説明

内視鏡装置

【課題】励起光源とその励起光源から射出された励起光によって蛍光を発する蛍光体とを先端に備えた内視鏡装置において、励起光源が故障しても安全に内視鏡挿入部を体腔内から取り出せるようにする。
【解決手段】蛍光体部22の位置まで予備光源60を導入可能な導入管路14を設け、その導入管路14を用いて導入された予備光源60から射出された光を、照射窓61を介して蛍光体部22に照射できるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、励起光の照射によって蛍光を発する蛍光体を用いて観察部位に照明光を照射し、観察部位の画像を撮像する内視鏡装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、体腔内の組織を観察する内視鏡装置が広く知られており、白色光によって照明された体腔内の観察部位を撮像して通常画像を得、この通常画像をモニタ画面上に表示する電子内視鏡装置が広く実用化されている。
【0003】
そして、上記のような電子内視鏡装置としては、上記のように白色光を観察部位に照射し、肉眼による観察と略同様の通常画像を撮像するものの他に、白色光よりも狭い帯域を有する光である狭帯域光を観察部位に照射して撮像を行うことにより、通常画像に比べ、生体における粘膜表層の血管等をコントラスト良く表現した狭帯域画像を撮像することができる、狭帯域光観察(NBI: Narrow Band Imaging)用の電子内視鏡装置が提案されている。
【0004】
たとえば、特許文献1には、励起光の照射によって狭帯域光の蛍光を発する蛍光体を用いて、通常画像と狭帯域画像の両方を撮像することができる内視鏡装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−29555号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の内視鏡装置においては、励起光を照射する励起光源が内視鏡挿入部の先端に設けられているため、たとえば、内視鏡挿入部を体腔内に挿入した状態で励起光源が故障してしまった場合、励起光を照射することができなくなってしまい、まっ暗な状態で内視鏡挿入部を体腔内から取り出すのは非常に危険を伴う。
【0007】
本発明は、上記の事情に鑑み、たとえ励起光源が故障したとしても、安全に内視鏡挿入部を体腔内から取り出すことができる内視鏡装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の内視鏡装置は、体内に挿入される挿入部を備えた内視鏡装置において、挿入部の先端に配置され、光源から射出された光の照射を受けて照明光を発する蛍光体部と、
挿入部内に長さ方向に延伸して設けられ、蛍光体部の位置まで予備光源が導入される導入管路と、導入管路と蛍光体部との間に設けられ、予備光源から射出された光を蛍光体部に照射するための照射窓とを備えたことを特徴とする。
【0009】
また、上記本発明の内視鏡装置においては、導入管路として、鉗子が導入される鉗子管路を用いることができる。
【0010】
また、照射窓に集光レンズを設けることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の内視鏡装置によれば、蛍光体部の位置まで予備光源を導入可能な導入管路を設け、その導入管路を用いて導入された予備光源から射出された光を、照射窓を介して蛍光体部に照射できるようにしたので、たとえ、励起光源が故障したとしても、予備光源によって蛍光体部を励起することができるので、継続して照明光を照射することができ、安全に挿入部を体腔内から取り出すことができる。
【0012】
また、上記本発明の内視鏡装置においては、導入管路として、鉗子が導入される鉗子管路を用いるようにした場合には、新たに導入管路を設ける必要がないので、コストの削減になる。
【0013】
また、照射窓に集光レンズを設けるようにした場合には、予備光源から射出された励起光をより効率的に蛍光体部に照射することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の内視鏡装置の一実施形態を用いた内視鏡システムの外観図
【図2】本発明の内視鏡装置の一実施形態を用いた内視鏡システムの概略構成を示すブロック図
【図3】蛍光体部から発せられる蛍光の発光特性の一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の内視鏡装置を用いた内視鏡システムの一実施形態について詳細に説明する。図1は、本実施形態の内視鏡システム1の概略構成を示すものである。
【0016】
本実施形態の内視鏡システム1は、図1に示すように、被験者の体腔内に挿入され、観察部位を撮像する内視鏡装置10と、内視鏡装置10に設けられたLED光源を駆動するとともに、内視鏡装置10により撮像された画像信号に所定の画像処理を施すプロセッサ20とを備えている。
【0017】
内視鏡装置10は、被験者の体腔内に挿入される挿入部11と、操作者による所定の操作指示を受け付けるスイッチなどを有し、挿入部11に一体的に設けられた操作部12と、操作部12とプロセッサ20とを接続するためのケーブル13とを備えている。
【0018】
また、挿入部11の内部には、鉗子等の処置具を導入させる鉗子管路14が設けられている。鉗子管路14は、挿入部11の長さ方向に延設され、操作部12近傍に設けられた鉗子口から挿入部11の先端の鉗子出口まで連通された管路である。そして、鉗子管路14は、LED光源などからなる予備光源60も導入させるものである。
【0019】
図2は、内視鏡装置10とプロセッサ20の内部の概略を示すブロック図である。
【0020】
内視鏡装置10の挿入部11の先端には、LEDなどからなる励起光源21と、励起光源21から射出された励起光の照射を受けて蛍光を発する蛍光体部22と、蛍光体部22から発せられた蛍光を被験者の観察部位に照射する照明光学系23と、蛍光体部22から発せられた蛍光の照射により観察部位から反射された反射光をCCDなどの撮像素子に結像する対物光学系25と、対物光学系25により結像された像を光電変換し、画像信号を出力する撮像素子26とが設けられている。なお、励起光源21に対し、蛍光体部22側とは反対側には、励起光源21から後方(蛍光体部22側とは反対側)に射出された励起光を蛍光体部22側に反射する反射板24が設けられている。
【0021】
また、本実施形態における蛍光体部22は、図3に示すような、青色の帯域と緑色の帯域にピークを有する狭帯域の光を発するものである。
【0022】
また、撮像素子26の撮像面には、R、GおよびBのカラーフィルタがマトリクス状に設けられているものとする。
【0023】
さらに、挿入部11の先端には、鉗子管路14の側壁と蛍光体部22との間に、予備光源60から射出された光を蛍光体部22に照射するための照射窓61が設けられている。照射窓61は集光レンズで構成することが望ましい。なお、予備光源60は、励起光源21と同じ励起光を射出するものである。
【0024】
操作部12の内部には、撮像素子から出力された画像信号に対し、相関2重サンプリングを施すとともに、そのサンプリング信号を増幅するCDS/AGC回路27、A/D変換部28、および内視鏡装置10全体を制御するスコープコントローラ29が設けられている。そして、撮像素子により撮像された画像信号は操作部12およびケーブル13を経由してプロセッサ20に出力される。
【0025】
プロセッサ20は、内視鏡装置10によって取得された画像信号に所定の信号処理を施す信号処理部30と、信号処理部30から出力された表示用画像信号に基づいて、観察部位の画像を表示するモニタ50と、内視鏡装置10に設けられた励起光源21と予備光源60とを駆動制御するLED駆動ユニット40とを備えている。
【0026】
信号処理部30は、通常光の観察部位への照射によって内視鏡装置10の撮像素子26から出力された画像信号を取得する画像信号取得部31と、画像信号取得部31により取得された画像信号に対し所定の画像処理を施す画像処理部32と、画像処理部32から出力された処理済画像信号に基づいて表示用画像信号を生成する表示信号生成部33と、内視鏡システム1全体を制御する制御部34とを備えている。
【0027】
モニタ50は、液晶表示装置やCRT等から構成され、信号処理部30から出力された表示用画像信号に基づいて、通常画像を表示可能なものである。
【0028】
次に、本実施形態の内視鏡システムの動作について説明する。
【0029】
本実施形態の内視鏡システム1は、内視鏡装置10の励起光源21に異常が発生したときの回避方法に特徴を有するものであるが、その説明の前に励起光源21を用いて通常画像および狭帯域画像を表示する作用について説明する。
【0030】
まず、内視鏡装置10の挿入部11が体腔内に挿入された後、信号処理部30の制御部34からの制御信号に基づいて、LED駆動ユニット40は内視鏡装置10の励起光源21に駆動信号を出力し、励起光源21はLED駆動ユニット40からの駆動信号に基づいて励起光を射出する。
【0031】
そして、励起光源21から射出された励起光は蛍光体部22に照射され、蛍光体部22は励起光の照射を受けて蛍光を発する。
【0032】
そして、蛍光体部22から発せられた蛍光は照明光学系23を介して観察部位に照射される。そして、蛍光の照射によって観察部位を反射した反射光が挿入部11の対物光学系25に入射され、対物光学系25によって撮像素子26の撮像面に観察部位の像が結像される。
【0033】
そして、スコープコントローラ29によって駆動された撮像素子26が観察部位の像を撮像し、スコープコントローラ29のクロック信号に応じてR成分、G成分およびB成分からなる画像信号を順次出力する。
【0034】
そして、この画像信号はCDS/AGC回路27で相関二重サンプリングと自動利得制御による増幅を受けた後、A/D変換部28でA/D変換されて、デジタル信号として信号処理部30に入力される。
【0035】
そして、内視鏡装置10から出力されたR成分、G成分およびB成分の画像信号が、信号処理部30の画像信号取得部31により取得される。そして、画像信号取得部31により取得された画像信号は画像処理部32において所定の信号処理および画像処理が施された後、表示信号生成部33に順次出力される。なお、このとき画像処理部32において施される信号処理および画像処理は、観察部位を肉眼により観察した状態と略同様の自然な色再現となるような処理であるものとする。
【0036】
そして、表示信号生成部33は、入力された画像信号に各種の信号処理を施した上、輝度信号Yと色差信号Cで構成されるY/C信号を生成し、さらに、このY/C信号へ対し、I/P変換およびノイズ除去などの各種信号処理を施して表示用画像信号を生成し、モニタ50へ出力する。
【0037】
そして、モニタ50は、入力された表示用画像信号に基づいて、観察部位の通常画像を表示する。
【0038】
また、観察部位の狭帯域画像を表示する際には、操作者により所定の入力手段によって狭帯域画像表示への切替指示が入力され、その切替指示によって画像処理部32における信号処理および画像処理が狭帯域画像用のものへと切り替えられる。狭帯域画像用の信号処理および画像処理としては、たとえば、生体における粘膜表層の血管および微細構造などをコントラスト良く色再現するような処理などがある。
【0039】
なお、その他の作用については、通常画像の表示の作用と同様である。
【0040】
ここで、上記のようにして通常画像または狭帯域画像を撮像している状態において、励起光源21に異常が発生して励起光を射出できなくなったとき、通常画像の撮像ができなくなるだけでなく、内視鏡装置10の挿入部11を被験者の体内から安全に取り除くのも困難となる。
【0041】
そこで、上記のようにして励起光源21において異常が発生した場合には、操作者は挿入部11の鉗子管路14の鉗子口から予備光源60を挿入し、その予備光源60を蛍光体部22に位置まで導入する。なお、予備光源60には電源・制御ライン62が接続されており、この電源・制御ライン62はLED駆動ユニット40に接続されているものとする。
【0042】
そして、予備光源60から射出された励起光が照射窓61を介して蛍光体部22に照射され、蛍光体部22から蛍光が発せられる。
【0043】
そして、蛍光体部22から発せられた蛍光は、上述した通常画像の撮像時と同様に、照明光学系23を介して観察部位に照射される。
【0044】
上記のようにして予備光源60を使用することによって、再び照明光を照射することができ、通常画像の撮像を継続することができるとともに、挿入部11を被験者の体内から安全に取り出すことができる。
【0045】
なお、上記実施形態の内視鏡システム1においては、励起光源21の異常を操作者が目視で認識するようにしたが、励起光源21の異常を自動検出するようにしてもよい。たとえば、表示信号生成部33において生成される輝度信号Yの大きさを監視し、輝度信号Yの大きさが所定の閾値よりも小さくなった場合に、モニタ50に警告表示して操作者に報知するようにしてもよい。
【0046】
また、励起光源21に流れる駆動電流を検出する駆動電流検出部を設け、その駆動電流検出部によって検出された駆動電流が所定の閾値より小さくなった場合に、モニタ50に警告表示をして操作者に報知するようにしてもよい。
【0047】
また、上記実施形態の内視鏡システム1においては、予備光源60を鉗子管路14内に直接導入するようにしたが、予備光源60を導入するのではなく、挿入部11の外に設置された予備光源60から射出された光を、光ファイバなどの導光手段により導光し、その導光手段を鉗子管路14に導入して蛍光体部22に励起光を照射するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0048】
1 内視鏡システム
10 内視鏡装置
11 挿入部
12 操作部
13 ケーブル
14 鉗子管路
20 プロセッサ
21 励起光源
22 蛍光体部
23 照明光学系
24 反射板
25 対物光学系
26 撮像素子
30 信号処理部
40 LED駆動ユニット
50 モニタ
60 予備光源
61 照射窓
62 電源・制御ライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
体内に挿入される挿入部を備えた内視鏡装置において、
前記挿入部の先端に配置され、光源から射出された光の照射を受けて照明光を発する蛍光体部と、
前記挿入部内に長さ方向に延伸して設けられ、前記蛍光体部の位置まで予備光源が導入される導入管路と、
該導入管路と前記蛍光体部との間に設けられ、前記予備光源から射出された光を前記蛍光体部に照射するための照射窓とを備えたことを特徴とする内視鏡装置。
【請求項2】
前記導入管路が、鉗子が導入される鉗子管路であることを特徴とする請求項1記載の内視鏡装置。
【請求項3】
前記照射窓に集光レンズが設けられていることを特徴とする請求項1または2記載の内視鏡装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−259475(P2010−259475A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−110399(P2009−110399)
【出願日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【復代理人】
【識別番号】100128451
【弁理士】
【氏名又は名称】安田 隆一
【Fターム(参考)】