説明

写真支持体用添加剤、該添加剤の製造方法および写真支持体

【課題】 写真支持体を製造する際、その紙料に添加することによりカブリ現象の発生を低減させた写真支持体が得られる写真支持体用添加剤を提供すること。
【解決手段】 ポリアミドポリアミン−エピクロロヒドリン樹脂を含有する写真支持体用添加剤であって、(写真支持体用添加剤中に含まれるクロロヒドリン構造に由来する塩素原子の量)/(写真支持体用添加剤中に含まれる全塩素原子の量)が0.3以下である写真支持体用添加剤を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアミドポリアミン−エピクロロヒドリン樹脂に含まれるクロロヒドリン構造に由来する塩素原子の量を低減せしめた写真支持体用添加剤、該添加剤の製造方法および当該写真支持体用添加剤を含有してなる写真支持体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、デジタルカメラ等の光学機器の著しい発展に伴い、それらの画像記録材料である写真用紙には高感度が要求されるようになってきている。しかし、高感度を達成しようとすると、現像した場合に、露光を受けなかった部分にまで写真濃度が現れる、いわゆるカブリが多くなる傾向がある。そのため、カブリを解決すべく、多くの検討がなされ、例えば、乳剤層又はその隣接層に特定の化合物を添加する方法(例えば、特許文献1および特許文献2参照)や、特定のカブリ防止剤を用いる方法(特許文献3参照)などが提案されている。
【0003】
ところで、近年材料技術の発達に伴い、多くの新規材料が開発されており、これらの新規材料は画像記録材料の支持体としても利用することが増えてきているが、コスト面と取り扱い性面の理由からいまだに紙が広く用いられている。そのため、紙を支持体とした低カブリの感光材料が求められている。
【0004】
写真支持体には、現像の際に紙端部から現像液の浸透が少ないことが要求され、従来は、サイズ剤、カチオン澱粉、アクリルアミド系紙力増強剤、ポリアミドポリアミンエピハロヒドリン反応物を用いることにより、紙端部からの現像液の浸透を低減し、かつ高い強度を維持している。本出願人も、かつてサイズ剤を用いる印画紙について提案を行っている(特許文献4および特許文献5)。しかしながら、保存時のカブリが強いという問題があった。
【0005】
【特許文献1】特開昭60−101530号公報
【特許文献2】特開平2−236542号公報
【特許文献3】特開2003−221381号公報
【特許文献4】特開平05−339896号公報
【特許文献5】特開平06−146196号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、写真支持体を製造する際、その紙料に添加することによりカブリ現象の発生を低減させた写真支持体が得られる写真支持体用添加剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、前記課題を解決すべく、検討を行った結果、特定のポリアミドポリアミン系樹脂を用いることにより、得られる写真用紙のエッジ染込み耐性や強度を高度に維持しながら、保存時のカブリ現象の発生を低減することができることを見出した。
【0008】
すなわち、本発明は、ポリアミドポリアミン−エピクロロヒドリン樹脂を含有する写真支持体用添加剤であって、(写真支持体用添加剤中に含まれるクロロヒドリン構造に由来する塩素原子の量)/(写真支持体用添加剤中に含まれる全塩素原子の量)が0.3以下である写真支持体用添加剤;ポリアミドポリアミン−エピクロロヒドリン樹脂の製造方法であって、(a)25℃における50重量%水溶液の粘度が、200〜1000mPa・sであるポリアミドポリアミン水溶液を、ポリアミドポリアミンの第2級アミノ基とエピクロロヒドリンのエポキシ基の当量比(エポキシ基/第2級アミノ基)が0.8〜1.8であるエピクロロヒドリンと5〜40℃の温度で反応させ(1次保温)、次いで40〜90℃で反応させ(2次保温)、さらに(b)2次保温において、クロロヒドリン構造の脱ハロゲン化反応を行なうことを特徴とする写真支持体用添加剤の製造方法;当該写真支持体用添加剤を含有することを特徴とする写真支持体に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の写真支持体用添加剤を用い、写真支持体を製造することにより、カブリ現象の発生を低減させた写真支持体を得ることができる。また、得られる写真用紙の強度をも向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の写真支持体用添加剤は、ポリアミドポリアミン−エピクロロヒドリン樹脂を含有する写真支持体用添加剤であって、(写真支持体用添加剤中に含まれるクロロヒドリン構造に由来する塩素原子の量)/(写真支持体用添加剤中に含まれる全塩素原子の量)が0.3以下である写真支持体用添加剤に係るものである。なお、(写真支持体用添加剤中に含まれるクロロヒドリン構造に由来する塩素原子の量)/(写真支持体用添加剤中に含まれる全塩素原子の量)が0.3を超える場合には、写真支持体のカブリが強くなるだけでなく、環境衛生上好ましくない。この理由については明らかではないが、有機塩素化合物(特にクロロヒドリン構造を有するもの)が多く含まれる場合には、当該化合物が写真支持体に作用するため、カブリに悪影響を及ぼすのではないかと考えられる。ここで、「写真支持体用添加剤中に含まれる全塩素原子の量」は、ポリアミドポリアミン−エピクロロヒドリン樹脂をアルカリ加水分解し塩素をすべてイオン化した後に電位差測定法で測定した値により決定されるものであり、「写真支持体用添加剤中に含まれるクロロヒドリン構造に由来する塩素原子の量」は、ポリアミドポリアミン−エピクロロヒドリン樹脂中に存在する塩素イオンをそのまま電位差測定法で測定した値と、写真支持体用添加剤中に含まれる全塩素原子の量で求めた値との差により決定される。
【0011】
当該写真支持体用添加剤において、(写真支持体用添加剤中に含まれる、ポリアミドポリアミン−エピクロロヒドリン樹脂に結合した塩素原子の量)/(写真支持体用添加剤中に含まれる、ポリアミドポリアミンとエピクロロヒドリンの反応により生じた無機塩素原子の量)を0.25以下とすることにより、写真支持体のカブリを低減させるだけでなく、環境負荷を低減させることができるため好ましい。なお、「写真支持体用添加剤中に含まれる、ポリアミドポリアミン−エピクロロヒドリン樹脂に結合した塩素原子の量」は、写真支持体用添加剤中に含まれるクロロヒドリン構造に由来する塩素原子の量から、分子量が150以下の有機塩素化合物に含まれる塩素原子の量(ガスクロマトグラフィーにより測定)を差し引いた値により決定され、「写真支持体用添加剤中に含まれる、ポリアミドポリアミンとエピクロロヒドリンの反応により生じた無機塩素原子の量」は、ポリアミドポリアミン−エピクロロヒドリン樹脂中に存在する塩素イオンをアルカリ加水分解することなくそのまま電位差測定法で測定した値により決定される。
【0012】
また、写真支持体用添加剤中に含まれる全塩素原子の量が、ポリアミドポリアミン−エピクロロヒドリン樹脂の固形分に対し8〜17%とすることにより、湿潤紙力効果を十分に有し、低分子有機ハロゲン化合物(エピクロロヒドリン等)および写真支持体用添加剤中のクロロヒドリン構造の含有率を低減できるため好ましい。全塩素原子の量が8%未満である場合には湿潤紙力効果が低下し、17%を越える場合には低分子有機ハロゲン化合物(エピクロロヒドリン等)および写真支持体用添加剤中のクロロヒドリン構造の含有率が高くなるため好ましくない。さらに、ポリアミドポリアミン−エピクロロヒドリン樹脂中の分子量が150以下の有機塩素化合物の含有量が1%未満とすることで、環境負荷を低減させることができる。
【0013】
本発明の写真支持体用添加剤はポリアミドポリアミン−エピクロロヒドリン樹脂を含有するものであるが、当該ポリアミドポリアミン−エピクロロヒドリン樹脂はポリアミドポリアミンとエピクロロヒドリンを反応させることにより得られる。
【0014】
本発明で用いるポリアミドポリアミンは、脂肪族二塩基酸および/またはその誘導体とポリアルキレンポリアミンを反応させて得られる。脂肪族二塩基酸としては、特に制限されず公知のものが用いることができ、具体的には、例えば、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸等があげられる。脂肪族二塩基酸の誘導体としては、特に制限されず公知のものが用いることができ、具体的には、例えば、前記脂肪族二塩基酸の無水物や脂肪族二塩基酸および/またはその無水物と低級アルコール(メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール等の炭素数1〜4程度のアルコール類)を反応させて得られるエステル化合物等があげられる。また、ポリアルキレンポリアミンとしては、特に制限されず公知のものが用いることができ、具体的には、例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、イミノビスプロピルアミン等があげられる。
【0015】
なお、脂肪族二塩基酸および/またはその誘導体とポリアルキレンポリアミンとの反応は、通常、硫酸、ベンゼンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸等の触媒の存在下または不存在下に、反応温度110〜250℃程度で、2〜8時間程度に加熱することにより行なう。また、各成分の使用量は、脂肪族二塩基酸および/またはその誘導体:ポリアルキレンポリアミンを、1:0.9〜1.2程度(モル比)とすることで、十分な湿潤紙力効果を保持し、保存安定性を良好に保つことができるため好ましい。
【0016】
また、前記ポリアミドポリアミンは、25℃における50重量%水溶液の粘度が200〜1000mPa・s程度のものとすることが好ましい。前記ポリアミドポリアミンの50重量%水溶液粘度が200mPa・sより低い場合には、最終製品のポリアミドポリアミン−エピクロロヒドリン樹脂の湿潤紙力効果が十分でなくなる傾向があり、1000mPa・sより大きい場合には最終製品のポリアミドポリアミン−エピクロロヒドリン樹脂の保存安定性が十分でない傾向がある。
【0017】
得られたポリアミドポリアミンは水溶液とした後、エピクロロヒドリンと反応させてポリアミドポリアミン−エピクロロヒドリン樹脂水溶液を製造する。ポリアミドポリアミンに対するエピクロロヒドリンの使用量は、特に制限されないが、ポリアミドポリアミン−エピクロロヒドリン樹脂水溶液の保存安定性、湿潤紙力効果等から、通常、エピクロロヒドリンのエポキシ基とポリアミドポリアミンの第2級アミノ基の当量比(エポキシ基/第2級アミノ基)を0.8以上とすることが好ましく、低分子有機塩素化合物の生成量の低減および製造時間を考慮すると、前記当量比は1.8以下とすることが好ましい。
【0018】
前記ポリアミドポリアミンとエピハロヒドリンとの反応は、ポリアミドポリアミンにエピハロヒドリンを付加させる工程と、さらに架橋により増粘する工程を含む。かかる反応の反応温度は、通常、5〜90℃程度が好ましく、反応液は通常、25〜70重量%程度とするのが好ましい。かかる反応条件は適宜に調整して行なうことができるが、エピハロヒドリンの副反応を抑え易く、また反応の制御が容易なことから、反応工程は、ポリアミドポリアミンにエピクロロヒドリンを付加させる工程(反応温度5〜40℃:1次保温工程)と、架橋反応により更に増粘させる工程(反応温度40〜90℃:2次保温工程)の2段階に設定して行なうのが好ましい。反応工程を2段階に設定する場合、反応液濃度は、前記1次保温工程の濃度に比べて2次保温工程の濃度が同等またはそれ以下となるようにするのが好ましい。反応液の濃度は、たとえば、1次保温工程では25〜70重量%程度、2次保温工程では10〜25重量%程度に調整するのが好ましい。特に2次保温工程では、ポリアミドポリアミン−エピクロロヒドリン付加物の濃度を10〜25重量%とするのが、写真支持体用添加剤中に含まれる全塩素原子の量に対するクロロヒドリン構造に由来する塩素原子の量の減少させるためより好ましい。なお、2次保温工程中に写真支持体用添加剤中に含まれる全塩素原子の量に対するクロロヒドリン構造に由来する塩素原子の量の減少させるため脱ハロゲン化反応を行っても良い。クロロヒドリン構造の脱ハロゲン化の方法としては、例えば、アミン系化合物を添加する方法が挙げられる。
【0019】
アミン系化合物としては、特に制限されず公知のものを使用することができ、たとえば、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジメチルアミン、トリエチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、ピリジン等の単官能性アミン化合物、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、イミノビスプロピルアミン等のポリアルキレンポリアミンやポリビニルアミン等の多官能性アミン化合物等が挙げられる。これらアミン系化合物は、ポリアミドポリアミン−エピクロロヒドリン樹脂水溶液中の有機塩素化合物と反応して当該樹脂を脱ハロゲン化する。アミン系化合物の使用量としては、ポリアミドポリアミン−エピクロロヒドリン樹脂水溶液中に存在する有機塩素化合物の含有量に応じて適宜に調整することができるが、通常、原料として用いるエピクロロヒドリン1molに対して0.01〜2mol程度とするのが好ましい。
【0020】
また、2次保温は写真支持体用添加剤中に含まれるクロロヒドリン構造に由来する塩素原子の量/写真支持体用添加剤中に含まれる全塩素原子の量が少なくとも0.3以下になるまで行われなければならない。
【0021】
前記ポリアミドポリアミンとエピクロロヒドリンとの反応は、最終的に得られるポリアミドポリアミン−エピクロロヒドリン樹脂水溶液の25℃における25重量%水溶液の粘度が、10〜500mPa・s程度の範囲になるように行なうことが好ましい。最終製品の写真支持体用添加剤としての性能面から、前記水溶液の粘度は25mPa・s以上がより好ましく、また最終製品の保存安定性の点からは400mPa・s以下とすることがより好ましい。なお、前記ポリアミドポリアミン−エピクロロヒドリン樹脂水溶液の粘度を前記範囲に調整するには、通常、3〜20時間程度、反応させることが好ましい。特に、反応温度を2段階に設定する場合には、1次保温時間を、1〜10時間程度、2次保温時間を、0.5〜10時間程度とするのが好ましい。
【0022】
こうして得られた本発明のポリアミドポリアミン−エピクロロヒドリン樹脂水溶液は、必要により水を加えて水溶液濃度を10〜40重量%程度に調整し、さらに、硫酸、硝酸、リン酸などの無機酸、ギ酸、酢酸等の有機酸を加えて水溶液のpHを2〜4程度に調整して、写真支持体用添加剤とする。
【0023】
本発明の適用対象である写真支持体は、前記写真支持体用添加剤を含有するものであれば特に制限されず公知のものを用いることができる。通常は、当該支持体としては、経済性や取り扱い性の面から紙を基本とする。当該支持体は、紙単独でもよいが、耐水性を高めるため、少なくとも一面に熱可塑性ポリマー層を設けたものでも良い。当該熱可塑性ポリマー層は、1層であっても2層以上の複層であってもよい。2層以上の場合には、例えば、2軸延伸ポリマーシートの複層、または他の未延伸樹脂等との複層であってもよい。なお、乳剤層を設ける面の樹脂層(以後、表樹脂層という)中には白色顔料を含有していることが好ましい。
【0024】
本発明の適用対象である支持体に用いられる紙としては、一般に写真用印画紙に用いられる原料から選択できる。例えば天然パルプ、合成パルプ、天然パルプと合成パルプの混合物の他、各種の抄き合わせ紙用原料を挙げることができる。一般には針葉樹パルプ、広葉樹パルプ、針葉樹パルプと広葉樹パルプの混合パルプ等を主成分とする天然パルプが広く応用できる。中性紙、酸性紙他いかなるものでも良いが、写真用印画紙グレードの原紙を使用することが好ましく、特に写真用グレードの中性紙が好ましい。紙の厚さは40μmから250μmが好ましい。
【0025】
さらに、前記紙支持体中には、本発明の写真支持体用添加剤の他に、一般に製紙で用いられるサイズ剤、定着剤、紙力増強剤、填料、帯電防止剤、染料、カブリ防止剤等の添加剤が配合されていてもよく、また表面サイズ剤、表面紙力剤、帯電防止剤等を適宜表面に塗布したものであってもよい。当該サイズ剤としてはアルキルケテンダイマーを主成分とするサイズ剤が好適に用いられ、更にはカチオン化された脂肪酸系のサイズ剤も好適に併用される。
【0026】
少なくとも一面に熱可塑性ポリマー層を設けたレジンコート紙は、例えば、熱可塑性ポリマーを190℃〜350℃程度の条件下で溶融押出法により無延伸フィルムを形成された後、2軸延伸処理を行ってシート作製することにより得られる。
【0027】
2軸延伸に適した熱可塑性ポリマー樹脂としては、ポリオレフィン類、ポリエステル類、ポリアミド類、ポリカーボネート類、セルロースエステル類、ポリスチレン、ポリビニル樹脂、ポリエーテル類、ポリスルホンアミド類、ポリイミド類、ポリウレタン類、ポリビニリデン類、ポリアセタール類等の熱可塑性ポリマーが挙げられるが、ポリプロピレン等のポリオレフィン類、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル類、ポリスチレンが好ましい。
【0028】
2軸延伸法については、チューブラー法、逐次2軸延伸のフラットフィルム法、同時2軸延伸のフラットフィルム法、およびオクトバス法が知られており、これらの方法を用いて本発明の2軸延伸ポリマーシートを作製することができる。
【0029】
表樹脂層中の2軸延伸ポリマーシートに含有する白色顔料は、例えば、ルチル型二酸化チタン、アナターゼ型二酸化チタン、硫酸バリウム、ステアリン酸バリウム、シリカ、アルミナ、酸化ジルコニウム、カオリン等を用いることができるが、種々の理由から、中でも二酸化チタンが好ましい。
【0030】
二酸化チタンとしては、アナターゼ型、ルチル型のどちらでも良いが、白色度を優先する場合はアナターゼ型二酸化チタンを、また鮮鋭度を重視する場合はルチル型二酸化チタンが好ましい。白色度と鮮鋭度の両方を考慮してアナターゼ型二酸化チタン、ルチル型二酸化チタンをブレンドして用いても良い。
【0031】
使用される二酸化チタンは、一般に二酸化チタンの活性を抑え黄変を防止する為、その表面に含水酸化アルミニウム、含水酸化珪素等の無機物質で表面処理したもの、多価アルコール、多価アミン、金属石鹸、アルキルチタネート、ポリシロキサン等の有機物質で表面を処理したもの、および無機、有機の処理剤を併用して表面処理したものを使用できる。表面処理量は二酸化チタンに対して無機物質で0.2重量%〜2.0重量%、有機物質で0.1重量%〜1.0重量%程度が好ましい。二酸化チタンの粒径としては、0.1μm〜0.4μm程度が好ましい。
【0032】
表樹脂層中の白色顔料を含有する2軸延伸ポリマーシートの厚さは、好ましくは5〜30μmである。
【0033】
表樹脂層中の白色顔料を含有する2軸延伸ポリマーシートは、基紙と接着層を介して接着させる。接着層を用いた接着方法としては、ポリオレフィン類、ポリエステル類、ポリアミド類、ポリカーボネート類、セルロースエステル類、ポリスチレン、ポリビニル樹脂、ポリエーテル類、ポリスルホンアミド類、ポリイミド類、ポリウレタン類、ポリビニリデン類、ポリアセタール類等の熱可塑性ポリマーを溶融して2軸延伸ポリマーシートと基紙の間に塗布しニップして接着させる方法、紫外線硬化樹脂モノマーを2軸延伸ポリマーシートと基紙の間に塗布した後に紫外線を照射して紫外線硬化樹脂を硬化させて接着させる方法、電子線硬化樹脂モノマーを2軸延伸ポリマーシートと基紙の間に塗布した後に電子線を照射して電子線硬化樹脂を硬化させて接着させる方法が挙げられる。
【0034】
表樹脂層中の2軸延伸ポリマーシートと乳剤層の間に新たな樹脂層を設けても構わない。これらの樹脂層としてはポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン類、ポリエステル類、ポリアミド類、ポリカーボネート類、セルロースエステル類、ポリスチレン、ポリビニル樹脂、ポリエーテル類、ポリスルホンアミド類、ポリイミド類、ポリウレタン類、ポリビニリデン類、ポリアセタール類等の熱可塑性ポリマーを溶融押出法により白色顔料を含有する2軸延伸ポリマーシート上にラミネートする方法、白色顔料を含有する2軸延伸ポリマーシート上に紫外線硬化樹脂モノマーを塗布した後に紫外線を照射して紫外線硬化樹脂を硬化させる方法、白色顔料を含有する2軸延伸ポリマーシート上に電子線硬化樹脂モノマーを塗布した後に電子線を照射して電子線硬化樹脂を硬化させる方法が挙げられる。
【0035】
2軸延伸ポリマーシートと乳剤層の間の樹脂層には白色顔料を含有しなくてもよいが、白色顔料を含有する方が好ましい。表樹脂層中の2軸延伸ポリマーシートやこのシートと乳剤層の間の樹脂層には、白色性を改良するため群青、油溶性染料等の微量の青味付剤や赤味付剤を添加してもよい。
【0036】
本発明の写真支持体は、必要に応じて本発明の紙支持体の表樹脂層表面にコロナ放電、紫外線照射、火炎処理、プラズマ処理等を施した後、直接または下塗層(支持体表面の接着性、帯電防止性、寸度安定性、耐摩擦性、硬さ、ハレーション防止性、摩擦特性および/またはその他の特性を向上するための1層または2層以上の下塗層)を介して塗布されていてもよい。
【0037】
本発明の紙支持体の表樹脂層と逆側の層(以後、裏面樹脂層という)としては、従来の紙支持体に用いられるポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン類が用いられることが好ましいが、他に2軸延伸ポリマーシートを含有する樹脂層を用いてもよい。これらのポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン類は、溶融押出法により基紙上にラミネートされる。厚さに特に制限は無いが、5〜50μmが好ましい。
【0038】
裏面樹脂層が2軸延伸ポリマーシートを含有する樹脂層では、2軸延伸ポリマーシートは前記の表樹脂層の2軸延伸ポリマーシートと同様の方法によりシートを形成させたのち、前記と同様の方法により基紙を接着させることができる。裏面樹脂層の2軸延伸ポリマーシートのポリマー樹脂は、表樹脂層の2軸延伸ポリマーシートのポリマー樹脂と異なっていてもよいが、同じ樹脂の方が好ましい。裏面樹脂層中の2軸延伸ポリマーシート裏面樹脂層の厚さは特に制限は無いが、5〜30μmが好ましい。
【実施例】
【0039】
以下に実施例をあげて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、各例中「%」はいずれも重量基準である。
【0040】
製造例1(ポリアミドポリアミンの製造)
温度計、冷却器、攪拌機および窒素導入管を備えたフラスコに、アジピン酸730g(5モル)およびジエチレントリアミン516g(5モル)を仕込み、生成する水を系外に除去しながら昇温し、120〜200℃で4時間反応した後、水1100gを徐々に加えて固形分濃度50%、粘度400mPa・s(25℃)のポリアミドポリアミンの水溶液を得た。
【0041】
実施例1
温度計、冷却器および攪拌機を備えたフラスコに、製造例1で得られたポリアミドポリアミン水溶液400gに反応液濃度が40%になるように水238gを仕込み、15℃でエピクロロヒドリン92g(当量比(エピクロロヒドリンのエポキシ基/ポリアミドポリアミンの第2級アミノ基)=1.1)を1.5時間かけて滴下した後、30℃に昇温し、同温度で4時間保温し、さらに水67.5gを加えた後、55℃に昇温して同温度で1時間保温した。次いで、50%ジメチルアミンを45g(0.5mol)を加えた後(ポリアミドポリアミン−エピクロロヒドリン付加物の濃度は35%)、引き続き同じ温度で1時間保温した。次いで、水490.5g、62.5%硫酸50gを加えて冷却し、固形分濃度25%、粘度220mPa・s(25℃)、pH2.6のポリアミドポリアミン−エピクロロヒドリン樹脂水溶液を得た。
【0042】
実施例2
実施例1において、脱ハロゲン化のアミン系化合物を、30%トリメチルアミン98.3g(0.5mol)に替えて加えた以外は、実施例1と同様の反応を行い、同様の性状のポリアミドポリアミン−エピクロロヒドリン樹脂水溶液を得た。
【0043】
実施例3
実施例1において、脱ハロゲン化のアミン系化合物を、ジエチレントリアミン51.5g(0.5mol)に替えて加えた以外は、実施例1と同様の反応を行い、同様の性状のポリアミドポリアミン−エピクロロヒドリン樹脂水溶液を得た。
【0044】
実施例4
実施例1において、脱ハロゲン化のアミン系化合物を、50%ジメチルアミン135g(1.5mol)に替えて加えた以外は、実施例1と同様の反応を行い、同様の性状のポリアミドポリアミン−エピクロロヒドリン樹脂水溶液を得た。
【0045】
実施例5
実施例1において、脱ハロゲン化のアミン系化合物を、50%ジメチルアミン4.6g(0.05mol)に替えて加えた以外は、実施例1と同様の反応を行い、同様の性状のポリアミドポリアミン−エピクロロヒドリン樹脂水溶液を得た。
【0046】
実施例6
温度計、冷却器および攪拌機を備えたフラスコに、製造例1で得られたポリアミドポリアミン水溶液400gに反応液濃度が40%になるように水238gを仕込み、15℃でエピクロロヒドリン92g(当量比(エピクロロヒドリンのエポキシ基/ポリアミドポリアミンの第2級アミノ基)=1.1)を1.5時間かけて滴下した後、30℃に昇温し、同温度で4時間保温した。次いで、水438gを加えた後(ポリアミドポリアミン−エピクロロヒドリン付加物の濃度は25%)、60℃に昇温して同温度で3時間保温した。次いで、水75g、62.5%硫酸50gを加えて冷却し、固形分濃度25%、粘度200mPa・s(25℃)、pH2.6のポリアミドポリアミン−エピクロロヒドリン樹脂水溶液を得た。
【0047】
実施例7
温度計、冷却器および攪拌機を備えたフラスコに、製造例1で得られたポリアミドポリアミン水溶液400gに反応液濃度が40%になるように水238gを仕込み、15℃でエピクロロヒドリン92g(当量比(エピクロロヒドリンのエポキシ基/ポリアミドポリアミンの第2級アミノ基)=1.1)を1.5時間かけて滴下した後、30℃に昇温し、同温度で4時間保温した。次いで、水1217gを加えた後(ポリアミドポリアミン−エピクロロヒドリン付加物の濃度は15%)、60℃に昇温して同温度で5時間保温した。次いで、水158g、62.5%硫酸50gを加えて冷却し、固形分濃度15%、粘度75mPa・s(25℃)、pH2.6のポリアミドポリアミン−エピクロロヒドリン樹脂水溶液を得た。
【0048】
実施例8
温度計、冷却器および攪拌機を備えたフラスコに、製造例1で得られたポリアミドポリアミン水溶液400gに反応液濃度が40%になるように水238gを仕込み、15℃でエピクロロヒドリン92g(当量比(エピクロロヒドリンのエポキシ基/ポリアミドポリアミンの第2級アミノ基)=1.1)を1.5時間かけて滴下した後、30℃に昇温し、同温度で4時間保温した。次いで、水438gを加えた後(ポリアミドポリアミン−エピクロロヒドリン付加物の濃度は25%)、60℃に昇温して同温度で1時間保温した。次いで、50%ジメチルアミンを45g(0.5mol)を加えた後、引き続き同じ温度で1.5時間保温した。次いで、水142.5g、62.5%硫酸50gを加えて冷却し、固形分濃度25%、粘度200mPa・s(25℃)、pH2.6のポリアミドポリアミン−エピクロロヒドリン樹脂水溶液を得た。
【0049】
実施例9
実施例1において、脱ハロゲン化のアミン系化合物を、50%ジメチルアミン225g(2.5mol)に替えて加えた以外は、実施例1と同様の反応を行い、同様の性状のポリアミドポリアミン−エピクロロヒドリン樹脂水溶液を得た。
【0050】
実施例10
実施例1において、エピクロロヒドリン量を125g(当量比(エピクロロヒドリンのエポキシ基/ポリアミドポリアミンの第2級アミノ基)=1.5)、に替えた以外は、実施例1と同様の反応を行い、同様の性状のポリアミドポリアミン−エピクロロヒドリン樹脂水溶液を得た。
【0051】
比較例1
実施例1において、50%ジメチルアミンを使用しないこと以外は、実施例1と同様の反応を行い、同様の性状のポリアミドポリアミン−エピクロロヒドリン樹脂水溶液を得た。
【0052】
比較例2
実施例1において、脱ハロゲン化のアミン系化合物を、50%ジメチルアミン0.4g(0.005mol)に替えて加えた以外は、実施例1と同様の反応を行い、同様の性状のポリアミドポリアミン−エピクロロヒドリン樹脂水溶液を得た。
【0053】
比較例3
実施例1において、エピクロロヒドリン量を58g(当量比(エピクロロヒドリンのエポキシ基/ポリアミドポリアミンの第2級アミノ基)=0.7)、に替えた以外は、実施例1と同様の反応を行い、同様の性状のポリアミドポリアミン−エピクロロヒドリン樹脂水溶液を得た。
【0054】
実施例または比較例で得られたポリアミドポリアミン−エピクロロヒドリン樹脂水溶液をそのまま写真支持体用添加剤として用いて、以下の評価を行なった。結果を表1に示す。
【0055】
(1)写真支持体用添加剤中に含まれる全塩素原子量
ポリアミドポリアミン−エピクロロヒドリン樹脂をアルカリ加水分解(サンプル3.5gに蒸留水100gと10%重曹を70g添加し、90℃×3時間加熱分解)し、塩素をすべてイオン化した後に硝酸銀を用いて電位差測定法(自動滴定装置COM−900;平沼産業製)で測定した値。表1中の「%」は、対固形の「重量%」である。
【0056】
(2)写真支持体用添加剤中に含まれるクロロヒドリン構造に由来する塩素原子量
前記(1)で求めた写真支持体用添加剤中に含まれる全塩素原子の量とポリアミドポリアミン−エピクロロヒドリン樹脂中に存在する塩素イオンをそのまま電位差測定法で測定した値の差。
【0057】
(3)写真支持体用添加剤中に含まれる、ポリアミドポリアミン−エピクロロヒドリン樹脂に結合した塩素原子の量
前記(2)で求めた写真支持体用添加剤中に含まれるクロロヒドリン構造に由来する塩素原子の量から、下記(5)で測定して得られた分子量が150以下の有機塩素化合物に含まれる塩素原子の量を差し引いた値。
【0058】
(4)写真支持体用添加剤中に含まれる、ポリアミドポリアミンとエピクロロヒドリンの反応により生じた無機塩素原子の量
ポリアミドポリアミン−エピクロロヒドリン樹脂中に存在する塩素イオンをアルカリ加水分解することなくそのまま電位差測定法で測定した値。
【0059】
(5)分子量150以下の有機塩素化合物量
分子量150以下の有機塩素化合物の量は、写真支持体用添加剤をそのまま用い、ガスクロマトグラフィー(ガスクロマトグラフィーHP6890;Agilent製)により定量した。表1中の「%」は、対水溶液の「重量%」である。
【0060】
(6)湿潤紙力強度
パルプ(N−BKP/L−BKP=1/1)を叩解し、カナディアン・スタンダード・フリーネス(C.S.F)600mlに調整したパルプスラリーに、下記の製紙用添加剤をパルプ絶乾重量に対してそれぞれ所定量づつ添加して、タッピ スタンダードシートマシン(丸形)にて抄紙し、ロールプレスにて0.5kg/cmでプレス脱水した。次いで、回転型乾燥機で110℃において2分間乾燥し、20℃、65%R.H.の条件下に24時間調湿して、手抄きシートを作成した。得られた手抄きシートの湿潤紙力強度をJIS S−3104に準じて測定した。
カチオン化澱粉;0.8%
写真支持体用添加剤(樹脂a〜i);0.5%
脂肪酸サイズ剤;0.2%
AKDサイズ剤;0.6%
【0061】
(7)写真性の測定
得られた手抄きシートと、市販のカラー印画紙の乳剤面を密着させ、50℃、90%R.H.の雰囲気下に7日間保存させた後、露光することなく通常の方法で現像処理し、現像後の印画紙の色をマクベス濃度計で測定した。(値が大きい方が、カブリ現象が起こりやすい。)結果を表1に示す。
【0062】
【表1】

【0063】
表1から、本発明によって得られたポリアミドポリアミン−エピクロロヒドリン樹脂水溶液は、公知の方法で得られたポリアミドポリアミン−エピクロロヒドリン樹脂水溶液に比べ、湿潤紙力強度を維持したまま、(写真支持体用添加剤中に含まれるクロロヒドリン構造に由来する塩素原子の量)/(写真支持体用添加剤中に含まれる全塩素原子の量)の値を低減できていることが認められ、環境への負荷低減が期待できる上、湿潤紙力強度を得つつ、カブリ現象が軽減できていることが認められる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアミドポリアミン−エピクロロヒドリン樹脂を含有する写真支持体用添加剤であって、(写真支持体用添加剤中に含まれるクロロヒドリン構造に由来する塩素原子の量)/(写真支持体用添加剤中に含まれる全塩素原子の量)が0.3以下である写真支持体用添加剤。
【請求項2】
ポリアミドポリアミン−エピクロロヒドリン樹脂を含有する写真支持体用添加剤であって、(写真支持体用添加剤中に含まれる、ポリアミドポリアミン−エピクロロヒドリン樹脂に結合した塩素原子の量)/(写真支持体用添加剤中に含まれる、ポリアミドポリアミンとエピクロロヒドリンの反応により生じた無機塩素原子の量)が0.25以下である請求項1に記載の写真支持体用添加剤。
【請求項3】
写真支持体用添加剤中に含まれる全塩素原子の量が、ポリアミドポリアミン−エピクロロヒドリン樹脂の固形分に対し8〜17%である請求項1または2記載の写真支持体用添加剤。
【請求項4】
ポリアミドポリアミン−エピクロロヒドリン樹脂水溶液中に含まれる分子量が150以下の有機塩素化合物の含有量が1%未満である請求項1〜3のいずれかに記載の写真支持体用添加剤。
【請求項5】
ポリアミドポリアミン−エピクロロヒドリン樹脂の製造方法であって、(a)25℃における50重量%水溶液の粘度が、200〜1000mPa・sであるポリアミドポリアミン水溶液を、ポリアミドポリアミンの第2級アミノ基とエピクロロヒドリンのエポキシ基の当量比(エポキシ基/第2級アミノ基)が0.8〜1.8であるエピクロロヒドリンと5〜40℃の温度で反応させ(1次保温)、次いで40〜90℃で反応させ(2次保温)、さらに(b)2次保温において、クロロヒドリン構造の脱ハロゲン化反応を行なうことを特徴とする写真支持体用添加剤の製造方法。
【請求項6】
クロロヒドリン構造の脱ハロゲン化反応が、アミン系化合物を添加することを特徴とする請求項5に記載の写真支持体用添加剤の製造方法。
【請求項7】
ポリアミドポリアミンとエピクロロヒドリンとの反応において、1次保温における反応濃度が25〜70重量%、2次保温におけるポリアミドポリアミン−エピクロロヒドリン付加物の濃度が10〜25重量%である工程を含む請求項5に記載の写真支持体用添加剤の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜4のいずれかに記載された写真支持体用添加剤を添加することにより得られる写真支持体。


【公開番号】特開2006−337437(P2006−337437A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−158612(P2005−158612)
【出願日】平成17年5月31日(2005.5.31)
【出願人】(000168414)荒川化学工業株式会社 (301)
【Fターム(参考)】