説明

円形穴部の内面肉盛方法

【課題】肉盛材を母材に対して確実に固定でき、肉盛材を底面から押さえる押さえ板を不要とすることができる円形穴部の内面肉盛方法を提供する。
【解決手段】金属製母材2に、夫々表層側から内層側に向けて縮径した2つのテーパ状穴部31、32を形成し、両面のテーパ状穴部31、32を内部で連通させることにより貫通した穴部3を形成し、該穴部3にこれと同一形状の肉盛材4を夫々嵌め込み、母材2の表面側から回転工具1をテーパ状穴部31の連通部33まで回転圧入し、回転の摩擦熱により肉盛材4を塑性流動させて母材内面に肉盛層を形成した後、裏面側から回転工具1を連通部33まで回転圧入して貫通させ、母材2の穴部内面に肉盛層4を形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属製母材に形成された穴部に異種金属材料からなる肉盛材を嵌め込み、該肉盛材に回転工具を回転しながら圧入し、回転の摩擦熱により肉盛材を塑性流動させて母材内面に肉盛層を形成する円形穴部の内面肉盛方法に関する。
【背景技術】
【0002】
円形穴部を有する機械部品においては、耐摩耗性、耐熱性、耐久性等の部品に必要とされる機能を向上させるため、又は穴部の磨耗や破損の修理を行なうために、穴部内面に異種金属を肉盛する技術が用いられている。
従来、穴部内面への肉盛には、溶融溶接が多く用いられていた。例えば、穴内部で摺動するような部品は、内面の摺動部に対してTIG溶接による肉盛溶接が行なわれていた。
しかし、手作業で肉盛溶接を行なうことは作業者により品質がばらつくことがあった。また、溶融溶接による肉盛は高温となるため、部品の変形や材料の強度低下が発生することにより肉盛不良を生じることがあった。
【0003】
そこで溶融溶接に代わる肉盛法として、摩擦撹拌接合方法が提案、実用化されている。摩擦撹拌接合は、異種材料同士の接合に適した技術であり、被接合部材の材質より硬質でかつ、溶融温度の高い材質の回転工具を被接合部材の接合部に挿入し、この回転工具を回転させながら移動することにより、被接合部材との間に発生する摩擦熱で被接合部材を塑性流動させ接合する方法である。
【0004】
摩擦撹拌接合方法を採用した穴部内面肉盛技術として、例えば特許文献1(特開2000−301359号公報)には、母材に貫通した穴部の一方を当て部材により塞ぎ、穴部に溶接材を入れ、摩擦棒(回転工具)を回転させながら穴部に圧入し、溶融材を摩擦熱によって塑性流動させて、穴部内面に肉盛面を形成する技術が開示されている。
また、特許文献2(特開2006−102803号公報)には、外側構造体の円形内面に、予めパイプ状となした内側パイプを挿入してバックアップ材で下から押さえておき、円盤状の回転加圧部が先端に取り付けられた回転工具を回転させつつ加圧下に押し付けて、内側パイプを加熱軟化させることにより円形内面に肉盛を形成する方法が開示されている。
【0005】
【特許文献1】特開2000−301359号公報
【特許文献2】特開2006−102803号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の摩擦撹拌接合方法を用いた従来の穴部内面肉盛技術では、貫通穴の内面に肉盛を形成する場合、穴部に挿入した肉盛材が貫通穴から落下したり、回転工具の押圧力により肉盛材がずれないように底面を押さえ板により押さえる必要があった。しかしながら、機械部品の穴部は、立体形状を有する部位に形成されていることもあり、押さえ板を穴部底面に対して十分な圧力で固定することが困難な場合がある。例えば、図2に示されるような部品は、穴部の底面に押さえ板を固定することは難しい。また回転工具は穴部に対して圧入されるため、押さえ板が不安定だと十分に加圧することができず、製品不良を引き起こす惧れがある。
【0007】
従って、本発明は上記従来技術の問題点に鑑み、肉盛材を母材に対して確実に固定でき、肉盛材を底面から押さえる押さえ板を不要とすることができる円形穴部の内面肉盛方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、本発明はかかる課題を解決するために、
金属製母材に形成された穴部に異種金属材料からなる肉盛材を嵌め込み、該肉盛材に回転工具を回転しながら圧入し、回転の摩擦熱により肉盛材を塑性流動させて前記母材の内面に肉盛層を形成する円形穴部の内面肉盛方法において、
前記穴部は、前記母材の一面側から他面側に向けて少なくとも一部が縮径したテーパ面を有し、
前記穴部にこれと同一形状の前記肉盛材を嵌め込み、前記一面側から前記回転工具を挿入し、前記テーパ面に対して前記肉盛材を押し付けて前記回転工具を回転圧入することを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、肉盛材を母材に対して確実に固定でき、肉盛材を底面から押さえる押さえ板を不要とすることが可能となる。即ち、穴部に設けたテーパ面にて肉盛材が支持され、回転工具を圧入する際にテーパ面に肉盛材を押し付けて固定することができるため、穴部が貫通している場合であっても裏側から押さえ板により肉盛材を押さえる必要がなくなる。従って、押さえ板を設置し難い機械部品に対しても、簡単に且つ精度良く穴部内面肉盛を形成することが可能となる。
【0010】
また、前記穴部は、前記母材の表面及び裏面に、夫々表層側から内層側に向けて縮径した2つのテーパ状穴部を形成し、両面のテーパ状穴部を内部で連通させることにより貫通した穴部を形成し、
前記穴部に前記肉盛材を嵌め込み、前記母材の表面側から前記回転工具をテーパ状穴部の連通部まで回転圧入して肉盛層を形成した後、裏面側から前記回転工具を前記連通部まで回転圧入して貫通させ、前記母材の穴部内面に肉盛層を形成したことを特徴とする。
これは、予め表層側から内層側に向けて縮径した2つのテーパ状穴部が内部で連通した貫通穴部を形成しておき、最初に表面側から連通部まで肉盛を形成した後、裏面側から連通部まで肉盛を形成して貫通した肉盛層を形成することにより、夫々の肉盛材を押さえ板で押さえる必要がなく、精度良く穴部肉盛を形成することが可能となる。
【0011】
また、前記母材の表面及び裏面に、夫々表層側から内層側に向けて縮径した2つのテーパ状穴部を形成し、両面のテーパ状穴部を内部で連通させることにより貫通した前記穴部を形成し、
前記穴部に前記肉盛材を嵌め込み、前記母材の表面側から裏面側まで前記回転工具を回転圧入して前記母材の穴部内面に肉盛層を形成することを特徴とする。
これは、予め表層側から内層側に向けて縮径した2つのテーパ状穴部が内部で連通した貫通穴部を形成しておき、表面側から裏面側まで一度に肉盛を形成することにより、作業工程数を減少させ、より簡単に肉盛層を形成することが可能となる。
【0012】
さらに、前記肉盛層を形成した後、該肉盛層の内面側を円筒状に切削して穴部内面を平滑化することを特徴とする。
このように、肉盛を形成した後に平滑面を切削することにより、穴部の寸法を調整することができるとともに、平滑化により高精度の部品を製作することが可能となる。
さらにまた、前記金属製母材がステンレス材料で形成され、前記肉盛材がステライト材料で形成されることが好適である。
【発明の効果】
【0013】
以上記載のごとく本発明によれば、肉盛材を母材に対して確実に固定でき、肉盛材を底面から押さえる押さえ板を不要とすることが可能となる。即ち、穴部に設けたテーパ面にて肉盛材が支持され、回転工具を圧入する際にテーパ面に肉盛材を押し付けて固定することができるため、穴部が貫通している場合であっても裏側から押さえ板により肉盛材を押さえる必要がなくなる。従って、押さえ板を設置し難い機械部品に対しても、簡単に且つ精度良く穴部内面肉盛を形成することが可能となる。
【0014】
また、予め表層側から内層側に向けて縮径した2つのテーパ状穴部が内部で連通した貫通穴部を形成しておき、表面側から裏面側まで一度に肉盛を形成することにより、作業工程数を減少させ、より簡単に肉盛層を形成することが可能となる。
さらに、予め表層側から内層側に向けて縮径した2つのテーパ状穴部が内部で連通した貫通穴部を形成しておき、表面側から裏面側まで一度に肉盛を形成することにより、作業工程数を減少させ、より簡単に肉盛層を形成することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。但しこの実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。
本実施形態の円形穴部の内面肉盛方法は、円形穴部に該穴部と同一形状の肉盛材を嵌め込み、該肉盛材に対して回転工具を回転しながら圧入し、回転の摩擦熱により肉盛材を塑性流動させて母材の内面に肉盛層を形成するものである。
【0016】
母材には、予め穴部が形成されており、該穴部は、母材の一面側から他面側に向けて少なくとも一部が縮径したテーパ面を有する。
母材としては、例えば図2乃至図4に示される機械部品が用いられる。
図2に、穴内部で摺動する機械部品20の斜視図を示す。機械部品20は、2枚の平板部2bが離間して平行に配置され、該平板部2bが連結部2aで連結されたコの字形状を有する。連結部2aには、1つの貫通した穴部3が形成され、平板部2bには夫々貫通した穴部6a、6bが形成されている。
【0017】
図3に、機械部品20の肉盛前の状態を示す。
図3(A)は図2に示した穴部3の断面図である。穴部3は機械部品20の母材2に貫通する穴であり、表面側から裏面側に向けて縮径するテーパ状穴部31と、裏面側から表面側に向けて縮径するテーパ状穴部32が形成され、該テーパ状穴部31とテーパ状穴部32とが連結部33にて連結し、貫通した1つの穴部3を構成している。
図3(B)は穴部6a、6bの断面図である。穴部6a、6bは、機械部品20の母材2の表面側と裏面側に独立した2つの穴部6a、6bとして構成されている。両穴部6a、6bは同軸上に位置する。夫々の穴部6a、6bは、底面が表層側から内層側に向けて縮径するテーパ面61、62を有している。即ち、底面が逆円錐形状を有する構成となっている。
【0018】
図4に、該機械部品20の肉盛後の状態を示す。図4(A)は図3に示した穴部3の断面図で、(B)は穴部6a、6bの断面図を示す。穴部3は、機械部品20の連結部2aに位置する母材2に貫通して形成され、その表面に肉盛層4が設けられる。穴部6a、6bは、機械部品20の平行した2枚の平板部2bに位置する母材2に、夫々貫通した穴部6a、6bが形成され、その表面には夫々肉盛層4、4が設けられる。
図5に回転工具の概略構成図を示す。該回転工具1は、不図示の駆動手段により回転駆動する主軸部11と、主軸部11の先端に取り付けられ該主軸部11と同時に回転駆動するピン12とから構成される。回転工具1は、駆動手段により所定速度で回転するとともに、少なくとも上下方向に変位移動する。
【0019】
本実施形態では、上記したような穴部3、6a、6bに対して、これと同一形状の肉盛材4を嵌め込み、前記回転工具1を挿入して、穴部3、6a、6bのテーパ面に対して肉盛材4を押し付けて回転工具1を回転圧入して穴部内面の肉盛を行なう。
穴部の内面肉盛は、上記したように回転工具1による摩擦撹拌接合によって行なう。摩擦撹拌接合は、被接合材の材質より硬質でかつ、溶融温度の高い材質の回転工具を被接合材の接合部に挿入し、回転工具を回転させながら移動することにより、被接合材との間に発生する摩擦熱で被接合材を軟化させ接合する周知の方法である。
【0020】
本実施形態によれば、肉盛材を母材に対して確実に固定でき、肉盛材を底面から押さえる押さえ板を不要とすることが可能となる。即ち、穴部に設けたテーパ面にて肉盛材が支持され、回転工具を圧入する際にテーパ面に肉盛材を押し付けて固定することができるため、穴部が貫通している場合であっても裏側から押さえ板により肉盛材を押さえる必要がなくなる。従って、押さえ板を設置し難い機械部品に対しても、簡単に且つ精度良く穴部内面肉盛を形成することが可能となる。
以下、実施例1乃至4において、上記した円形穴部の内面肉盛方法につき具体例を示す。
【実施例1】
【0021】
図1は、実施例1に係る内面肉盛方法を説明する図である。本実施例1は、1つの貫通穴に対して肉盛を行なう方法であり、例えば図2に示される機械部品20の穴3などに好適に適用される。
まず、図3(A)に示されるように、母材2に穴部3を形成する。該穴部3は、表面側から内層側に向けて縮径するテーパ状穴部31を形成した後、裏面側から内層側に向けて縮径するテーパ状穴部32を形成し、該テーパ状穴部31とテーパ状穴部32とを連結部33にて連結し、貫通した1つの穴部3を形成する。尚、表面、裏面とは、母材2の一面側と他面側のことであり、特に限定されるものではない。
【0022】
そして、図1(a)に示されるように、穴部3に肉盛材4を嵌め込む。肉盛材4は、テーパ状穴部31と同一形状を有する成形体と、テーパ状穴部32と同一形状を有する成形体を用意し、各成形体を表面、裏面から夫々嵌合させるとよい。尚、裏面に嵌合する成形体は、表面の肉盛が終了した後に嵌め込むようにしてもよい。
図1(b)に示されるように、表面側の肉盛材4に対して、回転工具1を差し込み、連結部33まで回転しながら圧入し、所定時間保持する。一例として、回転工具1の差込回転数は1200rpm、該回転工具1の差込速度は1mm/min、挿入後の保持時間を30秒とする。回転工具1の回転の摩擦熱により肉盛材4は塑性流動し、母材2の内面に結合して肉盛層4が形成される。
【0023】
表面側の肉盛材4の肉盛が終了したら回転工具1のピン12を引き抜き、母材2を裏返して裏面側の肉盛材4に回転工具1を差し込み、回転しながら圧入し、所定時間保持して表面側と同様に肉盛層4を形成する。
図1(d)は表裏両面の肉盛層4が形成された状態を示す。母材表面には、肉盛材4のバリ41が存在し、肉盛材4が母材2表面より盛り上がった状態となっている。
これを所定の板厚となるように切削線Aにて切削加工し、図1(e)に示される状態にする。
そして、所定の穴径となるように肉盛材4の切削線Bにて円筒状に切削加工し、図1(f)に示される状態とする。これにより、平滑化した肉盛層4面を有する穴部3が形成される。
【0024】
本実施例1によれば、回転工具1を回転圧入し、保持する際に、肉盛材4に対しては下方向の押圧力が加わるが、テーパ状穴部31のテーパ面により肉盛材4を押さえ付けることにより、該肉盛材4を確実に固定することができるため、下方側から肉盛材4を押さえる押さえ板を不要とすることができる。
【実施例2】
【0025】
図6を参照して、本実施例2に係る内面肉盛方法を説明する。尚、以下の実施例2乃至実施例4において、上記した実施例1と同様の構成についてはその詳細な説明を省略する。
本実施例2では、まず母材2に、図3(A)に示したように2つのテーパ状穴部31、32からなる1つの貫通穴部3を形成しておき、図6(a)に示されるように、これらのテーパ状穴部31、32に夫々肉盛材4を嵌め込む。
【0026】
次いで、図6(b)に示されるように、表面側から回転工具1を差し込み、回転しながら圧入していく。回転工具1は、所定速度にて裏面側を突き抜けるまで挿入し、所定の保持時間だけ保持する。回転工具1の回転の摩擦熱により肉盛材4は塑性流動し、母材2の内面に結合して肉盛層4が形成される。
その後、回転工具1を引き抜くと、図6(c)に示すように穴部内面に肉盛が形成された状態となる。母材表面には、肉盛材4のバリ41が存在し、肉盛材4が母材2表面より盛り上がった状態となっている。
これを所定の板厚となるように切削線Aにて切削加工して、図6(d)に示される状態にする。
そして、所定の穴径となるように肉盛材4を切削線Bにて円筒状に切削加工し、図6(e)に示される状態とする。これにより、平滑化した肉盛層4面を有する穴部3が形成される。
【0027】
本実施例2によれば、予め表層側から内層側に向けて縮径した2つのテーパ状穴部31、32が内部で連通した貫通穴部を形成しておくことにより肉盛材4を確実に固定することができ、また表面側から裏面側まで回転工具1を回転圧入することにより、一度に肉盛層4を形成することにより、作業工程数を減少させ、より簡単に肉盛層4を形成することが可能となる。
また、本実施例2を応用させた例として、図7に示すように、穴部3を表面側から裏面側に向けて縮径する1つのテーパ状穴部35とし、該テーパ状穴部35にこれと同一形状の肉盛材4を嵌め込んだ後、表面側から裏面側まで回転工具1を差込み、回転圧入して肉盛4を形成するようにしてもよい。これにより、穴部3の構造を簡素化できる。
【実施例3】
【0028】
図8を参照して、本実施例3に係る内面肉盛方法を説明する。
本実施例3では、まず母材2に、図3(B)に示したように独立した2つの穴部6a、6bを形成しておく。該穴部6a、6bは夫々有底円筒形状に形成され、同軸上に位置させる。さらに、夫々の穴部底面は、表層側から内層側に向けて縮径するテーパ面61、62を有している。即ち、底面が逆円錐形状を有する。
この穴部6a、6bに対して、図8(a)に示されるように夫々肉盛材4を嵌め込む。尚、裏面に嵌合する肉盛材4は、表面の肉盛が終了した後に嵌め込むようにしてもよい。
【0029】
次いで、図8(b)に示されるように、表面側から回転工具1を差し込み、穴部6aの境界部63まで所定速度で回転しながら圧入し、所定の保持時間だけ保持する。回転工具1の回転の摩擦熱により肉盛材4は塑性流動し、母材2の内面に結合して肉盛層4が形成される。
表面側の肉盛材4の肉盛が終了したら回転工具1のピン12を引き抜き、母材2を裏返して裏面側の穴部6bに嵌合された肉盛材4に回転工具1を差し込み、回転しながら圧入し、表面と同様に肉盛層4を形成する。
図8(d)は表裏両面の肉盛が形成された状態を示す。母材表面には、肉盛材4のバリ41が存在し、肉盛材4が母材2表面より盛り上がった状態となっている。
【0030】
これを所定の板厚となるように切削線Aにて切削加工するとともに、穴6aと穴6bの間を切削線Cで切削除去し、図8(e)に示される状態にする。
そして、所定の穴径となるように切削線Bで肉盛材4の内部を円筒状に切削除去し、図8(f)に示されるように、平滑化した肉盛層4が形成された穴部6a、6bとする。
本実施例3によれば、図2に示されるように、平行して配置される平板部2b、2bに対して同軸上の穴穴部6a、6bを形成する時に好適に用いられ、また、穴部6a、6bの底面を夫々テーパ面61、62としているため、肉盛4を確実に固定することが可能となる。
【実施例4】
【0031】
図9を参照して、本実施例4に係る内面肉盛方法を説明する。
本実施例4では、上記した実施例3と同様に形成した2つの穴部6a、6bに対して、図9(a)に示されるように夫々肉盛材4を嵌め込む。
次いで、図9(b)に示されるように、表面側から回転工具1を差し込み、回転しながら圧入していく。回転工具1は、所定速度にて裏面側を突き抜けるまで挿入し、所定の保持時間だけ保持する。回転工具1の回転の摩擦熱により肉盛材4は塑性流動し、母材2の内面に結合して肉盛層4が形成される。
肉盛材4の肉盛形成が終了したら回転工具1のピン12を引き抜く。図8(c)は肉盛が形成された状態を示す。
【0032】
これを所定の板厚となるように切削線Aにて切削加工するとともに、穴6aと穴6bの間を切削線Cで切削除去し、図8(d)に示される状態にする。
そして、所定の穴径となるように肉盛材4の内部を切削線Bで円筒状に切削除去し、図8(e)に示されるように、平滑化した肉盛層4が形成された穴部6a、6bとする。
本実施例4によれば、図2に示されるように、平行して配置される平板部2b、2bに対して同軸上の穴を形成する時に好適に用いられ、また、穴部の底面を夫々テーパ状としているため、肉盛4を確実に固定することが可能となる。さらに、表面側から裏面側まで回転工具1を回転圧入することにより、一度に肉盛を形成することにより、作業工程数を減少させ、より簡単に肉盛層を形成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の実施例1に係る内面肉盛方法を説明する図である。
【図2】本実施形態の肉盛方法が適用される機械部品の一例を示す斜視図である。
【図3】図2に示した機械部品の肉盛前の穴部を示す断面図で、(A)は穴部3の断面図、(B)は穴部6a、6bの断面図である。
【図4】図2に示した機械部品の肉盛後の穴部を示す断面図で、(A)は穴部3の断面図、(B)は穴部6a、6bの断面図である。
【図5】本実施形態に用いられる回転工具の概略構成図である。
【図6】本発明の実施例2に係る内面肉盛方法を説明する図である。
【図7】図6の実施例2を応用した例を示す図である。
【図8】本発明の実施例3に係る内面肉盛方法を説明する図である。
【図9】本発明の実施例4に係る内面肉盛方法を説明する図である。
【符号の説明】
【0034】
1 回転工具
2 金属製母材
2a 連結部
2b 平板部
3、6a、6b 穴部
4 肉盛材
11 主軸部
12 ピン
20 機械部品
31、32 テーパ状穴部
33 連結部
61、62 テーパ面
63 境界部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製母材に形成された穴部に異種金属材料からなる肉盛材を嵌め込み、該肉盛材に回転工具を回転しながら圧入し、回転の摩擦熱により肉盛材を塑性流動させて前記母材の内面に肉盛層を形成する円形穴部の内面肉盛方法において、
前記穴部は、前記母材の一面側から他面側に向けて少なくとも一部が縮径したテーパ面を有し、
前記穴部にこれと同一形状の前記肉盛材を嵌め込み、前記一面側から前記回転工具を挿入し、前記テーパ面に対して前記肉盛材を押し付けて前記回転工具を回転圧入することを特徴とする円形穴部の内面肉盛方法。
【請求項2】
前記母材の表面及び裏面に、夫々表層側から内層側に向けて縮径した2つのテーパ状穴部を形成し、両面のテーパ状穴部を内部で連通させることにより貫通した前記穴部を形成し、
前記穴部に前記肉盛材を嵌め込み、前記母材の表面側から前記回転工具をテーパ状穴部の連通部まで回転圧入して肉盛層を形成した後、裏面側から前記回転工具を前記連通部まで回転圧入して貫通させ、前記母材の穴部内面に肉盛層を形成したことを特徴とする請求項1記載の円形穴部の内面肉盛方法。
【請求項3】
前記母材の表面及び裏面に、夫々表層側から内層側に向けて縮径した2つのテーパ状穴部を形成し、両面のテーパ状穴部を内部で連通させることにより貫通した前記穴部を形成し、
前記穴部に前記肉盛材を嵌め込み、前記母材の表面側から裏面側まで前記回転工具を回転圧入して前記母材の穴部内面に肉盛層を形成することを特徴とする請求項1記載の円形穴部の内面肉盛方法。
【請求項4】
前記肉盛層を形成した後、該肉盛層の内面側を円筒状に切削して穴部内面を平滑化することを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の円形穴部の内面肉盛方法。
【請求項5】
前記金属製母材がステンレス材料で形成され、前記肉盛材がステライト材料で形成されることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の円形穴部の内面肉盛方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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