説明

再生装置及び再生方法

【課題】回路規模を抑えるとともに、基本周波数以外の高周波成分を検出できるようにする。
【解決手段】2倍周波数の成分を含むウォブル信号に対して、第1のスイッチ202を切り替えることによりサイン波を乗算し、第1のΔΣAD変換器204を用いてデジタル変換する。次に、デジタル変換した信号に対して、第3のスイッチ222を切り替えることによりコサイン波を乗算するようにして、2倍周波数の成分が一定の符号となって取り出すことができ、これを第3の積分器224で積分することにより、有意なデジタルデータとして取り出すことができるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は再生装置及び再生方法に関し、特に、ブルーレイディスクからMSK/STW成分を検出するために用いて好適な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光ディスクのようなディスク状記録媒体に対してデータを記録再生する装置が知られている。この種の記録再生する装置のうち、近年では、DVDよりも記録容量が大きなブルーレイディスク(Blu-ray Disc、以下、BD)が光ディスクとして用いられるようになってきた。
【0003】
この様な光ディスクからデータを再生する再生装置は、光ディスクを回転させるスピンドルモータと、対物レンズを水平方向に大まかに動かすスレッドモータと、光ディスクの媒体面にレーザーを集光する対物レンズとを備えている。さらに、レーザーの直接の光量を測定するフロントモニターと、光ディスクから反射される反射光の光量を測定するレーザー受光センサーとを備えている。また、対物レンズをディスク面に対して垂直方向に正確に制御するフォーカス・アクチュエータと、対物レンズをディスク面に対して水平方向に正確に制御するトラッキング・アクチュエータとを備えている。
【0004】
このような再生装置では、スピンドルモータによって光ディスクを回転させるとともに、スレッドモータによって再生する光ディスク上の大よその位置に対物レンズを移動させる。そして、フォーカス・アクチュエータによって対物レンズを上下に移動させることにより、レーザーの焦点を再生面に合わせる。一方、光ディスク上には案内溝が形成されており、トラッキング・アクチュエータにより対物レンズを水平方向に微調節して、案内溝に沿うように焦点を合わせている。以下、この一連の動作を、サーボをかけると称す。
【0005】
光ディスク上に形成されている案内溝は蛇行しており、ウォブルと呼ばれている。BDにおいて、ウォブルには、基本周波数とその位相とを一部だけ反転させてマーカーとするMSK(Minimum Shift Keying)の成分が含まれている。さらに、基本周波数の2倍の成分を加えることによりのこぎりの歯の様にウォブルの波形を変形させるSTW(ソートゥースウォブル)などの成分も含まれている。すなわち、これらのMSK/STW成分を検出することにより、光ディスク上の位置を表すアドレス、光ディスクのメーカーコードなどの重畳されたデジタル情報(デジタルデータ)を検出することができる。
【0006】
また、案内溝の中には、マークとスペースとからなるHFデータが書き込まれており、このマークとスペースとにレーザーを照射し、その反射光を受光センサーにおいて検出することによりHF信号が得られる。そして、このHF信号にPLLを掛けることにより、同期化された再生すべきHFデータを取り出すことが可能となる。
【0007】
また、サーボがかかった後に、PLLよってウォブルに同期したクロックを生成することにより、案内溝に一定周期に刻まれたウォブル信号の基本周波数を求めることができる。HF信号のクロック周波数はウォブル基本周波数の69倍と規定されており、記録を行う時には、ウォブル周波数を69で逓倍したクロックが書き込みクロックとなり、HF信号が案内溝に記録される。このようにクロックを生成する際には、PLL回路が用いられる(例えば、特許文献1参照)。
【0008】
【特許文献1】特開2002−230757号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前述したように、再生信号に同期したクロックを生成する際には、PLL回路が用いられる。しかしながら、元々BDでは記録データの周波数が高く、さらに、近年では、2、4倍速など、高速の書き込み、読み出しが一般的となっている。
【0010】
一方、PLL回路を従来のアナログ回路で設計すると、温度変化や経年変化によってクロックが変動し、その影響が大きいため、デジタル回路で構成することが望まれる。また、前述したように、BDのウォブルには、基本周波数以外のMSKやSTWのような高周波成分が含まれている。したがって、高周波成分の検出系も含めてデジタル回路を構成するためには、高速で動作可能な多ビットのAD変換器が必要となる。このため、回路規模が大きくなり、その結果、コストが多くかかるという問題があった。
【0011】
本発明は前述の問題点に鑑み、回路規模を抑えるとともに、基本周波数以外の高周波成分を検出できるようにすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の再生装置は、所定の周期で蛇行するトラックが形成されたディスク状記録媒体に対して光ビームを照射する照射手段と、前記照射手段によって照射された光ビームが前記ディスク状記録媒体から反射された反射光を用いて、前記所定の周期に関連した周波数を有するウォブル成分と、前記ディスク状記録媒体に係わるデジタル情報が重畳された高周波成分とを含むウォブル信号を生成する信号生成手段と、前記ウォブル成分に同期したクロックを用いて、前記ウォブル成分と同一の周波数であるとともに位相が同期している第1のキャリアと、前記ウォブル成分と同一の周波数であるとともに位相が直交している第2のキャリアとを生成するキャリア生成手段と、前記信号生成手段によって生成されたウォブル信号に対して、前記キャリア生成手段によって生成された第1のキャリアまたは第2のキャリアを乗算する第1の乗算手段と、前記第1の乗算手段によって前記第1のキャリアまたは第2のキャリアが乗算されたウォブル信号をデジタル信号に変換するAD変換手段と、前記AD変換手段によって変換されたデジタル信号に対して、前記キャリア生成手段によって生成されたキャリアのうち、前記第1の乗算手段によって用いられていないキャリアを乗算する第2の乗算手段と、前記第2の乗算手段によって乗算されたデジタル信号に基づいて、前記高周波成分からデジタル情報を検出する検出手段とを備えたことを特徴とする。
【0013】
本発明の再生方法は、所定の周期で蛇行するトラックが形成されたディスク状記録媒体に対して光ビームを照射する照射工程と、前記照射工程において照射された光ビームが前記ディスク状記録媒体から反射された反射光を用いて、前記所定の周期に関連した周波数を有するウォブル成分と、前記ディスク状記録媒体に係わるデジタル情報が重畳された高周波成分とを含むウォブル信号を生成する信号生成工程と、前記ウォブル成分に同期したクロックを用いて、前記ウォブル成分と同一の周波数であるとともに位相が同期している第1のキャリアと、前記ウォブル成分と同一の周波数であるとともに位相が直交している第2のキャリアとを生成するキャリア生成工程と、前記信号生成工程において生成されたウォブル信号に対して、前記キャリア生成工程において生成された第1のキャリアまたは第2のキャリアを乗算する第1の乗算工程と、前記第1の乗算工程において前記第1のキャリアまたは第2のキャリアが乗算されたウォブル信号をデジタル信号に変換するAD変換工程と、前記AD変換工程において変換されたデジタル信号に対して、前記キャリア生成工程において生成されたキャリアのうち、前記第1の乗算工程において用いられていないキャリアを乗算する第2の乗算工程と、前記第2の乗算工程において乗算されたデジタル信号に基づいて、前記高周波成分からデジタル情報を検出する検出工程とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、高速で動作することが可能な多ビットの大規模なAD変換器を不要にするとともに、基本周波数以外の高周波成分を検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
(第1の実施形態)
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。
図1は、本実施形態における光ディスク装置100の構成例を示すブロック図である。図1に示す光ディスク装置100は、所定の周期で蛇行するトラックが予め形成された光ディスクDに対して光ビームを照射して情報信号を記録する。
図1において、記録処理を行う際には、記録データ生成部109により生成された映像データや、音声データなどの記録用の情報信号がストラテジ部108に送られる。ストラテジ部108は、記録用の情報信号(0または1)のマーク長に応じて光ビームの変調を制御する。レーザドライバ107は、ストラテジ部108による変調制御の結果に応じてレーザダイオード103によるレーザビームの照射を制御し、ビームスプリッタ102及びレンズ101を介して光ディスクD上にビームを照射する。制御部111は、光ディスク装置100全体を制御するためのものである。
【0016】
ここで、ストラテジ部108、及び記録データ生成部109は、光ディスクD上のトラックのウォブル周期に同期したクロックに従って動作する。そのため、光ディスクDに対して記録を行う前に、光ディスクDからアドレス情報等を含むデジタルデータを再生し、光ディスクD上の書き込みアドレスを予め確定した上でウォブル周期に同期したクロックを生成する必要がある。
【0017】
そこで、本実施形態では、光ディスクDから反射された反射光をビームスプリッタ102により受光し、受光した反射光をセンサー104に送る。センサー104は、反射光を受光して電気信号に変換し、信号生成部105に送る。信号生成部105は、公知の方法でトラックの蛇行周期に関連した周波数のウォブル信号を生成し、クロック生成部106とMSK/STW検出部110とにウォブル信号を送る。MSK/STW検出部110は、ウォブル信号からMSK/STWを検出し、検出されたMSK/STWを用いてアドレスを生成する。クロック生成部106は、ウォブル信号を用いて記録用のクロックを生成する。
【0018】
図2は、クロック生成部106及びMSK/STW検出部110の詳細な構成例を示すブロック図である。
図2において、信号生成部105からウォブル信号がAD変換部201に送られる。AD変換部201は、第1のスイッチ202、第2のスイッチ205、符号反転回路203、第1のΔΣAD変換器204、及び第2のΔΣAD変換器207から構成されている。
【0019】
ウォブル信号は、第1のスイッチ202、第2のスイッチ205の何れか一方の端子と、符号反転回路203とに送られる。符号反転回路203は、入力されたウォブル信号の符号を反転して第1のスイッチ202、第2のスイッチ205の他方の端子に出力する。
【0020】
第1のスイッチ202は、カウンタ215から送られる切り替え信号に従い、入力されたウォブル信号及び符号反転回路203において反転されたウォブル信号のうちの一方を選択して、第1のΔΣAD変換器204に出力する。また、第2のスイッチ205も、カウンタ215から送られる切り替え信号に従い、入力されたウォブル信号及び符号反転回路203において反転されたウォブル信号のうちの一方を選択して、第2のΔΣAD変換器207に出力する。
【0021】
カウンタ215は、PLL214から出力された記録クロック(例えばBDの1倍速なら66MHz)を69カウントする。これにより、カウンタ215はキャリア生成手段として機能し、ウォブル成分と同一の基本周波数(956KHz)に相当する矩形のサイン波の信号(第1のキャリア)及びコサイン波の信号(第2のキャリア)を生成する。そして、これらの信号に基づいて、第1のスイッチ202及び第2のスイッチ205をそれぞれ切り替える。
【0022】
第1のスイッチ202から出力される信号は、sin(ωt)により、ウォブル信号の基本周波数(基本角速度をωとする)の成分が低域に折り返されている。このため、低域に折り返された信号よりも高い周波数で第1のΔΣAD変換器204においてデジタルデータに変換することにより、ノイズシェーピングする。一方、第2のスイッチ205から出力される信号は、cos(ωt)により、基本周波数の成分が低域に折り返されている。このため、低域に折り返された信号よりも高い周波数で第2のΔΣAD変換器207においてデジタルデータに変換することにより、ノイズシェーピングする。
【0023】
そして、第1のΔΣAD変換器204から、第1のデシメーション・フィルタ208と、第3のスイッチ222と、第1のインバータ221とにそれぞれデジタルデータが出力される。また、第2のΔΣAD変換器207から、第2のデシメーション・フィルタ209と、第4のスイッチ227と、第2のインバータ226とにそれぞれデジタルデータが出力される。
【0024】
第1のデシメーション・フィルタ208及び第2のデシメーション・フィルタ209はそれぞれ、高域のノイズ領域をカットするローパス・フィルタである。低域に折り返された基本周波数、及びMSK/STW成分をそれぞれ第1の積分器219、及び第2の積分器220に出力する。
【0025】
第1の積分器219は、基本周波数の周期の整数倍に相当する期間を積分する。これにより、第1のデシメーション・フィルタ208から出力されるウォブルの基本周波数とPLL214で生成された基本周波数との周波数差の情報を位相差情報に変換する。第2の積分器220は、PLL回路の構成におけるPFD(Phase Frequency Detector)の一部に相当し、基本周波数の周期の整数倍に相当する期間を積分する。これにより、第2のデシメーション・フィルタ209から出力される、光ディスクDから出力されたウォブルの基本周波数とPLL214で生成された周波数との周波数差の情報を位相差情報に変換する。
【0026】
第1の乗算器210及び第2の乗算器211はそれぞれ、第1の積分器219及び第2の積分器220から出力される信号に対し、AGC回路217から出力されるゲインを乗算する。そして、第1の乗算器210は、乗算結果をRMS回路216とMSK検出回路218とに出力する。また、第2の乗算器211は、乗算結果をループフィルタ212とRMS回路216とに出力する。
【0027】
RMS回路216は、第1の乗算器210及び第2の乗算器211から出力された信号(乗算結果)を、それぞれ2乗してから加算し、平方根を求めることにより実効値を求め、その結果(RMS値)をAGC回路217に出力する。AGC回路217は、RMS値と所定の基準値との誤差を積分し、積分結果を第1の乗算器210及び第2の乗算器211に出力することにより、第1の積分器219及び第2の積分器220の出力ゲインを一定に保つ。
【0028】
位相差検出手段として機能する第2の乗算器211から出力される信号(乗算結果)は、PLL214において生成される記録クロックと再生されたウォブル信号(再生データ)との位相誤差を示している。ループフィルタ212は、この位相誤差の信号を平均化し、デジタルVCO213に出力する。
【0029】
デジタルVCO213は、ループフィルタ212から出力された信号に従ってサイン波を発生し、PLL214に出力する。ここで、本実施形態では、例えば、水晶を元に生成した135MHzのクロックをデジタルVCO213に供給し、デジタルVCO213から約4.125MHz程度のサイン波を発生する。
【0030】
PLL214はクロック生成手段として機能し、例えば、この4.125MHzのサイン波の周波数を16で逓倍することにより、66MHzの記録用クロックを生成する。PLL214において生成したクロックは、記録クロックとしてストラテジ部108及び記録データ生成部109に出力される。
【0031】
一方、第1のΔΣAD変換器204及び第2のΔΣAD変換器207から出力されたデジタルデータはそれぞれ、第1のインバータ221、第2のインバータ226、第3のスイッチ222及び第4のスイッチ227に入力される。さらに、第1のインバータ221及び第2のインバータ226においてデジタルデータが極性反転され、その結果が第3のスイッチ222及び第4のスイッチ227のもう一方の端子に入力される。
【0032】
また、カウンタ215からタイミング信号が同期部206に入力される。同期部206は、内部に有する不図示のカウンタを常にカウンタ215に同期させている。すなわち、カウンタ215が第1のスイッチ202及び第2のスイッチ205に出力するサイン波・コサイン波と同じものを第4のスイッチ227、第3のスイッチ222にそれぞれ出力する。そして、サイン波・コサイン波によって切り替えられた信号がそれぞれ、第3のデシメーション・フィルタ223及び第4のデシメーション・フィルタ228に入力される。つまり、第1のスイッチ202及び第4のスイッチ227においてはサイン波の矩形波によって切り替えられ、第2のスイッチ205及び第3のスイッチ222においてはコサイン波の矩形波により切り替えられる。
【0033】
図3は、信号生成部105から出力されるウォブル信号と、スイッチから出力される信号と、カウンタ215及び同期部206から出力される矩形波との関係を示す図である。ここで、各信号の波形について説明する。
図3(a)において、301はノーマルウォブル信号(ウォブル成分)の波形であり、302、303はそれぞれ、カウンタ215及び同期部206から出力される基本周波数の成分であるサイン波、コサイン波の矩形波の波形である。図3(a)に示すように左に傾いたような波形305のウォブル信号は、波形304に示す2倍周波数の成分(ソートゥースウォブル)がノーマルウォブル信号に加算されていると考えることができる。
【0034】
波形306は、この左に傾いたような波形305のウォブル信号に対して、第1のスイッチ202において波形302のサイン波の矩形波により切り替えられた結果得られる信号の波形である。すなわち、第1のスイッチ202は第1の乗算手段として機能し、ウォブル信号に対してサイン波を乗算した結果の信号を出力する。第1のスイッチ202において切り替えられた結果、波形307に示すように、得られる信号の中に2倍周波数の成分が含まれていることがわかる。
【0035】
この波形306の信号は、AD変換手段として機能する第1のΔΣAD変換器204においてデジタル信号に変換され、第3のスイッチ222において、ウォブル成分と位相が直交する波形303のコサイン波の矩形波により符号反転が施される。すなわち、第3のスイッチ222は第2の乗算手段として機能し、デジタル信号に対してコサイン波を乗算した結果の信号を出力する。第1のΔΣAD変換器204において変換されるデジタル信号は、PWM(パルス幅変調)の1ビット信号に変換されている。したがって、第3のスイッチ222において切り替えられた信号は、内容的には波形308に示すような信号をAD変換した信号になっている。
【0036】
この波形308の中には、波形309に示すように、2倍周波数の成分がすべてプラス方向に一定の符号で混入していることがわかる。この符号反転された信号は、第3のデシメーション・フィルタ223において多ビット化され、検出手段として機能する第3の積分器224において既知の区間平均化が行われる。これにより、ソートゥースウォブル(STW)の高周波成分から第1の端子225を介して1ビットのデジタルデータを取り出すことができる。
【0037】
また、図3(a)に示す例と同様に、図3(b)に示すように右に傾いたような波形315のウォブル信号は、波形314に示すような波形304とは逆位相の2倍周波数の成分がノーマルウォブル信号に加算されていると考えることができる。
【0038】
波形316は、この右に傾いたような波形315のウォブル信号に対して、第1のスイッチ202において波形302のサイン波の矩形波により切り替えられた結果得られる信号の波形である。波形317に示すように、得られる信号の中には、2倍周波数の成分が含まれていることがわかる。
【0039】
この波形316の信号は、第1のΔΣAD変換器204においてデジタル信号に変換され、第3のスイッチ222において波形303のコサイン波の矩形波で符号反転が施される。第1のΔΣAD変換器204において変換されるデジタル信号はデジタルのPWM(パルス幅変調)の1ビット信号に変換されている。したがって、第3のスイッチ222において切り替えられた信号は、内容的には波形318に示すような信号をAD変換した信号になっている。
【0040】
この波形318の中には、波形319に示すように、2倍周波数の成分がすべてマイナス方向に一定の符号で混入していることがわかる。この符号反転された信号は、第3のデシメーション・フィルタ223において多ビット化され、第3の積分器224において既知の区間平均化が行われる。これにより、ソートゥースウォブル(STW)の高周波成分から第1の端子225を介して1ビットのデジタルデータを取り出すことができる。
【0041】
BDのフォーマットでは、18サイクル目のノーマルウォブル信号から54サイクル目までのノーマルウォブル信号に波形304または波形314のソートゥースウォブル信号を連続して重畳する。これにより、1ビットのデジタルデータ(0もしくは1)を表現している。以上により、既知の区間を積分した結果の符号を参照することにより、前述した1ビットのデジタルデータを取り出すことができる。この結果、デジタル部の回路規模を小さくすることができる。
【0042】
また、図3(c)に示すように、第2のΔΣAD変換器207を介した信号を用いてソートゥースウォブル信号を検出することも可能である。図3(c)に示すように左に傾いた波形324のウォブル信号には、波形324に示すような2倍周波数の成分が含まれている。
【0043】
波形326は、この左に傾いたような波形325のウォブル信号に対して第2のスイッチ205において波形303のコサイン波の矩形波により反転波形と切り替えられた信号の波形である。波形327に示すように、得られる信号の中には、2倍周波数の成分が含まれていることがわかる。
【0044】
この波形326の信号は、第2のΔΣAD変換器207においてデジタル信号に変換され、第4のスイッチ227において波形302のサイン波の矩形波により符号反転が施される。第2のΔΣAD変換器207において変換されるデジタル信号はPWM(パルス幅変調)の1ビット信号に変換されている。したがって、第4のスイッチ227において切り替えられた信号は、内容的には波形328に示すような信号をAD変換した信号になっている。
【0045】
この波形328の中には、波形329に示すように、2倍周波数の成分が一定の符号で混入していることがわかる。この符号反転された信号は、第4のデシメーション・フィルタ228において多ビット化され、第4の積分器229において既知の区間平均化が行われる。これにより、ソートゥースウォブル(STW)の高周波成分から第2の端子230を介して1ビットのデジタルデータを取り出すことができる。また、波形315に示すような右に傾いたウォブル信号の場合も、符号が逆になって検出される。
【0046】
ここで、第1のΔΣAD変換器204から第1のインバータ221及び第3のスイッチ222に出力される信号は1ビット信号である。そして、同期部206から出力されるコサインの矩形波信号も、0の場合は、反転させないように第3のスイッチ222を切り替え、1の場合は、反転させるように第3のスイッチ222を切り替えることを示す1ビット信号である。したがって、この部分の処理は、スイッチ及びインバータでも実現できるが、1ビットデータ同士の排他的論理和(イクスクルーシブオア)演算を用いても実現可能である。
【0047】
以上のように本実施形態によれば、2倍周波数の成分を含むウォブル信号に対して、サイン波を乗算し、従来のΔΣAD変換器を用いてデジタル変換した信号に、コサイン波を乗算する。これにより、2倍周波数の成分が一定の符号となって取り出すことができ、これを規定の区間で積分することにより、有意なデジタルデータとして取り出すことができる。また、ウォブル信号の基本周波数成分に同期したクロックを生成し、ウォブル信号に含まれる基本周波数成分以外の周波数成分の有無と基本周波数に対する位相の違いとを検出できることから、回路規模の削減によるコストメリットが得られる。
【0048】
(本発明に係る他の実施形態)
前述した本発明の実施形態における再生装置を構成する各手段、並びに再生方法の各工程は、コンピュータのRAMやROMなどに記憶されたプログラムが動作することによって実現できる。このプログラム及び前記プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記憶媒体は本発明に含まれる。
【0049】
また、本発明は、例えば、システム、装置、方法、プログラムもしくは記録媒体(記憶媒体)等としての実施形態も可能であり、具体的には、複数の機器から構成されるシステムに適用してもよいし、また、一つの機器からなる装置に適用してもよい。
【0050】
なお、本発明は、前述した実施形態の機能を実現するソフトウェアのプログラムを、システムまたは装置に直接、または遠隔から供給する場合も含む。そして、そのシステムまたは装置のコンピュータが前記供給されたプログラムコードを読み出して実行することによっても達成される場合を含む。
【0051】
したがって、本発明の機能処理をコンピュータで実現するために、前記コンピュータにインストールされるプログラムコード自体も本発明を実現するものである。つまり、本発明は、本発明の機能処理を実現するためのコンピュータプログラム自体も含まれる。
【0052】
その場合、プログラムの機能を有していれば、オブジェクトコード、インタプリタにより実行されるプログラム、OSに供給するスクリプトデータ等の形態であってもよい。
【0053】
プログラムを供給するための記憶媒体としては、例えば、フレキシブルディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスクなどがある。さらに、MO、CD−ROM、CD−R、CD−RW、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROM、DVD(DVD−ROM、DVD−R)などもある。
【0054】
その他、プログラムの供給方法としては、クライアントコンピュータのブラウザを用いてインターネットのホームページに接続する方法がある。そして、前記ホームページから本発明のコンピュータプログラムそのもの、もしくは圧縮され自動インストール機能を含むファイルをハードディスク等の記憶媒体にダウンロードすることによっても供給できる。
【0055】
また、本発明のプログラムを構成するプログラムコードを複数のファイルに分割し、それぞれのファイルを異なるホームページからダウンロードすることによっても実現可能である。つまり、本発明の機能処理をコンピュータで実現するためのプログラムファイルを複数のユーザに対してダウンロードさせるWWWサーバも、本発明に含まれるものである。
【0056】
また、その他の方法として、本発明のプログラムを暗号化してCD−ROM等の記憶媒体に格納してユーザに配布し、所定の条件をクリアしたユーザに対し、インターネットを介してホームページから暗号化を解く鍵情報をダウンロードさせる。そして、その鍵情報を使用することにより暗号化されたプログラムを実行してコンピュータにインストールさせて実現することも可能である。
【0057】
また、コンピュータが、読み出したプログラムを実行することによって、前述した実施形態の機能が実現される。さらに、そのプログラムの指示に基づき、コンピュータ上で稼動しているOSなどが、実際の処理の一部または全部を行い、その処理によっても前述した実施形態の機能が実現され得る。
【0058】
さらに、その他の方法として、まず記憶媒体から読み出されたプログラムが、コンピュータに挿入された機能拡張ボードやコンピュータに接続された機能拡張ユニットに備わるメモリに書き込まれる。そして、そのプログラムの指示に基づき、その機能拡張ボードや機能拡張ユニットに備わるCPUなどが実際の処理の一部または全部を行い、その処理によっても前述した実施形態の機能が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の実施形態における光ディスク装置の構成例を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施形態における光ディスク装置のクロック生成部及びMSK/STW検出部110の構成例を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施形態における信号生成部から出力されるウォブル信号と、スイッチから出力される信号と、カウンタ及び同期部から出力される矩形波との関係を示す図である。
【符号の説明】
【0060】
106 クロック生成部
110 MSK/STW検出部
201 AD変換部
202 第1のスイッチ
203 符号反転回路
204 第1のΔΣAD変換器
205 第2のスイッチ
206 同期部
207 第2のΔΣAD変換器
208 第1のデシメーション・フィルタ
209 第2のデシメーション・フィルタ
210 第1の乗算器
211 第2の乗算器
212 ループフィルタ
213 デジタルVCO
214 PLL
215 カウンタ
216 RMS回路
217 AGC回路
218 MSK検出回路
219 第1の積分器
220 第2の積分器
221 第1のインバータ
222 第3のスイッチ
223 第3のデシメーション・フィルタ
224 第3の積分器
225 第1の端子
226 第2のインバータ
227 第4のスイッチ
228 第4のデシメーション・フィルタ
229 第4の積分器
230 第2の端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の周期で蛇行するトラックが形成されたディスク状記録媒体に対して光ビームを照射する照射手段と、
前記照射手段によって照射された光ビームが前記ディスク状記録媒体から反射された反射光を用いて、前記所定の周期に関連した周波数を有するウォブル成分と、前記ディスク状記録媒体に係わるデジタル情報が重畳された高周波成分とを含むウォブル信号を生成する信号生成手段と、
前記ウォブル成分に同期したクロックを用いて、前記ウォブル成分と同一の周波数であるとともに位相が同期している第1のキャリアと、前記ウォブル成分と同一の周波数であるとともに位相が直交している第2のキャリアとを生成するキャリア生成手段と、
前記信号生成手段によって生成されたウォブル信号に対して、前記キャリア生成手段によって生成された第1のキャリアまたは第2のキャリアを乗算する第1の乗算手段と、
前記第1の乗算手段によって前記第1のキャリアまたは第2のキャリアが乗算されたウォブル信号をデジタル信号に変換するAD変換手段と、
前記AD変換手段によって変換されたデジタル信号に対して、前記キャリア生成手段によって生成されたキャリアのうち、前記第1の乗算手段によって用いられていないキャリアを乗算する第2の乗算手段と、
前記第2の乗算手段によって乗算されたデジタル信号に基づいて、前記高周波成分からデジタル情報を検出する検出手段とを備えたことを特徴とする再生装置。
【請求項2】
前記AD変換手段によって変換されたデジタル信号を用いて前記ウォブル信号と前記クロックとの位相差を検出する位相差検出手段と、
前記位相差検出手段によって検出された位相差に基づいて、前記ウォブル成分に同期したクロックを生成するクロック生成手段とをさらに備えたことを特徴とする請求項1記載の再生装置。
【請求項3】
前記ディスク状記録媒体はブルーレイディスクであり、前記高周波成分はソートゥースウォブル信号の成分であることを特徴とする請求項1または2記載の再生装置。
【請求項4】
所定の周期で蛇行するトラックが形成されたディスク状記録媒体に対して光ビームを照射する照射工程と、
前記照射工程において照射された光ビームが前記ディスク状記録媒体から反射された反射光を用いて、前記所定の周期に関連した周波数を有するウォブル成分と、前記ディスク状記録媒体に係わるデジタル情報が重畳された高周波成分とを含むウォブル信号を生成する信号生成工程と、
前記ウォブル成分に同期したクロックを用いて、前記ウォブル成分と同一の周波数であるとともに位相が同期している第1のキャリアと、前記ウォブル成分と同一の周波数であるとともに位相が直交している第2のキャリアとを生成するキャリア生成工程と、
前記信号生成工程において生成されたウォブル信号に対して、前記キャリア生成工程において生成された第1のキャリアまたは第2のキャリアを乗算する第1の乗算工程と、
前記第1の乗算工程において前記第1のキャリアまたは第2のキャリアが乗算されたウォブル信号をデジタル信号に変換するAD変換工程と、
前記AD変換工程において変換されたデジタル信号に対して、前記キャリア生成工程において生成されたキャリアのうち、前記第1の乗算工程において用いられていないキャリアを乗算する第2の乗算工程と、
前記第2の乗算工程において乗算されたデジタル信号に基づいて、前記高周波成分からデジタル情報を検出する検出工程とを備えたことを特徴とする再生方法。
【請求項5】
前記AD変換工程において変換されたデジタル信号を用いて前記ウォブル信号と前記クロックとの位相差を検出する位相差検出工程と、
前記位相差検出工程において検出された位相差に基づいて、前記ウォブル成分に同期したクロックを生成するクロック生成工程とをさらに備えたことを特徴とする請求項4記載の再生方法。
【請求項6】
前記ディスク状記録媒体はブルーレイディスクであり、前記高周波成分はソートゥースウォブル信号の成分であることを特徴とする請求項4または5記載の再生方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−20876(P2010−20876A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−183074(P2008−183074)
【出願日】平成20年7月14日(2008.7.14)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】