説明

再利用カーボン繊維を使用した炭素材料からの成形品の製造方法

炭素繊維を20質量%未満の量で含有する炭素からの成形品の製造方法であって、以下の工程 a) カーボン繊維強化複合材からのくず部分またはスクラップ部分を破砕する工程、その際、カーボン繊維強化複合材は好ましくはカーボン繊維強化プラスチック、カーボン繊維強化炭素、またはカーボン繊維強化コンクリートである、b) 工程a)において得られた破砕生成物、結合剤、例えばピッチ、炭素材料、例えばコークス、および随意に1つまたは複数の添加剤からの混合物を製造する工程、その際、該混合物は20質量%未満の繊維を含有する、c) 工程b)において得られた混合物を成形品に成型する工程、d) 工程c)において得られた成形品を炭化する工程、e) 工程d)において炭化された成形品を含浸剤で随意に含浸させる工程、およびf) 工程d)において炭化された成形品または工程e)において含浸された成形品を随意に黒鉛化する工程を含む製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、再利用カーボン繊維を使用した、カーボン繊維を20質量%未満の量で含有する炭素、殊にグラファイトからの成形品の製造方法に関する。
【0002】
炭素に基づく、および殊にグラファイトに基づく材料からの成形品は、多くの技術分野に用いられる。かかる成形品についての例は、グラファイト電極であり、それはグラファイトの良好な熱伝導率、低い電気抵抗、および化学耐性に基づいており、とりわけ、熱電法において、および殊に電気アーク炉内での製鋼の際に溶融物を融解するために用いられる。かかる成形品についてのさらなる例は、グラファイトに基づく接続部品であり、それはグラファイトニップルとも称され、且つグラファイト電極の前面に接続して電極線を形成するために用いられる。これらの接続部品は一般に、二重円錐台形状もしくはダブルコーンの形態、またはシリンダー形状で形成され、且つ、雄ねじを有しており、それを介して、それと相補的な雌ねじを有するグラファイト電極の前面に備えられたねじ箱にねじ込み、それぞれ2つの電極をその前面を介して互いに接続する。アーク炉の稼働の際、電極線に電圧が印加され、その結果、電極線の下端から溶融物に至るアークが発生し、それが、溶融物、例えば鋼スクラップまたは鉄スポンジを溶融するために充分な高温、例えば1500℃を発生させ、該電極線には、機械的、熱的、および電気的に非常に負荷がかかる。
【0003】
黒鉛電極および黒鉛接続部品の、特に炭素に基づく材料製の部品の、強度および熱衝撃耐性を一般に高めるために、且つそれらの熱膨張係数を軽減するために、それらの材料にカーボン繊維を添加することが既に提案されている。かかるカーボン繊維は、例えば炭素含有出発物質から、例えばポリアクリロニトリルから、まず繊維に紡ぎ、それを次に引っ張りながら炭化し、且つ随意に黒鉛化し、その後、そのように製造された繊維を引き続き表面処理して、且つ随意に塗膜を施与することによって製造される。しかしながらその際、一般に炭素および特に黒鉛に基づく材料製の多数の部品の場合、例えば殊に黒鉛電極および黒鉛接続部品の場合、材料中のカーボン繊維は最大20質量%の量で含有されていることが必須であり、それと共に最終製品の特性が、主として炭素もしくは黒鉛マトリックスの特性によって、望み通りに決定される。それに加えて、黒鉛電極および黒鉛接続部品の場合、繊維がマトリックス材料と固く結合していることがどうしても必要とされ、なぜなら、そうでなければ、黒鉛電極および黒鉛接続部品の応用技術的な特性が損なわれるからである。
【0004】
EP1460883号A2から、例えば、0.2〜10質量%のカーボン繊維を含有する黒鉛で構成されている電極用接続部品が公知であり、その際、カーボン繊維の表面は酸化活性化されており、加えて、カーボン繊維は炭化されたコーティングを有している。この接続部品の製造のために、カーボン繊維をまず、その表面を酸化によって活性化し、引き続き、有利にはワックス、ピッチ、天然樹脂、または熱可塑性または熱硬化性ポリマーから選択されるコーティング剤でコーティングし、その後、そのように得られた繊維をコークス、ピッチ、および随意の添加剤と混合し、且つ、そのように得られた混合物をグリーン体に成形し、それを引き続き炭化し且つ最後に黒鉛化する。
【0005】
ただし、カーボン繊維のその製造は、非常に費用がかかり且つエネルギー集約的であり、そのために、カーボン繊維についての材料のコストは、炭素マトリックスもしくは黒鉛マトリックスの製造のために用いられる粗材料のコストを明らかに上回っている。従って、容易且つ安価に実施される相応の製造方法が期待される。
【0006】
従って、本発明の課題は、20質量%未満のカーボン繊維を含有する炭素、殊に黒鉛からの成形品の製造方法であって、容易且つ殊に安価に実施され、且つ殊に、優れた特性を有する黒鉛電極および黒鉛接続部品を製造し得る製造方法を提供することである。
【0007】
本発明によれば、前記課題は、カーボン繊維を20質量%未満の量で含有する炭素からの成形品の製造方法であって、以下の工程:
a) カーボン繊維強化複合材からのくず部分またはスクラップ部分を破砕する工程、
b) 工程a)において得られた破砕生成物、結合剤、炭素材料、および随意に1つまたは複数の添加剤からの混合物を製造する工程、その際、該混合物は20質量%未満の繊維を含有する、
c) 工程b)において得られた混合物を成形品に成形する工程、および
d) 工程c)において得られた成形品を炭化する工程
を含む方法によって解決される。
【0008】
この解決策は、カーボン繊維強化複合材からのくず部分またはスクラップ部分を破砕し、その破砕生成物を繊維出発材料として、炭素複合材のマトリックスを形成するために必須の成分、すなわち、結合剤、炭素材料、および随意に1つまたは複数の添加剤と混合し、且つ、この混合物を成形品に成形し、引き続き炭化し、且つ随意に黒鉛化するという方法によって、カーボン繊維を20質量%未満の量で含有する、傑出した特性を有し、殊に傑出した強度、低い熱膨張係数、および優れた温度衝撃耐性を有する炭素からの成形品、例えば黒鉛電極および黒鉛電極用黒鉛接続部品を、容易な方式で製造できるという意外な知見に基づいている。その際、この方法で、カーボン繊維が非常に固く炭素マトリックス材料に付着したカーボン繊維強化炭素もしくは黒鉛製の成形品が得られることは殊に意外であった。カーボン繊維が炭素マトリックス材料に固く付着していることによって、成形品の熱膨張係数が減少され、且つ、成形品の強度および温度衝撃耐性が高められる。この方法の際、新たに製造されたカーボン繊維の使用は省略され、その代わりに、カーボン繊維強化複合材からの、破砕されたくず部分またはスクラップ部分からの古いカーボン繊維が使用されるので、この方法は相応する成形品を製造するための従来技術から公知の方法よりも非常に大々的に安価でもある。従って、本発明による方法は、カーボン繊維を20質量%未満の量で含有する炭素製の成形品を製造するための方法であるだけでなく、殊に、カーボン繊維強化複合材からのくず部分またはスクラップ部分の再利用もしくはリサイクルのための方法でもある。
【0009】
本発明による方法の方法工程b)において用いられる炭素材料は、本発明の意味においては、各々多量の炭素を含有する材料、殊に、少なくとも70質量%、特に好ましくは少なくとも80質量%、およびとりわけ特に好ましくは少なくとも90質量%が炭素からなる材料であると理解される。かかる炭素材料についての好ましい例はコークスである。
【0010】
原則的に、本発明による方法の方法工程a)においては、任意のカーボン繊維強化複合材からの、さらにはカーボン繊維がマトリックス内に埋め込まれている材料からの、くず部分またはスクラップ部分を用いることができる。その際、方法工程a)において、カーボン繊維強化プラスチック(CFK)から、カーボン繊維強化炭素(CFC)から、カーボン繊維強化コンクリートから、または上記の複合材の2つまたはそれより多くからの混合物から構成されているくず部分もしくはスクラップ部分が用いられる場合に、殊に良好な結果が得られる。CFKのための適したマトリックス材料についての例は、全ての種類の熱可塑性または熱硬化性の合成樹脂、例えばフェノール樹脂またはエポキシ樹脂である。
【0011】
有利には、方法工程a)において用いられるくず部分もしくはスクラップ部分を構成しているカーボン繊維強化複合材は、少なくとも20容積%のカーボン繊維、特に好ましくは30〜70容積%のカーボン繊維、およびとりわけ特に好ましくは40〜60容積%のカーボン繊維を含有する。この実施態様は、用いられるくず部分もしくはスクラップ部分がCFKまたはCFCから構成されている場合に殊に好ましい。用いられるくず部分もしくはスクラップ部分の複合材中に含有されているカーボン繊維が多いほど、方法工程b)において装入される、破砕生成物からのマトリックス材料は少ない、もしくは、方法工程b)の実施前に破砕生成物からマトリックス材料を分離することを省略できる。
【0012】
くず部分もしくはスクラップ部分が、カーボン繊維強化コンクリートから構成されている場合は、カーボン繊維の含有率は典型的には10容積%未満である。
【0013】
方法工程a)においては、殊に、カーボン繊維として短繊維および/または長繊維を含有する、カーボン繊維強化複合材からのくず部分またはスクラップ部分を用いることができる。
【0014】
方法工程a)においてくず部分またはスクラップ部分を破砕するために、カーボン繊維強化複合材が破砕され得る、当業者に公知の全ての装置を用いることができる。これについての限定されない例は、シュレッダー、切断ミル、インパクトミルおよびハンマミルである。
【0015】
破砕の後、破砕された物体もしくはリサイクルされた繊維に、有利には塗膜を施与し、このために、当業者に公知の全ての材料を用いることができる。
【0016】
方法工程b)において、結合剤、炭素材料、および随意に添加剤との良好な混合を達成するために、カーボン繊維強化複合材からのくず部分またはスクラップ部分を、方法工程a)において好ましくは主に、1〜100mmの長さを有する粒子へと破砕する。この文脈において、主に、とは、破砕後に存在する粒子の50質量%より多く、好ましくは少なくとも75質量%、特に好ましくは少なくとも90質量%、およびとりわけ特に好ましくは少なくとも95質量%が、1〜100mmの長さを有していると理解される。その際、個々の粒子は各々任意の幾何学的形状を有してよい。例えば、それらは、例えば長方形の断面を有する薄片の形態で存在するか、またはシリンダー状または繊維状に形成されていてよい。
【0017】
加えて、本発明の思想のさらなる形においては、方法工程a)は、破砕生成物が破砕された粒子以外に比較的少量のダストのみを含有するように実施することが提案される。このために、ダストは、破砕の間または破砕後に生成物からふるいにより除去され得る。ダストとは、本文脈において、100μm未満の平均微粒子径もしくは粒径を有する微粒子もしくは粒子であると理解される。有利には、方法工程a)における破砕は、破砕後の生成物が、平均粒径100μm未満を有するダスト粒子を5質量%未満、含有するように実施され、通常、これはふるいのみによって達成できる。
【0018】
本発明のさらに好ましい実施態様によれば、方法工程a)において、くず部分もしくはスクラップ部分を構成している複合材の両方の成分、つまり、マトリックスとカーボン繊維とを、特に破砕の間または破砕後に、互いに解放する。その際、解放とは、繊維とマトリックスとを脱着することであると理解される。
【0019】
この実施態様の際、カーボン繊維からのマトリックスの解放を、くず部分またはスクラップ部分と、酸との、例えば鉱酸、例えば硫酸または硝酸との、アルカリとの、例えば苛性ソーダとの、または溶剤との接触によって引き起こすことができる。選択的に、カーボン繊維からのマトリックス材料の解放を、破砕の際に自動的に引き起こすことができる。その際、両方の成分(カーボン繊維およびマトリックス材料)を、一緒に、方法工程b)に供給できる。
【0020】
選択的に、方法工程a)において、くず部分またはスクラップ部分の破砕の間、または好ましくは破砕後に、マトリックス材料を複合材のカーボン繊維から分離する、つまり、マトリックス材料をカーボン繊維から取り除き、従って、方法工程b)に、方法工程a)の生成物として、カーボン繊維のみが供給される。これは当然のことながら、予めまたは同時に繊維とマトリックスとを脱着することが必要である。カーボン繊維からのマトリックスの分離を、例えばふるいまたは分級によって行うことができ、その際、有利には分級を回転機分級機、空気分級機またはジグザグ分級機内で実施する。
【0021】
原則的に、方法工程b)において、結合剤として、この目的のために当業者に公知の全ての化合物を用いることができる。結合剤が、フェノール樹脂、ピッチ、フラン樹脂、フェニルエステル、および上記の化合物の2つまたはそれより多くからの任意の混合物からなる群から選択される場合、殊に良好な結果が得られ、その際、結合剤として、特に好ましくはピッチが用いられる。
【0022】
本発明の思想のさらなる形において、方法工程b)における炭素材料としてコークスを用い、その際、ピッチコークス、冶金コークス、または石油コークス、殊にニードルコークスが特に好ましい。有利には、用いられるコークスは、30mm未満、特に好ましくは15mm未満、およびとりわけ特に好ましくは0.01〜3mmの粒径を有する。
【0023】
本発明の特に好ましい実施態様によれば、方法工程b)においては、結合剤としてピッチが用いられ、且つ、炭素材料としてコークスが用いられる。
【0024】
コークスと結合剤との混合比は、有利には5:1〜2:1、例えば約4:1の値に調節される。
【0025】
この混合のために、随意に、この目的のために当業者に公知の全ての添加剤、例えば0.1〜0.5質量%の鉄酸化物を添加できる。
【0026】
本発明によれば、方法工程b)における混合物の(炭素)繊維含有率は20質量%未満に調節され、その際、該混合物の(炭素)繊維含有率は好ましくは15質量%未満、特に好ましくは10質量%未満、とりわけ特に好ましくは5質量%未満、および最も好ましくは3質量%未満に調節される。方法工程b)において用いられる繊維含有率は、最終製品の繊維含有率よりも低いかまたは同等であり、なぜなら、方法工程b)の後、混合物はもはや(炭素)繊維を供給されないが、しかし、マトリックス成分は次の温度処理、例えば炭化および/または黒鉛化の際に質量を損失することがあるからである。
【0027】
方法工程c)においては、方法工程b)において製造された混合物を、この目的のために当業者に公知の随意の方法によって、例えば押出によって、望ましい幾何学的形状および望ましい質量を有する成形体へと成形する。
【0028】
有利には、方法工程d)における炭化は、600℃〜1200℃の温度で実施される。
【0029】
炭化後、その炭化された成形品を随意に黒鉛化でき、そのことが好ましい。かかる黒鉛化を実施する場合、成形体を方法工程d)と黒鉛化との間に、有利には含浸ピッチである含浸剤で、有利には含浸させる。その際、複数の含浸工程を実施でき、その際、それぞれ2つの含浸工程の間に、好ましくはその都度、炭化を実施する。
【0030】
本発明の思想のさらなる形において、随意の黒鉛化を、1800℃〜3000℃の温度、および特に好ましくは2300℃〜2700℃の温度で実施することが提案される。
【0031】
さらに好ましい実施態様によれば、方法工程a)において破砕されたくず部分またはスクラップ部分は、その中で、先に記載されたとおり、随意にカーボン繊維がマトリックス材料から解放されているか、またはマトリックス材料がカーボン繊維から分離されており、方法工程b)に供給される前に酸化処理に供されて、繊維表面もしくは繊維束表面が酸化される。それによって、繊維表面上に官能性の酸素含有基、例えばカルボキシル基および/またはヒドロキシル基、または他の活性な基、例えばカルボニル基によって活性化されるC−H酸基、塩基性のピロン状の表面基、または同様のものが生じ、それにより、繊維とマトリックスとの付着が高められ、ひいては、成形体の強度が改善される。
【0032】
その際、酸化処理は、例えば酸化剤を含有する水浴中での酸化、電解質を含有する水浴中でのアノード酸化、および/または酸化剤を含有するガス流中での、例えば400〜600℃での酸化を含むことができる。その際、酸化剤として、全ての通常の酸化剤、例えばアルカリ(土類)金属塩、例えばアルカリ(土類)金属の硝酸塩、硫酸塩、塩素酸塩、臭素酸塩、およびヨウ素酸塩、または酸化性酸、例えば硝酸、硫酸、塩素酸、臭素酸、ヨウ素酸を用いることができる。酸化剤の除去のために、酸化処理された生成物を、方法工程b)に供給する前に、例えば脱イオン水で洗浄してよい。
【0033】
方法工程a)において用いられるくず部分もしくはスクラップ部分を構成しているカーボン繊維強化複合材の組成によっては、そのくず部分またはスクラップ部分を、方法工程a)の実施前、または方法工程a)における破砕の後であるがしかし方法工程b)の前に、炭化することが好ましいことがある。この実施態様は、用いられるくず部分またはスクラップ部分がCFKからなる場合、複合材のマトリックス材料を炭素に移行するために殊に好ましい。
【0034】
破砕後、その破砕され、炭化された物体、もしくはリサイクルされた繊維に、有利には塗膜が施与される。
【0035】
本発明の第一のとりわけ特に好ましい実施態様によれば、本発明による方法は、以下の工程を含む:
a) カーボン繊維強化炭素(CFC)からのくず部分またはスクラップ部分を破砕し、且つ随意にその破砕生成物を酸化する工程、
b) 工程a)において得られた、破砕生成物、ピッチ、コークス、および随意に1つまたは複数の添加剤からの混合物を製造する工程、その際、該混合物は20質量%未満の繊維を含有する、
c) 工程b)において得られた混合物を、成形品に成形する工程、
d) 工程c)において得られた成形品を炭化する工程、
e) 工程d)において炭化された成形品を、含浸剤で随意に含浸させる工程、および
f) 工程d)において炭化された成形品または工程e)において含浸された成形品を、随意に黒鉛化する工程。
【0036】
有利には、方法工程a)において用いられるくず部分もしくはスクラップ部分は、カーボン繊維強化複合材から構成され、それは少なくとも20容積%のカーボン繊維、特に好ましくは30〜70容積%のカーボン繊維、およびとりわけ特に好ましくは40〜60容積%のカーボン繊維を含有する。
【0037】
破砕後、且つ方法工程b)に破砕生成物を供給する前に、繊維とマトリックスとの脱着を実施でき、且つ、該マトリックス材料がカーボン繊維から分離され、従って、方法工程b)に方法工程a)の生成物としてカーボン繊維のみが供給される。生成物の酸化処理を行う場合は、有利には酸化処理前に随意の分離を実施する。
【0038】
加えて、この実施態様の際、方法工程d)の後に、方法工程e)およびf)による含浸および黒鉛化を実施することが好ましい。その際、方法工程d)およびe)を、交互に、何度も相前後して実施することができ、その後、黒鉛化を実施する。
【0039】
本発明の第二のとりわけ特に好ましい実施態様によれば、本発明による方法は、以下の工程を含む:
a) カーボン繊維強化プラスチック(CFK)からのくず部分またはスクラップ部分を破砕し、且つその破砕生成物を随意に酸化する工程、
b) 工程a)において得られた破砕生成物、ピッチ、コークス、および随意に1つまたは複数の添加剤からの混合物を製造する工程、その際、該混合物は20質量%未満の繊維を含有する、
c) 工程b)において得られた混合物を、成形品に成形する工程、
d) 工程c)において得られた成形品を炭化する工程、
e) 工程d)において炭化された成形品を、含浸剤で随意に含浸させる工程、および
f) 工程d)において炭化された成形品または工程e)において含浸された成形品を、随意に黒鉛化する工程。
【0040】
この実施態様の際、CFKからのくず部分もしくはスクラップ部分を、工程a)による破砕の前に炭化するか、または方法工程a)による破砕生成物を随意の酸化の前に炭化し、その後、そのように得られた生成物を方法工程b)に供給することが好ましい。
【0041】
この実施態様の際も、破砕後、且つ方法工程b)に破砕生成物を供給する前に、繊維とマトリックスとの脱着を実施でき、且つ、該マトリックス材料がカーボン繊維から分離され、従って、方法工程b)に方法工程a)の生成物としてカーボン繊維のみが供給される。生成物の酸化処理を行う場合、分離を有利には酸化処理前に実施し、その際、随意の炭化を、好ましくは同じく酸化処理前、しかし分離の後に実施する。
【0042】
加えて、この実施態様の際も、方法工程d)の後に、方法工程e)およびf)による含浸および黒鉛化を実施することが好ましい。その際、方法工程d)およびe)を、交互に、何度も相前後して実施することができ、その後、黒鉛化を実施する。
【0043】
最後に、この実施態様の際も、方法工程a)において、少なくとも20容積%のカーボン繊維、特に好ましくは30〜70容積%のカーボン繊維、およびとりわけ特に好ましくは40〜60容積%のカーボン繊維を含有する、カーボン繊維強化複合材からのくず部分もしくはスクラップ部分を用いることが好ましい。
【0044】
本発明の第三のとりわけ特に好ましい実施態様によれば、本発明による方法は、以下の工程を含む:
a) カーボン繊維強化コンクリートからのくず部分またはスクラップ部分を破砕し、且つ、マトリックスをカーボン繊維から有利にはふるいまたは分級によって分離する工程、
b) 工程a)において得られた破砕カーボン繊維、ピッチ、コークス、および随意に1つまたは複数の添加剤からの混合物を製造する工程、その際、該混合物は20質量%未満の繊維を含有し、
c) 工程b)において得られた混合物を、成形品に成形する工程、
d) 工程c)において得られた成形品を炭化する工程、
e) 工程d)において炭化された成形品を、含浸剤で随意に含浸させる工程、および
f) 工程d)において炭化された成形品または工程e)において含浸された成形品を、随意に黒鉛化する工程。
【0045】
この実施態様の際、マトリックス材料はカーボン繊維から強制的に分離されるので、この実施態様の際、カーボン繊維が方法工程b)に供給される前に、有利には方法工程d)の前に炭化が行われない、即ち、殊に方法工程a)による破砕の前に、くず部分もしくはスクラップ部分の炭化が行われず、且つ、殊に方法工程a)による破砕生成物の炭化も行われない。
【0046】
加えて、この実施態様の際、好ましくは、破砕生成物の酸化処理も実施されない。
【0047】
ただし、この実施態様の際も、方法工程d)の後に、方法工程e)およびf)による含浸および黒鉛化を実施することが好ましい。その際、方法工程d)およびe)を、交互に、何度も相前後して実施することができ、その後、黒鉛化を実施する。
【0048】
本発明による方法は、殊に黒鉛電極の製造、黒鉛電極用の黒鉛接続部品の製造、アルミニウム電解質電池用のカソードの製造、高炉のブロック(Hochofensteinen)の製造、および微細粒黒鉛製成形品の製造のために適している。微細粒黒鉛とは、この文脈においては、1mm未満の粒径を有する黒鉛であると理解される。
【0049】
本発明のさらなる対象は、成形品および殊に黒鉛電極、黒鉛接続部品、アルミニウム電解質電池用のカソード、高炉のブロックまたは微細粒黒鉛製の成形品であって、先述の本発明による方法によって得られるものである。
【0050】
以下で、本発明を解説するがしかし本発明を限定するわけではない実施例を用いて、本発明をさらに説明する。
【0051】
実施例1
エポキシ樹脂マトリックスおよび50%の繊維容積含分を有する、5mm厚のCFK板を、シュレッダー内で破砕し、引き続き、切断ミル内で粉砕する。丸い孔(直径10mm)を有するふるいを通して、より大きな寸法を有する粒子が切断ミルのミル室を離れることを防止した。
【0052】
粉砕された物体は、流動性があり且つ約15質量%のダスト部分を含有した。
【0053】
実施例2
エポキシ樹脂マトリックスおよび約50%の繊維容積含分を有する、3mm厚のCFK板を、シュレッダー内で破砕し、引き続き、切断ミル内で粉砕する。長孔(寸法3mm×50mm)を有するふるいを通して、より大きな寸法を有する粒子が切断ミルのミル室を離れることを防止した。
【0054】
粉砕された物体は、流動性があり且つ約20質量%のダスト部分を含有した。
【0055】
実施例3
実施例1および実施例2において製造されたリサイクル繊維の部分を、900℃で20時間、窒素雰囲気下で炭化した。炭化の前および後の計量により、温度処理による質量損失が約40%であると測定された。
【0056】
材料の流動性は、炭化によって改善された。
【0057】
実施例4〜7および比較例1および2
各々100部のニードルコークス(粒径<1.2mm)、27部の石炭タールピッチ、および3部の、実施例1〜3において製造されたリサイクル繊維の各々から、それぞれ成形材料のバッチを製造した。該混合物を、直径20mmおよび長さ110mmを有する棒へと押出し、800℃で炭化し、且つ、2800℃で黒鉛化した。
【0058】
さらに、繊維を用いないで、もしくは、繊維長6mmを有する短いカット繊維(Sigrafil C25S066 PUT, Fa. SGL Technologies GmbH)3部を用いて、参照試料を製造した。
【0059】
全ての試料について、押出方向における線形熱膨張係数(CTE)を測定した。この結果を以下の表1に要約する。
【0060】
【表1】

【0061】
上記の結果から、新たに製造された短いカット繊維を含有する比較例2による成形材料と同様に、リサイクル繊維を含有する実施例4〜7による成形材料も、繊維を含有しない比較例1による成形材料と比べて、より少ないCTE値を有する、つまり、CTEが減少されたことがわかる。その際、炭化されたリサイクル繊維と、炭化されていないリサイクル繊維との間の違いは観察されなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーボン繊維を20質量%未満の量で含有する炭素からの成形品の製造方法であって、以下の工程:
a) カーボン繊維強化複合材からのくず部分またはスクラップ部分を破砕する工程、
b) 工程a)において得られた破砕生成物、結合剤、炭素材料、および随意に1つまたは複数の添加剤からの混合物を製造する工程、その際、該混合物は20質量%未満の繊維を含有する、
c) 工程b)において得られた混合物を成形品に成形する工程、および
d) 工程c)において得られた成形品を炭化する工程
を含む前記製造方法。
【請求項2】
工程a)において用いられたくず部分またはスクラップ部分が、好ましくはカーボン繊維強化プラスチック、カーボン繊維強化炭素、カーボン繊維強化コンクリートまたは上記の複合材の2つまたはそれより多くからの混合物から構成されていることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程a)におけるくず部分またはスクラップ部分の破砕を、シュレッダー、切断ミル、インパクトミルおよびハンマミルを用いて実施することを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
カーボン繊維強化複合材からのくず部分またはスクラップ部分を、工程a)において主に、1mm〜100mmの長さを有する粒子へと破砕し、その際、有利には破砕の間または破砕後に、方法工程a)の破砕生成物が、平均粒径100μm未満を有するダスト粒子を特に好ましくは5質量%未満有するように、破砕生成物からダストをふるいにより除去することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
工程a)において、くず部分またはスクラップ部分の破砕の間または破砕後に、複合材のマトリックスとカーボン繊維とを互いに解放し、その際、カーボン繊維からのマトリックスの解放を、有利には該くず部分またはスクラップ部分を、酸、アルカリまたは溶剤と接触させることによって引き起こすことを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
工程a)におけるくず部分またはスクラップ部分の破砕の間、または好ましくは破砕後に、複合材のカーボン繊維からマトリックスを分離し、その際、カーボン繊維からのマトリックスの分離を有利にはふるいまたは分級によって実施し、その際、該分級を特に好ましくは回転機分級機、空気分級機またはジグザグ分級機において実施することを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
工程b)において結合剤として、フェノール樹脂、ピッチ、フラン樹脂、フェニルエステル、および前記化合物の2つまたはそれより多くの任意の混合物からなる群から選択される化合物を用い、および/または工程b)において炭素材料として、コークス、好ましくはピッチコークス、冶金コークスまたは石油コークス、殊にニードルコークスを用い、その際、工程b)において、混合物中の炭素材料と結合剤との間の比を、特に好ましくは5:1〜2:1に、および好ましくは4:1に調節することを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
工程b)において、混合物の繊維含有率を、15質量%未満、好ましくは10質量%未満、特に好ましくは5質量%未満、且つ、とりわけ特に好ましくは3質量%未満に調節することを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
工程d)の後に、成形品を、有利には含浸ピッチである含浸剤で含浸させ、引き続き黒鉛化し、その際、該黒鉛化を特に好ましくは1800℃〜3000℃の温度、およびとりわけ特に好ましくは2300℃〜2700℃の温度で実施することを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
工程a)において破砕されたくず部分またはスクラップ部分を、方法工程b)に供給する前に、酸化処理に供し、その際、該酸化処理は有利には、酸化剤を含有する水浴中での酸化、電解質を含有する水浴中でのアノード酸化、または酸化剤を含有するガス流中での酸化を含むことを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
カーボン繊維強化複合材からのくず部分またはスクラップ部分を、工程a)の実施前、または工程a)における破砕後ではあるが工程b)の前に、炭化することを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
以下の工程:
a) カーボン繊維強化炭素からのくず部分またはスクラップ部分を破砕し、且つその破砕生成物を随意に酸化する工程、
b) 工程a)において得られた粉砕生成物、ピッチ、コークス、および随意に1つまたは複数の添加剤からの混合物を製造する工程、その際、該混合物は20質量%未満の繊維を含有する、
c) 工程b)において得られた混合物を、成形品に成形する工程、
d) 工程c)において得られた成形品を炭化する工程、
e) 工程d)において炭化された成形品を、含浸剤で随意に含浸させる工程、および
f) 工程d)において炭化された成形品または工程e)において含浸された成形品を、随意に黒鉛化する工程
を含むことを特徴とする、請求項1から11までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
以下の工程:
a) カーボン繊維強化プラスチックからのくず部分またはスクラップ部分を破砕し、且つ随意にその破砕生成物を酸化する工程、
b) 工程a)において得られた粉砕生成物、ピッチ、コークス、および随意に1つまたは複数の添加剤からの混合物を製造する工程、その際、該混合物は20質量%未満の繊維を含有する、
c) 工程b)において得られた混合物を、成形品に成形する工程、
d) 工程c)において得られた成形品を炭化する工程、
e) 工程d)において炭化された成形品を、含浸剤で随意に含浸させる工程、および
f) 工程d)において炭化された成形品または工程e)において含浸された成形品を、随意に黒鉛化する工程
を含み、カーボン繊維強化プラスチックからのくず部分またはスクラップ部分を、工程a)による破砕前に炭化し、および/または工程a)による破砕生成物を随意の酸化の前に炭化し、その後、そのように得られた生成物を工程b)に供給することを特徴とする、請求項1から11までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
以下の工程:
a) カーボン繊維強化コンクリートからのくず部分またはスクラップ部分を破砕し、且つ、マトリックスをカーボン繊維から有利にはふるいまたは分級によって分離する工程、
b) 工程a)において得られた破砕カーボン繊維、ピッチ、コークス、および随意に1つまたは複数の添加剤からの混合物を製造する工程、その際、該混合物は20質量%未満の繊維を含有し、
c) 工程b)において得られた混合物を、成形品に成形する工程、
d) 工程c)において得られた成形品を炭化する工程、
e) 工程d)において炭化された成形品を、含浸剤で随意に含浸させる工程、および
f) 工程d)において炭化された成形品または工程e)において含浸された成形品を、随意に黒鉛化する工程
を含む、請求項1から11までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
請求項1から14までのいずれか1項によって得られる成形品。

【公表番号】特表2013−519498(P2013−519498A)
【公表日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−552380(P2012−552380)
【出願日】平成23年2月9日(2011.2.9)
【国際出願番号】PCT/EP2011/051893
【国際公開番号】WO2011/098486
【国際公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【出願人】(512298708)エスゲーエル カーボン ソシエタス ヨーロピア (11)
【氏名又は名称原語表記】SGL Carbon SE
【住所又は居所原語表記】Soehnleinstr. 8, D−65201 Wiesbaden, Germany
【Fターム(参考)】