説明

再生医療用バイオマテリアル

【課題】構造および機能ともに生体組織に相当する、軟骨組織再生用バイオマテリアルの提供。
【解決手段】軟骨マトリックス成分であるグリコサミノカン、プロテオグリカン、コラーゲンを用い、各種反応条件の下で軟骨様組織が形成されるかどうか検討した。特定濃度およびpHの下にグリコサミノカンとプロテオグリカンを反応させると、自己組織化によりグリコサミノカンにプロテオグリカンが結合した凝集体ができ、さらに上記凝集体にコラーゲン分子を反応させると、上記凝集体を骨格としてコラーゲン線維による網目構造が自己組織化により構築される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組織再生に使用可能なバイオマテリアルに関し、特に自己組織化技術によるグリコサミノグリカン/プロテオグリカン/コラーゲン複合体に関する。
【背景技術】
【0002】
高齢化社会の到来とともに、骨粗鬆症や変形性関節症など骨関節・運動器疾患の患者は増加傾向にある。実際、本邦において変形性関節症患者は700 〜1000万人にものぼるとされている。骨関節・運動器疾患は日常生活障害をもたらすため、その対策と予防法の開発が社会的急務として注目されている。現在、関節・運動器疾患の治療は、日常生活動作の改善指導(筋力訓練、サポーター・装具等)、消炎鎮痛剤による対症療法がほとんどであり、これら対症療法の有効性は患者にとって満足のいくものではない。また、加齢とともに関節症状は増悪することが多く、骨関節破壊やアライメント不整を呈する症例の治療には外科的療法(人工関節など)が選択されている。しかし外科的治療には、コスト、感染のリスク、さらには数年〜十数年後に人工関節の再置換を迫られる症例がある、等の問題点も多い。
【0003】
運動器疾患は、発症後経年的に組織が障害されること、関節軟骨組織が極めて修復能に乏しいことから、予防法および病早期からの疾患対策が必要であるが、未だ有効な治療や医療技術は確立されていない。このように、高齢化社会において、日常生活の高い活動性(activity of daily living: ADL)を維持するためには、加齢にともなう運動器疾患に対して臨床的有効性を示す新規治療薬や治療戦略の確立が急がれる。
【0004】
近年、高度の骨関節破壊・変性に対する治療として、再生医療(ティッシュ エンジニアリング)をはじめとする新技術による関節再建に注目が集まっている。骨欠損・破壊に対しては、ハイドロキシアパタイトを主成分とする骨組織マトリックスの模倣体(人工骨)がすでに開発されており、該人工骨では、高い骨親和性および骨に類似した剛性が再現されている。既に、大きな骨欠損(75 〜 100 cm3)を有する疾患・症例に対しても人工骨が臨床応用されており、良好な治療成績が報告されている。人工骨は、骨自体が高い修復能(リモデリング)を持つことから、数週間から数ヶ月を経て自己組織化して骨へと置換されるとされている。
【0005】
一方、軟骨再生技術に関しては、軟骨の持つ組織特性(弾性変形効果、弾性流体潤滑機構)を完全に再現した人工軟骨は未だ創製されていない。軟骨組織は、軟骨細胞と軟骨基質(マトリックス)からなる組織である。軟骨細胞は、高度に分化した細胞であり、軟骨組織内では細胞分裂によって増殖することは殆ど無く、定常状態にある。軟骨細胞は、軟骨組織中の約10%を占めるに過ぎないが、軟骨組織内で軟骨基質成分を産生し、軟骨組織の約90%を占める軟骨基質の維持を担う。現在、軟骨細胞を用いて人工的に軟骨組織を再現し、軟骨の破壊・変性に対する治療に利用する試みがなされているが、現在の技術で軟骨様組織を形成するためには、軟骨細胞自体に軟骨基質成分を産生させるプロセスが不可欠となっている。例えば、生体外でコラーゲンゲルやアガロースゲルを用いて軟骨細胞を培養した3次元培養マテリアルを軟骨欠損部に移植する手法が、一部の限定した症例(若年者、外傷例で3 cm3未満の小欠損 )を対象として実施されている。また、in vitro実験系において、骨髄由来の間葉系幹細胞から軟骨細胞を分化誘導し、軟骨再生の細胞資源として利用する試みが報告されている。
【0006】
このような軟骨細胞を用いた軟骨様組織形成技術は、実用化の観点からは、未だ発展途上にあるといわざるを得ない。上記の軟骨様組織形成技術によって軟骨欠損を補填する場合、現状の技術では、欠損部補填に十分な量の軟骨基質を軟骨細胞に作らせるためには、生体の軟骨組織中に実際に存在する軟骨細胞よりもはるかに多い割合の軟骨細胞が必要であり、具体的には、1cm3の軟骨欠損を現在の技術を用いて軟骨様組織で充填するには、2 〜 5 x 106個の軟骨細胞が必要とされている。このような、治療に必要十分な大量の細胞資源(軟骨細胞数)を獲得するためには、細胞培養を数系代(passage)にわたり続ける必要がある。しかし軟骨細胞は、他の細胞のように平面培養すると、軟骨培養細胞は増殖能を示すものの、継代培養中に軟骨細胞としての特性を失い(軟骨基質産生能の低下、細胞形態の変化)脱分化する可能性がある。上記のように大量の軟骨細胞が必要な場合、平面培養は、数週間もの期間を必要とするうえ、脱分化のリスクも免れない等、細胞資源の観点から解決すべき問題点が多い。一方、3次元培養方法は、上記脱分化の問題を解決する方法となりうるのであるが、大量の細胞が必要で長期間を要する点は平面培養と同様である。例えば、コラーゲンゲル等を用いた軟骨細胞の3次元培養(ゲル状)組織を生体外で作製するためには、数週間かかる。上記軟骨細胞の3次元培養(ゲル状)組織を移植しても、関節内の残存軟骨組織は修復能を持たないことから、現状では、人工軟骨様組織が欠損部に生着して組織化に至るまでには、数ヶ月(〜6ヶ月)もの長期間を要する(非特許文献1、2)。上記時間的問題のほか、コラーゲンゲルで軟骨細胞を3次元培養した場合は、コラーゲンゲルが流動性であるためにそのまま移植したのでは移植部から流出しやすく、移植前に、流出防止のテフロン(登録商標)膜や骨膜などでゲルを覆う手間が発生する。さらに、上記軟骨細胞の3次元培養(ゲル状)組織が軟骨機能(低摩擦性、耐荷重性)を発揮できる組織として維持されうるか否かは未だ検討途上である。
【0007】
他方、軟骨組織を模した組織再生用材料を化学的に調製する研究がなされている。例えば、ヒアルロン酸をエピクロロヒドリン架橋した例や、グリコサミノグリカンとポリカチオンを縮合反応により架橋したグリコサミノグリカン−ポリカチオン複合体の報告がある(特許文献1)。しかし、架橋剤や縮合剤を用いた場合は、製造過程で架橋剤、縮合剤、副生成物を洗浄除去する手間がかかり、また、これらを体内に移植した場合は、化学物質の残留問題が生じるリスクがある。さらには、架橋剤や縮合剤を用いて作られた上記複合体の構造がナノレベルで生体組織を模したものにならないため、軟骨の機能として必要な低摩擦性、耐荷重性や生体親和性を満たすことができるのかは不明である。このように、従来の組織再生用材料では、軟骨組織の構造および機能を十分再現したものは見あたらない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002-80501
【特許文献2】特開2002-248119
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Ochi M, Uchio Y, Tobita M, Kuriwaka M. Current concepts in tissue engineering technique for repair of cartilage defect. Artif Organs. 25(3):172-9, 2001.
【非特許文献2】Ochi M, Uchio Y, Kawasaki K, Wakitani S, Iwasa J. Transplantation of cartilage-like tissue made by tissue engineering in the treatment of cartilage defects of the knee. J Bone Joint Surg Br. 84(4):571-8, 2002.
【非特許文献3】Kikuchi M, Itoh S, Ichinose S, Shinomiya K, Tanaka J. Self-organization mechanism in a bone-like hydroxyapatite/collagen nanocomposite synthesized in vitro and its biological reaction in vivo. Biomaterials. 22(13):1705-11, 2001.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は上記状況に鑑みてなされたものであり、本発明が解決しようとする課題は、構造および機能ともに生体組織に相当する、組織再生用バイオマテリアルの提供である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決すべく、本発明者らは鋭意研究を重ねた。本発明者らは、従来技術のように軟骨細胞に軟骨基質(マトリックス)を産生させて軟骨組織形成を誘導するのではなく、また架橋剤や縮合剤を使用することなく、軟骨様組織を創製する技術を模索した。その結果、自己組織化技術を応用して軟骨様組織を形成することを試みた。自己組織化技術は、定常状態ではランダムな動きをしている分子が、環境条件によっては分子間にはたらく結合力、表面修飾、共有結合の方向性やイオン配列など物理的化学的特性により一定の法則を持って組織化した構築を形成することがあることを利用した技術である。ハイドロキシアパタイトとコラーゲン、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸が自己組織化体を形成することは知られているが(非特許文献3、特許文献2)、ハイドロキシアパタイトは骨の成分であり、軟骨組織中には本来存在しない。自己組織化技術を応用した軟骨様組織の形成については、これまで報告例はない。本発明者らは、軟骨マトリックス成分であるグリコサミノグリカン、プロテオグリカン、コラーゲンを用い、各種反応条件の下で軟骨様組織が形成されるかどうか検討した。その結果、特定濃度およびpHの下にグリコサミノグリカンとプロテオグリカンを反応させると、自己組織化によりグリコサミノグリカンにプロテオグリカンが結合した凝集体ができ、さらに上記凝集体にコラーゲンを反応させると、自己組織化によって、コラーゲン線維が上記凝集体を骨格として網目構造を構築し、軟骨に近い物性を有する複合体が形成されることをつきとめた。さらに、上記複合体を用いて軟骨細胞を3次元培養したところ、上記複合体は軟骨細胞の足場となり、軟骨細胞の長期生存に適した3次元環境を再現できることが確認された。したがって、上記方法によって形成された複合体は、軟骨再生医療のバイオマテリアルとして極めて適した性質を有するものである。すなわち本発明は組織再生用バイオマテリアルとして利用可能な自己組織化グリコサミノグリカン/プロテオグリカン/コラーゲン複合体に関し、具体的には以下の発明を提供するものである。
(1) 下記(a)および(b)の工程を含む、自己組織化グリコサミノグリカン/プロテオグリカン/コラーゲン複合体の製造方法
(a)グリコサミノグリカンとプロテオグリカンとを混合し、グリコサミノグリカン‐プロテオグリカン凝集体を調製する工程
(b)上記グリコサミノグリカン‐プロテオグリカン凝集体にコラーゲンを混合する工程、
(2) 下記(a)および(b)の工程を含む、軟骨様複合体の製造方法
(a)グリコサミノグリカンとプロテオグリカンとを混合し、グリコサミノグリカン‐プロテオグリカン凝集体を調製する工程
(b)上記グリコサミノグリカン‐プロテオグリカン凝集体にコラーゲンを混合し、軟骨様の自己組織化グリコサミノグリカン/プロテオグリカン/コラーゲン複合体を製造する工程、
(3) 下記(a)および(b)の工程を含む、軟骨基質様複合体の製造方法
(a)グリコサミノグリカンとプロテオグリカンとを混合し、グリコサミノグリカン‐プロテオグリカン凝集体を調製する工程
(b)上記グリコサミノグリカン‐プロテオグリカン凝集体にコラーゲンを混合し、軟骨基質様の自己組織化グリコサミノグリカン/プロテオグリカン/コラーゲン複合体を製造する工程、
(4) 前記グリコサミノグリカンがヒアルロン酸である、上記(1)から(3)のいずれかに記載の製造方法、
(5) 前記プロテオグリカンがアグリカンである、上記(1)から(4)のいずれかに記載の製造方法、
(6) 前記コラーゲンがII型コラーゲンである、上記(1)から(5)のいずれかに記載の製造方法、
(7) 前記(a)工程において、ヒアルロン酸がpH5〜pH10のヒアルロン酸溶液である、上記(4)から(6)のいずれかに記載の方法、
(8) 前記(a)工程において、前記アグリカンがpH5〜pH10のアグリカン溶液である、上記(5)から(7)のいずれかに記載の方法、
(9) 前記(b)工程において、前記コラーゲンがH5〜pH10の溶液である、上記(1)に記載の方法、
(10) 前記(a)工程において、前記ヒアルロン酸が20容量%以下の濃度のヒアルロン酸溶液である、上記(4)から(6)のいずれかに記載の方法、
(11) 前記(a)工程において、前記アグリカンが0.1〜1.0mg/mlの濃度のアグリカン溶液である、上記(5)から(7)のいずれかに記載の方法、
(12) 前記(b)工程において、前記コラーゲンが0.1〜5.0mg/mlの濃度のコラーゲン溶液である、上記(1)に記載の方法、
(13) 上記(1)、(4)から(12)のいずれかの方法によって製造された自己組織化グリコサミノグリカン/プロテオグリカン/コラーゲン複合体、
(14) ヒアルロン酸にアグリカンが結合した凝集体にII型コラーゲン線維が連結した網目状構造を有する、ヒアルロン酸とアグリカンとII型コラーゲンを含む複合体、
(15) 上記(2)、(4)から(12)のいずれかの方法によって製造された軟骨様複合体、
(16) 上記(3)から(12)のいずれかの方法によって製造された軟骨基質様複合体、
(17) 上記(13)から(16)のいずれかに記載の複合体を含む、軟骨破壊または軟骨変性治療あるいは軟骨再生用材料、
(18) 下記(a)から(c)の工程を含む、軟骨細胞を含有する、軟骨破壊または軟骨変性治療用材料の製造方法
(a)グリコサミノグリカンとプロテオグリカンとを混合し、グリコサミノグリカン‐プロテオグリカン凝集体を調製する工程
(b)上記グリコサミノグリカン‐プロテオグリカン凝集体にコラーゲンを混合し、自己組織化グリコサミノグリカン/プロテオグリカン/コラーゲン複合体を製造する工程
(c)上記自己組織化グリコサミノグリカン/プロテオグリカン/コラーゲン複合体を用いて軟骨細胞を培養する工程、
(19) 上記軟骨細胞が、軟骨破壊または軟骨変性治療を受ける患者由来の軟骨細胞である、上記(18)記載の製造方法、
(20) 上記(18)または(19)に記載の方法によって製造された、軟骨細胞を含有する、軟骨破壊または軟骨変性治療用材料、
(21) 上記(1)に記載の方法で複合体を調製する工程、および該複合体を用いて細胞を培養する工程を含む、細胞の3次元培養方法、
(22) 細胞が軟骨細胞である、上記(21)の3次元培養方法、
(23) 上記(17)または(20)記載の材料を軟骨破壊または軟骨変性が起きた関節に投与する工程を含む、軟骨破壊または軟骨変性を伴う疾患の治療方法、
(24) 軟骨破壊または軟骨変性治療用材料製造のための、上記(13)または上記(14)に記載の複合体の使用、
(25) 上記(13)または(14)に記載の複合体を含む、3次元細胞培養用材料。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】生体軟骨組織を模式化した図である。
【図2】アグリカン、ヒアルロン酸、II型コラーゲンを用いて自己組織化グリコサミノグリカン/プロテオグリカン/コラーゲン複合体を作製する過程を位相差顕微鏡写真によって説明する図である。(A):アグリカン-ヒアルロン酸凝集体(pH9)と(B):II型コラーゲン溶液(pH9)により、(C)自己組織化グリコサミノグリカン/プロテオグリカン/コラーゲン複合体が形成される(pH9)。
【図3】アグリカン-ヒアルロン酸凝集体の透過型電子顕微鏡写真である。アグリカンが10-20nm間隔で高密度にヒアルロン酸鎖に結合して凝集体を形成していることが観察される。
【図4】自己組織化アグリカン/ヒアルロン酸/II型コラーゲン複合体が形成される過程を説明する写真である。上段左から右に、コラーゲン溶液とAG-HA凝集体を混合した直後の写真、5分後、10分後、下段左から右に20分後、30分後、2-4時間後の写真である。5分後の写真からは、コラーゲン分子の会合が観察される。また、30分後の写真から、線維状コラーゲンの形成が確認される。
【図5】自己組織化により形成されたアグリカン/ヒアルロン酸/II型コラーゲン複合体の透過型電子顕微鏡写真である。針状のコラーゲン分子が共有結合して形成された線維状コラーゲンからなる網目構造が観察される。
【図6】自己組織化アグリカン/ヒアルロン酸/II型コラーゲン複合体の顕微鏡写真、ゲル状コラーゲンの顕微鏡写真である。
【図7】自己組織化により形成されたアグリカン/ヒアルロン酸/II型コラーゲン複合体の透過型電子顕微鏡写真である。II型コラーゲン線維によって形成された網目構造内にアグリカン-ヒアルロン酸凝集体が保持されているのが観察される。
【図8】A:自己組織化アグリカン/ヒアルロン酸/II型コラーゲン複合体を用いた軟骨細胞培養開始後24時間目の上記複合体およびラット軟骨細胞の光学顕微鏡像である。B:培養開始1週間目の上記複合体および軟骨細胞の走査型電子顕微鏡図(SEM)である。矢印は軟骨細胞を示す。
【図9】培養開始1週間目の上記複合体および軟骨細胞の透過型電子顕微鏡図(TEM)である。軟骨細胞を矢印で示す。図中(a)は、ポリエチレンフィルムとエポキシの馴染みが良くないことと、両者の収縮程度が異なることによって生じた、膜表面のしわである。
【図10】軟骨細胞が移入した自己組織化アグリカン/ヒアルロン酸/II型コラーゲン複合体をラット膝軟骨組織へ移植する様子を示す写真である。写真中(a):軟骨表面に穴を穿ち、複合体を移植している。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、自己組織化グリコサミノグリカン/プロテオグリカン/コラーゲン複合体の製造方法を提供する。本発明の方法は、本発明者らがヒアルロン酸、アグリカン及びコラーゲンを自己組織化により連結した複合体の形成に初めて成功したことに基づく。本発明において自己組織化グリコサミノグリカン/プロテオグリカン/コラーゲン複合体(以下において、場合により「本発明の複合体」と称す)とは、自己組織化によって、グリコサミノグリカン、プロテオグリカン、およびコラーゲンが連結して形成された網目構造の複合体である。本発明の複合体は、グリコサミノグリカン、プロテオグリカン、およびコラーゲンを含む。本発明の複合体における「連結」は、分子同士の化学的な結合による連結のみならず、分子同士の物理的な絡み合いによる連結や、分子が網目構造に物理的に引っかかった保持状態をも含む。例えば、コラーゲン線維による網目構造にグリコサミノグリカンおよびプロテオグリカンを物理的に保持している状態の複合体は、本発明における連結によって複合体を形成しており、該複合体は、自己組織化によって形成された網目構造の複合体である限り、本発明の複合体である。本発明の方法は、グリコサミノグリカンとプロテオグリカンとを混合し、グリコサミノグリカン‐プロテオグリカン凝集体を調製する工程、および上記グリコサミノグリカン‐プロテオグリカン凝集体にコラーゲンを混合する工程を含む。
【0014】
本発明の方法における「グリコサミノグリカンとプロテオグリカンとを混合し、グリコサミノグリカン‐プロテオグリカン凝集体を調製する工程」(以下、場合により「グリコサミノグリカン‐プロテオグリカン凝集体調製工程」と称す)について説明する。
【0015】
グリコサミノグリカンとは、ウロン酸又はガラクトースがアミノ糖と結合した二糖の繰り返し構造を有する酸性多糖類である。グリコサミノグリカンは、その骨格構造から、コンドロイチン硫酸/デルマタン硫酸、ヘパラン硫酸/ヘパリン、ケラタン硫酸、ヒアルロン酸に分類される。本発明の方法において、グリコサミノグリカンとして、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、ケラタン硫酸、ヘパリン、ヘパラン硫酸のいずれも使用することができる。本発明の方法を軟骨再生用複合体の製造として実施する場合は、グリコサミノグリカンとしてヒアルロン酸を用いることが好ましい。
【0016】
本発明のグリコサミノグリカン‐プロテオグリカン凝集体調製工程において、グリコサミノグリカンは20容量%以下の濃度の溶液に調製されることが好ましい。より好ましくは0.5〜10容量%の水溶液であり、さらに好ましくは1〜5容量%の水溶液である。グリコサミノグリカンを溶解する溶媒は、水に限らず、タンパク質を溶解できるものであれば使用できるが、生体への毒性が知られている物質を含んでいないことが望ましい。蒸留水、リン酸緩衝液、細胞培養液は、好適に利用可能な溶媒の例である。グリコサミノグリカンとしてヒアルロン酸溶液を用いる場合、そのpHは、pH5〜pH10であることが好ましく、より好ましくはpH6〜pH9、最も好ましくはpH8〜pH9である。
【0017】
プロテオグリカンとは、一般に、タンパク質にグリコサミノグリカンが共有結合した分子の総称である。本発明の方法において、使用可能なプロテオグリカンに特に制限はなく、例えば、アグリカン、バイグリカン、デコリン、バーシカン、ニューロカン、ブレビカンなどを使用することができる。本発明の方法を軟骨再生用複合体の製造方法として実施する場合は、プロテオグリカンとしてアグリカンを用いることが好ましい。
【0018】
本発明において使用するプロテオグリカンの由来に特に制限はなく、本発明の複合体の使用目的に応じて、哺乳類(ヒト、ウシ、ブタ等)、鳥類(ニワトリ等)、魚類(サメ、鮭等)、甲殻類(カニ、エビ等)等の各種動物由来の中から適宜選択することができる。本発明の複合体を軟骨欠損または変性の治療用として用いるのであれば、複合体の投与を受ける患者に適合するように由来を選択することができ、例えば、ヒトである患者に本発明の複合体を投与するのであれば、ヒトにおける免疫原性の低い由来の中から選択することが望ましい。
【0019】
本発明のグリコサミノグリカン‐プロテオグリカン凝集体調製工程においてプロテオグリカンは、0.1〜1.0mg/mlの溶液として調製されることが好ましい。より好ましくは0.1〜0.5mg/mlの水溶液であり、さらに好ましくは0.25〜0.5mg/mlの水溶液である。プロテオグリカンを溶解する溶媒は、水に限らず、多糖類を溶解できるものであれば使用できるが、生体への毒性が知られている物質を含んでいないことが望ましい。蒸留水、リン酸緩衝液、細胞培養液は、好適に利用可能な溶媒の例である。アグリカン溶液を用いる場合、そのpHは、pH5〜pH10であることが好ましく、より好ましくはpH6〜pH9、さらに好ましくはpH8〜pH9である。
【0020】
本発明のグリコサミノグリカン‐プロテオグリカン凝集体調製工程では、グリコサミノグリカンとプロテオグリカン、好ましくは、上記特定濃度および特定pHに調製されたグリコサミノグリカン溶液とプロテオグリカン溶液とを一定温度下に攪拌しながら混合する。好ましくは、同時滴下により混合する。混合時の温度は、好ましくは25℃〜45℃、より好ましくは35℃〜40℃、最も好ましくは36℃〜38℃である。グリコサミノグリカン‐プロテオグリカン凝集体調製工程において、後述する「グリコサミノグリカン‐プロテオグリカン凝集体」が形成される限り、グリコサミノグリカンおよびプロテオグリカン以外の物質を混合してもよい。
【0021】
上記混合によって、「グリコサミノグリカン‐プロテオグリカン凝集体」が形成される。本発明のグリコサミノグリカン‐プロテオグリカン凝集体は、線維状である。本発明のグリコサミノグリカン‐プロテオグリカン凝集体が形成されたかどうかは、顕微鏡で線維状物質の有無を確認することにより容易に判断することができる。本発明のグリコサミノグリカン‐プロテオグリカン凝集体は、グリコサミノグリカンとプロテオグリカンが連結して線維状物質が形成されている限り、上記グリコサミノグリカンおよびプロテオグリカン以外の物質が混在または結合していることを妨げない。例えば、軟骨組織に含まれる物質が混在または結合していても、グリコサミノグリカンとプロテオグリカンが線維状物質を形成している限り、本発明のグリコサミノグリカン‐プロテオグリカン凝集体に含まれる。
【0022】
本発明の方法において、グリコサミノグリカン‐プロテオグリカン凝集体は、自己組織化グリコサミノグリカン/プロテオグリカン/コラーゲン複合体の網目構造の骨格となる。そのため、グリコサミノグリカン‐プロテオグリカン凝集体の形成は、自己組織化グリコサミノグリカン/プロテオグリカン/コラーゲン複合体の形成に到達するための、重要な要素である。実施例では、グリコサミノグリカンとしてヒアルロン酸を、プロテオグリカンとしてアグリカンを用いて本発明の複合体を形成させたが、その「グリコサミノグリカン‐プロテオグリカン凝集体調製工程」において、ヒアルロン酸に平均200個以上のアグリカンが結合したグリコサミノグリカン‐プロテオグリカン凝集体が形成された。
【0023】
次に、本発明の方法における「グリコサミノグリカン‐プロテオグリカン凝集体にコラーゲンを混合する工程」(以下、「コラーゲン分子混合工程」と称す)について説明する。本発明の方法におけるコラーゲン分子混合工程は、グリコサミノグリカン‐プロテオグリカン凝集体調製工程によって調製された「グリコサミノグリカン‐プロテオグリカン凝集体」にコラーゲンを混合する工程である。
【0024】
本発明において使用するコラーゲンは、I型コラーゲンでもII型コラーゲンでもよいが、好ましくはII型コラーゲンである。本発明の方法において、コラーゲンは0.1〜5.0mg/mlの濃度の溶液に調製されることが好ましい。より好ましくは0.1〜1.0mg/mlの水溶液であり、さらに好ましくは0.1〜0.5mg/mlの水溶液である。コラーゲン溶液のpHは、pH5〜pH10であることが好ましく、より好ましくはpH6〜pH9、最も好ましくはpH8〜pH9である。コラーゲンを溶解する溶媒は、水に限らず、コラーゲンを溶解できるであれば使用できるが、生体への毒性が知られている物質を含んでいないことが望ましい。
【0025】
本発明において使用するコラーゲンの由来に特に制限はなく、本発明の複合体の使用目的に応じて、哺乳類(ヒト、ウシ、ブタ等)、魚類(サメ、鮭等)等の各種脊椎動物由来の中から適宜選択することができる。本発明の複合体を軟骨欠損または変性の治療用として用いるのであれば、複合体の投与を受ける患者に適合するように由来を選択することができ、例えば、ヒトである患者に本発明の複合体を投与するのであれば、ヒトにおける免疫原性の低い由来の中から選択することが望ましく、ヒトコラーゲンを選択することは最も好ましい。また、本発明に使用するコラーゲンの製造方法についても制限はなく、複合体の使用目的に適う純度や安全性が認められる限り、天然抽出物であっても、遺伝子組換え技術によって調製されたものであってもよく、さらに、化学合成によって調製されたものでもよい。
【0026】
上記グリコサミノグリカン‐プロテオグリカン凝集体に上記コラーゲンを一定温度下に攪拌しながら混合する。好ましくは、同時滴下で混合する。混合は、タンパク質が変性しない温度で行い、好ましくは25℃〜45℃、より好ましくは35℃〜40℃、最も好ましくは36℃〜38℃である。コラーゲン分子混合工程において、自己組織化グリコサミノグリカン/プロテオグリカン/コラーゲン複合体が形成される限り、グリコサミノグリカン‐プロテオグリカン凝集体、コラーゲン以外の物質を混合してもよい。例えば、軟骨などの生体組織の成分を混合してもよい。
【0027】
本発明のコラーゲン分子混合工程において、コラーゲンが線維化し、該線維化したコラーゲンとグリコサミノグリカン‐プロテオグリカン凝集体から本発明の複合体が形成される。上述のとおり、本発明の自己組織化グリコサミノグリカン/プロテオグリカン/コラーゲン複合体において、必ずしもプロテオグリカンにコラーゲンが化学的に結合している必要はない。コラーゲン分子が重合してできたコラーゲン線維からなる網目構造に、グリコサミノグリカン‐プロテオグリカン凝集体を保持している構造体は、本発明の複合体に含まれる。
【0028】
コラーゲン分子混合工程の後に、水分含量を低下させる目的で、自己組織化グリコサミノグリカン/プロテオグリカン/コラーゲン複合体に対する遠心等の操作を行っても良い。水分含量を低下させると、より緻密な複合体の形成が可能になる。例えば、3,000rpmで15分間の遠心により、脱水させることができる。寒天のように、完全に脱水させた後、水分供給によりもとの状態に戻すことも可能である。
【0029】
本発明の方法によって自己組織化グリコサミノグリカン/プロテオグリカン/コラーゲン複合体が得られる。したがって本発明は、該自己組織化グリコサミノグリカン/プロテオグリカン/コラーゲン複合体をも提供し、特に、自己組織化グリコサミノグリカン/プロテオグリカン/コラーゲン軟骨様複合体を提供する。本発明の複合体は、上述の自己組織化技術を利用した方法によって、グリコサミノグリカン、プロテオグリカン、コラーゲンを用いて製造されたものであるから、生体中に存在する軟骨組織または軟骨基質、脊椎動物軟骨組織からの抽出物、該抽出物中の複合体は、本発明の複合体から明確に除かれる。本発明の自己組織化グリコサミノグリカン/プロテオグリカン/コラーゲン複合体は、生体組織の構造に似た構造を有する。本発明において自己組織化グリコサミノグリカン/プロテオグリカン/コラーゲン軟骨様複合体とは、生体軟骨組織に類似した構造を有する自己組織化グリコサミノグリカン/プロテオグリカン/コラーゲン複合体である。例えば、後述の実施例では、アグリカン(AG)とヒアルロン酸(HA)が凝集して形成されたAG-HA凝集体を中心にコラーゲン分子が規則的に集合し、形成された線維状II型コラーゲンの網目構造内にヒアルロン酸に結合したアグリカンを高密度に保持した複合体(ヒアルロン酸/アグリカン/II型コラーゲン複合体)が形成された。この結合様式は、まさに生体の軟骨組織(図1)を模したものとなっている。
【0030】
また、本発明の複合体が生体組織を模したものであることは、次の点においても説明できる。アグリカンのN末端球状G1ドメインはヒアルロン酸に親和性が高いレクチン様結合サイトを含んでいる。生体軟骨組織内では、上記結合サイトを介し、分子量数百万の枝分れのない一本鎖のヒアルロン酸にアグリカンが高密度で結合して凝集体を形成していることが知られている。生体軟骨組織のヒアルロン酸の長さには幅があり、本発明者らは約500 nm 〜10000 nm(10 μm)のヒアルロン酸を観察している。また、ヒアルロン酸の太さについては約20 〜 50 nmの観察例がある。コラーゲン分子同士が分子間結合によって形成されるコラーゲン線維は、重合度によって0.1‐500 μm長(2‐50 nm径)となり、密な網目構造を形成する。実施例に示すように、本発明の複合体は上記と同様の構造であることが確認されている。
【0031】
本発明の自己組織化グリコサミノグリカン/プロテオグリカン/コラーゲン複合体は、生体組織の物性と極めて類似した物性を有する。例えば、生体軟骨組織は、弾性が0.1〜0.5 GPaであり、摩擦係数:0.01〜0.001とされている。(Robert P Lanza, Robert Langer, Joseph Vacanti: 大野典也、相澤益男監訳 再生医学、株式会社エヌ・ティー・エス:pp203-206.、Woo S.L-Y., Mow V.C., Lai W. M. Biomechanical properties of articular cartilage. In “Handbook of Bioengineering”McGraw-Hill, New York, 1987.)実施例のヒアルロン酸/アグリカン/II型コラーゲン複合体は、最大弾性が0.2 GPa、摩擦係数は0.05〜0.005の再現が可能である。弾性および摩擦係数は、市販の軟質固体用硬さ試験機、摩擦摩耗試験機によって測定可能である。例えば、富士インストルメンツ社製の軟質固体用硬さ試験機、摩擦摩耗試験機を使用して測定可能である。
【0032】
本発明の自己組織化グリコサミノグリカン/プロテオグリカン/コラーゲン複合体の上記物性は、本発明の複合体が生体組織の構造と分子レベルで類似した構造(ナノコンポジット)を有することに起因すると考えられる。生体軟骨組織の耐荷重、耐圧縮性等の重要な力学的特性は、1)組織形態と張力的性質を形成するコラーゲン線維の密な網目構造、2)浸透圧により組織内に水を引き入れコラーゲン網目構造に膨張圧をもたらす高濃度のアグリカン、3)こうした働きを持つアグリカンを軟骨組織内(コラーゲン網目組織内)に保持するためのヒアルロン酸の働き(アグリカンを結合したヒアルロン酸凝集体として)によるとされている。一方、上述のとおり、本発明の方法では、グリコサミノグリカン‐プロテオグリカン凝集体調製工程において、ヒアルロン酸にアグリカンが結合した凝集体が形成される。次に、コラーゲン分子混合工程において、コラーゲン分子は規則的に集合し、会合(分子間結合)したコラーゲン線維を形成し、上記凝集体を高密度に保持したコラーゲン線維による網目構造が構築される。上記網目構造は、耐荷重性等、生体組織と同様の機能を備えるためには重要な構造である。上記網目構造は、電子顕微鏡によって確認できる。このような生体軟骨組織をナノレベルで模した構造体は、本発明の方法によって初めて製造可能となった。例えば、ヒアルロン酸にコラーゲン塩酸溶液を混合すると、ゲル状のポリイオンコンプレックス(イオン結合体)ができることが知られているが、該ポリイオンコンプレックスは軟骨組織類似のナノ構造を有さない。(Taguchi T, Ikoma T, Tanaka J. An improved method to prepare hyaluronic acid and type II collagen composite matrices. J Biomed Mater Res. 61(2):330-6, 2002.)
【0033】
上述のとおり、本発明の自己組織化グリコサミノグリカン/プロテオグリカン/コラーゲン複合体および本発明の製造方法は、生体組織再生用材料の製造に有用である。特に、本発明の自己組織化グリコサミノグリカン/プロテオグリカン/コラーゲン軟骨様複合体は、軟骨欠損または変形治療用材料あるいは軟骨組織再生用材料の製造に高い有用性がある。本発明の複合体は、軟骨基質成分を用い、軟骨組織とほぼ同様の構造をとるように製造されるため、軟骨欠損や変形にいたる疾患(例えば、骨粗鬆症、変形性関節症、関節リウマチおよびリウマチ類縁疾患等の関節炎、など)の治療に極めて有用である。本発明の自己組織化グリコサミノグリカン/プロテオグリカン/コラーゲン軟骨様複合体を用いた軟骨欠損または変形治療用材料あるいは軟骨再生用材料は、公知の方法によって、生体組織に移植可能である。例えば、軟骨欠損または変形が生じた関節を切開し、上記材料を移植する方法や、軟骨が損傷した部位に上記材料を注射器により注入する方法をとることができる。投与量は、欠損した軟骨の種類や範囲に応じて適宜調節することができる。
【0034】
本発明の複合体は、細胞の3次元培養用材料としても有用である。実施例に示すとおり、本発明の複合体を用いて細胞培養を行うと、3次元細胞培養が可能であることが実証された。したがって本発明の複合体は、移植用細胞等、3次元構造の維持が重要な細胞の培養のための材料となりうる。特に、軟骨細胞のように、平面培養では脱分化しやすく長期継代培養が困難な細胞を培養する場合は、本発明の複合体の有用性は極めて高い。
【0035】
本発明の複合体を用いて軟骨細胞を培養すると、軟骨細胞は本発明の複合体を足場として生存する。このような軟骨細胞が移入した本発明の複合体(以下、「本発明の軟骨細胞移入複合体」と称する)は、スムーズな生着が可能であるため、生体適合性の優れた軟骨欠損または変形治療用材料あるいは軟骨再生用材料として極めて有用である。従来技術のコラーゲンゲルによる3次元培養軟骨では、生体内で自己組織化するのに数週間から数ヶ月かかるのに対し、本発明では、in vitroの評価では培養4週において細胞が複合体に移入していることが確認され、in vivoの評価では6週目の剖検によって生着が確認されている。本発明の軟骨細胞移入複合体を生体へ移植する場合は、拒絶反応を防ぐため、軟骨細胞は移植を受ける生体と同じ種類の動物種の細胞が移入した複合体を使用することが好ましい。最も好ましくは、移植を受ける生体(患者)から予め採取した細胞を本発明の複合体で培養し、移植に使用することが好ましい。患者自らの細胞を使用することにより、移植の安全性を格段に高めることができる。
また本発明の軟骨細胞移入複合体は、高い生体適合性のみならず、その調製時間が短い点においても、優れている。従来のコラーゲンによる軟骨細胞3次元培養によって移植可能な材料を提供するには、長期の培養期間によって多量の細胞を培養しなければならなかった。これに対し、本発明の軟骨細胞移入複合体では、本発明の複合体が軟骨細胞にとって生体内に近い細胞環境を提供するため、短時間で少ない細胞数を培養すれば移植可能な状態までに調製することができる。従来技術と具体的に比較すると、必要な細胞数をそろえるのに数週間、その後コラーゲンゲルによる3次元培養を3〜4週間必要とする。一方、本発明の場合は、自己組織化によって本発明の複合体を調製するのに6〜12時間、細胞移入操作に2〜3時間必要とするのに過ぎない。
【0036】
本発明の軟骨細胞移入複合体によって軟骨欠損または変形を治療する場合は、例えば、軟骨欠損または変形のある関節を切開し、本発明の軟骨細胞移入複合体を移植し、縫合すればよい。移植に用いる本発明の軟骨細胞移入複合体の量は、適宜調製することができ、例えば、欠損または変形の大きさに見合った体積でよいと考えることができる
なお本明細書において引用された全ての先行技術文献は、参照として本明細書に組み入れられる。
【実施例】
【0037】
[実施例1]ヒアルロン酸/アグリカン/II型コラーゲン複合体の作製
ヒアルロン酸/アグリカン/II型コラーゲン複合体を自己組織化技術によって形成させることを試み、そのためのヒアルロン酸、アグリカン、およびコラーゲンの至適条件(濃度、pH )を検討した。
【0038】
〔1−1〕材料および方法
滅菌蒸留水(Distilled diluted water、以下「DDW」と称す)を溶媒とし、アグリカン(以下、場合により「AG」と称す)(Sigma社(USA)製)を溶解して各種濃度のアグリカン溶液を調製した(アグリカンの最終濃度0.1, 0.25, 0.33, 0.5または1.0 mg/ml)。また同様にヒアルロン酸(以下、場合により「HA」と称す) (中外製薬株式会社(日本)製、平均分子量:180万)をDDWに溶解して、各種容量%のヒアルロン酸溶液(最終容量% 1,2,3,4または5容量%)を調製した。上記AG溶液とHA溶液とを混合し、AGとHAを溶解した溶液(以下、「AG+HA溶液」と称す)を調製した。II型コラーゲン分子(コラーゲン研究会(日本)製)を各種濃度0.1, 0.25, 0.33または0.5 mg/ml溶液になるようにDDWに溶解した。AG+HA溶液およびコラーゲン溶液は、それぞれpH 4.0, 5.0, 6.0, 7.0, 7.5, 8.0, 8.5, 9.0, 9.5, 10.0, 10.5または11.0となるように調製した。これら各種濃度およびpH条件下のAG+HA溶液とコラーゲン溶液を、37℃で同容量ずつ攪拌しながら同時滴下混和し、経時的に位相差顕微鏡を用いて複合体形成を観察した。実際の生体内で軟骨組織が形成されていく環境を再現するため、上記混和は、光、紫外線等の因子のない培養器を用い、37℃において実施した。各溶液で形成された凝集体または複合体を蒸留水に拡散した後、コロジオン膜を張ったマイクログリッド上に該凝集体または複合体を掬い取り、透過型電子顕微鏡標本を作製した。
【0039】
〔1−2〕結果
AG+HA溶液において、pH 6〜9の範囲内で0.25〜0.5 mg/mlのAGと1〜5 容量%のHAとの組み合わせ条件下でアグリカン-ヒアルロン酸凝集体(以下、「AG-HA凝集体」と称す)が観察された。このAG-HA凝集体は、pH 8〜9範囲内、AG濃度 0.33 mg/mlとHA 3%の混合溶液のときに特に顕著に観察された。pH9.0のAG溶液(濃度 0.33 mg/ml)およびpH9.0のHA 3%溶液を混合した場合の結果を図2Aに示す。また、各種pHのAG溶液とHA溶液を混合した場合のAG-HA凝集体形成状況を表1に示す。濃度については、ヒアルロン酸は1, 2, 3, 4, 5% の各濃度において、またアグリカンについては0.25, 0.33, 0.5ng/mlの各濃度において表1の傾向を示した。
【0040】
【表1】

【0041】
透過型電子顕微鏡像によると、巨視的には線維状構造がみられ、微視的にはHA分子に平均約200個のAGが結合した凝集体構造が観察された(図3)。
なお、平均分子量:90万のヒアルロン酸を用いても、上記とほぼ同様の結果が得られた(結果示さず)。
【0042】
AG+HA溶液 (図2A)とコラーゲン溶液 (図2B)を混合すると、直後からAG-HA凝集体を中心にコラーゲン分子が規則的に集合し、会合(分子間結合)したコラーゲン線維形成がみられ始め、数分から数時間(2〜3時間)を経て線維状コラーゲンの伸長と、太さの増加が観察された(図2C,図4)。従来知られているコラーゲンゲルは、単にコラーゲン分枝がゲル状に存在しているだけで、固体構造組織を有していない。一方、自己組織化ヒアルロン酸/アグリカン/II型コラーゲン複合体はコラーゲンゲルと異なり、形成された線維状コラーゲンの網目構造にヒアルロン酸に結合したアグリカンを高密度で保持したナノコンポジット構造を有しており、軟骨組織に類似している(図6,図7)。
【0043】
0.1‐500 μm長(2‐50 nm径)の線維状コラーゲンを含む自己組織化ヒアルロン酸/アグリカン/II型コラーゲン複合体組織はpH 6 〜 10の範囲内で観察された。AG-HA凝集体とII型コラーゲン溶液の混合による複合体形成とpH との関係について表2に示す。II型コラーゲン溶液は、0.25, 0.33, 0.5ng/mlの各濃度において、表2の傾向を示した。
【0044】
【表2】

【0045】
また、AG (0.33 mg/ml) + HA (3%)溶液に対して、II型コラーゲン分子溶液(0.25 〜 0.5 mg/ml)を等量(同容量、1:1)混合したときに顕著に観察された(図2)。AG (0.33 mg/ml) + HA (3%)溶液とII型コラーゲン分子溶液の混合比と複合体形成との関連を表3に示す。
【0046】
【表3】

【0047】
この自己組織化ヒアルロン酸/アグリカン/II型コラーゲン複合体の透過型電子顕微鏡像において、コラーゲン分子が規則的会合し長い線維を形成しているのが確認された(図5,図7)。
【0048】
上記結果から、自己組織化ヒアルロン酸/アグリカン/II型コラーゲン複合体形成には、pH 6〜9、特にpH 9の条件下でAG (0.33 〜 0.50 mg/ml) + HA (3容量%)溶液とII型コラーゲン分子溶液(0.25 〜 0.5 mg/ml)を37℃で等量(同容量)混合するのが最適であった。複合体形成は両溶液混合直後からみられ、所要時間は2〜3時間で十分であった。
【0049】
〔1−3〕複合体の物性評価
生体軟骨組織は弾性:0.1〜0.5 GPa、摩擦係数:0.01〜0.001とされている。上記実施例で作製した自己組織化ヒアルロン酸/アグリカン/II型コラーゲン複合体の弾性および摩擦係数について、測定した。弾性および摩擦係数の測定は、市販の軟質固体用硬さ試験機、摩擦摩耗試験機(いずれも(株)富士インストルメンツ製)を用いて実施した。上記自己組織化ヒアルロン酸/アグリカン/II型コラーゲン複合体は最大弾性が0.2 GPa、摩擦係数は0.05〜0.005であった。上記自己組織化ヒアルロン酸/アグリカン/II型コラーゲン複合体は、生体軟骨組織の物性と同様の物性を備えていることが確認された。
[実施例2] 自己組織化複合体への細胞混入実験
本発明の複合体は、軟骨組織再生用途に利用する場合を考慮すると、生体親和性が高いことが望ましい。すなわち、関節に投与された場合に個体の軟骨細胞が生着できることが重要である。そこで、本発明の複合体を用いて軟骨細胞を培養し、本発明の複合体と細胞との親和性を検討した。
〔2−1〕 培養軟骨細胞入り複合体の作製
軟骨細胞を培養する細胞培養液に血清が添加されていると、血清中の様々な因子によって、複合体形成・維持や、複合体内の細胞生着などが影響を受け、適切な評価が困難になる可能性がある。そこで、上記影響を除外すべく、未血清培地DMEMに最終濃度10%になるようにニュートリドーマを添加して10%ニュートリドーマ添加DMEM溶液を調製しこの溶液を、ラットまたはヒト軟骨細胞培養用培地として、ラットまたはヒト軟骨細胞を培養した。
上記実施例1記載の方法で作製した自己組織化グリコサミノグリカン/プロテオグリカン/コラーゲン複合体を10%ニュートリドーマ添加DMEM溶液で3回洗浄して、培養液を10%ニュートリドーマ添加DMEM溶液に置換した。これを37℃に設定した培養器で加温し、上記培地中に浮遊させた培養軟骨細胞を5×104個/ml濃度で添加し、軽く震盪を加えたのち、室温3000回転/分で3分遠心した。遠心後、培養上清を捨て、新しい10%ニュートリドーマ添加DMEM溶液を加えて、さらに室温3000回転/分で3分遠心した。再度、培養上清を捨て、新しい10%ニュートリドーマ添加DMEM溶液に置換して37℃、5%CO2 の培養器で培養した。
〔2−2〕 光学顕微鏡視下観察による自己組織化複合体内の軟骨細胞の確認
上記〔2−1〕で調製した軟骨細胞入り自己組織化複合体を、37℃、5%CO2 の条件で培養した。培養継続中の経時的観察は位相差顕微鏡視下におこなった(図8A)。培養1週間目に自己組織化複合体を取り出し、4%パラフォルムアルデヒドで固定後、パラフィン包埋、薄切した標本について、ヘマトキシリン-エオジン染色及びサフラニンO染色を行い、光学顕微鏡下に観察した。
その結果、自己組織化複合体は高密度に維持され、複合体を形成する線維を足場として、軟骨細胞が均一に存在しているのが観察された。軟骨細胞は、樹状突起を伸ばし複合体に生着しており、組織内で生存していることが確認された。
〔2−3〕 電子顕微鏡による軟骨細胞移入自己組織化複合体の観察
上記〔2−1〕の方法で作製した軟骨細胞移入自己組織化複合体を、37℃、5%CO2 の培養器で4週間培養した後、該複合体を取り出し、透過型および走査型電子顕微鏡標本を作製した。透過型電子顕微鏡(TEM)では、複合体中のコラーゲン繊維が断面または断片的にしか撮像されないため、タンニン酸によるブロック染色を行った。
走査型電子顕微鏡像において、高密度な自己組織化複合体構造と、複合体上、または複合体内に存在する軟骨細胞が観察された。軟骨細胞は、樹状突起を伸ばして複合体に生着している像が観察された。透過型電子顕微鏡像において、自己組織化複合体内の軟骨細胞の細胞内組織が観察され、軟骨細胞の組織内で生存していることが示唆された(図8B、図9: 透過型、走査型電子顕微鏡像)。
上記のことから、本発明の自己組織化軟骨様複合体は、その3次元の網目構造により、細胞培養に最適の培養液などの液性成分を保持・含有する機能を有し、軟骨細胞の成長の足場として、軟骨細胞の長期生存に適した3次元環境を再現できることが確認された。
[実施例3] 自己組織化複合体の実験動物膝関節への移植実験
上記実施例1記載の方法により、ラット由来のII型コラーゲン、アグリカンを用いて自己組織化複合体を作製した。12週令の雄SDラット4匹をエーテル麻酔して、消毒の上、無菌操作にて両膝関節を切開して、関節軟骨内外顆(内外側)表面に18ゲージの注射針で穴を穿ち、各膝関節について2箇所の関節軟骨欠損を作製した。これに対して、上記自己組織化複合体を2つの関節軟骨欠損部の一方に移植し(図10)、関節組織を再縫合して6週間飼育した。6週間目に安楽死させ、膝関節軟骨組織を採取して、4%パラフォルムアルデヒドで固定後、パラフィン包埋、薄切した標本について、ヘマトキシリン-エオジン染色及びサフラニンO染色を行い、光学顕微鏡下に観察した。
自己組織化複合体は、6週間目においても複合体作成時と同様の組織としての構築を維持して存在していることが観察された。この結果は、関節軟骨欠損部に対して、短時間で創製できる自己組織化複合体が軟骨再生医療のバイオマテリアルとして有用であることを示すものである。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明によって、自己組織化グリコサミノグリカン/プロテオグリカン/コラーゲン複合体およびその製造方法が提供された。本発明の自己組織化グリコサミノグリカン/プロテオグリカン/コラーゲン複合体は、自己組織化技術によって製造されるため、架橋剤等の化学物質を含まない。また本発明のコラーゲン多糖類複合体の構造は、生体の組織の構造とナノレベルで類似する。そのため、構造に基づく物性に関しても、本発明の自己組織化グリコサミノグリカン/プロテオグリカン/コラーゲン複合体は生体組織と類似する。本発明の自己組織化グリコサミノグリカン/プロテオグリカン/コラーゲン複合体は、組織再生用バイオマテリアルとして、極めて高い安全性と機能性を有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(a)および(b)の工程を含む、自己組織化グリコサミノグリカン/プロテオグリカン/コラーゲン複合体の製造方法。
(a)グリコサミノグリカンとプロテオグリカンとを混合し、グリコサミノグリカン‐プロテオグリカン凝集体を調製する工程
(b)上記グリコサミノグリカン‐プロテオグリカン凝集体にコラーゲンを混合する工程
【請求項2】
下記(a)および(b)の工程を含む、軟骨様複合体の製造方法。
(a)グリコサミノグリカンとプロテオグリカンとを混合し、グリコサミノグリカン‐プロテオグリカン凝集体を調製する工程
(b)上記グリコサミノグリカン‐プロテオグリカン凝集体にコラーゲンを混合し、軟骨様の自己組織化グリコサミノグリカン/プロテオグリカン/コラーゲン複合体を製造する工程
【請求項3】
下記(a)および(b)の工程を含む、軟骨基質様複合体の製造方法。
(a)グリコサミノグリカンとプロテオグリカンとを混合し、グリコサミノグリカン‐プロテオグリカン凝集体を調製する工程
(b)上記グリコサミノグリカン‐プロテオグリカン凝集体にコラーゲンを混合し、軟骨基質様の自己組織化グリコサミノグリカン/プロテオグリカン/コラーゲン複合体を製造する工程
【請求項4】
前記グリコサミノグリカンがヒアルロン酸である、請求項1から3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
前記プロテオグリカンがアグリカンである、請求項1から4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
前記コラーゲンがII型コラーゲンである、請求項1から5のいずれかに記載の製造方法。
【請求項7】
前記(a)工程において、ヒアルロン酸がpH5〜pH10のヒアルロン酸溶液である、請求項4から6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記(a)工程において、前記アグリカンがpH5〜pH10のアグリカン溶液である、請求項5から7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記(b)工程において、前記コラーゲンがH5〜pH10の溶液である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記(a)工程において、前記ヒアルロン酸が20容量%以下の濃度のヒアルロン酸溶液である、請求項4から6のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記(a)工程において、前記アグリカンが0.1〜1.0mg/mlの濃度のアグリカン溶液である、請求項5から7のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記(b)工程において、前記コラーゲンが0.1〜5.0mg/mlの濃度のコラーゲン溶液である、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
請求項1、4から12のいずれかの方法によって製造された自己組織化グリコサミノグリカン/プロテオグリカン/コラーゲン複合体。
【請求項14】
ヒアルロン酸にアグリカンが結合した凝集体にII型コラーゲン線維が連結した網目状構造を有する、ヒアルロン酸とアグリカンとII型コラーゲンを含む複合体。
【請求項15】
請求項2、4から12のいずれかの方法によって製造された軟骨様複合体。
【請求項16】
請求項3から12のいずれかの方法によって製造された軟骨基質様複合体。
【請求項17】
請求項13から16のいずれかに記載の複合体を含む、軟骨破壊または軟骨変性治療あるいは軟骨再生用材料。
【請求項18】
下記(a)から(c)の工程を含む、軟骨細胞を含有する、軟骨破壊または軟骨変性治療用材料の製造方法。
(a)グリコサミノグリカンとプロテオグリカンとを混合し、グリコサミノグリカン‐プロテオグリカン凝集体を調製する工程
(b)上記グリコサミノグリカン‐プロテオグリカン凝集体にコラーゲンを混合し、自己組織化グリコサミノグリカン/プロテオグリカン/コラーゲン複合体を製造する工程
(c)上記自己組織化グリコサミノグリカン/プロテオグリカン/コラーゲン複合体を用いて軟骨細胞を培養する工程
【請求項19】
上記軟骨細胞が、軟骨破壊または軟骨変性治療を受ける患者由来の軟骨細胞である、請求項18記載の製造方法。
【請求項20】
請求項18または19に記載の方法によって製造された、軟骨細胞を含有する、軟骨破壊または軟骨変性治療用材料。
【請求項21】
請求項1に記載の方法で複合体を調製する工程、および該複合体を用いて細胞を培養する工程を含む、細胞の3次元培養方法。
【請求項22】
細胞が軟骨細胞である、請求項21の3次元培養方法。
【請求項23】
請求項17または20記載の材料を軟骨破壊または軟骨変性が起きた関節に投与する工程を含む、軟骨破壊または軟骨変性を伴う疾患の治療方法。
【請求項24】
軟骨破壊または軟骨変性治療用材料製造のための、請求項13または請求項14に記載の複合体の使用。
【請求項25】
請求項13または請求項14に記載の複合体を含む、3次元細胞培養用材料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−183332(P2012−183332A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−118647(P2012−118647)
【出願日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【分割の表示】特願2007−535519(P2007−535519)の分割
【原出願日】平成18年9月13日(2006.9.13)
【出願人】(596165589)学校法人 聖マリアンナ医科大学 (53)
【Fターム(参考)】