内部汚れ付着が制御された濾過
供給液側と浸透液側とを有する濾過膜を有する精密または限外濾過モジュールにおいて、濾過された浸透液の一部を濾過モジュールの浸透液側に再循環させて濾過膜の供給液側及び浸透液側における並流を維持しつつ、供給液側と浸透液側との圧力差をゼロにするか又は逆転させる操作によって濾過膜に付着した汚染物質を追い出して洗い流し、濾過膜の付着汚れを低減もしくは除去する濾過方法及び濾過システムに関し、ポリペプチド、核酸、糖タンパク質、または生体高分子等の濾過に適した濾過方法及び濾過システムに関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
<関連発明とのクロスリファレンス>
本願は、2007年9月12日出願の米国仮出願No.60/971,769に基づく優先権を主張し、この仮出願の全内容を本願に参照として組み込む。
【0002】
文中の見出しは単に内容を分かり易くするためのものであり、本願の主題を限定するものではない。
【0003】
本願発明は、内部汚れ付着が制御された濾過に関し、特に均一な膜透過差圧が得られ、内部汚れ付着が制御された濾過膜を用いた固/液分離濾過に関する。
【背景技術】
【0004】
精密濾過と限外濾過は、生物学的培養液やその他の液体中の溶質の分離に用いられている。飲料業ではビールやワインの浄化に精密濾過が用いられ、乳業では例えば乳清やミルクの加工に精密濾過と限外濾過が用いられている。最近、バイオテクノロジー業界で製品の分離や精製に精密濾過が徐々に用いられ始めている。
【0005】
精密濾過は原理的に、例えば発酵後の懸濁液、ミルク、あるいは果肉入りジュース等の、固形分の多い懸濁液から溶質を分離する際に好ましい方法である。プレートとフレーム、セラミックチューブ、中空繊維、あるいは濾過膜等の様々な精密濾過方式が用いられている。
プレートとフレームは殆ど用いられないが、固形分の多い濃縮液を処理することができる。しかしプレートとフレームは比較的高価であり、工業スケールで用いる場合、非常に大きな設置面積が必要である。
セラミックチューブは、処理能力が大きいこと、操作が容易なこと、滅菌/洗浄が容易なこと、膜の寿命が長いことから、乳業や食品業で広く用いられている。しかし、セラミックチューブは一般に非常に高価である。また、付着汚れを最小にするために非常に高いクロスフローを維持する必要があるため、他の精密濾過方式と比べてより大きなエネルギーが必要である。
中空繊維はセラミックチューブの代替である。中空繊維は強度が低く、セラミックチューブほど運転操作が容易ではない。しかし中空繊維は低コストであり、セラミックチューブやフレームの場合と比べて設置面積がはるかに小さい。
【0006】
ある種の精密濾過に、螺旋状に巻かれた濾過膜(以下、螺旋状濾過膜)が用いられている。一般に螺旋状濾過膜は、浸透液を捕集するための多数の孔が設けられた浸透チューブの外周に、シート状の濾過膜が巻きつけられた構成になっている。
図3に示すように、螺旋状濾過膜モジュールの典型的な構造は、円筒状の外筒と、浸透液を回収するための多数の孔またはスロットが設けられ、外筒内に封入された回収チューブから成る。
2層の濾過膜と、この2層の濾過膜の間に挟みこまれた浸透流路層とから成るシートが回収チューブに螺旋状に巻きつけられ、さらに巻きつけられたシートを離間させて供給流路を形成するためのスペーサが設けられている。浸透流路層は一般に多数の開口を有する材料であり、浸透液を螺旋状に巻かれた膜の各層から回収チューブへ導く。
操業時には、分離処理される供給液が円筒状の外筒の一端に供給され、供給流路とスペーサに沿って円筒軸方向に流れる。固形成分を含む未透過液の流れは、円筒状の外筒の他端から排出される。回収チューブの近傍にない濾過膜と浸透流路層の端部はシールされており、浸透液を保持するとともに、浸透液の流れを濾過膜の間の浸透流路層から回収チューブへと導く。濾過膜を通過した浸透液は、浸透液回収手段を円筒半径方向に回収チューブに向けて流れ、回収チューブから浸透液出口から排出される。
【0007】
螺旋状濾過膜の商業スケールでの使用は、高度に希釈された(低固形成分量)プロセスの流体処理に限られてきた。螺旋状濾過膜モジュールは、単独で使用されるか、あるいは比較的低固形成分量の流体の分離用に高圧逆浸透と組合せるか、または低圧限外濾過と組み合わせて用いられることが多い。高圧逆浸透との組み合せの例として塩水からの純水の製造が挙げられ、低圧限外濾過との組み合わせの例として食品業での乳清タンパクの濃縮が挙げられる。
理論的には、螺旋状濾過膜を用いた装置は、濾過装置の設置面積に比して相対的に大きな分離濾過膜面積が得られる。他の条件が同じである限り、濾過装置の膜面積が大きくなる程より大きな浸透率が得られるはずである。
しかし、螺旋状濾過膜は短時間で付着汚れが生じる傾向がある。付着汚れは装置の処理能力を決める流束を低下させ、生産量を決める透過量を低下させる。残念ながら、螺旋状濾過膜の入り口側の膜透過差圧(TMP)は、出口側のTMPより大きい。このため、未透過液側では圧力勾配が生じる一方、透過液側では濾過膜全体にわたり一定で低圧となる。従って、一般に最適なTMPは濾過膜の狭い範囲でしか得られない。
この最適範囲より上流側では、濾過膜に過大な圧力が加わり付着汚れが生じやすい一方、この最適範囲より下流側では、TMPが低いことにより十分な流束が得られない。螺旋状濾過膜を直列にして用いることがあるが、これは付着汚れの問題を悪化させる。
【0008】
逆洗は、フィルターの流束を回復させ、付着汚れを除去する方法として広く知られている。逆洗は螺旋状濾過でも行われており、例えば回収した浸透液を強制的に浸透流路層に逆流させ、濾過膜の浸透液側から強く加圧する。従来、逆洗法では濾過膜の浸透液側の異なる位置での均一な膜透過差圧は得られなかった。浸透液側の圧力勾配は、浸透液バックフロー入口の方がより高く、浸透流路層バックフロー入口から離れた位置では相対的に低くなりがちである。
従って、濾過膜の軸方向に沿った場所によって付着汚れ除去効果と流束回復効果は大きく異なり、また予測不能である。従来の逆洗では、浸透液側で十分な逆洗圧力が生じないために十分な洗浄効果が得られないか、または浸透液側で付着汚れが除去される高い逆洗圧力が生じるものの、濾過膜が損傷されて層剥離を生じる結果となっていた。
このように浸透液を逆流させる逆洗法の場合、付着汚れ除去効果を生じるウォーターハンマーあるいは流体衝撃波を生じるであろうが、これは濾過膜にとっては過酷である。また、このような逆洗処理を用いて濾過を繰り返し行うと、付着汚れ除去効果と流束回復効果の程度が次第に低下する。
逆洗効果を高めるために加圧空気を用いることもある。しかし、螺旋状濾過膜が空気圧による逆洗に耐えられるほど頑丈ではない場合がある。例えばTrisep社やGrahamtek社等のいくつかの製造業者は、逆洗のストレスに耐えられる設計の螺旋状濾過膜を製造している。
【0009】
Baruah, G., et al., J Membrane Sci, 21 A (2006) 56-63には、パルス逆洗装置と、均一膜透過差圧(UTMP)を得るための浸透液並流再循環手段と、冷却/温度制御手段を備えるセラミック精密濾過膜を有する精密濾過プラントで、遺伝子組み換えヤギのミルクの濾過について試験した結果が開示されている。
パルス逆洗は、浸透液をトラップすることにより行われる。これは、パルス逆洗バルブとポンプの出口の後ろにあるバルブを閉めることにより行われる。逆洗装置のバイパス流量を調整することにより装置に逆流する液体の流量が変動し、パルス逆洗が行われる。
しかし、この方法ではパルス逆洗中に濾液流路において不均一な背圧が生じると考えられる。この場合、得られる濾過膜の付着汚れ除去効果も不均一になるため好ましくない。またセラミックフィルターは他のMF方式、例えば螺旋状濾過膜より高価であり、また単位長さ当りの実効面積が螺旋状濾過膜より小さくなる。
Brandsma, R.L., et al., J Dairy Sci, (1999) 82:2063-2069には、UTMP能力を有するとされるMFシステムを用いて、チーズを製造する前に酸性化したスキムミルクを精密濾過することによって乳清タンパクとカルシウムを減少させることが開示されている。
濾過手段としてアルミナベースのセラミック膜を用い、UTMPシステムを使用する際、このセラミック膜を1.5重量%のNaOHと1.5重量%の硝酸を交互に用いて逆洗を行っている。このように、Brandsmaらが開示した逆洗方法では、セラミック膜を濾液以外の薬品を用いて洗浄している。濾液以外の強力な薬品を使用することと、この薬品を用いてフィルターを洗浄することにより生産が長時間中断することは好ましくない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
低濃度から高濃度の固形成分を含む供給ストリームの液/固分離工程において、中断することなくより長時間操業することが可能で、装置及び操業コストが低く、薬品を添加して洗浄することなく効果的な付着汚れ除去を行うことができる、高流量と高生産性が得られる濾過方法が求められている。
【0011】
クロスフロー濾過を用い、分子量の違いを利用して溶質または成分を分離することもできる。ナノ濾過を用いた蔗糖の分離がその一例である。別の例はミルクのタンパク質(主にカゼインと乳清)の分離であり、食品業界で活発に研究されている。成功例として、高クロスフロー流速を用いたチューブ状のセラミック濾過膜が知られている。
しかし、このタイプのプロセスは、ポリマー製螺旋状濾過膜を用いたとき、その流動特性のため不十分な結果しか得られなかった。これは、螺旋状濾過膜の操業中、極性を帯びた粒子の層が次第に形成されることに原因がある。この付着汚れ層は流束の低下と、溶質、特に乳清タンパクの不透過の原因となる。付着汚れ層の蓄積は、TMPとクロスフロー流速との比が増加するに従い激しさを増す。
クロスフローとTMPとを分離できるシステムであれば、最小限の付着汚れで操業することができるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0012】
一側面では、この発明は濾過方法に関し、向かい合う浸透液側と未透過液側とを有する濾過膜と、入口及び出口と、軸方向に沿って濾過膜の未透過液側を入口から出口に向け流れる供給流と、軸方向に沿って濾過膜の浸透液側を入口から出口に向け流れる浸透液流と、並流浸透液再循環流を濾過膜モジュールに供給する浸透液再循環ループとを備える濾過膜モジュールを準備するステップと;
濾過膜の浸透液側または未透過液側の流量または圧力を調整して、濾過膜の浸透液側と未透過液側の入口及び出口におけるベースライン圧力の差が実質的に一定になるように、濾過膜の浸透液側と未透過液側の入口及び出口のベースライン圧力を設定するステップであって、濾過膜の浸透液側の入口のベースライン圧力が出口のベースライン圧力より高く、濾過膜の未透過液側の入口のベースライン圧力が出口のベースライン圧力より高いステップと;
濾過膜の浸透液側の圧力を定期的に調整し、入口及び出口における浸透液側と未透過液側の圧力の差を、前記ベースライン圧力の差に対し少なくとも50%以下になるように低下させるステップとを含む、濾過方法に関する。
1つの実施形態では、濾過膜は螺旋状濾過膜である。
【0013】
いくつかの実施形態では、浸透液側の圧力の定期的調整を1分から6時間おきに1秒間から60秒間行い、定期的調整と定期的調整の間に、分離モードでの操業を行う。
ひとつの実施形態では、濾過膜の浸透液側の圧力を定期的に低下させるとき、濾過膜の浸透液側と未透過液側の入口と出口における圧力の差が実質的にゼロになるように調整する。
【0014】
いくつかの実施形態では、この方法には、浸透液の圧力を上げるか、または未透過液の圧力を下げることによって、定期的に濾過膜の未透過液側の圧力に対し浸透液側の圧力を制御可能な範囲で高くして、濾過膜を通るバックフローを生じさせる逆膜透過差圧(rUTMP)プロセスを行うステップが含まれ、この逆UTMPプロセスを実施しているとき濾過膜の浸透液側と未透過液側における入口から出口に向かう軸方向の流れを維持し、ここで、逆UTMPプロセスを実施しているとき入口と出口における濾過膜の浸透液側と未透過液側の圧力差を実質的に一定にする。
いくつかの実施形態では、逆UTMPプロセスを1分から6時間おきに1秒間から60秒間行い、この定期的調整と定期的調整の間に分離モードでの操業を行う。
【0015】
別の側面では、この発明は濾過方法に関し、向かい合う浸透液側と未透過液側とを有する濾過膜と、入口及び出口と、軸方向に沿って濾過膜の未透過液側を入口から出口に向け流れる供給流と、軸方向に沿って濾過膜の浸透液側を入口から出口に向け流れる浸透液流と、並流浸透液再循環流を供給する再循環ループとを備える螺旋状濾過膜モジュールを準備するステップと;
浸透液流の流量を調整して、濾過膜の浸透液側と未透過液側の入口及び出口におけるベースライン圧力の差が実質的に一定になるように、濾過膜の浸透液側と未透過液側の入口及び出口におけるベースライン圧力を設定するステップであって、濾過膜の浸透液側の入口のベースライン圧力が出口のベースライン圧力より高く、濾過膜の未透過液側の入口のベースライン圧力が出口のベースライン圧力より高いステップとを含む、濾過方法に関する。
ひとつの実施形態では、濾過膜は螺旋状濾過膜である。
【0016】
いくつかの実施形態では、この方法には、濾過膜の浸透液側の圧力を定期的に調整して、入口及び出口における浸透液側と未透過液側の圧力の差を、浸透液側と未透過液側のベースライン圧力の差に対し少なくとも50%以下になるように低下させるステップが含まれる。
ひとつの実施形態では、濾過膜の浸透液側の圧力を定期的に低下させるとき、濾過膜の浸透液側と未透過液側の入口と出口における圧力の差が実質的にゼロになるように調整する。
いくつかの実施形態では、圧力の定期的調整を1分から30分おきに1秒間から10秒間行い、この定期的調整と定期的調整の間に分離モードでの操業を行う。
【0017】
いくつかの実施形態では、この方法には、濾過膜の浸透液側について、浸透液の圧力を上げるか、または未透過液の圧力を下げることによって、定期的に濾過膜の未透過液側の圧力に対し浸透液側の圧力を制御可能な範囲で高くして、濾過膜を通るバックフローを生じさせる逆膜透過差圧(rUTMP)プロセスを行うことが含まれる。逆UTMPプロセスの間、濾過膜の浸透液側と未透過液側における入口から出口に向かう軸方向の流れを維持する。ここで、逆UTMPプロセスにおける濾過膜の浸透液側と未透過液側の入口と出口での圧力差は実質的に一定である。
【0018】
別の側面では、この発明は濾過方法に関し、向かい合う浸透液側と未透過液側とを有する濾過膜と、入口及び出口と、軸方向に沿って濾過膜の未透過液側を入口から出口に向け流れる供給流と、濾過膜の浸透液側を入口から出口に向け流れる浸透液流と、並流浸透液再循環流を供給する浸透液再循環ループとを備える濾過膜モジュールを準備するステップと;
浸透液側の流量を調整して、濾過膜の浸透液側と未透過液側の入口及び出口における圧力の差が実質的に一定になるようするステップであって、濾過膜の浸透液側の入口のベースライン圧力が出口のベースライン圧力より高く、濾過膜の未透過液側の入口のベースライン圧力が出口のベースライン圧力より高いステップと;
浸透液の圧力を上げるか、または未透過液の圧力を下げることによって、定期的に濾過膜の未透過液側の圧力に対し浸透液側の圧力を制御可能な範囲で高くして、濾過膜を通るバックフローを生じさせる逆膜透過差圧(rUTMP)プロセスを、浸透液側について行うことが含まれ、逆UTMPプロセスを実施しているとき、濾過膜の浸透液側と未透過液側における入口から出口に向かう軸方向の流れを維持し、ここで、逆UTMPプロセスを実施しているとき、濾過膜の浸透液側と未透過液側の入口と出口での圧力差を実質的に一定にするステップとが含まれる。
ひとつの実施形態では、濾過膜は螺旋状濾過膜である。
【0019】
別の側面では、この発明は濾過処理される流体を螺旋状濾過膜によって浸透液と未透過液とに分離する濾過方法に関し、
(a)分離処理する供給液を所定の流量で供給液入口に流入させ、螺旋状濾過膜の未透過液側において加圧下で軸方向に流動させ、螺旋状濾過膜モジュールの未透過液流路を通して第1流動方向に流動させるステップと、
(b)螺旋状濾過膜モジュールの未透過液出口から、軸方向に流動する未透過液を排出するステップと、
(c)濾過膜の透過液側の反対側である浸透液側にある浸透液流路内を半径方向に流れる浸透液を、浸透液流路と液流通可能で、少なくとも1の流動抵抗部材を有する浸透液回収チューブに回収するステップと、
(d)回収した浸透液を中央浸透液回収チューブから浸透液出口へ向けて流し、螺旋状濾過膜モジュールから排出させるステップと、
(e)浸透液回収チューブから排出された浸透液の一部を、所定の浸透液流量で浸透液入口へ送り返すステップと、
(f)浸透液の流量を調整して、濾過膜の浸透液側と未透過液側の入口及び出口におけるベースライン圧力の差が実質的に一定になるように、濾過膜の浸透液側と未透過液側の入口及び出口のベースライン圧力を設定するステップであって、濾過膜の浸透液側の入口のベースライン圧力が出口のベースライン圧力より高く、濾過膜の未透過液側の入口のベースライン圧力が出口のベースライン圧力より高いステップと、から成る濾過方法に関する。
【0020】
1つの実施形態では、この方法にはさらに、(g) 濾過膜の浸透液側の圧力を定期的に調整して、入口及び出口における浸透液側と未透過液側の圧力の差を、浸透液側と未透過液側のベースライン圧力の差に対し少なくとも50%以下になるように低下させるステップが含まれる。
いくつかの実施形態では、濾過膜の浸透液側の圧力を定期的に低下させるとき、濾過膜の浸透液側と未透過液側の入口と出口における圧力の差が実質的にゼロになるように調整するステップが含まれる。
いくつかの実施形態では、圧力の定期的調整を1分から6時間おきに1秒間から60秒間行い、この定期的調整と定期的調整の間に分離モードでの操業を行う。
1つの実施形態では、濾過膜の浸透液側の圧力を定期的に低下させるとき、濾過膜の浸透液側と未透過液側の入口と出口における圧力の差が実質的にゼロになるように調整する。
【0021】
1つの実施形態では、この方法にはさらに(g)浸透液の圧力を上げるか、または未透過液の圧力を下げることによって、濾過膜の未透過液側の圧力に対し浸透液側の圧力を制御可能な範囲で高くして、濾過膜を通るバックフローを生じさせる逆UTMPプロセスを、定期的に浸透液側について行うことが含まれ、この逆UTMPプロセスの間は濾過膜の浸透液側と未透過液側における入口から出口に向かう軸方向の流れを維持し、ここで逆UTMPプロセスの間の濾過膜の浸透液側と未透過液側の入口と出口における圧力差を実質的に一定にするステップが含まれる。
いくつかの実施形態では、逆UTMPプロセスを1分から6時間おきに1秒間から60秒間行い、この定期的調整と定期的調整の間に分離モードでの操業を行う。
いくつかの実施形態では、逆UTMPプロセスの間、濾過膜の全長にわたって膜透過差圧(TMP) の変動幅は濾過膜の軸方向両端におけるTMP値に対して40%未満である。
いくつかの実施形態では、逆UTMPプロセスの間、未透過液流路と浸透液流路は約0.1から約10barの加圧下に継続的に保たれる。
【0022】
いくつかの実施形態では、この発明の方法では、濾過膜の浸透液側に流動抵抗部材が設けられ、流動抵抗部材を通過する浸透液の流れと流量は、制御された圧力勾配を生じるようにして変化させられる。
いくつかの実施形態では、流動抵抗部材は、一体のテーパー形状挿入部材、浸透液が流れる回収チューブ内の内部スペースに充填された多孔質媒体、浸透液が流れる回収チューブ内に設けられたスタティックミキサー、浸透液が流れる回収チューブの内壁から半径方向内側に延び出す少なくとも1のバッフルから成る群から選択される。
1つの実施形態では、流動抵抗部材は一体のテーパー形状挿入部材である。
1つの実施形態では、流動抵抗部材は、回収チューブ内において流動抵抗部材と回収チューブの内壁との間に介在する少なくとも1の弾性シールリングによって保持された一体のテーパー形状挿入部材である。またテーパー形状挿入部材には弾性シールリングの下に延在する少なくとも1の溝が含まれ、この溝により流体が弾性シールリングの下を通り、一体のテーパー形状挿入部材の外面に沿って流動することができる。
いくつかの実施形態では、流動抵抗部材はビーズ及び発泡体から選択される多孔質媒体である。
いくつかの実施形態では、流動抵抗部材はスタティックミキサーである。
【0023】
この発明のいくつかの実施形態では、濾過膜はPVDF、ポリスルホン、またはポリエーテルスルホンから成る濾過膜のいずれかであり、この濾過膜の孔径は約0.005から約5ミクロンである。
いくつかの実施形態では、濾過膜はポリスルホン、またはポリエーテルスルホンから成り、この濾過膜のポアサイズは約0.005から約2ミクロンである。
【0024】
この発明のいくつかの実施形態では、供給液にはポリペプチド、核酸、糖タンパク質、または生体高分子のいずれかが含まれる。
いくつかの実施形態では、供給液には細菌性生産生命体に由来する発酵製品が含まれる。
いくつかの実施形態では、細菌性生産生命体はバシラス属、エシェリキア属、パンテア属、ストレプトミセス属、シュードモナス属から成る群から選択される。
いくつかの実施形態では、供給液には真菌性生産宿主に由来する発酵製品が含まれる。
いくつかの実施形態では、真菌性生産宿主はアスペルギルス属、トリコデルマ属、シゾサッカロミセス属、サッカロミセス属、フザリウム属、フミコーラ属、ムコール属、クリベロマイセス属、ヤロウイア属、アクレモニウム属、ニューロスポラ属、ペニシリウム属、マイセリオフトラ属、及びティエラビア属から成る群から選択される。
いくつかの実施形態では、供給液にはプロテアーゼが含まれ、濾過は約15℃未満に保たれた温度において行われる。
いくつかの実施形態では、供給液にはアミラーゼが含まれ、濾過は約55℃未満に保たれた温度において行われる。
【0025】
別の側面では、この発明は濾過システムに関し、
(a)螺旋状濾過膜モジュールであって、螺旋状濾過膜と;
濾過膜の未透過液側に延在し、供給液入口から供給液が流入し、未透過液が濾過膜の未透過液側を軸方向に流れて未透過液出口を経て螺旋状濾過膜モジュールから排出される未透過液流路と;
濾過膜の未透過液側とは反対側の浸透液側にあって、濾過膜を通過する浸透液を半径方向に流動させて中央浸透液回収チューブまで流動させる浸透液流路を有し、浸透液流路と浸透液回収チューブは液流通可能であり、回収チューブが少なくとも1の流動抵抗部材を有するとともに、回収された浸透液を流動させる流路を形成して、回収された浸透液を浸透液出口を経て螺旋状濾過膜モジュールから排出し、さらに回収チューブが、排出された浸透液の少なくとも一部を送り返して回収チューブへ導入するための浸透液入口を有する構成の浸透液流路とを備える螺旋状濾過膜モジュールと;
(b)回収チューブから排出された浸透液の少なくとも一部を制御可能な流量で回収チューブの浸透液入口へ送り返す浸透液ポンプと;
(c)供給液を制御可能な流量で供給液入口へ供給する供給液ポンプであって、浸透液ポンプと相互制御される供給液ポンプと;
(d)浸透液ポンプと供給液ポンプを相互制御する制御装置であって、螺旋状濾過膜モジュールに供給される浸透液の流量と各供給液の流量とを相互制御することにより生産中に分離モードと付着汚れ除去モードとを交互に実施可能で、分離モード及び付着汚れ除去モードを実施しているとき濾過膜の軸方向に沿って実質的に均一な膜透過差圧を保つことができる制御装置とを備える濾過システムに関する。
いくつかの実施形態では、このシステムにはさらに、(e)浸透液流路と液流通可能な加圧水ラインが含まれる。
【0026】
いくつかの実施形態では、濾過システムにはさらに、第1軸端及び第2軸端を備え、中央浸透液回収チューブが設けられる環状スペースを画成するハウジングと;浸透液回収チューブの周囲に巻回される濾過膜シートであって、半浸透性濾過膜シートの間に挟みこまれ、半径方向流路としての浸透液流路を形成する多孔質濾過部材と;巻回される濾過膜シートの間に配置して未透過液流路を画成させるためのスペーサとが設けられ、濾過膜シートの外側軸方向縁及び両側縁がシールされ、濾過膜シートの内側軸方向縁と浸透液回収チューブとの間で浸透液が流通可能である。
【0027】
いくつかの実施形態では、浸透液ポンプと供給液ポンプはさらに、未透過液と浸透液流路において軸方向への流動を維持しながら、定期的に濾過膜の浸透液側を未透過液側に対し加圧して、浸透液側から未透過液側へ濾過膜を通過するバックフローを生じさせるように制御可能である。
【0028】
いくつかの実施形態では、供給液ポンプは供給速度を低下させるように制御可能であり、一方浸透液ポンプは排出された浸透液を一定速度で送り返す様に制御可能である。いくつかの実施形態では、浸透液ポンプは排出された浸透液を浸透液入口に送り返す流量が増加するように制御可能で、一方、供給液ポンプは供給速度を一定に保つように制御可能である。
【0029】
いくつかの実施形態では、流動抵抗部材は、一体のテーパー形状挿入部材、浸透液が流れる回収チューブ内の内部スペースに充填された多孔質媒体、浸透液が流れる回収チューブ内に設けられたスタティックミキサー、浸透液が流れる回収チューブの内壁から半径方向内側に延び出す少なくとも1のバッフルから成る群から選択される。
1つの実施形態では、流動抵抗部材は一体のテーパー形状挿入部材である。
1つの実施形態では、流動抵抗部材は、回収チューブ内において流動抵抗部材と回収チューブの内壁との間に介在する少なくとも1の弾性シールリングによって保持された一体のテーパー形状挿入部材である。
またテーパー形状挿入部材には弾性シールリングの下に延在する少なくとも1の溝が含まれ、この溝により流体が弾性シールリングの下を通り、一体のテーパー形状挿入部材の外面に沿って流動することができる。
いくつかの実施形態では、浸透液が流れる回収チューブ内の内部スペースに充填された球状多孔質媒体である。
【0030】
いくつかの実施形態では、濾過膜の濾過孔径が約0.005ミクロンから約5ミクロンである。いくつかの実施形態では、濾過膜の濾過孔径が約0.05ミクロンから約0.5ミクロンである。
いくつかの実施形態では、濾過膜はPVDF、ポリスルホン、またはポリエーテルスルホン製の濾過膜であり、濾過膜の濾過孔径が約0.005ミクロンから約5ミクロンである。いくつかの実施形態では、濾過膜はポリスルホン、またはポリエーテルスルホン製の濾過膜であり、濾過膜の濾過孔径が約0.005ミクロンから約2ミクロンである。
【0031】
いくつかの実施形態では、濾過システムにはシステムにおける流量または流体を制御する複数のバルブと、システムを流れる流体に関するデータを採取する複数のセンサーと、電子データ処理ネットワークとを備える。電子データ処理ネットワークは、ポンプ、バルブ、及びセンサーの操業に関するデータを受信し、転送し、処理し記録することができる。このとき、濾過プロセスの流動を記録し集積するデータには、濾過プロセスの流動を制御するために必要な情報が包括的に含まれている。
いくつかの実施形態では、センサーは流量計、圧力計、濃度センサー、pH センサー、伝導度計、温度計、濁度計、紫外光吸光度計、蛍光センサー、屈折率計、オスモル濃度計、乾燥固体センサー、近赤外吸光度計、及びフーリエ変換赤外吸光度計の内の少なくとも1である。
【0032】
別の側面では、本願に開示する方法により浸透液製品または未透過液製品が提供される。
【0033】
別の側面では、浸透液側と未透過液側を有する螺旋状濾過膜と、螺旋状濾過膜の浸透液側と液流通する浸透液回収チューブと、回収チューブ内に設けられる少なくとも1の流動抵抗部材であって、回収チューブの入口端と出口端の間を流れる浸透液の流動圧を低下させることができる流動抵抗部材とを備える、螺旋状濾過膜モジュールが提供される。
1つの実施形態では、回収チューブは螺旋状濾過膜モジュールのほぼ中心に設けられる。
いくつかの実施形態では、流動抵抗部材は、一体のテーパー形状挿入部材、浸透液が流れる回収チューブ内の内部スペースに充填された多孔質媒体、浸透液が流れる回収チューブ内に設けられたスタティックミキサー、浸透液が流れる回収チューブの内壁から半径方向内側に延び出す少なくとも1のバッフルから成る群から選択される。
1つの実施形態では、流動抵抗部材は一体のテーパー形状挿入部材である。
1つの実施形態では、流動抵抗部材は、回収チューブ内において流動抵抗部材と回収チューブの内壁との間に介在する少なくとも1の弾性シールリングによって保持された一体のテーパー形状挿入部材である。
またテーパー形状挿入部材には弾性シールリングの下に延在する少なくとも1の溝が含まれ、この溝により流体が弾性シールリングの下を通り、一体のテーパー形状挿入部材の外面に沿って流動することができる。
1つの実施形態では、流動抵抗部材は回収チューブ内の内部スペースに充填された多孔質媒体である。
いくつかの実施形態では、流動抵抗部材は、ポリマーの球または中空球、ポリマーの球、ガラスビーズ、セラミック球、金属球、金属中空球、複合体球、及びこれらの組み合わせから成る群から選択される。
1つの実施形態では、流動抵抗部材は回収チューブ内に設けられたスタティックミキサーである。
1つの実施形態では、流動抵抗部材は回収チューブ内で回転可能に設けられたインペラーである。
1つの実施形態では、流動抵抗部材は回収チューブの内壁から半径方向内側に延び出す少なくとも1のバッフルである。
【図面の簡単な説明】
【0034】
当業者であれば、以下の図面は説明のみを目的とすることが理解できよう。添付の図面は本願の範囲を限定することを意図したものではない。また、異なる図面で符号に同じ番号が付されている場合は、特に断りのない限り、同じ構成要素を示している。図面は縮尺を考慮して作成したものではない。
【図1】濾過プロセスの分類を示す図である。
【図2】本願発明に係る並流浸透液再循環が設けられ、浸透液回収チューブ内に流動抵抗部材を有する螺旋状濾過膜精密濾過システムを表す模式図である。
【図3A】螺旋状濾過膜の模式図である。
【図3B】螺旋状濾過膜の部分断面図である。
【図4A】本願の一実施形態に係る回収チューブ内に設けられた一体のテーパー形状挿入部材をFREとして備える、本願明に係る螺旋状濾過膜を有する精密濾過システムの部分断面図である。
【図4B】図4Aに示す一体のテーパー形状挿入部材の端部の斜視図である。
【図4C】本願の別の実施形態に係る図4Aに示す一体のテーパー形状挿入部材の端部の斜視図である。
【図4D】本願の別の実施形態に係る図4Aに示す一体のテーパー形状挿入部材の端部の斜視図である。
【図5】本願の一実施形態に係る回収チューブ内に充填中空球をFREとして備える、本願の螺旋状濾過膜を有する精密濾過システムの部分断面図である。
【図6】本願の別の実施形態に係る回収チューブ内にインペラーミキサーをFREとして備える、本願の螺旋状濾過膜を有する精密濾過システムの部分断面図である。
【図7】本願の別の実施形態に係る回収チューブ内にバッフルをFREとして備える、本願の螺旋状濾過膜を有する精密濾過システムの部分断面図である。
【図8】本願の別の実施形態に係る、図7の螺旋状濾過膜を長さ方向に切断して示す部分断面図である。
【図9】螺旋状濾過膜を有する精密濾過システムの比較例を表す模式図である。
【図10】図9に示す比較例の螺旋状濾過膜で分離操作を行ったときの、浸透液側と未透過液側の流体の圧力を表すグラフである。
【図11】図2に示す螺旋状濾過膜精密濾過システムをUTMPモードで操業したときの、浸透液側と未透過液側の流体の圧力を表すグラフである。
【図12】図2に示す螺旋状濾過膜精密濾過システムで比較例の逆洗操作を行ったときの、浸透液側と未透過液側の流体の圧力を表すグラフである。
【図13】図2に示す螺旋状濾過膜精密濾過システムにおいて、比較例の逆洗操作を供給液ポンプを止めて行ったときの、浸透液側と未透過液側の流体の圧力を表すグラフである。
【図14】図2に示す本願発明に係る螺旋状濾過膜精密濾過システムにおいて、並流浸透液再循環により逆UTMP (rUTMP)モードで操業したときの、浸透液側と未透過液側の流体の圧力を表すグラフである。
【図15】図15A〜15Iは、螺旋状濾過膜を有する精密濾過システムに異なる浸透液及び未透過液の流路構成を適用したときの状態を表す模式図である。特に図15B〜15Eは、本願の実施形態を表す図である。
【図15A】供給液のみを供給したときの精密濾過システムの状態を表す模式図である。
【図15B】本願の精密濾過システムにおいて、並流浸透液再循環(CCPR) 条件にして、螺旋状濾過膜がUTMPとなるようにしたときの状態を表す模式図である。
【図15C】本願の精密濾過システムにおいて、螺旋状濾過膜をゼロUTMP(nUTMP)にしたときの状態を表す模式図である。
【図15D】本願の精密濾過システムにおいて、螺旋状濾過膜を別の実施形態に係る逆UTMP(rUTMP)モードにしたときの状態を表す模式図である。
【図15E】本願の精密濾過システムにおいて、螺旋状濾過膜を別の実施形態に係る逆UTMP(rUTMP)モードにしたときの状態を表す模式図である。
【図15F】精密濾過システムにおいて、フリーフローのみでダイアフィルトレーションを行ったときの状態を表す模式図である。
【図15G】精密濾過システムにおいて、UTMPダイアフィルトレーションを行ったときの状態を表す模式図である。
【図15H】精密濾過システムにおいて、フリーフローのみの再循環条件にしたときの状態を表す模式図である。
【図15I】精密濾過システムにおいて、UTMP再循環条件にしたときの状態を表す模式図である。
【図16】図15A〜15Iの精密濾過システムの様々な操業モードにおける各装置の設定の例を示す図である。
【図17】本願の実施例で用いた、螺旋状濾過膜を有する精密濾過システムの模式図である。
【図18】濾過操業パラメータである浸透液流束とVCFの関係を検討する実験から得られたデータを表す図であり、供給培養液中の宿主生命体及び酵素はバシラス・サブチリス培養液及びプロテアーゼ酵素である。「LMH」はL/m2/hrを意味する。
【図19】濾過操業パラメータである時間平均浸透液流束とVCFの関係を検討する上記の図18に関連する実験から得られたデータを表す図であり、供給液である培養液中の宿主生命体及び酵素はバシラス・サブチリス培養液及びプロテアーゼである。
【図20】濾過操業パラメータである総透過率とVCFの関係を検討した上記図18に関する実験から得られたデータを表す図であり、供給液である培養液中の宿主生命体及び酵素はバシラス・サブチリス培養液及びプロテアーゼである。
【図21】濾過操業パラメータである浸透液流束とVCFの関係を検討した別の実験から得られたデータを表す図であり、供給液である培養液中の宿主生命体及び酵素は、図18〜20に示すデータを得た実験とは別のバシラス・サブチリス培養液及びプロテアーゼである。
【図22】濾過操業パラメータである時間平均浸透液流束とVCFの関係を検討した上記図21に関連する実験から得られたデータを表す図であり、供給液である培養液中の宿主生命体及び酵素はバシラス・サブチリス培養液及びプロテアーゼである。
【図23】濾過操業パラメータである総透過率とVCFの関係を検討した上記図21に関連する実験から得られたデータを表す図であり、供給液である培養液中の宿主生命体及び酵素はバシラス・サブチリス培養液及びプロテアーゼである。
【図24】上記図21に関連する実験から得られた、種々の操業モードが総透過率に及ぼす影響を表す図である。
【図25】浸透液回収チューブシステムにおいて、異なる総浸透液流れについて圧力分布の影響を検討するために用いた実験装置の模式図である。
【図26】図25の実験装置で得られたデータを示す図である。
【図27】図25の実験装置で得られたデータを示す図である。
【図28】図25の実験装置で得られたデータを示す図である。
【図29】図25の実験装置で得られたデータを示す図である。
【図30】図25の実験装置で得られたデータを示す図である。
【0035】
【図31】本願に示す非限定的実施形態における各シナリオの一般的プロセス条件を模式的に示す図である。
【図32】図15A〜15Iに示したパイロットスケールのクロスフロー濾過システムの模式図である。このシステムは連続モードで操業され、供給液はバルブ41VC60から供給され、未透過液と浸透液はそれぞれ異なる流速でバルブ41VC63とバルブ43VC60から排出される。
【図33】図32に示す装置に供給された希釈培養液の量を測定して求めたニート培養液の流束を表す図である。
【図34】図33と同じ装置での浸透液流束を表す図である。この図は、操業中のUTMP/逆UTMPモードにより流束が変化することを示している。
【図35】図34の拡大図であり、UTMP/逆UTMPモードにおける流束の変化をより詳しく示す図である。UTMPモード単独のときは流束の低下が認められ、逆UTMPモードを開始するときには、UTMPがゼロUTMPまで低下するため、流束が急速に低下する。その後、短時間の逆UTMPモードの期間があり、次に圧力が設定値まで戻ることにより流束が回復する。逆UTMPモード後の流束は、逆UTMPモード前の流束より大きい。
【図36】実施例4の試験操業中における、プロテアーゼの透過率の経時変化を示す図である。
【図37】実施例5の試験操業中における、プロテアーゼの透過率とクロスフロー圧との関係を表す図である。透過率の計算に用いたサンプルは、プロセスを所定の条件で30分間操業して状態調整した後採取した。
【図38】実施例5の試験操業中における、プロテアーゼの透過率と均一膜透過差圧(UTMP)の関係を表す図である。透過率の計算に用いたサンプルは、プロセスを所定の条件で30分間操業して状態調整した後採取した。
【図39】実施例5の実験で観察された浸透液流束を表すグラフである。
【図40】実施例6の実験において、スキムミルクの濃度を3倍にしたとき観察された浸透液流束を表すグラフである。
【図41】実施例7の実験で観察された浸透液流束を表すグラフである。
【図42】実施例8の実験で観察された浸透液流束を表すグラフである。
【図43】実施例6において、0.5から4.0barの範囲の様々なUTMPでスキムミルクを濾過しているときに採取したサンプルの電気泳動分析結果を表す図である。用いた濾過膜はMicrodyn社の0.05μm PES螺旋状濾過膜であった。濾過中、浸透液流を供給液タンクに送り返した。未透過液のサンプルをInvitrogen社 (Carlsbad, CA)の10% Bis-TrisゲルとMES緩衝液を用いて分析した。サンプルをゲルで分析する前に、先ず加熱してから還元剤で処理した。 Coomassie染料でタンパク質のバンドを染色した。ゲルの各レーンのサンプル量(μL)を、サンプル毎に図示した。タンパク質サイズの参照用として、Invitrogen社のSeeBlue Plus2分子量標準サンプルを用いた。
【図44】実施例10の実験を行った装置の模式図である。
【図45】図44に示す装置において予想される圧力勾配を表す図である。
【図46】実施例9の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下の記載は、例示であり、本願発明の説明を目的とするものである。添付の図面は本願の一部を構成し、いくつかの実施形態を説明するためのものである。以下、添付の図面を参照しながら本願の実施形態について説明する。
【0037】
本願では実施形態について"comprising" という語を用いているが、当業者であれば、特定の場合consisting essentially of"または"consisting of"を用いて記述できることを理解できよう。
【0038】
本願発明の理解と範囲の確定にあたり、当業者であれば特に断りのない限り単数形には複数形も含まれることが理解できよう。すなわち、本願では"a", "an", "at least one"は同義で用いられる。
【0039】
特に断りのない限り、本願で数量、パーセンテージ、または比率等に用いられる数値は「約」を付して解釈される。従って、特に断りのない限り、以下の説明で用いられる数値はその特性に応じて変わりうる概略値である。「約」は記載された数値に対し±5%の範囲を意味する場合がある。すなわち、例えば約100mlは95〜105mlを意味する場合がある。少なくとも各数値は、四捨五入により記載された数値となる値が考慮される。
【0040】
本願の実施形態には、サンプル調整等のプロセスまたはアクションに言及して具体的方法を示した。本願の実施形態において、方法またはプロセスは記載した順序の手順により実施できるが、所望の結果を得るためにこれらの順序を適宜変更することもできる。
【0041】
本願には、以下の定義が適用される。
【0042】
逆洗とは、濾過膜の供給液または未透過液側に堆積した付着汚れを除去するために濾過膜を通過する流れの方向を逆転させることを意味する。逆洗の間、流体は浸透液側から供給液/未透過液側へ流れる。
【0043】
並流浸透液再循環(CCPR)とは、浸透液がポンプにより、濾過膜システムの浸透液側に供給液と同じ方向に送られている(再循環)状態を意味する。この発明では、この流動モードによって濾過膜の全体にわたってUTMPが得られる。
【0044】
クロスフロー速度とは、供給液が濾過膜システムを通過するときの見かけ速度を意味する。クロスフロー速度の単位はm/sで表される。
【0045】
付着汚れ除去とは、濾過膜表面から付着汚れの原因物質を除去することを意味する。
【0046】
供給液または供給液流とは、濾過膜によって濾過される液体を意味し、本願のプロセスでは未透過液とも呼ぶ。
【0047】
流束とは、流体が濾過膜を通過するときの速度を意味する。流束の単位は通常LMH(リットル/濾過膜面積1平米/時間)で表される。
【0048】
流動抵抗部材(FRE)とは、浸透液回収空間内において浸透液の圧力損失を増加させるために用いられる構造体または機構を意味する。流路面積を制限するか、または乱流を生じさせて、濾過膜モジュールの回収チューブを通過する浸透液の流れに抵抗を発生させることによって、浸透液の圧力損失を生じさせることができる。浸透液の流れに対する抵抗により、抵抗のない流れと比較してより大きな圧力損失が生じ、濾過膜装置全体にわたって圧力損失をより広い範囲で容易に操作することが可能になる。
【0049】
付着汚れとは、ゲル層、ケーキ層による濾過膜の細孔の詰まり、粒子状物質による細孔の詰まり、または濾過膜の細孔への分子の結合による詰まり、または不溶物による細孔の詰まりを意味する。
【0050】
透過率は、濾過中に濾過膜を通過した溶質の分画である。本願を実施するときは、透過率は浸透液中の溶質濃度と未透過液中の溶質濃度の比率を計算することによって求められ、一般的にはパーセントで表される。
【0051】
浸透液は濾過膜を通過した(浸透した)液体である。浸透液を濾過液と呼ぶことがある。
【0052】
未透過液は、濾過膜の供給側に保持された液体であり、未透過液を供給液と呼ぶことがある。また、未透過液を濃縮液と呼ぶことがある。
【0053】
逆均一膜透過差圧(rUTMP)は、浸透液側の方が未透過液側より圧力が高く、濾過膜システムの全長にわたって差圧が一定である場合の濾過膜の差圧を意味する。
【0054】
膜透過差圧(TMP)とは、濾過膜の未透過液側と浸透液側との圧力差を意味する。入口膜透過差圧(ITMP)とは、濾過膜モジュールまたは濾過システムの入口における未透過液側と浸透液側との圧力差を意味する。出口膜透過差圧(OTMP)とは、濾過膜モジュールまたは濾過システムの出口における未透過液側と浸透液側との圧力差を意味する。
【0055】
均一膜透過差圧(UTMP)とは、未透過液側と浸透液側の差圧が濾過膜の全長にわたって実質的に均一なこと、あるいは、濾過膜の入口と出口において未透過液側と浸透液側とのベースライン圧の差が実質的に同じで、かつ、未透過液側及び浸透液側の入口のベースライン圧の方が、出口のベースライン圧より高いことを意味する。
【0056】
ΔPとは、濾過膜システムの未透過液側の供給液入口と出口との間の、軸方向に沿った圧力損失を意味する。
【0057】
浸透液ΔPとは、濾過膜の浸透液側の供給液入口と出口との間の、軸方向に沿った圧力損失を意味する。
【0058】
容積濃縮ファクター(VCF)とは、連続濾過システムの場合は、濾過システムから排出される未透過液の容積を、濾過システムに供給される供給液の容積で割り算した値を意味し、バッチシステムの場合は、濾過システムにおける原料または培養液の総容量を未透過液容量で割り算した値を意味する。
【0059】
生物学的培養液とは、例えばバクテリア、菌類、哺乳類、昆虫細胞、または植物細胞等の生命体を用いた培養または発酵によって産出した未精製の生物学的液体を意味する。生物学的培養液には、目的とする製品と、発酵用培養液と、細胞または細胞残渣が含まれる。生物学的培養液は、例えば植物や動物の組織等の生物学的サンプルの抽出液から得ることもできる。あるいは、例えば沈殿物、結晶、または抽出物等の、プロセス中の中間体を用いることも意味する。
【0060】
細胞分離とは、次工程のために培養液を浄化して所望の物質を回収するために、細胞、細胞残渣や粒状物質を除去するプロセスを意味する。細胞分離に先立ち、細胞溶解を行うことができる。
【0061】
浄化とは、溶液から粒状物質を除去することを意味する。
【0062】
細胞ペーストとは、生物学的培養液を濾過している際の、濾過モジュールの未透過液中にある物質を意味する。また、濾過システムから排出される未透過液を意味する場合がある。
【0063】
濃縮とは培養液から水分を除去することを意味し、精密濾過膜、限外濾過膜、ナノ濾過膜、逆浸透プロセス、クロマトグラフィー、沈殿法、及び結晶法を用いることを意味する。濃縮は、エバポレーションによって行うこともできる。
【0064】
濃縮物局在化とは、濾過膜表面への被濾過物質(ゲル層)の蓄積を意味し、膜透過差圧、クロスフロー速度、サンプル粘度、溶質濃度等の様々な要因により生じる。
【0065】
ダイアフィルトレーションとは、小分子は濾過膜を通過させ、目的とする大分子を未透過液中に残留させる分離プロセスを意味する。ダイアフィルトレーションは、塩やバッファーの交換または除去、低分子量物質や界面活性剤の除去、イオン性雰囲気またはpH雰囲気の変更に有効な手段である。
ダイアフィルトレーションでは、大分子量の成分の濃度を一定に維持しながら対象とする製品を分離する、精密濾過膜または限外濾過膜が用いられる。ダイアフィルトレーションは、例えば浸透液、水、または緩衝液を用いて行われる。
【0066】
流体という用語は、通常の意味で用いられ、特に断りのない限り、分散溶解された成分を含む液体、純粋な液体、またはその他の流動する物質を意味する。
【0067】
分画とは、物理的または化学的性質を利用した物質の選別を意味する。
【0068】
ゲル層または境界層とは、濾過膜の未透過液側に形成される、極薄い物質層を意味する。ゲル層または境界層は、詰まりまたは付着汚れによる濾過膜表面の物質の保持に影響する結果、流束を減少させる。
【0069】
例えば精密濾過や限外濾過等の濾過とは、例えば高分子量の物質と低分子量の物質とを分離する等、濾過膜を用いて大分子と小分子とを分離するプロセスを意味する。
濾過は混合物の濃縮に用いられ、その効率は、例えば分子量の切分点、孔径、濾過材のタイプ、プロセス条件、分離される混合物の性質等によって決まる。低分子量成分は、限外濾過で分離された低分子量成分よりも大きい。限外濾過と精密濾過の能力の相対比較を図1に示す。この2つの濾過方法に重複する部分があることは言うまでもない。しかし、本願の濾過システムと濾過方法は、例えば精製用の濾過システム(例えばMF濾過膜、UF濾過膜)等の、全ての濾過に適用することができる。
本願の実施形態では、精密濾過は例えば発酵培養液等の生物学的流体のような流体から、約0.05から約10ミクロンの懸濁粒子、または約0.1から8ミクロンの懸濁粒子、または約1から5ミクロンの懸濁粒子、または約0.05から約100ミクロン、125ミクロン、またはそれ以上の懸濁粒子を分離するとき用いることができる。
【0070】
分子量の切分点(MWCO)とは、限外濾過膜におけるサイズ指定(キロダルトン)を意味する。MWCOは、濾過膜により球状タンパク質の90%が保持される分子量と定義される。
【0071】
浸透液速度とは、浸透液の流量、あるいは単位時間当たりに濾過膜を通過する浸透液の容積であり、単位はリットル/分(LPM)である。
【0072】
製品収率、または収率は、回収された製品の総量であり、供給液に対する製品のパーセンテージで表される。
【0073】
タンパク質、ポリペプチド、または生物学的由来のポリマーとは、生物学または生化学由来の分子、またはin vitroプロセス由来の分子を意味する。これらはアミノ酸を構成要素とし、酵素、構造タンパク質、あるいは、例えばセルロース、デンプン、ポリヒドロキシブチル酸、ポリ乳酸等の細胞由来のポリマー等が含まれる。
【0074】
製品流とは、対象とする製品を含む浸透液流または未透過液流を意味する。例えば濃縮プロセスでは、製品流は未透過液流である。これは、製品は未透過液流注に残留し、溶媒(水)は膜を通過するためである。細胞分離プロセスでは、製品流は浸透液流である。これは、製品は濾過膜を通過し、細胞と細胞残渣は残留するためである。
【0075】
製品純度または純度とは、製品流中に分離された製品の割合である。これは、製品流中に分離された他の成分と製品との合計に対する製品の割合を意味し、重量パーセントで表わされる。あるいは、製品純度または純度とは、濃縮された製品と、製品流中に分離された成分との比率を意味し、重量パーセントで表わされる。
本願の実施形態では、純度測定は、直接または間接的に、装置または手動により行われる。例を挙げれば、酵素活性の測定(例えば比色分析)、吸光度測定による色相の測定、CIELAB法、またはUS Pharmacopeia (USP) Monograph等による色相測定;あるいは不純物濃度の測定(例えば製品中の不純物として、または貯蔵期間の検討の一環としての微生物の測定);タンパク質の総量または他の成分の量の測定;臭気、味覚、触感、視覚等による官能検査(例えば製品についての測定、または貯蔵期間の検討の一環としての測定)等である。
【0076】
拒絶とは、例えば、濾過膜表面でのゲル、ケーキ、または境界層の形成、成分と濾過膜表面との静電気による相互作用、または濾過膜の孔サイズが小さいこと等の原因により、成分が濾過膜を通過できないことを意味する。
【0077】
タンジェンシャルフロー濾過(TFF)とは、分離濾過される各種成分を含む混合物流体を、濾過膜全体を横切るように再循環させるプロセスを意味する。
【0078】
限外濾過とは、濾過膜を用いて高分子量成分と低分子量成分とを分離するプロセスを意味する。限外濾過は溶液の濃縮に用いられ、その効率は濾過膜の分子量切分点に依存する。限外濾過と精密濾過の能力の相対比較を図1に示す。これらの2つの濾過方法が一部重複することは言うまでもない。限外濾過は、懸濁した固形分、分子量が1000ダルトン以上の溶質、及び約0.005ミクロンから約0.1ミクロンの溶質の濃縮に用いられる。
【0079】
アクティブ浸透液回収とは、浸透液の圧力が制御され、浸透液が浸透液ループから回収または除去される速度が、バルブまたはその他の計量装置によって制御されるプロセスを意味する
【0080】
本願の実施形態によれば、内部付着汚れを制御可能な、新規な液/固分離プロセス、操作方法、システム及びモジュールが提供される。本願の実施形態に係るプロセス及びシステムによって、単位長さに対する濾過面積が大きく、設置面積が小さい螺旋状濾過膜が実現され、特に、プロセスの操業中の洗浄用薬品の添加や濾過膜の損傷を伴うことなく濾過膜の付着汚れを制御可能な螺旋状濾過膜が実現される。
【0081】
本願の実施形態では、濾過膜の付着汚れを制御可能で、均一な膜透過差圧(UTMP)条件下で操業することが可能な、新規な構成の濾過方式を用いて濾過プロセスを実施する。本願の濾過プロセスでの使用に適した濾過方式は、例えば螺旋状濾過法、プレートとフレームによる濾過法、フラットシート濾過法、セラミックチューブ濾過法、中空繊維濾過法等である。
【0082】
本願の実施形態では、向かい合う浸透液側と未透過液側とを有する濾過膜と、入口及び出口と、軸方向に沿って濾過膜の未透過液側を入口から出口に向け流れる供給流と、軸方向に沿って濾過膜の浸透液側を入口から出口に向け流れる浸透液流と、並流浸透液再循環流を供給する浸透液再循環ループとを備える濾過膜モジュールを準備することが含まれる濾過方法を用いて濾過プロセスを実施する。
濾過膜の浸透液側または未透過液側の流量または圧力を調整して、濾過膜の浸透液側と未透過液側の入口及び出口における圧力の差が実質的に一定になるように、濾過膜の浸透液側と未透過液側の入口及び出口のベースライン圧力を設定する。ここで、濾過膜の浸透液側の入口のベースライン圧力は出口のベースライン圧力より高く、濾過膜の未透過液側の入口のベースライン圧力は出口のベースライン圧力より高い。
【0083】
いくつかの実施形態では、濾過膜の浸透液側の圧力を定期的に調整し、入口及び出口における浸透液側と未透過液側の圧力の差を、浸透液側と未透過液側のベースライン圧力の差に対し少なくとも約50%, 60%, 70%, 80%, または90%低下させる(「低減UTMP」)。
また別の実施形態では、濾過膜の浸透液側の圧力を定期的に増加させるとき、濾過膜の浸透液側と未透過液側の入口と出口における圧力の差が実質的にゼロになるように調整する。この実施形態では、濾過膜の対向する浸透液及び供給液側に同じ圧力を加え、濾過膜における圧力勾配がゼロまたは無い状態になるようにする。これにより、濾過膜モジュールが「ゼロUTMP」モードとなり、クロスフローによって濾過膜の未透過液側の付着汚れが除去される。
ひとつの実施形態では、このゼロUTMPモードは、濾過操業時に間欠的または定期的に、一定の時間間隔で実施するか、または不定期間(すなわち必要に応じて)で実施される。これ以外のノーマル操業のときは、並流浸透液再循環モード、特にUTMPモードで操業する。
いくつかの実施形態では、低減UTMPまたはゼロUTMPモードを実施する間隔は、1分から6時間、4時間から8時間、1分から30分、1分から10分、10分から30分、または10分から1時間であり、低減UTMPまたはゼロUTMPモードを実施する期間は、1秒間から1分間、1秒間から30秒間、または1秒間から10秒間である。
この期間はTMPを所定の低減された圧力値に保つ時間であり、浸透液の圧力を所定の値まで変化させるための時間は含まれない。
ある実施形態では、この低減UTMPまたはゼロUTMPモードは螺旋状濾過膜において実施されるが、これに限定されない。低減UTMPまたはゼロUTMPモードは、プレートとフレーム方式、セラミックチューブ方式、中空繊維方式等の、他の様々な精密濾過方式において実施することができる。
【0084】
いくつかの実施形態では、逆膜透過差圧(rUTMP)が実施される。
このような実施形態では、濾過膜の浸透液側が定期的に逆洗される。すなわち、浸透液の圧力を上げるか、または未透過液の圧力を下げ、定期的に濾過膜の未透過液側の圧力に対し浸透液側の圧力を制御可能な範囲で高くすることにより濾過膜を逆方向に通過する流れを生じさせる。このように制御可能な範囲で高い圧力状態にすることにより、濾過膜を通過するバックフローが生じるとともに、濾過膜の両側で、入口から出口に向かう軸方向の流れを維持する。
逆洗(rUTMP)の間、入口と出口における濾過膜の浸透液側と未透過液側との差圧は実質的に一定である。逆洗(rUTMP)モードにより、ケーキ状付着汚れ等の付着汚れが濾過膜から除去される。
逆UTMPによる付着汚れ除去の別の実施形態では、例えば、浸透液または未透過液の流量を調整するか、または浸透液の再循環流量を調整して、浸透液側に制御可能な範囲で高い圧力状態を生じさせて、浸透液の圧力を未透過液より高くするか、未透過液の圧力を浸透液より低くすることにより、濾過膜を逆方向に通る流れを定期的に生じさせることができる。濾過膜に逆方向の流れが生じている間、供給液ラインと浸透液ラインの正方向の流れを維持する。
【0085】
実施形態の1つでは、UTMPプロセスには2つのモードが含まれる。第1のモードは上記の低減UTMPまたはゼロUTMPモードで行い、第2のモードは浸透液側の圧力を制御可能な範囲で高くする逆UTMPモードで行う。
【0086】
別の実施形態では、上記のいずれかの濾過プロセスは螺旋状濾過膜方式で行われ、例えば回収チューブ等の少なくとも1の流動抵抗部材(FRE)が、螺旋状濾過膜モジュールの浸透液側に設けられる。
本願の実施形態では、FREは、浸透液再循環ループを経て濾過膜モジュールへ再循環される並流浸透液と組み合わせて用いられる。
流動抵抗部材は、回収チューブ中の浸透液の流動を一部妨害または妨げ、回収チューブの浸透液入口と出口の間に圧力損失を生じさせる。
FREを経て流れる浸透液の流量を変えることにより、濾過膜の浸透液側の長さ方向に沿って、未透過液側の圧力勾配と同様の、制御可能な圧力勾配を生じさせることができる。
濾過膜モジュールの回収チューブの浸透液スペース内に流動抵抗部材(FRE)を設け、回収チューブ内に設けられた流動抵抗部材を経て流れる浸透液の流量を定期的に変えることにより、濾過膜の浸透液側の長さ方向に沿って、未透過液側の圧力勾配と同様の、制御可能な圧力勾配を生じさせることができる。
これにより、間欠的なゼロUTMPモードまたは逆UTMPモードの間、浸透液流路において浸透液を制御可能な加圧状態にすることができる一方、供給流とモジュールの浸透液再循環流の正方向の流れを維持する。得られる背圧と流束は穏やかで、濾過膜の長さ方向に沿って均一な加圧または負圧となる結果、適切な付着汚れの除去が得られるとともに、例えば螺旋状濾過膜モジュールの層剥離等の濾過膜の損傷を避けることができる。
この結果、螺旋状濾過膜での取扱いが困難な高濃度の固形成分が含まれる液体を効率よく濾過するとともに、非常に高い流束を得ることができる。
ゼロUTMPモードまたは逆UTMPモードの間にも未透過液の正方向の流れを維持することにより、濾過膜の未透過液側で詰まりを生じていた付着汚れの除去が促進される。また、逆洗圧が開放されたときには、付着汚れは濾過膜へ再度付着する前に、未透過液により押し流される。
濾過膜の長さ方向にわたり実質的に均一な付着汚れ除去効果が得られる結果、濾過膜の長さ方向にわたり実質的に均一な流束が保たれる。
このように穏やかな付着汚れ除去を行うことにより、例えば螺旋状濾過膜等のポリマー製の濾過膜の損傷のリスクを最小限にすることができる。一方、十分なクロスフローとバックフローを維持することにより、濾過膜上の粒子を洗い流し、また濾過膜上のケーキ層を破壊することによって、付着汚れを除去することができる。また、加圧により付着汚れが生じることを避けることができる。
【0087】
様々な形状の流動抵抗部材を用いることができる。本願の実施形態では、流動抵抗部材は例えばテーパー形状の一体の挿入部材、例えばビーズまたは発泡体等の多孔質部材等の受動的手段である。
別の実施形態では、流動抵抗部材は例えばスタティックミキサー等の能動的手段、またはその他の回収チューブ内を流れる流体の抵抗となって回収チューブの入口と出口の間に圧力損失を生じさせることができる手段である。
浸透液側の圧力勾配の程度は、流動抵抗部材のポロシティまたは線形抵抗と、再循環流の流量とにより決まる。このため、TMPとクロスフロー流量とを独立して制御することができる。
未透過液側と浸透液側の圧力勾配の差が一定で互いに打ち消しあっているとき、均一な膜透過差圧(UTMP)が得られる。濾過膜の長さ方向に沿ってTMP値を最適にすることにより、濾過膜全体を効率的に使用することができる。これは、浸透液圧が制御されていない場合、濾過膜の一部しか有効に使用できないこととは異なる。さらに、加圧によって未透過液側に付着汚れが生じることを防ぐことができる。これにより、非常に高い製品透過率が得られる。
【0088】
本願の実施形態では、螺旋状濾過膜において付着汚れが顕著に低減され、この状態が維持される。これにより、濾過サイクル(すなわち、分離/付着汚れ除去サイクル)を何度も繰り返しても、高い流束と透過率が得られる結果、生産可能時間が著しく延長される。
本願の実施形態によれば、固形成分濃度が高い原料の分離プロセスにも適用可能な、螺旋状濾過膜による新規な濾過方法が提供される。本願の実施形態によれば、螺旋状濾過膜を用いて固形成分濃度が高い液体を濾過するとき、UTMPにより非常に高い流束が得られる。水浄化システムの塩水等とは異なり、本願のプロセスは、従来の螺旋状濾過膜の被濾過液よりも固形成分を多く含む混合液にも適用することができる。
【0089】
本願実施形態では、分離される供給液には固形成分が例えば少なくとも25%、例えば少なくとも15%、例えば少なくとも5%含まれる。本願の実施形態において、意外にもある種の高濃度の培養液、例えばB. subtilis培養液を濾過する際、低クロスフローのとき高い初期流束が得られることが見出された。
従来、濾過技術の分野では、濾過膜の表面を洗い流して汚れのない状態に保って流束を維持するために高い流速にすることが必要で、高流束にすることが重要あると考えられ、高クロスフローがその重要な因子として挙げられていたことに鑑みると、この結果は予想外である。
【0090】
本願の実施形態では、付着汚れ除去モード(低減またはゼロUTMP、および/または逆UTMP)が定期的に行われるように制御し、付着汚れ除去モードを行う間隔は、例えば約1分から6時間、4時間から8時間、1分から30分、1分から10分、10分から30分、または10分から1時間であり、付着汚れ除去モードを実施する期間は、1秒間から1分間、1秒間から30秒間、または1秒間から10秒間である。
付着汚れ除去モードの間、未透過液と浸透液の流路または通路は、約0.1から10 barの加圧下に保たれる。
本願の実施形態では、付着汚れ除去モードの間、濾過膜の長さ方向に沿った膜透過差圧(TMP)は、濾過膜の両軸単におけるTMP値に対し40%未満、例えば20%未満、例えば10%未満の範囲で変化する。別の薬品を用いたり、プロセスを長期停止したりせずに濾過膜の清掃を行うために、前述のようにプロセスで用いる流体を用いて逆洗を行う。
【0091】
製品は、本願により構成され操作される濾過システムの濾過膜モジュールから排出される浸透液、未透過液、またはその両者から回収される。
本願の実施形態では、例えば酵素等のタンパク質を回収することが可能な工業スケールの低コストプロセスが提供される。供給液には、タンパク質、ポリペプチド、核酸、糖タンパク質、または生態高分子が含まれる。また、供給液には、例えばバシラス属、エシェリキア属、パンテア属、ストレプトミセス属、シュードモナス属等の細菌性生産生命体に由来する発酵製品が含まれる。
また、供給液には、例えばアスペルギルス属、トリコデルマ属、シゾサッカロミセス属、サッカロミセス属、フザリウム属、フミコーラ属、ムコール属、クリベロマイセス属、ヤロウイア属、アクレモニウム属、ニューロスポラ属、ペニシリウム属、マイセリオフトラ属、及びティエラビア属等の、真菌性生産宿主に由来する発酵製品が含まれる。
供給液にはセリン・プロテアーゼが含まれ、濾過は約12℃から18℃未満に保たれた温度において行われる。あるいは、供給液にはアミラーゼが含まれ、濾過は約25℃または35℃から約45℃または約60℃に保たれた温度において行われる。いくつかの実施形態では、供給液は例えばミルク(例えば全乳、スキムミルク)、乳清、乳性加水分解物、バターミルク、凝固カゼイン(酸または酵素)等の乳製品である。
【0092】
別の実施形態では、本願のプロセスを実施するための濾過システムが提供される。
この濾過システムには、螺旋状濾過膜モジュールと、少なくとも1の流動抵抗部材をその内部に備える浸透液回収チューブから排出された浸透液の一部を回収チューブの浸透液入口に制御された速度で送り返す浸透液ポンプと、供給液を供給液入口に制御された速度で供給する供給液ポンプとが含まれる。
この濾過システムには、浸透液ポンプと供給液ポンプを統合して制御する自動または手動またはこれらの組合せの制御装置が備えられ、この制御装置は、濾過膜モジュールへ送られる供給液流と浸透液流の流速を統合して制御し、操業中に分離モードと付着汚れ除去モードを交互に行い、この両モードを行なっているとき、濾過膜の軸方向に沿って均一な膜透過差圧が実質的に維持されるように制御する。
あるいは、ポンプ、および/またはバルブは独立して制御される。
濾過システムには、システムにおける流体の流量を制御する複数のバルブと、システムを流れる流体に関するデータを採取する複数のセンサーと、電子データ処理ネットワークとを備え、この電子データ処理ネットワークは、ポンプ、バルブ、及びセンサーの操業に関するデータを受信し、転送し、処理し記録することができ、ここで、濾過プロセスの流動を記録し集積するデータには、濾過プロセスの流動を制御するために必要な情報が包括的に含まれている。
いくつかの実施形態では、濾過膜はPVDF、ポリスルホン、またはポリエーテルスルホンから成る濾過膜のいずれかであり、この濾過膜のポアサイズは約0.005から約5ミクロン、または約0.005から約20ミクロンである。
【0093】
このシステムの浸透液ループには、再循環ループから浸透液を抜き出すためのバルブが設けられている。また、浸透液ループには、浸透液ポンプの上流に設けられ、加圧水ラインに接続されたバルブが設けられている。このバルブは制御可能である。
水圧の設定値を高くしてこのバルブを開けると、ループ内の浸透液の圧力は未透過液側に対し、浸透液側から未透過液側への濾過膜を通り抜けるバックフローが生じるために十分な加圧状態となる一方、未透過液流路と浸透液流路における正方向への並流の流れは維持される。
【0094】
別の実施形態では、浸透液側と未透過液側とを有する螺旋状濾過膜と、濾過膜の浸透液側と液流通可能な浸透液回収チューブと、浸透液回収チューブ内に設けられ、回収チューブの入口端と排出端の間を流れる浸透液の圧力を制御可能に低下させることができる、少なくとも1の流動抵抗部材とを備える、螺旋状濾過膜モジュールが提供される。
【0095】
本願の実施形態に係る濾過プロセス及びシステムにより、コストが大幅に削減されるとともに、製品の品質が向上する。本願の濾過プロセス及びシステムは、精密濾過、限外濾過、ナノ濾過単独、またはこれらの組み合わせについて適用することができる。
高固形成分濃度の懸濁液から溶質を高い収率で分離、濃縮できること、及び、他の濾過方法で必要な原料を削減できることにより、コストが削減される。本願ではさらに、濾過膜の単位面積当たりの浸透液流束高いこと、付着汚れ除去効果が改善されること、及び、付着汚れ除去操作中に濾過膜が破損するリスクが低減されることから、濾過膜とその付属設備のコストが低下することによってもコストが削減される。
本願発明は、発酵培養液、医薬品、薬品、乳製品、大豆製品、その他、例えばフルーツジュース、野菜ジュース、醸造、蒸留等の食品用途に応用することができる。本願の実施形態には、発酵培養液からの酵素やその他の高分子物質の精製、ジュースの浄化、ミルクの不純物除去または濃縮、またはミルクの成分の分離等が含まれる。
【0096】
本願の実施形態により、濾過処理可能な流体を螺旋状濾過膜モジュールによって浸透液と未透過液とに分離する濾過方法が提供され、この方法には、分離処理する供給液を所定の流量で供給液入口に流入させ、螺旋状濾過膜の未透過液側において加圧下で軸方向に流動させ、螺旋状濾過膜モジュールの未透過液流路を通して第1流動方向に流動させるステップが含まれる。
次のステップで、軸方向に流動する未透過液を、螺旋状濾過膜モジュールの未透過液出口から排出する。
次のステップで、濾過膜の透過液側の反対側である浸透液側にある浸透液流路内を半径方向に流れる浸透液を、浸透液流路と液流通可能な中央浸透液回収チューブに回収する。
回収チューブには、浸透液の回収チューブ内における正方向の流れを一部妨げるが、完全には遮断しない少なくとも1の流動抵抗部材が設けられている。
次のステップで、回収した浸透液を中央浸透液回収チューブから浸透液出口へ向けて流し、螺旋状濾過膜モジュールから排出させる。
次のステップで、浸透液回収チューブから排出された浸透液の一部を、所定の浸透液流量で浸透液入口を通して回収チューブへ送り返し、分離プロセスの間、並流浸透液を濾過膜モジュールを通して再循環させる。
次のステップでは、分離プロセスを実施しているときに、濾過膜モジュールへの浸透液流量と供給液流量とを、分離モードと付着汚れ除去モードとが交互に行われる一連の濾過サイクルが行われるようにして統合的に制御するとともに、分離モードと付着汚れ除去モードにおいて、濾過膜の軸方向に沿って均一な膜透過差圧を保つ。
本願の実施形態では、濾過膜の浸透液側の圧力を、濾過膜の入口と出口における浸透液側と未透過液側の差圧が、浸透液側と未透過液側のベースライン圧力の差に対し少なくとも50%低下するように、定期的に調整する。
【0097】
図2に、本願の典型的な精密濾過システム100を模式的に示す。
精密濾過システム100は、螺旋状濾過膜101と、浸透液ポンプ103と、供給液ポンプ109と、バルブ、圧力計、温度計、流量計、供給/回収タンク等の精密濾過システムの操業を管理するための機器とを備える。
螺旋状濾過膜モジュール101は、浸透液循環ループ104から並流浸透液流が供給されるように構成され、制御バルブ106と、浸透液ポンプ103が含まれる。浸透液ポンプ103は、螺旋状濾過膜モジュール101の浸透液出口105(すなわち、浸透液回収チューブの出口端)から排出された浸透液の一部を、螺旋状濾過膜モジュール101に設けられた浸透液回収チューブの浸透液入口107に、所定の流量で送り返すことができる。
以下、螺旋状濾過膜モジュール101について詳しく説明する。
供給液ポンプ109は、分離処理する供給液を螺旋状濾過膜モジュール101の供給液入口111に所定の流量で供給するために設けられている。供給液は、熱交換器115に通してから、螺旋状濾過膜モジュール101に供給される。未透過液は、螺旋状濾過膜モジュール101の軸方向反対側に設けられた出口113から排出される。バルブ106、浸透液ポンプ103、及び供給液ポンプ109を、以下詳しく説明する方法で交互に作動させることにより、UTMP, ゼロUTMP,及び逆UTMPモードで操業することができる。
様々な実施形態において、通常の操業状態中の分離モードにおいて、供給液の分離操業中に浸透液の一部を回収チューブの入口に再循環し、回収チューブ内に還流させ、螺旋状濾過膜モジュールの回収チューブ内に浸透液を並流再循環させることにより、均一膜透過差圧(UTMP)の状態にすることができる。
生産時の分離モード中に、濾過膜がUTMPの状態となるように螺旋状濾過膜モジュール101、浸透液ポンプ103、供給液ポンプ109、及びバルブ106を作動させるとともに、濾過膜が一定の時間間隔でゼロUTMP (nUTMP)モードまたは逆UTMP (rUTMP)となり、濾過膜の軸方向全長にわたり間欠的に付着汚れ除去モードが生じるように作動させる。
本願では、軸方向長さとは、螺旋状濾過膜モジュール101の軸方向110と平行な方向を意味する。
【0098】
この発明の典型的な螺旋状濾過膜モジュール101を図3Aに示すが、これに限定されるものではない。図3Bに、この発明の典型的な螺旋状濾過膜モジュール101の断面図を示す。しかし、この発明の螺旋状濾過膜は、例えば図4-8や以下に詳しく説明するように、種々変形して実施することができる。
図3Bに示すように、典型的な螺旋状濾過膜モジュール101は回収チューブ10を備える。中央回収チューブ10には、浸透流路12から回収チューブ10の内部スペース13へ浸透液を導くための、多数の開口11が設けられている。
回収チューブ10は、例えばプラスチック、金属、セラミック等の、半剛性または剛性材料で作られる。浸透流路12は、濾過膜14及び15の間に挟みこまれ、シート16を構成する。シート16は、回収チューブ10の周囲に1回または複数回巻きつけられる。回収チューブ10の近傍にない濾過膜と浸透流路層の端部は、例えば接着剤または他の公知の方法で封止される。これにより浸透液を回収チューブ10と濾過膜の間の浸透流路に保持し、また浸透液を回収チューブ10へ導くことができる。
浸透流路12には、例えば多数の微細口を有する布、フェルト、網または他の多孔質材料等の多数の微細口を有する媒介層または材料が用いられる。
濾過膜14及び15は、供給液中に分散した個々の物質に対し半透過性のフレキシブルなシート材であり、分散した物質の粒径に応じて選択される。濾過膜14及び15には、例えば多数の微細孔を有する熱可塑性樹脂のフィルム等の多数の微細孔を有する高分子性のシート材が用いられる。浸透流路層スペーサ17は巻回されたシート16の層を離間させ、分離処理される流体を螺旋状濾過膜モジュール101へ誘導する。
説明のため、回収チューブ10の周囲のシート16が一部だけ巻回された状態を図示した。この発明では、螺旋状濾過膜モジュール101の半径方向112は、軸方向110に直行する。
【0099】
図4〜8に示すように、この発明では内部スペース13に流動抵抗部材を設けることができる。流動抵抗部材、または「FRE」は以下に説明するように個別の部材でもよいし、あるいは複数の部材が組み合わされて一体となったものでもよい。
【0100】
図4Aに示す例では、テーパー形状で一体の挿入部材102が回収チューブ10に設けられている。濾過を行うとき、浸透液は螺旋状濾過膜101から開口11を経て回収チューブ10内の内部スペース13へ流動する。なお、図に示した回収チューブの開口11は一例であり、実際の開口の数、間隔、または大きさは様々である。
浸透液入口107に近いテーパー形状の挿入部材102の軸端部114の切断方向半径は、反対側の浸透液出口105の近くにある軸端部116の半径より大きい。この例では、テーパー形状の挿入部材102は、軸端部114と軸端部116の間で負(減少)勾配になっている。テーパー形状の挿入部材102は、金属、プラスチック、セラミック、またはその他の浸透液に対し安定で耐性のある材料で作られる。
テーパー形状の挿入部材102により、浸透液回収チューブの軸方向に沿って浸透液が流れ濾過膜を通過する際に、より平坦な圧力勾配が生じる。
両軸端部において挿入部材102と回収チューブ10の内壁119の間に、例えばOリング等の弾性シールリング、またはガスケット117,118が設けられている。ガスケット117,118は、回収チューブ10内の内部スペース13において挿入部材を横方向に保持する。挿入部材102が長手方向にずれ動くことを防止するために、挿入部材102の長手方向一端に位置決部材(ATD)108が設けられている。
【0101】
図4Bに詳細に示すように、挿入部材102の軸端部114と116には、弾性シールリング117,118の下を通って延在する多数の溝120が設けられている。この溝120により、浸透液がシールリングの下を通り、挿入部材102の外面121に沿って流動することができる。
この図には、挿入部材102の入口側の軸端部114を図示した。しかし、同様の溝を挿入部材102の反対側の弾性シールリング118が設けられた軸端部領域に設け、この領域で浸透液を流動させることもできることを理解できよう。なお、弾性シールリング118により、内壁119に対する軸端部116の横方向位置が決められる。
図4Aに示すように、回収チューブ10の内部スペース13の入口107内に当接する弾性シールリング部材108Aが、ATDに設けられている。ATDから延び出して回収チューブ10の入口に進入する部分の表面に、挿入部材102と同様の溝(図示せず)を設け、浸透液を内部スペース13へ流入させることができる。同様のATD保持具を挿入部材102の反対側にも設けて、挿入部材102の両端の位置を安定化させることができる。
【0102】
図4C に、別のテーパー状挿入部材102の軸端114Aを示す。この軸端114Aは、対応するATD108(図示せず)に対し機械的に嵌合する構造になっている。ATDにおける圧力損失を低減するため、挿入部材102を改良した。挿入部材102の中央部に角度60°の切り欠きを設けたことにより、浸透液がより均等に分配されて流動する。
【0103】
図4Dに別のテーパー状挿入部材102の軸端114Bを示す。この軸端114Bは、対応するATD108(図示せず)に対し機械的に嵌合する構造になっている。挿入部材102の両軸端部が切り欠かれ、O-リング117が取り付けられる溝117Aが拡幅されている。この実施形態では、挿入部材102を取り付けるために、両軸端部に安定板114Bが設けられている。
【0104】
挿入部材102は浸透液再循環の流量に関し優れた効果を示し、流量を低下させて、例えば約2 barの有意な圧力損失を濾過膜全体ににわたり維持する。直径が一定の挿入部材と比較して、挿入部材102は全く同様の結果を示す。
挿入部材の直径を次第に増加させると、すなわち浸透液回収チューブ内の流路面積を次第に減少させると、有意な圧力損失、例えば約2barを維持するために必要な流路面積が減少する。理論にこだわることは意図しないが、テーパーが負勾配のシャフトまたは挿入部材は、流路面積が次第に増加し、浸透液回収チューブの入口ではより高い圧力にとなり、出口ではより低い圧力になると考えられる。テーパー状の挿入部材は、供給される浸透液が浸透液回収チューブ内を通過するとともに、所望の有意な圧力損失、例えば約2barの圧力損失を生じるように設計する。
【0105】
図5に示す別の実施形態では、浸透液回収チューブの内部スペース13に球19が稠密に充填され、球19の間の隙間が浸透液の流路となる。この流動抵抗部材は、回収チューブ内の入口から出口にかけて、圧力損失を生じるという効果を有する。このFREは、リバースフローモードの間、浸透液側の濾過膜に加わる背圧を低下させ、濾過膜の長さ方向に沿ってより均一で穏やかな正の背圧を濾過膜に加えることができる。
この球には、ポリマーの球または中空球、ガラスビーズ、セラミック球、金属の球または中空球、複合体球等を用いることができる。この流動抵抗部材の形状は、球に限定されない。この流動抵抗部材は、処理する液に対して安定で不活性でなければならない。浸透液の正方向の流れを維持するために、充填チューブ10内部に十分な隙間を確保することが必要である。
【0106】
あるいは、図6に示すように流動抵抗部材にスタティックミキサー20を用いることもできる。例えば、このスタティックミキサーは内部スペース13の軸方向に沿って設けられた回転ロッドから半径方向に延び出すインペラーを備え、モーターまたは回収チューブ10の外部に設けられた駆動手段(図示せず)により機械的に駆動されて、回収チューブ10内部の浸透液を攪拌する。
このようなスタティックミキサーを、回収チューブ10内部の軸方向に沿って1箇所または一定または不定の間隔で複数個所設けて、回収チューブ10内を通る浸透液の層流を乱す。
【0107】
あるいは、図7,8に示すように、回収チューブ10の内壁119から半径方向内側に向けて回収チューブの内部スペース13に延び出す1以上のバッフル201,202を流動抵抗部材として用いることができる。
図8に示すように、このようなバッフル201,202は、回収チューブ10の内壁119に回収チューブ10の軸方向に沿って交互に一定または不定の間隔を置いて設けられ、回収チューブ10を通過する浸透液の流れを例えば蛇行流等の、非直線流にする。バッフルを他の形状または配置にすることもできる。バッフルを回収チューブ10の内壁に設けてもよいし、あるいは既存の回収チューブを改造して設けてもよい。
例えば、外径が既存の回収チューブの内径に適合し、内面にバッフルが設けられた挿入管を準備し、この挿入管を回収チューブ内に挿入することができる。
【0108】
流動抵抗部材18, 20, 201 , 202等は、浸透液の回収チューブ10内の正方向への流動を一部妨げ、あるいは乱すとともに、回収チューブ10内の浸透液の層流を乱し、回収チューブ10の軸方向に沿って入口から出口にかけて圧力損失を生じさせることができる。
間欠的な付着汚れ除去モードの間、供給流と浸透液再循環流の軸方向に沿った正方向の流れを維持しながら、浸透液側の浸透液流路12を制御可能な加圧状態にすることができる。
これらにより、逆洗の間、濾過膜の浸透液側に穏やかで均一な正の背圧を加えながら、濾過膜の未透過液側に堆積したケーキを追い出し、追い出したケーキを供給流の正方向の流動により洗い流すことができる。
【0109】
本願の実施形態では、図2に示すように、浸透液ポンプ103と供給液ポンプ109は、濾過膜モジュールの入口から出口までの間の軸方向の全長にわたり、実質的に均一な膜透過差圧が保たれるように制御される。
この濾過システムには、流体の流動を制御するための複数のバルブが設けられている。
この濾過システムにはさらに、システムを流れる流体に関するデータを収集する複数のセンサーと、電子データ処理ネットワークとが設けられている。電子データ処理ネットワークは、ポンプ、バルブ、及びセンサーの操業に関するデータを受信し、転送し、処理し記録することができる。ここで、濾過プロセスの流動を記録し集積するデータには濾過プロセスの流動を制御するために必要な情報が包括的に含まれている。
【0110】
図9に、比較例である、並流浸透液再循環を備えない精密濾過システムの模式図を示す。図10は、図9に示す螺旋状濾過膜における流体圧力分布を表すグラフである。
供給側では、流体が濾過膜内の狭い供給流路を流れるときに抵抗を受けるため、濾過システム全体にわたり大きな圧力損失が認められる。一方、浸透液は流動抵抗が殆ど無い中空の中央回収チューブに回収される。このため、浸透液の流量は未透過液流量より小さく、測定可能なΔPは生じない。
また、一般に浸透液は大気圧下に放出されるため、濾過システムの浸透液側には有意な流動圧は加わらない。この濾過システムでは、入口の膜透過差圧(TMP1)と出口の膜透過差圧(TMP2)との膜透過差圧(TMP)の差が大きい。
【0111】
図11は、図2に示す螺旋状濾過膜システムを均一膜透過差圧(UTMP)モードで操業したときの、流体圧力分布を表すグラフである。 この場合、浸透液は、テーパー状挿入部材またはプラスチック球充填材等の流動抵抗部材(FRE)を備える浸透液回収チューブに再循環されるため、螺旋状濾過膜システムの浸透液側に測定可能で制御された流体圧力が生じる。これにより、クロスフローの流速とは無関係に、濾過膜の全長にわたり実質的に一定のTMPが生じる。
【0112】
図12は、図2に示す螺旋状濾過膜システムが流動抵抗部材を備えない場合に、逆洗操作を行ったときの流体圧力分布を表すグラフである。浸透液は、浸透液回収チューブの出口側から、ポンプによって浸透液回収チューブへ送り返される。
浸透液回収チューブ内には、測定可能な圧力損失は存在しないため、浸透液の圧力は濾過膜システムの全長にわたり速やかに均一になる。未透過液を引き続き供給すると、濾過膜システムの長さ方向における各位置に異なる逆洗圧が生じる。この場合、入口側では付着汚れを除去するために必要な逆洗圧が得られず、出口側では螺旋状濾過膜の損傷に繋がりかねない大きな逆洗圧が生じる。
【0113】
図13は、図2に示す螺旋状濾過膜で逆洗操作を行い、逆洗操作中に供給流を停止したときの流体圧力分布を表すグラフである。このモードの利点は、均一な膜透過差圧が得られる点にあり、濾過膜のすべての位置で実質的に均一な逆洗圧が生じ、極端な逆圧は回避される。しかし、逆洗の間に未透過液の正方向の流れが存在しないため、未透過液側にクロスフローが発生せず、付着汚れは濾過膜の表面から追い出されるものの、未透過液−濾過膜の界面からは除去されない。
このため、再び正の供給圧が加えられたとき、未透過液−濾過膜の界面に高濃度の汚染物質が存在しているため、急速に付着汚れが生じる可能性がある。また、この方法では供給液ポンプを休止し、浸透液ポンプまたは他の背圧発生装置を用いる必要があるため、操作面からも好ましくない。従って、どのように操作しても逆洗の間隔が短くなる結果、操業時間が長くなるか、または圧力が急激に変化する結果、濾過膜の破損が生じることになる。
【0114】
理論にこだわることは意図しないが、濾過膜の表面から汚染物質を洗い流すタンジェンシャルフローの力よりも膜透過差圧(TMP)が大いために、汚染物質を濾過膜に引き寄せる力が大きいときは、付着汚れが促進される。
最適な精密濾過流束と透過率を得るには、TMPを狭い範囲で制御することが必要になる。TMPが低すぎると、流束が不十分になり、TMPが高すぎると、急速で除去不能な付着汚れが生じる。図12に示す比較例では、濾過膜の軸方向全長にわたりこれらが適正にバランスした状態を得ることはできない。
【0115】
図14は、図2に示す螺旋状濾過膜システムに並流浸透液再循環(CCPR)を適用して、逆UTMPモードで操業したときの流体圧力分布を表すグラフである。供給液ポンプからの供給速度を低下させるか、または浸透液ポンプからの供給量を増加させることによって、濾過膜システムの浸透液側を加圧する。
この場合、濾過膜システム全体に均等な逆洗フローが生じ、過剰な逆圧が生じることはない。この方法は、逆洗フローを得る迅速で穏やかな方法である。濾過膜表面の未透過液側から追い出された汚染物質を洗い流すための未透過液のクロスフローが維持される。
【0116】
並流浸透液再循環と、螺旋状濾過膜モジュールの内部に流動抵抗部材を設けることとの組み合わせにより、クロスフロー速度と膜透過差圧とを独立して制御することが可能になり、これにより螺旋状濾過膜において均一膜透過差圧で操業することが可能になる。また、この組み合わせにより、非常に高い流束と透過率とを維持可能な方法である逆膜透過差圧(rUTMP)による逆洗が可能になる。
逆UTMP状態では、供給液と浸透液の軸方向の流れを維持しながら、濾過膜を通るバックフローを生じさせることができる。得られる背圧と流束は濾過膜の全長にわたり穏やかで均一であり、過剰な加圧または負圧が回避され、最適な付着汚れ除去効果が得られる。これにより、非常に高い流束が得られ、一般的な螺旋状濾過膜システムでは処理が困難な固形成分が多い液体でも効率よく処理することができる。
さらに、いくつかの高固形成分量の発酵培養液またはその他の供給液でも、低クロスフロー速度において流束に関し良好な結果が得られることが見出された。
【0117】
本願の実施形態に係るプロセスでは、浸透液ポンプの吐出量を増加させるか、未透過液ポンプの吐出量を低減することにより、均一な背圧が得られる。
【0118】
図2に示すプロセスに係る別の実施形態では、ポンプが含まれる再循環ループ中の浸透液をトラップし、圧力容器を再循環ループに接続して追加の加圧を行う。これは、浸透液の溢出への循環ループへの接続を閉じることによって行われる。浸透液の溢出への接続を閉じることにより、浸透液は循環ループにトラップされ、均圧になる。次にポンプ入口の手前に設けられた圧力バルブを開く。浸透液の循環を継続して行い、浸透液の圧力を加圧された容器によって上昇させる。これにより、本願で逆UTMPと呼ぶ、浸透液側の圧力の方が未透過液側の圧力より高くなる状態のときでも、濾過膜に沿って均一なTMPが生じる。
以下、精密濾過システムの様々な実施形態について、図15A〜15Iを参照して詳しく説明する。
【0119】
図15A〜15Iに、本願の精密濾過システムで実施される様々な操業モードにおける未透過液及び浸透液の流動経路を示す。本願のプロセスは、これらの図に示した1以上のモード出実施可能であるが、図15B〜15Eに示すモードは本願の実施形態において特に重要である。
これらの図では、液が流通している経路は、例えば図15Bの螺旋状濾過膜モジュールSWMの供給ライン、浸透液ライン、及び未透過液ラインのように太線で図示されている。またこれらの図では、例えば図15Bのバルブ43HV45のように黒塗りで示したバルブは、液が流動しているとき閉じられており、図15Bのバルブ43VC60のように白抜きで示したバルブは、液が流動しているとき開けられている。
【0120】
図16は、図15A〜15Iに示す様々な操業モードを行うときの、各装置の基本的設定を表す図である。濾過システムでの操業を始める前に、スタート準備操作として、熱交換器へのグリコール供給ライン及びリターンラインのバルブと、ダイアフィルトレーションへの水供給ラインのバルブと、濾過システムへの圧縮空気供給ラインのバルブとを開ける。計装装置を、図16に示すスタートアップ状態にする。濾過システムでの操業を始めるとき、すべての自動化された機器(バルブ、ポンプ等)は、予め決められた初期状態に設定される。
ひとつの実施形態では、本願のプロセスを行うための準備として、先ず濾過システムを水循環モードで操業する。水循環モードは、他のすべての操業モードの出発点である。他のすべての操業モードへは、水循環モードから移行する。すなわち、本願の主要なプロセスモードである、正方向供給液単独(FFO)と並流浸透液再循環(CCPR)における初期状態は、再循環モードである。
スタート準備が整ったら(希釈、混合、供給温度等)、初期状態から適切な実験プロセス設定に変更し、別のモードで操業する(バッチ、ダイアフィルトレーション、または流加培養(fed-batch))。
【0121】
図15A〜15Iに示す濾過システムには、例えば、螺旋状濾過膜SWM、浸透液ポンプ41PF40、供給流ポンプ41PF30、及びバルブ(43HV41, 43HV45, 43VA40, 43VC60, 43HV42, 42VC60, 41VC62, 72VC60)、圧力計(PI)、 圧力計コントローラー(PIC)、圧力トランスミッター(PT)、温度トランスミッター(TT)、温度制御バルブ(TIC)、流量計(FI)、流量指示トランスミッター(FIT)、流量制御バルブ(FIC)、供給/回収タンク (TANK)、熱交換器(HE)、タンクレベルトランスミッター(LT)、供給バルブ制御器(LICZ)等の、総合的に制御された濾過システムのための装置が設けられている。
図示したいくつかの構成では、螺旋状濾過膜モジュールSWMは、浸透液再循環ループ1501(例えば図15B〜15E参照)から並流浸透液流が供給されるように構成されている。
これらの実施形態では、螺旋状濾過膜モジュールSWM の浸透液出口(すなわち、浸透液回収チューブの出口)から排出された浸透液の一部は、制御された流量で螺旋状濾過膜モジュールSWM の内部に設けられた浸透液回収チューブの入口へ送り返される。
螺旋状濾過膜モジュールSWM の構成は上記のとおりである。供給流1502は、螺旋状濾過膜モジュールSWM の入口へ制御された流量で送られる。供給流は、螺旋状濾過膜モジュールSWM に導入される前に、熱交換器HEに通される。未透過液は、螺旋状濾過膜モジュールSWM の軸方向反対側に設けられた出口から排出される。
【0122】
より詳しくは、図15Aは、並流浸透液再循環(CCPR) 条件が行われていないときの、正方向供給条件(FFOモード)を表す。この構成では、並流浸透液再循環は行われない。
【0123】
図15Bは、本願の実施形態に係るプロセスの螺旋状濾過膜において、通常操業条件下でUTMP条件を実施しているときの、並流浸透液再循環(CCPR) 流路構成を表す図である。以下詳しく説明するように、図15Gと15I はこの流路構成の変形例である。
【0124】
図15Cに示す流路構成の螺旋状濾過膜システムは、本願のゼロUTMPの実施に用いられる。このゼロUTMPモードでは、浸透液の回収は行われない。
バルブ42VC60、浸透液循環ポンプ、及び供給液ポンプは予め設定した状態となって、供給液側の圧力が設定した値に保たれ、浸透液及び未透過液のクロスフロー流量が一定に保たれる。このゼロUTMPモードの間、バルブ43VC60は閉じられている。並流浸透液循環流と供給液とが釣り合って、軸方向に沿った濾過膜の全面にわたりTMPが実質的にゼロになるようにして、並流浸透液循環を行う。
図15C〜15Eは、ゼロUTMPモード及び逆UTMPモードを行う際の構成を表し、これら以外のモードで操業しているときは、図15Bに示す並流浸透液再循環(CCPR) 条件モードが実施される。
【0125】
図15Dに示す流路構成は、この発明に係る螺旋状濾過膜システムにおいて逆UTMP (rUTMP)を実施しているときの状態を表す。図15Dまたは15Eに示す逆UTMPモードの前段階は、図15Cに示すゼロUTMPモードである。
次の段階で、図16に示す設定条件を適用して螺旋状濾過膜システムの浸透液側を加圧する。具体的には、パルスバルブ43VA40を開けて、FD4261の総流量がゼロに近づき、螺旋状濾過膜モジュールの全面が逆洗状態になるまで浸透液側を加圧する。
【0126】
図15Eは、図15Dとは別の方法で逆UTMP (rUTMP)を実施しているときの状態を表す。15Eに示す逆UTMPモードの前段階も、図15Cに示すゼロUTMPモードである。
次に、図16に示す設定条件を適用して、螺旋状濾過膜モジュールの全面が逆洗状態になるまで螺旋状濾過膜システムの供給液側を減圧する。具体的には、バルブ41VC62を開けて供給液ポンプの出口から入口に向けて供給液をバイパスさせることにより、濾過膜への供給液の流量を低下させる。
【0127】
図15C-Eに示す精密濾過システムにおいてゼロUTMPモードまたは逆UTMPモードを実施するときの制御ロジックには、以下のタイマー設定とステップとが含まれる。
T20 = 自動制御を再開する前のロックアウト時間(lock out time before re-enable automatic control)
T21 = ゼロUTMPサイクル時間(nUTMP cycle time)
T22 = 逆UTMPモード1サイクル時間(逆UTMP model cycle time)
T23 = 逆UTMPモード2サイクル時間(rUTMP mode2 cycle time)
T24 = サイクル終了と次のサイクル開始までの時間(Time between end of cycle to start of next cycle)
制御ロジックステップ:
1. ゼロUTMPシーケンス開始
2. 供給液ポンプ(41PF30)のスピードをロック
3. 浸透液循環ポンプ(41PF40)のスピードをロック
4. 未透過液出口制御バルブ(42VC60)のポジションをロック
5. 浸透液ループ制御バルブ(43VC60)閉
6. 流量差バルブ(FD 4261)が0.05 LPM以下に低下
7. T22 = 0ならステップ9へ
8. T22 = X秒なら逆UTMPlサブルーチン開始
1. 逆UTMPパルスバルブ(43VA40)開
2. T22のカウントダウン開始
3. T22がゼロになったら逆UTMPパルスバルブ(43VA40)閉
4. ステップ11へ
9. T23 = 0ならステップ11へ
10. T23 = X秒なら逆UTMP2サブルーチン開始
1. 未透過液バイパスバルブ(41VC62)開
2. 流量差バルブ(FD 4261)がSP値になるまでバルブ開
注:SPは負の値の流量である。
3. SP値に達したらT23のカウントダウン開始
4. T23がゼロになったら未透過液バイパスバルブ(41 VC62)閉
5. ステップ11へ
11. サイクルタイムがゼロになったら浸透液ループ制御バルブ(43VC60)の自動制御再開
12. T20のカウントダウン開始
13. T20がゼロになったら供給液ポンプ(41PF30)、浸透液循環ポンプ(41PF40)及び未透過液出口制御バルブ(42VC60)の自動制御再開
14. ゼロUTMPまたは逆UTMPシーケンス終了
15. 次のサイクルまでのT24のカウントダウン開始
【0128】
図15Fは図15Aと同様に、並流浸透液再循環(CCPR) 条件が行われていないときの、正方向供給条件(FFOモード)を表す。この構成では、並流浸透液再循環は行われない。図15Aとの違いは、ダイアフィルトレーション用の水を供給するため、バルブ41VC60と41VH41が開けられている点である。
【0129】
図15Gは図15Bと同様に並流浸透液再循環(CCPR) 条件で操業しているときの状態を表す図である。図15Bの変形例として、図15Gではダイアフィルトレーション用の水を供給するためにバルブ41VC60と41VH41が開けられている。
【0130】
図15Hは図15Aと同様に、図15Fは図15Aと同様に、並流浸透液再循環(CCPR) 条件が行われていないときの、正方向供給条件(FFOモード)を表す。この構成では、並流浸透液再循環は行われない。図15Aとの違いは、浸透液バルブ43VA42を開けて浸透液の一部を未透過液貯留タンク41B20へ送って未透過液側にリサイクルする点である。
【0131】
図15I は図15Bと同様に並流浸透液再循環(CCPR) 条件で操業しているときの状態を表す図である。図15Bの変形例として、図15Iでは浸透液バルブ43VA42を開けて浸透液の一部を未透過液貯留タンク41B20へ送って未透過液側にリサイクルする。
【0132】
図15B等に示すこの発明の実施形態では、濾過サイクルの分離モードの間、CCPR (UTMP)モードの螺旋状濾過膜における流束は約0.1から約200 L/m2/hr、例えば約10から約60L/m2/hrに保たれる。
【0133】
この発明の実施形態では、付着汚れ除去モード(低UTMPまたはゼロUTMPおよび/または逆UTMP)は定期的に行われ、例えば約1分から約12分の間隔で、約1秒間から60秒間行われる。この間隔と時間は、処理される供給液のタイプに依存する。例えば、供給液によっては(例えばある種のプロテアーゼ)、付着汚れ除去モードは数分毎に行われる。低濃度の供給液の場合(例えば塩水)にはより低頻度で行われ、例えば約1時間または数時間毎に行われる。本願の実施形態では、付着汚れ除去の間、濾過膜の軸方向に沿った膜透過差圧(TMP)は濾過膜の軸方向両端のいずれかにおけるTMP値に対し40%以内、例えば20%以内、例えば10%以内の範囲で変化する。
本願の実施形態では、逆洗の間、未透過液流路と浸透液流路は約0.1から約60barの加圧下に保たれ、好ましくは約0.1から約10barに保たれる。本願の実施形態では、濾過プロセスの膜透過差圧は 0.1barから約60 bar、例えば約0.1から約10 bar、例えば約0.1から約5 bar、例えば約0.1から約1.0 の範囲で操業される。
TMPの範囲の最小値は濾過膜システムにより異なる。「bar」とは、105 Paに相当する圧力である。従来の圧力幅は約0.1から約1.5barと考えられる。しかしこの範囲は、例えば処理されるタンパクの種類や、使用される濾過媒体のタイプにより異なる。高圧とは、約1.5から2.0bar以上を意味するものとする。本願の装置と方法は、従来の圧力および/または高圧において操業される。
【0134】
別の実施形態では、さらにエアー洗浄を行うことができる。エアー洗浄は、濾過モジュールの入口手前の浸透液再循環ループに、ミクロンオーダーの気泡を定期的に注入することによって行うことができる。気泡によって濾過膜の未透過液側に堆積した汚染物質の除去が助勢される。これにより、付着汚れ除去がより効率的に行われる。あるいは、均一な付着汚れ除去を得るために必要な逆圧が小さくて済む。エアー洗浄を用いる実施形態では、流体が上方に向け流れる垂直な濾過システムが好ましい。これにより、濾過システムからのエアーパージが容易になる。
【0135】
この発明で使用可能な濾過膜の材質は、ポリスルホン(PS)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリビニリデンジフルオリド(PVDF)、ポリアリールスルホン、再生セルロース、ポリアミド、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、酢酸セルロース、ポリアクリロニトリル、ビニル共重合体、ポリアミド、ポリカーボネート、型はこれらのブレンド物等が含まれる。
濾過膜の孔径は、濾過膜の材質と用途により異なる。本願の実施形態では濾過膜の孔径は約0.005ミクロンから約0.05ミクロン、約0.05ミクロンから約0.5ミクロン、約0.5ミクロンから約1ミクロン、約1ミクロンから約5ミクロン、約5ミクロンから約10ミクロン、または約10ミクロンから約100ミクロンである。ひとつの実施形態では、濾過膜はPVDF、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン製であり、孔径は約0.005から約5ミクロン、好ましくは約0.005から約2ミクロンである。
【0136】
本願では特に効果が顕著な螺旋状濾過膜で実施した場合について説明するが、本願発明は例えばプレートとフレーム、セラミックチューブ、中空ファイバー、ステンレス製のフィルター、その他の濾過装置においても実施することができる。
【0137】
本願の実施形態では、濾過システムは制御装置により制御される。制御装置により、TMP, CF, 総浸透液流量、流束、純度及び収率等が制御される。濾過システムには制御用のバルブも含まれる。適切な制御方法は、濾過処理または精製処理の対象となっている物質に応じて決められる。
【0138】
本願の実施形態では、濾過システムには流体流路を流れる流体のデータを収集するためのセンサーが多数設けられている。本願の実施形態では、濾過システムには濾過プロセスを実施しているとき、ポンプ、バルブ、及びセンサーからデータを受信し、転送し、処理し記録することができる電子データ処理ネットワークが含まれる。
ここで、集積するデータには、濾過プロセスの流動を制御するために必要な情報が包括的に含まれている。
【0139】
いくつかの実施形態では、センサーは流量計、圧力計、濃度センサー、pH センサー、伝導度計、温度計、濁度計、紫外光吸光度計、蛍光センサー、屈折率計、オスモル濃度計、乾燥固体センサー、近赤外吸光度計、及びフーリエ変換赤外吸光度計等である。これらのセンサーは、濾過プロセスの進行状況と安全性を監視し、制御するために用いられる。
【0140】
本願の実施形態では、濾過システムには、操業中に部分的または完全に自動制御可能に設計された精密濾過システムが含まれる。
【0141】
当業者であれば、システムの最適な操業条件の設定は、処理対象とする供給原料物質と製品とが種々の操業条件化においてどのような挙動を示すかについての知見に依存することを理解できよう。このような知見は、パイロットスケールと生産設備スケールでの検討により得ることができる。
【0142】
本願に示す濾過システムにおいて処理対象とする供給原料物質と製品とが種々の操業条件下においてどのような挙動を示すかについて実験することにより、所定のプロセス条件と装置の設定値を決めることができる。
例えば、このような実験は予測モデルの作成に用いることができる。この予測モデルには、検出された操業条件値と、操業条件値を変更するための調整項目と、他の操業条件値を変更している間に他の操業条件地を維持するための調整項目の選択と調整量との関係に基づく数学アルゴリズムが含まれる。
この予測モデルを実行するために、制御装置にはコンピュータプログラムと通信可能なシーケンサー(PLC)が含まれる。コンピュータプログラムはマザーボード等に実装された電子部品、および/または別の場所に設けられ、シーケンサーとグラフィックインターフェースを介して通信可能なコンピュータ(図示せず)にインストールされる。
これらの機能を実行できるように、市販のPLCを本願の開示に基づき変更して用いることができる。制御システムには、本願に開示するプロセス制御用アルゴリズムを作成し実行することができるソフトウエアとハードウエアが含まれる。
【0143】
本願に開示するプロセス、装置、システムは、発酵培養液、医薬品、化学薬品、乳製品、大豆その他の食品工業において用いることができる。
本願に開示するプロセス、装置、システムは、タンパク、ポリペプチド、生物学的に製造されたポリマー、及び低分子化合物の水溶液の固/液分離に用いることができる。
タンパク、ポリペプチド、生物学的に製造されたポリマー、及び低分子化合物には、これらを精密濾過用の原料として製造しているときに生じる、ウイルスまたは細胞(細菌、菌類、両生類、爬虫類、鳥類、哺乳類、昆虫、植物、キメラに由来)、細胞残渣、培地残渣、宿主細胞により産出された目的外のバイオポリマー、培養液による処理中に混入した異物等が混入していてもよい。
本願に開示するプロセス、装置、システムは、目的の物質を回収する際に生じる、例えば沈殿物、抽出物を含む水溶液、結晶を含むスラリー等の流体の処理にも用いることができる。
本願の実施形態では、濾過システムには濾過装置が含まれる。しかし、ある実施形態で濾過システムというときは、濾過装置または濾過機械を意味することがある。
【0144】
本願の実施形態では、処理対象物質または成分はタンパク、ポリペプチド、核酸、糖タンパク、その他のバイオポリマー、低分子物質である。いくつかの実施形態では、処理対象物質は例えば抗体、酵素活性を有する治療用タンパク(酵素)、ホルモン等の治療用タンパクである。あるいは、処理対象物質は例えばコラーゲン、エラスチン等の構造タンパク質である。ホルモンには卵細胞刺激ホルモン、黄体形成ホルモン、コルチコトルピン放出因子、ソマトスタチン、ゴナドトロピンホルモン、バソプレシン、オキシトシン、エリスロポエチン、インシュリン等が含まれるが、これらに限定されない。治療用タンパクには、細胞増殖または分化の初期段階に細胞膜のレセプターに結合するタンパクである成長因子、および/または血小板由来の成長因子、表皮性成長因子、神経成長因子、線維芽細胞成長因子、インシュリン様成長因子、形質転換成長因子等が含まれるが、これらに限定されない。
【0145】
本願の実施形態では、酵素を工業スケールのプロセスで製造することができる。どのような酵素でも用いることができる。酵素の非限定的例示として、フィターゼ、キシラナーゼ、β-グルカナーゼ、ホスファターゼ、プロテアーゼ、アミラーゼ(アルファまたはベータ)、グルコアミラーゼ、セルラーゼ、 フィターゼ、リパーゼ、 クチナーゼ、オキシダーゼ、転移酵素、還元酵素、ヘミセルラーゼ、マンナナーゼ、エステラーゼ、イソメラーゼ、ペクチナーゼ、ラクターゼ、ペルオキシダーゼ、ラッカーゼ、その他の酸化還元酵素、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0146】
回収された酵素は例えばプロテアーゼ(バクテリア性、菌性、酸性、中性、アルカリ性)、アミラーゼ(アルファまたはベータ)、リパーゼ、セルラーゼ等のヒドロラーゼ、及びこれらの混合物であるが、これらに限定されない。これらの酵素は、例えば商品名がPurafect, Purastar, Properase, Puradax, Clarase, Multifect, Maxacal, Maxapem, 及びGenencor Division, Danisco US, Inc. (USP 4,760,025及びWO 91/06637)のMaxamyl; Alcalase, Savinase, Primase, Durazyme, Duramyl, Clazinase,及びNovo Industries A/S (Denmark)のTermamyl等の酵素である。
【0147】
セルラーゼはセルロースのβ-D-グルコース結合を加水分解する酵素である。セルロース分解性の酵素はエンドグルカナーゼ、エクソグルカナーゼまたはセロビオヒドロラーゼ、及びβ-グルコシダーゼ(J. Knowles et al., TIBTECH (1987) 5:255-261)の3種類に分類されている。セルラーゼの一例は、Genencor Division, Danisco US, Inc.から販売されているMultifectTM BGLである。セルラーゼは、アスペルギルス属、トリコデルマ属、ペニシリウム属、フミコーラ属、バシラス属、セルロモナス属、サーモモノスポラ属、クロストリジウム属、及びヒポクレア属から産出される。
多数のセルラーゼに関する論文が発表されている。例えばトリコデルマ・リーゼイに関しCBHIを開示したS. Shoemaker et al., Bio/Technology (1983) 1 :691-696;CBHIIを開示したT. Teeri et al, Gene (1987) 51 :43-52;EGIを開示したM. Penttila et al, Gene (1986) 45:253-263;EGIIを開示したM. Saloheimo et al, Gene (1988) 63: 1 1-22;EGIIIを開示したM. Okada et al, Appl Environ Microbiol (1988) 64:555-563;EGIVを開示したM. Saloheimo et al, Eur J Biochem (1997) 249:584-591;及びEGVを開示したA. Saloheimo et al, Molecular Microbiology (1994) 13:219-228等が挙げられる。
また、トリコデルマ属以外の種に由来するエクソ−セロビオヒドロラーゼ及びエンドグルカナーゼも発表されている。例えば、1990年にOoiらによりアスペルギルス・アクリータス(aculeatus) から産出されたFl-CMCをコードするcDNAが開示された。また、1996年にT. Kawaguchiらにより、アスペルギルス・アクリータスに由来するβ−グルカナーゼ1をエンコードするcDNAのクローン化と配列が開示された。また、1995年にSakamotoらによりアスペルギルス・カワチイIFO 4308に由来するエンドグルカナーゼCMCase-1をエンコードするcDNA配列が開示された。また、1990年にSaarilahtiらにより、エルウィニア・カロトバラに由来するエンドグルカナーゼが開示された。
【0148】
プロテアーゼには、セリン、メタロ、チオール、または酸性プロテアーゼが含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、プロテアーゼはセリンプロテアーゼ(例えばスブチリシン)である。セリンプロテアーゼは周知であり、Markland et al, Honne-Seyler's Z Physiol. Chem (1983) 364:1537 - 1540; J. Drenth et al Eur J Biochem (1972) 26:177 - 181; USP 4,760,025 (RE 34,606), USP 5,182,204及びUSP 6,312,936及びEP 0 323,299が参照される。タンパク分解活性の測定方法は、K.M. Kaliszの"Microbial Proteinases" Advances in Biochemical Engineering and Biotechnology, A. Fiecht Ed. 1988に開示されている。
【0149】
キシラナーゼには、トリコデルマ・リーゼイ由来のキシラナーゼ及びトリコデルマ・リーゼイ由来のキシラナーゼ変異体が含まれるが、これらに限定されない。これらはいずれも、アスペルギルス・ニガー由来、 アスペルギルス・カワチイ由来、アスペルギルス・ツビゲンシス由来、バシラス・サーキュラン由来、バシラス・プミラス由来、バシラス・サブチリス由来、ネオカリマスティックス・パトリリシアラム由来、 ストレプトマイセス・リビダンス由来、ストレプトマイセス・サーモビオラセス由来、サーモモノスポラ・フスカ由来、トリコデルマ・ハルジアナム由来、トリコデルマ・リーゼイ由来、トリコデルマ・ビリデ由来のキシラナーゼ等とともにDanisco A/S, Denmarkおよび/またはGenencor Division, Danisco US Inc., Palo Alto, Californiaから入手できる。
【0150】
フィターゼの例は、AB Enzymes, Darmstadt, Germanyから入手可能なアスペルギルス属由来のフィターゼであるFinaseTM、Danisco, Copenhagen, Denmarkから入手可能なE. coli由来のフィターゼであるPhyzymeTM、及びトリコデルマ属、ペニシリウム属、フサリウム属、バチアグセラ属、シトロバクター属、エンテロバクター属、ペニシリウム属、フミコーラ属、バシラス属、及びペニオフォラ属等に由来するフィターゼである。
【0151】
アミラーゼは、例えばアスペルギルス属、トリコデルマ属、ペニシリウム属、あるいはバシラス・サブチリス、バシラス・ステアロサーモフィラス、バシラス・レンタス、バシラス・リケニフォルミス、バシラス・コーギュランス、及びバシラス・アミロリケファシエンス等のバシラス属由来のものである。
好ましい菌性アミラーゼは、例えばアスペルギルス・オリザエ及びアスペルギルス・ニガー等のアスペルギルス属由来のアミラーゼである。
好ましいプロテアーゼは、バシラス・アミロリケファシエンス、バシラス・レンタス、バシラス・サブチリス、バシラス・リケニフォルミス、及びアスペルギルス属、トリコデルマ属由来のプロテアーゼである。
【0152】
上記の酵素は例示であり、これらに限定されない。例えばその他の酵素を産出する宿主は、ムコール属、クリベロマイセス属、ヤロウィア属、アクレモニウム属、ニューロスポラ属、ミセリオフィソーラ属、及びティエラビア属等である。本願の実施形態では、細菌、菌類、植物、動物由来で酸性、中性、アルカリ活性の野生型、遺伝子組み換え及び変異体型の酵素等、あらゆる酵素を用いることができる。
【0153】
本願のプロセスや装置は、例えばポリ乳酸やポリヒドロキシブチル酸等の生物化学的に産出されたポリマーの精製に用いることができる。また、本願のプロセスや装置はこれらのポリマーの精製や加工以外にも用いることができる。
【0154】
本願のプロセスや装置は、例えばビタミン(例えばアスコルビン酸)、エタノール、プロパンジオール、アミノ酸、有機染料(例えばインジゴ染料)、栄養補助食品(例えばベタインやカルニチン)、香料(例えばブチルブチラート)、 芳香剤(例えばテルペン)、有機酸(例えばシュウ酸、クエン酸、コハク酸)、抗菌剤(例えばエリスロマイシン)、医薬品(例えばスタチンやタキサン)、抗酸化剤(例えばカロチノイド)、ステロール、及び脂肪酸等の、低分子物質の精製に用いることもできる。また、本願のプロセスや装置はこれらの低分子物質の精製や加工以外にも用いることができる。
【0155】
浸透液、未透過液、または細胞ペースト中の処理対象物質または成分の所望の純度は、約1%から約100%である。本願の実施形態では処理対象物質の純度は約1%から約25%、例えば約25%から約50%、例えば約50%から約75%、例えば約75%から約90%、例えば約90%から約95%、例えば約95%から約97%、または約97%から約99%である。
【0156】
本願のプロセスで用いる供給液は原料産出用の生命体または細胞から得られる。原料産出用の生命体は、ウイルス、バクテリア、または菌類である。原料産出用の細胞は、原核細胞または真核細胞である。本願の実施形態では、原料産出用の細胞はバクテリアの細胞、昆虫の細胞、哺乳類の細胞、菌類の細胞植物の細胞、またはこれらの細胞の細胞株である。細胞株は、哺乳類、鳥類、両生類、または昆虫に由来する。
これらの細胞は、対象とするバイオポリマーを発現するように、対象とするDNAまたはその他の核酸により形質転換される。細胞を形質転換させる方法は公知であり、例えば本願に参照として組み込まれるU.S. Patent No.7,005,291に開示されている。
【0157】
また供給液は、形質転換されていない細胞またはその他動物または植物から得られる。これらの細胞から得られた供給液は、多段濾過装置へ送られる。別の実施形態では、供給液は遺伝子組み換えした細胞または有機体、例えば遺伝子組み換えした哺乳類から得られる。プロセスの結果物は、プロセスに供給液として送られる出発物質または原料とは無関係である。本願のプロセスは植物または動物から抽出された培養液に適用され、最終製品は結晶、スラリー、沈殿物、浸透液、未透過液、細胞ペースト、または抽出液である。分離処理される供給液には、液中に分散した固形分が例えば少なくとも25%、例えば少なくとも15%、例えば少なくとも5%含まれる。
【0158】
本願の実施形態では、原料産出用のバクテリア性有機体は、例えばバシラス属、ストレプトミセス属、またはシュードモナス属であり、例えばバシラス・サブチリス、バシラス・クラウシ、バシラス・リケニフォルミス、バシラス・アルカロフィラス、エシェリシア・コリ、パントエア・シトレア、ストレプトミセス・リビダンス、ストレプトミセス・ルビギノサス、またはシュードモナス・アルカリゲネス等である。
【0159】
本願の実施形態では、濾過システムには供給流及び浸透液流と液流通可能な熱交換器が含まれる。この熱交換器により、供給流及び浸透液流が酵素の活性化温度より低い温度まで冷却される。酵素の活性化温度はプロセスの周囲外気温度より低い。これにより、操業中に酵素の自己消化が生じることを防止または禁止することができる。
例えば、血清プロテアーゼを含む供給流は、約15℃以下に保たれた温度において加工することができる。熱交換器は、供給流ラインでは濾過膜モジュールの蒸留側に設け、浸透液流ラインでは濾過膜モジュールの下流側に設けることができる。
【0160】
工業的スケールでは、複数の濾過膜部材を直列にして1つのハウジング内に設けることが好ましい。例えば、1つのハウジング内に複数(例えば4,6またはそれ以上)の濾過膜部材を直列にして1つのハウジング内に設けることができる。これにより、ハウジング内に1つの濾過膜部材しかない場合と比較して、必要なフィッティングの数、設置面積、配管、制御バルブの数、及び計器類を節約することができる。
しかし、この場合には濾過(精密濾過及び限外濾過)圧力が低下するという問題が生じる。各濾過膜部材を通過するときの圧力損失は上流側の膜透過差圧よりも大きく、10%以上であるため、下流側の濾過膜部材の膜透過差圧は大きく低下する。このため、上流側の濾過膜部材を最適な膜透過差圧(TMP)より高くして操業することになり、このTMPの上昇により上流側の濾過膜部材のクロスフロー条件が制約される。
この問題は、付着汚れを防ぐために低TMPと高クロスフローが要求される精密濾過において最も顕著に表われる。また、付着汚れ除去操作においても問題を生じる。すなわち、上流側の濾過膜の汚染物質が除去されて汚染除去用流体の流束が増加するに従い、上流側の濾過膜部材における浸透量が非常に高くなる。この結果、下流側の濾過膜部材における汚染除去用流体が欠乏し、十分な付着汚れ除去操作を行うために必要な汚染除去用流体のクロスフローに十分曝されないこととなる。この結果、付着汚れが十分除去されないか、付着汚れ除去操作時間が長くなる。
【0161】
浸透液を再循環して膜透過差圧を制御することにより、この問題を解決することができる。
膜透過差圧(TMP)とクロスフローをそれぞれ独立して制御することができるので、TMPに悪影響を及ぼすことなくクロスフロー速度を上げたり下げたりすることができる。この効果は単一の濾過膜部材でも得られるが、直列の濾過膜部材ではさらに有効である。供給液流の流路が長くなるほど、濾過システムの両端におけるTMPの高低差が大きくなる。
また、上流側の濾過膜部材の浸透流量が下流側の濾過膜部材のクロスフローに影響を及ぼすほど大きい付着汚れ除去操作等において、均な膜透過差圧(UTMP)の値を下げて浸透流量を低下させることにより、全濾過膜部材において適切なクロスフローを得ることができる。
【0162】
また、直列に連結された濾過膜部材用の流動抵抗部材(FRE)を設計することもできる。直列に連結された濾過膜部材用の浸透液回収チューブは互いに結合されているので、浸透液の流れが濾過システムの入口から出口に向かうに従い、浸透液の流量が増加する。浸透液再循環流量と濾過された浸透液とにより、浸透液の出口側の流量は、入口側の流量(再循環流量のみ)よりはるかに大きくなる。
この場合、圧力損失は流速の二乗の関数であるため、濾過システムにおける単位長さ当りの圧力損失が変化することになる。従って、長い濾過システムの全長にわたる直線的な圧力損失を維持するために、回収チューブの下流側ほど流動抵抗が小さくなるFREが必要になる。
どのようなFREでも流動抵抗を増減させることができる。例えば球状の充填材であれば、直径を大きくすることによって流動抵抗を小さくすることができる。テーパー形状の管状挿入部材は、濾過膜部材用内において、予想される流量の範囲内で所定の圧力損失を生じるような設計を容易に行えるだけでなく、直列に連結された複数の濾過膜部材で増加する流量に対応するように調整されたテーパー径にすることができる。例えば、下流側の浸透液の流量を、管状挿入部材の直径を低減させることによって増加させることができる。これにより、濾過膜を通過する浸透量の増加に応じて流動抵抗を小さくすることができる。
【実施例】
【0163】
以下の実施例は、本願発明の様々な実施形態を説明するためのものである。これらの実施形態は、本願の範囲を限定するものではない。
【0164】
実施例1-3は、図17に示す構成の螺旋状濾過膜システムを用いて、異なる種類のバシラス培養液の流束と透過率を求めるための実験を行ったものである。図17に示す螺旋状濾過膜システムは、図15B-15Eに示す構成のシステムを一部修正したものに相当する。
この濾過システムを用いて、いくつかのメーカーの濾過膜部材と、異なる種類の発酵培養液とを用いて試験を行った。図17に示す螺旋状濾過膜システムにおいて、この発明の並流浸透液再循環(CCPR)モードと、間欠的な逆UTMP (rUTMP)モードを実施した。
図17に示す螺旋状濾過膜システムは、螺旋状濾過膜1701(SWM)、浸透液ポンプ1703、供給液ポンプ1709、及び例えばバルブ(1706, 1720-1723)、圧力計(PI)、圧力トランスミッター(PT)、 バルブ駆動装置、温度トランスミッター(TT)、流量計(FI)、流量計トランスミッター(FIT)、流量制御バルブ、供給液/回収液タンク(TANK)、熱交換器(HE)1715、温度制御バルブ(TIC)、タンクレベルトランスミッター(LT)、供給液制御バルブ(LICZ)等のその他の装置を備え、濾過システムを統合的に操業することができる。
螺旋状濾過膜モジュール1701は、制御バルブ1706と浸透液ポンプ1703を備える再循環ループ1704により、並流浸透液流が供給されるように構成されている。浸透液ポンプ1703は、螺旋状濾過膜モジュール1701浸透液出口1705(すなわち回収チューブの出口)から排出された浸透液の一部を、螺旋状濾過膜モジュール1701内に設けられた浸透液回収チューブの浸透液入口1707に制御された流量で送り返すことができる。
螺旋状濾過膜モジュール1701については、下記にさらに詳しく説明する。
供給液ポンプ1709は、螺旋状濾過膜モジュール1701の供給液流入口1711へ、分離処理する供給液流を制御された流量で供給する。供給液流は、螺旋状濾過膜モジュール1701へ導入される前に熱交換器1715に通される。
未透過液は、螺旋状濾過膜モジュール1701の軸方向反対側にある出口1713を通して螺旋状濾過膜モジュール1701から排出される。浸透液ポンプ1703、供給液流ポンプ1709、及び制御バルブを本願に示すようにして手動で調整し、UTMPモードと逆UTMPモードでの操業を行った。
【実施例1】
【0165】
1回目から4回目の試験では、発酵培養液についてAlfa Laval社の公称孔径0.2μmのポリスルホン(PS)濾過膜を用いて、体積濃縮率(VCF)の評価を行った。供給液に用いた培養液はGenencor Division, Danisco US, Inc.のFNA培養液であり、この供給液に含まれる宿主有機体はB.サブチリスで、酵素はプロテアーゼである。操業温度は15℃、培養液のpHは5.8で、直径3mmのプラスチックのボールを流動抵抗部材(FRE)として用いた。このFREを、螺旋状濾過膜の回収チューブの軸方向の一端から他端まで充填し、回収チューブの両端部に多数の孔を有するディスクプレートを取り付けることによって回収チューブ内に保持させた。UTMP及びUTMP/逆UTMPモードでの濾過操業を行った。浸透液循環ポンプの吐出量を増加させるか、または供給液ポンプの吐出量を減少させることにより、2種類の浸透液加圧を行った。
【0166】
1回目から4回目の試験は、次のようにして行った。
1回目の試験操業は比較用の試験であり、均一膜透過差圧(UTMP)モードは実施しなかった。平均TMPは1.5barで、供給液流量は9.9m3/hrであった。
2回目の試験操業ではUTMPモードのみを実施し、逆UTMPは行わなかった。浸透液回収チューブに流動抵抗部材(FRE)を充填したが、付着汚れ除去モードは実施しなかった。UTMPは1barで、供給液流量は11.8 m3/hrであった。
3回目の試験操業では、UTMP/逆UTMPモードを実施し、UTMPは1barで、供給液流量は12m3/hrであった。逆UTMPモードは供給液ポンプの吐出量を下げることにより行い、10分ごとに1分間実施した。ポンプの吐出量は、負方向の浸透液の流動が観察されるまで下げた。これは、濾過膜を逆方向に通過する流れがあることを意味している。
4回目の試験では、UTMP/逆UTMPモードを実施し、UTMPは1barで、供給液流量は12m3/hrであった。逆UTMPモードは浸透液循環ポンプの吐出量を上げることにより行い、10分ごとに1分間実施した。ポンプの吐出量は、負方向の浸透液の流動が観察されるまで下げた。これは、濾過膜を逆方向に通過する流れがあることを意味している。
【0167】
1回目から4回目の試験結果を表1〜4に示す。異なるVCF毎の流束の測定結果を図18と19に示す。また透過率の測定結果を図20に示す。特に、図18と図19に示す結果から、逆UTMPモードと組み合わせずにUTMPモードを実施すると流束が低下することが分かる。最も流束の低下が小さかったのは、供給液ポンプの吐出量を調整してUTMP/逆UTMPモードを実施した3回目の試験操業時であった。
また、図20からUTMPモードを実施した場合、総透過率が顕著に改善されることが分かる。
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【0168】
表5に、1回目から4回目の試験においてUF(限外濾過)により得られたVCF、総透過率、及び濃縮率を示す。"C"は溶質の濃度を表し、"C0"は溶質の最初の濃度を表し、"V0"は最初の供給液容積を表し、"V"は未透過液容積を表し、"σ"は不透過率を表し、C=C0(V0/V)σである。
【表5】
【実施例2】
【0169】
5回目から11回目の試験操業では、実施例1と同様の構成の濾過システムにおいて、別の発酵培養液について異なるタイプの濾過膜を用いてVCFを評価した。異なるタイプの濾過膜として、比較用のKoch社の公称孔径1.2μmの螺旋状濾過膜、比較用及び評価用のAlfa Laval社の公称孔径0.2μmのポリスルホン(PS)濾過膜、及び比較用及び評価用のMicrodyn社の公称孔径0.05μmのポリエーテルスルホン濾過膜を用いた。
供給液に用いた培養液はGenencor Division, Danisco US, Inc.のFN3培養液であり、この供給液に含まれる培養液調製用の宿主有機体はB.サブチリスで、酵素はプロテアーゼである。試験操業温度は15℃であった。
【0170】
5回目から11回目の試験操業は、次の条件で行なった。
5回目の試験操業はKoch社(Koch Membrane Systems, Inc.)の螺旋状濾過膜を用いた比較試験であり、浸透液の受動的回収のみを行なった。すなわち、UTMPモードと並流浸透液再循環(すなわち、能動的浸透液回収)は行わなかった。平均TMPは1.5 barで、供給液流量は9 m3/hrであった。
6回目の試験操業は0.2μmのポリスルホン(PS)濾過膜を用いた比較試験であり、UTMPモードと並流浸透液再循環は行わず、浸透液の受動的回収のみを行なった。平均TMPは1.5 barで、供給液流量は9 m3/hrであった。
7回目の試験操業ではAlfa Laval社の0.2μmのポリスルホン(PS)濾過膜を用い、UTMP/逆UTMPモードを実施した。UTMPは1 barで供給液流量は8.4 m3/hrであった。供給液ポンプの吐出量を低減させることによって、逆UTMPモードを10分毎に30秒間行った。浸透液の負方向の流れが観察されるまで、供給液ポンプの吐出量を低減させた。これは、濾過膜を逆方向に通過する流れがあることを意味している。
8回目の試験操業ではAlfa Laval社の0.2μmのポリスルホン(PS)濾過膜を用い、UTMP/逆UTMPモードを実施した。UTMPは1 barで供給液流量は8.2 m3/hrであった。供給液ポンプの吐出量を低減させることによって、逆UTMPモードを2分毎に5秒間実施した。浸透液の負方向の流れが観察されるまで、供給液ポンプの吐出量を低減させた。これは、濾過膜を逆方向に通過する流れがあることを意味している。
9回目の試験操業ではMicrodyn社の0.05μmのポリエチルスルホン(PES)濾過膜を用い、浸透液の受動的回収のみを行なった。すなわち、UTMPモードと並流浸透液再循環は行わなかった。TMPは1.5 barで供給液流量は9.8 m3/hrであった。
10回目の試験操業ではMicrodyn社の0.05μmのポリエチルスルホン(PES)濾過膜を用い、UTMP/逆UTMPモードを実施した。UTMPは0.9 barで供給液流量は8.1 m3/hrであった。供給液ポンプの吐出量を低減させることによって、逆UTMPモードを2分毎に5秒間行実施した。浸透液の負方向の流れが観察されるまで、供給液ポンプの吐出量を低減させた。これは、濾過膜を逆方向に通過する流れがあることを意味している。
11回目の試験操業ではMicrodyn社の0.05μmのポリエチルスルホン(PES)濾過膜を用い、UTMP/逆UTMPモードを実施した。UTMPは0.8 barで供給液流量は8.1 m3/hrであった。供給液ポンプの吐出量を低減させることによって、逆UTMPモードを2分毎に5秒間行実施した。供給液ポンプの吐出量を、浸透液の負方向の流れが観察されるまで低減させた。これは、濾過膜を逆方向に通過する流れがあることを意味している。
【0171】
5回目から11回目の試験操業の結果を表6〜12に示す。異なるVCFにおいて得られた流束の測定結果を図21と図22に示す。また、透過率の測定結果を図23に示す。
特に、図21と図22に示す結果から、逆UTMPモードと組み合わせずにUTMPモードを実施すると流束が低下することが分かる。また図23から、UTMPモードを実施した場合、総透過率が顕著に改善されることが分かる。最も流束の低下が小さかったのはUTMP/逆UTMPモードを実施した、7, 8, 10 及び11回目の試験操業時であった。
【表6】
【表7】
【表8】
【表9】
【表10】
【表11】
【表12】
【0172】
表13に、6回目から11回目の試験においてUFにより得られたVCF、総透過率、及び濃縮率を示す。
【表13】
【実施例3】
【0173】
流動抵抗部材として回収チューブ内に設けたテーパー形状挿入部材を備える浸透液回収チューブの入口から出口にかけての圧力損失分布を検討するための試験操業を行なった。
正確な結果と適切な螺旋状濾過膜システムの濾過膜を得るために、Koch Membrane Systems, Inc.社の螺旋状濾過膜を巻き戻して解体し、内部にあった浸透液回収チューブをこれらの試験操業用に別にして使用した。
浸透液回収チューブを改造し、回収チューブの長さ方向において一定間隔で水を回収チューブ内部に注入する注入点を設けるとともに、各注入点に流量計と圧力計を設け、その他の回収チューブの長さ方向に沿って設けられていた開口を全て塞いだ。
この回収チューブは、両端部に再循環された水または他の試験用浸透液が導入される入口と、回収チューブ内に回収された水/浸透液が排出される出口とを有する。
図25に示すように、この試験操業では上記により2本の浸透液回収チューブ251,252を準備し、各浸透液回収チューブのそれぞれに注入点、流量計、及び圧力計を8箇所ずつ設けた。図25には浸透液回収チューブ251のみを図示したが、浸透液回収チューブ252も同様の構成を有する。
各浸透液回収チューブ内に、図4Aと図4Dに示す構造のテーパー形状挿入部材を設置した。
2本の浸透液回収チューブを、位置決部材(Alfa Laval社)を用いて連結した。また、位置決部材を浸透液回収チューブの対向両端部にも設けた。図25に示すように構成された装置により、並流浸透液再循環流量と浸透液注入量を制御し監視することができる。
【0174】
試験操業は、複数の異なるΔP (3.4, 3.2, 3.0, 2.5, 2.0 bar)と浸透液流量(8 LPM, 22 LPM, 32, LPM)において行った。テーパー形状挿入部材のテーパーのデザインは、.91"から.90"と.90"から.89"であった(2本のチューブの2本の挿入部材)。
結果を図26〜30に示す。これらの図には浸透液回収チューブ251の圧力計1〜8(入口から出口方向)と浸透液回収チューブ252の圧力計9〜16(入口から出口方向)から得られたデータを示す。図26〜30に示すデータから、浸透液回収チューブの入口から出口にかけて大きな圧力損失、あるいは比較的緩やかな圧力損失が生じることが分かる。また2本の浸透液回収チューブ251,252の間、すなわち圧力計8と9の間の位置決め部材(ATD)による圧力損失は非常に小さいことが分かる。
【実施例4】
【0175】
図32に模式的に示す装置とプロセスを用いて試験操業を行った。この試験操業の目的は、工業目的の連続プロセスにおけるUTMP/逆UTMPモードの有効性を示すことである。
【0176】
アルカリプロテアーゼを含む37.5kgのバシラス・サブチリス発酵培養液を供給液タンクに、22.5kgの水とともに投入した。濾過システムを立ち上げ、以下の操業条件にした。
供給液入口圧力 2.8 bar
供給液出口圧力 1.3 bar
浸透液入口圧力 1.8 bar
浸透液出口圧力 0.3 bar
供給液温度 15℃
【0177】
この設定条件下では、供給液側と浸透液側のUTMPが1.0 barで、ΔPが1.5 barとなった。システムを立ち上げている間、供給液と浸透液を循環させた。この試験操業で用いた濾過膜は、80 milのスペーサを有する Koch MFK 601 3838であった。
【0178】
システムが定常状態に達した後、試験操業を開始した。浸透液は回収タンクへ送った。未透過液は、浸透液4.7部に対し未透過液1部の比率で排出された。供給液を外部にある貯留タンクから濾過システムの供給液へ送り、系内の総液重量を60kgに保った。外部にある貯留タンクの供給液は、アルカリプロテアーゼを含む166.6kgのバシラス・サブチリス発酵培養液と633kgの水と混合して調製した。この供給液タンクを10℃に保った。
【0179】
この濾過システムは、定期的に逆UTMPモードが行われるよう設定した。逆UTMPの設定は以下の通りである。
逆UTMPモードの間隔 3分
逆UTMPモードでの時間 5秒間
逆UTMPモードの強度 総浸透液流量-0.5 LPM(浸透液を0.1 bar加圧)
【0180】
この試験操業を6時間行った。結果を表32〜36に示す。
【実施例5】
【0181】
図15Iに示す装置とプロセスを用いて試験操業を行った。
【0182】
この試験操業はクリティカルフラックス(critical flux)を評価するものであり、複数の異なるUTMPとΔPで操業したときの影響を示すものである。
【0183】
この試験操業は、以下のようにして行った。
1. 最も付着汚れが激しくなると思われる条件で1時間操業して、濾過膜に予め付着汚れを生じさせる。具体的にはUTMPが1.5 barでΔPが0.8 barであった。
2. 手動で逆UTMPを実施し、汚染物質を除去する。これにより、濾過膜はやや付着汚れが生じた状態になる。
3. 試験操業条件に設定して30分間操業し、30分経過したらサンプルを採取して酵素の透過率を分析する。
4. 2から3を繰り返し、全ての試験操業条件を行う。
【0184】
アルカリプロテアーゼを含む40kgのバシラス・サブチリス発酵培養液を供給液タンクに、40kgの水とともに投入した。濾過システムを立ち上げ、以下の操業条件にした。
供給液入口圧力 2.8 bar
供給液出口圧力 2.0 bar
浸透液入口圧力 1.3 bar
浸透液出口圧力 0.5 bar
供給液温度 15℃
【0185】
この状態で1時間操業し、濾過膜に予め付着汚れを生じさせた。次に、上記に概要を説明したように、以下の条件で試験操業を行った。
【表14】
【0186】
この試験操業で用いた濾過膜は、80 milのスペーサを有する Koch MFK 601 3838であった。
【0187】
結果を図37〜39に示す。
【実施例6】
【0188】
<スキムミルクの濃縮>
500Lのタンクに252kgの水を入れ50℃に加熱した。50℃に達したとき、25kgの粉末スキムミルクをゆっくり添加し、撹拌しながら溶解させた。このミルク溶液を50℃で90分間水和させた。
【0189】
92kgの供給液を、Microdyn Technologies Inc.社製の0.05μm PES精密濾過膜3838モジュールを備えた、精密濾過(MF)パイロット装置(図15A〜15Iに示す螺旋状濾過膜システム)に供給した。浸透液回収チューブに、流動抵抗部材(FRE)として8mmのプラスチック製のボールを充填した。装置を立ち上げ、非常に低いUTMP条件(0.2 bar)下で、温度を上昇させた。濾過システムの温度が上がり供給液が50℃で安定した後、濃縮プロセスを開始した。スキムミルク濃縮プロセスでは、濾過システムを以下の条件に設定した。
供給液温度 50℃
供給液入口圧力 2.5 bar
供給液出口圧力 1.5 bar
浸透液入口圧力 1.5 bar
浸透液出口圧力 0.5 bar
【0190】
500Lタンクから供給液を連続して供給し、系外に出る浸透液を補った。試験操業の間、濾過システムへの供給液92kgに保たれた。供給した277kgのスキムミルクに対し92kgの製品が回収され、3倍に濃縮されるまで試験操業を行った。
【0191】
結果を図40に示す。
【実施例7】
【0192】
<スキムミルク濃縮におけるクリティカルフラックス>
実施例6で生成したスキムミルク3倍濃縮液を用いて、様々なUTMP条件下で透過率と流束を評価する試験操業を行った。いずれの条件下でもクロスフロー圧は0.8barで、供給液温度は50℃であった。浸透液と未透過液を連続的に供給タンクに再循環させた。従って、試験操業の間供給液の組成は一定であった。各条件化において、スキムミルクを30分間再循環した。
【表15】
【0193】
結果を図41と42に示す。
【実施例8】
【0194】
<スキムミルク3倍濃縮液のダイアフィルとレーション>
上記のクリティカルフラックス試験の後、脱イオン水供給ラインを精密濾過装置の供給液タンクに繋いだ。濾過システムを以下の操業条件で安定させた。
供給液温度 50℃
供給液入口圧力 2.3 bar
供給液出口圧力 1.3 bar
浸透液入口圧力 1.5 bar
浸透液出口圧力 0.5 bar
【0195】
浸透液を浸透液回収タンクへ送り、水を連続的に供給液タンクに供給して、濾過システムへの供給液の供給を92kgに保った。この試験操業を、185kgの浸透液が回収されるまで行った。
【0196】
結果を図42に示す。
【実施例9】
【0197】
図15Iに示す装置で、バシラス・リケニフォルミス由来のアルファ-アミラーゼ培養液を用いてクリティカルフラックスの評価を行った。細胞をリゾチームで溶解させた。培養液のpHをNaOHで10に調整した。40リットルの培養液を40リットルの水と混合し温度を50℃にした。濾過膜をDPが1.0barでUTMPが1.5barの条件で1時間操業して、予め付着汚れを生じさせた。試験操業を開始する前に、濾過膜を逆UTMPモードで10秒間処理した。試験操業の条件を変更するたびに、手動で逆UTMPモードを10秒間実施した。使用した濾過膜は80 milスペーサを備えたKoch MFK 601, 1.2μm PES濾過膜であった。
【0198】
試験操業は下記の条件で行った。(圧力の単位は全てbar)
【表16】
【0199】
各試験操業条件を20分間ずつ行い、試験操業毎に未透過液と浸透液のサンプルを採取して分析した。結果を図46に示す。
【実施例10】
【0200】
図24に、VCF 1においてLaval 0.2μmポリスルホン(PS)濾過膜を用い、様々な操業モードを行ったときの総透過率を示す。
【0201】
図44に示す装置を用いて、ノーマル(流動抵抗部材または浸透液循環不使用)、UTMPのみ、UTMP/ゼロnUTMP、及びUTMP/逆UTMPの4種類のモードの性能の相対評価を行った。全ての試験操業において、バシラス・サブチリス由来の発酵培養液を用いた。4種類の試験操業におけるバッチ毎の容積と希釈率は全て同じにした。4種類の試験操業において同じAlfa Laval社の0.2μmポリスルホン精密濾過膜を用いた。
【0202】
以下の試験操業条件を用いた。
【表17】
【0203】
各試験操業では、40kgの培養液を80kgの水と混合し、温度を15℃にした。次に、試験操業を開始した。浸透液を別のタンクに回収し、濾過システムに残った供給液の重量が40kgになるまで試験操業を行った。これは、VCF=1.0に相当する。試験操業毎に回収した浸透液のアルカリプロテアーゼを分析して、総透過率を求めた。
【0204】
ゼロUTMPモードは、3分毎に5秒間行った。ゼロUTMPモードは、図44に示すように浸透液側のリリーフ弁を閉めることにより実施した。これにより、浸透液循環ループが閉じられたループとなり、一方供給液側から浸透液側への浸透は引き続き行われる結果、浸透液側の圧力が供給液側と均圧になった。
逆UTMPモードは、2分毎に5秒間行った。逆UTMPモードは、前記のように供給液ポンプの吐出量を低下させて実施した。
【0205】
図24には、実施例2の7回目の試験操業のデータも含まれている。(供給液低減 30秒/10分)
【実施例11】
【0206】
この発明の装置とプロセスを開発しているとき、流体の取り扱いと制御性が改善される設計変更をいくつか行った。主な変更点を下記に示す。
【0207】
図17は、UTMPモードと逆UTMPモードを実施するための濾過装置の、最初の構成を表す模式図である。
【0208】
図44は、図17の装置を改善した装置を表す。すなわち、浸透液循環ループの浸透液タンクを用いるのではなく循環ループを閉じた。これにより、浸透液リリーフバルブを閉じることによってゼロUTMPモードを実施することができる。
【0209】
図15Aから15Iは、設計変更された装置を表す。設計変更には、UTMP及びゼロUTMPモードの自動化と、2種類の逆UTMPモードとが含まれる。最初の逆UTMPモード(供給液ポンプの吐出量を下げるか、浸透液ポンプの吐出量を上げる)を実施することはできるが、この場合逆UTMPモードの自動化は困難である。
【0210】
図15に示す完全に自動化された濾過システムの潜在的な利点は真の逆UTMPモードを実施できることである。最初の濾過システムの構成では、供給液ポンプの吐出量を下げたとき、供給液が濾過モジュールを通過するときの圧力損失が小さくなり、供給液の入口と出口における圧力の下がり方が異なることになる。この間に浸透液の循環量が一定であると、濾過モジュールの入口側の逆流量の方が出口側より多くなってしまう。
【0211】
逆に、浸透液ポンプの吐出量を増やしたとき、浸透液回収チューブにおける圧力損失が増大する。供給液循環量が一定であると、この場合にも濾過モジュールの入口側の逆流量の方が出口側より多くなってしまう。図45に予想される圧力勾配を示す。
【0212】
図15に示す装置は、ポンプと圧力制御バルブ(43VC60と42VC60)の両者が完全に自動化されている。これにより、図14に示すように、逆UTMPモードにおいても、濾過モジュールの入口側と出口側の圧力差を均等に保つことができる。
【0213】
各実施例で用いた装置:
実施例1:図17
実施例2:図17
実施例3:図25
実施例4:図32
実施例5:図15I
実施例6〜8:図15の各図
実施例9:図15の各図
実施例10:図44
【0214】
図31は、本願の非限定的実施形態を、上記または別の本願発明の側面に従ってシリーズ1から4、及びシリーズ10から15として表し、各シナリオに関する一般的プロセス条件を示した模式図である。
【0215】
当業者であれば、本願に開示した実施形態を種々変更して実施できることを容易に理解できるであろう。本願に示した実施形態と実施例は本願発明の例示であり、特許請求の範囲を限定するものではない。引用した特許、文献、特許出願は、参照として本願に組み込まれる。
【技術分野】
【0001】
<関連発明とのクロスリファレンス>
本願は、2007年9月12日出願の米国仮出願No.60/971,769に基づく優先権を主張し、この仮出願の全内容を本願に参照として組み込む。
【0002】
文中の見出しは単に内容を分かり易くするためのものであり、本願の主題を限定するものではない。
【0003】
本願発明は、内部汚れ付着が制御された濾過に関し、特に均一な膜透過差圧が得られ、内部汚れ付着が制御された濾過膜を用いた固/液分離濾過に関する。
【背景技術】
【0004】
精密濾過と限外濾過は、生物学的培養液やその他の液体中の溶質の分離に用いられている。飲料業ではビールやワインの浄化に精密濾過が用いられ、乳業では例えば乳清やミルクの加工に精密濾過と限外濾過が用いられている。最近、バイオテクノロジー業界で製品の分離や精製に精密濾過が徐々に用いられ始めている。
【0005】
精密濾過は原理的に、例えば発酵後の懸濁液、ミルク、あるいは果肉入りジュース等の、固形分の多い懸濁液から溶質を分離する際に好ましい方法である。プレートとフレーム、セラミックチューブ、中空繊維、あるいは濾過膜等の様々な精密濾過方式が用いられている。
プレートとフレームは殆ど用いられないが、固形分の多い濃縮液を処理することができる。しかしプレートとフレームは比較的高価であり、工業スケールで用いる場合、非常に大きな設置面積が必要である。
セラミックチューブは、処理能力が大きいこと、操作が容易なこと、滅菌/洗浄が容易なこと、膜の寿命が長いことから、乳業や食品業で広く用いられている。しかし、セラミックチューブは一般に非常に高価である。また、付着汚れを最小にするために非常に高いクロスフローを維持する必要があるため、他の精密濾過方式と比べてより大きなエネルギーが必要である。
中空繊維はセラミックチューブの代替である。中空繊維は強度が低く、セラミックチューブほど運転操作が容易ではない。しかし中空繊維は低コストであり、セラミックチューブやフレームの場合と比べて設置面積がはるかに小さい。
【0006】
ある種の精密濾過に、螺旋状に巻かれた濾過膜(以下、螺旋状濾過膜)が用いられている。一般に螺旋状濾過膜は、浸透液を捕集するための多数の孔が設けられた浸透チューブの外周に、シート状の濾過膜が巻きつけられた構成になっている。
図3に示すように、螺旋状濾過膜モジュールの典型的な構造は、円筒状の外筒と、浸透液を回収するための多数の孔またはスロットが設けられ、外筒内に封入された回収チューブから成る。
2層の濾過膜と、この2層の濾過膜の間に挟みこまれた浸透流路層とから成るシートが回収チューブに螺旋状に巻きつけられ、さらに巻きつけられたシートを離間させて供給流路を形成するためのスペーサが設けられている。浸透流路層は一般に多数の開口を有する材料であり、浸透液を螺旋状に巻かれた膜の各層から回収チューブへ導く。
操業時には、分離処理される供給液が円筒状の外筒の一端に供給され、供給流路とスペーサに沿って円筒軸方向に流れる。固形成分を含む未透過液の流れは、円筒状の外筒の他端から排出される。回収チューブの近傍にない濾過膜と浸透流路層の端部はシールされており、浸透液を保持するとともに、浸透液の流れを濾過膜の間の浸透流路層から回収チューブへと導く。濾過膜を通過した浸透液は、浸透液回収手段を円筒半径方向に回収チューブに向けて流れ、回収チューブから浸透液出口から排出される。
【0007】
螺旋状濾過膜の商業スケールでの使用は、高度に希釈された(低固形成分量)プロセスの流体処理に限られてきた。螺旋状濾過膜モジュールは、単独で使用されるか、あるいは比較的低固形成分量の流体の分離用に高圧逆浸透と組合せるか、または低圧限外濾過と組み合わせて用いられることが多い。高圧逆浸透との組み合せの例として塩水からの純水の製造が挙げられ、低圧限外濾過との組み合わせの例として食品業での乳清タンパクの濃縮が挙げられる。
理論的には、螺旋状濾過膜を用いた装置は、濾過装置の設置面積に比して相対的に大きな分離濾過膜面積が得られる。他の条件が同じである限り、濾過装置の膜面積が大きくなる程より大きな浸透率が得られるはずである。
しかし、螺旋状濾過膜は短時間で付着汚れが生じる傾向がある。付着汚れは装置の処理能力を決める流束を低下させ、生産量を決める透過量を低下させる。残念ながら、螺旋状濾過膜の入り口側の膜透過差圧(TMP)は、出口側のTMPより大きい。このため、未透過液側では圧力勾配が生じる一方、透過液側では濾過膜全体にわたり一定で低圧となる。従って、一般に最適なTMPは濾過膜の狭い範囲でしか得られない。
この最適範囲より上流側では、濾過膜に過大な圧力が加わり付着汚れが生じやすい一方、この最適範囲より下流側では、TMPが低いことにより十分な流束が得られない。螺旋状濾過膜を直列にして用いることがあるが、これは付着汚れの問題を悪化させる。
【0008】
逆洗は、フィルターの流束を回復させ、付着汚れを除去する方法として広く知られている。逆洗は螺旋状濾過でも行われており、例えば回収した浸透液を強制的に浸透流路層に逆流させ、濾過膜の浸透液側から強く加圧する。従来、逆洗法では濾過膜の浸透液側の異なる位置での均一な膜透過差圧は得られなかった。浸透液側の圧力勾配は、浸透液バックフロー入口の方がより高く、浸透流路層バックフロー入口から離れた位置では相対的に低くなりがちである。
従って、濾過膜の軸方向に沿った場所によって付着汚れ除去効果と流束回復効果は大きく異なり、また予測不能である。従来の逆洗では、浸透液側で十分な逆洗圧力が生じないために十分な洗浄効果が得られないか、または浸透液側で付着汚れが除去される高い逆洗圧力が生じるものの、濾過膜が損傷されて層剥離を生じる結果となっていた。
このように浸透液を逆流させる逆洗法の場合、付着汚れ除去効果を生じるウォーターハンマーあるいは流体衝撃波を生じるであろうが、これは濾過膜にとっては過酷である。また、このような逆洗処理を用いて濾過を繰り返し行うと、付着汚れ除去効果と流束回復効果の程度が次第に低下する。
逆洗効果を高めるために加圧空気を用いることもある。しかし、螺旋状濾過膜が空気圧による逆洗に耐えられるほど頑丈ではない場合がある。例えばTrisep社やGrahamtek社等のいくつかの製造業者は、逆洗のストレスに耐えられる設計の螺旋状濾過膜を製造している。
【0009】
Baruah, G., et al., J Membrane Sci, 21 A (2006) 56-63には、パルス逆洗装置と、均一膜透過差圧(UTMP)を得るための浸透液並流再循環手段と、冷却/温度制御手段を備えるセラミック精密濾過膜を有する精密濾過プラントで、遺伝子組み換えヤギのミルクの濾過について試験した結果が開示されている。
パルス逆洗は、浸透液をトラップすることにより行われる。これは、パルス逆洗バルブとポンプの出口の後ろにあるバルブを閉めることにより行われる。逆洗装置のバイパス流量を調整することにより装置に逆流する液体の流量が変動し、パルス逆洗が行われる。
しかし、この方法ではパルス逆洗中に濾液流路において不均一な背圧が生じると考えられる。この場合、得られる濾過膜の付着汚れ除去効果も不均一になるため好ましくない。またセラミックフィルターは他のMF方式、例えば螺旋状濾過膜より高価であり、また単位長さ当りの実効面積が螺旋状濾過膜より小さくなる。
Brandsma, R.L., et al., J Dairy Sci, (1999) 82:2063-2069には、UTMP能力を有するとされるMFシステムを用いて、チーズを製造する前に酸性化したスキムミルクを精密濾過することによって乳清タンパクとカルシウムを減少させることが開示されている。
濾過手段としてアルミナベースのセラミック膜を用い、UTMPシステムを使用する際、このセラミック膜を1.5重量%のNaOHと1.5重量%の硝酸を交互に用いて逆洗を行っている。このように、Brandsmaらが開示した逆洗方法では、セラミック膜を濾液以外の薬品を用いて洗浄している。濾液以外の強力な薬品を使用することと、この薬品を用いてフィルターを洗浄することにより生産が長時間中断することは好ましくない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
低濃度から高濃度の固形成分を含む供給ストリームの液/固分離工程において、中断することなくより長時間操業することが可能で、装置及び操業コストが低く、薬品を添加して洗浄することなく効果的な付着汚れ除去を行うことができる、高流量と高生産性が得られる濾過方法が求められている。
【0011】
クロスフロー濾過を用い、分子量の違いを利用して溶質または成分を分離することもできる。ナノ濾過を用いた蔗糖の分離がその一例である。別の例はミルクのタンパク質(主にカゼインと乳清)の分離であり、食品業界で活発に研究されている。成功例として、高クロスフロー流速を用いたチューブ状のセラミック濾過膜が知られている。
しかし、このタイプのプロセスは、ポリマー製螺旋状濾過膜を用いたとき、その流動特性のため不十分な結果しか得られなかった。これは、螺旋状濾過膜の操業中、極性を帯びた粒子の層が次第に形成されることに原因がある。この付着汚れ層は流束の低下と、溶質、特に乳清タンパクの不透過の原因となる。付着汚れ層の蓄積は、TMPとクロスフロー流速との比が増加するに従い激しさを増す。
クロスフローとTMPとを分離できるシステムであれば、最小限の付着汚れで操業することができるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0012】
一側面では、この発明は濾過方法に関し、向かい合う浸透液側と未透過液側とを有する濾過膜と、入口及び出口と、軸方向に沿って濾過膜の未透過液側を入口から出口に向け流れる供給流と、軸方向に沿って濾過膜の浸透液側を入口から出口に向け流れる浸透液流と、並流浸透液再循環流を濾過膜モジュールに供給する浸透液再循環ループとを備える濾過膜モジュールを準備するステップと;
濾過膜の浸透液側または未透過液側の流量または圧力を調整して、濾過膜の浸透液側と未透過液側の入口及び出口におけるベースライン圧力の差が実質的に一定になるように、濾過膜の浸透液側と未透過液側の入口及び出口のベースライン圧力を設定するステップであって、濾過膜の浸透液側の入口のベースライン圧力が出口のベースライン圧力より高く、濾過膜の未透過液側の入口のベースライン圧力が出口のベースライン圧力より高いステップと;
濾過膜の浸透液側の圧力を定期的に調整し、入口及び出口における浸透液側と未透過液側の圧力の差を、前記ベースライン圧力の差に対し少なくとも50%以下になるように低下させるステップとを含む、濾過方法に関する。
1つの実施形態では、濾過膜は螺旋状濾過膜である。
【0013】
いくつかの実施形態では、浸透液側の圧力の定期的調整を1分から6時間おきに1秒間から60秒間行い、定期的調整と定期的調整の間に、分離モードでの操業を行う。
ひとつの実施形態では、濾過膜の浸透液側の圧力を定期的に低下させるとき、濾過膜の浸透液側と未透過液側の入口と出口における圧力の差が実質的にゼロになるように調整する。
【0014】
いくつかの実施形態では、この方法には、浸透液の圧力を上げるか、または未透過液の圧力を下げることによって、定期的に濾過膜の未透過液側の圧力に対し浸透液側の圧力を制御可能な範囲で高くして、濾過膜を通るバックフローを生じさせる逆膜透過差圧(rUTMP)プロセスを行うステップが含まれ、この逆UTMPプロセスを実施しているとき濾過膜の浸透液側と未透過液側における入口から出口に向かう軸方向の流れを維持し、ここで、逆UTMPプロセスを実施しているとき入口と出口における濾過膜の浸透液側と未透過液側の圧力差を実質的に一定にする。
いくつかの実施形態では、逆UTMPプロセスを1分から6時間おきに1秒間から60秒間行い、この定期的調整と定期的調整の間に分離モードでの操業を行う。
【0015】
別の側面では、この発明は濾過方法に関し、向かい合う浸透液側と未透過液側とを有する濾過膜と、入口及び出口と、軸方向に沿って濾過膜の未透過液側を入口から出口に向け流れる供給流と、軸方向に沿って濾過膜の浸透液側を入口から出口に向け流れる浸透液流と、並流浸透液再循環流を供給する再循環ループとを備える螺旋状濾過膜モジュールを準備するステップと;
浸透液流の流量を調整して、濾過膜の浸透液側と未透過液側の入口及び出口におけるベースライン圧力の差が実質的に一定になるように、濾過膜の浸透液側と未透過液側の入口及び出口におけるベースライン圧力を設定するステップであって、濾過膜の浸透液側の入口のベースライン圧力が出口のベースライン圧力より高く、濾過膜の未透過液側の入口のベースライン圧力が出口のベースライン圧力より高いステップとを含む、濾過方法に関する。
ひとつの実施形態では、濾過膜は螺旋状濾過膜である。
【0016】
いくつかの実施形態では、この方法には、濾過膜の浸透液側の圧力を定期的に調整して、入口及び出口における浸透液側と未透過液側の圧力の差を、浸透液側と未透過液側のベースライン圧力の差に対し少なくとも50%以下になるように低下させるステップが含まれる。
ひとつの実施形態では、濾過膜の浸透液側の圧力を定期的に低下させるとき、濾過膜の浸透液側と未透過液側の入口と出口における圧力の差が実質的にゼロになるように調整する。
いくつかの実施形態では、圧力の定期的調整を1分から30分おきに1秒間から10秒間行い、この定期的調整と定期的調整の間に分離モードでの操業を行う。
【0017】
いくつかの実施形態では、この方法には、濾過膜の浸透液側について、浸透液の圧力を上げるか、または未透過液の圧力を下げることによって、定期的に濾過膜の未透過液側の圧力に対し浸透液側の圧力を制御可能な範囲で高くして、濾過膜を通るバックフローを生じさせる逆膜透過差圧(rUTMP)プロセスを行うことが含まれる。逆UTMPプロセスの間、濾過膜の浸透液側と未透過液側における入口から出口に向かう軸方向の流れを維持する。ここで、逆UTMPプロセスにおける濾過膜の浸透液側と未透過液側の入口と出口での圧力差は実質的に一定である。
【0018】
別の側面では、この発明は濾過方法に関し、向かい合う浸透液側と未透過液側とを有する濾過膜と、入口及び出口と、軸方向に沿って濾過膜の未透過液側を入口から出口に向け流れる供給流と、濾過膜の浸透液側を入口から出口に向け流れる浸透液流と、並流浸透液再循環流を供給する浸透液再循環ループとを備える濾過膜モジュールを準備するステップと;
浸透液側の流量を調整して、濾過膜の浸透液側と未透過液側の入口及び出口における圧力の差が実質的に一定になるようするステップであって、濾過膜の浸透液側の入口のベースライン圧力が出口のベースライン圧力より高く、濾過膜の未透過液側の入口のベースライン圧力が出口のベースライン圧力より高いステップと;
浸透液の圧力を上げるか、または未透過液の圧力を下げることによって、定期的に濾過膜の未透過液側の圧力に対し浸透液側の圧力を制御可能な範囲で高くして、濾過膜を通るバックフローを生じさせる逆膜透過差圧(rUTMP)プロセスを、浸透液側について行うことが含まれ、逆UTMPプロセスを実施しているとき、濾過膜の浸透液側と未透過液側における入口から出口に向かう軸方向の流れを維持し、ここで、逆UTMPプロセスを実施しているとき、濾過膜の浸透液側と未透過液側の入口と出口での圧力差を実質的に一定にするステップとが含まれる。
ひとつの実施形態では、濾過膜は螺旋状濾過膜である。
【0019】
別の側面では、この発明は濾過処理される流体を螺旋状濾過膜によって浸透液と未透過液とに分離する濾過方法に関し、
(a)分離処理する供給液を所定の流量で供給液入口に流入させ、螺旋状濾過膜の未透過液側において加圧下で軸方向に流動させ、螺旋状濾過膜モジュールの未透過液流路を通して第1流動方向に流動させるステップと、
(b)螺旋状濾過膜モジュールの未透過液出口から、軸方向に流動する未透過液を排出するステップと、
(c)濾過膜の透過液側の反対側である浸透液側にある浸透液流路内を半径方向に流れる浸透液を、浸透液流路と液流通可能で、少なくとも1の流動抵抗部材を有する浸透液回収チューブに回収するステップと、
(d)回収した浸透液を中央浸透液回収チューブから浸透液出口へ向けて流し、螺旋状濾過膜モジュールから排出させるステップと、
(e)浸透液回収チューブから排出された浸透液の一部を、所定の浸透液流量で浸透液入口へ送り返すステップと、
(f)浸透液の流量を調整して、濾過膜の浸透液側と未透過液側の入口及び出口におけるベースライン圧力の差が実質的に一定になるように、濾過膜の浸透液側と未透過液側の入口及び出口のベースライン圧力を設定するステップであって、濾過膜の浸透液側の入口のベースライン圧力が出口のベースライン圧力より高く、濾過膜の未透過液側の入口のベースライン圧力が出口のベースライン圧力より高いステップと、から成る濾過方法に関する。
【0020】
1つの実施形態では、この方法にはさらに、(g) 濾過膜の浸透液側の圧力を定期的に調整して、入口及び出口における浸透液側と未透過液側の圧力の差を、浸透液側と未透過液側のベースライン圧力の差に対し少なくとも50%以下になるように低下させるステップが含まれる。
いくつかの実施形態では、濾過膜の浸透液側の圧力を定期的に低下させるとき、濾過膜の浸透液側と未透過液側の入口と出口における圧力の差が実質的にゼロになるように調整するステップが含まれる。
いくつかの実施形態では、圧力の定期的調整を1分から6時間おきに1秒間から60秒間行い、この定期的調整と定期的調整の間に分離モードでの操業を行う。
1つの実施形態では、濾過膜の浸透液側の圧力を定期的に低下させるとき、濾過膜の浸透液側と未透過液側の入口と出口における圧力の差が実質的にゼロになるように調整する。
【0021】
1つの実施形態では、この方法にはさらに(g)浸透液の圧力を上げるか、または未透過液の圧力を下げることによって、濾過膜の未透過液側の圧力に対し浸透液側の圧力を制御可能な範囲で高くして、濾過膜を通るバックフローを生じさせる逆UTMPプロセスを、定期的に浸透液側について行うことが含まれ、この逆UTMPプロセスの間は濾過膜の浸透液側と未透過液側における入口から出口に向かう軸方向の流れを維持し、ここで逆UTMPプロセスの間の濾過膜の浸透液側と未透過液側の入口と出口における圧力差を実質的に一定にするステップが含まれる。
いくつかの実施形態では、逆UTMPプロセスを1分から6時間おきに1秒間から60秒間行い、この定期的調整と定期的調整の間に分離モードでの操業を行う。
いくつかの実施形態では、逆UTMPプロセスの間、濾過膜の全長にわたって膜透過差圧(TMP) の変動幅は濾過膜の軸方向両端におけるTMP値に対して40%未満である。
いくつかの実施形態では、逆UTMPプロセスの間、未透過液流路と浸透液流路は約0.1から約10barの加圧下に継続的に保たれる。
【0022】
いくつかの実施形態では、この発明の方法では、濾過膜の浸透液側に流動抵抗部材が設けられ、流動抵抗部材を通過する浸透液の流れと流量は、制御された圧力勾配を生じるようにして変化させられる。
いくつかの実施形態では、流動抵抗部材は、一体のテーパー形状挿入部材、浸透液が流れる回収チューブ内の内部スペースに充填された多孔質媒体、浸透液が流れる回収チューブ内に設けられたスタティックミキサー、浸透液が流れる回収チューブの内壁から半径方向内側に延び出す少なくとも1のバッフルから成る群から選択される。
1つの実施形態では、流動抵抗部材は一体のテーパー形状挿入部材である。
1つの実施形態では、流動抵抗部材は、回収チューブ内において流動抵抗部材と回収チューブの内壁との間に介在する少なくとも1の弾性シールリングによって保持された一体のテーパー形状挿入部材である。またテーパー形状挿入部材には弾性シールリングの下に延在する少なくとも1の溝が含まれ、この溝により流体が弾性シールリングの下を通り、一体のテーパー形状挿入部材の外面に沿って流動することができる。
いくつかの実施形態では、流動抵抗部材はビーズ及び発泡体から選択される多孔質媒体である。
いくつかの実施形態では、流動抵抗部材はスタティックミキサーである。
【0023】
この発明のいくつかの実施形態では、濾過膜はPVDF、ポリスルホン、またはポリエーテルスルホンから成る濾過膜のいずれかであり、この濾過膜の孔径は約0.005から約5ミクロンである。
いくつかの実施形態では、濾過膜はポリスルホン、またはポリエーテルスルホンから成り、この濾過膜のポアサイズは約0.005から約2ミクロンである。
【0024】
この発明のいくつかの実施形態では、供給液にはポリペプチド、核酸、糖タンパク質、または生体高分子のいずれかが含まれる。
いくつかの実施形態では、供給液には細菌性生産生命体に由来する発酵製品が含まれる。
いくつかの実施形態では、細菌性生産生命体はバシラス属、エシェリキア属、パンテア属、ストレプトミセス属、シュードモナス属から成る群から選択される。
いくつかの実施形態では、供給液には真菌性生産宿主に由来する発酵製品が含まれる。
いくつかの実施形態では、真菌性生産宿主はアスペルギルス属、トリコデルマ属、シゾサッカロミセス属、サッカロミセス属、フザリウム属、フミコーラ属、ムコール属、クリベロマイセス属、ヤロウイア属、アクレモニウム属、ニューロスポラ属、ペニシリウム属、マイセリオフトラ属、及びティエラビア属から成る群から選択される。
いくつかの実施形態では、供給液にはプロテアーゼが含まれ、濾過は約15℃未満に保たれた温度において行われる。
いくつかの実施形態では、供給液にはアミラーゼが含まれ、濾過は約55℃未満に保たれた温度において行われる。
【0025】
別の側面では、この発明は濾過システムに関し、
(a)螺旋状濾過膜モジュールであって、螺旋状濾過膜と;
濾過膜の未透過液側に延在し、供給液入口から供給液が流入し、未透過液が濾過膜の未透過液側を軸方向に流れて未透過液出口を経て螺旋状濾過膜モジュールから排出される未透過液流路と;
濾過膜の未透過液側とは反対側の浸透液側にあって、濾過膜を通過する浸透液を半径方向に流動させて中央浸透液回収チューブまで流動させる浸透液流路を有し、浸透液流路と浸透液回収チューブは液流通可能であり、回収チューブが少なくとも1の流動抵抗部材を有するとともに、回収された浸透液を流動させる流路を形成して、回収された浸透液を浸透液出口を経て螺旋状濾過膜モジュールから排出し、さらに回収チューブが、排出された浸透液の少なくとも一部を送り返して回収チューブへ導入するための浸透液入口を有する構成の浸透液流路とを備える螺旋状濾過膜モジュールと;
(b)回収チューブから排出された浸透液の少なくとも一部を制御可能な流量で回収チューブの浸透液入口へ送り返す浸透液ポンプと;
(c)供給液を制御可能な流量で供給液入口へ供給する供給液ポンプであって、浸透液ポンプと相互制御される供給液ポンプと;
(d)浸透液ポンプと供給液ポンプを相互制御する制御装置であって、螺旋状濾過膜モジュールに供給される浸透液の流量と各供給液の流量とを相互制御することにより生産中に分離モードと付着汚れ除去モードとを交互に実施可能で、分離モード及び付着汚れ除去モードを実施しているとき濾過膜の軸方向に沿って実質的に均一な膜透過差圧を保つことができる制御装置とを備える濾過システムに関する。
いくつかの実施形態では、このシステムにはさらに、(e)浸透液流路と液流通可能な加圧水ラインが含まれる。
【0026】
いくつかの実施形態では、濾過システムにはさらに、第1軸端及び第2軸端を備え、中央浸透液回収チューブが設けられる環状スペースを画成するハウジングと;浸透液回収チューブの周囲に巻回される濾過膜シートであって、半浸透性濾過膜シートの間に挟みこまれ、半径方向流路としての浸透液流路を形成する多孔質濾過部材と;巻回される濾過膜シートの間に配置して未透過液流路を画成させるためのスペーサとが設けられ、濾過膜シートの外側軸方向縁及び両側縁がシールされ、濾過膜シートの内側軸方向縁と浸透液回収チューブとの間で浸透液が流通可能である。
【0027】
いくつかの実施形態では、浸透液ポンプと供給液ポンプはさらに、未透過液と浸透液流路において軸方向への流動を維持しながら、定期的に濾過膜の浸透液側を未透過液側に対し加圧して、浸透液側から未透過液側へ濾過膜を通過するバックフローを生じさせるように制御可能である。
【0028】
いくつかの実施形態では、供給液ポンプは供給速度を低下させるように制御可能であり、一方浸透液ポンプは排出された浸透液を一定速度で送り返す様に制御可能である。いくつかの実施形態では、浸透液ポンプは排出された浸透液を浸透液入口に送り返す流量が増加するように制御可能で、一方、供給液ポンプは供給速度を一定に保つように制御可能である。
【0029】
いくつかの実施形態では、流動抵抗部材は、一体のテーパー形状挿入部材、浸透液が流れる回収チューブ内の内部スペースに充填された多孔質媒体、浸透液が流れる回収チューブ内に設けられたスタティックミキサー、浸透液が流れる回収チューブの内壁から半径方向内側に延び出す少なくとも1のバッフルから成る群から選択される。
1つの実施形態では、流動抵抗部材は一体のテーパー形状挿入部材である。
1つの実施形態では、流動抵抗部材は、回収チューブ内において流動抵抗部材と回収チューブの内壁との間に介在する少なくとも1の弾性シールリングによって保持された一体のテーパー形状挿入部材である。
またテーパー形状挿入部材には弾性シールリングの下に延在する少なくとも1の溝が含まれ、この溝により流体が弾性シールリングの下を通り、一体のテーパー形状挿入部材の外面に沿って流動することができる。
いくつかの実施形態では、浸透液が流れる回収チューブ内の内部スペースに充填された球状多孔質媒体である。
【0030】
いくつかの実施形態では、濾過膜の濾過孔径が約0.005ミクロンから約5ミクロンである。いくつかの実施形態では、濾過膜の濾過孔径が約0.05ミクロンから約0.5ミクロンである。
いくつかの実施形態では、濾過膜はPVDF、ポリスルホン、またはポリエーテルスルホン製の濾過膜であり、濾過膜の濾過孔径が約0.005ミクロンから約5ミクロンである。いくつかの実施形態では、濾過膜はポリスルホン、またはポリエーテルスルホン製の濾過膜であり、濾過膜の濾過孔径が約0.005ミクロンから約2ミクロンである。
【0031】
いくつかの実施形態では、濾過システムにはシステムにおける流量または流体を制御する複数のバルブと、システムを流れる流体に関するデータを採取する複数のセンサーと、電子データ処理ネットワークとを備える。電子データ処理ネットワークは、ポンプ、バルブ、及びセンサーの操業に関するデータを受信し、転送し、処理し記録することができる。このとき、濾過プロセスの流動を記録し集積するデータには、濾過プロセスの流動を制御するために必要な情報が包括的に含まれている。
いくつかの実施形態では、センサーは流量計、圧力計、濃度センサー、pH センサー、伝導度計、温度計、濁度計、紫外光吸光度計、蛍光センサー、屈折率計、オスモル濃度計、乾燥固体センサー、近赤外吸光度計、及びフーリエ変換赤外吸光度計の内の少なくとも1である。
【0032】
別の側面では、本願に開示する方法により浸透液製品または未透過液製品が提供される。
【0033】
別の側面では、浸透液側と未透過液側を有する螺旋状濾過膜と、螺旋状濾過膜の浸透液側と液流通する浸透液回収チューブと、回収チューブ内に設けられる少なくとも1の流動抵抗部材であって、回収チューブの入口端と出口端の間を流れる浸透液の流動圧を低下させることができる流動抵抗部材とを備える、螺旋状濾過膜モジュールが提供される。
1つの実施形態では、回収チューブは螺旋状濾過膜モジュールのほぼ中心に設けられる。
いくつかの実施形態では、流動抵抗部材は、一体のテーパー形状挿入部材、浸透液が流れる回収チューブ内の内部スペースに充填された多孔質媒体、浸透液が流れる回収チューブ内に設けられたスタティックミキサー、浸透液が流れる回収チューブの内壁から半径方向内側に延び出す少なくとも1のバッフルから成る群から選択される。
1つの実施形態では、流動抵抗部材は一体のテーパー形状挿入部材である。
1つの実施形態では、流動抵抗部材は、回収チューブ内において流動抵抗部材と回収チューブの内壁との間に介在する少なくとも1の弾性シールリングによって保持された一体のテーパー形状挿入部材である。
またテーパー形状挿入部材には弾性シールリングの下に延在する少なくとも1の溝が含まれ、この溝により流体が弾性シールリングの下を通り、一体のテーパー形状挿入部材の外面に沿って流動することができる。
1つの実施形態では、流動抵抗部材は回収チューブ内の内部スペースに充填された多孔質媒体である。
いくつかの実施形態では、流動抵抗部材は、ポリマーの球または中空球、ポリマーの球、ガラスビーズ、セラミック球、金属球、金属中空球、複合体球、及びこれらの組み合わせから成る群から選択される。
1つの実施形態では、流動抵抗部材は回収チューブ内に設けられたスタティックミキサーである。
1つの実施形態では、流動抵抗部材は回収チューブ内で回転可能に設けられたインペラーである。
1つの実施形態では、流動抵抗部材は回収チューブの内壁から半径方向内側に延び出す少なくとも1のバッフルである。
【図面の簡単な説明】
【0034】
当業者であれば、以下の図面は説明のみを目的とすることが理解できよう。添付の図面は本願の範囲を限定することを意図したものではない。また、異なる図面で符号に同じ番号が付されている場合は、特に断りのない限り、同じ構成要素を示している。図面は縮尺を考慮して作成したものではない。
【図1】濾過プロセスの分類を示す図である。
【図2】本願発明に係る並流浸透液再循環が設けられ、浸透液回収チューブ内に流動抵抗部材を有する螺旋状濾過膜精密濾過システムを表す模式図である。
【図3A】螺旋状濾過膜の模式図である。
【図3B】螺旋状濾過膜の部分断面図である。
【図4A】本願の一実施形態に係る回収チューブ内に設けられた一体のテーパー形状挿入部材をFREとして備える、本願明に係る螺旋状濾過膜を有する精密濾過システムの部分断面図である。
【図4B】図4Aに示す一体のテーパー形状挿入部材の端部の斜視図である。
【図4C】本願の別の実施形態に係る図4Aに示す一体のテーパー形状挿入部材の端部の斜視図である。
【図4D】本願の別の実施形態に係る図4Aに示す一体のテーパー形状挿入部材の端部の斜視図である。
【図5】本願の一実施形態に係る回収チューブ内に充填中空球をFREとして備える、本願の螺旋状濾過膜を有する精密濾過システムの部分断面図である。
【図6】本願の別の実施形態に係る回収チューブ内にインペラーミキサーをFREとして備える、本願の螺旋状濾過膜を有する精密濾過システムの部分断面図である。
【図7】本願の別の実施形態に係る回収チューブ内にバッフルをFREとして備える、本願の螺旋状濾過膜を有する精密濾過システムの部分断面図である。
【図8】本願の別の実施形態に係る、図7の螺旋状濾過膜を長さ方向に切断して示す部分断面図である。
【図9】螺旋状濾過膜を有する精密濾過システムの比較例を表す模式図である。
【図10】図9に示す比較例の螺旋状濾過膜で分離操作を行ったときの、浸透液側と未透過液側の流体の圧力を表すグラフである。
【図11】図2に示す螺旋状濾過膜精密濾過システムをUTMPモードで操業したときの、浸透液側と未透過液側の流体の圧力を表すグラフである。
【図12】図2に示す螺旋状濾過膜精密濾過システムで比較例の逆洗操作を行ったときの、浸透液側と未透過液側の流体の圧力を表すグラフである。
【図13】図2に示す螺旋状濾過膜精密濾過システムにおいて、比較例の逆洗操作を供給液ポンプを止めて行ったときの、浸透液側と未透過液側の流体の圧力を表すグラフである。
【図14】図2に示す本願発明に係る螺旋状濾過膜精密濾過システムにおいて、並流浸透液再循環により逆UTMP (rUTMP)モードで操業したときの、浸透液側と未透過液側の流体の圧力を表すグラフである。
【図15】図15A〜15Iは、螺旋状濾過膜を有する精密濾過システムに異なる浸透液及び未透過液の流路構成を適用したときの状態を表す模式図である。特に図15B〜15Eは、本願の実施形態を表す図である。
【図15A】供給液のみを供給したときの精密濾過システムの状態を表す模式図である。
【図15B】本願の精密濾過システムにおいて、並流浸透液再循環(CCPR) 条件にして、螺旋状濾過膜がUTMPとなるようにしたときの状態を表す模式図である。
【図15C】本願の精密濾過システムにおいて、螺旋状濾過膜をゼロUTMP(nUTMP)にしたときの状態を表す模式図である。
【図15D】本願の精密濾過システムにおいて、螺旋状濾過膜を別の実施形態に係る逆UTMP(rUTMP)モードにしたときの状態を表す模式図である。
【図15E】本願の精密濾過システムにおいて、螺旋状濾過膜を別の実施形態に係る逆UTMP(rUTMP)モードにしたときの状態を表す模式図である。
【図15F】精密濾過システムにおいて、フリーフローのみでダイアフィルトレーションを行ったときの状態を表す模式図である。
【図15G】精密濾過システムにおいて、UTMPダイアフィルトレーションを行ったときの状態を表す模式図である。
【図15H】精密濾過システムにおいて、フリーフローのみの再循環条件にしたときの状態を表す模式図である。
【図15I】精密濾過システムにおいて、UTMP再循環条件にしたときの状態を表す模式図である。
【図16】図15A〜15Iの精密濾過システムの様々な操業モードにおける各装置の設定の例を示す図である。
【図17】本願の実施例で用いた、螺旋状濾過膜を有する精密濾過システムの模式図である。
【図18】濾過操業パラメータである浸透液流束とVCFの関係を検討する実験から得られたデータを表す図であり、供給培養液中の宿主生命体及び酵素はバシラス・サブチリス培養液及びプロテアーゼ酵素である。「LMH」はL/m2/hrを意味する。
【図19】濾過操業パラメータである時間平均浸透液流束とVCFの関係を検討する上記の図18に関連する実験から得られたデータを表す図であり、供給液である培養液中の宿主生命体及び酵素はバシラス・サブチリス培養液及びプロテアーゼである。
【図20】濾過操業パラメータである総透過率とVCFの関係を検討した上記図18に関する実験から得られたデータを表す図であり、供給液である培養液中の宿主生命体及び酵素はバシラス・サブチリス培養液及びプロテアーゼである。
【図21】濾過操業パラメータである浸透液流束とVCFの関係を検討した別の実験から得られたデータを表す図であり、供給液である培養液中の宿主生命体及び酵素は、図18〜20に示すデータを得た実験とは別のバシラス・サブチリス培養液及びプロテアーゼである。
【図22】濾過操業パラメータである時間平均浸透液流束とVCFの関係を検討した上記図21に関連する実験から得られたデータを表す図であり、供給液である培養液中の宿主生命体及び酵素はバシラス・サブチリス培養液及びプロテアーゼである。
【図23】濾過操業パラメータである総透過率とVCFの関係を検討した上記図21に関連する実験から得られたデータを表す図であり、供給液である培養液中の宿主生命体及び酵素はバシラス・サブチリス培養液及びプロテアーゼである。
【図24】上記図21に関連する実験から得られた、種々の操業モードが総透過率に及ぼす影響を表す図である。
【図25】浸透液回収チューブシステムにおいて、異なる総浸透液流れについて圧力分布の影響を検討するために用いた実験装置の模式図である。
【図26】図25の実験装置で得られたデータを示す図である。
【図27】図25の実験装置で得られたデータを示す図である。
【図28】図25の実験装置で得られたデータを示す図である。
【図29】図25の実験装置で得られたデータを示す図である。
【図30】図25の実験装置で得られたデータを示す図である。
【0035】
【図31】本願に示す非限定的実施形態における各シナリオの一般的プロセス条件を模式的に示す図である。
【図32】図15A〜15Iに示したパイロットスケールのクロスフロー濾過システムの模式図である。このシステムは連続モードで操業され、供給液はバルブ41VC60から供給され、未透過液と浸透液はそれぞれ異なる流速でバルブ41VC63とバルブ43VC60から排出される。
【図33】図32に示す装置に供給された希釈培養液の量を測定して求めたニート培養液の流束を表す図である。
【図34】図33と同じ装置での浸透液流束を表す図である。この図は、操業中のUTMP/逆UTMPモードにより流束が変化することを示している。
【図35】図34の拡大図であり、UTMP/逆UTMPモードにおける流束の変化をより詳しく示す図である。UTMPモード単独のときは流束の低下が認められ、逆UTMPモードを開始するときには、UTMPがゼロUTMPまで低下するため、流束が急速に低下する。その後、短時間の逆UTMPモードの期間があり、次に圧力が設定値まで戻ることにより流束が回復する。逆UTMPモード後の流束は、逆UTMPモード前の流束より大きい。
【図36】実施例4の試験操業中における、プロテアーゼの透過率の経時変化を示す図である。
【図37】実施例5の試験操業中における、プロテアーゼの透過率とクロスフロー圧との関係を表す図である。透過率の計算に用いたサンプルは、プロセスを所定の条件で30分間操業して状態調整した後採取した。
【図38】実施例5の試験操業中における、プロテアーゼの透過率と均一膜透過差圧(UTMP)の関係を表す図である。透過率の計算に用いたサンプルは、プロセスを所定の条件で30分間操業して状態調整した後採取した。
【図39】実施例5の実験で観察された浸透液流束を表すグラフである。
【図40】実施例6の実験において、スキムミルクの濃度を3倍にしたとき観察された浸透液流束を表すグラフである。
【図41】実施例7の実験で観察された浸透液流束を表すグラフである。
【図42】実施例8の実験で観察された浸透液流束を表すグラフである。
【図43】実施例6において、0.5から4.0barの範囲の様々なUTMPでスキムミルクを濾過しているときに採取したサンプルの電気泳動分析結果を表す図である。用いた濾過膜はMicrodyn社の0.05μm PES螺旋状濾過膜であった。濾過中、浸透液流を供給液タンクに送り返した。未透過液のサンプルをInvitrogen社 (Carlsbad, CA)の10% Bis-TrisゲルとMES緩衝液を用いて分析した。サンプルをゲルで分析する前に、先ず加熱してから還元剤で処理した。 Coomassie染料でタンパク質のバンドを染色した。ゲルの各レーンのサンプル量(μL)を、サンプル毎に図示した。タンパク質サイズの参照用として、Invitrogen社のSeeBlue Plus2分子量標準サンプルを用いた。
【図44】実施例10の実験を行った装置の模式図である。
【図45】図44に示す装置において予想される圧力勾配を表す図である。
【図46】実施例9の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下の記載は、例示であり、本願発明の説明を目的とするものである。添付の図面は本願の一部を構成し、いくつかの実施形態を説明するためのものである。以下、添付の図面を参照しながら本願の実施形態について説明する。
【0037】
本願では実施形態について"comprising" という語を用いているが、当業者であれば、特定の場合consisting essentially of"または"consisting of"を用いて記述できることを理解できよう。
【0038】
本願発明の理解と範囲の確定にあたり、当業者であれば特に断りのない限り単数形には複数形も含まれることが理解できよう。すなわち、本願では"a", "an", "at least one"は同義で用いられる。
【0039】
特に断りのない限り、本願で数量、パーセンテージ、または比率等に用いられる数値は「約」を付して解釈される。従って、特に断りのない限り、以下の説明で用いられる数値はその特性に応じて変わりうる概略値である。「約」は記載された数値に対し±5%の範囲を意味する場合がある。すなわち、例えば約100mlは95〜105mlを意味する場合がある。少なくとも各数値は、四捨五入により記載された数値となる値が考慮される。
【0040】
本願の実施形態には、サンプル調整等のプロセスまたはアクションに言及して具体的方法を示した。本願の実施形態において、方法またはプロセスは記載した順序の手順により実施できるが、所望の結果を得るためにこれらの順序を適宜変更することもできる。
【0041】
本願には、以下の定義が適用される。
【0042】
逆洗とは、濾過膜の供給液または未透過液側に堆積した付着汚れを除去するために濾過膜を通過する流れの方向を逆転させることを意味する。逆洗の間、流体は浸透液側から供給液/未透過液側へ流れる。
【0043】
並流浸透液再循環(CCPR)とは、浸透液がポンプにより、濾過膜システムの浸透液側に供給液と同じ方向に送られている(再循環)状態を意味する。この発明では、この流動モードによって濾過膜の全体にわたってUTMPが得られる。
【0044】
クロスフロー速度とは、供給液が濾過膜システムを通過するときの見かけ速度を意味する。クロスフロー速度の単位はm/sで表される。
【0045】
付着汚れ除去とは、濾過膜表面から付着汚れの原因物質を除去することを意味する。
【0046】
供給液または供給液流とは、濾過膜によって濾過される液体を意味し、本願のプロセスでは未透過液とも呼ぶ。
【0047】
流束とは、流体が濾過膜を通過するときの速度を意味する。流束の単位は通常LMH(リットル/濾過膜面積1平米/時間)で表される。
【0048】
流動抵抗部材(FRE)とは、浸透液回収空間内において浸透液の圧力損失を増加させるために用いられる構造体または機構を意味する。流路面積を制限するか、または乱流を生じさせて、濾過膜モジュールの回収チューブを通過する浸透液の流れに抵抗を発生させることによって、浸透液の圧力損失を生じさせることができる。浸透液の流れに対する抵抗により、抵抗のない流れと比較してより大きな圧力損失が生じ、濾過膜装置全体にわたって圧力損失をより広い範囲で容易に操作することが可能になる。
【0049】
付着汚れとは、ゲル層、ケーキ層による濾過膜の細孔の詰まり、粒子状物質による細孔の詰まり、または濾過膜の細孔への分子の結合による詰まり、または不溶物による細孔の詰まりを意味する。
【0050】
透過率は、濾過中に濾過膜を通過した溶質の分画である。本願を実施するときは、透過率は浸透液中の溶質濃度と未透過液中の溶質濃度の比率を計算することによって求められ、一般的にはパーセントで表される。
【0051】
浸透液は濾過膜を通過した(浸透した)液体である。浸透液を濾過液と呼ぶことがある。
【0052】
未透過液は、濾過膜の供給側に保持された液体であり、未透過液を供給液と呼ぶことがある。また、未透過液を濃縮液と呼ぶことがある。
【0053】
逆均一膜透過差圧(rUTMP)は、浸透液側の方が未透過液側より圧力が高く、濾過膜システムの全長にわたって差圧が一定である場合の濾過膜の差圧を意味する。
【0054】
膜透過差圧(TMP)とは、濾過膜の未透過液側と浸透液側との圧力差を意味する。入口膜透過差圧(ITMP)とは、濾過膜モジュールまたは濾過システムの入口における未透過液側と浸透液側との圧力差を意味する。出口膜透過差圧(OTMP)とは、濾過膜モジュールまたは濾過システムの出口における未透過液側と浸透液側との圧力差を意味する。
【0055】
均一膜透過差圧(UTMP)とは、未透過液側と浸透液側の差圧が濾過膜の全長にわたって実質的に均一なこと、あるいは、濾過膜の入口と出口において未透過液側と浸透液側とのベースライン圧の差が実質的に同じで、かつ、未透過液側及び浸透液側の入口のベースライン圧の方が、出口のベースライン圧より高いことを意味する。
【0056】
ΔPとは、濾過膜システムの未透過液側の供給液入口と出口との間の、軸方向に沿った圧力損失を意味する。
【0057】
浸透液ΔPとは、濾過膜の浸透液側の供給液入口と出口との間の、軸方向に沿った圧力損失を意味する。
【0058】
容積濃縮ファクター(VCF)とは、連続濾過システムの場合は、濾過システムから排出される未透過液の容積を、濾過システムに供給される供給液の容積で割り算した値を意味し、バッチシステムの場合は、濾過システムにおける原料または培養液の総容量を未透過液容量で割り算した値を意味する。
【0059】
生物学的培養液とは、例えばバクテリア、菌類、哺乳類、昆虫細胞、または植物細胞等の生命体を用いた培養または発酵によって産出した未精製の生物学的液体を意味する。生物学的培養液には、目的とする製品と、発酵用培養液と、細胞または細胞残渣が含まれる。生物学的培養液は、例えば植物や動物の組織等の生物学的サンプルの抽出液から得ることもできる。あるいは、例えば沈殿物、結晶、または抽出物等の、プロセス中の中間体を用いることも意味する。
【0060】
細胞分離とは、次工程のために培養液を浄化して所望の物質を回収するために、細胞、細胞残渣や粒状物質を除去するプロセスを意味する。細胞分離に先立ち、細胞溶解を行うことができる。
【0061】
浄化とは、溶液から粒状物質を除去することを意味する。
【0062】
細胞ペーストとは、生物学的培養液を濾過している際の、濾過モジュールの未透過液中にある物質を意味する。また、濾過システムから排出される未透過液を意味する場合がある。
【0063】
濃縮とは培養液から水分を除去することを意味し、精密濾過膜、限外濾過膜、ナノ濾過膜、逆浸透プロセス、クロマトグラフィー、沈殿法、及び結晶法を用いることを意味する。濃縮は、エバポレーションによって行うこともできる。
【0064】
濃縮物局在化とは、濾過膜表面への被濾過物質(ゲル層)の蓄積を意味し、膜透過差圧、クロスフロー速度、サンプル粘度、溶質濃度等の様々な要因により生じる。
【0065】
ダイアフィルトレーションとは、小分子は濾過膜を通過させ、目的とする大分子を未透過液中に残留させる分離プロセスを意味する。ダイアフィルトレーションは、塩やバッファーの交換または除去、低分子量物質や界面活性剤の除去、イオン性雰囲気またはpH雰囲気の変更に有効な手段である。
ダイアフィルトレーションでは、大分子量の成分の濃度を一定に維持しながら対象とする製品を分離する、精密濾過膜または限外濾過膜が用いられる。ダイアフィルトレーションは、例えば浸透液、水、または緩衝液を用いて行われる。
【0066】
流体という用語は、通常の意味で用いられ、特に断りのない限り、分散溶解された成分を含む液体、純粋な液体、またはその他の流動する物質を意味する。
【0067】
分画とは、物理的または化学的性質を利用した物質の選別を意味する。
【0068】
ゲル層または境界層とは、濾過膜の未透過液側に形成される、極薄い物質層を意味する。ゲル層または境界層は、詰まりまたは付着汚れによる濾過膜表面の物質の保持に影響する結果、流束を減少させる。
【0069】
例えば精密濾過や限外濾過等の濾過とは、例えば高分子量の物質と低分子量の物質とを分離する等、濾過膜を用いて大分子と小分子とを分離するプロセスを意味する。
濾過は混合物の濃縮に用いられ、その効率は、例えば分子量の切分点、孔径、濾過材のタイプ、プロセス条件、分離される混合物の性質等によって決まる。低分子量成分は、限外濾過で分離された低分子量成分よりも大きい。限外濾過と精密濾過の能力の相対比較を図1に示す。この2つの濾過方法に重複する部分があることは言うまでもない。しかし、本願の濾過システムと濾過方法は、例えば精製用の濾過システム(例えばMF濾過膜、UF濾過膜)等の、全ての濾過に適用することができる。
本願の実施形態では、精密濾過は例えば発酵培養液等の生物学的流体のような流体から、約0.05から約10ミクロンの懸濁粒子、または約0.1から8ミクロンの懸濁粒子、または約1から5ミクロンの懸濁粒子、または約0.05から約100ミクロン、125ミクロン、またはそれ以上の懸濁粒子を分離するとき用いることができる。
【0070】
分子量の切分点(MWCO)とは、限外濾過膜におけるサイズ指定(キロダルトン)を意味する。MWCOは、濾過膜により球状タンパク質の90%が保持される分子量と定義される。
【0071】
浸透液速度とは、浸透液の流量、あるいは単位時間当たりに濾過膜を通過する浸透液の容積であり、単位はリットル/分(LPM)である。
【0072】
製品収率、または収率は、回収された製品の総量であり、供給液に対する製品のパーセンテージで表される。
【0073】
タンパク質、ポリペプチド、または生物学的由来のポリマーとは、生物学または生化学由来の分子、またはin vitroプロセス由来の分子を意味する。これらはアミノ酸を構成要素とし、酵素、構造タンパク質、あるいは、例えばセルロース、デンプン、ポリヒドロキシブチル酸、ポリ乳酸等の細胞由来のポリマー等が含まれる。
【0074】
製品流とは、対象とする製品を含む浸透液流または未透過液流を意味する。例えば濃縮プロセスでは、製品流は未透過液流である。これは、製品は未透過液流注に残留し、溶媒(水)は膜を通過するためである。細胞分離プロセスでは、製品流は浸透液流である。これは、製品は濾過膜を通過し、細胞と細胞残渣は残留するためである。
【0075】
製品純度または純度とは、製品流中に分離された製品の割合である。これは、製品流中に分離された他の成分と製品との合計に対する製品の割合を意味し、重量パーセントで表わされる。あるいは、製品純度または純度とは、濃縮された製品と、製品流中に分離された成分との比率を意味し、重量パーセントで表わされる。
本願の実施形態では、純度測定は、直接または間接的に、装置または手動により行われる。例を挙げれば、酵素活性の測定(例えば比色分析)、吸光度測定による色相の測定、CIELAB法、またはUS Pharmacopeia (USP) Monograph等による色相測定;あるいは不純物濃度の測定(例えば製品中の不純物として、または貯蔵期間の検討の一環としての微生物の測定);タンパク質の総量または他の成分の量の測定;臭気、味覚、触感、視覚等による官能検査(例えば製品についての測定、または貯蔵期間の検討の一環としての測定)等である。
【0076】
拒絶とは、例えば、濾過膜表面でのゲル、ケーキ、または境界層の形成、成分と濾過膜表面との静電気による相互作用、または濾過膜の孔サイズが小さいこと等の原因により、成分が濾過膜を通過できないことを意味する。
【0077】
タンジェンシャルフロー濾過(TFF)とは、分離濾過される各種成分を含む混合物流体を、濾過膜全体を横切るように再循環させるプロセスを意味する。
【0078】
限外濾過とは、濾過膜を用いて高分子量成分と低分子量成分とを分離するプロセスを意味する。限外濾過は溶液の濃縮に用いられ、その効率は濾過膜の分子量切分点に依存する。限外濾過と精密濾過の能力の相対比較を図1に示す。これらの2つの濾過方法が一部重複することは言うまでもない。限外濾過は、懸濁した固形分、分子量が1000ダルトン以上の溶質、及び約0.005ミクロンから約0.1ミクロンの溶質の濃縮に用いられる。
【0079】
アクティブ浸透液回収とは、浸透液の圧力が制御され、浸透液が浸透液ループから回収または除去される速度が、バルブまたはその他の計量装置によって制御されるプロセスを意味する
【0080】
本願の実施形態によれば、内部付着汚れを制御可能な、新規な液/固分離プロセス、操作方法、システム及びモジュールが提供される。本願の実施形態に係るプロセス及びシステムによって、単位長さに対する濾過面積が大きく、設置面積が小さい螺旋状濾過膜が実現され、特に、プロセスの操業中の洗浄用薬品の添加や濾過膜の損傷を伴うことなく濾過膜の付着汚れを制御可能な螺旋状濾過膜が実現される。
【0081】
本願の実施形態では、濾過膜の付着汚れを制御可能で、均一な膜透過差圧(UTMP)条件下で操業することが可能な、新規な構成の濾過方式を用いて濾過プロセスを実施する。本願の濾過プロセスでの使用に適した濾過方式は、例えば螺旋状濾過法、プレートとフレームによる濾過法、フラットシート濾過法、セラミックチューブ濾過法、中空繊維濾過法等である。
【0082】
本願の実施形態では、向かい合う浸透液側と未透過液側とを有する濾過膜と、入口及び出口と、軸方向に沿って濾過膜の未透過液側を入口から出口に向け流れる供給流と、軸方向に沿って濾過膜の浸透液側を入口から出口に向け流れる浸透液流と、並流浸透液再循環流を供給する浸透液再循環ループとを備える濾過膜モジュールを準備することが含まれる濾過方法を用いて濾過プロセスを実施する。
濾過膜の浸透液側または未透過液側の流量または圧力を調整して、濾過膜の浸透液側と未透過液側の入口及び出口における圧力の差が実質的に一定になるように、濾過膜の浸透液側と未透過液側の入口及び出口のベースライン圧力を設定する。ここで、濾過膜の浸透液側の入口のベースライン圧力は出口のベースライン圧力より高く、濾過膜の未透過液側の入口のベースライン圧力は出口のベースライン圧力より高い。
【0083】
いくつかの実施形態では、濾過膜の浸透液側の圧力を定期的に調整し、入口及び出口における浸透液側と未透過液側の圧力の差を、浸透液側と未透過液側のベースライン圧力の差に対し少なくとも約50%, 60%, 70%, 80%, または90%低下させる(「低減UTMP」)。
また別の実施形態では、濾過膜の浸透液側の圧力を定期的に増加させるとき、濾過膜の浸透液側と未透過液側の入口と出口における圧力の差が実質的にゼロになるように調整する。この実施形態では、濾過膜の対向する浸透液及び供給液側に同じ圧力を加え、濾過膜における圧力勾配がゼロまたは無い状態になるようにする。これにより、濾過膜モジュールが「ゼロUTMP」モードとなり、クロスフローによって濾過膜の未透過液側の付着汚れが除去される。
ひとつの実施形態では、このゼロUTMPモードは、濾過操業時に間欠的または定期的に、一定の時間間隔で実施するか、または不定期間(すなわち必要に応じて)で実施される。これ以外のノーマル操業のときは、並流浸透液再循環モード、特にUTMPモードで操業する。
いくつかの実施形態では、低減UTMPまたはゼロUTMPモードを実施する間隔は、1分から6時間、4時間から8時間、1分から30分、1分から10分、10分から30分、または10分から1時間であり、低減UTMPまたはゼロUTMPモードを実施する期間は、1秒間から1分間、1秒間から30秒間、または1秒間から10秒間である。
この期間はTMPを所定の低減された圧力値に保つ時間であり、浸透液の圧力を所定の値まで変化させるための時間は含まれない。
ある実施形態では、この低減UTMPまたはゼロUTMPモードは螺旋状濾過膜において実施されるが、これに限定されない。低減UTMPまたはゼロUTMPモードは、プレートとフレーム方式、セラミックチューブ方式、中空繊維方式等の、他の様々な精密濾過方式において実施することができる。
【0084】
いくつかの実施形態では、逆膜透過差圧(rUTMP)が実施される。
このような実施形態では、濾過膜の浸透液側が定期的に逆洗される。すなわち、浸透液の圧力を上げるか、または未透過液の圧力を下げ、定期的に濾過膜の未透過液側の圧力に対し浸透液側の圧力を制御可能な範囲で高くすることにより濾過膜を逆方向に通過する流れを生じさせる。このように制御可能な範囲で高い圧力状態にすることにより、濾過膜を通過するバックフローが生じるとともに、濾過膜の両側で、入口から出口に向かう軸方向の流れを維持する。
逆洗(rUTMP)の間、入口と出口における濾過膜の浸透液側と未透過液側との差圧は実質的に一定である。逆洗(rUTMP)モードにより、ケーキ状付着汚れ等の付着汚れが濾過膜から除去される。
逆UTMPによる付着汚れ除去の別の実施形態では、例えば、浸透液または未透過液の流量を調整するか、または浸透液の再循環流量を調整して、浸透液側に制御可能な範囲で高い圧力状態を生じさせて、浸透液の圧力を未透過液より高くするか、未透過液の圧力を浸透液より低くすることにより、濾過膜を逆方向に通る流れを定期的に生じさせることができる。濾過膜に逆方向の流れが生じている間、供給液ラインと浸透液ラインの正方向の流れを維持する。
【0085】
実施形態の1つでは、UTMPプロセスには2つのモードが含まれる。第1のモードは上記の低減UTMPまたはゼロUTMPモードで行い、第2のモードは浸透液側の圧力を制御可能な範囲で高くする逆UTMPモードで行う。
【0086】
別の実施形態では、上記のいずれかの濾過プロセスは螺旋状濾過膜方式で行われ、例えば回収チューブ等の少なくとも1の流動抵抗部材(FRE)が、螺旋状濾過膜モジュールの浸透液側に設けられる。
本願の実施形態では、FREは、浸透液再循環ループを経て濾過膜モジュールへ再循環される並流浸透液と組み合わせて用いられる。
流動抵抗部材は、回収チューブ中の浸透液の流動を一部妨害または妨げ、回収チューブの浸透液入口と出口の間に圧力損失を生じさせる。
FREを経て流れる浸透液の流量を変えることにより、濾過膜の浸透液側の長さ方向に沿って、未透過液側の圧力勾配と同様の、制御可能な圧力勾配を生じさせることができる。
濾過膜モジュールの回収チューブの浸透液スペース内に流動抵抗部材(FRE)を設け、回収チューブ内に設けられた流動抵抗部材を経て流れる浸透液の流量を定期的に変えることにより、濾過膜の浸透液側の長さ方向に沿って、未透過液側の圧力勾配と同様の、制御可能な圧力勾配を生じさせることができる。
これにより、間欠的なゼロUTMPモードまたは逆UTMPモードの間、浸透液流路において浸透液を制御可能な加圧状態にすることができる一方、供給流とモジュールの浸透液再循環流の正方向の流れを維持する。得られる背圧と流束は穏やかで、濾過膜の長さ方向に沿って均一な加圧または負圧となる結果、適切な付着汚れの除去が得られるとともに、例えば螺旋状濾過膜モジュールの層剥離等の濾過膜の損傷を避けることができる。
この結果、螺旋状濾過膜での取扱いが困難な高濃度の固形成分が含まれる液体を効率よく濾過するとともに、非常に高い流束を得ることができる。
ゼロUTMPモードまたは逆UTMPモードの間にも未透過液の正方向の流れを維持することにより、濾過膜の未透過液側で詰まりを生じていた付着汚れの除去が促進される。また、逆洗圧が開放されたときには、付着汚れは濾過膜へ再度付着する前に、未透過液により押し流される。
濾過膜の長さ方向にわたり実質的に均一な付着汚れ除去効果が得られる結果、濾過膜の長さ方向にわたり実質的に均一な流束が保たれる。
このように穏やかな付着汚れ除去を行うことにより、例えば螺旋状濾過膜等のポリマー製の濾過膜の損傷のリスクを最小限にすることができる。一方、十分なクロスフローとバックフローを維持することにより、濾過膜上の粒子を洗い流し、また濾過膜上のケーキ層を破壊することによって、付着汚れを除去することができる。また、加圧により付着汚れが生じることを避けることができる。
【0087】
様々な形状の流動抵抗部材を用いることができる。本願の実施形態では、流動抵抗部材は例えばテーパー形状の一体の挿入部材、例えばビーズまたは発泡体等の多孔質部材等の受動的手段である。
別の実施形態では、流動抵抗部材は例えばスタティックミキサー等の能動的手段、またはその他の回収チューブ内を流れる流体の抵抗となって回収チューブの入口と出口の間に圧力損失を生じさせることができる手段である。
浸透液側の圧力勾配の程度は、流動抵抗部材のポロシティまたは線形抵抗と、再循環流の流量とにより決まる。このため、TMPとクロスフロー流量とを独立して制御することができる。
未透過液側と浸透液側の圧力勾配の差が一定で互いに打ち消しあっているとき、均一な膜透過差圧(UTMP)が得られる。濾過膜の長さ方向に沿ってTMP値を最適にすることにより、濾過膜全体を効率的に使用することができる。これは、浸透液圧が制御されていない場合、濾過膜の一部しか有効に使用できないこととは異なる。さらに、加圧によって未透過液側に付着汚れが生じることを防ぐことができる。これにより、非常に高い製品透過率が得られる。
【0088】
本願の実施形態では、螺旋状濾過膜において付着汚れが顕著に低減され、この状態が維持される。これにより、濾過サイクル(すなわち、分離/付着汚れ除去サイクル)を何度も繰り返しても、高い流束と透過率が得られる結果、生産可能時間が著しく延長される。
本願の実施形態によれば、固形成分濃度が高い原料の分離プロセスにも適用可能な、螺旋状濾過膜による新規な濾過方法が提供される。本願の実施形態によれば、螺旋状濾過膜を用いて固形成分濃度が高い液体を濾過するとき、UTMPにより非常に高い流束が得られる。水浄化システムの塩水等とは異なり、本願のプロセスは、従来の螺旋状濾過膜の被濾過液よりも固形成分を多く含む混合液にも適用することができる。
【0089】
本願実施形態では、分離される供給液には固形成分が例えば少なくとも25%、例えば少なくとも15%、例えば少なくとも5%含まれる。本願の実施形態において、意外にもある種の高濃度の培養液、例えばB. subtilis培養液を濾過する際、低クロスフローのとき高い初期流束が得られることが見出された。
従来、濾過技術の分野では、濾過膜の表面を洗い流して汚れのない状態に保って流束を維持するために高い流速にすることが必要で、高流束にすることが重要あると考えられ、高クロスフローがその重要な因子として挙げられていたことに鑑みると、この結果は予想外である。
【0090】
本願の実施形態では、付着汚れ除去モード(低減またはゼロUTMP、および/または逆UTMP)が定期的に行われるように制御し、付着汚れ除去モードを行う間隔は、例えば約1分から6時間、4時間から8時間、1分から30分、1分から10分、10分から30分、または10分から1時間であり、付着汚れ除去モードを実施する期間は、1秒間から1分間、1秒間から30秒間、または1秒間から10秒間である。
付着汚れ除去モードの間、未透過液と浸透液の流路または通路は、約0.1から10 barの加圧下に保たれる。
本願の実施形態では、付着汚れ除去モードの間、濾過膜の長さ方向に沿った膜透過差圧(TMP)は、濾過膜の両軸単におけるTMP値に対し40%未満、例えば20%未満、例えば10%未満の範囲で変化する。別の薬品を用いたり、プロセスを長期停止したりせずに濾過膜の清掃を行うために、前述のようにプロセスで用いる流体を用いて逆洗を行う。
【0091】
製品は、本願により構成され操作される濾過システムの濾過膜モジュールから排出される浸透液、未透過液、またはその両者から回収される。
本願の実施形態では、例えば酵素等のタンパク質を回収することが可能な工業スケールの低コストプロセスが提供される。供給液には、タンパク質、ポリペプチド、核酸、糖タンパク質、または生態高分子が含まれる。また、供給液には、例えばバシラス属、エシェリキア属、パンテア属、ストレプトミセス属、シュードモナス属等の細菌性生産生命体に由来する発酵製品が含まれる。
また、供給液には、例えばアスペルギルス属、トリコデルマ属、シゾサッカロミセス属、サッカロミセス属、フザリウム属、フミコーラ属、ムコール属、クリベロマイセス属、ヤロウイア属、アクレモニウム属、ニューロスポラ属、ペニシリウム属、マイセリオフトラ属、及びティエラビア属等の、真菌性生産宿主に由来する発酵製品が含まれる。
供給液にはセリン・プロテアーゼが含まれ、濾過は約12℃から18℃未満に保たれた温度において行われる。あるいは、供給液にはアミラーゼが含まれ、濾過は約25℃または35℃から約45℃または約60℃に保たれた温度において行われる。いくつかの実施形態では、供給液は例えばミルク(例えば全乳、スキムミルク)、乳清、乳性加水分解物、バターミルク、凝固カゼイン(酸または酵素)等の乳製品である。
【0092】
別の実施形態では、本願のプロセスを実施するための濾過システムが提供される。
この濾過システムには、螺旋状濾過膜モジュールと、少なくとも1の流動抵抗部材をその内部に備える浸透液回収チューブから排出された浸透液の一部を回収チューブの浸透液入口に制御された速度で送り返す浸透液ポンプと、供給液を供給液入口に制御された速度で供給する供給液ポンプとが含まれる。
この濾過システムには、浸透液ポンプと供給液ポンプを統合して制御する自動または手動またはこれらの組合せの制御装置が備えられ、この制御装置は、濾過膜モジュールへ送られる供給液流と浸透液流の流速を統合して制御し、操業中に分離モードと付着汚れ除去モードを交互に行い、この両モードを行なっているとき、濾過膜の軸方向に沿って均一な膜透過差圧が実質的に維持されるように制御する。
あるいは、ポンプ、および/またはバルブは独立して制御される。
濾過システムには、システムにおける流体の流量を制御する複数のバルブと、システムを流れる流体に関するデータを採取する複数のセンサーと、電子データ処理ネットワークとを備え、この電子データ処理ネットワークは、ポンプ、バルブ、及びセンサーの操業に関するデータを受信し、転送し、処理し記録することができ、ここで、濾過プロセスの流動を記録し集積するデータには、濾過プロセスの流動を制御するために必要な情報が包括的に含まれている。
いくつかの実施形態では、濾過膜はPVDF、ポリスルホン、またはポリエーテルスルホンから成る濾過膜のいずれかであり、この濾過膜のポアサイズは約0.005から約5ミクロン、または約0.005から約20ミクロンである。
【0093】
このシステムの浸透液ループには、再循環ループから浸透液を抜き出すためのバルブが設けられている。また、浸透液ループには、浸透液ポンプの上流に設けられ、加圧水ラインに接続されたバルブが設けられている。このバルブは制御可能である。
水圧の設定値を高くしてこのバルブを開けると、ループ内の浸透液の圧力は未透過液側に対し、浸透液側から未透過液側への濾過膜を通り抜けるバックフローが生じるために十分な加圧状態となる一方、未透過液流路と浸透液流路における正方向への並流の流れは維持される。
【0094】
別の実施形態では、浸透液側と未透過液側とを有する螺旋状濾過膜と、濾過膜の浸透液側と液流通可能な浸透液回収チューブと、浸透液回収チューブ内に設けられ、回収チューブの入口端と排出端の間を流れる浸透液の圧力を制御可能に低下させることができる、少なくとも1の流動抵抗部材とを備える、螺旋状濾過膜モジュールが提供される。
【0095】
本願の実施形態に係る濾過プロセス及びシステムにより、コストが大幅に削減されるとともに、製品の品質が向上する。本願の濾過プロセス及びシステムは、精密濾過、限外濾過、ナノ濾過単独、またはこれらの組み合わせについて適用することができる。
高固形成分濃度の懸濁液から溶質を高い収率で分離、濃縮できること、及び、他の濾過方法で必要な原料を削減できることにより、コストが削減される。本願ではさらに、濾過膜の単位面積当たりの浸透液流束高いこと、付着汚れ除去効果が改善されること、及び、付着汚れ除去操作中に濾過膜が破損するリスクが低減されることから、濾過膜とその付属設備のコストが低下することによってもコストが削減される。
本願発明は、発酵培養液、医薬品、薬品、乳製品、大豆製品、その他、例えばフルーツジュース、野菜ジュース、醸造、蒸留等の食品用途に応用することができる。本願の実施形態には、発酵培養液からの酵素やその他の高分子物質の精製、ジュースの浄化、ミルクの不純物除去または濃縮、またはミルクの成分の分離等が含まれる。
【0096】
本願の実施形態により、濾過処理可能な流体を螺旋状濾過膜モジュールによって浸透液と未透過液とに分離する濾過方法が提供され、この方法には、分離処理する供給液を所定の流量で供給液入口に流入させ、螺旋状濾過膜の未透過液側において加圧下で軸方向に流動させ、螺旋状濾過膜モジュールの未透過液流路を通して第1流動方向に流動させるステップが含まれる。
次のステップで、軸方向に流動する未透過液を、螺旋状濾過膜モジュールの未透過液出口から排出する。
次のステップで、濾過膜の透過液側の反対側である浸透液側にある浸透液流路内を半径方向に流れる浸透液を、浸透液流路と液流通可能な中央浸透液回収チューブに回収する。
回収チューブには、浸透液の回収チューブ内における正方向の流れを一部妨げるが、完全には遮断しない少なくとも1の流動抵抗部材が設けられている。
次のステップで、回収した浸透液を中央浸透液回収チューブから浸透液出口へ向けて流し、螺旋状濾過膜モジュールから排出させる。
次のステップで、浸透液回収チューブから排出された浸透液の一部を、所定の浸透液流量で浸透液入口を通して回収チューブへ送り返し、分離プロセスの間、並流浸透液を濾過膜モジュールを通して再循環させる。
次のステップでは、分離プロセスを実施しているときに、濾過膜モジュールへの浸透液流量と供給液流量とを、分離モードと付着汚れ除去モードとが交互に行われる一連の濾過サイクルが行われるようにして統合的に制御するとともに、分離モードと付着汚れ除去モードにおいて、濾過膜の軸方向に沿って均一な膜透過差圧を保つ。
本願の実施形態では、濾過膜の浸透液側の圧力を、濾過膜の入口と出口における浸透液側と未透過液側の差圧が、浸透液側と未透過液側のベースライン圧力の差に対し少なくとも50%低下するように、定期的に調整する。
【0097】
図2に、本願の典型的な精密濾過システム100を模式的に示す。
精密濾過システム100は、螺旋状濾過膜101と、浸透液ポンプ103と、供給液ポンプ109と、バルブ、圧力計、温度計、流量計、供給/回収タンク等の精密濾過システムの操業を管理するための機器とを備える。
螺旋状濾過膜モジュール101は、浸透液循環ループ104から並流浸透液流が供給されるように構成され、制御バルブ106と、浸透液ポンプ103が含まれる。浸透液ポンプ103は、螺旋状濾過膜モジュール101の浸透液出口105(すなわち、浸透液回収チューブの出口端)から排出された浸透液の一部を、螺旋状濾過膜モジュール101に設けられた浸透液回収チューブの浸透液入口107に、所定の流量で送り返すことができる。
以下、螺旋状濾過膜モジュール101について詳しく説明する。
供給液ポンプ109は、分離処理する供給液を螺旋状濾過膜モジュール101の供給液入口111に所定の流量で供給するために設けられている。供給液は、熱交換器115に通してから、螺旋状濾過膜モジュール101に供給される。未透過液は、螺旋状濾過膜モジュール101の軸方向反対側に設けられた出口113から排出される。バルブ106、浸透液ポンプ103、及び供給液ポンプ109を、以下詳しく説明する方法で交互に作動させることにより、UTMP, ゼロUTMP,及び逆UTMPモードで操業することができる。
様々な実施形態において、通常の操業状態中の分離モードにおいて、供給液の分離操業中に浸透液の一部を回収チューブの入口に再循環し、回収チューブ内に還流させ、螺旋状濾過膜モジュールの回収チューブ内に浸透液を並流再循環させることにより、均一膜透過差圧(UTMP)の状態にすることができる。
生産時の分離モード中に、濾過膜がUTMPの状態となるように螺旋状濾過膜モジュール101、浸透液ポンプ103、供給液ポンプ109、及びバルブ106を作動させるとともに、濾過膜が一定の時間間隔でゼロUTMP (nUTMP)モードまたは逆UTMP (rUTMP)となり、濾過膜の軸方向全長にわたり間欠的に付着汚れ除去モードが生じるように作動させる。
本願では、軸方向長さとは、螺旋状濾過膜モジュール101の軸方向110と平行な方向を意味する。
【0098】
この発明の典型的な螺旋状濾過膜モジュール101を図3Aに示すが、これに限定されるものではない。図3Bに、この発明の典型的な螺旋状濾過膜モジュール101の断面図を示す。しかし、この発明の螺旋状濾過膜は、例えば図4-8や以下に詳しく説明するように、種々変形して実施することができる。
図3Bに示すように、典型的な螺旋状濾過膜モジュール101は回収チューブ10を備える。中央回収チューブ10には、浸透流路12から回収チューブ10の内部スペース13へ浸透液を導くための、多数の開口11が設けられている。
回収チューブ10は、例えばプラスチック、金属、セラミック等の、半剛性または剛性材料で作られる。浸透流路12は、濾過膜14及び15の間に挟みこまれ、シート16を構成する。シート16は、回収チューブ10の周囲に1回または複数回巻きつけられる。回収チューブ10の近傍にない濾過膜と浸透流路層の端部は、例えば接着剤または他の公知の方法で封止される。これにより浸透液を回収チューブ10と濾過膜の間の浸透流路に保持し、また浸透液を回収チューブ10へ導くことができる。
浸透流路12には、例えば多数の微細口を有する布、フェルト、網または他の多孔質材料等の多数の微細口を有する媒介層または材料が用いられる。
濾過膜14及び15は、供給液中に分散した個々の物質に対し半透過性のフレキシブルなシート材であり、分散した物質の粒径に応じて選択される。濾過膜14及び15には、例えば多数の微細孔を有する熱可塑性樹脂のフィルム等の多数の微細孔を有する高分子性のシート材が用いられる。浸透流路層スペーサ17は巻回されたシート16の層を離間させ、分離処理される流体を螺旋状濾過膜モジュール101へ誘導する。
説明のため、回収チューブ10の周囲のシート16が一部だけ巻回された状態を図示した。この発明では、螺旋状濾過膜モジュール101の半径方向112は、軸方向110に直行する。
【0099】
図4〜8に示すように、この発明では内部スペース13に流動抵抗部材を設けることができる。流動抵抗部材、または「FRE」は以下に説明するように個別の部材でもよいし、あるいは複数の部材が組み合わされて一体となったものでもよい。
【0100】
図4Aに示す例では、テーパー形状で一体の挿入部材102が回収チューブ10に設けられている。濾過を行うとき、浸透液は螺旋状濾過膜101から開口11を経て回収チューブ10内の内部スペース13へ流動する。なお、図に示した回収チューブの開口11は一例であり、実際の開口の数、間隔、または大きさは様々である。
浸透液入口107に近いテーパー形状の挿入部材102の軸端部114の切断方向半径は、反対側の浸透液出口105の近くにある軸端部116の半径より大きい。この例では、テーパー形状の挿入部材102は、軸端部114と軸端部116の間で負(減少)勾配になっている。テーパー形状の挿入部材102は、金属、プラスチック、セラミック、またはその他の浸透液に対し安定で耐性のある材料で作られる。
テーパー形状の挿入部材102により、浸透液回収チューブの軸方向に沿って浸透液が流れ濾過膜を通過する際に、より平坦な圧力勾配が生じる。
両軸端部において挿入部材102と回収チューブ10の内壁119の間に、例えばOリング等の弾性シールリング、またはガスケット117,118が設けられている。ガスケット117,118は、回収チューブ10内の内部スペース13において挿入部材を横方向に保持する。挿入部材102が長手方向にずれ動くことを防止するために、挿入部材102の長手方向一端に位置決部材(ATD)108が設けられている。
【0101】
図4Bに詳細に示すように、挿入部材102の軸端部114と116には、弾性シールリング117,118の下を通って延在する多数の溝120が設けられている。この溝120により、浸透液がシールリングの下を通り、挿入部材102の外面121に沿って流動することができる。
この図には、挿入部材102の入口側の軸端部114を図示した。しかし、同様の溝を挿入部材102の反対側の弾性シールリング118が設けられた軸端部領域に設け、この領域で浸透液を流動させることもできることを理解できよう。なお、弾性シールリング118により、内壁119に対する軸端部116の横方向位置が決められる。
図4Aに示すように、回収チューブ10の内部スペース13の入口107内に当接する弾性シールリング部材108Aが、ATDに設けられている。ATDから延び出して回収チューブ10の入口に進入する部分の表面に、挿入部材102と同様の溝(図示せず)を設け、浸透液を内部スペース13へ流入させることができる。同様のATD保持具を挿入部材102の反対側にも設けて、挿入部材102の両端の位置を安定化させることができる。
【0102】
図4C に、別のテーパー状挿入部材102の軸端114Aを示す。この軸端114Aは、対応するATD108(図示せず)に対し機械的に嵌合する構造になっている。ATDにおける圧力損失を低減するため、挿入部材102を改良した。挿入部材102の中央部に角度60°の切り欠きを設けたことにより、浸透液がより均等に分配されて流動する。
【0103】
図4Dに別のテーパー状挿入部材102の軸端114Bを示す。この軸端114Bは、対応するATD108(図示せず)に対し機械的に嵌合する構造になっている。挿入部材102の両軸端部が切り欠かれ、O-リング117が取り付けられる溝117Aが拡幅されている。この実施形態では、挿入部材102を取り付けるために、両軸端部に安定板114Bが設けられている。
【0104】
挿入部材102は浸透液再循環の流量に関し優れた効果を示し、流量を低下させて、例えば約2 barの有意な圧力損失を濾過膜全体ににわたり維持する。直径が一定の挿入部材と比較して、挿入部材102は全く同様の結果を示す。
挿入部材の直径を次第に増加させると、すなわち浸透液回収チューブ内の流路面積を次第に減少させると、有意な圧力損失、例えば約2barを維持するために必要な流路面積が減少する。理論にこだわることは意図しないが、テーパーが負勾配のシャフトまたは挿入部材は、流路面積が次第に増加し、浸透液回収チューブの入口ではより高い圧力にとなり、出口ではより低い圧力になると考えられる。テーパー状の挿入部材は、供給される浸透液が浸透液回収チューブ内を通過するとともに、所望の有意な圧力損失、例えば約2barの圧力損失を生じるように設計する。
【0105】
図5に示す別の実施形態では、浸透液回収チューブの内部スペース13に球19が稠密に充填され、球19の間の隙間が浸透液の流路となる。この流動抵抗部材は、回収チューブ内の入口から出口にかけて、圧力損失を生じるという効果を有する。このFREは、リバースフローモードの間、浸透液側の濾過膜に加わる背圧を低下させ、濾過膜の長さ方向に沿ってより均一で穏やかな正の背圧を濾過膜に加えることができる。
この球には、ポリマーの球または中空球、ガラスビーズ、セラミック球、金属の球または中空球、複合体球等を用いることができる。この流動抵抗部材の形状は、球に限定されない。この流動抵抗部材は、処理する液に対して安定で不活性でなければならない。浸透液の正方向の流れを維持するために、充填チューブ10内部に十分な隙間を確保することが必要である。
【0106】
あるいは、図6に示すように流動抵抗部材にスタティックミキサー20を用いることもできる。例えば、このスタティックミキサーは内部スペース13の軸方向に沿って設けられた回転ロッドから半径方向に延び出すインペラーを備え、モーターまたは回収チューブ10の外部に設けられた駆動手段(図示せず)により機械的に駆動されて、回収チューブ10内部の浸透液を攪拌する。
このようなスタティックミキサーを、回収チューブ10内部の軸方向に沿って1箇所または一定または不定の間隔で複数個所設けて、回収チューブ10内を通る浸透液の層流を乱す。
【0107】
あるいは、図7,8に示すように、回収チューブ10の内壁119から半径方向内側に向けて回収チューブの内部スペース13に延び出す1以上のバッフル201,202を流動抵抗部材として用いることができる。
図8に示すように、このようなバッフル201,202は、回収チューブ10の内壁119に回収チューブ10の軸方向に沿って交互に一定または不定の間隔を置いて設けられ、回収チューブ10を通過する浸透液の流れを例えば蛇行流等の、非直線流にする。バッフルを他の形状または配置にすることもできる。バッフルを回収チューブ10の内壁に設けてもよいし、あるいは既存の回収チューブを改造して設けてもよい。
例えば、外径が既存の回収チューブの内径に適合し、内面にバッフルが設けられた挿入管を準備し、この挿入管を回収チューブ内に挿入することができる。
【0108】
流動抵抗部材18, 20, 201 , 202等は、浸透液の回収チューブ10内の正方向への流動を一部妨げ、あるいは乱すとともに、回収チューブ10内の浸透液の層流を乱し、回収チューブ10の軸方向に沿って入口から出口にかけて圧力損失を生じさせることができる。
間欠的な付着汚れ除去モードの間、供給流と浸透液再循環流の軸方向に沿った正方向の流れを維持しながら、浸透液側の浸透液流路12を制御可能な加圧状態にすることができる。
これらにより、逆洗の間、濾過膜の浸透液側に穏やかで均一な正の背圧を加えながら、濾過膜の未透過液側に堆積したケーキを追い出し、追い出したケーキを供給流の正方向の流動により洗い流すことができる。
【0109】
本願の実施形態では、図2に示すように、浸透液ポンプ103と供給液ポンプ109は、濾過膜モジュールの入口から出口までの間の軸方向の全長にわたり、実質的に均一な膜透過差圧が保たれるように制御される。
この濾過システムには、流体の流動を制御するための複数のバルブが設けられている。
この濾過システムにはさらに、システムを流れる流体に関するデータを収集する複数のセンサーと、電子データ処理ネットワークとが設けられている。電子データ処理ネットワークは、ポンプ、バルブ、及びセンサーの操業に関するデータを受信し、転送し、処理し記録することができる。ここで、濾過プロセスの流動を記録し集積するデータには濾過プロセスの流動を制御するために必要な情報が包括的に含まれている。
【0110】
図9に、比較例である、並流浸透液再循環を備えない精密濾過システムの模式図を示す。図10は、図9に示す螺旋状濾過膜における流体圧力分布を表すグラフである。
供給側では、流体が濾過膜内の狭い供給流路を流れるときに抵抗を受けるため、濾過システム全体にわたり大きな圧力損失が認められる。一方、浸透液は流動抵抗が殆ど無い中空の中央回収チューブに回収される。このため、浸透液の流量は未透過液流量より小さく、測定可能なΔPは生じない。
また、一般に浸透液は大気圧下に放出されるため、濾過システムの浸透液側には有意な流動圧は加わらない。この濾過システムでは、入口の膜透過差圧(TMP1)と出口の膜透過差圧(TMP2)との膜透過差圧(TMP)の差が大きい。
【0111】
図11は、図2に示す螺旋状濾過膜システムを均一膜透過差圧(UTMP)モードで操業したときの、流体圧力分布を表すグラフである。 この場合、浸透液は、テーパー状挿入部材またはプラスチック球充填材等の流動抵抗部材(FRE)を備える浸透液回収チューブに再循環されるため、螺旋状濾過膜システムの浸透液側に測定可能で制御された流体圧力が生じる。これにより、クロスフローの流速とは無関係に、濾過膜の全長にわたり実質的に一定のTMPが生じる。
【0112】
図12は、図2に示す螺旋状濾過膜システムが流動抵抗部材を備えない場合に、逆洗操作を行ったときの流体圧力分布を表すグラフである。浸透液は、浸透液回収チューブの出口側から、ポンプによって浸透液回収チューブへ送り返される。
浸透液回収チューブ内には、測定可能な圧力損失は存在しないため、浸透液の圧力は濾過膜システムの全長にわたり速やかに均一になる。未透過液を引き続き供給すると、濾過膜システムの長さ方向における各位置に異なる逆洗圧が生じる。この場合、入口側では付着汚れを除去するために必要な逆洗圧が得られず、出口側では螺旋状濾過膜の損傷に繋がりかねない大きな逆洗圧が生じる。
【0113】
図13は、図2に示す螺旋状濾過膜で逆洗操作を行い、逆洗操作中に供給流を停止したときの流体圧力分布を表すグラフである。このモードの利点は、均一な膜透過差圧が得られる点にあり、濾過膜のすべての位置で実質的に均一な逆洗圧が生じ、極端な逆圧は回避される。しかし、逆洗の間に未透過液の正方向の流れが存在しないため、未透過液側にクロスフローが発生せず、付着汚れは濾過膜の表面から追い出されるものの、未透過液−濾過膜の界面からは除去されない。
このため、再び正の供給圧が加えられたとき、未透過液−濾過膜の界面に高濃度の汚染物質が存在しているため、急速に付着汚れが生じる可能性がある。また、この方法では供給液ポンプを休止し、浸透液ポンプまたは他の背圧発生装置を用いる必要があるため、操作面からも好ましくない。従って、どのように操作しても逆洗の間隔が短くなる結果、操業時間が長くなるか、または圧力が急激に変化する結果、濾過膜の破損が生じることになる。
【0114】
理論にこだわることは意図しないが、濾過膜の表面から汚染物質を洗い流すタンジェンシャルフローの力よりも膜透過差圧(TMP)が大いために、汚染物質を濾過膜に引き寄せる力が大きいときは、付着汚れが促進される。
最適な精密濾過流束と透過率を得るには、TMPを狭い範囲で制御することが必要になる。TMPが低すぎると、流束が不十分になり、TMPが高すぎると、急速で除去不能な付着汚れが生じる。図12に示す比較例では、濾過膜の軸方向全長にわたりこれらが適正にバランスした状態を得ることはできない。
【0115】
図14は、図2に示す螺旋状濾過膜システムに並流浸透液再循環(CCPR)を適用して、逆UTMPモードで操業したときの流体圧力分布を表すグラフである。供給液ポンプからの供給速度を低下させるか、または浸透液ポンプからの供給量を増加させることによって、濾過膜システムの浸透液側を加圧する。
この場合、濾過膜システム全体に均等な逆洗フローが生じ、過剰な逆圧が生じることはない。この方法は、逆洗フローを得る迅速で穏やかな方法である。濾過膜表面の未透過液側から追い出された汚染物質を洗い流すための未透過液のクロスフローが維持される。
【0116】
並流浸透液再循環と、螺旋状濾過膜モジュールの内部に流動抵抗部材を設けることとの組み合わせにより、クロスフロー速度と膜透過差圧とを独立して制御することが可能になり、これにより螺旋状濾過膜において均一膜透過差圧で操業することが可能になる。また、この組み合わせにより、非常に高い流束と透過率とを維持可能な方法である逆膜透過差圧(rUTMP)による逆洗が可能になる。
逆UTMP状態では、供給液と浸透液の軸方向の流れを維持しながら、濾過膜を通るバックフローを生じさせることができる。得られる背圧と流束は濾過膜の全長にわたり穏やかで均一であり、過剰な加圧または負圧が回避され、最適な付着汚れ除去効果が得られる。これにより、非常に高い流束が得られ、一般的な螺旋状濾過膜システムでは処理が困難な固形成分が多い液体でも効率よく処理することができる。
さらに、いくつかの高固形成分量の発酵培養液またはその他の供給液でも、低クロスフロー速度において流束に関し良好な結果が得られることが見出された。
【0117】
本願の実施形態に係るプロセスでは、浸透液ポンプの吐出量を増加させるか、未透過液ポンプの吐出量を低減することにより、均一な背圧が得られる。
【0118】
図2に示すプロセスに係る別の実施形態では、ポンプが含まれる再循環ループ中の浸透液をトラップし、圧力容器を再循環ループに接続して追加の加圧を行う。これは、浸透液の溢出への循環ループへの接続を閉じることによって行われる。浸透液の溢出への接続を閉じることにより、浸透液は循環ループにトラップされ、均圧になる。次にポンプ入口の手前に設けられた圧力バルブを開く。浸透液の循環を継続して行い、浸透液の圧力を加圧された容器によって上昇させる。これにより、本願で逆UTMPと呼ぶ、浸透液側の圧力の方が未透過液側の圧力より高くなる状態のときでも、濾過膜に沿って均一なTMPが生じる。
以下、精密濾過システムの様々な実施形態について、図15A〜15Iを参照して詳しく説明する。
【0119】
図15A〜15Iに、本願の精密濾過システムで実施される様々な操業モードにおける未透過液及び浸透液の流動経路を示す。本願のプロセスは、これらの図に示した1以上のモード出実施可能であるが、図15B〜15Eに示すモードは本願の実施形態において特に重要である。
これらの図では、液が流通している経路は、例えば図15Bの螺旋状濾過膜モジュールSWMの供給ライン、浸透液ライン、及び未透過液ラインのように太線で図示されている。またこれらの図では、例えば図15Bのバルブ43HV45のように黒塗りで示したバルブは、液が流動しているとき閉じられており、図15Bのバルブ43VC60のように白抜きで示したバルブは、液が流動しているとき開けられている。
【0120】
図16は、図15A〜15Iに示す様々な操業モードを行うときの、各装置の基本的設定を表す図である。濾過システムでの操業を始める前に、スタート準備操作として、熱交換器へのグリコール供給ライン及びリターンラインのバルブと、ダイアフィルトレーションへの水供給ラインのバルブと、濾過システムへの圧縮空気供給ラインのバルブとを開ける。計装装置を、図16に示すスタートアップ状態にする。濾過システムでの操業を始めるとき、すべての自動化された機器(バルブ、ポンプ等)は、予め決められた初期状態に設定される。
ひとつの実施形態では、本願のプロセスを行うための準備として、先ず濾過システムを水循環モードで操業する。水循環モードは、他のすべての操業モードの出発点である。他のすべての操業モードへは、水循環モードから移行する。すなわち、本願の主要なプロセスモードである、正方向供給液単独(FFO)と並流浸透液再循環(CCPR)における初期状態は、再循環モードである。
スタート準備が整ったら(希釈、混合、供給温度等)、初期状態から適切な実験プロセス設定に変更し、別のモードで操業する(バッチ、ダイアフィルトレーション、または流加培養(fed-batch))。
【0121】
図15A〜15Iに示す濾過システムには、例えば、螺旋状濾過膜SWM、浸透液ポンプ41PF40、供給流ポンプ41PF30、及びバルブ(43HV41, 43HV45, 43VA40, 43VC60, 43HV42, 42VC60, 41VC62, 72VC60)、圧力計(PI)、 圧力計コントローラー(PIC)、圧力トランスミッター(PT)、温度トランスミッター(TT)、温度制御バルブ(TIC)、流量計(FI)、流量指示トランスミッター(FIT)、流量制御バルブ(FIC)、供給/回収タンク (TANK)、熱交換器(HE)、タンクレベルトランスミッター(LT)、供給バルブ制御器(LICZ)等の、総合的に制御された濾過システムのための装置が設けられている。
図示したいくつかの構成では、螺旋状濾過膜モジュールSWMは、浸透液再循環ループ1501(例えば図15B〜15E参照)から並流浸透液流が供給されるように構成されている。
これらの実施形態では、螺旋状濾過膜モジュールSWM の浸透液出口(すなわち、浸透液回収チューブの出口)から排出された浸透液の一部は、制御された流量で螺旋状濾過膜モジュールSWM の内部に設けられた浸透液回収チューブの入口へ送り返される。
螺旋状濾過膜モジュールSWM の構成は上記のとおりである。供給流1502は、螺旋状濾過膜モジュールSWM の入口へ制御された流量で送られる。供給流は、螺旋状濾過膜モジュールSWM に導入される前に、熱交換器HEに通される。未透過液は、螺旋状濾過膜モジュールSWM の軸方向反対側に設けられた出口から排出される。
【0122】
より詳しくは、図15Aは、並流浸透液再循環(CCPR) 条件が行われていないときの、正方向供給条件(FFOモード)を表す。この構成では、並流浸透液再循環は行われない。
【0123】
図15Bは、本願の実施形態に係るプロセスの螺旋状濾過膜において、通常操業条件下でUTMP条件を実施しているときの、並流浸透液再循環(CCPR) 流路構成を表す図である。以下詳しく説明するように、図15Gと15I はこの流路構成の変形例である。
【0124】
図15Cに示す流路構成の螺旋状濾過膜システムは、本願のゼロUTMPの実施に用いられる。このゼロUTMPモードでは、浸透液の回収は行われない。
バルブ42VC60、浸透液循環ポンプ、及び供給液ポンプは予め設定した状態となって、供給液側の圧力が設定した値に保たれ、浸透液及び未透過液のクロスフロー流量が一定に保たれる。このゼロUTMPモードの間、バルブ43VC60は閉じられている。並流浸透液循環流と供給液とが釣り合って、軸方向に沿った濾過膜の全面にわたりTMPが実質的にゼロになるようにして、並流浸透液循環を行う。
図15C〜15Eは、ゼロUTMPモード及び逆UTMPモードを行う際の構成を表し、これら以外のモードで操業しているときは、図15Bに示す並流浸透液再循環(CCPR) 条件モードが実施される。
【0125】
図15Dに示す流路構成は、この発明に係る螺旋状濾過膜システムにおいて逆UTMP (rUTMP)を実施しているときの状態を表す。図15Dまたは15Eに示す逆UTMPモードの前段階は、図15Cに示すゼロUTMPモードである。
次の段階で、図16に示す設定条件を適用して螺旋状濾過膜システムの浸透液側を加圧する。具体的には、パルスバルブ43VA40を開けて、FD4261の総流量がゼロに近づき、螺旋状濾過膜モジュールの全面が逆洗状態になるまで浸透液側を加圧する。
【0126】
図15Eは、図15Dとは別の方法で逆UTMP (rUTMP)を実施しているときの状態を表す。15Eに示す逆UTMPモードの前段階も、図15Cに示すゼロUTMPモードである。
次に、図16に示す設定条件を適用して、螺旋状濾過膜モジュールの全面が逆洗状態になるまで螺旋状濾過膜システムの供給液側を減圧する。具体的には、バルブ41VC62を開けて供給液ポンプの出口から入口に向けて供給液をバイパスさせることにより、濾過膜への供給液の流量を低下させる。
【0127】
図15C-Eに示す精密濾過システムにおいてゼロUTMPモードまたは逆UTMPモードを実施するときの制御ロジックには、以下のタイマー設定とステップとが含まれる。
T20 = 自動制御を再開する前のロックアウト時間(lock out time before re-enable automatic control)
T21 = ゼロUTMPサイクル時間(nUTMP cycle time)
T22 = 逆UTMPモード1サイクル時間(逆UTMP model cycle time)
T23 = 逆UTMPモード2サイクル時間(rUTMP mode2 cycle time)
T24 = サイクル終了と次のサイクル開始までの時間(Time between end of cycle to start of next cycle)
制御ロジックステップ:
1. ゼロUTMPシーケンス開始
2. 供給液ポンプ(41PF30)のスピードをロック
3. 浸透液循環ポンプ(41PF40)のスピードをロック
4. 未透過液出口制御バルブ(42VC60)のポジションをロック
5. 浸透液ループ制御バルブ(43VC60)閉
6. 流量差バルブ(FD 4261)が0.05 LPM以下に低下
7. T22 = 0ならステップ9へ
8. T22 = X秒なら逆UTMPlサブルーチン開始
1. 逆UTMPパルスバルブ(43VA40)開
2. T22のカウントダウン開始
3. T22がゼロになったら逆UTMPパルスバルブ(43VA40)閉
4. ステップ11へ
9. T23 = 0ならステップ11へ
10. T23 = X秒なら逆UTMP2サブルーチン開始
1. 未透過液バイパスバルブ(41VC62)開
2. 流量差バルブ(FD 4261)がSP値になるまでバルブ開
注:SPは負の値の流量である。
3. SP値に達したらT23のカウントダウン開始
4. T23がゼロになったら未透過液バイパスバルブ(41 VC62)閉
5. ステップ11へ
11. サイクルタイムがゼロになったら浸透液ループ制御バルブ(43VC60)の自動制御再開
12. T20のカウントダウン開始
13. T20がゼロになったら供給液ポンプ(41PF30)、浸透液循環ポンプ(41PF40)及び未透過液出口制御バルブ(42VC60)の自動制御再開
14. ゼロUTMPまたは逆UTMPシーケンス終了
15. 次のサイクルまでのT24のカウントダウン開始
【0128】
図15Fは図15Aと同様に、並流浸透液再循環(CCPR) 条件が行われていないときの、正方向供給条件(FFOモード)を表す。この構成では、並流浸透液再循環は行われない。図15Aとの違いは、ダイアフィルトレーション用の水を供給するため、バルブ41VC60と41VH41が開けられている点である。
【0129】
図15Gは図15Bと同様に並流浸透液再循環(CCPR) 条件で操業しているときの状態を表す図である。図15Bの変形例として、図15Gではダイアフィルトレーション用の水を供給するためにバルブ41VC60と41VH41が開けられている。
【0130】
図15Hは図15Aと同様に、図15Fは図15Aと同様に、並流浸透液再循環(CCPR) 条件が行われていないときの、正方向供給条件(FFOモード)を表す。この構成では、並流浸透液再循環は行われない。図15Aとの違いは、浸透液バルブ43VA42を開けて浸透液の一部を未透過液貯留タンク41B20へ送って未透過液側にリサイクルする点である。
【0131】
図15I は図15Bと同様に並流浸透液再循環(CCPR) 条件で操業しているときの状態を表す図である。図15Bの変形例として、図15Iでは浸透液バルブ43VA42を開けて浸透液の一部を未透過液貯留タンク41B20へ送って未透過液側にリサイクルする。
【0132】
図15B等に示すこの発明の実施形態では、濾過サイクルの分離モードの間、CCPR (UTMP)モードの螺旋状濾過膜における流束は約0.1から約200 L/m2/hr、例えば約10から約60L/m2/hrに保たれる。
【0133】
この発明の実施形態では、付着汚れ除去モード(低UTMPまたはゼロUTMPおよび/または逆UTMP)は定期的に行われ、例えば約1分から約12分の間隔で、約1秒間から60秒間行われる。この間隔と時間は、処理される供給液のタイプに依存する。例えば、供給液によっては(例えばある種のプロテアーゼ)、付着汚れ除去モードは数分毎に行われる。低濃度の供給液の場合(例えば塩水)にはより低頻度で行われ、例えば約1時間または数時間毎に行われる。本願の実施形態では、付着汚れ除去の間、濾過膜の軸方向に沿った膜透過差圧(TMP)は濾過膜の軸方向両端のいずれかにおけるTMP値に対し40%以内、例えば20%以内、例えば10%以内の範囲で変化する。
本願の実施形態では、逆洗の間、未透過液流路と浸透液流路は約0.1から約60barの加圧下に保たれ、好ましくは約0.1から約10barに保たれる。本願の実施形態では、濾過プロセスの膜透過差圧は 0.1barから約60 bar、例えば約0.1から約10 bar、例えば約0.1から約5 bar、例えば約0.1から約1.0 の範囲で操業される。
TMPの範囲の最小値は濾過膜システムにより異なる。「bar」とは、105 Paに相当する圧力である。従来の圧力幅は約0.1から約1.5barと考えられる。しかしこの範囲は、例えば処理されるタンパクの種類や、使用される濾過媒体のタイプにより異なる。高圧とは、約1.5から2.0bar以上を意味するものとする。本願の装置と方法は、従来の圧力および/または高圧において操業される。
【0134】
別の実施形態では、さらにエアー洗浄を行うことができる。エアー洗浄は、濾過モジュールの入口手前の浸透液再循環ループに、ミクロンオーダーの気泡を定期的に注入することによって行うことができる。気泡によって濾過膜の未透過液側に堆積した汚染物質の除去が助勢される。これにより、付着汚れ除去がより効率的に行われる。あるいは、均一な付着汚れ除去を得るために必要な逆圧が小さくて済む。エアー洗浄を用いる実施形態では、流体が上方に向け流れる垂直な濾過システムが好ましい。これにより、濾過システムからのエアーパージが容易になる。
【0135】
この発明で使用可能な濾過膜の材質は、ポリスルホン(PS)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリビニリデンジフルオリド(PVDF)、ポリアリールスルホン、再生セルロース、ポリアミド、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、酢酸セルロース、ポリアクリロニトリル、ビニル共重合体、ポリアミド、ポリカーボネート、型はこれらのブレンド物等が含まれる。
濾過膜の孔径は、濾過膜の材質と用途により異なる。本願の実施形態では濾過膜の孔径は約0.005ミクロンから約0.05ミクロン、約0.05ミクロンから約0.5ミクロン、約0.5ミクロンから約1ミクロン、約1ミクロンから約5ミクロン、約5ミクロンから約10ミクロン、または約10ミクロンから約100ミクロンである。ひとつの実施形態では、濾過膜はPVDF、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン製であり、孔径は約0.005から約5ミクロン、好ましくは約0.005から約2ミクロンである。
【0136】
本願では特に効果が顕著な螺旋状濾過膜で実施した場合について説明するが、本願発明は例えばプレートとフレーム、セラミックチューブ、中空ファイバー、ステンレス製のフィルター、その他の濾過装置においても実施することができる。
【0137】
本願の実施形態では、濾過システムは制御装置により制御される。制御装置により、TMP, CF, 総浸透液流量、流束、純度及び収率等が制御される。濾過システムには制御用のバルブも含まれる。適切な制御方法は、濾過処理または精製処理の対象となっている物質に応じて決められる。
【0138】
本願の実施形態では、濾過システムには流体流路を流れる流体のデータを収集するためのセンサーが多数設けられている。本願の実施形態では、濾過システムには濾過プロセスを実施しているとき、ポンプ、バルブ、及びセンサーからデータを受信し、転送し、処理し記録することができる電子データ処理ネットワークが含まれる。
ここで、集積するデータには、濾過プロセスの流動を制御するために必要な情報が包括的に含まれている。
【0139】
いくつかの実施形態では、センサーは流量計、圧力計、濃度センサー、pH センサー、伝導度計、温度計、濁度計、紫外光吸光度計、蛍光センサー、屈折率計、オスモル濃度計、乾燥固体センサー、近赤外吸光度計、及びフーリエ変換赤外吸光度計等である。これらのセンサーは、濾過プロセスの進行状況と安全性を監視し、制御するために用いられる。
【0140】
本願の実施形態では、濾過システムには、操業中に部分的または完全に自動制御可能に設計された精密濾過システムが含まれる。
【0141】
当業者であれば、システムの最適な操業条件の設定は、処理対象とする供給原料物質と製品とが種々の操業条件化においてどのような挙動を示すかについての知見に依存することを理解できよう。このような知見は、パイロットスケールと生産設備スケールでの検討により得ることができる。
【0142】
本願に示す濾過システムにおいて処理対象とする供給原料物質と製品とが種々の操業条件下においてどのような挙動を示すかについて実験することにより、所定のプロセス条件と装置の設定値を決めることができる。
例えば、このような実験は予測モデルの作成に用いることができる。この予測モデルには、検出された操業条件値と、操業条件値を変更するための調整項目と、他の操業条件値を変更している間に他の操業条件地を維持するための調整項目の選択と調整量との関係に基づく数学アルゴリズムが含まれる。
この予測モデルを実行するために、制御装置にはコンピュータプログラムと通信可能なシーケンサー(PLC)が含まれる。コンピュータプログラムはマザーボード等に実装された電子部品、および/または別の場所に設けられ、シーケンサーとグラフィックインターフェースを介して通信可能なコンピュータ(図示せず)にインストールされる。
これらの機能を実行できるように、市販のPLCを本願の開示に基づき変更して用いることができる。制御システムには、本願に開示するプロセス制御用アルゴリズムを作成し実行することができるソフトウエアとハードウエアが含まれる。
【0143】
本願に開示するプロセス、装置、システムは、発酵培養液、医薬品、化学薬品、乳製品、大豆その他の食品工業において用いることができる。
本願に開示するプロセス、装置、システムは、タンパク、ポリペプチド、生物学的に製造されたポリマー、及び低分子化合物の水溶液の固/液分離に用いることができる。
タンパク、ポリペプチド、生物学的に製造されたポリマー、及び低分子化合物には、これらを精密濾過用の原料として製造しているときに生じる、ウイルスまたは細胞(細菌、菌類、両生類、爬虫類、鳥類、哺乳類、昆虫、植物、キメラに由来)、細胞残渣、培地残渣、宿主細胞により産出された目的外のバイオポリマー、培養液による処理中に混入した異物等が混入していてもよい。
本願に開示するプロセス、装置、システムは、目的の物質を回収する際に生じる、例えば沈殿物、抽出物を含む水溶液、結晶を含むスラリー等の流体の処理にも用いることができる。
本願の実施形態では、濾過システムには濾過装置が含まれる。しかし、ある実施形態で濾過システムというときは、濾過装置または濾過機械を意味することがある。
【0144】
本願の実施形態では、処理対象物質または成分はタンパク、ポリペプチド、核酸、糖タンパク、その他のバイオポリマー、低分子物質である。いくつかの実施形態では、処理対象物質は例えば抗体、酵素活性を有する治療用タンパク(酵素)、ホルモン等の治療用タンパクである。あるいは、処理対象物質は例えばコラーゲン、エラスチン等の構造タンパク質である。ホルモンには卵細胞刺激ホルモン、黄体形成ホルモン、コルチコトルピン放出因子、ソマトスタチン、ゴナドトロピンホルモン、バソプレシン、オキシトシン、エリスロポエチン、インシュリン等が含まれるが、これらに限定されない。治療用タンパクには、細胞増殖または分化の初期段階に細胞膜のレセプターに結合するタンパクである成長因子、および/または血小板由来の成長因子、表皮性成長因子、神経成長因子、線維芽細胞成長因子、インシュリン様成長因子、形質転換成長因子等が含まれるが、これらに限定されない。
【0145】
本願の実施形態では、酵素を工業スケールのプロセスで製造することができる。どのような酵素でも用いることができる。酵素の非限定的例示として、フィターゼ、キシラナーゼ、β-グルカナーゼ、ホスファターゼ、プロテアーゼ、アミラーゼ(アルファまたはベータ)、グルコアミラーゼ、セルラーゼ、 フィターゼ、リパーゼ、 クチナーゼ、オキシダーゼ、転移酵素、還元酵素、ヘミセルラーゼ、マンナナーゼ、エステラーゼ、イソメラーゼ、ペクチナーゼ、ラクターゼ、ペルオキシダーゼ、ラッカーゼ、その他の酸化還元酵素、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0146】
回収された酵素は例えばプロテアーゼ(バクテリア性、菌性、酸性、中性、アルカリ性)、アミラーゼ(アルファまたはベータ)、リパーゼ、セルラーゼ等のヒドロラーゼ、及びこれらの混合物であるが、これらに限定されない。これらの酵素は、例えば商品名がPurafect, Purastar, Properase, Puradax, Clarase, Multifect, Maxacal, Maxapem, 及びGenencor Division, Danisco US, Inc. (USP 4,760,025及びWO 91/06637)のMaxamyl; Alcalase, Savinase, Primase, Durazyme, Duramyl, Clazinase,及びNovo Industries A/S (Denmark)のTermamyl等の酵素である。
【0147】
セルラーゼはセルロースのβ-D-グルコース結合を加水分解する酵素である。セルロース分解性の酵素はエンドグルカナーゼ、エクソグルカナーゼまたはセロビオヒドロラーゼ、及びβ-グルコシダーゼ(J. Knowles et al., TIBTECH (1987) 5:255-261)の3種類に分類されている。セルラーゼの一例は、Genencor Division, Danisco US, Inc.から販売されているMultifectTM BGLである。セルラーゼは、アスペルギルス属、トリコデルマ属、ペニシリウム属、フミコーラ属、バシラス属、セルロモナス属、サーモモノスポラ属、クロストリジウム属、及びヒポクレア属から産出される。
多数のセルラーゼに関する論文が発表されている。例えばトリコデルマ・リーゼイに関しCBHIを開示したS. Shoemaker et al., Bio/Technology (1983) 1 :691-696;CBHIIを開示したT. Teeri et al, Gene (1987) 51 :43-52;EGIを開示したM. Penttila et al, Gene (1986) 45:253-263;EGIIを開示したM. Saloheimo et al, Gene (1988) 63: 1 1-22;EGIIIを開示したM. Okada et al, Appl Environ Microbiol (1988) 64:555-563;EGIVを開示したM. Saloheimo et al, Eur J Biochem (1997) 249:584-591;及びEGVを開示したA. Saloheimo et al, Molecular Microbiology (1994) 13:219-228等が挙げられる。
また、トリコデルマ属以外の種に由来するエクソ−セロビオヒドロラーゼ及びエンドグルカナーゼも発表されている。例えば、1990年にOoiらによりアスペルギルス・アクリータス(aculeatus) から産出されたFl-CMCをコードするcDNAが開示された。また、1996年にT. Kawaguchiらにより、アスペルギルス・アクリータスに由来するβ−グルカナーゼ1をエンコードするcDNAのクローン化と配列が開示された。また、1995年にSakamotoらによりアスペルギルス・カワチイIFO 4308に由来するエンドグルカナーゼCMCase-1をエンコードするcDNA配列が開示された。また、1990年にSaarilahtiらにより、エルウィニア・カロトバラに由来するエンドグルカナーゼが開示された。
【0148】
プロテアーゼには、セリン、メタロ、チオール、または酸性プロテアーゼが含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、プロテアーゼはセリンプロテアーゼ(例えばスブチリシン)である。セリンプロテアーゼは周知であり、Markland et al, Honne-Seyler's Z Physiol. Chem (1983) 364:1537 - 1540; J. Drenth et al Eur J Biochem (1972) 26:177 - 181; USP 4,760,025 (RE 34,606), USP 5,182,204及びUSP 6,312,936及びEP 0 323,299が参照される。タンパク分解活性の測定方法は、K.M. Kaliszの"Microbial Proteinases" Advances in Biochemical Engineering and Biotechnology, A. Fiecht Ed. 1988に開示されている。
【0149】
キシラナーゼには、トリコデルマ・リーゼイ由来のキシラナーゼ及びトリコデルマ・リーゼイ由来のキシラナーゼ変異体が含まれるが、これらに限定されない。これらはいずれも、アスペルギルス・ニガー由来、 アスペルギルス・カワチイ由来、アスペルギルス・ツビゲンシス由来、バシラス・サーキュラン由来、バシラス・プミラス由来、バシラス・サブチリス由来、ネオカリマスティックス・パトリリシアラム由来、 ストレプトマイセス・リビダンス由来、ストレプトマイセス・サーモビオラセス由来、サーモモノスポラ・フスカ由来、トリコデルマ・ハルジアナム由来、トリコデルマ・リーゼイ由来、トリコデルマ・ビリデ由来のキシラナーゼ等とともにDanisco A/S, Denmarkおよび/またはGenencor Division, Danisco US Inc., Palo Alto, Californiaから入手できる。
【0150】
フィターゼの例は、AB Enzymes, Darmstadt, Germanyから入手可能なアスペルギルス属由来のフィターゼであるFinaseTM、Danisco, Copenhagen, Denmarkから入手可能なE. coli由来のフィターゼであるPhyzymeTM、及びトリコデルマ属、ペニシリウム属、フサリウム属、バチアグセラ属、シトロバクター属、エンテロバクター属、ペニシリウム属、フミコーラ属、バシラス属、及びペニオフォラ属等に由来するフィターゼである。
【0151】
アミラーゼは、例えばアスペルギルス属、トリコデルマ属、ペニシリウム属、あるいはバシラス・サブチリス、バシラス・ステアロサーモフィラス、バシラス・レンタス、バシラス・リケニフォルミス、バシラス・コーギュランス、及びバシラス・アミロリケファシエンス等のバシラス属由来のものである。
好ましい菌性アミラーゼは、例えばアスペルギルス・オリザエ及びアスペルギルス・ニガー等のアスペルギルス属由来のアミラーゼである。
好ましいプロテアーゼは、バシラス・アミロリケファシエンス、バシラス・レンタス、バシラス・サブチリス、バシラス・リケニフォルミス、及びアスペルギルス属、トリコデルマ属由来のプロテアーゼである。
【0152】
上記の酵素は例示であり、これらに限定されない。例えばその他の酵素を産出する宿主は、ムコール属、クリベロマイセス属、ヤロウィア属、アクレモニウム属、ニューロスポラ属、ミセリオフィソーラ属、及びティエラビア属等である。本願の実施形態では、細菌、菌類、植物、動物由来で酸性、中性、アルカリ活性の野生型、遺伝子組み換え及び変異体型の酵素等、あらゆる酵素を用いることができる。
【0153】
本願のプロセスや装置は、例えばポリ乳酸やポリヒドロキシブチル酸等の生物化学的に産出されたポリマーの精製に用いることができる。また、本願のプロセスや装置はこれらのポリマーの精製や加工以外にも用いることができる。
【0154】
本願のプロセスや装置は、例えばビタミン(例えばアスコルビン酸)、エタノール、プロパンジオール、アミノ酸、有機染料(例えばインジゴ染料)、栄養補助食品(例えばベタインやカルニチン)、香料(例えばブチルブチラート)、 芳香剤(例えばテルペン)、有機酸(例えばシュウ酸、クエン酸、コハク酸)、抗菌剤(例えばエリスロマイシン)、医薬品(例えばスタチンやタキサン)、抗酸化剤(例えばカロチノイド)、ステロール、及び脂肪酸等の、低分子物質の精製に用いることもできる。また、本願のプロセスや装置はこれらの低分子物質の精製や加工以外にも用いることができる。
【0155】
浸透液、未透過液、または細胞ペースト中の処理対象物質または成分の所望の純度は、約1%から約100%である。本願の実施形態では処理対象物質の純度は約1%から約25%、例えば約25%から約50%、例えば約50%から約75%、例えば約75%から約90%、例えば約90%から約95%、例えば約95%から約97%、または約97%から約99%である。
【0156】
本願のプロセスで用いる供給液は原料産出用の生命体または細胞から得られる。原料産出用の生命体は、ウイルス、バクテリア、または菌類である。原料産出用の細胞は、原核細胞または真核細胞である。本願の実施形態では、原料産出用の細胞はバクテリアの細胞、昆虫の細胞、哺乳類の細胞、菌類の細胞植物の細胞、またはこれらの細胞の細胞株である。細胞株は、哺乳類、鳥類、両生類、または昆虫に由来する。
これらの細胞は、対象とするバイオポリマーを発現するように、対象とするDNAまたはその他の核酸により形質転換される。細胞を形質転換させる方法は公知であり、例えば本願に参照として組み込まれるU.S. Patent No.7,005,291に開示されている。
【0157】
また供給液は、形質転換されていない細胞またはその他動物または植物から得られる。これらの細胞から得られた供給液は、多段濾過装置へ送られる。別の実施形態では、供給液は遺伝子組み換えした細胞または有機体、例えば遺伝子組み換えした哺乳類から得られる。プロセスの結果物は、プロセスに供給液として送られる出発物質または原料とは無関係である。本願のプロセスは植物または動物から抽出された培養液に適用され、最終製品は結晶、スラリー、沈殿物、浸透液、未透過液、細胞ペースト、または抽出液である。分離処理される供給液には、液中に分散した固形分が例えば少なくとも25%、例えば少なくとも15%、例えば少なくとも5%含まれる。
【0158】
本願の実施形態では、原料産出用のバクテリア性有機体は、例えばバシラス属、ストレプトミセス属、またはシュードモナス属であり、例えばバシラス・サブチリス、バシラス・クラウシ、バシラス・リケニフォルミス、バシラス・アルカロフィラス、エシェリシア・コリ、パントエア・シトレア、ストレプトミセス・リビダンス、ストレプトミセス・ルビギノサス、またはシュードモナス・アルカリゲネス等である。
【0159】
本願の実施形態では、濾過システムには供給流及び浸透液流と液流通可能な熱交換器が含まれる。この熱交換器により、供給流及び浸透液流が酵素の活性化温度より低い温度まで冷却される。酵素の活性化温度はプロセスの周囲外気温度より低い。これにより、操業中に酵素の自己消化が生じることを防止または禁止することができる。
例えば、血清プロテアーゼを含む供給流は、約15℃以下に保たれた温度において加工することができる。熱交換器は、供給流ラインでは濾過膜モジュールの蒸留側に設け、浸透液流ラインでは濾過膜モジュールの下流側に設けることができる。
【0160】
工業的スケールでは、複数の濾過膜部材を直列にして1つのハウジング内に設けることが好ましい。例えば、1つのハウジング内に複数(例えば4,6またはそれ以上)の濾過膜部材を直列にして1つのハウジング内に設けることができる。これにより、ハウジング内に1つの濾過膜部材しかない場合と比較して、必要なフィッティングの数、設置面積、配管、制御バルブの数、及び計器類を節約することができる。
しかし、この場合には濾過(精密濾過及び限外濾過)圧力が低下するという問題が生じる。各濾過膜部材を通過するときの圧力損失は上流側の膜透過差圧よりも大きく、10%以上であるため、下流側の濾過膜部材の膜透過差圧は大きく低下する。このため、上流側の濾過膜部材を最適な膜透過差圧(TMP)より高くして操業することになり、このTMPの上昇により上流側の濾過膜部材のクロスフロー条件が制約される。
この問題は、付着汚れを防ぐために低TMPと高クロスフローが要求される精密濾過において最も顕著に表われる。また、付着汚れ除去操作においても問題を生じる。すなわち、上流側の濾過膜の汚染物質が除去されて汚染除去用流体の流束が増加するに従い、上流側の濾過膜部材における浸透量が非常に高くなる。この結果、下流側の濾過膜部材における汚染除去用流体が欠乏し、十分な付着汚れ除去操作を行うために必要な汚染除去用流体のクロスフローに十分曝されないこととなる。この結果、付着汚れが十分除去されないか、付着汚れ除去操作時間が長くなる。
【0161】
浸透液を再循環して膜透過差圧を制御することにより、この問題を解決することができる。
膜透過差圧(TMP)とクロスフローをそれぞれ独立して制御することができるので、TMPに悪影響を及ぼすことなくクロスフロー速度を上げたり下げたりすることができる。この効果は単一の濾過膜部材でも得られるが、直列の濾過膜部材ではさらに有効である。供給液流の流路が長くなるほど、濾過システムの両端におけるTMPの高低差が大きくなる。
また、上流側の濾過膜部材の浸透流量が下流側の濾過膜部材のクロスフローに影響を及ぼすほど大きい付着汚れ除去操作等において、均な膜透過差圧(UTMP)の値を下げて浸透流量を低下させることにより、全濾過膜部材において適切なクロスフローを得ることができる。
【0162】
また、直列に連結された濾過膜部材用の流動抵抗部材(FRE)を設計することもできる。直列に連結された濾過膜部材用の浸透液回収チューブは互いに結合されているので、浸透液の流れが濾過システムの入口から出口に向かうに従い、浸透液の流量が増加する。浸透液再循環流量と濾過された浸透液とにより、浸透液の出口側の流量は、入口側の流量(再循環流量のみ)よりはるかに大きくなる。
この場合、圧力損失は流速の二乗の関数であるため、濾過システムにおける単位長さ当りの圧力損失が変化することになる。従って、長い濾過システムの全長にわたる直線的な圧力損失を維持するために、回収チューブの下流側ほど流動抵抗が小さくなるFREが必要になる。
どのようなFREでも流動抵抗を増減させることができる。例えば球状の充填材であれば、直径を大きくすることによって流動抵抗を小さくすることができる。テーパー形状の管状挿入部材は、濾過膜部材用内において、予想される流量の範囲内で所定の圧力損失を生じるような設計を容易に行えるだけでなく、直列に連結された複数の濾過膜部材で増加する流量に対応するように調整されたテーパー径にすることができる。例えば、下流側の浸透液の流量を、管状挿入部材の直径を低減させることによって増加させることができる。これにより、濾過膜を通過する浸透量の増加に応じて流動抵抗を小さくすることができる。
【実施例】
【0163】
以下の実施例は、本願発明の様々な実施形態を説明するためのものである。これらの実施形態は、本願の範囲を限定するものではない。
【0164】
実施例1-3は、図17に示す構成の螺旋状濾過膜システムを用いて、異なる種類のバシラス培養液の流束と透過率を求めるための実験を行ったものである。図17に示す螺旋状濾過膜システムは、図15B-15Eに示す構成のシステムを一部修正したものに相当する。
この濾過システムを用いて、いくつかのメーカーの濾過膜部材と、異なる種類の発酵培養液とを用いて試験を行った。図17に示す螺旋状濾過膜システムにおいて、この発明の並流浸透液再循環(CCPR)モードと、間欠的な逆UTMP (rUTMP)モードを実施した。
図17に示す螺旋状濾過膜システムは、螺旋状濾過膜1701(SWM)、浸透液ポンプ1703、供給液ポンプ1709、及び例えばバルブ(1706, 1720-1723)、圧力計(PI)、圧力トランスミッター(PT)、 バルブ駆動装置、温度トランスミッター(TT)、流量計(FI)、流量計トランスミッター(FIT)、流量制御バルブ、供給液/回収液タンク(TANK)、熱交換器(HE)1715、温度制御バルブ(TIC)、タンクレベルトランスミッター(LT)、供給液制御バルブ(LICZ)等のその他の装置を備え、濾過システムを統合的に操業することができる。
螺旋状濾過膜モジュール1701は、制御バルブ1706と浸透液ポンプ1703を備える再循環ループ1704により、並流浸透液流が供給されるように構成されている。浸透液ポンプ1703は、螺旋状濾過膜モジュール1701浸透液出口1705(すなわち回収チューブの出口)から排出された浸透液の一部を、螺旋状濾過膜モジュール1701内に設けられた浸透液回収チューブの浸透液入口1707に制御された流量で送り返すことができる。
螺旋状濾過膜モジュール1701については、下記にさらに詳しく説明する。
供給液ポンプ1709は、螺旋状濾過膜モジュール1701の供給液流入口1711へ、分離処理する供給液流を制御された流量で供給する。供給液流は、螺旋状濾過膜モジュール1701へ導入される前に熱交換器1715に通される。
未透過液は、螺旋状濾過膜モジュール1701の軸方向反対側にある出口1713を通して螺旋状濾過膜モジュール1701から排出される。浸透液ポンプ1703、供給液流ポンプ1709、及び制御バルブを本願に示すようにして手動で調整し、UTMPモードと逆UTMPモードでの操業を行った。
【実施例1】
【0165】
1回目から4回目の試験では、発酵培養液についてAlfa Laval社の公称孔径0.2μmのポリスルホン(PS)濾過膜を用いて、体積濃縮率(VCF)の評価を行った。供給液に用いた培養液はGenencor Division, Danisco US, Inc.のFNA培養液であり、この供給液に含まれる宿主有機体はB.サブチリスで、酵素はプロテアーゼである。操業温度は15℃、培養液のpHは5.8で、直径3mmのプラスチックのボールを流動抵抗部材(FRE)として用いた。このFREを、螺旋状濾過膜の回収チューブの軸方向の一端から他端まで充填し、回収チューブの両端部に多数の孔を有するディスクプレートを取り付けることによって回収チューブ内に保持させた。UTMP及びUTMP/逆UTMPモードでの濾過操業を行った。浸透液循環ポンプの吐出量を増加させるか、または供給液ポンプの吐出量を減少させることにより、2種類の浸透液加圧を行った。
【0166】
1回目から4回目の試験は、次のようにして行った。
1回目の試験操業は比較用の試験であり、均一膜透過差圧(UTMP)モードは実施しなかった。平均TMPは1.5barで、供給液流量は9.9m3/hrであった。
2回目の試験操業ではUTMPモードのみを実施し、逆UTMPは行わなかった。浸透液回収チューブに流動抵抗部材(FRE)を充填したが、付着汚れ除去モードは実施しなかった。UTMPは1barで、供給液流量は11.8 m3/hrであった。
3回目の試験操業では、UTMP/逆UTMPモードを実施し、UTMPは1barで、供給液流量は12m3/hrであった。逆UTMPモードは供給液ポンプの吐出量を下げることにより行い、10分ごとに1分間実施した。ポンプの吐出量は、負方向の浸透液の流動が観察されるまで下げた。これは、濾過膜を逆方向に通過する流れがあることを意味している。
4回目の試験では、UTMP/逆UTMPモードを実施し、UTMPは1barで、供給液流量は12m3/hrであった。逆UTMPモードは浸透液循環ポンプの吐出量を上げることにより行い、10分ごとに1分間実施した。ポンプの吐出量は、負方向の浸透液の流動が観察されるまで下げた。これは、濾過膜を逆方向に通過する流れがあることを意味している。
【0167】
1回目から4回目の試験結果を表1〜4に示す。異なるVCF毎の流束の測定結果を図18と19に示す。また透過率の測定結果を図20に示す。特に、図18と図19に示す結果から、逆UTMPモードと組み合わせずにUTMPモードを実施すると流束が低下することが分かる。最も流束の低下が小さかったのは、供給液ポンプの吐出量を調整してUTMP/逆UTMPモードを実施した3回目の試験操業時であった。
また、図20からUTMPモードを実施した場合、総透過率が顕著に改善されることが分かる。
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【0168】
表5に、1回目から4回目の試験においてUF(限外濾過)により得られたVCF、総透過率、及び濃縮率を示す。"C"は溶質の濃度を表し、"C0"は溶質の最初の濃度を表し、"V0"は最初の供給液容積を表し、"V"は未透過液容積を表し、"σ"は不透過率を表し、C=C0(V0/V)σである。
【表5】
【実施例2】
【0169】
5回目から11回目の試験操業では、実施例1と同様の構成の濾過システムにおいて、別の発酵培養液について異なるタイプの濾過膜を用いてVCFを評価した。異なるタイプの濾過膜として、比較用のKoch社の公称孔径1.2μmの螺旋状濾過膜、比較用及び評価用のAlfa Laval社の公称孔径0.2μmのポリスルホン(PS)濾過膜、及び比較用及び評価用のMicrodyn社の公称孔径0.05μmのポリエーテルスルホン濾過膜を用いた。
供給液に用いた培養液はGenencor Division, Danisco US, Inc.のFN3培養液であり、この供給液に含まれる培養液調製用の宿主有機体はB.サブチリスで、酵素はプロテアーゼである。試験操業温度は15℃であった。
【0170】
5回目から11回目の試験操業は、次の条件で行なった。
5回目の試験操業はKoch社(Koch Membrane Systems, Inc.)の螺旋状濾過膜を用いた比較試験であり、浸透液の受動的回収のみを行なった。すなわち、UTMPモードと並流浸透液再循環(すなわち、能動的浸透液回収)は行わなかった。平均TMPは1.5 barで、供給液流量は9 m3/hrであった。
6回目の試験操業は0.2μmのポリスルホン(PS)濾過膜を用いた比較試験であり、UTMPモードと並流浸透液再循環は行わず、浸透液の受動的回収のみを行なった。平均TMPは1.5 barで、供給液流量は9 m3/hrであった。
7回目の試験操業ではAlfa Laval社の0.2μmのポリスルホン(PS)濾過膜を用い、UTMP/逆UTMPモードを実施した。UTMPは1 barで供給液流量は8.4 m3/hrであった。供給液ポンプの吐出量を低減させることによって、逆UTMPモードを10分毎に30秒間行った。浸透液の負方向の流れが観察されるまで、供給液ポンプの吐出量を低減させた。これは、濾過膜を逆方向に通過する流れがあることを意味している。
8回目の試験操業ではAlfa Laval社の0.2μmのポリスルホン(PS)濾過膜を用い、UTMP/逆UTMPモードを実施した。UTMPは1 barで供給液流量は8.2 m3/hrであった。供給液ポンプの吐出量を低減させることによって、逆UTMPモードを2分毎に5秒間実施した。浸透液の負方向の流れが観察されるまで、供給液ポンプの吐出量を低減させた。これは、濾過膜を逆方向に通過する流れがあることを意味している。
9回目の試験操業ではMicrodyn社の0.05μmのポリエチルスルホン(PES)濾過膜を用い、浸透液の受動的回収のみを行なった。すなわち、UTMPモードと並流浸透液再循環は行わなかった。TMPは1.5 barで供給液流量は9.8 m3/hrであった。
10回目の試験操業ではMicrodyn社の0.05μmのポリエチルスルホン(PES)濾過膜を用い、UTMP/逆UTMPモードを実施した。UTMPは0.9 barで供給液流量は8.1 m3/hrであった。供給液ポンプの吐出量を低減させることによって、逆UTMPモードを2分毎に5秒間行実施した。浸透液の負方向の流れが観察されるまで、供給液ポンプの吐出量を低減させた。これは、濾過膜を逆方向に通過する流れがあることを意味している。
11回目の試験操業ではMicrodyn社の0.05μmのポリエチルスルホン(PES)濾過膜を用い、UTMP/逆UTMPモードを実施した。UTMPは0.8 barで供給液流量は8.1 m3/hrであった。供給液ポンプの吐出量を低減させることによって、逆UTMPモードを2分毎に5秒間行実施した。供給液ポンプの吐出量を、浸透液の負方向の流れが観察されるまで低減させた。これは、濾過膜を逆方向に通過する流れがあることを意味している。
【0171】
5回目から11回目の試験操業の結果を表6〜12に示す。異なるVCFにおいて得られた流束の測定結果を図21と図22に示す。また、透過率の測定結果を図23に示す。
特に、図21と図22に示す結果から、逆UTMPモードと組み合わせずにUTMPモードを実施すると流束が低下することが分かる。また図23から、UTMPモードを実施した場合、総透過率が顕著に改善されることが分かる。最も流束の低下が小さかったのはUTMP/逆UTMPモードを実施した、7, 8, 10 及び11回目の試験操業時であった。
【表6】
【表7】
【表8】
【表9】
【表10】
【表11】
【表12】
【0172】
表13に、6回目から11回目の試験においてUFにより得られたVCF、総透過率、及び濃縮率を示す。
【表13】
【実施例3】
【0173】
流動抵抗部材として回収チューブ内に設けたテーパー形状挿入部材を備える浸透液回収チューブの入口から出口にかけての圧力損失分布を検討するための試験操業を行なった。
正確な結果と適切な螺旋状濾過膜システムの濾過膜を得るために、Koch Membrane Systems, Inc.社の螺旋状濾過膜を巻き戻して解体し、内部にあった浸透液回収チューブをこれらの試験操業用に別にして使用した。
浸透液回収チューブを改造し、回収チューブの長さ方向において一定間隔で水を回収チューブ内部に注入する注入点を設けるとともに、各注入点に流量計と圧力計を設け、その他の回収チューブの長さ方向に沿って設けられていた開口を全て塞いだ。
この回収チューブは、両端部に再循環された水または他の試験用浸透液が導入される入口と、回収チューブ内に回収された水/浸透液が排出される出口とを有する。
図25に示すように、この試験操業では上記により2本の浸透液回収チューブ251,252を準備し、各浸透液回収チューブのそれぞれに注入点、流量計、及び圧力計を8箇所ずつ設けた。図25には浸透液回収チューブ251のみを図示したが、浸透液回収チューブ252も同様の構成を有する。
各浸透液回収チューブ内に、図4Aと図4Dに示す構造のテーパー形状挿入部材を設置した。
2本の浸透液回収チューブを、位置決部材(Alfa Laval社)を用いて連結した。また、位置決部材を浸透液回収チューブの対向両端部にも設けた。図25に示すように構成された装置により、並流浸透液再循環流量と浸透液注入量を制御し監視することができる。
【0174】
試験操業は、複数の異なるΔP (3.4, 3.2, 3.0, 2.5, 2.0 bar)と浸透液流量(8 LPM, 22 LPM, 32, LPM)において行った。テーパー形状挿入部材のテーパーのデザインは、.91"から.90"と.90"から.89"であった(2本のチューブの2本の挿入部材)。
結果を図26〜30に示す。これらの図には浸透液回収チューブ251の圧力計1〜8(入口から出口方向)と浸透液回収チューブ252の圧力計9〜16(入口から出口方向)から得られたデータを示す。図26〜30に示すデータから、浸透液回収チューブの入口から出口にかけて大きな圧力損失、あるいは比較的緩やかな圧力損失が生じることが分かる。また2本の浸透液回収チューブ251,252の間、すなわち圧力計8と9の間の位置決め部材(ATD)による圧力損失は非常に小さいことが分かる。
【実施例4】
【0175】
図32に模式的に示す装置とプロセスを用いて試験操業を行った。この試験操業の目的は、工業目的の連続プロセスにおけるUTMP/逆UTMPモードの有効性を示すことである。
【0176】
アルカリプロテアーゼを含む37.5kgのバシラス・サブチリス発酵培養液を供給液タンクに、22.5kgの水とともに投入した。濾過システムを立ち上げ、以下の操業条件にした。
供給液入口圧力 2.8 bar
供給液出口圧力 1.3 bar
浸透液入口圧力 1.8 bar
浸透液出口圧力 0.3 bar
供給液温度 15℃
【0177】
この設定条件下では、供給液側と浸透液側のUTMPが1.0 barで、ΔPが1.5 barとなった。システムを立ち上げている間、供給液と浸透液を循環させた。この試験操業で用いた濾過膜は、80 milのスペーサを有する Koch MFK 601 3838であった。
【0178】
システムが定常状態に達した後、試験操業を開始した。浸透液は回収タンクへ送った。未透過液は、浸透液4.7部に対し未透過液1部の比率で排出された。供給液を外部にある貯留タンクから濾過システムの供給液へ送り、系内の総液重量を60kgに保った。外部にある貯留タンクの供給液は、アルカリプロテアーゼを含む166.6kgのバシラス・サブチリス発酵培養液と633kgの水と混合して調製した。この供給液タンクを10℃に保った。
【0179】
この濾過システムは、定期的に逆UTMPモードが行われるよう設定した。逆UTMPの設定は以下の通りである。
逆UTMPモードの間隔 3分
逆UTMPモードでの時間 5秒間
逆UTMPモードの強度 総浸透液流量-0.5 LPM(浸透液を0.1 bar加圧)
【0180】
この試験操業を6時間行った。結果を表32〜36に示す。
【実施例5】
【0181】
図15Iに示す装置とプロセスを用いて試験操業を行った。
【0182】
この試験操業はクリティカルフラックス(critical flux)を評価するものであり、複数の異なるUTMPとΔPで操業したときの影響を示すものである。
【0183】
この試験操業は、以下のようにして行った。
1. 最も付着汚れが激しくなると思われる条件で1時間操業して、濾過膜に予め付着汚れを生じさせる。具体的にはUTMPが1.5 barでΔPが0.8 barであった。
2. 手動で逆UTMPを実施し、汚染物質を除去する。これにより、濾過膜はやや付着汚れが生じた状態になる。
3. 試験操業条件に設定して30分間操業し、30分経過したらサンプルを採取して酵素の透過率を分析する。
4. 2から3を繰り返し、全ての試験操業条件を行う。
【0184】
アルカリプロテアーゼを含む40kgのバシラス・サブチリス発酵培養液を供給液タンクに、40kgの水とともに投入した。濾過システムを立ち上げ、以下の操業条件にした。
供給液入口圧力 2.8 bar
供給液出口圧力 2.0 bar
浸透液入口圧力 1.3 bar
浸透液出口圧力 0.5 bar
供給液温度 15℃
【0185】
この状態で1時間操業し、濾過膜に予め付着汚れを生じさせた。次に、上記に概要を説明したように、以下の条件で試験操業を行った。
【表14】
【0186】
この試験操業で用いた濾過膜は、80 milのスペーサを有する Koch MFK 601 3838であった。
【0187】
結果を図37〜39に示す。
【実施例6】
【0188】
<スキムミルクの濃縮>
500Lのタンクに252kgの水を入れ50℃に加熱した。50℃に達したとき、25kgの粉末スキムミルクをゆっくり添加し、撹拌しながら溶解させた。このミルク溶液を50℃で90分間水和させた。
【0189】
92kgの供給液を、Microdyn Technologies Inc.社製の0.05μm PES精密濾過膜3838モジュールを備えた、精密濾過(MF)パイロット装置(図15A〜15Iに示す螺旋状濾過膜システム)に供給した。浸透液回収チューブに、流動抵抗部材(FRE)として8mmのプラスチック製のボールを充填した。装置を立ち上げ、非常に低いUTMP条件(0.2 bar)下で、温度を上昇させた。濾過システムの温度が上がり供給液が50℃で安定した後、濃縮プロセスを開始した。スキムミルク濃縮プロセスでは、濾過システムを以下の条件に設定した。
供給液温度 50℃
供給液入口圧力 2.5 bar
供給液出口圧力 1.5 bar
浸透液入口圧力 1.5 bar
浸透液出口圧力 0.5 bar
【0190】
500Lタンクから供給液を連続して供給し、系外に出る浸透液を補った。試験操業の間、濾過システムへの供給液92kgに保たれた。供給した277kgのスキムミルクに対し92kgの製品が回収され、3倍に濃縮されるまで試験操業を行った。
【0191】
結果を図40に示す。
【実施例7】
【0192】
<スキムミルク濃縮におけるクリティカルフラックス>
実施例6で生成したスキムミルク3倍濃縮液を用いて、様々なUTMP条件下で透過率と流束を評価する試験操業を行った。いずれの条件下でもクロスフロー圧は0.8barで、供給液温度は50℃であった。浸透液と未透過液を連続的に供給タンクに再循環させた。従って、試験操業の間供給液の組成は一定であった。各条件化において、スキムミルクを30分間再循環した。
【表15】
【0193】
結果を図41と42に示す。
【実施例8】
【0194】
<スキムミルク3倍濃縮液のダイアフィルとレーション>
上記のクリティカルフラックス試験の後、脱イオン水供給ラインを精密濾過装置の供給液タンクに繋いだ。濾過システムを以下の操業条件で安定させた。
供給液温度 50℃
供給液入口圧力 2.3 bar
供給液出口圧力 1.3 bar
浸透液入口圧力 1.5 bar
浸透液出口圧力 0.5 bar
【0195】
浸透液を浸透液回収タンクへ送り、水を連続的に供給液タンクに供給して、濾過システムへの供給液の供給を92kgに保った。この試験操業を、185kgの浸透液が回収されるまで行った。
【0196】
結果を図42に示す。
【実施例9】
【0197】
図15Iに示す装置で、バシラス・リケニフォルミス由来のアルファ-アミラーゼ培養液を用いてクリティカルフラックスの評価を行った。細胞をリゾチームで溶解させた。培養液のpHをNaOHで10に調整した。40リットルの培養液を40リットルの水と混合し温度を50℃にした。濾過膜をDPが1.0barでUTMPが1.5barの条件で1時間操業して、予め付着汚れを生じさせた。試験操業を開始する前に、濾過膜を逆UTMPモードで10秒間処理した。試験操業の条件を変更するたびに、手動で逆UTMPモードを10秒間実施した。使用した濾過膜は80 milスペーサを備えたKoch MFK 601, 1.2μm PES濾過膜であった。
【0198】
試験操業は下記の条件で行った。(圧力の単位は全てbar)
【表16】
【0199】
各試験操業条件を20分間ずつ行い、試験操業毎に未透過液と浸透液のサンプルを採取して分析した。結果を図46に示す。
【実施例10】
【0200】
図24に、VCF 1においてLaval 0.2μmポリスルホン(PS)濾過膜を用い、様々な操業モードを行ったときの総透過率を示す。
【0201】
図44に示す装置を用いて、ノーマル(流動抵抗部材または浸透液循環不使用)、UTMPのみ、UTMP/ゼロnUTMP、及びUTMP/逆UTMPの4種類のモードの性能の相対評価を行った。全ての試験操業において、バシラス・サブチリス由来の発酵培養液を用いた。4種類の試験操業におけるバッチ毎の容積と希釈率は全て同じにした。4種類の試験操業において同じAlfa Laval社の0.2μmポリスルホン精密濾過膜を用いた。
【0202】
以下の試験操業条件を用いた。
【表17】
【0203】
各試験操業では、40kgの培養液を80kgの水と混合し、温度を15℃にした。次に、試験操業を開始した。浸透液を別のタンクに回収し、濾過システムに残った供給液の重量が40kgになるまで試験操業を行った。これは、VCF=1.0に相当する。試験操業毎に回収した浸透液のアルカリプロテアーゼを分析して、総透過率を求めた。
【0204】
ゼロUTMPモードは、3分毎に5秒間行った。ゼロUTMPモードは、図44に示すように浸透液側のリリーフ弁を閉めることにより実施した。これにより、浸透液循環ループが閉じられたループとなり、一方供給液側から浸透液側への浸透は引き続き行われる結果、浸透液側の圧力が供給液側と均圧になった。
逆UTMPモードは、2分毎に5秒間行った。逆UTMPモードは、前記のように供給液ポンプの吐出量を低下させて実施した。
【0205】
図24には、実施例2の7回目の試験操業のデータも含まれている。(供給液低減 30秒/10分)
【実施例11】
【0206】
この発明の装置とプロセスを開発しているとき、流体の取り扱いと制御性が改善される設計変更をいくつか行った。主な変更点を下記に示す。
【0207】
図17は、UTMPモードと逆UTMPモードを実施するための濾過装置の、最初の構成を表す模式図である。
【0208】
図44は、図17の装置を改善した装置を表す。すなわち、浸透液循環ループの浸透液タンクを用いるのではなく循環ループを閉じた。これにより、浸透液リリーフバルブを閉じることによってゼロUTMPモードを実施することができる。
【0209】
図15Aから15Iは、設計変更された装置を表す。設計変更には、UTMP及びゼロUTMPモードの自動化と、2種類の逆UTMPモードとが含まれる。最初の逆UTMPモード(供給液ポンプの吐出量を下げるか、浸透液ポンプの吐出量を上げる)を実施することはできるが、この場合逆UTMPモードの自動化は困難である。
【0210】
図15に示す完全に自動化された濾過システムの潜在的な利点は真の逆UTMPモードを実施できることである。最初の濾過システムの構成では、供給液ポンプの吐出量を下げたとき、供給液が濾過モジュールを通過するときの圧力損失が小さくなり、供給液の入口と出口における圧力の下がり方が異なることになる。この間に浸透液の循環量が一定であると、濾過モジュールの入口側の逆流量の方が出口側より多くなってしまう。
【0211】
逆に、浸透液ポンプの吐出量を増やしたとき、浸透液回収チューブにおける圧力損失が増大する。供給液循環量が一定であると、この場合にも濾過モジュールの入口側の逆流量の方が出口側より多くなってしまう。図45に予想される圧力勾配を示す。
【0212】
図15に示す装置は、ポンプと圧力制御バルブ(43VC60と42VC60)の両者が完全に自動化されている。これにより、図14に示すように、逆UTMPモードにおいても、濾過モジュールの入口側と出口側の圧力差を均等に保つことができる。
【0213】
各実施例で用いた装置:
実施例1:図17
実施例2:図17
実施例3:図25
実施例4:図32
実施例5:図15I
実施例6〜8:図15の各図
実施例9:図15の各図
実施例10:図44
【0214】
図31は、本願の非限定的実施形態を、上記または別の本願発明の側面に従ってシリーズ1から4、及びシリーズ10から15として表し、各シナリオに関する一般的プロセス条件を示した模式図である。
【0215】
当業者であれば、本願に開示した実施形態を種々変更して実施できることを容易に理解できるであろう。本願に示した実施形態と実施例は本願発明の例示であり、特許請求の範囲を限定するものではない。引用した特許、文献、特許出願は、参照として本願に組み込まれる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
向かい合う浸透液側と未透過液側とを有する濾過膜と、入口及び出口と、軸方向に沿って濾過膜の未透過液側を入口から出口に向け流れる供給流と、軸方向に沿って濾過膜の浸透液側を入口から出口に向け流れる浸透液流と、並流浸透液再循環流を濾過膜モジュールに供給する浸透液再循環ループとを備える濾過膜モジュールを準備するステップと;
濾過膜の浸透液側または未透過液側の流量または圧力を調整して、濾過膜の浸透液側と未透過液側の入口及び出口におけるベースライン圧力の差が実質的に一定になるように、濾過膜の浸透液側と未透過液側の入口及び出口のベースライン圧力を設定するステップであって、濾過膜の浸透液側の入口のベースライン圧力が出口のベースライン圧力より高く、濾過膜の未透過液側の入口のベースライン圧力が出口のベースライン圧力より高いステップと;
濾過膜の浸透液側の圧力を定期的に調整し、浸透液側と未透過液側の入口及び出口における圧力の差を、前記ベースライン圧力の差に対し少なくとも50%以下になるように低下させるステップとを含む、濾過方法。
【請求項2】
濾過膜の浸透液側の圧力の前記定期的な調整を約1分から6時間おきに約1秒間から60秒間行い、定期的調整と定期的調整の間に分離モードでの操業を行う、請求項1に記載の濾過方法。
【請求項3】
濾過膜の浸透液側の圧力を定期的に低下させるとき、濾過膜の浸透液側と未透過液側の入口と出口における圧力の差が実質的にゼロになるように調整する、請求項1に記載の濾過方法。
【請求項4】
前記濾過膜が螺旋状濾過膜である、請求項1に記載の濾過方法。
【請求項5】
さらに、浸透液の圧力を上げるか、または未透過液の圧力を下げることによって、定期的に濾過膜の未透過液側の圧力に対し浸透液側の圧力を制御可能な範囲で高くして、濾過膜を通るバックフローを生じさせる逆膜透過差圧(rUTMP)プロセスを行うステップが含まれ、この逆UTMPプロセスを実施しているとき、濾過膜の浸透液側と未透過液側における入口から出口に向かう軸方向の流れを維持し、ここで、逆UTMPプロセスを実施しているときの入口と出口における濾過膜の浸透液側と未透過液側の圧力差を実質的に一定にする、請求項1に記載の濾過方法。
【請求項6】
逆UTMPプロセスを定期的に約1分から6時間おきに1秒間から60秒間行い、逆UTMPプロセスと逆UTMPプロセスの間に分離モードでの操業を行う、請求項5に記載の濾過方法。
【請求項7】
前記濾過膜が螺旋状濾過膜である、請求項6に記載の濾過方法。
【請求項8】
向かい合う浸透液側と未透過液側とを有する濾過膜と、入口及び出口と、軸方向に沿って濾過膜の未透過液側を入口から出口に向け流れる供給流と、軸方向に沿って濾過膜の浸透液側を入口から出口に向け流れる浸透液流と、並流浸透液再循環流を濾過膜モジュールに供給する再循環ループとを備える螺旋状濾過膜モジュールを準備するステップと;
浸透液流の流量を調整して、濾過膜の浸透液側と未透過液側の入口及び出口におけるベースライン圧力の差が実質的に一定になるように、濾過膜の浸透液側と未透過液側の入口及び出口におけるベースライン圧力を設定するステップであって、濾過膜の浸透液側の入口のベースライン圧力が出口のベースライン圧力より高く、濾過膜の未透過液側の入口のベースライン圧力が出口のベースライン圧力より高いステップとを含む、濾過方法。
【請求項9】
濾過膜モジュールの浸透液側に少なくとも1の流動抵抗部材が設けられ、流動抵抗部材を通過する浸透液の流れと流量が、制御された圧力勾配を生じるようにして変化させられる、請求項8に記載の濾過方法。
【請求項10】
さらに、濾過膜の浸透液側の圧力を定期的に調整して、入口及び出口における浸透液側と未透過液側の圧力の差を、ベースライン圧力の差に対し少なくとも50%以下になるように低下させるステップが含まれる、請求項8に記載の濾過方法。
【請求項11】
濾過膜の浸透液側の圧力の前記定期的な調整を約1分から30分おきに約1秒間から10秒間行い、定期的調整と定期的調整の間に分離モードでの操業を行う、請求項10に記載の濾過方法。
【請求項12】
濾過膜の浸透液側の圧力を定期的に低下させるとき、濾過膜の浸透液側と未透過液側の入口と出口における圧力の差が実質的にゼロになるように調整する、請求項10に記載の濾過方法。
【請求項13】
さらに、浸透液の圧力を上げるか、または未透過液の圧力を下げることによって、濾過膜の未透過液側の圧力に対し浸透液側の圧力を制御可能な範囲で高くして、濾過膜を通るバックフローを生じさせる逆膜透過差圧(rUTMP)プロセスを濾過膜の浸透液側について定期的に行うステップが含まれ、この逆UTMPプロセスを実施しているとき、濾過膜の浸透液側と未透過液側における入口から出口に向かう軸方向の流れを維持し、ここで、逆UTMPプロセスを実施しているときの入口と出口における濾過膜の浸透液側と未透過液側の圧力差を実質的に一定にする、請求項8に記載の濾過方法。
【請求項14】
前記流動抵抗部材が、一体のテーパー形状挿入部材、浸透液が流れる回収チューブ内の内部スペースに充填された多孔質媒体、浸透液が流れる回収チューブ内に設けられたスタティックミキサー、浸透液が流れる回収チューブの内壁から半径方向内側に延び出す少なくとも1のバッフルから成る群から選択される、請求項9に記載の濾過方法。
【請求項15】
前記流動抵抗部材が、一体のテーパー形状挿入部材である、請求項9に記載の濾過方法。
【請求項16】
流動抵抗部材が、回収チューブ内において流動抵抗部材と回収チューブの内壁との間に介在する少なくとも1の弾性シールリングによって保持された一体のテーパー形状挿入部材であり、前記テーパー形状挿入部材には弾性シールリングの下に延在する少なくとも1の溝が含まれ、この溝により流体が弾性シールリングの下を通って一体のテーパー形状挿入部材の外面に沿って流動することができる、請求項9に記載の濾過方法。
【請求項17】
向かい合う浸透液側と未透過液側とを有する濾過膜と、入口及び出口と、軸方向に沿って濾過膜の未透過液側を入口から出口に向け流れる供給流と、軸方向に沿って濾過膜の浸透液側を入口から出口に向け流れる浸透液流と、並流浸透液再循環流を濾過膜モジュールに供給する浸透液再循環ループとを備える濾過膜モジュールを準備するステップと;
入口と出口における濾過膜の浸透液側と未透過液側の圧力差が実質的に同じになるように浸透液流の流量を調整するステップであって、濾過膜の浸透液側の入口の圧力の方が出口の圧力より高く、濾過膜の未透過液側の入口の圧力の方が出口の圧力より高いステップと;
浸透液の圧力を上げるか、または未透過液の圧力を下げることによって、濾過膜の未透過液側の圧力に対し浸透液側の圧力を制御可能な範囲で高くして、濾過膜を通るバックフローを生じさせる逆UTMPプロセスを濾過膜の浸透液について定期的に行うステップであって、この逆UTMPプロセスを実施しているとき濾過膜の浸透液側と未透過液側における入口から出口に向かう軸方向の流れを維持し、ここで、逆UTMPプロセスを実施しているときの入口と出口における濾過膜の浸透液側と未透過液側の圧力差を実質的に一定にするステップとを含む濾過方法。
【請求項18】
前記濾過膜が螺旋状濾過膜である、請求項17に記載の濾過方法。
【請求項19】
濾過処理される流体を螺旋状濾過膜によって浸透液と未透過液とに分離する濾過方法であって、
(f)分離処理する供給液を所定の流量で供給液入口に流入させ、螺旋状濾過膜の未透過液側を加圧下で軸方向に流動させ、螺旋状濾過膜モジュールの未透過液流路を通して第1流動方向に流動させるステップと、
(g)螺旋状濾過膜モジュールの未透過液出口から、軸方向に流動する未透過液を排出するステップと、
(h)濾過膜の透過液側の反対側である浸透液側にある浸透液流路内を半径方向に流れる浸透液を、浸透液流路と液流通可能で、少なくとも1の流動抵抗部材を有する浸透液回収チューブに回収するステップと、
(i)回収した浸透液を中央浸透液回収チューブから浸透液出口へ向けて流し、螺旋状濾過膜モジュールから排出させるステップと、
(j)浸透液回収チューブから排出された浸透液の一部を、所定の浸透液流量で浸透液入口へ送り返すステップと、
(f)浸透液の流量を調整して、濾過膜の浸透液側と未透過液側の入口及び出口におけるベースライン圧力の差が実質的に一定になるように、濾過膜の浸透液側と未透過液側の入口及び出口のベースライン圧力を設定するステップであって、濾過膜の浸透液側の入口のベースライン圧力が出口のベースライン圧力より高く、濾過膜の未透過液側の入口のベースライン圧力が出口のベースライン圧力より高いステップとからなる濾過方法。
【請求項20】
さらに、(g) 濾過膜の浸透液側の圧力を定期的に調整して、入口及び出口における浸透液側と未透過液側の圧力の差を、浸透液側と未透過液側のベースライン圧力の差に対し少なくとも50%以下になるように低下させるステップを含む、請求項19に記載の濾過方法。
【請求項21】
濾過膜の浸透液側の圧力の前記定期的な調整を約1分から6時間おきに約1秒間から60秒間行い、定期的調整と定期的調整の間に分離モードでの操業を行う、請求項20に記載の濾過方法。
【請求項22】
濾過膜の浸透液側の圧力を定期的に低下させるとき、濾過膜の浸透液側と未透過液側の入口と出口における圧力の差が実質的にゼロになるように調整する、請求項20に記載の濾過方法。
【請求項23】
さらに、(g)浸透液の圧力を上げるか、または未透過液の圧力を下げることによって、濾過膜の未透過液側の圧力に対し浸透液側の圧力を制御可能な範囲で高くして、濾過膜を通るバックフローを生じさせる逆UTMPプロセスを、浸透液側について定期的に行うことが含まれ、この逆UTMPプロセスを実施しているとき濾過膜の浸透液側と未透過液側における入口から出口に向かう軸方向の流れを維持し、ここで、逆UTMPプロセスを実施しているときの濾過膜の浸透液側と未透過液側の入口と出口における圧力差を実質的に一定にするステップが含まれる、請求項19に記載の濾過方法。
【請求項24】
逆UTMPプロセスを定期的に約1分から6時間おきに1秒間から60秒間行い、逆UTMPプロセスと逆UTMPプロセスの間に分離モードでの操業を行う、請求項23に記載の濾過方法。
【請求項25】
逆UTMPプロセスの間、濾過膜の全長にわたって、膜透過差圧(TMP) の変動幅が濾過膜の軸方向両端におけるTMP値に対して40%未満である、請求項23に記載の濾過方法。
【請求項26】
逆UTMPプロセスの間、未透過液流路と浸透液流路が、約0.1から約10barの加圧下に継続的に保たれる、請求項23に記載の濾過方法。
【請求項27】
流動抵抗部材が、ビーズ及び発泡体から選択される多孔質媒体である、請求項19に記載の濾過方法。
【請求項28】
流動抵抗部材が、球状のポリマー製のビーズである、請求項19に記載の濾過方法。
【請求項29】
流動抵抗部材が、スタティックミキサーである、請求項19に記載の濾過方法。
【請求項30】
前記濾過膜が、PVDF、ポリスルホン、またはポリエーテルスルホン製の濾過膜のいずれかであり、濾過膜の孔径が約0.005から約5ミクロンである、請求項19に記載の濾過方法。
【請求項31】
前記濾過膜が、ポリスルホンまたはポリエーテルスルホン製の濾過膜のいずれかであり、濾過膜の孔径が約0.005から約2ミクロンである、請求項19に記載の濾過方法。
【請求項32】
供給液流に、ポリペプチド、核酸、糖タンパク質、または生体高分子のいずれかが含まれる、請求項19に記載の濾過方法。
【請求項33】
供給液流に、細菌性生産生命体に由来する発酵製品が含まれる、請求項19に記載の濾過方法。
【請求項34】
細菌性生産生命体が、バシラス属、エシェリキア属、パンテア属、ストレプトミセス属、シュードモナス属から成る群から選択される、請求項33に記載の濾過方法。
【請求項35】
供給液流には真菌性生産宿主に由来する発酵製品が含まれる、請求項19に記載の濾過方法。
【請求項36】
真菌性生産宿主が、アスペルギルス属、トリコデルマ属、シゾサッカロミセス属、サッカロミセス属、フザリウム属、フミコーラ属、ムコール属、クリベロマイセス属、ヤロウイア属、アクレモニウム属、ニューロスポラ属、ペニシリウム属、マイセリオフトラ属、及びチエラビア属から成る群から選択される、請求項35に記載の濾過方法。
【請求項37】
供給液にプロテアーゼが含まれ、約15℃未満に保たれた温度において濾過が行われる、請求項19に記載の濾過方法。
【請求項38】
供給液にアミラーゼが含まれ、約55℃未満に保たれた温度において濾過が行われる、請求項19に記載の濾過方法。
【請求項39】
濾過システムであって、
(b)螺旋状濾過膜モジュールであって、螺旋状濾過膜と;
濾過膜の未透過液側に延在し、供給液入口から供給液が流入し、未透過液が濾過膜の未透過液側を軸方向に流れて未透過液出口を経て螺旋状濾過膜モジュールから排出される未透過液流路と;
濾過膜の未透過液側とは反対側の浸透液側にあって、濾過膜を通過する浸透液を半径方向に流動させて中央浸透液回収チューブまで流動させる浸透液流路を有し、浸透液流路と浸透液回収チューブは液流通可能であり、回収チューブが少なくとも1の流動抵抗部材を有するとともに、回収された浸透液を流動させる流路を形成して、回収された浸透液を浸透液出口を経て螺旋状濾過膜モジュールから排出し、さらに、回収チューブが、排出された浸透液の少なくとも一部を送り返して回収チューブへ導入するための浸透液入口を有する構成の浸透液流路とを備える螺旋状濾過膜モジュールと;
(b)回収チューブから排出された浸透液の少なくとも一部を制御可能な流量で回収チューブの浸透液入口へ送り返す浸透液ポンプと;
(c)供給液を制御可能な流量で供給液入口へ供給する供給液ポンプであって、浸透液ポンプと相互制御される供給液ポンプと;
(d)浸透液ポンプと供給液ポンプを相互制御する制御装置であって、螺旋状濾過膜モジュールに供給される浸透液の流量と各供給液の流量とを相互制御することにより生産中に分離モードと付着汚れ除去モードとを交互に実施可能で、分離モード及び付着汚れ除去モードを実施しているとき濾過膜の軸方向に沿って実質的に均一な膜透過差圧を保つことができる制御装置とを備える濾過システム
【請求項40】
さらに、(e)浸透液流路と液流通可能な加圧水ラインを備える、請求項39に記載の濾過システム。
【請求項41】
さらに、螺旋状濾過膜モジュールに、第1軸端及び第2軸端を備え、中央浸透液回収チューブが設けられる環状スペースを画成するハウジングと;浸透液回収チューブの周囲に巻回される濾過膜シートであって、半浸透性濾過膜シートの間に挟みこまれ、半径方向流路としての浸透液流路を形成する多孔質濾過部材と;巻回される濾過膜シートの間に配置して未透過液流路を画成させるためのスペーサとが設けられ、
濾過膜シートの外側軸方向縁及び両側縁がシールされ、濾過膜シートの内側軸方向縁と浸透液回収チューブとの間で浸透液が流通可能である、請求項39に記載の濾過システム。
【請求項42】
さらに、浸透液ポンプと供給液ポンプとが、未透過液と浸透液流路において軸方向への流動を維持しながら、定期的に濾過膜の浸透液側を未透過液側に対し加圧して浸透液側から未透過液側へ濾過膜を通過するバックフローを生じさせるように制御可能である、請求項39に記載の濾過システム。
【請求項43】
浸透液ポンプは排出された浸透液を一定速度で浸透液入口へ送り返す様に制御可能であり、一方供給液ポンプは供給速度を低下させるように制御可能である、請求項42に記載の濾過システム。
【請求項44】
前記流動抵抗部材が、一体のテーパー形状挿入部材、浸透液が流れる回収チューブ内の内部スペースに充填された多孔質媒体、浸透液が流れる回収チューブ内に設けられたスタティックミキサー、浸透液が流れる回収チューブの内壁から半径方向内側に延び出す少なくとも1のバッフルから成る群から選択される、請求項39に記載の濾過システム。
【請求項45】
前記流動抵抗部材が、一体のテーパー形状挿入部材である、請求項39に記載の濾過システム。
【請求項46】
流動抵抗部材が、回収チューブ内において流動抵抗部材と回収チューブの内壁との間に介在する少なくとも1の弾性シールリングによって保持された一体のテーパー形状挿入部材であり、前記テーパー形状挿入部材には弾性シールリングの下に延在する少なくとも1の溝が含まれ、この溝により流体が弾性シールリングの下を通って一体のテーパー形状挿入部材の外面に沿って流動することができる、請求項39に記載の濾過システム。
【請求項47】
濾過膜の孔径が約0.005から約5ミクロンである、請求項39に記載の濾過システム。
【請求項48】
前記濾過膜が、PVDF、ポリスルホン、またはポリエーテルスルホン製の濾過膜のいずれかである、請求項39に記載の濾過システム。
【請求項1】
向かい合う浸透液側と未透過液側とを有する濾過膜と、入口及び出口と、軸方向に沿って濾過膜の未透過液側を入口から出口に向け流れる供給流と、軸方向に沿って濾過膜の浸透液側を入口から出口に向け流れる浸透液流と、並流浸透液再循環流を濾過膜モジュールに供給する浸透液再循環ループとを備える濾過膜モジュールを準備するステップと;
濾過膜の浸透液側または未透過液側の流量または圧力を調整して、濾過膜の浸透液側と未透過液側の入口及び出口におけるベースライン圧力の差が実質的に一定になるように、濾過膜の浸透液側と未透過液側の入口及び出口のベースライン圧力を設定するステップであって、濾過膜の浸透液側の入口のベースライン圧力が出口のベースライン圧力より高く、濾過膜の未透過液側の入口のベースライン圧力が出口のベースライン圧力より高いステップと;
濾過膜の浸透液側の圧力を定期的に調整し、浸透液側と未透過液側の入口及び出口における圧力の差を、前記ベースライン圧力の差に対し少なくとも50%以下になるように低下させるステップとを含む、濾過方法。
【請求項2】
濾過膜の浸透液側の圧力の前記定期的な調整を約1分から6時間おきに約1秒間から60秒間行い、定期的調整と定期的調整の間に分離モードでの操業を行う、請求項1に記載の濾過方法。
【請求項3】
濾過膜の浸透液側の圧力を定期的に低下させるとき、濾過膜の浸透液側と未透過液側の入口と出口における圧力の差が実質的にゼロになるように調整する、請求項1に記載の濾過方法。
【請求項4】
前記濾過膜が螺旋状濾過膜である、請求項1に記載の濾過方法。
【請求項5】
さらに、浸透液の圧力を上げるか、または未透過液の圧力を下げることによって、定期的に濾過膜の未透過液側の圧力に対し浸透液側の圧力を制御可能な範囲で高くして、濾過膜を通るバックフローを生じさせる逆膜透過差圧(rUTMP)プロセスを行うステップが含まれ、この逆UTMPプロセスを実施しているとき、濾過膜の浸透液側と未透過液側における入口から出口に向かう軸方向の流れを維持し、ここで、逆UTMPプロセスを実施しているときの入口と出口における濾過膜の浸透液側と未透過液側の圧力差を実質的に一定にする、請求項1に記載の濾過方法。
【請求項6】
逆UTMPプロセスを定期的に約1分から6時間おきに1秒間から60秒間行い、逆UTMPプロセスと逆UTMPプロセスの間に分離モードでの操業を行う、請求項5に記載の濾過方法。
【請求項7】
前記濾過膜が螺旋状濾過膜である、請求項6に記載の濾過方法。
【請求項8】
向かい合う浸透液側と未透過液側とを有する濾過膜と、入口及び出口と、軸方向に沿って濾過膜の未透過液側を入口から出口に向け流れる供給流と、軸方向に沿って濾過膜の浸透液側を入口から出口に向け流れる浸透液流と、並流浸透液再循環流を濾過膜モジュールに供給する再循環ループとを備える螺旋状濾過膜モジュールを準備するステップと;
浸透液流の流量を調整して、濾過膜の浸透液側と未透過液側の入口及び出口におけるベースライン圧力の差が実質的に一定になるように、濾過膜の浸透液側と未透過液側の入口及び出口におけるベースライン圧力を設定するステップであって、濾過膜の浸透液側の入口のベースライン圧力が出口のベースライン圧力より高く、濾過膜の未透過液側の入口のベースライン圧力が出口のベースライン圧力より高いステップとを含む、濾過方法。
【請求項9】
濾過膜モジュールの浸透液側に少なくとも1の流動抵抗部材が設けられ、流動抵抗部材を通過する浸透液の流れと流量が、制御された圧力勾配を生じるようにして変化させられる、請求項8に記載の濾過方法。
【請求項10】
さらに、濾過膜の浸透液側の圧力を定期的に調整して、入口及び出口における浸透液側と未透過液側の圧力の差を、ベースライン圧力の差に対し少なくとも50%以下になるように低下させるステップが含まれる、請求項8に記載の濾過方法。
【請求項11】
濾過膜の浸透液側の圧力の前記定期的な調整を約1分から30分おきに約1秒間から10秒間行い、定期的調整と定期的調整の間に分離モードでの操業を行う、請求項10に記載の濾過方法。
【請求項12】
濾過膜の浸透液側の圧力を定期的に低下させるとき、濾過膜の浸透液側と未透過液側の入口と出口における圧力の差が実質的にゼロになるように調整する、請求項10に記載の濾過方法。
【請求項13】
さらに、浸透液の圧力を上げるか、または未透過液の圧力を下げることによって、濾過膜の未透過液側の圧力に対し浸透液側の圧力を制御可能な範囲で高くして、濾過膜を通るバックフローを生じさせる逆膜透過差圧(rUTMP)プロセスを濾過膜の浸透液側について定期的に行うステップが含まれ、この逆UTMPプロセスを実施しているとき、濾過膜の浸透液側と未透過液側における入口から出口に向かう軸方向の流れを維持し、ここで、逆UTMPプロセスを実施しているときの入口と出口における濾過膜の浸透液側と未透過液側の圧力差を実質的に一定にする、請求項8に記載の濾過方法。
【請求項14】
前記流動抵抗部材が、一体のテーパー形状挿入部材、浸透液が流れる回収チューブ内の内部スペースに充填された多孔質媒体、浸透液が流れる回収チューブ内に設けられたスタティックミキサー、浸透液が流れる回収チューブの内壁から半径方向内側に延び出す少なくとも1のバッフルから成る群から選択される、請求項9に記載の濾過方法。
【請求項15】
前記流動抵抗部材が、一体のテーパー形状挿入部材である、請求項9に記載の濾過方法。
【請求項16】
流動抵抗部材が、回収チューブ内において流動抵抗部材と回収チューブの内壁との間に介在する少なくとも1の弾性シールリングによって保持された一体のテーパー形状挿入部材であり、前記テーパー形状挿入部材には弾性シールリングの下に延在する少なくとも1の溝が含まれ、この溝により流体が弾性シールリングの下を通って一体のテーパー形状挿入部材の外面に沿って流動することができる、請求項9に記載の濾過方法。
【請求項17】
向かい合う浸透液側と未透過液側とを有する濾過膜と、入口及び出口と、軸方向に沿って濾過膜の未透過液側を入口から出口に向け流れる供給流と、軸方向に沿って濾過膜の浸透液側を入口から出口に向け流れる浸透液流と、並流浸透液再循環流を濾過膜モジュールに供給する浸透液再循環ループとを備える濾過膜モジュールを準備するステップと;
入口と出口における濾過膜の浸透液側と未透過液側の圧力差が実質的に同じになるように浸透液流の流量を調整するステップであって、濾過膜の浸透液側の入口の圧力の方が出口の圧力より高く、濾過膜の未透過液側の入口の圧力の方が出口の圧力より高いステップと;
浸透液の圧力を上げるか、または未透過液の圧力を下げることによって、濾過膜の未透過液側の圧力に対し浸透液側の圧力を制御可能な範囲で高くして、濾過膜を通るバックフローを生じさせる逆UTMPプロセスを濾過膜の浸透液について定期的に行うステップであって、この逆UTMPプロセスを実施しているとき濾過膜の浸透液側と未透過液側における入口から出口に向かう軸方向の流れを維持し、ここで、逆UTMPプロセスを実施しているときの入口と出口における濾過膜の浸透液側と未透過液側の圧力差を実質的に一定にするステップとを含む濾過方法。
【請求項18】
前記濾過膜が螺旋状濾過膜である、請求項17に記載の濾過方法。
【請求項19】
濾過処理される流体を螺旋状濾過膜によって浸透液と未透過液とに分離する濾過方法であって、
(f)分離処理する供給液を所定の流量で供給液入口に流入させ、螺旋状濾過膜の未透過液側を加圧下で軸方向に流動させ、螺旋状濾過膜モジュールの未透過液流路を通して第1流動方向に流動させるステップと、
(g)螺旋状濾過膜モジュールの未透過液出口から、軸方向に流動する未透過液を排出するステップと、
(h)濾過膜の透過液側の反対側である浸透液側にある浸透液流路内を半径方向に流れる浸透液を、浸透液流路と液流通可能で、少なくとも1の流動抵抗部材を有する浸透液回収チューブに回収するステップと、
(i)回収した浸透液を中央浸透液回収チューブから浸透液出口へ向けて流し、螺旋状濾過膜モジュールから排出させるステップと、
(j)浸透液回収チューブから排出された浸透液の一部を、所定の浸透液流量で浸透液入口へ送り返すステップと、
(f)浸透液の流量を調整して、濾過膜の浸透液側と未透過液側の入口及び出口におけるベースライン圧力の差が実質的に一定になるように、濾過膜の浸透液側と未透過液側の入口及び出口のベースライン圧力を設定するステップであって、濾過膜の浸透液側の入口のベースライン圧力が出口のベースライン圧力より高く、濾過膜の未透過液側の入口のベースライン圧力が出口のベースライン圧力より高いステップとからなる濾過方法。
【請求項20】
さらに、(g) 濾過膜の浸透液側の圧力を定期的に調整して、入口及び出口における浸透液側と未透過液側の圧力の差を、浸透液側と未透過液側のベースライン圧力の差に対し少なくとも50%以下になるように低下させるステップを含む、請求項19に記載の濾過方法。
【請求項21】
濾過膜の浸透液側の圧力の前記定期的な調整を約1分から6時間おきに約1秒間から60秒間行い、定期的調整と定期的調整の間に分離モードでの操業を行う、請求項20に記載の濾過方法。
【請求項22】
濾過膜の浸透液側の圧力を定期的に低下させるとき、濾過膜の浸透液側と未透過液側の入口と出口における圧力の差が実質的にゼロになるように調整する、請求項20に記載の濾過方法。
【請求項23】
さらに、(g)浸透液の圧力を上げるか、または未透過液の圧力を下げることによって、濾過膜の未透過液側の圧力に対し浸透液側の圧力を制御可能な範囲で高くして、濾過膜を通るバックフローを生じさせる逆UTMPプロセスを、浸透液側について定期的に行うことが含まれ、この逆UTMPプロセスを実施しているとき濾過膜の浸透液側と未透過液側における入口から出口に向かう軸方向の流れを維持し、ここで、逆UTMPプロセスを実施しているときの濾過膜の浸透液側と未透過液側の入口と出口における圧力差を実質的に一定にするステップが含まれる、請求項19に記載の濾過方法。
【請求項24】
逆UTMPプロセスを定期的に約1分から6時間おきに1秒間から60秒間行い、逆UTMPプロセスと逆UTMPプロセスの間に分離モードでの操業を行う、請求項23に記載の濾過方法。
【請求項25】
逆UTMPプロセスの間、濾過膜の全長にわたって、膜透過差圧(TMP) の変動幅が濾過膜の軸方向両端におけるTMP値に対して40%未満である、請求項23に記載の濾過方法。
【請求項26】
逆UTMPプロセスの間、未透過液流路と浸透液流路が、約0.1から約10barの加圧下に継続的に保たれる、請求項23に記載の濾過方法。
【請求項27】
流動抵抗部材が、ビーズ及び発泡体から選択される多孔質媒体である、請求項19に記載の濾過方法。
【請求項28】
流動抵抗部材が、球状のポリマー製のビーズである、請求項19に記載の濾過方法。
【請求項29】
流動抵抗部材が、スタティックミキサーである、請求項19に記載の濾過方法。
【請求項30】
前記濾過膜が、PVDF、ポリスルホン、またはポリエーテルスルホン製の濾過膜のいずれかであり、濾過膜の孔径が約0.005から約5ミクロンである、請求項19に記載の濾過方法。
【請求項31】
前記濾過膜が、ポリスルホンまたはポリエーテルスルホン製の濾過膜のいずれかであり、濾過膜の孔径が約0.005から約2ミクロンである、請求項19に記載の濾過方法。
【請求項32】
供給液流に、ポリペプチド、核酸、糖タンパク質、または生体高分子のいずれかが含まれる、請求項19に記載の濾過方法。
【請求項33】
供給液流に、細菌性生産生命体に由来する発酵製品が含まれる、請求項19に記載の濾過方法。
【請求項34】
細菌性生産生命体が、バシラス属、エシェリキア属、パンテア属、ストレプトミセス属、シュードモナス属から成る群から選択される、請求項33に記載の濾過方法。
【請求項35】
供給液流には真菌性生産宿主に由来する発酵製品が含まれる、請求項19に記載の濾過方法。
【請求項36】
真菌性生産宿主が、アスペルギルス属、トリコデルマ属、シゾサッカロミセス属、サッカロミセス属、フザリウム属、フミコーラ属、ムコール属、クリベロマイセス属、ヤロウイア属、アクレモニウム属、ニューロスポラ属、ペニシリウム属、マイセリオフトラ属、及びチエラビア属から成る群から選択される、請求項35に記載の濾過方法。
【請求項37】
供給液にプロテアーゼが含まれ、約15℃未満に保たれた温度において濾過が行われる、請求項19に記載の濾過方法。
【請求項38】
供給液にアミラーゼが含まれ、約55℃未満に保たれた温度において濾過が行われる、請求項19に記載の濾過方法。
【請求項39】
濾過システムであって、
(b)螺旋状濾過膜モジュールであって、螺旋状濾過膜と;
濾過膜の未透過液側に延在し、供給液入口から供給液が流入し、未透過液が濾過膜の未透過液側を軸方向に流れて未透過液出口を経て螺旋状濾過膜モジュールから排出される未透過液流路と;
濾過膜の未透過液側とは反対側の浸透液側にあって、濾過膜を通過する浸透液を半径方向に流動させて中央浸透液回収チューブまで流動させる浸透液流路を有し、浸透液流路と浸透液回収チューブは液流通可能であり、回収チューブが少なくとも1の流動抵抗部材を有するとともに、回収された浸透液を流動させる流路を形成して、回収された浸透液を浸透液出口を経て螺旋状濾過膜モジュールから排出し、さらに、回収チューブが、排出された浸透液の少なくとも一部を送り返して回収チューブへ導入するための浸透液入口を有する構成の浸透液流路とを備える螺旋状濾過膜モジュールと;
(b)回収チューブから排出された浸透液の少なくとも一部を制御可能な流量で回収チューブの浸透液入口へ送り返す浸透液ポンプと;
(c)供給液を制御可能な流量で供給液入口へ供給する供給液ポンプであって、浸透液ポンプと相互制御される供給液ポンプと;
(d)浸透液ポンプと供給液ポンプを相互制御する制御装置であって、螺旋状濾過膜モジュールに供給される浸透液の流量と各供給液の流量とを相互制御することにより生産中に分離モードと付着汚れ除去モードとを交互に実施可能で、分離モード及び付着汚れ除去モードを実施しているとき濾過膜の軸方向に沿って実質的に均一な膜透過差圧を保つことができる制御装置とを備える濾過システム
【請求項40】
さらに、(e)浸透液流路と液流通可能な加圧水ラインを備える、請求項39に記載の濾過システム。
【請求項41】
さらに、螺旋状濾過膜モジュールに、第1軸端及び第2軸端を備え、中央浸透液回収チューブが設けられる環状スペースを画成するハウジングと;浸透液回収チューブの周囲に巻回される濾過膜シートであって、半浸透性濾過膜シートの間に挟みこまれ、半径方向流路としての浸透液流路を形成する多孔質濾過部材と;巻回される濾過膜シートの間に配置して未透過液流路を画成させるためのスペーサとが設けられ、
濾過膜シートの外側軸方向縁及び両側縁がシールされ、濾過膜シートの内側軸方向縁と浸透液回収チューブとの間で浸透液が流通可能である、請求項39に記載の濾過システム。
【請求項42】
さらに、浸透液ポンプと供給液ポンプとが、未透過液と浸透液流路において軸方向への流動を維持しながら、定期的に濾過膜の浸透液側を未透過液側に対し加圧して浸透液側から未透過液側へ濾過膜を通過するバックフローを生じさせるように制御可能である、請求項39に記載の濾過システム。
【請求項43】
浸透液ポンプは排出された浸透液を一定速度で浸透液入口へ送り返す様に制御可能であり、一方供給液ポンプは供給速度を低下させるように制御可能である、請求項42に記載の濾過システム。
【請求項44】
前記流動抵抗部材が、一体のテーパー形状挿入部材、浸透液が流れる回収チューブ内の内部スペースに充填された多孔質媒体、浸透液が流れる回収チューブ内に設けられたスタティックミキサー、浸透液が流れる回収チューブの内壁から半径方向内側に延び出す少なくとも1のバッフルから成る群から選択される、請求項39に記載の濾過システム。
【請求項45】
前記流動抵抗部材が、一体のテーパー形状挿入部材である、請求項39に記載の濾過システム。
【請求項46】
流動抵抗部材が、回収チューブ内において流動抵抗部材と回収チューブの内壁との間に介在する少なくとも1の弾性シールリングによって保持された一体のテーパー形状挿入部材であり、前記テーパー形状挿入部材には弾性シールリングの下に延在する少なくとも1の溝が含まれ、この溝により流体が弾性シールリングの下を通って一体のテーパー形状挿入部材の外面に沿って流動することができる、請求項39に記載の濾過システム。
【請求項47】
濾過膜の孔径が約0.005から約5ミクロンである、請求項39に記載の濾過システム。
【請求項48】
前記濾過膜が、PVDF、ポリスルホン、またはポリエーテルスルホン製の濾過膜のいずれかである、請求項39に記載の濾過システム。
【図1】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15A】
【図15B】
【図15C】
【図15D】
【図15E】
【図15F】
【図15G】
【図15H】
【図15I】
【図16】
【図16A】
【図16B】
【図16C】
【図16D】
【図16E】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【図45】
【図46】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15A】
【図15B】
【図15C】
【図15D】
【図15E】
【図15F】
【図15G】
【図15H】
【図15I】
【図16】
【図16A】
【図16B】
【図16C】
【図16D】
【図16E】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【図45】
【図46】
【公表番号】特表2010−538823(P2010−538823A)
【公表日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−524885(P2010−524885)
【出願日】平成20年9月12日(2008.9.12)
【国際出願番号】PCT/US2008/010737
【国際公開番号】WO2009/035700
【国際公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【出願人】(509240479)ダニスコ・ユーエス・インク (81)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年9月12日(2008.9.12)
【国際出願番号】PCT/US2008/010737
【国際公開番号】WO2009/035700
【国際公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【出願人】(509240479)ダニスコ・ユーエス・インク (81)
【Fターム(参考)】
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