説明

円形ブームアンテナの製造方法

【課題】 ブームに対してアンテナ素子を固着する場合、ブームの管壁孔にアンテナ素子を貫通させて、ブームを上下方向に加圧するだけで、ブームの断面形状を円形にすることができると同時に、ブームに対するアンテナ素子の固着ができる円形ブームアンテナの製造方法を提供する。
【解決手段】 ブームの二個一対の管壁孔に中空管状のアンテナ素子を貫通させ、第1象限の壁部材と第2象限の壁部材に対して、外周方向から力を加えて受部に向けて変形させ、上記の変形は、押圧条を受部に向けて移動させ、アンテナ素子の周壁に押付けてアンテナ素子の周壁に食い込ませると共に、第1象限の壁部材と第2象限の壁部材とを夫々曲げ形成して両者間の上端縁相互間の間隙を縮めて、第1象限と第2象限の壁部材の上端縁を合体させ、ブームの断面形状を円形にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばUHF、その他の通信信号の送受をする場合に、中空管状のブームの軸心方向に適当な間隔を隔てて複数個の貫通孔を備えさせ、その貫通孔に対して、パイプ状のアンテナ素子を貫通させた状態で固定して利用する形式の円形ブームアンテナの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の中空管状のブームアンテナの製造方法は、特許文献1で知られているように、ブームの管壁の断面形状を予め楕円形に形成し、かつ、長径を上下にし、上記中空管状のブームの管内においては、断面形状においてアンテナ素子を中間にする状態でそれの両側となる位置に夫々上記ブームの軸心方向に伸びるリブを備えさせ、かつ、それらのリブの断面形状における元部側は、夫々中空管状のブームの上下の管壁内面に一体的に固着し、自由端側は夫々アンテナ素子の存置予定位置に対向する向きにし、しかも、上記リブにおける元部側から自由端側に向けての方向は、上記存置予定位置に置かれるアンテナ素子の軸線に対して直交する方向に設定し、
さらに上記ブームの管壁に対しては、 軸心方向に適当な間隔を隔てて、左右に向けた二個一対の管壁孔を複数個所に備えさせ、上記の管壁孔の夫々には中空管状のアンテナ素子を貫通させ、
【0003】
さらに上記中空管状のブームに対するアンテナ素子の固着は、上記中空管状のブームにおけるアンテナ素子の存在位置の上下外周から中空管状のブームの外壁に加圧力を加えて中空管状のブームの外壁を相互に近づけることによって、ブームの管壁の断面形状を楕円形から真円に形成し、かつ、夫々の「リブの自由端」を夫々アンテナ素子の軸線に対して交差する方向からの加圧力により圧接させて、上記中空管状のブームとアンテナ素子とを固着する製造方法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4064836号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
斯かる従来のアンテナの製造方法では、前述のように、ブームの管壁の断面形状が予め楕円形に形成されており、このブームの外周に、上下から加圧力を加えて中空管状ブームの上下の外壁を相互に近づけることによって、ブームの管壁の断面形状を、楕円形から真円に変形させることと、夫々の管内のリブの自由端を、上記アンテナ素子の周壁に対して加圧し、リブの自由端を、アンテナ素子の周壁に対して食い込ますという、2つの工程を同時に施していたので、
ブームの外周に対して、上下方向から加えなければならない加圧力は大きなものが必要であり、大きなプレス機が必要となる問題点があった。
【0006】
本件出願の目的は、上記課題を解決するもので、ブーム管壁孔に対してアンテナ素子を貫通させた状態で固着させることができるは勿論、ブームに対してアンテナ素子を固着する場合、ブームの管壁孔にアンテナ素子を貫通させて、ブームを上下方向に加圧するだけで、ブームの断面形状を円形にすることができると同時に、ブームに対するアンテナ素子の固着ができる円形ブームアンテナの製造方法を提供しようとするものである。
他の目的は、ブームを変形させる場合、ブームの断面形状を円形にする工程と、ブームに対するアンテナ素子の固着の工程を同時に行う為の「押圧力」は、僅かな力で足り、小型のプレス機で製造できる円形ブームアンテナの製造方法を提供しようとするものである。
他の課題、目的及び利点は図面及びそれに関連した以下の説明により容易に明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明における円形ブームアンテナの製造方法は、中空管状のブーム15の管壁20には、中空管状のアンテナ素子19をブーム15の左右方向に向けて貫通させる為の二個一対の管壁孔35を備え、上記二個一対の管壁孔35には中空管状のアンテナ素子19を貫通させ、上記ブーム15の外周に圧力を加えてブーム15を上下方向に圧縮して、断面形状を円形に変形させることにより、上記ブーム15に対してアンテナ素子19を固着するようにした円形ブームアンテナの製造方法において、上記ブーム15の管壁20の円形断面は、予め下側に位置する第3象限の壁部材23と、第4象限の壁部材24とは、夫々4分円の円弧状に形成すると共に相互に連結一体化して半円形状断面を形成し、上側に位置する第1象限の壁部材21と第2象限の壁部材22とは、夫々第1象限の壁部材21の下端21aは第4象限の壁部材24の上部に連結一体化し、第2象限の壁部材22の下端22aは第3象限の壁部材23の上部に連結一体化し、第1象限の壁部材21と第2象限の壁部材22とは相互に分離し、それらの上端縁21b、22b相互間に間隙25が生じるように上方に向けて跳ね上げ状態に形成し、第3象限の壁部材23と第4象限の壁部材24の内面の中央位置には、ブーム15の軸心方向に長いアンテナ素子19の部材の受部28を備えさせ、第1象限の壁部材21と第2象限の壁部材22の内面には、夫々上記中空管状のアンテナ素子19を押圧する為の押圧条30を備え、上記2条の押圧条30、30は、夫々ブーム15の軸心方向に長く形成し、相互間に間隙31を形成する状態で並設させ、上記中空管状のブーム15に対するアンテナ素子19の固着は、上記ブーム15の二個一対の管壁孔35に中空管状のアンテナ素子を貫通させ、上記第1象限の壁部材21と第2象限の壁部材22に対して、外周方向から力を加えて上記受部28に向けて変形させ、上記の変形は、上記押圧条30を上記受部に向けて移動させ、アンテナ素子19の周壁19bに押付けてアンテナ素子19の周壁19bに食い込ませると共に、上記第1象限の壁部材21と第2象限の壁部材22とを夫々曲げ形成して両者間の上端縁相互間の間隙25を縮めて、上記第1象限の壁部材21と第2象限の壁部材22の上端縁21b、22bを合体させ、ブーム15の断面形状を円形にしたものである。
【0008】
また好ましくは、中空管状のブーム15の管壁20には、中空管状のアンテナ素子19をブーム15の左右方向に向けて貫通させる為の二個一対の管壁孔35を備え、上記二個一対の管壁孔35には中空管状のアンテナ素子19を貫通させ、上記ブーム15の外周に圧力を加えてブーム15を上下方向に圧縮して、断面形状を円形に変形させることにより、上記ブーム15に対してアンテナ素子19を固着するようにした円形ブームアンテナの製造方法において、上記ブーム15の管壁20の円形断面は、予め下側に位置する第3象限の壁部材23と、第4象限の壁部材24とは、夫々4分円の円弧状に形成すると共に相互に連結一体化して半円形状断面を形成し、上側に位置する第1象限の壁部材21と第2象限の壁部材22とは、夫々第1象限の壁部材21の下端21aは第4象限の壁部材24の上部に連結一体化し、第2象限の壁部材22の下端22aは第3象限の壁部材23の上部に連結一体化し、第1象限の壁部材21と第2象限の壁部材22とは相互に分離し、それらの上端縁22a、22b相互間に間隙25が生じるように上方に向けて跳ね上げ状態に形成し、上記跳ね上げ状態は、第1象限の壁部材21における下側に位置する部材21cの円弧面と、第2象限の壁部材22における下側に位置する部材22cの円弧面とが夫々第4象限の壁部材24の円弧面と、第3象限の壁部材23の円弧面に対して連続する状態で夫々第4象限の壁部材24と、第3象限の壁部材23に連結一体化させてあり、 第1象限の壁部材21における上側に位置する部材21eと、第2象限の壁部材22における上側に位置する部材22eとは、夫々の下側に位置する部材21c、22cと折り目21gを介して連続させてあり、かつ、上側に位置する部材相互間の位置関係は、相互に分離し、それらの上端縁相互間に間隙25が生じるようにハの字状に配置してあり、第3象限の壁部材23と第4象限の壁部材24の内面の中央位置には、ブーム15の軸心方向に長いアンテナ素子19の部材の受部28を備えさせ、第1象限の壁部材21における上側に位置する部材21eと、第2象限の壁部材22における上側に位置する部材22eの内面には、夫々上記中空管状のアンテナ素子を押圧する為の押圧条30を備え、上記2条の押圧条30、30は、夫々ブーム15の軸心方向に長く形成し、相互間に間隙31を形成する状態で並設させ、上記中空管状のブーム15に対するアンテナ素子19の固着は、上記ブーム15の二個一対の管壁孔35に中空管状のアンテナ素子を貫通させ、上記第1象限の壁部材21と第2象限の壁部材22における夫々上側に位置する部材21e、22eに対して、外周方向から力を加え上記の折目21g、22gから曲げて上記受部28に向けて変形させ、上記の変形は、上記押圧条30を上記受部28に向けて移動させ、アンテナ素子19の周壁19bに押付けてアンテナ素子の周壁19bに食い込ませると共に、上記第1象限の壁部材21と第2象限の壁部材22とを夫々曲げ形成して両者間の上端縁相互間の間隙25を縮めて、上記第1象限の壁部材21と第2象限の壁部材22の上端縁21b、22bを合体させ、ブーム15の断面形状を円形にしたものであればよい。
【発明の効果】
【0009】
以上のように本発明にあっては、中空管状のブーム15に対するアンテナ素子19の固着にあたっては、ブーム15の二個一対の管壁孔35に中空管状のアンテナ素子19を貫通させ、第1象限の壁部材21と第2象限の壁部材22の外周に対して、外周の外方向から力を加えて、上記2つの象限の壁部材21、22を夫々上記受部28に向けて変形させることにより、上記2つの象限の壁部材21、22の内面に夫々備える押圧条30を上記受部28に向けて移動させ、アンテナ素子19の周壁19bに押付けてアンテナ素子の周壁19bに食い込ませるものであるから、上記第1象限の壁部材21と第2象限の壁部材22の上端縁相互間の間隙25を縮めて、上記第1象限の壁部材21と第2象限の壁部材22の上端縁を合体させ、ブームの断面形状を円形にすることができると同時に、ブーム15に対するアンテナ素子19の固着ができる作業上の効果もある。
【0010】
その上本発明にあっては、、ブーム15の断面形状を円形にする工程と、ブーム15に対するアンテナ素子19の固着の工程を同時に行うものであっても、それらの操作は、単に「上記第1と、第2の2つの象限の壁部材を夫々上記受部28に向けて押し圧して変形させる」だけで、第3象限の壁部材23と、第4象限の壁部材24は予め夫々4分円の円弧状に形成してあるので、これを変形させる必要性はないので、ブーム15の断面形状を円形にする工程と、ブーム15に対するアンテナ素子19の固着の工程を同時に行う為の「押圧力」は、従来の製法に比較して僅かな力で足り、手近にある小型のプレス機で製造できる効果がある。
【0011】
さらに本発明にあっては、 第1象限の壁部材21における上側に位置する部材21eと、第2象限の壁部材22における上側に位置する部材22eとは、夫々第1象限の壁部材21における下側に位置する部材21cと、第2象限の壁部材22における下側に位置する部材22cに対して夫々折り目21gを介して連続させてあり、かつ、上側に位置する部材相互間の位置関係は、相互に分離し、それらの上端縁相互間に間隙25が生じるようにハの字状に配置してあので、第1象限の壁部材21における上側に位置する部材21eと、第2象限の壁部材22における上側に位置する部材22eに対して力を加えてブーム15の断面形状を円形にすると共に、押圧条30をアンテナ素子19の周壁に対して食い込ませる為の「押圧力」は、極め僅かな力で足り、手近にある、より一層小型のプレス機で製造できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】アンテナの斜視図。
【図2】アンテナにおける支持杆を、アンテナ素子と同一平面に折畳んだ状態を説明する為の平面図。
【図3】(A)は図2における符号III Aで示される部分拡大図。(B)は図1における符号III Bで示される部分の一部破断した拡大斜視図。
【図4】管壁変形前のブームの断面図で、図5のIV−IV線位置断面図。
【図5】管壁変形前のブームの側面図。
【図6】図4のVI−VI線位置断面図。
【図7】ブームに対するアンテナ素子の固定方法を説明する為の図で、管壁変形前のブームの管壁孔にアンテナ素子を貫通させ、金型内に位置させた状態を示す一部破断して示す概略断面図で、その破断位置は図5のIV−IV線位置である。
【図8】ブームに対するアンテナ素子の固定状態を説明する為の一部破断して示す概略断面図(ブームの形状は管壁変形後で、その破断位置は、図5のIV−IV線位置である。
【図9】図8のIX−IX線位置断面図。
【図10】(A)は変形前のブームの具体例を示す断面図。(B)は(A)に示されるブームにおける受部の部分の部分拡大図。(C)は変形後のブームの具体例を示す断面図。
【図11】図1〜10の第1象限の壁部材、第2象限の壁部材の断面形状の異なる例を示す断面図で、(A)は変形前のブームを示す断面図。一点鎖線は変形後のブームの存在位置を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。図1〜図3は、周知のUHF波の送受に利用される周知のアンテナに関連する技術的事項を示し、ブームには円形のブームを用いている。
図4〜図6は円形ブームアンテナの製造に用いられる円形ブームに関連する技術的事項を示す。
図7〜図9は円形ブームアンテナの製造方法に関連する技術的事項を示す。
【0014】
図において、1は、マスト2によって支持されているアンテナ、例えば周知のUHF波の送受に利用される周知のアンテナを示す。このアンテナ1は、中空管状のブーム15の管壁20に、中空管状のアンテナ素子19をブーム15の左右方向に向けて貫通させる為の二個一対の管壁孔35を設け、上記二個一対の管壁孔35には中空管状のアンテナ素子19を貫通させ、上記ブーム15の外周に圧力を加えてブーム15を上下方向に圧縮して変形させることにより、上記ブーム15に対してアンテナ素子19を固着するようにした円形ブームアンテナの製造方法によって製作されている。
【0015】
アンテナ1において、15は中空管状のブーム、16は放射器、17は反射器、18は導波器を示し、これらはブーム15に対して装着されることにより一体化している。導波器18において19は、任意複数の中空管状のアンテナ素子で、ブーム15の軸心に対して直交する方向に向けて、夫々管壁20に任意所定の間隔で穿設された二個一対の管壁孔35を貫通した状態で固定されている。
3は、U字状の支持杆を示し、金具2aを介してマスト2に連結されている。支持杆3の両側の自由端3a、3aは、取付金具5、5を介してブーム15に着脱自在に連結してある。
ブーム15及びアンテナ素子等は、周知のようにアルミニウム合金(例えばアルミA6063S)或は塑性変形可能な任意の硬質材によって形成されている。
【0016】
取付金具5は、図3(B)に表われているように、鋼板を逆U字状に折り曲げて形成されたバンド部6と二つの支持杆添付部10とを一体的に備える。なお、バンド部6において、6aは膨出状に形成してあるリブを示し、バンド部6の下面における円弧の形状をブーム15の外周形状に対応する曲面に維持する為の補強材である。
【0017】
バンド部6の内懐部7の形状は、ブーム15の外径形状に対応させてほぼ真円にしてあり、支持杆添付部10、10を締付けることによって内懐部7の内周面はブーム15の外周面20aに対して一体化し、支持杆添付部10、10を緩めることにより、ブーム15のほぼ真円状の外周面20aは、内懐部7の内周面から離れて90度の範囲内で回動自在になる(図2の折畳状態から、図1の状態にできる)。なお本件の特許請求の範囲及び明細書においては、業者が見て、外観的に丸パイプであって、上記のように、ボルト頭12を少しゆるめる事により、ブーム15の外周面20aをくるくるなめらかに相対的に回すことができる程度の円形のことを「ほぼ真円」という。
8は周知の長孔を示し、ブーム15に螺合させてある(回り止用)螺子に対して90度の範囲内で回動方向に相対的な移動を可能にしてある。上記の12は支持杆添付部10、10を締緩するためのボルトの頭を示す。
【0018】
なお、当分野においてアンテナ1は、図1の状態でブーム15に対してアンテナ素子19を左右(水平方向)に突出させた状態で使用される場合が多い。しかし、アンテナ素子19を上下に向けた状態で使用される場合もある。従って、当業者は利用の形態によって上下、左右の呼び名を変更して用いている。このような事情から本件(特許請求の範囲、明細書、図面)においては、上下、左右の用語の用い方においては、説明の都合上、図1の状態で用いられた場合を仮定して、矢印60方向から見てアンテナ素子(エレメント)19の突出方向を「左右」として説明し、図1の図面上の上下を、そのまま「上下」と称して説明するが、利用の形態によって上下、左右の呼び名は変る。
【0019】
次に、主に図4〜図6に表れている円形ブームアンテナの製造に用いられる円形ブームに関連する技術的事項を説明する。
図4に表れているように上記ブーム15の管壁20の円形断面は、夫々図のように中心点20cを通る第1区分線20dと第4区分線20gとの間にある第1象限の壁部材21と、第1区分線20dと第2区分線20eとの間にある第2象限の壁部材22と、第2区分線20eと第3区分線20fとの間にある第3象限の壁部材23と、第3区分線20fと第4区分線20gとの間にある第4象限の壁部材24とは一体材で構成されている。20jは軽量化の為の凹溝部でブーム15の軸心方向に長く形成されている。
【0020】
下側に位置する第3象限の壁部材23と、第4象限の壁部材24との外周面20aの円弧は、夫々4分円の円弧状(曲率半径R1)に形成すると共に、相互の下端23a、24aは図示のように連結一体化して半円形状(曲率半径R1)の断面を形成している。
上側に位置する第1象限の壁部材21と第2象限の壁部材22とは、夫々第1象限の壁部材21の下端21aは第4象限の壁部材24の上部24bに連結一体化し、第2象限の壁部材22の下端22aは第3象限の壁部材23の上部23bに連結一体化してある。
第1象限の壁部材21と第2象限の壁部材22との上部は、図示のように相互に分離し、それらの上端縁21b、22b相互間に間隙25が生じるように上方に向けて跳ね上げ状態に形成してある。
【0021】
上記跳ね上げ状態は、第1象限の壁部材21における折り目21gよりも下側に位置する部材21cの円弧面(曲率半径R1)と、第2象限の壁部材22における折り目22gよりも下側に位置する部材22cの円弧面(曲率半径R1)とが夫々第4象限の壁部材24の円弧面(曲率半径R1)と、第3象限の壁部材23の円弧面(曲率半径R1)に対して連続する状態で夫々第4象限の壁部材24と、第3象限の壁部材23に連結一体化させてある。
【0022】
第1象限の壁部材21における上側に位置する部材21eと、第2象限の壁部材22における上側に位置する部材22eとは、夫々図示のように外周を円弧面(曲率半径R1)に形成し、夫々の下側に位置する部材21c、22cとは、図7から図8の状態に上側に位置する各部材21e、22eとを曲げ形成できるように、夫々折り目21g、22gを介して連続させてある。また上側に位置する上記両部材21e、22e相互間の位置関係は、図示のように相互に分離し、それらの上端縁21b、22b相互間に間隙25が生じるようにハの字状に配置している。
第1象限の壁部材21における折り目21gと、第2象限の壁部材22における折り目22gの位置は任意であるが、例えば図4に表れている管壁20の断面において、管壁断面の中心点20cを基点としてアンテナ素子19の軸心19aに対する傾斜角θが略40°の地点に設定すると良い。
なお、上記上端縁21bにおける21hは上端縁22bの係合凸部22hと係合する為の係合凹部、22hは上記係合凹部21hと係合する為の係合凸部を示す。
【0023】
上記第1象限の壁部材21と第2象限の壁部材22との構成は、上記跳ね上げ状態において、 図11に表れているように、第1象限の壁部材21と第2象限の壁部材22との外周面20aの全体の円弧面が、夫々4分円の円弧状(曲率半径R1)に形成してあって、 第1象限の壁部材21と、第4象限の壁部材24との境界部(第2区分線20eと第4区分線20gと線上)及び 第2象限の壁部材22と、第3象限の壁部材23との境界部(第2区分線20eと第4区分線20gと線上)に図11に表れているような折り目21g、22gを夫々形成して折り曲げ自在の構成にしておいても良い。
【0024】
第3象限の壁部材23と第4象限の壁部材24の各下端23a、24aの内面の中央位置には、アンテナ素子受止用の部材して、図示のようにブーム15の軸心方向に長く形成してある受部材28を一体化した状態で備えさせている。28bは軽量化の為の空洞部、28aは、高さを管壁孔35における孔縁35aの下側とほぼ同高にしてあるアンテナ素子受止用の受面で、アンテナ素子のスリップを防止する為に表面は任意形状の粗面、例えば凹凸面にしてある。
【0025】
第1象限の壁部材21と第2象限の壁部材22の内面には、夫々上記中空管状のアンテナ素子19を押圧する為の押圧条30の元部30aを一体化した状態で備える。上記2条の押圧条30、30は、相互間の自由端30cに間隙31を形成する状態で並設させ、夫々ブーム15の軸心方向に長く形成してある。
図4においては、第1象限の壁部材21における上側に位置する部材21eと、第2象限の壁部材22における上側に位置する部材22eの内面に、夫々上記中空管状のアンテナ素子を押圧する為に夫々ブーム15の軸心方向に長く形成した押圧条30を備える。
【0026】
次に、上記中空管状のブーム15に対するアンテナ素子19の固着に関する技術的事項を説明する。図7、8、9において、40は周知の上下一対の成型用の金型を示し、金型40の対向面41には、ブーム15の上下面に対応するブーム用凹部42、42が形成してある。上記ブーム用凹部42、42内面の曲率半径は、周知のようにブームの仕上がり状態の外周面の曲率半径R1に対応させてある。
またこの金型40の対向面41には、ブーム15の左右方向に向けて並設してある二個一対の管壁孔35に挿通させる中空管状のアンテナ素子19の上下面に対応させた形状で、やや大きめにした凹部43、43が形成してある。
【0027】
上下一対の金型40、40の間には、図7に表れているようにブーム15と、ブーム15の二個一対の管壁孔35、35に挿通させた中空管状のアンテナ素子19が置かれる。このブーム15の長手方向には図2に示されているように、1または複数本のアンテナ素子19が
夫々備えられる。なお、周知のように上記管壁孔30の直径D1は、周知のようにアンテナ素子19の外径D2が挿通できるようにやや大きくした対応寸法にしてある。
【0028】
次に、図7の上下一対の金型40、40の間を縮め(対向面41、41を矢印46、47方向に向けて近付け)、上記ブーム15を上下方向から圧縮することにより、上記第1象限の壁部材21と第2象限の壁部材22に対して、外周方向から力を加えて壁部材21と壁部材22とを夫々の折れ目21g、22gでもって折り曲げることによって変形させ、上記押圧条30を上記受部28に向けて移動させ、それらの自由端30cをアンテナ素子19の周壁19bに押付けてアンテナ素子19の周壁19bに食い込ませる。
上記動作と同時に、上記第1象限の壁部材21と第2象限の壁部材22とを夫々曲げ形成して両者間の上端縁21b、22b相互間の間隙25を縮めて、上記第1象限の壁部材21と第2象限の壁部材22の上端縁21b、22bを合体させ、ブーム15の断面形状を略円形にする(全体を曲率半径R1にする)。この状態では、上記上端縁21bにおける21hと上端縁22bの係合凸部22hとは相互に係合し、上記第1象限の壁部材21と第2象限の壁部材22の合体状態は保持される。
【0029】
図7の場合においては、上下一対の金型40、40の間を縮めることによって、第1象限の壁部材21における上側に位置する部材21eと、第2象限の壁部材22における上側に位置する部材22eとは、夫々折れ目21g、22gでもって折り曲がることによって変形する。 そして 押圧条30の自由端30cがアンテナ素子19の周壁19bに食い込んで図8、9のようになる。
この状態では、図8のように、押圧条30で押えられて変形した部分は管壁孔35の孔縁35aから離れており、この変形の影響を孔縁35aに及ぼさない。
さらに、図8のように、受部28の上面28aは平坦で広いのでアンテナ素子19の周壁19b上側だけ変形させるものなので、アンテナ素子19の周壁19bの変形に要する力は小さくてすむ。
【実施例】
【0030】
図10(A)(B)は、変形前のブーム15の断面形状における管壁20と受部28と押圧条30の具体的な寸法図を示す。図10(C)は、変形後のブーム15の断面形状における管壁20と受部28と押圧条30の具体的な寸法図を示す。
なお、本件の図面において、()内に示される数字は、実施例の寸法(単位:mm)を示す。[]内の数字は、実施例の角度(単位:度)を示す。<>内の数字は、実施例の半径曲率(半径:mm)を示す。
さらに、図10,11においても前述の図1〜9のものと機能、性質、手段又は特徴等が同一又は均等構成と考えられる部分には、前述の図と同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【符号の説明】
【0031】
1・・・アンテナ、2・・・マスト、2a・・・金具、3・・・支持杆、3a・・・自由端、5・・・取付金具、6・・・バンド部、6a・・・リブ、7・・・内懐部、8・・・長孔、10・・・支持杆添付部11・・・透孔、15・・・ブーム、16・・・放射器、17・・・反射器、18・・・導波器、19・・・アンテナ素子、19a・・・アンテナ素子の軸心、19b・・・周壁、20・・・管壁、20a・・・ブーム管壁の外周面、20d・・・第1区分線、20e・・・第2区分線、20f・・・第3区分線、20g・・・第4区分線、20j・・・凹部、21・・・第1象限の壁部材、21a・・・下端、21b・・・上端縁、21c・・・下側の部材、21e・・・上側の部材、21g・・・折り目、21h・・・係合部、22・・・第2象限の壁部材、22a・・・下端、22b・・・上端縁、22c・・・下側の部材、22e・・・上側の部材、22g・・・折り目、22h・・・係合部、23・・・第3象限の壁部材、23a・・・下端、23b・・・上端、24・・・第4象限の壁部材、24a・・・下端、24b・・・上端、25・・・間隙、28・・・受部、28a・・・上面(受面)、30・・・押圧条、31・・・間隙35・・・管壁孔、40・・・金型、 41・・・対向面、42・・・凹部、 43・・・アンテナ素子用凹部、W1・・・ブームにおける外周の左右方向の幅寸法、H2・・・変形後のブームにおける外周の上下方向の高さ寸法、H3・・・受部の上面の高さ寸法

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空管状のブームの管壁には、中空管状のアンテナ素子をブームの左右方向に向けて貫通させる為の二個一対の管壁孔を備え、
上記二個一対の管壁孔には中空管状のアンテナ素子を貫通させ、
上記ブームの外周に圧力を加えてブームを上下方向に圧縮して、断面形状を円形に変形させることにより、
上記ブームに対してアンテナ素子を固着するようにした円形ブームアンテナの製造方法において、
上記ブームの管壁の円形断面は、予め
下側に位置する第3象限の壁部材と、第4象限の壁部材とは、夫々4分円の円弧状に形成すると共に相互に連結一体化して半円形状断面を形成し、
上側に位置する第1象限の壁部材と第2象限の壁部材とは、夫々
第1象限の壁部材の下端は第4象限の壁部材の上部に連結一体化し、
第2象限の壁部材の下端は第3象限の壁部材の上部に連結一体化し、
第1象限の壁部材と第2象限の壁部材とは相互に分離し、それらの上端縁相互間に間隙が生じるように上方に向けて跳ね上げ状態に形成し、
第3象限の壁部材と第4象限の壁部材の内面の中央位置には、ブームの軸心方向に長いアンテナ素子の部材の受部を備えさせ、
第1象限の壁部材と第2象限の壁部材の内面には、夫々上記中空管状のアンテナ素子を押圧する為の押圧条を備え、
上記2条の押圧条は、夫々ブームの軸心方向に長く形成し、
相互間に間隙を形成する状態で並設させ、
上記中空管状のブームに対するアンテナ素子の固着は、
上記ブームの二個一対の管壁孔に中空管状のアンテナ素子を貫通させ、
上記第1象限の壁部材と第2象限の壁部材に対して、外周方向から力を加えて上記受部に向けて変形させ、
上記の変形は、上記押圧条を上記受部に向けて移動させ、アンテナ素子の周壁に押付けてアンテナ素子の周壁に食い込ませると共に、
上記第1象限の壁部材と第2象限の壁部材とを夫々曲げ形成して両者間の上端縁相互間の間隙を縮めて、上記第1象限の壁部材と第2象限の壁部材の上端縁を合体させ、ブームの断面形状を円形にしたことを特徴とする円形ブームアンテナの製造方法。
【請求項2】
中空管状のブームの管壁には、中空管状のアンテナ素子をブームの左右方向に向けて貫通させる為の二個一対の管壁孔を備え、
上記二個一対の管壁孔には中空管状のアンテナ素子を貫通させ、
上記ブームの外周に圧力を加えてブームを上下方向に圧縮して、断面形状を円形に変形させることにより、
上記ブームに対してアンテナ素子を固着するようにした円形ブームアンテナの製造方法において、
上記ブームの管壁の円形断面は、予め
下側に位置する第3象限の壁部材と、第4象限の壁部材とは、夫々4分円の円弧状に形成すると共に相互に連結一体化して半円形状断面を形成し、
上側に位置する第1象限の壁部材と第2象限の壁部材とは、夫々
第1象限の壁部材の下端は第4象限の壁部材の上部に連結一体化し、
第2象限の壁部材の下端は第3象限の壁部材の上部に連結一体化し、
第1象限の壁部材と第2象限の壁部材とは相互に分離し、それらの上端縁相互間に間隙が生じるように上方に向けて跳ね上げ状態に形成し、
上記跳ね上げ状態は、第1象限の壁部材における下側に位置する部材の円弧面と、第2象限の壁部材における下側に位置する部材の円弧面とが夫々第4象限の壁部材の円弧面と、第3象限の壁部材の円弧面に対して連続する状態で夫々第4象限の壁部材と、第3象限の壁部材に連結一体化させてあり、
第1象限の壁部材における上側に位置する部材と、第2象限の壁部材における上側に位置する部材とは、夫々の下側に位置する部材と折り目を介して連続させてあり、かつ、上側に位置する部材相互間の位置関係は、相互に分離し、それらの上端縁相互間に間隙が生じるようにハの字状に配置してあり、
第3象限の壁部材と第4象限の壁部材の内面の中央位置には、ブームの軸心方向に長いアンテナ素子の部材の受部を備えさせ、
第1象限の壁部材における上側に位置する部材と、第2象限の壁部材における上側に位置する部材の内面には、夫々上記中空管状のアンテナ素子を押圧する為の押圧条を備え、
上記2条の押圧条は、夫々ブームの軸心方向に長く形成し、
相互間に間隙を形成する状態で並設させ、
上記中空管状のブームに対するアンテナ素子の固着は、
上記ブームの二個一対の管壁孔に中空管状のアンテナ素子を貫通させ、
上記第1象限の壁部材と第2象限の壁部材における夫々上側に位置する部材に対して、外周方向から力を加え上記の折目から曲げて上記受部に向けて変形させ、
上記の変形は、上記押圧条を上記受部に向けて移動させ、アンテナ素子の周壁に押付けてアンテナ素子の周壁に食い込ませると共に、
上記第1象限の壁部材と第2象限の壁部材とを夫々曲げ形成して両者間の上端縁相互間の間隙を縮めて、上記第1象限の壁部材と第2象限の壁部材の上端縁を合体させ、ブームの断面形状を円形にしたことを特徴とする円形ブームアンテナの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−175569(P2012−175569A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−37521(P2011−37521)
【出願日】平成23年2月23日(2011.2.23)
【出願人】(000113665)マスプロ電工株式会社 (395)
【Fターム(参考)】