説明

写真感光材料用容器

【課題】嵌合強度および防湿性に優れ、写真感光材料に影響を与えず、廃却時に焼却しても焼却炉を傷めず、自然界において、微生物、光または熱により強度が低下または分解して、環境上の問題を生じるおそれがない写真感光材料用容器の提供。
【解決手段】吸水率が6%以下、かつ曲げ弾性率が1000〜6000kgf/cm2 である分解性ポリマーを用いて成形されてなる写真感光材料用容器。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は写真感光材料用容器に関し、特に、写真フィルムパトローネを収納する容器のキャップに関し、さらに詳細には、嵌合強度および防湿性に優れ、写真感光材料に影響を与えず、廃却時に焼却しても焼却炉を傷めず、自然界において、微生物、光または熱により強度が低下または分解して、環境上の問題を生じるおそれがない写真感光材料用容器キャップに関する。
【0002】
【従来の技術】写真感光材料容器、特に、写真感光材料用容器キャップは、容器本体と嵌合し、水分の透過性を低くし、長期保存性を維持することが役割の1つである。従来、写真感光材料用容器キャップは、写真感光材料に悪影響を与えず、物理的強度確保、防湿・遮光性確保のために低密度ポリエチレン樹脂等の合成ポリマーを主材として製造されている。低密度ポリエチレンは、光、熱、各種薬品または微生物に対しても安定であり、写真感光材料の品質に悪影響を与えず、製造時の品質を長期に渡って確保するという観点からは非常に優れた材料である。
【0003】この写真感光材料用容器キャップは、使用後に回収、再使用される場合もあるが、大半は廃棄物となって焼却か埋め立てにより処分されてきた。ところで、近年、環境問題への関心が高まるとともに、写真感光材料用容器においても、環境への影響の少ないまたは全くないことが要望されるようになった。しかし、前記従来の低密度ポリエチレン等の合成ポリマーからなる写真感光材料用容器キャップは、燃焼時の発熱量が大きく、大量に焼却すると焼却炉の耐久性に影響を与え、また、埋め立てても光、熱、各種薬品または微生物に対しても安定であり、分解・腐敗せず、環境保全上の問題となるという問題があった。
【0004】そこで、特許掲載公報第2731972号には、写真感光材料の包装材料として、微生物分解性および/または光分解性を有し、写真感光材料に有害作用をもつ物質を発生することがない合成ポリマーの組成物を使用することが提案されている。同公報に記載された分解性を有するポリマーは、エステル基、エーテル基、アミド基、アルコール基、あるいはウレタン結合、イミド結合を有するものである。また、これらのポリマーは、分子内に酸素原子を多く含むため、燃焼カロリーがポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン等の合成ポリマーより低いものである。
【0005】しかし、同公報に記載の分解性を有するポリマーは、前述の分子構造を有するため、ポリマー自体の吸水率は低密度ポリエチレンよりも高く、吸水した容器に写真感光材料を保管した場合、写真感光材料に水分を供給し、却って、防湿性という容器の必要機能を満たすことができないおそれがある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】そこで、本発明の目的は、嵌合強度および防湿性において、写真感光材料に影響を与えず、所要の性能を発揮するとともに、廃却時に焼却しても焼却炉を傷めず、自然界において、微生物、光または熱により強度が低下または分解して、環境上の問題を生じるおそれがない写真感光材料用容器、特に写真感光材料用容器キャップを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】前記課題を解決するために、本発明は、吸水率が6%以下、かつ曲げ弾性率が1000〜6000kgf/cm2 である分解性ポリマーを用いて成形されてなる写真感光材料用容器を提供するものである。
【0008】以下、本発明の写真感光材料用容器(以下、「本発明の容器」という)について詳細に説明する。特に、本発明の容器の態様である写真感光材料用容器キャップを中心にして説明する。
【0009】本発明の容器は、分解性ポリマーを主材料として成るものである。この分解性ポリマーは、自然界に廃棄されたとき、微生物により分解、光分解または熱分解する性質を有するポリマーであり、生分解性ポリマーまたは光・熱分解性ポリマー、あるいは生分解性と光・熱分解性を併有するポリマーをいう。生分解性ポリマーは、使用後は自然界に存在する微生物の働きによって低分子化合物に分解され、最終的に水や二酸化炭素などの無機物に分解されるポリマーをいう。例えば、ASTM G21−70による微生物の生育試験において、ポリスチレン樹脂およびポリエチレン樹脂を用いる比較試験における微生物の生育度は、それぞれ1級および2級であり、これ以上の3級または4級の生育度を示すものをいう。また、OECDテスト・ガイドライン301C、修正MITI試験(I)によって、易生解度がポジティブな結果を示すもの、さらに同修正MITI試験(II)による本質的生分解性がポジティブな結果を示すものである。
【0010】生分解性ポリマーとしては、大別して、下記のものが挙げられる。
(1)微生物産出ポリマー(a)ポリヒドロキシブチレート/バリレート(例えば、モンサント製バイオポール)
(b)ポリβーヒドロキシ酪酸(例えば、三菱瓦斯化学製、バイオグリーン)
【0011】(2)合成ポリマー(a)ポリビニルアルコール(PVA)(例えば、クラレ製ポバール)
(b)ポリ乳酸(例えば、島津製作所製ラクティ、三井化学製レイシア、カーギル・ダウ製エコプレイ)
(c)ポリアルキルサクシネート(d)ポリカプロラクトン(PCL)(例えば、ダイセル化学工業製セルグリーンP−H)
(e)ポリエステルカーボネート(f)ポリアミノ酸(例えば、ε−ポリリジン、γ−ポリグルミン酸、ポリ−γ−メチル−L−グルタメート等)
(g)ポリエステルアミド(h)ポリサッカライド類(バクテリアセルロース、デキストラン、プルラン、カードラン、キサンタンガム、ジュランガム等)
【0012】(3)天然物系ポリマー(a)セルロースアセテート(例えば、ダイセル化学工業製セルグリーンP−CA)
(b)澱粉+PCL(例えば、日本合成化学製マタービー、チッソ製ノボン)
(c)修飾でん粉(例えば、日本コーンスターチ製エバーコーン)
(d)キトサン(例えば、アイセロ化学製ドロン)
【0013】光・熱分解性ポリマーとしては、下記のものが挙げられる。
(a)でん粉+触媒:表面をシランカップリング剤で処理したでん粉と、不飽和脂肪酸と有機金属を配合したポリマー(例えば、ノボンジャパン製、デグラ・ノボン)
(b)ビニルケトン化合物と、ポリエチレン、ポリプロピレンまたはポリスチレンとの共重合体(c)エチレン/CO/VAC三元共重合体(d)エチレンと一酸化炭素の共重合体
【0014】また、本発明において、分解性ポリマーは、前記生分解性ポリマーまたは光・熱分解性ポリマーを単独で用いてもよいし、生分解性ポリマーと光・熱分解性ポリマーを併有するものでもよく、さらに、これらは1種単独でも2種以上を組み合わせて用いてもよい。さらに、本発明において、これらの分解性ポリマーと、非分解性ポリマーとを組み合わせ、所要の分解性を付与したものを用いてもよい。例えば、非分解性ポリマー、または非分解性ポリマーと分解性ポリマーの混合物に、直鎖脂肪族炭化水素(例えば、炭素数8〜32の直鎖脂肪族炭化水素)、脂肪族ポリエステル(例えば、ポリカプロラクトン、ポリグリコール酸、ポリ尿酸またはそのエステル等の誘導体)などの微生物分解性の可塑剤を添加して、分解性を付与したものも、本発明において分解性ポリマーとして用いることができる。
【0015】さらに、微生物分解の促進剤を用いてもよい。この微生物分解の促進剤としては、コーンスターチ、ジャガイモデンプン、米デンプン、あるいはこれらの変性デンプン等の各種のでん粉を高濃度にポリマーにブレンドして得られるマスターバッチなどが挙げられる。
【0016】一般に感光材料は、温度と水分により性能が低下することが知られており、このため、フィルムは防湿機能を有する包装容器で保護されている。そこで、容器に吸水性を有する塩化カルシウムを4g入れ、40℃、湿度90%の環境下に放置し、24時間後の塩化カルシウムの吸水量が5mg以下であることが必要である。そのため、本発明の容器、特に容器キャップの主材として用いられる分解性ポリマーは、写真感光材料用容器の気密性を保持し、容器内に収容する写真感光材料の品質を維持する観点で、吸水率が6%以下、好ましくは1%以下であるものである。本発明において、吸水率は、JIS−K7209のA法にしたがって測定されるものである。
【0017】さらに、分解性ポリマーは、容器キャップに求められる嵌合強度および開けやすさを得るために、曲げ弾性率が、1000〜6000kgf/cm2 の範囲のものが用いられ、嵌合強度や容器キャップの開けやすさの点で、曲げ弾性率が2000〜4500kgf/cm2 の範囲のものが特に好ましい。曲げ弾性率が1000〜6000kgf/cm2 の範囲を外れると、嵌合強度が常温(20〜25℃)で0.5〜2.5kgの範囲をはずれ、0.5kg未満であると、容器を落としたときにキャップが外れてしまい、2.5kgより大きいと低温時に非常に開けづらくなる。
【0018】さらに、本発明で用いられる分解性ポリマーは、23℃におけるノッチ付アイゾット衝撃強度が0.8kg・cm/cm以上であるものが望ましい。23℃におけるノッチ付アイゾット衝撃強度が0.8kg・cm/cm未満であると製品の落下や加工包装工程、物流過程での衝撃により割れやクラックが発生し易くなり、容器の気密性や機能を確保できなくなり、写真感光材料の品質の低下が懸念される。
【0019】本発明に用いられる分解性ポリマーのビカット軟化点は50℃以上であることが望ましい。ビカット軟化点が50℃未満であると、夏期に太陽光に直接曝される自動車のボンネットや座席に放置された場合、また熱帯諸国や砂漠等全世界の最も過酷な温度環境で使用される場合、容器キャップの熱変形が発生し、写真感光材料を密封、防湿する機能を果たすことができなくなるおそれがある。
【0020】また、本発明で用いられる分解性ポリマーは、必要に応じて、本発明の効果を損なわない程度で、着色剤、帯電防止剤、酸化防止剤、滑剤、紫外線吸収剤、結晶造核剤、補強材、充填材等を配合することができる。
【0021】用いられる着色剤としては、例えば、下記のものが挙げられる。カーボンブラック(ガスファーネスブラック、オイルファーネスブラック、チャンネルブラック、アントラセンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンカーボンブラック、導電性カーボンブラック、サーマルブラック、ランプブラック、油煙、アニマルブラック、ベジタルブラック等)
酸化物:シリカ、ケイ藻土、アルミナ、酸化チタン、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化アンチモン、バリウムフェライト、ストロンチウムフェライト、酸化ベリリウム、軽石、軽石バルーン、アルミナ繊維等水酸化物:水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、塩基性炭酸マグネシウム等
【0022】炭酸塩:炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイト、ドーソナイト等(亜)硫酸塩:硫酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸アンモニウム、亜硫酸カルシウム等ケイ酸塩:タルク、クレー、マイカ、アスベスト、ガラス繊維、ガラスバルーン、ガラスビーズ、ケイ酸カルシウム、モンモリロナイト、ベントナイト等炭素:グラファイト、炭素繊維、炭素中空球等
【0023】その他:鉄粉、銅粉、鉛粉、錫粉、ステンレス粉、パール顔料、アルミニウム粉、硫化モリブデン、ボロン繊維、炭化ケイ素繊維、黄銅繊維、チタン酸カルシウム、チタン酸ジルコン酸鉛、ホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、ホウ酸カルシウム、ホウ酸ナトリウム、アルミニウムペースト等
【0024】有機化合物木粉(松、樫、鋸屑等)、殻繊維(アーモンド、ピーナッツ、もみ殻等)、木綿、ジュート、紙細片、セロハン片、ナイロン繊維、ポリプロピレン繊維、デンプン、芳香族ポリアミド繊維、粉砕紙、綿リンター等これらの着色剤の中でも、耐熱性および耐光性に優れ、比較的不活性な物質であるカーボンブラック、酸化チタン、光反射性アルミニウム粉末、アルミニウムペーストが好ましい。また、着色剤の添加量は、0.1〜1重量%が好ましい。また、これらの着色剤は、必要な色、あるいは遮光性等の目的に応じて選択される。例えば、高感度フィルム、特殊用途(例えば、X線用フィルム等)などの、特に遮光性を必要とする写真感光材料を収容する容器の容器キャップにおいては、カーボンブラック、酸化チタン等の遮光性の優れた着色剤を用いることが望ましい。また、収容する写真感光材料の銘柄、グレード等に応じて、容器を着色して差別する場合等には、対応した着色剤を適宜選択することができる。
【0025】また、帯電防止剤は、内部帯電防止剤と外部帯電防止剤に大別される。内部帯電防止剤の具体例としては、非イオン系では、高級アルコールのエチレンオキサイド付加体、アルキルフェノールのエチレンオキサイド付加体、エステル類(例えば、高級脂肪酸と多価アルコールのエステル、高級脂肪酸のポリエチレン−グリコールエステル等)、ポリエーテル類、アミド類(例えば、高級脂肪酸アミド、ジアルキルアミド、高級脂肪酸アミドのエチレンオキサイド付加物等)が挙げられる。
【0026】アニオン系では、アルキルアリルスルホン酸、アジピン酸、グルタミン酸、アルキルスルホン酸塩類、アルキルサルフェート、ポリオキシエチレナルキルホスフェート、脂肪酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩、およびソジウムジアルキルスルホンサクシネートが挙げられる。カチオン系では、アミン類(例えば、アルキルアミンのリン酸塩、シッフ塩基、アミドアミン、ポリエチレンイミン、アミドアミンと金属塩の複合体、アミノ酸のアルキルエステル等)、イミダゾリン類、アミンエチレンオキサイド付加体、第4級アンモニウム塩などが挙げられる。
【0027】両イオン性系では、N−アシルザルコシネート、アミノカルボン酸誘導体類、アラニン型金属塩、イミダゾリン型金属塩、カルボン酸型金属塩、ジカルボン酸型金属塩、ジアミン型金属塩、酸化エチレン基を有する金属塩等が挙げられる。また、無機電解質、金属粉末、金属酸化物、カオリン、ケイ酸塩、炭素粉末、炭素繊維等も挙げられる。
【0028】外部帯電防止剤としては、非イオン系では、多価アルコール類(例えば、グリセリン、ソルビット、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキサイド等)、多価アルコールエステル類、高級アルコールエチレン−オキサイド付加体類、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加体類、アミド類、アミド酸化エチレン付加体類等が挙げられ、また、両イオン性系では、カルボン酸類(例えば、アルキルアラニン等)、スルホン酸類等が挙げられる。
【0029】アニオン系では、カルボン酸塩、硫酸誘導体(例えば、アルキルスルホン酸塩等)、リン酸誘導体(例えば、ホスホン酸、リン酸エステル等)、ポリエステル誘導体等が挙げられる。カチオン系では、アミン類(例えば、アルキルアミン、アミドアミン、エステルアミン等)、ビニル窒素誘導体、第4級アンモニウム塩(例えば、アミド基を含むアンモニウム塩、エチレンオキサイドを含むアンモニウム塩等)、アクリル酸エステル誘導体、アクリル酸アミド誘導体、ビニルエーテル誘導体等が挙げられる。これらの帯電防止剤は、0.01〜5.0重量%の割合で添加するのが好ましい。
【0030】酸化防止剤としては、下記のものが挙げられる。
フェノール系:n−オクタデシル−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)
4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)
4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)
ステアリル−β(3,5−ジ−4−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼンテトラキス〔メチレン−3(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン等
【0031】硫黄系:ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネートジミリスチル−3,3’−チオジプロピオネートラウリルステアリルチオジプロピオネートジステアリル−3,3’−チオジプロピオネートジトリデシル−3,3’−チオジプロピオネート等リン系:トリノニルフェニルフォスファイトトリフェニルフォスファイトトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイトジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト等これらの酸化防止剤は、高効率で連続成形を行うために有効である点で、0.005〜2重量%の割合で添加することが好ましい。
【0032】また、成形サイクルの短縮、加工工程搬送時の成形品の削れ防止のため、滑剤の使用が有効である。用いられる滑剤としては、下記のものが挙げられる。
シリコン系滑剤:ジメチルポリシロキサン、カルボキシル変性シリコーンオイル(信越シリコーン、東レシリコーン等)
オレイン酸アミド系滑剤:アーモスリップCP(ライオン・アクゾ)、ニュートロン(日本精化)、ニュートロンE−18(日本精化)、アマイドO(日東化学)、アルフローE−10(日本油脂)、ダイヤミッドO−200(日本化成)等
【0033】エルカ酸アミド系滑剤:アルフローP−10(日本化成)、ニュートロンS(日本精化)等ステアリン酸アミド系滑剤:アルフローS−10(日本油脂)、ニュートロン2(日本精化)、ダイヤミッド200(日本化成)等ビス脂肪酸アミド系滑剤:ビスアマイド(日本化成)、ダイヤミッド200ビス(日本化成)、アーモワックスEBS(ライオン・アクゾ)等
【0034】アルキルアミン系滑剤:エレクトロストリッパーTS−2(花王石鹸)等炭化水素系滑剤:流動パラフィン、天然パラフィン、マイクロワックス、合成パラフィン、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、塩素化炭化水素、フロオロカーボン脂肪酸系滑剤:高級脂肪酸(C12以上が好ましい)、オキシ脂肪酸エステル系滑剤:脂肪酸の低級アルコールエステル、脂肪酸の多価アルコールエステル、脂肪酸のポリグリコールエステル、脂肪酸の脂肪アルコールエステル
【0035】アルコール系滑剤:多価アルコール、ポリグリコール、ポリグリセロール金属石けん:ラウリン酸、ステアリン酸、リシレノール酸、ナフテン酸、オレイン酸等の高級脂肪酸と、Li、Mg、Ca、Sr、Ba、Zn、Cd、Al、Sn、Pb等の金属との化合物これらの滑剤の中でも、オレイン酸アミド系滑剤が好ましく、特に、オレイン酸アミド系滑剤を0.005〜2重量%の割合で添加することが好ましい。
【0036】紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、サリシレート系、オキサゾリックアシッド系、Ni系、ヒンダードアミン系等が好ましい。
【0037】結晶造核剤は、有機造核剤と無機造核剤に大別される。有機造核剤としては、ジ−(P−メチルベンジリデン)ソルビトール、ジ−(2,4−ジメチルベンジリデン)ソルビトール、ジ−(2,4−ジエチルベンジリデン)ソルビトール、ジ−(1,3,5−トリメチルベンジリデン)ソルビトール、ジ(ペンタメチルベンジリデン)ソルビトール、1,3,2,4−ジ(メチルベンジリデン)ソルビトール、1,3−P−エチルベンジリデン−2,4−P−メチルベンジリデン−ソルビトール、1,3−P−メチルベンジリデン−2,4−P−エチルベンジリデン−ソルビトール、1,3−P−メチルベンジリデン−2,4−P−クロロベンジリデンソルビトール、1,3−P−クロロベンジリデン−2,4−P−メチルベンジリデンソルビトール、1,3−P−メチルベンジリデン−2,4−P−イソプロピルベンジリデンソルビトール、1,3−P−イソプロピルベンジリデン−2,4−P−メチルベンジリデンソルビトール、1,3−P−エチルベンジリデン−2,4−P−イソプロピルベンジリデンソルビトール、1,3−P−クロロベンジリデン−2,4−P−イソプロピルベンジリデンソルビトール、1,3,2,4−ジ(エチルベンジリデン)ソルビトール、1,3,2,4−ジ(プロピルベンジリデン)ソルビトール、1,3,2,4−ジ(メトキシベンジリデン)ソルビトール、1,3,2,4−ジ(エトキシベンジリデン)ソルビトール、1,3,2,4−ジ(P−メチルベンジリデン)ソルビトール、1,3,2,4−ジ(P−クロルベンジリデン)ソルビトール、1,3,2,4−ジ(P−メトキシベンジリデン)ソルビトール、1,3,2,4−ジ(アルキルベンジリデン)ソルビトール等が挙げられる。特に、ジベンジリデンソルビトール化合物が好ましい。
【0038】無機造核剤としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物、酸化ナトリウム等のアルカリ金属酸化物、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等のアルカリ金属炭酸塩、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化バリウム等のアルカリ土類金属水酸化物、炭酸カルシウム、酸化カルシウム等のアルカリ土類金属酸化物などが挙げられる。これらの造核剤の中でも、透明度、物理的強度、剛性等を向上させることができる点で、有機造核剤、特に、ジベンジリデンソルビトール化合物を0.01〜1.0重量%添加することが好ましい。
【0039】補強材または充填材としては、ガラス繊維、タルク、マイカ、また、鉄粉等の金属粉などの前記着色材として例示されたものを併用してもよいし、さらに、紙(古紙を含む)、布、パルプ、木粉、おが屑、おから等を用いてもよい。また、分解性ポリマーの分解を促進させるために、ヤシの実の殻繊維、紙(古紙を含む)、布、パルプ等を配合してもよい。さらに、吸水率の高い分解性ポリマーを用いる場合は、吸水率が低い充填材、例えば、ガラス繊維、タルク、クレー、マイカ、金属粉等を加えて、吸水率を調整してもよい。
【0040】さらに、本発明の容器キャップは、分解性ポリマー以外に、成形性の向上、防湿性、剛性および耐熱性の向上等を目的として、必要に応じて、他の樹脂成分を含んでいてもよい。他の樹脂成分としては、例えば、エチレン・ブテン−1共重合体樹脂、プロピレン・ブテン−1共重合体樹脂、エチレン・プロピレン・ブテン−1共重合体樹脂、ポリブテン−1樹脂、スチレン樹脂、ポリメチル・メタクリレート樹脂、スチレン・アクリロニトリル樹脂、ABS樹脂、ポリプロピレン樹脂、結晶性プロピレン−α−オレフィン共重合体樹脂、変性ポリプロピレン樹脂、変性ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン・無水マレイン酸グラフト共重合体樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂(主として塩素化ポリエチレン樹脂)、エチレン系アイオノマー樹脂(エチレンと不飽和酸との共重合体を金属で架橋した樹脂)、ポリメチルペンテン樹脂、塩化ビニル・プロピレン共重合体樹脂、エチレン・ビニルアルコール共重合体樹脂、架橋ポリエチレン樹脂(電子線照射架橋、化学的架橋等)、ポリイソブチレン樹脂、エチレン−塩化ビニル共重合体樹脂、1,2−ポリブタジエン樹脂、L−LDPE樹脂、MDPE樹脂、EEA樹脂、EVA樹脂、プロピレン・エチレン共重合体樹脂等が挙げられる。
【0041】本発明において、前記の分解性ポリマーおよび各種の添加剤、ならびに他の樹脂成分は、写真感光材料に有害作用を及ぼす物質を発生させず、写真感光材料に悪影響を与えないものあるいは組み合わせが選択される。写真感光材料に有害作用を及ぼす物質は、例えば、シアン化水素、二トリル基含有ガス、硫化水素等であり、これらは、カブリや保存性の劣化をもたらす原因となる。本発明において、写真感光材料に有害作用をなす物質を発生させないとは、40℃、60%RHで7日間の加熱調湿によっても、写真感光材料に有害作用を及ぼす物質を、例えば、ポリマー1g当たり約0.05μg以上発生させないことをいう。また、これらの分解性ポリマーおよび各種の添加材、ならびに他の樹脂成分を含む成形材料は、成形品に求められる各種特性、射出成形における成形時に求められる溶融粘度、流動性、あるいは成形条件に応じて、その成分割合、使用する成分の組み合わせ等を適宜選択することができる。
【0042】本発明の容器、特に、容器キャップの製造は、製造時に廃棄物を出さないという点で環境保全上有利であることから、ホットランナー金型で射出成形することが望ましい。また、射出成形の条件は、使用する分解性ポリマー、添加剤、他の樹脂成分、容器(容器キャップ)の形状等に応じて適宜選択される。
【0043】本発明の容器の形状は、特に制限されず、例えば、容器キャップの形状は、容器本体との組み合わせで写真感光材料用容器を収容できるものであれば、特に限定されないが、容器本体とともに、嵌合密封性を十分に発揮し、かつ容器キャップの着脱が容易なものが望ましい。
【0044】
【実施例】以下、本発明の実施例および比較例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0045】(実施例1)セルロースアセテート(ダイセル化学工業(株)製、セルグリーンPCA00)を成形材料として、住友重機工業(株)製の射出成形機(商品名:SG150)を用い、キャビティ数24のホットランナ型の金型によって、表1に示すシリンダー温度および金型温度、ならびに型締圧150tで、図1に示す写真感光材料用容器キャップ1を射出成形した。図1に示す写真感光材料用容器キャップ1は、上面に凹部2を有し、凹部2の中央には、ホットランナー型金型によるゲート部3が配設された構造を有するものである。また、成形材として用いたセルロースアセテートの吸水率および曲げ弾性率を下記の方法にしたがって測定した。さらに、得られた写真感光材料用容器キャップについて、透湿度および嵌合強度を、下記の方法にしたがって測定するとともに、総合評価を行った。結果を表2に示す。
【0046】吸水率JIS K7209のA法に準拠して測定した。
【0047】曲げ弾性率JIS K7203に準拠して測定した。
【0048】透湿度図1に示す容器本体4に、4gの塩化カルシウムを入れた後、容器キャップ1を嵌合して密封し、40℃、湿度90%RHに調整した恒温恒湿室内で24時間放置する。放置後、塩化カルシウムの吸湿による重量増加を精密天秤で測定し、重量の増加量を透湿度とする。
【0049】嵌合強度バネ秤の先端に容器キャップを挟む部品を取り付け、この部品に容器キャップを挟み、バネ秤を真上に引張って、容器キャップを容器本体から外すのに必要な力を測定し、嵌合強度とする。
【0050】総合評価写真感光材料用容器キャップとして求められる透湿度および嵌合強度の最適値に対して、それぞれの材料がどの程度の性能を示すか、また、環境上の問題を生じるか否かをも含めて下記の基準で評価した。
○ 写真感光材料用容器キャップとして非常に優れている△ 写真感光材料用容器キャップとして使用可能である× 写真感光材料用容器キャップとして不適である
【0051】(実施例2)成形材料として、ポリカプロラクトン(ダイセル化学工業(株)製、セルグリーンP−HB05)を用いた以外は、実施例1と同様にして、容器キャップを製造した。成形材料の吸水率および曲げ弾性率、ならびに得られた容器キャップについて、透湿度、嵌合強度および分解性を、下記の方法にしたがって測定または評価するとともに、総合評価を行った。結果を表2に示す。
【0052】(実施例3)成形材料として、低密度ポリエチレン(宇部興産(株)製、UBEポリエチレンZ470)80重量%、ノボンジャパン製のデグラ・ノボン(1X1025)20重量%を混合した樹脂を用いた以外は、実施例1と同様にして、容器キャップを製造した。成形材料の吸水率および曲げ弾性率、ならびに得られた容器キャップについて、透湿度、嵌合強度および分解性を、下記の方法にしたがって測定または評価するとともに、総合評価を行った。結果を表2に示す。
【0053】(実施例4)成形材料として、低密度ポリエチレン(宇部興産(株)製、UBEポリエチレンJ5019)80重量%、ノボンジャパン製のデグラ・ノボン(1X1025)20重量%を混合した樹脂を用いた以外は、実施例1と同様にして、容器キャップを製造した。成形材料の吸水率および曲げ弾性率、ならびに得られた容器キャップについて、透湿度、嵌合強度および分解性を、下記の方法にしたがって測定または評価するとともに、総合評価を行った。結果を表2に示す。
【0054】(実施例5)成形材料として、セルロースアセテート(ダイセル化学工業(株)製、セルグリーンPCA00)50重量%、東レ(株)製のアミド系エラストマー(パペックス5512MN01)50重量%を混合した樹脂を用いた以外は、実施例1と同様にして、容器キャップを製造した。成形材料の吸水率および曲げ弾性率、ならびに得られた容器キャップについて、透湿度、嵌合強度および分解性を、下記の方法にしたがって測定または評価するとともに、総合評価を行った。結果を表2に示す。
【0055】(比較例1)成形材料として、宇部興産(株)製の低密度ポリエチレン(UBEポリエチレンZ470)を用いた以外は、実施例1と同様にして、容器キャップを製造した。成形材料の吸水率および曲げ弾性率、ならびに得られた容器キャップについて、透湿度、嵌合強度および分解性を、下記の方法にしたがって測定または評価するとともに、総合評価を行った。結果を表2に示す。
【0056】(比較例2)成形材料として、東レ(株)製、アミド系エラストマー(パペックス5512MN01)80重量%、ノボンジャパン製のデグラ・ノボン(1X1025)20重量%を混合した樹脂を用いた以外は、実施例1と同様にして、容器キャップを製造した。成形材料の吸水率および曲げ弾性率、ならびに得られた容器キャップについて、透湿度、嵌合強度および分解性を、下記の方法にしたがって測定または評価するとともに、総合評価を行った。結果を表2に示す。
【0057】(比較例3)成形材料として、日本ポリオレフィン(株)製の直鎖状低密度ポリエチレン(JMA01N)80重量%、ノボンジャパン製のデグラ・ノボン(1X1025)20重量%を混合した樹脂を用いた以外は、実施例1と同様にして、容器キャップを製造した。成形材料の吸水率および曲げ弾性率、ならびに得られた容器キャップについて、透湿度、嵌合強度および分解性を、下記の方法にしたがって測定または評価するとともに、総合評価を行った。結果を表2に示す。
【0058】


【0059】
【表1】


【0060】
【発明の効果】本発明の写真感光材料用容器、特に写真感光材料用容器キャップは、嵌合強度および防湿性において、写真感光材料に影響を与えず、従来の容器キャップと同等以上の所要の性能を発揮するとともに、廃却時に焼却しても焼却炉を傷めず、自然界において、微生物、光または熱により強度が低下または分解して、環境上の問題を生じるおそれがないものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施例および比較例で成形した写真感光材料用容器キャップと、対応する容器本体の構造を示す断面図である。
【符号の説明】
1 写真感光材料用容器キャップ
2 凹部
3 ゲート部
4 容器本体

【特許請求の範囲】
【請求項1】吸水率が6%以下、かつ曲げ弾性率が1000〜6000kgf/cm2 である分解性ポリマーを用いて成形されてなる写真感光材料用容器。

【図1】
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【公開番号】特開2000−321720(P2000−321720A)
【公開日】平成12年11月24日(2000.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平11−128440
【出願日】平成11年5月10日(1999.5.10)
【出願人】(000005201)富士写真フイルム株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】