説明

冷却パネルへの氷スラリー充填方法及び装置

【課題】 高氷充填率で氷スラリーを冷却パネルに充填した場合でも、流動性を維持して冷却パネル内部の角までスムーズに充填可能であり、また充填時に冷却パネルに過大な圧力を必要としないので、冷却パネル強度を増強させる必要がなく、かつ搬送ポンプ動力を低減することが可能な冷却パネルへの氷スラリー充填方法及び装置を提供する。
【解決手段】 貯氷タンク4に貯留された氷スラリーを冷却パネル1の内部空間に充填するに際し、氷スラリーを目標とする氷充填率より低い氷充填率で冷却パネル1の内部空間にパネル1側に設けた供給部より充填しながら、同内部空間に貯留している潜熱蓄熱用ブラインを冷却パネル他側に設けた戻し部から排出しながら、前記冷却パネルの内部空間に供給する氷スラリーの氷充填率を漸増させながら、同冷却パネルの内部空間の氷充填率を目標とする氷充填率にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷蔵庫や保冷庫、あるいは移動式保冷庫、冷凍冷蔵車等に設けられた金属製薄板状の蓄熱式冷却パネルの内部空間に、潜熱蓄熱用ブラインを製氷させて生成した氷スラリー(ダイナミックアイス)を目標とする氷充填率まで高密度にかつ効率良く充填するための充填方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
冷蔵庫や保冷庫、あるいは移動式保冷庫、冷凍冷蔵車等冷却すべき容器の内壁面に設置される蓄熱式冷却パネルは、通常アルミニウム、ステンレス等の薄板で箱型とするか、あるいは銅パイプ等で構成され、潜熱蓄熱用ブラインを貯留するための内部空間を有し、保冷庫等の荷室容積を減らさないために極力薄くしなければならない。その冷却パネルの内部空間に、保冷能力を高めるため、潜熱蓄熱用ブラインを製氷させて生成した氷スラリーを高密度に充填する必要があり、充填方法としては、内部空間が空の状態のところに高い氷充填率IPFで充填する方法が最も簡単な方法である。
【0003】
ところが氷スラリーを氷充填率35%以上で外気開放型の冷却パネルに充填すると、冷却パネル内での流動性に乏しく、以下のような問題が起こり、十分に充填することができない。氷を冷却パネル内部の角まで充填できない。冷却パネルの入口に詰まった氷が充填のじゃまになり、あふれさせる。充填した氷の高さが均等にならず、あふれさせる。
【0004】
このため氷スラリーを高氷充填率で冷却パネルに充填する場合、冷却パネルを密閉型にして過大な圧力で押し込めなければならない。
特許文献1(特開2002−71248号公報)の図10及び図11には、冷凍コンテナ車22に備えられた密閉型の保冷蓄熱封入容器27に冷凍コンテナ基地21から潜熱蓄熱材を基剤とした氷スラリーを供給するシステムが開示されている。このシステムでは、冷凍コンテナ基地21に設けられた蓄熱槽23と保冷蓄熱封入容器27とを配管で接続し、蓄熱槽23に貯留された前記氷スラリーをポンプにて保冷蓄熱封入容器27内に圧送している。
【0005】
【特許文献1】特開2002−71248号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら特許文献1に開示された密閉型の蓄熱剤封入容器に氷スラリーを高氷充填率で充填する場合、氷充填率が高くなるほど氷スラリーの粘性が増大する性質があるため、過大なポンプ圧力で氷スラリーを押し込めなければならず、そのため冷却パネル等の強度を増大しなければならない。
また充填後に保冷室内を冷却させる分の氷が融解してしまうので、被冷却物を保冷室に入れて冷却する前に、ある程度の氷を消耗してしまうという問題がある。
【0007】
本発明は、かかる従来技術の課題に鑑み、高氷充填率で氷スラリーを冷却パネルに充填した場合でも、流動性を維持して冷却パネル内部の角までスムーズに充填可能であり、また充填時に冷却パネルに過大な圧力を必要としないので、冷却パネル強度を増強させる必要がなく、かつ搬送ポンプ動力を低減することが可能な冷却パネルへの氷スラリー充填方法及び同方法を実施するための装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明方法は、かかる目的を達成するもので、潜熱蓄熱用ブラインを製氷させて生成した氷スラリーを充填する内部空間を有する冷却パネルに目標氷充填率まで氷スラリーを充填する方法において、前記氷スラリーを目標とする氷充填率より低い氷充填率で前記冷却パネルの内部空間にパネル側に設けた供給部より充填しながら、同内部空間に貯留している潜熱蓄熱用ブラインを冷却パネル他側に設けた戻し部から排出しながら、前記冷却パネルの内部空間に供給する氷スラリーの氷充填率を漸増させながら、同冷却パネルの内部空間の氷充填率を目標とする氷充填率にすることを特徴とする。
【0009】
本発明においては、氷スラリーを目標とする氷充填率より低い氷充填率、例えば35重量%未満の氷充填率で冷却パネルの内部空間に充填するため、流動性が十分維持されており、そのため前述の不具合が発生することはなく、かつ同時に冷却パネルの内部空間に貯留する潜熱蓄熱用ブラインを排出しながら、冷却パネルの内部空間内に貯留する氷充填率を高くしていく。これによって最終的に例えば35重量%を越えた目標氷充填率とすることができる。
【0010】
本発明においては、好ましくは、前記氷充填率漸増工程の前に、氷スラリーのブラインを用いて前記冷却パネルの内部空間を氷スラリー温度近傍まで予冷する工程を含める。
また好ましくは、冷却パネルの内部空間を予めブラインで満液とする状態まで予冷を行なった後、氷スラリーの氷充填率を漸増させる工程に移行する。
また好ましくは、前記氷スラリーの氷充填率を漸増させる工程において、前記冷却パネルへ氷スラリーを供給する流入流速を前記冷却パネルからブラインを排出する流出流速より大とする。
【0011】
また好ましくは、前記冷却パネル側に設けた供給部の内部空間の空隙高さを冷却パネル他側に設けた戻し部の空隙高さより高くして、スラリー流れ方向に沿って空隙高さが変化するようにする。
また好ましくは、前記冷却パネル側(中央部も含む)に設けた供給部より前記冷却パネル他側に設けた戻し部の口数を大にして内部空間を流れるスラリー流れ速度を低減させるようにする。
【0012】
また本発明装置は、潜熱蓄熱用ブラインを製氷させて生成した氷スラリーを充填する内部空間を有する冷却パネルに目標氷充填率まで氷スラリーを充填する装置において、前記冷却パネルより潜熱蓄熱用ブラインを排出する排出部が冷却パネル底壁側に設けられ、前記内部空間を片流れ若しくは両流れ方向にスラリーが流動する冷却パネルと、同内部空間に貯留している潜熱蓄熱用ブラインを前記排出部より排出させながら同内部空間に充填する氷スラリーを目標氷充填率より低い氷充填率から漸増させながら濃縮させて目標氷充填率にする氷スラリーの氷充填率制御装置とを備えたことを特徴とする。
【0013】
本発明装置においては、冷却パネルより潜熱蓄熱用ブラインを排出する排出部を冷却パネル底壁側に設けて、同ブラインのみを取り出すようにし、氷スラリーを冷却パネルの内部空間に充填しながら、同内部空間からブラインを排出し、前記氷充填率制御装置により冷却パネルの内部空間の氷充填率を漸増させながら濃縮させて、同内部空間を目標とする氷充填率にする。
本発明装置において、好ましくは、前記氷充填率制御装置にブラインを排出する排出部よりのブラインの排出を検知して目標氷充填率に到達したことを検知する検知手段を具備する。また好ましくは、前記冷却パネルが保冷車の天井部の内壁面に配設する。
【0014】
本発明装置の基本構成を図1に基づいて説明する。図1において、1は、氷スラリーを充填する内部空間を有する薄板状の冷却パネルであり、保冷庫などの内壁に取り付けられる。2は、氷点下の冷媒をつくり製氷器3に供給する冷凍機ユニット、3は、冷凍機ユニット2から供給される冷媒の冷熱を利用して、潜熱蓄熱用ブラインを製氷させて氷スラリーを生成する製氷器、4は、製氷器3で生成した氷スラリーを貯留する貯氷タンクである。
5は、氷スラリーをポンプ7により冷却パネル1の1側の内部空間に供給する配管、6は、ブラインをポンプ8で冷却パネル1の他側の内部空間から戻す戻し管である。
【0015】
9及び10は、供給管5に設けられた電磁弁及び氷充填率センサ、11は冷却パネル1の内部空間の氷充填率を検知するセンサ、12、13及び14は、ブライン戻し管6に設けられた氷充填率センサ、温度センサ及び電磁弁である。15及び16は、供給管5又は戻し管6に介装された接続部で、接続部15及び16によって冷却パネル1側と貯氷タンク4、製氷器3及び冷凍機ユニット2側とを切り離し可能とする。なお接続部15及び16は、接続時に開き、切り離し時に閉まる自動開閉弁機構を持つ。
【0016】
17は、氷充填率制御装置で、供給管5に設けられたポンプ7、電磁弁9及びセンサ10から、氷スラリーの流入流量及び流入側氷充填率を検知し、またセンサ11から冷却パネル内氷充填率を検知するとともに、戻し管6に設けられたポンプ8、電磁弁14、温度センサ13及びセンサ12から、ブラインの流出流量、流出ブライン温度及び流出氷充填率を検知し、これらの検出値に基づいて、冷却パネルの予冷終了、氷スラリー充填終了の判断と電磁弁9、14の閉操作、および冷却パネルから氷スラリーをあふれさせないための閉操作、流入流量と流出流量のバランス操作を行ない、冷却パネル内氷充填率を設定された氷充填率曲線に従って推移するように制御する。
かかる装置構成によって、供給管5から氷スラリーを充填しながら、戻し管6からブラインを排出しながら、冷却パネル1内に供給する氷スラリーの氷充填率を漸増させながら、冷却パネル1内の氷充填率を目標とする氷充填率にする。
【発明の効果】
【0017】
本発明の方法によれば、氷スラリーを目標とする氷充填率より低い氷充填率で冷却パネルの内部空間にパネル側に設けた供給部より充填しながら、同内部空間に貯留している潜熱蓄熱用ブラインを冷却パネル他側に設けた戻し部から排出しながら、前記冷却パネルの内部空間に供給する氷スラリーの氷充填率を漸増させながら、同冷却パネルの内部空間の氷充填率を目標とする氷充填率にすることにより、氷スラリーをスムーズに冷却パネルの内部空間に隅々まで充填することが可能になる。
【0018】
このように冷却パネルの内部空間に氷スラリーを充填しながら、一方でブラインを排出するため、氷スラリー搬送ポンプ圧が過大とならない。この場合好ましくは、冷却パネルの内部空間を大気と連通させた状態とすることにより、搬送ポンプの氷スラリー供給圧を格段に低減できる。従って冷却パネルの強度を高く維持する必要がなく、かつ搬送ポンプの動力を低減できる利点がある。
また氷スラリーの充填中に、冷却パネル自体と、冷却パネルが取り付けられた保冷庫あるいは荷室の内部を予冷できるので、氷充填率IPFを最大に充填した状態から稼動でき、氷が溶けるまでの時間を長く維持できる。
【0019】
本発明において、好ましくは、氷スラリーの氷充填率を漸増する工程の前に、同氷スラリーのブラインを用いて前記冷却パネルの内部空間を氷スラリー温度近傍まで予冷する工程を含むことにより、冷却パネル内を冷却させる分の氷が融解してしまうことがなく、被冷却物の冷却に氷スラリーの潜熱をすべて使うことができるという利点がある。
また好ましくは、冷却パネルの内部空間を予めブラインで満液とする状態まで予冷を行なった後、前記氷スラリーの氷充填率を漸増させる工程に移行することにより、冷却パネル内で氷スラリーの液深が深くなり、流速が遅くなるため、氷が滞留して冷却パネル外に流出しにくくなるという利点がある。
【0020】
また好ましくは、氷スラリーの氷充填率を漸増させる工程において、冷却パネルへ氷スラリーを供給する流入流速を前記冷却パネルからブラインを排出する流出流速より大としたことにより、冷却パネル内の氷スラリーの流速が遅くなり、上記と同様の効果がある。
また好ましくは、前記冷却パネル側に設けた供給部の内部空間の空隙高さを冷却パネル他側に設けた戻し部の空隙高さより高くして、スラリー流れ方向に沿って空隙高さが変化するようにしたことにより、前記供給部付近で氷粒が滞留して氷スラリーの流入を邪魔するのを防いで、氷スラリーをスムーズに冷却パネルに流入させることができる。
【0021】
また好ましくは、冷却パネル側(中央部も含む)に設けた供給部より前記冷却パネル他側に設けた戻し部の口数を大にして内部空間を流れるスラリー流れ速度を低減させる。冷却パネル内の氷スラリーの流速を遅くするため、氷スラリー供給側の流速を遅くすると、供給側配管で氷スラリーが閉塞しやすくなる。前記構成によって、戻し部を分散させたことによって、供給側流速を大としたまま排出側の流速を低減して、冷却パネル内の氷スラリーの流速を遅くすることができ、これによって供給配管側での閉塞を防止しながら、氷の冷却パネル外の流出を防ぐことができる。
【0022】
また本発明装置によれば、冷却パネルよりブラインを排出する排出部が冷却パネル底壁側に設けられ、前記内部空間を片流れ若しくは両流れ方向にスラリーが流動する冷却パネルと、同内部空間に貯留している潜熱蓄熱用ブラインを前記排出部より排出させながら同内部空間に充填する氷スラリーを目標氷充填率より低い氷充填率から漸増させながら濃縮させて目標氷充填率にする氷スラリーの氷充填率制御装置とを備えたことにより、前記排出部からの氷の流出を押えることができるとともに、氷スラリーの冷却パネル内での閉塞を効果的に抑えながら、目標とする氷充填率にスムーズに到達することができる。
【0023】
また本発明装置において、好ましくは、前記氷充填率制御装置にブラインを排出する排出部よりのブラインの排出を検知して目標氷充填率に到達したことを検知する検知手段を具備することにより、目標氷充填率に到達したことをいち早く探知することができるとともに、冷却パネルが保冷車の天井部の内壁面に配設されていることにより、日射を効果的に遮蔽して保冷車の荷室の保冷効果を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明を図に示した実施例を用いて詳細に説明する。但し、この実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは特に特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
図2から図4は、それぞれ本発明方法の第1実施例、第2実施例及び第3実施例を示す模式図である。
【0025】
保冷庫等に取り付けられる冷却パネルは、取付けスペースの制約の関係から、極力薄くしたほうがよい。即ち冷却パネルの内部空間を狭くする必要がある。しかしそうなると、氷スラリーを高氷充填率で充填できなくなるおそれが出てくる。
本発明の第1実施例を示す図2は、浅底の水平に配置された冷却パネルの内部空間に氷スラリーを充填する場合の実施例である。図2において、21は冷却パネルで、供給口23から氷スラリー25が供給され、排出口24から冷却パネル21の内部に貯留していたブラインが排出される。26は氷スラリー25中に含まれる氷粒である。なお図2中で、氷粒26は実際より大きく図示しているが、これは後述する図3及び図4でも同様である。27は、冷却パネル21を大気開放型とするため、冷却パネルの内部空間21aを大氣と連通させる開放弁である。
【0026】
この第1実施例は、氷充填率漸増工程の前に、氷スラリーのブラインを用いて冷却パネル21の内部空間21aを氷スラリー温度近傍まで予冷し、冷却パネルの内部空間を予めブラインで満液とする状態まで予冷を行なった後、氷スラリーの氷充填率を漸増させる工程に移行することを特徴とする。
本第1実施例において、氷充填率漸増工程では、氷スラリーを目標とする氷充填率より低い氷充填率で冷却パネルの内部空間21aにパネル21側に設けた供給口23より充填しながら、同内部空間に貯留している潜熱蓄熱用ブラインを冷却パネル他側に設けた排出口24から排出しながら、冷却パネル21の内部空間に供給する氷スラリーの氷充填率を漸増させながら、同冷却パネルの内部空間の氷充填率を目標とする氷充填率にする。
【0027】
本第1実施例によれば、氷充填率漸増工程の前に、氷スラリーのブラインを用いて冷却パネル21の内部空間21aを氷スラリー温度近傍まで予冷することにより、冷却パネル内を冷却させる分の氷が融解してしまうことがなく、保冷庫の冷却に氷スラリーの潜熱をすべて使うことができるという利点があるとともに、冷却パネルの内部空間を予めブラインで満液とする状態まで予冷を行なった後、氷スラリーの氷充填率を漸増させる工程に移行することにより、冷却パネル内で氷スラリーの液深が深くなり、流速が遅くなるため、氷が滞留して冷却パネル外に流出しにくくなるという利点がある。
また大気開放弁27を設けて、冷却パネルの内部空間21aを大気に開放しているため、氷スラリーを冷却パネルに充填するためのポンプ圧が過大とならず、このため冷却パネルの強度を過大にする必要がなく、かつポンプ動力も過大とならない。
【0028】
図3は、本発明の第2実施例である。図3において、31は冷却パネルであり、31aは、氷スラリー35が充填される冷却パネルの内部空間である。33は、冷却パネル31の一端に設けられた氷スラリー35の供給口、34は、冷却パネル31の他端に設けられたブライン排出口、36は、氷スラリー35中に混入した氷粒、37は、冷却パネル31を大気開放型とするため、冷却パネルの内部空間31aを大気と連通させる開放弁である。
本実施例では、氷スラリーの氷充填率を漸増させる工程において、供給口33から冷却パネル31へ氷スラリーを供給する流入流速を、排出口34からブラインを排出する流出流速より大とすることを特徴とする。これによって冷却パネル内の氷スラリーの流速が遅くなり、氷が滞留して冷却パネル外に流出しにくくなるという利点がある。なお大気開放弁37による効果は前記第1実施例と同様である。
【0029】
図4は、本発明の第3実施例である。冷却パネル内流速を遅くするために、氷スラリー供給側の流入流速を遅くすると、氷スラリー供給側配管で氷スラリーが閉塞しやすくなるので、第3実施例は、ブラインの流出流速が流入流速の半分になるように、かつ冷却パネル内流速が遅くなるように工夫した例である。即ち図4において、41は、冷却パネルであり、41aは、氷スラリー45が充填される冷却パネルの内部空間である。冷却パネル41の中央に氷スラリー45の供給口43を設け、冷却パネル41の両端にブライン排出口44a及び44bを設けている。なお46は氷スラリー45に混入した氷粒、47は、冷却パネル41を大気開放型とするため、冷却パネルの内部空間41aを大気と連通させる開放弁である。
【0030】
本第3実施例によれば、供給口43付近の冷却パネル41の天井部分が排出口44a及び44b付近より高くなっており、スラリー流れ方向に沿って空隙高さが変化するようにしたことにより、供給口43付近で氷粒が滞留するのを防いで、氷スラリーをスムーズに冷却パネルに流入させることができるとともに、供給口43より冷却パネルの両側に設けた排出口数を大にして内部空間を流れるスラリー流れを分散させることにより、氷スラリー流れ速度を低減させている。冷却パネル内の氷スラリーの流速を遅くするため、氷スラリー供給側の流速を遅くすると、供給側配管で氷スラリーが閉塞しやすくなる。本実施例では、前記構成によって、供給側流速を大としたまま、個々の排出口付近の流速を低減することにより、冷却パネル内の氷スラリーの流速を遅くすることができるので、供給配管側での閉塞を防止しながら、氷の冷却パネル外の流出を防ぐことができる。
【0031】
図5は、複数の保冷車に対し複数の供給部から氷スラリーを供給可能な氷スラリー供給システムに係る本発明の第4実施例を示す系統図である。
図5において、51は、氷点下の冷媒をつくる陸上に設置された冷凍機ユニットで、同冷媒を製氷機52に送り、製氷機52で同冷媒の冷熱により潜熱蓄熱用ブラインを製氷させて氷スラリーを生成する。53は、製氷機52で製造した氷スラリーを貯留する貯氷タンク、54は、貯氷タンク53に貯留されている潜熱蓄熱用ブラインを製氷するため製氷機52に循環させる循環ポンプである。55は、供給ポンプ56及び回収ポンプ57により貯氷タンク53内の氷スラリーを常時循環させておく循環管である。58は、循環管55が貯氷タンク53に接続する取氷口55a及び55bの接続部位によって含氷率が異なることを利用して、取氷口55a及び55bの流入量を変えることにより、循環管55を循環する氷スラリーの氷充填率を制御する三方弁、59は、矢印方向のみの流れを許容する逆止弁である。
【0032】
60は保冷車であり、荷室61の内壁面の天井部分に冷却パネル62を配設している。冷却パネル62は氷スラリーを充填する内部空間を有し、同内部空間に充填された氷スラリーの冷熱で荷室61に積み込まれた被冷却物を保冷している。63は、冷却パネル62の内部空間を大気と連通させるための大気開放弁である。
71は、氷スラリーを循環管55から冷却パネル62の内部空間に供給する配管、72は、冷却パネル内部の氷が融解した後のブラインを冷却パネル62から循環管55に回収する回収管である。なお回収管72の接続部は、ブラインのみを取り出すのに好都合な、冷却パネル62の傾斜した下方底壁側に設けられている。73は、供給管71又は回収管72を冷却パネル側と循環管55側と切り離し可能とするカプラ、74は、カプラ73の接続時に内部弁が開き、切り離し時に内部弁が閉まる構造の自動開閉弁である。
【0033】
75及び76は、供給管71に設けられた氷充填率センサ及び流量計であり、77、78及び79は、回収管72に設けられた温度センサ、氷充填率センサ及び流量計である。また64は、冷却パネル62の内部空間の氷充填率を計測するセンサである。また65は、回収管72で回収されたブラインを一時貯留する地下ピットである。83は、供給管71に設けられた電磁弁、84は回収管72に設けられた電磁弁である。これらの機器類は供給管71及び回収管72の先端に取り付けた供給ユニット82内にまとめられ、保冷車60に対してカプラ73で着脱可能となる。
図6において、80は、前記各センサの検知信号を入力して、冷却パネル62の氷充填率を以下の通り計測カウントし、最終的に冷却パネル62内の氷充填率を所望の値に制御する制御装置である。各々の冷却パネル62にて各々の氷充填率制御装置80によって以下の計測カウントが行なわれる。
・冷却パネル流出ブライン温度<ブラインの凍結温度=予冷終了
・冷却パネル内氷充填率IPF[%]=(積算流入熱量−積算流出熱量)/(充填重量の変化)/79.7[kcal/kg]×100
・積算流入熱量[kcal]=79.7×冷却パネル流入IPF[%]/100×冷却パネル流入流量[kg/min]×時間間隔+流入熱量
・積算流出熱量[kcal]=79.7×冷却パネル流出IPF[%]/100×冷却パネル流出流量[kg/min]×時間間隔+流出熱量
・充填重量の変化[kg]=冷却パネル基準内容量+冷却パネル流入流量−冷却パネル流出流量)×時間間隔
・冷却パネル内氷充填率IPF[%]≧所望の氷充填率=充填終了
(又は、冷却パネルへ設置した氷充填率センサ64での計測にて充填終了とする。)
【0034】
かかる実施例の氷スラリー供給システムにおいて、まず貯氷タンク53に貯められた氷スラリーを循環管55内を循環させておく。その際保冷車60に供給する氷スラリーの目標とする氷充填率より低い氷充填率となるように、循環管55に介装された氷充填率センサ81の検出値に基づいて三方弁58の取氷口55a及び55bの各流入量を制御する。
循環管55から複数の氷スラリー供給管71により多数の冷却パネル62へ充填する場合は、循環管55の氷充填率を15%〜20%で一定になるように循環管の氷充填率センサ81と三方弁58で制御する。
その際、複数の氷スラリー供給管71へ分岐する際に、配管内の氷充填率が等分配される条件、すなわち循環管55の管内流速を1m/s以上とすると良い。
これにより、複数の冷却パネル62において、氷スラリーを充填する作業を同時に行うことができる。
次に氷スラリーを供給する保冷車60の冷却パネル62の内部空間と循環管55とを供給管71及び回収管72のカプラ73で接続する。その後氷スラリーを目標とする氷充填率より低い氷充填率で冷却パネル62の内部空間にパネル62側に接続した供給管71より充填しながら、内部空間に貯留しているブラインを冷却パネル他側に接続した回収管72に回収する。
【0035】
その際図6に示すように、制御装置80によって、各センサから送られる冷却パネルへの流入氷充填率、同流出氷充填率、冷却パネル内氷充填率、冷却パネル流出ブライン温度、冷却パネルへの流入流量、及び同流出流量の各検出値に基づいて、前述の計測カウントを行い、冷却パネルの予冷終了、氷スラリー充填終了の判断と電磁弁83,84の閉操作、および冷却パネルから氷スラリーをあふれさせないための閉操作、また供給ポンプ56及び回収ポンプ57を操作して流入流量と流出流量のバランス操作をする。即ち冷却パネル62の内部空間に供給する氷スラリーの氷充填率を漸増させながら、冷却パネルの内部空間の氷充填率を目標とする氷充填率にする。
なお回収管72から回収されたブラインは一旦地下ピッド65に排出するか、あるいは氷スラリーの供給と同時に、回収ポンプ57で吸引して、貯氷タンク53に回収する。
本実施例で保冷車60に氷スラリーを充填するに当たっては、前記第1実施例で実施した予冷工程等を実施する。
【0036】
本発明装置によれば、回収管72が冷却パネル62の傾斜下端の低壁面に接続したことにより、氷の回収管72への流出を効果的に押えることができるとともに、氷充填率制御装置80により、冷却パネル62に充填する氷スラリーを目標氷充填率より低い氷充填率から漸増させながら濃縮させて目標氷充填率にする工程を実施することにより、氷スラリーの冷却パネル内での閉塞を効果的に抑えながら、目標とする氷充填率にスムーズに到達することができる。
【0037】
また氷充填率制御装置80にブラインを排出する排出部よりのブラインの排出を検知して目標氷充填率に到達したことを計測あるいは検知する手段(氷充填率センサ64)を具備することにより、目標氷充填率に到達したことをいち早く探知することができて、保冷車60の切り離しを迅速に行なうことができるとともに、冷却パネル62が保冷車の天井部の内壁面に配設されていることにより、日射を効果的に遮蔽して保冷車の荷室の保冷効果を高めることができる。
【0038】
図7は、本実施例を実施した場合の、前記各サンサの測定値の経時変化を示すグラフである。なおこの場合、氷スラリーの充填前に冷却パネル内でブラインのみを循環させる予冷工程を行なっており、冷却パネル自体は冷えた状態にして実測した。
図7からわかるように、冷却パネル内に流入する氷スラリーの氷充填率IPFは、ゼロから徐々に濃縮され、それに伴って冷却パネル内氷スラリーの氷充填率も徐々に濃縮され、最終的に35w%以上の高氷充填率に達している。
【0039】
図8は、同じ冷熱量の氷スラリーを一定時間内に冷却パネルに充填した場合に、供給する氷スラリーの氷充填率(搬送IPF)を変更した場合のポンプ動力の実測結果を示すグラフである。
図8において、合計ポンプ動力は、搬送側氷スラリーポンプ動力とドレン側ブラインポンプ動力を合わせた動力、搬送側氷スラリーポンプ動力は、氷スラリーを供給するためのポンプ動力、ドレン側ブラインポンプ動力は、氷スラリーが溶解して液体になったブラインを回収するためのポンプ動力を示す。
【0040】
図8から、供給する搬送IPFを小さくすると、必要冷熱量に対して多量の蓄冷剤を流入させ、多量のブラインを回収するので、ドレン側ブラインポンプ動力が大きくなることがわかる。また供給する搬送IPFを大きくすると、必要冷熱量に対して少量の蓄冷剤で済み、回収するブラインも少なくて済むが、氷スラリーの粘性が高くなるので、搬送側氷スラリーポンプ動力が増大することがわかる。
従って高い氷充填率の氷スラリーを最初から充填するよりも、ブラインを冷却パネルから排出しながら、冷却パネルの内部空間の氷充填率を増大させていく本発明方法は、合計ポンプ動力の低減にも効果があることがわかる。なお図8から、適正な搬送IPFは15〜20重量%であることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明によれば、簡素かつ安価な装置構造で、冷蔵庫や保冷庫等、さらには複数の保冷車の荷室に設けられた薄板状の蓄熱式冷却パネルに氷スラリーを効率良くかつ高密度に充填することが可能な氷スラリーの充填方法及び装置を実現することができて有益である。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の基本構成を示す説明図である。
【図2】本発明の第1実施例を示す模式図である。
【図3】本発明の第2実施例を示す模式図である。
【図4】本発明の第3実施例を示す模式図である。
【図5】複数の保冷車に対し複数の供給部から氷スラリーを供給可能な氷スラリー供給システムに係る本発明の第4実施例を示す系統図である。
【図6】前記第4実施例の制御系を示すブロック図である。
【図7】前記第4実施例を実施した場合の、前記各サンサの測定値の経時変化を示すグラフである。
【図8】冷却パネルに供給する氷スラリーの氷充填率(搬送IPF)を変更した場合のポンプ動力の実測結果を示すグラフである。
【符号の説明】
【0043】
21、31、41、62 冷却パネル
2、51 冷凍機ユニット
3、52 製氷器
4、53 貯氷タンク
5 氷スラリー供給管
6 ブライン回収管
7、56 供給ポンプ
8、57 回収ポンプ
9、14 電磁弁
10、11、12、64、75、78 氷充填率センサ
13、77 温度センサ
15、16 接続部
17、80 氷充填率制御装置
21a、31a、41a 内部空間
23、33、43 供給口
24、34、44a、44b 排出口
25、35、45 氷スラリー
26、36、46 氷粒
27、37、47、63 大気圧開放弁
54 循環ポンプ
55 循環管
58 三方弁
59 逆止弁
60 保冷車
61 荷室
65 地下ピット
71 氷スラリー供給管
72 ブライン回収管
73 カプラ
74 自動開閉弁
76、79 流量計
80 氷充填率制御装置
81 氷充填率センサ
82 供給ユニット
83,84 電磁弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
潜熱蓄熱用ブラインを製氷させて生成した氷スラリーを充填する内部空間を有する冷却パネルに目標氷充填率まで氷スラリーを充填する方法において、
前記氷スラリーを目標とする氷充填率より低い氷充填率で前記冷却パネルの内部空間にパネル側に設けた供給部より充填しながら、同内部空間に貯留している潜熱蓄熱用ブラインを冷却パネル他側に設けた戻し部から排出しながら、前記冷却パネルの内部空間に供給する氷スラリーの氷充填率を漸増させながら、同冷却パネルの内部空間の氷充填率を目標とする氷充填率にすることを特徴とする冷却パネルへの氷スラリー充填方法。
【請求項2】
請求項1記載の氷スラリーの氷充填率を漸増する工程の前に、同氷スラリーのブラインを用いて前記冷却パネルの内部空間を氷スラリー温度近傍まで予冷する工程を含むことを特徴とする請求項1記載の冷却パネルへの氷スラリー充填方法。
【請求項3】
前記冷却パネルの内部空間を予めブラインで満液とする状態まで予冷を行なった後、前記氷スラリーの氷充填率を漸増させる工程に移行することを特徴とする請求項1記載の冷却パネルへの氷スラリー充填方法。
【請求項4】
前記氷スラリーの氷充填率を漸増させる工程において、前記冷却パネルへ氷スラリーを供給する流入流速を前記冷却パネルからブラインを排出する流出流速より大としたことを特徴とする請求項1記載の冷却パネルへの氷スラリー充填方法。
【請求項5】
前記冷却パネル側に設けた供給部の内部空間の空隙高さを冷却パネル他側に設けた戻し部の空隙高さより高くして、スラリー流れ方向に沿って空隙高さが変化するようにしたことを特徴とする請求項1記載の冷却パネルへの氷スラリー充填方法。
【請求項6】
前記冷却パネル側(中央部も含む)に設けた供給部より前記冷却パネル他側に設けた戻し部の口数を大にして内部空間を流れるスラリー流れ速度を低減させたことを特徴とする請求項1記載の冷却パネルへの氷スラリー充填方法。
【請求項7】
潜熱蓄熱用ブラインを製氷させて生成した氷スラリーを充填する内部空間を有する冷却パネルに目標氷充填率まで氷スラリーを充填する装置において、
前記冷却パネルよりブラインを排出する排出部が冷却パネル底壁側に設けられ、前記内部空間を片流れ若しくは両流れ方向にスラリーが流動する冷却パネルと、同内部空間に貯留している潜熱蓄熱用ブラインを前記排出部より排出させながら同内部空間に充填する氷スラリーを目標氷充填率より低い氷充填率から漸増させながら濃縮させて目標氷充填率にする氷スラリーの氷充填率制御装置とを備えたことを特徴とする冷却パネルへの氷スラリー充填装置。
【請求項8】
前記氷充填率制御装置にブラインを排出する排出部よりのブラインの排出を検知して目標氷充填率に到達したことを検知する検知手段を具備していることを特徴とする請求項1記載の冷却パネルへの氷スラリー充填装置。
【請求項9】
前記冷却パネルが保冷車の天井部の内壁面に配設されていることを特徴とする請求項7記載の冷却パネルへの氷スラリー充填装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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