説明

再生PET材を用いた床構造体及びその製造方法

【課題】床下地材構造体や二重床構造部材などの床構造体において、再生材の有効利用を図りそのリサイクル性を向上させ、かつ再生材を用いた構造物の強度、信頼性の向上を達成すること。
【解決手段】硬化性材料により形成した基本構造体1Oが所定形状の枠体30内に収納されて構成された床構造体において、枠体30は再生PET材により構成されている。再生PET材枠体30と基本構造体10との間には、アルカリ侵食防止材である侵食防止層を介在させ、基本構造体10と再生PET材枠体30とが接触しないように構成されている。これにより枠体30は、その侵食防止層によりアルカリ成分から保護され、クラックや割れの発生が防止される。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、樹脂成形材との複合材にて形成される床構造体及びその製造方法、特に、再生PET(ポリエチレン テレフタレート)材を用い、建築物や道路、歩道などの舗石として用いられる床下地材、二重床用の支持構造体等の床構造体及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
特定の樹脂成形法により形成される枠体の内部に硬化性充填材を充填して形成された床下地材は、建築物の屋上、道路、歩道、舗石などの仕上げとして広く用いられている。このような床下地材構造体は、敷設面の起伏を許容して設置することができ、良好な仕上げ状態を得ることができ、設置後の歩行性にもすぐれている。
【0003】
一方、二重床構造(フリーアクセスフロア)は、いわゆるOA機器の導入にあいまって、一般オフィスなどにおいてその需要が高まり、広く用いられている。このような二重床構造により、多種多様なOA機器の設置に伴う床下での配線の処理が可能となり、配線マネージメントが良好なものとなっている。近年ではさらに、この種のフリーアクセスフロアは、樹脂製やコンクリート製などの種々の材質の製品が提案されている。
【0004】
例えば、特公平7-99043号公報(特許文献1)の、例えば第3頁〜第4頁、第1図〜第5図では、樹脂により形成された枠体の内部に硬化性充填材を充填して形成され、その樹脂製の枠体が外表面に位置するように、すなわち硬化した充填材を上面から覆った状態となるように設置される二重床用の構造体、すなわち二重床の支持脚が示されている。
【0005】
このような種々の床構造体の分野においても、環境保護、資源有効活用、廃棄物の低減、リサイクルなどの要請から、再生材を有効利用するための動きが見られている。このような背景において、例えば、広範囲に飲料用容器として利用されている、いわゆるペットボトルなどは、その使用後におけるリサイクル活用が注目されており、再生PET(ポリエチレン テレフタレート)として、これを利用した新たな容器などの製品提供に関してめざましい発展を遂げている。例えば、特開平11-116742号公報(特許文献2)「再生樹脂を用いた成形品」の、例えば第3頁〜第6頁、図1、および特開2000-281040号公報(特許文献3)「再生多層樹脂ボトル」の、例えば第2頁〜第3頁、図1、図2等を参照。
【0006】
また、一般建築産業分野においては、断熱材、吸音材、コンクリート打設用型枠材などにおいて、再生樹脂などを利用する技術が知られている。例えば、特開2000-314191号公報(特許文献4)「プラスチック材料を用いた改良建築材料」の、例えば第5頁〜第6頁、図1、図2、および実開平6-79953号公報(特許文献5)「プラスチック系型枠材」の、例えば第5頁〜第9頁、図1を参照。
【0007】
このような傾向は、上述のフリーアクセスフロア分野においても及んでおり、再生材として代表的な再生PET材の有効利用に関する検討が行われている。特に、PP(ポリプロピレン)樹脂、ABS(アクリルニトリル ブタジエン スチレン)樹脂などを単一材料として構成している構造体については、それらを再生PET製に変え、あるいは、再生PETを一部混合させることが検討されている。
【0008】
ところで、従来の技術、例えば特開平4-221162号公報(特許文献6)「不燃性天然木化粧内装材及びその製法」の、例えば第3頁、第4頁、図1、図2において、硬化性充填材としてのコンクリート、モルタル、セメント材料はアルカリ性であるが、これに対し再生PETはアルカリ性に弱いという性質を有することが知られている。
【0009】
また、特開2001-90318号公報(特許文献7)「建築板及びその製造装置」の、例えば第3頁〜第6頁、図1においては、建物の外壁に用いられる裏面の防水機能を向上させた外壁板についての技術が開示されており、建物の外壁、外壁板のみのこの種の分野では、PE発泡層と再生PETとをシート状にラミネートして構成した裏打ち材という構成が知られている。
【0010】
【特許文献1】
特公平7-99043号公報
【特許文献2】
特開平11-11672号公報
【特許文献3】
特開2000-281040号公報
【特許文献4】
特開2000-314191号公報
【特許文献5】
実開平6-79953号公報
【特許文献6】
特開平4-221162号公報
【特許文献7】
特開2001-90318号公報。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
床構造体としての、フリーアクセスフロアの支持体の構成は、モルタルなどの流動・硬化性充填材を材料としており、これを覆う枠体としては、PP(ポリプロピレン)樹脂、PVC(ポリビニルクロライド(塩化ビニル))樹脂などが用いられている。これらの樹脂体に再生PET材が混入される場合、その混入比率によってはリサイクル効率が悪く、再生材の利用としては効果的でないという問題がある。
【0012】
また、そのような樹脂材を再生PET材にすべて置き換えた場合、そのような枠体の内部に充填されるコンクリート、モルタル、セメント材料がアルカリ性であることから(例えば、前述の特許文献6「不燃性天然木化粧内装材及びその製法」)、以下のような問題点を有している。
【0013】
即ち、上述のように硬化性充填材はアルカリ性であるが、これに対し再生PETはアルカリ性に弱いという性質を有する。これは、再生PET材のエステル結合部分がアルカリ成分で切断され、PETが分解されることによるもので、両者は相性が悪く、これらを一緒に使用することは好ましくないという問題がある。そのため、従来において、特に床構造、二重床構造に係る技術分野では、両者を一緒に構成して使用することは、一般的に敬遠され、行われていなかった。
【0014】
従って、再生PETと硬化性充填材とによってフリーアクセスフロアなどの支持体を構成した場合、硬化性充填材が再生PET材と接触することにより、再生PETの接触面へのアルカリ成分の付着、侵食により、再生PET材により構成された支持枠体が割れたり、クラックが発生するという事態が生じる。
【0015】
また、再生PET材と硬化性充填材の温度変化等による収縮度の違いによって生じるストレスにより、再生PET材の支持枠体にクラックや割れが生じるおそれもある。更に、再生PETの場合には、例えば温度変化や密着状態等の外的要因によるストレス、更には什器の移動や歩行時に加えられる荷重に対する強度や信頼性の向上が望まれている。
【0016】
上述の特許文献6の開示する技術は、無機質ボードのアルカリによる化粧内装材表面の化粧薄単板の変色を防止する樹脂フィルムを形成するものではあるが、床下地材構造体や二重床構成部材などの床構造体についての技術ではなく、また再生PET材を使用するものでもない。従って、同文献は、本願発明に係る床構造体の技術分野における再生材の有効利用という具体的側面での目的・課題、主要構成、作用・効果について開示をしたものではない。
【0017】
また、前述した特許文献7では、建物の外壁、外壁板の技術において、PE発泡層と再生PETとをシート状にラミネートして構成した裏打ち材という構成により、建築板の裏面の防水性を向上させたものであるが、本願発明のような床構造体についての技術分野、技術内容ではなく、セメントなどの硬化性充填材のアルカリ成分による悪影響の防止についての技術を提案したものではない。従ってこの文献も、本願発明に係る床構造体の目的・課題、構成、作用・効果について開示されたものではない。
発明の目的
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであり、その目的は、床下地材構造体や二重床構造部材などの床構造体において、再生材の有効利用を図り、そのリサイクル性を向上させ、かつ、再生材を用いた構造物の強度、信頼性の向上を達成することのできる再生PET材を用いた床構造体及びその製造方法を提供することにある。
【0018】
【課題を解決するための手段】
上述の目的を達成するため、請求項1に係る再生PET材を用いた床構造体は、硬化性材料により形成した基本構造体が所定形状の枠体内に収納されて構成された床構造体において、枠体は再生PET材により構成され、再生PET材枠体と基本構造体との間には、アルカリ侵食防止材である侵食防止層を介在させ、基本構造体と再生PET材枠体とが接触しないように構成されている。なお、床構造体とは、床下地材や二重床用の支持脚を含む構造体を意味する。
【0019】
この構成によれば、再生PET材により構成された枠体と基本構造体すなわちコンクリートなどの硬化材材料により形成された基本構造体との間には、例えばオレフィン系樹脂のPP樹脂やPE樹脂により形成された侵食防止層が介在されているので、再生PET材により構成された枠体は、その侵食防止層によりアルカリ成分から保護され、その影響を受けることなくクラックや割れの発生が防止されて、耐久性、信頼性が向上するものである。なお、侵食防止層としては、オレフィン系樹脂に限定されるものではなく、チタン等の金属を用いることも可能である。
【0020】
本発明によればさらに、請求項2に係る再生PET材を用いた床構造体は、アルカリ成分を有する硬化性材料により形成した基本構造体が所定形状に成形された成形体内に収納されて構成され、この成形体は、再生PET材とアルカリ侵食防止材である侵食防止材とがラミネート成形により構成された略シート状部材を、真空成形により、その外面側に再生PET材が、またその内面側に侵食防止材が形成されるように配設して構成され、基本構造体が収納される成形体の内側面に侵食防止材が形成されることによって、基本構造体と再生PET材とが接して基本構造体のアルカリ成分が再生PET材に侵食するのを防止可能としたことを特徴とする。なお、床構造体とは、床下地材や二重床用の支持脚を含む構造体を意味する。また、成形体は、床下地材や二重床用の支持脚を含む床構造体を形成するに必要な成形、例えばラミネート成形、真空成形のみならず、圧空成形、射出成形、共押出し成形等の成形方法で形成されたものを意味する。
【0021】
この構成によれば、再生PET材により構成された成形体としての枠体と基本構造体、すなわちコンクリートなどの硬化材材料により形成された基本構造体との間に、例えば、オレフィン系樹脂のPP樹脂やPE樹脂により形成された侵食防止材が介在されて層を形成しているので、再生PET材により構成された枠体は、その侵食防止層によりアルカリ成分から保護され、その影響を受けることなく、クラックや割れの発生が防止されて、耐久性、信頼性が向上する。なお、侵食防止層としては、オレフィン系樹脂に限定されるものではなく、チタン等の金属を用いることも可能である。
【0022】
請求項3に係る再生PET材を用いた床構造体は、侵食防止材が、オレフィン系樹脂にて形成されたことを特徴としている。即ち、オレフィン系樹脂により侵食防止層が形成された場合では、再生PET材のようにエステル結合部分がアルカリ成分で切断され、PETが分解されるという不具合が生じないので、侵食防止層として好適に用いることができる。
【0023】
請求項4に係る再生PET材を用いた床構造体は、床構造体を構成する硬化性材料により形成した基本構造体に少なくとも接して形成される所定形状の成形体が、接触防止材とオレフィン系接着材と再生PET材とから成る少なくとも3種3層構造を成し、接触防止材は、基本構造体の上面に、再生PET材が基本構造体に接しない成形体の最下層を構成するように形成され、オレフィン系接着材は、接触防止材の上面に、接触防止材が再生PET材に密着する接着性を有し中間層を構成するように形成され、再生PET材は、オレフィン系接着材の上面に、成形体の最上層を構成するように形成されたことを特徴とする。
【0024】
即ち、基本構造体に、接触防止材が少なくとも接して層が形成され、その上面にオレフィン系接着材が、更に再生PET材が積層されるように形成され、3種3層構造の成形体が構成される。この3種3層を成す構成により、基本構造体のアルカリ成分が再生PETへ接触し侵食されるのを確実に防止でき、成形品質の安定性、製品品質の向上が可能となる。
【0025】
請求項5に係る再生PET材を用いた床構造体は、成形体に形成された補強用のリブ部分から成形体の縁部領域への移行部分に樹脂溜まり防止用のリブ除去部分が設けられている。これにより、再生PET材を成形体である枠体の材料として用い真空成形を行う際に生じる、リブ部分から縁部に移行する部分の樹脂の盛り上がりである樹脂溜まりの現象が発生するのを回避することができる。即ち、その移行部分にはリブが形成されない、例えば切り欠き状に構成されるので、そのような樹脂溜まりの突起が設置時に悪影響を与えることがない。
【0026】
請求項6に係る再生PET材を用いた床構造体は、成形体の基本構造体が収納される部分の縁部にこの部分の内方へ膨出した基本構造体安定保持用の膨出部が形成されている。これにより、基本構造体の成形体である枠体内での安定状態をより高めることができる。
【0027】
請求項7に係る再生PETを用いた床構造体の製造方法は、再生PET材にて形成した再生PET層とアルカリ侵食防止材にて構成した侵食防止層との2層構造体を形成する2層構造体形成工程と、2層構造体を成形して侵食防止層が内面側に、また再生PET層が外面側となるように基本構造体収納部を有する成形体を形成する成形体形成工程と、成形体の基本構造体収納部に硬化性材料を充填する充填工程とを含むことを特徴とするものである。これは、2種2層の製造方法を示す形成工程を意味し、これらの工程により、硬化性材料によるアルカリ成分の悪影響を受けることなく再生PET材を有効利用でき、床構造体を容易に製造することが可能となる。
【0028】
これによって、エステル結合部分を有しない樹脂により構成したアルカリ侵食防止材、例えばPP樹脂又はPE樹脂にて構成された侵食防止層を成形体である枠体の内面側に配置した再生PET材を用いた枠体を簡単に形成することができ、二重床の支持体等の床構造体への再生PET材利用を容易なものとすることができる。
【0029】
請求項8に係る再生PET材を用いた床構造体の製造方法は、2層構造体形成工程を再生PET層と侵食防止層とをラミネート成形により合体させることを特徴としている。このラミネート成形を適用することにより、再生PET層と侵食防止層とを確実に密着して1枚のシート状に一体形成でき、次の工程に係る真空成形を、より安定且つ容易に行えることが可能となり、製造の容易化が可能となる。
【0030】
請求項9に係る再生PET材を用いた床構造体の製造方法は、成形体成形工程において、真空成形により成形体を形成することを特徴としている。これにより、成形体としての枠体を、再生PET層と侵食防止層との少なくとも2層を成す構造でも従来の単層と同様に成形することが可能となり、枠体の精度、品質の安定化が可能となる。
【0031】
請求項10に係る再生PET材を用いた床構造体の製造方法は、再生PET材にてシート状部材を形成する再生PETシート形成工程と、再生PETシートを成形して再生PETシートが外面側となるように基本構造体収納用の成形体を形成する成形体形成工程と、成形体の基本構造体収納部の内側面にアルカリ侵食防止材としての所定厚さの侵食防止層を形成する侵食防止層形成工程と、内側面に侵食防止層が形成された成形体の基本構造体収納部に硬化性材料を充填する充填工程とを含むことを特徴とするものである。これは、2種2層の再生PET材をシート状部材に形成する製造方法による形成工程を意味し、これらの工程により、硬化性材料によるアルカリ成分の悪影響を受けることない侵食防止層を容易に形成することが可能となり、再生PET材を有効利用でき、床構造体を容易に製造することが可能となる。これによって、2種2層の品質、製品品質の安定を図ることができ、リサイクル性の向上と共に、低コストで床構造体を製造することが可能となる。
【0032】
請求項11に係る再生PET材を用いた床構造体の製造方法は、再生PET材と侵食防止層とを含む成形体の2種2層の場合における総厚が、熱成形前の状態で、ほぼ480μmないしほぼ1000μmの範囲を満足することを特徴とする。この厚さの設定により、再生PET材を有効利用した成形体において、成形性の安定化、品質レベルの向上、安定維持を図ることが可能となる。
【0033】
請求項12に係る再生PET材を用いた床構造体の製造方法は、侵食防止層が塗装処理又はコーティング処理によって形成されたことを特徴とする。これにより、前述したラミネート形成による成形をしなくとも、再生PET材の所定の成形後に、侵食防止層を塗装処理又はコーティング処理によって吹き付け作業で、より簡単に形成でき、再生PETを有効利用して床構造体を容易に製品化することが可能となる。
【0034】
また、この構成は、侵食防止層を塗装やコーティング処理により形成するようにしたので、例えばPP樹脂又はPE樹脂などのエステル結合部分を有しない樹脂にて形成した侵食防止層をより薄い膜状に形成することが可能であり、侵食防止層用の材料の節約を図ることができる。
【0035】
請求項13に係る再生PET材を用いた床構造体の製造方法は、侵食防止層形成工程では、成形体の基本構造体収納部内側面の上面部領域のみに、PP樹脂又はPE樹脂などのエステル結合部分を有しない樹脂を付着させるようにしている。
【0036】
なお、上面部とは、二重床構造の支持体の場合には、基本構造体の上方から成形体が覆って設置される設置状態において、上面を意味する。逆に、床下地材等として上下を反対にして設置される場合、即ち、基本構造体の下面側を成形体が覆った状況で設置される場合には、その設置状態では底面部を意味するものである。このような構成により、床構造体として最も重要性の高い、上面部や底面部、即ち最も荷重や衝撃を受ける部分にのみ侵食防止層を形成することで、その部分の割れやクラックの発生を防止することができ、十分な強度を確保することができる。
【0037】
請求項14に係る再生PETを用いた床構造体の製造方法は、再生PET材と、基本構造体に再生PET材が接しないようにするための接触防止材と、接触防止材と再生PET材とが密着可能とするためのオレフィン系接着材とをほぼ同時に共押出し成形することにより、再生PET材が基本構造体に接しないように最上層を、またオレフィン系接着材が再生PET材と接触防止材とを接着可能とする中間層を、さらに接触防止材が基本構造体に接するように最下層を、それぞれ形成して、少なくとも3種3層のシート状部材を形成するシート状成形工程と、3種3層シート状部材を熱成形して、その内側面に接触防止材が形成されるように所定形状の成形体を形成する熱成形工程と、成形体内側面の基本構造体収納部分に硬化性材料を充填する充填工程とを含むことを特徴とする。
【0038】
これは、3種3層における共押出し成形の製造方法を示す形成工程を意味し、これらの工程により、2種2層に比べ、オレフィン系接着材を再生PET材と接触防止材の間に中間層を介在されることにより、確実に再生PET材が基本構造体に接しないようにでき、且つ、再生PET材と接触防止材とを確実に接着させることができ、共押出し成形を利用してシート状成形することで、より再生PETを有効利用した床構造体を得ることができる。
【0039】
請求項15に係る再生PETを用いた床構造体の製造方法は、再生PET材を略シート状の再生PET部材に形成する第1のシート形成工程と、再生PET材と密着可能とするためのオレフィン系接着材を備え、基本構造体に再生PET材が接しないようにするための接触防止材を略シート状の接触防止部材に形成する第2のシート形成工程と、再生PET部材が基本構造体に接しないように最上層を、またオレフィン系接着材が再生PET部材と接触防止部材とを接着可能にする中間層を、さらに接触防止部材が基本構造体に接するように最下層を、それぞれ形成するように、少なくとも3種3層の略シート状の層部材を形成する第3のシート状形成工程と、3種3層の層部材を熱成形して、その内側面に接触防止状部材が形成されるように所定形状の成形体に形成する熱成形工程と、成形体の内側面の基本構造体収納部分に硬化性材料を充填する充填工程とを含むことを特徴とする。
【0040】
これは、オレフィン系接着材を有する接触防止シートと再生PETシートとをシート状成形により3種3層に形成する製造方法を示すものであり、各シート部材によるラミネート成形を利用することによって、容易に再生PETを用いた床構造体を製造することができる。
【0041】
請求項16、請求項17、請求項18に係る再生PET材を用いた床構造体の製造方法はそれぞれ、接触防止材又は侵食防止材の厚さが、少なくともPE又はPPのオレフィン系樹脂から成り、熱成形前の状態で、少なくもほぼ30μmないしほぼ200μmの範囲を満足することを特徴とし、また、再生PET材の厚さが、熱成形前の状態で、少なくもほぼ450μmないしほぼ800μmの範囲を満足するように設定されたことを特徴とし、更に、侵食防止材又は接触防止材のオレフィン系接着部分の厚さが、再生PET材と基本構造体とを接着するオレフィン系接着材からなり、侵食防止層の厚さは、熱成形前の状態で、ほぼ20μmないしほぼ30μm(25μm±5μm)の範囲を満足するように設定されたことを特徴とする。
【0042】
これらの各厚さの設定により、再生PET材を有効利用した成形体において、熱成形における成形性を安定化することが可能となり、製品の品質レベルを向上させることが可能となる。
【0043】
請求項19に係る再生PET材を用いた床構造体の製造方法は、再生PET層とオレフィン系接着層と接触防止層とを含む成形体の3種3層の場合の総厚が、熱成形前の状態で、ほぼ500μmないしほぼ1030μm(オレフィン系接着層が0μmの場合を含む。)の範囲を満足するたことを特徴とする。この厚さの設定により、再生PET材を有効利用した成形体において、成形性の安定化、品質レベルの向上、安定維持を図ることが可能となる。
【0044】
【発明の実施の形態】
図面を参照して本発明の実施例について、まず簡単に説明する。図1、図2及び図3は本発明に係る床構造体の積層構造を説明するための部分断面図である。図1において、基本構造体10は、例えばモルタル等の硬化性材料にて形成されている。モルタル以外の材料としては、各種のセメントやコンクリート等が適当な材料である。その基本構造体10の上面の再生PET層30との間には、アルカリ侵食防止材としてのオレフィン系の樹脂等の樹脂層20、好適にはPPやPE、更には、PVC(ポリビニルクロライド)等から成る侵食防止層20が形成されている。
【0045】
この侵食防止層20は、基本構造体10に特定の再生PET材30が接するのを防止する接触防止材としての役割を有する。したがって侵食防止層20は、基本構造体10のアルカリ成分による侵食を防止できる材料であればよく、例えば特定の樹脂材、特に、好適には前述したオレフィン系樹脂材を用いる。オレフィン系樹脂材は、再生PET、コンクリート等の硬化充填材のそれぞれに対し、何れも相性がよく、両者との密着性、接着性の点でも適しており、つなぎ材として好適な樹脂材である。また、樹脂系に限らず、金属製(例えば、チタン系)の材料を用いることも可能であり、このことは後述するコーティング材や塗装材の場合も同様である。
【0046】
本実施例では、更に、最上層の再生PET層30と侵食防止層20との間に、オレフィン系接着材として変性オレフィン等の接着・粘着樹脂層21が設けられている。この変性オレフィン等の樹脂層21は、再生PET層30と侵食防止層20との接着性をより高めるための中間的性質の層として形成されている。従って、本発明の構成としては、必ずしもこのような接着性向上のための層を設ける必要はないが、図1に示すような特定の材料の接触防止材20とオレフィン系接着材21と再生PET材30とから成る少なくとも3種3層構造を形成した成形体50を構成するのが好適である。
【0047】
この接触防止材20は、基本構造体10の上面にあって、再生PET材30が基本構造体10に接しない成形体50の最下層を構成するように形成され、また、オレフィン系接着材21は、接触防止材20の上面にあって、接触防止材20が再生PET材30に密着する接着性を有し、中間層を構成するように形成されている。さらに、再生PET材30は、オレフィン系接着材21の上面に位置し、成形体50の最上層を構成するように形成されている。これにより、成形体50の全体的な成形の強度を確保することができ、3種3層としてオレフィン系接着材21の介在により確実にアルカリ成分の悪影響を防ぐことが可能となる。なお、図2に示すように、基本構造体10と最上層の再生PET層30の間に侵食防止層20を介在させるだけの構成でも、基本的にはその機能を奏することはできる。
【0048】
図3は、基本構造体10と最上層の再生PET層30との間に塗装やコーティングにより侵食防止層20を形成した例を示すが、その作用については、図1及び図2の構成と何ら変わるものではない。即ち、本発明に係る構成は、図1及び図2に示す構成のようにそれぞれの層を単体で形成した後に積層するという方法でなく、図3に示すように再生PET層30に塗装やコーティング処理を行うことにより薄い樹脂膜や金属膜を形成することによっても、達成することができる。
【0049】
図4は、実際の床構造体に本発明を適用した一例を示す概略部分断面図である。なお、本図、及び以下の図において、各層の厚さについては、構成の理解を容易にするため、実際の厚さとは異なる比率にて表示している。即ち、図示された侵食防止層20や再生PET層30は、実際の厚さより誇張されている。
【0050】
図4において、支持体1は、所望の高さを有する基本構造体10をその基本構造とし、コンクリート、セメント、モルタル等の硬化性充填材により形成されている。支持体1は、同図の下方に位置する敷設すべき、例えば建物の床(図示せず)上に載置され、この基本構造体10の高さは、二重床の支持脚としてこの支持体1が機能する場合には、二重床の配線空間を確保するための高さとしての意味を有する。
【0051】
この基本構造体10は、その全体を同図の上方から覆う成形体である枠体を構成する再生PET層30で覆われている。その再生PET層30と基本構造体10との間には、前述のアルカリ侵食防止材としてのオレフィン系樹脂、例えば、PP、PE樹脂などで構成された侵食防止層20が介在している。
【0052】
このような構成によりアルカリ性の基本構造体10による再生PET層30への悪影響、即ち、アルカリ成分による再生PETの分解を防止することができる。従って、課題となっている二重床構造体を含む種々の床構造体の分野において、再生PET材の使用の可能性を向上させることができる。
【0053】
図5は、床構造体の他の構成例を示す。図示のように、基本構造体10と再生PET層30との間に介在する侵食防止層20は、部分的に設けられている。二重床の支持脚や床下地構造体においては、枠体に対してはその上面部分に、例えば什器の移動や歩行時などの荷重や衝撃が加わるので、その部分における最外層である再生PET層30の耐久性が最も重要となる。そこでこの構成例は、各支持体1の上面部分にのみ侵食防止層20を形成したものである。勿論、上下を逆にして、基本構造体10が上面に露出するように設置した場合は、底面部に侵食防止層20が形成される。
【0054】
これにより、効率的に支持体1の上面領域における再生PET層30の割れやクラックの発生を防止することができ、その再生PET層30の上面部分の耐久性や強度の向上を図ることができる。また、このように上面領域にのみ侵食防止層20を形成することにより、その侵食防止層20形成用の樹脂材料を有効に利用し、節約が可能となる。
【0055】
図6は、侵食防止層20を塗装やコーティングにより形成した実際の適用例の構成を示す。図示のように、塗装やコーティング処理により形成された層は、厚さが薄い。しかしながら、アルカリ性による侵食防止という作用効果は、図4および図5の例と遜色なく有する。
【0056】
以下に、上述のような床構造体において、支持体1の実際の製造工程について説明する。図7から図9は、硬化性材料により形成される基本構造体10を収納する枠体の製造工程を示す。まず、図7に示したように、再生PET層30と、例えばPE樹脂の侵食防止層20をそれぞれ形成し、その後、それを合わせてラミネータ100を通過させ、圧縮することにより、ラミネート成形体40を形成する。即ち、再生PET層30と侵食防止層20とが密着した状態となっている。
【0057】
次に、図8に示したように、金型200-1と200-2により真空成形工程を行う。即ち、ラミネート成形体40を侵食防止層20が枠体の内面側、再生PET層30が外面側となるように配置して、金型による真空成形工程が行われる。
【0058】
図9は、こうして形成された真空成形による成形体としての枠体50の構成が示されている。図示のように、枠体50の上面領域50aに比較して、両側面50b及び連結部分50cの部分は、金型200によるプレス動作により伸長し、薄肉状に形成されている。
【0059】
かくしてこれら成形体、即ち枠体50は、床構造体の支持体1として機能することができる。このような支持体となる枠体50は、上述のように上面領域50aと側面50bとから成り、硬化性充填材の基本構造体10を収容可能とする略方形形状である。しかし本発明は、このような方形のブロック体形状に限らず、その他の多角形状、あいは円柱形状や円錐状に設定してもよいことは、言うまでもない。
【0060】
ここで、真空成形枠体すなわちラミネート成形体40による場合の各層の厚さを例示する。その熱成形前においては、総厚を一例では約0.5mm〜1mmに設定する。例えば、その総厚を0.725mmにした場合、再生PET層30を650μm、接着・粘着樹脂層(変性オレフィン)を備える場合25μm、侵食防止層20を50μmで形成する。
【0061】
図21を参照して、好適な1つの態様を説明する。一例としては、再生PET層30を550μm、接着層としての変性オレフィン層を25μm、侵食防止としてのPE層20を50μmで形成し、熱成形前の総厚625μmに設定している。
【0062】
本出願人による実験データに基づく特性図によれば、再生PET層30が500μm〜800μmの範囲、PE層20が理論上、0μm〜150μmの範囲が最適値であることを確認した。このことは、図21に示される、実験データに基づいた保護層の厚さによる成形性レベルを示す特性図から見ても明らかである。
【0063】
図示の例は、再生PETの耐アルカリ対策として3種3層構造を主体とし、真空成形前のラミネートシート保護層をPEとして、真空成形後による熱成形性、外観品質を確認し、最適な保護層の厚さ仕様を見出したものである。この特性図は、真空成形の場合において、再生PET層とPE層との両者各樹脂の成形収縮率が異なることに起因して、熱成形時に品質における寸法安定性及び異なる樹脂の接合による熱成形性が悪くなることから、両者の最適な厚さを設定、見出すのに必要不可欠な特性を示すものである。
【0064】
例えば、PE層は、薄ければ薄いほど最適ではある。しかし、極端に薄いと、成形によるひび、割れ等の外観不良が多発し、逆に極端に厚くすると、過剰な材料の使用によるコストの上昇となるので、最適な厚さ設定が必要となる。
【0065】
より詳細には、横軸に真空成形前のPE層などの保護層を、また縦軸に真空成形後の成形性を表すこの特性図は、それぞれPE層の厚さに対する成形性の度合いをとったグラフである。この図から分かるように、PE層が厚くなればなるほど、成形性が悪化する勾配特性を示す。ここに示す成形性は、後述するように成形品の外観品質を目視で確認して段階的にレベル分けしたものである。例えば、隅部の成形の甘さ、薄肉の均一性、ひけがないこと、片伸びしてないこと等をチェック項目とし、これらの目視による品質レベルを総合的に判断し、良否を10段階で区分したものである。ここで、レベル約10〜9が二重丸印、約9〜7が丸印で示されている。また、図示されていないが、レベル約7〜4がその下の区分、約4〜0が最下位の区分にランク分けされている。
【0066】
この特性図における試験条件は、真空成形前のシート状を想定した保護層(PE)を0μm〜300μmまでの所定の厚さに多段階設定し、再生PET層を650μm、オレフィン層を25μmの一定値として、総厚675μm〜975μmに設定した。評価基準としては、二重丸印(熱成形性、外観品質問題なしのレベル)、丸印(熱成形時間は必要であるが、問題なしのレベル)、さらに、第3ランクとして、熱成形性、外観品質上、部分的に改善すべき点があるレベル、最下位のランクとして、熱成形性、外観品質上、問題ありのレベルを基準に、外観品質を目視で確認したものである。但し、外観品質は、コーナRが2以下であること、隅部の仕上がり状態、成形性の甘さ、厚さの均一性(立上げ強度)等を基準としている。
【0067】
同図において、ほぼレベル7の近傍(丸印)以上が良好な成形性であることが理解される。そのときの保護層の厚さは、0μmを超えてほぼ200μm以下の範囲であり、少なくとも200μmを超えない厚さが最適であることを見出した(但し、オレフィン系接着層を除く)。
【0068】
図21に示す特性図により、厚さが200μm近傍を超えると、その特性の勾配の関係から急激に成形性が悪化することがわかるので、再生PET層に対し保護層(PE)は200μm付近を超えないことが必要である。さらに、約150μm近傍以下がより安定した量産性に適した厚さ設定であることが理解される。
【0069】
ここで、保護層の厚さが0μmの場合、最も成形性において良好となるが、前述したように、再生PET層と基本構造体であるコンクリートとの相性の関係(侵食防止)、成形のひび、割れ、しわ、変形等の問題が生じるので、これらを考慮すると、少なくとも30μm以上は必要不可欠であり、好適には50μm以上が必要である。この保護層、すなわち接触防止材または侵食防止材は、PEやPPに限らず、熱成形等により均一な極薄の保護層が形成可能な樹脂シートや樹脂フィルムであれば、理論的には、再生PET材が基本構造体に接しない程度の0μmを超えてほぼ30μm以下の範囲の厚さでもよいことが理解される。
【0070】
以上の実験から、少なくとも30μm以上〜200μm以下が必要であり、好適には50μm以上で150μm以下が最適な厚さの設定値であることが実験から明らかとなった。
【0071】
次に、図10を参照して、この完成した成形体である真空成形枠体50を用いて基本構造体10を形成する工程を説明する。同図では、硬化前の硬化性材料60を充填する作業が示されている。図示のように、真空成形枠体50は開放部分を上にして設置されて、その開放部内に硬化性材料60が流し込まれる。この充填作業により硬化性材料60がその開放面まで完全に充填され、満たされる。これが充分硬化するまでの時間、養生が行われる。図20のフロー(A)に示された作業がこの図7から図10までの作業に相当する。
【0072】
真空成形枠体(ラミネート成形体40)による場合の各層の厚さについて説明すると、その熱成形前においては、総厚を一例では約0.5mm〜1mmに設定する。例えば、その総厚を0.725mmにした場合、再生PET層30を650μm、接着・粘着樹脂層(変性オレフィン)を備える場合25μm、侵食防止層20を50μmで形成するのが好適である。
【0073】
図11に戻って、養生、硬化工程が終了すると、充分に平らに仕上げるため、仕上げ工程として、硬化した硬化性材料60すなわち基本構造体10の露出している側の削り、あるいはサンダー掛けなどによる表面仕上げ作業が機械的または手動で行われる。こうして完成した状態が図11に示されている。
【0074】
敷設の際は、図11に示すように基本構造体10が上側に露出する状態、あるいは図12に示したように基本構造体10が再生PET層30により上から覆われた状態のいずれかとなるように、二重床構造等に適宜、設置される。
【0075】
次に、図3に示した基本構成及び図6に示した具体的床構造体の構成である塗装あるいはコーティング製法を用いた場合の床構造体の製造工程を説明する。まず、図13に示したように、シート状に形成した再生PET層30を金型300-1及び300-2にセットし、これを真空成形することにより、図14に示したような再生PET層30のみの一層から成る真空成形枠体52が形成される。この枠体52の各部分の厚さについては、図10に関連して上述したのと同様に、実際の比率とは異なっている。
【0076】
次に、塗装処理又はコーティング処理による侵食防止層を形成する作業を図15(A)及び(B)を参照して説明する。すなわち、同図(A)に示したように、塗装材あるいはコーティング材として、例えばPPあるいはPE樹脂、シリコンオイルの塗布又は散布が行われる。同図(A)では、真空成形枠体52の上面領域の内側面のみにPPあるいはPE樹脂の散布が行われている。
【0077】
また、同図(B)に示す方法では、真空成形枠体52の内側面全域にわたって侵食防止層20を形成するため、その全体に樹脂の散布が行なわれている。この侵食防止層20を形成するための塗装・コーティングの処理には、PPあるいはPE樹脂を刷毛などで塗る方法など、種々の方法を適用することが可能である。なお、このPPあるいはPE樹脂の塗布あるいは散布は、図13に示したシート状の再生PET層30を形成した段階、すなわち金型300による真空成形を行う前の段階で行うことも可能である。
【0078】
この後、硬化性材料を充填し、硬化するまで養生する作業については、図10に示し上述した作業と同様でよく、その説明を省略する。なお、この図13から図15に示した製造工程は、図20のフロー(B)に相当する。
【0079】
この床構造体の製造工程については、種々の工程をとることが可能である。例えば、図20のフロー(C)に示したように、2種類の樹脂材のそれぞれを上述の金型における異なる位置からほぼ同時に射出する。これと同時に、熱伝導によるロールコーターでその2種類の樹脂、すなわち再生PET層30と侵食防止層20とを熱圧着あるいは熱溶着して2層の薄板又はシート体として形成することも可能である。
【0080】
この2種樹脂の共押出しによる方法の場合、その厚さは、成形前において総厚O.70mmとした場合、再生PET層30を650μm、侵食防止層20を50μmとして構成するのが好適である。なお、2層の場合について上述したが、これに限られず、例えば再生PET、PE又はPP、変成オレフィンの3種類の材料による3層も可能である。また、成形法としては、多層で共押出し成形することも可能である。
【0081】
また、例えば最初に再生PET材による1回目の射出金型成形を行って枠体を形成し、その後、冷却される前に、直ちに侵食防止材による侵食防止層を2回目の射出成形で行って、更に枠体を成形することで、これらが射出成形時の熱により結合され、異なる樹脂材における2層の枠体が形成される。このような射出2層成形による場合、総厚が例えば約2mmから5mmで樹脂成形されるとすると、例えば侵食防止層は約30μmから200μmの厚さとして構成するのが好適である。このような各層の厚さについては、硬化充填材の固着後におけるアルカリ成分に対し再生PET層を充分に保護することのできる程度の厚さがあればよい。
【0082】
このようにして製造され完成した床構造体を実際に二重床の支持脚として応用した例について、以下に説明する。
【0083】
図16は、そのような支持体1を支持脚として用いた二重床構造体の概略断面図であり、図示のように、支持体1の相互間の連結部に相当する部分400の上方の空間が配線空間Sとして利用される。この配線空間Sを覆うために、上方側の床面を形成する配線カバー70が敷設されている。なお、同図における符号イ、ロ、ハ、二はそれぞれ、配線空間Sに設置された配線を示している。
【0084】
図17は、図16に示したような支持体を用いた二重床構造体をその上方から見た図であり、配線カバー70を取り外した状態を示している。同図から、支持体1のブロック状に集中した部分410と配線空間を形成するための通路部分xとが形成されていることが理解される。
【0085】
各ブロックにはそれぞれ格子状のリブR1が形成されており、このリブR1により、成形された枠体である再生PET層30及び侵食防止層20の上面部の強度を向上させ、モルタル10の枠体50からの離脱、落下の防止にも効果がある。図18は、その支持体1のブロック状部分の部分断面図であり、図示のように所定の深さのリブR1が形成されていることが理解される。
【0086】
次に、図19(A)には、再生PET層30及び侵食防止層20から成形されて成る成形体としての枠体80の裏面側から見た形状が示されている。図示のように、リブR1を始め種々の補強用リブが形成されていることが理解される。本実施例では、このようなリブの形成により、従来のECR(エチレンコポリマーレジン)、PVC(ポリビニルクロライド)を用いて枠体を構成する場合に比べ、柔軟に形成される再生PET枠体の強度、特に上面部の強度を補強することができる。
【0087】
また、この実施例において特徴的部分としては、参照符号90で示したリブの欠除部分をなす切欠き部である。このように、床構造体の縁部であるブロックの側壁部91とブロックを小ブロックとして仕切るリブ92とが直交する部分に、この切欠き部90が形成されている。この切欠き部90を設けることにより、再生PETを用いた場合、成形時の再生PET材の流れがその材質上悪くなることによる成形ダレの発生を有効に防止している。すなわち、そのような、例えば側壁部91やリブ92の直交部分に成形ダレが生じ無用な小突起が生じるのを、有効に防止している。
【0088】
図19(B)は、本実施例における小ブロックであるそれぞれの支持体1の断面形状を示しており、それぞれの枠体部分の縁部、すなわち隣接する支持体との境界部分に、枠体50の内方に向かって少し張り出した膨出部94が形成されている。この膨出部94により、構造体完成後における枠体からの基本構造体10の落ち込みやずれを有効に防止することができる。
【0089】
以上説明したように、本実施例によれば、基本構造体10を覆う枠体として機能する再生PET層30が、アルカリ成分を含むコンクリート、セメント、モルタルなどの硬化性材料にて形成された基本構造体10に直接接触することがないので、アルカリ成分による再生PETの分解に起因する割れやクラックの発生が有効に防止される。これにより枠体の強度、耐荷重性などが向上し、信頼性を向上させることが可能となる。
【0090】
再生PET層30には、必要に応じて再生時における強度や柔軟性を確保するための改質材(樹脂材)を若干含ませることも可能である。また、この床構造体の分野においては、再生PET材の使用については、これを成形用の離型用型枠のみや成形樹脂材に一部混ぜることにより、数パーセントから数十パーセントまでしかその利用が図られていなかった。しかし、この発明を適用することにより、再生PET材の利用率が全体の50%から最大90%程度まで向上することが可能となる。
【0091】
更に、基本構造体10と再生PET層30との間の侵食防止層20の介在により、アルカリ成分からの再生PET層30の保護だけでなく、製造過程あるいは保管状況における温度変化による収縮などの外的要因による再生PET層30と基本構造体10との間のストレス、例えば密着状態によるストレスの発生も緩和され、これらストレスにより生じるクラックの発生等を有効に回避することが可能である。また、上述のように改質材の利用や密着状態により強度向上が図れるが、多層構造とすることによってもさらに衝撃強度は向上する。
【0092】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係る再生PET材を用いた床構造体及びその製造方法によれば、再生PET材にて形成された成形体である枠体に収容された基本構造体がそのアルカリ成分により再生PETに与える悪影響を効果的に防ぐことができ、床下地構造や二重床構造の分野における再生PET材の有効利用の可能性を向上させ、床構造体のリサイクル性の向上並びにコストの低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例によるラミネート成形による床構造体の基本構造を示す説明的部分断面図である。
【図2】本発明の実施例による二種樹脂共押出し成形による床構造体の基本構造を示す説明的部分断面図である。
【図3】本発明の実施例による塗装・コーティング処理による床構造体の基本構造を示す説明的部分断面図である。
【図4】本発明の実施例による床構造体としての支持体の具体的構成例を示す概略部分断面図である。
【図5】本発明の実施例による侵食防止層を部分的に形成した構成例を示す概略部分断面図である。
【図6】本発明の実施例による塗装・コーティング処理により形成した支持体の構成例を示す概略部分断面図である。
【図7】ラミネート成形による床構造体の製造工程例を示す説明図である。
【図8】ラミネート成形による床構造体の製造工程例を示す説明図である。
【図9】ラミネート成形による床構造体の製造工程例を示す説明的部分断面図である。
【図10】ラミネート成形による床構造体の製造工程例を示す説明図である。
【図11】完成した床構造体の例を示す概略部分断面図である。
【図12】完成した床構造体の例を示す概略部分断面図である。
【図13】塗装・コーティング処理による床構造体の製造工程を示す説明図である。
【図14】塗装・コーティング処理による床構造体の製造工程例を示す説明図である。
【図15】 (A)及び(B)は、塗装・コーティング処理による床構造体の製造工程例を示す説明図である。
【図16】実施例に係る床構造体を二重床構造に適用した例を示す概略部分断面図である。
【図17】本発明の床構造体を適用した二重床構造の構成例を説明する概略平面図である。
【図18】本発明の床構造体を用いた二重床構造の構成例を示す説明的部分断面図である。
【図19】本発明の実施例に係る床構造体の枠体の裏面の構成例を示す斜視図、およびその部分断面図である。
【図20】実施例に係る床構造体の製造工程の例を示すフロー図である。
【図21】実施例に係る床構造体における侵食防止層の最適な成形性レベルでの厚さの例を示した特性図である。
【符号の説明】
1 支持体
10 基本構造体
20 侵食防止層(侵食防止材、接触防止材)
21 変性オレフィン(オレフィン系接着材)
30 再生PET材(再生PET層)
50 真空成形枠体(成形体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化性材料により形成した基本構造体が所定形状の枠体内に収納されて構成された床構造体において、
前記枠体は再生PET(ポリエチレン テレフタレート)材により構成され、
該再生PET材の枠体と前記基本構造体との間には、それら基本構造体と再生PET材枠体とが接触しないようにアルカリ侵食防止材である侵食防止層を介在させたことを特徴とする再生PET材を用いた床構造体。
【請求項2】
アルカリ成分を有する硬化性材料により形成した基本構造体が所定形状に成形された成形体内に収納されて構成された床構造体において、
前記成形体は、再生PET(ポリエチレン テレフタレート)材とアルカリ侵食防止材である侵食防止材とがラミネート成形により構成された略シート状部材を、真空成形によりその外面側に再生PET材が、またその内面側に侵食防止材が形成されるように配設して構成され、
前記成形体の内側面に侵食防止材が形成されることによって、前記基本構造体と再生PET材とが接して、該基本構造体のアルカリ成分が前記再生PET材に侵食するのを防止することを特徴とする再生PET材を用いた床構造体。
【請求項3】
請求項2に記載の床構造体において、前記侵食防止材はオレフィン系樹脂にて形成されたことを特徴とする床構造体。
【請求項4】
床構造体を構成する硬化性材料により形成した基本構造体と、前記基本構造体に少なくとも接して形成される所定形状の成形体とで構成された床構造体において、
前記成形体は、接触防止材と接着材と再生PET(ポリエチレン テレフタレート)材とから成る少なくとも3種3層構造を成し、
前記接触防止材は、前記基本構造体の上面に、前記再生PET材が該基本構造体に接しない前記成形体の最下層を構成するように形成され、
前記接着材は、前記接触防止材の上面に、該接触防止材が前記再生PET材に密着する接着性を有し中間層を構成するように形成され、
前記再生PET材は、前記接着材の上面に、前記成形体の最上層を構成するように形成されたことを特徴とする再生PET材を用いた床構造体。
【請求項5】
請求項2、3または4に記載の床構造体において、前記成形体には補強用のリブ部分が形成され、該リブ部分から該成形体の縁部領域への移行部分には、樹脂溜まり防止用のリブ除去部分が設けられたことを特徴とする床構造体。
【請求項6】
請求項2ないし5のいずれかに記載の床構造体において、前記成形体が収納される部分の縁部には、該部分の内方へ膨出した基本構造体安定保持用の膨出部が形成されたことを特徴とする床構造体。
【請求項7】
硬化性材料により形成された基本構造体が所定形状の成形体内に収納され構成される床構造体の製造方法において、該方法は、
再生PET(ポリエチレン テレフタレート)材にて形成した再生PET層と、アルカリ侵食防止材にて構成した侵食防止層との2層構造体を形成する2層構造体形成工程と、
該2層構造体を成形して前記侵食防止層が内面側に、また前記再生PET層が外面側となるように前記基本構造体収納部を有する成形体を形成する成形体形成工程と、
前記基本構造体収納部に前記硬化性材料を充填する充填工程とを含むことを特徴とする再生PETを用いた床構造体の製造方法。
【請求項8】
請求項7に記載の方法において、前記2層構造体形成工程では、前記再生PET層と侵食防止層とをラミネート成形により合体させることを特徴とする床構造体の製造方法。
【請求項9】
請求項7または8に記載の方法において、前記成形体形成工程では、真空成形により前記成形体を形成することを特徴とする床構造体の製造方法。
【請求項10】
硬化性材料により形成した基本構造体が所定形状の成形体内に収納されて構成される床構造体の製造方法において、該方法は、
再生PET(ポリエチレン テレフタレート)材にてシート状部材を形成する再生PETシート形成工程と、
前記再生PETシートを成形して該再生PETシートが外面側となるように前記基本構造体収納用の成形体を形成する成形体形成工程と、
前記成形体の前記基本構造体収納部の内側面全面にアルカリ侵食防止材としての所定厚さの侵食防止層を形成する侵食防止層形成工程と、
前記内側面全面に前記侵食防止層が形成された成形体の基本構造体収納部に前記硬化性材料を充填する充填工程とを含むことを特徴とする再生PETを用いた床構造体の製造方法。
【請求項11】
請求項7または10に記載の方法において、前記再生PET材と前記侵食防止材とを含む成形体の総厚は、成形前において、ほぼ480μmないしほぼ1000μmの範囲を満足することを特徴とする床構造体の製造方法。
【請求項12】
請求項7、9または10に記載の方法において、前記侵食防止層は、塗装処理又はコーティング処理によって形成することを特徴とする床構造体の製造方法。
【請求項13】
請求項7ないし10および12のいずれかに記載の方法において、前記侵食防止層形成工程では、前記成形体の基本構造体収納部の略内側の上面領域のみに前記所定厚さの侵食防止層を形成することを特徴とする床構造体の製造方法。
【請求項14】
硬化性材料により形成した基本構造体が所定形状の成形体内に収納されて構成される床構造体の製造方法において、該方法は、
再生PET(ポリエチレン テレフタレート)材と、前記基本構造体に該再生PET材が接しないようにするための接触防止材と、該接触防止材と該再生PET材とが密着可能とするためのオレフィン系接着材とをほぼ同時に共押出し成形することにより、前記再生PET材が前記基本構造体に接しないように最上層を、また前記オレフィン系接着材が該再生PET材と前記接触防止材との接着を可能にする中間層を、さらに該接触防止材が該基本構造体に接するように最下層を、それぞれ形成して、少なくとも3種3層のシート状部材を形成するシート状成形工程と、
前記3種3層シート状部材を熱成形して、その内側面に前記接触防止材が位置するように、所定形状の成形体を形成する熱成形工程と、
前記成形体内側面の基本構造体収納部分に前記硬化性材料を充填する充填工程とを含むことを特徴とする再生PETを用いた床構造体の製造方法。
【請求項15】
硬化性材料により形成した基本構造体が所定形状の成形体内に収納されて構成される床構造体の製造方法において、該方法は、
再生PET(ポリエチレン テレフタレート)材を略シート状の再生PET部材に形成する第1のシート形成工程と、
前記再生PET材と密着可能とするためのオレフィン系接着材を備え、前記基本構造体に該再生PET材が接しないようにするための接触防止材を略シート状の接触防止部材に形成する第2のシート形成工程と、
前記再生PET部材が前記基本構造体に接しないように最上層を、また前記オレフィン系接着材が前記再生PET部材と前記接触防止部材とを接着可能にする中間層を、さらに前記接触防止部材が前記基本構造体に接するように最下層を、それぞれ形成して、少なくとも3種3層の略シート状の層部材に形成する第3のシート状形成工程と、
前記3種3層の層部材を熱成形して、その内側面に前記接触防止部材が位置するように所定形状の成形体に形成する熱成形工程と、
前記成形体内側面の基本構造体収納部分に前記硬化性材料を充填する充填工程とを含むことを特徴とする再生PETを用いた床構造体の製造方法。
【請求項16】
請求項7、10、14および15のいずれかに記載の方法において、前記接触防止材又は前記侵食防止材は、成形前において、少なくとも樹脂シート又は樹脂フィルムで成り、その厚さは、前記再生PET材が前記基本構造体に接しない厚さ、すなわち0μmを超えてほぼ200μm以下の範囲を満足することを特徴とする床構造体の製造方法。
【請求項17】
請求項7、10、14、15および16のいずれかに記載の方法において、前記再生PET材の厚さは、成形前において、少なくともほぼ450μmないしほぼ800μmの範囲を満足することを特徴とする床構造体の製造方法。
【請求項18】
請求項7、10および14ないし17のいずれかに記載の方法において、前記接触防止材又は前記侵食防止材は、成形前において、前記再生PET材と前記基本構造体とを接着するオレフィン系接着材からなり、その厚さは、ほぼ20μmないしほぼ30μm(ほぼ25μm±5μm)の範囲を満足することを特徴とする床構造体の製造方法。
【請求項19】
請求項14、15または18に記載の方法において、前記再生PET材と前記オレフィン系接着材と前記接触防止材とを含む総厚は、成形前において、ほぼ500μmないしほぼ1030μm(オレフィン系接着材が0μmの場合を含む。)の範囲を満足することを特徴とする床構造体の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate


【公開番号】特開2007−131998(P2007−131998A)
【公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2002−363482(P2002−363482)
【出願日】平成14年12月16日(2002.12.16)
【出願人】(000162135)共同カイテック株式会社 (66)
【Fターム(参考)】