説明

円筒状基体の洗浄方法

【課題】清浄な円筒状基体表面を安定して形成可能な円筒状基体の製造方法及び製造装置を提供する。
【解決手段】本発明の円筒状基体の製造方法は、表面汚染検出装置102及び洗浄液汚染検出装置111により汚染状態を検出する検出工程を含む。表面汚染検出装置102は円筒状基体101の表面の汚染状態を検出する。洗浄液汚染検出装置111は、円筒状基体101を脱脂及び清浄するための貯留槽103に貯留された洗浄液104の汚染状態を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、シリコン原子を母材とする非晶質材料からなる感光層を形成する等の処理を施すアルミニウムを主体とする円筒状基体の洗浄方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真感光体用の円筒状基体は、電子写真感光体の帯電特性等の均一性向上を目的として、感光層形成前に旋盤等により所望の寸法に切削加工されている。この切削加工時に使用する切削油や切削時に基板に付着する切り粉を円筒状基体表面から除去するために、洗浄を行い清浄化している。この基板の洗浄方法は、近年、環境への配慮から、塩素系溶剤を用いた溶剤洗浄から界面活性剤を用いた水系洗浄に変わってきている。このような状況下において、基板の切削方法、洗浄方法及び電子写真感光体の製造方法に関する様々な提案が開示されている。
【0003】
基板の切削に関する技術として、例えば、数平均分子量が500以上の成分を1重量%以上含有し、且つ動粘度が4.0cst以下である切削油を用いて切削加工を行う技術が開示されている。この技術を用いた基板上に感光層を形成することにより、画像欠陥の無い電子写真感光体を作製することが可能であるとされている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、アルミニウム製の円筒状基体の洗浄に関する技術として、感光層を形成する前に、二酸化炭素を溶解した水により円筒状基体を洗浄する技術(例えば、特許文献2参照)、特定の成分のインヒビターを含む水を用いて円筒状基体表面を洗浄する技術が開示されている(例えば特許文献3参照)。これにより、アルミニウム製の円筒状基体表面で生じる腐食反応を抑制することで、アルミニウム製の円筒状基体を用いた電子写真感光体の画像欠陥が良好となる。
【0005】
更に、前述した基板表面の状態を識別に関する技術として、半導体基板をフッ酸及び硝酸の混合溶液で洗浄し半導体基板表面に化学酸化膜を形成させて、この表面をX線光電子分光法又は赤外吸収スペクトルで解析することにより目的の化学酸化物が生成したかを識別する技術が開示されている(例えば特許文献4参照)。
【特許文献1】特開平04−108899号公報
【特許文献2】特許3102721号公報
【特許文献3】特開平11−143103号公報
【特許文献4】特開平10−229064号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来技術のように、基体の切削技術及び洗浄技術に関する開示により、アルミニウムを母材とする円筒状基体への傷及び腐食を抑制することが可能となった。このような円筒状基体を用いることにより、画像欠陥の少ない電子写真感光体の製造が可能となり、良好な画像が出力可能な電子写真装置が市場に提供されるようになってきた。
【0007】
しかしながら、近年、電子写真装置がカラー化へと進展したことにより、従来以上の高画質化への市場要求が高まっている。同時に、エコロジーへの意識の高まりから、更なる電子写真感光体の高寿命化、省エネルギー化が求められている。具体的には、a−Siドラムを用いたカラー複写機の更なる高画質化への市場要求が高まっている。
【0008】
この市場要求を満たすためには、画像欠陥として画像に現れる感光層の異常成長部を徹底的に抑制することが必要である。そのためには、円筒状基体起因で発生する異常成長部をできるだけ安定して抑えることが必要となってきている。
【0009】
アルミニウム円筒状基体を用いた電子写真感光体において発生する画像欠陥の原因は、
(A)基体上の粉塵
(B)基体の表面欠陥
(C)洗浄工程で基体に付着した汚物
(D)アルミニウムと含有不純物によって生じる腐食
に大別できる。
【0010】
(A)の粉塵等の付着は切削、洗浄など円筒状基体を取り扱う場所のクリーン化を図る及び成膜炉内の清掃を厳密に行うことと共に、感光層形成の直前に円筒状基体表面を洗浄することによりある程度防止することが可能になった。図13に従来の洗浄装置における詳細な洗浄槽の概略断面図を示す。
【0011】
また、(B)の表面欠陥の原因として、アルミニウム中に含まれるアルミニウムよりも高硬度の不純物が挙がられる。これらの高硬度の物質が、切削工程の際に加工機の刃にえぐられた結果、アルミニウム円筒状基体上に表面欠陥が発生することが知られている。そのため、表面欠陥を低減するためには、アルミニウムに含有される不純物は少なくする、又は、アルミニウムにSi原子を含有させることで、ある程度防止することが可能となった。
【0012】
一方、(C)の洗浄工程でアルミニウム表面に付着した汚物は、有機物汚染と洗浄シミの2つに大きく分けられる。有機物汚染は、切削工程でアルミニウム表面の酸化を防ぐためにコーティングされた切削油を脱脂槽にて完全に除去できなかった時に生じる場合がある。また、洗浄シミは、薬液によるシミと水によるシミとに分けることができる。薬液によるシミの1つ目の原因として、洗浄工程を繰り返し行うことにより、円筒状基体に付着した脱脂槽の薬液がリンス槽へと持ち込まれるためにリンス槽の洗浄液が汚染されることが挙げられる。これにより、リンス工程後の円筒状基体表面に薬液が付着して薬液によるシミが発生する。また、もう1つの原因として、脱脂槽の温度上昇が挙げられる。これにより、円筒状基体自体の温度が上昇するため、脱脂槽からリンス槽への搬送中に円筒状基体表面が乾いてしまい、その結果、円筒状基体表面に付着していた薬液が固着するために薬液によるシミが発生する。そして、水によるシミの原因としては、リンス工程での洗浄液が完全に除去できない場合が挙げられる。これは、乾燥工程にて乾燥が適切に行われなかったために、円筒状基体表面に水滴が残ってしまい、これが乾くことによって水によるシミが発生する。
【0013】
これら円筒状基体表面に付着した汚物は、円筒状基体の洗浄を繰り返し行うことによる貯留槽内の洗浄液の汚染が進行した結果、洗浄不良や円筒状基板への再付着を引き起こしたものや、突発的な洗浄機の故障結果、洗浄不良により発生する可能性が高いと考えられる。そして、これらが洗浄後のアルミニウム基板表面にあることにより、この基板上に感光層を形成した際に、異常成長部として出現する場合があった。
【0014】
しかしながら、従来の洗浄装置では、洗浄液の汚れに有機物汚染が発生したとしても、円筒状基体表面の目視観察では見ることができないため、感光層を形成した後に初めて洗浄液の異常を分かる場合があった。そのため、従来では、洗浄液としての能力が低下する前に定期的に洗浄液の交換を行い、画像欠陥のある電子写真感光体がでないようにしてきた。
【0015】
また、突発的な洗浄装置の異常により発生した有機物汚染及びシミに関しても、目視で確認できないため、上述したように感光層を形成した後に初めて洗浄装置の異常に気が付く場合があった。
【0016】
また、これら有機物汚染及びシミに関しては、ヒーターの有無や円筒状基体の置き台の形状等により各洗浄槽によって円筒状基体上での発生位置が異なっていた。
【0017】
更に、有機物汚染の対策として、ヒーター温度を上げると円筒状基体の温度も上昇するため洗浄シミが発生しやすくなる。この洗浄シミの対策方法として、次の洗浄槽への洗浄液の搬入を防ぐために引き抜き速度を遅くすることが考えられるが、搬送時間が長くなってしまうために、今までとは異なる原因で洗浄シミが発生してしまう場合があり、洗浄シミを完全に対策することはかなり困難であった。
【0018】
(D)のアルミニウムと含有不純物によって生じる腐食は、アルミニウムを母材とする円筒状基体を超純水に浸漬させた際に、Si原子、Fe原子、Cu原子が局所的に多い部分で超純水による腐食が発生する場合があった。そのため、洗浄液中に腐食防止剤を添加することによりアルミニウムの腐食を防止していた。しかしながら、(C)の洗浄工程で円筒状基体表面に汚物等が付着すると、アルミニウム表面に腐食防止膜が部分的に形成されにくい範囲ができる場合があり、この結果、汚物が付着していた部分のみに腐食が発生し、感光層形成後に異常成長部が発生する場合があった。
【0019】
よって、上記課題を解決するとともに、高画質に対応可能な電子写真感光体の安定した生産を実現するためには、感光層を形成する前の円筒状基体表面を従来以上に清浄化することが必要であることがわかった。
【0020】
そこで、本発明の目的としては、アルミニウムを母材とする円筒状基体表面の汚染状態及び/又は、洗浄液中の汚染状態を厳密に管理することにより、清浄な円筒状基体表面を安定して形成可能な洗浄方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記目的を達成すべく鋭意検討を行った結果、アルミニウムを主成分とする円筒状基体表面及び/又は各貯留槽内に貯留されている洗浄液を汚染検出手段により厳密に制御することにより、腐食及び有機物汚染による円筒状基体の不良を低減し、安定して画像欠陥の無い電子写真感光体の生産が可能であることを見出し、本発明を完成させるに至ったものである。
【0022】
詳細に記述すると、本発明は、アルミニウムを主成分とする円筒状基体に切削油を用いて旋盤加工を施す切削工程と、加工後の円筒状基体を脱脂及び清浄化するための洗浄工程とを有する洗浄方法において、円筒状基体表面の汚染状態、及び/又は円筒状基体を脱脂及び清浄化するための貯留槽に貯留された洗浄液の汚染状態の少なくとも1つを検出しながら円筒状基体の清浄化を行うことを特徴とする円筒状基体の洗浄方法に関する。
【0023】
上記のように、アルミニウムを母材とする円筒状基体表面及び/又は、前記円筒状基体を洗浄する貯留槽内に貯留された洗浄液の汚染状態を検出して厳密に管理することにより、経時的に発生する洗浄液の汚染や突発的な洗浄装置の異常に起因した異常成長部の発生を安定して抑制することが可能となる。この結果、画像欠陥の良好な電子写真感光体を安定して提供することが可能となった。更に、脱脂槽や皮膜形成槽の洗浄液を能力が低下するまで使うことが可能となるため、メンテナンス回数が低減し、生産コストの低減が可能となった。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、アルミニウムを主成分とする円筒状基体表面、及び/又は、各貯留槽内に貯留されている洗浄液の汚染状態を検出して厳密に管理することにより、貯留槽内に貯留された洗浄液の経時的な汚染による円筒状基体への汚染や、突発的な洗浄液の異常、洗浄装置のプログラム異常による洗浄不足等による洗浄不良品を最小限に抑えることが可能となる。
【0025】
この結果、常に清浄に洗浄された円筒状基体を供給することが可能となるため、洗浄後の円筒状基体上に感光層を形成することにより、常に画像欠陥の良好な電子写真感光体が得られる。
【0026】
また、洗浄工程で不良となった円筒状基体数を最小限に抑えるとともに、これら洗浄不良の円筒状基体に感光層を形成させることがないため、不良品の低減及びタクトアップとなりコストダウンが可能となる。
【0027】
更に、円筒状基体表面及び洗浄液の汚染を測定することにより、洗浄液の洗浄能力が低下する直前まで使うことが可能となるため、洗浄液の交換頻度を必要最小限にでき、且つ洗浄液の使用量も低減するため、更にコストダウンが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
次に、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。
「本発明に関わる円筒状基体の洗浄装置」
図1は、本発明の洗浄方法で用いられる円筒状基体の洗浄を行うための第1の実施形態を示す洗浄装置の模式的な概略断面図である。
【0029】
図1に示す洗浄装置は、切削後の円筒状基体101を置くための洗浄前ストッカー107と、3槽から構成され、且つ洗浄液が貯留された貯留槽104と、洗浄後の円筒状基体101を置くための洗浄後ストッカー108より構成されている。そして、図1に示す洗浄装置における洗浄槽は、切削時に円筒状基体表面に付着する切削油を除去する脱脂工程を行う脱脂槽11である第1槽と、脱脂工程で円筒状基体表面に付着した脱脂工程で用いられる洗浄液を除去するリンス工程を行うリンス槽13である第2槽と、リンス工程後に円筒状基体表面から水を除去し乾燥させる乾燥工程を行う乾燥槽14である第3槽から構成されている。
【0030】
脱脂槽11の第1槽には、円筒状基体表面101に付着した切削油の除去ができたかを判別するために、円筒状基体表面101の汚染状態を検出するための汚染検出手段102が設置されている。また、リンス槽30第2槽には、脱脂槽11から持ち込まれた洗浄液による汚染を判別するために、リンス槽13の洗浄液中の汚染状態を検出するための汚染検出手段111が設置されている。
【0031】
本発明において、脱脂工程、リンス工程、乾燥工程に加え、他の機能を有する工程を設置しても良い。また、リンス工程を2つ有するような同じ機能を有する工程を複数設けても良い。
【0032】
図2は、本発明の洗浄方法で使用する円筒状基体の洗浄を行うための第2の実施形態を示す洗浄装置の模式的な概略断面図であり、図1の洗浄装置における洗浄槽の数が4槽で構成された洗浄装置である。図2に示す洗浄装置における洗浄槽は、脱脂槽21である第1槽と、円筒状基体表面に皮膜を形成させるための皮膜形成槽22である第2槽と、第2槽で円筒状基体表面に付着した皮膜形成液を除去するリンス槽23である第3槽と、乾燥槽24である第4槽から構成されている。
【0033】
本発明において、アルミニウムを母材とする基体を純水により洗浄する際には、腐食を防止するために脱脂工程後に皮膜形成工程を加えた方が好ましい。
【0034】
本発明における洗浄工程の流れを図2を用いて説明する。洗浄装置は、アルミニウムを母材とする円筒状基体を洗浄するための処理部と基体搬送機構により構成されている。処理部は、切削後の円筒状基体201を置くための洗浄前ストッカー207と、脱脂槽21、皮膜形成槽22、リンス槽23、乾燥槽24からなる洗浄槽及び洗浄後の円筒状基体201を置くための洗浄後ストッカー208から構成されている。脱脂槽21、皮膜形成槽22、リンス槽23、乾燥槽24とも不図示の温度調節装置により洗浄液の温度を一定に保っている。
【0035】
切削加工後の円筒状基体201は、投入台210上に置かれた後、搬送機構206により脱脂槽に搬送される。図5は、図2の脱脂槽21の詳細図である。脱脂槽51には、純水で希釈された界面活性剤の洗浄液504が貯留されており、貯留槽503と貯槽512の間を循環ポンプ516により洗浄液が循環している。このとき、洗浄液504は、ヒーター517及び冷却機構518により所定の温度となるように制御されている。また、槽内循環ポンプ514によって、槽内循環ライン513を通って槽内循環が行われている。搬送機構506は、搬送レール519と搬送アーム521よりなり、搬送アーム521は、搬送レール519上を移動する移動機構520、円筒状基体501を保持するチャッキング機構523及びチャッキング機構523を上下させるためのエアーシリンダー522よりなっている。
【0036】
この脱脂工程では、洗浄液504に円筒状基体501を浸漬させた状態で不図示の超音波発振器を用いて処理することにより、円筒状基体501表面に付着した切削油の脱脂を行うことが好ましい。脱脂工程が終了した後、受け台509により洗浄液より取り出し、エアーシリンダー522により引き上げられる。エアーシリンダー522が完全に円筒状基体501を引き上げた状態で、円筒状基体表面の汚染を検出する汚染検出手段502により基板表面に残存する切削油を測定する。
【0037】
次に、円筒状基体201は、搬送機構206により皮膜形成槽に搬送される。図6は、図2の皮膜形成槽の詳細図である。皮膜形成槽61は、純水にインヒビターを加えた洗浄液604が貯留されており、脱脂槽と同様に貯槽循環及び槽内循環が行われている。この皮膜形成槽61では、円筒状基体601表面に腐食防止のための皮膜の形成が行われる。皮膜形成工程が終了した後、受け台609により洗浄液604より取り出し、搬送機構606により引き上げられる。このとき、皮膜形成槽61に貯留されている洗浄液604の汚染を検出する汚染検出手段611により皮膜形成工程後の洗浄液604の状態を測定する。
【0038】
次に、図2に示す円筒状基体201は、搬送機構206によりリンス槽23に搬送され、25℃の温度に保たれた純水等によりすすぎ洗浄が行われる。純水等は一定の導電率を維持するために、工業用導電率計(商品名:α900R/C、堀場製作所製)により確認している。
【0039】
最後に、円筒状基体201は搬送機構206により乾燥槽24へと搬送され、温純水等にて昇降装置(図示せず)により引き上げ乾燥が行われる。温純水等も純水同様に導電率を維持するために、工業用導電率計(商品名:α900R/C、堀場製作所製)により確認している。エアーシリンダーにより完全に引き上げた状態で、円筒状基体表面の汚染を検出する汚染検出手段202により基板表面に残存する水分を測定する。
【0040】
乾燥工程が終了した円筒状基体201は、搬送機構206により洗浄後ストッカー208へと搬送される。
【0041】
本発明において、アルミニウムを母材とする円筒状基体の洗浄工程は、前記円筒状基体表面の汚染状態、及び/又は円筒状基体を脱脂及び清浄化するための貯留槽に貯留された洗浄液の汚染状態の少なくとも1つを検出しながら円筒状基体の清浄化を行うことを特徴としている。
【0042】
図1に示すような脱脂工程を行う脱脂槽11、リンス工程を行うリンス槽13、及び乾燥工程を行う乾燥槽14を有する洗浄装置においては、円筒状基体表面の汚染状態を検出するための測定位置は特に制限はないが、少なくとも脱脂工程終了後、又は乾燥工程終了後に円筒状基体表面の汚染状態を検出することが好ましい。
【0043】
汚染検出手段で測定する物質としては、脱脂工程終了後に円筒状基体表面を測定する場合は、脱脂洗浄が正常か否かを判断するために切削油を、又は、脱脂工程での温度上昇による薬液の乾燥によって生じる薬液シミの有無を判断するために薬液を測定すると良い。また、乾燥工程終了後に測定する場合は、乾燥槽14での乾燥不十分を確認するために水分量を検出することがと良い。
【0044】
ここでいう脱脂工程終了後とは、脱脂槽11の洗浄液104(1)から取り出される、すなわち、円筒状基体が脱脂槽から引き上げられてから次の洗浄槽に浸漬するまでの間であり、同様に、乾燥工程終了後とは、乾燥槽14の処理液104(4)から取り出される、すなわち、乾燥槽14から引き上げられてから洗浄後ストッカー108に置かれるまでの間を意味する。
【0045】
図2に示す脱脂工程を行う脱脂槽21、皮膜形成工程を行う皮膜形成槽22、リンス工程を行うリンス槽23及び乾燥工程を行う乾燥槽24を有する洗浄装置においても同様に、円筒状基体表面の汚染状態を検出するための測定位置は特に制限はないが、少なくとも脱脂工程終了後、皮膜形成工程終了後、又は乾燥工程終了後に円筒状基体表面の汚染状態を検出することが好ましい。
【0046】
皮膜形成工程終了後の円筒状基体表面の汚染状態を検出する場合、汚染検出手段にて検出する物質は、皮膜形成工程へと持ち込まれた脱脂工程で用いられる洗浄液を検出することが好ましい。ここでいう皮膜形成工程終了後とは、円筒状基体が皮膜形成槽22の洗浄液204(2)から取り出される、すなわち、皮膜形成槽22から引き上げられてから次の洗浄槽に浸漬するまでの間を意味する。
【0047】
本発明において、円筒状基体表面の汚染状態、及び/又は貯留槽内に貯留されている洗浄液の汚染状態を検出するための方法は特に制限はないが、赤外吸収(IR)スペクトルを用いることが、汚染検出手段の洗浄装置への導入が容易であることから好ましい。
【0048】
次に、IRスペクトルを用いた検出方法の概略を以下に説明する。
【0049】
まず、円筒状基体表面及び洗浄液の汚染状態を検出するために予め汚染の原因となるもの、例えば、切削工程で用いられる切削油や、脱脂工程で用いられる洗浄液等をIRにより測定し、IRスペクトルを求めておく。このIRスペクトルの結果から、汚染状態を検出するために使用するピークの波長、汚染状態では吸収が見られない波長を求めておく。そして、円筒状基体表面及び洗浄液における、求めた波長のIRの吸光度を測定し、汚染状態でも吸収が見られない波長の吸光度を基準として円筒状基体表面や貯留槽内に貯留されている洗浄液の汚染状態を検出する。
【0050】
本発明では、上述したように特定の波長を用いて円筒状基体表面や貯留槽内に貯留されている洗浄液の汚染状態を検出する方が好ましい。その理由としては、特定の波長のIRのみを使用することにより、IRスペクトルの測定及び解析時間を短縮することが可能となる。その結果、各洗浄工程間での搬送時間をほぼ変えずに、円筒状基体表面や貯留槽内に貯留されている洗浄液の汚染状態を検出することが可能となるため、従来と同様にシミが発生しない各洗浄槽間の搬送が可能となる。
<検出手段の設置位置:円筒状基体表面の汚染の測定方法>
円筒状基体表面の汚染状態を検出するための測定位置としては、図1の脱脂槽11のように洗浄を終了した後のエアーシリンダーによる上昇時に、図14(A)に示すような汚染検出手段1402の対向位置を円筒状基体1401の長手方向1424に1ライン測定してもよい。また、図2の脱脂槽21のように搬送機構206により円筒状基体201(b)が上昇し終わった時点で、図14(B)に示すような汚染検出手段1402の対向位置1425のみを測定しても良いし、更には、搬送機構による洗浄槽間の移動時に図14(C)に示すような円筒状基体1401の長手方向に対して垂直方向1426を測定しても良い。
【0051】
特に、各洗浄槽において円筒状基体表面の汚染が発生しやすい位置のみを測定することが好ましい。具体的に円筒状基体の洗浄工程において汚染が発生しやすい位置として、脱脂槽では洗浄液の乾燥によるシミや切削油による汚染が円筒状基体の上端部に、また、乾燥槽では水シミが円筒状基体の下端部であり、この位置の汚染状態を検出することが好ましい。
【0052】
このように、汚染検出手段を動かさずに予め決めておいた円筒状基体表面上のみを測定する理由は、以下の通りである。まず、汚染検出手段の移動による発塵を抑え、円筒状基体へのダストの付着を抑えるためである。次に、広い範囲で測定すると、IRスペクトルの解析に時間を要するためである。円筒状基体は、各工程間の移動に時間がかかればかかるほど、洗浄液の乾燥が進み、シミの発生する確率が増加するためである。これらのことから、汚染検出手段を動かさずに予め決めておいた円筒状基体表面上のみを測定することにより、IRスペクトルの解析速度をあげられるため、各工程間の移動速度を従来とほぼ同等にすることが可能となる。
【0053】
図1に示す洗浄装置において、貯留槽103(2)内に貯留された洗浄液104(2)の汚染状態を検出するための測定位置には特に制限はないが、脱脂槽11、又はリンス槽13の少なくとも1つで洗浄液の汚染状態を検出することが好ましい。
【0054】
図2に示す洗浄装置においても、貯留槽203(2)内に貯留された洗浄液204(2)の汚染状態を検出するための測定位置は特に制限はないが、脱脂槽21、又は、皮膜形成槽22、又は、リンス槽23の少なくとも1つで洗浄液の汚染状態を検出することが好ましい。
【0055】
貯留槽内に貯留されている洗浄液の汚染状態を測定する方法としては、図1に示すように、貯留槽103(2)にバイパス管を接続してその中を流れる洗浄液の汚染を測定してもよいし、直接洗浄液の液面を測定しても良い。しかし、洗浄液104(2)の液面には円筒状基体の置き台109(2)の昇降時の発泡等があることから、貯留槽103(2)にバイパス管を接続して測定した方が好ましい。
【0056】
各洗浄槽において、円筒状基体表面、及び/又は、貯留槽内に貯留された洗浄液の汚染状態を測定するための汚染検出手段の数は特に制限がなく、図5のような円筒状基体表面の汚染検出手段502のみを用いて汚染状態を検出してもよいし、図6のような貯留槽内の洗浄液の汚染検出手段611のみを用いて検出してもよいし、更に、図7のように両方702、711を用いて検出しても良い。また、洗浄装置においても同様であり、例えば、脱脂槽のみ汚染検出手段を例えば脱脂槽のみに設置しても良いし、全て洗浄槽に設置しても良い。
【0057】
本発明において、異なる機能を有する洗浄槽の少なくとも2つ以上に、少なくとも2つ以上の汚染検出手段を用いて汚染を検出する場合には、図3のように、円筒状基体表面の汚染状態を検出する汚染検出手段302の測定位置が円筒状基体301(b)の長手方向で異なることが好ましい。また、前記洗浄液の汚染状態を検出する汚染物質が各洗浄槽で異なることが好ましい。更に、円筒状基板表面と前記洗浄液の汚染状態が異なる洗浄槽にて検出を行う場合には、検出する物質が各槽で異なることが好ましい。
【0058】
このとき、異なる機能を有する洗浄槽とは、洗浄槽内で円筒状基体に施す処理が異なることを示している。例えば、脱脂工程を行う脱脂槽とリンス工程を行うリンス槽は、洗浄装置内で異なる機能を有している。一方、粗リンス工程とリンス工程は、同じリンス工程という機能を有している。
【0059】
この理由として、複数の汚染検出手段を用いて円筒状基体表面、及び/又は、洗浄液内の汚染状態を検出することにより、円筒状基体で発生しうる汚染状態を短時間でより多く検出することが可能となる。そのため、円筒状基体の洗浄を厳密に管理することが可能となるため、洗浄不良の発生を更に低減することが可能となる。
【0060】
本発明において、円筒状基体表面及び/又は、洗浄液の汚染状態を検出するための汚染検出手段が所定の汚染を検出した場合、洗浄工程を停止するとともに、オペレーターが洗浄装置の異常を即座に知ることができるために警報装置が稼働することが好ましい。警報装置は、パトライト、ブザー等どのような装置でも構わないが、どの工程で異常が発生したかが分かるように、図2に示すような各槽に警報装置205を設置する、若しくは、どの工程で異常が発生したかを識別できる警報装置であることがより好ましい。
【0061】
また、本発明において、円筒状基体表面及び/又は、洗浄液の汚染状態を検出するための汚染検出手段が所定の汚染を検出した場合、洗浄工程を停止するとともに、汚染が検出された工程の貯留槽内の洗浄液を排出し、新たな洗浄液を供給した後に洗浄工程を開始することが、生産タクトの観点から好ましい。これについて、図8及び図9を用いて説明する。
【0062】
図8は、洗浄液804として薬液を用いる脱脂槽及び皮膜形成槽等の貯槽を有する洗浄槽における自動洗浄液交換工程を説明するための概略説明図である。貯留槽803に貯留された洗浄液804の汚染を汚染検出手段811が検出した場合、汚染検出手段811より出力された信号により制御部828が、循環ラインポンプ814、貯留槽供給用ポンプ816を止め、ヒーター817を切る。その後、開閉バルブ824を開き、貯留槽803、循環ライン813及び貯槽812に入っている洗浄液を排出する。貯留槽803及び貯槽812に設置されている不図示の液面センサーにより貯留槽803及び貯槽812内に洗浄液が無くなったことを検出した後、液面センサーより出力された信号により開閉バルブ824を閉め、次に予備貯槽開閉バルブ826を開き、予備貯槽ポンプ825を稼働して予備貯槽827から貯槽812へと新しい洗浄液を供給する。貯槽812の液面センサーが貯槽812への洗浄液の供給を識別した後、貯留槽供給用ポンプ816、ヒーター817を稼働させる。貯留槽803の液面センサーが洗浄液の所定の貯留量を識別した後、循環ラインポンプ814を稼働させる。予備貯槽の不図示の液面センサーが液面を検出したら、予備貯槽ポンプ825を止め、予備貯槽開閉バルブ826を閉める、新しい洗浄液の交換を終了する。新しい洗浄液の交換終了後、所定の温度まで洗浄液が昇温された後、再び洗浄工程が稼働する。
【0063】
図9は、リンス槽及び乾燥槽等の貯槽の無い洗浄槽における自動洗浄液交換工程を説明するための概略説明図である。貯留槽903に貯留された洗浄液904の汚染を汚染検出手段911が検出した場合、汚染検出手段911より出力された信号により制御部928が、供給ラインからの供給を止めた後、循環ラインポンプ914を止める。その後、開閉バルブ924を開き、貯留槽903及び循環ライン913内の洗浄液904を排出する。貯留槽903に設置されている不図示の液面センサーにより貯留槽903に洗浄液904が無くなったことを検出した後、液面センサーより出力された信号により開閉バルブ924を閉めた後、供給ラインを開いて洗浄液904を供給する。貯留槽903の液面センサーが洗浄液の所定の貯留量を識別した後、循環ラインポンプ914を稼働させ、新しい洗浄液の交換を終了する。新しい洗浄液の交換終了後、所定の温度まで洗浄液が昇温された後、再び洗浄工程が稼働する。
【0064】
このように、異常を確認した場合に自動で新しい洗浄液へと交換することにより、洗浄工程の停止時間を最小限にすることができ、感光層形成工程のタクトの遅れを最小限にすることが可能となる。
【0065】
次に、本発明で用いられる洗浄装置の洗浄槽について、詳細に説明する。
<脱脂槽>
脱脂槽は、切削工程にて円筒状基体表面に付着した切削油を薬液により除去する洗浄槽である。この脱脂槽で用いられる薬液は、環境等への配慮から水系の洗浄液を用いることが望ましく、特に界面活性剤等を含有した薬液を用いることが好ましい。
【0066】
水系の洗浄を行う場合、界面活性剤を溶解する前の水の水質は、特に半導体グレードの純水を用いるのが好ましい。
【0067】
本発明において脱脂工程で用いられる界面活性剤は、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、またはそれらの混合したもの等、特に制限はない。そのなかでも、カルボン酸塩、スルホン酸塩、硫酸エステル塩、燐酸エステル塩等の陰イオン性界面活性剤または、脂肪酸エステル等の非イオン性界面活性剤を用いることが特に好ましい。
【0068】
本発明において、脱脂工程では、円筒状基体を洗浄液に浸し、超音波により脱脂することが有効である。超音波の周波数は、1kHz以上、200kHz以下が好ましい。また、超音波の出力は、0.5W/リットル以上、10W/リットル以下が好ましい。
<皮膜形成槽>
本発明において、アルミニウム表面に部分的に露出したSi、Fe、Cu原子が多い部分は周囲の通常のアルミニウムの部分と局所的な電池を形成して、特に純水等では腐食が促進されることから、インヒビターを添加して皮膜を形成し、円筒状基体が純水等に接触する前に皮膜を形成することが好ましい。
【0069】
本発明の洗浄工程で用いられるインヒビターはリン酸塩、珪酸塩、ホウ酸塩等が上げられいずれも可能であるが、珪酸塩が適している。
【0070】
また、珪酸塩の中でも、珪酸カリウム、珪酸ナトリウム等が挙げられいずれも可能であるが、珪酸カリウムが適している。
【0071】
洗浄水中に含まれる珪酸塩の濃度は、濃すぎると痕跡によるシミが発生してしまい、感光層の剥れの原因となる。また、薄すぎると皮膜形成効果が小さくなってしまう。よって、珪酸塩の濃度は、0.05%以上2%以下、好ましくは、0.1%以上1.5%以下、最適には、0.2%以上1%以下が適している。
【0072】
この皮膜形成槽で用いる水は、前述したグレードの純水を用いることが好ましい。また、水温は、10℃以上70℃以下、好ましくは20℃以上60℃以下、最適には30℃以上50℃以下であることが好ましい。
<リンス槽>
脱脂槽での脱脂工程後、又は、皮膜形成槽での皮膜形成工程後は、円筒状基体表面から薬液を除去するためにリンス槽により円筒状基体表面を清浄化する必要がある。
【0073】
このリンス槽で用いる水は、前述したグレードの純水を用いることが好ましい。また、水温は、10℃以上70℃以下、好ましくは20℃以上60℃以下、最適には30℃以上50℃以下であることが好ましい。
【0074】
また、リンス方法に関しては、ディップ形式、シャワー形式等があるが、どれを用いても円筒状基体表面を薬液で適切に清浄化できれば、どのような形式でも問題はない。
【0075】
シャワー形式で円筒状基体表面に水を吹き付ける場合には、水の圧力は、2kg・f/cm2(200kPa)以上、300kg・f/cm2(30000kPa)以下、好ましくは10kg・f/cm2(1000kPa)以上、200kg・f/cm2(20000kPa)以下、最適には20kg・f/cm2(2000kPa)以上、150kg・f/cm2(5000kPa)以下が適している。
【0076】
この理由としては、水の圧力が弱すぎると円筒状基体表面に付着した薬液を除去が不十分となってしまう場合がある。また、強すぎると特に円筒状基体の材料がアルミニウムの場合には、腐食を起してしまう。この結果、感光層形成後の電子写真感光体を用いて画像を出力すると画像不良が確認される場合がある。
【0077】
更に、本発明において、リンス槽の数には制限は無く、円筒状基体表面に求められる清浄度が得られるように、リンス槽の数を調整することが望ましい。しかし、円筒状基体に過度のリンスを行うと、腐食の原因となるため2槽が好ましい。
【0078】
本発明において、円筒状基体表面に付着したダストを除去するために、リンス工程にて超音波によるダスト除去を行うことが好ましい。超音波の周波数は、好ましくは100kHz以上、3MHz以下、更に好ましくは200kHz以上、1MHz以下が効果的である。超音波の出力は、好ましくは0.1W/リットル以上、100W/リットル以下、更に好ましくは0.5W/リットル以上、10W/リットル以下が効果的である。
<乾燥槽>
リンス工程後は、円筒状基体表面及び内面を乾燥させるための乾燥工程を施す。乾燥工程は、温風乾燥、真空乾燥、温水乾燥等いずれの乾燥方法も有効であるが、円筒状基体表面のダスト低減のためには、温水による引き上げ乾燥が特に効果を高めるために好ましい。
【0079】
水の温度は、高すぎるとアルミニウム製の円筒状基体表面に酸化膜が発生してしまい、感光層の剥れ等の原因となる。また、低すぎると乾燥が不十分となり、さらに本発明の効果が充分得られない。この為、水の温度としては、30℃以上、90℃以下、好ましくは35℃以上、80℃以下、最適には40℃以上、70℃以下が本発明には適している。
【0080】
引き上げ乾燥する際の引き上げ速度は非常に重要であり、好ましい範囲は100mm/min以上2000mm/min以下、最適には300mm/min以上1000mm/min以下が適している。
<使用するアルミニウム基体>
本発明において円筒状基体の材質はアルミニウムを母体とするものであればいずれでも可能であるが、通常、純度99.5%以上のアルミニウムが用いられる。また、純度が99.99%を超える高純度のアルミニウムを母材とした円筒状基体であれば、図1のような洗浄装置が好ましく、それよりも低い純度であれば図2のような洗浄装置が好ましい。
【0081】
本発明において円筒状基体の加工性を向上させるためにマグネシウムを含有させることは有効である。好ましいマグネシウムの含有量としては、0.1wt%以上、10wt%以下、更に好ましくは0.2wt%以上、5wt%以下の範囲である。
【0082】
更に本発明では、H、Li、Na、K、Be、Ca、Ti、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Ag、Zn、Cd、Hg、B、Ca、In、C、Si、Ge、Sn、N、P、As、O、S、Se、F、Cl、Br、I等如何なる物質をアルミニウム中に含有させても良い。
【0083】
次に、本発明で円筒状基体を洗浄する前の切削工程について、詳細に説明する。
【0084】
本発明の表面加工は、精密切削用の旋盤の回転フランジに、円筒状基体をチャックし、所望する外径及び表面性に切削加工を行う。表面加工時は、切削油を塗布もしくは吹き付けながら切削を行う。
【0085】
例えば、精密切削用のエアダンパー付旋盤(PNEUMO PRECISION INC.製)に、ダイヤモンドバイト(商品名:ミラクルバイト、東京ダイヤモンド製)を、円筒状基体中心線に対して5°のすくい角を得るようにセットする。次に、この旋盤の回転フランジに、円筒状基体を真空チャックし、付設したノズルから切削油噴霧、同じく付設した真空ノズルから切り粉の吸引を併用しつつ、周速1000m/min、送り速度0.01mm/Rの条件で所望の外径となるように切削を施す。
【0086】
表面加工時に円筒状基体表面に塗布する切削油は特に制限はないが、40℃における動粘度が10mm2/s以上100mm2/s以下である不乾性の化学合成油を用いることが好ましく、特に、ポリブデンを主成分とする切削油を用いることが好ましい。
【0087】
これは、動粘度が低い切削油を用いると、洗浄工程において、切削油が重力で垂直方向に向かって流れてしまい、円筒状基体上に切削油の層厚にムラが生じる。この結果、垂直方向下側に位置する位置の切削油厚が垂直方向上側の位置よりもかなり厚くなってしまい、脱脂洗浄時に洗浄不良となる場合がある。
【0088】
逆に、動粘度が高い切削湯を用いると、脱脂槽において、界面活性剤では除去が難しくなる。この結果、特に円筒状基体上端部で切削油が残ってしまうため、脱脂洗浄時に洗浄不良となる場合がある。
【0089】
以下、図面に従って、本発明の電子写真感光体について説明する。
【0090】
図4は、本発明の電子写真感光体用光受容部材の好適な層構成の一例を示した模式的構成図である。
【0091】
図4に示す電子写真感光体は、円筒状基体401の上に光受容層400が設けられており、光受容層400は、基体側から順に、下部阻止層402、光導電層403、表面層404から構成されている。
【0092】
次に、本発明の電子写真感光体を形成する装置について説明する。
【0093】
図10は、本発明の電子写真感光体を作成するために供される、13.56MHzの高周波電源を用いたRFプラズマCVD法による堆積装置の一例を模式的に示した図である。
【0094】
この装置は大別すると、反応容器1001、反応容器内を減圧する為の排気装置1008から構成されている。反応容器1001内にはアースに接続された導電性の受け台1007の上に円筒状基体1002が設置され、更に円筒状基体の支持体加熱ヒーター1003、原料ガス導入管1005が設置されている。又、カソード電極1006は導電性材料からなり、絶縁碍子1013によって絶縁されている。カソード電極はマッチングボックス1011を介して13.56MHzの高周波電源1012が接続されている。
【0095】
不図示の原料ガス供給装置の各構成ガスのボンベは原料ガス導入バルブ1009を介して反応容器1001内のガス導入管1005に接続されている。
【0096】
以下、図10の装置を用いた、電子写真感光体の形成方法の一例について説明する。
【0097】
円筒状基体1002を導電性受け台1007に取りつけ、反応容器1001内の支持体加熱ヒーター1003を包含するように取りつける。
【0098】
次に、ガス供給装置内の排気を兼ねて、原料ガス導入バルブ1009を開き、メインバルブ1015を開いて反応容器1001及び原料ガス導入管1005を排気する。真空計1010の読みが0.67Pa以下になった時点で原料ガス導入バルブ1009から加熱用の不活性ガス、一例としてアルゴンを原料ガス導入管1005より反応容器1001に導入し、反応容器1001内が所望の圧力になるように加熱用ガスの流量および、メインバルブ1015の開口あるいは排気装置1008の排気速度を調整する。その後、不図示の温度コントローラーを作動させて円筒状基体1002を支持体加熱ヒーター1003により加熱し、円筒状基体1002の温度を20℃〜500℃の所定の温度に制御する。円筒状基体1002が所望の温度に加熱されたところで、不活性ガスを徐々に止めると同時に、成膜用の所定の原料ガス、例えばSiH4、Si26、CH4、C26などの材料ガスを、またB26、PH3などのドーピングガスを不図示のミキシングパネルにより混合した後に反応容器1001内に徐々に導入する。次に、不図示のマスフローコントローラーによって、各原料ガスが所定の流量になるように調整する。その際、反応容器1001内が0.1Paから数100Paの圧力に維持するよう真空計1010を見ながらメインバルブ1015の開口あるいは排気装置1008の排気速度を調整する。
【0099】
以上の手順によって成膜準備を完了した後、円筒状基体1002上に光導電層の形成を行う。内圧が安定したのを確認後、高周波電源1012を所望の電力に設定して高周波電力をカソード電極1006に供給し高周波グロー放電を生起させる。このときマッチングボックス1011を調整し、反射波が最小となるように調整し、高周波の入射電力から反射電力を差し引いた値を所望の値に調整する。この放電エネルギーによって反応容器1001内に導入させた各原料ガスが分解され、円筒状基体1002上に所定の感光層が形成される。なお、膜形成を行っている間は円筒状基体1002を駆動装置(不図示)によって所定の速度で回転させても良い。
【0100】
所望の膜厚の形成が行われた後、高周波電力の供給を止め、反応容器1001への各原料ガスの流入を止めて反応容器内を一旦高真空に排気した後に層の形成を終える。上記のような操作を繰り返し行うことによって、感光体は形成される。
(実施例及び比較例)
以下、実施例及び比較例により本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらにより何ら制限されるものではない。
(実施例1)
アルミニウム(材質:A20S)よりなる直径80mm、長さ358mm、肉厚3mmの円筒状基体を、以下の手順により表面加工を行った。
<切削工程>
表面加工は、精密切削用のエアダンパー付旋盤(PNEUMO PRECISION INC.製)に、ダイヤモンドバイト(商品名:ミラクルバイト、東京ダイヤモンド製)を、円筒状基体中心線に対して5°のすくい角を得るようにセットする。次に、この旋盤の回転フランジに、円筒状基体を真空チャックし、付設したノズルから切削油として炭化水素系合成油ポリブデン(商品名;日石ポリブデンLV−10)を用い円筒状基体に噴霧しながら、同じく付設した真空ノズルから切り粉の吸引を併用しつつ、周速1000m/min、送り速度0.01mm/Rの条件で外径が79.92〜79.98mmとなるように鏡面切削を施した。
【0101】
切削加工が終了したアルミニウム円筒状基体は、図2に示す洗浄装置を用いて表1の条件にて洗浄を行った。但し、脱脂槽21及び皮膜形成槽22は、図5に示す洗浄槽のような貯槽を有する洗浄槽であり、リンス槽23及び乾燥槽24は、図9に示す洗浄槽のような貯槽が無い洗浄槽とした。
【0102】
【表1】


<洗浄工程1>
まず、全工程の貯留槽を清掃し、新しい洗浄液に交換した。各貯留槽に貯留されている洗浄液の温度が表1の条件で安定したのを確認した後、洗浄前ストッカーに置かれた円筒状基体を搬送アームにより脱脂槽へと搬送する。搬送された円筒状基体は、界面活性剤として、アルミ用侵食低起泡性液状脱脂剤(ヘンケルジャパン(株)社、商品名;almecoCT−29)を純水で30倍に希釈した洗浄液に浸透させ、約40kHzの超音波を5W/リットルの出力で超音波処理を所定の時間行った。脱脂槽での洗浄が終了後、搬送アームにより脱脂槽より円筒状基体が完全に引き上げられた時に、円筒状基体上端から30mm位置を円筒状基体表面の汚染を検出するためのIRスペクトルによる汚染検出手段(株式会社チノー製;赤外線多成分計IRMA52S2)により、比較波長3.20μm、汚染検出用波長3.38μmでの吸光度を測定した。そして、比較波長の吸光度を基準とした時の汚染検出用波長3.38μmの吸光度から、円筒状基体表面に付着した切削油の吸光度を求めた。この3.38μmの波長は、下記に示す<IRスペクトル測定>により切削油を測定した際に最も吸収率の高い波長である。また、3.20μmの波長は、切削油を測定した際に変化が見られなかった波長である。
【0103】
次に、皮膜形成槽に円筒状基体を搬送し、水温25℃に制御した純水(10MΩ/cm)に珪酸カリウム(日本化学工業株式会社製;商品名;A珪酸カリ)を純
水で0.5%に希釈した洗浄液中に円筒状基体を浸漬させた。皮膜形成槽での洗浄が終了後、円筒状基体が完全に洗浄液から搬出された時点で、皮膜形成槽の洗浄液の汚染を検出するためのIRスペクトルによる汚染検出手段(株式会社チノー製;赤外線多成分計IRMA61S2+IR−WCC1)により、比較波長として2.10μm、汚染検出用波長2.31μmでの吸光度を測定した。そして、比較波長の吸光度を基準とした時の汚染検出用波長2.31μmの吸光度から、皮膜形成槽に貯留されている洗浄液中の界面活性剤の吸光度を求めた。この2.31μmの波長は、下記に示す<IRスペクトル測定>により脱脂工程で用いられる界面活性剤を測定した際に吸収率の高い波長である。また、2.10μmの波長は、界面活性剤を測定した際に吸収率に変化が見られなかった波長である。
【0104】
次に、リンス槽に円筒状基体を搬送し、水温25℃に制御した純水(10MΩ/cm)の中へ所定の時間浸透させた。リンス槽での洗浄が終了後、搬送アームに
てリンス槽より完全に引き上げられた。
【0105】
最後に、乾燥槽に搬送し、水温40℃に制御した純水(10MΩ/cm)の中へ
所定の時間浸透させた後、500mm/minの速度でゆっくり引き上げながら乾燥させた。乾燥槽での洗浄が終了後、搬送アームにより乾燥槽より円筒状基体が完全に引き上げられた時に、円筒状基体下端から30mmの位置を円筒状基体表面の汚染を検出するためのIRスペクトルによる汚染検出手段(株式会社チノー製;赤外線多成分計IRMA1100)により、比較波長1.80μm、汚染検出用波長1.94μmでの吸光度を測定した。そして、比較波長の吸光度を基準とした時の汚染検出用波長1.94μmの吸光度から、円筒状基体表面に付着した水分の吸光度を求めた。この1.94μmの波長は、吸着水のIRスペクトル測定時に吸収率が高い波長として知られている波長である。また、1.80μmの波長は、吸着水のIRスペクトル測定時に吸収率に変化が見られない波長として知られている波長である。
【0106】
測定終了後、搬送機構により洗浄後ストッカーへと搬出した。
【0107】
但し、各汚染検出手段の警報出力設定として、脱脂槽に設置した汚染検出手段は吸光度が0.30、脱脂槽は0.40、乾燥槽は0.35とし、各汚染検出手段から警報が出力された場合には、手動にて汚染が検出された洗浄槽の洗浄液を交換した。
<IRスペクトル測定>
φ200のシリコンウエハを1cm×3cmの大きさに切断し、この切断片をアセトンの入った金属パットに入れ、約40kHzの超音波洗浄機で10分処理した。超音波洗浄終了後、オーブンにより110度で1時間加熱し乾燥させた。
【0108】
次に、ビーカーに入れた洗浄後のシリコンウエハ切断片を脱脂槽で用いられる界面活性剤中に浸漬させた後、取り出して常温で一昼夜乾燥させてサンプルを作製した。
【0109】
同様に、ビーカーに入れた切削工程で用いられる切削油中に浸漬させた後、取り出して一昼夜乾燥させてサンプルを作製した。
【0110】
上記により作製したサンプルを透過FT−IR(日本分光株式会社製;FT/IR−615)により測定し、リファレンスとして上記超音波洗浄後のシリコンウエハ切断片を用いて、得られたIRスペクトルからリファレンスのIRスペクトルの差分より界面活性剤及び切削油のIRスペクトルを求めた。
【0111】
測定方法は、まずFT−IR本体に作製したサンプルとリファレンスをセットする。そして、制御用PCでスペクトルマネージャーを起動させ、シャトル測定を選択する。ここで、測定パラメーターを設定する。FT−IRの測定パラメーター条件は、測定範囲:400cm−1から4000cm−1、積算回数:オート、分解:4cm−1、交互測定回数:1回、干渉計:感度、アバーチャ径、干渉計速度、フィルター:オート、そして、標準光源、標準試料台、検出器はTGSを用いた。FT−IRの測定パラメーター条件設定後に、交互測定を選択し、測定を行った。
【0112】
以上の切削工程及び洗浄工程を繰り返し行い、洗浄液交換後1本目と500本毎を4000本まで円筒状基体を用いて、図10の13.56MHz電源1012を用いたRFプラズマ装置を用いて、表2に示す条件にてアモルファスシリコン感光体を作成した。また、図2の洗浄装置に示す汚染検出手段202(1)、202(4)、211が基板表面又は貯留層内の洗浄液の汚染を検出した際に、汚染が検出された汚染検出手段202(1)、202(4)、211が設置されている洗浄槽の貯留槽内の洗浄液を交換した直後に洗浄された円筒状基体も同様に表2に示す条件にてアモルファスシリコン感光体を作成した。
【0113】
【表2】

表2の条件により作製された電子写真感光体を電子写真装置にて画像を出力した時に得られる画像より画像欠陥を下記の条件により評価した。
<画像欠陥評価>
評価に使用した電子写真装置は、キヤノン製デジタル電子写真装置iR−6000を用いた。この電子写真装置に上記条件で作製した電子写真感光体を設置し、分光濃度計(X−Rite Inc社製;500シリーズ)により得られた反射濃度0.30のハーフトーンチャートを原稿台におき、コピーをした。得られたコピー画像を観察し、φ0.3mm以上の白ポチの有無を測定した。この結果を表3に示す。
A ‥ φ0.3mm以上の白ポチ無し。
B ‥ φ0.3mm以上の白ポチが1個〜5個。
C ‥ φ0.3mm以上の白ポチが6個以上。
(比較例1)
実施例1と同様に切削工程を行ったアルミニウム製の円筒状基体を図12の洗浄装置を用いて実施例1と同様の洗浄条件にて洗浄を行った。
【0114】
実施例1と同様に、洗浄液交換後1本目と500本毎を4000本まで円筒状基体及び実施例1において、洗浄槽の貯留槽内の洗浄液を交換した直後に相当する円筒状基体を用いて、図10の13.56MHz電源を用いたRFプラズマ装置を用いて、表2に示す条件にてアモルファスシリコン感光体を作成した。
【0115】
表2の条件により作製された電子写真感光体を、実施例1と同様に電子写真装置にて画像を出力した時に得られる画像より画像欠陥を評価した。その結果を表3に示す。
【0116】
【表3】

表3より、実施例1では、1本目から500本毎4000本目までの洗浄した円筒状基体上に感光層を形成し、作製した電子写真感光体を上記画像欠陥評価により評価したところ、全ての出力画像がAであり、画像欠陥が良好な電子写真感光体が得られた。また、約2200本で皮膜形成槽の貯槽内に貯留されていた洗浄液の汚染状態を検出していた汚染検出手段より警報が発報し、洗浄工程が停止した。そのため、手動で皮膜形成工程のみ洗浄液の交換を行い、洗浄液交換直後に洗浄した円筒状基体上に感光層を形成したところ、出力画像がAであり、画像欠陥が良好であった。更に、約3800本で脱脂工程通過後の円筒状基体表面の汚染状態を検出した汚染検出手段により警報が発報し、洗浄工程が停止した。そのため、手動で脱脂工程のみ洗浄液の交換を行い、洗浄液交換直後に洗浄した円筒状基体上に感光層を形成したところ、出力画像がAであり、画像欠陥が良好であった。
【0117】
一方、比較例1では、1本目から500本毎2500本目までの洗浄した円筒状基体で作製した電子写真感光体を上記画像欠陥評価により評価したところ、全ての出力画像がAであり、画像欠陥が良好な電子写真感光体が得られた。しかし、3000本目から3800本目までの洗浄した円筒状基体で作製した電子写真感光体は出力画像がB、更に4000本目に洗浄した円筒状基体で作成した電子写真感光体は、出力画像がCとなり、洗浄本数の増加により洗浄した円筒状基体で作成した電子写真感光体の出力画像が悪化した。
【0118】
この理由として、3000本目の円筒状基体は、皮膜形成槽の貯槽内に貯留されていた洗浄液の汚染が円筒状基体表面に付着したために、感光層形成時に異常成長部が発生し、出力画像が悪化したと考えられる。更に、4000本目の円筒状基体は、皮膜形成槽の貯槽内に貯留されていた洗浄液の汚染に加え、脱脂槽の貯槽内に貯留されていた洗浄液の汚染により、円筒状基体表面の汚染が更に悪化したため、感光層形成時に異常成長部が更に発生し、出力画像が悪化したと考えられる。
(実施例2)
実施例1と同様に切削工程を行ったアルミニウム製の円筒状基体を図2の洗浄装置を用いて実施例1と同様の洗浄条件にて洗浄を行った。但し、脱脂槽及び皮膜形成槽は、図8に示す貯槽と予備貯槽を有する自動液交換可能な洗浄槽であり、リンス槽及び乾燥槽は、図9に示す自動液交換可能な洗浄槽とした。
【0119】
但し、各汚染検出手段の警報出力設定として、脱脂槽に設置した汚染検出手段は吸光度が0.30、脱脂槽は0.40、乾燥槽は0.35とし、各汚染検出手段から警報が出力された場合には、自動で汚染が検出された洗浄槽の洗浄液を交換した。
【0120】
実施例1と同様に、洗浄液交換後1本目と500本毎を4000本まで円筒状基体を図10の13.56MHz電源を用いたRFプラズマ装置を用いて、表2に示す条件にてアモルファスシリコン感光体を作成した。
【0121】
表2の条件により作製された電子写真感光体を、実施例1と同様に電子写真装置にて画像を出力した時に得られる画像より画像欠陥を評価した。
【0122】
実施例2でも、実施例1と同様に1本目から500本毎4000本目までの洗浄した円筒状基体上に感光層を形成し、作製した電子写真感光体を上記画像欠陥評価により評価したところ、全ての出力画像がAであり、画像欠陥が良好な電子写真感光体が得られた。
【図面の簡単な説明】
【0123】
【図1】本発明の電子写真感光体製造方法で使用する円筒状基体の洗浄を行うための第1の実施形態を示す洗浄装置の模式的な概略断面図である。
【図2】本発明の電子写真感光体製造方法で使用する円筒状基体の洗浄を行うための第2の実施形態を示す洗浄装置の模式的な概略断面図である。
【図3】本発明の電子写真感光体製造方法で使用する円筒状基体の洗浄を行うための第3の実施形態を示す洗浄装置の模式的な概略断面図である。
【図4】本発明に係わる電子写真感光体の層構成を模式的に示す概略断面図である。
【図5】本発明における汚染検出手段の第1の設置位置を示す詳細な洗浄槽の概略断面図である。
【図6】本発明における汚染検出手段の第2の設置位置を示す詳細な洗浄槽の概略断面図である。
【図7】本発明における汚染検出手段の第3の設置位置を示す詳細な洗浄槽の概略断面図である。
【図8】本発明における自動洗浄液交換を説明するための第1の詳細な洗浄槽の概略断面図である。
【図9】本発明における自動洗浄液交換を説明するための第2の詳細な洗浄槽の概略断面図である。
【図10】アモルファスシリコン系感光体を形成可能な、本発明の一実施形態で用いられるプラズマCVD感光層形成装置の模式図である。
【図11】アモルファスシリコン系感光体を形成可能な、本発明の一実施形態で用いられるプラズマCVD感光層形成装置の模式図である。
【図12】従来の電子写真感光体製造方法で使用する円筒状基体の洗浄を行うための洗浄装置の模式的な概略断面図である。
【図13】従来の洗浄装置における詳細な洗浄槽の概略断面図である。
【図14】円筒状基体表面の汚染状態を検出する汚染検出手段の測定位置を示す模式的概略説明図である。
【符号の説明】
【0124】
11、21、31、121 脱脂槽
22、221 皮膜形成槽
13、23、33、123 リンス槽
14、24、34、124 乾燥槽
101、201、301、501、601、701、801、901、1001、
1101、1201、1301、1401 円筒状基体
102、202、302、502、702、1402 円筒状基体表面の汚染検出手段
103、203、303、503、603、703、803、903、1203、
1303 貯留槽
104、204、304、504、604、704、804、904、1204、
1304 洗浄液
105、205、305 警報装置
106、206、306、506、606、706、806、906、1206、
1306 搬送手段
107、207、307、1207 洗浄前ストッカー
108、208、308、1208 洗浄後ストッカー
109、209、309、5089、609、709、809、909、1209、
1309 基板載置台
110、210、310、1310 ストッカー置き台
111、211、311、611、711、811、911 洗浄液の汚染検出手段
119、219、319、519、619、719、819、919、1219、
1319 搬送レール
400 光受容層
401 基板
402 下部阻止層
403 光導電層
404 表面層
512、612、712、812、1312 貯槽
513、613、713、813、913、1313 槽内循環ライン
514、614、714、814、914、1314 循環ラインポンプ
515、615、715、815、915、1315 フィルター
516、616、716、816、1316 貯留槽供給ポンプ
517、617、717、817、1317 ヒーター
518、618、718、818、1318 冷却器
520、620、720、820、920、1320 移動機構
521、621、721、821、921、1321、1421 搬送アーム
522、622、722、822、922、1322 エアーシリンダー
523、623、723、823、923、1323、1423 チャッキング機構
824、924 開閉バルブ
825 予備貯槽ポンプ
826 予備貯槽開閉バルブ
827 予備貯槽
828、928 制御部
1001 反応容器
1002 基体
1003 支持体加熱ヒーター
1005 原料ガス導入管
1006 カソード電極
1007 導電性受け台
1008 排気装置
1009 原料ガス導入バルブ
1010 真空計
1011 マッチングボックス
1012 高周波電源
1013 絶縁碍子
1015 メインバルブ
1101 反応容器
1101(a) 誘電体部材
1101(b) 上蓋
1102 カソード電極
1103 高周波電源
1104 マッチングボックス
1105 基体
1106 受け台
1107 支持体加熱ヒーター
1108 回転機構
1109 排気配管
1110 ガス供給手段
1112 高周波電力分岐手段
1424 円筒状基体表面の汚染状態を検出するための第1の測定位置の例
1425 円筒状基体表面の汚染状態を検出するための第2の測定位置の例
1426 円筒状基体表面の汚染状態を検出するための第3の測定位置の例

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウムを主成分とする円筒状基体に切削油を用いて旋盤加工を施す切削工程と、加工後の円筒状基体を脱脂及び清浄化するための洗浄工程とを有する洗浄方法において、
前記円筒状基体表面の汚染状態、及び/又は前記円筒状基体を脱脂及び清浄化するための貯留槽に貯留された洗浄液の汚染状態の少なくとも1つを検出する検出手段により前記円筒状基体の清浄化を行うことを特徴とする円筒状基体の洗浄方法。
【請求項2】
前記洗浄工程が、少なくとも脱脂工程、リンス工程及び乾燥工程からなり、少なくとも前記脱脂工程終了後、又は、前記乾燥工程通過後のいずれか1つで前記円筒状基体表面の汚染状態を検出することを特徴とする請求項1に記載の円筒状基体の洗浄方法。
【請求項3】
前記洗浄工程が、更に皮膜形成工程を含み、少なくとも前記脱脂工程終了後、又は、前記皮膜形成工程終了後、又は、前記乾燥工程通過後のいずれか1つで前記円筒状基体表面の汚染状態を検出することを特徴とする請求項2に記載の円筒状基体の洗浄方法。
【請求項4】
前記洗浄工程が、少なくとも脱脂工程、リンス工程及び乾燥工程からなり、少なくとも前記脱脂工程を行う脱脂槽内に貯留されている洗浄液、又は前記リンス工程を行うリンス槽内に貯留されている洗浄液のいずれか1つの汚染状態を検出することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の円筒状基体の洗浄方法。
【請求項5】
前記の洗浄工程が、更に皮膜形成工程を含み、少なくとも前記脱脂工程を行う脱脂槽槽内に貯留されている洗浄液、又は、前記皮膜形成工程を行う皮膜形成槽槽内に貯留されている洗浄液、又は、前記リンス工程を行うリンス槽内に貯留されている洗浄液のいずれか1つの汚染状態を検出することを特徴とする請求項4に記載の円筒状基体の洗浄方法。
【請求項6】
前記円筒状基体表面の汚染状態を検出する複数の検出手段が前記円筒状基体の長手方向における異なる位置の汚染状態を検出する、又は、異なる種類の汚染物質を検出することを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の円筒状基体の洗浄方法。
【請求項7】
前記洗浄液の汚染状態を検出する複数の検出手段が、前記洗浄工程における各々の工程にて、異なる種類の汚染物質を検出することを特徴とする請求項1から6に記載の円筒状基体の洗浄方法。
【請求項8】
前記汚染検出手段が所定の量以上の汚染を検出した場合、警報手段が警告信号を発することを特徴とする請求項1から7に記載の円筒状基体の洗浄方法。
【請求項9】
前記円筒状基体表面の汚染状態、及び/又は前記洗浄液の汚染状態をIRスペクトルにより測定し、所定の波長におけるIRスペクトルの吸光度に基づき前記汚染状態を検出することを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の円筒状基体の洗浄方法。
【請求項10】
前記汚染検出手段が所定の量以上の汚染を検出した場合、前記検出手段から出力される信号に基づき洗浄工程を停止させ、洗浄工程内の前記円筒状基体を排出した後に、汚染が検出された貯留槽内に貯留された洗浄液を貯留槽から排出し、新しい洗浄液を貯留槽内に供給し、再び所定の洗浄条件になった時点で円筒状基板の洗浄を自動的に再開することを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の円筒状基体の洗浄方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2007−297659(P2007−297659A)
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−125425(P2006−125425)
【出願日】平成18年4月28日(2006.4.28)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.パトライト
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】