説明

冷却媒体管ユニットおよび回転電機

【課題】被冷却部材の所望の位置に冷却媒体を供給することが可能な、冷却媒体管ユニットおよび回転電機を提供するを提供する。
【解決手段】ブラケット40は、冷却媒体管20を保持する保持部40Aおよび保持部40Aから延びる平板部40Bを含み、冷却媒体管20は、その管壁面に第1孔50aを有し、平板部40Bは、第2孔50bを有し、第2孔20bの開口領域と第1孔50aの開口領域とが少なくとも一部において重なるように、ブラケット40により冷却媒体管20が保持されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却媒体管ユニットおよびその冷却媒体管ユニットを備える回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、ロータとステータと備える回転電機において、ステータのコイルエンドを冷却するために、ステータのコイルエンドに向けて冷却媒体を供給する機構を備える回転電機が、下記特許文献1および特許文献2に開示されている。また、表面が円筒形状の管の表面に孔加工を施す技術が、下記特許文献3に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−253263号公報
【特許文献2】特開2004−180376号公報
【特許文献3】特開昭54−51945号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の特許文献1および特許文献2に開示される機構においては、表面が円筒形状の管の表面に冷媒吐出孔を設け、この冷媒吐出孔から冷却媒体をステータのコイルエンドに供給している。しかしながら、曲面である管の表面に位置精度および寸法精度良く冷媒吐出孔を設けるには、特許文献3に開示されるように、平板の表面に孔を設ける場合に比べて高度な技術が必要になる。
【0005】
また、孔の寸法精度および位置精度が低いと、コイルエンドの所望の位置に冷却媒体を供給させることができず、コイルエンドの冷却効率を低下させるおそれもある。
【0006】
回転電機に限らず、冷却媒体管の表面に冷媒吐出孔を設け、この冷媒吐出孔から冷却媒体管の内部を流通する冷媒を噴出させて、被冷却部材を冷却する構成を採用した場合には、上述と同様の課題に直面する。
【0007】
したがって、この発明は上記課題に鑑みてなされたもので、この発明の目的は、被冷却部材の所望の位置に冷却媒体を供給することが可能な、冷却媒体管ユニットおよび回転電機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に基づいた冷却媒体管ユニットにおいては、冷却媒体を通過させる冷却媒体管、および上記冷却媒体管を保持するブラケットを備える冷却媒体管ユニットであって、上記ブラケットは、上記冷却媒体管を保持する保持部および上記保持部から延びる平板部を含み、上記冷却媒体管は、その管壁面に第1孔を有し、上記平板部は、第2孔を有し、上記第2孔の開口領域と上記第1孔の開口領域とが少なくとも一部において重なるように、上記ブラケットにより上記冷却媒体管が保持されている。
【0009】
他の形態において、上記第1孔の開口領域は、上記第2孔の開口領域のすべてを含む大きさである。
【0010】
他の形態において、上記第1孔は、上記冷却媒体管の軸方向に沿って延びる長孔であり、上記第2孔は、丸孔である。
【0011】
この発明に基づいた回転電機においては、回転軸を有するロータと、上記ロータを内部に配置し、環状のコイルエンドを有するステータと、上記ロータおよび上記ステータを収容するケースと、上記回転軸が延びる方向において、上記コイルエンドが対向する上記ケースの対向側壁の内部に設けられ、上記ケースの外部に向けて開口する外部開口領域、および、上記対向側壁の上記コイルエンドが対向する対向内壁面に向けて開口する内部開口領域を有する冷却媒体通路と、上記ケースの外側において、上記外部開口領域に連結され、上記冷却媒体通路内に冷却媒体を導入する外部冷却媒体管と、上記ケースの内側において、上記内部開口領域に連結され、上記冷却媒体通路内に導入された上記冷却媒体を、上記回転軸を挟んで上記内部開口領域とは略反対側に位置する領域の上記コイルエンドに向けて案内する内部冷却媒体管、および上記内部冷却媒体管を上記対向内壁面に固定するブラケットを含む冷却媒体管ユニットを備え、上記ブラケットは、上記内部冷却媒体管を保持する保持部および上記保持部から延びる平板部を含み、上記冷却媒体管は、その管壁面に第1孔を有し、上記平板部は、第2孔を有し、上記第2孔の開口領域と上記第1孔の開口領域とが少なくとも一部において重なるように、上記ブラケットにより上記冷却媒体管が保持されている。
【0012】
他の形態において、上記第1孔の開口領域は、上記第2孔の開口領域のすべてを含む大きさである。
【0013】
他の形態において、上記第1孔は、上記冷却媒体管の軸方向に沿って延びる長孔であり、上記第2孔は、丸孔である。
【発明の効果】
【0014】
この発明に基づいた冷却媒体管ユニットおよび回転電機によれば、被冷却部材の所望の位置に冷却媒体を供給することが可能な、冷却媒体管ユニットおよび回転電機を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施の形態における回転電機の内部構造を示す部分拡大断面図である。
【図2】実施の形態における回転電機に用いられる冷却媒体管ユニットの構造を示す図である。
【図3】実施の形態における回転電機に用いられる冷却媒体管ユニットの内部冷却媒体管の構造を示す部分拡大斜視図である。
【図4】実施の形態における回転電機に用いられる冷却媒体管ユニットのブラケットを示す平面図である。
【図5】図2中のV線矢視断面図である。
【図6】実施の形態における内部冷却媒体管に設けられる第1孔とブラケットの平板部に設けられる第2孔との重なり状態を示す模式図である。
【図7】他の実施の形態における内部冷却媒体管に設けられる第1孔とブラケットの平板部に設けられる第2孔との重なり状態を示す模式図である。
【図8】他の実施の形態における内部冷却媒体管に設けられる第1孔とブラケットの平板部に設けられる第2孔との重なり状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に基づいた実施の形態における冷却媒体管ユニットおよび回転電機について、以下、図を参照しながら説明する。なお、以下に説明する実施の形態において、個数、量などに言及する場合、特に記載がある場合を除き、本発明の範囲は必ずしもその個数、量などに限定されない。また、同一の部品、相当部品に対しては、同一の参照番号を付し、重複する説明は繰り返さない場合がある。また、各実施の形態における構成を適宜組み合わせて用いることは当初から予定されていることである。
【0017】
以下の説明では、冷却媒体管ユニットを採用する一例として回転電機に本発明を適用した場合を示しているが、回転電機に限定されるものではない。たとえば、内燃機関、駆動装置等に採用される冷却機構に対して、本発明の冷却媒体管ユニットを採用することが可能である。
【0018】
図1を参照して、回転電機の内部構造の概略について説明する。図1は、回転電機の内部構造を示す部分拡大断面図である。この回転電機1は、ガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の内燃機関と、充放電可能な二次電池(バッテリ)から電力供給されるモータとを動力源とするハイブリッド自動車に搭載されたモータである。回転電機とは、電力が供給されてモータとしての機能と、発電機(ジェネレータ)としての機能との少なくとも一方の機能を有するモータジェネレータを意味する。
【0019】
図1を参照して、回転電機1は、ロータ13と、ロータ13の外周上に配置され、環状のコイルエンド14eを有するステータ14とを備える。ロータ13は、回転の中心線に沿って延びる回転軸12に設けられている。回転軸12は、ロータ13と共に中心線を中心に回転する。ロータ13およびステータ14は、ケース11に収容されている。
【0020】
回転軸12が延びる方向において、コイルエンド14eが対向するケース11の対向側壁11aの内部には、冷却媒体通路11hが設けられている。冷却媒体通路11hは、ケース11の外部に向けて開口する外部開口領域11b、および、対向側壁11aのコイルエンド14eが対向する対向内壁面11dに向けて開口する内部開口領域11cを有する。
【0021】
ケース11の外側においては、冷却媒体通路11hの外部開口領域11bに、冷却媒体通路11h内に冷却媒体F1を導入する外部冷却媒体管21が連結されている。外部冷却媒体管21には、冷却媒体F1を外部冷却媒体管21に送り込むためのポンプPが連結されている。
【0022】
本実施の形態においては、冷却媒体F1としては、機械油等のオイルが用いられるが、絶縁性を有するものであれば、オイルに限定されない。また、ポンプPとしては、ロータ13の回転にともなって作動するギアポンプが用いられているが、特に限定されるものではない。たとえば、電動ポンプを用いてもかまわない。
【0023】
ケース11の内側においては、内部開口領域11cに連結され、冷却媒体F1をコイルエンド14eに向けて案内するための冷却媒体管ユニット100が配置されている。
【0024】
(冷却媒体管ユニット100)
図2を参照して、冷却媒体管ユニット100の具体的な構成を説明する。図2は、冷却媒体管ユニット100の構造を示す図である。この冷却媒体管ユニット100は、内部開口領域11cに連結され、冷却媒体通路11h内に導入された冷却媒体F1を、回転軸12を挟んで内部開口領域11cとは略反対側に位置する領域のコイルエンド14eに向けて案内する内部冷却媒体管20、および内部冷却媒体管20を対向内壁面11dに固定するブラケット40を含む。
【0025】
内部冷却媒体管20の内部開口領域11cに連結される領域には、固定プレート30が取り付けられている。固定プレート30には、ボルト孔30hが設けられており、ボルトBを用いて、固定プレート30が対向内壁面11dに固定される(図1参照)。
【0026】
冷却媒体管ユニット100において、ブラケット40の内部冷却媒体管20を保持する領域には、内部冷却媒体管20の内部を流通する冷媒を噴出させて、被冷却部材であるコイルエンド14eの対向内壁面11dに対向する面に冷媒を噴出させる噴出孔50が設けられている。また、ブラケット40には、ボルト孔40hが設けられており、ボルトBを用いて、ブラケット40が対向内壁面11dに固定される(図1参照)。
【0027】
また、内部冷却媒体管20の一端側(図の上部側)は、図2中の紙面に対して垂直方向の手前側に折り曲げられ、図1に示すように、コイルエンド14eの上側に延在する領域を有する。このコイルエンド14eの上側に延在する領域には、コイルエンド14eの上側に冷却媒体F1を供給するための貫通孔h1が、下方に向け角度をずらして2箇所設けられている。
【0028】
(噴出孔50)
図3から図6を参照して、噴出孔50の構成について説明する。なお、図3は、冷却媒体管ユニット100の内部冷却媒体管20の構造を示す部分拡大斜視図、図4は、冷却媒体管ユニット100のブラケット40を示す平面図、図5は、図2中V線矢視断面図、図6は、内部冷却媒体管20に設けられる第1孔50aと、ブラケット40の平板部40Bに設けられる第2孔50bとの重なり状態を示す模式図である。
【0029】
図3を参照して、内部冷却媒体管20の管壁面には、内部冷却媒体管20の軸方向に沿って延びる第1孔としての長孔50aが設けられている。
【0030】
図4を参照して、ブラケット40は、内部冷却媒体管20を保持する保持部としての湾曲部40Aおよびこの湾曲部40Aから延びる平板部40Bを含み、この平板部40Bの湾曲部40Aに近傍する領域に、第2孔としての丸孔50bが設けられている。また、平板部40Bの湾曲部40Aとは反対側の端部領域には、ボルト孔40hが設けられている。なお、湾曲部40Aは、湾曲形状に限定されず、内部冷却媒体管20を保持することが可能な形状であれば、どのような形状であっても良い。また、溶接と組み合わせて保持できる構造であれば良い。
【0031】
図5および図6に示すように、本実施の形態では、丸孔50bと長孔50aとの重なり具合が、丸孔50bの開口領域のすべてが長孔50aの開口領域に含まれるように、ブラケット40の湾曲部40Aが内部冷却媒体管20を保持している。図中斜線部分は、丸孔50bの開口領域と長孔50aの開口領域との重なり領域を示している。なお、ブラケット40は内部冷却媒体管20に対して、溶接等を用いて位置精度良く固定されている。
【0032】
本実施の形態では、丸孔50bは、機械加工により平板部40Bの正確な位置に開口されており、直径はd1である。また、長孔50aは、内部冷却媒体管20の軸方向長さが、直径はd1よりも長い寸法L1に設定され、また、円周方向の幅が、直径d1よりも長いW1に設定されている。
【0033】
ここで、仮に、内部冷却媒体管20に設けられた長孔50aの位置精度に誤差が生じている場合であっても、ブラケット40に設けられる丸孔50bの寸法および位置は正確である。また、ブラケット40も内部冷却媒体管20に対して、溶接等を用いて位置精度良く固定されている。その結果、長孔50aと丸孔50bとにより規定される噴出孔50の位置精度は、丸孔50bの位置により決定され、噴出孔50の位置精度は良好となる。
【0034】
これにより、図5に示すように、内部冷却媒体管20の内部を流通する冷却媒体F1を噴出孔50から位置精度良く噴出させて、被冷却部材であるコイルエンド14eの対向内壁面11dに対向する面の所定位置を効率良く冷却させることが可能となる。その結果、回転電機1の性能の安定化を図ることも可能となる。
【0035】
ここで、図7および図8を参照して、噴出孔50の他の形態について説明する。図7は、内部冷却媒体管20に設けられる長孔50aと、ブラケット40の平板部40Bに設けられる2つの丸孔50bとの重なり状態を示す模式図、図8は、内部冷却媒体管20に設けられる長孔50aと、ブラケット40の平板部40Bに設けられる丸孔50bとが一部において重なっている状態を示す模式図である。
【0036】
図7および図8に示す重なり状態での噴出孔50であっても、噴出孔50の位置精度は、丸孔50bの位置により決定されることから、噴出孔50の位置精度は良好となり、被冷却部材であるコイルエンド14eの対向内壁面11dに対向する面の所定位置を効率良く冷却させることが可能となる。その結果、回転電機1の性能の安定化を図ることも可能となる。
【0037】
なお、被冷却部材であるコイルエンド14eの対向内壁面11dに対向する面の所定位置に対して、冷却媒体F1を噴出させる場合について説明したが、コイルエンド14eの内側(ロータ13に対向する側)に向けて冷却媒体F1を噴出させることも可能である。
【0038】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0039】
1 回転電機、11 ケース、11a 対向側壁、11b 外部開口領域、11c 内部開口領域、11d 対向内壁面、11h 冷却媒体通路、12 回転軸、13 ロータ、14 ステータ、14e コイルエンド、20 内部冷却媒体管、21 外部冷却媒体管、30 固定プレート、30h,40h ボルト孔、40 ブラケット、40A 湾曲部、40B 平板部、50 噴出孔、50a 第1孔(長孔)、50b 第2孔(丸孔)、100 冷却媒体管ユニット。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却媒体を通過させる冷却媒体管、および前記冷却媒体管を保持するブラケットと、を備える冷却媒体管ユニットであって、
前記ブラケットは、前記冷却媒体管を保持する保持部および前記保持部から延びる平板部を含み、
前記冷却媒体管は、その管壁面に第1孔を有し、
前記平板部は、第2孔を有し、
前記第2孔の開口領域と前記第1孔の開口領域とが少なくとも一部において重なるように、前記ブラケットにより前記冷却媒体管が保持されている、冷却媒体管ユニット。
【請求項2】
前記第1孔の開口領域は、前記第2孔の開口領域のすべてを含む大きさである、請求項1に記載の冷却媒体管ユニット。
【請求項3】
前記第1孔は、前記冷却媒体管の軸方向に沿って延びる長孔であり、
前記第2孔は、丸孔である、請求項1または2に記載の冷却媒体管ユニット。
【請求項4】
回転軸を有するロータと、
前記ロータを内部に配置し、環状のコイルエンドを有するステータと、
前記ロータおよび前記ステータを収容するケースと、
前記回転軸が延びる方向において、前記コイルエンドが対向する前記ケースの対向側壁の内部に設けられ、前記ケースの外部に向けて開口する外部開口領域、および、前記対向側壁の前記コイルエンドが対向する対向内壁面に向けて開口する内部開口領域を有する冷却媒体通路と、
前記ケースの外側において、前記外部開口領域に連結され、前記冷却媒体通路内に冷却媒体を導入する外部冷却媒体管と、
前記ケースの内側において、前記内部開口領域に連結され、前記冷却媒体通路内に導入された前記冷却媒体を、前記回転軸を挟んで前記内部開口領域とは略反対側に位置する領域の前記コイルエンドに向けて案内する内部冷却媒体管、および前記内部冷却媒体管を前記対向内壁面に固定するブラケットを含む冷却媒体管ユニットを備え、
前記ブラケットは、前記内部冷却媒体管を保持する保持部および前記保持部から延びる平板部を含み、
前記冷却媒体管は、その管壁面に第1孔を有し、
前記平板部は、第2孔を有し、
前記第2孔の開口領域と前記第1孔の開口領域とが少なくとも一部において重なるように、前記ブラケットにより前記冷却媒体管が保持されている、回転電機。
【請求項5】
前記第1孔の開口領域は、前記第2孔の開口領域のすべてを含む大きさである、請求項4に記載の回転電機。
【請求項6】
前記第1孔は、前記冷却媒体管の軸方向に沿って延びる長孔であり、
前記第2孔は、丸孔である、請求項4または5に記載の回転電機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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