説明

冷却液組成物

【課題】金属性配管に対する腐食を抑制するとともに環境への負荷を低減させることができる冷却液組成物を提供する。
【解決手段】冷却液組成物において、凝固点降下成分として炭酸カリウム及び炭酸水素カリウムから選ばれる少なくとも一種を主成分として含有するとともに、配管に対する防食性を向上させるために好ましくはさらに腐食防止剤を配合する水溶液からなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば蓄冷媒体等の熱交換媒体(ブライン)として使用される冷却液組成物に係り、詳しくは防食性に優れるとともに環境への負荷を低減させた冷却液組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、余剰電力の利用を目的とした蓄冷媒体、暖房用不凍液、冷凍機や製氷機等の保冷用機器、ロードヒーティングシステム、融雪システム、ソーラーシステム、自動車エンジン等の冷却系統に用いられる冷却液組成物が知られている。その冷却液組成物は、金属製の配管内を加熱又は冷却装置から熱交換装置へ、及びその熱交換装置から加熱又は冷却装置へ循環して、熱交換装置で温熱又は冷熱を取り出すための熱交換媒体として使用される。冷却液組成物は、融解潜熱を高め蓄熱量を増加させるため、及び金属製配管の凍結による損傷を防止するために凝固点を降下させる必要がある。また、金属製の配管の腐食を防止するために防食性もさらに必要とされる。
【0003】
従来より、特許文献1,2に開示される冷却液組成物が知られている。特許文献1の冷却液組成物は、不凍性成分としてエチレングリコール等の有機成分を配合する水溶液から構成される。特許文献2に開示される冷却液組成物は、蓄冷熱用材料として無機成分である塩化カルシウムを主成分として配合する水溶液から構成される。
【特許文献1】特開2000−104048号公報
【特許文献2】特開平9−241624号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、特許文献1に開示される冷却液組成物は、不凍性成分として配合されるエチレングリコールが、環境に対する負荷が大きく、容易に廃棄処分することができないという問題があった。また、特許文献2に開示される冷却液組成物は、無機成分として配合される塩化カルシウムが金属製の配管を腐食させやすいという問題があった。また、従来より知られているリン酸系化合物やトリアゾール系化合物等の腐食防止剤を併用したとしても金属製配管の腐食を防止するには不十分であった。
【0005】
そこで、本発明は、本発明者らの鋭意研究の結果、冷却液組成物において所定の成分を凝固点降下剤として使用することにより、金属性配管に対する防食性を向上させるとともに環境への負荷を低減させることができることを見出したことによりなされたものである。本発明の目的とするところは、金属性配管に対する腐食を抑制するとともに環境への負荷を低減させることができる冷却液組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、請求項1記載の冷却液組成物は、凝固点降下成分として炭酸カリウム及び炭酸水素カリウムから選ばれる少なくとも一種を主成分として含有する水溶液からなることを特徴とする。
【0007】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の冷却液組成物において、前記凝固点降下成分は、0.1〜15重量%配合されることを特徴とする。
請求項3記載の発明は、請求項1又は請求項2記載の冷却液組成物において、さらに腐食防止剤が配合されることを特徴とする。
【0008】
請求項4記載の発明は、請求項3記載の冷却液組成物において、前記腐食防止剤は、リン酸系化合物及びトリアゾール系化合物から選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする。
【0009】
請求項5記載の発明は、請求項1〜請求項4のいずれか一項記載の冷却液組成物において、氷蓄熱用の熱交換媒体として使用されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、冷却液組成物において金属性配管に対する腐食を抑制するとともに環境への負荷を低減させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の冷却液組成物を具体化した一実施形態を説明する。
本実施形態の冷却液組成物は、凝固点降下成分として炭酸カリウム及び炭酸水素カリウムから選ばれる少なくとも一種を主成分として含有する水溶液からなる。より好ましくは、金属製の配管の腐食を防止するためにさらに腐食防止剤が配合される。
【0012】
凝固点降下成分は、水溶液に溶解させることにより冷却液組成物の凝固点を降下させるために配合される。それにより、冷却液組成物の凍結による金属製配管の損傷を防止することができる。また、冷却液組成物を氷蓄熱用の熱交換媒体として使用する場合には、融解潜熱を高めて蓄熱量を増加させることができる。炭酸カリウム及び炭酸水素カリウムは、それぞれ単独で使用してもよく、二種類を併用してもよい。冷却液組成物中の凝固点降下成分の配合量は冷却液組成物の用途、所望の凝固点等により適宜調整される。水溶液の凝固点を−10〜−1℃の温度範囲に降下させて使用される冷却液組成物の場合は、好ましくは0.1〜15重量%、より好ましくは2〜10重量%、さらに好ましくは4〜6重量%配合される。0.1重量%未満であると凝固点降下作用が低下する。一方、15重量%を超えて配合すると冷却液組成物中において凝固点降下成分に由来する結晶が析出するおそれがあるとともに一定温度になっても相転移(水→氷)しない過冷却を起こすおそれがある。尚、凝固点降下成分を4〜6重量%配合する場合、−4〜−2℃に相転移(凝固点)を有する水溶液として使用することができる。

本実施形態において、凝固点降下成分として炭酸カリウム及び炭酸水素カリウムから選ばれる少なくとも一種を「主成分」として含有するとは、凝固点降下成分中において好ましくは50重量%以上炭酸カリウム及び炭酸水素カリウムから選ばれる少なくとも一種を含有することをいう。より好ましくは、80重量%以上含有し、さらに好ましくは90%以上含有し、最も好ましくは凝固点降下成分は炭酸カリウム及び炭酸水素カリウムから選ばれる少なくとも一種のみから構成される。
【0013】
腐食防止剤は、冷却液組成物の金属材料に対する腐食防止効果を向上させることにより、冷却系統を構成する金属製の循環配管等が冷却液組成物によって腐食されることを防止する。配管に用いられる金属材料としては、主として銅、黄銅、鋼鉄、鋳鉄、アルミニウム鋳物等が挙げられる。腐食防止剤を配合することによりこれらの金属材料の腐食が抑制される。
【0014】
腐食防止剤の具体例としては、リン酸系化合物、トリアゾール系化合物、安息香酸塩、亜硝酸塩、チアゾール化合物、チアベンダゾール、カルボン酸類、ホウ酸類、モリブデン酸類等が挙げられる。これらは単独で含有してもよいし、二種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの中でも、上述した銅、黄銅、鋼鉄、鋳鉄、アルミニウム鋳物等の幅広い金属材料に対して防食性を発揮し、環境への負荷を上昇させるおそれが少なく、さらに安定性が高いリン酸系化合物及びトリアゾール系化合物が使用されることが好ましい。環境への負荷を低減させるとともに銅系及びアルミニウム鋳物に対する腐食を抑制するためにリン酸系化合物及びトリアゾール系化合物の少なくとも一方のみが腐食防止剤として使用されることが好ましい。
【0015】
リン酸系化合物は、主に鉄系、銅系及びアルミニウム系金属材料の腐食を防止する。具体的には、リン酸二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸二カリウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸水素カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム等が挙げられる。冷却液組成物中のリン酸系化合物の含有量は好ましくは0.005〜1.0重量%、より好ましくは0.05〜0.5重量%である。冷却液組成物中のリン酸系化合物の含有量が0.005重量%未満であると防食性が低下するおそれがある。一方、1.0重量%を超えると環境への負荷が増加するとともに析出するおそれがある。
【0016】
トリアゾール系化合物は、主に銅系金属材料の腐食を防止するために配合される。具体的には、ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、メルカプトベンゾトリアゾール等が挙げられる。冷却液組成物中のトリアゾール系化合物の含有量は、好ましくは0.0005〜1.0重量%、より好ましくは0.001〜0.1重量%である。冷却液組成物中のトリアゾール系化合物の含有量が0.0005重量%未満であると防食性が低下するおそれがある。一方、1.0重量%を超えると環境への負荷が増加するとともに析出するおそれがある。
【0017】
安息香酸塩は、主に鉄系金属材料の腐食を防止するために配合される。具体的には、安息香酸ナトリウム等が挙げられる。冷却液組成物中の安息香酸塩の含有量は好ましくは0.01〜5.0重量%である。亜硝酸塩は主に鉄系金属材料の腐食するために配合される。具体的には、亜硝酸ナトリウム等が挙げられる。冷却液組成物中の亜硝酸塩の含有量は好ましくは0.01〜3.0重量%である。
【0018】
チアゾール化合物は主に銅系金属材料の腐食を防止するために配合される。具体的には、メルカプトベンゾチアゾール、メルカプトベンゾチアゾールのナトリウム塩又はカリウム塩等が挙げられる。冷却液組成物中のチアゾール化合物の含有量は好ましくは0.01〜1.0重量%である。チアベンダゾールは主に銅系金属材料の腐食を防止するために配合される。冷却液組成物中のチアベンダゾールの含有量は好ましくは0.01〜0.05重量%である。カルボン酸類は主に鉄系、銅系及びアルミニウム系金属材料の腐食を防止するために配合される。具体的には、コハク酸、セバシン酸、カプリル酸、グルコン酸等が挙げられる。冷却液組成物中のカルボン酸類の含有量は好ましくは0.1〜4重量%である。
【0019】
ホウ酸類は主に鉄系金属材料の腐食を防止するために配合される。具体的には、ホウ酸、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム等が挙げられる。冷却液組成物中のホウ酸類の含有量は好ましくは0.01〜1.0重量%である。モリブデン酸類は主として鉄系金属材料の腐食を防止するために配合される。具体的には、モリブデン酸、モリブデン酸ナトリウム、モリブデン酸カリウム等が挙げられる。冷却液組成物中のモリブデン酸類の含有量は好ましくは0.01〜1.0重量%である。
【0020】
上記腐食防止剤の含有量が前記範囲未満では、冷却液組成物の金属材料に対する腐食防止効果を十分に向上させることができない。一方、前記範囲を超えると、腐食防止剤の一部が析出し、循環配管等に目詰まりを起こすおそれがある。さらに、冷却液組成物を調製するときに腐食防止剤が完全に溶解せず、冷却液組成部物の金属材料に対する腐食防止効果のさらなる向上が期待できないために不経済となりやすい。
【0021】
冷却液組成物は、水に上記成分を混合して各成分を分散又は溶解させることにより調製される。ここで、水に対する上記成分の混合順序は限定されない。冷却液組成物には、その他の添加成分として、食用黄色4号等の着色剤、シリコーン系消泡剤、ポリエーテル系消泡剤、高分子アルコール系消泡剤等の消泡剤、デナトニュームベンゾエート等の誤飲防止のための苦み剤等を含有させてもよい。冷却液組成物中のその他の添加成分の含有量は冷却液組成物の常法に従う。
【0022】
冷却液組成物の金属材料に対する腐食防止効果の向上には、冷却液組成物中の各成分の含有量を前記範囲に設定する等の他に、好ましくは冷却液組成物のpHも調製される。具体的には、冷却液組成物は水酸化カリウム等によりそのpHが7〜11に調整されるのが好ましい。冷却液組成物のpHが7未満では、冷却液組成物は酸性を有するためにその金属材料に対する腐食性が増大するおそれがある。一方、11を超えると、冷却液組成物のアルカリ性が強くなってその金属材料に対する腐食性が増大するおそれがある。
【0023】
本実施形態の冷却液組成物の用途は、冷却系統を構成する熱交換器や循環配管内に流通させる水溶液等の凝固点降下を目的とするものであれば特に限定されない。例えば余剰電力の利用を目的とした氷蓄熱用の熱交換媒体、暖房用不凍液、冷凍機や製氷機等の保冷用機器、ロードヒーティングシステム、融雪システム、ソーラーシステム、自動車エンジン等の冷却系統に用いられる。冷却液組成物は、主成分である上記凝固点降下成分により水の凝固点が降下され、好ましくは−10〜−1℃の温度範囲において相転移現象(水→氷又は氷→水)を生じる水溶液として使用することができる。
【0024】
本実施形態の凝固点降下成分を所定量配合する冷却液組成物は、凝固点において凝固点降下成分自体が氷の核となり、微細な氷の塊と水溶液からなるシャーベット状混合物となる。そのため融解潜熱が必要とされ、且つ流動性が必要とされる配管内を流通する氷蓄熱用の熱交換媒体として好ましく使用される。冷却液組成物が氷蓄熱用の熱交換媒体として使用される場合は、−10〜−1℃の温度範囲に凝固点を有することが好ましく、−7〜−2℃の温度範囲に凝固点を有することがより好ましい。冷却液組成物が氷蓄熱用の熱交換媒体として使用される場合は、上記凝固点降下成分の配合量は、好ましくは0.1〜15重量%、より好ましくは2〜10重量%、さらに好ましくは4〜6重量%である。
【0025】
本実施形態の冷却液組成物は、上記凝固点降下成分又は腐食防止剤が循環使用により徐々に劣化するため、用途にもよるが数年毎に交換されることが好ましい。その場合であっても本実施形態の冷却液組成物は、環境に対する負荷が小さいため環境汚染の問題が発生するおそれが少ない。
【0026】
本実施形態の冷却液組成物によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)本実施形態の冷却液組成物は、凝固点降下成分として炭酸カリウム及び炭酸水素カリウムから選ばれる少なくとも一種を主成分として含有する水溶液からなる。したがって、グリコール等の有機成分からなる凝固点降下成分に比べ腐敗するおそれがない。よって、環境に対する負荷を低減させることができる。また、長期にわたって安定に使用することができる。
【0027】
(2)また、塩化カルシウム等の他の無機成分からなる凝固点降下成分に比べ金属製配管等に対する腐食性を低減させることができる。
(3)また、凝固点において凝固点降下成分自体が氷結晶の核となり微細な氷結晶と水溶液からなるシャーベット状混合物が生成される。そのため、融解潜熱及び流動性の両方が必要とされる配管内を流通する氷蓄熱用の熱交換媒体として好ましく使用することができる。
【0028】
(4)本実施形態の冷却液組成物は、好ましくは凝固点降下成分が0.1〜15重量%配合される。したがって、冷却液組成物の凝固点が−10〜−1℃の温度範囲に低下するため、その温度範囲を用途とする冷却液組成物として好ましく使用される。
【0029】
(5)本実施形態の冷却液組成物は、好ましくは腐食防止剤がさらに配合される。したがって、金属製配管の防食性をさらに向上させることができる。
(6)本実施形態の冷却液組成物は、腐食防止剤として好ましくはリン酸系化合物及びトリアゾール系化合物から選ばれる少なくとも一種が使用される。そのため、環境に対する負荷を抑制しながら防食性をさらに向上させることができる。尚、環境に対する負荷を抑制することを特に目的とする場合は、廃棄により環境の悪化を招くおそれのある他の腐食防止剤を併用しないことが好ましい。
【0030】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・冷却液組成物を、濃縮された状態で調製及び保管されるとともに、冷却系統等に用いられるときには水が混合されて希釈されるように構成してもよい。このように構成した場合は、冷却液組成物の管理を容易にするとともにその輸送効率を向上させることができる。
【0031】
・上記実施形態において、凝固点降下成分として炭酸カリウム及び炭酸水素カリウムから選ばれる少なくとも一種を「主成分」として含有すればよい。したがって、その他の凝固点降下成分を本発明の効果を損なわない範囲内において一部含有してもよい。
【実施例】
【0032】
次に、実施例及び比較例を挙げて前記実施形態を更に具体的に説明する。
各実施例及び各比較例は、表1に示す各成分を混合して氷蓄熱用の熱交換媒体としての冷却液組成物を調製した。表1において、各成分の数値は重量%を示す。次いで、各冷却液組成物について、JIS K 2234に記載の方法に準じて金属試験片の腐食量(試験前後の質量変化(mg/cm))をそれぞれ測定した。ここで、試験片の材質は、銅、黄銅、鋼鉄、鋳鉄又はアルミニウム鋳物とし、試験温度を40℃とするとともに試験時間を336時間とした。さらに、各冷却液組成物の化学的酸素要求量(COD)及び生物化学的酸素要求量(BOD)それぞれ測定した。それらの結果を各表に示す。
【0033】
CODの法定試験方法は酸化剤として過マンガン酸カリウム(KMnO)を使用する方法(CODMn)が用いられる。具体的には100℃において過マンガン酸カリウムによって酸化に要する酸素量(mgO/l)を測定することにより行われる。BODは微生物によって好気的条件下で分解・安定化される間に消費される酸素の量を示す。具体的には、20℃の暗所において、5日間で消費される酸素量(mgO/l)を測定することによって行われる。数値が高いほど環境に対する負荷が高いことを示す。
【0034】
【表1】

実施例1〜5の炭酸カリウム及び炭酸水素カリウムが合計5重量%配合される熱交換媒体は−4〜−2℃の温度範囲において微細な氷の結晶と水溶液からなるシャーベット状混合物が生成した。また、実施例6の炭酸カリウム及び炭酸水素カリウムが合計10重量%配合される熱交換媒体は−10〜−8℃の温度範囲において微細な氷の結晶と水溶液からなるシャーベット状混合物が生成した。各実施例のシャーベット状混合物は一定の融解潜熱を有するとともに流動性を有するため配管内で流動使用される氷蓄熱用の冷却媒体として好適に使用することができる。
【0035】
表1に示されるように、凝固点降下剤として炭酸カリウム及び炭酸水素カリウムを含有する実施例1の水溶液ではエチレングリコールを含有する比較例2の水溶液に比べCOD及びBODの値はいずれも著しく低いことが確認される。また、凝固点降下剤として塩化カルシウムを使用し、腐食防止剤としてリン酸水素二カリウム及びベンゾトリアゾールを併用する比較例1はCOD及びBODの値が比較例2より低いことが確認される。しかしながら、その一方で各金属の腐食量は腐食防止剤を配合しない実施例1より高いことが確認される。実施例1は防食性に優れるとともに環境に対する負荷を低減させることができることが示される。
【0036】
凝固点降下剤の他に腐食防止剤としてベンゾトリアゾール及びリン酸水素二カリウムをそれぞれ単独で使用する実施例2,3は各金属の腐食量が実施例1に比べ低下していることが確認される。ベンゾトリアゾールを使用する実施例2は特に銅系金属に対して防食性を向上させることが示される。リン酸水素二カリウムを使用する実施例3は特に鉄系金属に対して防食性を向上させることが示される。また、リン酸水素二カリウム及びトリアゾール系化合物を併用する実施例4,5はさらに腐食量が低下していることが確認される。実施例6に示されるように凝固点降下剤の配合量を増やしたとしても腐食防止剤による防食性を低下させるおそれがないことが確認される。
【0037】
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について、それらの効果とともに以下に追記する。
(a)前記腐食防止剤は、リン酸系化合物及びトリアゾール系化合物から選ばれる少なくとも一種のみからなる冷却液組成物。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
凝固点降下成分として炭酸カリウム及び炭酸水素カリウムから選ばれる少なくとも一種を主成分として含有する水溶液からなることを特徴とする冷却液組成物。
【請求項2】
前記凝固点降下成分は、0.1〜15重量%配合されることを特徴とする請求項1記載の冷却液組成物。
【請求項3】
さらに腐食防止剤が配合されることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の冷却液組成物。
【請求項4】
前記腐食防止剤は、リン酸系化合物及びトリアゾール系化合物から選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする請求項3記載の冷却液組成物。
【請求項5】
氷蓄熱用の熱交換媒体として使用されることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか一項記載の冷却液組成物。

【公開番号】特開2008−189806(P2008−189806A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−25555(P2007−25555)
【出願日】平成19年2月5日(2007.2.5)
【出願人】(000195111)ショーワ株式会社 (10)
【Fターム(参考)】