説明

円筒歯車の鍛造成形方法

【課題】外周に歯形を有する円筒歯車の鍛造成形方法において、成形荷重が低く、且つ、歯形に欠肉のない円筒歯車の鍛造成形方法を提供することを目的とする。
【解決手段】一次成形工程にて素材に予備孔3を形成して円筒状の一次成形品W2を成形し、二次成形工程にて一次成形品W2の両端面を軸線方向に押圧して歯形4を有する二次成形品を成形する。このように、一次成形工程にて一次成形品W2に予備孔3を形成して中空化しておくことにより、二次成形工程にて一次成形品W2を押圧する際に、外周側だけでなく中空化した内周側へも肉を流動させることができる。これにより、肉の流れを分散し、肉を流れ易くすることで、成形荷重を低く抑えることができる。更に、肉を流れ易くし、歯形4に欠肉のない円筒歯車を形成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外周に歯形を有する円筒歯車の鍛造成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、外周に歯形を有する円筒歯車の鍛造成形方法として、種々の成形方法が提案されている。例えば、特許文献1に開示される成形方法では、まず、図8(a)に示すように、歯型121を有する成形ダイ120内に素材W100を投入し、予備パンチ130を下降させて素材W100に予備孔103を形成する。次に、図8(b)に示すように、予備パンチ130を下降させたまま成形パンチ150を下降させて素材W100を押圧する。これにより、素材100の肉が成形ダイ120の歯型121内に充填し、素材W100の外周に成形ダイ120の歯型121に対応した歯形104を形成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公昭59−30499号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示される成形方法では、予備パンチ130を下降させたまま成形パンチ150を下降させて素材W100を押圧するため、素材W100の肉は外周側へしか流動できず、肉の流れが集中し、肉が流れ難くなることで、成形荷重が高くなるという問題点があった。その結果、成形ダイが破損し易かったり、成形装置の大型化によるコスト増加を招いていた。また、肉が流れ難いため、成形ダイ120の歯型121内に肉が充填し難く、歯形104に欠肉が生じ易くなるという問題点があった。
【0005】
本発明は、上記事情により鑑みなされたもので、成形荷重が低く、且つ、歯形に欠肉のない円筒歯車の鍛造成形方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の円筒歯車の鍛造成形方法は、円柱状の素材に軸線方向に貫通する予備孔を形成して円筒状の一次成形品を成形する一次成形工程と、内周に歯型を有する成形ダイ内に一次成形品を保持して一次成形品の両端面を軸線方向に押圧することで、一次成形品の外周に成形ダイの歯型に対応した歯形を形成して二次成形品を成形する二次成形工程と、二次成形品に軸線方向に貫通する予備孔よりも大径の貫通孔を形成して円筒歯車を成形する三次成形工程と、を備えていることを第一の特徴とする。
【0007】
本発明の円筒歯車の鍛造成形方法は、二次成形工程では、一対の成形パンチで一次成形品の両端面を押圧することを第二の特徴とする。
【0008】
本発明の円筒歯車の鍛造成形方法は、二次成形工程では、一対の成形パンチで一次成形品の両端面を押圧すると共に一対の成形パンチの先端部を予備孔に圧入し、予備孔に圧入した一対の成形パンチの先端部間には所定間隔の隙間を確保することを第三の特徴とする。
【0009】
本発明の円筒歯車の鍛造成形方法は、一次成形工程の前に、素材の両端面に軸線方向にへこむ凹部を形成する予備成形工程を備え、一次成形工程では、凹部に予備孔を形成することを第四の特徴とする。
【0010】
本発明の円筒歯車の鍛造成形方法は、一次成形工程では、成形ダイ内に保持した素材から一次成形品を成形すると共に、三次成形工程では、成形ダイ内に保持した二次成形品から円筒歯車を成形し、一次成形品を成形ダイ内に保持した状態で一次成形工程から二次成形工程に搬送する一次搬送工程と、二次成形品を成形ダイ内に保持した状態で二次成形工程から三次成形工程に搬送する二次搬送工程と、を備えていることを第五の特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明における第一の特徴の円筒歯車の鍛造成形方法によれば、一次成形工程にて円柱状の素材に予備孔が形成されて円筒状の一次成形品が成形される。そして、二次成形工程にて一次成形品の外周に歯形が形成されて二次成形品が成形された後、三次成形工程にて二次成形品に貫通孔が形成されて円筒歯車が成形される。ここで、一次成形品から二次成形品を成形する二次成形工程では、一次成形品の両端面を軸線方向に押圧することで、一次成形品の外周に成形ダイの歯型に対応した歯形を形成する。このように、一次成形工程にて一次成形品に予備孔を形成して中空化しておくことで、二次成形工程にて一次成形品の両端面を押圧する際に、外周側だけでなく中空化した内周側へも肉を流動させることができる。これにより、肉の流動を分散し、肉を流れ易くすることで、成形荷重を低く抑えることができる。その結果、成形ダイの破損を抑制したり、成形装置の大型化によるコスト増加を回避することができる。更に、肉を流れ易くし、成形ダイの歯型内に肉を充填し易くすることで、歯形に欠肉のない円筒歯車を形成することができる。
【0012】
本発明における第二の特徴の円筒歯車の鍛造成形方法によれば、二次成形工程では、一対の成形パンチで一次成形品の両端面を押圧するので、一方の端面のみを押圧する場合よりも成形パンチに作用する面圧を小さくして、成形荷重を低く抑えることができる。更に、一対の成形パンチで一次成形品の両端面を押圧するので、一方の端面のみを押圧する場合のように、他方の端面に肉が偏って一方の端面に欠肉が生じ易くなることなく、欠肉のない歯形を形成することができる。
【0013】
本発明における第三の特徴の円筒歯車の鍛造成形方法によれば、二次成形工程では、一対の成形パンチで一次成形品の両端面を押圧すると共に一対の成形パンチの先端部を予備孔に圧入するので、内周側への肉の流動を抑制し、外周側への肉の流動量を確保することで、欠肉のない歯形を形成することができる。また、二次成形工程では、予備孔に圧入した一対の成形パンチの先端部間には所定間隔の隙間を確保するので、上述したように内周側への肉の流動を抑制しつつも、内周側へ肉が流動する余地を一対の成形パンチの先端部間に残して、成形荷重を低く抑えることができる。
【0014】
本発明における第四の特徴の円筒歯車の鍛造成形方法によれば、一次成形工程の前に、素材の両端面に軸線方向にへこむ凹部を形成する予備成形工程を備え、一次成形工程では、凹部に予備孔を形成するので、例えば打ち抜きにより予備孔を形成する場合、予備孔を形成するための打ち抜き量を小さくして、成形荷重を低く抑えることができる。
【0015】
本発明における第五の特徴の円筒歯車の鍛造成形方法によれば、一次成形工程では、成形ダイ内に保持した素材から一次成形品を成形すると共に、三次成形工程では、成形ダイ内に保持した二次成形品から円筒歯車を成形し、一次成形品を成形ダイ内に保持した状態で一次成形工程から二次成形工程に搬送する一次搬送工程と、二次成形品を成形ダイ内に保持した状態で二次成形工程から三次成形工程に搬送する二次搬送工程とを備えているので、一次成形工程から三次成形工程までの間に、成形ダイ内から成形品を取り出さずに加工を行うことができる。これにより、各成形工程での成形ダイ内からの取り出しによる加工寸法の誤差発生を抑制して、寸法精度の高い円筒歯車を成形することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】(a)は素材の断面正面図であり、(b)は予備成形品の断面正面図であり、(c)は一次成形品の断面正面図であり、(d)は二次成形品の断面正面図であり、(e)は円筒歯車の断面正面図である。
【図2】成形装置の平面図であり、(a)は各成形ステーションで成形品を成形している状態を、(b)は成形品を搬送している状態を、それぞれ表している。
【図3】本発明の円筒歯車の鍛造成形方法における成形工程を表す図である。
【図4】図2のIV−IV線における予備成形ステーションの部分断面図であり、左半部は予備成形工程を行う前の状態を、右半部は予備成形工程を行っている状態を、それぞれ表している。
【図5】図2のV−V線における一次成形ステーションの部分断面図であり、左半部は一次成形工程を行う前の状態を、右半部は一次成形工程を行っている状態を、それぞれ表している。
【図6】図2のVI−VI線における二次成形ステーションの部分断面図であり、左半部は二次成形工程を行う前の状態を、右半部は二次成形工程を行っている状態を、それぞれ表している。
【図7】図2のVII−VII線における三次成形ステーションの部分断面図であり、左半部は三次成形工程を行う前の状態を、右半部は三次成形工程を行っている状態を、それぞれ表している。
【図8】(a)及び(b)は従来の円筒歯車の鍛造成形方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好適な実施の形態について、添付図面を参照して説明する。まず、図1を参照して、本発明の円筒歯車の鍛造成形方法により成形される成形品について説明する。図1(a)は素材W0の断面正面図であり、図1(b)は予備成形品W1の断面正面図であり、図1(c)は一次成形品W2の断面正面図であり、図1(d)は二次成形品W3の断面正面図であり、図1(e)は円筒歯車W4の断面正面図である。
【0018】
本発明の円筒歯車の鍛造成形方法では、まず、図1(a)に示す円柱状の素材W0から図1(b)に示す予備成形品W1を成形し、その成形した予備成形品W1から図1(c)に示す円筒状の一次成形品W2を成形する。そして、成形した一次成形品W2から図1(d)に示す二次成形品W3を成形し、その成形した二次成形品W3から図1(e)に示す円筒歯車W4を成形する。
【0019】
予備成形品W1は、素材W0の両端面(E0,E0)に軸線方向にへこむ凹部1と軸線方向に突出する凸部2とを形成したものであり、後述する予備成形工程S1(図4参照)にて成形される。一次成形品W2は、予備成形品W1の凹部1に軸線方向に貫通する予備孔3を形成したものであり、後述する一次成形工程S3(図5参照)にて成形される。二次成形品W3は、一次成形品W2の外周に平歯の歯形4を形成したものであり、後述する二次成形工程S5(図6参照)にて成形される。円筒歯車W4は、二次成形品W3に軸線方向に貫通する予備孔3よりも大径の貫通孔5を形成したものであり、後述する三次成形工程S7にて成形される。
【0020】
次に、図2を参照して、本発明の円筒歯車の鍛造成形方法に使用される成形装置10について説明する。図2は成形装置10の平面図であり、(a)は各成形ステーション11,12,13,14で成形品W1,W2,W3,W4を成形している状態を、(b)は成形品W1,W2,W3,W4を搬送している状態を、それぞれ表している。
【0021】
図2に示すように、成形装置10は、予備成形工程S1を行い素材W0から予備成形品W1を成形する予備成形ステーション11と、一次成形工程S3を行い予備成形品W1から一次成形品W2を成形する一次成形ステーション12と、二次成形工程S5を行い一次成形品W2から二次成形品W3を成形する二次成形ステーション13と、三次成形工程S7を行い二次成形品W3から円筒歯車W4を成形する三次成形ステーション14とを有している。各成形ステーション11,12,13,14の中央には回転自在なターンテーブル15が設置されており、そのターンテーブル15には成形ダイ20を先端に有する伸縮自在な4本のアーム16が取り付けられている。
【0022】
成形品W1,W2,W3,W4は、成形ダイ20内に保持され、図2(a)に示すように、アーム16を伸ばすことで成形ダイ20ごと各成形ステーション11,12,13,14内に投入される。そして、各成形ステーション11,12,13,14で所定の成形工程S1,S3,S5,S7が行われた後は、図2(b)に示すように、アーム16を縮めてターンテーブル15を回転させることで成形ダイ20ごと次工程の成形ステーション11,12,13,14に搬送される。
【0023】
成形ダイ20は、円筒歯車W4の歯形4に対応した歯型21と、その歯型21を上方および下方から支持する支持型22,23とによって構成されている(図4から図7参照)。
【0024】
次に、図3から図7を参照して、本発明の円筒歯車の鍛造成形方法について説明する。図3は本発明の円筒素材の鍛造成形方法における成形工程を表す図である。図4は図2のIV−IV線における予備成形ステーション11の部分断面図であり、左半部は予備成形工程S1を行う前の状態を、右半部は予備成形工程S1を行っている状態を、それぞれ表している。図5は図2のV−V線における一次成形ステーション12の部分断面図であり、左半部は一次成形工程S3を行う前の状態を、右半部は一次成形工程S3を行っている状態を、それぞれ表している。図6は図2のVI−VI線における二次成形ステーション13の部分断面図であり、左半部は二次成形工程S5を行う前の状態を、右半部は二次成形工程S5を行っている状態を、それぞれ表している。図7は図2のVII−VII線における三次成形ステーション14の部分断面図であり、左半部は三次成形工程S7を行う前の状態を、右半部は三次成形工程S7を行っている状態を、それぞれ表している。
【0025】
本発明の円筒歯車の鍛造成形方法では、図3に示すように、予備成形工程S1、予備搬送工程S2、一次成形工程S3、一次搬送工程S4、二次成形工程S5、二次搬送工程S6、三次成形工程S7の順に各工程が行われる。まず、予備成形工程S1では、図4に示すように、成形ダイ20内に投入した素材W0の両端面(E0,E0)を一対の予備パンチ30,30で軸線方向に押圧する。これにより、素材W0の両端面(E0,E0)に軸線方向にへこむ凹部1を形成して一次成形品W1を成形する。
【0026】
予備パンチ30は、凹部1に対応した形状の先端部31と、その先端部31よりも大径の本体部32とを有している。これにより、予備成形工程S1では、素材W0の両端面(E0,E0)を予備パンチ30で押圧することで、先端部31の外周に肉が充填し、素材W0の両端面(E0,E0)に凹部1の輪郭に沿って軸線方向に突出する凸部2を形成することができる。
【0027】
予備搬送工程S2では、アーム16を縮めてターンテーブル15を回転させる。これにより、予備成形品W1を成形ダイ20内に保持した状態で予備成形ステーション11から一次成形ステーション12に搬送する(図2(b)参照)。
【0028】
次に、一次成形工程S3では、図5に示すように、成形ダイ20内に保持した予備成形品W1の凹部1を予備ピアスパンチ40で打ち抜く。これにより、予備成形品W1の凹部1に軸線方向に貫通する予備孔3を形成して一次成形品W2を成形する。このように、凹部1に予備孔3を形成することで、予備孔3を形成するための打ち抜き量を小さくして、成形荷重を低く抑えることができる。
【0029】
一次搬送工程S4では、アーム16を縮めてターンテーブル15を回転させる。これにより、一次成形品W2を成形ダイ20内に保持した状態で一次成形ステーション12から二次次成形ステーション13に搬送する(図2(b)参照)。
【0030】
次に、二次成形工程S5では、図6に示すように、成形ダイ20内に保持した一次成形品W2の両端面(E2,E2)を一対の成形パンチ50,50で軸線方向に押圧する。これにより、成形ダイ20の歯型21内に肉を充填させ、一次成形品W2の外周に歯形4を形成して二次成形品W3を成形する。この場合、一次成形工程S3にて一次成形品W2に予備孔3を形成して中空化しておくことで、一次成形品W2の両端面(E2,E2)を押圧する際に、図6の矢印Fで示すように、外周側だけでなく中空化した内周側へも肉を流動させることができる。これにより、肉の流れを分散し、肉を流れ易くすることで、成形荷重を低く抑えることができる。更に、肉を流れ易くし、成形ダイ20の歯型21内に肉を充填し易くすることで、欠肉のない歯形4を形成することができる。また、一対の成形パンチ50,50で一次成形品W2の両端面(E2,E2)を押圧するので、一方の端面のみを押圧する場合よりも成形パンチ50に作用する面圧を小さくして、成形荷重を低く抑えることができる。更に、一対の成形パンチ50,50で一次成形品W2の両端面(E2,E2)を押圧するので、一方の端面のみを押圧する場合のように、他方の端面に肉が偏って一方の端面に欠肉が生じ易くなることなく、欠肉のない歯形4を形成することができる。加えて、この場合、一次成形工程S3にて一次成形品W2の両端面(E2,E2)に軸線方向に突出する凸部2を形成しておくことで、一次成形品W2の両端面(E2,E2)を押圧する際に、凸部2の肉を流動させて、欠肉のない歯形4を形成することができる。
【0031】
成形パンチ50は、一次成形品W2の予備孔3よりも僅かに大径の先端部51と、その先端部51よりも大径の本体部52とを有しており、二次成形工程S5では、先端部51を予備孔3に圧入して本体部52で一次成形品W2の両端面(E2,E2)を押圧する。これにより、一次成形品W2の両端面(E2,E2)を押圧する際に、内周側への肉の流動を抑制し、外周側への肉の流動量を確保することで、欠肉のない歯形4を形成することができる。また、二次成形工程S5では、予備孔3に圧入した一対の成形パンチ50,50の先端部51,51間に所定間隔(L)を確保する。これにより、上述したように内周側への肉の流動を抑制しつつも、内周側へ肉が流動する余地を一対の成形パンチ50,50の先端部51,51間に残して、成形荷重を低く抑えることができる。
【0032】
二次搬送工程S6では、アーム16を縮めてターンテーブル15を回転させる。これにより、二次成形品W3を成形ダイ20内に保持した状態で二次成形ステーション13から三次次成形ステーション14に搬送する(図2(b)参照)。
【0033】
次に、三次成形工程S7では、図7に示すように、成形ダイ20内に保持した二次成形品W3を予備ピアスパンチ40よりも大径の成形ピアスパンチ60で打ち抜く。これにより、二次成形品W3に軸線方向に貫通する予備孔3よりも大径の貫通孔5を形成して円筒歯車W4を成形する。
【0034】
以上のように、本発明の円筒歯車の鍛造成形方法によれば、一次成形工程S3にて一次成形品W2に予備孔3を形成して中空化しておくことで、二次成形工程S5にて一次成形品W2の両端面(E2,E2)を押圧する際に、外周側だけでなく中空化した内周側へも肉を流動させることができる。これにより、肉の流れを分散し、肉を流れ易くすることで、成形荷重を低く抑えることができる。その結果、成形ダイ20の破損を抑制したり、成形装置10の大型化によるコスト増加を回避することができる。更に、肉を流れ易くし、成形ダイ20の歯型21内に肉を充填し易くすることで、歯形4に欠肉のない円筒歯車W4を形成することができる。
【0035】
また、本発明の円筒歯車の鍛造成形方法によれば、一次搬送工程S4にて一次成形品W2を成形ダイ20内に保持した状態で一次成形工程S3から二次成形工程S5に搬送すると共に、二次搬送工程S6にて二次成形品W3を成形ダイ20内に保持した状態で二次成形工程S5から三次成形工程S7に搬送するので、一次成形工程S3から三次成形工程S7までの間に、成形ダイ20内から成形品W2,W3を取り出さずに加工を行うことができる。これにより、各成形工程S3,S5、S7での成形ダイ20内からの取り出しによる加工寸法の誤差発生を抑制して、寸法精度の高い円筒歯車W4を成形することができる。
【0036】
なお、本実施の形態では、円筒歯車W4の歯形4として平歯を形成したが、歯形4の形状は必ずしも平歯に限られるものではなく、例えば、ヘリカル歯を形成しても良い。
【0037】
また、本実施の形態では、一次成形工程S3を行う前に予備成形工程S1を行い、素材W0に軸線方向にへこむ凹部1を形成して予備成形品W1を成形したが、必ずしも予備成形工程S1を行う必要はなく、予備成形工程S1を省略し、素材W0に予備孔3を直接形成して一次成形品W2を成形しても良い。これにより、成形工程の数を減らし、成形時間の短縮を図ることができる。
【0038】
また、本実施の形態では、成形パンチ50の先端部51を予備孔3に圧入して一次成形品W2の両端面(E2,E2)を押圧したが、必ずしも先端部51を予備孔3に圧入する必要はなく、単に一次成形品W2の両端面(E2,E2)を押圧しても良い。
【符号の説明】
【0039】
1 凹部
2 凸部
3 予備孔
4 歯形
5 貫通孔
20 成形ダイ
21 歯型
30 予備パンチ
50 成形パンチ
51 先端部(成形パンチの先端部)
S1 予備成形工程
S3 一次成形工程
S4 一次搬送工程
S5 二次成形工程
S6 二次搬送工程
S7 三次成形工程
E0 素材の端面
E2 一次成形品の端面
L 所定間隔
W0 素材
W2 一次成形品
W3 二次成形品
W4 円筒歯車

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周に歯形(4)を有する円筒歯車(W4)の鍛造成形方法において、
円柱状の素材(W0)に軸線方向に貫通する予備孔(3)を形成して円筒状の一次成形品(W2)を成形する一次成形工程(S3)と、
内周に歯型(21)を有する成形ダイ(20)内に前記一次成形品(W2)を保持して前記一次成形品(W2)の両端面(E2,E2)を軸線方向に押圧することで、前記一次成形品(W2)の外周に前記成形ダイ(20)の歯型(21)に対応した歯形(4)を形成して二次成形品(W3)を成形する二次成形工程(S5)と、
前記二次成形品(W3)に軸線方向に貫通する前記予備孔(3)よりも大径の貫通孔(5)を形成して前記円筒歯車(W4)を成形する三次成形工程(S7)と、
を備えていることを特徴とする円筒歯車の鍛造成形方法。
【請求項2】
前記二次成形工程(S5)では、一対の成形パンチ(50,50)で前記一次成形品(W2)の両端面(E2,E2)を押圧することを特徴とする請求項1記載の円筒歯車の鍛造成形方法。
【請求項3】
前記二次成形工程(S5)では、前記一対の成形パンチ(50,50)で前記一次成形品(W2)の両端面(E2,E2)を押圧すると共に前記一対の成形パンチ(50,50)の先端部(51,51)を前記予備孔(3)に圧入し、前記予備孔(3)に圧入した前記一対の成形パンチ(50,50)の先端部(51,51)間には所定間隔(L)の隙間を確保することを特徴とする請求項2記載の円筒歯車の鍛造成形方法。
【請求項4】
前記一次成形工程(S3)の前に、前記素材(W0)の両端面(E0,E0)に軸線方向にへこむ凹部(1)を形成する予備成形工程(S1)を備え、
前記一次成形工程(S3)では、前記凹部(1)に前記予備孔(3)を形成することを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の円筒歯車の鍛造成形方法。
【請求項5】
前記一次成形工程(S3)では、前記成形ダイ(20)内に保持した前記素材(W0)から前記一次成形品(W2)を成形すると共に、前記三次成形工程(S7)では、前記成形ダイ(20)内に保持した前記二次成形品(W3)から前記円筒歯車(W4)を成形し、
前記一次成形品(W2)を前記成形ダイ(20)内に保持した状態で前記一次成形工程(S3)から前記二次成形工程(S5)に搬送する一次搬送工程(S4)と、
前記二次成形品(W3)を前記成形ダイ(20)内に保持した状態で前記二次成形工程(S5)から前記三次成形工程(S7)に搬送する二次搬送工程(S6)と、
を備えていることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の円筒歯車の鍛造成形方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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