説明

冷凍味付け椎茸

【課題】従来の鞘付の冷凍味付枝豆や冷凍煮豆の製造工程と異なる製造工程により冷凍易味付け椎茸を製造すること。
【解決手段】椎茸を水温18℃で一晩流水して水もどし後、選別して水で2分間洗浄し、水温95℃以上の沸騰水に2分間入れてボイル後、水温18℃で椎茸の品温が25℃以下になるまで流水冷却し、水切りを行った後、トレハロース7g、ソルビトール9gを水390gに溶解させた調味液内に椎茸415gを1時間浸漬し、かつおだし8g、砂糖40gを加えて調味液の沸騰後に8分間加熱し、醤油45g、食塩0.8g、グルタミン酸ナトリュウム1.0gを加えて糖度が22となるまで加熱し、味醂9g、酒9gを加えて沸騰するまで加熱し、4時間放置後に、椎茸の中心温度が70℃になるまで1分以上再加熱して椎茸に味付けを行い、味付け後の椎茸を調味液内から取り出して真空冷却後に−40℃以下で30分間バラ凍結して冷凍味付け椎茸を製造した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、椎茸を調味液内に浸漬して味付けを行い、味付け後の椎茸をバラ凍結して製造した冷凍味付け椎茸に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、冷凍味付食品及びその製造方法の一例として、特開平8−242799号公報には、鞘付の冷凍枝豆およびその製造方法が開示され、この公報には次のことが記載されている。「第一工程:原料の枝豆100kgを分離し、商品化に好ましい大きさの枝豆のみを選択し、洗浄する。第二工程:洗浄した枝豆をスチームで2〜4分間ブランチング処理する。(中略)第三工程:ブランチング処理を行った枝豆を−30℃以下の条件で凍結し、その後−18℃以下の冷凍庫に保存した。第四工程:得られた冷凍枝豆を、温度70℃〜95℃の高濃度調味液(10%、15%、20%)に入れて解凍するとともに、温度40℃〜65℃の高濃度調味液に下げた状態で5〜15分間浸漬して味付けする。ここで高濃度調味液は、濃度10〜30%食塩水を主体にだしの素、化学調味料、香料などを調合した調味用液体である。この工程でも加熱するので、鞘付枝豆は、茹で上がり状態となった。また、枝豆の鞘の組織は凍結変性により鞘内部に調味液が浸透し易い状態となっているため、短時間に鞘の内部の豆まで味付けがなされた。第五工程:味付した鞘付枝豆を水切りした後、凍結して鞘付の冷凍味付枝豆にする工程である。この凍結も少なくとも−30℃以下で実施、凍結後に冷凍庫にて−18℃以下で保存した。第六工程:鞘付の冷凍味付枝豆を200gづつ所定の小袋に詰めて冷凍食品として商品化した。」(公報第5頁右欄18行乃至同欄42行を参照)。
【0003】
上記の記載からみて、この種の冷凍味付枝豆の製造工程では、ブランチング処理をすることが前提である。
【0004】
さらに、特開平10−313807号公報には、冷凍煮豆およびその製造方法の発明が開示され、この公報には次のことが記載されている。「本発明の他の目的は、調味濃度が低く、過度の加熱を行わず、保存性を高める為の食品添加物(合成保存料、PH調整剤、酸味料等)の使用を除去ないし低減することにより、原料豆が本来有する味、新鮮な味を活かした煮豆、およびその製造方法を提供することにある。(中略)本発明においては、水炊きしたものではなく、ある程度の調理・加工(一次加工)した煮豆を冷凍することに特徴がある。本発明においては、このように原料豆の一次加工(多少の調理、加工)を行った後に冷凍するため、水炊き後単に冷凍した豆に生じるような、豆の「割れ」や「皮むけ」が効果的に防止される。加えて、本発明においては、完成品たる煮豆の最初の味付け(一次調味)は、原料豆の収穫時から、かなりの早い段階(例えば、収穫後未乾燥の状態)に行うことが可能となるため、「生き物」である原料豆が新鮮なうちに加工(一次加工)して、バラ凍結(IQF)することにより、原料豆の風味、新鮮味の保持が著しく容易となる。したがって、本発明によれば、豆の素材(原料豆)が本来有する味を保持し、且つ、新鮮な形で長期保存できる。(中略)更に、本発明によれば、原料豆を必要なときに(一次加工後)凍結保存し、必要なときに調理、加工(二次加工)できるため、煮豆生産業務の負荷を平準化したり、あるいは閑のあるときに生産するというようなコントロールを年間を通して行うことが可能となる。しかも、完成品の調味(二次加工)は、該完成品の「賞味期限」を考慮して適切な時期に行えばよいため、本来必要となる以上には保存用の食品添加物を加える必要がなくなり、この面からも、原料豆の風味、新鮮味の保持が容易となる(公報第2頁右欄3行乃至第3頁左欄26行を参照)。
【特許文献1】特開平8−242799号公報
【特許文献2】特開平10−313807号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、従来の発明である鞘付の冷凍味付枝豆や冷凍煮豆の製造工程とは異なり、冷凍味付け椎茸を製造する場合に特定の製造工程を経て完成された冷凍味付け椎茸を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、このような従来の問題点を克服するために種々の検討を行った結果、椎茸を水温18℃で一晩流水して水もどしを行い、選別して水で2分間洗浄し、水温95℃以上の沸騰水に2分間入れてボイル後、水温18℃で椎茸の品温が25℃以下になるまで流水冷却し、水切りを行った後、トレハロース7g、ソルビトール9gを水390gに溶解させた調味液内に椎茸415gを1時間浸漬し、かつおだし8g、砂糖40gを加えて調味液の沸騰後に3分間加熱し、醤油45g、食塩0.8g、グルタミン酸ナトリュウム1.0gを加えて糖度が22となるように加熱し、味醂9g、酒9gを加えて沸騰するまで加熱し、4時間放置後に、椎茸の中心温度が70℃になるまで1分以上再加熱して椎茸に味付けを行い、味付け後の椎茸を調味液内から取り出して真空冷却後に−40℃以下で30分間バラ凍結して冷凍味付け椎茸を製造した。
【0007】
本発明を実施する際に適用されるトレハロースおよびソレビトールは甘味料である。
【発明の効果】
【0008】
本発明のバラ凍結により製造した冷凍味付け椎茸は、バラ凍結の前に椎茸に調味液を染み込ませることにより、充分に味付けができ、また、冷凍味付け椎茸を袋詰等した後に冷凍保管すれば、冷凍味付け椎茸を食する場合は、一つの袋に多数の椎茸が入っていても、バラ凍結されているので、必要な分だけ取り出した椎茸だけを解凍することにより食べることができ、袋詰された残りの冷凍味付け椎茸は冷凍されたままであり、袋詰食品の無駄のない利用ができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明による冷凍味付け椎茸は、椎茸を水温18℃で一晩流水して水もどしを行い、選別して水で2分間洗浄し、水温95℃以上の沸騰水に2分間入れてボイル後、水温18℃で椎茸の品温が25℃以下になるまで流水冷却し、水切りを行った後、トレハロース7g、ソルビトール9gを水390gに溶解させた調味液内に椎茸415gを1時間浸漬し、かつおだし8g、砂糖40gを加えて調味液の沸騰後に3分間加熱し、醤油45g、食塩0.8g、グルタミン酸ナトリュウム1.0gを加えて糖度が22となるように加熱し、味醂9g、酒9gを加えて沸騰するまで加熱し、4時間放置後に、椎茸の中心温度が70℃になるまで1分以上再加熱して椎茸に味付けを行い、味付け後の椎茸を調味液内から取り出して真空冷却後に−40℃以下で30分間バラ凍結して冷凍味付け椎茸を製造した。
【実施例1】
【0010】
冷凍味付け椎茸の製造工程を具体的に説明する。
【0011】
(1)原材料
乾燥椎茸を冷凍味付け椎茸の原材料とした。
(2)水もどし
乾燥椎茸を水温18℃で一晩流水にさらした。
(3)選別および洗浄
製造に適する椎茸と、製造に適さない椎茸との選別を行
い、その後、水道水で2分間洗浄した。
(4)ボイル
洗浄後の椎茸を、95℃以上の沸騰水に2分間入れてボイルした。
(5)流水冷却
18℃の流水で椎茸の品温が25℃以下になるまで冷却した。
(6)水切り
冷却後の椎茸の水切りを行った。
(7)浸漬
トレハロース7g、ソルビトール9gを水390gに溶解させた調味液内に
水切り後の椎茸415gを1時間浸漬した。
(8)かつおだし、砂糖の添加および加熱
かつおだし8g、砂糖40gを加え、調味液の沸騰後に8分間加熱した。
(9)醤油、塩、グルタミン酸ナトリュウムの添加および加熱
醤油45g、食塩0.8g、グルタミン酸ナトリュウム1.0gを加えて屈折
糖度計を使用して糖度が22となるように調整して加熱した。
(10)味醂、酒の添加および加熱
味醂9g、酒9gを加えて沸騰するまで2分間加熱した。
(11)放置
加熱後の椎茸を4時間、放置した。
(12)再加熱
放置後の椎茸の中心温度が70℃になるまで1分以上再加熱して椎茸の味付
けを行った。
(13)真空冷却
味付け後の椎茸を調味液内から取り出し、真空冷却設備内で真空冷却を実施
した。
(14)バラ凍結
真空冷却後の椎茸をトンネルフリーザー内で−40℃以下で30分間凍結し
て、本発明の冷凍味付け椎茸を製造した。
(15)袋詰、個数のカウント、包装
バラ凍結後の椎茸を袋詰して、包装した。
(16)検査
バラ凍結した椎茸をすべて金属検査探知機に通し、金属検査を実施した。
(17)冷凍保管
バラ凍結した椎茸を冷凍保管庫で−18℃以下になるように保管した。
【0012】
上記の製造工程を、下記(表1)にまとめて示す。
【0013】
【表1】

【0014】
比較例として、実施例1の製造工程(1)乃至(6)は同一とし、製造工程(7)乃至(12)に替えて、椎茸を蒸煮釜に入れて味付けする味付煮の製造工程を採用してバラ凍結して製造した冷凍味付け椎茸は食感が極めて悪く、食品として提供できないものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
椎茸を水温18℃で一晩流水して水もどしを行い、選別して水で2分間洗浄し、水温95℃以上の沸騰水に2分間入れてボイル後、水温18℃で椎茸の品温が25℃以下になるまで流水冷却し、水切りを行った後、トレハロース7g、ソルビトール9gを水390gに溶解させた調味液内に椎茸415gを1時間浸漬し、かつおだし8g、砂糖40gを加えて調味液の沸騰後に3分間加熱し、醤油45g、食塩0.8g、グルタミン酸ナトリュウム1.0gを加えて糖度が22となるように加熱し、味醂9g、酒9gを加えて沸騰するまで加熱し、4時間放置後に、椎茸の中心温度が70℃になるまで1分以上再加熱して椎茸に味付けを行い、味付け後の椎茸を調味液内から取り出して真空冷却後に−40℃以下で30分間バラ凍結して製造した冷凍味付け椎茸。

【公開番号】特開2007−75101(P2007−75101A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−41723(P2006−41723)
【出願日】平成18年2月18日(2006.2.18)
【分割の表示】特願2005−263428(P2005−263428)の分割
【原出願日】平成17年9月12日(2005.9.12)
【特許番号】特許第3887412号(P3887412)
【特許公報発行日】平成19年2月28日(2007.2.28)
【出願人】(305040444)株式会社 ニッセン (8)
【出願人】(305040433)栗木食品株式会社 (8)
【Fターム(参考)】