説明

内視鏡

【課題】発光素子を点灯させた観察時、照明光学部で発生する熱量を増加させることなく、観察範囲周辺部の明るさを確保して観察を行える内視鏡を提供すること。
【解決手段】内視鏡10の先端部12を構成する透明な樹脂部材で形成された円筒形状の先端カバー8と、先端カバー8に設けられた第2開口8bに配設される観察光学部20と、先端カバー8の基端面側に発光素子31の発光部出射端面32を配設して構成される照明光学部30と、を具備し、先端カバー8は、発光部出射端面32の前方に位置する平面で構成された平面部8pと、平面部8pに連設され、先端部12の周縁にいくにしたがって先端カバー8の平面部8pからの距離が連続的に遠ざかる傾斜面部8s1とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照明光学系として挿入部の先端部に発光素子を配設した内視鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
内視鏡は、医療分野及び工業分野で広く利用されている。内視鏡では、診断或いは観察の対象が生体内、プラント内等である。このため、内視鏡観察を行う際、観察対象を照明する光源が必要になる。
【0003】
一般的な内視鏡装置は、内視鏡と、内視鏡の外部装置として光源装置とを備えている。光源装置で発する照明光は、内視鏡に設けられているライトガイドに供給される。供給された照明光は、ライトガイドによって伝送され、内視鏡の挿入部先端に配置した照明窓を透過して出射されて観察対象を照明する。
【0004】
例えば、特許文献1には十分な光量や良好な配光を得ることができ、光量のロスを防止でき、細径な先端を有する内視鏡が示されている。この内視鏡において、先端部は、照明光が透過する透明な透明部材によって形成されている。そして、先端部には、観察光学系を挿通するための挿通部およびライトガイドファイバーを挿入するための挿入部が設けられている。さらに、その挿入部の先端には、ライトガイドファイバーの先端から照射された照明光を拡散させ、先端部を透過させて、斜面部に入射させるレンズ系が形成されている。
【0005】
この内視鏡によれば、先端部を透明部材にて形成し、先端部にてライトガイドファイバーを保持し、レンズ系を先端に設けるのではなく先端面側の内周面をレンズ系形状に形成し、先端面の周縁に斜面部を形成することにより、レンズ系に照射光を拡散させて斜面部に入射させ、斜面部において照射光を長手中心軸方向側に偏向させている。
【0006】
なお、特許文献1には、照明部をライトガイドファイバーに限定することなく、LED等を用いること、および斜面部を円弧形状に限定することなく、直線形状にすることが記載されている。
【0007】
図1に示す内視鏡1は、平面で構成された先端面に、例えば観察光学部2を挟んで対向する位置関係で一対の照明光学部3を備えている。照明光学部3は、透明な樹脂部材で形成された先端カバー4と、そのカバー基端側面4bに配置された発光素子5の発光部5aとによって構成される。この内視鏡1においては、発光部5aから発する照明光は、先端カバー4を透過し、先端面の照明窓部4aから出射されて観察対象を照明する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−207529号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1の内視鏡では、光源であるライトガイド先端から照射された照明光を拡散させるため、ライトガイドの先端と透明部材との間にドーム状のエアーギャップを形成しているが、このエアーギャップが存在すると、光の減衰により総光量が低下する。
図1の内視鏡1において、観察光学部2の観察範囲(角度θ2)が太線二点鎖線で示す145度であって、平面で構成された照明窓部4aから出射される照明光の出射角θ1が例えば細線二点鎖線で示すように130度である場合、先端カバー4の先端面からの距離がL1を越えると、観察範囲が照明光の出射角より外側に位置する。すると、観察範囲の明るさは、図中の斜線で示すハッチング部分、つまり、観察範囲周縁部において暗くなる。このため、観察部位が胃の内部など大空間であった場合、観察部位までの距離がL1を越えてしまうと観察に支障を来すおそれがある。
【0010】
観察範囲周縁部の明るさを確保するため、例えば、発光素子に印加する電流値を上げて光量アップを図ることが考えられる。しかし、印加電流の上昇に伴って照明光学部で発生する熱量が増加する。すると、先端部の温度が上昇して、照明光量の減少、或いは、画像ノイズの発生により、良好な内視鏡観察を長時間に渡って行えなくなるおそれがある。
【0011】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、発光素子を点灯させた観察時、発光素子から照射される照明光を減衰させることなく、かつ発光素子から発生する熱量を増加させることなく、観察範囲周辺部の明るさを確保して観察を行える内視鏡を提供することを目的にしている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様の内視鏡は、内視鏡先端部を構成する透明な樹脂部材で形成された円筒形状の先端カバーと、前記先端カバーに設けられた開口に配設される観察光学部と、前記先端カバーの基端面側に発光素子の発光部出射端面を配設して構成される照明光学部と、を具備し、前記発光部出射端面から出射された照明光が透過する前記先端カバーは、前記発光部出射端面の前方に位置する平面で構成された第1面と、前記第1面に連設され、前記先端部の周縁にいくにしたがって該先端カバーの平面からの距離が連続的に遠ざかる第2面とを備えている。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、発光素子を点灯させた観察時、照明光学部で発生する熱量を増加させることなく、観察範囲周辺部の明るさを確保して観察を行える内視鏡を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】従来技術に係る図であり、照明部として発光素子を備える内視鏡において、観察範囲の周縁に暗部ができる場合における照明光の出射角と観察光学部の観察範囲との関係を説明する図
【図2】、本実施形態に係る図であり、内視鏡の挿入部を構成する先端部の先端面であって、傾斜面部を先端面に備えた先端カバーを説明する図
【図3】図2のY3−Y3線断面図であり、主に先端部の構成説明する図
【図4】図2のY4−Y4線断面図であり、主に発光素子を一体に設けた先端カバーの構成を説明する図
【図5】図2のY4−Y4線断面図であり、主に先端硬性部材の構成を説明する図
【図6】本実施形態に係る図であり、照明窓部を平面に備える内視鏡と、照明窓部を傾斜面部に備える内視鏡との観察範囲周縁部における差異を説明する図
【図7A】本実施形態に係る図であり、内視鏡の先端部の先端面に照明窓部を1つ備える内視鏡を説明する図
【図7B】内視鏡の先端部の先端面に照明窓部を4つ備える内視鏡を説明する図
【図8A】傾斜面部の開始位置を説明する先端カバーの一説明図
【図8B】傾斜面部の開始位置を説明する先端カバーの他の説明図
【図8C】傾斜面部の開始位置を説明する先端カバーの別の説明図
【図9A】光路途中に傾斜面部を設けた先端カバーの一構成例を説明する図
【図9B】光路途中に傾斜面部を設けた先端カバーの他の構成例を説明する図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
図2−図9を参照して内視鏡が備える先端カバーを説明する。
図2及び図3に示すように本実施形態の内視鏡10は、細長な挿入部11を有し、挿入部11を構成する先端部12の先端面12aには例えば洗浄ノズル14、観察窓21、処置具挿通孔15の開口15aが設けられている。
なお、符号8は先端カバーであり、符号32は、発光素子31が備える発光部出射端面である。発光素子31は、例えば発光ダイオードである。符号8d1、8d2は、照明窓部であり、発光部出射端面32の前方であって先端カバー8の先端面に設けられ、観察部位を照明する照明光が出射される。
【0016】
図3に示すように挿入部11は、先端側から順に先端部12と、湾曲部13と、図示しない管状で可撓性を有する可撓管部とを連設して構成されている。湾曲部13は、例えば上下左右方向に湾曲する構成であり、先端側に先端湾曲駒13fを備え、この先端湾曲駒13fの基端側には、湾曲駒13a、図示しない複数の湾曲駒を連接している。
【0017】
先端部12は、例えば、絶縁部材で構成された先端カバー8と、ステンレス鋼等の金属部材で構成された先端硬性部材9とを備えて構成されている。
まず、先端カバー8について説明する。
先端カバー8は、絶縁性を有する透明な樹脂部材である例えばポリサルフォン製であり、図4に示すように筒状に形成されている。なお、先端カバー8の樹脂部材としてポリサルフォンが好適であるが、ポリカーボネート、アクリル、シクロオレフォンポリマー等であってもよい。
【0018】
図2、図3に示すように先端部12の先端面12aは、第1面であって平面で構成された平面部8p及び第2面であって傾斜面で構成された傾斜面部8s1、8s2を有する先端カバー8の先端面によって構成されている。 尚、第1面および第2面を構成する平面は曲面であってもよい。
図2−図4に示すように平面部8pには、例えば、第1の開口8a、第2の開口8b及び第3の開口8cが設けられている。
【0019】
第1の開口8aは、洗浄ノズル14が挿通して配置される貫通孔である。第1の開口8aには、洗浄ノズル14の噴出口の向きを規定する凸部8a1が設けられている。第2の開口8bは、先端硬性部材9の後述する図5の先端第1凸部9aが配置される貫通孔である。第3の開口8cは、前記図2に示した処置具挿通孔15を構成する貫通孔である。開口8a、8b、8cを構成する貫通孔の中心軸(不図示)は、先端カバー8の中心軸(不図示)に平行である。
【0020】
本実施形態の傾斜面部8s1、8s2は、平面部8pを挟んで両側に設けられている。第1傾斜面部8s1は、図中の上側である湾曲上方向に対応する位置に設けられ、第2傾斜面部8s2は図中下側である湾曲下方向に対応する位置に設けられている。
【0021】
第1照明窓部8d1は、照明光を出射する出射面であり、第1傾斜面部8s1に設けられている。第2照明窓部8d2は、第2傾斜面部8s2に設けられている。
第1傾斜面部8s1および第2傾斜面部8s2の傾斜角度は、θ3であり、傾斜面部8s1、8s2の傾斜面から平面部8pの平面までの距離Lが先端カバー8の外周に近づくにしたがって、言い換えれば、先端部12の周縁にいくにしたがって連続的に遠ざかる斜面として設定されている。
そして、本実施形態において、照明窓部8d1、8d2の全体が、それぞれの傾斜面部8s1、8s2中に含まれている。
なお、本実施形態においては、第2面を先端部12の周縁にいくにしたがって連続的に遠ざかる傾斜面部8s1、8s2としている。しかし、第2面は、傾斜面部8s1、8s2に限定されるものではなく、先端部12の周縁にいくにしたがって連続的に遠ざかる曲面で構成するようにしてもよい。また、傾斜面部8s1、8s2を傾斜面と曲面とを含む構成にしてもよい。
【0022】
第1照明窓部8d1および第2照明窓部8d2のそれぞれの基端側面には発光素子31が配置される発光素子配設穴8eが設けられている。そして、照明窓部8d1、8d2と、それぞれの発光素子配設穴8eに固設された発光素子31とによって照明光学部30が構成される。
発光素子31は、一面側に発光部出射端面32を備え、基端面側に導通部33を備えている。導通部33には、絶縁性を備え熱伝導率の高い例えばセラミック製の基板34が接続される。
【0023】
本実施形態において、発光素子31は、矢印Y4Aに示すように発光素子配設穴8eの予め定めた位置に配置されて、接着によって発光部出射端面32と照明窓部8d1、8d2の基端側面とを隙間無く一体に固定される。
この固定状態において、発光部出射端面32は、照明窓部8d1、8d2の基端側面に臨まれる。そして、発光部出射端面32から出射された照明光は、先端カバー8中を透過して、先端カバー8の先端面に設けられている傾斜面部8s1、8s2を含む照明窓部8d1、8d2からそれぞれ出射されていく。
【0024】
導通部33は、発光素子配設穴8eの照明窓部8d1、8d2側に位置している。導通部33は、この導通部33の周囲に立設する壁部8fによって覆われる。このため、金属製の先端硬性部材9と導通部33との絶縁は、壁部8fによって確保される。
【0025】
なお、二点鎖線に示すように基板34に接続された発光素子31を矢印Y4Bに示すように先端カバー8の発光素子配設穴8eに配置し、接着によって発光部出射端面32と照明窓部8d1、8d2の基端側面とを隙間無く固設するようにしてもよい。また、発光素子31を先端カバー8の予め定めた位置に一体成形によって設けるようにしてもよい。このことにより、発光部出射端面32は、照明窓部8d1、8d2の基端側に隙間無く設けられる。
符号8gは、先端硬性部材配置空間であり、先端硬性部材9の先端側部が収容される。
【0026】
一方、先端硬性部材9は、ステンレス製であり、図2、図3に示すように洗浄ノズル14、及び観察光学部20を構成するレンズユニット22及び撮像ユニット23が設けられている。
【0027】
レンズユニット22は、レンズ枠24と、レンズ枠24に配置される観察窓21および例えば光学レンズ7a−7d等とを備えて構成される。これに対して、撮像ユニット23は、撮像装置25と、素子枠26とを備えて主に構成される。レンズ枠24、素子枠26は、ステンレス等、耐食性に優れ、熱伝導率の低い金属部材で形成されている。
【0028】
撮像装置25は、撮像素子27及び図示しない電子部品を実装した回路基板で構成される。撮像素子27は、CCD、CMOS等である。撮像素子27の受光面側には、例えば2枚の光学部材であるカバーレンズ6a、6bが接着固定される。カバーレンズ6a、6bは、素子枠26に配置され、第2カバーレンズ6bが撮像素子27の受光面に配置されている。撮像装置25からは、挿入部11の基端側に向かって複数の信号線を一纏めにした信号ケーブル28が延出している。
【0029】
図5に示すように先端硬性部材9は、構成部本体9mの先端側に先端第1凸部9a及び先端第2凸部9bを有している。先端第1凸部9aは、先端カバー8の第2の開口8bに配置され、第2凸部9bは先端硬性部材配置空間8gに配置される。
【0030】
先端第1凸部9aの先端面は、先端第2凸部9bの先端面から予め定めた寸法、突出するように設定されている。この結果、先端第1凸部9aの先端面は、先端カバー8の先端面に対して面一致状態、或いは先端カバー8の先端面より突出して配置される。
このことにより、発光素子31の発光部出射端面32から出射されて先端カバー8内を透過した照明光が、この透明な先端カバー8を介して直接、観察光学部20に侵入することを防止してフレアの発生を防止できる。
【0031】
また、先端硬性部材9には、第1貫通孔9c、第2貫通孔9d、第3貫通孔9e(図2参照)及び第4貫通孔9fが設けられている。各貫通孔9c、9d、9e、9fの中心軸(不図示)は、先端硬性部材9の中心軸(不図示)に平行である。
【0032】
第1貫通孔9cは、観察光学部用孔であり、レンズ枠24が固設されるレンズ枠用孔9c1と素子枠26が遊嵌配置される素子枠用孔9c2と有して構成されている。第2貫通孔9dは、洗浄ノズル14が固設されるノズル用孔9d1と、送気送水用孔9d2とを有して構成されている。第3貫通孔9eは、前記図2に示した処置具挿通孔15を構成する貫通孔である。
【0033】
第4貫通孔9fは、照明光学部用孔9f1である。照明光学部用孔9f1は、先端カバー8に一体に設けられている発光素子31の数だけ形成されている。照明光学部用孔9f1は、基板34が通過可能な孔であり、丸孔、或いは角孔で構成される。
【0034】
上述のように構成した内視鏡10においては、先端カバー8に一体に構成されたそれぞれの照明光学部30の発光素子31に電源用ケーブル41、42を介して電源を供給することによって発光素子31が発光する。すると、発光部出射端面32から出射される照明光は、図6中の中心軸CAより下側の図に示すように先端カバー8内を透過され、照明窓部8d2から出射されて観察対象を照明する。
【0035】
本実施形態においては、第1照明窓部8d1は、第1傾斜面部8s1に設けられ、第2照明窓部8d2は第2傾斜面部8s2に設けられている。このため、照明窓部8d1から出射される照明光の出射角θ1は変化することなく、出射経路(出射方向)が傾斜角度θ3に対応して中心軸CAより外側に変更される。
【0036】
この結果、照明窓部4aが平面に位置する内視鏡1においては、図6中の中心軸CAより上側の図に示すように、先端カバー4の先端面からの距離がL1を越えると、観察範囲が照明光の出射角より外側に位置して、図中の斜線で示す観察範囲周縁部が暗くなる。しかし、本実施形態のように照明窓部8d1、8d2を傾斜面部8s1、8s2に設けた内視鏡10においては、先端カバー8の先端面からの距離がL1よりも遠い、L2を越えるまで観察範囲が照明光の出射角より内側に位置する。
【0037】
このように、内視鏡の挿入部の先端面に傾斜面部を設け、その傾斜面部に照明窓部を設けることによって、発光素子の発光部から出射されて先端カバー内を透過して先端面から出射される照明光の出射経路を変更させて、平面に照明窓部を設けた内視鏡に比べて中心軸CAより外周側に照明光を出射することができる。
そして、傾斜角度θ3を観察部の大空間に応じて適宜設定することによって、観察範囲内の明るさが観察範囲周縁部において暗くなる不具合を解消することができる。
また、接着剤を塗布して発光部と照明窓部との間の隙間を無くして発光素子を先端カバーに一体固定する、或いは発光素子と先端カバーとを一体成形で構成して隙間を無くすことにより、発光部から照射される照明光がエアーギャップの存在によって減衰されて照明光量が低下することを防止することができる。
【0038】
なお、上述した実施形態においては、先端面12aに発光素子31を備える照明光学部30の照明窓部8d1、8d2を設ける構成を示している。しかし、図7Aに示すように湾曲方向上方向に対応する位置に1つ設けた第1傾斜面部8s1に第1照明窓部8d1を設けて内視鏡10Aを構成するようにしてもよい。あるいは、図7Bに示すように4つの湾曲方向に対応する位置に設けた傾斜面部8s1、8s2、8s3、8s4にそれぞれ照明窓部8d1、8d2、8d3、8d4を設けて内視鏡10Bを構成するようにしてもよい。
つまり、内視鏡に設ける照明光学部の数は、1つであっても、それ以上であってもよい。
【0039】
符号8s3は、第3傾斜面部であり、図中左側である湾曲右方向に対応する位置に設けられている。符号8s4は、第4傾斜面部であり、図中右側である湾曲左方向に対応する位置に設けられている。符号8d3は、第3傾斜面部8s3に設けられる第3照明窓部であり、符号8d4は第4傾斜面部8s4に設けられる第4照明窓部8d4である。
【0040】
また、上述した実施形態において、照明窓部8d1、8d2は、それぞれの傾斜面部8s1、8s2中に全体が含まれる構成としている。しかし、図7Bに示すように照明窓部8d3の一部に傾斜面部8s3を含む構成、第4照明窓部8d4の一部に第4傾斜面部8s4を含む構成であっても、照明窓部が平面に設けられた内視鏡に比べて内視鏡中心軸CAより外周側を照明することができる。
【0041】
なお、傾斜面部の傾斜開始位置8ssは、図7Aの傾斜面部8s1のように内視鏡中心軸CAを通過して、例えば上方向と下方向とを分割する線上、或いは図7Bの傾斜面部8s1、8s2および図8Aの傾斜面部8s5のように第2開口側端部上32a、或いは図7Bの傾斜面部8s3、8s4のように発光部出射端面32の第2開口側端部32aと発光部出射端面32の中心32cとの間の領域内、或いは図8Bの傾斜面部8s6のように発光部出射端面32の中心32c上、或いは図8Cの傾斜面部8s7のように発光部出射端面32の中心32cと発光部出射端面32の周縁側端部32bとの間の領域内等、それぞれ照明窓部8d5、8d6、8d7にかかって形成される。
【0042】
さらに、上述した実施形態においては、先端カバー8の先端面に傾斜面部8s1、8s2を設ける構成としている。しかし、図9A、図9Bに示すように傾斜面部を先端カバー8内に設けるようにしてもよい。
【0043】
図9A、図9Bに示す先端カバー8A、8Bは、透明な樹脂部材であって、屈折率が異なる第1樹脂部材81の上に第2樹脂部材82を重ね合わせて成形することが可能な二色成形によって構成される。
第1樹脂部材81の屈折率がαで、第2樹脂部材82の屈折率がβであり、屈折率αと屈折率βとの間に、屈折率α≦屈折率βの関係が設定される。
【0044】
なお、第1樹脂部材81と第2樹脂部材82との組合せとしては、アクリルとポリカーボネートとの組合せ、アクリルとシクロオレフィンポリマーとの組合せ、シクロオレフィンポリマーとポリカーボネートとの組合せが好適である。
【0045】
図9Aの先端カバー8Aにおいて、第2面は、第1樹脂部材81で構成される発光部側照明窓部83と、第2樹脂部材82で構成される出射面側照明窓部84との境界面85であり、傾斜面である。境界面85の傾斜開始位置8ssは、第2開口側端部32aより第2の開口8b側の先端カバー8A先端面である。そして、傾斜終了位置8seは、発光部出射端面32の周縁側端部32bより先端カバー外周側の発光素子31の発光面端部31eである。このことにより、発光部出射端面32の前方に配置されて、発光部出射端面32から発せられた照明光が確実に境界面85を透過する、傾斜角度θ4の境界面85を有する先端カバー8Aが構成される。
【0046】
上述のように構成した先端カバー8Aを備える内視鏡10によれば、先端カバー8Aに一体に構成されたそれぞれの発光素子31に電源用ケーブル41、42を介して電源を供給することによって発光素子31が発光する。すると、発光部出射端面32から出射される照明光は、先端カバー8Aの発光部側照明窓部83を透過して、境界面85で経路を変更された後、出射面側照明窓部84を透過され、照明窓部86から出射されて観察対象を照明する。
【0047】
本実施形態においては、境界面85で照明光の経路が変更されることによって、平面に照明窓部を設けた内視鏡に比べて中心軸CAより外周側に照明光を出射することができる。 なお、図9Bに示すように傾斜終了位置8seを、発光素子31の発光面端部31eよりも先端カバー8Aの先端面側に移動させることによって、境界面85の傾斜角度を適宜設定することが可能である。
【0048】
尚、本発明は、以上述べた実施形態のみに限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形実施可能である。
【符号の説明】
【0049】
1…内視鏡 2…観察光学部 3…照明光学部 4…先端カバー
4a…照明窓部 4b…カバー基端側面 5…発光素子 5a…発光部
6a…第1カバーレンズ 6b…第2カバーレンズ 7a…光学レンズ
8、8A…先端カバー 8a…第1の開口 8a1…凸部 8b…第2の開口
8c…第3の開口 8d1…第1照明窓部 8d2…第2照明窓部
8d3…第3照明窓部 8d4…第4照明窓部 8d5、8d6、8d7…照明窓部
8e…発光素子配設穴 8f…壁部 8g…先端硬性部材配置空間 8p…平面部
8s1…第1傾斜面部 8s2…第2傾斜面部 8s3…第3傾斜面部
8s4…第4傾斜面部 8s5、8s6、8s7…傾斜面部 8se…傾斜終了位置
8ss…傾斜開始位置 9…先端硬性部材 9a…先端第1凸部
9b…先端第2凸部 9c…第1貫通孔 9c1…レンズ枠用孔
9c2…素子枠用孔 9d…第2貫通孔 9d1…ノズル用孔
9d2…送気送水用孔 9e…第3貫通孔 9f…第4貫通孔
9f1…照明光学部用孔 9m…構成部本体 10、10A、10B…内視鏡
11…挿入部 12…先端部 12a…先端面 13…湾曲部 13a…湾曲駒
13f…先端湾曲駒 14…洗浄ノズル 15…処置具挿通孔 15a…開口
20…観察光学部 21…観察窓 22…レンズユニット 23…撮像ユニット
24…レンズ枠 25…撮像装置 26…素子枠 27…撮像素子
28…信号ケーブル 30…照明光学部 31…発光素子 31e…発光面端部
32…発光部出射端面 32a…開口側端部 32b…周縁側端部 32c…中心
33…導通部 34…基板 41、42…電源用ケーブル 81…第1樹脂部材
82…第2樹脂部材 83…発光部側照明窓部 84…出射面側照明窓部
85…境界面 86…照明窓部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内視鏡先端部を構成する透明な樹脂部材で形成された円筒形状の先端カバーと、
前記先端カバーに設けられた開口に配設される観察光学部と、
前記先端カバーの基端面側に発光素子の発光部出射端面を配設して構成される照明光学部と、を具備し、
前記発光部出射端面から出射された照明光が透過する前記先端カバーは、
前記発光部出射端面の前方に位置する平面で構成された第1面と、
前記第1面に連設され、前記先端部の周縁にいくにしたがって該先端カバーの平面からの距離が連続的に遠ざかる第2面と、
を備えることを特徴とする内視鏡。
【請求項2】
前記発光素子の発光部出射端面を、前記先端カバーの基端面に隙間無く一体に固定したことを特徴とする請求項1に記載の内視鏡。
【請求項3】
前記発光素子の発光部出射端面を前記先端カバーの基端面側の予め定められた位置に接着剤によって一体固定して、発光部と先端カバーの基端面との隙間を無くしたことを特徴とする請求項1に記載の内視鏡。
【請求項4】
前記発光素子の発光部出射端面を前記先端カバーの基端面側の予め定められた位置に一体成形によって設け、発光部を先端カバーの基端面に隙間無くし配設したことを特徴とする請求項1に記載の内視鏡。
【請求項5】
前記発光部出射端面から出射された照明光が透過する前記先端カバーの先端面に、
平面で構成された第1面と、
前記先端部の周縁にいくにしたがって該先端カバーの平面からの距離が連続的に遠ざかる第2面と、
前記発光部出射端面の前方に位置して前記第2面を含む、前記照明光を出射する、照明窓部と、
を設けたことを特徴とする請求項1に記載の内視鏡。
【請求項6】
前記第2面は、傾斜面または曲面の少なくとも一方の面を備えて構成されることを特徴とする請求項5に記載の内視鏡。
【請求項7】
前記第2面は、二色成形によって先端カバーに設けられる樹脂同士の境界面であることを特徴とする請求項1に記載の内視鏡。
【請求項8】
前記先端カバーは、二色成形によって、発光部側照明窓部と出射面側照明窓部とを重ね合わせて構成され、
発光部側照明窓部を構成する第1樹脂部材の屈折率がαで、出射面側照明窓部を構成する第2樹脂部材の屈折率がβであるとき、屈折率αと屈折率βとの間に、
屈折率α≦屈折率βの関係を設定したことを特徴とする請求項7に記載の内視鏡。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図9A】
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【図9B】
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【公開番号】特開2012−152390(P2012−152390A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−14375(P2011−14375)
【出願日】平成23年1月26日(2011.1.26)
【出願人】(304050923)オリンパスメディカルシステムズ株式会社 (1,905)
【Fターム(参考)】