説明

円型形状保持装置

【課題】盛替えを円滑に行なうことができると共に装置の信頼性も高い円型形状保持装置を提供する。
【解決手段】リング状に組み立てられた内型枠Mの底部においてピン52によりヒンジ結合されて内型枠の上部まで延びる左右一対の弧状の長尺支持フレーム53a,53bと、長尺支持フレームの上端に基端部が第1のピン54で結合すると共に先端側が内型枠の天井部において前後方向にオーバーラップして周方向の二箇所にて第2のピン55で結合し得る前後一対の弧状の短尺支持フレーム56a,56bと、第1のピンによる結合部よりそれぞれ上方に位置して両支持フレームをさらにピン結合し得る二つのストッパピン60と、二つの短尺支持フレームを個別に押上げし得る二つの押上ジャッキ66a,66bと、二つの長尺支持フレームを個別に拡張し得る二つの拡張ジャッキ67a,67bと、押上ジャッキと拡張ジャッキとのヘッド部を支持してトンネルの掘進方向に移動可能な可動フレーム61と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネル施工下における一次覆工の際に、リング状に組み立てられたセグメントや内型枠等の一次覆工材を内側から突っ張って形状を保持する円型形状保持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、シールド掘削機において、セグメント(ピース)が組み上ってセグメントリングができると、このセグメントリングを真円に保持するために形状保持装置としての真円保持装置が使用されることは良く知られている。
【0003】
従来の真円保持装置は、例えば図9に示すように、シールド掘削機の後部デッキに配置され、円弧状のセグメント支持フレーム100a,100bを上下に2本有する。この上下2本のセグメント支持フレーム100a,100bは、上下方向に伸縮する左右一対の油圧ジャッキ101a,101bで連結され、セグメントリング102の底盤部を反力受けにして天端部が保持されるようになっている(特許文献1参照)。尚、図中102はシールド掘削機のスキンプレートを示す。
【0004】
しかしながら、図9に示す真円保持装置にあっては、上下2本のセグメント支持フレーム100a,100bによりセグメントリング102の天端部及び底盤部をサポートするようになっており、セグメントリング102の全周について真円を保持するものでないため、設計通りの強度を得られないという問題点があった。図9中に距離L1及びL2で示す部位がサポートされないのである。
【0005】
そこで、近年では、特許文献1で、より正確にセグメントリングの真円を保持することを可能とする真円保持装置が提案されている。
【0006】
これは、図10に示すように、複数(図示例では3個)の弧状の部材がピン200により環状に連結されて図示しないセグメントの内空面と同じ曲率を有するセグメント支持フレーム201が前後一対設けられ、このセグメント支持フレーム201の開放端間に設けた周方向伸縮部202を伸長することにより、セグメント支持フレーム201を真円としてセグメント内空面に当接させ、反対に収縮することにより、セグメント内空面から離反させるものである。また、真円保持装置の盛替時には、セグメント内空面に沿って環状に複数(図示例では4個)配置され、両端部が前記前後一対のセグメント支持フレーム201間に連結された掘進方向伸縮部203を伸縮させることにより、所謂、尺取り虫のように前進して盛替えが行なわれるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第4034207号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、図10に示す真円保持装置にあっては、前述した真円保持装置の盛替時に、周方向伸縮部202を収縮させてセグメント支持フレーム201をセグメント内空面から離反させようとしても、セグメント支持フレーム201は構造上全周的に縮径させることはできないことから、セグメント支持フレーム201の全周を完全にセグメント内空面から離反させることは不可能である。
【0009】
従って、セグメント支持フレーム201の掘進方向の移動時には、セグメント支持フレーム201の全周をセグメント内空面から完全に浮かすことができず、互いに干渉する部位が生じることから、真円保持装置の盛替えを円滑に行なうことができないという問題点があった。
【0010】
また、図10に示す真円保持装置は周方向伸縮部202の伸長力だけでセグメント支持フレーム201の形状保持力を得ることから、その保持力に不安が有り、装置の信頼性も低いという問題点もあった。
【0011】
そこで、本発明は、盛替えを円滑に行なうことができると共に装置の信頼性も高い円型形状保持装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
斯かる目的を達成するための本発明に係る円型形状保持装置は、
トンネル施工下における一次覆工の際にリング状に組み立てられた一次覆工材を内側から突っ張って形状を保持する円型形状保持装置であって、
一次覆工材の底部においてヒンジ結合されて一次覆工材の上部まで延びる前記一次覆工材に対応した曲率を有する左右一対の長尺支持フレームと、
前記長尺支持フレームの上端に基端部が第1のピンで結合すると共に先端側が一次覆工材の天井部において前後方向にオーバーラップして周方向の二箇所にて第2のピンで結合し得る前記一次覆工材に対応した曲率を有する前後一対の短尺支持フレームと、
前記第1のピンによる結合部よりそれぞれ上方に位置して前記長尺支持フレームと短尺支持フレームとをさらにピン結合し得る二つのストッパピンと、
前記二つの短尺支持フレームを個別に押上げし得る二つの押上ジャッキと、
前記二つの長尺支持フレームを個別に拡張し得る二つの拡張ジャッキと、
前記押上ジャッキと拡張ジャッキとのヘッド部を支持してトンネルの掘進方向に移動可能な可動フレームと、
を備えたことを特徴とする。
【0013】
また、
前記可動フレームには、左右一対の支持梁ジャッキが垂設され、この支持梁ジャッキには前記ヒンジ結合された左右一対の長尺支持フレームの底部に対応した曲率を有する支持梁が支持されていることを特徴とする。
【0014】
また、
前記第1のピンは遊びを有していることを特徴とする。
【0015】
また、
前記左右一対の長尺支持フレームは前記前後一対の短尺支持フレームに対応して前後方向にずれて配設されると共に前記ヒンジ結合部においては前後方向にオーバーラップして配設され、それらの一般部における一次覆工材との接触面の幅寸法は、ヒンジ結合部やピン結合部における一次覆工材との接触面の幅寸法の倍の寸法に設定されることを特徴とする。
【0016】
また、
前記一次覆工材は、直打ちコンクリートによる覆工の際に用いられる内型枠であることを特徴とする。
【0017】
また、
前記一次覆工材は、セグメントによる覆工の際に用いられるセグメントであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る円型形状保持装置によれば、形状保持時には、一次覆工材の底部においてヒンジ結合された左右一対の長尺支持フレームとこの長尺支持フレームの上端にそれぞれ基端部が第1のピンで結合された前後一対の短尺支持フレームを、押上ジャッキと拡張ジャッキを伸長させることで、一次覆工材の内周面に押し当てることができ、これにより、一次覆工材の全周に亙ってサポートすることができ、真円保持が可能となる。
【0019】
一方、盛替え時には、前後一対の短尺支持フレームにおける第2のピンを取り外した状態で、一次覆工材の底部においてヒンジ結合された左右一対の長尺支持フレームとこの長尺支持フレームの上端にそれぞれ基端部が第1のピンで結合された前後一対の短尺支持フレームを、押上ジャッキと拡張ジャッキを収縮させることで一次覆工材の内方へ変位(縮径)させ、この後、長尺支持フレームの上端と短尺支持フレームの基端部を第1のピンに加えてストッパピンでも結合してから押上ジャッキを伸長させることで、左右一対の長尺支持フレームとこの長尺支持フレームにそれぞれ剛に連結した前後一対の短尺支持フレームが一次覆工材の内周面から完全に離反させられる。これにより、盛替えを円滑に行なうことができると共に、二本の押上ジャッキで押上げ力を分担するので装置の信頼性も高い。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施例を示す泥土圧式シールド掘削機の概略構成図である。
【図2】泥土圧式シールド掘削機の背面図である。
【図3】円型形状保持装置の説明図で、図3の(a)は図2のA矢視図、図3の(b)は図2のB矢視図、図3の(c)は図2のC矢視図である。
【図4】円型形状保持装置の説明図で、図4の(a)は図2のD−D断面図、図4の(b)は図2のE−E断面図である。
【図5】円型形状保持装置の盛替え時の動作説明図である。
【図6】円型形状保持装置の盛替え時の動作説明図である。
【図7】円型形状保持装置の盛替え時の動作説明図である。
【図8】円型形状保持装置の盛替え時の動作説明図である。
【図9】従来の真円保持装置の背面図である。
【図10】従来の異なった真円保持装置の背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る円型形状保持装置を実施例により図面を用いて詳細に説明する。
【実施例】
【0022】
図1は本発明の一実施例を示す泥土圧式シールド掘削機の概略構成図、図2は泥土圧式シールド掘削機の背面図、図3及び図4は円型形状保持装置の説明図、図5乃至図8は円型形状保持装置の盛替え時の動作説明図である。
【0023】
本実施例で説明するトンネル掘削機は、掘削土砂をチャンバに充満させ、チャンバ内を所定の圧力に維持しながら排土することで、切羽の安定化を図りながらトンネルを構築する泥土圧式シールド掘削機で、覆工方法として直打ちでコンクリートを打設し、その養生・硬化を待って覆工を行なう、所謂ECL(Excluded Concrete Lining)工法を採用したものである。
【0024】
この泥土圧式シールド掘削機において、図1に示すように、掘削機本体11は、ほぼ同径の円筒形状をなす前胴12と後胴13とが連結軸14によって左右に屈曲自在に連結され、両者の間に架設された複数本の中折ジャッキ15によって屈曲可能となっている。この前胴12の前部には回転リング16が回転自在に支持され、この回転リング16には連結ビーム17を介してカッタヘッド18が連結されている。
【0025】
このカッタヘッド18は、中心部から複数本のカッタスポーク19が放射状をなして配設され、各先端部が外周リング20によって連結されて構成されている。そして、カッタヘッド18の中心部にはフィッシュテールカッタ21が装着される一方、各カッタスポーク19の両側部には複数のカッタビット22がその長手方向に沿って装着され、所定のカッタスポーク19の先端部には余掘りを行うコピーカッタ23aとレスキュービット23bが出没自在に設けられている。
【0026】
また、回転リング16の後部にはリングギア24が固定される一方、掘削機本体11の前胴12には複数のカッタ旋回モータ(駆動手段)25が装着されており、この各カッタ旋回モータ25の駆動ギア26がこのリングギア24にそれぞれ噛み合っている。従って、カッタ旋回モータ25を駆動して駆動ギア26を回転駆動すると、リングギア24、回転リング16、連結ビーム17を介してカッタヘッド18を回転することができる。
【0027】
また、前胴12の前部には、カッタヘッド18の後方に位置してバルクヘッド27が設けられ、カッタヘッド18とこのバルクヘッド27との間に掘削土砂を充満させるチャンバ28が形成されている。バルクヘッド27の前面側には複数本の固定式攪拌棒29が突設される一方、カッタヘッド18の後面側には複数本の旋回式攪拌棒30が突設されている。固定式攪拌棒29の一部にチャンバ28内の掘削土砂に対して加泥材を注入する図示しない加泥材注入口が設けられると共に、薬液(固結材)を注入する図示しない薬液注入管が設けられている。そして、掘削機本体11内には、掘削土砂を外部に搬出するためのスクリューコンベヤ33が配設されており、前部が下方に傾斜してバルクヘッド27を貫通してチャンバ28内に開口している。
【0028】
掘削機本体11の後胴13には、その内周面に沿ってリングガータ34が固定されており、このリングガータ34には複数本のシールドジャッキ(推進ジャッキ)35が後胴13の周方向に沿って装着されており、このシールドジャッキ35を後方に伸長して内型枠押し当て用のスプレッダ36を既設の内型枠Mに押し付けることで、その反力により掘削機本体11が前進することができる。
【0029】
この内型枠Mは、複数個のものがトンネルの内壁面(地山Gの周壁)に所定の間隔を空けて周方向にリング状に組み付けられるものであり、この組付後に、地山Gの周壁とリング状に組み立てられた内型枠Mの外周面との空間(コンクリート打設空間E)に後述するコンクリート打設装置により直打ちでコンクリートが打設されることで、直打ちコンクリートによる覆工のトンネルが構築される。また、内型枠Mはトンネルの長手方向へ複数段に亙って組み付けられる。
【0030】
また、リングガータ34には旋回リング38がトンネル内壁面の周方向に沿って旋回自在に支持され、図示しない駆動モータにより駆動旋回可能となっており、この旋回リング38に内型枠Mを組み立てるエレクタ39が設けられている。さらに、リングガータ34には左右一対の支柱40が固定され、この支柱40からは後方に向かってほぼ水平な架台41が延設されており、この架台41には内型枠Mの組立てを補助するための後述する円型形状保持装置50が作業者用旋回リング51と共に前後方向(トンネルの掘進方向)へ移動自在に装着されている。
【0031】
また、架台41の後端には図示しない複数台の搬送台車が連結され、これら搬送台車には後段の内型枠Mを脱型する内型枠脱型装置と、この内型枠脱型装置で脱型された内型枠Mをトンネル前方へ搬送するホイスト42(図2参照)と、コンクリート打設装置のパワーユニット等が搭載されている。
【0032】
更に、後胴(スキンプレート)13と内型枠Mとの間には同内型枠Mと地山Gの周壁との間にコンクリート打設空間Eを形成するリング状の妻型枠43が配設されると共に、その前方に位置して複数本の妻型枠ジャッキ44が周方向に沿って並設され、ヘッド基端部がリングガータ34を貫通して後胴13内周部に連結される一方、ロッド先端部が前記妻型枠43に連結されている。そして、妻型枠43の外周面には図示しないゴム製のシール部材が周方向に沿って装着される一方、妻型枠46の内周面には金属製のブラシシール45が周方向に沿って装着されている。
【0033】
従って、この妻型枠ジャッキ44を伸縮することで、リング状の妻型枠43を前後に移動することができ、このとき、図示しないシール部材が後胴13の内周面に押圧すると共に、ブラシシール45がリング状に組み立てられた既設内型枠Mの外周面に押圧することで、掘削機本体11の内部への浸水を防止することができる。
【0034】
そして、この妻型枠43には掘進方向後方に向かってコンクリート打設管46が周方向に所定間隔離間して複数本挿通され、これらのコンクリート打設管46は、後述する塞止弁装置47の切り替えによりコンクリート打設配管(ホース:コンクリート打設ライン)48と連通可能になっている。これらのコンクリート打設配管48は前述した搬送台車上のパワーユニットを介してコンクリート供給源に連通される。
【0035】
従って、塞止弁装置47によりコンクリート打設管46とコンクリート打設配管48とが連通した状態下で、コンクリート供給源から送給された生コンクリートがコンクリート打設配管48、コンクリート打設管46を通って前述したコンクリート打設空間Eに打設される。この際、コンクリート打設空間Eには、各コンクリート打設管46より周方向に順番に打設されるようになっている。
【0036】
また、前記内型枠M、妻型枠43、コンクリート打設管46、コンクリート打設配管48及び塞止弁装置47等でコンクリート打設装置が構成される。
【0037】
そして、前述した円型形状保持装置50は、図2に示すように、前述した泥土圧式シールド掘削機によるトンネル施工下における一次覆工の際にリング状に組み立てられた内型枠M(一次覆工材)を内側から突っ張って形状を保持するものである。
【0038】
この円型形状保持装置50は、内型枠Mの底部においてピン52を用いてヒンジ結合されて内型枠Mの上部まで延びる左右一対の長尺支持フレーム53a,53bと、これらの長尺支持フレーム53a,53bの上端に基端部が若干の遊びを持って第1のピン54でそれぞれピン結合すると共に先端側が内型枠Mの天井部において前後方向(トンネルの掘進方向)にオーバーラップして周方向の二箇所にて第2のピン55でピン結合し得る前後一対の短尺支持フレーム56a,56bと、を有する。この長尺支持フレーム53a,53bと短尺支持フレーム56a,56bは、前記内型枠Mに対応した曲率を有する。
【0039】
前記長尺支持フレーム53a,53bは、前後一対の短尺支持フレーム56a,56bに対応して前後方向にずれて配設され、それぞれ対応する短尺支持フレーム56a,56bとは凹凸部で嵌合してピン結合される(図3の(a),(b)参照)と共に、前記ヒンジ結合部においては、短尺支持フレーム56a,56bと同様に、前後方向にオーバーラップしてピン52によりヒンジ結合される(図3の(c)参照)。
【0040】
また、前記長尺支持フレーム53a,53bは、図4に示すように、断面H型の骨材57a,57bと内型枠Mと接触する補強材58a,58bとリブ59a,59bとからなると共に、補強材58a,58bの一般部における幅寸法は、前記ヒンジ結合部や短尺支持フレーム56a,56bとのピン結合部における幅寸法の倍の寸法に設定される。
【0041】
また、前記長尺支持フレーム53a,53bと短尺支持フレーム56a,56bとのピン結合部においては、第1のピン54によるピン結合部よりそれぞれ上方に位置して両者をさらにストッパピン60でピン結合し得るようになっている。
【0042】
そして、前記架台41上には、横フレーム部61aと左右一対の縦フレーム部61bとからなる門形の可動フレーム61がトンネルの掘進方向へ移動可能に設置される。即ち、縦フレーム部61bの両側には左右一対で前後二組の車輪62が付設され、この車輪62が架台41の左,右両側にそれぞれ敷設された左右一対のレール63上を転動するようになっている。図1に示すように、左右一対の縦フレーム部61bには、架台41の左,右両側にヘッド部が支持された移動ジャッキ64のピストンロッド先端がそれぞれ連結されている。
【0043】
前記横フレーム部61aの上面にはジャッキ支持用ブロック65が設置され、このジャッキ支持用ブロック65に、前記二つの短尺支持フレーム56a,56bを個別に押上げし得る二つの押上ジャッキ66a,66bが縦向きに支持されると共に、前記二つの長尺支持フレーム53a,53bを個別に拡張し得る二つの拡張ジャッキ67a,67bが横向きに支持されている。図2中68a,68bは二つの長尺支持フレーム53a,53bの内面に固設されて前記二つの拡張ジャッキ67a,67bのピストンロッド先端がそれぞれ連結されるブラケットで、69a,69bは前記二つの押上ジャッキ66a,66bのピストンロッド先端にそれぞれ連結されたスプレッダで前記二つの短尺支持フレーム56a,56bの内面に摺接している。
【0044】
前記可動フレーム61の左右一対の縦フレーム部61bの内部には、支持梁ジャッキ70a,70bがそれぞれ垂設され、この支持梁ジャッキ70a,70bのピストンロッド先端間に前記ヒンジ結合された左右一対の長尺支持フレーム53a,53bの下端部に対応した曲率を有する支持梁71が支持されている。尚、図2中左方においては、支持梁ジャッキ70aが収縮して支持梁71が左右一対の長尺支持フレーム53a,53bの下端部から離反した状態を示し、図2中右方においては、支持梁ジャッキ70aが伸長して支持梁71が左右一対の長尺支持フレーム53a,53bの下端部を押下げている状態を示している。
【0045】
このように構成されるため、カッタ旋回モータ25によりカッタヘッド18を回転させながらシールドジャッキ35を伸ばして掘削機本体11を、トンネルの長手方向に複数リングに亙って組み立てられた内型枠Mに反力をとって、推進(前進)させることで、カッタヘッド18に装着された多数のカッタビット22等が前方の地盤を掘削し、この掘削された土砂はチャンバ28からスクリューコンベヤ33等によって外部に排出される。
【0046】
この掘削機本体11の推進(前進)に同期して、エレクタ39及び円型形状保持装置50により内型枠Mをリング状に組み立てると共にその真円保持を行なう。そして、この組み立てられた内型枠Mと掘進されたトンネルの周壁との空間に、妻型枠43に開口された打設口からコンクリートが現場打ちでほぼ連続的に打設され、その養生・硬化を待って覆工壁が形成される。この繰り返しによって、所定長さのトンネルが掘削・形成されることになる。
【0047】
そして、本実施例では、円型形状保持装置50における形状保持時には、図2に示すように、内型枠Mの底部においてピン52によりヒンジ結合された左右一対の長尺支持フレーム53a,53bとこの長尺支持フレーム53a,53bの上端にそれぞれ基端部が第1のピン54で結合された前後一対の短尺支持フレーム56a,56bを、それぞれに対応した押上ジャッキ66a,66bと拡張ジャッキ67a,67bを伸長させることで、リング状に組み立てられた内型枠Mの内周面に押し当てる。さらに、左右一対の支持梁ジャッキ70a,70bを伸長させて支持梁71でピン52によりヒンジ結合された左右一対の長尺支持フレーム53a,53bの下端部を押下げることにより、当該左右一対の長尺支持フレーム53a,53bの下端部を内型枠Mの底部内周面に押し当てる。尚、この形状保持時にはストッパピン60は使用しない。
【0048】
これにより、内型枠Mには概ね上下左右方向から突っ張り力が作用し、内型枠Mの全周に亙ってサポートすることができるので、確実に真円保持が可能となる。尚、支持梁71は必須の構成部材ではなく、必要に応じて用いれば良い。
【0049】
一方、盛替え時には、図5乃至図8に示すように、先ず、左右一対の支持梁ジャッキ70a,70bを収縮させて支持梁71をピン52によりヒンジ結合された左右一対の長尺支持フレーム53a,53bの下端部から離反させる。尚、便宜上、図5及び図7は左側(図面上)の長尺支持フレーム53a及び短尺支持フレーム56aの挙動を示し、図6及び図8は右側(図面上)の長尺支持フレーム53b及び短尺支持フレーム56bの挙動を示している。
【0050】
次に、前後一対の短尺支持フレーム56a,56bにおける第2のピン55を取り外した状態で(図5乃至図8においてはピン孔が示されている)、内型枠Mの底部においてピン52によりヒンジ結合された左右一対の長尺支持フレーム53a,53bとこの長尺支持フレーム53a,53bの上端にそれぞれ基端部が第1のピン54で結合された前後一対の短尺支持フレーム56a,56bを、押上ジャッキ66a,66bと拡張ジャッキ67a,67bを収縮させることで内型枠Mの内方へ変位(縮径)させる(図5及び図6参照)。この際、第1のピン54の遊び(ガタ)により左右一対の長尺支持フレーム53a,53bと前後一対の短尺支持フレーム56a,56bの相対変位は効果的に吸収される。
【0051】
次に、左右一対の長尺支持フレーム53a,53bの上端と前後一対の短尺支持フレーム56a,56bの基端部を第1のピン54に加えてストッパピン60でも結合してから、再び押上ジャッキ66a,66bを伸長させて、左右一対の長尺支持フレーム53a,53bとこの左右一対の長尺支持フレーム53a,53bにそれぞれ剛に連結した前後一対の短尺支持フレーム56a,56bを押し上げる(図7及び図8参照)。
【0052】
これにより、左右一対の長尺支持フレーム53a,53bと前後一対の短尺支持フレーム56a,56bは、内型枠Mの内周面から完全に離反させられ(図7及び図8中の隙間G1〜G4参照)、この結果、移動ジャッキ64を伸長させて可動フレーム61をトンネルの掘進方向へ移動させることで、円型形状保持装置50の盛替えを円滑に行なうことができる。
【0053】
また、本実施例では、二本の押上ジャッキ66a,66bで押上げ力を分担するので、盛替え時において安定した押上げ力が得られ、装置に対する信頼性も高い。さらに、長尺支持フレーム53a,53bにおける補強材58a,58bの一般部における幅寸法は、そのヒンジ結合部や短尺支持フレーム56a,56bとのピン結合部における幅寸法の倍の寸法に設定されるので、押し当て面積の増大で安定した形状保持力が得られる。さらにまた、形状保持時には、左右一対の支持梁ジャッキ70a,70bと支持梁71との内方空間で内型枠(ピース)Mを左右一対のホイスト42により円滑に搬送することができる。
【0054】
尚、本発明は上記実施例に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲でストッパピン60の着脱を自動化する等各種変更が可能であることはいうまでもない。また、ECL工法を採用した泥土圧式シールド掘削機に代えて、セグメントによる覆工方法を採用した泥土圧式シールド掘削機に本発明を適用することもできる。さらに、本発明に係る円型形状保持装置を備えたトンネル掘削機は、泥土圧式シールド掘削機に限らず、泥水式シールド掘削機、機械式シールド掘削機やトンネルボーリングマシーン(TBM)等でも良い。
【符号の説明】
【0055】
11 掘削機本体
12 前胴
13 後胴
15 中折れジャッキ
18 カッタヘッド
34 リングガータ
35 シールドジャッキ
36 内型枠押し当て用のスプレッダ
41 架台
42 ホイスト
43 妻型枠
44 妻型枠ジャッキ
47 塞止弁装置
46 コンクリート打設管
48 コンクリート打設配管
50 円型形状保持装置
51 作業者用旋回リング
52 ピン
53a,53b 長尺支持フレーム
54 第一のピン
55 第2のピン
56a,56b 短尺支持フレーム
60 ストッパピン
61 可動フレーム
62 車輪
63 レール
64 移動ジャッキ
66a,66b 押上ジャッキ
67a,67b 拡張ジャッキ
70a,70b 支持梁ジャッキ
71 支持梁
E コンクリート打設空間
G 地山
M 内型枠

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネル施工下における一次覆工の際にリング状に組み立てられた一次覆工材を内側から突っ張って形状を保持する円型形状保持装置であって、
一次覆工材の底部においてヒンジ結合されて一次覆工材の上部まで延びる前記一次覆工材に対応した曲率を有する左右一対の長尺支持フレームと、
前記長尺支持フレームの上端に基端部が第1のピンで結合すると共に先端側が一次覆工材の天井部において前後方向にオーバーラップして周方向の二箇所にて第2のピンで結合し得る前記一次覆工材に対応した曲率を有する前後一対の短尺支持フレームと、
前記第1のピンによる結合部よりそれぞれ上方に位置して前記長尺支持フレームと短尺支持フレームとをさらにピン結合し得る二つのストッパピンと、
前記二つの短尺支持フレームを個別に押上げし得る二つの押上ジャッキと、
前記二つの長尺支持フレームを個別に拡張し得る二つの拡張ジャッキと、
前記押上ジャッキと拡張ジャッキとのヘッド部を支持してトンネルの掘進方向に移動可能な可動フレームと、
を備えたことを特徴とする円型形状保持装置。
【請求項2】
前記可動フレームには、左右一対の支持梁ジャッキが垂設され、この支持梁ジャッキには前記ヒンジ結合された左右一対の長尺支持フレームの底部に対応した曲率を有する支持梁が支持されていることを特徴とする請求項1に記載の円型形状保持装置。
【請求項3】
前記第1のピンは遊びを有していることを特徴とする請求項1又は2に記載の円型形状保持装置。
【請求項4】
前記左右一対の長尺支持フレームは前記前後一対の短尺支持フレームに対応して前後方向にずれて配設されると共に前記ヒンジ結合部においては前後方向にオーバーラップして配設され、それらの一般部における一次覆工材との接触面の幅寸法は、ヒンジ結合部やピン結合部における一次覆工材との接触面の幅寸法の倍の寸法に設定されることを特徴とする請求項1,2又は3に記載の円型形状保持装置。
【請求項5】
前記一次覆工材は、直打ちコンクリートによる覆工の際に用いられる内型枠であることを特徴とする請求項1,2,3又は4に記載の円型形状保持装置。
【請求項6】
前記一次覆工材は、セグメントによる覆工の際に用いられるセグメントであることを特徴とする請求項1,2,3,4又は5に記載の円型形状保持装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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