメータの読み込みに失敗した場合、第4のステップで、光学データのみに基づいて、撮像された画像の歪みを補正する。したがって、データが消失してしまったり、更新する必要がある場合であっても、簡単で短時間に、基準スコープとユーザスコープとの光学的な特性の違いによって生じる画像の歪みをより正確に行うことができ、また、これによりステレオ計測の精度を向上させることができるという利点が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の一実施形態による内視鏡装置を、図面を参照して説明する。
【0024】
A.第1実施形態
図1は、本発明の第1実施形態による内視鏡装置1のハードウェア構成を示す斜視図である。内視鏡装置1は、ステレオ計測用光学アダプタ(以下、ステレオ光学アダプタという)2と、該ステレオ光学アダプタ2を先端部に着脱可能な内視鏡挿入部(以下、スコープという)3と、該スコープ3を収納するコントロールユニット4と、内視鏡装置1のシステム全体の各種動作制御を実行するのに必要な操作を行うためのリモートコントローラ5と、内視鏡画像や操作制御内容(例えば処理メニュー)等の表示を行う表示装置である液晶モニタ(以下、LCDという)6とで主に構成されている。
【0025】
次に、図2は、本第1実施形態による内視鏡装置1の構成を示すブロック図である。図2に示すように、スコープ3の基端部は、内視鏡ユニット7に接続されている。この内視鏡ユニット7は、コントロールユニット4内に収納されるものである。なお、内視鏡ユニット7内には、撮影時に必要な照明光を得るための光源およびスコープ3の図示しない湾曲部を電気的に湾曲駆動する電動湾曲装置等が内蔵されている。この電動湾曲装置は、湾曲駆動用の制御パラメータおよびスコープ光学系に固有の歪みを補正するためのパラメータ(以下、双方をパラメータという)を記録するためのEEPROM8を含んでいる。
【0026】
上記スコープ3に内蔵された撮像素子から出力される撮像信号は、画像処理部であるカメラコントロールユニット(以下、CCUという)9に入力される。このCCU9は、入力された撮像信号を、例えば、NTSC信号等の映像信号に変換し、上記コントロールユニット4内の主要回路群へ供給する。
【0027】
コントロールユニット4内に搭載された主要回路群は、主要プログラムに基づいて各種機能を実行する制御部と計測処理を行う演算処理部とを兼ねるCPU10と、ROM11と、RAM12と、PCカードインターフェイス(以下、PCカードI/Fという)13と、USBインターフェイス(以下、USB I/Fという)14と、RS−232Cインターフェイス(以下、RS−232C I/Fという)15と、映像信号処理回路16とから構成されている。
【0028】
RS−232C I/F13は、CCU9、内視鏡ユニット7およびリモートコントローラ5にそれぞれ接続されている。リモートコントローラ5は、CCU9、内視鏡ユニット7の制御および動作指示を行うためのものである。一方、RS−232C I/F15は、上記リモートコントローラ5による操作に基づいてCCU9、内視鏡ユニット7を動作制御するのに必要な通信を行うためのものである。
【0029】
USB I/F14は、コントロールユニット4とパーソナルコンピュータ(以下、PCという)17とを電気的に接続するためのインターフェイスである。このUSB I/F14を介してコントロールユニット4とPC17とを接続した場合には、PC17側でもコントロールユニット4における内視鏡画像の表示指示や計測時における画像処理などの各種の指示制御を行うことが可能であり、さらにコントロールユニット4とPC17間で各種の処理に必要な制御情報やデータ等の入出力を行うことが可能である。
【0030】
上記PCカードI/F13は、PCMCIAメモリカード18やコンパクトフラッシュ(登録商標)メモリカード19等の外部記憶媒体が着脱自在に接続されるようになっている。つまり、外部記憶媒体が装着された場合、コントロールユニット12は、CPU10による制御によって、外部記憶媒体に記憶された制御処理情報や画像情報等のデータを再生し、PCカードI/F13を介して取り込むか、あるいは制御処理情報や画像情報等のデータを、PCカードI/F13を介してメモリカードに供給して記録することができるようになっている。
【0031】
映像信号処理回路16は、CCU9から供給された内視鏡画像とグラフィックによる操作メニューとを合成した合成画像を表示するように、CCU9からの映像信号とCPU10の制御により生成される操作メニューに基づく表示信号とを合成処理し、さらにLCD6の画面上に表示するのに必要な処理を施してLCD6に供給する。これにより、LCD6には、内視鏡画像と操作メニューとの合成画像が表示される。なお、映像信号処理回路16では、単に内視鏡画像、あるいは操作メニュー等の画像を単独で表示するための処理を行うことも可能である。
【0032】
CPU10は、ROM11に格納されているプログラムを実行し、目的に応じた処理を行うように各種の回路部を制御してシステム全体の動作制御を行う。
【0033】
なお、リモートコントローラ5には、図示しないジョイスティック、レバースイッチ、フリーズスイッチ、ストアースイッチおよび計測実行スイッチ等が少なくとも上面に併設されている。
【0034】
なお、図1および図2に示す内視鏡装置1は、本第1実施形態を含め、以下で説明する他の実施形態の全てで同様のハードウェア構成を持つものとする。
【0035】
次に、図3は、本第1実施形態による、ステレオ光学アダプタ2およびスコープ3の光学系の略構成を示す概念図である。図において、ステレオ光学アダプタ2は、ステレオ計測を行うために必要な視差のある2枚の画像を入力するためのものであり、左右一対の2つの対物光学系2aとアダプタ側像伝光学系2bとで主に構成されている。また、スコープ3は、観察したい箇所に挿入して画像の撮像を行うためのものであり、内視鏡側像伝送光学系3aと撮像素子3bとで主に構成されている。なお、図3に示すスコープ3の光学系は、本第1実施形態を含め、以下で説明する他の実施形態の全てで同様の構成を持つものとする。
【0036】
次に、図4は、本第1実施形態による、ステレオ計測による3次元座標の算出方法を説明するための概念図である。スコープ3の左側および右側の光学系において入力された画像上の計測点の座標を、それぞれ(X,Y)、(X,Y)とし、計測点の3次元座標を(X,Y,Z)とする。左側と右側の光学中心の距離をD、焦点距離をFとすると、三角測量の方法により、X、Y、Zは、次式(1)のようになる。
【0037】
【数1】

【0038】
但し、上記数式(1)において、t=D/(X−X)である。通常の計測においては、ユーザが左側の画像上の計測点の座標(X,Y)を入力すると、この点に対応する右画像上の座標(X,Y)を自動的に既存のテンプレートマッチング法によって求めることにより、入力された計測点の3次元座標を算出する。ステレオ計測を行うためには、上記光学中心の距離D、焦点距離Fなどのパラメータのほか、ステレオ光学アダプタおよびスコープ光学系の歪みを補正するための光学データや、スコープの歪みパラメータを測定する必要がある。
【0039】
次に、図5は、本第1実施形態による、ステレオ光学アダプタの光学データの測定方法を説明するためのブロック図である。光学データの測定は、生産工程において、ステレオ光学アダプタ2を生産測定治具21である基準内視鏡22に搭載された基準スコープ23に取り付け、格子状のチャート24を撮像し、撮像した画像データに基づいてPC25によって行われる。ここで、光学データの詳細を以下(a)〜(d)に示す。
【0040】
(a)2つの対物光学系の幾何学的歪み補正係数
(b)2つの対物光学系の焦点距離F
(c)2つの対物光学系の光軸間の距離D
(d)2つの画像のマスタに対する位置情報
【0041】
次に、図6は、(e)基準スコープ23の歪みパラメータと、(f)ユーザが実際に使用する内視鏡(以下、ユーザ内視鏡という)26に搭載されたユーザスコープ27の歪みパラメータとの測定方法を説明するためのブロック図である。図6に示す構成は、ユーザスコープ27の歪みパラメータを測定するための冶具である。ユーザスコープ27にステレオ光学アダプタ2を取り付けない状態で、所定の距離から格子状のチャート28を撮像する。PC25は、その画像データを取り込み、画像処理によってユーザスコープ27の歪みパラメータ(f)を求める。なお、測定する歪みパラメータは、歪み中心と倍率とを含んでいる。測定されたユーザスコープ27の歪みパラメータは、ユーザ内視鏡26に搭載されたEEPROM28に記録する。なお、特に図示していないが、上記(e)基準スコープ23の歪みパラメータを測定する方法についても、前述したユーザスコープ27の場合と同様である。
【0042】
説明を図5に戻すと、上記(a)〜(d)の光学データと(e)基準スコープ23の歪みパラメータとを、メモリカードに光学データカード29として記録する。この結果、上記光学データカード29とステレオ光学アダプタ2とは、1対1で対応することになる。
【0043】
上記光学データを測定した後、ステレオ光学アダプタ2をユーザスコープ27に取り付けることにより、ユーザ内視鏡26において、次に示す(1)〜(9)の処理によりステレオ計測を行うことができる。
【0044】
(1)上記光学データカード29から上記(a)〜(d)の光学データおよび(e)基準スコープ23の歪みパラメータを読み込む。
(2)ユーザ内視鏡26によって白色の被写体を撮像する。
(3)上記(a)〜(d)の光学データおよび上記(2)において撮像した画像データを用いて、ステレオ光学アダプタ2とユーザスコープ27との組み合わせによる画像位置のずれを求める。
(4)上記(e)基準スコープ23の歪みパラメータおよびEEPROM28から読み出したユーザスコープ27の歪みパラメータを用いて、基準スコープ23の歪みパラメータとの違いを求める。
【0045】
(5)上記(3)、(4)のデータを用いて、上記光学データを修正するとともに、ステレオ光学アダプタ2とユーザスコープ27との歪み補正を行う変換テーブルを作成する。この光学データと変換テーブルとは、図示しないメモリカードに環境データカードとして記録される。
(6)ユーザ内視鏡26によって計測用被写体30を撮像する。
(7)上記(5)で作成した変換テーブルに基づいて、上記(6)において撮像した画像を座標変換する。
(8)上記(7)において座標変換された画像に基づいて、前述した方法により任意の点の3次元座標を求める。
(9)上記(8)において求めた3次元座標に基づいてステレオ計測を行う。
【0046】
なお、2回目以降のステレオ計測では、上記(5)において作成した環境データカードを読み込めばよいので、上記(1)〜(5)の処理は省略される。
【0047】
ここで、本第1実施形態における歪み補正方法について述べる。この歪み補正方法は、図3における対物光学系2aの歪みを補正するための第1歪み補正と、アダプタ側像伝送光学系2bと内視鏡側像伝送光学系3aとの組み合わせである合成像伝送光学系の歪みを補正するたの第2歪み補正とからなる。これらの歪み補正は座標変換によって行う。第1歪み補正と第2歪み補正との座標変換は、以下に示す数式(2)〜(13)のようになる。
<第2歪み補正>
【0048】
【数2】

【0049】
【数3】

【0050】
【数4】

【0051】
【数5】

【0052】
<第1歪み右補正>
【0053】
【数6】

【0054】
【数7】

【0055】
【数8】

【0056】
【数9】

【0057】
<第1歪み左補正>
【0058】
【数10】

【0059】
【数11】

【0060】
【数12】

【0061】
【数13】

【0062】
但し、数式(2)〜(13)において、
x,y:補正前座標
’,y’:補正後右画面座標
’,y’:補正後左画面座標
2x,c2y :第2歪み中心座標
Rx,cRy:第1歪み右中心座標
Lx,cLy:第1歪み左中心座標
2x,k2y,a2ij,b2ij:第2歪み補正係数
Rx,kRy,aRij,bRij:第1歪み右補正係数
Lx,kLy,aLij,bLij:第1歪み左補正係数
である。
【0063】
なお、上記k2x等のkを除く係数a2ij、b2ij、aRij、aLij、bLij、c2x、c2y、cRx、cRy、cLx、cLyは、格子画像の直線性より求める。また、k2x、k2y等は、2画像の倍率を合わせる係数で焦点距離f、fの関数となる。
【0064】
これらのパラメータは、基準スコープ23とステレオ光学アダプタ2とを組み合わせて作成される光学データに含まれる。基準スコープ23とユーザスコープ27との違いを補正するためには、合成像伝送光学系の倍率に対応する係数k、kにm/mを乗じ(但し、mは基準スコープ23の倍率、mはユーザスコープ27の倍率)、合成像伝送光学系の歪み中心に対応する座標c、cをcmx、cmy、cux、cuy(但し、cmx、cmyは基準スコープ23の内視鏡側像伝送光学系の歪み中心、cux、cuyはユーザスコープ27の内視鏡側像伝送光学系の歪み中心)に基づいて修正する。この結果、歪み補正がより正確に行えるようになり、ステレオ計測の精度を向上させることができる。
【0065】
A’:第1実施形態の変形例
次に、本発明の第1実施形態の変形例を説明する。本変形例における歪み補正方法は、図3における対物光学系2aの歪みを補正するための第1歪み補正と、アダプタ側像伝送光学系2bの歪みを補正するための第2歪み補正と、内視鏡側像伝送光学系3aの歪みを補正するための第3歪み補正とからなる。
【0066】
第1歪み補正の座標変換は数式(6)〜(13)と同じである。第3歪み補正の座標変換は、以下に示す数式(14)〜(17)のようになる。
【0067】
【数14】

【0068】
【数15】

【0069】
【数16】

【0070】
【数17】

【0071】
第3歪み補正の座標変換は数式(2)〜(3)と、以下に示す数式(18)〜(19)のようになる。
【0072】
【数18】

【0073】
【数19】

【0074】
ただし、数式(14)〜(19)において、
3x,c3y :第3歪み中心座標
3x,k3y,a3ij,b3ij:第3歪み補正係数
である。
【0075】
本変形例における歪み補正の具体的な手順は以下のようになる。まず、基準スコープ23の光学系の歪みを補正した上で光学データを測定する。すなわち、図5に示すように、基準内視鏡22に搭載された基準スコープ23にステレオ光学アダプタ2を取り付けて撮像した画像データに対して、数式(14)〜(17)に基づいて基準スコープ23の光学系の歪みを補正し、続いて歪み補正後の画像データに基づいて光学データを測定する。測定された光学データは光学データカード29に記録される。
【0076】
数式(14)〜(17)における第3歪み中心座標および第3歪み補正係数は基準スコープ23の歪みパラメータである。基準スコープ23の歪みパラメータは、前述した方法と同様の方法によって予め測定され、光学データカード29に記録されている。基準スコープ23の光学系の歪みが補正された画像データに基づいて測定された光学データは、ステレオ光学アダプタ2のみの歪みを補正するためのパラメータから構成されることになる。第1歪み中心座標(第1歪み右中心座標、第1歪み左中心座標)、第1歪み補正係数(第1歪み右補正係数、第1歪み左補正係数)、第2歪み中心座標、および第2歪み補正係数がこの光学データに含まれる。
【0077】
ステレオ光学アダプタ2をユーザスコープ27に取り付けたユーザ内視鏡26では、以下のようにして歪み補正を行うことができる。前述した方法と同様の方法によってユーザスコープ27の歪みパラメータが予め測定され、EEPROM28に記録される。このユーザスコープ27の歪みパラメータには第3歪み中心座標および第3歪み補正係数が含まれている。EEPROM28からユーザスコープ27の歪みパラメータを読み出し、これと数式(14)〜(17)に基づいて第3歪み補正を行うことができる。
【0078】
また、光学データカード29から光学データを読み出し、これと数式(2)〜(3)、(6)〜(13)、(18)〜(19)に基づいて第1歪み補正および第2歪み補正を行うことができる。本変形例の歪み補正方法によれば、前述した本第1実施形態の歪み補正方法と比較して、より正確に画像の歪みを補正することができる。
【0079】
B.第2実施形態
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
図7は、本第2実施形態によるステレオ光学アダプタの光学データの測定方法を説明するためのブロック図である。本第2実施形態による内視鏡装置は、図8に示すようなステレオ光学アダプタ31を備えており、その他は第1実施形態と同様である。すなわち、本第2実施形態のステレオ光学アダプタ31は、視差のある2枚の画像を入力するために、1つのプリズム形状の対物光学系31aとアダプタ側像伝送光学系31bとで構成されている。
【0080】
図9に示すように、プリズム形状の対物光学系31aと像伝送光学系(内視鏡側像伝送光学系3a、アダプタ側像伝送光学系31b)とによって同一の被写体を別の視点から撮像することができる。このような光学系を使用した場合でも、基準スコープ23とユーザスコープ27との違いに基づいて光学データを修正することで、歪み補正がより正確に行えるようになり、ステレオ計測の精度を向上させることができる。
【0081】
C.第3実施形態
次に、本発明の第3実施形態について説明する。
図10は、本第3実施形態によるステレオ光学アダプタの光学データの測定方法を説明するためのブロック図である。本第3実施形態による内視鏡装債は、ユーザスコープ27にユーザスコープ7のIDを記載したバーコード32を設け、ユーザスコープ27の歪みパラメータを歪みパラメータデータベース33から参照してEEPROM28に記録するように構成している。その他は第1実施形態と同様である。
【0082】
EEPROM28に記録されたデータは、電気的なノイズやその他の故障によって消失してしまう場合がある。また、スコープの損傷等でスコープ自体を交換しなければならない場合には、EEPROM28に記録されたデータを更新する必要がある。このような場合にデータを再度記録するためには、・過去に測定した歪みパラメータの台帳を参照して記録する。
・再度歪みパラメータを測定して記録する。
などの方法が考えられるが、過去のデータの参照に時間を費やしたり、再度測定する手間がかかったりするなどの問題がある。
【0083】
そこで、本第3実施形態では、以下の方法によりこの問題を解決する。
(1)ユーザスコープ27のIDを記載したバーコード32をユーザスコープ27に取り付ける。
(2)EEPROM28への書き込みが必要な場合には、バーコードのIDに基づいて、歪みパラメータデータベース33から該当するユーザスコープ27の歪みパラメータを読み出す。なお、歪みパラメータデータベース33は、ユーザスコープ27の生産時に測定された歪みパラメータを記録したデータベースである。
(3)EEPROM28に、この歪みパラメータを記録する。
【0084】
これにより、EEPROM28のデータが消失してしまったリ、更新する必要があったりする場合でも、歪みパラメータデータベース33を参照することで、簡単で短時間にデータを記録することができる。なお、バーコード32に代えて、ユーザスコープ27のIDを記録したIDタグを用いても良い。
【0085】
D.第4実施形態
次に、本発明の第4実施形態について説明する。
図11は、本第4実施形態によるステレオ光学アダプタの光学データの測定方法を説明するためのブロック図である。本第4実施形態による内視鏡装置は、図11に示すように、ユーザスコープ27にユーザスコープ27の歪みパラメータを記載した印刷シート34を貼り付け、ユーザスコープ27の歪みパラメータ入力装置35によってEEPROM28に記録するように構成している。その他は第1実施形態と同様である。
【0086】
前述したように、EEPROM28に記録されたデータは、電気的なノイズやその他の故障によって消失してしまう場合がある。また、スコープの損傷等でスコ−プ自体を交換しなければならない場合には、EEPROM28に記録されたデータを更新する必要がある。このような場合にデータを再度記録するためには、・過去に測定した歪みパラメータの台帳を参照して記録する。
・再度歪みパラメータを測定して記録する。
などの方法が考えられるが、過去のデータの参照に時間が費やしたり、再度測定する手間がかかったりするなどの問題がある。
【0087】
そこで、本第4実施形態では、以下の方法によりこの問題を解決する。
(1)ユーザスコープ27の歪みパラメータを記載した印刷シート34をユーザスコープ27に取り付ける。
(2)EEPROM28の書き込みが必要な場合には、印刷シート34に基づいて、入力装置35により歪みパラメータをEEPROM28に記録する。
【0088】
これにより、EEPROM28のデータが消失してしまったり、更新する必要がある場合に、以前に測定されたユーザスコープ27の歪みパラメータを記載した印刷シート34を参照することで、簡単で短時間にデータを記録することができる。
【0089】
上述した第1ないし第4実施形態によれば、基準スコープとユーザスコープの光学的な特性の違いによって生じる画像の歪みを、より正確に補正することができる。また、これによりステレオ計測の精度を向上させることができる。
【0090】
なお、上述した実施形態においては、上述したCPU10による一連の処理の過程は、プログラムの形式でコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶されており、このプログラムをコンピュータが読み出して実行することによって、上記処理が行われる。すなわち、CPU10における、各処理手段、処理部は、CPU等の中央演算処理装置がROMやRAM等の主記憶装置に上記プログラムを読み出して、情報の加工・演算処理を実行することにより、実現されるものである。
【0091】
ここでコンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、DVD−ROM、半導体メモリ等をいう。また、このコンピュータプログラムを通信回線によってコンピュータに配信し、この配信を受けたコンピュータが当該プログラムを実行するようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】本発明の第1実施形態による内視鏡装置1のハードウェア構成を示す斜視図である。
【図2】本第1実施形態による内視鏡装置1の構成を示すブロック図である。
【図3】本第1実施形態による、ステレオ光学アダプタ2およびスコープ3の光学系の略構成を示す概念図である。
【図4】本第1実施形態による、ステレオ計測による3次元座標の算出方法を説明するための概念図である。
【図5】本第1実施形態による、ステレオ光学アダプタの光学データの測定方法を説明するためのブロック図である。
【図6】本第1実施形態において、基準スコープ23の歪みパラメータとユーザスコープ27の歪みパラメータとの測定方法を説明するためのブロック図である。
【図7】本第2実施形態によるステレオ光学アダプタの光学データの測定方法を説明するためのブロック図である。
【図8】本第2実施形態による、ステレオ光学アダプタ2およびスコープ3の光学系の略構成を示す概念図である。
【図9】本第2実施形態による、ステレオ計測による3次元座標の算出方法を説明するための概念図である。
【図10】本第3実施形態によるステレオ光学アダプタの光学データの測定方法を説明するためのブロック図である。
【図11】本第4実施形態によるステレオ光学アダプタの光学データの測定方法を説明するためのブロック図である。
【符号の説明】
【0093】
1 内視鏡装置 2 ステレオ光学アダプタ 2a 対物光学系 2b アダプタ側像伝送光学系 3 スコープ 3a 内視鏡側像伝送光学系 3b 撮像素子(撮像手段) 4 コントロールユニット 5 リモートコントローラ 7 内視鏡ユニット 8 EEPROM 9 CCU 10 CPU(歪み補正手段、計測手段) 11 ROM 12 RAM 13 PCカードI/F 14 USB I/F 15 RS−232C I/F 16 映像信号処理回路 17 PC 18 PCMCIAメモリカード 19 コンパクトフラッシュ(登録商標)メモリカード 21 生産測定治具 22 基準内視鏡 23 基準スコープ 24、28 チャート 25 PC 26 ユーザ内視鏡 27 ユーザスコープ 28 EEPROM 29 光学データカード 31 ステレオ光学アダプタ 31a 対物光学系(光学素子) 31b アダプタ側像伝送光学系 32 バーコード 33 歪みパラメータデータベース 34 印刷シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学系の一部を光学アダプタによって変更可能な内視鏡装置において、
基準スコープまたはユーザスコープと光学アダプタとを組み合わせた光学系により入力した画像を撮像する撮像手段と、
前記基準スコープと前記光学アダプタとを組み合わせた光学系の歪みを補正するための光学データと、前記基準スコープの光学的特性を示す基準スコープの歪みパラメータと、前記ユーザスコープの光学的特性を示すユーザスコープの歪みパラメータとに基づいて、前記ユーザスコープと前記光学アダプタとを組み合わせた際に前記撮像手段によって撮像された画像の歪みを補正する歪み補正手段と
を具備することを特徴とする内視鏡装置。
【請求項2】
前記補正手段によって歪みを補正された画像を元に被写体の形状を計測する計測手段をさらに具備することを特徴とする請求項1記載の内視鏡装置。
【請求項3】
前記光学アダプタは、前記撮像手段によって異なる視点から撮像するための光学素子を備え、
前記計測手段は、前記光学素子を介して前記撮像手段によって異なる視点から撮像された画像を三角測量によって3次元計測することを特徴とする請求項2記載の内視鏡装置。
【請求項4】
前記光学素子は、複数の光路系を有することを特徴とする請求項3記載の内視鏡装置。
【請求項5】
前記基準スコープの歪みパラメータと前記ユーザスコープの歪みパラメータとは、それぞれのスコープの倍率を含むことを特徴とする請求項1記載の内視鏡装置。
【請求項6】
前記基準スコープの歪みパラメータと前記ユーザスコープの歪みパラメータとは、それぞれのスコープの歪み中心を含むことを特徴とする請求項4記載の内視鏡装置。
【請求項7】
光学系の一部を光学アダプタによって変更可能な内視鏡装置において、
基準スコープまたはユーザスコープと光学アダプタとを組み合わせた光学系により入力した画像を撮像する撮像手段と、
前記光学アダプタの光学系の歪みを補正するための光学データと、前記ユーザスコープの光学的特性を示すユーザスコープの歪みパラメータとに基づいて、前記ユーザスコープと前記光学アダプタとを組み合わせた際に前記撮像手段によって撮像された画像の歪みを補正する歪み補正手段と
を具備することを特徴とする内視鏡装置。
【請求項8】
光学系の一部を光学アダプタによって変更可能な内視鏡装置によって撮像された画像の歪みを補正する内視鏡画像歪み補正方法であって、
基準スコープと前記光学アダプタとを組み合わせた光学系の歪みを補正するための光学データを読み込む第1のステップと、
前記基準スコープの光学的特性を示す基準スコープの歪みパラメータを読み込む第2のステップと、
ユーザスコープの光学的特性を示すユーザスコープの歪みパラメータを読み込む第3のステップと、
前記基準スコープと前記光学アダプタとを組み合わせた光学系の歪みを補正するための光学データと、前記基準スコープの光学的特性を示す基準スコープの歪みパラメータと、前記ユーザスコープの光学的特性を示すユーザスコープの歪みパラメータとに基づいて、前記ユーザスコープと前記光学アダプタとを組み合わせた際に前記撮像手段によって撮像された画像の歪みを補正する第4のステップと
を含むことを特徴とする内視鏡画像歪み補正方法。
【請求項9】
前記第4のステップは、前記第2のステップあるいは前記第3のステップにおいて、パラメータの読み込みに失敗した場合に、前記光学データのみに基づいて、撮像された画像の歪みを補正する処理を含むことを特徴とする請求項8記載の内視鏡画像歪み補正方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−171941(P2007−171941A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−314336(P2006−314336)
【出願日】平成18年11月21日(2006.11.21)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】