説明

再現方法およびそのシステムならびにプログラム

【課題】露光装置等の製造装置において不具合が発生した場合に、その不具合を再現させ、その原因を調査するための再現情報の収集。
【解決手段】製造装置の状態を擬似製造装置によって再現する再現方法は、前記製造装置から出力された動作ログを取得する取得工程と、前記動作ログから抽出キーを使ってパラメータの値を抽出し、抽出したパラメータの値を処理することにより状態再現情報を生成する生成工程と、前記状態再現情報に基づいて前記製造装置の状態を前記擬似製造装置によって再現する状態再現工程とを含み、前記状態再現情報は、前記製造装置に入力された製造条件を示す製造条件情報および前記製造装置の特性を示す特性情報の少なくとも1つを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、再現方法およびそのシステムならびにプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス、フラットパネルディスプレイ等の各種のデバイスを製造するためのリソグラフィー工程において露光装置が使用される。露光装置は、製造装置であるため、終日にわたって停止することなく使用されることが一般的である。露光処理がなされない時間であるダウンタイムは、たとえ計画的なものであっても生産性に影響を与える。さらに、突発的に露光装置が使用できなくなった場合には、生産性の低下はより大きなものとなりうる。
【0003】
露光装置等の製造装置において不具合が発生した場合に、その原因を調査するためには、その不具合を再現させることが効果的である。不具合を再現させるためには、再現情報が必要である。再現情報の例として、例えば、露光装置が実行したジョブを制御するレシピ(製造条件)、露光装置に設定されているパラメータ(露光装置の特性)を挙げることができる。このような再現情報を使って、擬似露光装置において不具合を再現させることができる。
【0004】
特許文献1には、装置コマンドの実行および制御パラメータの変更の履歴を集計および記憶するする手段を有するデバイス製造装置が開示されている。特許文献2には、制御コマンドおよび装置状態にタイムスタンプ(時間情報)を付加してログ情報保存部に保存し、これらを再生することが開示されている。特許文献3には、半導体製造装置を構成するユニットを代替することができるシミュレーションプログラムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−77785号公報
【特許文献2】特開2003−133193公報
【特許文献3】特開平11−186118公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
制御パラメータの変更、装置状態の変化をそれぞれ制御パラメータの変更履歴、装置状態の変化履歴として記録しておき、それらに基づいて製造装置の過去の状態を再現することは、不具合の発生原因を解明するために有用である。しかしながら、動作再現のために選択された情報を記録した履歴ではなく、種々のイベントを記録した動作ログしか存在しない場合には、製造装置の状態を再現することは容易ではない。特許文献1、2に記載された発明は、動作ログから制御パラメータや装置状態を生成するアプローチと対立するものである。
【0007】
本発明は、例えば、製造装置から出力された動作ログに基づいて該製造装置の状態を擬似製造装置によって再現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の1つの側面は、製造装置の状態を擬似製造装置によって再現する再現方法に係り、前記再現方法は、前記製造装置から出力された動作ログを取得する取得工程と、前記動作ログから抽出キーを使ってパラメータの値を抽出し、抽出したパラメータの値を処理することにより状態再現情報を生成する生成工程と、前記状態再現情報に基づいて前記製造装置の状態を前記擬似製造装置によって再現する状態再現工程とを含み、前記状態再現情報は、前記製造装置に入力された製造条件を示す製造条件情報および前記製造装置の特性を示す特性情報の少なくとも1つを含む。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、例えば、製造装置から出力された動作ログに基づいて該製造装置の状態を擬似製造装置によって再現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1実施形態の再現システムの概略構成を示す図。
【図2】動作ログを例示する図。
【図3】露光部の構成を例示する図。
【図4】本発明の第1実施形態の再現システムにおいて実行される再現方法を例示する図。
【図5】再現情報の生成処理を例示する図。
【図6】製造情報情報(ショットレイアウト情報)の生成のために使用される抽出キーテーブルを例示する図。
【図7】製造条件情報(ショットレイアウト情報)を例示する図。
【図8】特性情報(駆動速度情報)の生成のために使用される抽出キーテーブルを例示する図。
【図9】駆動速度情報を生成するために抽出されたパラメータの値を例示する図。
【図10】本発明の第2実施形態の再現システムの概略構成を示す図。
【図11】指令ログを例示する図。
【図12】動作再現プログラムを例示する図。
【図13】本発明の第2実施形態の動作再現システムにおいて実行される再現方法を例示する図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態を説明する。
【0012】
[第1実施形態]
図1を参照しながら本発明の第1実施形態の再現システム50について説明する。第1実施形態の再現システム50は、製造装置の状態を擬似製造装置によって再現するように構成されうる。製造装置は、例えば、リソグラフィー工程において使用される露光装置3でありうる。露光装置3は、原版(レチクル)のパターンを投影光学系によって基板に投影することにより該基板を露光する露光部2と、露光部2を制御する制御部1とを含みうる。
【0013】
露光装置3の制御部1は、露光装置3に入力される情報(指令を含みうる)および露光装置3において発生する情報が時系列に記録された動作ログを生成し出力する。図2に動作ログが例示されている。動作ログ201は、単位情報の集合であり、各単位情報は、予め設定されたタイミングで記録され、および/または、イベントの発生に応答して記録される。動作ログ201における1つの行は、例えば、1回の記録動作で記録される単位情報で構成されうる。単位情報は、例えば、時刻欄202、動作記録識別子欄203、ラベル欄204、パラメータ値欄205を含みうる。
【0014】
再現システム50は、取得部5と、生成部18と、状態再現部19、動作再現部20とを備える。再現システム50は、例えば、取得部5と、生成部18と、状態再現部19、動作再現部20を構成するためのプログラムをコンピュータに実行させることによって構成されうる。取得部5は、露光装置3(製造装置)から出力された動作ログを取得する。生成部18は、取得部5が取得した動作ログから抽出キーを使ってパラメータの値を抽出し、その抽出したパラメータの値を処理することにより状態再現情報を生成する。状態再現部19は、生成部18が生成した状態再現情報に基づいて擬似露光装置(擬似製造装置)11に露光装置3の状態を再現させる。状態再現情報が露光装置3において不具合が発生したときの動作ログに基づいて生成されたものであれば、不具合の発生時における露光装置3の状態を擬似露光装置11によって再現することができる。動作再現部20は、状態再現情報が設定された擬似露光装置11を動作させる。擬似露光装置11は、この実施形態では、再現システム50において、シミュレータとして構成された仮想的な装置である。ただし、擬似露光装置11は、物理的な露光装置であってもよい。再現システム50は、1又は複数のコンピュータにプログラムを組み込むことによって構成されうる。
【0015】
取得部5は、例えば、露光装置3と通信路を介して接続するための通信インターフェースを含み、露光装置3から出力された動作ログを該該通信路を介して取得するように構成されうる。或いは、取得部5は、露光装置3から出力された動作ログを保持したサーバー等のコンピュータから該通信インターフェースを介して該動作ログを取得してもよい。或いは、取得部5は、メディアリーダを含み、露光装置3からメディアに出力された動作ログを該メディアリーダによって取得してもよい。取得部5が取得した動作ログは、取得部5内のメモリに格納される。
【0016】
第1実施形態では、状態再現情報は、露光装置3に入力された製造条件を示す製造条件情報、および、露光装置3の特性を示す特性情報の双方を含み、生成部18は、製造条件情報生成部4および特性情報生成部6を含む。製造条件情報生成部4は、取得部5が取得した動作ログから抽出キーを使ってパラメータの値を抽出し、その抽出したパラメータの値を処理することによって製造条件情報(レシピ情報)する。特性情報生成部6は、取得部5が取得した動作ログから抽出キーを使ってパラメータの値を抽出し、その抽出したパラメータの値を処理することによって特性情報を生成する。生成部18は、製造条件情報生成部4および特性情報生成部6の少なくとも一方を含むように構成されてもよい。
【0017】
製造条件情報(レシピ情報)は、例えば、ショットレイアウト、露光条件(例えば、露光量、照明条件)、等のプロセスに固有の製造条件情報を含む。特性情報は、例えば、露光部2のウエハステージ306の駆動速度、レチクルステージ304の駆動速度、構成要素の取付け位置や経時変化による誤差を補正するための調整値、基板および原板を搬送する各アームの駆動速度、等の特性を示す情報を含みうる。特性情報はまた、例えば、原板のパターンを基板に投影する投影光学系の光学性能、投影光学系を駆動するピエゾ素子の膨張率、光源が発生する光の量、等の特性を示す情報を含みうる。特性情報は、個々の露光装置3に固有の値を有しうる。これは、露光装置3間に機差が存在しうることを意味する。
【0018】
擬似露光装置11は、現実の露光装置3の制御部1、露光部2の動作をそれぞれ擬似的に実行する制御部モデル9、露光部モデル10を含みうる。制御部1は、操作者から指示を受けたり、操作者にメッセージ等を提供したりするユーザインターフェースを含み、制御部モデル9は、そのような制御部1の動作を擬似的に実行する。
【0019】
製造条件設定部7は、制御部モデル9に対して、製造条件情報生成部4が生成した製造条件情報(レシピ情報)を擬似露光装置11の制御部モデル9に設定する。これは、プロセスの制御のために準備された製造条件情報が制御部1に設定される動作を擬似的に実行することに相当する。特性情報設定部8は、特性情報生成部6が特性情報を擬似露光装置11の露光部モデル10に設定する。これは、露光部モデル10の特性が現実の露光部2の特性と同様の特性を有するように露光部モデル10が擬似的に調整されることに相当する。擬似露光装置11に対する製造条件情報および特性情報の設定は、擬似露光装置11に露光装置3の状態を再現させることを意味する。
【0020】
図3を参照しながら露光部2の構成を例示的に説明する。露光部2は、図3には示されていないが、前述のように、制御部1によって制御される。露光部2(露光装置3)は、計測ステーション301および露光ステーション302を有する。露光部2は、計測ステーション301および露光ステーション302に共通の構成要素として、2つのウエハステージ306(306a、306b)と、ウエハステージ306を支持する定盤307とを有する。2つのウエハステージ306(306a、306b)は、ウエハ(基板)305(305a、305b)を保持し、2つのステーション301、302間で移動する。露光ステーション302は、レチクル(原版)303を支持するレチクルステージ304と、レチクル303を照明する照明光学系308と、レチクル303のパターンをウエハステージ306上のウエハ305に投影する投影光学系309とを備える。
【0021】
ここでは、露光部2は、レチクル303とウエハ305とを走査方向に互いに同期移動させつつレチクル303のパターンをウエハ305に転写するスキャナとして構成されている例を説明するが、露光部2は、ステッパとしも構成されうる。以下の説明において、投影光学系309の光軸と一致する方向をZ軸方向、Z軸方向に垂直な平面内でレチクル303とウエハ305との同期走査方向をY軸方向、Z軸方向およびY軸方向に垂直な方向(非走査方向)をX軸方向とする。また、X軸、Y軸、およびZ軸まわり方向をそれぞれ、θX、θY、およびθZ方向とする。
【0022】
レチクル303は、照明光学系308によって均一な照度分布で照明される照明領域を走査するように駆動される。照明光学系308は、通過する光束の領域を制限する開口径可変のマスキングブレードを有し、光の一部が遮断されることにより照明領域が規定される。照明光学系308は、光源として、例えば、水銀ランプ、KrFエキシマレーザ、ArFエキシマレーザ、F2レーザ、極紫外光源(Extreme Ultra Violet:EUV光源)を使用しうる。
【0023】
レチクルステージ304は、レチクル303を保持する。レチクルステージ304は、その位置がレーザ干渉計等の計測器によって計測されながら、リニアモータ等のレチクルステージ駆動部(不図示)により駆動される。ウエハステージ306は、ウエハ305を保持する。ウエハステージ306は、その位置がレーザ干渉計等の計測器によって計測されながら、リニアモータ等のウエハステージ駆動部(不図示)により駆動される。
【0024】
レチクルステージ304の近傍には、レチクルアライメント検出系(不図示)が配置されている。レチクルアライメント検出系は、レチクルステージ304に配置されているレチクル基準マーク310と投影光学系309とを通してウエハステージ306上のステージ基準マーク311(311a、311b)を検出する。この検出結果に基づいて、レチクル基準マーク310に対しステージ基準マーク311が位置合わせされる。
【0025】
計測ステーション301は、ウエハ305表面の位置情報(Z軸方向における位置情報および傾斜情報)を検出するフォーカス検出系312と、ウエハ305とステージ基準マーク311の位置を検出するウエハアライメント検出系313とを備えている。
【0026】
2つのウエハステージを有する露光部では、露光ステーション302において1枚のウエハが露光されている間に、計測ステーション301において他のウエハが計測される。
【0027】
図4を参照しながら本発明の第1実施形態の再現システム50において実行される再現方法を例示的に説明する。この再現方法は、例えば、コンピュータに以下の工程を実行させるプログラムによって実現されうる。ステップS401(取得工程)では、取得部5は、露光装置3の制御部1から出力された動作ログを取得する。ステップS402(製造条件情報の生成工程)では、生成部18の製造条件情報生成部4は、再現情報の1つとしての製造条件情報(レシピ情報)を生成する。具体的には、製造条件情報生成部4は、ステップS401で取得部5が取得した動作ログから抽出キーを使ってパラメータの値を抽出し、その抽出したパラメータの値を処理することによって製造条件情報(レシピ情報)を生成する。
【0028】
図5を参照してステップS402(製造条件情報の生成工程)における処理を例示的に説明する。この例では、動作ログから製造条件情報の生成のために必要なパラメータの値を抽出するための抽出キーとして、動作記録識別子およびラベルが使用される。そのために、この実施形態では、値を抽出すべきパラメータ(以下、抽出パラメータ)と抽出のために使用する抽出キーとしての動作記録識別子およびラベルとの対応関係を示す抽出キーテーブルが事前に設定される。この抽出キーテーブルに含まれる各抽出キーを含む動作ログ中の単位情報からパラメータの値が抽出される。以下、図5に示したフローチャートに沿って製造条件情報(レシピ情報)の生成について説明する。ここでは、より具体的な例を提供するために、製造条件情報としてショットレイアウト情報を生成する方法を説明する。
【0029】
ステップS501では、抽出パラメータと、該抽出パラメータの動作ログファイルにおける識別子である動作記録識別子およびラベルとの対応関係が製造条件情報生成部4に設定される。この設定は、例えば、図6に例示するような抽出キーテーブルを読み込むことによってなされうる。例えば、ショット領域のレイアウトを示すショットレイアウト情報(レシピ情報に含まれるべき情報)は、ショット番号、ショット中心位置、ショット領域を示す情報を含む。図6に示す例では、抽出パラメータである"ショット番号"を含む単位情報(ここでは、1行)は、動作記録識別子である"露光開始"およびラベルである"ShotNO."を抽出キーとして使って抽出することができる。
【0030】
ステップS502では、製造条件情報生成部4は、図2に例示される動作ログから1つの行の情報(単位情報)を読み込む。次に、ステップS503では、製造条件情報生成部4は、当該行にステップS501で設定された動作記録識別子(例えば、露光開始、ウエハステージA露光位置、マスキングブレード露光位置)が含まれているか否かを判定する。当該行に動作記録識別子が含まれている場合には、ステップS504に処理が進められ、そうでない場合には、ステップS502に処理が戻される。
【0031】
ステップS504では、製造条件情報生成部4は、当該行にステップS501で設定されたラベル(例えば、ShotNO.、Pos(X,Y)、Pos(XL,XR,YT,YB))が含まれているか否かを判定する。例えば、読み込んだ行が図2に示す例における第4行であるとすると、当該行に動作記録識別子である"露光開始"が含まれるので、ステップS503からステップS504に処理が進められる。そして、ステップS504において、当該行に設定されたラベル(例えば、ShotNO.Pos(X,Y)、Pos(XL,XR,YT,YB))が含まれるか否かが判定される。当該行に設定されたラベルが含まれている場合には、ステップS505に処理が進められ、そうでない場合には、ステップS502に処理が戻される。
【0032】
ステップS505では、製造条件情報生成部4は、読み込んだ行からパラメータ値欄205の値を抽出する。例えば、第4行については、製造条件情報生成部4は、抽出パラメータである"ショット番号"についてのパラメータの値、即ちパラメータ値欄205の値である"1"を抽出する。また、ショットレイアウト情報の抽出の例においては、製造条件情報生成部4は、同様の方法で、ショット中心位置およびショット領域を抽出する。抽出されるショット中心位置およびショット領域は、直前に抽出されたショット番号に対応するショット中心位置およびショット領域として扱われる。
【0033】
ステップS506では、製造条件情報生成部4は、動作ログの全ての行を処理したか否かを判定し、全ての行を処理した場合にはステップS507に処理を進め、そうでない場合にはステップS502に処理を戻して新たな行の処理を開始する。
【0034】
ステップS507では、製造条件情報生成部4は、ステップS505で抽出された複数のパラメータの値を処理(例えば、ショット番号、ショット中心位置およびショット領域の対応付け)してショットレイアウト情報(製造条件情報)を生成する。図7は、このようにして生成されるショットレイアウト情報を例示している。ここでは、具体例としてショットレイアウト情報の生成方法について説明したが、製造条件情報を構成する他の情報(例えば、露光条件情報)についても、同様の方法で生成することができる。
図4に戻り、ステップS403(状態再現工程の一部)では、製造条件設定部7は、ステップS402で生成された製造条件情報(レシピ情報)を擬似露光装置11の制御部モデル9に設定する。
【0035】
ステップS404では、生成部18の特性情報生成部6は、再現情報の1つとしての特性情報を生成する。具体的には、特性情報生成部6は、ステップS401で取得部5が取得した動作ログから抽出キーを使ってパラメータの値を抽出し、その抽出したパラメータの値を処理することによって特性情報を生成する。ここで、生成対象の情報が異なる点を除けば、特性情報の生成のために必要なパラメータの値を動作ログらから抽出する手順は、ステップS402と同様である。
図5を参照してステップS404(特性情報の生成工程)におけるパラメータの値の抽出処理を例示的に説明する。この例では、動作ログから特性情報の生成のために必要なパラメータの値を抽出するための抽出キーとして、動作記録識別子およびラベルが使用される。そのために、この実施形態では、抽出パラメータと抽出のために使用する抽出キーとしての動作記録識別子およびラベルとの対応関係を示す抽出キーテーブルが事前に設定される。この抽出キーテーブルに含まれる各抽出キーを含む動作ログ中の単位情報からパラメータの値が抽出される。以下、図5に示したフローチャートに沿って特性情報の生成について説明する。ここで、より具体的な例を提供するために、特性情報として露光部2が有する構成要素(ここでは、ステージ)の駆動速度情報を生成する方法を説明する。
【0036】
ステップS501では、抽出パラメータと、該抽出パラメータの動作ログファイルにおける識別子である動作記録識別子およびラベルとの対応関係が特性情報生成部6に設定される。この設定は、例えば、図8に例示するような抽出キーテーブルを読み込むことによってなされうる。ステージの駆動速度情報を生成するために値を抽出すべきパラメータ(抽出パラメータ)は、駆動開始時刻、駆動終了時刻、駆動開始位置、駆動終了位置である。図8に例示される抽出キーテーブルは、これらの抽出パラメータの動作ログにおける識別子である動作記録識別子およびラベルを抽出キーとして含む。
【0037】
ステップS502では、特性情報生成部6は、動作ログから1つの行の情報(単位情報)を読み込む。次に、ステップS503では、特性情報生成部6は、当該行にステップS501で設定された動作記録識別子(例えば、ウエハステージA駆動開始)が含まれているか否かを判定する。なお、ウエハステージAは、ウエハステージ306aに対応し、ウエハステージBは、ウエハステージ306bに対応する。当該行に動作記録識別子が含まれている場合には、ステップS504に処理が進められ、そうでない場合には、ステップS502に処理が戻される。
【0038】
ステップS504では、特性情報生成部6は、当該行にステップ501で設定されたラベル(例えば、Pos(X,Y))が含まれているか否かを判定する。例えば、読み込んだ行が図2に示す例における第5行であるとすると、当該行に動作記録識別子である"ウエハステージA駆動開始"が含まれるので、ステップS503からステップS504に処理が進められる。そして、ステップS504において、当該行に設定されたラベル(例えば、Pos(X,Y))が含まれるか否かが判定される。当該行に設定されたラベルが含まれている場合には、ステップS505に処理が進められ、そうでない場合には、ステップS502に処理が戻される。
【0039】
ステップS505では、特性情報生成部6は、読み込んだ行からパラメータ値欄205の値を抽出する。例えば、第5行については、特性情報生成部6は、抽出パラメータである"駆動開始位置"についパラメータの値、即ち、パラメータ値欄205の値である"(52.000,−41.500)"を抽出する。なお、処理時刻を抽出する場合は、図8に例示するように、ラベルとして"処理時刻"を設定する。
【0040】
ステップS506では、特性情報生成部6は、動作ログの全ての行を処理したか否かを判定し、全ての行を処理した場合にはステップS507に処理を進め、そうでない場合にはステップS502に処理を戻して新たな行の処理を開始する。以上のようにしてステージの駆動速度情報を生成するために抽出されたパラメータの値が図9に例示されている。
ステップS507では、特性情報生成部6は、ステップS505で抽出された複数のパラメータの値を処理してウエハステージA、ウエハステージB、レチクルステージの駆動速度情報を生成する。具体的には、特性情報生成部6は、駆動開始時刻と駆動終了時刻とから駆動所要時間を算出し、駆動開始位置と駆動終了位置から駆動距離を算出し、該駆動所要時間と該駆動距離とからステージの駆動速度を算出することができる。ここでは、具体例として、特性情報としてステージの駆動速度情報を生成する例を説明したが、他の特性情報についても必要なパラメータの値を同様の方法で抽出することができる。
図4に戻り、ステップS405(状態再現工程の一部)では、特性情報設定部8は、ステップS404で生成された特性情報を擬似露光装置11の露光部モデル10に設定する。次に、ステップS406(動作再現工程)では、動作再現部20は、ステップS403およびS405によって露光装置3の状態を再現するように設定された擬似露光装置(擬似製造装置)11を動作させる。この動作は、例えば、再現システム50に備えられた不図示の入力インターフェースを介して与えられる指令を制御部モデル9に送ることに応じてなされうる。再現情報(製造条件情報、特性情報)が露光装置3において不具合が発生したときのものであれば、擬似露光装置11においてその不具合が再現されうる。 なお、ステップS402およびS403を含む処理の先にステップS404およびS405を含む処理が実行されてもよい。また、ステップS403は、ステップS402とステップS406との間であれば、いつ実行されてもよい。また、ステップS405は、ステップS404がステップS402またはS403の前に実行される場合において、ステップS404とステップS406との間であれば、いつ実行されてもよい。
以上のように、本発明の第1実施形態によれば、露光装置等の製造装置から出力された動作ログに基づいて該製造装置の状態を擬似製造装置に再現させることができる。
[第2実施形態]
図10を参照しながら本発明の第2実施形態の再現システム55について説明する。第2実施形態の再現システム55は、製造装置の状態を擬似製造装置によって再現するように構成されうる。製造装置は、例えば、リソグラフィー工程において使用される露光装置3でありうる。
【0041】
第2実施形態の再現システム55は、第1実施形態の再現システム50に対して、製造装置としての露光装置3に対する外部装置からの指令を再現する機能を付加したものである。外部装置は、例えば、露光装置3をネットワーク等の通信路を介して遠隔操作する遠隔操作装置(例えば、コンピュータ)であったり、露光装置3に接続された製造装置(例えば、処理装置、搬送装置)であったりしうる。露光装置3に接続された製造装置は、例えば、露光装置3と塗布現像装置(コータデベロッパ)との間でウエハ(基板)を搬送する搬送装置でありうる。搬送装置は、塗布現像装置の塗布部でレジスタが塗布されたウエハを露光装置3に搬送し、露光装置3で露光されたウエハを塗布現像装置の現像部に搬送するように構成されうる。塗布部と現像部とは、別の筐体に配置されてもよく、この場合には、塗布部は塗布装置、現像部は現像装置とも呼ばれうる。
【0042】
第2実施形態の再現システム55は、指令ログ取得部31、動作再現プログラム生成部32が追加されていることを除いて第1実施形態の再現システム50と同様の構成を有する。再現システム55は、例えば、取得部5と、生成部18と、状態再現部19、動作再現部20、指令ログ取得部31、動作再現プログラム生成部32を構成するためのプログラムをコンピュータに実行させることによって構成されうる。
【0043】
指令ログ取得部31は、露光装置3から出力された指令ログを取得する。動作再現プログラム生成部32は、指令ログ取得部が取得した指令ログに基づいて、該指令ログに含まれる指令を再現するための動作再現プログラムを生成する。動作再現部20は、該動作再現プログラムを実行することによって擬似露光装置11の制御部モデル9に指令を送る。これにより、制御部モデル9には、制御部1が実際に受けた指令と同様の指令が与えられる。
露光装置3の制御部1には、外部装置、および露光装置3に備えられた操作ユニット(例えば、オペレーションパネル)から種々の指令を受けうる。制御部1は、受けた指令を時系列に指令ログとして記録する。指令は、例えば、制御パラメータの変更、ウエハ(基板)の搬入および搬出を要求する指令でありうる。指令ログは、露光装置3に対する指令を出した装置またはユニット(指令元)、指令内容、指令パラメータ、指令時刻、指令記録識別子等を含みうる。指令ログは、単位情報の集合であり、各単位情報は、露光装置3が受けた1つの指令に関する情報である。図11に指令ログが例示されている。指令ログ1101における1つの行は、例えば、1回の記録動作で記録される単位情報で構成されうる。単位情報は、例えば、時刻欄1102、指令元欄1103、指令記録識別子欄1104、ラベル欄1105、パラメータ値欄1106を含む。図11において、"インライン"は、露光装置3と塗布現像装置との間でウエハを搬送する搬送装置を意味し、"オペレータ"は、露光装置3に備えられた操作ユニットを意味し、"オンライン"は、露光装置3を遠隔操作する遠隔操作装置を意味する。ここで、露光装置3の制御部1における指令ログの生成について説明する。露光装置3の制御部1が搬送装置に対して「ウエハ(No.1)搬入」を指令すると、該搬送装置は、指令されたウエハを露光装置に搬送するとともに、制御部1に対してウエハの受け入れを指令する。ここで、露光装置3の制御部1は、時刻欄1102にその時点の時刻、指令元欄1103に"インライン"、指令記録識別子欄1104に"ウエハ搬入"、ラベル欄1105に"WaferNo."、パラメータ値欄1106に"1"を記録する。次に、遠隔装置は、露光装置3の制御部1に対して"sample−recipe"をレシピとする露光ジョブの開始である「露光開始」を指令する。ここで、露光装置3の制御部1は、時刻欄1102にその時点の時刻、指令元欄1103に"オンライン"、指令記録識別子欄1104に"露光開始"、ラベル欄1105に"Recipe"、パラメータ値欄1106に"sample−recipe"を記録する。
【0044】
指令ログ取得部31は、例えば、露光装置3と通信路を介して接続するための通信インターフェースを含み、露光装置3から出力された指令ログを該通信路を介して取得するように構成されうる。この場合の通信インターフェースは、取得部5のインターフェースと共用されうる。或いは、指令ログ取得部31は、露光装置3から出力された指令ログを保持したサーバー等のコンピュータから該通信インターフェースを介して該指令ログを取得してもよい。或いは、指令ログ取得部31は、メディアリーダを含み、露光装置3からメディアに出力された指令ログを該メディアリーダによって取得してもよい。指令ログ取得部31が取得した指令ログは、指令ログ取得部31内のメモリに格納される。
【0045】
動作再現プログラム生成部32は、指令ログ取得部31が取得した指令ログに含まれる指令を再現するための動作再現プログラムを生成する。動作再現プログラムは、例えば、計測指令、レシピ情報に従う露光ジョブの実行、レシピパラメータ値の変更、ウエハの搬入および搬出の指令を含みうる。図12に動作再現プログラムが例示されている。図12において、各行は、1回の動作に対応している。動作再現プログラム1201は、例えば、動作識別子1202、動作内容1203を含みうる。動作再現部20は、動作再現プログラム1201を実行することによって動作再現のための指令を発生し、該指令を擬似露光装置11の制御部モデル9に送る。
【0046】
図13を参照しながら本発明の第2実施形態の再現システム55において実行される再現方法を例示的に説明する。この再現方法は、例えば、コンピュータに以下の工程を実行させるプログラムによって実現されうる。なお、ステップS401〜S405は、第1実施形態における再現方法と同様である。
【0047】
ステップS411(指令ログの取得工程)では、指令ログ取得部31は、露光装置3の制御部1から出力された指令ログを取得する。ステップS412(動作再現プログラムの生成工程)では、動作再現プログラム生成部32は、ステップS1301で指令ログ取得部31が取得した指令ログに基づいて動作再現プログラムを生成する。図11および図12を参照しながら説明すると、動作再現プログラム生成部32は、指令ログ1101の第1行に記録されたウエハの搬入時刻と第2行に記録されたウエハステージパラメータの変更時刻とを抽出し、それらの時刻の差分(5秒)を算出する。次に、動作再現プログラム生成部32は、ウエハ搬入とXYステージパラメータ変更との間にその差分時刻の遅延処理(Delay(5))を追加する。これにより、動作再現プログラム1201は、ウエハ搬入とパラメータ変更との間に指令ログの記録時と同様の時間差を生じさせることができる。
次に、ステップS406(動作再現工程)では、動作再現部20は、ステップS412で生成された動作再現プログラムを実行して、擬似露光装置11の制御部モデル9に対して指令を与える。擬似露光装置11は、ステップS403およびS405によって露光装置3の状態を再現するように設定された状態で露光装置3の動作を再現する。
【0048】
なお、ステップS402およびS403を含む処理の先にステップS404およびS405を含む処理が実行されてもよい。また、ステップS403は、ステップS402とステップS413との間であれば、いつ実行されてもよい。また、ステップS405は、ステップS404とステップS413との間であれば、いつ実行されてもよい。また、ステップS411は、ステップS413の前であれば、いつ実行されてもよい。
以上のように、本発明の第2実施形態によれば、露光装置等の製造装置から出力された動作ログに基づいて該製造装置の状態を擬似製造装置に再現させた状態で、指令ログに基づいて擬似製造装置の動作を再現させることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
製造装置の状態を擬似製造装置によって再現する再現方法であって、
前記製造装置から出力された動作ログを取得する取得工程と、
前記動作ログから抽出キーを使ってパラメータの値を抽出し、抽出したパラメータの値を処理することにより状態再現情報を生成する生成工程と、
前記状態再現情報に基づいて前記製造装置の状態を前記擬似製造装置によって再現する状態再現工程とを含み、
前記状態再現情報は、前記製造装置に入力された製造条件を示す製造条件情報および前記製造装置の特性を示す特性情報の少なくとも1つを含む、ことを特徴とする再現方法。
【請求項2】
前記製造装置は露光装置を含み、前記生成工程では、前記製造条件情報としてレシピ情報を生成する、
ことを特徴とする請求項1に記載の再現方法。
【請求項3】
前記製造装置は露光装置を含み、前記生成工程では、前記特性情報として前記露光装置の構成要素の駆動速度情報を生成する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の再現方法。
【請求項4】
前記製造装置の状態を再現した前記擬似製造装置に前記製造装置の動作を再現させる動作再現工程を更に含む、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の再現方法。
【請求項5】
前記動作再現工程は、前記製造装置に与えられた指令が記録された指令ログに基づいて生成された動作再現プログラムを実行することによって前記擬似製造装置に前記製造装置の動作を再現させる、
ことを特徴とする請求項4に記載の再現方法。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の再現方法をコンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。
【請求項7】
製造装置の状態を擬似製造装置によって再現する再現システムであって、
前記製造装置から出力された動作ログを取得する取得部と、
前記動作ログから抽出キーを使ってパラメータの値を抽出し、抽出したパラメータの値を処理することにより状態再現情報を生成する生成部と、
前記状態再現情報に基づいて前記製造装置の状態を前記擬似製造装置によって再現する状態再現部とを含み、
前記状態再現情報は、前記製造装置に入力された製造条件を示す製造条件情報および前記製造装置の特性を示す特性情報の少なくとも1つを含む、ことを特徴とする再現システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−238763(P2010−238763A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−82687(P2009−82687)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】