説明

円筒状ワーク切断装置

【課題】円筒状ワーク切断装置において、ワーク保持部のスムーズな径の拡大縮小がスパッタにより妨げられるのを防止する。
【解決手段】金属製の円筒状ワークを保持手段により保持し、保持手段を回転させながらワークにレーザ光を照射し、ワークを輪切り状に切断して金属リングを形成する円筒状ワーク切断装置において、保持手段を構成する円筒状保持部材110の内壁に形成されたスリット111、112を塞ぐテフロン(登録商標)シート114を、保持部材110の基端から先端にかけて設ける。これにより、ワークの切断時に生じるスパッタが、保持部材110のスリット111、112より内側に侵入するのを阻止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属製の円筒状ワークを輪切り状に切断して金属リングを形成する円筒状ワーク切断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、このような円筒状ワーク切断装置として、金属製薄板の両端縁を接合して得られる円筒状のワークを、円筒軸の周りに回転させながら、円筒軸に直交する方向に照射するレーザ光で輪切り状に切断し、金属リングを形成するようにしたものが知られている(たとえば特許文献1参照)。
【0003】
ワークの回転は、円筒状の外面を有するワーク保持部によりワークを内面側から保持し、ワーク保持部を円筒の中心軸の周りに回転させることにより行われる。ワーク保持部は円筒軸方向に複数のスリットが設けられており、弾性的に径が変更可能となっている。ワークの保持は、ワークの内面をワーク保持部の外面に対向させ、ワーク保持部の径を拡大することによって行われる。
【0004】
このようにしてワークを切断する場合、ワークを構成する金属が、レーザ光の照射により溶融し、スパッタとして飛散したり、再び凝固してドロスとして切断部分に付着したりするという問題がある。かかる問題に対処するため、従来、スパッタの飛散を阻止するフードを設けたり、溶融金属の発生を抑制する冷却媒体を供給したりする措置が講じられている。
【0005】
たとえば、特許文献1に記載された円筒状ワーク切断装置では、円筒状のワークを保持して回転させる保持部材の側壁に冷却媒体用通路を形成し、該通路に冷却媒体を流通させてワークを冷却することにより、切断部分以外のワーク部分が溶融するのを回避し、ドロスやスパッタの発生を抑制するようにしている。
【0006】
この装置においては、また、ワークに対するレーザ光の照射により発生する昇華金属ガスや溶融金属等を、吐出ノズルから吐出される圧縮エアや上述の冷却媒体とともに吸引ノズルで吸引することにより、切断箇所を清浄に保つようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−184246号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、溶融金属の発生を抑制したり、切断個所を清浄に保持したりする措置を講じたとしても、不可避的に発生するスパッタが、ワーク保持部内にスリットを介して侵入し、ワーク保持部のスムーズな径の拡大縮小を妨げるおそれがある。
【0009】
本発明の目的は、このような従来技術の問題点に鑑み、円筒状ワーク切断装置において、スパッタによりワーク保持部のスムーズな径の拡大縮小が妨げられるのを防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、金属製の円筒状ワークを保持手段により保持し、該保持手段を回転させながらワークにレーザ光を照射することによりワークを輪切り状に切断して金属リングを形成する円筒状ワーク切断装置であって、前記保持手段は、径方向に伸縮自在な円筒状の外壁を有し、該外壁によりワークを内壁側から保持する中空円筒状の保持部材と、内側面が内錐面となっていて円筒状の外壁を有し、該外壁が前記保持部材の内壁を押圧して該保持部材の径を増大させる押圧部材と、前記内錐面に対応する外錐面を備え、該外錐面の軸方向に移動されたとき、該内錐面に該外錐面が作用し、前記押圧部材の径を増大させる径変化部材とを備え、前記保持部材及び押圧部材は、軸方向に沿って一方の端部から他方の端部の近傍まで設けられたスリット、及び該他方の端部から該一方の端部の近傍まで設けられたスリットを周方向に交互に備え、これにより径方向に弾性的に伸縮自在となっている。
【0011】
この構成においてはワークがレーザ光の照射により切断されるとき、ワークを構成する金属が溶融して生ずるスパッタが、保持部材のスリットを経て、さらに押圧部材のスリットなどに侵入すると、保持部材や押圧部材の径方向への伸縮に支障を来すおそれがある。
【0012】
そこで、本発明は、前記ワークの切断時に生じるスパッタが、前記保持部材のスリットより内側に侵入するのを阻止するシート部材が、前記保持部材の内壁と前記押圧部材の外壁との間に設けられていることを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、上記シート部材が設けられているので、保持部材のスリット内に飛散したスパッタがさらに押圧部材のスリットなどに侵入するのを阻止することができる。したがって、スパッタの侵入により保持部材や押圧部材の伸縮に支障を来すのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態に係る円筒状ワーク切断装置の正面図である。
【図2】図1の装置における保持部の断面図である。
【図3】図1の装置における保持部材の詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を用いて本発明の実施形態について説明する。図1は本発明の一実施形態に係る円筒状ワーク切断装置の正面図である。同図に示すように、この装置は、円筒状ワークWを保持してその円筒軸の周りに回転可能な保持部100と、保持部100により回転されるワークWにレーザ光を照射してワークWを輪切り状に切断する加工ヘッド200と、保持部100の基端側に連結されたスピンドル300と、スピンドル300を回転させるモータ400とを備える。
【0016】
モータ400の回転軸及びスピンドル300には、それぞれ図示していないプーリが設けられる。これらのプーリ間にはタイミングベルト500が掛け渡されており、スピンドル300はモータ400の回転に応じて回転するようになっている。保持部100の下方には、ワークWの切断時に生じるスパッタについての集塵を行う集塵手段700が設けられる。
【0017】
集塵手段700は、上面が開放した直方体形状の箱のような集塵部701と、所定方向に沿って飛散するスパッタを集塵部701に向けて反射する平板状の反射部702とを備える。集塵手段700は、集塵部701が保持部100の下方に位置し、反射部702が集塵部701に向けて、所定方向のスパッタを反射できる位置に配置される。
【0018】
円筒状ワーク切断装置はさらに、加工ヘッド200を保持してX、Y、Z方向に移動させるXYZステージ600を備える。XYZステージ600上には、ワークWの径を測定するレーザセンサ800が設けられる。円筒状ワーク切断装置の制御部は、レーザセンサ800の出力に基づき、レーザ光の焦点位置がワークWを適切に切断し得る位置となるように、XYZステージ600により、加工ヘッド200のX軸方向位置を制御する。
【0019】
ワークWは矩形状の金属製薄板の両端を接合して円筒状に形成したものである。これを円筒状ワーク切断装置によって所定幅毎に切断することにより、CVT用金属ベルトが製造される。金属製薄板としては、たとえば、厚さが0.3〜0.4mm程度のマルエージング鋼が用いられる。
【0020】
図2は回転軸を含む面で切断した保持部100部分の断面図である。同図に示すように、保持部100は、ワークWの内面に接してワークWを支持するほぼ円筒形状の保持部材110と、保持部材110の内壁を押圧するほぼ円筒状の押圧部材120と、押圧部材120の径を変化させるための円錐面(外錐面)131及び141をそれぞれ有する第1径変化部材130及び第2径変化部材140と、第1径変化部材130及び第2径変化部材140間の位置を調整するための連結バー150及びコイルスプリング160とを備える。
【0021】
図3(a)は保持部材110の断面図であり、同図(b)は保持部材110を同図(a)の左方である基端側から見た図である。また、同図(c)は、保持部材110の基端から先端近傍まで形成された第1スリット111部分を、保持部材110の回転軸に垂直な方向における保持部材110の外側から見た様子を示す。同図(d)は、保持部材110の先端から基端近傍まで形成された第2スリット112部分を、同様に外側から見た様子示す。
【0022】
第1スリット111及び第2スリット112は同数、たとえば8個ずつが交互に配置されており、これにより保持部材110は径方向に弾性的に伸縮自在となっている。保持部材110の外周側には、回転軸方向に所定間隔を置いて複数の周方向溝113が設けられる。各周方向溝113は、上述の第1スリット111及び第2スリット112と交差する。加工ヘッド200によるレーザ光の照射は、周方向溝113上に位置するワークW部分に対して行われる。
【0023】
保持部材110の内壁には、保持部材110の基端から先端にかけて、第1スリット111及び第2スリット112を塞ぐ帯状のシート114が設けられる。シート114は各第1スリット111毎及び第2スリット112毎に設けられる。このために、保持部材110の内壁には、シート114を収容するための凹部115が設けられる。
【0024】
シート114は、第1スリット111及び第2スリット112上のワークWがレーザ光の照射により切断される際に生じるスパッタが、第1スリット111及び第2スリット112より内側に侵入するのを阻止する機能を有する。したがって、シート114としては、保持部材110の伸縮を妨げないように弾力性を有するとともに、スパッタに対する耐熱性を備え、スパッタが付着しないような材質のものが用いられる。
【0025】
このような材質のものとしては、たとえば、厚さが0.5mm程度のテフロン(登録商標)シートが該当する。テフロン(登録商標)をコーティングしたシートであってもよい。
【0026】
保持部材110の基端及び先端の近傍は、ワークWを支持する支持面よりも径が小さな小径部116a及び116bとなっている。小径部116a及び116bの周面には、該周面を一周する周溝117a及び117bが設けられる。周溝117a及び117b内に保持部材110を収縮させるOリング118(図2)が配置され、保持部材110を収縮方向に付勢している。
【0027】
周溝117aよりも基端側の小径部116aの部分には、所定の角度範囲にわたり、周方向に沿った凸部119が設けられる。凸部119は、相互に180°離れた位置に位置する2つの第2スリット112の基端側の2箇所に設けられる。
【0028】
図2に示すように、保持部材110は、スピンドル300の先端に固定された2つの円環状の連結部材310及び320を介してスピンドル300に連結される。このために、連結部材320は、保持部材110側端部において、環状の挿入口321を備える。挿入口321の入り口側における外側の周壁は、凸部119に対応する導入部を除き、径が小さくなった小径部322となっている。
【0029】
保持部材110は、凸部119が前記導入部に対応するように小径部116aが連結部材320の挿入口321に嵌合され、回転されることにより、小径部322によって凸部119の軸方向への移動が阻止され、連結部材320に固定される。
【0030】
押圧部材120の外周面は、保持部材110の内壁を押圧し得るように、該内壁に対向する。押圧部材120の基端側の内側には、第1径変化部材130の円錐面131に対応する円錐面(内錐面)121が設けられる。押圧部材120の先端側の内側には、第2径変化部材140の円錐面141に対応する円錐面(内錐面)122が設けられる。円錐面121及び122はいずれも頂部側が押圧部材120の中心に向いている。
【0031】
押圧部材120には、その円筒軸方向に沿った図示していない基端側スリットが基端側端面から先端近傍まで形成される。また、同様の先端側スリットが、先端側端面から基端近傍まで形成される。基端側スリット及び先端側スリットは同数、たとえば12個ずつが交互に配置されており、これにより、押圧部材120は径方向に弾性的に伸縮自在となっている。
【0032】
第1径変化部材130は、基端側の円柱状の部分と、その先端側に位置し、円錐面131を有する円錐台部分とを備える。該円柱状部分の径と、該円錐台部分の底面の径は同一であり、両部分は段差なく接続している。第1径変化部材130の中心軸上において、連結バー150が貫通する。第1径変化部材130の基端部に、連結バー150の基端部が固定される。
【0033】
第2径変化部材140は円錐台状の形状を有し、円錐面141を形成する。第2径変化部材140の中心軸上において連結バー150が貫通する。コイルスプリング160は、第1径変化部材130の円錐台部分の頂部と、円錐台状の第2径変化部材140の頂部との間に介在し、両者が離れる方向に付勢する。コイルスプリング160内を、連結バー150が通る。
【0034】
円錐台状の第2径変化部材140の底面には、円盤状のカバー部材170が固定される。カバー部材170の外周部は、保持部材110の小径部116bが嵌合可能な環状の嵌合溝171が設けられる。
【0035】
カバー部材170の中心を、連結バー150が貫通する。カバー部材170の軸方向外側に隣接する連結バー150部分に嵌合するナット180により、カバー部材170に対する第1径変化部材130の位置を調整することができるようになっている。
【0036】
スピンドル300は、基盤910(図1)上において、支持部材920により支持される。支持部材920とスピンドル300との間にはベアリング930が介在する。これにより、スピンドル300は、その回転軸の回りに回転自在となっている。
【0037】
スピンドル300には、保持部100にエアを供給するための貫通孔330が中心軸上に設けられる。第1径変化部材130の円柱状部分と、スピンドル300、第1連結部材310、第2連結部材320、及び保持部材110の基端部との間には隙間が形成される。貫通孔330はこの隙間に接続する。これにより、スピンドル300の貫通孔330から、保持部材110の第1スリット及び第2スリットに通じるエア供給路340が形成される。
【0038】
保持部100とは反対側の貫通孔330の端部は、図示していない送気管に接続される。この送気管は、冷却媒体としての圧縮エアを供給する圧縮エア供給源に接続される。
【0039】
この構成において、ワークWの切断加工を行う際には、まず、保持部材110の外周に対してワークWの内周が対向するように、ワークWが保持部材110に装着される。次に、ナット180が回転され、第2径変化部材140が第1径変化部材130の方向に変位される。これに伴ってコイルスプリング160が圧縮する。
【0040】
これにより、第1径変化部材130及び第2径変化部材140は相互に近接する方向に変位するので、押圧部材120は、第1径変化部材130及び第2径変化部材140の円錐面131及び141から受ける力により径が増大する。
【0041】
押圧部材120の径が増大すると、保持部材110の内壁が、押圧部材120の側面により押圧され、保持部材110の径が増大する。これにより、ワークWは、歪みが矯正されるとともに、保持部材110によってクランプされる。この後、ナット180を逆方向に回し、コイルスプリング160の反発力により第1径変化部材130及び第2径変化部材140を離間させて、押圧部材120の径を若干元に戻し、又は初期の径に戻すようにしてもよい。
【0042】
次に、モータ400が駆動される。これにより、スピンドル300を介してワークWが回転される。ワークWの回転速度は、図示していない制御手段により制御され、たとえば30〜200m/分の周方向に沿った速度に設定される。また、図示していないエア供給源からは、冷却媒体としての圧縮エアの供給が開始される。
【0043】
エア供給源から供給される圧縮エアは、エア供給路340を介して、保持部材110の第1スリット及び第2スリットに供給され、さらには、周方向溝113に供給される。このとき、上述の押圧部材120の径の戻しが行われていた場合には、保持部材110とワークWとの間には若干のクリアランスが存在するので、供給される圧縮エアは、このクリアランスにおいて空気膜を形成する。
【0044】
また、このようにして保持部材110の側壁に圧縮エアが到達することにより、該側壁が冷却効率に優れた冷やし金として機能する。なお、上述の押圧部材120の径の戻しが行われていなかった場合でも、圧縮エアが保持部材110とワークWとの間に侵入し、空気膜を形成する。
【0045】
これに応じ、円筒状ワーク切断装置の制御手段は、与えられているワークWの材料と厚み、及び要求されるドラグラインの傾き、並びに自身が把握しているワークW(保持部材110)の回転速度に基づき、所定の対応テーブルを参照し、距離Dを求める。そして、XYZテーブル600を制御し、図1に示すように、加工ヘッド200の位置を、その光軸がワークWの回転軸に向かうラインL1上の位置から距離Dだけ離れたラインL2上の位置となるように加工ヘッド200をY軸の負の方向へ平行移動させる。
【0046】
対応テーブルには、試行結果に基づき、各ワークWの材料毎に、少なくとも1つのドラグラインの傾き、並びに該傾きに対応するワークWの厚み、保持部材110(ワークW)の回転速度、及び距離Dが対応付けられている。対応テーブルに含められる少なくとも1つのドラグラインの傾きとしては、ドロスの付着量が少なかったときの値が採用される。
【0047】
なお、ドラグラインとは、レーザ光によりワークWを切断するときに発生した溶融金属が凝固するときに切断面に形成される層状の線である。ドラグラインの傾きは、レーザ光による切断部分へのドロスの付着量に関係する。ドラグラインがワークWの表面に対して垂直であるほど、ドロスの付着量が少ないことがわかっている。
【0048】
次に、レーザセンサ800の出力に基づいて得られるワークWの直径に基づき、レーザ光の焦点位置がワークWを適切に切断し得る位置となるように加工ヘッド200のX軸方向位置を制御する。また、最初の金属リングの切断位置となるように、XYZステージ600のZ方向位置を制御する。
【0049】
最初の金属リングの切断位置は、保持部材110の最も先端側の周方向溝113上に位置するワークWに対してレーザ光が照射される位置である。次に、加工ヘッド200からワークWに対し、レーザ光が照射される。レーザ光が照射されたワークWの部分は温度が上昇して溶融し、切断されてゆく。このようにしてワークWが1回転すると、ワークWの最も先端側の部分が、1つ目の金属リングとして、他の部分から切り離される。
【0050】
このレーザ光による切断に際しては、レーザ光の照射によりワークWの一部が昇華して発生する昇華金属ガスが凝集して切断部分に付着したり、溶融金属が切断部分に付着したりしてドロスが発生するおそれがある。かかるドロスの付着は、保持部材110とワークWとの間に形成される空気膜や、加工ヘッド200からのアシストガスの吐出により抑制される。
【0051】
また、このとき、図1に示すように、レーザ光の照射により溶融した金属が、スパッタとなってワークWの内側方向d1及び外側方向d2に飛散する。内側方向d1に飛散したスパッタは、保持部100の保持部材110等に衝突して反射し、集塵手段700の集塵部701内に落下する。また、外側方向d2に飛散したスパッタは反射部702により反射され、集塵部701に落下する。これにより、スパッタは支障なく集塵手段700により集塵される。
【0052】
このとき、ワークWの内側方向d1に飛散するスパッタは、シート114に衝突するが、シート114に付着することはなく、加工ヘッド200から吐出されるアシストガスや、エア供給路340から周方向溝113に供給される圧縮エアによるパージ作用によって支障なく排出される。また、シート114が存在するため、スパッタが保持部材110と押圧部材120との間や、押圧部材120の基端側スリット又は先端側スリットへ侵入することはない。
【0053】
このようにして1つ目の金属リングの切断が終了すると、加工ヘッド200が、ワークWにおける次の切断位置に対応する位置に位置するように、ワークWの軸方向に沿って移動される。すなわち、保持部材110の先端側から2番目の周方向溝113上に位置するワークWにレーザ光が照射される位置に移動される。
【0054】
そして、この位置において、再び上述と同様にしてレーザ光が照射され、ワークWが切断され、2つ目の金属リングが形成される。このようにして、順次、周方向溝113上に加工ヘッド200が位置決めされ、金属リング形成されてゆく。ただし、この間、Y軸方向における加工ヘッド200の位置は、常に、図1で示されるラインL2上の位置に維持される。
【0055】
以上説明したように、本実施形態によれば、保持部材110の内壁及び押圧部材120の外壁との間に、保持部材110の第1スリット111及び第2スリット112の開口部を覆うシート114を設けたため、ワークWの切断により生じるスパッタが保持部材110と押圧部材120との間や、押圧部材120の基端側スリット又は先端側スリットへ侵入するのを阻止することができる。したがって、スパッタにより保持部材110及び押圧部材120の径のスムーズな増減に支障を来たすのを防止することができる。
【符号の説明】
【0056】
100…保持部(保持手段)、110…保持部材、111…第1スリット、112…第2スリット、113…周方向溝、114…シート、120…押圧部材、200…加工ヘッド、130…第1径変化部材、140…第2径変化部材、300…スピンドル、400…モータ、500…タイミングベルト、600…XYZステージ、700…集塵手段、W…ワーク。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製の円筒状ワークを保持手段により保持し、該保持手段を回転させながらワークにレーザ光を照射することによりワークを輪切り状に切断して金属リングを形成する円筒状ワーク切断装置であって、
前記保持手段は、
径方向に伸縮自在な円筒状の外壁を有し、該外壁によりワークを内壁側から保持する中空円筒状の保持部材と、
内側面が内錐面となっていて円筒状の外壁を有し、該外壁が前記保持部材の内壁を押圧して該保持部材の径を増大させる押圧部材と、
前記内錐面に対応する外錐面を備え、該外錐面の軸方向に移動されたとき、該内錐面に該外錐面が作用し、前記押圧部材の径を増大させる径変化部材とを備え、
前記保持部材及び押圧部材は、軸方向に沿って一方の端部から他方の端部の近傍まで設けられたスリット、及び該他方の端部から該一方の端部の近傍まで設けられたスリットを周方向に交互に備え、これにより径方向に弾性的に伸縮自在となっており、
前記ワークの切断時に生じるスパッタが前記保持部材のスリットより内側に侵入するのを阻止するシート部材が、前記保持部材の内壁と前記押圧部材の外壁との間に設けられていることを特徴とする円筒状ワーク切断装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate