説明

再生発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法

【課題】廃発泡スチロール製魚箱等の異物の多い回収発泡スチロールから再生発泡性スチレン系樹脂粒子を製造できる再生発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法を提供する。
【解決手段】回収ポリスチレンをスチレン系モノマーに溶解し、溶解液を濾過し、濾過した溶解液を懸濁重合し、発泡剤を含浸する再生発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法であって、溶解液の濾過を、直径50μm以下の孔を有するフィルターを用いて実施するか、又は溶解液の濾過を、直径50μmを超える孔を有するフィルターを用いて実施し、さらに濾液を沈降分離する再生発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用済み発泡スチレン系樹脂(発泡スチロール)から再生される再生発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法に関し、特に魚市場等で回収される発泡スチロール製魚箱を、再度、発泡スチロールとして再使用することが可能な再生発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、発泡スチロールは、一度使用された後、焼却処分されるか、又は熱収縮され回収ポリスチレンとして再利用されている。しかし、再利用の比率は不十分であり、今後、再利用率を上げていくことが、社会的課題とされている。
【0003】
発泡スチロール成形品を収縮塊として回収する技術は、既に完成されており、2005年には日本国内での発泡スチロールとしての流通量の約42%が熱収縮塊等としてマテリアルリサイクルされている。しかし、国内での再利用は少なく、ほとんどは主に海外において、射出成形による雑貨品や、押出成形による建材等の増量材用途に利用されている。
【0004】
このように、現在、回収ポリスチレンの再生、利用はまだ不十分であり、新技術開発による回収材利用範囲の拡大と用途の開拓が急がれている。
【0005】
リサイクルという定義からは、発泡性スチレン系樹脂を発泡成形し、最終的に発泡スチロールとして使用されたスチレン系樹脂を、ポリスチレンとして他の用途に利用するのではなく、発泡スチロールとして再利用することが好ましい。
【0006】
特に、日本国内において、大きな需要のある発泡スチロール製魚箱は、使用後に加熱減容され回収ポリスチレンとして、主に中国に輸出されているが、廃発泡スチロール製魚箱を再度発泡スチロールとして利用する工業的な技術開発は遅れており、適用の例は極めて少ない。
【0007】
一方、梱包材として使用された発泡スチレン系樹脂成形品の収縮物を、もう一度、再生発泡性スチレン系樹脂として、主に家電品等の緩衝材に利用する回収システムは既に幾つか提案されている。
【0008】
例えば、特許文献1において、発泡スチレン系樹脂成形品の収縮物を無延伸溶融及び粉砕して得られるスチレン系樹脂粒子を、有機系分散剤を含む水性媒体中に分散し、易揮発性発泡剤を含浸して再生発泡性スチレン系樹脂粒子を製造する方法が提案されている。
【0009】
特許文献2では、特許文献1を改良して、粉砕して得られるスチレン系樹脂粒子を、反応器に戻し、再度スチレンモノマーを含浸しながら重合(シード重合)を行う再生発泡性スチレン系樹脂粒子を製造する方法が提案されている。
【0010】
また、特許文献3では、回収ポリスチレンを押出機に供給して一定のサイズにペレタイズする工程において、押出機に発泡剤を供給しながらペレタイズすることで再生発泡性スチレン系樹脂を製造する方法が提案されている。
【0011】
【特許文献1】特開平6−87973号公報
【特許文献2】特開2002−284916号公報
【特許文献3】特開2002−337138号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
特許文献1,2の回収システムは、梱包材として使用された発泡スチレン系樹脂成形品を再度発泡スチレン系梱包材に戻す方法としては有効であった。しかし、廃発泡スチロール製魚箱を原料とした回収スチレン樹脂は、不純物として紙ラベル、ラベル接着剤、印刷インキ、色材、魚油等非常に多くの種類の異物を含む。従って、このような魚箱を原料として、再生発泡性スチレン樹脂をこれらの方法で製造する場合、製造が安定しないことや、得られた再生発泡性スチレン樹脂粒子が多量の水分を含む等の品質的な問題があることが多く、安定的な供給が困難であった。
【0013】
特許文献3の製法は回収ポリスチレンから直接、再生発泡性スチレン樹脂粒子を得ることが可能であるという優れた特徴を有している。ただし、廃発泡スチロール製魚箱を原料とした回収樹脂の場合は、先に例示した異物より適用に制限があることや、さらには原料品種、加熱減容方式差による分子量低下の相違による再生樹脂の流動性の違いを吸収しなければならない等、適用可能な回収ポリスチレンのソースは限定的とならざるを得なかった。
【0014】
本発明の目的は、廃発泡スチロール製魚箱等の異物の多い回収発泡スチロールから再生発泡性スチレン系樹脂粒子を製造できる再生発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明によれば、以下の再生発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法を提供できる。
1.回収ポリスチレンをスチレン系モノマーに溶解し、
前記溶解液を濾過し、
濾過した溶解液を懸濁重合し、
発泡剤を含浸する再生発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法であって、
前記溶解液の濾過を、直径50μm以下の孔を有するフィルターを用いて実施するか、又は
前記溶解液の濾過を、直径50μmを超える孔を有するフィルターを用いて実施し、さらに濾液を沈降分離する再生発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法。
2.前記回収ポリスチレンが、
廃発泡スチレン系樹脂製魚箱を減容し、
得られた減容品を粉砕し、
粉砕物を洗浄したものである1記載の再生発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、廃発泡スチロール製魚箱等の異物の多い回収発泡スチロールから再生発泡性スチレン系樹脂粒子を製造できる再生発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法が提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の再生発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法について説明する。
まず、本発明の再生発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法では、回収ポリスチレンに含まれる異物を除去するために、回収ポリスチレンを、スチレン系モノマー(溶剤)に溶解して濾過する。好ましくは、回収ポリスチレンは、減容物の粉砕物であり、例えば、嵩密度0.1〜0.6g/cmであって、目開き20mmスクリーンを通過する粒子であることが好ましい。尚、ここで嵩密度は、粒子をメスシリンダーに充填し、空気を含む状態のままで、測定される密度をいう。メスシリンダーは、粒子の充填を充分にするために、数回タッピングしてから密度を測定する。
【0018】
スチレン系モノマーに対する回収ポリスチレンの溶解量は、好ましくは5重量%以上40重量%以下であるが、特に好ましくは5重量%以上30重量%以下である。5重量%未満では、リサイクル材としての効果が少なく、40重量%を超えるとフィルター濾過の作業性が低下する場合がある。
【0019】
本発明で用いるスチレン系モノマーとは、スチレン単独又はスチレンを主成分とし、少量(例えば30重量%以下)のα−メチルスチレン、ビニルトルエン等のスチレン誘導体、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、アクリル酸ブチル等のメタクリル酸エステルやアクリル酸エステル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル等他の重合可能な単量体との混合物を意味する。
【0020】
スチレン系モノマーに対する回収ポリスチレンの溶解工程では、スチレン系モノマーが重合禁止剤を含むことが好ましい。例えば、溶解槽に重合禁止剤を投入する。特に夏季、外気温が高くなるときは配管中でのゲル化が起こりやすくなるために必要となる。かかる重合禁止剤としては、カテコール類、ハイドロキノン類等従来公知の重合禁止剤が使用できる。配合量は、好ましくは概ね10ppm〜100ppm程度であるが、作業条件、気温条件等により変化するため限定されるものではない。
【0021】
濾過はフィルターを用いて実施できる。回収ポリスチレンに含まれる異物の多くはスチレン系モノマーに不溶性であることから、フィルター濾過により分離が可能である。フィルターは、バッグフィルターやカートリッジフィルター等、従来、塗料や液状樹脂の濾過用に用いられているものをそのまま使用できる。
【0022】
フィルターによる濾過だけを行う場合、フィルターの目開き(直径)は、50μm以下であるが、好ましくは1μm以上20μm以下である。50μmを超えるフィルターでも、約90%の異物が除去可能であるが、パルプ質の破断品や印刷インキ破砕物は通過するため、懸濁重合反応での粒子径の安定性を損ねるため好ましくない。フィルターの目開きが1μm未満では、濾過作業性が低下することや、溶解可能な魚箱インゴット量が不十分となる恐れがある。
【0023】
50μmを超えるような、比較的大きい目開きのフィルターであっても、濾過後の溶解液を静置することで、パルプ質の破断品や印刷インキ破砕物が沈降し除去できる。従って、50μmを超えるフィルターを用いる場合は、沈降分離と併用することが必要である。好ましくは100μm以下のフィルターを用いる。この場合は、沈降分離した溶液のみを、必要に応じて再度希釈し、微細孔フィルターを用いて濾過すればよいことから、濾別作業性が大幅に改善される。
【0024】
本発明の再生発泡性スチレン系樹脂の製造方法は、汚れや異物混入の多い廃発泡スチロール製魚箱に適用可能なリサイクル技術であるが、本発明に用いる回収ポリスチレンは、廃発泡スチロール製魚箱に限定されない。例えば、梱包用の廃発泡スチロール、廃発泡スチロールトレー、建材用の廃発泡スチロール断熱材等の廃発泡スチロール製魚箱以外の回収ポリスチレンや、廃発泡スチロール製魚箱とその他の原料ソースの回収ポリスチレンが混じり合った回収ポリスチレンも使用できる。
【0025】
魚市場で発生する廃発泡スチロール製魚箱は、減容されて減容物となる。この減容物は魚箱インゴットと呼ばれ、一般に、異物混入の多い再生樹脂として知られている。この理由は魚市場において、短時間に大量の廃発泡スチロールが排出されるため、嵩張る廃魚箱は、減容処理も短時間に行う必要がある。このため、魚箱インゴットには、ポリスチレンの他に、通常約0.05〜5重量%、例えば、約0.05〜1重量%、より多くは約0.05〜0.5重量%もの異物が混入する。異物の主成分はラベルや段ボール片と思われるパルプ質であるが、その他にも印刷インキ、魚油、色材(染料)、ラベル接着剤等多種多様である。
【0026】
従って、回収ポリスチレンとして魚箱インゴットのように異物の多いポリスチレンを用いる場合、減容物を粗粉砕物したのちに、必要に応じて洗浄、好ましくは水洗浄、熱水洗浄、又は沸騰水洗浄する。この後、脱水した粉砕物を、スチレン系モノマーに溶解して濾過する。
【0027】
上記の洗浄は必須工程ではないが、この工程により、魚油に由来する臭気と、石けん成分や埃、色材等水に親和性の異物を取り除くことができる。洗浄は、例えば80℃程度の熱水を用いれば約1時間程度の洗浄時間で十分である。
【0028】
濾過、必要により洗浄と濾過により異物が除去された濾過液はそのまま懸濁重合へ移送できる。脱溶剤工程が省略できるので製造コストを低くできる。具体的には、濾過液はそのまま反応器に供給され、懸濁重合での油滴となる。好ましくは、重合する直前に、有機過酸化物等の重合開始剤や、発泡体としたときの気泡調整のための気泡形成剤を追加溶解する。油滴の形成は、従来公知の懸濁重合方法がそのまま適用できる。
【0029】
有機過酸化物として、スチレンの重合に使用可能な有機過酸化物、最も一般的に使用されている過酸化ベンゾイルのように重合開始剤と脱色剤の双方の働きを有する化合物、パーオキシケタール系過酸化物やアゾビスイソプチロニトリルのように脱色作用は無いが重合開始剤となりうる化合物が、使用できる。
【0030】
また、重合反応の完結のため、分解温度の異なる2種以上重合開始剤を併用することや、分子量調整のために多官能重合開始剤を併用することも可能である。
【0031】
このような重合開始剤としては、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーベンゾエート、ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキサン、ジ−t−ヘキシルパーオキシシクロヘキサン、t−ブチルパーオキシ イソプロピルカーボネート、t−ブチル−2−エチルヘキシルパーオキカーボネート、アゾビスイソブチロニトリル等がある。
【0032】
重合開始剤の添加量は得られる再生発泡性スチレン系樹脂の分子量設定により異なる。例えば、通常の発泡樹脂用の重量平均分子量である18〜40万とするためには、スチレン系モノマーに対して0.15重量%〜0.5重量%の範囲から適宜選ばれる。
【0033】
気泡形成剤は、従来公知の気泡調整作用のある化合物をそのまま用いることが可能である。このような気泡形成剤としては、オレイン酸アミドやステアリン酸アミド等のモノアミド化合物やメチレンビスステアリルアミドやエチレンビスステアリルアミド等のビスアミド化合物、分子量数100〜数1000のポリエチレンワックス等がある。気泡形成剤の添加量は魚箱インゴットの配合量により異なるが、通常概ね0.1重量%以下の配合量から適宜選ばれる。
【0034】
回収ポリスチレン、重合開始剤、及び必要に応じて重合禁止剤や気泡調整剤を含むスチレン溶液は、予め撹拌され、分散剤を含む水性媒体中に序々に投入されることで、スチレン油滴とすることができる。油滴径が安定した後、加熱して重合反応を開始できる。この際、反応器は温度調整が可能な耐圧反応器であって、反応器内を均一に撹拌可能な邪魔棒又は邪魔板と攪拌翼を備えることが好ましい。
【0035】
水性媒体として、脱イオン水を用いることができる。分散剤は懸濁重合に用いられるものであれば特に制限はない。例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース等の有機系分散剤や、リン酸マグネシウム、リン酸三カルシウム等の無機系分散剤が挙げられる。
【0036】
無機系分散剤を用いる場合は、界面活性剤を併用することができる。界面活性剤としては、オレイン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、その他懸濁重合で一般的に使用されるアニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤等が使用できる。
【0037】
懸濁重合初期における、回収ポリスチレン溶解液と、分散剤を含む水性媒体の比率は、通常、スチレン溶解液1.0に対し、水性媒体が1.2以上2.0以下(重量比)である。比率が1.2未満ではスチレン油滴径の安定性が劣り、2.0を超えると生産性が劣るため好ましくない。
【0038】
懸濁重合温度は、通常、バージン材のみの重合温度と同等、又は若干低い温度である。回収ポリスチレンに揮発性成分が残存しているときは、油滴安定性が劣るため、バージン材のみでの懸濁重合より低い温度とする。
【0039】
発泡剤含浸は、通常、懸濁重合の後半、又は重合完了後に反応器に易揮発性の発泡剤を圧入することで行われる。発泡剤としては、易揮発性炭化水素であって、懸濁重合により得られる樹脂粒子を溶かさないか、又は僅かに膨潤させるものが好ましく、具体的にはプロパン、ノルマルブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン、ノルマルヘキサン等の脂肪族炭化水素、シクロヘキサン、シクロペンタン等の脂環式炭化水素、又はその混合物が用いられる。これらの発泡剤は、重合して得られる樹脂量全体に対して通常3〜10重量%使用される。
【0040】
得られた再生発泡性スチレン系樹脂粒子は、一般に、脱水乾燥後に粒径サイズ別に分級されたのち、従来公知の表面被覆材でコーティングされる。
【0041】
粒径サイズ毎の分級により、通常1〜3重量%の微粉粒子が発生するが、発泡スチロールとしての需要がないために、発泡押出又は、本発明の最初の工程であるスチレン系モノマーへ再溶解すると、資源の無駄はない。
【0042】
表面被覆剤は、従来公知である発泡性スチレン系樹脂粒子に用いられるものが適用できる。例えば、ジンクステアレート、ステアリン酸トリグリセライド、ステアリン酸モノグリセライド、ひまし硬化油、シリコーン類、その他各種静電気防止剤等が用途により、組み合わされて使用できる。
【0043】
本発明の製造方法によれば、従来、再生発泡スチロールとしての再利用が困難であった廃発泡スチロール製魚箱を減容した回収ポリスチレンから、再生発泡性スチレン系樹脂粒子を安定して得ることができる。
【0044】
本発明により得られる再生発泡性スチレン系樹脂粒子の発泡と成形は従来公知のシステムがそのまま適用できる。一般に発泡スチロールは発泡体の密度を決める予備発泡工程において発泡粒子を得た後、金型内に発泡粒子を充填した後、スチームにより加熱することにより製造される。再生発泡性スチレン系樹脂粒子の場合も同様である。再生発泡性スチレン系樹脂粒子の大半は発泡スチロール成形品として流通するが、一部は用途により成形前の発泡粒子の状態で流通する。
【実施例】
【0045】
本発明をさらに詳細に説明するため以下に実施例を示すが、本発明はこれら実施例に限定されない
実施例1〜5、比較例1
(スチレンモノマー溶解液の作成)
使用済み発泡スチロール製魚箱を摩擦熱により減容した、青色の廃発泡スチロール、赤色のインキ、茶色の泥汚れ等が混在して着色した回収ポリスチレン塊(魚箱インゴット)を10mm以下の粒度に粉砕し顆粒状の回収ポリスチレンを得た。10Lの攪拌機付き洗浄槽に3kgの水道水と2kgの粉砕回収ポリスチレンを入れ、80℃で1時間撹拌し、洗浄した。洗浄後に脱水乾燥し、淡青色となった回収ポリスチレンを得た。
【0046】
続いて、10Lの攪拌機付き溶解槽に4kgのスチレンモノマーを入れ撹拌しながら、回収スチレン樹脂1000gとt−ブチルカテコールを10重量%含むスチレン溶液1.5gを投入し、4時間撹拌を継続して20重量%回収スチレン溶解液を作成した。
【0047】
溶解液を表1に示す目開き(直径)のカートリッジフィルター又は濾袋で濾過し不溶分を除去した。回収ポリスチレン溶解液を1日静置し、沈降物質の有無と溶解液外観を確認した。実施例5のみ沈殿物を取り除いた。
【0048】
(懸濁重合)
攪拌翼と邪魔板を有する内容積4Lの耐圧反応器に水性媒体として脱イオン水1650g、リン酸3カルシュウム10%スラリー25g、ドデシルベンゼン1%水溶液3.3gを入れ撹拌した。
【0049】
続いて、作成した20%回収スチレン溶解液(実施例5については沈殿物の除去後の溶解液)を均一に混合して1100gとり、ベンゾイルパーオキサイド2.75g、t−ブチルパーベンゾエート0.55g、ポリエチレンワックス(Mw=1000)0.55gを溶解・分散したのち、耐圧反応器に投入し、懸濁重合の油滴成分とした。
【0050】
撹拌しながら、87℃に昇温し保温を開始した後、1.5時間後及び2.0時間後にリン酸3カルシュウム10%スラリーを表1に示す追加量ずつ添加した。尚、表1の割合は、20%回収スチレン溶解液1100g中の回収スチレン220gに対するリン酸3カルシュウム固形分の量である。添加後、5時間後には、重合率90%の樹脂粒子となった。110℃まで1時間で昇温し、1時間保持したのち、発泡剤としてイソ/ノーマル=3/7のペンタン96gを1時間かけて圧入した。
さらに8時間保持し、樹脂粒子への発泡剤の含浸と重合を完結した。
得られた再生スチレン系樹脂粒子のポリマー粒子外観、粒径安定性、平均粒径を表1に示した。重合途中の粒径安定性は、粒径調整が可能であるものを○とした。
【0051】
(後処理)
冷却後、樹脂粒子を取り出し酸洗と水洗により分散剤を除去し、さらに脱水乾燥したのち、粒子サイズ別に篩い分けを行った。篩い分けにより、径1.68mmを超える大粒子、0.6〜1.68mmの中粒子、0.6mm未満の小粒子に分級した。このうち需要のない小粒子は、スチレンモノマーに再溶解し、再度懸濁重合できる範囲であることから、実質的な歩留まり低下のない、再利用可能な範囲であることを確認できた。0.6〜1.4mmの粒子を1000g採取し、表面被覆剤として、ジンクステアレート0.8g、モノステアリルグリセライド0.3g、トリステアリルグリラライド0.3g、ポリエチレングリコール400 0.1gを混合して、再生発泡スチレン樹脂粒子を得た。
【0052】
(発泡成形)
得られた再生発泡性スチレン系樹脂粒子を、発泡スチレン系樹脂用発泡機(日立化成テクノプラント製HBP−500LW)を用い、スチームで加熱することによって、18g/Lの発泡ビーズに予備発泡した。その後、約18時間熟成した後、発泡スチレン系樹脂用成型機(ダイセン工業製VS−300)を用い、成形圧力0.08MPaで成形したところ、実施例1〜5は、梱包材として用いることが可能な、再生発泡スチロール成形品を得た。
【0053】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明の製造方法は、従来再利用が困難であった、発泡スチロール製魚箱のように汚れのある発泡スチロールの再利用に使用できる。本発明の製造方法により得られる再生発泡性スチレン系樹脂粒子は、梱包材、食品容器、断熱建材に使用できるが、特に梱包材用途に適している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回収ポリスチレンをスチレン系モノマーに溶解し、
前記溶解液を濾過し、
濾過した溶解液を懸濁重合し、
発泡剤を含浸する再生発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法であって、
前記溶解液の濾過を、直径50μm以下の孔を有するフィルターを用いて実施するか、又は
前記溶解液の濾過を、直径50μmを超える孔を有するフィルターを用いて実施し、さらに濾液を沈降分離する再生発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法。
【請求項2】
前記回収ポリスチレンが、
廃発泡スチレン系樹脂製魚箱を減容し、
得られた減容品を粉砕し、
粉砕物を洗浄したものである請求項1記載の再生発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法。

【公開番号】特開2009−67843(P2009−67843A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−235409(P2007−235409)
【出願日】平成19年9月11日(2007.9.11)
【出願人】(000131810)株式会社ジェイエスピー (245)
【Fターム(参考)】