説明

内視鏡装置

【課題】簡単な構成で、被検者に負担を強いることがなく複数種類の照明を切り替えて、スクリーニング診断では高フレームレートで観察に適した滑らかな診断画像を得ることができ、精査診断では高精度な診断画像を得ることができる内視鏡装置を提供する。
【解決手段】広帯域光を含む第1の照明光と狭帯域光のみを含む第2の照明光との発光波長を切り替える発光波長切替手段と、発光波長が切り替えられた第1又は第2の照明光によって被写体を撮像フレーム毎に撮像する撮像手段と、被写体となる生体の形態及び/又は機能に関する生体情報を取得する生体情報取得手段と、生体情報の種類に応じた、少なくとも2以上の診断モードを切り替えるモード切替手段と、診断モードによって、生体情報を取得するための第1及び第2の照明光の発光波長を切り替える、撮像手段による撮像フレーム数を可変させることにより、上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数種類の照明をスクリーニング診断(観察)及び精査診断(観察)など目的別に切り替えて使用して、スクリーニング診断では高フレームレートで観察に適した滑らかな診断画像を得ることができ、精査診断では高精度な診断画像を得ることができる内視鏡装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内視鏡による画像診断においては、正確かつ精密・詳細に体腔内の癌、特に、早期癌等の病巣部位や病変部位や出血部等の異常部位を観察し、診断する精査観察や精査診断の前に、体腔内の広い範囲の各部位からこれらの異常が疑われる部位を見つけ出すスクリーニング観察・検査やスクリーニング診断が行われている。
内視鏡によるスクリーニング観察・診断においては、体腔内の広い範囲を観察し、診断する必要があるため、観察・診断画像としては、体腔内を移動しながら広い範囲全体を遠目で観察し、診断する必要があり、明るい画像であることが要求され、又、滑らかな映像(動画像)であることが要求される。
一方、内視鏡による精査観察・診断においては、スクリーニング観察・診断において見つけ出された異常が疑われる部位に近付いて、当該部位が癌等の異常部位であるかどうかを正確に観察・診断する必要があるため、観察・診断画像としては、略固定され、近接・拡大された状態で当該部位を観察し、診断する必要があり、又、当該部位の複数の特徴の生体変化を捉える必要があり、様々な波長の光を用いて複数の画像を得ることが要求される。
【0003】
このため、スクリーニング観察・診断(以下、診断で総称する)は、一般的に、通常の白色照明光による通常光観察で行われており、精査診断は、一般的に、拡大された対象部位の特殊光観察によって行われている。特殊光観察としては、生体組織に対する光の深さ方向の深達度が光の波長に依存することを利用して、特定の中心波長を持つ狭い波長帯域光(狭帯域光)を生体の粘膜組織に照射し、生体組織の所望の深さの組織情報、特に所定の深さの血管(表層血管(青色:B)、中層血管(緑色:G)、深層血管(赤色:R)等)の形態情報を得て、癌組織等の病巣の存在の有無を診断する狭帯域光観察や、ヘモグロビンの吸光度を利用して、B領域の狭帯域光を生体組織に照射し、血液中の酸素飽和度を測定する狭帯域光観察や、ヘモグロビンの吸光度や血液中で蛋白と結合するICG(インドシアニングリーン)の吸光度等を利用して、近赤外光を生体組織に照射し、血液中の酸素飽和度を測定して、血管を造影する赤外光観察や、特定の、狭い波長帯域の励起光が照射された生体組織自体から発生する自家蛍光、又は、生体組織の中の癌細胞等の特定の病巣に散布された蛍光薬剤から発生する蛍光を用いて癌細胞等の病巣の存在の有無を診断する蛍光観察等が行われている。
【0004】
特許文献1には、被写体像の倍率を遠隔操作によって可変であり、通常観察を行うことができる対物ズーム光学系と、被写体の顕微鏡的拡大像を得ることができる共焦点光学系とが挿入部の先端内に併設し、対物ズーム光学系のためのビデオプロセッサ及びメインモニタと、共焦点光学系のための共焦点像プロセッサ及び共焦点像モニタとをそれぞれ別々に設けた拡大観察用内視鏡装置が提案されている。
特許文献1に開示の拡大観察用内視鏡装置では、ビデオプロセッサ内の光源ランプから射出され、対物ズーム光学系に入射した通常の白色照明光を被写体に向けて照射し、被写体からの反射光を固体撮像素子で受光して撮像し、撮像した映像信号をビデオプロセッサ内の映像信号処理回路で処理し、撮像した被写体画像をメインモニタに表示することにより、通常観察によるスクリーニングが行われる。このスクリーニングにおいて、異常が疑われる部位が見つかると、対物ズーム光学系を遠隔操作し、当該部位の被写体像の倍率を共焦点光学系の拡大倍率まで拡大して、メインモニタに拡大画像を表示する。この後、共焦点光学系に切り替え、共焦点像プロセッサ内のレーザ光源から射出され、共焦点光学系に入射したレーザ光による反射光を共焦点像プロセッサ内の受光素子で受光し、その映像信号を映像信号処理回路で処理し、被写体の顕微鏡的拡大像を共焦点モニタに表示する。
こうすることにより、当該拡大観察用内視鏡装置では、スクリーニングで見つかった異常が疑われる部位の拡大画像に対応する顕微鏡的拡大像を精査診断することができるとしている。
【0005】
一方、特殊光観察では、特許文献2に、反射光画像を提示する通常光観察モード、蛍光強度画像を提示するスクリーニング蛍光観察モード(第1の蛍光観察モード)、蛍光強度画像から演算によって求めた蛍光薬剤の濃度分布を提示するアンミキシング蛍光観察モード(第2の蛍光観察モード)の3つの観察モードを持ち、モード切替スイッチによって、適切な観察モードを選択することができる内視鏡システムが提案されている。
この内視鏡システムでは、光源として、キセノンランプ等の白色光源と切替RGBカラーフィルタとからなる照明光用光源、及び波長の異なるピーク波長680nm並びに700nmの励起光を出射する半導体レーザからなる2つの励起光源を用いるもので、通常のスクリーニング、すなわち、内視鏡の先端挿入部を体腔内に挿入して、観察したい部位まで導く間は、照明光用光源を用いた通常光観察モードによって撮影される。通常光観察モードでは、照明光用光源は常時点灯され、RGBカラーフィルタによるRGB面順次光による反射光を撮像素子により受光して観察部位をカラー画像として撮像し、表示ユニットに観察部位のカラー画像を表示している。なお、このモードでは、2つの励起光源は消灯される。内視鏡の先端挿入部が観察部位に至るとスクリーニング蛍光観察モードに切り替えられ、観察対象部位の洗浄及び2種の蛍光プローブの散布が行われる。
【0006】
スクリーニング蛍光観察モードでは、照明光用光源と1つの励起光源とが用いられ、他の1つの励起光源は用いられないが、照明光用光源が点灯された時には、カラーフィルタによりB照明光のみを観察部位に照射し、撮像素子により反射光画像(B)として撮像され、1つの励起光源が点灯された時には、出射された励起光により観察対象に散布された2種の蛍光プローブが励起されて発生した2種類の蛍光が励起光カットフィルタを備えた撮像素子により蛍光画像として撮像され、蛍光画像と反射光画像とが重ね合わされた画像として表示ユニットに表示され、蛍光が発生していなければ、通常観察モードに切り替えられ、内視鏡の先端挿入部を次の観察部位に移動する。一方、蛍光が発生していれば、アンミキシング観察モードに切り替えられる。
アンミキシング観察モードでは、照明光用光源と2つの励起光源とが用いられ、同様にして、反射光画像と2種類の蛍光が混色した2種類の蛍光画像とが取得され、2種類の蛍光画像から各蛍光プローブの濃度情報が算出され、表示ユニットに反射光画像に重ね合わせて表示され、2種類の蛍光による濃度情報により、癌細胞の存在の有無を診断することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−22890号公報
【特許文献2】特開2008−161550号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、特許文献1に開示の拡大観察用内視鏡装置では、白色光による通常観察でスクリーニングを行うと共に、異常が疑われる部位が見つかると、通常観察において対物ズーム光学系による拡大倍率を顕微鏡的拡大像の拡大倍率と略等しくなるように変更し、その後、共焦点光学系により被写体の顕微鏡的拡大像を得て、精査診断を行うことができるが、単位、拡大観察を行うものに過ぎず、特殊光観察による異常部位の診断を行うものではない。
また、この装置では、通常観察用としても、対物ズーム光学系という複雑な光学系を用いる必要があり、構造が複雑になるばかりか、コストがかかるという問題があった。これに加えて、顕微鏡的拡大像を得るための共焦点光学系も必要であり、内視鏡の挿入部の寸法を細くすることができなくなり、被検者の負担が増すことになるという問題があるばかりか、それぞれに応じたプロセッサやモニタが必要であり、構成が複雑になるばかりか、コストがかかるという問題があった。
【0009】
また、特許文献2に開示の内視鏡システムでは、蛍光観察という特殊光観察によるスクリーニングを行い、スクリーニングで見つけられた蛍光発生部位において蛍光観察による観察対象部位の蛍光薬剤の濃度を可視化して精査診断を行うものである。しかしながら、ここで行われるスクリーニングは、体腔内を移動しながら広い範囲全体を遠目で観察し、診断するための明るい滑らかな映像(動画像)を取得して行われるものではなく、予め、通常光観察モードによる観察を行って、内視鏡の先端挿入部を観察したい部位まで導き、内視鏡の先端挿入部が観察部位に至るとスクリーニング蛍光観察モードに切り替えて、拡大された状態で観察対象部位の蛍光観察を行うものである。このため、この内視鏡システムでは、蛍光観察モードで、体腔内を移動しながら広い範囲全体を遠目で観察し、診断することができず、通常観察モードとスクリーニング蛍光観察モードとを切り替えながら蛍光観察によるスクリーニングを行う必要があり、術者の操作が面倒であるという問題があった。
【0010】
本発明の目的は、簡単な構成で、また、内視鏡の先端挿入部の寸法を太くすることがなく、被検者に負担を強いることがなく、複数種類の照明をスクリーニング診断・観察及び精査診断・観察などに応じて切り替えて使用することができ、スクリーニング診断では高フレームレートで観察に適した滑らかな診断画像を得ることができ、精査診断では高精度な診断画像を得ることができる内視鏡装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の内視鏡装置は、少なくとも広帯域光を含む第1の照明光を出射する第1の照明手段と、狭帯域光のみを複数含む第2の照明光を出射する第2の照明手段と、前記第1の照明手段からの前記第1の照明光及び前記第2の照明手段からの前記第2の照明光の発光波長を切り替える発光波長切替手段と、該発光波長切替手段によって切り替えられた前記発光波長の前記第1の照明光又は前記第2の照明光が照射された被写体からの戻り光を受光して撮像フレーム毎に撮像し、撮像信号を出力する撮像手段と、該撮像手段で撮像された前記撮像信号から前記被写体となる生体の形態及び/又は機能に関する生体情報を取得する生体情報取得手段と、該生体情報取得手段によって取得される前記生体情報に応じた、少なくとも2以上の診断モードを切り替えるモード切替手段と、を有し、該モード切替手段で切り替えられる診断モードによって、前記生体情報を取得するための前記第1の照明光及び前記第2の照明光の発光波長を前記発光波長切替手段で切り替える、前記撮像手段による撮像フレーム数を可変させることを特徴とする。
【0012】
ここで、前記少なくとも2以上の診断モードは、第1の診断モードと第2の診断モードを含み、該第1の診断モードは、フレームレートを優先するフレームレート優先モードであり、前記第2の診断モードは、前記生体情報を優先する生体情報優先モードであり、前記第1の診断モードの前記撮像フレーム数は、前記第2の診断モードの前記撮像フレーム数より少ないのが好ましい。
また、前記フレームレート優先モードは、前記生体情報を用いて前記被写体をスクリーニングするモードであり、前記生体情報優先モードは、前記フレームレート優先モードにおける前記スクリーニングで特定された前記被写体の特定部位の前記生体情報を取得するモードであるのが好ましい。
また、前記第1の診断モードは、前記第1の照明手段からの前記第1の照明光のみによって前記被写体を照明するものであり、前記第2の診断モードは、前記第2の照明手段からの前記第2の照明光よって前記被写体を照明することを少なくとも含むものであるのが好ましい。
【0013】
また、前記第1の照明手段から出射される前記第1の照明光と、前記第2の照明手段から出射される前記第2の照明光は、異なる照明口から出射され、前記被写体を照明するのが好ましい。
また、前記第1の照明手段は、互いに異なる波長(帯域)の狭帯域光を出射する2以上の狭帯域光源と、該2以上の狭帯域光源から出射される各狭帯域光の少なくとも一部を透過すると共に、前記2以上の狭帯域光源の1つ狭帯域光源からの1つの狭帯域光によって励起されて蛍光を発光する蛍光体と、を有し、前記1つの狭帯域光による前記蛍光体の透過光と前記蛍光体から発光する前記蛍光との合成光を前記広帯域光として前記蛍光体から出射するものであり、前記第1の照明光は、前記広帯域光である前記合成光と、前記2以上の狭帯域光源の他の1以上の狭帯域光源からの1以上の狭帯域光とを含むものであり、前記第2の照明手段は、前記第2の照明光として異なる波長(帯域)の狭帯域光を出射する2以上の狭帯域光源を有するのが好ましい。
【0014】
また、前記第1の照明手段は、互いに異なる波長(帯域)の第1及び第2の狭帯域光をそれぞれ出射する第1及び第2の狭帯域光源と、前記第1及び第2の狭帯域光のそれぞれの少なくとも一部を透過すると共に、前記第1の狭帯域光によって励起されて蛍光を発光する蛍光体とを有し、前記蛍光体を透過した前記第1の狭帯域光と該第1の狭帯域光で励起された前記蛍光体から発光する前記蛍光との合成光を前記広帯域光として出射するものであり、前記第2の照明手段は、互いに異なる波長(帯域)の狭帯域光を出射する3つの狭帯域光源を有し、該3つの狭帯域光源は、それぞれ前記第1及び第2の狭帯域光源と、前記第1及び第2の狭帯域光と波長の異なる第3の狭帯域光を出射する第3の狭帯域光源とを含むのが好ましい。
また、前記第1の狭帯域光は、前記蛍光体から前記蛍光を励起発光させて前記広帯域光として疑似白色光を生成するのに適した波長を持つ狭帯域光であり、前記第2の狭帯域光は、前記生体情報として前記生体の血液の酸素飽和度を取得するのに適した波長を持つ狭帯域光であり、前記第3の狭帯域光は、前記生体情報として前記生体の表層血管の情報を取得するのに適した波長を持つ狭帯域光であるのが好ましい。
【0015】
また、前記第1の狭帯域光源は、前記第1の狭帯域光として青色領域の波長の狭帯域光を出射する第1青色レーザであり、前記第2の狭帯域光源は、前記第1青色レーザの発光波長域よりも長波長の青色領域から青緑色領域の波長域にある狭帯域光を出射する第2青色レーザであり、前記第3の狭帯域光源は、前記第1青色レーザの発光波長域よりも短波長の青紫色領域から青色領域の波長域にある狭帯域光を出射する第3青色レーザであるのが好ましい。
また、前記第1狭帯域光の波長領域は440±10nmであり、前記第2狭帯域光の波長領域は470±10nmであり、前記第3狭帯域光の波長領域は400±10nmであるのが好ましい。
【0016】
また、前記撮像手段は、少なくとも3つ以上の波長帯域を分離して撮像可能なカラー撮像素子であるのが好ましい。
また、前記内視鏡装置は、さらに、前記広帯域光を前記被写体に照射して前記撮像手段によって撮像された前記撮像信号から、分光推定によって狭帯域画像信号を生成する手段を有するのが好ましい。
さらに、前記生体情報取得手段は、前記生体の血液の酸素飽和度を演算するのが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、簡単な構成で、また、内視鏡の先端挿入部の寸法を太くすることがなく、被検者に負担を強いることがなく、複数種類の照明をスクリーニング診断・観察及び精査診断・観察などに応じて切り替えて使用することができ、スクリーニング診断では、高フレームレートで観察に適した滑らかな診断画像を得ることができ、精査診断では、高精度な診断画像を得ることができ、その結果、被検者に負担を強いることがなく、常に正確な診断や観察を迅速にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態の内視鏡装置の一実施例の外観を示す斜視図である。
【図2】図1に示す内視鏡装置の全体構成を概念的に示す模式図である。
【図3】図1に示す内視鏡装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図4】(A)及び(B)は、それぞれ、図1に示す内視鏡装置の内視鏡の先端部の蛍光体を備えた投光ユニット、及び光偏向・拡散部材を備えた投光ユニットの断面構成図である。
【図5】(A)は、図1に示す内視鏡装置に用いられる狭帯域光源からの青色レーザ光及び青色レーザ光が蛍光体により波長変換された発光スペクトルと、各狭帯域光源からのレーザ光の発光スペクトルを示すグラフであり、(B)は、図1に示す内視鏡装置に用いられる撮像素子のカラーフィルタの分光透過率を示すグラフである。
【図6】図1に示す内視鏡装置の内視鏡の先端部の一実施例の概略的な構成を示す斜視図である。
【図7】図6に示す内視鏡の先端部の分解図である。
【図8】図6のA−A線断面図である。
【図9】図6に示す内視鏡の先端部のB方向から見た正面図である。
【図10】図3に示す内視鏡装置の画像処理部の特殊光画像処理部の第1画像処理部の一実施例の構成を示すブロック図である。
【図11】図1に示す内視鏡装置のスクリーニング診断モードにおける酸素飽和度の算出のプロセスを説明する説明図である。
【図12】血管中のヘモグロビンの吸収係数の波長依存性を示すグラフである。
【図13】撮像画像の画素の分光輝度比と血液量および酸素飽和度との相関関係を表すグラフである。
【図14】図3に示す内視鏡装置の画像処理部の特殊光画像処理部の第2画像処理部の一実施例の構成を示すブロック図である。
【図15】図1に示す内視鏡装置の精査診断モードにおける酸素飽和度の算出のプロセスを説明する説明図である。
【図16】撮像画像の画素の分光輝度比と血管深さ及び酸素飽和度との相関関係を示すグラフである。
【図17】(A)及び(B)は、それぞれ図3に示す内視鏡装置の画像処理部の特殊光画像処理部の第1画像処理部及び第2画像処理部の他の実施例の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る内視鏡装置を、添付の図面に示す好適実施形態を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る内視鏡装置の一実施例の外観を示す斜視図である。図2は、図1に示す内視鏡装置の全体構成を概念的に示す模式図である。図3は、図1に示す内視鏡装置の電気的構成を示すブロック図である。
これらの図に示すように、本発明の内視鏡装置10は、医療機器の一つであり、被検者の体腔内を撮像する内視鏡11と、撮像のために体腔内を照射する光を供給する光源装置12及び撮像により得られた画像信号に基づいて体腔内の被写体組織の血管情報等の生体情報を含む画像等の画像情報を生成するプロセッサ13を備え、内視鏡11が接続される制御装置14と、体腔内の画像等の画像情報を表示するモニタ等からなる表示部15と、内視鏡装置10の入力操作を受け付ける入力部17とを有する。
【0020】
なお、本発明の内視鏡装置10は、観察モードとして、通常観察モード(通常光モードともいう)や、特殊光観察モード(特殊光モードともいう)等を備え、特殊光観察モードは、スクリーニング診断モード、すなわち本発明で言うフレームレート優先モード及び精査診断モード、すなわち本発明で言う生体情報優先モード等の診断モードを含む。
なお、以下では、特殊光観察モードにおいて、被検体の生体情報として、生体の血液の酸素飽和度を取得する場合を代表例として説明するが、本発明においては、これに限定されず、血管の深さ情報や、血管の太さ情報や、血管の集合情報や、血管の形状情報や、血液量などの情報を取得するものであっても良いし、特殊光モードとして、狭帯域光観察のみならず、赤外光観察や、自家蛍光観察や、蛍光観察等の特殊観察を行うものであっても良いのはもちろんである。
【0021】
まず、本実施例の内視鏡11について説明する。
内視鏡11は、被検体内に挿入される挿入部19の先端から照明光を出射する照明光学系と、被観察領域を撮像する撮像素子21(図2参照)を含む撮像光学系とを有する、電子内視鏡である。内視鏡11は、と光学的に接続され、プロセッサ13と電気的に接続される。また、プロセッサ13は、表示部15及び入力部17と電気的に接続される。入力部17は、通常光モードや、特殊光モードなどの観察モードの設定や機能設定等の入力操作を受け付けるUI(ユーザインタフェース)として機能する。
なお、本発明の内視鏡装置10は、さらに、表示部15に加え、図示しないが、画像情報等をハードコピー画像として出力する記録部(記録装置)を有していても良い。
【0022】
また、内視鏡11は、体腔内に挿入される可撓性の挿入部19と、挿入部19の基端部分に設けられ、挿入部19の先端の湾曲操作や観察のための操作を行う操作部23と、操作部17と制御装置14との間を連結するユニバーサルコード24と、ユニバーサルコード24に取り付けられ、内視鏡11を制御装置14に着脱自在に接続するコネクタ部25a、25bを備える。なお、図示しないが、操作部23及び挿入部19の内部には、組織採取用処置具等を挿入する鉗子チャンネルや、送気・送水用のチャンネル等、各種のチャンネルが設けられる。
挿入部19は、可撓性を持つ軟性部31と、湾曲部33と、先端部35とから構成される。先端部35には、図2に示すように、被観察領域へ照明光学系による照明光を照射する照射口37a、37bと、被観察領域の画像情報を取得する撮像素子21と、撮像素子21の受光面側に撮像光学系を構成する対物レンズユニット39とが配置され、対物レンズユニット39の外側表面が、観察窓40を構成している。
【0023】
湾曲部33は、軟性部31と先端部35との間に設けられ、図1に示す操作部23に配置されたアングルノブ22の回動操作により湾曲自在にされている。この湾曲部33は、内視鏡11が使用される被検体の部位等に応じて、任意の方向、任意の角度に湾曲でき、内視鏡先端部35の照射口37a、37b及び撮像素子21の観察方向を、所望の観察部位に向けることができる。
なお、内視鏡11の内部の照明光学系の構造、及び撮像系の電気的構成、並びに挿入部19の照射口37a、37bの構造については後に詳述する。
【0024】
次に、本実施例の制御装置14の光源装置12及びプロセッサ13について説明する。
本発明において、光源装置12は、内視鏡11の先端部35の照射口37a、37bに供給する照明光を発生し、プロセッサ13は、内視鏡11の操作部23や入力部17からの指示に基づいて、内視鏡11の撮像素子21から伝送されてくる撮像信号を画像処理して、表示用画像を生成して表示部15へ供給する。
光源装置12は、系統1の光源部である少なくとも広帯域光を含む第1の照明光を出射する第1の照明光源部41と、系統2の光源部である狭帯域光のみを複数含む第2の照明光を出射する第2の照明光源部43と、プロセッサ13の制御部65からの各観察モードに応じた指示に基づいて第1の照明光源部41及び第2の照明光源部43の各狭帯域光源の発光を、各観察モードに応じて、切替制御すると共に、その発光光量を個々に制御する光源制御部49とを有する。
【0025】
第1の照明光源部41は、少なくとも広帯域光源を有し、図示例においては、所定の狭帯域波長を持つ狭帯域光N1である励起光Eを出射する狭帯域光源41aと、励起光Eと異なる発光波長を持つ狭帯域光N2を出射する狭帯域光源41bと、励起光Eの照射により蛍光を発光する蛍光体57とを有する。
ここで、狭帯域光源41aと蛍光体57との組み合わせは、励起光及び蛍光からなる白色光等の広帯域光を出射する広帯域光源を構成する。この広帯域光源は、狭帯域光源41aから出射された励起光Eが蛍光体57に照射されることにより、蛍光体57は、励起光Eにより励起されて励起光Eの波長帯域以外の波長帯域を少なくとも持つ蛍光を発光すると共に励起光Eを透過し、発光した蛍光と透過した励起光Eとの合成光を疑似白色光として出射する。
一方、蛍光体57は、狭帯域光源41bから出射される狭帯域光N2の照射により少しの蛍光を発光するが、励起光Eの照射により発光する蛍光に比べて少なく、多くの狭帯域光N2を透過させる。すなわち、狭帯域光源41bと蛍光体57との組み合わせでは、蛍光体57を透過する狭帯域光N2が支配的であるため、この組み合わせは、狭帯域光N2を出射する狭帯域光源とみなすことができる。
即ち、図示例では、第1の照明光源部41から出射される第1の照明光には、広帯域光と狭帯域光N2とが含まれる。
【0026】
第2の照明光源部43は、互いに発光波長の異なる複数の狭帯域光源を有し、図示例においては、所定の狭帯域波長を持つ狭帯域光N3を出射する狭帯域光源43aと、この狭帯域光N3と異なる発光波長を持つ狭帯域光N4を出射する狭帯域光源43bと、これらの狭帯域光N3、N4と異なる発光波長を持つ狭帯域光N5を出射する狭帯域光源43cとを有する。すなわち、図示例では、第2の照明光源部43から出射される第2の照明光には、狭帯域光N3、N4及びN5のみが含まれる。
【0027】
なお、本実施形態の構成例においては、狭帯域光源41aは、蛍光体57を励起して蛍光を発光させて、例えば、マイクロホワイト(商品名)と呼ばれる広帯域光源を構成するものであり、励起光Eとして、波長が440±10nmに制限された青色のレーザ光(狭帯域光N1)を出射するのが好ましく、中心発光波長が445nmのLD(レーザダイオード)であるのがより好ましい。
また、狭帯域光源41bは、血液中の酸素飽和度を算出するのに適した光源であり、波長が、470±10nmに、より好ましくは473nmに制限された青緑色レーザ光(狭帯域光N2)を出射するのが好ましく、中心発光波長が473nmの半導体レーザ(LD)であるのがより好ましい。
【0028】
また、狭帯域光源43aは、狭帯域光源41aと同様に、波長が、440±10nmに、より好ましくは445nmに制限された青色のレーザ光(狭帯域光N3)を出射するのが好ましく、中心発光波長が445nmのLDであるのがより好ましい。
また、狭帯域光源43bは、狭帯域光源41bと同様に、血液中の酸素飽和度を算出するのに適した光源であり、波長が、470±10nmに、より好ましくは473nmに制限された青緑色レーザ光(狭帯域光N4)を出射するのが好ましく、中心発光波長が473nmのLDであるのがより好ましい。
また、狭帯域光源43cは、表層血管の観察に適した光源であり、波長が、400±10nmに、より好ましくは405nmに制限された青紫色レーザ光(狭帯域光N5)を出射するのが好ましく、中心発光波長が405nmのLDであるのがより好ましい。
【0029】
上記の狭帯域光源41a〜41b、43a〜43cは、例えば、GaN系半導体レーザ(レーザダイオード)が利用でき、ブロードエリア型のInGaN系レーザダイオードが利用でき、また、InGaNAs系レーザダイオードやGaNAs系レーザダイオード等を用いることもできる。また、上記光源として、発光ダイオード等の発光体を用いた構成としてもよい。
光源装置12の光源制御部49は、各観察モードに応じて、各狭帯域光源41a〜41b及び43a〜43cの発光の切替制御及び発光量の制御を行うものである。
すなわち、これらの狭帯域光源41a〜41b、43a〜43cは、光源制御部49により各観察モードに応じて、それぞれ個別に調光制御されており、各狭帯域光源の発光のタイミングや光量比は変更自在になっている。
【0030】
まず、観察モードが通常光モードである場合には、光源制御部49は、第1の照明光源部41の狭帯域光源41aのみを点灯し、狭帯域光源41b、及び第2の照明光源部42の狭帯域光源43a〜43cを消灯した状態に制御する。すなわち、通常光モードでは、光源制御部49からの制御信号に基づいて第1の照明光源部41の狭帯域光源41aが点灯され、第1の照明光として、励起光Eと蛍光体57からの蛍光とが合成された疑似白色光からなる広帯域光が第1の照明光源部41から出射される。
【0031】
次に、観察モードが特殊光観察モードのスクリーニング診断モードである場合には、光源制御部49は、第1の照明光源部41の狭帯域光源41a及び狭帯域光源41bを順次交互に点灯し、第2の照明光源部42の狭帯域光源43a〜43cを消灯した状態に制御する。すなわち、スクリーニング診断モードでは、光源制御部49からの制御信号に基づいて第1の照明光源部41の狭帯域光源41a及び41bが順次交互に点灯され、第1の照明光として、上述したように、広帯域光及び狭帯域光N2が順次交互に第1の照明光源部41から出射される(後述する図11参照)。
【0032】
また、観察モードが特殊光観察モードの精査診断モードである場合には、光源制御部49は、第1の照明光源部41の狭帯域光源41a及び第2の照明光源部42の狭帯域光源43a〜43cを、順次交互に点灯し、狭帯域光源41bを消灯した状態に制御する。すなわち、精査診断モードでは、光源制御部49からの制御信号に基づいて第1の照明光源部41の狭帯域光源41aと、第2の照明光源部43の狭帯域光源43a、43b及び43cとが順次交互に点灯され、第1の照明光として、上述の広帯域光が第1の照明光源部41から、第2の照明光として、狭帯域光N3、N4及びN5が順次交互に第2の照明光源部43から出射される(後述する図15参照)。
【0033】
第1の照明光源部41の狭帯域光源41a及び41bから出射される励起光E及び狭帯域光N2は、集光レンズ(図示略)によりそれぞれ光ファイバ42a及び42bに入力され、合波器であるコンバイナ51aと、分波器であるカプラ53aを介してコネクタ部25aに伝送される。
第2の照明光源部43の狭帯域光源43a〜43cから出射される各狭帯域光N3〜N5は、集光レンズ(図示略)によりそれぞれ光ファイバ44a〜44cに入力され、合波器であるコンバイナ51bと、分波器であるカプラ53bを介してコネクタ部25aに伝送される。なお、本発明はこれに限定されず、2つのコンバイナ51a、51b及び2つのカプラ53a、53bの少なくとも一方を用いずに、1つのコンバイナ及び1つのカプラの少なくとも一方を用いて、又は、コンバイナ及びカプラ自体の少なくとも一方を用いずに、各狭帯域光源41a〜41b、43a〜43cからの狭帯域光N1〜N5を直接コネクタ部25aに送出する構成であってもよい。
【0034】
次に、光源装置12に光学的に接続される内視鏡11の照明光学系の構成及びプロセッサ13に接続される撮像系の電気的構成について説明する。
内視鏡11の照明光学系は、光ファイバ55a〜55dと、光ファイバ55a及び55dの先端に配置される蛍光体57と、光ファイバ55b及び55cの先端に配置される光偏向・拡散部材58とから構成される。
照明光学系を構成する光ファイバ55a〜55dは、マルチモードファイバであり、一例として、コア径105μm、クラッド径125μm、外皮となる保護層を含めた径がφ0.3〜0.5mmの細径なファイバケーブルを使用できる。
【0035】
コネクタ部25aから先端部35まで延設された光ファイバ55a及び55dには、第1の照明光源部41の狭帯域光源41a及び41bからの狭帯域光N1及びN2がそれぞれ任意のタイミングで導入されて、先端部35に配置された波長変換部材である蛍光体57を通して照明光となる。
一方、コネクタ部25aから先端部35まで延設された光ファイバ55b及び55cには、第2の照明光源部43の狭帯域光源43a〜43cからの狭帯域光N3〜N5がそれぞれ任意のタイミングで導入されて、先端部35に配置された光偏向・拡散部材58を通して照明光となる。
【0036】
光ファイバ55aと蛍光体57の組み合わせは投光ユニット71aを構成し、光ファイバ55bと光偏向・拡散部材58の組み合わせは投光ユニット71cを構成する。また、光ファイバ55cと光偏向・拡散部材58の組み合わせは投光ユニット71dを構成し、光ファイバ55dと蛍光体57の組み合わせは投光ユニット71bを構成する。投光ユニット71a、71cの対と、投光ユニット71b、71dの対は、内視鏡11の先端部35の撮像素子21及び対物レンズユニット39を挟んだ両脇側に配置される。
【0037】
ここで、図4(A)に投光ユニット71a及び71dの断面構成図、図4(B)に投光ユニット71b及び71cの断面構成図を示す。
図4(A)に示すように、投光ユニット71aと投光ユニット71dとは同一構成であり、蛍光体57と、蛍光体57の外周を覆う筒状のスリーブ部材73と、スリーブ部材73の一端側を封止する保護ガラス(照明窓)75と、スリーブ部材73内に挿入され光ファイバ55a(55d)を中心軸に保持するフェルール77とをそれぞれ備えている。また、フェルール77の後端側から延出される光ファイバ55a(55d)には、その外皮を覆うフレキシブルスリーブ79がスリーブ部材73との間に挿入されている。
一方、投光ユニット71bと投光ユニット71cとは同一構成であり、投光ユニット71a及び71dの蛍光体57に代えて、光偏向・拡散部材58が配設され、光ファイバ55b及び55cから導光される点以外は、投光ユニット71a及び71dと同様の構成となっている。
【0038】
投光ユニット71a及び71dの蛍光体57は、狭帯域光源41aからの青色レーザ光の一部を吸収して緑色〜黄色に励起発光する複数種の蛍光体物質(例えば、YAG系蛍光体、或いはBAM(BaMgAl1017)等の蛍光体)を含んで構成される。これにより、青色レーザ光を励起光とする緑色〜黄色の励起発光光と、蛍光体57により吸収されず透過した青色レーザ光とが合わされて、白色(疑似白色)の照明光が生成される。
この蛍光体57は、レーザ光の可干渉性により生じるスペックルに起因して、撮像の障害となるノイズの重畳や、動画像表示を行う際のちらつきの発生を防止できる。また、蛍光体57は、蛍光体を構成する蛍光物質と、充填剤となる固定・固化用樹脂との屈折率差を考慮して、蛍光物質そのものと充填剤に対する粒径を、赤外域の光に対して吸収が小さく、かつ散乱が大きい材料で構成することが好ましい。これにより、赤色や赤外域の光に対して光強度を落とすことなく散乱効果が高められ、光学的損失が小さくなる。
【0039】
図5(A)は、狭帯域光源41aからの青色レーザ光(励起光E)及び青色レーザ光Eが蛍光体57により波長変換された発光スペクトル(蛍光)Fと、狭帯域光源41b及び狭帯域光源43cからの各レーザ光(狭帯域光N2及びN5)の発光スペクトルを示すグラフである。なお、狭帯域光源43a及び43bからの各レーザ光(狭帯域光N3及びN4)の発光スペクトルは、それぞれ、狭帯域光源41a及び41bからの各レーザ光(励起光E及び狭帯域光N2)の発光スペクトルと同一である。
狭帯域光源41a及び43aからの青色レーザ光Eは、中心波長445nmの輝線で表され、狭帯域光源41aからの青色レーザ光Eによる蛍光体57からの蛍光(励起発光光)Fは、概ね450nm〜700nmの波長帯域で発光強度が増大する分光強度分布となる。この蛍光Fと青色レーザ光Eによるプロファイルによって、前述した疑似白色光BWが形成される。本構成例のように、半導体発光素子を励起光源として用いれば、高い発光効率で高強度の白色光が得られ、白色光の強度を容易に調整できる上に、白色光の色温度、色度の変化を小さく抑えることができる。
【0040】
ここで、本明細書でいう白色光とは、厳密に可視光の全ての波長成分を含むものに限らず、例えば、基準色であるR(赤)、G(緑)、B(青)等、特定の波長帯の光を含むものであればよく、例えば、緑色から赤色にかけての波長成分を含む光や、青色から緑色にかけての波長成分を含む光等も広義に含むものとする。
また、本明細書でいう広帯域光は、少なくとも白色光と見做せる光を含むものであるのが好ましく、近赤外や赤外波長帯域、及び近紫外や紫外波長帯域の少なくとも一方の光を含んでいても良い。
これに対し、本明細書でいう狭帯域光は、基準色であるR、G、B等の特定の波長帯域のいずれにかに属する光、他の狭帯域光の波長帯域とは分離された波長帯域を持つ光、波長帯域の幅が20nm、好ましくは、中心波長に対して±10nmである光であるのが好ましい。
【0041】
また、狭帯域光源41b及び43bからの青緑色レーザ光N2、N4は、中心波長473nmの輝線で表され、狭帯域光源43cからの青紫色レーザ光は、中心波長405nmの輝線で表される。
なお、第1の照明光源部41の狭帯域光源41bからの青緑色レーザ光N2も、蛍光体57に照射されるため、蛍光体57を励起する励起光としての機能を有するが、その機能は青色レーザ光に比べて極めて又はかなり弱く、ほとんどの青緑色レーザ光N2は、蛍光体57を透過する。
以上から、本実施形態では、狭帯域光源41a及び43aとして、中心波長445nmの青色レーザ光を出射するレーザ光源(LD445)を用いることができ、狭帯域光源41b及び43bとして、中心波長473nmの青色レーザ光を出射するレーザ光源(LD473)を用いることができ、狭帯域光源43cとして、中心波長405nmの青色レーザ光を出射するレーザ光源(LD405)を用いることができる。
【0042】
また、投光ユニット71b及び71cの光偏向・拡散部材58は、狭帯域光源43a〜43cからの青色レーザ光N3、青緑色レーザ光N4及び青紫色レーザ光N5の各レーザ光を透過させる材料であればよく、例えば透光性を有する樹脂材料やガラス等が用いられる。更には、光偏向・拡散部材58は、樹脂材料やガラスの表面等に、微小凹凸や屈折率の異なる粒子(フィラー等)を混在させた光拡散層を設けた構成や、半透明体の材料を用いた構成としてもよい。これにより、光偏向・拡散部材58から出射する透過光は、所定の照射領域内で光量が均一化された狭帯域波長の照明光となる。
【0043】
次に、内視鏡11の撮像系は、図2に示すように、光源装置12の光源制御部49に各観察モードに応じて指示を与える制御部65からの各観察モードに応じた指示に基づいて撮像素子21に対して駆動信号を与える撮像制御部62と、撮像制御部62からの駆動信号に基づいて、各観察モードに応じた所定のフレームレートで、被検体の被観察領域を撮像し、画像情報を取得し、取得した撮像画像の画像信号を出力する撮像素子21と、撮像素子21からのアナログ画像を、プロセッサ13のデジタル信号処理部64におけるデジタル画像信号処理で扱うことができるようデジタル信号に処理するためのアナログ処理回路(AFE(アナログフロントエンド:Analog Front End))61と、を有する。
撮像制御部62は、制御部65からの各観察モードに応じた指示に基づいて撮像素子21の駆動を制御するもので、各観察モードに応じて制御される光源装置12の第1の照明光源部41の狭帯域光源41a〜41b、及び第2の照明光源部43の狭帯域光源43a〜43cの発光に応じて撮像素子21による撮像及び撮像素子21からの撮像画像信号の出力を撮像フレーム毎に制御するものである。
撮像制御部62による撮像素子21の撮像制御、即ち、撮像フレーム制御については、後に詳述する。
【0044】
撮像素子21は、被観察領域からの戻り光を受光して撮像画像情報を取得するCCD(Charge Coupled Device)イメージセンサやCMOS(Complementary Metal-Oxide Semiconductor)イメージセンサ等のカラーイメージセンサからなり、撮像制御部62により各観察モードに応じて制御され、光源装置12からの照明光が照射された被検体の被観察領域の様子を対物レンズユニット39によって撮像素子21の受光面上に結像させてフレーム毎に撮像するものである。本実施形態においては、撮像素子21は、カラーCCDイメージセンサであり、その受光面には、例えば、図5(B)に示す分光透過率を有するR色、G色、B色のカラーフィルタ21R、21G、21Bが設けられ、R画素、G画素、B画素の3色の画素を1組として、複数組の画素がマトリクス状に配列されている。
【0045】
ここで、光源装置12の第1の照明光源部41の狭帯域光源41aからの青色レーザ光(励起光)と蛍光体57からの蛍光(励起発光光)とによる疑似白色光及び狭帯域光源41b、43a〜43cからの各レーザ光による狭帯域光N2〜N5からなる照明光は、光源制御部49によって各観察モードに応じて制御され、内視鏡11の先端部35から被検体の被観察領域に向けて照射される。
したがって、撮像素子21も、光源制御部49によって各観察モードに応じて制御される光源装置12からの照明光が照射された被観察領域を、撮像制御部62によって制御される各観察モードに応じたフレーム毎に撮像する。その結果、撮像素子21は、撮像制御部62から、スコープケーブル59を通じて伝送される、各観察モードに応じた撮像制御信号により制御され、所定のフレームレートで撮像画像の画像信号を出力する。
撮像素子21から出力される撮像画像の画像信号は、スコープケーブル59を通じて、アナログ処理回路(AFE)61に伝送され、種々のアナログ信号処理が施され、また、デジタル信号に変換され、コネクタ部25bを介して、プロセッサ13に入力される。
【0046】
AFE61は、撮像素子21で得た画像を、なるべく忠実に、DSP64等のデジタルバックエンドに伝えるために、アナログ・デジタル(A/D)変換の際に発生しうる様々なノイズを最小限に抑えつつ、デジタルに変換するものである。
AFE61は、例えば、図示しないが、相関二重サンプリング回路(CDS)、自動ゲイン制御回路(AGC)、及びアナログ/デジタル(A/D)変換器から構成される。CDSは、撮像素子(CCD)21からの撮像信号に対して相関二重サンプリング処理を施し、撮像素子21の駆動により生じたノイズを除去する。AGCは、CDSによりノイズが除去された撮像信号を増幅する。A/D変換器は、AGCで増幅された撮像信号を、所定のビット数のデジタルな撮像信号に変換してプロセッサ13に入力する。
プロセッサ13では、各観察モードに応じてデジタル画像信号に種々の処理が施され、被検体の被観察領域の血管画像情報等の生体情報を含む画像情報が生成され、内視鏡診断・観察画像として表示部15に表示される。
なお、プロセッサ13の詳細については、後述する。
【0047】
次に、内視鏡の先端部の構成について詳細に説明する。
図6は、内視鏡の先端部の概略的な構成を示す斜視図、図7は、図6に示す内視鏡の先端部の分解図である。
これらの図に示すように、内視鏡11の先端部35は、長手方向に沿って複数の穿設孔が形成されたステンレス鋼等からなる先端硬性部87に、投光ユニット71a〜71d等の各種部品が取り付けられて構成される。先端硬性部87は、図2に示した撮像素子21を含む撮像光学系が収容される穿設孔87aを有し、この穿設孔87aを中心とする両脇側に穿設孔87b1,87b2、及び87c1,87c2が形成されている。穿設孔87b1,87b2には投光ユニット71a,71cが挿入され、穿設孔87c1,87c2には投光ユニット71b,71dが挿入される。
【0048】
また、先端硬性部87の先端側には先端ゴムキャップ89が被せられ、また、先端硬性部87の外周には図示はしない外皮チューブが被せられる。先端ゴムキャップ89には先端硬性部87の各穿設孔87a,87b1,87b2,87c1,87c2,・・・に対応した穿設孔89a,89b,89c,・・・が形成されて、対物レンズユニット39による観察窓40や、投光ユニット71a〜71dの照射口37a,37bを開口させている。
ここで、図8に図6のA−A断面図を示す。投光ユニット71a,71bは、先端硬性部87の穿設孔87b1、87c1に挿入させた後、穿設孔87b1,87c1と連通する一対の横孔91(図6及び図7参照)から止めネジ(イモビス)93で締め付けることで、投光ユニット71a,71bが先端硬性部87に固定される。また、投光ユニット71C,71dも同様に止めネジ93で締め付けることで、先端硬性部87に固定される。
【0049】
上記の投光ユニット71a〜71dを備えた内視鏡の構成によれば、投光ユニット71a〜71dを先端硬性部87の穿設孔87b1,87b2,87c1,87c2に挿通された状態で止めネジ93によって着脱自在に固定するので、投光ユニット71a〜71dの交換が容易となり、内視鏡のメンテナンス性が向上する。つまり、内視鏡の長期使用により照明光強度の減衰や色調の変化等の症状が現れたときに、新しい投光ユニットへの取り換えが簡単に行える。
【0050】
次に、上記の投光ユニット71a〜71dによりレーザ光源LD1〜LD5からの各レーザ光を適宜組み合わせて出射させ、種々の照明光を生成する各照明パターンについて説明する。
図9は、図6に示す内視鏡11の先端部のB方向から見た正面図である。上述したように、投光ユニット71a,71cは照射口37aから照射し、投光ユニット71b,71dは照射口37bから照射するように、対物レンズユニット39の両脇側に各投光ユニット71a〜71dが配置される。そして、蛍光体(図4(A)参照)を備えた投光ユニット71a,71dの対は、照明窓となる保護ガラス75(図4参照)の位置同士を連結する線L1が、観察窓40となる対物レンズユニット39の領域内を横切るように配置される。また、光偏向・拡散部材58(図4(B)参照)を備えた投光ユニット71b,71cの対は、保護ガラス75(図4参照)の位置同士を連結する線L2が、対物レンズユニット39の領域内を横切るように配置される。
【0051】
対物レンズユニット39の領域内で、線L1とL2が交差点Pを有するように、各投光ユニット71a〜71dがスペース効率を高めた状態で配置されている。つまり、白色照明光を照射する投光ユニット71a,71dは、先端部35の対物レンズユニット39を挟んだ位置に配置され、対物レンズユニット39の両脇側から白色光を照射することで、照明むらの発生を防止している。
なお、図示例においては、内視鏡11の先端部35の、撮像素子21のための対物レンズユニット39を挟んだ位置に、蛍光体57を備える2つの投光ユニット71a及び71bを含む4つの投光ユニット71a〜71dを配置する4灯式であるが、本発明はこれに限定されず、1つの投光ユニットが蛍光体57を備えていれば、2つの投光ユニット71a及び71c、又は71b及び71d、好ましくは撮像素子21のための対物レンズユニット39を挟んだ位置に、2つの投光ユニット71a及び71d、又は71b及び71cを、内視鏡11の先端部35に配置する2灯式であっても良い。
【0052】
次に、図2及び図3を参照して、プロセッサ13について詳細に説明する。
これらの図に示すように、プロセッサ13は、内視鏡11から伝送される各観察モードのデジタル画像信号にデジタル信号処理するデジタル信号処理部(DSP(Digital Signal Processor))64と、各観察モードのデジタル信号処理済の画像データに対して各観察モードに応じた画像処理を行う画像処理部63と、画像処理済の画像データを応じた観察画像を表示部15に表示させるための表示制御や内視鏡11、光源装置12及びプロセッサ13内の各部を制御する制御部65と、各観察モードの撮像画像の画像データ信号を記憶する記憶部67とを有する。
DSP64は、コネクタ部25bを介して内視鏡11の撮像系のAFE61から伝送される、撮像素子21で撮像された、各観察モードの撮像画像のデジタル画像信号を受信して、受信したデジタル画像信号に対して、色分離、色補間、色補正、ホワイトバランス調整、ガンマ補正、輪郭強調等の各種の処理を行うことによって、デジタル信号処理済の各観察モードの撮像画像データを生成する。DSP64で生成された各観察モードの撮像画像の画像データは、画像処理部63に伝送され、また、必要に応じて、記憶部67に記憶される。
【0053】
画像処理部63は、図3に示すように、DSP64でデジタル信号処理された各観察モードの撮像画像の画像データに対して各観察モードに応じた画像処理を行うもので、通常観察モードにおける広帯域光(白色光)による撮像画像の画像処理を行う通常光画像処理部102と、特殊光観察モードにおける広帯域光及び狭帯域光による撮像画像の画像処理を行う特殊光画像処理部104とを有する。なお、画像処理部63で画像処理された各観察モードの撮像画像の画像データは、制御部65に伝送され、また、必要に応じて、記憶部67に記憶される。
通常光画像処理部102は、通常観察モードの場合に、DSP64から伝送された、又は記憶部67から読み出された撮像画像の画像データに対して、光源装置12の第1の照明光源部41の狭帯域光源41a及び蛍光体57からの白色光による通常観察画像に適した所定の画像処理を施し、通常光画像データを出力し、記憶部67に記憶させると共に、表示部15に白色光による通常観察画像を表示させる。
【0054】
特殊光画像処理部104は、狭帯域光を用いる特殊光観察モードの場合に、DSP64から伝送された、又は記憶部67から読み出された撮像画像の画像データに対して、狭帯域光による特殊光観察画像に適した所定の画像処理を施し、特殊光画像データを出力するもので、特殊光観察モードのスクリーニング診断モードにおける白色光及び第1の照明光源部41の狭帯域光源41bからの狭帯域光N2による撮像画像の画像処理を行う第1画像処理部106と、特殊光観察モードの精査診断モードにおける白色光及び第2の照明光源部43の狭帯域光源43a〜43cからの狭帯域光N3、N4及びN5による撮像画像の画像処理を行う第2画像処理部108と、を有する。
ここで、図示例の実施形態においては、特殊光画像処理部104は、画像処理として、被検体の被観察領域の血管画像情報である酸素飽和度を算出して酸素飽和度画像を生成するものであり、したがって、第1画像処理部106及び第2画像処理部108も、酸素飽和度画像の生成を行う。
【0055】
以下に、本発明の内視鏡装置における特殊光観察モードのスクリーニング診断モード及び精査診断モードにおける光源装置12の制御、並びにプロセッサの画像処理部の特殊光画像処理部の第1画像処理部及び第2画像処理部について説明する。
図10は、図3に示す画像処理部の特殊光画像処理部の第1画像処理部の一実施例の構成を示すブロック図である。図11は、スクリーニング診断モードにおける酸素飽和度の算出のプロセスを説明する説明図である。図12は、血管中のヘモグロビンの吸収係数の波長依存性を示すグラフである。図13は、撮像画像の画素の分光輝度比(S1/S3、S2/S3)と血液量および酸素飽和度との相関関係を表すグラフである。図14は、図3に示す内視鏡装置の画像処理部の特殊光画像処理部の第2画像処理部の一実施例の構成を示すブロック図である。図15は、図1に示す内視鏡装置の精査診断モードにおける酸素飽和度の算出のプロセスを説明する説明図である。図16は、撮像画像の画素の分光輝度比(S1/S3、S2/S3)と血管深さ及び酸素飽和度との相関関係を示すグラフである。
【0056】
第1画像処理部106は、図10に示すように、スクリーニング診断モードにおいて、第1の照明光源部41の狭帯域光源41a及び蛍光体57からの疑似白色光及び狭帯域光源41b及び蛍光体57による蛍光が混合された狭帯域光N2による撮像画像データに基づいて、被検体の血中ヘモグロビンの酸素飽和度の情報を算出し、算出した酸素飽和度の情報に基づいて、酸素飽和度の分布を疑似カラー表示するための酸素飽和度画像を出力するもので、分光推定部110と、輝度比算出部112と、相関関係記憶部114と、血液量−酸素飽和度算出部116と、酸素飽和度画像生成部118とを有する。
スクリーニング診断モードでは、図11及び以下の表1に示すように、系統1の第1の照明光源部41が用いられ、第1フレームにおいて光源制御部49によって点灯制御された狭帯域光源41a(LD445)及び蛍光体57の組み合わせからの疑似白色光による撮像画像データ(白色光RGB画像データ)が撮像制御部62によって制御される撮像素子21によって取得され、通常観察画像が生成され、第2フレームにおいて光源制御部49によって点灯制御された狭帯域光源41b(LD473)及び蛍光体57の組み合わせからの狭帯域光N2と蛍光との組み合わせによる撮像画像データ(RGB画像データ)が撮像制御部62によって制御される撮像素子21によって取得され、酸素飽和度画像が生成される。即ち、狭帯域光源41a及び41bは、フレーム毎に一方の点灯及び他方の消灯が繰り返される。
【0057】
【表1】

【0058】
第1フレームにおいて取得された白色光B画像データ、白色光G画像データ及び白色光R画像データは、上述のように図5(B)に示すカラーフィルタ(Bフィルタ21B、Gフィルタ21G及びRフィルタ21R)を持つ撮像素子21によって照射白色光の戻り光のB波長領域全体、G波長領域全体及びR波長領域全体から得られたものである。なお、第1フレームでは、取得された白色光BGR画像データに基づいて、通常光画像処理部102において白色光による通常観察画像の通常光画像データを生成しておき、記憶部67に記憶させておく。なお、第1フレームにおいて取得された白色光RGB画像データは記憶部67に記憶させておくのが良い。
一方、第2フレームにおいて取得されたB画像データ及びR画像データは、狭帯域光N2(473nm)が支配的であっても、蛍光体57から発光されたG〜R波長領域の蛍光を少ないが含むものであるので、狭帯域光N2(473nm)成分のみのスペクトル画像データ(以下、473成分画像データという)を示すものではない。なお、第2フレームにおいて取得されたRGB画像データは記憶部67に記憶させておくのが良い。
【0059】
このため、分光推定部110は、スクリーニング診断モードにおいて、第2フレームにおいて取得されたRGB画像データを記憶部67から読み出し、読み出されたRGB画像データから分光推定によって473成分画像データを求めるためのものである。即ち、分光推定部110は、図11に示すように、第2フレームにおいて、狭帯域光源41b(LD473)及び蛍光体57の組み合わせから射出された狭帯域光N2と蛍光との組み合わせから取得された撮像画像データ(RGB画像データ)から分光推定を行って、G画像データ中のG蛍光成分を算出し、算出されたG蛍光成分と所定光量の狭帯域光N2を励起光とした時の蛍光体57の蛍光特性とから、即ちG蛍光成分の割合を蛍光体57の蛍光特性に乗算して、算出されたG蛍光成分に対するB画像データ中のB蛍光成分を算出し、算出されたB蛍光成分をB画像データから減算して、473成分画像データを求めるものである。
ここで、RGB画像データから473成分画像データを求める分光推定方法としては、特に制限的ではなく、従来公知の分光推定方法を用いれば良く、例えば、特開2003−93336号公報に記載の分光画像を得る分光推定方法を挙げることができる。
【0060】
輝度比算出部112は、記憶部67から読み出された第1フレームの白色光G画像データ及び白色光R画像データと、第2フレームにおいて取得されたB画像データ及びR画像データから分光推定部110で算出された473成分画像データとから、血管が含まれる血管領域を特定する。そして、輝度比算出部112は、血管領域内の同じ位置の画素について、血中ヘモグロビンの酸素飽和度に応じて還元ヘモグロビンと酸化ヘモグロビンの吸光係数(吸光度)(図12参照)の大小関係が逆転する波長範囲の2つの照明光の反射光に対応する画像データ画素の輝度値をS1及びS2とし、吸光係数が同じになる波長範囲の1つの照明光の反射光に対応する画像データの画素の輝度値をS3として、第1及び第2輝度比S1/S3及びS2/S3を求める。ここでは、S1は、白色光R画像データの画素の輝度値を、S2は473成分画像データの画素の輝度値を、S3は白色光G画像データの画素の輝度値を表している。なお、血管領域の特定方法としては、例えば、血管部分の輝度値とそれ以外の輝度値の差から血管領域を求める方法を挙げることができる。
【0061】
相関関係記憶部114は、第1及び第2輝度比S1/S3及びS2/S3と、血液量および酸素飽和度との相関関係を記憶している。この相関関係は、血管が図12に示すヘモグロビンの吸光係数を有する場合の相関関係であり、これまでの診断等で蓄積された多数の画像データを分析することにより得られたものである。
ところで、図12に示すように、血中ヘモグロビンは、照射する光の波長によって吸光係数μaが変化する吸光特性を持っている。吸光係数μaは、ヘモグロビンの光の吸収の大きさである吸光度を表す。例えば、吸光係数μaは、ヘモグロビンに照射された光の減衰状況を表すI0exp(−μa×x)の式の係数である。ここで、I0は光源装置から被写体組織に照射される光の強度であり、x(cm)は被写体組織内の血管までの深さである。
【0062】
また、図12に示すように、酸素と結合していない還元ヘモグロビン80と、酸素と結合した酸化ヘモグロビン81とは、異なる吸光特性を持っており、同じ吸光度(吸光係数μa)を示す等吸収点(図12における各ヘモグロビン80と81との交点)を除いて、吸光度に差が生じる。吸光度に差があると、同じ血管に対して、同じ強度かつ同じ波長の光を照射しても、輝度値が変化する。また、同じ強度の光を照射しても、波長が異なれば吸光係数μaが変わるので、輝度値が変化する。
一般的に、図12の分布は撮像対象の部位によって非線形に変化するため、実際の生体組織の計測や光伝播シミュレーション等により予め求めておく必要がある。
【0063】
図13は、第1及び第2輝度比S1/S3及びS2/S3と、血液量および酸素飽和度との相関関係を表すグラフである。このグラフの横軸はlog(S1/S3)、縦軸はlog(S2/S3)であり、第1輝度比S1/S3は、白色光R画像データ/白色光G画像データに対応し、第2輝度比S2/S3は、473成分画像データ/白色光G画像データに対応する。このグラフに示すように、第1輝度比S1/S3の値は、血液量に依存して変化し、血液量が大きくなるほど大きくなる。また、第2輝度比S2/S3の値は、血液量および酸素飽和度の両方に依存して変化する。即ち、第2輝度比S2/S3の値は、血液量が大きくなるほど大きくなるとともに、酸素飽和度が低くなるほど大きくなる。
【0064】
ここで、輝度値S1、S2及びS3を用いた血液量及び酸素飽和度の算出について説明する。
一般に、被検体の粘膜組織内に光が入射すると、その一部は血管のところで吸収され、吸収されなかった光のさらに一部が反射光として戻ってくる。この時、血管の深さが深くなるほど、その上の組織からの散乱の影響を大きく受けることになる。
ところで、470〜700nmの波長範囲の光は、粘膜組織内での散乱係数が小さく、かつ波長依存性が小さいという性質がある。このため、この波長範囲の光を照明光として用いることによって、血管の深さの影響を低減しつつ、血液量および酸素飽和度の情報を含む血液情報を得ることができる。従って、内視鏡装置10では、血中ヘモグロビンの酸素飽和度に応じて吸光係数が変化する2つ以上の波長範囲の反射光および変化しない1つ以上の波長範囲の反射光を含む、460〜700nmの波長範囲の異なる3つ以上の反射光に対応する画像信号を用いて、血中ヘモグロビンの酸素飽和度を算出する。
【0065】
ここで、図12に示す血中ヘモグロビンの吸光係数の波長依存性から、以下の3つのことが言える。
・波長470nm近辺(例えば、中心波長470nm±10nmのBの波長範囲)では酸素飽和度の変化に応じて吸光係数が大きく変化し、酸化ヘモグロビン81の吸光係数の方が還元ヘモグロビン80の吸光係数より大きい。
・540〜580nmのGの波長範囲で平均すると、酸素飽和度の影響を受けにくい。即ち、酸化ヘモグロビン81の吸光係数と還元ヘモグロビン80の吸光係数との差は小さいとみなせる。
・590〜700nmのRの波長範囲では、酸素飽和度によって一見吸光係数が大きく変化するように見え、還元ヘモグロビン80の吸光係数の方が酸化ヘモグロビン81の吸光係数より大きい。しかしながら、この範囲では、吸光係数の値自体が非常に小さいので、結果的に酸素飽和度の影響を受けにくいといえる。
【0066】
また、粘膜の反射スペクトルから以下の2つの性質がある。
・Rの波長範囲ではヘモグロビンの影響がほとんどないと見なせるが、Gの波長範囲では吸収が生じるので、血液量(血管の太さあるいは血管の密度に対応)が大きいほど、Gの波長範囲での反射率とRの波長範囲での反射率との差が大きくなる。
・波長470nm近辺の反射率とGの波長範囲での反射率との差は、酸素飽和度が低いほど大きくなり、同時に、血液量が大きいほど大きくなる。
即ち、473成分画像データの画素の輝度値と白色光G画像データの画素の輝度値との間の第2輝度比S2/S3は、その値が酸素飽和度及び血液量の両方に依存して変化し、白色光R画像データの画素の輝度値と白色光G画像データの画素の輝度値との間の第1輝度比S1/S3は、その値が主に血液量だけに依存して変化する。従って、この性質を利用することによって、波長470nm近辺、GおよびRの波長範囲を含む3波長範囲の分光画像から、酸素飽和度と血液量とを分離してそれぞれの値を正確に算出することができる。これに基づいて作成したものが、第1及び第2輝度比S1/S3及びS2/S3と、血液量および酸素飽和度との相関関係を表す前述の図13のグラフである。
【0067】
血液量−酸素飽和度算出部116は、相関関係記憶部114に記憶された相関関係に基づき、輝度比算出部112で算出された第1及び第2輝度比S1/S3およびS2/S3に対応する血液量および酸素飽和度を算出する。
酸素飽和度画像生成部118は、酸素飽和度の大小に応じてカラー情報が割り当てられたカラーテーブル(図示せず)を備えている。カラーテーブルには、例えば、低酸素飽和度であるときにはシアン、中酸素飽和度であるときにはマゼンダ、高酸素飽和度であるときにはイエローというように、酸素飽和度の程度に応じて、明瞭に区別することができる色が割り当てられている。酸素飽和度画像生成部118は、このようなカラーテーブルを用い、血液量−酸素飽和度算出部116で算出された酸素飽和度に対応するカラー情報を特定する。なお、カラーテーブルは、入力部17から入力される指示によって切り替えが可能であり、例えば、胃、十二指腸、小腸等のように、観察する部位に合ったものが選択される。
そして、酸素飽和度画像生成部118は、血管領域内の全ての画素についてのカラー情報を特定すると、第1フレームにおいて通常光画像処理部102において生成され、記憶部67に記憶されている白色光による通常観察画像の通常光画像データを読み出し、読み出された通常光画像データに対してカラー情報を反映、重畳させる、即ち、通常観察画像に対してカラー情報画像を合成することにより、血中ヘモグロビンの酸素飽和度が反映(疑似カラー表示)された酸素飽和度画像データを生成する。
【0068】
第1画像処理部106で生成された酸素飽和度画像データは、制御部65に送られ、制御部65で各種情報と共に、内視鏡観察画像にされて、スクリーニング診断画像として表示部15に表示され、必要に応じて、メモリやストレージ装置からなる記憶部67に記憶される。
このように、スクリーニング診断モードにおいては、第1フレームで生成された白色光による通常観察画像に第2フレームにおいて生成された酸素飽和度に対応するカラー情報を重畳して表示部15に表示することができるので、即ち、2フレームで血管画像情報(生体情報)取得して表示するので、表示された血管画像情報を含む画像は、高フレームレートで得られた滑らかな画像であり、スクリーニング診断に適した画像である。
【0069】
一方、第2画像処理部108は、図14に示すように、精査診断モードにおいて、第1の照明光源部41の狭帯域光源41a及び蛍光体57からの疑似白色光、及び第2の照明光源部43の狭帯域光源43a〜43cからの狭帯域光N3〜N5による撮像画像データに基づいて、被検体の血中ヘモグロビンの酸素飽和度の情報を算出し、算出した酸素飽和度の情報に基づいて、酸素飽和度の分布を疑似カラー表示するための酸素飽和度画像を出力するもので、輝度比算出部120と、相関関係記憶部122と、血管深さ−酸素飽和度算出部124と、酸素飽和度画像生成部126と、血管深さ画像生成部128と、を有する。
【0070】
精査診断モードでは、図15及び上記の表1に示すように、系統1の第1の照明光源部41の狭帯域光源41aと系統2の第2の照明光源部43の両方が用いられ、第1フレームにおいて狭帯域光源41a(LD445)及び蛍光体57の組み合わせからの疑似白色光による撮像画像データ(白色光RGB画像データ)が取得され、通常観察画像が生成され、第2フレームにおいて狭帯域光源43a(LD445)からの狭帯域光N3(445nm)成分のみのスペクトル画像データ(以下、445成分画像データという)が取得され、第3フレームにおいて狭帯域光源43b(LD445)からの狭帯域光N4(473nm)成分のみのスペクトル画像データである473成分画像データが取得され、第4フレームにおいて狭帯域光源43c(LD405)からの狭帯域光N3(405nm)成分のみのスペクトル画像データ(以下、405成分画像データという)が取得され、酸素飽和度画像が生成される。
光源制御部49は、狭帯域光源41a及び43a〜43cをそれぞれ第1〜第4フレームにのみ点灯するように点灯制御し、撮像制御部62は、撮像素子21を各フレーム毎に駆動し、それぞれの画像データを取得するように撮像フレーム制御する。
【0071】
精査診断モードの第1フレームにおいては、スクリーニング診断モードの第1フレームと同様に、取得された白色光BGR画像データに基づいて、通常光画像処理部102において白色光による通常観察画像の通常光画像データを生成しておき、記憶部67に記憶させておく。
一方、第2フレームにおいては、スクリーニング診断モードと異なり、445nmの狭帯域光N3のみが被検体に照射されるので、図5(B)に示すカラーフィルタを持つ撮像素子21においても、445成分画像データを取得することができる。同様に、第3フレームにおいては、473nmの狭帯域光N4のみが被検体に照射されるので、撮像素子21において473成分画像データを取得することができ、第4フレームにおいては、405nmの狭帯域光N5のみが被検体に照射されるので、撮像素子21において405成分画像データを取得することができる。なお、第2〜4フレームにおいて取得された445成分画像データ、473成分画像データ及び405成分画像データは記憶部67に記憶させておくのが良い。
【0072】
輝度比算出部120は、第2〜4フレームにおいて取得された445成分画像データ、473成分画像データ及び405成分画像データとから、血管が含まれる血管領域を特定する。そして、輝度比算出部120は、血管領域内の同じ位置の画素について、血中ヘモグロビンの酸素飽和度に応じて還元ヘモグロビンと酸化ヘモグロビンの吸光係数(吸光度)の大小関係が逆転する波長範囲の2つの狭帯域光の反射光に対応する画像データ画素の輝度値をS1及びS2とし、吸光係数が同じになる波長範囲の1つの狭帯域光の反射光に対応する画像データの画素の輝度値をS3として、第1及び第2輝度比S1/S3及びS2/S3を求める。ここでは、S1は、445成分画像データの画素の輝度値を、S2は473成分画像データの画素の輝度値を、S3は405成分画像データの画素の輝度値を表している。
【0073】
図12に示すようなヘモグロビンの吸光特性を鑑みると、酸素飽和度によって吸光度に違いが出る波長が445nmと405nmにあること、及び血管深さ情報抽出のためには深達度の短い短波長領域が必要となることから、第3〜第5狭帯域光N3〜N5には、中心波長が450nm以下の波長領域を持つ狭帯域光を少なくとも1つ含めることが好ましい。このような狭帯域光は、本実施形態では第3及び第5狭帯域光に相当する。また、酸素飽和度が同じでも、波長が異なれば吸収係数の値も異なり、粘膜中の深達度も異なっている。したがって、波長によって深達度が異なる光の特性を利用することで、輝度比と血管深さの相関関係を得ることができる。
【0074】
相関関係記憶部122は、第1及び第2輝度比S1/S3及びS2/S3と、血管深さ及び酸素飽和度との相関関係を記憶している。この相関関係も、血管が図12に示すヘモグロビンの吸光係数を有する場合の相関関係であり、これまでの診断等で蓄積された多数の画像データを分析することにより得られたものである。
相関関係記憶部122は、図16に示すように、第1及び第2輝度比S1/S3及びS2/S3を表す輝度座標系82の座標と、酸素飽和度及び血管深さを表す血管情報座標系83の座標との対応付けによって、相関関係を記憶している。輝度座標系82はXY座標系であり、X軸は第1輝度比S1/S3を、Y軸は第2輝度比S2/S3を表している。血管情報座標系83は輝度座標系82上に設けられたUV座標系であり、U軸は血管深さを、V軸は酸素飽和度を表している。U軸は、血管深さが輝度座標系82に対して正の相関関係があることから、正の傾きを有している。このU軸に関して、右斜め上に行くほど血管は浅いことを、左斜め下に行くほど血管が深いことを示している。一方、V軸は、酸素飽和度が輝度座標系82に対して負の相関関係を有することから、負の傾きを有している。このV軸に関して、左斜め上に行くほど酸素飽和度が低いことを、右斜め下に行くほど酸素飽和度が高いことを示している。
【0075】
また、血管情報座標系83においては、U軸とV軸とは、交点Pで直交している。これは、第2フレームの第3狭帯域光N3の照射時と第3フレームの第4狭帯域光N4の照射時とで吸光の大小関係が逆転しているためである。即ち、図12に示すように、波長が440±10nmである第3狭帯域光N3を照射した場合には、還元ヘモグロビン80の吸光係数は、酸素飽和度が高い酸化ヘモグロビン81の吸光係数よりも大きくなるのに対して、波長が470±10nmである第4狭帯域光N4を照射した場合には、酸化ヘモグロビン81の吸光係数のほうが還元ヘモグロビン80の吸光係数よりも大きくなっているため、吸光の大小関係が逆転している。
なお、第3〜第5狭帯域光N3〜N5に代えて、吸光の大小関係が逆転しない狭帯域光を照射したときには、U軸とV軸とは直交しなくなる。また、波長が400±10nmである第5狭帯域光N5を照射したときには、酸化ヘモグロビンと還元ヘモグロビンの吸光係数はほぼ等しくなっている。
【0076】
血管深さ−酸素飽和度算出部124は、相関関係記憶部122の相関関係に基づき、輝度比算出部120で算出された第1及び第2輝度比S1/S3、S2/S3に対応する酸素飽和度と血管深さを特定する。ここで、血管深さ−酸素飽和度算出部124は、輝度比算出部120で算出された、血管領域内の所定画素についての第1及び第2輝度比S1/S3及びS2/S3から、輝度座標系82において対応する座標点(X、Y)を特定し、特定された座標点(X、Y)を血管情報座標系83上の座標点としたUV座標上の値を求め、座標点(U、V)を特定する。これにより、血管領域内の所定位置の画素について、血管深さ情報U及び酸素飽和度情報Vを求めることができる。
【0077】
酸素飽和度画像生成部126は、第1画像処理部106の酸素飽和度画像生成部118と同様に、酸素飽和度の大小に応じてカラー情報が割り当てられたカラーテーブル(図示せず)を備えている。酸素飽和度画像生成部126は、カラーテーブルから血管深さ−酸素飽和度算出部124で算出された酸素飽和度情報Vに対応するカラー情報を特定する。
そして、酸素飽和度画像生成部126は、血管領域内の全ての画素についてのカラー情報を特定すると、酸素飽和度画像生成部118と同様にして、血中ヘモグロビンの酸素飽和度が反映(疑似カラー表示)された酸素飽和度画像データを生成する。
【0078】
血管深さ画像生成部128は、血管深さの程度に応じてカラー情報が割り当てられたカラーテーブル(図示せず)を備えている。カラーテーブルには、例えば、血管深さが表層であるときには青、中層であるときには緑、深層であるときには赤というように、血管深さの程度に応じて、明瞭に区別することができる色が割り当てられている。血管深さ画像生成部128は、カラーテーブルから、血管深さ−酸素飽和度算出部124で算出された血管深さ情報Uに対応するカラー情報を特定する。
血管深さ画像生成部128は、血管領域内の全ての画素についてカラー情報が特定されると、酸素飽和度画像生成部118と同様に、記憶部67に記憶されている通常観察画像の通常光画像データを読み出し、読み出された通常光画像データに対してカラー情報を反映、重畳させる、即ち、通常観察画像に対してカラー情報画像を合成することにより、血管深さの情報が反映された血管深さ画像データを生成する。生成された血管深さ画像データは再度記憶部67に記憶される。なお、カラー情報は、通常光画像データにではなく、第3〜第5狭帯域光の成分画像データのいずれか、あるいはこれらを合成した合成画像に対して反映させてもよい。
なお、血管深さ画像を必要としない場合には、血管深さ画像生成部128は設けなくても良い。
【0079】
第2画像処理部108で生成された酸素飽和度画像データ及び血管深さ画像データは、制御部65に送られ、制御部65で各種情報と共に、内視鏡観察のための酸素飽和度画像及び血管深さ画像にされ、それぞれ入力部17の画像切替SW17aによって切り替えられ、酸素飽和度画像及び血管深さ画像がそれぞれ精査診断画像として表示部15に表示され、必要に応じて、記憶部67に記憶される。
このように、精査診断モードにおいては、第2〜第4フレームで酸素飽和度や血管深さの算出に最も適した3種の狭帯域光を用いて各狭帯域光成分の画像データを取得して酸素飽和度や血管深さの算出を行っているので、フレームレートは低くなるが、正確かつ高精度に酸素飽和度や血管深さを算出することができるので、表示された血管画像情報を含む画像は、高精度で正確な酸素飽和度画像や血管深さ画像であり、病変部等の詳細かつ正確な診断を行うことができる精査診断に適した画像である。
【0080】
制御部65は、各診断モードにおいて画像処理済の画像データを応じた観察画像を表示部15に表示させるための表示制御部65aと、内視鏡11、光源装置12及びプロセッサ13内の各部を制御するコントローラ65bとを有する。
表示制御回路65aは、記憶部67から1又は複数の画像を読み出し、読み出した画像を表示部15に表示するためのものである。画像の表示形態としては様々なパターンが考えられる。例えば、表示部15の一方の側に通常画像を表示させ、他方の側に、酸素飽和度画像を表示させるようにしても良いし、血管深さ画像や、血液量を表す画像を表示させるようにしても良い。また、酸素飽和度画像、血管深さ画像、及び血液量を表す画像の中から、入力部17の画像切替SW17a(図3参照)により選択された血管深さ画像、酸素飽和度画像又は血管深さ画像のいずれか、若しくは、2以上を表示させるようにしても良い。ここで、酸素飽和度画像では、例えば、低酸素飽和度を示す血管画像はシアンで、中酸素飽和度を示す血管画像はマゼンダで、高酸素飽和度を示す血管画像はイエローで表すことができる。一方、血管深さ画像では、例えば、表層血管を示す血管画像は青色で、中層血管を示す血管画像は緑色で、深層血管を示す血管画像は赤色で表すことができる。
なお、酸素飽和度、血管深さ及び血液量等を文字情報等の線画像として表示部15に表示しても良い。
【0081】
コントローラ65bは、上記表1に示すように、各診断モードに応じて各フレーム毎に光源装置12の光源制御部49が第1の光源部41の狭帯域光源41a及び41b並びに第2の光源部43の狭帯域光源43a〜43cの点灯制御するように、光源制御部49に各光源の点灯制御信号を伝送して、光源制御部49を制御する。また、コントローラ65bは、内視鏡11の撮影制御部62が、各診断モードに応じた各フレーム毎の光源制御部49による各光源の点灯に応じて撮像素子21による撮像を行わせるように、撮影制御部62に撮影指示信号を伝送して、撮影制御部62を制御する。
記憶部67は、メモリやストレージ装置からなり、各観察モードの撮像画像の画像データや、画像処理部63で生成される酸素飽和度画像、血管深さ画像、及び血液量を表す画像の画像データや、その他、内視鏡装置10、特に、内視鏡11、プロセッサ13及び光源装置12等の駆動、操作、制御等において必要となる各種データやプログラムを記憶するものである。
【0082】
次に、本実施形態の内視鏡診断装置の作用を説明する。
まず、通常観察モードの場合の作用を説明する。
観察モード等の指示が、内視鏡装置10の入力部17からプロセッサ13の制御部65に入力され、通常観察モードに設定される。
通常観察モードの場合、プロセッサ13の制御部65により光源装置12の光源制御部49の動作が制御され、系統1の第1の光源部41の狭帯域光源41a(LD445)がオン、残りの狭帯域光源41b及び43a〜43cがオフとされ、LD445から通常観察用の励起光Eが発せられる。
【0083】
内視鏡11では、光源装置12から発せられる通常観察用の励起光Eが、それぞれ光ファイバ55a、55dによってスコープ先端部35の蛍光体57へ導光される。これにより、蛍光体57から疑似白色光が発せられ、それぞれ、照明窓37a、37bから被検体の被観察領域に照射される。そして、被観察領域からの反射光が対物レンズユニット39により集光され、撮像素子21により光電変換されて白色光画像の撮像信号(アナログ信号)が出力される。
白色光画像の撮像信号(アナログ信号)は、AFE61により画像信号(デジタル信号)に変換され、画像処理部63に入力され、DSP64によりデジタル信号処理され、観察モードに従って、通常光画像処理部72により通常観察画像に適した所定の画像処理が施され、通常光画像データが出力される。そして、制御部65により、通常光画像データに基づいて通常観察画像が表示部15上に表示される。
【0084】
次に、特殊光観察モードの場合の動作を説明する。
まず、観察モード等の指示が、内視鏡装置10の入力部17からプロセッサ13の制御部65に入力され、特殊光観察モードのスクリーニング診断モードに設定される。又は、通常光画像モードから特殊光観察モードのスクリーニング診断モードに切り替えられる。特殊光観察モードになると、入力部17の操作によって、胃、十二指腸、小腸など現時点での観察部位の情報が指定される。これにより、酸素飽和度画像生成部118、126及び血管深さ画像生成部128において、その観察部位に応じたカラーテーブルが選択される。
【0085】
スクリーニング診断モードでは、2フレームを1組として、1フレーム毎に照射パターンの異なる照明光が照射される。
まず、第1フレームにおいて、通常観察モードと同様に、系統1の第1の光源部41の狭帯域光源41a(LD445)がオン、残りの狭帯域光源41b及び43a〜43cがオフとされ、LD445から通常観察用の励起光Eが発せられ、撮像素子21により撮像されて撮像画像の画像信号が取得され、AFE61でデジタル化され、画像処理部63のDSP64によりデジタル信号処理されて白色光RGB画像データとされ、記憶部67に記憶されると共に、通常光画像処理部102により通常観察画像に適した所定の画像処理が施され、通常光画像データが出力され、記憶部67に記憶される。
【0086】
続いて、第2フレームにおいて、系統1のLD445がオフとされ、系統1の第1の光源部41の狭帯域光源41b(LD473)がオン、残りの狭帯域光源43a〜43cもオフのまま維持され、LD473から狭帯域光N2が発せられる。
内視鏡11では、光源装置12からの狭帯域光N2が、それぞれ光ファイバ55a、55dによってスコープ先端部35の蛍光体57へ導光される。これにより、蛍光体57を透過したほとんどの狭帯域光N2と、蛍光体57で発生した少しの蛍光との合成光が、それぞれ照明窓37a、37bから被検体の被観察領域に照射される。
続いて、第1フレームと同様に、撮像素子21により撮像され、撮像画像の画像信号が取得され、AFE61でデジタル化され、画像処理部63のDSP64によりデジタル信号処理されてRGB画像データとされ、必要に応じて記憶部67に記憶されると共に、画像処理部63の特殊光画像処理部104の第1画像処理部106に送られる。
【0087】
次に、第1画像処理部106の分光推定部110で第2フレームで得られたRGB画像データを用いて分光推定され、473成分画像データが生成され、輝度比算出部112に送られる。
次に、輝度比算出部112では、記憶部67に記憶された白色光G画像データ及び白色光R画像データが読み出され、送られた473成分画像データから、血管を含む血管領域を特定する。続いて、輝度比算出部112は、血管領域内の同じ位置の画素について、白色光R画像データの画素の輝度値をS1、473成分画像データの画素の輝度値をS2、白色光G画像データの画素の輝度値をS3として、第1及び第2輝度比S1/S3及びS2/S3を算出する。
【0088】
こうして得られた第1及び第2輝度比S1/S3及びS2/S3は、血液量−酸素飽和度算出部116に送られる。
続いて、血液量−酸素飽和度算出部116では、相関関係記憶部114に記憶されている、図13に示す分光輝度比S1/S3及びS2/S3と、血液量および酸素飽和度との間の相関関係に基づいて、第1及び第2輝度比S1/S3及びS2/S3に対応する、血液量および酸素飽和度の情報を算出する。こうして算出された血液量および酸素飽和度の情報は、酸素飽和度画像生成部118に送られる。
【0089】
次に、酸素飽和度画像生成部118は、血液量および酸素飽和度が求まると、選択されたカラーテーブルに基づき、酸素飽和度に対応するカラー情報を特定する。そして、血管領域内の全ての画素について、上述した手順で、血液量および酸素飽和度を求め、酸素飽和度に対応するカラー情報を特定する。そして、血管領域内の全ての画素について酸素飽和度とそれに対応するカラー情報が得られると、酸素飽和度画像生成部118は、記憶部67から参照画像となる通常観察画像の通常光画像データを読み出し、この通常観察画像に対してカラー情報を反映させることにより、酸素飽和度画像データを生成する。生成された酸素飽和度画像データは、記憶部67に記憶される。
【0090】
そして、制御部65は、記憶部67から酸素飽和度画像データを読み出し、読み出した酸素飽和度画像データに基づいて、酸素飽和度画像を表示部15に疑似カラー表示する。
上記のようにして、内視鏡装置10では、血管の深さの影響を低減しつつ、血液量を考慮して酸素飽和度の情報を正確に算出し、通常観察画像に酸素飽和度の分布を疑似カラー画像として重畳した滑らかなスクリーニング診断画像を内視鏡11の動きに対して追随可能な高フレームレートで表示することができる。
【0091】
次に、特殊光観察モードのスクリーニング診断モードから精査診断モードに切り替えられる。
精査診断モードでは、4フレームを1組として、1フレーム毎に照射パターンの異なる照明光が照射される。
まず、第1フレームにおいて、スクリーニング診断モードと同様に、系統1の第1の光源部41の狭帯域光源41a(LD445)がオン、残りの狭帯域光源41b及び43a〜43cがオフとされ、LD445から通常観察用の励起光Eが発せられ、撮像素子21により撮像されて撮像画像の画像信号が取得され、AFE61でデジタル化され、画像処理部63のDSP64によりデジタル信号処理されて白色光RGB画像データとされ、記憶部67に記憶されると共に、通常光画像処理部102により通常観察画像に適した所定の画像処理が施され、通常光画像データが出力され、記憶部67に記憶される。
【0092】
続いて、第2フレームにおいて、系統1のLD445がオフとされ、系統2の第2の光源部43の狭帯域光源43a(LD445)がオン、残りの狭帯域光源41b及び43b〜43cもオフのまま維持され、系統2のLD445から狭帯域光N3が発せられる。
内視鏡11では、光源装置12からの狭帯域光N3が、それぞれ光ファイバ55b、55cによってスコープ先端部35の光偏向・拡散部材58へ導光される。これにより、光偏向・拡散部材58で光量が均一化された狭帯域光N3が、それぞれ照明窓37a、37bから被検体の被観察領域に照射される。
続いて、第1フレームと同様に、撮像素子21により撮像され、撮像画像の画像信号が取得され、AFE61でデジタル化され、画像処理部63のDSP64によりデジタル信号処理されて、445成分画像データとされ、記憶部67に記憶される。
【0093】
続いて、第3フレームにおいて、系統2のLD445がオフとされ、系統2の狭帯域光源43b(LD473)がオン、残りの狭帯域光源41a〜41b及び43cもオフのまま維持され、系統2のLD473から狭帯域光N4が発せられる。
内視鏡11では、光源装置12からの狭帯域光N4が、第2フレームと同様に、それぞれ光ファイバ55b、55cによってスコープ先端部35へ導光され、それぞれ照明窓37a、37bから被検体の被観察領域に照射される。
続いて、第2フレームと同様に、撮像素子21により撮像され、撮像画像の画像信号が取得され、AFE61でデジタル化され、画像処理部63のDSP64によりデジタル信号処理されて、473成分画像データとされ、記憶部67に記憶される。
【0094】
続いて、第4フレームにおいて、系統2のLD473がオフとされ、系統2の狭帯域光源43c(LD405)がオン、残りの狭帯域光源41a〜41b及び43aもオフのまま維持され、系統2のLD405から狭帯域光N5が発せられる。
内視鏡11では、光源装置12からの狭帯域光N5が、第3フレームと同様に、それぞれ光ファイバ55b、55cによってスコープ先端部35へ導光され、それぞれ照明窓37a、37bから被検体の被観察領域に照射される。
続いて、第3フレームと同様に、撮像素子21により撮像され、撮像画像の画像信号が取得され、AFE61でデジタル化され、画像処理部63のDSP64によりデジタル信号処理されて、405成分画像データとされ、記憶部67に記憶されると共に、画像処理部63の特殊光画像処理部104の第2画像処理部108に送られる。
【0095】
次に、第2画像処理部106の輝度比算出部120では、記憶部67に記憶された445成分画像データ、473成分画像データ及び405成分画像データを読み出し、これらの成分画像データから血管を含む血管領域を特定する。続いて、輝度比算出部120は、血管領域内の同じ位置の画素について、445成分画像データの画素の輝度値をS1、473成分画像データの画素の輝度値をS2、405成分画像データの画素の輝度値をS3として、第1及び第2輝度比S1/S3及びS2/S3を算出する。
【0096】
こうして得られた第1及び第2輝度比S1/S3及びS2/S3は、血管深さ−酸素飽和度算出部124に送られる。
血管深さ−酸素飽和度算出部124では、相関関係記憶部122に記憶されている、図16に示す分光輝度比S1/S3及びS2/S3と、酸素飽和度及び血管深さとの間の相関関係に基づいて、第1及び第2輝度比S1/S3及びS2/S3に対応する酸素飽和度及び血管深さの情報を算出する。こうして算出された酸素飽和度及び血管深さの情報は、酸素飽和度画像生成部126及び/又は血管深さ画像生成部128に送られる。
【0097】
酸素飽和度画像生成部126は、酸素飽和度画像生成部118と同様に、酸素飽和度が求まると、選択されたカラーテーブルに基づき、酸素飽和度に対応するカラー情報を特定する。そして、血管領域内の全ての画素について、上述した手順で酸素飽和度を求め、酸素飽和度に対応するカラー情報を特定する。そして、血管領域内の全ての画素について酸素飽和度とそれに対応するカラー情報が得られると、酸素飽和度画像生成部126は、記憶部67から参照画像となる通常観察画像の通常光画像データを読み出し、この通常観察画像に対してカラー情報を反映させることにより、酸素飽和度画像データを生成する。生成された酸素飽和度画像データは、記憶部67に記憶される。
【0098】
血管深さ画像生成部128は、血管深さ情報が求まると、選択されたカラーテーブルに基づき、血管深さ情報に対応するカラー情報を特定する。そして、血管領域内の全ての画素について、上述の手順で血管深さを求め、血管深さに対応するカラー情報を特定する。
血管領域内の全ての画素についてカラー情報が特定されると、血管深さ画像生成部128は、酸素飽和度画像生成部118と同様に、記憶部67に記憶されている通常観察画像の通常光画像データを読み出し、読み出された通常光画像データに対してカラー情報を反映させることにより、血管深さ情報が反映された血管深さ画像データを生成する。生成された血管深さ画像データは再度記憶部67に記憶される。
【0099】
そして、制御部65は、記憶部67から酸素飽和度画像データ及び/又は血管深さ画像データを読み出し、読み出した酸素飽和度画像データ及び/又は血管深さ画像データに基づいて、酸素飽和度画像及び/又は血管深さ画像を表示部15に疑似カラー表示する。
上記のようにして、内視鏡装置10では、血管の深さを考慮して酸素飽和度の情報を正確に算出し、通常観察画像に酸素飽和度の分布を疑似カラー画像として重畳した高精度かつ正確な精査診断画像を表示することができる。
【0100】
上述した実施例においては、第1画像処理部106において、分光輝度比(S1/S3及びS2/S3)と血液量及び酸素飽和度との相関関係から酸素飽和度を算出し、第2画像処理部108において、分光輝度比(S1/S3及びS2/S3)と酸素飽和度及び血管深さとの相関関係から酸素飽和度及び血管深さを算出しているが、本発明はこれに限定されず、図17(A)に示すように、第1画像処理部106aにおいて、分光輝度比(S1/S3及びS2/S3)と酸素飽和度及び血管深さとの相関関係から酸素飽和度及び血管深さを算出し、図17(B)に示すように、第2画像処理部108aにおいて、分光輝度比(S1/S3及びS2/S3)と血液量及び酸素飽和度との相関関係から酸素飽和度を算出しても良いし、第1画像処理部106及び第2画像処理部108aにおいて、分光輝度比(S1/S3及びS2/S3)と血液量及び酸素飽和度との相関関係から酸素飽和度を算出しても良いし、第1画像処理部106a及び第2画像処理部108において、分光輝度比(S1/S3及びS2/S3)と酸素飽和度及び血管深さとの相関関係から酸素飽和度及び血管深さを算出しても良い。
【0101】
第1画像処理部106aは、図17(A)に示すように、分光推定部110と、輝度比算出部112と、相関関係記憶部122aと、血管深さ−酸素飽和度算出部124aと、酸素飽和度画像生成部126aとを有する。なお、第1画像処理部106aは、血管深さ画像生成部を有していても良い。
分光推定部110及び輝度比算出部112は、第1画像処理部106で用いられるものと全く同様の構成である。
相関関係記憶部122a、血管深さ−酸素飽和度算出部124a及び酸素飽和度画像生成部126aは、それぞれ第2画像処理部108の相関関係記憶部122、血管深さ−酸素飽和度算出部124及び酸素飽和度画像生成部126と、輝度値S1、S2及びS3の値が、それぞれ445成分画像データの画素の輝度値、473成分画像データの画素の輝度値及び405成分画像データの画素の輝度値であるのに対し、白色光R画像データの画素の輝度値、473成分画像データの画素の輝度値及び白色光G画像データの画素の輝度値である点で異なる以外は、同様の構成を有するものであるので、その説明は省略する。
【0102】
第2画像処理部108aは、図17(B)に示すように、輝度比算出部120と、相関関係記憶部114aと、血液量−酸素飽和度算出部116aと、酸素飽和度画像生成部118aとを有する。
輝度比算出部120は、第1画像処理部106で用いられるものと全く同様の構成である。
相関関係記憶部114a、血液量−酸素飽和度算出部116a及び酸素飽和度画像生成部118aは、それぞれ第1画像処理部106の相関関係記憶部114、血液量−酸素飽和度算出部116及び酸素飽和度画像生成部118と、輝度値S1、S2及びS3の値が、それぞれ白色光R画像データの画素の輝度値、473成分画像データの画素の輝度値及び白色光G画像データの画素の輝度値であるのに対し、445成分画像データの画素の輝度値、473成分画像データの画素の輝度値及び405成分画像データの画素の輝度値である点で異なる以外は、同様の構成を有するものであるので、その説明は省略する。
【0103】
以上、本発明に係る内視鏡装置について種々の実施形態及び実施例を挙げて詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良又は変更をしてもよいのはもちろんである。
【符号の説明】
【0104】
10 内視鏡装置
11 内視鏡
12 光源装置
13 プロセッサ
15 表示部
17 入力部
19 挿入部
21 撮像素子
23 操作部
24 ユニバーサルコード
25a、25b コネクタ部
31 軟性部
33 湾曲部
35 先端部
37a、37b 照射口
39 対物レンズユニット
40 観察窓
41、43 照明光源部
41a、41b、43a、43b、43c 狭帯域光源
49 光源制御部
51a、51b コンバイナ
53a、53b カプラ
55a〜55d 光ファイバ
57 蛍光体
58 光偏向・拡散部材
61 アナログ処理回路(AFE)
62 撮像制御部
63 画像処理部
64 デジタル信号処理回部(DSP)
65 制御部
65a 表示制御回路
65b コントローラ
67 記憶部
71a、71b 71c、71d 投光ユニット
102 通常光画像処理部
104 特殊光画像処理部
106、106a 第1画像処理部
108,108a 第2画像処理部
110 分光推定部
112、120 輝度比算出部
114、114a、122、122a 相関関係記憶部
116、116a 血液量−酸素飽和度算出部
118、118a、126、126a 酸素飽和度画像生成部
124、124a 血管深さ−酸素飽和度算出部
128 血管深さ画像生成部
E 励起光
N2、N3、N4、N5 狭帯域光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも広帯域光を含む第1の照明光を出射する第1の照明手段と、
狭帯域光のみを複数含む第2の照明光を出射する第2の照明手段と、
前記第1の照明手段からの前記第1の照明光及び前記第2の照明手段からの前記第2の照明光の発光波長を切り替える発光波長切替手段と、
該発光波長切替手段によって切り替えられた前記発光波長の前記第1の照明光又は前記第2の照明光が照射された被写体からの戻り光を受光して撮像フレーム毎に撮像し、撮像信号を出力する撮像手段と、
該撮像手段で撮像された前記撮像信号から前記被写体となる生体の形態及び/又は機能に関する生体情報を取得する生体情報取得手段と、
該生体情報取得手段によって取得される前記生体情報に応じた、少なくとも2以上の診断モードを切り替えるモード切替手段と、を有し、
該モード切替手段で切り替えられる診断モードによって、前記生体情報を取得するための前記第1の照明光及び前記第2の照明光の発光波長を前記発光波長切替手段で切り替える、前記撮像手段による撮像フレーム数を可変させることを特徴とする内視鏡装置。
【請求項2】
前記少なくとも2以上の診断モードは、第1の診断モードと第2の診断モードを含み、
該第1の診断モードは、フレームレートを優先するフレームレート優先モードであり、
前記第2の診断モードは、前記生体情報を優先する生体情報優先モードであり、
前記第1の診断モードの前記撮像フレーム数は、前記第2の診断モードの前記撮像フレーム数より少ない請求項1に記載の内視鏡装置。
【請求項3】
前記フレームレート優先モードは、前記生体情報を用いて前記被写体をスクリーニングするモードであり、
前記生体情報優先モードは、前記フレームレート優先モードにおける前記スクリーニングで特定された前記被写体の特定部位の前記生体情報を取得するモードである請求項2に記載の内視鏡装置。
【請求項4】
前記第1の診断モードは、前記第1の照明手段からの前記第1の照明光のみによって前記被写体を照明するものであり、
前記第2の診断モードは、前記第2の照明手段からの前記第2の照明光よって前記被写体を照明することを少なくとも含むものである請求項2又は3のいずれかに記載の内視鏡装置。
【請求項5】
前記第1の照明手段から出射される前記第1の照明光と、前記第2の照明手段から出射される前記第2の照明光は、異なる照明口から出射され、前記被写体を照明する請求項1〜4のいずれかに記載の内視鏡装置。
【請求項6】
前記第1の照明手段は、
互いに異なる波長の狭帯域光を出射する2以上の狭帯域光源と、
該2以上の狭帯域光源から出射される各狭帯域光の少なくとも一部を透過すると共に、前記2以上の狭帯域光源の1つ狭帯域光源からの1つの狭帯域光によって励起されて蛍光を発光する蛍光体とを有し、
前記1つの狭帯域光による前記蛍光体の透過光と前記蛍光体から発光する前記蛍光との合成光を前記広帯域光として前記蛍光体から出射するものであり、
前記第1の照明光は、前記広帯域光である前記合成光と、前記2以上の狭帯域光源の他の1以上の狭帯域光源からの1以上の狭帯域光とを含むものであり、
前記第2の照明手段は、
前記第2の照明光として異なる波長の狭帯域光を出射する2以上の狭帯域光源を有する請求項1〜5のいずれかに記載の内視鏡装置。
【請求項7】
前記第1の照明手段は、
互いに異なる波長の第1及び第2の狭帯域光をそれぞれ出射する2つの第1及び第2の狭帯域光源と、
前記第1及び第2の狭帯域光のそれぞれの少なくとも一部を透過すると共に、前記第1の狭帯域光によって励起されて蛍光を発光する蛍光体とを有し、
前記蛍光体を透過した前記第1の狭帯域光と該第1の狭帯域光で励起された前記蛍光体から発光する前記蛍光との合成光を前記広帯域光として出射するものであり、
前記第2の照明手段は、
互いに異なる波長の狭帯域光を出射する3つの狭帯域光源を有し、
該3つの狭帯域光源は、それぞれ前記第1及び第2の狭帯域光源と、前記第1及び第2の狭帯域光と波長の異なる第3の狭帯域光を出射する第3の狭帯域光源と、を含む請求項1〜6のいずれかに記載の内視鏡装置。
【請求項8】
前記第1の狭帯域光は、前記蛍光体から前記蛍光を励起発光させて前記広帯域光として疑似白色光を生成するのに適した波長を持つ狭帯域光であり、
前記第2の狭帯域光は、前記生体情報として前記生体の血液の酸素飽和度を取得するのに適した波長を持つ狭帯域光であり、
前記第3の狭帯域光は、前記生体情報として前記生体の表層血管の情報を取得するのに適した波長を持つ狭帯域光である請求項7に記載の内視鏡装置。
【請求項9】
前記第1の狭帯域光源は、前記第1の狭帯域光として青色領域の波長の狭帯域光を出射する第1青色レーザであり、
前記第2の狭帯域光源は、前記第1青色レーザの発光波長域よりも長波長の青色領域から青緑色領域の波長域にある狭帯域光を出射する第2青色レーザであり、
前記第3の狭帯域光源は、前記第1青色レーザの発光波長域よりも短波長の青紫色領域から青色領域の波長域にある狭帯域光を出射する第3青色レーザである請求項7または8に記載の内視鏡装置。
【請求項10】
前記第1の狭帯域光の波長領域は440±10nmであり、前記第2の狭帯域光の波長領域は470±10nmであり、前記第3の狭帯域光の波長領域は400±10nmである請求項7〜9のいずれかに記載の内視鏡装置。
【請求項11】
前記撮像手段は、少なくとも3つ以上の波長帯域を分離して撮像可能なカラー撮像素子である請求項1〜10のいずれかに記載の内視鏡装置。
【請求項12】
さらに、前記広帯域光を前記被写体に照射して前記撮像手段によって撮像された前記撮像信号から、分光推定によって狭帯域画像信号を生成する手段を有する請求項1〜11のいずれかに記載の内視鏡装置。
【請求項13】
前記生体情報取得手段は、前記生体の血液の酸素飽和度を演算する請求項1〜12のいずれかに記載の内視鏡装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate


【公開番号】特開2012−130429(P2012−130429A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−283381(P2010−283381)
【出願日】平成22年12月20日(2010.12.20)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】