説明

冗長化通信システム

【課題】少ない信号処理量によって現用系と予備系との間の同期を素早く確立することができる冗長化通信システムを提供する。
【解決手段】運用系通信装置及び予備系通信装置の各々における同期判定用メモリの指定番地内に蓄積されているパケット同士の内容が一致するか否かによって同期を判定し、同期確立を判定した場合に、パケットの読出し出力用蓄積領域を当該運用系通信装置と当該予備系通信装置とで一致させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、現用系の通信装置と予備系の通信装置とを備えた冗長化通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
通信ネットワークにおける信頼性を向上させるために、通信装置を冗長化した通信システムが知られている。具体的には、冗長化通信システムは、現用系の通信装置と予備系の通信装置とを備え、現用系の通信装置の保守時や故障発生時において、現用系から予備系に瞬時に切替える。かかる切替処理によって、通信を途切れさせることなく継続できる。なお、現用系から予備系への切替を運用中に無瞬断で実行するシステムが例えば特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−253408号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、運用中に系切替を行った場合、現用系のパケット受信バッファの蓄積状態と、予備系のパケット受信バッファの蓄積状態とが互いに異なるので、両系は互いに非同期となる。系切替時に同期を取る方法の場合、両系を同期させるまでの時間が必要となり、この間、音声遅延が生ずるという問題があった。
【0005】
これに対し、上記特許文献1に開示された構成の場合、運用中に受信バッファ内のパケットの中身(例えばシーケンス番号)を、両系の間で常に比較して同期を取ることによって、当該問題を解決している。
【0006】
しかしながら、かかる構成の場合、両系の同期状態を常時監視するので、常に同期維持のための信号処理量すなわち負荷が発生することになり、比較対象のパケット数に応じて負荷が増大してしまうという問題点があった。
【0007】
本発明は上記した如き問題点に鑑みてなされたものであって、少ない信号処理量によって現用系と予備系との間の同期を確立することができる冗長化通信システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による冗長化通信システムは、運用系通信装置及び予備系通信装置を含み、これらの装置を択一的に用いて通信網を介して到来したパケットを中継する冗長化通信システムであって、前記運用系通信装置及び前記予備系通信装置の各々は、同期判定用メモリを有し且つ前記通信網を介して到来したパケットを前記同期判定用メモリに順次蓄積する同期判定用バッファと、前記同期判定用メモリに対応する出力用蓄積メモリを有し且つ前記同期判定用メモリに蓄積されているパケットを前記出力用メモリに順次転送して蓄積しこれを出力する出力同期用バッファと、前記運用系通信装置及び前記予備系通信装置の各々における前記同期判定用メモリのうちの互いに対応する判定指定領域に蓄積されているパケット同士の少なくとも一部の内容が一致するか否かを比較判定する比較判定部と、前記比較判定部によって一致判定がなされた場合に、前記運用系通信装置及び前記予備系通信装置の双方の前記出力用メモリのうちの互いに対応する出力指定領域を指定する同期出力部と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明による冗長化通信システムによれば、少ない信号処理量で現用系と予備系との間の同期を確立することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施例である冗長化通信システムの構成を示すブロック図である。
【図2】同期確立処理ルーチンを示すフローチャートである。
【図3】現用系及び予備系各々の一次、二次、三次バッファ及びこれらに蓄積されるパケットを模式的に表した模式図であり、現用系の二次バッファにパケットが蓄積されていない場合の例である。
【図4】図3と同様の模式図であり、現用系及び予備系各々の二次バッファに蓄積される最終パケットが互いに一致しない場合の例である。
【図5】図3と同様の模式図であり、現用系及び予備系各々の二次バッファに蓄積される最終パケットが互いに一致する場合の例である。
【図6】図5の例において、現用系及び予備系各々が互いに同期した場合の例である。
【図7】図3と同様の模式図であり、同期確立後に予備系においてパケット損失が生じた場合の例を示す模式図である。
【図8】図7の状態において後続のパケットを受信したときのバッファ状態の例である。
【図9】図8の状態において後続のパケットを受信したときのバッファ状態の例である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る実施例について添付の図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0012】
図1において、冗長化通信システム1は、現用系通信装置(以下、ACT系装置と称する)10と、予備系通信装置(以下、SBY系装置と称する)20と、を含み、これらの装置10及び20を択一的に用いて、例えばインターネットなどの通信網(図示せず)を介して到来したパケットを中継する。
【0013】
ACT系装置10は、現用の通信に用いられる通信装置である。
【0014】
分配部11は、通信網(図示せず)を介して入力部30の現用系入力端子31に到来したパケットを一次バッファ12に供給すると共に、当該パケットの複製をSBY系装置20の一次バッファ22に供給する。
【0015】
一次バッファ12は、分配部11から供給されたパケットを順次蓄積し、蓄積したパケットを一定時間毎に出力するファーストイン/ファーストアウト(FIFO)型のバッファである。
【0016】
二次バッファ13は、複数の同期判定用蓄積領域を有する同期判定用メモリ13aを備え、一次バッファ12から出力されたパケットを当該同期判定用蓄積領域に順次蓄積するバッファである。二次バッファ13は、一次バッファ12の出力パケットの内容とSBY系装置20の一次バッファ22の出力パケットの内容とを比較するために用いられる。以下、二次バッファ13を同期判定用バッファとも称する。
【0017】
三次バッファ14は、二次バッファ13の同期判定用メモリ13aに対応する出力用メモリ14aを有する。出力用メモリ14aは複数の出力用蓄積領域を有する。三次バッファ14は、同期判定用メモリ13aの複数の同期判定用蓄積領域に蓄積されているパケットをポインタ情報の内容に応じて当該出力用蓄積領域に順次転送して蓄積しこれを出力するポインタ管理型のバッファである。ポインタ情報は、入力ポインタ情報14bと、出力ポインタ情報14cとからなる。出力用蓄積領域の各々にはシーケンス番号が対応付けられている。ポインタ情報は、このシーケンス番号によって1つの出力用蓄積領域を指定する。
【0018】
三次バッファ14は、入力ポインタ情報14bによって示されるシーケンス番号に対応する1つの出力用蓄積領域にパケットを蓄積する。ある1つの出力用蓄積領域にパケットを蓄積する度に、入力ポインタ情報14bが示すシーケンス番号は1ずつ繰り上がる。なお、最後のシーケンス番号に対応する出力用蓄積領域にパケットを蓄積した後には、入力ポインタ情報14bは最初のシーケンス番号に戻る。
【0019】
また、三次バッファ14は、出力ポインタ情報14cによって示されるシーケンス番号に対応する1つの出力用蓄積領域からパケットを出力する。以下、三次バッファ14を出力同期用バッファとも称する。
【0020】
信号処理部15は、三次バッファ14に蓄積されたパケットに対して順次信号処理を施して出力部40の現用系出力端子41を介して出力する。
【0021】
比較判定部16は、ACT系装置10及びSBY系装置20の各々における同期判定用蓄積領域のうちの互いに対応する領域(以下、同期判定指定領域と称する)に蓄積されているパケット同士の少なくとも一部の内容が一致するか否かを判定する。同期判定指定領域は、二次バッファ13の同期判定用メモリ13a及び二次バッファ23の同期判定用メモリ23aの各々の所定領域であり、例えば、現時点までにおいて最後に到来したパケットを蓄積する領域である。同期判定用蓄積領域の各々はアドレス番号などの制御上の領域識別情報データによって指定されており、例えばアドレス番号の小さい順にパケットが蓄積される。同期判定指定領域は、当該アドレス番号の1つに対応する同期判定用蓄積領域である。
【0022】
比較判定部16は、二次バッファ23内のパケットの特定部の内容を、例えば電気ケーブルによって形成される経路16aを介して取得する。「パケットの特定部の内容」は、パケットの例えばヘッダ情報の全部又は一部のみでも良いし、ペイロードに含まれるデータの全部又は一部のみでも良い。ヘッダ情報の一部としては、例えばUDPポート番号、シーケンス番号などが挙げられる。
【0023】
制御部17は、比較判定部16による比較結果に応じて、三次バッファ14及びSBY系装置20の三次バッファ24へのパケットの書き込みを制御する。
【0024】
複製部18は、三次バッファ14の入力ポインタ情報14b及び出力ポインタ情報14cの複製情報をSBY系装置20の三次バッファ24に供給する。これらのポインタ情報14b及び14cは、例えば電気ケーブルによって形成される経路18aを介して供給される。
【0025】
制御部17と複製部18とをまとめて同期出力部と称する。同期出力部は、比較判定部16によって一致判定がなされた場合に、ACT系装置10及びSBY系装置20の双方の出力用メモリ14a及び24aのうちの互いに対応する領域(以下、出力指定領域と称する)を指定する。当該指定は、入力ポインタ情報14b及び出力ポインタ情報14cの複製情報をSBY系装置20の三次バッファ24に供給することによってなされる。
【0026】
SBY系装置20は、ACT系装置10の予備としての通信装置である。
【0027】
分配部21は、通信網(図示せず)を介して入力部30の予備系入力端子32に到来したパケットを一次バッファ22に供給すると共に、当該パケットの複製をACT系装置10の一次バッファ12に供給する。
【0028】
一次バッファ22は、分配部21から供給されたパケットを順次蓄積し、蓄積したパケットを一定時間毎に出力するファーストイン/ファーストアウト(FIFO)型のバッファである。
【0029】
二次バッファ23は、複数の同期判定用蓄積領域を有する同期判定用メモリ23aを備え、一次バッファ22から出力されたパケットを当該同期判定用蓄積領域に順次蓄積するバッファである。二次バッファ23は、一次バッファ22の出力パケットの内容とACT系装置10の一次バッファ12の出力パケットの内容とを比較するために用いられる。以下、二次バッファ23を同期判定用バッファとも称する。
【0030】
三次バッファ24は、二次バッファ23の同期判定用メモリ23aに対応する出力用メモリ24aを有する。出力用メモリ24aは複数の出力用蓄積領域を有する。三次バッファ24は、同期判定用メモリ23aの複数の同期判定用蓄積領域に蓄積されているパケットをポインタ情報の内容に応じて当該出力用蓄積領域に順次転送して蓄積しこれを出力するポインタ管理型のバッファである。ポインタ情報は、入力ポインタ情報24bと、出力ポインタ情報24cとからなる。出力用蓄積領域の各々にはシーケンス番号が対応付けられている。ポインタ情報は、このシーケンス番号によって1つの出力用蓄積領域を指定する。
【0031】
三次バッファ24は、入力ポインタ情報24bによって示されるシーケンス番号に対応する1つの出力用蓄積領域にパケットを蓄積する。ある1つの出力用蓄積領域にパケットを蓄積する度に、入力ポインタ情報24bが示すシーケンス番号は1ずつ繰り上がる。なお、最後のシーケンス番号に対応する出力用蓄積領域にパケットを蓄積した後には、入力ポインタ情報24bは最初のシーケンス番号に戻る。
【0032】
また、三次バッファ24は、出力ポインタ情報24cによって示されるシーケンス番号に対応する1つの出力用蓄積領域からパケットを出力する。以下、三次バッファ24を出力同期用バッファとも称する。
【0033】
信号処理部25は、系切替信号に応じて、三次バッファ24に蓄積されたパケットに対して順次信号処理を施して出力部40の予備系出力端子42を介して出力する。系切替信号は、例えばACT系装置10の制御部17から発せられる。
【0034】
比較判定部26は、ACT系装置10及びSBY系装置20の各々における同期判定用蓄積領域のうちの互いに対応する領域(以下、同期判定指定領域と称する)に蓄積されているパケット同士の少なくとも一部の内容が一致するか否かを判定する。同期判定指定領域は、二次バッファ13の同期判定用メモリ13a及び二次バッファ23の同期判定用メモリ23aの各々の所定領域であり、例えば、現時点までにおいて最後に到来したパケットを蓄積する領域である。同期判定用蓄積領域の各々はアドレス番号などの制御上の領域識別情報データによって指定されており、例えばアドレス番号の小さい順にパケットが蓄積される。同期判定指定領域は、当該アドレス番号の1つに対応する同期判定用蓄積領域である。
【0035】
比較判定部26は、二次バッファ13内のパケットの特定の内容を、例えば電気ケーブルによって形成される経路26aを介して取得する。「パケットの特定の内容」は、パケットの例えばヘッダ情報の全部又は一部のみでも良いし、ペイロードに含まれるデータの全部又は一部のみでも良い。ヘッダ情報の一部としては、例えばUDPポート番号、シーケンス番号などが挙げられる。
【0036】
制御部27は、比較判定部26による比較結果に応じて、三次バッファ24及びACT系装置10の三次バッファ14へのパケットの書き込みを制御する。
【0037】
複製部28は、三次バッファ24の入力ポインタ情報24b及び出力ポインタ情報24cの複製情報をACT系装置10の三次バッファ14に供給する。ポインタ情報は、例えば電気ケーブルによって形成される経路28aを介して供給される。
【0038】
制御部27と複製部28とをまとめて同期出力部と称する。同期出力部は、比較判定部26によって一致判定がなされた場合に、ACT系装置10及びSBY系装置20の双方の出力用メモリ14a及び24aのうちの互いに対応する領域(以下、出力指定領域と称する)を指定する。当該指定は、入力ポインタ情報24b及び出力ポインタ情報24cの複製情報をACT系装置10の三次バッファ14に供給することによってなされる。
【0039】
ACT系装置10が通常通り運用されている場合には、SBY系装置20の分配部21、比較判定部26、制御部27及び複製部28は動作を停止している。
【0040】
入力部30は、例えばインターネットなどの通信網(図示せず)との間のインターフェースである。ACT系装置10を宛先として通信網から到来したパケットは、現用系入力端子31を介して分配部11に到達する。SBY系装置20を宛先として通信網から到来したパケットは、予備系入力端子32を介して分配部21に到達する。
【0041】
出力部40は、例えばインターネットなどの通信網(図示せず)との間のインターフェースである。
信号処理部15の出力パケットは現用系出力端子41を介して通信網に送出される。信号処理部25の出力パケットは予備系出力端子42を介して通信網に送出される。
【0042】
図2を参照しつつ、比較判定部16、制御部17、及び複製部18による同期確立処理について説明する。ACT系装置10が現用系として動作している前提で説明する。当該ルーチンは例えばACT系装置10の起動時から開始される。
【0043】
先ず、比較判定部16は、二次バッファ13にパケットが蓄積されているか否かを判別する(ステップS1)。
【0044】
比較判定部16によって二次バッファ13にパケットが蓄積されていないと判別された場合には、制御部17は、SBY系装置20の二次バッファ23内のパケットを全て破棄する(ステップS2)。なお、図3は、ステップS1及びS2における一次、二次、三次バッファ12〜14、22〜24及びこれらに蓄積されるパケットを示している。
【0045】
比較判定部16は、二次バッファ13にパケットが蓄積されていると判別した場合には、二次バッファ13内の同期判定指定領域のパケットの内容と、SBY系装置20の二次バッファ23内の同期判定指定領域のパケットの内容とが一致するか否かを判別する(ステップS3)。
【0046】
比較判定部16によって同期判定指定領域のパケットが一致しないと判別された場合には、制御部17は、SBY系装置20の二次バッファ23内のパケットを全て破棄する(ステップS4)。また、制御部17は、二次バッファ13内の全てのパケットを三次バッファ14に蓄積させる(ステップS5)。図4は、ステップS3〜S5における一次、二次、三次バッファ12〜14、22〜24及びこれらに蓄積されるパケットを示している。
【0047】
比較判定部16によって同期判定指定領域のパケットが一致すると判別された場合には、制御部17は、ACT系装置10とSBY系装置20とが同期したと判定する。当該判別に応じて、制御部17は、二次バッファ13内の全てのパケットを三次バッファ14に蓄積させる(ステップS6)。
【0048】
また、制御部17は、SBY系装置20の二次バッファ23内の同期判定指定領域すなわち例えば最後尾のパケットのみを三次バッファ24に蓄積させ、それ以外のパケットを破棄する(ステップS7)。
【0049】
複製部18は、三次バッファ14の入力ポインタ情報14b及び出力ポインタ情報14cを複製して、入力ポインタ情報24b及び出力ポインタ情報24cとしてSBY系装置20の三次バッファ14に与える(ステップS8)。かかる処理により、ACT系装置10の三次バッファ14の入力ポインタ情報14bと、SBY系装置20の三次バッファ24の入力ポインタ情報24bとが一致する。すなわち、三次バッファ14及び三次バッファ24において、パケットを蓄積すべき出力用蓄積領域、及びパケットを出力すべき出力用蓄積領域が一致する。図5は、ステップS6〜S8における一次、二次、三次バッファ12〜14、22〜24及びこれらに蓄積されるパケットを示している。
【0050】
図6は、同期確立後における一次、二次、三次バッファ12〜14、22〜24及びこれらに蓄積されるパケットの一例を示している。三次バッファ14に含まれる複数の出力用蓄積領域a1〜a6の各々にはシーケンス番号が対応付けられている。また、三次バッファ24に含まれる複数の出力用蓄積領域b1〜b6の各々にもシーケンス番号が対応付けられている。出力用蓄積領域a1とb1のシーケンス番号は例えば”1”であり、出力用蓄積領域a2とb2のシーケンス番号は例えば”2”であり、・・・、出力用蓄積領域a6とb6のシーケンス番号は例えば”6”である。
【0051】
ACT系装置10の三次バッファ14における入力ポインタ情報14bは、出力用蓄積領域a3を示している。SBY系装置20の三次バッファ24における入力ポインタ情報24bは、出力用蓄積領域a3に対応する出力用蓄積領域b3を示している。このように、入力ポインタ情報14b及び24bの各々は、同一シーケンス番号(例えば”3”)の出力用蓄積領域を示している。また、ACT系装置10の三次バッファ14における出力ポインタ情報14cは、出力用蓄積領域a1を示している。SBY系装置20の三次バッファ24における出力ポインタ情報24cは、出力用蓄積領域a1に対応する出力用蓄積領域b1を示している。このように、出力ポインタ情報14c及び24cの各々は、同一シーケンス番号(例えば”1”)の出力用蓄積領域を示している。
【0052】
図7は、同期確立後にSBY系装置20においてパケット損失が生じた場合における一次、二次、三次バッファ12〜14、22〜24及びこれらに蓄積されるパケットの一例を示している。
【0053】
SBY系装置20においてパケット4の損失が生じた場合の例である。パケット4の損失は、例えば分配部11から一次バッファ22にパケットを供給する過程で生じ得る。この時点において、ACT系装置10の三次バッファ14における入力ポインタ情報14bは、出力用蓄積領域a3を示している。SBY系装置20の三次バッファ24における入力ポインタ情報24bは、出力用蓄積領域a3に対応する出力用蓄積領域b3を示している。このように、入力ポインタ情報14b及び24bの各々は、同一シーケンス番号(例えば”3”)の出力用蓄積領域を示している。
【0054】
図8は、図7の状態において後続のパケットを受信した場合における一次、二次、三次バッファ12〜14、22〜24及びこれらに蓄積されるパケットの一例を示している。
【0055】
三次バッファ14は、二次バッファ13に蓄積されているパケット4を、入力ポインタ情報14bによって示される出力用蓄積領域a3に蓄積する。三次バッファ24は、入力ポインタ情報24bによって示される出力用蓄積領域b3を空き領域とする。当該蓄積の完了後、入力ポインタ情報14bは、次のシーケンス番号に対応する出力用蓄積領域a4を示す。また、入力ポインタ情報24bは、次のシーケンス番号に対応する出力用蓄積領域b4を示す。
【0056】
図9は、図8の状態において後続のパケットを受信した場合における一次、二次、三次バッファ12〜14、22〜24及びこれらに蓄積されるパケットの一例を示す模式図である。
【0057】
三次バッファ14は、二次バッファ13に蓄積されているパケット5を、入力ポインタ情報14bによって示される出力用蓄積領域a4に蓄積する。三次バッファ24は、二次バッファ23に蓄積されているパケット5を、入力ポインタ情報24bによって示される出力用蓄積領域b4に蓄積する。当該蓄積の完了後、入力ポインタ情報14bは、次のシーケンス番号に対応する出力用蓄積領域a5を示す。また、入力ポインタ情報24bは、次のシーケンス番号に対応する出力用蓄積領域b5を示す。
【0058】
このように、SBY系装置20においてパケットの損失が生じた場合には、そのパケットに対応する出力用蓄積領域(上記の例ではb3)を空き領域とし、後続のパケットを次のシーケンス番号の出力用蓄積領域(上記の例ではb4)に蓄積する。かかる動作により、同期確立後にパケット損失が生じた場合においても、ACT系装置10とSBY系装置20とが非同期状態となることを回避できる。
【0059】
上記したように、本実施例である冗長化通信システム1においては、ACT系装置10の二次バッファ13内の同期判定指定領域のパケットの内容と、SBY系装置20の二次バッファ23内の同期判定指定領域のパケットの内容とを比較して同期確立処理を行うので、少ない処理量でACT系とSBY系との間の同期を確立することができる。少ない処理用で済むので、例えば短時間での同期確立や消費電力の低減などの効果も奏する。
【0060】
要するに本発明による実施例においては、運用系通信装置及び予備系通信装置の各々における同期判定用蓄積領域に蓄積されているパケット同士の内容が一致するか否かによって同期を判定し、同期確立を判定した場合に、出力用蓄積領域を当該運用系通信装置と当該予備系通信装置とで一致させる。
【0061】
上記の実施例は、1つのSBY系装置を含む例であるが、これに限らず、冗長化通信システム1は、2つ以上のSBY系装置を含んでいても本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0062】
1 冗長化通信システム
10 現用系通信装置
11 分配部
12 一次バッファ
13 二次バッファ
13a 同期判定用メモリ
14 三次バッファ
14a 出力用メモリ
15 信号処理部
16 比較判定部
17 制御部
18 複製部
20 予備系通信装置
21 分配部
22 一次バッファ
23 二次バッファ
23a 同期判定用メモリ
24 三次バッファ
24a 出力用メモリ
25 信号処理部
26 比較判定部
27 制御部
28 複製部
30 入力部
31 現用系入力端子
32 予備系入力端子
40 出力部
41 現用系出力端子
42 予備系出力端子
a1〜a6、b1〜b6 出力用蓄積領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
運用系通信装置及び予備系通信装置を含み、これらの装置を択一的に用いて通信網を介して到来したパケットを中継する冗長化通信システムであって、
前記運用系通信装置及び前記予備系通信装置の各々は、
同期判定用メモリを有し且つ前記通信網を介して到来したパケットを前記同期判定用メモリに順次蓄積する同期判定用バッファと、
前記同期判定用メモリに対応する出力用蓄積メモリを有し且つ前記同期判定用メモリに蓄積されているパケットを前記出力用メモリに順次転送して蓄積しこれを出力する出力同期用バッファと、
前記運用系通信装置及び前記予備系通信装置の各々における前記同期判定用メモリのうちの互いに対応する判定指定領域に蓄積されているパケット同士の少なくとも一部の内容が一致するか否かを比較判定する比較判定部と、
前記比較判定部によって一致判定がなされた場合に、前記運用系通信装置及び前記予備系通信装置の双方の前記出力用メモリのうちの互いに対応する出力指定領域を指定する同期出力部と、を含むことを特徴とする冗長化通信システム。
【請求項2】
前記出力同期用バッファは、前記出力用メモリの何れか1つの領域を指定するポインタ情報に基づいて前記出力指定領域を決定することを特徴とする請求項1に記載の冗長化通信システム。
【請求項3】
前記同期出力部は、前記比較判定部によって一致判定がなされた場合に、前記ポインタ情報を前記運用系通信装置と前記予備系通信装置とで一致させることを特徴とする請求項2に記載の冗長化通信システム。
【請求項4】
前記比較判定部は、前記同期判定用メモリの制御上の領域識別情報データによって前記判定指定領域を定めることを特徴とする請求項1に記載の冗長化通信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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