説明

再使用可能な医療品を機械的処理するための方法

【課題】本発明は、再使用可能な医療品を機械的処理するための方法に関する。
【解決手段】方法は、閉鎖可能なカセットの中に医療品を配置するステップであってカセットが処理媒体の供給及び排出のための接続部を含むとともに、処理媒体がこれらの洗い流し可能なキャビティ及び/又は導管を通じて流れることができるように医療品の洗い流し可能なキャビティ及び/又導管が接続された一つ以上の接続部をその内部に含むステップと、カセットを閉じるステップと、新鮮な液体状の処理媒体をカセットの接続部に供給するステップであってカセット中の媒体が医療品に接触して処理を実行して洗い流し可能なキャビティ及び/又は導管を通じて処理媒体が流れるステップと、排出接続部から処理媒体を排出するステップと、排出された処理媒体を廃棄するステップであって処理媒体の温度が全処理過程の間で100℃を超えないステップと、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低細菌又は無菌の中で用いられて、キャビティ、導管(channel)及び/又は摺動面を有する再使用可能な医療品(medical product)の機械的処理方法に関する。また、本発明は、当該方法を実行するための装置(arrangement)に関する。
【背景技術】
【0002】
再使用可能な医学・外科用器具は、使用後に、洗浄・消毒されなければならず、さらに、恐らくパッケージにされ殺菌されなければならない。通例の外科用器具の場合には、このことは、例えば、洗浄及び消毒装置での洗浄及び加熱消毒とそれに続く120℃以上の温度での蒸気殺菌により達成することができる。
【0003】
この手順は、例えば内視鏡の処理において、第一に複雑であり、第二に問題をはらんでいる。内視鏡は、ゴムやプラスチックなどのような熱的に不安定な材料を含んでおり、洗い流すのが難しい幾何学的形状をしている。
【0004】
したがって、特許文献1が、洗浄媒体が内視鏡を通って循環し、このプロセスの間に特に小口径キャビティを洗い流す装置を使って内視鏡を洗浄することを既に提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開2005/056060号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、医療品の処理を特に単純で且つ注意深くて且つ迅速に行うことを可能にする最初に説明したタイプの方法及び装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る方法は、
a)閉鎖可能なカセットの中に医療品を配置するステップであって、当該カセットが、処理媒体の供給のための接続部及び排出のための接続部を含むとともに、処理媒体がこれらの洗い流し可能なキャビティ及び/又は導管(channel)を通して流れることができるように、医療品の洗い流し可能なキャビティ及び/又導管(channel)が接続された一つ以上の接続部をその内部に含むステップと、
b)前記カセットを閉じるステップと、
c)新鮮な液体状の処理媒体をカセットの接続部に供給するステップであって、カセット中の媒体が医療品に接触して処理を実行し、そして、洗い流し可能なキャビティ及び/又は導管(channel)を通じて処理媒体が流れるステップと、
d)前記排出接続部から処理媒体を排出するステップと、
e)排出された処理媒体を廃棄するステップであって、処理媒体の温度が全処理過程の間で100℃を超えないステップと、を備える。
【0008】
まず始めに、本発明の文脈の中で用いられるいくつかの表現(term)が説明される。
【0009】
再使用可能な医療品は、一般に、医療品法(medical product law)によって保護される繰り返し使用可能な器具(instrument)及び/又は機器である。これらは、特に侵襲性が最小の外科の(minimally invasive surgical)器具であり、剛性を有するか又は柔軟である内視鏡である。
【0010】
医療品には、キャビティ、導管(channel)及び/又は摺動面がある。これらの表現は、要するに、処理媒体でスプレーしたり洗い流したりすることにより外側から容易にアクセス可能でない表面部分を指定する(designate)。例えば、これらは、本願では、内視鏡のチューブあるいはルーメン(例えば作業(working)導管)、あるいは、ハサミなどのような可動部の相互に対面して摺動する面である。
【0011】
本発明に係る方法において、医療品は、第一ステップにおいて、閉鎖可能なカセットに配置される。配置される(placed)ことは、好ましくは所定の位置に配置されることを意味する。この目的のために、対応するホルダーがカセット内に設けられる。カセットは閉鎖可能である。したがって、それは、医療品がカセットに入れられてカセットが閉じられた後、医療品が環境影響(environmental effect)から保護される容器である。カセットは、処理媒体を供給するための接続部及び排出するための接続部を含む。これらの接続部によって、処理媒体は、そこに位置したカセットと医療品を通じて流れることができる。
【0012】
その内部において、閉鎖可能なカセットは、医療品の洗い流し可能なキャビティ及び/又は導管が接続される一つ以上の接続部を含む。内部においてこれらの接続部は、カセットの壁に直接に配置することができる。また、それらは、医療品の対応する接続部に導くことができるように、チューブ片あるいは好ましくは柔軟なチューブ端部を備えることができる。例えば内視鏡の洗い流し可能なチューブ(tubing)、導管(channel)あるいは他のルーメン(lumen)は、処理作業の間に、導管又はキャビティへの所定の供給と、導管又はキャビティを通じた流れと、が起こるように、本発明に係る目標とした方法でカセットの接続部に接続される。
【0013】
本発明に係る処理において、新鮮な処理媒体が各工程で用いられる。この文脈中で、新鮮と言うのは、媒体が処理のために医療品にまだ接していなくて、特に(従来技術のように)循環していないことを意味する。媒体は、カセット内で医療品と接触して、キャビティ、導管及び/又は摺動面が処理を実行する。この目的のために、目標とされた方法でこれらのキャビティ又は導管に処理媒体をそれらがガイドするように、カセットの供給接続部が構成されている。カセットは、上述のように、内視鏡のキャビティあるいはチューブが接続されて、このように、処理の間、目標とされた方法でそれらを通じて処理媒体が流れる、一つ以上の接続部を内部に備えている。さらに、医療品は、例えば、処理媒体で外部から洗い流し可能である。本発明に照らして(in the context of)、閉じたカセットにおいて、そこに位置している医療品が衛生的であり且つ細菌に気密である(germ-tight)方法で蓄えることができるように、カセットの供給用の接続部及び排出用の接続部が閉鎖可能なバルブを備えることが好ましい。供給用及び/又は排出用の接続部がカセットから分離されるやいなや、これらのバルブが自動的に閉じることが好ましい。
【0014】
処理の後、処理媒体は処理の接続部(複数可)から排出される。つまり、処理媒体はカセットから除去される。処理媒体は、その後直ちに廃棄される。すなわち、処理媒体は、本発明に係る方法に照らして(in the context of)それ以上の使用に供されることはない。
【0015】
したがって、本発明に係る処理は、処理媒体が単一の使用の後に捨てられる洗浄に関する。本発明によれば、液体の処理媒体が使用される。特に、これらの液体の処理媒体は、水ベースの洗浄の溶液(solution)、消毒の溶液(solution)及び/又は殺菌の溶液(solution)である。単一の使用後の廃棄は、本発明に照らして(in the context of)、同じ(既に用いられた)洗浄溶液が医療品に対して複合的で意図した接触しないことを意味する。したがって、処理媒体は、同じ処理ステップにおいてカセットの排出用接続部から排出されたあと、処理媒体が供給用接続部に戻って全体的に又は部分的に供給されるように循環しない。例えば、交互に行き来する(to and fro)処理媒体をポンピングするか、又はカセットを通じて又は医療品のキャビティを通じて処理媒体を輸送するような、カセット内の処理媒体の再循環あるいは処理媒体の他のリサイクル使用ができるだけ少ない。好ましくは、処理媒体は、カセットの中に、及び洗い流し可能なキャビティ及び/又は導管の中に、原則的に一方向に導入される。このことは、処理媒体が、チューブ又はルーメンのようなキャビティを通して本質的に一方向に流れて、処理媒体がキャビティから出た後、例えばカセットの底で集められ、そこから直ちに排出されることを意味する。カセット手段による一方向の流れは、例えばカセットにスプレーされてカセットの内部に入った処理媒体が、(好ましくは重力の作用によって)医療品の外側表面に沿って流れ(run)、例えばカセットの底で集めて、そこから排出されることを意味する。
【0016】
本発明によれば、処理媒体の温度が全処理過程の間に100℃を超えないことを目的としている。したがって、本発明に係る方法は、(120℃以上の温度の)従来技術において慣習的である蒸気殺菌処理が不可能な熱的に不安定な医療品に対して特に好適に使用可能である。
【0017】
本発明に係る方法による低い熱応力は、原理的には比較的高温に耐えるが、例えば蒸気殺菌の間のような比較的高温によって制限される耐用年数を持っているそれらの医療品の場合に好適に使用可能である。かかる医療品が、穏やかに処理可能であり、本発明に係る方法によってさらに頻繁に使用可能である。
【0018】
先行技術において、内視鏡の機械的処理の場合、再循環した処理媒体で内視鏡を複合的に洗い流すことが、常に提供される。できるだけ少量の処理媒体で処理がなされるべきであるということが、この考えの背後にある。
【0019】
本発明は、この再循環の洗浄が不利であることを認識している。特に、それは、内視鏡が全システムに移される(transferred)とともにその結果循環によって内視鏡に移される(transferred)場合にできるだけ局所的な汚染に導く。したがって、再汚染の継続が発生する。本発明に係る洗浄は、処理媒体が汚染を再開する(take up)ことを防止する。そして、当該汚染は廃棄により直ちに排出される。再汚染の発生は不可である。驚くべきことに、本発明によれば、再循環洗浄と比較して、内視鏡を通じて導入された処理媒体の量が著しく少ないにもかかわらず、有効で且つ迅速な処理が進む。
【0020】
再汚染を回避するために、本発明に係る方法において、内視鏡が使用されるときにオペレーターに対面する「清潔な」作動端から、使用の間に操作の領域にある「汚れた」遠位端に向かって、例えば内視鏡のチューブのようなキャビティを流れが通過することが好ましい。汚損(fouling)に対してある程度流れることによって、汚れた遠位(distal)端から全チューブを通じてあるいは全ルーメンを通じて比較的清潔な作動(operating)端の方向に汚染が運ばれることを防止している。
【0021】
本発明に係る処理は、洗浄及び消毒を含むことができる。洗浄及び消毒という表現は、2005年6月の用語において草案のドイツ連邦共和国国家規格(DIN EN ISO)の15883-4の中で規定されている。
【0022】
殺菌は、標準欧州規格(standard EN)556において規定されている。それによれば、生きている(viable)微生物が製品(product)上に存する理論的な可能性は、10の製品(product)の中に一つ以下でなければならない。
【0023】
したがって、消毒は、規定されたオーダーによって相対的に低下していること(出発の汚染に対して)を必要とする。殺菌という用語は、汚染の出発のレベルと無関係に、すべての生きている細菌が絶対的に規定された最大レベルまで低下することを要求する。
【0024】
処理媒体の好ましい温度は、最高90℃であり、さらに好ましくは最高80℃であり、さらに好ましくは最高70℃であり、さらに好ましくは最高60℃である。好ましい下限は、20℃又は30℃である。特に好ましい温度範囲は、30℃乃至55℃である。
【0025】
本発明によれば、請求項1に係るステップc)乃至ステップe)の処理工程が、少なくとも二つの異なった処理媒体を用いて、少なくとも2回連続的に実行されることが好ましい。処理媒体は液体である。
【0026】
第一の処理媒体は、界面活性剤を含む洗浄溶液である。
【0027】
界面活性剤を含む洗浄溶液は、活性な洗浄成分としての酵素を含むことができる。前記界面活性剤を含む洗浄溶液は、好ましくは中性あるいは弱アルカリである。また、そして、例えば、その水素イオン濃度(pH)は、6乃至12であり、好ましくは6乃至11であり、より好ましくは7乃至11であり、より好ましくは8乃至10.5であり、より好ましくは9乃至10.5である。
【0028】
さらなる変形例によれば、界面活性剤を含むアルカリ洗浄溶液が使用可能である。界面活性剤を含むアルカリ洗浄溶液は、両性界面活性剤(amphosurfactant)に加えて、中性界面活性剤(N-surfactant)、第四級アンモニウム化合物(quaternary ammonium compound)、三燐酸カリウム、水ガラス(waterglass)及び水酸化カリウム溶液を含むことができる。中性あるいは弱アルカリであることが好適であり、その水素イオン濃度(pH)は、例えば、6乃至12であり、好ましくは6乃至11であり、より好ましくは7乃至11であり、より好ましくは8乃至10.5であり、より好ましくは9乃至10.5である。
【0029】
第二の処理媒体は、消毒薬を含むことができる。消毒薬として、例えば過酸化物の材料(過酢酸、過炭酸塩、オゾンなど)のような酸化剤を含むことができる。例えば、過酸化水素が使用可能である。好ましくは10%乃至30%濃度の過酸化水素水が供給される。あるいは、上記と同じ界面活性剤を含むアルカリ洗浄溶液が使用される。適用(application)濃度は、洗浄工程よりも消毒工程でより高いことが好適である。
【0030】
洗い流すために、水道(water connection)が必要でないように、カートリッジから加えることができる純水が使用可能である。
【0031】
本発明に照らして(in the context of)、処理媒体が意図した適用(application)濃度で提供される貯蔵容器から用いるための準備ができるように供給された処理媒体が、取り出される(taken off)ことは特に好ましい。したがって、この特に好ましい実施態様において、プロセスの間で濃縮物(concentrate)が、(例えば水で)薄められない。しかしながら、処理媒体は、適用(application)濃度でスタートから供給されて且つ用いられる。これは様々な利点を有する。
【0032】
正確な処理のために、処理媒体は、細菌フリー/無菌でなければならない。処理媒体が細菌の少ない貯蔵容器あるいは無菌の貯蔵容器から取り出される(taken off)ならば、これは保証される。しかしながら、濃縮物(concentrate)が水で薄められる場合、用いられた水は、制御しがたいか又は困難を持った制御可能なさらなる汚染のソースになり得る。水道(water connection)を省くことによって、本発明に係る方法は、以下に説明されるように、相当に単純で且つよりコンパクトな配置を与えることが可能になる。
【0033】
本発明のこの好ましい実施態様において、二つの処理工程(すなわちプレ洗い流し、ポスト洗い流し)の間に中間の洗い流しのための水道本管(mains water)を使用しない。そして、下流側の処理媒体(例えば消毒溶液)が、最初の処理工程からいかなる残留物(界面活性剤の残留物など)を取り除くための洗い流す媒体として同時にある場合、それは好ましい。この文脈(context)において、洗浄処理媒体が同時に洗い落とされるので、過酸化水素を含む消毒薬を使用することができる。また、過酸化水素それ自身は、残留物を後に残さない。本発明に照らして(in the context of)、二つの処理工程の間にあるいは最後の処理工程(好ましくは消毒の後の)の後に、洗浄処理媒体で中間の洗い流しかポスト洗い流しを行なうことは同様に可能である。原理的には、本発明に係る方法に照らして(in the context of)、(好ましくは細菌フリーであるように)選択的に処理されるこの目的で水道本管を用いることは可能である。しかしながら、本発明に照らして(in the context of)、例えば脱塩され(demineralized)て細菌フリーの水のような洗浄処理媒体が、すぐ使用ができるように準備された(ready-to-use)状態で、貯蔵容器から取り出される(taken off)ことが好ましい。本発明に照らして(in the context of)、洗浄処理媒体がすべてで必要な場合、非常に少量の洗浄処理媒体だけが用いられる。好ましくは、中間工程又はポスト洗い流し工程に対して、前の処理工程に対するよりも多くの洗浄処理媒体が用いられることはない。
【0034】
本発明に照らして(in the context of)、それらが意図した適用(application)濃度で供給される貯蔵容器から使用のできるように準備されて、使用された全ての処理媒体が取り出される(taken off)ことが特に好ましい。
【0035】
処理媒体は、適切なポンプやバルブ等を含む計測装置によって(選択的には水道本管と混合される)貯蔵容器から供給される。計測装置は計測ユニットを形成するように組み合わせられる。かかる計測ユニットは、貯蔵容器を有するベースステーション(base station)の一部とすることができる。あるいは、閉鎖可能なカセットの一部として計測ユニットを構成することができる。好ましい実施態様において、計測ユニットは、カセット上に取り付け可能な別体のユニットである。本発明の当該実施態様において、計測ユニットは、処理媒体のための圧力及び温度センサー及び絞り弁(metering valve)を好ましくは含む。処理媒体用のポンプは、好ましくはベースユニットの中に配置される。計測ユニットの絞り弁(metering valve)によって、カセットの異なった接続部への処理媒体の分配(装置の異なった導管をすすぐこと、外側表面をスプレーするか洗い流すこと)が制御される。
【0036】
本発明によれば、ステップc)において、処理媒体の流れプロフィール(profile)は変化することができる。流れプロフィールのかかる変化は、例えば、媒体を不連続にあるいは突発的に輸送するポンプを用いることにより、例えば圧力変動(pressure swing)を含むことができる。
【0037】
他の実施態様において、流れプロフィールは少なくとも二つの相(two-phase)の処理媒体を用いることにより変化することができる。特に、液体の処理媒体は、ガス状の含有物(例えば無菌の空気の形態で)を含むことができる。かかるガス状含有物は、医療品の表面から不純物を機械的に除去することを促進する。かかるガス状含有物が用いられるとき、キャビテーション効果も医療品の表面でもたらされ得る。それは不純物の特別に強い機械的な除去をもたらす。
【0038】
本発明では、準備のできている処理媒体を用いた洗浄のトータルロスの場合に、非常に少量でも、医療品の、特に内視鏡の、十分な洗浄/消毒/殺菌に十分であることが確認されている。ステップc)からステップe)までに使用された各処理媒体の全容積は、好ましくは2000ml以下であり、より好ましくは1000ml以下である。
【0039】
本発明の他の態様によれば、請求項1に記載された処理工程c)は、連続的に実行されるか、やがて(in time)オーバーラップする、少なくとも二つの連続する処理部分に細分化され得る。この場合、第一の処理部分において、処理媒体は、洗い流し可能なキャビティ及び/又は導管(channel)に排他的に供給される。したがって、まず始めに、キャビティとルーメンの洗浄が起こる。それに続く工程において、処理媒体で噴霧すること及び/又は洗い流すことにより外側の洗浄が行われる。同じことが、あらゆる消毒及び/又は殺菌に同様に適用される。この第二の処理工程の間に、選択的で同時に、キャビティ及び/又はルーメンによる流れがさらに行われる。
【0040】
本発明の他の態様によれば、キャビティ及び/又は導管による処理媒体が流れる前に又は開始のときに、備え付けられた(attached)洗い流し可能なキャビティ及び/又は導管の個々の透過性(permeability)の試験が実行される。この透過性試験は、簡単には処理媒体で実行されるか、又は、必要とされるならば、異なった試験媒体(例えばテストガス)で実行される。本発明によれば、当該方法のために使用された装置(arrangement)は、この場合、例えば内視鏡のような洗浄されるべき各医療品に対して、各ルーメンや導管の透過性試験用の適切なパラメーターが保存されているデータ保存部を有する。例えば、この場合、圧力耐性(pressure tolerance)範囲が個々の導管に対して保存される。この試験が行なわれて、圧力が保存された許容差範囲(tolerance range)を超えて増加するならば、このことは導管の閉塞状態が問題となっていることを示す。この手順によって、医療品が並列に洗い流された二つ以上の導管で処理されるとき、閉塞状態あるいは遮断状態が気付かれないままであること、及び、前記導管が別の方法で洗浄又は処理されないことが回避される。
【0041】
医療品のキャビティ及び外側表面の連続した洗浄が行われるか、又は、処理の前に、透過性試験が行われる本発明の好ましい変形例は、これらのキャビティが所定の安全な方法で洗浄及び/又は処理されるという特別な利点を有する。カセットの全ての供給接続部が並列に供給されるとき、供給された処理媒体のかなりの部分が、カセットの内部と医療品の外側表面が、供給され及び/又は洗浄されるこれらの接続部を通過するということが起こる。これらの接続部を通じた流れに対する抵抗は、狭くて長いチューブや導管や他のルーメンを供給する接続部を通じた流れに対する抵抗よりも一般に著しく小さい。これらの状況(situation)で、前記連続した洗浄によって、キャビティの所定の洗浄又は処理が保証される。
【0042】
本発明は、前記方法を実行するための装置に関する。当該装置は、
a)医療品を受け入れるように構成されていて、処理媒体を供給するための接続部及び排出するための接続部を含む閉鎖可能なカセットと、
b)少なくとも一つのカセットが接続されて、カセットに処理媒体の供給のための接続部及び排出のための接続部に接続される、処理媒体用の供給管及び排出管を含むベースステーションと、
c)処理媒体用の貯蔵容器に直接的且つ排他的に接続される処理媒体用の供給管と、
d)使用された処理媒体を廃棄するためのユニットに直接的且つ排他的に接続される処理媒体用の排出管と、を備える。
【0043】
それがもっぱらトータルロスの掃除のために構成され、洗浄媒体を循環させるための器具(appliance)や、濃縮物の希釈処理又は洗浄処理のための給水との接続部を含まないことが、装置の特徴である。処理媒体用の供給管が処理媒体用の貯蔵容器に直接的且つ排他的に接続されるという言い回しは、処理媒体の希釈を可能にする器具(appliance)が設けられていないことを意味する。本発明に照らして(in the context of)、「直接的且つ排他的に」という言い回しは、液状の媒体(水)との稀釈のための分岐(branching)が設けられていないことを意味する。もちろん、その言い回しは、例えばポンプ、バルブ、測定器具(appliance)とモニター器具(appliance)のような流れを制御するための要素、又は例えばヒーターのような処理媒体を調節するための他の器具(appliance)が接続されていることを除外しない。さらに、その言い回しは、ガス状の処理媒体を液体状の処理媒体中に供給するための器具(appliance)が存在することを特に除外しない。本発明のこの実施態様のからみで(in the context of)、水道が必要でなく、希釈目的で供給された水道本管の処理を同時に必要とする水道が設けられていないことが、重要である。したがって、本発明の実施態様は、外部の水道(water connection)や水道本管の処理のための複雑な器具(appliance)のどちらも必要としない。排出管は、使用された処理媒体を廃棄するための器具(appliance)に直接的且つ排他的に接続される。このことは、使用された処理媒体が再生のために循環されないことを意味する。使用された処理媒体は、例えば、排出管に、又は、使用された処理媒体用の収集容器に直接的に供給される。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明に係る方法を実行するための装置を示す。
【発明を実施するための形態】
【0045】
本発明の典型的な実施態様が、以下に説明される。
【0046】
内視鏡11のための保持具13は、閉鎖可能なプラスチック・カセット14の中に配置される。流れが通過することのできる内視鏡11のルーメン(lumen)は、接続チューブ10を介して計測ユニット16から処理媒体を供給するための接続部に接続される。処理媒体は、排出チューブ15が接続されるカセット14の底にある接続部を介して流出する。
【0047】
計測ユニット16は、管接続(line connection)を介してカセット14の処理媒体用の供給接続部に取り付けられる。その計測ユニットは、圧力及び温度のセンサー1、及び絞り弁(metering valve)3を含む。計測ユニット16は、供給チューブ2及び電気的な計測及び制御の線7を介してベースユニット5に接続される。一つの処理媒体あるいは異なった処理媒体を含む貯蔵容器8が、ベースユニット5の中にある。貯蔵容器8はドア9によって閉鎖可能な調節(accommodation)チャンバの中にある。
【0048】
さらに、ベースユニット5は、プロセス制御装置(不図示)と、運転/表示パネル6と、記録プリンター4と、を有する。
【0049】
実施例1
洗浄剤及び消毒薬の製造
【0050】
次の組成の洗浄剤溶液が製造される。

【0051】
純水に30%濃度の過酸化水素水を含む消毒溶液が製造された。
【0052】
実施例2
洗浄剤及び消毒薬の製造
【0053】
次の組成の洗浄剤溶液及び消毒剤溶液が製造される。

【0054】
この溶液は、水に0.5%体積の濃度で洗浄工程の中で用いられ、1%体積の濃度で消毒工程の中で用いられる。
【0055】
実施例3
この実施例は、本発明に係る洗浄方法の手順について説明する。
【0056】
洗浄されることになっている内視鏡が、カセット14の中に入れられる。そして、洗い流し可能な導管(channel)が、チューブ10によって、カセット14の壁にある供給接続部に接続される。カセット14の供給接続部が、計測ユニット16に接続される。排出接続部が、出口チューブ15に接続される。実施例1に係る上記の洗浄溶液及び消毒溶液が、ベースユニット5に提供される。
【0057】
まず始めに、洗浄溶液は、ベースユニット5の中に配置される不図示の一定流量ヒーターの中で約40℃に温められる。洗浄溶液は、計測装置3によって、内視鏡の導管の中に接続チューブ10を通じて送り込まれる。さらに、スプレーチューブ12によって、内視鏡の外側表面がスプレーされる。
【0058】
すべての導管(channel)を通って投入(charging)/洗い流しを行った後に、洗浄溶液が1分間停止した動きをする(act at rest)ことが許されて、その後、洗浄溶液が3秒間さらに加えられる。用いられるポンプの出力は、650ml/分である。したがって、3秒間のポンピング時間で、およそ32mlの洗浄溶液が加えられる。この量は、始めに投入された(charged)内視鏡の導管内に含まれた液体の量(通常の(customary)内視鏡の場合、およそ20mlである)を完全に交換するのに十分である。
【0059】
1分間停止した動きをして(act at rest)、洗浄溶液を更新するために3秒間ポンピングを行うというサイクルが、更に2回繰り返される。最初の洗浄サイクルの完了のために、洗浄溶液が更に1分間動作する(act)ことが許される。
【0060】
その後、第二の洗浄サイクルとして、ポンピング間隔(interval)により中断された合計で4つの1分間の動作(action)を持った上記シーケンス全体が繰り返される。そのとき、一定流量ヒーターにおいて50℃に加熱された洗浄溶液が用いられる。
【0061】
この第二の洗浄サイクルの後、導管が空になる。そして、洗浄溶液は、消毒溶液で除去されるか、あるいは中間工程において空気で除去される。
【0062】
次の工程において、消毒溶液は一定流量ヒーターにおいて45℃に加熱される。消毒溶液は、内視鏡の導管に導入される。消毒溶液は、外側から、スプレーチューブ12によって内視鏡の表面上にスプレーされる。導管の初めのスプレー及び/又は投入(charge)の時間は、約10秒である。この時間の間、トータルで約10mlの消毒溶液が、内視鏡の導管の中に導入される及び/又は内視鏡の表面上にスプレーされる。
【0063】
それに続いて、消毒溶液が50秒間停止した動きをする(act at rest)。前記サイクル(10秒間のポンピング/スプレー、50秒間の停止した動き)が、さらに9回繰り返される。その結果、トータルで約10分の消毒時間で、消毒溶液の1リッターの消費となる。
【0064】
消毒溶液の動作(action)の後、消毒溶液は、55℃に加熱された無菌のろ過された空気を用いて吹き飛ばされる(blown out)。また、内視鏡の内部及び外部は、10分間、この加熱空気を用いて乾燥される。
【0065】
カセット14から流出する使用済みの洗浄溶液又は消毒溶液が、出口チューブ15によってベースステーション5に戻される。そして、通常は空っぽの廃棄物容器に保持されるか、あるいは直ちに廃棄水道に提供される。
【0066】
その後、内視鏡は、使用のためにカセット14から取り出される。その代わりに、内視鏡は、意図した使用までカセット14に保存される。計測ユニット16から供給チューブ2を取り外す(taking off)こと及びカセット14から出口チューブ15を取り外す(taking off)ことによって、カセット14の入口/出口の開口においてバルブが自動的に閉じる。その結果、カセット内部でのステータスが維持される。
【0067】
全プログラムシーケンスのための洗浄溶液及び消毒溶液の消費は、この例示的案実施態様において、各ケースにおいて1リッターである。
【0068】
洗浄溶液の消費は、カセット14のサイズや洗浄すべき内視鏡の数及びタイプに応じて変化することができる。
【0069】
実施例4
実施例3のような手順が本質的に行われる。代替として、この実施例において、実施例2に係る洗浄剤溶液及び消毒剤溶液が用いられる。ここでは、第二の洗浄サイクルの後、導管を空っぽにすることがない。この第二の洗浄サイクルの後、消毒剤溶液は、55℃に加熱され、内視鏡の導管の中に導入される。そして、消毒剤溶液は、スプレーチューブ12によって外側から内視鏡の表面上にスプレーされる。導管の初めのスプレー及び/又は投入の時間は、約10秒である。この時間において、トータルで約10mlの消毒剤溶液が、内視鏡の導管の中に導入されるか、又は、内視鏡の表面上にスプレーされる。
【0070】
それに続いて、消毒溶液が50秒間動作する(act)が許される。前記サイクル(10秒間のポンピング/スプレー、50秒間の停止した動きをする(act at rest))は、更に9回繰り返される。その結果、トータルで約10分の消毒時間で、消毒溶液の1リッターの消費となる。
【0071】
消毒溶液の動作(action)の後、それは純水で洗浄され、最後に、55℃に加熱されている無菌のろ過された空気で吹き飛ばされる。また、内視鏡の内部及び外部は、10分間、この加熱空気を用いて乾燥される。
【符号の説明】
【0072】
2:供給チューブ
3:絞り弁(metering valve)
4:記録プリンター
5:ベースステーション(ベースユニット)
6:運転/表示パネル
8:貯蔵容器
9:ドア
10:接続チューブ
11:内視鏡
12:スプレーチューブ
13:保持具
14:カセット
15:出口チューブ
16:計測ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗い流し可能なキャビティ及び/又は導管を有する再使用可能な医療品(11)を機械的処理するための方法であって、該方法は、
a)閉鎖可能なカセット(14)の中に医療品(11)を配置するステップであって、当該カセット(14)が、処理媒体の供給のための接続部及び排出のための接続部を含むとともに、処理媒体がこれらの洗い流し可能なキャビティ及び/又は導管を通じて流れることができるように、医療品の洗い流し可能なキャビティ及び/又導管が接続された一つ以上の接続部をその内部に含むステップと、
b)前記カセット(14)を閉じるステップと、
c)新鮮な液体状の処理媒体をカセット(14)の接続部に供給するステップであって、カセット(14)中の媒体が医療品(11)に接触して処理を実行し、そして、洗い流し可能なキャビティ及び/又は導管を通じて処理媒体が流れるステップと、
d)前記排出接続部から処理媒体を排出するステップと、
e)排出された処理媒体を廃棄するステップであって、処理媒体の温度が全処理過程の間で100℃を超えないステップと、を備えることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記処理媒体が、前記カセット(14)及び洗い流し可能なキャビティ及び/又は導管を通じて一方向に流れることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記処理媒体の温度が、全処理プロセスにわたって、90℃を超えず、好ましくは80℃を超えず、より好ましくは70℃を超えず、より好ましくは60℃を超えないことを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記医療品が、蒸気殺菌されないことを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか一つに記載の方法。
【請求項5】
前記処理が、洗浄及び消毒を含むことを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか一つに記載の方法。
【請求項6】
前記処理が、殺菌をさらに含むことを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記ステップc)乃至ステップe)は、少なくとも二つの異なった処理媒体を用いて少なくとも2回連続的に実行されることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか一つに記載の方法。
【請求項8】
第一の処理媒体が、界面活性剤を含む洗浄溶液であることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記界面活性剤を含む洗浄溶液が、酵素を含むことを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記界面活性剤を含む洗浄溶液の水素イオン濃度が、6乃至12であり、好ましくは6乃至11であり、より好ましくは7乃至11であり、より好ましくは8乃至10.5であり、より好ましくは、9乃至10.5であることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
第二の処理媒体が消毒薬を含むことを特徴とする、請求項7乃至10のいずれか一つに記載の方法。
【請求項12】
前記消毒薬は、過酸化物を、好ましくは過酸化水素を備えることを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記処理媒体が意図した適用濃度で提供される貯蔵容器から用いる準備ができているように準備された前記処理媒体が、取り除かれることを特徴とする、請求項1乃至12のいずれか一つに記載の方法。
【請求項14】
前記処理媒体が意図した適用濃度で提供される貯蔵容器から用いる準備ができているように準備された前記処理媒体の全てが、取り除かれることを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記ステップc)において、処理媒体の流れプロフィールが変化することを特徴とする、請求項1乃至14のいずれか一つに記載の方法。
【請求項16】
流れプロフィールの変化が圧力変動を含むことを特徴とする、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
少なくとも二つの相の処理媒体によって、前記流れプロフィールが変化することを特徴とする、請求項15又は16に記載の方法。
【請求項18】
前記二つの相の処理媒体が液相においてガス状の含有物を含むことを特徴とする、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記流れプロフィールの変化が、キャビテーション効果を含むことを特徴とする、請求項17又は18に記載の方法。
【請求項20】
前記ステップc)乃至e)の中で用いられる各処理媒体の全容積が、1000ml以下であることを特徴とする、請求項1乃至19のいずれか一つに記載の方法。
【請求項21】
前記ステップc)における前記処理媒体の温度が、20℃乃至80℃であり、好ましくは30℃乃至55℃であることを特徴とする、請求項1乃至20のいずれか一つに記載の方法。
【請求項22】
請求項1に記載の処理ステップc)は、少なくとも二つの連続する処理部分に細分化されており、第一の処理部分において、処理媒体が、洗い流し可能なキャビティ及び/又は導管に排他的に供給されるとともに、第二の処理部分において、排他的に又は追加的に、医療品の外側表面が処理媒体で洗い流されることを特徴とする、請求項1乃至21のいずれか一つに記載の方法。
【請求項23】
請求項1に記載の処理ステップc)を実行する前に、備え付けられた洗い流し可能なキャビティ及び/又は導管のそれぞれで透過性試験が行なわれることを特徴とする、請求項1乃至22のいずれか一つに記載の方法。
【請求項24】
前記請求項1乃至23のいずれか一つに記載の方法を実行するための装置であって、該装置は、
a)前記医療品(11)を受け入れるように構成されていて、処理媒体を供給するための接続部及び排出するための接続部を含む閉鎖可能なカセット(14)と、
b)少なくとも一つのカセット(14)が接続されて、前記カセット(14)に処理媒体の供給のための接続部及び排出のための接続部に接続される、処理媒体用の供給管(2)及び排出管(15)を含むベースステーション(5)と、
c)処理媒体用の貯蔵容器(8)に直接的且つ排他的に接続される処理媒体用の供給管(2)と、
d)使用された処理媒体を廃棄するためのユニットに直接的且つ排他的に接続される処理媒体用の排出管(15)と、を備えることを特徴とする装置。

【図1】
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【公表番号】特表2010−530251(P2010−530251A)
【公表日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−500119(P2010−500119)
【出願日】平成20年3月20日(2008.3.20)
【国際出願番号】PCT/EP2008/002240
【国際公開番号】WO2008/113590
【国際公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【出願人】(500163399)ケミシェ・ファブリーク・ドクトル・ヴァイゲルト・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング・ウント・コンパニー・コマンディットゲゼルシャフト (2)
【氏名又は名称原語表記】Chemische Fabrik Dr.Weigert GmbH & Co.KG 
【出願人】(509265139)アントニオ・マタチャナ・ソシエダッド・アノニマ (1)
【氏名又は名称原語表記】Antonio Matachana, S.A.
【Fターム(参考)】