説明

冷水浸出葉茶

【課題】冷水浸出葉茶を製造する方法。
【解決手段】緑茶葉は、しおれさせられ、タンナーゼで処理され、タンナーゼ処理によって遊離された没食子酸及びその他の化合物を酸化するように内部発生ペルオキシダーゼを活性化するのに十分な量の過酸化水素の存在下に発酵させられ、そしてその後乾燥させられる。最終生成物は、熱水又は冷水中で浸出させられて良好な風味と色を生じる紅茶葉である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷水浸出葉茶を製造するための方法に関する。この方法は、タンナーゼ前処理されたドール(dhool)(しおれさせられた茶葉)を過酸化水素の存在下の固体状態条件下に発酵させることを含む。乾燥された葉生成物は、冷水中に浸出させられて良好な風味と色を与える。
【背景技術】
【0002】
背景及び従来技術
紅茶は、伝統的に、新しく摘まれた緑茶葉を酸化させ及び乾燥させることによって製造される。茶、飲料、は、英連邦国家においては一般的にこれらの茶葉を新しく沸騰させた湯中で数分間浸出させ、そしてミルク及びおそらく少量の砂糖を加えることによって調製される。しかしながら、幾つかの国、特に米国(或いはより正確には、その一部)においては、茶は、氷で冷やされた飲料としてより一般的に楽しまれている。
【0003】
そのような飲料は、伝統的に製造された茶葉を冷水中で浸出させることによっては従来的に調製できない。その代わりに、アメリカ人は、高温の湯中で葉を浸出させ、葉を取り出し、そして浸出液を飲めるようになるまで冷蔵庫に入れるか、又は茶葉を日光中の冷水中に入れて何時間にもわたってゆっくりと浸出させる。
【0004】
飲料にその特異な感覚刺激特性を与える葉中の多数の化合物は冷水中にはわずかしか可溶性でない。1970年代に利用可能になったより簡便な選択肢は、低温可溶性の茶に基づく粉末の使用である。
【0005】
冷水可溶性の茶粉末を製造するための多数の方法が存在する。
【0006】
米国特許明細書第4,051,264号(Lipton/Sanderson)は、冷水可溶性の茶葉抽出物を製造する方法を開示している。茶葉は、酸素欠如条件下にタンナーゼ(tannase)で前処理されて、良好な色、収量、及び風味を有する冷水浸出茶を生成する。
【0007】
米国特許明細書第3,812,266号(Sanderson/Coggon)は、タンナーゼ及び天然茶酵素を使用して緑茶を紅茶に転化することを含む方法を開示している。この方法は、また、タンナーゼで前処理し(但し、スラリー系中)、及びその後に緑茶を紅茶に転化し、そして熱水及び冷水可溶性の茶粉末を生成するための、天然茶酵素による酸化を含む。幾つかの例においては、「プロセスを短くする」ために過酸化水素が添加される。タンナーゼ処理に由来する改善された冷水可溶性の着色剤の生成(高められたエピテアフラビン酸濃度)についての提案されたメカニズムは、現在、正しくないことが知られており、そして過酸化水素を添加することの効果を説明するメカニズムは示されなかった。
【0008】
欧州特許明細書EP 760,213 A1(ユニリーバー)は、茶に基づく食品中の色を改善する方法を開示している。この方法は、低温可溶性の着色剤を生成するために、(葉又は抽出物に対する)タンナーゼ前処理とそれに続く外部発生ペルオキシダーゼと過酸化水素による処理を使用することを含む。
【0009】
国際特許公開WO97/40699(ユニリーバー)は、着色剤を生成するためのゼオライトを用いた茶の加工に関する。冷水可溶性の茶を生成するために、タンナーゼ処理に続くゼオライトの添加の例が存在する。
【0010】
米国特許明細書第4,639,375号(P&G、Tsai)は、冷水可溶性のインスタント茶粉末を生成するために、紅茶をタンナーゼ及びその他の細胞壁消化酵素で処理することを開示している。
【0011】
冷水可溶性茶粉末は簡便であるかもしれないが、多くの消費者にとっては、最終の飲料の品質は高温で浸出させられた葉から調製されたものと同じではない。その他の消費者は、粉末を人工的であると理解し、従って「天然ではない」と理解するため、粉末を使用することを好まない。
【0012】
本発明者らは、驚くべきことに、高温で浸出させられ冷蔵された紅茶と同様に消費者に受け入れられる、良好な色と風味を有する飲料を与える、冷水中で浸出される茶葉を製造することが可能であることを発見した。さらに、この生成物は、伝統的紅茶製造プロセスを部分的に改良することによって製造することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】米国特許明細書第4,051,264号
【特許文献2】米国特許明細書第3,812,266号
【特許文献3】欧州特許明細書EP 760,213 A1
【特許文献4】国際特許公開WO97/40699
【特許文献5】米国特許明細書第4,639,375号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
発明の陳述
広い表現において、本発明は、冷水浸出葉茶を製造する方法であって、緑茶葉をしおれさせる工程、しおれさせられた葉をタンナーゼで処理する工程、タンナーゼ処理されたしおれさせられた葉を内部発生ペルオキシダーゼを活性化するのに十分な量の過酸化水素の存在下に発酵させる工程、及び発酵させた葉材料を乾燥させて冷水浸出葉茶を生成する工程を含む方法に関する。
【0015】
本発明は、また、冷水可溶性茶生成物中において着色剤種を発生させる方法であって、緑茶のタンナーゼ処理されたしおれさせられた葉に過酸化水素を、内部発生ペルオキシダーゼがタンナーゼ処理によって遊離された没食子酸(gallic acid)を酸化するために十分な量で添加することを含む方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の目的に対して「茶(tea)」は、カメリア・シネンシス・バー・シネンシス(Camellia sinensis var. sinensis)又はカメリア・シネンシス・バー・アサミカ(Camellia sinensis var. assamica)からの葉材料を意味する。「茶」は、また、アスパラトゥス・リネアリス(Aspalathus linearis)から得られるルーイボス茶(rooibos tea)も含むが、これは内部発生発酵酵素の劣った源である。「茶」は、また、これらの茶の2種以上のブレンドの生成物を含むことも意図されている。
【0017】
本発明の目的に対して「葉茶(leaf tea)」は、浸出させられていない形態の1つ以上の茶の源を含む茶生成物を意味する。
【0018】
本発明の目的に対して「冷水可溶性」とは、4℃以上の温度で短い浸出時間、即ち、10分未満であるが好ましくは5分未満の間に、良好な色、風味、及び食感(mouthfeel)を与えることを意味する。
【0019】
しおれさせられた葉は、好ましくは酸素欠如条件下にタンナーゼ処理される。このプロセスは、十分なタンナーゼが使用される場合、この酸素欠如インキュベーション無しに有効である。タンナーゼ処理されたしおれさせられた葉は、好ましくは、過酸化水素の添加の前に増加した量のテアフラビン類(theaflavins)と没食子酸を生成させるために標準的条件下に発酵させられる。
【0020】
疑念を避けるために、「含む(comprising)」という言葉は、「から成る(consisting of)」又は「から構成される(comprised of)」を含むが、必ずしもこれらだけではないことを意味することが意図されている。即ち、挙げられている工程又は選択肢が網羅的なものであるとは限らない。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の好ましいプロセスの配置を示す図である。
【図2】高度に着色されたテアルビゲン類を生成させるようにタンナーゼと内部発生ペルオキシダーゼが触媒する化学反応を表す図である。
【図3】タンナーゼ−過酸化物処理された、部分的発酵させられたドールの組成変化を示した図である(実施例1)。
【図4】タンナーゼ−過酸化物処理された茶の浸出液と処理されていない茶の浸出液の色特性を比較するヒストグラムである(実施例3)。
【図5】実施例4aにおいて記載された実験についての発酵の経過を表す。
【図6】実施例4aにおいて記載された実験についての発酵の経過を表す。
【図7】様々なタンナーゼ投与量を使用して得られた、タンナーゼ−過酸化物処理された紅茶の組成を示す(実施例5)。
【図8】様々なタンナーゼ投与量を使用して得られた、タンナーゼ−過酸化物処理された紅茶の組成を示す(実施例5)。
【図9−1】処理されていない茶とタンナーゼ−過酸化物処理された茶の4℃、15℃、25℃、55℃、及び70℃の各々における浸出の経過を示す図である(実施例6)。
【図9−2】処理されていない茶とタンナーゼ−過酸化物処理された茶の4℃、15℃、25℃、55℃、及び70℃の各々における浸出の経過を示す図である(実施例6)。
【図9−3】処理されていない茶とタンナーゼ−過酸化物処理された茶の4℃、15℃、25℃、55℃、及び70℃の各々における浸出の経過を示す図である(実施例6)。
【発明を実施するための形態】
【0022】
発明の詳細な説明
茶の製造、特に紅茶の製造は、伝統的には、4つの基本的工程、しおれさせ(萎凋)(withering)、揉捻(rolling)、発酵、及び火入れ(乾燥)(firing)を含む。
【0023】
しおれさせ工程は、摘み取られた葉が特定期間(おそらく24時間まで)貯蔵されるプロセスであり、その間に葉は様々な生化学的及び物理的変化(しばしば水分の損失を含む)を受ける。
【0024】
揉捻がしおれさせ工程に続き、そして伝統的にはしおれさせられた葉は、伝統的に、葉を傷つけしわくちゃにするため、即ち、植物の組織構造を壊すために、任意に圧を加えながらもまれる。これは、植物細胞及び組織の中から発酵可能な基質及び発酵酵素を遊離させるという効果を有する。現代的な茶の製造は通常この工程を含むが、植物の細胞及び組織は、茶(これは通常しおれさせられているもの)を断裁機械に通すことによって壊される。
【0025】
次の工程は一般的に発酵と呼ばれるが、呼び誤りがある。「発酵」は、一般的に、アルコールの醸造に関連して外部発生酵素の作用を表すために使用される。しかしながら、茶の世界においては、「発酵」は、葉の引裂きや切断による細胞の機械的破裂によって特定の内部発生酵素と基質が一緒にされたとき茶が受ける酸化的プロセスを表すように使用される。このプロセス中に葉中の無色のカテキンが黄色及びオレンジ色乃至暗褐色の物質の複雑な混合物に転化され、そして多数の芳香揮発性物質を生成する。
【0026】
色彩に富んだ酸化生成物は、テアフラビン類及びテアルビゲン類(thearubigens)を含む。テアフラビン類は、それらのベンゾトロポロン(benzotropolone)環によって特徴付けられる幾つかの十分に定義されたカテキン縮合生成物を含む。テアルビゲン類は、分子量が非常に多様な未定義の分子の群である。それらは、黄色から暗赤色及び褐色までの範囲内の非常に様々な色を有する。
【0027】
発酵生成物は火入れされ乾燥されて紅茶を生じる。火入れ工程は茶を加熱し乾燥させて、発酵酵素を破壊しそしてそれによって発酵を抑えることを含む。これは、水分含有率の5%未満までの水分含有率の減少をもたらし、そしてまたさらなる化学的酸化と茶の芳香の変化をもたらす。これは一般的に乾燥機中で茶を高温の乾燥した空気の送風にさらすことを含む。
【0028】
本発明は、低温可溶性の紅茶を製造する方法に関する。本発明者らは、この方法が、前述したばかりの伝統的茶製造プロセスの工程の幾つかを修正することによってこれが達成できることを見出した。
【0029】
本発明の方法の好ましい態様が図1中に表されている。その好ましい態様において、新しく摘み取られた緑茶葉は、本技術分野で公知の方法のいずれかを使用して通常の方法でしおれさせられる。しおれさせは本発明において必須ではないが、茶の芳香を増加させそしてまた初期の水分含有率を減少させるため(水分はタンナーゼ及び過酸化物と共に添加され、そして乾燥効率は高い水分含有率、即ち、76%超で、影響される可能性があるので、これは重要である)の有用な手段になり得る。
【0030】
葉はしおれさせられるが、これは回転羽根によって、及び/又はかなりの数のCTC(切断−引裂き−丸め)機械によって細かく砕かれることを意味するかもしれない。
【0031】
伝統的紅茶製造からの第1の逸脱においては、しおれさせられた葉が、タンナーゼ(没食子酸フラバノールエステラーゼ)で処理されて、脱没食子酸化されたカテキン類(degallated catechins)及び没食子酸を生成する。これはその後発酵中にテアフラビン類及び非没食子酸化テアルビゲン類の生成をもたらす(これらは没食子酸化されたものよりも可溶性である)。
【0032】
タンナーゼによって触媒作用を受ける一般的反応は、没食子酸化されたカテキン類及びまた葉内部のその他の没食子酸化された化合物における、没食子酸エステル結合の開裂である。タンナーゼは、また、茶生成物の透明性を改善することがよく知られている。なぜならば、ガロイル基はクリーム形成において重要であり、そしてタンナーゼは脱没食子酸化及び紅茶クリームの可溶化に広く使用されてきたからである。
【0033】
タンナーゼはスラリー発酵の前の緑茶の処理に対して有用であることが知られている。例えば、前述の米国特許第3,812,266号(Sandersonら)は、液中の茶クリームの量を減少させるためにタンナーゼを使用することを開示している。このプロセスによって生成した改善された着色剤にも言及された。
【0034】
しかしながら、本発明は、茶をスラリー中に懸濁させ発酵させることを必要としない。実際に、これは非生産的であろう。なぜならば、葉からの良好な色と風味を与えるのに必要な成分がスラリー中に早期(成熟前)に抽出されるからである。むしろ、茶は固体状態条件下に発酵させられる。これは重要な相違である。本発明者らは、以前は、カテキン類のスラリー液への抽出はタンナーゼの効率的な作用に対して必須であると考えていた。本発明者らは、タンナーゼの固体状態のドールへの直接的な適用が効率的な(即ち、ほとんど完全な)カテキンの脱没食子酸化と高水準のテアフラビンの生成をもたらすことに驚かされた。本発明者らは、葉生成物が冷水中に浸出されることにさらに驚いた。
【0035】
タンナーゼ処理は、没食子酸化カテキン類であるECG及びEGCGを脱没食子酸化して、脱没食子酸化されたカテキン類であるEC及びEGCを生成する。発酵中のその後の酸化時に、カテキン類EC及びEGCは反応してテアフラビンを生成する。
【0036】
タンナーゼは、様々な本技術分野において公知の技術を使用して適用することができる。本発明者らは、タンナーゼを水中に溶解し、その溶液をドール上に噴霧し、そして混合物を放置して適切な温度で適切な時間反応させることを好む。タンナーゼは、初めのしおれさせ工程(例えば、第1のCTC断裁)の後ドールに微細噴霧の形態で加えられ、それに続いて適切な混合を確実にするためにその後の断裁(例えば、第2又は第3のCTC断裁)が行われる。ドールは、好ましくは、減圧下、又は例えば大気又は窒素中において酸素欠如条件下にインキュベートされる。これは発酵の発生を防ぐ。発酵が始まる前に完全な脱没食子酸化が起こるのが好ましい。なぜならば、これはその後の発酵において最高のテアフラビン量をもたらし、そしてこれは次に最適な着色剤の生成をもたらすからである。
【0037】
本発明者らは、外部発生分子をしおれさせられた茶葉中に引きつけその内部の化合物と接触させるために減圧を使用することによって、特定の外部発生化合物が固体状態の茶の特定の内部発生化合物に接近できる効率を向上させることができると仮定する。減圧浸透(vacuum infiltration)そのものは公知である。しかしながら、それは物質を細胞の中に押し込むよりもむしろ細胞と細胞の間に押し込むために使用されてきた。そして、これらの物質は小さい分子量を有する傾向があった。
【0038】
しかしながら、本発明者らは、特定の外部発生化合物を茶中に見出される内部発生化合物と接触させる方法であって、しおれさせられた茶葉をこれらの外部発生化合物で減圧浸透させることを含む方法を開発し、そしてその方法を茶及び茶に基づく飲料の特定の特性を改良するために適用した。この方法が、酵素のような大きい分子でさえ内部発生茶化合物に接近させることができ、そして茶の特定の特性を改善する程度は、本当に驚くべきものである。例えば、タンナーゼ前処理された茶の浸出液は、対照例の全テアフラビン含有量の二倍より大を有し、TF1においては6倍の増加を有することが判明した。
【0039】
減圧浸透は、物質を細胞壁の中よりもむしろ細胞壁と細胞壁の間に導入するためであるが、植物組織からのプロトプラストの調製においてしばしば使用される技術である。切断された葉の組織はタンナーゼを含む溶液中でインキュベートされる。懸濁液はその後減圧下に置かれ、そして空気が葉の粒子の細胞内空間から引き抜かれ、そして酵素溶液がそれに置き換わるために引き込まれる。本発明者らは、100ミリバール未満の減圧がこれに適することを発見した。
【0040】
この方法を茶のドールに適用するときの主要な制約は、細胞内において接近を達成することである。もう1つの主要な問題は、多量の水が、発酵中の酸素の取込み量を減少させることによって、茶の品質に重大な影響を与える可能性があることである。実施例において記載されている結果は、減圧浸透が、固体状態ドール中に酵素、例えば、タンナーゼ、を導入するための有用な道具であることを示している。発酵されたとき、タンナーゼ処理されたドールは、高水準のテアフラビンを有し、そして没食子酸化された種を含まない紅茶を生じる。このことは、ある範囲の新規な茶を製造することを可能にさせる。減圧の助けを借りたタンナーゼ処理は、環境温度と圧力下での同等の処理よりも、没食子酸化された種の除去及び追加のTF形成の増加においてずっとより効果的である。減圧は、発酵の前に酵素を組織内に貫入させ、そして没食子酸化された種を除去することを可能にし、それらは単純に酵素を発酵用のドールに塗布し、そして手で混合するのと比較して、タンナーゼによって推進されるテアフラビンの増強という特徴の鍵である。
【0041】
もし可能であるならば、タンナーゼ処理前又は処理中の発酵を防ぐように条件を調節すべきである。これは、より強力な真空ポンプを使用するか、ドールをN散布下に保持するか、又はタンナーゼ処理を短くすることによって達成することができる。
【0042】
タンナーゼは簡単な投与によってしおれさせられた茶に加えることができる。しかしながら、微細な霧の状態でタンナーゼを噴霧するのが、それは浸透を助けるので、好ましい。
【0043】
適する条件は、実験によって簡単に決定することができる。良好な結果は、KIKKOMANのタンナーゼ(KIKKOMANは日本の東京のキッコーマン株式会社の商標である)をドール1kg当たり1〜100mg、好ましくはドール1kg当たり10〜80mg、しかしより好ましくはドール1kg当たり40〜80mg、の量で使用して得られた。注:KIKKOMANのタンナーゼは50,000タンナーゼ活性単位/gを有する。
【0044】
発酵は、4.0乃至5.5の範囲内のpHで行われるのが好ましい。発酵温度は、15乃至40℃の範囲内であるのが好ましい。発酵は、30乃至150分間の範囲内で行われるのが好ましく、105乃至120分間の範囲内で行われるのがより好ましい。しかしながら、伝統的紅茶製造からの第2の逸脱において、過酸化水素は、内部発生ペルオキシダーゼを活性化するように(又は少なくとも大幅にその活性を向上させるように)、発酵工程中に没食子酸及びテアフラビンを生成させるのに十分な時間の後、添加される。
【0045】
茶は、天然ペルオキシダーゼを高濃度で含むことが知られている。また、スラリー系中に過酸化水素を添加することによって天然ペルオキシダーゼが活性化され得る(又はその活性を向上させることができる)ことも知られている。J. Sci. Food Agric. 32巻 920−932頁(Dix., 1981)は、そのような系及びプロセスを開示している。この論文は、ペルオキシダーゼは茶のポリフェノール類を酸化させてテアフラビン類及びテアルビゲン類(これらは「通常の」発酵下に製造されるものと類似であるかもしれないし異なるかもしれない)を形成することができることに言及している。しかしながら、その論文は、実施されている化学反応に関して詳細な解釈を提供していない。
【0046】
本発明者らは、内部発生ペルオキシダーゼが、カテキン類をテアフラビン類とテアルビゲン類とに酸化し、テアフラビン類をテアルビゲン類に転化し、そして、内部発生ポリフェノールオキシダーゼとは異なり、容易に没食子酸を酸化する潜在能力を有することを見出した。これらの反応の組み合わせは、冷水中に可溶性のかなりの量の着色された化合物を生成する。ここに含まれる化学反応は図2中に示されている。
【0047】
過酸化水素は、内部発生ペルオキシダーゼを活性化し、そしてタンナーゼ処理によって遊離した没食子酸を酸化するのに十分な量で添加される。当業者はそれを実験によって決定することができる。しかしながら、本発明者らは、ドール1kg当たり2.0乃至2.5%の過酸化水素を100乃至200mlを使用することを好むが、しかし好ましくはドール1kg当たり2.0%の過酸化水素の160mlである。茶の製造の通常の条件下では、過酸化水素の低い内部発生濃度とカタラーゼの高い活性のために、ペルオキシダーゼは概ね不活性である。測定は、添加された全ての過酸化水素がこのプロセス中に消費され、最終の製造された茶中には全く残っていないことを示した。前述の米国特許第4,051,264号中に開示されている発見とは対照的に、本発明者らは、タンナーゼ処理とそれに続く過酸化物のその後の活性化の組み合わせが、良好な色と許容可能な風味を与える生成物の製造に対して重要であることを見出した。タンナーゼ処理だけを施された生成物は、「酸っぱい」又は「金属的な」特徴を有した。
【0048】
予想されたように、本発明の冷水浸出葉茶から製造された飲料の色及び風味特性は、原料、即ち、茶葉の源と品質に大きく依存する。本発明者らは、標準的原料、即ち、緑葉茶1kg当たり1100の新芽を越える量の範囲内で工場に送り届けられた2の葉と1の芽を、本発明の方法に従って加工して非常に良好な色と風味を与えることができることを見出した。しかしながら、色と風味をさらに改良する努力中に、本発明者らは、驚くべきことに、両方に対するかなりの改良がより成熟した葉を使用することによって達成できることを見出した。
【0049】
茶は、品質と収量を最適化するために、一般的に、17日間サイクルで2の葉と1の芽として収穫される。サイクルを伸ばすことは、葉がより成熟し、そしてそれらの化学組成が少し異なることを意味する。その場合、追加分の成長のために茶植物のより大きい部分を摘み取る必要がある。そのような収穫計画は、茶1ヘクタールあたりの収量を増加させ、そして従って生産性を改善するが、収穫された植物材料はより長い茎とより高い茎対葉比率を有する傾向がある。
【0050】
成熟した茶葉材料から製造された紅茶は、17日サイクルで収穫される2の葉と1の芽の茶部分から製造された紅茶よりも、浸出後着色が少なくより薄くなる傾向がある。しかしながら、本発明者らは、驚くべきことに、成熟した葉茶、即ち、30乃至50日のサイクルで3乃至5の葉、しかし好ましくは4の葉、と1の芽で収穫された茶葉が使用されるとき、冷水浸出性能のかなりの増加、そして従って色と風味の改善が存在することを見出した。
【0051】
理論によって縛られることを望まないが、成熟した葉材料(柄(stalk)を含む)は標準的な葉よりも高濃度のペルオキシダーゼを含み、このペルオキシダーゼが熟成カスケード(maturation cascade)において重要な役割りを提供すると考えられる。このことは、本発明の方法を実施する際に、過酸化水素が添加されるとき、より多くのペルオキシダーゼが利用可能であることを意味する。その結果として、より多くの色が、強化された過酸化物/ペルオキシダーゼ酸化系によって生成される。
【0052】
本発明の方法は、ここで、以下の実施例と添付の図面を参照しながら説明される。
【実施例】
【0053】
実施例1
実験室規模のプロセス
(a)プロセスの工程
24mlの水中に溶解された60mgのタンナーゼを100gの冷凍されたドールに噴霧した。ドールをその後N雰囲気下に解凍し、20℃に達したら、減圧下(50ミリバール)に60分間置いた。ドールをその後25℃、100%RHで60分間発酵させた。発酵後、ドールに12.5mlの約2%の過酸化水素溶液を噴霧し、減圧下に15分間置き、そしてその後流動床乾燥機(従来的FBD)によって乾燥させた。ドールをタンナーゼで前処理することによってテアフラビンの濃度を増加させることができる。内部発生の茶のペルオキシダーゼを活性化するために過酸化物を添加する。この酵素は、テアフラビン類とタンナーゼによって放出された没食子酸を酸化して、暗色の、冷水可溶性顔料を生じる。
【0054】
発酵の過程は図3に示されている。
【0055】
(b)風味の試験 直ぐ上で記載した方法によって調製された茶から製造された冷水浸出液を、経験を積んだ茶風味鑑定人によって風味試験をした。浸出液は、15℃で5分間200mlのカーボンフィルターで濾された水中で製造した。処理されたサンプルは、「果物に似た特徴、良好な食感、渋みのある味、豊富なこく、低い芳香性物質、良好な色、良好なアイスティー製品、氷に対してもつ」を有すると表現されたが、対照例である標準的紅茶は「月並みである(bland)」と表現された。色、曇り、及び固体分析の結果を以下の表1に示すが、ここで、Lは明るさの目安であり、aはMINOLTA(登録商標)比色計を使用して測定された赤/緑色度の目安である。
【0056】
【表1】

【0057】
実施例2
その他の生成物との色の比較
ドールを上に記載した基本的実験室規模プロセスに従って処理した(60mgのタンナーゼ、過酸化物添加後直ちに乾燥)。この生成物から得られた液の色を、市販の製品(SMOOTHBLEND(登録商標))及びケニア(Kenyan)茶葉の標準的発酵から調製された茶サンプルから得られたものと比較した(全て2.27gの紅茶/200mlの冷やされた水道水で、5分間の浸出)。結果を以下の表2にまとめる。注:これらの値は水道水浸出についてのものであり、これは蒸留水中での浸出よりも暗い色を生じる。
【0058】
【表2】

【0059】
これらの結果は、本発明のタンナーゼ/過酸化物処理が、処理されていないケニア茶又はSMOOTHBLEND(登録商標)製品から得られるものよりも、有意により明るく、より赤く、そしてより黄色い色を有する液を与えたことを示している。
【0060】
実施例3
標準、タンナーゼのみ、タンナーゼ過酸化物(異なる添加時間)プロセスの比較
浸出液を、紅茶標準品、タンナーゼ処理された紅茶、タンナーゼ−過酸化物処理された紅茶(過酸化物は60分間の発酵後に添加された)、及びタンナーゼ−過酸化物処理された紅茶(t=0の時点で過酸化物は添加された)のサンプルから製造した。各々の場合において、2.27gの茶を室温の200mlのHIGHLAND SPRING(登録商標)の炭酸の入っていない湧水中で5分間浸出させた。各々の色特性をMINOLTA透過型比色計を使用して測定した。結果を図4中に示す。
【0061】
これらの結果と生成物の味利きは、タンナーゼ処理と、部分的発酵後の、過酸化水素の添加の組み合わせは色と風味の放出を最大化するのに必要であることを示している。タンナーゼのみのサンプルは、増加した没食子酸の濃度に由来すると考えられる「酸っぱい」又は「金属的な」風味を有することが観察された。
【0062】
上述の実験室規模のプロセスを繰り返し、さらに、タンナーゼを添加しなかったが、その代わりにタンナーゼによって放出されるものに等しい量の没食子酸を過酸化水素の添加の前に添加した実験との比較を行った。処理された生成物から得られる液の色を、MINOLTA(登録商標)比色計を使用して測定した。結果を以下の表3に示すが、ここで、Lは明るさの目安であり、aは赤/緑色度の目安であり、そしてbは黄/青色度の目安である。
【0063】
【表3】

【0064】
この実験は、没食子酸のみの添加は、低温で浸出される色/風味を生成するのに不十分であることを示している。
【0065】
実施例4
タンナーゼの有効性を最適化するための減圧の使用の研究
以下に記載する実験を幾つかの標準化された材料と方法を使用して行った。完全さのために、これらは以下の通りである。
【0066】
材料
実験は、Mabroukie工場で一晩しおれさせられ、ドライアイス上で冷凍されて英国へ空輸された、BBK(Brooke Bond Kenya)クローン35のケニア葉を使用して行った。この葉を、使用するまで−80℃で冷凍貯蔵した。タンナーゼは、日本のキッコーマン株式会社からのものと、ウェールズのBiocatalysts Ltd.からの「Macer8 W」(登録商標)であった。
【0067】
タンナーゼ処理
ドールのバッチをBBK35の冷凍された葉から調製し、−80℃で貯蔵した。バッチの一部を初期のカテキン組成について分析し、残りを実験において使用した。実験は、様々な量のドール(8g(標準的実験用)乃至100g(スケールアップされた実験用))を使用して行った。8gより多くが使用された場合、タンナーゼ溶液の体積は適切にスケールアップされた。8gのドールをN気流下に室温まで解凍した。
【0068】
タンナーゼ処理後、幾つかのサンプルをTEACRAFT(登録商標)制御環境チャンバー中において、25℃、100%RHで2時間まで発酵させた。茶は、TEACRAFT(登録商標)流動床乾燥機中において、120℃の空気入口温度で5分間、その後90℃で20分間乾燥させた。適当な時間に、ドールの一部を取り出し、液体窒素中で直ちに冷凍し、分析まで−80℃で貯蔵した。
【0069】
これについての1つの変更において、約5mgのタンナーゼ(結果を見よ)を含む溶液(1〜2ml)をその後均一な散布が達成されるように試みて、ドール上にピペットで移した。フラスコを減圧ラインに45乃至60分間接続した。初めは、卓上真空タップ(bench top vacuum tap)を使用したが、後の実験においては、より強力な真空を提供するので、EDWARDS(登録商標)真空ポンプを使用した。
【0070】
ポリフェノールの分析
1gのドールを40mlの70%(v/v)水性メタノール中で30分間還流させた。冷却後、50mmのナイロンメッシュを通して濾過することによって抽出物を葉から分離し、それらの体積を測定した。200μlのアリコートをその後800μlの酸化防止剤溶媒中に添加し、その後、ダイオードアレー検出(diode array detection)を使用する逆相(reverse phase)HPLCによって分析した。
【0071】
乾燥重量の測定
ドールサンプルの乾燥重量は、100℃で一晩乾燥した後の質量差によって決定した。結果は乾燥重量基準で表される。なぜならば、水分はN撒布中に変化し、そして続くタンナーゼの添加は生の重量基準を信頼できなくするからである。
【0072】
茶浸出液の調製
浸出液を、1%(w/v)茶固体、5分間の浸出時間で調製した。
【0073】
実施例4a
固体状態のドールに対するタンナーゼの有効性
第1の実験において、N下に解凍した後、8gのドールを(卓上真空テープを使用して)減圧下に保持し、そして1mlのタンナーゼ溶液をドール上にピペットで移し(5mg/mlタンナーゼ、31.25μg(ドール))、そして60分間放置した。この処理の前と後にカテキン組成を測定した。結果を以下の表4に示す。
【0074】
【表4】

【0075】
60分後残留EGCGはわずか5μモル/g(DW)であり、脱没食子酸化はほとんど完全に終了した。EGCGとECGの減少(合計−198μモル/g(DW))は、没食子酸の増加(+200μモル/g(DW))によって正確に反映された。しかしながら、幾らかの発酵がこのプロセス中に生じた証拠もあり、13μモル/g(DW)のTFが形成し、そしてEGCとECの増加はEGCGの減少から予想されたほど高くなく、そしてECはECGCとEDGの減少から予想されたほど高くなかった。没食子酸化されたテアフラビンは存在しなかった。TFの増加は、ECG/EGCGではなく、EC/ECGの欠如を説明し、これはある程度のテアルビギン類(thearubigins)が同様に形成されたことを示唆するものである。これらの結果は、ある程度の発酵がタンナーゼ処理中に起こっていること、及びおそらく少量の没食子酸化されたテアフラビンが形成され、そしてその後脱没食子酸化されることを示している。ある程度の発酵が減圧下に存在したことは驚くべきことであったが、減圧が発酵を防ぐのに十分に強くなかったか、又は装置が完全には気密でなかったかもしれない。しかしながら、これは、タンナーゼの減圧浸透が、没食子酸化されたカテキンの脱没食子酸化において非常に有効であることを証明している。
【0076】
次の実験においては、タンナーゼ処理に続く固体状態ドールにおける発酵中に(カテキンの酸化の経過を見守るために)サンプルを採取することができるように、プロセスをスケールアップした。ドール(25g)をN下に解凍し、6mlの水中に溶解された15mgのタンナーゼで処理し、そしてその後減圧下に60分間保持した。この処理の終わりに、ドールを制御された環境のキャビネットに移し、そして25℃、100%RH(相対湿度)で2時間発酵させた。発酵の経過を見守るために、サンプルを30分間隔で採取した。結果を以下の表5に示す。
【0077】
【表5】

【0078】
タンナーゼ処理の60分後に残っているEGCGはわずか9μモルであり、ここでもまた脱没食子酸化はほとんど完全であった。
【0079】
没食子酸の増加はEGCG/ECGの組み合わされた減少を説明しているようである。しかしながら、EGCとECの増加はEGCGとECGの減少を説明せず、このことは再びある程度の発酵がタンナーゼ処理中に起こったことを示しており、実際にある程度のテアフラビンが形成した。この実験についての発酵の経過を図5に示す(図面を参照のこと)。EGCとECは90分間で完全に酸化され、テアフラビン濃度は、60μモル/g DW(即ち、乾燥重量)を超えたところでピークだった。
【0080】
固体状態ドールのタンナーゼ前処理された発酵に従うテアフラビンの増強を、図6において、ドールの同じバッチから調製された標準的茶と比較する(図面を参照のこと)。
【0081】
いずれの場合においても、これらの実験は、減圧浸透が、没食子酸カテキンを脱没食子酸化するタンナーゼの能力を増強し、そして発酵中の高濃度のテアフラビンの形成に適する原料を提供することを示している。しかしながら、ある程度の発酵がタンナーゼ処理中に起こっている。
【0082】
実施例4b
増強されたテアフラビン濃度を有する紅茶の調製
増強されたテアフラビン濃度を有する発酵されたドールが生成された後、次の段階は、浸出の特性を評価できるようにタンナーゼ処理された紅茶を製造するためにこの方法を使用することであった。このプロセスは、材料を発酵後流動床乾燥できるように、100gのドールまでさらにスケールアップされた。ドール(100g)をN下に解凍し、60mgのタンナーゼを含む24mlのHOを添加した。ドールをその後EDWARDS(登録商標)真空ポンプを使用して60分間減圧下に置いた。この時間の後、ドールを制御された環境のチャンバーに入れ、25℃、100%RHで120分間発酵させた。この後、ドールを流動床乾燥させた。茶の繰り返し試験用のバッチも調製したが、タンナーゼは添加しなかった。タンナーゼ処理の前と後及び発酵後のカテキン濃度を以下の表6に示す。
【0083】
【表6】

【0084】
EGCGの脱没食子酸化はわずか75%の完了であったが、EGCG及びECGの減少とEGC及びECの増加との間に良好な一致があった。さらに、タンナーゼ処理中にテアフラビンの形成はなく、これはポンプによって提供された強力な減圧下に発酵が起こらなかったことを示している。
【0085】
結局、(溶媒抽出によって測定して)TF1においては10倍の増加、そしてTF全体においては4.3倍の増加が、発酵されたドール中において観察された。
【0086】
実施例5
プロセスの最適化
(a)タンナーゼ投与量の最適化
タンナーゼの投与量を変える。ある範囲のサンプルを、5と320mgタンナーゼ/kgの間で、タンナーゼ投与量を増加させながら調製した。結果を以下の表7に示すが、ここで、L、a、及びbは前述の通りである。
【0087】
【表7】

【0088】
これらの結果は、タンナーゼ投与量が増加するにつれて、茶が暗色になり(より低いL値)そして色度(a及びb)が増加することを示している。本発明者らは、aにおける4単位の変化及びbにおける5単位の変化をともなう、40mgと80mgのタンナーゼの使用の間の色度の階段状の変化に気づいた。可溶性固体はタンナーゼ投与量と共に増加し、最大投与量のタンナーゼは、対照例よりも40%より可溶性の固体を与えた。
【0089】
様々なタンナーゼ投与量から得られた、タンナーゼ−過酸化物処理された紅茶の組成を図7及び8に示す。
【0090】
これらの結果から、没食子酸、テアフラビン、及びエピテアフラビン酸(epitheaflavic acid)がタンナーゼ投与量と共に増加し、一方、残留カテキン類及び没食子酸化されたテアフラビン類が減少することは明らかである。
【0091】
(b)さらなる増強
過酸化物投与量の変更
60分間の発酵後上述したように、水の添加と異なる量の過酸化水素の添加の間の比較を行った。1kgのドールに100mlの水中の80mgのタンナーゼを添加し、そして60分間の発酵後に160mlの水又は過酸化水素溶液(30%w/wの28乃至112mlを160mlにした)を添加した。色度の測定を生成物について行い、これらの以下の表8に示す。
【0092】
【表8】

HP1 − 28mlの過酸化物 + 132mlの水;
HP2 − 56mlの過酸化物 + 104mlの水;
HP3 − 112mlの過酸化物 + 48mlの水。
【0093】
過酸化水素の使用の異なる水準の間で色の差はほとんどなかったが、使用量が多くなるにつれて、抽出された固体の水準が減少する兆候があった。
【0094】
過酸化物の添加後の発酵時間の変更
過酸化物の添加後の発酵の長さを0分から60分まで変えた。15分から60分の間でほとんど差は観察されなかったが、添加と即時の火入れ(firing)は浸出液の色のわずかな減少をもたらした。
【0095】
過酸化物の適用後のCTC対CTC無しの影響
標準条件下にサンプルを調製した。色度の測定を生成物について行い、これらを以下の表9に示す。
【0096】
【表9】

【0097】
これは、過酸化物の添加後のCTCの省略がわずかな有害な影響を有することを示す。
【0098】
タンナーゼ適用中の水の体積の影響
水の体積を、60ml水/kgドール中の80mgタンナーゼから160ml水/kgドール中の80mgタンナーゼの間で変えた。色度の測定を生成物について行い、これらを以下の表10に示す。
【0099】
【表10】

【0100】
これらの結果から、浸出性能のための最適水準は100〜120mlであると解釈された。添加される水分を最少に保つために、下限の100が選択された。
【0101】
発酵時間を増加させることの影響
タンナーゼ適用後の発酵時間を105分(標準)から120、135、150分まで増加させた。過酸化物の後の発酵時間は15分間に保った。温度は22°Fで一定に保った。色度の測定を生成物について行い、これらを以下の表11に示す。
【0102】
【表11】

【0103】
これらの結果は、発酵時間が増加するにつれて、浸出性能が増加したことを示している。
【0104】
発酵温度を上昇させることの影響
発酵温度を、22℃、25℃、30℃、35℃、40℃に上昇させた。上記の最も長い発酵時間を使用した(150分間+15分間)。色度の測定を生成物について行い、これらを以下の表12に示す。
【0105】
【表12】

【0106】
これらの結果から、温度が上昇するにつれて性能が増加することは明らかであり、最高30〜35℃までを最適なものとして選択した。なぜならば、これが工場での発酵中に一貫して達成可能な最高温度だからである。
【0107】
複数の過酸化物投与の影響(延長された発酵時間及び上昇させられた温度にて)
標準の過酸化物(56mlの過酸化物+104mlの水)、添加後15分間の発酵。2×半分の過酸化物(28mlの過酸化物+52mlの水)、各々の添加後10分間の発酵。2×標準の過酸化物(56mlの過酸化物+24mlの水)、各々の添加後10分間の発酵。色度の測定を生成物について行い、これらを以下の表13に示す。
【0108】
【表13】

【0109】
これらの結果は、過酸化物の投与量を2倍化は利益を生じるが、標準的投与量を2つに分けて適用すると浸出性能が低下するようであることを示している。
【0110】
実施例6
浸出速度の比較
300ml中1.0gの処理されていない茶とタンナーゼ−過酸化物処理された茶の浸出速度を、様々な時間間隔において445nmでの吸収を測定することによって決定した。これらの試験は、4℃、15℃、25℃、55℃、及び70℃の各々において行った。結果を図7a乃至7eに示す(注:これらの図中のC.I.は「低温浸出」茶、即ち、タンナーゼ−過酸化物処理された茶を意味する)。タンナーゼ−過酸化物処理された茶はより速く浸出させられ、全ての温度においてより大きい程度までであることが分かる。
【0111】
実施例7
成熟した葉茶の加工
成熟した葉茶、即ち、4の葉と1の芽の比率で35日のサイクルで収穫された茶葉材料を、実施例1に記載した実験室規模のプロセス用の原料として使用した。得られた冷水浸出用葉の浸出性能を、MINOLTA(登録商標)比色計を使用して前述したように測定した。結果を以下の表14に示す。
【0112】
【表14】

【0113】
標準的な葉から製造された生成物の典型的な浸出性能と比較したとき、色度において約10L単位の増加が見られ、幾つかの場合において3L単位まで減少した。全ての場合において、成熟した茶葉材料を使用して製造されたサンプルの風味特性は対照例よりも好ましかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷水浸出葉茶を製造する方法であって、緑茶葉をしおれさせる工程、しおれさせられた葉をタンナーゼで処理する工程、タンナーゼ処理されたしおれさせられた葉を没食子酸及びテアフラビンを生成させるのに十分な時間発酵させる工程、内部発生ペルオキシダーゼを活性化するのに十分な量の過酸化水素の存在下に発酵を継続させる工程、及び発酵させた葉材料を乾燥させて冷水浸出可能な葉茶を生成する工程を含む方法。
【請求項2】
しおれさせられた葉が、酸素欠如条件下にタンナーゼ処理される、請求項1の方法。
【請求項3】
タンナーゼが、1kgのドール当たり10乃至80mgの間の濃度で添加される、請求項2の方法。
【請求項4】
しおれさせられた茶葉が、タンナーゼで減圧含浸される、請求項1乃至3のいずれか1請求項の方法。
【請求項5】
過酸化水素が、1kgのドール当たり2.0乃至2.5%の過酸化水素を100乃至200mlという濃度で添加される、請求項1乃至4のいずれか1請求項の方法。
【請求項6】
過酸化水素が、1kgのドール当たり2%の過酸化水素を約160mlという濃度で添加される、請求項5の方法。
【請求項7】
発酵中に没食子酸及びテアフラビンを生成させるのに十分な時間の後、過酸化水素が添加され、それによって内部発生ペルオキシダーゼを活性化させる、請求項5又は6の方法。
【請求項8】
緑茶葉が、成熟した茶葉茶材料を含む、請求項1乃至7のいずれか1請求項の方法。
【請求項9】
前記成熟した茶葉材料が、30乃至50日間のサイクルで収穫された、3乃至5の葉と1の芽から成る茶部分を含む、請求項1乃至8のいずれか1請求項の方法。
【請求項10】
冷水浸出茶生成物中において着色剤種を発生させる方法であって、過酸化水素を、好ましくは緑茶のしおれさせられ、タンナーゼ処理され、発酵させられた葉に、内部発生ペルオキシダーゼがタンナーゼ処理によって遊離された没食子酸を酸化し、そして生成されたテアフラビンを酸化するのに十分な量で添加することを含む、方法。
【請求項11】
緑茶葉をしおれさせ、しおれさせられた葉をタンナーゼで処理し、タンナーゼ処理されたしおれさせられた葉を没食子酸及びテアフラビンを生成させるのに十分な時間発酵させ、内部発生ペルオキシダーゼを活性化するのに十分な量の過酸化水素の存在下に発酵を継続させ、そして発酵させた葉材料を乾燥させて冷水浸出葉茶を生成することによって得られる、冷水浸出葉茶。
【請求項12】
緑茶葉が成熟した茶葉茶材料を含む、請求項10の冷水浸出葉茶。
【請求項13】
請求項10又は11の冷水浸出葉から製造された冷水浸出茶粉末。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9−1】
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【図9−2】
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【図9−3】
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【公開番号】特開2009−291219(P2009−291219A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−219606(P2009−219606)
【出願日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【分割の表示】特願2000−598016(P2000−598016)の分割
【原出願日】平成12年2月8日(2000.2.8)
【出願人】(590003065)ユニリーバー・ナームローゼ・ベンノートシヤープ (494)
【Fターム(参考)】