説明

内部欠陥検査方法及びその装置

【課題】
試料にダメージを与えることなく、非接触で試料に超音波を励起し、試料内部の欠陥からの超音波を、試料表面の影響を受けることなく非接触かつ高感度に検出する内部欠陥検査方法及びその装置を提供することを目的とする。
【解決手段】
本発明は、超音波送信部から試料に向けて超音波を出射させて、試料から反射した超音波を結像形共通光路干渉計により干渉信号として検出し、前記干渉信号から超音波信号を得て、該超音波信号から試料内部の欠陥を検出することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部欠陥の検査方法とその装置に係り、特に空中超音波によって試料内部に超音波を伝搬させ、内部欠陥から反射あるいは透過してくる超音波の振動を光干渉計によって検出する内部欠陥検査方法とその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
試料内部の欠陥を検査する方法として、非特許文献1に開示されているように、水をカップリング材として固体試料に超音波を励起し、試料内部の欠陥から透過あるいは反射してくる超音波を光干渉計で検出するレーザ走査超音波顕微鏡(SLAM:Scanning Laser Acoustic Microscope)が知られている。
【0003】
また、非特許文献2には、パルスレーザ光を固体試料に照射して、試料内部に弾性波を励起し、試料内部の欠陥により生じた表面弾性波の振幅と位相の変化を光干渉計で検出する方法が開示されている。
【0004】
また、非特許文献3には、直線状の強度変調レーザ光を固体試料に照射し、試料表面の微小な熱膨張変位の振幅と位相を直線状ビームを用いた光干渉計により一括検出することで、内部欠陥像を高速イメージングする方法が開示されている。
【0005】
また、特許文献1には、空中超音波を試料内部に伝搬させ、内部欠陥からの空中超音波を検出する方法が開示されている。
【0006】
また、超音波探触子を試料表面に密着させて、超音波の励起と検出を行う方法も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−150692号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】ASNT Natl.Conf.,Spring 1980,pp.11−17(1980)
【非特許文献2】Proceeding of 1986 IEEE ULTRASONICS SYMPOSIUM,pp.515−526(1986)
【非特許文献3】Applied Optics,45,PP.2643−2655(2006)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、上記した非特許文献1による水をカップリング材として固体試料に超音波を励起するレーザ走査超音波顕微鏡では、水による試料の汚染の問題があり、適用対象が限定されるという課題があった。また、従来の光干渉計では測定感度がnmからサブμmオーダであり感度が不足していたため、十分な内部欠陥検出感度が得られないという課題があった。
【0010】
また、非特許文献2によるパルスレーザ光を固体試料に照射して、試料内部に弾性波を励起する方法では、同様に表面弾性波を検出する光干渉計の測定感度がnmからサブμmオーダであり感度が不足していたため、レーザ出力を大きくせざるを得ず、アブレーション等が発生し試料がダメージを受けてしまうという課題があった。
【0011】
また、非特許文献3による直線状の強度変調レーザ光を固体試料に照射し、試料表面の微小な熱膨張変位の振幅と位相を直線状ビームを用いた光干渉計により一括イメージングする方法では、同様に光干渉計の測定感度がnmからサブμmオーダであり感度が不足していたため、十分な内部欠陥検出感度が得られないという課題があった。
【0012】
また、特許文献1による空中超音波を試料内部に伝搬させ、内部欠陥からの空中超音波を検出する方法では、試料内部に伝搬する超音波が微弱であり、さらに欠陥からの空中超音波も極めて微弱であるため、十分な内部欠陥検出感度が得られないという課題があった。
【0013】
また、試料表面に凹凸が存在していたり、試料表面が粗面で構成されている場合には、超音波探触子を試料表面に密着させることができず、内部欠陥検出感度が著しく低下するという課題があった。
【0014】
そこで本発明では上記課題に鑑み、試料にダメージを与えることなく、非接触で試料に超音波を励起し、試料内部の欠陥からの超音波を、試料表面の影響を受けることなく非接触かつ高感度に検出する内部欠陥検査方法及びその装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、超音波送信部から試料に向けて超音波を出射させて、試料から反射した超音波を結像形共通光路干渉計により干渉信号として検出し、前記干渉信号から超音波信号を得て、該超音波信号から試料内部の欠陥を検出することを特徴とする内部欠陥検査方法を提供する。
【0016】
また、他の観点における本発明は、空中に超音波を出射させて試料内部に伝搬させる超音波送信部と、試料内部を伝搬する該超音波を超音波振動として試料表面にて検出する結像形共通光路干渉計と、該結像形共通光路干渉計で検出された干渉信号から超音波信号を検出する超音波信号検出手段とを備える特徴とする内部欠陥検査装置を提供する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、試料にダメージを与えることなく、非接触で試料に超音波を励起し、試料内部の欠陥からの超音波を、試料表面の影響を受けることなく非接触かつ高感度に検出する内部欠陥検査方法及びその装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態1における内部欠陥検査装置の全体構成を示す斜視図とブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態1における光干渉変位センサの構成を示す斜視図とブロック図である。
【図3】本発明の実施の形態1におけるフォトニック結晶を用いた参照ミラーの構成と機能を示す斜視図である。
【図4】本発明の実施の形態1におけるフォトニック結晶アレイを用いた位相シフト素子の構成を示す斜視図である。
【図5】本発明の実施の形態1における光干渉変位センサの変位感度を示すグラフである。
【図6】本発明の実施の形態2における光干渉変位センサの構成を示す斜視図とブロック図である。
【図7】本発明の実施の形態3における内部欠陥検査装置の全体構成を示す斜視図とブロック図である。
【図8】本発明の実施の形態4における内部欠陥検査装置の全体構成を示す斜視図とブロック図である。
【図9】本発明の実施の形態4における光干渉変位センサの構成を示す斜視図とブロック図である。
【図10】本発明の実施の形態4におけるフォトニック結晶アレイを用いた位相シフト素子の構成を示す斜視図である。
【図11】本発明の実施の形態4における分割形光電変換素子の受光面を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<実施の形態1>
本発明の実施の形態1を、図1〜図5に基づいて説明する。図1は、本実施の形態1における内部欠陥検査装置の全体構成を示す図である。本内部欠陥検査装置は、空中超音波を出射する超音波送信部200、試料内部から反射あるいは透過してくる超音波振動を検出する光干渉変位センサ100、レーザ光源ユニット1、レーザ光源ユニット1から出射したレーザ光を光干渉変位センサ100に導く偏波面保存ファイバ2、空中超音波の出射の制御と検出された超音波振動の振幅、位相の解析・処理、並びに超音波画像構成の制御を実行する信号制御・処理部300、検出された超音波信号から試料のx方向、y方向及びz方向の位置に関する3次元超音波画像を構成する3次元画像構成部500、及び3次元超音波画像の表示と欠陥判定を行う表示・欠陥判定部600から成る。
【0020】
信号制御・処理部300からの制御信号201に基づいて発信器202からパルス信号203あるいは連続波信号203が出力され、超音波送信部200から空中超音波204が出射される。超音波送信部200は、電圧の印加により振動して超音波を発する振動部と音響整合部材とを備え、音響整合部材が振動部に設けられることにより、振動部と空気との音響インピーダンスの差を抑制して、超音波を空中に伝搬させることができる。振動部としては一般に圧電素子が用いられ、音響整合部材としては、圧電素子と空気の双方に対して音響インピーダンスの差が小さいクレイ(粘土)や、エポキシ、ポリウレタン等が用いられる。空中超音波204は、圧延鋼板、複合鋼板や鋳物、あるいはセラミックス基板等の試料400の表面から内部に伝搬し、試料内部に生じた剥離、クラック、ボイド等の欠陥401で反射される。この反射超音波は減衰しながらも試料400表面に微弱な超音波振動205を励起する。
【0021】
波長632.8nmのHe−Neレーザや波長532nmの固体レーザで構成されるレーザ光源ユニット1から出射した直線偏光レーザ光を、偏波面保存ファイバ2で光干渉変位センサ100に導光する。光干渉変位センサ100から出射した測定光12が超音波振動205の励起部に照射され、その反射光には超音波振動に伴う位相変化が生じる。この位相変化が光干渉変位センサ100で干渉光の振幅変化として検出され、超音波信号51として出力される。
【0022】
超音波信号51は、信号制御・処理部300を経由して3次元画像構成部500に送られる。3次元画像構成部500では、超音波送信部200及び光干渉変位センサ100を試料400から一定距離離れた上空でx及びy方向に走査することによって得られる超音波画像セット501〜504を用いて、試料400の内部構造を示す3次元超音波画像を構成する。すなわち、超音波画像セット501は、時間軸信号(z方向信号)データを、超音波送信部200及び光干渉変位センサ100をx方向に走査しつつ複数枚収集したものであり、x方向及びz方向に関する2次元超音波画像に相当する。この動作を、さらに超音波送信部200及び光干渉変位センサ100をy方向に走査しつつ実行して、超音波画像セット502、503、504、・・・を繰り返し取得していくことにより、x方向、y方向、z方向に関する3次元超音波画像が構築される。時間軸信号(z方向信号)データ501〜504中の501aは、試料400表面400aからの反射超音波信号を表し、501bは裏面400bからの反射超音波信号を表す。一方、時間軸信号(z方向信号)データ502中の501cは、試料400内部の欠陥401からの反射超音波信号を表す。
【0023】
この3次元超音波画像は表示・欠陥判定部600に送られ、試料400の3次元超音波画像601がディスプレイ等に表示され、内部欠陥401が内部欠陥像602として顕在化される。
【0024】
尚、超音波送信部200から出射された空中超音波204が光干渉変位センサ100に直接入射することのないよう、両者の配置や振動抑制を考慮することはいうまでもない。
【0025】
本実施の形態における光干渉変位センサ100の構成とその機能について、図2〜図4に基づいて説明する。図2に示すように、光干渉変位センサ100は、光干渉計110及び超音波信号演算処理ユニット40から成る。光干渉計110では、偏波面保存ファイバ2から出射した90°方向の直線偏光レーザ光をコリメータ3で平行光4にし、さらにグラントムソンプリズムなどの偏光素子5を透過させ、透過光6をプリズムミラー7及び無偏光ビームスプリッタ8で反射させて、参照ミラー9に入射させる。
【0026】
参照ミラー9は、図3に示すように、フォトニック結晶9aで構成される。フォトニック結晶9aは、拡大斜視図に示すように、合成石英基板9a1上に入射光の波長よりも小さなピッチの45°方向のライン&スペース状の回折格子9a2を形成し、その上に屈折率の異なる誘電体薄膜9a3及び9a4を積層して構成される。誘電体薄膜9a3及び9a4を積層する際のバイアススパッタリング条件を制御することにより、薄膜層の断面構造には、回折格子の凹凸形状が膜厚方向に沿って最上層まで三角波形の凹凸形状として維持される。薄膜材料としては、Si、 SiO、TiO、Ta、Nbが適用可能である。このような回折格子をベースとする多層薄膜構造は、回折格子の方向を結晶軸方向(太い矢印で図示)とするフォトニック結晶となり、多層薄膜間の回折、干渉作用により複屈折特性(光学的異方性)を示し、入射光の偏光や透過・反射特性を制御することが可能となる(参照:(株)フォトニックラティス製品カタログ)。入射光の波長及び得たい特性を考慮して、回折格子ピッチ、深さ、各薄膜の膜厚は制御される。また、半導体素子製造に用いられるフォトリソグラフィ技術やスパッタリングなどの膜付け技術を用いることにより、1枚の基板上に結晶軸方向の異なる偏光素子や波長素子をアレイ状に形成できる点も大きな特徴である。本実施の形態において、フォトニック結晶9aは、偏光素子として機能する。すなわち、回折格子の方向(結晶軸方向)を45°とすることにより、参照ミラー9に入射した90°方向(6nで図示)の直線偏光レーザ光6のうち、結晶軸方向と同一のS偏光成分10rsはフォトニック結晶9a表面で反射し、結晶軸方向と直交するP偏光成分10mpはフォトニック結晶9aを透過する。参照ミラー9で反射されたS偏光ビーム10rを参照光として用い、透過したP偏光ビーム10mを測定光として用いる。フォトニック結晶9aの代わりに、ガラス基板上にAl等の金属材料で回折格子が形成されたワイヤグリッド偏光子(Wire Grid Polarizer)等の格子状偏光素子を用いることも可能である。
【0027】
参照ミラー9を透過したP偏光ビーム10mは、集光レンズ11により、収束光12として試料400表面の反射超音波振動205の励起部に集光される。すなわち、集光レンズ11の焦点位置が試料400表面と一致している。励起部からの反射光は集光レンズ11を透過した後、再びP偏光の平行光10mとなり、参照ミラー9を透過する。参照ミラー9で反射されたS偏光ビーム10r(参照光)と透過したP偏光ビーム10mは、直交偏光ビーム14として合成され、無偏光ビームスプリッタ8を透過する。
【0028】
この直交偏光ビーム14は、迷光除去のための開口13を通過した後、対向させた2つのピラミッド形状の四角錐プリズム15a及び15bにより、4つの直交偏光ビーム16に分割される。ビーム分割の方法は、このようなプリズムに限定されるものではなく、回折光学素子やキューブ形状のビームスプリッタの組み合わせなども適用可能である。4つの直交偏光ビームビーム16は、位相シフト素子17を透過することにより、直交偏光成分の間に、0、π/2、π、3π/2の位相シフトが与えられた状態で偏光干渉し、4つの位相シフト干渉光20が生成される。
【0029】
位相シフト素子17は、図4に示すように、2つのフォトニック結晶アレイ18及び19で構成される。フォトニック結晶アレイ18は2つの領域から成り、右下半分が合成石英18aで構成され、左上半分はフォトニック結晶18bで構成される。フォトニック結晶18bは、拡大斜視図に示すように、合成石英基板18b1上に入射光の波長よりも小さなピッチの45°方向のライン&スペース状の回折格子18b2を形成し、その上に屈折率の異なる誘電体薄膜18b3及び18b4を積層して構成される。フォトニック結晶18bは1/4波長板としての機能を有しており、太い矢印がその結晶軸方向を示している。すなわち、図2に示すように、4つの直交偏光ビーム16のうちフォトニック結晶18bを透過する2つの直交偏光ビームに関して、2つの偏光成分の間にπ/2の位相差が生じる。一方、残りの2つの直交偏光ビームは合成石英18aを透過し、位相差は生じない。
【0030】
フォトニック結晶アレイ19は、図4に示すように4つの領域から成り、左右の三角形部分が0°の結晶軸方向(太い矢印で図示)を有するフォトニック結晶19a及び19bで構成され、上下の三角形部分が直交する90°の結晶軸方向(太い矢印で図示)を有するフォトニック結晶19c及び19dで構成される。各領域のフォトニック結晶は、例えばフォトニック結晶19dを例にとると、拡大斜視図に示すように、合成石英基板19d1上に入射光の波長よりも小さなピッチの90°方向のライン&スペース状の回折格子19d2を形成し、その上に屈折率の異なる誘電体薄膜19d3及び19d4を積層して構成される。フォトニック結晶19a、19b、19cの構造も同様である。4つのフォトニック結晶19a、19b、19c、19dは、偏光素子としての機能を有しており、太い矢印がその結晶軸方向を示している。すなわち、図2に示すように、4つの直交偏光ビームビーム16のうちフォトニック結晶19a及び19bを透過する2つの直交偏光ビームを構成する2つの偏光成分と、フォトニック結晶19c及び19dを透過する2つの直交偏光ビームを構成する2つの偏光成分との間に、相対的にπの位相差が与えられた状態で、両偏光成分は干渉する。
【0031】
すなわち、2つのフォトニック結晶アレイ18及び19から成る位相シフト素子17を透過した4つの直交偏光ビーム16の各直交偏光成分は、0、π/2、π、3π/2の位相シフトが与えられた状態で偏光干渉し、4つの位相シフト干渉光20が生成される。4つの位相シフト干渉光20は、各々4つの結像レンズ21を透過することにより4つの収束光22として、フォトダイオードなどの4つの光電変換素子23の受光面上に集光して受光され、増幅器24で増幅された後、4つの位相シフト干渉信号31a、31b、31c、31dとして出力される。図2から明らかなように、4つの結像レンズ21の焦点位置は、光電変換素子23の受光面と一致している。従って、試料400の表面と光電変換素子23の受光面とは、集光レンズ11及び結像レンズ21を介して共役の関係、すなわち結像関係にある。そのため、試料400の表面に傾斜や微小な凹凸が生じていたいり、あるいは試料400表面が粗面であったとしても、表面からの反射光は、光電変換素子23の受光面上に正確に集光して受光され、安定な位相シフト干渉信号31a、31b、31c、31dが得られる。
【0032】
4つの位相シフト干渉信号31a、31b、31c、31dは、各々(1)〜(4)式で与えられる。
=I+I+2(I・I1/2cos(4πnD/λ)・・・(1)
=I+I+2(I・I1/2cos(4πnD/λ+π/2)
=I+I−2(I・I1/2sin(4πnD/λ)・・・(2)
=I+I+2(I・I1/2cos(4πnD/λ+π)
=I+I−2(I・I1/2cos(4πnD/λ)・・・(3)
=I+I+2(I・I1/2cos(4πnD/λ+3π/2)
=I+I+2(I・I1/2sin(4πnD/λ)・・・(4)
ここで、Iはプローブ光10mの検出強度、Iは参照光10rの検出強度、nは空気の屈折率、Dは試料400表面に励起された反射超音波振動205の振幅、λはレーザ光4の波長である。超音波信号演算処理ユニット40では、(5)式に基づいて試料400表面に励起された反射超音波振動205の振幅Dが算出されて、超音波信号51として信号制御・処理部300に入力される。
D=(λ/4πn)tan−1{(I−I)/(I−I)}・・・(5)
図2から明らかなように、試料400表面に照射される測定光10mと参照光10rの2つのビームは、光源ユニット1から出射されて光干渉変位センサ100に入射し、参照ミラー9に至るまで、更に参照ミラー9から4つの光電変換素子23で受光されるに至るまで、完全に同一の光路を通る。即ち、共通光路形干渉計の構成となる。従って、仮に光路中に空気の揺らぎ等による温度分布や屈折率分布、あるいは機械振動が生じたとしても、これらの外乱は両ビームに等しく影響を及ぼすため、両ビームが干渉した際にこれらの外乱の影響は完全に相殺され、干渉光は外乱の影響を受けない。唯一、参照ミラー9と試料400との間の光路において測定光10m及びその収束光12のみが存在するが、例えば、参照ミラー9と集光レンズ11との間隔を1mm以下とし、集光レンズ11の焦点距離を5mm程度以下にすれば、参照ミラー9と試料400との間隙は集光レンズ11の厚さ2mm程度を考慮しても、8mm以下に設定することが可能であり、このような微小間隙での外乱の影響は無視できる。また、レーザ光自身の強度変動は、(1)〜(4)式においてプローブ光検出強度I、参照光検出強度Iの変動となるが、超音波信号演算処理ユニット40における(5)式の中の減算処理及び除算処理により相殺される。
【0033】
さらに本実施の形態の光干渉変位センサ100では、単純な構成で4つの直交偏光ビームを生成し、かつアレイ状に配置したフォトニック結晶により空間的に並列に4つの位相シフト干渉光を生成し受光する構成となっているので、従来の位相シフト干渉計に比べ光学部品が大幅に低減し、光干渉変位センサが格段に小形化できるというメリットがある。具体的には、光干渉計110の寸法を20(W)×50(L)×14(H)mm程度に縮小化可能である。また、4つの位相シフト干渉光が近接した光路を通過するため、光路間に空気の揺らぎ等による温度分布、湿度分布、気圧分布、密度分布、気流変化などの外乱が重畳されたとしても、その影響を最小限に抑えることが可能になる。このように光干渉変位センサ100を小形にできるため、超音波送信部200と組み合わせて試料400上をx方向及びy方向に走査するのが、容易となる。
【0034】
試作した光干渉変位センサ100による微小変位の測定結果を、図5に示す。測定対象には圧電素子ステージを用いた。横軸は圧電素子ステージを1nmの範囲にわたって走査した時のステージ移動量を、縦軸は光干渉変位センサ100による測定変位を示している。測定された変位信号51sの変動幅から、光干渉変位センサ100の変位感度が40pm(ピコメートル)以下であり、従来の光干渉計の10倍以上の感度を有していることが判る。以上より、本光干渉変位センサ100により、温度、湿度、気圧、密度、音響振動といった環境因子を高精度に制御することなく、測定対象物の移動量や超音波振動の振幅をピコメートルオーダの感度で安定に計測することが可能である。すなわち、超音波送信部200において、音響整合部材が振動部に設けられることにより、振動部と空気との音響インピーダンスの差を抑制して、超音波を高い伝搬効率で空中に出射させることができるものの、この空中超音波は試料400に入射する際には大きく減衰する。その結果、内部欠陥から反射あるいは透過して、試料400表面に生じる超音波振動の振幅はサブナノメートル以下に減衰したものとなる。そのため、従来の光干渉計では、空中超音波の励起によって試料表面に生じるこの微弱な超音波振動を検出することは不可能であった。これに対し、図5に示すように、本実施の形態における光干渉変位センサ100は40pm以下の変位感度を有しており、空中超音波の励起によって試料表面に生じるピコメートルオーダの振幅の微弱な超音波振動を、初めて検出することが可能となった。
【0035】
本実施の形態では、内部欠陥から反射してくる超音波振動を検出するため、試料400に対し、超音波送信部200と同じ側に光干渉変位センサ100を配置したが、内部欠陥を透過してくる超音波振動を検出するため、超音波送信部200と反対側に光干渉変位センサ100を配置することも可能である。
【0036】
図1〜図5に示すように、本実施の形態によれば、空中超音波の励起によって試料表面に生じるピコメートルオーダの振幅の微弱な超音波振動を、外乱の影響を受けることなく高感度に検出することが可能となり、表面に傾斜や微小な凹凸を有する試料や、表面が粗面で構成されているような試料の内部欠陥を、非接触・非破壊で安定に検出可能となる。
【0037】
<実施の形態2>
本発明の実施の形態2を、図6に基づいて説明する。図6は、本実施の形態において、内部欠陥検査装置の中の光干渉変位センサ100を示す図である。
【0038】
実施の形態1では、レーザ光源ユニット1から出射した直線偏光レーザ光を、偏波面保存ファイバ2で光干渉変位センサ100に導光していた。これに対し、本実施の形態における光干渉変位センサ100では、図6に示すように、レーザ光源ユニット1と偏波面保存ファイバ2に代えて、レーザ光源としての半導体レーザ等の小形のレーザダイオード35を光干渉計110に内蔵する。ここで、レーザダイオード35はHe−Neレーザや固体レーザなどのレーザ光源とファイバカップラから成り、レーザ光源からの出射光をファイバカップラを介して偏波面保存ファイバに導くものである。従って、レーザダイオード35を用いることにより、ファイバで導光することなく、光干渉計の中にそのまま内蔵することができ、装置全体を小型化することができる。レーザダイオード35から出射した90°方向の直線偏光レーザ光36を、コリメーティングレンズ37で平行光4にし、さらにグラントムソンプリズムなどの偏光素子5を透過させ、透過光6をプリズムミラー7及び無偏光ビームスプリッタ8で反射させて、参照ミラー9に入射させる。以降の各部の構成とその機能、並びに内部欠陥検査装置の構成と各部の機能は、レーザ光源ユニット1及び偏波面保存ファイバ2を除いて、図1及び図2に示す実施の形態1と全く同様であるので、説明を省略する。
【0039】
図6に示すように、本実施の形態によれば、空中超音波の励起によって試料表面に生じるピコメートルオーダの振幅の微弱な超音波振動を、外乱の影響を受けることなく高感度に検出することが可能となり、表面に傾斜や微小な凹凸を有する試料や、表面が粗面で構成されているような試料の内部欠陥を、非接触・非破壊で安定に検出可能となる。さらに、本実施の形態によれば、レーザダイオードを光干渉変位センサ100に内蔵しているため、レーザ光源ユニットが不要となり、内部欠陥検査装置全体の大きさが小形となる。さらに、超音波送信部200と組み合わせて試料400上をx方向及びy方向に走査するのが、一層容易となる。
【0040】
<実施の形態3>
本発明の実施の形態3を、図7に基づいて説明する。図7は、本実施の形態において、内部欠陥検査装置の全体構成を示す図である。
【0041】
実施の形態1では、空中超音波を出射する超音波送信部200と、試料内部から反射あるいは透過してくる超音波振動を検出する光干渉変位センサ100を1台ずつ有し、これらをx方向及びy方向に走査することにより3次元超音波画像を得ていた。これに対し、本実施の形態では、図7に示すように、複数台の超音波送信部200a、200b、200c、200dをx方向に並べて配置し、複数の空中超音波204a、204b、204c、204dを同時にあるいは時系列的に出射する。一方、対応する位置に複数台の光干渉計110及び複数台の超音波信号演算処理ユニット40を内蔵した光干渉変位センサ100を配置する。光干渉変位センサ100からは、x方向に並んだ複数の測定光12a、12b、12c、12dが、試料400表面の複数の超音波振動205a、205b、205c、205dの各励起部に集光され、その反射光には超音波振動に伴う位相変化が生じる。この位相変化が光干渉変位センサ100で干渉光の振幅変化として検出され、複数の超音波信号51a、51b、51c、51dが出力され、信号制御・処理部300を経由して3次元画像構成部500に送られる。
【0042】
3次元画像構成部500では、超音波送信部200a、200b、200c、200d及び光干渉変位センサ100を試料400から一定距離離れた上空でy方向に走査することによって得られる超音波画像セット501〜504を用いて、試料400の内部構造を示す3次元超音波画像を構成する。以降の各部の機能は、実施の形態1と全く同様であるので、説明を省略する。尚、実施の形態2を本実施の形態に組み合わせることも可能である。
【0043】
本実施の形態において、超音波送信部及び光干渉計の台数を増やすことにより、より水平分解能の高い内部欠陥検査が可能であることはいうまでもない。また、複数台の超音波送信部に代えて、直線状の空中超音波を出射する超音波送信部を使用することも可能である。
【0044】
図7に示すように、本実施の形態によれば、空中超音波の励起によって試料表面に生じるピコメートルオーダの振幅の微弱な超音波振動を、外乱の影響を受けることなく高感度に検出することが可能となり、表面に傾斜や微小な凹凸を有する試料や、表面が粗面で構成されているような試料の内部欠陥を、非接触・非破壊で安定に検出可能となる。さらに、本実施の形態によれば、超音波送信部及び光干渉変位センサを試料から一定距離離れた上空でy方向にのみ走査することで、試料の3次元超音波画像が得られるので、走査機構が単純な構成になると同時に、内部欠陥検査の所要時間が短縮される。
<実施の形態4>
本発明の実施の形態4を、図8〜図11に基づいて説明する。図8は、本実施の形態において、内部欠陥検査装置の全体構成を示す図である。
【0045】
本実施の形態では、実施の形態3と同様に、複数台の超音波送信部200a、200b、200c、200dをx方向に並べて配置し、複数の空中超音波204a、204b、204c、204dを同時にあるいは時系列的に出射する。一方、光干渉変位センサ100からは、x方向に沿った直線状の測定光12wが、試料400表面の複数の超音波振動205a、205b、205c、205dの各励起部に照射され、その反射光には超音波振動に伴う位相変化が生じる。この位相変化が光干渉変位センサ100で干渉光の振幅変化として検出され、複数の超音波信号51wが出力され、信号制御・処理部300を経由して3次元画像構成部500に送られる。
【0046】
3次元画像構成部500では、超音波送信部200a、200b、200c、200d及び光干渉変位センサ100を試料400から一定距離離れた上空でy方向に走査することによって得られる超音波画像セット501〜504を用いて、試料400の内部構造を示す3次元超音波画像を構成する。以降の各部の機能は、実施の形態1と全く同様であるので、説明を省略する。
【0047】
本実施の形態における光干渉変位センサ100の構成とその機能について、図9〜図11に基づいて説明する。図9に示すように、光干渉変位センサ100は、直線状の測定光12を出射する光干渉計110w及び超音波信号演算処理ユニット40wから成る。光干渉計110wでは、偏波面保存ファイバ2から出射した90°方向の直線偏光レーザ光をコリメータ3で平行光4にし、さらにグラントムソンプリズムなどの偏光素子5を透過させ、透過光6を回折光学素子やホログラム素子、あるいはアナモルフィックプリズムペアのようなビーム整形素子80により、矩形状ビーム81に変換する。矩形状ビーム81をプリズムミラー7及び無偏光ビームスプリッタ8で反射させて、参照ミラー9に入射させる。
【0048】
参照ミラー9は、図3に示すように、フォトニック結晶9aで構成される。フォトニック結晶9aは、拡大斜視図に示すように、合成石英基板9a1上に入射光の波長よりも小さなピッチの45°方向のライン&スペース状の回折格子9a2を形成し、その上に屈折率の異なる誘電体薄膜9a3及び9a4を積層して構成される。誘電体薄膜9a3及び9a4を積層する際のバイアススパッタリング条件を制御することにより、薄膜層の断面構造には、回折格子の凹凸形状が膜厚方向に沿って最上層まで三角波形の凹凸形状として維持される。薄膜材料としては、Si、 SiO、TiO、Ta、Nbが適用可能である。このような回折格子をベースとする多層薄膜構造は、回折格子の方向を結晶軸方向(太い矢印で図示)とするフォトニック結晶となり、多層薄膜間の回折、干渉作用により複屈折特性(光学的異方性)を示し、入射光の偏光や透過・反射特性を制御することが可能となる。入射光の波長及び得たい特性を考慮して、回折格子ピッチ、深さ、各薄膜の膜厚は制御される。また、半導体素子製造に用いられるフォトリソグラフィ技術やスパッタリングなどの膜付け技術を用いることにより、1枚の基板上に結晶軸方向の異なる偏光素子や波長素子をアレイ状に形成できる点も大きな特徴である。本実施の形態において、フォトニック結晶9aは、偏光素子として機能する。すなわち、回折格子の方向(結晶軸方向)を45°とすることにより、参照ミラー9に入射した90°方向(6nで図示)の矩形状直線偏光レーザ光6のうち、結晶軸方向と同一の矩形状S偏光成分10rsはフォトニック結晶9a表面で反射し、結晶軸方向と直交する矩形状P偏光成分10mpはフォトニック結晶9aを透過する。参照ミラー9で反射された矩形状S偏光ビーム10rを参照光として用い、透過した矩形状P偏光ビーム10mを測定光として用いる。フォトニック結晶9aの代わりに、ガラス基板上にAl等の金属材料で回折格子が形成されたワイヤグリッド偏光子(Wire Grid Polarizer)等の格子状偏光素子を用いることも可能である。
【0049】
参照ミラー9を透過した矩形状P偏光ビーム10mは、集光レンズ11wにより集光され、収束光12wとして試料400表面の複数の超音波振動205a、205b、205c、205dの励起部沿って直線状に集光される。すなわち、集光レンズ11wの焦点位置が試料400表面と一致している。励起部からの反射光は集光レンズ11を透過した後、再びP偏光の矩形状平行光10mとなり、参照ミラー9を透過する。参照ミラー9で反射された矩形状S偏光ビーム10r(参照光)と透過した矩形状P偏光ビーム10mは、矩形状直交偏光ビーム82として合成され、無偏光ビームスプリッタ8を透過する。
【0050】
この矩形状直交偏光ビーム82は、位相シフト素子83を透過することにより、直交偏光成分の間に、0、π/2、π、3π/2の位相シフトが与えられた状態で偏光干渉し、直線状集光スポット12wの長手方向と直交する方向に分割された4つの位相シフト干渉光86が生成される。
【0051】
位相シフト素子83は、図10に示すように、2つのフォトニック結晶アレイ84及び85で構成される。フォトニック結晶アレイ84は直線状集光スポット12wの長手方向と直交する方向に分割された2つの領域から成り、下半分が合成石英84aで構成され、上半分はフォトニック結晶84bで構成される。フォトニック結晶84bの構成と原理は、参照ミラー9と同様であるので、説明を省略する。フォトニック結晶84bは1/4波長板としての機能を有しており、45°方向の太い矢印がその結晶軸方向を示している。すなわち、図9に示すように、矩形状直交偏光ビーム82のうちフォトニック結晶84bを透過する直交偏光ビームに関して、2つの偏光成分の間にπ/2の位相差が生じる。一方、合成石英84aを透過する直交偏光ビームに関しては、2つの偏光成分の間に位相差は生じない。
【0052】
フォトニック結晶アレイ85は、図10に示すように直線状集光スポット12wの長手方向と直交する方向に4分割され、0°の結晶軸方向を有するフォトニック結晶85a及び85bと、直交する90°の結晶軸方向を有するフォトニック結晶85c及び85dが交互に並んでいる。フォトニック結晶85a、85b、85c、85dは偏光素子としての機能を有しており、太い矢印がその結晶軸方向を示している。すなわち、図9に示すように、矩形状直交偏光ビーム82のうちフォトニック結晶85a及び85bを透過する直交偏光ビームを構成する2つの偏光成分と、フォトニック結晶85c及び85dを透過する直交偏光ビームを構成する2つの偏光成分との間に、相対的にπの位相差が与えられた状態で、両偏光成分は干渉する。
【0053】
すなわち、2つのフォトニック結晶アレイ84及び85から成る位相シフト素子83を透過した矩形状直交偏光ビーム82の長手方向と直交する方向の各直交偏光成分の間に、0、π/2、π、3π/2、の位相シフトが与えられた状態で偏光干渉し、直線状集光スポット12wの長手方向と直交する方向に4分割され、かつ直線状集光スポット12wの長手方向に共役な位相シフト干渉光86が生成される。位相シフト干渉光86は、図9に示すように、直線状集光スポット12wの長手方向と位相シフト素子83の4つの領域に対応したN×4個のレンズアレイ87により、N×4個の収束光88として、N画素×4の受光領域から成るフォトダイオードアレイなどの分割形光電変換素子89の受光面上に集光して受光され、増幅器90で増幅された後、N×4個の位相シフト干渉信号31wとして出力される。図11に示すように、受光領域89a、89b、89c、89dがそれぞれ図10のフォトニック結晶アレイ85のフォトニック結晶85a、85b、85c、85dに対応する。また、図9から明らかなように、レンズアレイ87の焦点位置は、光電変換素子89の受光面と一致している。従って、試料400の表面と光電変換素子89の受光面とは、集光レンズ11w及びレンズアレイ87を介して共役の関係、すなわち結像関係にある。そのため、試料400の表面に傾斜や微小な凹凸が生じていたいり、あるいは試料400表面が粗面であったとしても、表面からの反射光は、光電変換素子89の受光面上に正確に集光して受光され、安定な位相シフト干渉信号31wが得られる。
【0054】
N画素分に対応した4つの位相シフト干渉信号31wは、実施の形態1と同様、各々(1)〜(4)式で与えられ、超音波信号演算処理ユニット40wでは、(5)式に基づいてN個の各画素毎に試料400表面に励起された反射超音波振動205a〜205dの振幅Dが算出されて、N個の超音波信号51wとして信号制御・処理部300に入力される。
【0055】
図8及び図9に示すように、本実施の形態によれば、空中超音波の励起によって試料表面に生じるピコメートルオーダの振幅の微弱な超音波振動を、外乱の影響を受けることなく高感度に検出することが可能となり、表面に傾斜や微小な凹凸を有する試料や、表面が粗面で構成されているような試料の内部欠陥を、非接触・非破壊で安定に検出可能となる。さらに、本実施の形態によれば、超音波送信部及び光干渉変位センサを試料から一定距離離れた上空でy方向にのみ走査することで、試料の3次元超音波画像が得られるので、走査機構が単純な構成になると同時に、内部欠陥検査の所要時間が短縮される。
【0056】
また、実施の形態3では、複数台の光干渉計を用いて試料の複数点の超音波信号を同時に検出するので、走査機構が単純な構成になると同時に、内部欠陥検査の所要時間が短縮されるというメリットを有している。しかし、その一方で、光干渉変位センサの構成が複雑になっていた。一方、本実施の形態によれば、矩形状ビームを用いることにより、光干渉計は1台で済むため、実施の形態3と同じメリットを有すと同時に、光干渉変位センサの構成が単純になり、コスト低減を実現することができる。
【0057】
上記4つの実施の形態において、フォトニック結晶アレイの代わりに、ガラス基板上にAl等の金属材料で回折格子が形成されたワイヤグリッド偏光子(Wire Grid Polarizer)等の格子状偏光素子を用いることも可能である。
<実施の形態1〜4の効果>
以上説明したように、実施の形態1〜4によれば、空中超音波の励起によって試料表面に生じるピコメートルオーダの振幅の微弱な超音波振動を、外乱の影響を受けることなく高感度に検出することが可能となり、表面に傾斜や微小な凹凸を有する試料や、表面が粗面で構成されているような試料の内部欠陥を、非接触・非破壊で安定に検出可能となる。その結果、圧延鋼板、複合鋼板や鋳物、あるいはセラミックス基板等に生じた、剥離、クラック、ボイド等の内部欠陥の非接触・非破壊検査が可能になる。
【0058】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0059】
1…レーザ光源ユニット 2…偏波面保存ファイバ 3…コリメータ 5…偏光素子 7…プリズムミラー 8…無偏光ビームスプリッタ 9…参照ミラー 9a、18b、19a、19b、19c、19d、84b、85a、85b、85c、85d…フォトニック結晶 10m…測定光 10r…参照光 11、11w…集光レンズ 12、12a、12b、12c、12d、12w、22、88…収束光 13…開口 14、16、82…直交偏光ビーム 15a、15b…四角錐プリズム 17、83…位相シフト素子 18、19、84、85…フォトニック結晶アレイ 20、86…位相シフト干渉光 結像レンズ…21 23…光電変換素子 24、90…増幅器 31a、31b、31c、31d、31w…位相シフト干渉信号 35…レーザダイオード 36…直線偏光レーザ光 37…コリメーティングレンズ
40、40w…超音波信号演算処理ユニット 51、51a、51b、51c、51d、51w、501a、501b、501c…超音波信号 80…ビーム整形素子 87…レンズアレイ 89…分割形光電変換素子 100、110w…光干渉変位センサ 110…光干渉計 200、200a、200b、200c、200d…超音波送信部 201…制御信号 202…発信機 203…パルス信号、連続波信号 204、204a、204b、204c、204d…空中超音波 205、205a、205b、205c、205d…反射超音波振動 300…信号制御・処理部 400…試料 401…欠陥 500…3次元画像構成部 501〜504…超音波画像セット 600…表示・欠陥判定部 601…3次元超音波画像 602…内部欠陥像

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波送信部から試料に向けて超音波を出射させて、試料から反射した超音波を結像形共通光路干渉計により干渉信号として検出し、前記干渉信号から超音波信号を得て、該超音波信号から試料内部の欠陥を検出することを特徴とする内部欠陥検査方法。
【請求項2】
請求項1に記載の内部欠陥検査方法において、
前記結像形共通光路干渉計は、レーザ光を出射し、参照ミラーにレーザ光の一部を反射させ、前記参照ミラーを透過したレーザ光を試料で反射させ、前記参照ミラー及び試料で反射したレーザ光を位相シフト素子により位相差を与えた状態で偏光干渉させて検出することを特徴とする内部欠陥検査方法。
【請求項3】
請求項2に記載の内部欠陥検査方法において、
前記結像形共通光路干渉計は、前記参照ミラーを透過したレーザ光を集光レンズにより前記試料表面に集光させ、前記位相シフト素子を透過したレーザ光を結像レンズにより集光させることを特徴とする内部欠陥検査方法。
【請求項4】
請求項1に記載の内部欠陥検査方法において、
前記結像形共通光路干渉計は、レーザ光源から出射したレーザ光を偏波面保存ファイバにより導光することを特徴とする内部欠陥検査方法。
【請求項5】
請求項1に記載の内部欠陥検査方法において、
前記結像形共通光路干渉計は、レーザダイオードから出射したレーザ光をコリメーティングレンズで平行光にし、参照ミラーに入射させることを特徴とする内部欠陥検査方法。
【請求項6】
請求項1に記載の内部欠陥検査方法において、
複数の前記超音波送信部から空中に超音波を出射させて、試料内部からの超音波振動を試料表面にて複数の結像形共通光路干渉計により検出することを特徴とする内部欠陥検査方法。
【請求項7】
請求項6に記載の内部欠陥検査方法において、
レーザ光を整形素子により矩形状ビームに変換し、参照ミラーに入射させることを特徴とする内部欠陥検査方法。
【請求項8】
空中に超音波を出射させて試料内部に伝搬させる超音波送信部と、
試料内部を伝搬する該超音波を超音波振動として試料表面にて検出する結像形共通光路干渉計と、
該結像形共通光路干渉計で検出された干渉信号から超音波信号を検出する超音波信号検出手段とを備える特徴とする内部欠陥検査装置。
【請求項9】
請求項8に記載の内部欠陥検査装置において、
前記結像形共通光路干渉計は、レーザ光を出射するレーザー光源と、レーザー光の一部を反射し一部を透過する参照ミラーと、レーザー光に位相差を与える位相シフト素子とを備えることを特徴とする内部欠陥検査装置。
【請求項10】
請求項9に記載の内部欠陥検査装置において、
前記結像形共通光路干渉計は、前記参照ミラーを透過したレーザー光を前記試料表面に集光させる集光レンズと、前記位相シフト素子を透過したレーザー光を集光させる結像レンズとを備えることを特徴とする内部欠陥検査装置。
【請求項11】
請求項9に記載の内部欠陥検査装置において、
前記参照ミラーを、格子状偏光素子で構成することを特徴とする内部欠陥検査装置。
【請求項12】
請求項9に記載の内部欠陥検査装置において、
前記位相シフト素子を、格子状偏光素子で構成することを特徴とする内部欠陥検査装置。
【請求項13】
請求項9に記載の内部欠陥検査装置において、
前記参照ミラーを、フォトニック結晶で構成することを特徴とする内部欠陥検査装置。
【請求項14】
請求項9に記載の内部欠陥検査装置において、
前記位相シフト素子を、フォトニック結晶で構成することを特徴とする内部欠陥検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−47607(P2012−47607A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−190253(P2010−190253)
【出願日】平成22年8月27日(2010.8.27)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】