説明

冷凍又は冷蔵倉庫の断熱壁の構築方法及び断熱壁

【課題】既存の冷凍倉庫又は冷蔵倉庫の改修に用いる場合でも作業効率良く改修を行うことができ、しかも結露の発生を大幅に抑制した断熱壁が得られる断熱壁の構築方法を提供する。
【解決手段】冷凍又は冷蔵倉庫の壁部4の外面側に、合成樹脂発泡板1の片面に表面材2を設けた複合断熱板3を、表面材2を外方に向けて、壁部4との間に隙間5を開けて仮設する。この仮設の後、前記隙間5にグラウト材を注入して硬化させることで、前記壁部4に複合断熱板3を一体化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍倉庫又は冷蔵倉庫の断熱壁の構築方法及び断熱壁に関する。更に詳しくは、通常コンクリートで構成されている壁部に断熱板を付設して断熱性を付与した、冷凍倉庫又は冷蔵倉庫の断熱壁の構築方法及び断熱壁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、冷蔵庫の断熱壁の構築方法として、コンクリートの壁部の内面に、発泡ポリスチレンの断熱板を隙間を隔てて取り付け、壁部と断熱板の隙間にグラウト材を充填して、壁部と断熱板を一体化して断熱する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。この従来の方法を更に具体的に説明すると、断熱板の裏面に団子状の接着剤塊を部分的に付着させておき、この接着剤塊の付着面を、接着剤塊を完全に押し潰さない程度の圧力で壁部の内面へ押し付け、これによって壁部との間に隙間を残して断熱板を取り付けた後、隙間にグラウト材を充填して、壁部と断熱板を隙間なく一体化する方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−42989号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の方法では、壁部の内面に断熱板を付設しているので、既存の冷凍倉庫又は冷蔵倉庫を稼働させながら改修する場合、保管中の荷物を邪魔にならない場所に移動させながら工事を行わなければならず、作業効率が悪い問題がある。特に改修対象が冷凍倉庫の場合、極低温下での作業となるので、長時間連続して作業が行えないことも作業効率を低下させる原因となる。また、強度がさほど高くない発泡ポリスチレンの板材をそのまま断熱板として用いているので、グラウト材の充填を慎重に行わないと断熱板が変形しやすく、これも作業効率を低下させる原因となっている。
【0005】
一方、冷凍倉庫又は冷蔵倉庫の場合、通常、内部は外部に比して乾燥状態にあるので、外部から内部へ侵入しようとする湿気が問題となる。上記従来の方法で構築された断熱構造は、壁部の内側に断熱板を付設しているので、外部に露出しているコンクリート製の壁部への湿気の侵入は許容された状態にある。このため、わずかでもグラウト材の未充填部や剥離箇所が存在すると、壁部へ侵入した湿気がこれらの箇所で結露しやすい問題がある。特に冷凍倉庫の場合、この結露が凍って徐々に堆積し、断熱板を剥離させることになる。
【0006】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みてなされたもので、既存の冷凍倉庫又は冷蔵倉庫の改修に用いる場合でも作業効率良く改修を行うことができ、しかも結露の発生を大幅に抑制した断熱壁が得られるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1は、冷凍又は冷蔵倉庫の壁部の外面側に、合成樹脂発泡板の片面に表面材を設けた複合断熱板を、表面材を外方に向けて、壁部との間に隙間を開けて仮設した後、この隙間にグラウト材を注入して硬化させることで、前記壁部と複合断熱板を一体化することを特徴とする冷凍又は冷蔵倉庫の断熱壁の構築方法を提供するものである。
【0008】
上記本発明の第1は、壁部への複合断熱板の仮設を、壁部と複合断熱板の間に、部分的に粘土状の接着剤とスペーサを挟み込ませると共に、スペーサを粘着剤で壁部と複合断熱板に接合することで複合断熱板を壁部に仮止めした状態で、接着剤を硬化させることで行うこと、
壁部の最下部へ仮設される複合断熱板の下辺部に沿って、壁部との間に粘土状の接着剤又はコーキング材を挟み込ませることで、隙間の下端を閉塞すること、
壁部の最下部へ仮設される複合断熱板の下辺部に沿って、壁部に支持材を取り付け、壁部の最下部へ仮設される複合断熱板の下辺部をこの支持材上に支持させると共に、隙間の下端を閉塞すること、
支持材が、背面が壁部の外面に宛われて取り付けられる板状の取付部の下端を前面側に屈曲させた受け部と、この受け部の先端を上方へ屈曲させた突出片とを備えており、壁部の最下部に仮設される複合断熱板の下辺部を、取付部と受け部と突出片とで囲まれた領域に差し込むことで支持材上に支持させると共に、隙間の下端を閉塞すること、
グラウト材の注入を、壁部と仮設された複合断熱板との間に形成された隙間の下部にのみ注入して硬化させた後、その余の隙間への注入を行う二段注入とすること、
壁部の高さ方向に複数の施工領域に分け、下方の施工領域から上方の施工領域へと、複合断熱板の仮設及びグラウト材の注入硬化による壁部と複合断熱板の一体化を各施工領域毎に順次行うこと、
網状の補強繊維クロスを仮止めした壁部に複合断熱板の仮設を行うこと、
複合断熱板間の接続を実接ぎとすること、
合成樹脂発泡板の壁部との対向面に凹凸が形成された複合断熱板を用いること、
補強繊維を混入したグラウトを用いること、
をその好ましい態様として含むものである。
【0009】
また、本発明の第2は、冷凍又は冷蔵倉庫の壁部の外面側に、合成樹脂発泡板の片面に表面材を設けた複合断熱板が、表面材を外方に向けて、壁部との間に形成された隙間に注入硬化されたグラウト材により一体に取り付けられていることを特徴とする冷凍又は冷蔵倉庫の断熱壁を提供するものである。
【0010】
上記本発明の第2は、複合断熱板の表面材が金属板で、相隣接する複合断熱板間の継ぎ目にコーキングが施されていること、
グラウト材により、壁部の外面に網状の補強繊維クロスが一体に取り付けられていること、
グラウト材に補強繊維が混入されていること、
をその好ましい態様として含むものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の第1に係る断熱壁の構築方法は、複合断熱板を壁部の外面側から取り付けるものであることから、総ての作業を外部にて行うことができる。従って、稼働させながら既存の冷凍倉庫又は冷蔵倉庫を改修するのに用いる場合でも、保管中の荷物を片付けたり、作業者が内部に立ち入る必要もなく、これらを行うことによる作業効率の低下を防止することができる。また、複合断熱板を構成する合成樹脂発泡板は表面材によって補強されているので、グラウト材の注入時に変形しにくい。このため、グラウト材の注入作業が行いやすく、作業効率がよい。
【0012】
また、本発明の第2に係る断熱壁は、通常コンクリートで構成されている壁部の外面側に複合断熱板が取り付けられた構造となっている。複合断熱板は、壁部と複合断熱板の間の隙間に注入硬化されたグラウト材により壁部と一体化されているので、元々結露を生じる隙間が発生しにくい構造となっていることに加え、断熱壁の外側を囲んでいる複合断熱板で壁部への湿気の侵入を阻止することができる。従って、結露発生の危険性が、グラウト材による壁部と複合断熱材の一体化と、複合断熱材による湿気の遮断とにより二重に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】壁部の最下部へ複合断熱板を仮設した状態の断面図である。
【図2】粘土状の接着剤及びスペーサを付設した複合断熱板の背面図である。
【図3】壁部の最下部及び二段目の複合断熱板を仮設した状態の断面図である。
【図4】壁部と複合断熱板間にグラウト材を注入硬化させて両者を一体化した状態の断面図である。
【図5】支持材を用いて壁部の最下部の複合断熱板を仮設した状態の一例を示す断面図である。
【図6】支持材を用いて壁部の最下部の複合断熱板を仮設した状態の他の例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面に基づいて本発明を更に説明する。なお、以下に説明する図1〜図6において、同じ符号は同じ部材を示す。
【0015】
まず、図1から図4に基づいて本発明に係る断熱壁の構築方法の一例とそれによって得られる断熱壁の一例を説明する。
【0016】
本発明では、合成樹脂発泡板1の片面に表面材2を設けた複合断熱板3を用いる。合成樹脂発泡板1としては、例えばポリスチレン系発泡板、ポリエチレン系発泡板、ポリプロピレン系発泡板、ポリウレタン系発泡板、フェーノール樹脂系発泡板などを用いることができるが、吸水性が低く、断熱性に優れることから、ポリスチレンの発泡板が好ましい。表面材2としては、合成樹脂発泡板1の保護及び補強効果が高く、しかも湿気を遮断することができることから、例えばガルバリウム鋼板、カラー鋼板、アルミニウム合金板などの金属板が好ましい。
【0017】
本発明による断熱壁の構築は、冷凍又は冷蔵倉庫の壁部4の外面側に、上記複合断熱板3を、表面材2を外方へ向け、壁部4との間に隙間5を開けて仮設した後、この隙間5にグラウト材6(図4参照)を注入硬化させて、壁部4に複合断熱板3を一体に取り付けることで行われる。複合断熱板3の取り付けは、壁部4の下方から上方へと順次行われる。
【0018】
まず、図1に示されるように、壁部4の最下部へ複合断熱板3を仮設する。複合断熱板3の仮設は、壁部4との間の隙間5にグラウト材6(図4参照)を注入してもずれたり脱落しないように複合断熱板3を壁部4に固定することで行われる。
【0019】
複合断熱板3の仮設に際しては、図2に示されるように、複合断熱板3の背面(表面材2とは反対側の合成樹脂発泡板1の露出面)に、部分的に粘土状の接着剤7a,7bとスペーサ8を付設し、この付設面を壁部4へ押し付けることで一旦仮止めすることが好ましい。図2において、点在する円形部分が接着剤7aであり、複合断熱板3の下辺に沿った帯状部分が接着剤7bである。また、スペーサ8は、点在する四角形部分となっている。
【0020】
粘土状の接着剤7a,7bとしては、団子状にしたり厚塗りが可能な低流動性の接着剤を用いることができる。具体的には、例えば低流動性のエポキシ系接着剤を用いることができる。スペーサ8としては、合成樹脂発泡板1と同様の材質の板片の表裏に粘着剤(例えば両面テープ)を付設したものを用いることができる。スペーサ8は、隙間5に対応する厚みを有するもので、接着剤7a,7bはこのスペーサ8よりも盛り上がった状態で設けられている。なお、点在する接着剤7a部分とスペーサ8の形状は図示される円形と四角形に限られるものではなく、他の形状とすることもできる。
【0021】
上記複合断熱板3の接着剤7a,7b及びスペーサ8の付設面を壁部4に押し付け、スペーサ8よりも盛り上がっている接着剤7a,7bを押し潰しながら、壁部4と複合断熱板3の間に接着剤7とスペーサ8を挟み込ませる。この時、接着剤7a,7bは未硬化であるので、強い接着力は有していないが、スペーサ8が粘着剤で壁部4及び複合断熱板3に接合されるので、複合断熱板3がずれたり脱落しないよう、壁部4に仮止めすることができる。そして、この状態で養生時間をおき、接着剤7a,7bを硬化させることで、複合断熱板3の壁部4への仮設状態を強固なものとすることができる。点状に設けられた接着剤7aは連通した隙間5を維持した状態で複合断熱板3を壁部4へ接着するためのものであり、複合断熱板3の下辺に沿って帯状に設けられた接着剤7bは、複合断熱板3を壁部4へ接着すると共に、隙間5の下端を閉塞するためのものである。
【0022】
複合断熱板3の仮設は、上記スペーサ8を用いずに行うこともできる。しかし、スペーサ8を用いることで、容易に必要な間隔の隙間5を確保することができると共に、接着剤7a,7bが固化するまで、スペーサ8に付設した粘着剤による仮止めを行うことができる利点がある。隙間5は、狭すぎるとグラウト材6(図4参照)の注入が行いにくくなり、広すぎるとグラウト材6の注入量が増えて、注入時にグラウト材6の漏れを生じやすくなると共にグラウト材6の消費量が増大してコストアップにつながる。隙間5の間隔は、5mmを超え、10mm以下であることが好ましい。また、複合断熱板3の下辺に沿って帯状の部材(例えば合成樹脂発泡板1と同様の材質の棒材)を挟み込ませて固定することで、接着剤7bの付設を省略することもできる。
【0023】
上記のようにして壁部4の最下部に、複合断熱板3を、冷凍又は冷蔵倉庫の壁部4を一周して仮止めした後又は壁部4のコーナー部とコーナー部の間に仮止めした後、必要に応じて、図3に示されるように、二段目以降の複合断熱板3を一段目と同様にして仮止めする。但し、この二段目以降の複合断熱板3については、帯状の接着剤7bは設けられておらず、点在する接着剤7aとスペーサ8だけが設けられたものとなっている。また、複合断熱板3を壁部4のコーナー部とコーナー部の間に仮止めする場合、例えば壁部4のコーナー部に隣接する複合断熱板3の側辺に沿って縦に帯状に接着剤(図示されていない)を設けることなどによって、隙間5の側端を閉塞してグラウト材6(図4参照)の漏れを防止することが好ましい。複合断熱板3を壁部4を一周して仮止めする場合、この隙間5の側端の閉塞は不要である。
【0024】
一段目(最下段)の複合断熱板3と二段目以降の複合断熱板3は、図3に示されるように、合成樹脂発泡板1の端面に形成した凸部9と凹部10により実接ぎすることが好ましい。また、図示されてはいないが、各段の横方向に相隣接する複合断熱板3同士も同様に実接ぎすることが好ましい。複合断熱板3同士を実接ぎしておくことにより、隙間5へのグラウト材6(図4参照)の注入時の漏れを防止しやすくなる。また、複合断熱板3間の継ぎ目にコーキング11を施しておくと、継ぎ目からのグラウト材6の漏れを防止できると共に、断熱壁構築後に継ぎ目を介して外部から壁部4へ侵入する湿気を阻止することができる。
【0025】
一段目の複合断熱板3を仮止めした後又は更に二段目以降の複合断熱板3をも連続して仮止めした後、養生時間をおいて接着剤7a,7bを硬化させ、安定した仮設状態とする。そして、接着剤7a,7bの硬化後、図4に示されるように、壁部4と複合断熱板3間の隙間にグラウト材6を注入して満たし、硬化させることで、複合断熱板3を壁部4に一体的に取り付ける。
【0026】
グラウト材6としては、セメント系グラウト材、エポキシ系グラウト材、ポリマーセメント系グラウト材などがあるが、通常壁部4はコンクリート構造物であることから、セメント系グラウト材を好ましく用いることができる。また、硬化に伴って間隙を生じないよう、無収縮性のものが好ましい。
【0027】
隙間5へのグラウト材6の注入は、隙間5の上縁から下部へ垂らしたチューブ又はホース(図示されていない)を用い、最初は隙間5の下部にグラウト材6を流し込み、徐々にチューブ又はホースを持ち上げながら、隙間5全体にグラウト材6を満たすようにすることが好ましい。このようにすると、仮設された複合断熱板3に加わるグラウト材6の注入圧を最小限に抑えることができ、圧力による複合断熱板3の膨出やグラウト材6の漏れを防止しやすくなる。また、一旦隙間5の下部にのみグラウト材6を注入し、その余の隙間5へはこの下部のグラウト材6の硬化後に別途グラウト材6を注入する二段注入とすると、隙間5の下端からの漏れを防止しやすい。
【0028】
グラウト材6は、壁部4の上端まで複合断熱板3を仮設し、その背後の隙間5に一気に注入することもできるが、隙間5の下部でのグラウト材6の圧力が高くなって漏れを生じやすくなる。このため、壁部4の高さ方向に複数の施工領域に分け、下方の施工領域から上方の施工領域へと、複合断熱板3の仮設及びグラウト材6の注入硬化による壁部4と複合断熱板3の一体化を各施工領域毎に順次行うことが好ましい。二番目以降の施工領域における複合断熱板3の仮設は、前述の二段目以降の複合断熱板3の仮設と同様にして行うことができる。
【0029】
このようにして構築される断熱壁は、複合断熱板3と壁部4間がグラウト材6によって一体化され、間隙を生じにくいので、結露の発生を防止することができる。また、壁部4が合成樹脂発泡体1と表面材2とで覆われた状態となるので、外部からの湿気の侵入を抑制することができる。特に複合断熱板3の表面材2を金属板とし、複合断熱板3間の継ぎ目にコーキング9を施しておくと、外部からの湿気の侵入を確実に阻止することができる。
【0030】
壁部4の外面に網状の補強繊維クロス(図示されていない)を仮止めし、この補強繊維クロスを設けた壁部4に対して複合断熱板3を仮止めして隙間5にグラウト材6を注入し、複合断熱板3と共に補強繊維クロスを一体に壁部4に取り付けることもできる。このようにすると、断熱性の付与と共に、耐震性を向上させることができる。更に、例えば炭素繊維などの補強繊維(短繊維)を混入したグラウト材6を用いると、より高い耐震性の向上を図ることができる。
【0031】
合成樹脂発泡板1の壁部4との対向面に凹凸が形成された複合断熱板3を用いることもできる。このような複合断熱板3を用いると、複合断熱板3とグラウト材6の接合力を高めることができる。
【0032】
次に、壁部4の最下部へ仮設する複合断熱板3(一段目の複合断熱板3)の他の仮設方法について説明する。
【0033】
図5に示されるように、壁部4の最下部へ仮設される複合断熱板3の下辺部に沿って、壁部4に支持材20が取り付けられている。この取り付けは、接着やアンカーボルトの打ち込みなどで行うことができる。本例の支持材20は、上面に複合断熱板3の下辺部を載置可能な棒状をなすもので、上面には突起部21が形成されている。複合断熱板3は、その下辺の端面に形成された凹部10に突起部21が嵌め合わされた状態で、下辺部が支持材20上に載置されて支持されている。
【0034】
このように支持材20を用いて一段目の複合断熱板3の仮設を行うと、複合断熱板3の下辺部が支持材20上に支持されることで安定させやすい利点がある。加えて、支持材20によって隙間5の下端を閉塞することができる。従って、図5には複合断熱板3の下辺に、隙間5の下端を閉塞する接着剤7bが示されているが、これは省略することもできる。また、支持材20と複合断熱板3の間にコーキング材を介在させ、両者間のシール力を高めることもできる。
【0035】
図6の例においても、壁部4の最下部へ仮設される複合断熱板3の下辺部に沿って、壁部4に支持材30が取り付けられている。本例における支持材30は、背面が壁部4の外面に宛われて取り付けられる板状の取付部31と、この取付部31の下端を前面側に屈曲させた受け部32と、この受け部32の先端を上方へ屈曲させた突出片33とを備えている。支持材30の取付部31は、壁部4に接着又はアンカーボルトの打ち込みなどで固定されている。複合断熱板3は、その下辺部を、取付部31と受け部32と突出片33とで囲まれた領域に差し込むことで支持材30上に支持されている。
【0036】
上記支持材30を用いると、複合断熱板3の下辺部が支持材30の取付部31と受け部32と突出片33で掴持された状態となるので、高い安定性が得やすい利点がある。また、支持材30によって隙間5の下端を閉塞することができるが、上記掴持によりグラウト材6の漏れを防止しやすい利点もある。更に、本例においても、支持材30と複合断熱板3の間にコーキング材を介在させ、両者間のシール力を高めることもできる。
【符号の説明】
【0037】
1 合成樹脂発泡板
2 表面材
3 複合断熱板
4 壁部
5 隙間
6 グラウト材
7a 接着剤
7b 接着剤
8 スペーサ
9 凸部
10 凹部
11 コーキング
20 支持材
21 突起部
30 支持材
31 取付部
32 受け部
33 突出片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷凍又は冷蔵倉庫の壁部の外面側に、合成樹脂発泡板の片面に表面材を設けた複合断熱板を、表面材を外方に向けて、壁部との間に隙間を開けて仮設した後、この隙間にグラウト材を注入して硬化させることで、前記壁部と複合断熱板を一体化することを特徴とする冷凍又は冷蔵倉庫の断熱壁の構築方法。
【請求項2】
壁部への複合断熱板の仮設を、壁部と複合断熱板の間に、部分的に粘土状の接着剤とスペーサを挟み込ませると共に、スペーサを粘着剤で壁部と複合断熱板に接合することで複合断熱板を壁部に仮止めした状態で、接着剤を硬化させることで行うことを特徴とする請求項1に記載の冷凍又は冷蔵倉庫の断熱壁の構築方法。
【請求項3】
壁部の最下部へ仮設される複合断熱板の下辺部に沿って、壁部との間に粘土状の接着剤を挟み込ませることで、隙間の下端を閉塞することを特徴とする請求項1又は2に記載の冷凍又は冷蔵倉庫の断熱壁の構築方法。
【請求項4】
壁部の最下部へ仮設される複合断熱板の下辺部に沿って、壁部に支持材を取り付け、壁部の最下部へ仮設される複合断熱板の下辺部をこの支持材上に支持させると共に、隙間の下端を閉塞することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の冷凍又は冷蔵倉庫の断熱壁の構築方法。
【請求項5】
支持材が、背面が壁部の外面に宛われて取り付けられる板状の取付部の下端を前面側に屈曲させた受け部と、この受け部の先端を上方へ屈曲させた突出片とを備えており、壁部の最下部に仮設される複合断熱板の下辺部を、取付部と受け部と突出片とで囲まれた領域に差し込むことで支持材上に支持させると共に、隙間の下端を閉塞することを特徴とする請求項4に記載の冷凍又は冷蔵倉庫の断熱壁の構築方法。
【請求項6】
グラウト材の注入を、壁部と仮設された複合断熱板との間に形成された隙間の下部にのみ注入して硬化させた後、その余の隙間への注入を行う二段注入とすることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の冷凍又は冷蔵倉庫の断熱壁の構築方法。
【請求項7】
壁部の高さ方向に複数の施工領域に分け、下方の施工領域から上方の施工領域へと、複合断熱板の仮設及びグラウト材の注入硬化による壁部と複合断熱板の一体化を各施工領域毎に順次行うことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の冷凍又は冷蔵倉庫の断熱壁の構築方法。
【請求項8】
網状の補強繊維クロスを仮止めした壁部に複合断熱板の仮設を行うことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の冷凍又は冷蔵倉庫の断熱壁の構築方法。
【請求項9】
複合断熱板間の接続を実接ぎとすることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の冷凍又は冷蔵倉庫の断熱壁の構築方法。
【請求項10】
合成樹脂発泡板の壁部との対向面に凹凸が形成された複合断熱板を用いることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の冷凍又は冷蔵倉庫の断熱壁の構築方法。
【請求項11】
補強繊維を混入したグラウトを用いることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の冷凍又は冷蔵倉庫の断熱壁の構築方法。
【請求項12】
冷凍又は冷蔵倉庫の壁部の外面側に、合成樹脂発泡板の片面に表面材を設けた複合断熱板が、表面材を外方に向けて、壁部との間に形成された隙間に注入硬化されたグラウト材により一体に取り付けられていることを特徴とする冷凍又は冷蔵倉庫の断熱壁。
【請求項13】
複合断熱板の表面材が金属板で、相隣接する複合断熱板間の継ぎ目にコーキングが施されていることを特徴とする請求項12に記載の冷凍又は冷蔵倉庫の断熱壁。
【請求項14】
グラウト材により、壁部の外面に網状の補強繊維クロスが一体に取り付けられていることを特徴とする請求項12又は13に記載の冷凍又は冷蔵倉庫の断熱壁。
【請求項15】
グラウト材に補強繊維が混入されていることを特徴とする請求項12〜14のいずれか1項に記載の冷凍又は冷蔵倉庫の断熱壁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−69568(P2011−69568A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−222154(P2009−222154)
【出願日】平成21年9月28日(2009.9.28)
【出願人】(000109196)ダウ化工株式会社 (69)
【Fターム(参考)】