説明

再生弾性ローラの製造方法

【課題】電子写真プロセスを利用する画像形成装置の各種弾性ローラとして再利用可能な再生弾性ローラの製造方法を提供する。
【解決手段】電子写真用の弾性ローラの表面に固着している現像剤由来の固着物を除去する工程を有する再生弾性ローラの製造方法であって、
該工程は、該固着物が固着している弾性層に対して粉体を衝突させて該固着物を除去するブラスト工程を含み、
該粉体は、ウレタンゴム粒子と、該ウレタンゴム粒子の周面に付着させられているシリカ、アルミナおよびチタニアからなる群から選ばれる少なくとも1つの無機粒子とを含み、
該ブラスト工程は、該粉体の該固着物への衝突時の衝撃力により該無機粒子を該固着物に埋め込む工程を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、再生弾性ローラの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真装置等の電子写真方式を利用した画像形成装置には、現像ローラ、帯電ローラ、転写ローラ、定着ローラ、クリーニングローラ等の表面層として弾性層を備えた弾性ローラ(以降、「弾性ローラ」と称す。)が用いられている。このような弾性ローラの外周面には、使用に伴い、現像剤を構成しているトナーや外添剤等が付着し、徐々に堆積していく。画像形成装置内において、これら弾性ローラの表面は、種々のクリーニング手段によってクリーニングされていることが通常である。しかし、長期の使用により、当該クリーニング手段によっては除去できなかった上記トナーや外添剤等の現像剤の成分が、弾性ローラの表面に固着してしまう場合がある。特に、現像ローラは、表面にトナーが押し潰されて固着される固着物(以降、「現像剤由来の固着物」或いは単に「固着物」という。)が形成される傾向が顕著である。
【0003】
しかし、環境負荷の軽減の観点から、固着物が表面に形成された弾性ローラを再び高品位な電子写真画像の形成に供することができるように再生するための技術開発の必要性が高まっている。特に、近年、電子写真装置が高画質化するに従い、極限まで固着物を除去することが求められるようになってきている。特に、画像に大きな影響を与える現像ローラを再生する場合にその傾向が強い。
【0004】
特許文献1は、現像剤担持体表面に対してジルコニアやガラスビーズをブラスト処理することにより、表面に固着した現像剤を除去する技術を開示している。また、特許文献2は樹脂粒子表面に研磨粒子を埋め込ませて固定した複合粒子をブラストに使用する方法を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−50506号公報
【特許文献2】特開2005−68260号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、本発明者らの検討によれば、上記特許文献1に係る方法は、弾性ローラの表面を傷つけてしまう場合があった。一方、上記特許文献2に係る方法は、現像ローラ表面の固着物を短時間で十分に除去することが困難であった。
そこで、本発明は、電子写真プロセスを利用する画像形成装置の各種弾性ローラとして再利用可能な再生弾性ローラの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、電子写真用の弾性ローラの表面に固着している現像剤由来の固着物を除去する工程を有する再生弾性ローラの製造方法であって、該工程は、該固着物が固着している弾性層に対して粉体を衝突させて該固着物を除去するブラスト工程を含み、
該粉体は、ウレタンゴム粒子と、該ウレタンゴム粒子の周面に付着させられているシリカ、アルミナおよびチタニアからなる群から選ばれる少なくとも1つの無機粒子とを含み、
該ブラスト工程は、該粉体の該固着物への衝突時の衝撃力により該無機粒子を該固着物に埋め込む工程を含む再生弾性ローラの製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、弾性ローラへの物理的なダメージを抑えつつ、表面の固着物を除去し、電子写真プロセスを利用する画像形成装置の各種弾性ローラとして再利用可能な再生弾性ローラが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明にかかるブラスト工程に用いる粉体の一例を示す概略断面図である。
【図2】無機粒子が埋め込まれたウレタンゴム粒子の一例を示す概略断面図である。
【図3】本発明の再生弾性ローラの製造方法によって再生される弾性ローラの一例を示す概略断面図である。(a)軸方向の断面図(b)軸に直交する方向の断面図
【図4】本発明の再生弾性ローラの製造方法を適用した再生弾性ローラ製造装置の一例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の再生弾性ローラの製造方法は、軸芯体、及び表面層としての弾性層を有する弾性ローラの表面に固着している現像剤由来の固着物を除去する工程を有する再生弾性ローラの製造方法である。該工程は、該固着物が固着している弾性層に対して粉体を衝突させて該固着物を除去するブラスト工程を含む。
そして、該粉体は、ウレタンゴム粒子と、該ウレタンゴム粒子の周面に付着させられているシリカ、アルミナおよびチタニアからなる群から選ばれる少なくとも1つの無機粒子とを含む。
そして、該ブラスト工程は、該粉体の該固着物への衝突時の衝撃力により該無機粒子を該固着物に埋め込む工程を含む。
【0011】
本発明者らは、電子写真プロセスを反復して表面に現像剤由来の固着物が付着した弾性ローラに、上記の粉体を用いてブラスト処理することにより、弾性ローラの表面への傷付きを抑えつつ、固着物を効率的に除去できることを見出した。
弾性ローラ表面に形成された現像剤由来の固着物の多くは、電子写真感光体等に圧接されて層状の固着物となり、弾性ローラの表面に強固に密着ししている。また、固着物は弾性ローラの微小な凹凸の凹み部分に多く存在している。その為、樹脂粒子のような柔軟な粒子のみを衝突させただけでは、固着物を十分に除去することが困難である。また、無機粒子のような硬い粒子を衝突させた場合、弾性ローラ表面に傷を生じさせてしまう場合がある。
【0012】
本発明に係る粉体を固着物に衝突させた場合、粉体が固着物に衝突する際の衝撃力により、ウレタンゴム粒子の周面に付着している無機粒子の一部がウレタンゴム粒子から脱離し、固着物に埋め込まれる。その結果、固着物が脆化していく。更に、脆化した固着物は粉体の衝突エネルギーによって断片化されていく。断片化されることにより新たに生じた固着物の断面には、更に無機粒子が埋め込まれていき、固着物の脆化がより一層進行する。その結果、固着物が、弾性ローラの表面から脱落していき、弾性ローラの表面の固着物が除去されることとなる。
本発明に係る粉体は、中心部分がウレタンゴム粒子からなり、弾性ローラの表面に弾性的に衝突する。その為、粉体の衝突の際にも、弾性ローラの表面に傷が生じにくい。
【0013】
本発明において、固着物へ無機粒子が埋め込まれたことは、以下(1)または(2)の方法により判断できる。
(1)走査型電子顕微鏡(SEM)により弾性ローラの表面の固着物を、20000倍の倍率により観察したときに、ブラスト工程を経る前にはその存在が認められなかった無機粒子が、ブラスト工程後には認められたこと。
(2)エネルギー分散型X線分析装置(EDX)により、ブラスト工程の前後で、無機粒子由来のSi、AlまたはTiのピークが増加していたこと。
【0014】
また、本発明における「脆化」は、以下の(A)乃至(B)の手順を経ることにより判断できる。
(A)ブラスト工程を経る前後の弾性ローラ表面の固着物のサンプルの複数個を用意する。
(B)各サンプルに対して、本発明に係る粉体同一条件でブラスト処理を行い固着物が除去できるまでの時間を比較する。その際、ブラストにより衝突させる粒子を、無機粒子が付着していない樹脂粒子にすることにより、本発明の効果をより明確に判断できる。
【0015】
上記のような検討により、本発明における粉体を用いたブラスト工程によって、弾性ローラの表面の固着物に無機粒子を埋め込ませ、固着物を脆化させることは、固着物を容易に除去させ得るために、極めて重要な意義を有することが分かった。
【0016】
<ブラスト用粉体>
本発明におけるブラスト工程に用いられるブラスト用粉体としては、ウレタンゴム粒子と、該ウレタンゴム粒子の周面に付着させられているシリカ、アルミナおよびチタニアからなる群から選ばれる少なくとも1つの無機粒子とを含むものである。
ここで本発明における「付着」とは、図1に示されるように無機粒子11がウレタンゴム粒子12の周面に付着した状態を言い、図2に示されるように無機粒子11がウレタンゴム粒子12中に埋め込まれているものは含まない。なお、これらの状態は、無機粒子が周面に付着させられたウレタンゴム粒子をミクロトームでカットし、走査型電子顕微鏡(SEM)により該粒子の断面を観察することにより判別できる。
【0017】
<ウレタンゴム粒子>
ウレタンゴム粒子は硬度を低くした場合に、表面に粘着性(タック性)を持ち、無機粒子を多量に付着させることが可能である。無機粒子を適量付着させることで、衝突の際、固着物に無機粒子を効果的に埋め込ませることができる。
ウレタンゴム粒子は、公知の懸濁重合法や乳化重合法により得ることができる。ウレタンゴム粒子は架橋ウレタンゴム粒子であることが好ましい。架橋ウレタンゴム粒子とすることにより、弾性ローラとの衝突の際、弾性的な衝突になり、弾性ローラを傷つけたり、ウレタンゴム粒子が弾性ローラに固着しにくくなる。また、衝突により、無機粒子がウレタンゴム粒子中に埋め込まれることを防止できる。
【0018】
<無機粒子の付着>
ウレタンゴム粒子の周面に付着させる無機粒子は、シリカ、アルミナおよびチタニアからなる群から選ばれる少なくとも1つの無機粒子である。これらの、無機粒子は現像剤の外添剤としても使用されるものであり、弾性ローラに付着しても、画像に影響を与えにくい。
前記無機粒子をウレタンゴム粒子の周面に付着させる方法としては公知の外添方法を用いることができる。外添に用いられる装置としては、従来の混合装置、例えばダブルコン・ミキサー、V型ミキサー、ドラム型ミキサー、スーパーミキサー、ヘンシェルミキサー、ナウターミキサー等を用いることができる。
【0019】
また、ウレタンゴム粒子の周面に付着させられている無機粒子の量は、ウレタンゴム粒子100質量部に対して2.0質量部以上5.0質量部以下であることが好ましい。2.0質量部以上であれば、現像剤由来の固着物に効率的に無機粒子を埋め込ませ、脆化させることができる。また、5.0質量部以下であれば、ブラスト時に無機粒子がウレタン粒子から遊離し、無機粒子が弾性ローラを傷つけたり、弾性ローラ表面に付着し汚染したりすることを防止できる。
【0020】
なお、上記の付着量は熱重量測定装置、例えば、TA
Instruments社製熱分析装置、TGA2950を用いて測定することができる。測定方法は、窒素雰囲気下において昇温速度25℃/分で常温から900℃まで加熱し、次に50℃/分で300℃に冷却する。100℃から900℃までの間の減量質量%をウレタンゴム粒子とし、残存質量%を付着した無機粒子の含有量と規定する。
また、無機粒子は必要に応じて疎水化や親水化などの表面処理を施してもかまわない。特に、シリカは表面処理などがしやすく、ウレタンゴム粒子との親和性を変化させることにより付着性をコントロールしやすい点から好適に用いることができる。
【0021】
本発明において、ウレタンゴム粒子は、平均粒径が1μm以上30μm以下のものを用いることが好ましい。平均粒径を30μm以下とすることで弾性ローラの微小な凹凸の凹み部分に固着した固着物を効果的に除去できる。また、1μm以上とすることで、空気の抵抗による運動エネルギー低減の影響を受けにくくなり、効果的に固着物に衝突させることができる。
長期使用後の現像剤由来の固着物は厚さサブミクロン〜数μmで固着している。その為、本発明において、シリカ、アルミナおよびチタニアからなる群から選ばれる無機粒子は、一次平均粒径が10nm以上500nm以下のものを用いることが好ましい。この範囲とすることで、固着物に埋め込ませて効果的に脆化させることができる。
【0022】
<弾性ローラ>
本発明の再生弾性ローラの製造方法における再生の対象となる弾性ローラは、電子写真プロセスを利用した画像形成装置に備えられている各種弾性ローラである。具体的には、現像ローラ、帯電ローラ、転写ローラ、定着ローラ、クリーニングローラ等が挙げられる。かかる弾性ローラは、軸芯体と表面層としての弾性層を軸芯体の周囲に有する。
【0023】
弾性ローラとしては、具体的には、図3(a)及び図3(b)に示すものを一例として挙げることができる。図3(a)は弾性ローラの軸方向の断面図、図3(b)は弾性ローラの軸に直交する方向の断面図である。図3(a)及び図3(b)に示すように、弾性ローラ20は、軸芯体21上に順次弾性層22、表面層23を有する。弾性層、表面層は単層構造のみならず、多層構造を有するものであってもよい。
【0024】
<ブラスト工程>
本発明に用いられるブラスト装置としては従来知られているブラスト装置を使用することが出来る。ブラスト装置の種類としてはエアーブラスト方式、遠心ブラスト方式等の方法が知られている。これらの中でも、細いノズルから粉体を噴出できるエアーブラスト方式が好ましい。
エアーブラスト方式としては直圧式、吸引式等が知られている。図4は本発明の弾性ローラの直圧式のブラスト装置を用いたブラスト工程の一例を示した図である。図4においてコンプレッサー31により加圧することにより加圧タンク32中の粉体を噴射ノズル33から噴出させる。一方、弾性ローラ20は、回転モータ(図示せず)により矢印方向に回転するように支持されている。加速された粉体は回転している弾性ローラ20表面に衝突し、弾性ローラ20表面に固着した現像剤由来の固着物を除去する。さらに、噴出ノズル33は矢印の方向に上下に往復移動し、弾性ローラ20全域に渡ってブラスト処理を行う。
【0025】
本発明において、前記無機粒子を効率的に現像剤由来の固着物に埋め込ませる為には粉体を弾性ローラ表面に対して垂直に放出することが好ましい。またその際、粉体を放出するノズルの内径は、弾性ローラの外径の0.05倍以上0.20倍以下であることが好ましい。ノズルの内径が弾性ローラの外径の0.05倍以上であれば、粉体の衝突位置が偏ることによって発生しやすくなるブラストムラを生じさせることがなく、均一に固着物を除去できる。また、0.20倍以下であれば、弾性ローラの曲率の影響を受けずに、弾性ローラ表面に垂直に粉体を照射することができ、弾性ローラ表面を傷つけることなく、固着物に対して効率的に該無機粒子を埋め込ませ、脆化させることができる。
ブラスト用のノズルは、通常、断面は円形であるが、楕円形などの変形したタイプも使用可能である。
【0026】
本発明において、ブラストの吐出圧の目安としては、1×104Pa以上5×105Pa以下、特には、1×104Pa以上5×104Pa以下が好ましい。吐出圧を上記の範囲とすることで、弾性ローラ表面への傷付きを抑えつつ、固着物に効率的に該無機粒子を埋め込ませ、脆化させることができる。
【0027】
本発明においては、弾性ローラの中心を軸として等速回転させてブラスト処理させることが好ましい。弾性ローラの回転数は弾性ローラの外径により周速度が変化するため、弾性ローラにより任意に設定し得るが、均一な処理を行うための目安としては、10rpm以上50rpm以下が好ましい。
さらに本発明においては、噴出ノズルの移動は、図4に記載される如く、弾性ローラの中心軸方向に移動させて処理することが好ましい。ブラスト装置において、噴出ノズルの数は1本でも、2〜4本程度の複数本であってもかまわない。
【0028】
さらに、ブラスト工程時に、弾性ローラ表面の温度を70℃以上120℃以下にすることが好ましい。このような温度範囲に加温しておくことで、固着物が適度に軟化し、無機粒子が埋め込まれやすくなるからである。
更には、ブラスト工程時に、弾性ローラ表面の温度を二段階に変化させることが好ましい。具体的には、第一段階目に弾性ローラ表面の温度を70℃以上120℃以下にしてブラストを行う。これにより、より多くの無機粒子を固着物に埋め込ませる。第二段階目に弾性ローラの表面温度を常温にしてブラストを行う。これにより、無機粒子が埋め込まれた固着物のより一層の脆化を促し、固着物をより容易に、より確実に除去することができる。
【0029】
さらに、本発明においては、ブラスト工程の前処理として、該弾性ローラにシリカ、アルミナおよびチタニアからなる群から選ばれる少なくとも1つの無機粒子を塗す工程を有することが好ましい。前記前処理を行うことにより、固着物の脆化を促進することが可能となる。
本発明において、現像剤由来の固着物の除去作業の後、弾性ローラ表面上の前記粉体を除去する工程を付加することが好ましい。前記粉体を除去する方法としては、圧縮エアーを噴出させて除去する方法が可能である。
【実施例】
【0030】
以下に、本発明の再生弾性ローラの製造方法を具体的に詳細に説明する。以下、特に明記しない限り、「部」は「質量部」を示す。
【0031】
[粉体の作成]
(ウレタンゴム粒子の作成)
あらかじめ窒素ガスで充分に置換し、乾燥させた2Lオートクレーブを用意した。該オートクレーブに3官能のポリカーボネートポリオール「プラクセル312」(商品名、ダイセル化学工業社製 水酸基価132mgKOH/g)900gとへキサメチレンジイソシアネート(日本ポリウレタン工業社製)600gを仕込んだ。次に、窒素ガスにて上方置換させた後密閉し、120℃で20時間撹拌して反応させた。その後減圧下で未反応のヘキサメチレンジイソシアネートを除去し、トルエンを加えて不揮発分90質量%の合成物(1)を得た。
次に、2L撹拌機付きセパラブルフラスコに水900gを仕込み、この中に「メトローズ90SH−100」(信越化学工業社製)32gを溶解して分散媒を調製した。そして、この分散媒を600rpm撹拌下において、合成物(1)261gをトルエン112gで希釈した溶液を加え、懸濁液を調製した。そのまま撹拌下において懸濁液を60℃に昇温させ、1.5時間反応させた。その後室温まで冷却し、固液分離し、水で充分洗浄した後70℃、20時間乾燥して、平均粒子径5.1μmのウレタンゴム粒子の母体を得た。
【0032】
(粉体1の作成例)
ウレタンゴム粒子の母体100質量部に対して、シリカ微粉体(RY50、日本アエロジル社製、平均一次粒径30nm)3.5質量部をヘンシェルミキサー(三井鉱山社製)で5分間乾式混合した。これをウレタンゴム粒子の周面に付着させ、本発明のブラスト工程で用いる粉体1を作成した。
【0033】
(粉体2の作成例)
シリカ微粉体(RY50、日本アエロジル社製、平均一次粒径30nm)を1.0質量部に変更した以外は粉体1の作成例と同様にして粉体2を作成した。
(粉体3の作成例)
シリカ微粉体(RY50、日本アエロジル社製、平均一次粒径30nm)を2.0質量部に変更した以外は粉体1の作成例と同様にして粉体3を作成した。
(粉体4の作成例)
シリカ微粉体(RY50、日本アエロジル社製、平均一次粒径30nm)を5.0質量部に変更した以外は粉体1の作成例と同様にして粉体4を作成した。
(粉体5の作成例)
シリカ微粉体(RY50、日本アエロジル社製、平均一次粒径30nm)を6.0質量部に変更した以外は粉体1の作成例と同様にして粉体5を作成した。
(粉体6の作成例)
無機粒子をチタニア(JR、テイカ社製、平均粒径270nm)3.5質量部に変更した以外は粉体1の作成例と同様にして粉体6を作成した。
(粉体7の作成例)
無機粒子をチタニア(JR、テイカ社製、平均粒径270nm)1.0質量部に変更した以外は粉体1の作成例と同様にして粉体7を作成した。
(粉体8の作成例)
無機粒子をチタニア(JR、テイカ社製、平均粒径270nm)2.0質量部に変更した以外は粉体1の作成例と同様にして粉体8を作成した。
(粉体9の作成例)
無機粒子をチタニア(JR、テイカ社製、平均粒径270nm)5.0質量部に変更した以外は粉体1の作成例と同様にして粉体9を作成した。
(粉体10の作成例)
無機粒子をアルミナ(TM5D、大明化学社製、平均粒径200nm)3.5質量部に変更した以外は粉体1の作成例と同様にして粉体10を作成した。
(粉体11の作成例)
無機粒子をアルミナ(TM5D、大明化学社製、平均粒径200nm)1.0質量部に変更した以外は粉体1の作成例と同様にして粉体11を作成した。
(粉体12の作成例)
ポリエチレン粒子(ミペロンXM220、三井化学社製)の母体100質量部に対して、シリカ微粉体(RY50、日本アエロジル社製)3.5質量部(数平均一次粒子径:20nm)を混合した。ハイブリダイゼーションシステム(NHS−0型、奈良機械製作所)を使用して回転数10000rpmで7分間撹拌した。その結果、ポリエチレン粒子の表面にシリカが埋め込まれた粉体12を作成できた。
【0034】
[弾性ローラの調製]
軸芯体として、SUS304製の直径6mm芯金の外周面にプライマー(商品名:DY35−051;東レダウコーニングシリコーン社製)を塗布、焼き付けしたものを用いた。
弾性層の材料として、以下の要領で液状シリコーンゴムを準備した。先ず、表1に記載の材料を混合して液状シリコーンゴムのベース材料を準備した。
【0035】
【表1】

【0036】
上記ベース材料を2等分し、一方に、硬化触媒として白金化合物を0.1質量部配合した。他方には、オルガノハイドロジェンポリシロキサン3質量部を配合した。これらを質量比1:1で混合し、液状シリコーンゴムを調製した。
内径12mmの円筒型金型内の中心部に上記軸芯体を配置し、円筒型金型内に注入口から上記液状シリコーンゴムを注入し、温度120℃で5分間加熱硬化させ、冷却後脱型した。さらに温度200℃で4時間加熱して硬化反応を完了させた。そして、厚さ約3mmの弾性層を軸芯体の外周面上に設けた。
次に、表2に記載の材料をメチルエチルケトン中で段階的に投入した。
【0037】
【表2】

【0038】
これを窒素雰囲気下で、温度80℃にて6時間反応させて、分子量Mw=48000、水酸基価5.6、分子量分散度Mw/Mn=2.9、Mz/Mw=2.5の2官能のポリウレタンポリオールプレポリマーを得た。
このポリウレタンポリオールプレポリマー100質量部とイソシアネート(商品名:タケネートB830;TMP変性TDI、f(平均官能基数)=3相当;三井武田ケミカル株式会社製)7.2質量部とを混合し、NCO当量を1.2とした。更に、カーボンブラック(#1000;pH3.0;三菱化学社製)20質量部を添加して原料混合液を調製した。
【0039】
上記原料混合液に、メチルエチルケトンを加え、固形分25質量%に調整した。更に、ウレタン樹脂粒子(商品名:C400透明;直径14μm;根上工業株式会社製)を60質量部加え、均一分散、混合したものを表面層形成用の塗工液とした。
この塗工液を用いて、ディッピング法により上記軸芯体の外周面上に設けた弾性層上に表面層を塗工成形した。具体的には、内径32mm、長さ300mmのシリンダーの下方から、液温を23℃に保った塗工液を毎分250ml注入した。そしてシリンダーの上端から溢れ出た液を再びシリンダーの下方に循環させた。始めに、シリンダーに侵入速度100mm/sで、軸芯体の外周面に弾性層を浸漬させ、10秒間停止させた。その後に、初速300mm/s、終速200mm/sの条件で引上げて、60分間、自然乾燥させた。次いで、140℃にて60分間加熱処理し、硬化を行い、弾性層の外周面上に、厚さ15μm、表面粗さRaが2.0μmの表面層を形成した。得られた弾性ローラの外径は12mm、アスカーC硬度は49度であった。
【0040】
[現像剤由来の固着物の形成]
弾性ローラを現像ローラとして、電子写真画像形成装置(商品名:Color
Laser JetCP3525x、ヒューレット・パッカード社製)用の電子写真プロセスカートリッジに組み込んだ。これを温度5℃、湿度10%RHの環境に24時間放置した。その後、この電子写真プロセスカートリッジを、電子写真画像形成装置の本体に装填し、同環境において印字率が1%の画像を、20000枚出力し、現像ローラ表面に現像剤由来の固着層を固着させた。
【0041】
次に、この電子写真プロセスカートリッジから現像ローラを取り外して、現像ローラの表面に空気を吹き付けて、現像ローラ表面の現像剤成分を吹き飛ばした。その後、走査型電子顕微鏡を用いて20000倍の倍率で現像ローラ表面を観察したところ、ローラ表面には現像剤由来の固着物が多く固着していることが確認された。
【0042】
[実施例1]
次に、予めシリカ微粉体(RY50、日本アエロジル社製)を散布した平面上を現像剤由来の固着層を形成した弾性ローラを転がすことによりシリカ微粉体(RY50、日本アエロジル社製)を現像ローラ上に塗し前処理を行った。
次に、図4に示す再生弾性ローラ製造装置に、この現像ローラを設置し、粉体1を用いてブラストを行った。ブラスト工程の条件は現像ローラ温度85℃で、ブラスト圧は5×104Pa、ノズル内径は1.2mm、弾性ローラを30rpmで回転駆動し、再生弾性ローラを製造した。
また、同条件で走査型電子顕微鏡観察用の再生弾性ローラの処理を行った。処理の途中で走査型電子顕微鏡を用いて20000倍の倍率で現像ローラ表面を観察したところ、現像剤由来の固着物の表面に無機粒子が埋め込まれていることが観察された。また、エネルギー分散型X線分析(EDX)を行ったところ、Si由来のスペクトルが増加していることがわかった。これらの結果より、ブラスト工程によって、ブラスト工程で用いられている粉体由来の無機物が現像剤由来の固着物に埋め込まれたことが分かった。
【0043】
[画像形成及び画像評価]
この再生弾性ローラについて、以下のようにして画像形成に供して再生弾性ローラとしての品質の評価を行った。
【0044】
[かぶり評価]
電子写真画像形成装置(商品名:Color Laser JetCP3525x:Hewlett−Packard社製)用の電子写真プロセスカートリッジの現像ローラとして、得られた再生弾性ローラを組み込んだ。この電子写真プロセスカートリッジを、温度15℃、湿度10%RHの環境に24時間放置した。その後、この電子写真プロセスカートリッジを、電子写真画像形成装置本体に装填した。温度15℃、湿度10%RHの環境において、10枚/分の速度で白ベタ画像出力中にプリンターを停止し、以下の方法によりかぶり評価を行った。まず始めに、感光体上に付着したトナーを透明のテープ(商品名:「ポリエステルテープNo.550」、ニチバン(株)社製)で剥がしとった。次に、このテープを白色の紙(商品名:「Business Multipurpose 4200」、XEROX社製)に貼り付けて、反射濃度計(商品名:「TC−6DS/A」、東京電色社製)にて反射濃度を測定した。その際、フィルターにグリーンフィルターを使用した。透明テープのみを白色の紙に貼り付けて基準とし、基準に対する反射率の低下量(%)をかぶり値(%)とした。また、かぶり値を表3に記載の基準により評価した。
【0045】
【表3】

【0046】
なお、Eランクは、画像を形成した場合、目視でかぶりが確認できるレベルであった。表面に固着物が多く形成された現像ローラを用いてベタ白画像の形成を行った際には、帯電量が不足する現像剤が感光体上に移動する。更に、この現像剤が転写紙上へ転写されることによってかぶりを生じる。また、ブラスト工程によって、現像ローラ表面が傷つくとその部分の帯電量も不足し、かぶりを生じる。従って、かぶり値を再生処理による表面の固着物の除去の程度の指標として用いることができる。
【0047】
[実施例2〜5]
粉体1を表4に示される粉体に変更した以外は実施例1と同様に再生弾性ローラの作成および評価を行った。
[実施例6、7]
前処理の無機粒子を表4に示される無機粒子に変更し、粉体1を表4に示される粉体に変更した以外は実施例1と同様に再生弾性ローラの作成および評価を行った。
[実施例8]
前処理の無機粒子を表4に示される無機粒子に変更した以外は実施例1と同様に再生弾性ローラの作成および評価を行った。
[実施例9]
前処理をなくした以外は実施例1と同様に再生弾性ローラの作成および評価を行った。
[実施例10〜16]
粉体1を表4に示される粉体に変更した以外は実施例9と同様に再生弾性ローラの作成および評価を行った。
【0048】
[比較例1]
粉体1を表4に示される粉体に変更した以外は実施例9と同様に再生弾性ローラの作成および評価を行った。
[比較例2]
粉体1を粉体の作成例にて製造したウレタンゴム粒子の母体に変更した以外は実施例9と同様に再生弾性ローラの作成および評価を行った。
[比較例3]
粉体1を粉体の作成例にて用いたシリカ微粉体(RY50、日本アエロジル社製)に変更した以外は実施例9と同様に再生弾性ローラの作成および評価を行った。
[比較例4]
粉体1をガラスビーズ(直径50μm)に変更した以外は実施例9と同様に再生弾性ローラの作成および評価を行った。
上記実施例1〜16及び比較例1〜4の概要、および評価結果を下記表4に示す。
【0049】
【表4】

【符号の説明】
【0050】
10‥‥粉体
11‥‥無機粒子
12‥‥ウレタンゴム粒子
20‥‥弾性ローラ
21‥‥軸芯体
22‥‥弾性層
23‥‥表面層
30‥‥弾性ローラ再生装置
31‥‥コンプレッサー
32‥‥加圧タンク
33‥‥噴射ノズル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子写真用の弾性ローラの表面に固着している現像剤由来の固着物を除去する工程を有する再生弾性ローラの製造方法であって、
該工程は、該固着物が固着している弾性層に対して粉体を衝突させて該固着物を除去するブラスト工程を含み、
該粉体は、ウレタンゴム粒子と、該ウレタンゴム粒子の周面に付着させられているシリカ、アルミナおよびチタニアからなる群から選ばれる少なくとも1つの無機粒子とを含み、
該ブラスト工程は、該粉体の該固着物への衝突時の衝撃力により該無機粒子を該固着物に埋め込む工程を含むことを特徴とする再生弾性ローラの製造方法。
【請求項2】
前記ブラスト工程の前処理として、前記弾性ローラにシリカ、アルミナおよびチタニアからなる群から選ばれる少なくとも1つの無機粒子を塗す工程を有する請求項1に記載の再生弾性ローラの製造方法。
【請求項3】
前記ウレタンゴム粒子の周面に付着させられている無機粒子が前記ウレタンゴム粒子100質量部に対して2.0質量部以上5.0質量部以下である請求項1又は2に記載の再生弾性ローラの製造方法。
【請求項4】
前記ウレタンゴム粒子の周面に付着させられている無機粒子がシリカである請求項1乃至3の何れか一項に記載の再生弾性ローラの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−252159(P2012−252159A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−124601(P2011−124601)
【出願日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】