説明

内視鏡

【課題】熱可塑性エラストマー製の外皮を、予め設定した条件で子内視鏡の湾曲部に被覆することにより、親内視鏡の処置具起上台と擦れても破損の虞の低い、高い耐久性を有するとともに、湾曲力量も軽く、湾曲時のシワもなく、親内視鏡との挿通性も良好な子内視鏡を備えた親子式内視鏡システムを提供すること。
【解決手段】本発明の親子式内視鏡システムの子内視鏡2は、連結された複数の湾曲駒43からなる湾曲管32と、前記湾曲管32の外径よりも大きな内径を有し、且つ前記湾曲駒43を直接被覆する熱可塑性エラストマーにより形成された外皮31とを備えて構成される湾曲部17を有し、前記湾曲管32の外径をDとし、前記外皮31の内径をdとし、前記外皮31の肉厚をtとし、前記湾曲管32と前記外皮31との間の片側クリアランスを Xとするとき、0.07≧X/D>0、t≦0.4、の関係を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は内視鏡に関する。さらに詳しくは、本発明は親内視鏡の処置具挿通チャンネルに挿通して使用され、十二指腸乳頭から胆管又は膵管に選択的に挿入して胆管内又は膵管内を観察や治療を行い得る子内視鏡に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、胆管内や膵管内の観察や治療を行う際に用いられる内視鏡として、親内視鏡と、この親内視鏡の処置具挿通チャンネルに挿通される子内視鏡を有する親子式内視鏡システムが実用化されている。
【0003】
この親子式内視鏡システムの親内視鏡は、通常サイズの内視鏡、例えば十二指腸用内視鏡であり、子内視鏡は、親内視鏡の処置具挿通チャンネルに挿通される。親子内視鏡システムでは、親内視鏡の先端から体腔内に突出させた、子内視鏡の湾曲操作、進退操作、ねじり操作等と、親内視鏡の起上台操作、湾曲操作、ねじり操作、進退操作等とを組み合わせて、子内視鏡のみを十二指腸乳頭から胆管又は膵管へと選択的に挿入させることにより、これら胆管内や膵管内の観察や治療を行うようにするものである。
【0004】
従来の親子式内視鏡システムについては、例えば、特許文献1等によって種々の形態のものが提案されており、また実用化されている。
【0005】
前記特許文献1等によって開示されている親子式内視鏡システムでは、親内視鏡の挿入部内に子内視鏡の挿入部を挿通させ得る処置具挿通チャンネルが配設されていると共に、親内視鏡の先端部内には、処置具挿通チャンネルの開口部から突出する子内視鏡を起上させることにより、子内視鏡の先端部の進退方向を変更させ得るための機構である処置具起上台を有している。
【0006】
また、従来の湾曲部を有する内視鏡としては、例えば、特許文献2及び特許文献3に記載のものがある。
【0007】
前記特許文献2に記載の内視鏡は、湾曲部の湾曲時に節輪間への外皮の咬み込みを防止するために、挿入部の挿入方向に沿って複数の関節コマが並設され、前後の節輪間がそれぞれリベットを中心に回動可能に連結された湾曲管と、可塑性エラストマーの材質の弾性材料によって円筒状に形成され、この湾曲管の外周に直接嵌装された外皮とから湾曲部が構成されている。
【0008】
また、前記特許文献3に記載の内視鏡は、先端側や基端側の回動量を容易に変更可能な内視鏡の湾曲部を得るために、複数の関節コマが互い枢支されて連接されて形成される湾曲管と、この湾曲管を覆う外皮とから湾曲部が構成され、各関節コマの外径は例えば10mm程度であり、外皮の厚さは0.5mm程度である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−75168号公報
【特許文献2】特開2008−99827号公報
【特許文献3】特開2008−104733号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
内視鏡の湾曲部の外皮としては一般的に天然ゴム、フッ素ゴム等のゴム材が用いられている。しかしながら、前記特許文献1に記載の従来の親子式内視鏡システムでは、親内視鏡の処置具起上台から子内視鏡を突出させる際、又は処置具起上台から突出された子内視鏡をこの処置具起上台上で前後に進退させる際に、子内視鏡の湾曲部に被覆されたゴム材の外皮と処置具起上台とが擦れ合うことにより、外皮が損傷を被る虞があった。
【0011】
そこで従来のゴム材に替えて、機械的強度が高い熱可塑性エラストマーを外皮材料として採用することにより外皮の損傷の低減が期待できる。しかしながら、熱可塑性エラストマーはゴム材よりも伸びにくいため、湾曲力量が重くなる、湾曲時に外観にシワが出やすい、という欠点がある。そして、熱可塑性エラストマーの外皮では、シワの発生で外径寸法が太くなくなることにより親内視鏡との挿通性の低下又は挿通不能となる虞がある。
【0012】
前記特許文献2及び特許文献3に記載の内視鏡では、このような問題を解決することはできない。
【0013】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、熱可塑性エラストマー製の外皮を、予め定めた条件で子内視鏡の湾曲部に被覆することにより、親内視鏡の処置具起上台と擦れても破損しない高い耐久性を有するとともに、湾曲力量も軽く、湾曲時のシワもなく、親内視鏡との挿通性も良好な子内視鏡を備える親子式内視鏡システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、本発明による内視鏡は、連結された複数の湾曲駒からなる湾曲管と、前記湾曲管の外径よりも大きな内径を有し、且つ前記湾曲駒を直接被覆する熱可塑性エラストマーにより形成された外皮とを備えて構成される湾曲部を有し、
前記湾曲管の外径をDとし、
前記外皮の内径をdとし、
前記外皮の肉厚をtとし、
前記湾曲管と前記外皮との間の片側クリアランスをXとするとき、
0.07≧X/D>0
t≦0.4
の関係を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、熱可塑性エラストマー製の外皮を、予め定めた条件で子内視鏡の湾曲部に被覆することにより、親内視鏡の処置具起上台と擦れても破損しない高い耐久性を有するとともに、湾曲力量も軽く、湾曲時のシワもなく、親内視鏡との挿通性も良好な子内視鏡を備える親子式内視鏡システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係る親子式内視鏡システムを示し、親内視鏡に子内視鏡を挿入した状態を概略的に示す外観図。
【図2】図1の親内視鏡及び子内視鏡の先端部近傍の断面図。
【図3a】図1の子内視鏡の湾曲部近傍の断面図。
【図3b】図3aのP−P線断面図。
【図4】本発明の一実施形態の第1の変形例に係る子内視鏡の湾曲部近傍の断面図。
【図5】本発明の一実施形態の第2の変形例に係る子内視鏡の湾曲部基端側の断面図。
【図6】本発明の一実施形態の第3の変形例に係る子内視鏡の外皮の断面図。
【図7】図6の外皮を被覆しかつ自然状態の子内視鏡の断面図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1に示すように、本発明の一実施形態に係る親子式内視鏡システムは、親内視鏡1と、子内視鏡2と、を有して構成される。
【0018】
親内視鏡1は、挿入部3と、この挿入部3の基端側に連設される操作部4と、を有して構成される。挿入部3は、外径直径が、例えば10mm程度、長さは約1.2m程度に形成されていて、先端側から順に先端部本体5、湾曲部6、可撓管部7が連接して構成されている。
【0019】
挿入部3の内部には、処置具挿通チャンネル8が形成されている。この処置具挿通チャンネル8は、操作部4に設けられる操作部側開口9から先端部本体5まで挿通している。この処置具挿通チャンネル8には、例えば、処置具等のほか、子内視鏡2の挿入部10を挿通させることができるようになっている。
【0020】
操作部4は、親内視鏡1を操作するのに必要な各種の操作部材と、この親内視鏡1のコントロールを行う内視鏡ユニット(図示せず)との間の接続を行うユニバーサルケーブル13等を有して構成される。
【0021】
操作部4の操作部材としては、例えば後述する処置具起上台12の動作を操作するための操作レバー14等が設けられている。
【0022】
図2に示すように、先端部本体5の内部には、処置具挿通チャンネル8の先端側開口11から突出する処置具、あるいは子内視鏡2の挿入部10を起上させるための処置具起上台12が設けられている。この処置具起上台12は、親内視鏡1の先端部本体5の内部において、処置具挿通チャンネル8の先端側開口11の近傍に配設されている。
【0023】
先端部本体5の外側は、先端カバー23によって覆われている。また、先端部本体5の基端側には、複数の湾曲駒24を連結して構成した湾曲管25が連設されている。
【0024】
なお、処置具挿通チャンネル8に高周波処置具(図示せず)が挿入される場合、先端側開口11の近傍には、高周波処置具の電極が触れても絶縁できるように電気絶縁性部材22が配設されている。
【0025】
処置具挿通チャンネル8は、チャンネルチューブ26と、このチャンネルチューブ26を先端部本体5に連結するための口金部材27と、前記電気絶縁性部材22を含む先端部本体5とによって主に構成されている。
【0026】
処置具起上台12は、先端部本体5に支軸20を介して回動自在に配設されている。この処置具起上台12には、操作部4(図1参照)から延出され挿入部3内に配設された操作ワイヤー21の一端部が連結されている。この操作ワイヤー21の他端部は、操作部4の操作レバー14(図1参照)に連結されている。
【0027】
したがって、操作レバー14が操作されると操作ワイヤー21が挿入部3内を軸方向に進退し、支軸20を中心に処置具起上台12を倒置させたり起上させたりすることができるようになっている。
【0028】
次に、子内視鏡2の構成について図1〜図3bを参照しながら説明する。
図1に示すように、子内視鏡2は、処置具チャンネル8に挿入される挿入部10と、この挿入部10の基端側に連設される操作部15と、を有して構成される。挿入部10は、外径直径が、例えば3〜4mm程度、長さは約2m程度に形成されていて、先端側から順に先端部本体16、湾曲部17、可撓管部18が連接して構成されている。
【0029】
操作部15は、子内視鏡2を操作するのに必要な各種の操作部材と、この子内視鏡2のコントロールを行う内視鏡ユニット(図示せず)との間の接続を行うユニバーサルケーブル19等を有して構成される。
【0030】
図3aに示すように、子内視鏡2の先端部本体16は、先端構成部材33と、湾曲管接続部材34と、を有して構成される。
【0031】
図3bに示すように、挿入部10内には、観察窓35、撮像素子36、各種電子部品37、信号ケーブル38等からなる観察光学系39と、照明光学系40と、処置具挿通チャンネル41とが配設されている。
【0032】
図3aに示すように、湾曲管接続部材34は先端部構成部材33の後端に連結され、その内側は斜線に示すようにエポキシ系等の接着剤42が電子部品37等との隙間全域に充填されている。信号ケーブル38の先端部も接着剤42を介して先端部本体16に封止されている。
【0033】
湾曲部17は、複数の湾曲駒43が連接された湾曲管32と、熱可塑性エラストマー(例えばポリウレタンチューブ)からなる外皮31と、を有して構成される。
【0034】
湾曲管32の最先端湾曲駒45には、操作部15から延びる複数の湾曲操作ワイヤー44の一端部が固定されている。また、湾曲管32の最先端湾曲駒45は、先端部本体16を構成している湾曲管接続部材34に固定されている。
【0035】
外皮31は、その両端を湾曲管32の最先端湾曲駒45と最基端湾曲駒46に接着固定されている。なお、接着剤42は、エポキシ系やシリコン系やウレタン系等、種類は限定されるものではない。
【0036】
可撓管部18は、フレックス47と、網状管48と、可撓管外皮49と、可撓管先端口金50とで主に構成され、内部には、湾曲操作ワイヤー44が挿通されるワイヤーガイドコイル51が設けられている。
【0037】
可撓管先端口金50の手元側には、フレックス47と網状管48が固定され、さらに可撓管外皮49の端部が被覆固定されている。この可撓管先端口金50の先端内側にはワイヤーガイドコイル51が固定され、外側には湾曲管32の最基端湾曲駒46が固定されている。
【0038】
本実施形態では、湾曲管32の外径よりも大きな内径を有する熱可塑性エラストマーにより形成された外皮31を、直接湾曲管32に以下の条件で被覆している。
つまり、図3a及び図3bに示すように、湾曲管32の外径をDとし、外皮31の内径をdとし、外皮31の肉厚をtとし、湾曲管32と外皮31との間の片側クリアランスをXとするとき、
0.07≧X/D>0
t≦0.4
の関係を有する。
【0039】
次に、本実施形態の親子式内視鏡システムの作用について、図2を参照しながら説明する。
図2に示すように、子内視鏡2の挿入部10が処置具挿通チャンネル8の先端側開口11から突出している状態のとき、操作レバー14を操作して操作ワイヤー21を挿入部3内の軸方向に進退させると、支軸20を中心に処置具起上台12が回動され、その回動動作に伴って挿入部10の突出方向を変えることができるようになっている。
【0040】
図2は、本実施形態の子内視鏡2を、あらかじめ十二指腸28へ挿入しておいた親内視鏡1を介して、挿入部10を押し出し、挿入部10を胆管29又は膵管30へ挿入する状態を示している。
【0041】
本実施形態の子内視鏡2においては、図3a及び図3bにより説明した通り、熱可塑性エラストマー製の外皮31が、予め設定した条件で湾曲管32に被覆されている。このため、手元側から挿入部10を進退ないし捩る等の操作を行うことで処置具起上台12と湾曲部17とが強く擦れても、熱可塑性エラストマー製の外皮31は、破損しにくく、かつ図に示すように湾曲した状態でも外皮31の外観上にシワが発生しない。したがって、シワによって子内視鏡2の外径が太ることもなく、湾曲状態でも親内視鏡1との挿通性が悪くなることもない。
【0042】
また、湾曲部17のほぼ全長に亘ってクリアランス(片側クリアランスX)を設けて被覆しているため、熱可塑性エラストマー製の外皮31が各湾曲駒43の動きを制限することがない。その結果、子内視鏡2の湾曲部17の湾曲力量も従来のゴム材の外皮並みに軽くできると共に、湾曲角度も十分に出せる。なお、この湾曲角度としては、例えば、挿入部ストレート状態でUP、DOWN各70°かつ胆管内実使用状態でUP、DOWN各30°以上である。
【0043】
したがって、本実施形態によれば、熱可塑性エラストマー製の外皮31を、予め設定した条件で子内視鏡2の湾曲部17に被覆することにより、親内視鏡1の処置具起上台12と擦れても破損しない高い耐久性を有するとともに、湾曲力量も軽く、湾曲時のシワもなく、親内視鏡1との挿通性も良好な子内視鏡を備えて親子式内視鏡システムを実現できる。
【0044】
なお、本実施形態において、子内視鏡2の湾曲部17の先端側に設けられた、湾曲管32よりも先端部本体16の外径をAとし、湾曲管32の両端の外径をD1とし、湾曲管32の長手方向における中間部の外径をD2とし、外皮31を湾曲管32に被覆する前の内径をdとし、外皮31を湾曲管32に被覆する前の外径をBとし、前記親内視鏡1の処置具挿通チャンネル8の内径をCとするとき、
0. 97C≧B≧A>d≧D1≧D2
又は
0.97C≧B≧A>D1≧d≧D2
の関係を有するように構成してもよい。このような関係を有するように親内視鏡1の処置具挿通チャンネル8及び子内視鏡2を構成すれば、前記実施形態と同様の効果が得られる他、より耐久性、被覆性、及び親内視鏡との挿通性を向上できる。
【0045】
また、本実施形態の子内視鏡2は、図4〜図7に示す各種変形例に示すように構成しても良い。子内視鏡2の各種変形例を、図4〜図7を参照しながら説明する。
【0046】
図4は、前記実施形態の第1の変形例に係る子内視鏡2Aの湾曲管32の構成を示す断面図である。
第1の変形例に係る子内視鏡2Aは、最先端湾曲駒45と最基端湾曲駒46の構成が図2に示す構成と異なっている。
すなわち、図4に示す子内視鏡2Aは、外皮31と最先端湾曲駒45との間、外皮31と最基端湾曲駒46との間にはクリアランスはない。それ以外の湾曲駒43と外皮31との間のクリアランスは、前記実施形態の図2に示す子内視鏡2と同じである。
【0047】
つまり、図4に示す子内視鏡2Aの実際湾曲する部分の湾曲駒43と外皮31とのクリアランスは、図2に示す子内視鏡2と同じであるため、効果も同じである。
【0048】
なお、図4は、外皮31と最先端湾曲駒45との間、外皮31と最基端湾曲駒46との間の両方にクリアランスがない形態と記載しているが、本変形例は、外皮31と最先端湾曲駒45との間、外皮31と最基端湾曲駒46との間のどちらか一方にクリアランスがないように構成してもよい。
その他の構成・作用は、前記実施形態と同様である。
【0049】
このように、第1の変形例によれば、外皮31と第1湾曲駒45との間、外皮31と最終湾曲駒46との間のクリアランスをなくし、それ以外の湾曲駒43と外皮31との間のクリアランスについては、前記実施形態と同様に構成したことにより、前記実施形態と同様の効果が得られる。
【0050】
図5は、本実施形態の第2の変形例に係る子内視鏡2Bを示し、この子内視鏡2Bの外皮被覆長の構成を説明するための湾曲部基端側の断面図である。
【0051】
図5に示す第2の変形例に係る子内視鏡2Bは、外皮31の手元端が、可撓管部18の網状管48の外周に接着固定されている。その他の構成は、図2に示す実施形態と同じである。また、作用についても前記実施形態と同じである。
【0052】
このように、第2の変形例によれば、外皮31の手元端が、可撓管部18の網状管48の外周に接着固定された構成である場合でも、前記実施形態と同様の効果が得られる。
【0053】
図6及び図7は、本実施形態の第3の変形例に係る子内視鏡2Cを示し、図6は、第3変形例の子内視鏡2Cに用いられる外皮31の断面図、図7は、図6の外皮31を被覆しかつ自然状態(湾曲操作をしていない)の子内視鏡2Cの断面図である。
【0054】
図6に示す外皮31は、第3の変形例の子内視鏡2Cに用いられる、被覆前の外皮31である。この外皮31は、手元端が斜めにカットされている。この他の構成は、図2に示す実施形態の外皮31と同じである。
【0055】
このような構成の外皮31を用いて子内視鏡2Cを構成する場合、熱可塑性エラストマーは硬く延伸性が低いため、被覆後の状態も図6の形状がほぼ維持される。そのため例えば、図6で軸方向の長さの短い方を図7に示すように湾曲部17のアップ側に合わせて被覆して構成すると、子内視鏡2Cの挿入部10の湾曲部17は、図7に示すように自然状態でも湾曲の内と外で外皮の長さが異なるため、この場合はアップ側に曲がり癖のついた湾曲形状にすることができる。
【0056】
したがって、第3の変形例の子内視鏡2Cは、予め湾曲部17に少し曲がり癖がついていると、親内視鏡1の処置具机上台12の上をより挿通し易くできる。
その他の構成・作用は、前記実施形態と同様である。
【0057】
したがって、第3の変形例によれば、前記実施形態と同様の効果が得られる他に、手元端が斜めにカットされた外皮31を用いて予め湾曲部17に少し曲がり癖がついた湾曲形状に構成することにより、親内視鏡1の処置具机上台12の上をより挿通し易くできるといった効果が得られる。
【0058】
なお、本実施形態及び第1〜第3の変形例において、処置具起上台12に対して子内視鏡2の湾曲部17をより滑り易くするために、熱可塑性エラストマーにより形成された外皮31の表面に、例えば、薄いフッ素系樹脂をコーティングして構成してもよい。このような構成の場合も前記図2に示す実施形態と同じ効果が得られる。
【0059】
なお、本発明は、親内視鏡の処置具挿通チャンネルに挿通して使用する子内視鏡に限定されるものではなく、内視鏡の外皮の損傷を回避することが要求されるあらゆる内視鏡に好適に用いることができる。例えば、噴進エンジンの内部のようにタービン等の鋭利な金属部品が露出している環境下で使用される内視鏡に適用しても良い。
【0060】
さらに、本発明は、上述した実施形態及び実施形態の変形例に限定されるものではなく、本発明の要旨を変えない範囲において、種々の変更、改変等が可能である。
【符号の説明】
【0061】
1…親内視鏡、
2…子内視鏡、
3…挿入部(親)、
4…操作部(親)、
5…先端部本体(親)、
6…湾曲部(親)、
7…可撓管部(親)、
8…処置具挿通チャンネル(親)、
9…操作部側開口(親)、
10…挿入部(子)、
11…先端側開口(親)、
12…処置具起上台(親)、
13…ユニバーサルケーブル(親)、
14…操作レバー(親)、
15…操作部(子)、
16…先端部本体(子)、
17…湾曲部(子)、
18…可撓管部(子)、
19…ユニバーサルケーブル(子)、
20…支軸(親)、
21…操作ワイヤー(親)、
22…電気絶縁性部材(親)、
23…先端カバー(親)、
24…湾曲駒(親)、
25…湾曲管(親)、
26…チャンネルチューブ(親)、
27…口金部材(親)、
28…十二指腸、
29…胆管、
30…膵管、
31…外皮(子)、
32…湾曲管(子)、
33…先端構成部材(子)、
34…湾曲管接続部材(子)、
35…観察窓(子)、
36…撮像素子(子)、
37…電子部品(子)、
38…信号ケーブル(子)、
39…観察光学系(子)、
40…照明光学系(子)、
41…処置具挿通チャンネル(子)、
42…接着剤(子)、
43…湾曲駒(子)、
44…湾曲操作ワイヤー(子)、
45…最先端湾曲駒(子)、
46…最基端湾曲駒(子)、
47…フレックス(子)、
48…網状管(子)、
49…可撓管外皮(子)、
50…可撓管先端口金(子)、
51…ワイヤーガイドコイル(子)、
D…湾曲管の外径、
d…外皮の内径、
t…外皮の肉厚、
X…片側クリアランス。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連結された複数の湾曲駒からなる湾曲管と、前記湾曲管の外径よりも大きな内径を有し、且つ前記湾曲駒を直接被覆する熱可塑性エラストマーにより形成された外皮とを備えて構成される湾曲部を有し、
前記湾曲管の外径をDとし、
前記外皮の内径をdとし、
前記外皮の肉厚をtとし、
前記湾曲管と前記外皮との間の片側クリアランスをXとするとき、
0.07≧X/D>0
t≦0.4
の関係を有することを特徴とする内視鏡。
【請求項2】
前記内視鏡の前記湾曲管は、最先端側の最先端湾曲駒と、最基端側の最基端湾曲駒とを有し、
前記外皮は、前記最先端湾曲駒と前記最基端湾曲駒との何れか一方又は両方との間に前記クリアランスがないように前記湾曲管に被覆されたことを特徴とする請求項1に記載の内視鏡。
【請求項3】
前記外皮の手元端は、前記湾曲部の手元側に接続される可撓管部の網状管の外周に接着固定したことを特徴とする請求項1に記載の内視鏡。
【請求項4】
前記外皮は、前記湾曲部のアップ側の湾曲方向に対応する側の軸方向の長さを、逆側の軸方向の長さよりも短く形成し、この短く形成した手元側基端部を、前記アップ側の手元側端部の位置に合わせるように前記湾曲管の最基端湾曲駒に接着固定したことを特徴とする請求項1に記載の内視鏡。
【請求項5】
前記内視鏡の湾曲部の先端側に設けられた、前記湾曲管よりも径の大きい先端部本体の外径をAとし、
前記湾曲管の両端の外径をD1とし、
前記湾曲管の長手方向における中間部の外径をD2とし、
前記外皮を前記湾曲管に被覆する前の内径をdとし、
前記外皮を前記湾曲管に被覆する前の外径をBとし、
前記親内視鏡の前記処置具挿通チャンネルの内径をCとするとき、
0.97C≧B≧A>d≧D1≧D2
の関係を有することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の内視鏡。
【請求項6】
前記内視鏡の湾曲部の先端側に設けられた、前記湾曲管よりも径の大きい先端部本体の外径をAとし、
前記湾曲管の両端の外径をD1とし、
前記湾曲管の長手方向における中間部の外径をD2とし、
前記外皮を前記湾曲管に被覆する前の内径をdとし、
前記外皮を前記湾曲管に被覆する前の外径をBとし、
前記親内視鏡の前記処置具挿通チャンネルの内径をCとするとき、
0.97C≧B≧A>D1≧d≧D2
の関係を有することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の内視鏡。

【図1】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−95719(P2012−95719A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−244011(P2010−244011)
【出願日】平成22年10月29日(2010.10.29)
【出願人】(304050923)オリンパスメディカルシステムズ株式会社 (1,905)
【Fターム(参考)】