再循環ガスを分配する装置及び前記装置を備える再循環ガス冷却装置
本発明は、自動車エンジンからの排ガスを構成要素(2)の方向に分配させるための装置であって、同じ第1の平面に開口しているガス吸入ポート(e1)及びガス排出ポート(s1)と、第1の平面と平行な同じ第2の平面に開口している、構成要素(2)の方に向いた吸入ポート(e2)及び排出ポート(s2)と、一方向及びその反対の方向にガスを流すことを可能にするための、第1及び第2の平面間に設けられている回転手段とを備えていることを特徴とする装置に関する。本発明は、上記のような装置を備えている冷却装置にも関する。
【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
本発明は、再循環ガス又はEGR(排ガス再循環)ガスとして知られる排ガスを再循環させるための装置、及び前記装置を備えているEGRガス冷却器に関する。
内燃エンジンの排ガスによる汚染の除去を改善するために、吸気側へ排ガスを再循環させるという措置が講じられており、これは、一般には、EGR管路の使用として知られている。これに加えて、そのようなガスのための専用の冷却器の使用によって、この汚染の除去をさらに促進させることができる。
【0002】
しかし、1つの大きな問題は、排ガスの再循環によって、前記EGR管路内に配置されている構成要素が実質的に汚れてしまうということである。そのため、エンジンが規定の運転ゾーンにある時に、EGRバルブ(EGRバルブは、吸入側に送り戻されたEGRガスの流量を調整する)を大きく開放することによって、クリーニング/クリーンアウト動作を実施することがある。この方法は、仏国特許出願第2833653号明細書に記載されているもので、この方法によって、EGR管路において蓄積する堆積物を熱的に除去することができる。
【0003】
しかし、この汚れの問題は、EGR冷却器に関しては、完全には解決されていない。冷却器は常時運転している、つまり、交換器を通過する水の流れは常にある。それにより、冷却器は、クリーンアウト段階が行われる際に吸入側は完璧にきれいになるが、常時冷却されているEGRガスは十分な高温になっていないため、特に水/EGRガス交換器のもう半分は、EGR冷却器が完全にクリーンアウトされない。
【0004】
本発明は、EGR冷却器の汚れの問題を解決することを課題としている。
そのために、本発明は、自動車エンジンにおいてEGRガスを構成要素に分配する装置であって、同一の第1の平面に開口している、ガスのための吸入ポート及び排出ポートと、第1の平面と平行な同一の第2の平面に開口し且つ前記構成要素の方を向いている吸入ポート及び排出ポートと、前記第1の平面と第2の平面との間に配置され且つ一方向及びその反対方向へのガスの循環を可能にする回転手段とを備える装置を提供する。
【0005】
本発明の他の特徴によれば、
− 前記回転手段が、吸入側へと再循環させるようになっているEGRガス流量の調節が可能となるよう設計されていてもよく、
− 前記回転手段が、円筒状部材であってその旋回軸の周りを回転する円筒状部材を備えていてよく、この円筒状部材の2つの端面が第1及び第2の平面に対向し、この円筒状部材がその2つの端面において、ポートの連通を可能にするスロットを有し、これらのスロットが、円筒状部材が回転する角度に応じて、一方向又はその反対の方向でガスを流すことが可能となるように設計され、
− 前記円筒状部材が、2対のスロットを有していてもよく、第1の対のスロットが、直線的に延び且つ第2の対のスロットと交差しており、
− 前記回転手段はまた、構成要素をバイパスするように設計されていてもよく、例えば、円筒状部材が、第1の平面に対向する面において空洞を形成していてよく、これによりガスが、吸入から排出へ直接流れるようになっており、
− 前記円筒状部材が、2つのスロットを備えていてよく、この2つのスロット、ガス吸入及びガス排出、吸入ポート及び排出ポートが、細長い形状をしていてよく、円筒状部材が回転する角度に応じて、ガスを一方向に流す、ガスをその反対方向に流す、又は構成要素をバイパスすることが可能となるように配置されていてよく、
− 前記構成要素が、熱交換器であってよい。
本発明は、上記のような装置を備えているEGRガス冷却器にも関する。この冷却器は、U字形に構成されている熱交換器を備えている型のものであってよい。
【0006】
本発明及びその利点は、完全に非限定的な例という形であり且つ添付図面によって例示されている1つの実施形態の詳細な説明を読むことで、よりよく理解されるであろう。
【0007】
分配装置は、自動車のエンジンからの循環ガスの流れを、構成要素へ、例えば熱交換器へ向かって方向付けるように設計されている。この分配装置は、再循環ガス冷却器、例えばU字形の熱交換器を備えているEGRガス冷却器の一部を構成していてよい。
概して装置は、同一の第1の平面に開口しているガスのための吸入ポートe1及び排出ポートs1と、第1の平面に対して平行な同一の第2の平面で開口している構成要素2への吸入ポートe2及び排出ポートs2と、第1の平面と第2の平面との間に配置され且つ一方向及びその反対方向へのガスの流れを可能にする回転手段を備えている。
【0008】
流れを反転させるための回転手段は、自らの旋回軸線の周りを回転する円筒状部材3を備えており、この円筒状部材3の2つの端面は、第1及び第2の平面に対向して配置されている。円筒状部材3は、ポート(e1、s1、e2、s2)の連通を可能にするスロットを有しており、このスロットは、円筒状部材3が回転する角度に応じて、ガスを一方向又は反対の方向に流すことが可能となるよう設計されている。円筒状部材3は、当業者に公知の任意の手段によって作動させることができる。そのアクチュエータを、電子制御ユニットが制御する。
【0009】
図1〜4に示す第1の実施形態によれば、円筒状部材3は、2対のスロットを有しており、第1の対のスロット(4、5)は「直線的である」(図1a)と言うことができ、第2の対のスロット(6、7)は「交差している」(図1e)と言うことができる。この実施形態では、図1aを参照すると、ガス吸入ポートe1及び交換器吸入ポートe2が互いに向き合っている。排出ポートs1及びs2も同様である。
【0010】
第1の対のスロット(4、5)は、互いに向き合うポートを互いに連通させているので、直線的であると言える。つまり、スロット4は、吸入ポートe1及びe2を互いに連通させ、スロット5は、排出ポートs1及びs2を互いに連通させている(図1a、1d及び3を参照)。
【0011】
第2の対のスロット(6、7)は、吸入ポートを排出ポートと連通させ且つ交換器を通って流れるEGRガスの方向を逆にしているので、交差していると言える(図1e参照)。つまり、スロット6は、吸入ポートe1を排出ポートs2と連通させており、スロット7は、排出ポートs1を吸入ポートe2と連通させている(図1a、1e及び4を参照)。
【0012】
図1bに、スロット(4〜7)が、円筒状部材3の直径よりも小さい直径の円9に沿うような湾曲半径を有している、非限定的な実施態様の例を示す。
よって、この構成によって、EGRガスが流れる方向を反転させることができる。
【0013】
回転手段も同様に、吸入側に再循環させるようになっているEGRガスの流量を調節することができるように設計されていてもよい。この利点は、EGRガスの流量を、従来のEGRバルブがするのと同じように制御できることである。
これを達成するために、円筒状部材3を作動させる手段は、比例型のものであってよい、つまり、円筒状部材3を、主な位置(通常流れ位置、逆流れ位置)間の中間の回転角度に回転させるものであってよい。よって、この作動手段により、スロットとポート(e1、e2、s1、s2)との間で重なる面積を変化させることができる。
【0014】
図1b及び2〜4に示す実施形態の非限定的な代替形態では、各対の一方のスロットが、徐々に小さくなる輪郭形状の断面を有していてよい。図1bでは、スロット6及び5が、この徐々に小さくなる輪郭形状の断面を有している、つまり、スロットの断面の一方の端部で、輪郭形状の上部の円弧が下部の円弧と接しているのが示されている。この徐々に小さくなる輪郭形状こそが、円筒状部材が回転する角度に応じて、ポート(e1、e2、s1、s2)と重なる面積を変化させるものである。円筒状部材3が回転する角度を制御することによって、吸入側に再循環させるようになっているEGRガスの流量を、「通常」方向及び熱交換器2を通る流れが「逆」方向に流れる場合のいずれかにおいて、変化させることができる。
【0015】
本発明のさらなる特徴によれば、回転手段は、交換器2をバイパスするように設計されていてもよい。非限定的に、空洞8が第1の平面に対向する面で形成され、これにより、ガスが、吸入e1から排出s1へ直接流れることができる(図2参照)。この空洞8は例えば、円9の湾曲をたどる、吸入ポートe1の排出ポートs1との連通を可能にする長さを有する円形の縦長のチャネルであってよい。
チャネル及び2対のスロットは、同じ円9上に配置されている。
【0016】
第2の態様を、図5〜10に示す。図6を見ると分かるように、円筒状部材11が、2つのスロット12及び13を有している。この円筒状部材11は、U字形に構築されている熱交換器2を備えているEGR冷却器(1)の内部に配置されている(図5)。
【0017】
図9に、円筒状部材11が閉鎖位置にある(つまり、熱交換器2にガスが流れていない)場合の、全てのポート(e1、s1、e2、s2)及びスロット(12、13)の幾何学図を示す。2つのスロット12及び13、ガス吸入e1及びガス排出s1、吸入ポートe2及び排出ポートs2は、直線的な細長い形状を有しており、円筒状部材11が回転する角度に応じて、ガスを一方の方向に流すことができるように(図7)、又はガスをその反対方向に流すことができるように(図8)、又は熱交換器2をバイパスできるように(図10)配置されている。
【0018】
円筒状部材11が回転する角度を制御することによっても、2つのスロット(12、13)と吸入及び排出ポート(e1、e2、s1及びs2)とが重なる面積を変化させることができ、これにより、熱交換器を通過し且つ吸入側へと再循環するようになっているEGRガスの流れを調節することができる。
【0019】
これを達成するために、冷却器1の吸入ポートe1及び排出ポートs1は、互いに平行になっている。同様に、熱交換器2の吸入ポートe2及び排出ポートs2も、互いに平行になっている。さらに、冷却器1の吸入ポートe1及び排出ポートs1は、熱交換器2の吸入ポートe2及び排出ポートs2に対して90°傾斜している。スロット12及び13は、互いに平行になっており、冷却器1又は熱交換器2の吸入ポート及び排出ポート(e1、e2、s1、s2)によって占有されている幅に少なくとも等しい距離を置いてずらされている。図9を参照すると、この例では、スロット12及び13が、熱交換器2の2つのポート、吸入ポートe2及び排出ポートs2の幅に相当する距離dを置いてずらされていることが分かる。
【0020】
円筒状部材11に形成されているスロット12及び13は、それに限定されるものではない。各スロット(12、13)の各端部に位置する穿孔を形成することも十分できるだろう。その場合、1つのスロット及び2つの穿孔、あるいは単に4つの穿孔(図6の番号14、15、16、17)とすることができる。
【0021】
図7〜10の幾何学図に、交換器の分配装置の様々なモードを示す。流れは、スロット及びポートによって共有された共通領域を通ってのみ流れることができる。このような領域は、重なった面積を表す。
【0022】
図7に示すように、円筒状部材11のスロット12は、冷却器の吸入ポートe1を、熱交換器2の吸入ポートe2と連通させている。スロット13の方は、熱交換器2の排出ポートs2を、冷却器1の排出ポートs1に連通させている。この場合、流れは、通常の方向となっていると言うことができ、円筒状部材11の小さな回転を利用して、ガス流量を変化させることができる。
【0023】
図8では、EGRガスが流れる方向が、図7に示すものと逆になっている。円筒状部材11のスロット12は、冷却器の吸入ポートe1を、熱交換器2の排出ポートs2に連通させている。スロット13の方は、熱交換器2の吸入ポートe2を、冷却器1の排出ポートs1に連通させている。この場合、流れは、逆方向になっていると言うことができ、円筒状部材11の小さな回転を利用して、ガス流量を変化させることができる。
【0024】
図9を参照すると、スロット12及び13のいずれも、ポート(e1、e2、s1、s2)を互いに連通させていない。円筒状部材11は、閉鎖位置として知られている位置である。この場合、EGRガスの循環はない。
【0025】
図10に、バイパス位置にある円筒状部材11を示す。スロット12及び13は、全てのポート(e1、e2、s1、s2)を互いに連通させている。よって、EGRガスの流れは、スロット12及び13を通過するが、熱交換器2は通過しない。それというのは、ガスの流れは、実際には、熱交換器2の吸入ポートe2及び排出ポートs2内で再方向付けされるからである。
【0026】
1つの利点は、本発明による分配装置が、3つの機能を果たすことである。第1は、交換器を通過して流れるEGRガスの流れを反転させて、これにより、汚れの問題が改善されることである。第2は、EGRガスの流れを調節することである。この機能は、通常、EGR制御バルブによって行われる。第3は、冷却器の熱交換器をバイパスすることができることである。この機能は、通常、平行のバイパス管路によって行われる。したがって、本発明は、EGRシステムにおけるいくつかの構成要素を省くことができるという利点を示すものである。
【0027】
この第2の実施形態のさらなる利点は、EGRガス流が最大流量で流れる場合に、そのガス流の制御された冷却が可能となることである。つまり、円筒状部材11のバイパス位置と通常方向位置との間で、EGRガスの流量は同じに保たれる。差は、バイパスを通るよう方向付けられたEGRガスの割合と、熱交換器2を通る割合との比較にある。したがって、作動手段を比例制御することによって、吸入側に再循環されるEGRガスの温度に影響を及ぼすことができる。同様の制御された冷却は、バイパス位置と逆流れ位置との間においても、円筒状部材11を用いて達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1a】第1の実施形態による分配装置の図である。
【図1b】第1の実施形態による分配装置の図である。
【図1c】第1の実施形態による分配装置の図である。
【図1d】第1の実施形態による分配装置の図である。
【図1e】第1の実施形態による分配装置の図である。
【図2】円筒状部材のバイパスモードでの位置を示す図である。
【図3】円筒状部材の通常流れモードでの位置を示す図である。
【図4】円筒状部材の逆流れモードでの位置を示す図である。
【図5】第2の実施形態による装置を備えているEGR冷却器を示す。
【図6】第2の実施形態による円筒状部材を示す。
【図7】円筒状部材の通常流れモードでの位置を示す。
【図8】円筒状部材の逆流れモードでの位置を示す。
【図9】円筒状部材の閉鎖モードでの位置を示す。
【図10】円筒状部材のバイパスモードでの位置を示す。
【発明の開示】
【0001】
本発明は、再循環ガス又はEGR(排ガス再循環)ガスとして知られる排ガスを再循環させるための装置、及び前記装置を備えているEGRガス冷却器に関する。
内燃エンジンの排ガスによる汚染の除去を改善するために、吸気側へ排ガスを再循環させるという措置が講じられており、これは、一般には、EGR管路の使用として知られている。これに加えて、そのようなガスのための専用の冷却器の使用によって、この汚染の除去をさらに促進させることができる。
【0002】
しかし、1つの大きな問題は、排ガスの再循環によって、前記EGR管路内に配置されている構成要素が実質的に汚れてしまうということである。そのため、エンジンが規定の運転ゾーンにある時に、EGRバルブ(EGRバルブは、吸入側に送り戻されたEGRガスの流量を調整する)を大きく開放することによって、クリーニング/クリーンアウト動作を実施することがある。この方法は、仏国特許出願第2833653号明細書に記載されているもので、この方法によって、EGR管路において蓄積する堆積物を熱的に除去することができる。
【0003】
しかし、この汚れの問題は、EGR冷却器に関しては、完全には解決されていない。冷却器は常時運転している、つまり、交換器を通過する水の流れは常にある。それにより、冷却器は、クリーンアウト段階が行われる際に吸入側は完璧にきれいになるが、常時冷却されているEGRガスは十分な高温になっていないため、特に水/EGRガス交換器のもう半分は、EGR冷却器が完全にクリーンアウトされない。
【0004】
本発明は、EGR冷却器の汚れの問題を解決することを課題としている。
そのために、本発明は、自動車エンジンにおいてEGRガスを構成要素に分配する装置であって、同一の第1の平面に開口している、ガスのための吸入ポート及び排出ポートと、第1の平面と平行な同一の第2の平面に開口し且つ前記構成要素の方を向いている吸入ポート及び排出ポートと、前記第1の平面と第2の平面との間に配置され且つ一方向及びその反対方向へのガスの循環を可能にする回転手段とを備える装置を提供する。
【0005】
本発明の他の特徴によれば、
− 前記回転手段が、吸入側へと再循環させるようになっているEGRガス流量の調節が可能となるよう設計されていてもよく、
− 前記回転手段が、円筒状部材であってその旋回軸の周りを回転する円筒状部材を備えていてよく、この円筒状部材の2つの端面が第1及び第2の平面に対向し、この円筒状部材がその2つの端面において、ポートの連通を可能にするスロットを有し、これらのスロットが、円筒状部材が回転する角度に応じて、一方向又はその反対の方向でガスを流すことが可能となるように設計され、
− 前記円筒状部材が、2対のスロットを有していてもよく、第1の対のスロットが、直線的に延び且つ第2の対のスロットと交差しており、
− 前記回転手段はまた、構成要素をバイパスするように設計されていてもよく、例えば、円筒状部材が、第1の平面に対向する面において空洞を形成していてよく、これによりガスが、吸入から排出へ直接流れるようになっており、
− 前記円筒状部材が、2つのスロットを備えていてよく、この2つのスロット、ガス吸入及びガス排出、吸入ポート及び排出ポートが、細長い形状をしていてよく、円筒状部材が回転する角度に応じて、ガスを一方向に流す、ガスをその反対方向に流す、又は構成要素をバイパスすることが可能となるように配置されていてよく、
− 前記構成要素が、熱交換器であってよい。
本発明は、上記のような装置を備えているEGRガス冷却器にも関する。この冷却器は、U字形に構成されている熱交換器を備えている型のものであってよい。
【0006】
本発明及びその利点は、完全に非限定的な例という形であり且つ添付図面によって例示されている1つの実施形態の詳細な説明を読むことで、よりよく理解されるであろう。
【0007】
分配装置は、自動車のエンジンからの循環ガスの流れを、構成要素へ、例えば熱交換器へ向かって方向付けるように設計されている。この分配装置は、再循環ガス冷却器、例えばU字形の熱交換器を備えているEGRガス冷却器の一部を構成していてよい。
概して装置は、同一の第1の平面に開口しているガスのための吸入ポートe1及び排出ポートs1と、第1の平面に対して平行な同一の第2の平面で開口している構成要素2への吸入ポートe2及び排出ポートs2と、第1の平面と第2の平面との間に配置され且つ一方向及びその反対方向へのガスの流れを可能にする回転手段を備えている。
【0008】
流れを反転させるための回転手段は、自らの旋回軸線の周りを回転する円筒状部材3を備えており、この円筒状部材3の2つの端面は、第1及び第2の平面に対向して配置されている。円筒状部材3は、ポート(e1、s1、e2、s2)の連通を可能にするスロットを有しており、このスロットは、円筒状部材3が回転する角度に応じて、ガスを一方向又は反対の方向に流すことが可能となるよう設計されている。円筒状部材3は、当業者に公知の任意の手段によって作動させることができる。そのアクチュエータを、電子制御ユニットが制御する。
【0009】
図1〜4に示す第1の実施形態によれば、円筒状部材3は、2対のスロットを有しており、第1の対のスロット(4、5)は「直線的である」(図1a)と言うことができ、第2の対のスロット(6、7)は「交差している」(図1e)と言うことができる。この実施形態では、図1aを参照すると、ガス吸入ポートe1及び交換器吸入ポートe2が互いに向き合っている。排出ポートs1及びs2も同様である。
【0010】
第1の対のスロット(4、5)は、互いに向き合うポートを互いに連通させているので、直線的であると言える。つまり、スロット4は、吸入ポートe1及びe2を互いに連通させ、スロット5は、排出ポートs1及びs2を互いに連通させている(図1a、1d及び3を参照)。
【0011】
第2の対のスロット(6、7)は、吸入ポートを排出ポートと連通させ且つ交換器を通って流れるEGRガスの方向を逆にしているので、交差していると言える(図1e参照)。つまり、スロット6は、吸入ポートe1を排出ポートs2と連通させており、スロット7は、排出ポートs1を吸入ポートe2と連通させている(図1a、1e及び4を参照)。
【0012】
図1bに、スロット(4〜7)が、円筒状部材3の直径よりも小さい直径の円9に沿うような湾曲半径を有している、非限定的な実施態様の例を示す。
よって、この構成によって、EGRガスが流れる方向を反転させることができる。
【0013】
回転手段も同様に、吸入側に再循環させるようになっているEGRガスの流量を調節することができるように設計されていてもよい。この利点は、EGRガスの流量を、従来のEGRバルブがするのと同じように制御できることである。
これを達成するために、円筒状部材3を作動させる手段は、比例型のものであってよい、つまり、円筒状部材3を、主な位置(通常流れ位置、逆流れ位置)間の中間の回転角度に回転させるものであってよい。よって、この作動手段により、スロットとポート(e1、e2、s1、s2)との間で重なる面積を変化させることができる。
【0014】
図1b及び2〜4に示す実施形態の非限定的な代替形態では、各対の一方のスロットが、徐々に小さくなる輪郭形状の断面を有していてよい。図1bでは、スロット6及び5が、この徐々に小さくなる輪郭形状の断面を有している、つまり、スロットの断面の一方の端部で、輪郭形状の上部の円弧が下部の円弧と接しているのが示されている。この徐々に小さくなる輪郭形状こそが、円筒状部材が回転する角度に応じて、ポート(e1、e2、s1、s2)と重なる面積を変化させるものである。円筒状部材3が回転する角度を制御することによって、吸入側に再循環させるようになっているEGRガスの流量を、「通常」方向及び熱交換器2を通る流れが「逆」方向に流れる場合のいずれかにおいて、変化させることができる。
【0015】
本発明のさらなる特徴によれば、回転手段は、交換器2をバイパスするように設計されていてもよい。非限定的に、空洞8が第1の平面に対向する面で形成され、これにより、ガスが、吸入e1から排出s1へ直接流れることができる(図2参照)。この空洞8は例えば、円9の湾曲をたどる、吸入ポートe1の排出ポートs1との連通を可能にする長さを有する円形の縦長のチャネルであってよい。
チャネル及び2対のスロットは、同じ円9上に配置されている。
【0016】
第2の態様を、図5〜10に示す。図6を見ると分かるように、円筒状部材11が、2つのスロット12及び13を有している。この円筒状部材11は、U字形に構築されている熱交換器2を備えているEGR冷却器(1)の内部に配置されている(図5)。
【0017】
図9に、円筒状部材11が閉鎖位置にある(つまり、熱交換器2にガスが流れていない)場合の、全てのポート(e1、s1、e2、s2)及びスロット(12、13)の幾何学図を示す。2つのスロット12及び13、ガス吸入e1及びガス排出s1、吸入ポートe2及び排出ポートs2は、直線的な細長い形状を有しており、円筒状部材11が回転する角度に応じて、ガスを一方の方向に流すことができるように(図7)、又はガスをその反対方向に流すことができるように(図8)、又は熱交換器2をバイパスできるように(図10)配置されている。
【0018】
円筒状部材11が回転する角度を制御することによっても、2つのスロット(12、13)と吸入及び排出ポート(e1、e2、s1及びs2)とが重なる面積を変化させることができ、これにより、熱交換器を通過し且つ吸入側へと再循環するようになっているEGRガスの流れを調節することができる。
【0019】
これを達成するために、冷却器1の吸入ポートe1及び排出ポートs1は、互いに平行になっている。同様に、熱交換器2の吸入ポートe2及び排出ポートs2も、互いに平行になっている。さらに、冷却器1の吸入ポートe1及び排出ポートs1は、熱交換器2の吸入ポートe2及び排出ポートs2に対して90°傾斜している。スロット12及び13は、互いに平行になっており、冷却器1又は熱交換器2の吸入ポート及び排出ポート(e1、e2、s1、s2)によって占有されている幅に少なくとも等しい距離を置いてずらされている。図9を参照すると、この例では、スロット12及び13が、熱交換器2の2つのポート、吸入ポートe2及び排出ポートs2の幅に相当する距離dを置いてずらされていることが分かる。
【0020】
円筒状部材11に形成されているスロット12及び13は、それに限定されるものではない。各スロット(12、13)の各端部に位置する穿孔を形成することも十分できるだろう。その場合、1つのスロット及び2つの穿孔、あるいは単に4つの穿孔(図6の番号14、15、16、17)とすることができる。
【0021】
図7〜10の幾何学図に、交換器の分配装置の様々なモードを示す。流れは、スロット及びポートによって共有された共通領域を通ってのみ流れることができる。このような領域は、重なった面積を表す。
【0022】
図7に示すように、円筒状部材11のスロット12は、冷却器の吸入ポートe1を、熱交換器2の吸入ポートe2と連通させている。スロット13の方は、熱交換器2の排出ポートs2を、冷却器1の排出ポートs1に連通させている。この場合、流れは、通常の方向となっていると言うことができ、円筒状部材11の小さな回転を利用して、ガス流量を変化させることができる。
【0023】
図8では、EGRガスが流れる方向が、図7に示すものと逆になっている。円筒状部材11のスロット12は、冷却器の吸入ポートe1を、熱交換器2の排出ポートs2に連通させている。スロット13の方は、熱交換器2の吸入ポートe2を、冷却器1の排出ポートs1に連通させている。この場合、流れは、逆方向になっていると言うことができ、円筒状部材11の小さな回転を利用して、ガス流量を変化させることができる。
【0024】
図9を参照すると、スロット12及び13のいずれも、ポート(e1、e2、s1、s2)を互いに連通させていない。円筒状部材11は、閉鎖位置として知られている位置である。この場合、EGRガスの循環はない。
【0025】
図10に、バイパス位置にある円筒状部材11を示す。スロット12及び13は、全てのポート(e1、e2、s1、s2)を互いに連通させている。よって、EGRガスの流れは、スロット12及び13を通過するが、熱交換器2は通過しない。それというのは、ガスの流れは、実際には、熱交換器2の吸入ポートe2及び排出ポートs2内で再方向付けされるからである。
【0026】
1つの利点は、本発明による分配装置が、3つの機能を果たすことである。第1は、交換器を通過して流れるEGRガスの流れを反転させて、これにより、汚れの問題が改善されることである。第2は、EGRガスの流れを調節することである。この機能は、通常、EGR制御バルブによって行われる。第3は、冷却器の熱交換器をバイパスすることができることである。この機能は、通常、平行のバイパス管路によって行われる。したがって、本発明は、EGRシステムにおけるいくつかの構成要素を省くことができるという利点を示すものである。
【0027】
この第2の実施形態のさらなる利点は、EGRガス流が最大流量で流れる場合に、そのガス流の制御された冷却が可能となることである。つまり、円筒状部材11のバイパス位置と通常方向位置との間で、EGRガスの流量は同じに保たれる。差は、バイパスを通るよう方向付けられたEGRガスの割合と、熱交換器2を通る割合との比較にある。したがって、作動手段を比例制御することによって、吸入側に再循環されるEGRガスの温度に影響を及ぼすことができる。同様の制御された冷却は、バイパス位置と逆流れ位置との間においても、円筒状部材11を用いて達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1a】第1の実施形態による分配装置の図である。
【図1b】第1の実施形態による分配装置の図である。
【図1c】第1の実施形態による分配装置の図である。
【図1d】第1の実施形態による分配装置の図である。
【図1e】第1の実施形態による分配装置の図である。
【図2】円筒状部材のバイパスモードでの位置を示す図である。
【図3】円筒状部材の通常流れモードでの位置を示す図である。
【図4】円筒状部材の逆流れモードでの位置を示す図である。
【図5】第2の実施形態による装置を備えているEGR冷却器を示す。
【図6】第2の実施形態による円筒状部材を示す。
【図7】円筒状部材の通常流れモードでの位置を示す。
【図8】円筒状部材の逆流れモードでの位置を示す。
【図9】円筒状部材の閉鎖モードでの位置を示す。
【図10】円筒状部材のバイパスモードでの位置を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車エンジンの排ガスを構成要素(2)に分配する装置であって、
同一の第1の平面に開口している、ガスのための吸入ポート(e1)及び排出ポート(s1)と、前記第1の平面と平行な同一の第2の平面に開口している、前記構成要素(2)の方に向いた吸入ポート(e2)及び排出ポート(s2)と、前記第1の平面と前記第2の平面との間に配置され且つガスを一方向及びその反対方向に循環させることを可能にする回転手段とを備えることを特徴とする、装置。
【請求項2】
前記回転手段がまた、吸入側に再循環されるガスの流量を調節できるように設計されていることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記回転手段が、自らの旋回軸線の周りで回転する円筒状部材(3;11)を備え、該円筒状部材(3;11)の2つの端面が、前記第1及び第2の平面に対向して配置され、当該円筒状部材(3;11)が、前記2つの端面上に、前記ポート(e1、s1、e2、s2)を連通できるようにするためのスロットを有し、該スロットが、前記円筒状部材(3;11)が回転する角度に応じて、前記ガスを一方向又はその反対方向に流すことができるように設計されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記円筒状部材(3)が、2対のスロット(4、5;6、7)を有しており、第1の対のスロット(4、5)が直線的に延び、第2の対のスロット(6、7)が交差していることを特徴とする、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記回転手段がまた、前記構成要素(2)をバイパスするように設計されていることを特徴とする、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
前記第1の平面に対向する面において空洞(8)が形成され、これにより、前記構成要素(2)を通過することなく、吸入(e1)から排出(s1)へとガスを直接流すことができることを特徴とする、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記円筒状部材(11)が2つのスロット(12、13)を備え、該2つのスロット(12、13)、ガス吸入(e1)及びガス排出(s1)並びに前記構成要素(2)に通じる吸入ポート(e2)及び排出ポート(s2)が、細長い形状をしており、且つ前記円筒状部材(11)が回転する角度に応じて、前記ガスを一方向に流す、前記ガスをその反対方向に流す又は前記構成要素(2)がバイパスされることが可能なように配置されていることを特徴とする、請求項3に記載の装置。
【請求項8】
前記構成要素(2)が、熱交換器であることを特徴とする、請求項1ないし7のいずれか1項に記載の装置。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれか1項に記載の分配装置を備えていてよいことを特徴とする、再循環ガス冷却器(1)。
【請求項10】
U字形に構成されている熱交換器を備えていることを特徴とする、請求項9に記載の冷却器(1)。
【請求項1】
自動車エンジンの排ガスを構成要素(2)に分配する装置であって、
同一の第1の平面に開口している、ガスのための吸入ポート(e1)及び排出ポート(s1)と、前記第1の平面と平行な同一の第2の平面に開口している、前記構成要素(2)の方に向いた吸入ポート(e2)及び排出ポート(s2)と、前記第1の平面と前記第2の平面との間に配置され且つガスを一方向及びその反対方向に循環させることを可能にする回転手段とを備えることを特徴とする、装置。
【請求項2】
前記回転手段がまた、吸入側に再循環されるガスの流量を調節できるように設計されていることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記回転手段が、自らの旋回軸線の周りで回転する円筒状部材(3;11)を備え、該円筒状部材(3;11)の2つの端面が、前記第1及び第2の平面に対向して配置され、当該円筒状部材(3;11)が、前記2つの端面上に、前記ポート(e1、s1、e2、s2)を連通できるようにするためのスロットを有し、該スロットが、前記円筒状部材(3;11)が回転する角度に応じて、前記ガスを一方向又はその反対方向に流すことができるように設計されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記円筒状部材(3)が、2対のスロット(4、5;6、7)を有しており、第1の対のスロット(4、5)が直線的に延び、第2の対のスロット(6、7)が交差していることを特徴とする、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記回転手段がまた、前記構成要素(2)をバイパスするように設計されていることを特徴とする、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
前記第1の平面に対向する面において空洞(8)が形成され、これにより、前記構成要素(2)を通過することなく、吸入(e1)から排出(s1)へとガスを直接流すことができることを特徴とする、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記円筒状部材(11)が2つのスロット(12、13)を備え、該2つのスロット(12、13)、ガス吸入(e1)及びガス排出(s1)並びに前記構成要素(2)に通じる吸入ポート(e2)及び排出ポート(s2)が、細長い形状をしており、且つ前記円筒状部材(11)が回転する角度に応じて、前記ガスを一方向に流す、前記ガスをその反対方向に流す又は前記構成要素(2)がバイパスされることが可能なように配置されていることを特徴とする、請求項3に記載の装置。
【請求項8】
前記構成要素(2)が、熱交換器であることを特徴とする、請求項1ないし7のいずれか1項に記載の装置。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれか1項に記載の分配装置を備えていてよいことを特徴とする、再循環ガス冷却器(1)。
【請求項10】
U字形に構成されている熱交換器を備えていることを特徴とする、請求項9に記載の冷却器(1)。
【図1a】
【図1b】
【図1c】
【図1d】
【図1e】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図1b】
【図1c】
【図1d】
【図1e】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公表番号】特表2009−510319(P2009−510319A)
【公表日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−532846(P2008−532846)
【出願日】平成18年10月2日(2006.10.2)
【国際出願番号】PCT/FR2006/050974
【国際公開番号】WO2007/039701
【国際公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【出願人】(503041797)ルノー・エス・アー・エス (286)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年10月2日(2006.10.2)
【国際出願番号】PCT/FR2006/050974
【国際公開番号】WO2007/039701
【国際公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【出願人】(503041797)ルノー・エス・アー・エス (286)
【Fターム(参考)】
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