説明

写真用紙のための予応力負荷された基体

写真用紙のための予応力負荷された基体を開示する。予応力負荷された基体は、(a)ベース紙、(b)前記ベース紙の表側表面上に設けられたトップ予応力コートであって、少なくとも第1の顔料及び第1の結合材料を含有する第1の予応力混合物を含むもの、並びに(c)ベース紙の裏側表面に設けられたバック予応力コートであって、少なくとも第2の顔料及び第2の結合材料を含有する第2の予応力混合物を含むもの、を含む。予応力負荷された基体は、裏側表面に向かう所定の度合いの湾曲を有し、予応力負荷された基体が使用される時に起こるカーリング力に対抗することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂コートされた写真用ベース又は基体を含む細孔性タイプのインクジェット写真用紙(インクジェット・フォトグラフィック・ペーパー)、より詳細には、カールを低減又は相殺するために構成されたそのような写真用ベース及び写真用紙に関する。
【発明の概要】
【0002】
本発明の例示的な態様を詳細に説明するために、添付の図面を参照されたい。
【図面の簡単な説明】
【0003】
【図1】様々な態様による原料ベース紙の両面に層が設けられている、予応力負荷された写真用製品の構造の概略的な断面図である。当該断面は、実質的に平坦な製品の表から裏へ(印刷表側から裏側へ)長さを横切って切断して見た図である。
【図2】様々な態様による原料ベース紙の両面に層が設けられている、別の予応力負荷された写真用製品の構造概略的な断面図である。
【図3A】写真用紙の構造を示す概略的な図であって、32℃及び20%相対湿度での製作された最終写真用紙の、23℃及び50%相対湿度での同じ紙と比較した応力変化の比較を示すものであり、従来の写真用製品及び当該製品の湾曲を表している。
【図3B】写真用紙の構造を示す概略的な図であって、32℃及び20%相対湿度での製作された最終写真用紙の、23℃及び50%相対湿度での同じ紙と比較した応力変化の比較を示すものであり、様々な態様による予応力負荷された写真用製品及び当該製品の湾曲を表している。
【図4A】写真用紙構造の概略図であって、15℃及び80%相対湿度での製作された最終写真用紙の、23℃及び50%相対湿度での同じ紙と比較した応力変化の比較を示すものであり、従来の写真用製品の断面図及び当該製品の湾曲を表している。
【図4B】写真用紙構造の概略図であって、15℃及び80%相対湿度での製作された最終写真用紙の、23℃及び50%相対湿度での同じ紙と比較した応力変化の比較を示すものであり、様々な態様による予応力負荷された写真用製品の断面図であり、後述の当該製品の湾曲を表している。
【図5A】湿潤/低温、乾燥/低温、湿潤/高温及び乾燥/高温の環境条件に曝された時の、最終写真用紙において発生した湾曲を示す概略図であって、比較される従来の写真用紙を示す。
【図5B】湿潤/低温、乾燥/低温、湿潤/高温及び乾燥/高温の環境条件に曝された時の、最終写真用紙において発生した湾曲を示す概略図であって、様々な態様による予応力負荷された写真用紙を示す。
【図6】比較される従来の写真用ベース及び様々な態様による最終写真用紙製品に対する環境条件によるカールの変化を示すグラフである。X軸には、3つの異なる環境条件を示す。
【図7】様々な態様による予応力負荷された写真用ベースに対する環境条件によるカールの変化を示すグラフである(試料1を用いて例示)。Y軸にはカールの平均を、X軸には3つの異なる環境条件を示す。
【図8】裏側コーティング中の水溶性バインダレベルを変化させた時の、様々な態様による予応力負荷された写真用ベースについてのカールの変化を示すグラフである。
【図9】表側コート重量の変化に伴う、様々な態様による予応力負荷された写真用ベースについてのカール変化を示すグラフである。
【図10】様々な態様による予応力負荷された写真用ベース及び比較される従来技術の写真用ベースの画像滲み及び鮮鋭度レベルを示すグラフである。
【0004】
表記及び用語
特定の用語は、以下の説明及び特許請求の範囲を通して、特定のシステム構成要素を指すために使用される。当業者により理解されていることであるが、構成要素は複数のコンピュータ会社によって異なる名前で呼ばれ得る。しかし、本明細書は、名前は相違するが機能は相違しない構成要素間での区別を意図するものではない。以下の説明及び特許請求の範囲では、「含む」及び「備える」なる用語は、制約のない形式で使用され、つまり「〜を含むが、しかし、それに限定されない」と解釈すべきである。
【0005】
「原料ベース」は、セルロース繊維の任意の適切な種類又は製紙分野において使用することが知られている繊維の組合せを含むベース紙を指す。製紙分野で知られた様々な機能又は性能のための添加剤も含まれていてよい。
【0006】
「繊維原料(fiber furnish)」とは、紙を構成する原材料を指し、通常、木材又は他の植物からのセルロース繊維を含む。
【0007】
「水分散性バインダ」とは、水にかなりの量で可溶ではないが、水に分散可能なポリマー材料を指す。
【0008】
「水溶性バインダ」とは、水に可溶のバインダ材料、例えばポリビニルアルコール(PVA)、澱粉誘導体、ゼラチン、セルロース誘導体、アクリルアミドポリマー及びこれらに類するものである。
【0009】
写真用紙若しくは写真用ベース紙の「カーリング」とは、平坦なシートのエッジの上方又は下方への曲がりを指す。カーリングは典型的には、紙の環境中での又は印刷中若しくは印刷後の温度及び湿度の変化によって起こる。
【0010】
「実質的に平ら」という用語は、予応力負荷された写真用紙製品又は予応力負荷された中間ベース紙に使用された場合、製品の上方又は下方への湾曲の量が±5mm内であることを意味する。
【0011】
「予応力負荷されたベース紙」とは、設計によって所定の負のカールを有する原料ベース紙の形態(例えばまだ(樹脂の)押出しが行われていない)を指す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下の説明は、本発明の様々な態様に関する。これらの態様の1つ又はそれ以上が好ましいが、その開示の態様は、特許請求の範囲を含む本開示の範囲を限定するものとして解釈又は使用されるべきではない。加えて、以下の説明が広範な応用例を含み、任意の態様の説明がその態様の例示を意味するにすぎず、そして、特許請求の範囲を含む開示の範囲がその態様への限定の示唆を意図するものではないことを、当業者は理解するであろう。
【0013】
細孔性タイプのインクジェット用写真用紙は典型的には、樹脂コートされた写真用ベース又は基体を含む。多くの場合、紙は、原紙積層体上に設けられた様々な材料の層の複合材である。これらの写真用紙はカールする傾向があり、それは、温度及び湿度に対する材料の感受性が相違する結果であり、そして製造、乾燥、印刷及び保存中の画像受容層材料と印刷媒体の裏との間で膨張又は収縮が異なるためである。多層のコーティング又は層を有する複合紙では、異なる材料の膨張又は収縮の問題は、より大きくなる。写真用紙のカーリングは、取り扱い及び保存を複雑化し、審美的な理由からも有害となる。インクジェット印刷のようなデジタル写真印刷では、紙が使用中又は保存中に遭遇する可能性が大きい全ての環境条件で、平らなシートが極めて所望される。写真用紙が過度に大きな正のカール(つまり画像受容層に向かうカール)を有する場合、インクジェットプリントヘッドは、紙が擦られたり印刷詰まり又は印刷障害が生じたりする傾向を有する。過度に大きな負のカール(つまり裏側に向かうカール)は、紙の送出トレイにおけるシート供給の問題を起こし得る。
【0014】
カーリングに対処するための努力においては、写真用ベース紙は、典型的には、製造の際に紙の裏側に過剰の樹脂を塗布することによって予応力負荷される(プレストレスがかけられる)。この過剰な樹脂によって、裏側に向かってベース紙をカールさせる。そして、表側コーティングが塗布され、乾燥せられて、つまりカールを誘導する条件に曝されると、予応力負荷された裏側カールは、最終写真用紙(完成品としての写真用紙)を平らにするように表側コーティング及び乾燥応力とバランス取る傾向を示す。ポリエチレン(PE)が、表側(つまり画像形成側)及び裏側の両方に塗布された場合、裏側のPE重量の、表側のPE重量に対する比は典型的には1.5より大きい。しかし、紙の裏側に塗布することのできる樹脂の量には、実施上の限界がある。追加的な樹脂のコストだけが問題という訳ではなく、この様式で相殺することができるカールの量に限界がある。多くの場合、裏側のPEの量を増大させるとカールの補償が得られるが、それは、環境条件の変化に対して均一に補償をするものではない。その結果、印刷媒体は、1つの条件では平らなシートとなり得るが、別の条件では著しくカールするということがあり得る。多くの場合、温度及び相対湿度の異なる極端値で、インクジェット写真用紙に異なるカールが生じる。したがって、インクジェット用写真用紙においてカーリングを低減又は相殺する方法を開発することは、引き続き利益がある。
【0015】
予応力負荷された(プレストレスト)原料ベース紙
予応力負荷された原料ベース紙12は、図1の断面に示すように、製紙装置での又は製紙装置及びオフラインコーターの組合せでの写真用ベース紙の製造の際、樹脂押出しプロセスの前に製造される。予応力は、原料ベース紙100に、原料ベース紙の各面に異なる顔料コーティング層を塗布することによって発生させる。表側上の顔料コート101は、裏側上の顔料コート104とは異なる。このような違いの1つは、各コート101、104を形成するために使用されるバインダ材料の性質である。具体的には、表側上のバインダ材料中の水溶性バインダ(WSB)の重量%が、裏側上のバインダ材料中の水溶性バインダ(WSB)の重量%より小さい。WSBの重量%は、WSBの乾燥重量を、WSB及び水分散性バインダ(WDB)の乾燥重量を合わせたもので除したものである。WSBの重量%は、WSBの乾燥重量及びWDBを合わせたものに対するWSBの乾燥重量である。例示的な態様では、表側顔料コーティング101中の(その層中の全バインダ材料に対する)水溶性バインダの重量%が、0重量%〜50重量%の範囲にあり、裏側顔料コーティング104中の(その層中の全バインダ材料に対する)水溶性バインダの重量%は、50重量%〜100重量%である。いくつかの態様では、コート101及び104で使用される顔料は、同じ種類である。いくつかの態様では、コート101及び104で使用される顔料は、異なる種類である。いくつかの態様では、コート101で使用される顔料の粒径は、コート104で使用されるものよりも小さい。予応力負荷された原料ベース紙の組成については、さらに以下に説明する。
【0016】
ベース積層体
図1を参照すると、予応力負荷されたインクジェット写真用ベース紙14は、原料ベース積層体100、例えば塗布されたコーティング組成物を有するセルロース紙を含む。原料ベース紙は、セルロース繊維の適切な任意の種類又は製紙分野での使用として知られている繊維の組合せを含む。例えば、製紙用繊維での使用のために用いられる硬材木、軟材木、又は硬材木及び軟材木の組合せから得られるパルプ繊維からなっていてよい。いくつかの用途では、パルプ繊維の全て又は一部が、例えばケナフ、麻、黄麻、亜麻、サイザル及びアバカ、竹並びにバガスのような非木材繊維から得られる。再生パルプ繊維の特定の種類も使用に適している。添加剤を添加することもでき、それは、非限定的に、内添サイズ剤(internal sizing agent)、例えば脂肪酸の金属塩及び/又は脂肪酸、アルキルケテン二量体乳化製品及び/又はエポキシ化高級脂肪酸アミド;アルケニル又はアルキルコハク酸無水物乳化製品並びにロジン誘導体;保持助剤(retention aid)、例えばカチオン性のポリアクリルアミド及びカチオン性の澱粉又はアニオン性のシリカベースのシステム;乾燥強度向上剤、例えばアニオン性、カチオン性又は両性のポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、カチオン化された澱粉及び植物性ガラクトマンナン;湿潤強度向上剤、例えば、ポリアミンポリアミドエピクロヒドリン樹脂;定着剤、例えば水溶性アルミニウム塩、塩化アルミニウム及び硫酸アルミニウム;pH調節剤、例えば水酸化ナトリウム、炭酸及び硫酸ナトリウム;並びに着色剤、例えば顔料、着色染料及び蛍光増白剤を含む。
【0017】
多数の充填剤の任意のものが、原料ベース紙の形成の際に、様々な量で紙パルプ中に含まれていてよく、それにより、所与の用途の特定の要求に応じて、最終ベース紙の物理的な特性の制御がされる又はコストの節約するために繊維に換えられる。いくつかの適切な充填剤は、いくつか例を挙げれば、摩砕された炭酸カルシウム、沈降炭酸カルシウム、酸化チタン、カオリン、クレー及びATHであり、パルプに組み込まれていてよい。いくつかの態様では、セルロースベース紙は、50〜250gsmのベース重量を有し、いくつかの態様では、充填剤含有量は10〜30重量%である。
【0018】
予応力コート
表側及び裏側の予応力コート101、104は、選択された顔料と、選択されたバインダ又はバインダの組合せを含有する結合材料とを含有する。顔料コートは、デフォーマ、界面活性剤、レベリング剤、染料及び光学増白剤(OBA)のような他の1つ以上の添加剤も含んでいてよい。結合材料は、顔料粒子間の結合接着を提供し、また顔料粒子と原料ベース積層体のセルロース繊維との接着も提供する。適切な水溶性バインダの例は、非限定的に、ポリビニルアルコール、澱粉誘導体、ゼラチン、及びセルロース誘導体を含む。適切な水分散性バインダの例は、非限定的に、アクリルポリマー又はコポリマー、ビニルアセテートラテックス、ポリエステル、塩化ビニリデンラテックス、及びスチレンブタジエン又はアクリロニトリルブタジエンコポリマーラテックスを含む。
【0019】
予応力コート101、104において使用される適切な顔料は、比較的低い表面積(例えば100m/g未満)を有する無機顔料を含む。適切な顔料の例は、非限定的に、クレー、カオリン、炭酸カルシウム、タルク、二酸化チタン、シリカ、ケイ酸カルシウム、ATH及びゼオライトを含む。加えて、有機顔料、例えばポリエチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン及びそのコポリマー、並びにポリテトラフルオロエチレン(Teflon(登録商標))粉体、並びにこれらの顔料の組合せも、コート101及び/又はコート104で使用することができる。いくつかの態様では、有機顔料は中実の形態である。いくつかの態様では、「中空の」有機粒子が使用される。
【0020】
表側予応力コート
表側予応力コート101は、水溶性バインダ及び水分散性バインダの混合物である結合材料を含有し、当該結合材料中、水溶性バインダ(WSB)は、コート101中の全結合材料(TBM)の50重量%未満である。いくつかの例では、WSBは、TBMの20重量%未満である。したがって、いくつかの態様では、表側予応力コート101は、水分散性バインダのみ(つまりWDB100重量%)を含有し、水溶性バインダ(WSB)を全く含有していない。表側予応力コート101は、選択された無機又は有機顔料も含有する。いくつかの態様では、プラスチック(可塑性)顔料が、コート101中の全顔料の約5〜10重量%を占める。いくつかの態様では、予応力コート101中の顔料の全量は、表側表面に塗布された予応力コーティング組成物の全乾燥重量の50〜85%である。
【0021】
図2を参照すると、図1に示す様々な態様で、表側予応力コーティング101’は、トップコート102、並びにベース紙100とトップコート102との間に配置されているアンダーコート103を含む。いくつかの態様では、アンダーコート103は、例えばOmayaから市販されているHYDROCARB 60(摩砕された炭酸カルシウム)のようなより小さい平均表面積の顔料(つまり、より大きい平均粒子径の顔料粒子)を含有し、トップコート102は、比較的大きな平均表面積の顔料(つまり、より小さい平均粒子径の顔料粒子)、例えばSMIから市販されているOPACARB A40沈降炭酸カルシウム、又は例えばDow Chemicalから市販されているDPP 3720のようなプラスチック顔料を含有する。いくつかの態様では、同じ粒径の顔料粒子が、コート102、103で使用される。いくつかの場合には、同じ結合材料がコート102及び103で使用される。別の場合には、コート102及び103中の結合材料は異なっている。トップ予応力コート101'においては、第1の予応力コート102及びアンダーコート103は、上記の水溶性及び水分散性バインダといったバインダを含む。いくつかの態様では、別個のコート102、103を含むトップ予応力コーティング構造は、潜在的に、より優れた押出しベース(樹脂が押し出されたベース)及び最終製品の品質、例えば、現れない光沢(unimaged gloss)及び認識される光沢又は画像の鮮明さを提供する。
【0022】
裏側予応力コート
バック予応力コート104において、水溶性バインダの量(層で使用される全バインダの重量パーセント)は、50%より大きい。よって、いくつかの態様では、バック予応力コート104は、水溶性バインダのみ(つまり水溶性バインダ100重量%)を含有し、水分散性バインダを全く含有しない。別の態様では、バック予応力コート104は、水溶性バインダ及び水分散性バインダの混合物を含む。いくつかの態様では、バック予応力コート104のコート重量は、トップ予応力コート101の1〜3倍である。各予応力コート101、102、103及び104(図1〜2)の配合で使用されるバインダ種類及び量は、選択される顔料の種類及び量、並びに得られるコーティングで所望される予応力の度合いに関係する。例えば、小さい粒径/より大きい表面積の顔料は、より大きい粒径/より小さい表面積の顔料よりも、個々の粒子を共に保持する(結合させる)ためにより多くのバインダが必要とされる。バインダの量と、顔料の種類及び量、並びに予応力の度合いとの関係は、さらに以下の例1〜7で説明し、例示する。また、いくつかの態様では、バック予応力コート104は、2つの異なる層(図示せず)に分かれ、それは、トップ予応力コート101に関して上述した層102及び103に類似する。例えば、裏側が、極めて大きなコート重量を必要とする場合には、コート104は、2つの別個のコートとして塗布されていてよい。
【0023】
いくつかの態様では、予応力負荷されたコートされた原料ベース紙12によって、他の予応力負荷されたベース紙と比較して、裏側ポリエチレンフィルム(ポリマーフィルム層120)の量を著しく低減せしめることが可能となり、それにより、最終インクジェット写真用紙基体又は写真用媒体10のための所望の予応力レベルに到達することができる。
【0024】
予応力負荷された写真用ベース紙
図1及び2の概略的な断面図に示すように、予応力負荷された写真用ベース紙又は基体は、トップ予応力層101又は101’上に配置された第1のポリマーフィルム110、及びバック予応力層104上に配置された第2のポリマーフィルム120を含む。いくつかの適切なポリマーフィルムは、非限定的に、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、線形低密度ポリエチレン(LLDPE)、ポリプロピレン(PP)、及びそれらの任意のポリマーの組合せを含む。いくつかの態様では、裏側に設けられたポリマーフィルム120の、表側に設けられたポリマーフィルムに対する重量比は2.0未満であり、いくつかの態様では上記比は1.5未満である。
【0025】
予応力負荷されたインクジェット用写真用紙
図1及び2をさらに参照すると、予応力負荷されたインクジェット用写真用紙又は写真用印刷媒体10は、上述の写真用ベース紙14のポリマーフィルム層110上に設けられた多孔質の画像受容層200を含む。画像受容層は、任意の適切な多孔質のインクジェット画像受容組成物、例えば高多孔性無機酸化物分散液に、バインダ及び当業者に知られている他の添加剤を加えたものを含む。例えば、いくつかの態様では、高多孔性の無機酸化物分散液は、任意の数の無機酸化物群(基)を含み、それは、非限定的に、官能基を有するシランカップリング剤で処理されたヒュームドシリカ又はアルミナを含む。いくつかの態様では、細孔性のインク受容層200は、約20〜40gsmの高多孔性無機酸化物分散液にバインダ及び他の添加剤を加えたものを含む。
【0026】
いくつかの態様では、得られる予応力負荷されたコート原料ベース紙12は、従来の予応力負荷されていないベース紙で可能であった予応力能(pre-stress capability)を超える最高の予応力能を拡張する。様々な態様のさらに別の潜在的な利点は、特定の予応力負荷された写真用ベース紙14及び最終の予応力負荷された写真用紙10の、より大きな不透過度を含む。予応力負荷された原料ベース紙12、予応力負荷された写真用ベース紙14、及び最終の予応力負荷された写真用紙10の特定の態様は、環境的な湿潤の度合いの変化を平衡するための製品の能力を潜在的に改善する。多くの態様では、写真用ベース14は、シートの表側と裏側との間でより等しい膨張又は収縮を有することができるようになっている。この写真用ベースの使用により、製品が使用される各環境条件で平らなシートにより近い状態に潜在的に保たれる完成のコート製品10が製造される。
【0027】
製造プロセス
図1又は2を参照すると、インクジェット画像受容層200のための予応力負荷されたベース紙14の製造は、概括的には、ヘッドボックス(headbox)に分散させたパルプスラリーを、移動する連続するワイヤ上に形成し、ここで、水を、重力によって又は真空の助けを得てスラリーから排水される。続いて、湿った紙シートを、プレス、乾燥機及びカレンダーに通し、得られた紙を最後に大きなロールに巻き取る。上述の予応力顔料コートを、製紙装置においてインラインで、メータリングサイズプレス(metering sizing press)によって塗布する。各予応力コーティングは、オフラインコーター、例えばロッド、ロール、ブレード、カーテン、カスケード、グラビア、空気ナイフコーター又はそれらに類するものを使用しても塗布することができる。予応力コートされた原料ベース12を、続いて、製紙装置においてインラインで、又はハードニップ、ソフトニップ若しくはスーパーカレンダーによりオフラインでカレンダー処理する。得られた予応力負荷された原料ベース12から、押出機を使用して各面にポリマー樹脂の層を押し出すことによって、樹脂コートされたベース紙14が製造される。そして、マイクロ多孔質のインク受容層200を、カーテンコーター又はスロットダイコーターのようなコーターを使用して樹脂コートベース紙14にコートする。
【0028】
第1の予応力コーティング混合物は、表側予応力コート101を形成するための、水性の媒体、選択された顔料、1つ以上の水溶性バインダ、1つ以上の水分散性バインダ、及び任意の所望の添加剤を合わせることによって提供される。第2の予応力コーティング混合物は同様に、バック予応力コート104を形成するための、水性の媒体、選択された顔料、1つ以上の水溶性バインダ及び任意の所望の添加剤を合わせることによって提供される。いくつかの場合には、第2の予応力コーティング混合物は、1つ以上の水分散性バインダを含んでいてもよい。
【0029】
予応力コーティング混合物又は組成物は、任意の適切な技術及び装置を使用して、原料ベース紙100の表側及び裏側にそれぞれ塗布される。例えば、予応力コーティング混合物は、フィルムサイズプレスのようなインラインの表面サイズプレスプロセスによって、又は上述のように原料ベース紙の製作中にフィルムコーターを使用して塗布することができる。別態様では、コーティングは、オフラインで、原料ベース紙製作後に、任意の適切なコーティング技術を使用して塗布することができ、それは、非限定的に、スロットダイコーター、カスケード、ロールコーター、カーテンコーター、ブレードコーター、ロッドコーター、空気ナイフコーター、グラビア塗布、空気ブラシ塗布、並びに当業者に知られた技術及び装置を含む。いくつかの例では、コーティング組成物は、ベース積層体の両面に直接的に同時に塗布される。
【0030】
図2を参照すると、第1の予応力コート101’が別個の予応力コート102及び予応力アンダーコート103を有する態様では、異なる顔料及びバインダの組合せ(上述)並びに適切な水性媒体を含有する各コーティング混合物が、それぞれベース100に塗布される。いくつかの態様では、アンダーコート103が、トップ予応力コート102が形成される前に最初に塗布され、乾燥される。いくつかの別の態様では、トップコート102及び103を、多層コーター、例えば多層カーテン又はカスケードコーターを使用して、同時に塗布する。コート104が同様に2つの別個のコート(図示せず)に分かれている態様では、これらもコート102及び103について上述したのと同様に塗布される。
【0031】
予応力コート101又は101’及び104(図1及び2)が塗布された後、得られた予応力負荷されたコートベース紙12は、続いてカレンダー処理され、それにより、表側平滑性が改善され、最終製品の認識可能な光沢を潜在的に改善する。非限定的にハードニップ、ソフトニップ又はスーパーカレンダー技術を含む、任意の適切なインラインの又はオフラインのカレンダー処理技術を使用することができる。
【0032】
第1及び第2の予応力コーティング混合物を、原料ベース紙100の表側及び裏側それぞれに塗布した後、乾燥し、カレンダー処理し、それにより、予応力負荷されたコート原料ベース紙12が得られる。コート原料ベース紙は、さらに、トップ予応力コート101又は101’上に、第1のポリマーの樹脂層110で押出しコートされる。同様に、第2のポリマーの樹脂層120が、トップ予応力コートへの第1のポリマーの混合物の塗布と同時に又は同時にでなく、バック予応力コート104上に塗布される。いくつかの態様では、この一連の押出しが、第1に樹脂層120を押し出し、第2に樹脂層110を押し出すことを含み、それにより、製品の画像面への潜在的なダメージが抑えられる。いくつかの適切な押出し可能な樹脂は、非限定的に、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、線形低密度ポリエチレン(LLDPE)、ポリプロピレン(PP)、及びそれらのポリマーの組合せを含む。いくつかの例では、得られる裏側上のポリマーフィルム120の、表側上のポリマーフィルムに対する重量比は2.0未満である。いくつかの場合には、その比は1.5未満である。ポリマーフィルム層110、120を形成した後、得られる製品は、押出し写真用ベース紙14となる。いくつかの態様では、さらに多孔質の画像受容層200が、1つ以上の無機金属酸化物群(基)を含んでいてよい高多孔性の無機金属酸化物分散液を含有する組成物を塗布することによって、ポリマーの層110上に形成される。そのような無機金属酸化物群(基)は、非限定的に、官能基を有するシランカップリング剤で処理されたヒュームドシリカ又はアルミナを含む。シランカップリング剤は、シラン群(基)に共有結合する官能部分(つまり、無機粒子表面に所望の修飾された特性を提供する試薬の部分)を含む。オルガノシラン試薬は、半金属酸化物又は金属酸化物粒子の表面に共有結合する又は引き寄せられ得る。オルガノシラン試薬の官能部分の部分は、シラン群(基)に直接的に結合しているか又は例えば1〜10個の炭素原子又は他の知られたスペーサ群(基)によってシラン群(基)から適宜スペースを置いて配置されていてよい。オルガノシラン試薬のシラン群(基)は、試薬上に存在するヒドロキシル基、ハロゲン化物基又はアルコキシ基を介して、多孔質媒体コーティング組成物の半金属酸化物又は金属酸化物粒子に結合することができる。別態様では、いくつかの例で、オルガノシラン試薬は、単に無機粒子の表面に結合していてよい。「官能部分」という用語は、無機金属酸化物粒子の表面に機能を付与するオルガノシラン試薬の活性の部分を指す。本発明の態様によれば、官能部分は、特定の用途のために望ましい任意の部分であってよい。一態様では、官能部分は、第1級、第2級、第3級又は第4級アミンである。一態様では、アミンは、詳細には、多孔質のインク受容層のpH及び/又はインク吸収層のpHが約6未満であり、好ましくは約3〜約5である場合に、官能部分として有用である。そのようなpH値によって、アミンが水素化され又はカチオン化され、それにより、インクジェットインク中に存在していてよいアニオン性の着色剤を引きつけることができる。
【0033】
いくつかの態様では、得られる予応力負荷された写真用紙は、15〜32℃及び20〜80%相対湿度の範囲内の任意の環境条件下で、画像形成層からの特定の要求(例えば、引張り力又は圧縮力)に合わせて、そのカールの補償を調節するために設計されている。
【0034】
新規の予応力負荷された写真用ベース紙及び予応力負荷された写真用紙の例を以下に示す。これらの例は単に例示的なものであり、いかなる場合にも特許請求の範囲の限定を意図したものではない。
【実施例】
【0035】
一連の予応力負荷されたベース紙を、以下の手順を用いて準備した。
【0036】
(1)この例での媒体のために使用される紙基体は、製紙装置によって、硬木繊維80%〜100%、軟木繊維0%〜20%、アルキルケテン二量体(AKD)内添サイズ剤を有する沈降炭酸カルシウム25%までからなる繊維原料から製作された。基体紙の坪量は、約160〜170gsmであった。原料ベース紙基体を、異なるコート重量及び裏側予応力コーティング中の水溶性バインダの異なるレベルでコートした。
【0037】
(2)この例における各媒体試料のためのコーティング組成物は、実験室内で準備された。まず適切な量の水を容器に、その後、無機顔料並びに他のポリマーバインダ及び/又は添加剤、例えばポリビニルアルコールを装填した。任意に、他のコーティング添加剤、例えばpH制御剤、水分保持剤、増粘剤及び界面活性剤も前記容器に添加することができる。
【0038】
(3)コーティングプロセスは、プレートコーティングステーションにおいてメイヤーロッドを用いた手による伸ばし(hand drawdown)によって少量、又はメータリング(測定)装置としてスロットダイを装着したパイロットコーターによって大量、達成された。コーティングのコーティング重量は、裏側について約5〜約30gsm、表側について0〜25gsmであった。表側コーティング組成物の例示的な配合は、表1及び表2に非限定的な例として示す。部は乾燥重量であり、コート重量は乾燥コート重量である。コーティングの部の合計で除した個々の成分の部の割合によって、水溶性バインダ(WSB)及び水分散性バインダ(WDB)という上述の用語に対応する乾燥重量が得られる。
【0039】
【表1】

【0040】
【表2】

【0041】
表1及び2に示す成分の源は、以下の通りである。OPACARB A40は、SMIから市販の沈降炭酸カルシウムであり、HYDROCARB 60は、Omayaから市販の摩砕された炭酸カルシウムであり、CaClは、Tetra Technologies, Inc.から市販の塩であり、グリセロールは、Aldrichから市販の可塑剤であり、MOWIOL 6-98は、Clahant Corporationから市販のポリビニルアルコールであり、ROVENE 4040は、Mallard Creek Polymer, Incから市販のスチレンブタジエンラテックスエマルジョンであり、澱粉は、Grain Processing Corporationのものであり、DPP 3720は、Dow Chemicalから市販のプラスチック顔料である。GLYOXALは、ハ゛スフから市販の架橋剤である。
【0042】
(4)予応力負荷されたコート原料ベース紙をさらに、23℃で且つ平方インチ当たり1000〜3000ポンド(psi)の圧力で、実験室用ソフトカレンダーを使用してカレンダー処理した。
【0043】
(5)上記のコートベースを実験室的にカレンダー処理した後、試料に、実験室的ラミネーション又はパイロット押出しを施した。実験室的ラミネーションは、湿潤バリア材料を、コートベース(予応力負荷されたベース:表2中の試料1〜6)の両側に塗布するために使用するものであった。試料1〜6の両側のためのラミネーションで使用されるフィルムは、同じ厚み(つまり、両側で15gsm)であった。予応力コート試料の異なるセットに対してパイロット押出機によって湿潤バリアが押し出され、それにより、PEがベース(表2中の試料7及び8)両側に被着された。LDPE約15gsmを試料7及び8の表側に押し出し、HDPEのLDPEに対する比が60/40であるものを25gsm、試料7及び8の裏側に塗布した。試料9は、従来の設計を用いた比較試料を表し、試料7及び8のための対照として使用された。比較試料9では、試料7及び8と同量のPEが塗布された。
【0044】
(6)ラミネートされた又はパイロット押出しされたベースを、次に、異なる環境のチャンバ中で評価した。
【0045】
図3Bに概略的に示すように、インク受容層200を塗布した後、写真用紙が、比較的高温乾燥の環境条件で調整されている(例えば、32℃/20%相対湿度)場合には、コート原料ベース紙12における予応力コート101及び104は、下方へのカール(つまり、紙の裏側に向かうエッジ湾曲)を保持する。エッジカールは、所与の環境条件で生じる特定の力の結果である。下方へ向かう凹型のシートの構造は、層状製品に対応する以下の図3Bに例示する。図中の矢印は、様々な層の伸長又は収縮(つまり引張り又は圧縮力)の方向を示す。矢印の長さは、相対的な各層の伸長又は収縮力を示す。
【0046】
層110、120の押出し塗布の際に「ロックされた(locked in)」バイアス応力は、フィルム層110、120及び画像形成層200が塗布された後、環境に対して応答性を維持し、最終写真用ベース紙14を形成することとなる。したがって、写真用ベース紙14は、最終写真用紙製品10の表側上に設けられた多孔質の画像受容層200によって生成する応力に所望通りに対抗するための、裏側に向かう所定の度合いの湾曲も有することになる。その反対に、比較される従来の(従来技術)写真用紙の原料ベース紙300の表側及び裏側それぞれ上に設けられた樹脂層310、320は、図3Aに概略的に示されるように、32℃/20%での条件で、上方へカール(つまり、紙の表側に向かう上方へのエッジ湾曲)するであろう。上方へのカールは、概略的に、比較される写真用紙製品の下に示す。上方へのカールは、写真用紙をインクジェットプリンタで印刷する時、画像欠陥及びシート供給問題をしばしば引き起こす。
【0047】
図4Bを参照すると、図3Bに示す写真用紙を比較的低温湿潤の環境条件(例えば15℃/80%RH)で調整した場合、予応力コーティング104は膨張し、これは、インク受容層200からの膨張応力を対抗バランスする。この対抗バランス力は、最終製品が裏側に向かう過度に大きなカールを有することを防止する。同様の低温湿潤条件下の比較される従来の写真用紙に関し、図4Aに示すようにインク受容層400が膨張する一方で、裏側PE層320は収縮する。層310及び320の伸長及び収縮の方向は、矢印の方向で示すように、図3Aと比較して逆である。層320及び400からの組み合わせられた力によって、最終写真用紙は、23℃/50%RHの条件と比較して、より大きな下方への(つまり裏側に向かう)カールを有するようになる。
【0048】
写真用ベース紙又は最終写真用紙のカールの量は、試料シートを、温度及び相対湿度(例えば23℃及び50%RH)の特定の条件で平らな平面に配置することによって、測定される。前記平らな平面からの試料シートの角隅の4つの端部点の高さが測定され、シートのカールの量は、4つの角隅点の高さの平均によって表わされる。従来の写真用紙典型的には、50%RH、23℃/50%RHのTAPPI標準条件で約−5mm〜約5mmのカールの量を示す。
【0049】
最終写真用紙(図3B及び4B)では、裏側予応力顔料コート104中の水溶性バインダは、画像受容コーティング層200から生じる応力を対抗バランスする。これは、潜在的な有用な用途であり、それは、原料ベース100上のバック予応力コート104が、印刷媒体の使用の際に、画像受容層200に類似の方法で応答するように設計されているからである。例えば、媒体が、高温乾燥条件(例えば32℃/20%RH)で調整されている場合、バック予応力コート104は収縮し、その収縮は、表側(画像受容側)に設けられた画像受容層200からの収縮応力を対抗バランスする。これは、裏側ポリマーフィルム120(例えばPE層)からの膨張応力も対抗補償する。コート原料ベース12中の予応力の量は、バック予応力コート104中の水溶性バインダの相対量によって(図8に図示)、また裏側104と表側(トップ)101との予応力コーティングのコート重量の差(図9に図示)によって制御される。
【0050】
例示的な製品に対応する最終写真用紙及び典型的な従来の写真用紙において発生した湾曲の比較を、概略図として図5A〜Bに示す。環境条件湿潤/低温、乾燥/低温、湿潤/高温及び乾燥/高温(15℃/80%RH;15℃/20%RH;30℃/80%RH;及び32℃/20%RH、紙パルプ技術協会(TAPPI)の標準条件23℃/50%RHと比較)に曝した時の、最終写真用紙で生じた相対的な湾曲を示す。図5Aに、比較される従来の写真用紙(Hewlett-Packard CompanyのHP Advanced Photo Paper)による結果を示し、図5Bに、同じ条件下での例示的な予応力負荷された写真用紙結果を示す。
【0051】
図6に示すグラフは、典型的な(従来技術の)原料ベース、樹脂コート写真用ベース及び最終インクジェット用写真用紙において、環境条件によりカールがどのように変化したかを示す。X軸は、3つの異なる環境条件(23℃/50%RH、32℃/20%RH及び15℃/80%RH)を示す。カールのレベルは、Y軸上に示す(負のカール数値は裏側に向かうカールを示す)。高い負のカールは、高いレベルの予応力を示す。これらの例では、予応力は、23℃/50%RHでのベースを32℃/20%RHと比較すると低下しており、一方、予応力レベルは、ベースを15℃/80%RHで調整し23℃/50%RHと比較すると増大している。
【0052】
図7に示すグラフは、図6と類似であるが、例の試料1の例示的な予応力負荷された写真用ベースについての環境条件によるカールの変化を示している点で異なる。平均のカールサイズ(Y軸)を、3つの異なる環境条件、つまり23℃/50%RH、32℃/20%RH及び15℃/80%RH(X軸)に対してプロットした。図7の矢印は、写真用紙においてこれまでの問題のあった点である示された2つの環境の場所へ向かう23℃/50%RHからの変化の方向を示す。従来の設計とは違って、例示的な試料における予応力(Y軸に示された裏側に向かうカール)は、23℃/50%RHでのベースを、32℃/20%RHと比較すると増大しており、一方、予応力レベルは、ベースを15℃/80%RHで調整し23℃/50%RHと比較すると減少している。32℃/20%RHでの高い予応力は、マイクロ多孔質の画像形成層の収縮及び裏側PEの膨張のために、画像形成側へ向かうカールの減少を助成する。15℃/80%RHでの小さい予応力によって、マイクロ多孔質の画像形成層の膨張及び裏側PEの収縮によって裏側に向かう過度に大きい負のカールも回避される。結果として、最終写真用紙は、全ての環境条件で平らに又はほぼ平らに保たれる。
【0053】
裏側コーティング中の水溶性バインダレベルが、図8のグラフに示すように変化すると、試料2及び3の例示的な予応力負荷された写真用ベースのカールは変化する。データは、図1で図示したように、予応力コート原料ベース紙12及びラミネートされた写真用ベース紙14の両方について存在する。負のカールとは、裏側に向かうカールを指す。高い負のカールとは、高いレベルの予応力を指す。このプロットでは、バック予応力コート104中の水溶性バインダの重量%(PVAで例示されている)は、層101及び104の両方の表側及び裏側コート重量が、それぞれ8gsm及び15gsmに一定に維持されていても変化する。裏側コーティング104中のPVAレベルを、X軸上に示す。裏側コーティング中のPVAレベルが大きくなると、予応力(裏側へのカール)のレベルが増大する。これは、いくつかの態様で可能な予応力変更の範囲を示す。
【0054】
図9は、例の試料3〜6の、例示的な予応力負荷された原料ベース紙12及びラミネートされた写真用ベース紙14についてのカールの変化を示すグラフである。データは、予応力コート原料ベース紙12及びラミネートされた写真用ベース紙14(図1に概略的に示すように構成)の両方について存在する。負のカールは、裏側に向かうカールを指し、高い負のカールは高いレベルの予応力を指す。このプロットでは、裏側コート重量を15gsmに一定に維持し且つ裏側コート104中の水溶性バインダの重量%(PVAで例示)を15重量%で一定に維持しながら、表側コート重量を変化させている。さらなる設計のフレキシビリティが、このグラフに表されている。
【0055】
図10は、従来の写真用ベースと比較した、例示的な予応力負荷された写真用ベースの相対的な画像の滲み及び鮮鋭度を示すグラフである。これらの印刷品質は、Quality Engineering Associates, Inc.のDIAS装置を使用して測定した。試料の写真用ベースのより低い滲み値及びより高い鮮鋭度値は、より十分な画像鮮明度又は認識される光沢と関連する。図2に示すような表側コーティング101’における2つの層設計を含む例中の試料8は、最良の鮮鋭度及び最低の滲みを付与する。表側(例えば図1の層101)に一層の予応力コーティング設計を有する試料7は、試料9(代表的な従来の設計)よりも十分な鮮鋭度及び低い滲みを有する。
【0056】
ここに記載のインクジェット印刷のための写真用紙の特定の態様によって、最終製品の認識される画像光沢を維持しながら、環境条件の所定の範囲にわたる改善されたカールの管理が得られる。いくつかの態様では、予応力負荷された樹脂コート原料ベース紙を製造するための開示の方法によって、15〜32℃及び20〜80%相対湿度を含む環境条件の広範な範囲にわたり平らに又はほぼ平らに維持される最終写真用紙が提供される。いくつかの態様では、最終写真用紙における初期の予応力の下方へのカールの度合いは、15〜32℃及び20〜80%相対湿度の範囲の任意の環境条件で、約−5mm〜約5mmの範囲にある。最終写真用紙は、インクジェット印刷画像を受容した後は、上述の環境条件(例えば保存時に又は輸送)の範囲にわたり、印刷画像は、正の及び負のカールに対して耐性である。いくつかの態様では、インクジェット印刷の使用後、印刷された写真用紙は、上述の温度及び湿度の範囲にわたり、実質的に平らに、又は約±5mmを超えない上方へ又は下方へのカールを有するに留まる。予応力負荷された写真用紙の態様は、使用の際に、プリントヘッドによって擦られるリスクや、プリンタの送出トレイでのシート供給の問題を生じさせるリスクを減じる。よって、印刷詰まり又は印刷障害が生じる可能性も減じられる。
【0057】
特定の態様によれば、写真用紙のための予応力負荷された基体は、(a)表側表面及び裏側表面を有するベース紙、(b)表側表面上に設けられているトップ予応力コートであって、当該トップ予応力コートが、少なくとも第1の顔料と、第1の水溶性バインダ(WSB)及び第1の水分散性バインダ(WDB)を含む第1の結合材料(TBM)とを含む第1の予応力混合物を含んでいる、トップ予応力コート、並びに(c)裏側表面上に設けられているバック予応力コートであって、当該バック予応力コーティングが、少なくとも第2の顔料と、第2の水溶性バインダ(WSB)及び、任意に第2の水分散性バインダ(WDB)を含む第2の結合材料(TBM)とを含む第2の予応力混合物を含むものである、バック予応力コートとを含み、TBM中のWSBの重量%が、TBM中のWSBの重量%より小さいものが提供される。予応力負荷された基体は、裏側表面に向かう所定の度合いの湾曲を有し、画像受容層コーティング及び最終製品を使用する際に生じるカール力に対抗することができる。
【0058】
いくつかの態様では、トップ予応力コートが、(b)第1の顔料及び第1の結合材料を含む第1の予応力コート、並びに(b)ベース紙の表側表面と第1の予応力コートとの間に設けられた、第3の顔料及び第3の結合材料(TBM)を含む予応力アンダーコートを含む。
【0059】
いくつかの態様では、予応力アンダーコート中の第3の顔料は、第1の予応力コート中の第1の顔料と比較して、等しい又はより低い平均表面積、及び等しい又はより大きい平均粒径を有する。いくつかの態様では、予応力アンダーコート中のTBMは、第3の水溶性バインダ(WSB)及びa第3の水分散性バインダ(WSB)を含む。いくつかの態様では、予応力アンダーコート中のTBMはTBMと同じである。いくつかの態様では、WSBの量はTBMの<50重量%であり、WSBの量はTBMの>50重量%である。いくつかの態様では、TBMは、<10重量%WSBを含み、TBMは、>10重量%WSBを含む。
【0060】
いくつかの態様では、バック予応力コートが、トップ予応力コートよりも1〜3倍大きいコート重量を有する。いくつかの態様では、トップ予応力コートは約5〜約25gsmのコート重量を有し、裏側予応力コートは約10〜30gsmのコート重量を有する。いくつかの態様では、基体は、基体が15℃及び20〜80%相対湿度の時又は30℃及び20〜80%相対湿度の時、裏側表面に向かう湾曲を有する。
【0061】
いくつかの態様では、上述の予応力負荷された基体はさらに、(d)トップ予応力コート上に設けられた第1のポリマーフィルム層、及び(e)バック予応力コート上に設けられた第2のポリマーフィルム層を備えている。いくつかの態様では、第2のポリマーフィルム層コート重量の、第1のポリマーフィルム層コート重量に対する比は2未満である。
【0062】
特定の態様によれば、写真用紙は、上述の、予応力負荷された写真用ベース紙とも呼ぶフィルムコートされた予応力負荷された基体、及び第1のポリマーフィルム層上に配置された細孔性の画像受容層を備えている。いくつかの態様では、写真用紙はさらに、画像受容層上に設けられた印刷されたインクジェット画像を有しており、画像含有写真用紙は、約15〜32℃及び約20〜80%相対湿度の範囲の環境条件でカーリングに対して耐性を有する。
【0063】
さらに別の態様によれば、(a)原料ベース紙の表側表面上に、少なくとも第1の顔料と、第1の水溶性バインダ(WSB)及び第1の水分散性バインダ(WDB)を含む第1の結合材料(TBM)とを含む第1の予応力混合物を含むトップ予応力コートを塗布し、(b)ベース紙の裏側表面上に、第2の顔料と、第2の水溶性バインダ(WSB)及び、任意に第2の水分散性バインダ(WDB)を含む第2の結合材料(TBM)とを含む第2の予応力混合物を塗布し、それにより、裏側表面上に設けられたバック予応力コートを形成することを含む、上述のカール耐性紙を製作する方法が提供される。表側表面に塗布されるTBM中のWSBの重量%は、裏側表面上に塗布されるTBM中のWSBの重量%より小さく、それにより、15〜32℃及び20〜80%相対湿度の範囲の環境条件でカーリングに耐性のある予応力負荷されたベース紙が得られる。
【0064】
上述の方法のいくつかの態様では、(a)が、(a1)表側表面に、第3の顔料と、第3の水溶性バインダ及び第3の水分散性バインダを含む第3のバインダ材料と含む第3の予応力混合物を塗布して、表側表面上に予応力アンダーコートを形成し、(a2)前記予応力アンダーコート上に第1の予応力混合物を塗布し、予応力アンダーコート上に第1の予応力コートを形成することを含む。
【0065】
上述の方法のいくつかの態様では、予応力アンダーコート中の第3の顔料は、第1の予応力コート中の第1の顔料と比較して、等しい又はより低い平均表面積及び等しい又はより高い平均粒径を有する。いくつかの態様では、予応力アンダーコート中の第3の結合材料は、第3の水溶性バインダ及び第3の水分散性バインダを含む。いくつかの態様では、予応力アンダーコート中の第3のバインダ材料は、第1の予応力コート中の第1の結合材料と同じである。いくつかの態様では、トップ予応力コート中のWSBは、TBMの<50重量%であり、裏側予応力コート中のWSBは、TBMの>50重量%である。
【0066】
特定の態様では、上記方法はさらに、(c)第1のポリマーフィルムをトップ予応力コート上に形成し、(d)第2のポリマーフィルムを裏側予応力コート上に形成し、予応力負荷された写真用ベース紙を得るステップを含む。いくつかの態様では、第1及び第2のポリマーフィルムでは、第2のポリマーフィルムの、第1のポリマーフィルムに対する重量比が2未満となっている。
【0067】
いくつかの態様では、上記方法は、(b’)(b)から製紙装置へ進む予応力負荷されたベース紙を、(c)及び(d)の前に、カレンダー処理をすることを含む。いくつかの態様では、ステップ(c)における形成することが、第1のポリマーフィルムをトップ予応力コートへと押し出すことを含み、ステップ(d)における形成することが、第2のポリマーフィルムを裏側予応力コートへと押し出すことを含む。いくつかの態様では、上記方法は、多孔質のインク受容層を第1のポリマーフィルム上に塗布するステップ(e)を含む。
【0068】
上記の説明は、本発明の原理及び様々な態様を例示すること意図されたものである。上記開示が十分に認識されるのであれば、多数の変形及び変更は当業者には明らかである。以下の特許請求の範囲は、そのような全ての変形及び変更を包含すると解釈されることが意図されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)表側表面及び裏側表面を有するベース紙(100)、
(b)前記表側表面上に設けられたトップ予応力コート(101)であって、少なくとも第1の顔料と、第1の水溶性バインダ(WSB)及び第1の水分散性バインダ(WDB)を含む第1の結合材料(TBM)とを含有する第1の予応力混合物を含むもの、並びに
(c)前記裏側表面上に設けられたバック予応力コート(104)であって、少なくとも第2の顔料と、第2の水溶性バインダ(WSB)及び、任意に第2の水分散性バインダ(WDB)を含む第2の結合材料(TBM)とを含有する第2の予応力混合物を含むものを備えており、
前記TBM中の前記WSBの重量%は、前記TBM中の前記WSBの重量%より小さく、前記予応力負荷された基体(12)が、裏側表面に向かう湾曲の所定の度合いを有し、画像受容層コーティング及び最終製品の使用の際に生じるカーリング力に対抗することができる、写真用紙(10)のための予応力負荷された基体(12)。
【請求項2】
前記(b)トップ予応力コート(101’)が、
前記第1の顔料及び前記第1の結合材料を含有する(b)第1の予応力コート(102)、並びに
前記ベース紙の前記表側表面と前記第1の予応力コート(102)との間に配置された(b)、第3の顔料及び第3の結合材料(TBM)を含む予応力アンダーコート(103)を含む、請求項1に記載の予応力負荷された基体。
【請求項3】
前記予応力アンダーコート(103)中の前記第3の顔料が、前記第1の予応力コート(102)中の前記第1の顔料と比較して、等しい又はより小さい平均表面積、及び等しい又はより大きい平均粒径を有する、請求項2に記載の予応力負荷された基体。
【請求項4】
前記予応力アンダーコート中の前記TBMが、第3の水溶性バインダ(WSB)及び第3の水分散性バインダ(WDB)を含む、請求項2に記載の予応力負荷された基体。
【請求項5】
前記WSBの量が、前記TBMの<50重量%であり、前記WSBの量が、前記TBMの>50重量%である、請求項1から4のいずれか1項に記載の予応力負荷された基体。
【請求項6】
前記TBMが、<10重量%WSBを含み、前記TBMが、>10重量%WSBを含む、請求項1から5のいずれか1項に記載の予応力負荷された基体。
【請求項7】
前記バック予応力コート(104)が、前記トップ予応力コート(101)の1〜3倍のコート重量を有する、請求項1から6のいずれか1項に記載の予応力負荷された基体。
【請求項8】
前記基体が、15℃及び20〜80%相対湿度又は30℃及び20〜80%相対湿度にある時、前記基体が裏側表面に向かう前記湾曲を有する、請求項1から7のいずれか1項に記載の予応力負荷された基体。
【請求項9】
(d)前記トップ予応力コート(101)上に設けられた第1のポリマーフィルム層(110)、及び
(e)前記バック予応力コート(104)上に設けられた第2のポリマーフィルム層(120)をさらに備えている、請求項1から8のいずれか1項に記載の予応力負荷された基体。
【請求項10】
前記第2のポリマーフィルム層(120)コート重量の、前記第1のポリマーフィルム層(110)コート重量に対する比が2未満である、請求項9に記載の予応力負荷された基体。
【請求項11】
請求項9又は10に記載の予応力負荷された基体、及び
前記第1のポリマーフィルム層(110)上に設けられた細孔性の画像受容層(200)を備えている、写真用紙(10)。
【請求項12】
前記写真用紙が、前記画像受容層上の印刷されたインクジェット画像をさらに備えており、当該画像を含む写真用紙が、約15〜32℃及び約20〜80%相対湿度の範囲の環境条件でカーリングに対して抵抗性を有する、請求項11に記載の写真用紙。
【請求項13】
(a)原料ベース紙の表側表面に、少なくとも第1の顔料と、第1の水溶性バインダ(WSB)及び第1の水分散性バインダ(WDB)を含む第1の結合材料(TBM)とを含有する第1の予応力混合物を含むトップ予応力コートを塗布し、
(b)前記ベース紙の裏側表面に、第2の顔料と、第2の水溶性バインダ(WSB)及び、任意に第2の水分散性バインダ(WDB)を含む第2の結合材料(TBM)を含有する第2の予応力混合物を塗布し、それにより、前記裏側表面上にバック予応力コートを形成することを含み、
前記表側表面上に塗布されたTBM中のWSBの重量%が、前記裏側表面上に塗布されたTBM中のWSBの重量%より小さく、それにより、15〜32℃及び20〜80%相対湿度の範囲の環境条件においてカーリングに対する耐光性を有する予応力負荷されたベース紙が得られる、カール抵抗性を有する紙を製作する方法。
【請求項14】
(a)前記塗布することが、
(a1)前記表側表面上に、第3の顔料と、第3の水溶性バインダ及び第3の水分散性バインダを含む第3のバインダ材料とを含む第3の予応力混合物を塗布し、それにより、予応力アンダーコート(103)を前記表側表面上に形成し、
(a2)前記予応力アンダーコート上に前記第1の予応力混合物を塗布し、それにより、第1の予応力コート(102)を前記予応力アンダーコート(103)上に形成することを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
(c)第1のポリマーフィルムを前記トップ予応力コート上に形成し、
(d)第2のポリマーフィルムを前記バック予応力コート上に形成し、それにより、予応力負荷された写真用ベース紙を得ることをさらに含む、請求項13又は14に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2012−519092(P2012−519092A)
【公表日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−552010(P2011−552010)
【出願日】平成21年2月27日(2009.2.27)
【国際出願番号】PCT/US2009/035530
【国際公開番号】WO2010/098770
【国際公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【出願人】(511076424)ヒューレット−パッカード デベロップメント カンパニー エル.ピー. (155)
【氏名又は名称原語表記】Hewlett‐Packard Development Company, L.P.
【Fターム(参考)】