説明

冷媒圧送装置および冷媒圧送装置を駆動する方法

【課題】電力消費量、騒音、発熱、摩耗の点で改良された、冷媒圧送用の冷媒ポンプを提供する。
【解決手段】冷媒ポンプ2が遊星歯車機構5を介して第一の駆動ユニット6および第二の駆動ユニットによって駆動可能であり、遊星歯車機構5が第一の駆動ユニット6のための第一の入力軸7および第二の駆動ユニットのための第二の入力軸8を備えており、少なくとも1つの作動状態において入力軸7、8を互いに直接的に連結するクラッチ22が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遊星歯車機構を介して第一の駆動ユニットおよび第二の駆動ユニットによって駆動可能である冷媒ポンプを備え、遊星歯車機構が第一の駆動ユニットのための第一の入力軸および第二の駆動ユニットのための第二の入力軸を備えている冷媒圧送装置に関するものである。本発明はさらに、冷媒圧送装置を駆動する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
冒頭に挙げた種類の冷媒圧送装置が従来技術から知られている。例えば特許文献1には内燃機関の冷却回路用の冷媒ポンプが記載されている。この冷媒ポンプは、ポンプギアと、トルク耐性を有する形式でポンプギアに接続されたポンプ軸とを備え、このポンプ軸はクランクシャフトに取り付けられた巻掛け伝動装置を介して内燃機関と結合可能となっている。クランクシャフトの回転数とポンプ軸の回転数とが異なった変速比となるように、ポンプ軸と巻掛け伝動装置の間に遊星歯車機構が配置されており、この遊星歯車機構は好ましくは電気モーターと連結可能となっている。このような冷媒ポンプにより、従来においても冷媒ポンプの圧送能力を幅広く変動させることが可能である。しかし、このような冷媒ポンプには、遊星歯車機構に起因して、特に電力消費量・騒音・発熱・摩耗の面で好ましくない作動特性がある。類似の冷媒圧送装置が特許文献2、特許文献3、および特許文献4にも開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】独国特許出願公開第102006041687号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第10214637号明細書
【特許文献3】独国特許発明第602005000638号明細書
【特許文献4】独国特許出願公開第102006048050号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで本発明は、上記の問題点を解消し、特に一方では冷媒ポンプの圧送能力の変動を幅広く設定でき、他方では上記の面において好ましい作動特性を備えた、冷媒圧送装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題は、本発明の請求項1の特徴を備えた冷媒圧送装置によって達成される。この冷媒圧送装置にはクラッチが備えられており、このクラッチを介して入力軸が少なくとも1つの作動状態において互いに直接的に連結される。そして冷媒ポンプが遊星歯車機構を介して、第一の駆動ユニットおよび第二の駆動ユニットによって駆動可能となっている。これは、冷媒ポンプが、第一の駆動ユニットのみによって、または第二の駆動ユニットのみによって、あるいは両方の駆動ユニットの共同によって駆動され得るということである。第一の駆動ユニットは第一の入力軸を介して遊星歯車機構と連結しており、第二の駆動ユニットは第二の入力軸を介して遊星歯車機構と連結している。2つの入力軸を介した動力伝達、すなわち第一の駆動ユニットまたは第二の駆動ユニットのそれぞれに対応する動力伝達が、遊星歯車機構に対して行われ、そしてこの遊星歯車機構を介して冷媒ポンプに対して動力伝達が行われる。遊星歯車機構内の多数の可動部品が原因となって、特にギアの転動によって、従来技術から知られている冷媒ポンプでは好ましくない作動特性がある。特に摩擦損失が非常に高く、これはエネルギー消費・騒音・発熱・摩耗の面に関して好ましくない影響を及ぼす。
【0006】
このような理由から、本発明ではクラッチが備えられている。このクラッチを介して、第一の駆動ユニットおよび第二の駆動ユニットのための入力軸が、少なくとも1つの作動状態において互いに直接的に連結されることが可能となっている。入力軸が互いに直接的に連結されていると、これらは同じ回転数を備えるようになる。これはつまり、互いに直接的に連結されるということは、遊星歯車機構や遊星歯車機構のギアを介して間接的に連結されるのではないということである。もう少し詳しく言うと、入力軸同士の間の接続が直接的かつ直結的な接続となっていて、それにより両方の入力軸が同じ回転数となるということである。従って、このクラッチによって入力軸を耐トルク的に連結することが可能となる。少なくとも1つの作動状態において、冷媒圧送装置または冷媒ポンプに所望される出力範囲の少なくとも一部をカバーすることが可能となる。その出力範囲から外れた作動が所望される場合には、入力軸は他の作動状態において互いの連結を解除され、互いに直接的に連結された状態ではなくなる。そのため、そのような他の作動範囲においては、なおも好ましくない作動特性がありうる。しかし、クラッチによって入力軸の連結が少なくとも一時的には行われるため、そのような他の作動範囲の、冷媒圧送装置の作動時間全体に対する時間的割合は格段に小さくなる。従って全体として作動特性が改善される。
【0007】
本発明のさらなる実施形態においては、遊星歯車機構が、太陽歯車と、外輪歯車と、太陽歯車と外輪歯車との間で動力伝達を行う少なくとも1つの遊星歯車を備えた遊星キャリアと、を備え、太陽歯車が第一の入力軸に接続され、遊星キャリアが第二の入力軸に接続され、そして冷媒ポンプが外輪歯車と連結した出力軸に接続されている。この遊星歯車機構は基本的には既知の構造を備えている。2つの駆動ユニットは、太陽歯車や遊星キャリアに接続されている、すなわちこれらと直接的に連結している。ここで、太陽歯車の回転数は第一の入力軸の回転数に、遊星キャリアの回転数は第二の入力軸の回転数に相当する。これに対して、冷媒ポンプは、出力軸の回転数、つまり外輪歯車の回転数に相当する回転数で駆動される。接続という用語は、ここでは概ね相互に直結した関係の結合ということであり、そのため互いに接続された要素の回転数は常に一致する。
【0008】
上記の構成においては、クラッチによって、少なくとも1つの作動状態では、太陽歯車が遊星キャリアと互いに直接的に連結されるため、これらが共に同じ回転数で回転する。そのため第一の駆動ユニットと第二の駆動ユニットとの間も直接的な連結となる。太陽歯車と遊星キャリアを互いに対して固定することにより、遊星歯車も太陽歯車や外輪歯車に対して回転しないようになる。さらに外輪歯車も、入力軸が相互に連結されていることによって太陽歯車および遊星キャリアに関して固定されるので、1つの作動状態においては、出力軸は第一の入力軸および第二の入力軸と同じ回転数を有することになる。このようにして、少なくとも1つの作動状態においては、遊星歯車機構の摩擦損失が格段に低減され、それにより作動特性には好ましい影響が及ぶ。
【0009】
本発明のさらなる実施形態においては、複数の作動状態のうちの一つである第一の作動状態では入力軸が遊星歯車機構を介してのみ間接的に連結され、第二の作動状態では直接互いに連結される。前述したように、少なくとも1つの作動状態(複数の作動状態の中の1つ)では、入力軸が直接互いに連結されている。この少なくとも1つの作動状態は、前述の第二の作動状態に相当する。それに対して、第一の作動状態では、入力軸が遊星歯車機構を介して間接的に互いに連結されているに過ぎない。従ってクラッチは、第一の作動状態においては、入力軸を互いに連結するために使用されるのではなく、むしろ解放するために使用される。このようにして、冷媒圧送装置は広い出力範囲にわたり駆動されることが可能であり、第二の作動状態においては摩耗損失が低減される。この理由から、冷媒圧送装置は好ましくはこの作動状態で駆動される。
【0010】
本発明のさらなる実施形態においては、第三の作動状態で入力軸が遊星歯車機構を介してのみ間接的に連結されており、第一の入力軸がクラッチによって固定される。従って、第三の作動状態は第一義的には第一の作動状態に対応するが、それとは対照的に第一の入力軸がクラッチを使用して固定されることになる。クラッチは例えば第一の入力軸と定置要素とを結合し、ブレーキあるいはパーキングブレーキに相当した動作をする。この第三の作動状態では、第一の入力軸が完全に固定されることになる。従ってクラッチは第一の入力軸を回転運動させないようにすることができる。第三の作動状態では、第一の入力軸と第一の駆動ユニットがクラッチによって固定されているため、冷媒ポンプの駆動は第二の駆動ユニットのみを使用して行われる。
【0011】
本発明のさらなる実施形態においては、巻掛け伝動装置によって遊星キャリアと第二の駆動ユニットとの間の動力伝達を行う。例えば遊星キャリアに巻掛け伝動装置の動力伝達手段のための座面が形成されている。これに対して、第一の駆動ユニットは好ましくは第一の入力軸と固定的に結合されている。
【0012】
本発明のさらなる実施形態においては、第一の駆動ユニットが電動機であり、第二の駆動ユニットが内燃機関である。冷媒圧送装置は通常、内燃機関またはこれを備えた駆動装置に取り付けられている。冷媒圧送装置は内燃機関を冷却する冷媒の圧送のために用いられる。内燃機関は通常、定値の回転数および/または定値のトルクとなるよう制御され、前者は目標回転数から、後者は目標トルクから導き出される。目標回転数および/または目標トルクは、駆動装置を備えた自動車の運転者および/または自動車に取り付けられた運転者支援システムによって決定される。従って、第二の駆動ユニットの回転数は、冷媒圧送装置において必要な値に合わせられているわけではない。これに対し、電動機は冷媒圧送装置が所望の出力で駆動されるように制御することができる。冷媒ポンプの出力の制御および/または調整に応じて、電動機を調節することが可能である。
【0013】
冷媒圧送装置は、内燃機関を備えた駆動装置の構成要素である。本発明は好ましくは内燃機関として形成された(第二の)駆動ユニットを備えた駆動装置にも関連し、駆動装置あるいは内燃機関には、上記の実施形態による冷媒圧送装置が取り付けられている。
【0014】
本発明はさらに、特に上記の実施形態による冷媒圧送装置を駆動する方法に関連し、冷媒圧送装置は遊星歯車機構を介して第一の駆動ユニットおよび第二の駆動ユニットによって駆動可能である冷媒ポンプを備え、遊星歯車機構は、第一の駆動ユニットのための第一の入力軸と、第二の駆動ユニットのための第二の入力軸を備えている。入力軸は少なくとも1つの作動状態においてはクラッチを介して直接的に互いに連結される。この冷媒圧送装置は、上記のようにさらなる実施形態をとることができる。上記で詳述したように、クラッチは、入力軸を少なくとも1つの作動範囲において直接互いに連結するために使用される。
【0015】
本発明のさらなる実施形態においては、第一の作動状態では入力軸が遊星歯車機構を介してのみ間接的に連結され、第二の作動状態では直接互いに連結される。このような方法はすでに上記で言及されている。第二の作動状態は、入力軸がクラッチによって直接互いに連結される少なくとも1つの作動状態に対応している。これに対し、第一の作動状態では、入力軸を互いに異なる回転数とすることが可能であり、入力軸は遊星歯車機構を介してのみ互いに連結される。
【0016】
本発明のさらなる実施形態においては、第三の作動状態では入力軸が遊星歯車機構を介してのみ間接的に連結され、第一の入力軸がクラッチによって固定される。第一の作動状態では第一の入力軸が回転可能となっているが、第三の作動状態ではクラッチによって第一の入力軸が固定される。ここで、第一の作動状態と類似して、入力軸は遊星歯車機構を介してのみ間接的に連結される。
【0017】
本発明のさらなる実施形態においては、第一の作動状態では一方のみの駆動ユニットまたは両方の駆動ユニットが駆動を行い、および/または第二の作動状態では第二の駆動ユニットのみが駆動を行い、および/または第三の作動状態では第二の駆動ユニットのみが駆動を行う。第一の作動状態においては、入力軸が遊星歯車機構を介してのみ間接的に互いに連結されており、かつ第一の入力軸がクラッチを使用して固定されていない、つまり回転可能となっており、さらに、駆動ユニットのうちの1つだけ、または両方が同時に、冷媒ポンプを駆動するために使用される。それに対して、第二の作動状態および/または第三の作動状態においては、第二の駆動ユニットのみが駆動を行う一方、第一の駆動ユニットが非駆動状態となっている。特に第二の作動状態では、第一の入力軸、ひいては第一の駆動ユニットが第二の駆動ユニットによって駆動され、回転状態となることができる。
【0018】
以下において、図中に示された例示的実施形態を参照して、より詳しく本発明を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】冷媒ポンプおよび遊星歯車機構を備えた冷媒圧送装置の長手方向断面図である。
【図2】第一の作動状態にある冷媒圧送装置の模式図である。
【図3】第二の作動状態にある冷媒圧送装置の模式図である。
【図4】第三の作動状態にある冷媒圧送装置の模式図である。
【図5】各作動状態における冷媒ポンプの出力を回転数に対してプロットしたグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は、主に羽根車3と冷媒調整器4から構成されている冷媒ポンプ2を備えた冷媒圧送装置1の断面図である。例えば断面積調整による制御および/または調整によって、冷媒ポンプ2を通過する冷媒の流量を、冷媒調整器4により調節することができる。冷媒ポンプ2の羽根車3は、遊星歯車機構5を介して第一の駆動ユニット6、および第二の駆動ユニット(図示せず)により駆動可能である。この駆動のために、遊星歯車機構5は第一の駆動ユニット6のための第一の入力軸7、および第二の駆動ユニットのための第二の入力軸8を備えている。第一の駆動ユニット6は、第一の入力軸7と直接的に連結されている。第二の駆動ユニットは、巻掛け伝動装置9を介して第二の入力軸8に連結されている。そのため、第二の入力軸8の端面には、例えば伝動ベルトのような巻掛け手段11のための座面10が形成されている。
【0021】
第一の入力軸7は、遊星歯車機構5の太陽歯車12と直に接続されている。これに対して第二の入力軸8は、遊星キャリア13と直接的に連結されているか、あるいは遊星キャリア13自体によって形成されている。遊星キャリア13には、複数の、特に3つの、遊星歯車14が回転自在に取り付けられており、これにより、遊星歯車14を介して太陽歯車12と遊星歯車機構5の外輪歯車15との間で動力伝達が行われる。外輪歯車15は遊星歯車機構5の出力軸16を介して冷媒ポンプ2またはその羽根車3に接続されている。遊星歯車機構5はハウジング17内に配置されている。その内部では第二の入力軸8や遊星キャリア13が軸受18を介して支承されており、外輪歯車15や出力軸16が軸受19を介して支承されている。そして、第一の入力軸7と第二の入力軸8との間には軸受20が設けられている。軸受18,19,20は、好ましくは転がり軸受として構成されている。さらに、遊星歯車機構5をハウジング17の周囲に対して密封するために、少なくとも1つの密封手段21が、特に密封環の形態で、遊星歯車機構5の端面に備えられる。
【0022】
入力軸7と入力軸8との間にはクラッチ22が備えられている。これは調整器23によって少なくとも3つの作動状態にすることができる。ここでクラッチ22は、スライダー24とスライダー基部25および少なくとも1つの同期リング26(ここでは2つの同期リング26)および1つまたは複数の摩擦環27から構成されている。本例示的実施形態では、同期リング26のそれぞれに対して摩擦環27が配置されている。スライダー基部25は、耐トルク的に第一の入力軸7と連結されている。これとともにスライダー24がスライダー基部25と耐捩れ的に結合されているが、遊星歯車機構5の回転軸28に関する軸方向にはスライド可能なように支承されている。スライダー24を軸方向にスライドすることで、クラッチ22や冷媒圧送装置1をさまざまな作動状態にすることができる。図1に示された第一の作動状態では、スライダー24は中央にあり、そのため入力軸7および入力軸8はそれぞれ回転可能となっているとともに、遊星歯車機構5を介してのみ互いに連結されている。特に第二の作動状態(この作動状態ではスライダー24が左へ移動されている)では入力軸7と入力軸8とが直接互いに連結されるようになっている。従ってこの第二の作動状態では、入力軸7と入力軸8とが同じ回転数となっている。スライダー24が右へ移動した第三の作動状態では、第一の入力軸7が固定され、それにより回転運動が不可能となる。ただしこのとき、入力軸7と入力軸8とは、遊星歯車機構5を介してのみ互いに連結されている。
【0023】
各種の作動状態について、図2,3,4を参照して以下に説明する。図2は第一の作動状態を示している。スライダー24は中立位置にあることが明らかであり、そのため入力軸7および入力軸8は自由に可動であるとともに、遊星歯車機構5を介してのみ互いに連結されてもいる。第一の作動状態では、冷媒ポンプ2は例えば第一の駆動ユニット6のみによって駆動することができる。その場合、冷媒ポンプ2によって圧送される最大体積流量は、電動機6によって決定される。このようにして例えば内燃機関が非作動になった後の冷媒ポンプ2のアフターランが実現され得る。冷媒ポンプ2によって冷媒が作用する冷却回路(図示せず)において局所的な沸騰が発生しないように、こうしたアフターランは重要である。最大体積流量は内燃機関の回転数には無関係であって、電動機6の最大出力だけに依存する。
【0024】
その一方で、冷媒ポンプ2が電動機6によっても内燃機関によっても駆動されるようにすることもできる。内燃機関の低回転数域では、特に周囲温度が低い場合に、例えばヒーターシステムの要求を満たすために、体積流量を増加させることが所望される場合がある。この場合、冷媒ポンプ2を駆動するために、内燃機関に加えて電動機6を使用することができる。これによってより大きな体積流量が実現可能である。同様に、内燃機関が高負荷で低回転数の状態において、冷媒ポンプ2によって圧送される体積流量を増加させるために、電動機6がさらに稼働される。この結果、低回転域でも最適に内燃機関を冷却することができる。体積流量が小さいことを理由とする内燃機関の出力抑制が必要ない。最後に、冷媒ポンプ2を内燃機関のみによって駆動するようにしてもよい。内燃機関が動作している間は、第二の入力軸8が継続的に駆動される。第一の作動状態においては、遊星歯車機構5内での出力配分に応じて、例えば電力供給系に電気を供給するために、電動機6を発電機として使用することも可能である。
【0025】
図3は、第二の作動状態を示している。ここでは入力軸7と入力軸8とが直接互いに連結されており、これらは同じ回転数となっている。ここで、太陽歯車12は遊星キャリア13と耐トルク的に結合されている。このとき、遊星歯車機構5の一体的な回転が生じ、この一体的な回転においては、入力軸7、入力軸8、出力軸16が同じ回転数で回転する。冷媒ポンプ2の駆動は内燃機関のみにより行われ、ひいては第二の入力軸8を介して行われる。従って、得られる最大体積流量は、第一の作動状態のときより小さいが、大抵の使用目的には十分である。体積流量がより小さいため、必要な駆動力もより小さい。遊星歯車機構5が一体的に回転することにより、遊星歯車14が回転運動または転がり運動をしなくなる。このようにして、遊星歯車機構5の摩擦損失が低減され、その結果、騒音・発熱・摩耗に関してより好ましい作動特性が得られる。
【0026】
図4は第三の作動状態の冷媒圧送装置1である。この作動状態では、第一の入力軸7が耐トルク的に固定されており、例えばハウジング17に対して固定されている。電動機6は、冷媒ポンプ2の駆動には使用できなくなる。遊星歯車機構5の変速比は第二の入力軸8と出力軸6との間の一定の変速比となる。第三の作動状態では、内燃機関の負荷が高く回転数が大きい場合には、内燃機関によって生じた熱を排熱できる。
【0027】
図5は、冷媒ポンプ2の最大出力Pと内燃機関の回転数nとの関係が示されたグラフである。ここで、推移線29および推移線30は第一の作動状態における最大可得出力、推移線31は第二の作動状態における最大可得出力、推移線32は第三の作動状態における最大可得出力である。推移線29は、冷媒ポンプ2が第一の作動状態において電動機6のみによって駆動される場合の最大出力を示している。そのため、この最大出力は内燃機関の回転数に依存しない。推移線30は、冷媒ポンプ2が第一の作動状態において電動機6によっても内燃機関によっても駆動される場合の最大出力Pを示している。最大出力Pの最小値は電動機6の最大出力と一致し、最大出力のうち内燃機関によって得られる部分は、内燃機関の回転数に依存する。入力軸7と入力軸8とがクラッチ22によって互いに直接的に連結されている第二の作動状態では、最大出力が最小となっており、加えてこの最大出力は内燃機関の回転数に依存する。このようにして、内燃機関を十分に冷却するために、および/またはほかの要素に冷媒を供給するために、冷媒ポンプ2によってわずかな体積流量の冷媒しか圧送されなくてよい場合には、冷媒ポンプ2の出力、ひいては損失出力も大幅に低減することができる。したがって、より好ましい作動特性が得られる。第三の作動状態においては、第一の入力軸7は例えばハウジング17に固定される。これにより、従来技術から知られている冷媒圧送装置1の特性の推移線32となる。
【符号の説明】
【0028】
1 冷媒圧送装置
2 冷媒ポンプ
3 羽根車
4 冷媒調整器
5 遊星歯車機構
6 第一の駆動ユニット
7 第一の入力軸
8 第二の入力軸
9 巻掛け伝動装置
10 座面
11 巻掛け手段
12 太陽歯車
13 遊星キャリア
14 遊星歯車
15 外輪歯車
16 出力軸
17 ハウジング
18 軸受
19 軸受
20 軸受
21 密封手段
22 クラッチ
23 調整器
24 スライダー
25 スライダー基部
26 同期リング
27 摩擦環
28 回転軸
29 推移線
30 推移線
31 推移線
32 推移線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
遊星歯車機構(5)を介して第一の駆動ユニット(6)および第二の駆動ユニットによって駆動可能な冷媒ポンプ(2)を備え、前記遊星歯車機構(5)が、前記第一の駆動ユニット(6)のための第一の入力軸(7)および前記第二の駆動ユニットのための第二の入力軸(8)を備えている冷媒圧送装置(1)であって、
少なくとも1つの作動状態において前記入力軸(7、8)を互いに直接的に連結するクラッチ(22)が設けられていること
を特徴とする冷媒圧送装置。
【請求項2】
前記遊星歯車機構(5)が、太陽歯車(12)と、外輪歯車(15)と、前記太陽歯車(12)と前記外輪歯車(15)との間で動力伝達を行う少なくとも1つの遊星歯車(14)を有する遊星キャリア(13)と、を備え、
前記太陽歯車(12)が前記第一の入力軸(7)に接続され、前記遊星キャリア(13)が前記第二の入力軸(8)に接続され、前記冷媒ポンプが前記外輪歯車(15)と連結した出力軸(16)に接続されていること
を特徴とする請求項1に記載の冷媒圧送装置。
【請求項3】
前記入力軸(7、8)は、複数の作動状態のうちの第一の作動状態においては前記遊星歯車機構(5)を介してのみ間接的に連結されており、第二の作動状態においては互いに直接的に連結されていること
を特徴とする請求項1または請求項2に記載の冷媒圧送装置。
【請求項4】
第三の作動状態においては、前記入力軸(7、8)が前記遊星歯車機構(5)を介してのみ間接的に連結されており、前記第一の入力軸(7)が前記クラッチ(22)によって固定されていること
を特徴とする請求項3に記載の冷媒圧送装置。
【請求項5】
巻掛け伝動装置(9)によって前記遊星キャリア(13)と前記第二の駆動ユニットとの間の動力伝達が行われること
を特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の冷媒圧送装置。
【請求項6】
前記第一の駆動ユニット(6)が電動機であり、前記第二の駆動ユニットが内燃機関であること
を特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の冷媒圧送装置。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の冷媒圧送装置(1)を駆動する方法であって、
前記冷媒圧送装置(1)が冷媒ポンプ(2)を備え、前記冷媒ポンプが遊星歯車機構(5)を介して第一の駆動ユニット(6)および第二の駆動ユニットによって駆動可能であり、前記遊星歯車機構(5)が前記第一の駆動ユニット(6)のための第一の入力軸(7)、および前記第二の駆動ユニットのための第二の入力軸(8)を備える方法において、
前記入力軸(7、8)がクラッチ(22)を介して少なくとも1つの作動状態において互いに直接的に連結されること
を特徴とする方法。
【請求項8】
前記入力軸(7、8)は、第一の作動状態においては遊星歯車機構(5)を介してのみ間接的に連結され、第二の作動状態においては互いに直接的に連結されること
を特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
第三の作動状態において、前記入力軸(7、8)が前記遊星歯車機構(5)を介してのみ間接的に連結され、前記第一の入力軸(7)が前記クラッチ(22)によって固定されること
を特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記第一の作動状態においては一方のみの駆動ユニットまたは両方の駆動ユニットが駆動を行い、
および/または前記第二の作動状態においては前記第二の駆動ユニットのみが駆動を行い、
および/または前記第三の作動状態においては前記第二の駆動ユニットのみが駆動を行うこと
を特徴とする請求項9に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−83259(P2013−83259A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−223771(P2012−223771)
【出願日】平成24年10月9日(2012.10.9)
【出願人】(591006586)アウディ アクチェンゲゼルシャフト (34)
【氏名又は名称原語表記】AUDI AG
【住所又は居所原語表記】D−85045 Ingolstadt,Germany
【Fターム(参考)】