説明

冬期の路面状態の判別方法および判別システム

【課題】高い精度で路面状態を判別できるようにするとともに、システムを安価に構成できかつ経済的に運用できるようにすることにある。
【解決手段】テレビカメラ2で撮影した画像中の所定範囲の路面画像の微小範囲毎の濃度値と範囲数の分布を解析して濃度平均値を求める工程と、その濃度平均値が、予め路面状態毎に定めた濃度規定値範囲の何れに属するか判断することにより路面状態を判別する工程と、を含み、前記各工程をコンピュータ1が行うことを特徴とする、冬期の路面状態の判別方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、冬期の路面状態を評価して路面全体の状態を自動的に判別する冬期の路面状態の判別方法および判別システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
寒冷地の冬期の路面は、乾燥、湿潤、凍結、積雪、シャーベット等の状態になる。このような路面状態を判別する技術としては、以下のようなものがある。
(1) 路面に埋設した温度センサで路面状況を監視する(非特許文献1参照)。
(2) 路面に埋設した光ファイバの伸縮で路面温度を検知して路面の凍結危険箇所を知らせる(非特許文献2参照)。
(3) 光波式センサで路面高と反射光量とを計測し、加えて温度センサで路面温度も測定することで路面の凍結等の状況を判断する。
(4) 偏向フィルタを用いて路面からの反射光を垂直偏向と水平偏向とに分離し、その強度比から湿潤状態を検知する。
【非特許文献2】http://www.tokimec.co.jp/const/products/eds.htm
【非特許文献1】http://www.hitachi-cable.co.jp/sensor/romen.stm
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら上記従来の技術では何れも、点観測であるため情報量が少ないという問題、検知精度が低いため信頼性が低いという問題および、冬期のみ作動するものであるため、システムが高価な点と相俟って不経済であるという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、この発明の冬期の路面状態の判別方法は、テレビカメラで撮影した画像中の所定範囲の路面画像の微小範囲毎の濃度値と範囲数の分布を解析して濃度平均値を求める工程と、その濃度平均値が、予め路面状態毎に定めた濃度規定値範囲の何れに属するか判断することにより路面状態を判別する工程とを含み、前記各工程をコンピュータが行うことを特徴とするものである。
【0005】
また、この発明の冬期の路面状態の判別システムは、テレビカメラで撮影した画像中の所定範囲の路面画像の微小範囲毎の濃度値と範囲数の分布を解析して濃度平均値を求める濃度平均値演算手段と、その濃度平均値が、予め路面状態毎に定めた濃度規定値範囲の何れに属するか判断することにより路面状態を判別する路面状態判別手段とを具えることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0006】
かかるこの発明の方法およびシステムによれば、所定範囲の路面画像の微小範囲(例えば画素)毎の濃度値と範囲数(例えば画素数)の分布を解析して濃度平均値を求め、その濃度平均値が、予め路面状態毎に定めた濃度規定値範囲の何れに属するか判断することにより路面状態を判別するので、高い精度で路面状態を判別することができる。
【0007】
しかもこの発明の方法およびシステムによれば、テレビカメラで撮影した画像に基づいて路面状態を判別するので、通年使用される交通情報用等の既設のテレビカメラの画像を利用し得て、システムを安価に構成できるとともに経済的に運用することができる。
【0008】
なお、この発明の判別方法および判別システムにおいては、上記濃度平均値は、路面画像のR(赤成分)画像、G(緑成分)画像、B(青成分)画像および輝度画像の四成分の何れか一つについて求めても良いが、それらの成分の何れか一つ以上について求めて平均化しても良く、あるいはその何れか一つの成分の路面画像から求まった路面状態に対してより的確に判別できる成分を選択して、その成分の路面画像で路面状態を確認しても良い。
【0009】
また、この発明の判別方法においては、路面温度を計測する工程と、その計測した路面温度が、予め路面状態毎に定めた温度範囲の何れに属するか判断することにより路面状態を判別する工程とを含んでいても良く、またこの発明の判別システムにおいては、路面温度を計測する路面温度計測手段を具え、前記路面状態判別手段はさらに、その計測した路面温度が、予め路面状態毎に定めた温度範囲の何れに属するか判断することにより路面状態を判別しても良い。このようにすれば、濃度だけでは判りにくい凍結と湿潤の判別をより正確に行うことができる。
【0010】
さらに、この発明の判別方法においては、前記テレビカメラで撮影した画像中の所定範囲の路面画像の微小範囲毎の濃度値と確率分布とからエントロピー値を求める工程と、そのエントロピー値が、予め路面状態毎に定めたエントロピー値範囲の何れに属するか判断することにより路面状態を判別する工程とを含んでいても良く、またこの発明の判別システムにおいては、前記テレビカメラで撮影した画像中の所定範囲の路面画像の微小範囲毎の濃度値と確率分布とからエントロピー値を求めるエントロピー値演算手段を具え、前記路面状態判別手段はさらに、そのエントロピー値が、予め路面状態毎に定めたエントロピー値範囲の何れに属するか判断することにより路面状態を判別しても良い。このようにすれば、濃度だけでは判りにくい積雪とシャーベット状態の判別をより正確に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を実施例によって、図面に基づき詳細に説明する。ここに、図1(a)は、この発明の冬期の路面状態の判別方法の一実施例に用いる、この発明の冬期の路面状態の判別システムの一実施例を示す構成図、図1(b)は、その実施例の判別システムのパーソナルコンピュータが実行する機能を示すブロック線図、図2は、上記実施例の判別システムの応用例を示す構成図、図3は、上記実施例の判別システムで路面状態を判別する領域を例示する説明図である。
【0012】
図1(a)に示すように、この実施例の冬期の路面状態の判別システムは、具体的には予め与えられた所定のプログラムによって作動するPC(パーソナルコンピュータ)1によって構成され、このPC1は、所定位置に設置されて所定範囲の路面を撮影するテレビカメラとしてのCCTV(閉回路テレビジョン)カメラ2が出力した映像(画像)信号を、映像分配器3を介して分配されて入力する。映像分配器3は、CCTVカメラ2が出力した映像信号を監視モニタ4にも分配し、監視モニタ4は、そのCCTVカメラ2が出力した映像信号を入力して、そのCCTVカメラ2が撮影した路面の映像を画面上に表示する。
【0013】
PC1はまた、CCTVカメラ2が撮影する路面に埋設された路面温度計測手段としての通常の路面温度センサ5がその路面の温度を計測して出力する路面温度信号も入力する。そしてPC1は、上記所定のプログラムによって、図1(b)に示すように、濃度平均値演算部1aおよび路面状態判別部1bとして機能し、上記映像信号およびその路面温度信号から、現地調査データに基づき後述の如くして冬期の上記所定範囲の路面の状態を自動的に判別して、その判別結果を示す路面情報信号を路面情報表示装置6に出力し、その路面情報信号を入力した路面情報表示装置6は、その路面情報信号が示す路面情報を画面等で出力する。
【0014】
この実施例の判別システムは、図2に示すように、CCTVカメラ2が撮影した映像を情報管理室の管理モニタ4に表示して交通状況を監視する既設の交通情報管理システムを利用して設置することもでき、ここでは路面情報表示装置6として、道路情報盤6aや信号灯6bで路面情報を表示出力するほか、予め記録した文面の電子メールあるいは予め記録した音声または合成音声の自動通話により、モデムおよびインターネット等を介して携帯電話機6cや外部端末装置としてのパーソナルコンピュータ6d、そして除雪基地の等の端末装置や図示しないカーナビゲーション装置等によって路面情報を出力する。
【0015】
ところで、この実施例の判別システムは、具体的には、CCTVカメラ2が撮影した映像であるカラーのデジタル画像を基に、以下の手順で判定処理を実行する。
(1)計測エリアの設定
この実施例の判別システムを構成するPC1が路面状態を判別する際、先ず、図3中に枠で示すように、PC1の画面上に映し出された上記画像中で当該システムのユーザが、計測したい路面の部位を路面状態の計測エリアAとして指定し、この計測エリアA内についてPCIが画像処理を施す。計測エリアAは通常の描画処理により、任意の形状で指定することができる。
【0016】
(2)メッシュによる細分化
設定された計測エリアA内をメッシュ(網目)状に細分化し、細分化された各エリア毎に規定パラメータにて路面状態の判別を行う。判別方法は、この実施例の判別システムでは、濃度平均値による判別、エントロピーによる判別および路面温度データによる判別の三種類を行う。この実施例の判別システムは、その細分化された各エリアについての判別結果を保持し、計測エリアAの全体判別時に利用する。
【0017】
(3)画像の補正
この実施例の判別システムは、後述する路面状態の判別のために、輝度値補正と、画像の平均化との2つの補正を行う。輝度値補正では、予め定めた標準画像の平均輝度レベルを取得し、そのレベル値に合わせて判別対象画像の輝度レベルを補正する。これにより、夜間や悪天候時の輝度値の違いを補うことができる。また、道路のリアルタイムの画像では人や車等が写っているため、そのままでは処理に支障をきたす恐れがある。そこで画像の平均化では、予め指定した期間の画像を平均化し、人や車等を画像上から消去した判別対象画像を作成する。
【0018】
(4)R(赤成分)画像・G(緑成分)画像・B(青成分)画像・輝度画像のそれぞれの濃度解析による判別
この実施例の判別システムは、上記計測エリアA内のデジタル画像(元画像)を、図4に示すように、R(赤成分)画像、G(緑成分)画像、B(青成分)画像および輝度画像の四成分に分離し、上記細分化された各エリア毎に、各成分画像の濃度レベルを例えば0から180まで5階調毎に分けた場合の、微小範囲としての画素毎の濃度レベルと画像数との関係を調べ、その結果から濃度平均値(濃度測定値)をそれぞれ算出する。従ってPC1は、濃度平均値演算手段に相当する。
【0019】
一方、この実施例の判別システムは、路面状態(性状)を乾燥、湿潤、積雪、凍結およびシャーベットの五種類に分け、R画像、G画像、B画像および輝度画像のそれぞれに対し、上記五種類の路面状態のそれぞれの濃度平均値の範囲(濃度規定値)を、互いにラップしないように、例えば、R画像、G画像、B画像および輝度画像で共通にして、上記0から180までの5階調毎の濃度レベルに対し、凍結:20〜45階調、湿潤:50〜70階調、乾燥:75〜95階調、シャーベット:100〜135階調、積雪:140〜180階調というように予め設定されて与えられている。
【0020】
なお、上記濃度規定値の設定は、撮影画像の濃度平均値と実際の路面状況とを対比して行ったものである。すなわち、本願発明者は検証実験として、冬期約1ヶ月間、某一般国道の2箇所の路面性状を測定した。測定に際してはCCTV2で路面を自動録画すると共に路面温度センサ5で路面温度も測定した。また路面状態は人が別途観測し、この実施例の判別システムによる判別処理結果の妥当性が確認できるようにした。その際、録画映像の中から乾燥、湿潤、積雪、凍結、シャーベットの5種類の画像をそれぞれにつき150画像抜き出し、合計750画像のデータを基に解析を行った。図5は、その750枚の輝度画像データを基に路面状態を判別した結果を示しており、乾燥、積雪およびシャーベットの間は概ね濃度平均値から判別可能であった。一方、乾燥、湿潤および凍結の間、とりわけ凍結と湿潤の判別は曖昧であった。この傾向はR画像、G画像、B画像についても同様であった。
【0021】
しかしてこの実施例の判別システムは、上記計測エリアA内について上記細分化された各エリア毎に、先ず、輝度画像について算出した濃度平均値(濃度測定値)が上記五種類の路面状態のそれぞれの濃度平均値の範囲(濃度規定値)の何れに入るかを調べ、その結果から路面状態を判別する。なお、この判別の結果、湿潤と判断した場合はさらに、B画像について算出した濃度平均値(濃度測定値)が上記五種類の路面状態のうち湿潤に入ることを確認する。このようにすることで、湿潤状態の判別精度を高めることができる。従ってPC1は、路面状態判別手段にも相当する。
【0022】
(5)エントロピーによる判別
上記濃度平均値の解析では、積雪とシャーベットとは濃度平均値が大きく、両者の判別が曖昧な場合があった。そこでこの実施例の判別システムはさらに、上記計測エリアA内のカラーのデジタル画像(元画像)をグレイ画像に変換し、上記細分化された各エリア毎に以下のエントロピー分析を行う。すなわち、この実施例の判別システムは、計測エリアA内でエントロピー測定値を算出する。従ってPC1は、エントロピー値演算手段にも相当する。
【0023】
ここで、エントロピーとは、情報源を観測したときに得られる情報量の期待値のことをいい、平均情報量とも呼ばれる。エントロピーは、カラーの元画像を、図6(a),(b)に示すように白黒濃淡画像(例えば0〜255諧調)に変換し、その白黒濃淡画像から以下の[数1]式により算出する。
【数1】


但し、H(X):エントロピー(ビット/画素)、P(xi):確率分布、Xi:画像の濃度値である。エントロピーが大きい場合、データは一様で、シャーベット状態に対応する。逆にエントロピーが小さい場合、データは偏っており積雪状態に対応する。
【0024】
この実施例の判別システムは、図7に示すように、積雪とシャーベットとについて上記エントロピーの範囲(エントロピー規定値)を互いにラップしないように、例えば、凍結:1.5〜2.4、湿潤:2.5〜2.8、乾燥:2.9〜3.3、積雪:3.4〜4.2、シャーベット:4.3〜6.0というように予め設定されて与えられている。そしてエントロピー測定値が積雪とシャーベットとについての上記エントロピー規定値の何れに入るかを調べ、路面状態が積雪かシャーベットかの判別については、上記濃度平均値の解析に優先して、そのエントロピー測定値が上記エントロピー規定値の何れに入るかを調べた結果により行う。
【0025】
なお、上記エントロピー規定値の設定は、撮影画像のエントロピー測定値と実際の路面状況とを対比して行ったものである。すなわち、図7は、上記750枚のカラーの元画像から得た750枚の白黒濃淡画像を基にエントロピーを算出し、それによって路面判別したものである。エントロピー規定値は、凍結:1.5〜2.4、湿潤:2.5〜2.8、乾燥:2.9〜3.3、積雪:3.4〜4.2、シャーベット:4.3〜6.0としてある。特にシャーベットと積雪との判別については、後述する表1に示すように、上記の輝度画像による路面判別結果では積雪が91%、シャーベットが93%の的中率であったのに対し、エントロピーによる結果は積雪94%、シャーベット97%のように、より高的中率であった。
【0026】
(6)路面温度の付加による判別精度の向上
上記濃度平均値の解析ではまた、凍結と湿潤も共に濃度測定値が小さく、類似した分布を示し判別がしにくい。そこでこの実施例の判別システムは、路面温度センサ5が路面の温度を計測して出力する路面温度信号に基づいて凍結と湿潤とを判別する。すなわちここでは、PC1は、上記濃度平均値の解析結果に加えて、例えば路面温度がマイナス(氷点下)の場合は凍結とし、路面温度が0℃の場合およびプラスの場合は湿潤とする。
【0027】
図8は、輝度画像による濃度測定値と路面温度との関係を示し、その関係をさらに路面状態別に分類したものである。後述する表1に示すように、凍結と湿潤とについては、輝度画像のみの路面判別結果では凍結が75%で、湿潤が85%であったのに対し、路面温度を考慮(マイナス温度は凍結、0℃およびプラス温度は湿潤と設定)すると、凍結が86%で、湿潤が85%というように、判別精度の向上が期待できることが判明した。
【0028】
上記の検証実験による路面判別結果をまとめたのが下記の表1である。乾燥については輝度画像、湿潤はB(青色)画像による判別方法が有効である。積雪とシャーベットはエントロピーによる判定が効果的である。また凍結については路面温度を付加すると判別制度が向上する。以上のように各路面性状に有効なデータを用いると、90%近い的中率で路面判別ができることが本検証実験で確認できた。
【表1】

ここで、マス上段は、各比較レベルにおける的中率、マス下段は的中件数を表す。
【0029】
図9(a)は、この実施例の判別システムの初期状態を例示する説明図、図9(b)は、その実施例の判別システムの実行状態を例示する説明図であり、図9(a)に示すように路面上に判定(判別)領域を設定すると、この実施例の判別システムは、その判定領域を目状に細分化し、図9(b)に示すように、細分化した各エリア毎に判別した路面状態を例えば色分けして画面上等に表示する。
【0030】
従って、この実施例の冬期の路面状態の判別方法およびその判別方法を実施するこの実施例の冬期の路面状態の判別システムによれば、上記計測エリアA内について上記細分化された各エリア毎に路面画像の画素毎の濃度値と画素数の分布を解析して濃度平均値を求め、その濃度平均値が、予め路面状態毎に定めた濃度規定値範囲の何れに属するか判断することにより路面状態を判別するので、高い精度で路面状態を判別することができる。
【0031】
しかもこの実施例の判別方法および判別システムによれば、CCTVカメラ2で撮影した画像に基づいて路面状態を判別するので、通年使用される交通情報用等の既設のテレビカメラの画像を利用し得て、システムを安価に構成できるとともに経済的に運用することができる。
【0032】
さらに、この実施例の判別方法および判別システムによれば、上記濃度平均値は、路面画像のR(赤成分)画像、G(緑成分)画像、B(青成分)画像および輝度画像の四成分について求めるものの先ず輝度画像の濃度平均値を用いて路面状態を判別し、その結果、より適切に判別できる成分がある場合はその成分の濃度平均値を用いて路面状態を確認するので、より適切に路面状態を判別することができる。
【0033】
また、この実施例の判別方法においては、上記工程(6)の、路面温度を計測する工程と、その計測した路面温度が、予め路面状態毎に定めた温度範囲の何れに属するか判断することにより路面状態を判別する工程とを含んでおり、またこの実施例の判別システムにおいては、路面温度を計測する路面温度計測手段としての路面温度センサ5を具え、PC1はさらに上記(6)の工程で、その計測した路面温度が、予め路面状態毎に定めた温度範囲の何れに属するか判断することにより路面状態を判別するので、濃度だけでは判りにくい凍結と湿潤の判別をより正確に行うことができる。
【0034】
さらに、この実施例の判別方法においては、上記工程(5)の、CCTVカメラ1で撮影した画像中の上記計測エリアA内について上記細分化された各エリア毎に画素毎の濃度値と確率分布とからエントロピー値を求める工程と、そのエントロピー値が、予め路面状態毎に定めたエントロピー値範囲の何れに属するか判断することにより路面状態を判別する工程とを含んでおり、またこの実施例の判別システムにおいては、PC1は、CCTVカメラ1で撮影した画像中の上記計測エリアA内について上記細分化された各エリア毎に画素毎の濃度値と確率分布とからエントロピー値を求め、さらにそのエントロピー値が、予め路面状態毎に定めたエントロピー値範囲の何れに属するか判断することにより路面状態を判別するので、濃度だけでは判りにくい積雪とシャーベット状態の判別をより正確に行うことができる。
【0035】
以上、図示例に基づき説明したが、この発明は上述の例に限定されるものでなく、例えば、上記例では一つの画像中の一箇所のみに判別エリアを設定しているが、一つの画像中の複数箇所に判別エリアを設定するようにしても良い。
【0036】
また、上記例では上記濃度平均値は、路面画像のR(赤成分)画像、G(緑成分)画像、B(青成分)画像および輝度画像の四成分について求めているが、輝度画像のみの濃度平均値から路面状態を判別しても良く、あるいはそれとエントロピー値での判別および路面温度計測値での判別の少なくとも一方を組み合わせても良い。
【産業上の利用可能性】
【0037】
かくしてこの発明の方法およびシステムによれば、所定範囲の路面画像の微小範囲(例えば画素)毎の濃度値と範囲数(例えば画素数)の分布を解析して濃度平均値を求め、その濃度平均値が、予め路面状態毎に定めた濃度規定値範囲の何れに属するか判断することにより路面状態を判別するので、高い精度で路面状態を判別することができる。
【0038】
しかもこの発明の方法およびシステムによれば、テレビカメラで撮影した画像に基づいて路面状態を判別するので、通年使用される交通情報用等の既設のテレビカメラの画像を利用し得て、システムを安価に構成できるとともに経済的に運用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】(a)は、この発明の冬期の路面状態の判別方法の一実施例に用いる、この発明の冬期の路面状態の判別システムの一実施例を示す構成図、(b)は、その実施例の判別システムのパーソナルコンピュータが実行する機能を示すブロック線図である。
【図2】上記実施例の判別システムの応用例を示す構成図である。
【図3】上記実施例の判別システムが路面状態を判別する領域を例示する説明図である。
【図4】上記実施例の判別システムが解析するカラー画像の各成分の濃度分布例を示す説明図である。
【図5】上記実施例の判別システムが行った輝度画像による路面状態の判別結果を示す説明図である。
【図6】上記実施例の判別システムが行うエントロピー解析のための白黒濃淡画像例を示す説明図である。
【図7】上記実施例の判別システムが行ったエントロピー解析による路面状態の判別結果を示す説明図である。
【図8】上記実施例の判別システムが求めた輝度画像による濃度測定値と路面温度との関係を示す説明図である。
【図9】(a)は、上記実施例の判別システムの初期状態を例示する説明図、(b)は、その実施例の判別システムの実行状態を例示する説明図である。
【符号の説明】
【0040】
1 パーソナルコンピュータ(PC)
1a 濃度平均値演算部
1b 路面状態判別部
2 CCTVカメラ
3 映像分配器
4 監視モニタ
5 路面温度センサ
6 路面情報表示装置
6a 道路情報盤
6b 信号灯
6c 携帯電話機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
テレビカメラで撮影した画像中の所定範囲の路面画像の微小範囲毎の濃度値と範囲数の分布を解析して濃度平均値を求める工程と、
その濃度平均値が、予め路面状態毎に定めた濃度規定値範囲の何れに属するか判断することにより路面状態を判別する工程と、を含み、
前記各工程をコンピュータが行うことを特徴とする、冬期の路面状態の判別方法。
【請求項2】
路面温度を計測する工程と、
その計測した路面温度が、予め路面状態毎に定めた温度範囲の何れに属するか判断することにより路面状態を判別する工程と、
を含むことを特徴とする、請求項1記載の冬期の路面状態の判別方法。
【請求項3】
前記テレビカメラで撮影した画像中の所定範囲の路面画像の微小範囲毎の濃度値と確率分布とからエントロピー値を求める工程と、
そのエントロピー値が、予め路面状態毎に定めたエントロピー値範囲の何れに属するか判断することにより路面状態を判別する工程と、を含むことを特徴とする、請求項1または2記載の冬期の路面状態の判別方法。
【請求項4】
テレビカメラで撮影した画像中の所定範囲の路面画像の微小範囲毎の濃度値と範囲数の分布を解析して濃度平均値を求める濃度平均値演算手段と、
その濃度平均値が、予め路面状態毎に定めた濃度規定値範囲の何れに属するか判断することにより路面状態を判別する路面状態判別手段と、
を具えることを特徴とする、冬期の路面状態の判別システム。
【請求項5】
路面温度を計測する路面温度計測手段を具え、
前記路面状態判別手段はさらに、その計測した路面温度が、予め路面状態毎に定めた温度範囲の何れに属するか判断することにより路面状態を判別することを特徴とする、請求項4記載の冬期の路面状態の判別システム。
【請求項6】
前記テレビカメラで撮影した画像中の所定範囲の路面画像の微小範囲毎の濃度値と確率分布とからエントロピー値を求めるエントロピー値演算手段を具え、
前記路面状態判別手段はさらに、そのエントロピー値が、予め路面状態毎に定めたエントロピー値範囲の何れに属するか判断することにより路面状態を判別することを特徴とする、請求項4または5記載の冬期の路面状態の判別システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−263714(P2007−263714A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−88548(P2006−88548)
【出願日】平成18年3月28日(2006.3.28)
【出願人】(501028390)国土交通省北陸地方整備局長 (12)
【出願人】(598021605)社団法人 雪センター (5)
【出願人】(396024174)株式会社クリエート青木 (1)
【出願人】(000140384)株式会社横河ブリッジ (29)
【Fターム(参考)】