説明

再生装置

【課題】テープ速度低減時でも特殊再生用映像データ表示する。
【解決手段】CPUは磁気記録テープの特殊再生用映像データをトレースさせる(S10)。トレースされた特殊再生用映像データは、メモリに格納される(S11)。表示部にメモリの特殊再生用映像データを映像表示する(S12)。テープ端付近検出手段によりテープ端付近か否かを判別する(S13)。テープ端付近ならば、CPUは特殊再生用映像データをトレースできるテープ速度で段階的に低減制御を行う(S14)。テープ端検出手段によりテープ端か否かを判別する(S15)。テープ端であれば、CPUは、磁気テープを停止し、特殊再生用映像データの表示を終了する(S16)。テープ端でなければ、S14で指定されたテープ速度で特殊再生用映像データのトレース処理が行われ(S10)、表示部に特殊再生用映像データの映像が表示される(S12)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テープ速度を階層的に減速する再生装置に関し、より具体的には、特殊再生中にテープ速度が減速しても特殊再生用映像データを表示する再生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、画像データをMPEG方式で符号化し、磁気テープに記録する記録装置が知られている。この種のMPEG記録装置では、MPEG方式で符号化した通常再生用画像データと特殊再生用画像データが生成され、特殊再生用画像データは、テープ上の特定エリアに記録される(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図4は、磁気テープのデータ配置図である。図4において、通常再生用画像データは、16トラック単位にエラー訂正符号化処理されている。一方、特殊再生用画像データは、8倍速用データと24倍速用データからなり、8倍速用の特殊再生用データは、エラー訂正符号化処理の単位である16トラック(ECCユニット)単位で配置される。
【0004】
特殊再生用データをより具体的に説明する。8倍速用の特殊再生用映像データは、ECCユニット内のトラック番号ETN[3:0]=0及び4の記録トラックに対して、17シンクブロック分の同一データ(データ番号17〜33)がそれぞれ2回ずつ繰り返し記録される。また、8倍速用の特殊再生用映像データは、ECCユニット内トラック番号ETN[3:0]=2の記録トラックに対して、残り17シンクブロックのデータ(データ番号0〜16)が3回繰り返されて記録される。すなわち、8倍速用の特殊再生用映像データは、1ECCバンクに34シンクブロック(データ番号0〜33)が割り当てられる。
【0005】
一方、24倍速用の特殊再生用映像データは、3ECCユニット(16×3=48トラック)単位で配置される。この24倍速用の特殊再生用映像データは、ECCユニット内のトラック番号ETN[3:0]=11及び15の記録トラックに対して、8シンクブロック分のデータ(データ番号0〜3、8〜11)がそれぞれ4回ずつ繰り返されて記録される。また、24倍速用の特殊再生用映像データは、ECCユニット内のトラック番号ETN[3:0]=13の記録トラックに対して、4シンクブロック分のデータ(データ番号4〜7)が3回ずつ繰り返し記録される。すなわち、24倍速用の特殊再生用映像データは、3ECCユニットに12シンクブロック分のデータが繰り返し記録される。
【0006】
これらの8倍速用のデータと24倍速用のデータは、8倍速または24倍速で磁気テープを搬送した場合の、磁気ヘッドのトレース軌跡上に配置される。
【0007】
従来の再生装置において、特殊再生時、テープ端における停止時のテンションを低減するための、テープ端付近でテープ速度を減速させる技術も知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0008】
図5は、テープ位置と、テープ供給リール及びテープ巻取りリールの回転数をそれぞれ計数する2つのリールパルスカウンタとの関係を示す模式図である。図5を用いて、テープ端付近でテープ速度を減速させる従来方法を説明する。テープ始端BOT(Begin Of Tape)で、テープ供給リール及びテープ巻取りリールに配置されるリールパルスカウンタをリセットし、供給側から巻取側にテープを送る。テープ終端EOT(End Of Tape)までカウントアップを行うと、2つのリールパルスカウンタのカウント値に差が生じ、その差はテープ中央で最大となる。したがって、カウント値の差の程度からEOT側のテープ端付近TB,TC,TD,TEを検知可能である。また、カウント値の差の程度から、BOT側のテープ端付近TAを検知可能である。このカウント値の差は、テープの種類やテープ速度とは無関係に生ずるので、各種のテープのテープ端を検出でき、停止時のテンション上昇を低減できる。
【特許文献1】特開2004−15457号公報
【特許文献2】特開平06−168500号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に係る方法では、特定のテープ速度以外では特殊再生用映像データを再生できない。
【0010】
また、特許文献1に記載の構成において、特許文献2に記載の様に、テープ端で停止時のテンションを軽減しようとして、テープ端付近でテープ速度を減速させると、特殊再生用映像データを再生できなくなるため、サーチ再生しながらテープ位置がテープ端に近づくと、再生画像が表示されなくなるという問題がある。
本発明は、以上のような状況に鑑みてなされたものであり、テープ速度低減時でも特殊再生用映像データを表示可能な再生装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために、本発明に係る再生装置は、通常再生用映像データと、通常再生速度よりも速いn倍速再生用の第1の特殊再生用映像データ及びm倍速(m<n)再生用の第2の特殊再生用映像データが記録されたテープ状記録媒体を搬送し、前記テープ状記録媒体を磁気ヘッドによってトレースすることにより、前記通常再生用映像データ、第1の特殊再生用映像データ及び第2の特殊再生用映像データを再生する再生手段と、前記テープ状記録媒体のテープ端付近であることを検出する検出手段と、前記テープ状記録媒体を前記n倍速再生に応じた第1の速度で搬送しながら前記第2の特殊再生用映像データを前記再生手段により再生する第1の特殊再生モードにおいて、前記検出手段の出力に応じて前記テープ状記録媒体の搬送速度を前記m倍速再生に応じた第2の速度に変更する制御手段とを具備することを特徴とする。
本発明に係る再生装置は、通常再生用映像データと、通常再生速度よりも速いn倍速再生用の特殊再生用映像データとが記録されたテープ状記録媒体を搬送し、前記テープ状記録媒体を磁気ヘッドによってトレースすることにより、前記通常再生用映像データと前記特殊再生用映像データを再生する再生手段と、前記磁気ヘッドのトレース位置が前記テープ状記録媒体のテープ端付近であることを検出する検出手段と、前記テープ状記録媒体を前記n倍速再生に応じた第1の速度で搬送しながら前記再生手段により前記特殊再生用映像データを再生する特殊再生モードにおいて、前記検出手段の出力に応じて前記テープ状記録媒体の搬送速度を前記磁気ヘッドが前記特殊再生用映像データの記録位置をトレース可能な第2の速度に変更する制御手段とを具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、テープ速度を減速させても、特殊再生用映像データを表示することができる。また、メモリに保持した特殊再生用映像データをリピート表示するようにしたので、テープ速度低減制御中に特殊再生用映像データをトレースできなかった場合でも、特殊再生用映像データを表示することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら、本発明の好適な実施例を説明する。
【実施例1】
【0014】
図1は、本発明に係る再生装置の一実施例の概略構成ブロック図である。図1において、再生装置10は、磁気ビデオテープレコーダ、ビデオテープレコーダ又はデジタルビデオカメラ等であり、MPEGコーデック12、メモリ14、操作部16、CPU18、表示部20及び磁気記録テープ22を具備する。
【0015】
MPEGコーデック12は、MPEG方式により映像データと特殊再生用映像データを圧縮し、メモリ14に一時保持する。また、MPEGコーデック12はメモリ14から圧縮映像データを読み出し、伸長する。操作部16はユーザのインタフェースであり、操作ボタン(不図示)または操作キー等(不図示)等からなる。CPU18は、再生装置10の全体を制御する。表示部20は、LCD(液晶ディスプレイ)であり、映像を表示する。磁気テープ22には、図4に示した様に、通常再生用の映像データと特殊再生用の映像データが記録される。
【0016】
特殊再生処理を説明する。特殊再生時、CPU18は、図示しない磁気ヘッドにより、通常の搬送速度よりも速い所定の速度で搬送される磁気テープ22からメモリ14に特殊再生用映像データを読み出す。MPEGコーデック12は、メモリ14に読み込まれた特殊再生用映像データを順次、伸長し、表示部20に特殊再生用映像データの映像を表示する。ただし、特殊再生用映像データが非圧縮データの場合、MPEGコーデック12でデコードする必要はない。また、テープ端付近では、停止時のテンション低減のため、CPU18は、テープ速度低減制御を行う。
【0017】
図2を参照して、テープ速度減速処理における特殊再生用映像データのトレースと表示方法を説明する。図2は、特殊再生中でのテープ減速処理のフローチャートである。
【0018】
CPU18は、磁気ヘッドにより磁気テープ22上の特殊再生用映像データの記録領域がトレース可能な速度で磁気テープ22を搬送させる(S10)。ただし、本実施例では、24倍速では3ECCブロック毎に特殊再生用映像データの記録領域をトレースし、8倍速では、1ECCブロック毎に特殊再生用映像データの記録領域をトレースするものとする。また、本実施例の特殊再生の最高速度は24倍速であるとする。但し、何個のブロック毎に特殊再生用データをトレースするかは、実際の記録フォーマットによる。
【0019】
この様に、テープ22上の特殊再生用映像データの記録領域より再生された特殊再生用映像データをメモリ14に格納する(S11)。メモリ20に格納した特殊再生用映像データの映像を表示部20に表示する(S12)。ただし、本実施例では、メモリ14に格納された特殊再生用映像データの映像を逐次、表示部20に表示するものとするが、本発明は、このような逐次表示に限定されない。
【0020】
テープ端付近検出手段により、テープ端付近であるか否かを判別する(S13)。テープ端付近ならば、CPU18は、磁気テープ22の搬送速度を段階的に低くする。ただし、このとき、特殊再生用映像データの記録領域を磁気ヘッドがトレース可能な搬送速度とする(S14)。本実施例では、磁気記録テープ22の搬送制御として、24倍速から8倍速に変更する。なお、本実施例では、24倍速から8倍速へ段階的に減速するが、特殊再生用映像データの記録領域がトレース可能な速度、例えば、2倍速などであれば、これに限定されない。ただし、2倍速で搬送した場合、表示画像の更新周期は8倍速再生時に比べて長くなる。
【0021】
テープ端検出手段により、テープ端であるか否かを判別する(S15)。テープ端であれば、CPU18は、磁気記録テープ22を停止し、特殊再生用映像データの映像表示を終了する(S16)。テープ端でなければ、S14で指定されたテープ速度で特殊再生用映像データのトレース処理が続行し(S10)、表示部20に特殊再生用映像データの映像が表示される(S11,S12)。
【0022】
なお、テープ速度減速中に磁気テープ22の特殊再生用映像データをトレースできなかった場合、メモリ14に格納された特殊再生用映像データが繰り返し読み出され、対応する映像が表示部20に繰り返し表示される。
【0023】
テープ速度とテープ残量との関係を説明する。図3は、テープ速度とテープ残量の関係を示す模式図である。24倍速の特殊再生中にテープ端付近が検出された場合(S13)、CPU18は、テープ速度を24倍速から8倍速に減速する。24倍速から8倍速に減速した後、CPU18は、テープ端が検出されるまで8倍速のテープ速度を保持する。テープ端が検出されると(S15)、CPU18はテープを停止させる。
【0024】
本実施例で説明したテープ端付近検出手段とテープ端検出手段は、図4で示したリールパルスカウントとテープの残量との関係から、それぞれテープ端付近及びテープ端を検出する。従って、テープ端付近検出手段は、特許請求の範囲の第1の検出手段に対応し、テープ端検出手段は、特許請求の範囲の第2の検出手段に対応する。
【0025】
このようにして、本実施例では、磁気テープ22が減速処理され、磁気テープ22のテープ速度が変化している場合でも、表示部20に特殊再生用映像データの映像を表示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係る一実施例の再生装置の概略構成ブロック図である。
【図2】特殊再生用映像データ表示のフローチャートである。
【図3】テープ速度とテープ残量の関係の模式図である。
【図4】磁気テープのデータ配置図である。
【図5】テープ位置とリールパルスカウンタの関係を示す模式図である。
【符号の説明】
【0027】
10 再生装置
12 MPEGコーデック
14 メモリ
16 操作部
18 CPU
20 表示部
22 磁気記録テープ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通常再生用映像データと、通常再生速度よりも速いn倍速再生用の第1の特殊再生用映像データ及びm倍速(m<n)再生用の第2の特殊再生用映像データが記録されたテープ状記録媒体を搬送し、前記テープ状記録媒体を磁気ヘッドによってトレースすることにより、前記通常再生用映像データ、第1の特殊再生用映像データ及び第2の特殊再生用映像データを再生する再生手段と、
前記テープ状記録媒体のテープ端付近であることを検出する検出手段と、
前記テープ状記録媒体を前記n倍速再生に応じた第1の速度で搬送しながら前記第2の特殊再生用映像データを前記再生手段により再生する第1の特殊再生モードにおいて、前記検出手段の出力に応じて前記テープ状記録媒体の搬送速度を前記m倍速再生に応じた第2の速度に変更する制御手段
とを具備することを特徴とする再生装置。
【請求項2】
前記磁気ヘッドのトレース位置がテープ端となったことを検出する第2の検出手段を備え、前記制御手段は、前記検出手段の検出結果に応じて、前記搬送速度を前記第1の速度から前記第2の速度に変更した後、前記第2の検出手段の検出結果に応じて、前記テープ状記録媒体の搬送を停止することを特徴とする請求項1に記載の再生装置。
【請求項3】
前記再生手段により再生された前記第1及び第2の特殊再生用映像データを記憶するメモリと、前記第1及び第2の特殊再生用映像データが前記再生手段により再生されない場合に前記メモリに記憶された前記第1及び第2の特殊再生用映像データを繰り返し出力する出力手段とを備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の再生装置。
【請求項4】
通常再生用映像データと、通常再生速度よりも速いn倍速再生用の特殊再生用映像データとが記録されたテープ状記録媒体を搬送し、前記テープ状記録媒体を磁気ヘッドによってトレースすることにより、前記通常再生用映像データと前記特殊再生用映像データを再生する再生手段と、
前記磁気ヘッドのトレース位置が前記テープ状記録媒体のテープ端付近であることを検出する検出手段と、
前記テープ状記録媒体を前記n倍速再生に応じた第1の速度で搬送しながら前記再生手段により前記特殊再生用映像データを再生する特殊再生モードにおいて、前記検出手段の出力に応じて前記テープ状記録媒体の搬送速度を前記磁気ヘッドが前記特殊再生用映像データの記録位置をトレース可能な第2の速度に変更する制御手段
とを具備することを特徴とする再生装置。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−18587(P2007−18587A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−197993(P2005−197993)
【出願日】平成17年7月6日(2005.7.6)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】