説明

冷蔵庫

【課題】紫外線照射手段の発光素子及び発光素子を覆うカバーの劣化を抑制し、長寿命化した紫外線照射手段を冷蔵庫内に備えることで、臭い及び/又は菌の除去効果を長期間持続させること。
【解決手段】食品を保存する独立した複数の貯蔵室を設けた冷蔵庫において、紫外線領域に主発光ピークをもつ発光素子70を封入部材に封入したLED66が、野菜室への冷気量を調整する野菜室冷却ダンパの近傍に配置され、LED66はその封入部材がガラス製部材69であり、ガラス製部材69は中心線上に集光させるためのレンズ形状を有し、冷気流路67を形成する容器内に、LED66と、LED66に対向して紫外線照射領域内に配された、保水材65、光触媒、又は水噴霧手段と、を有すること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、臭い及び/又は菌の除去効果を果たす冷蔵庫に係わり、特に、紫外線を照射するLEDを用いて脱臭除菌を行う冷蔵庫に関する。
【背景技術】
【0002】
冷蔵庫内では、様々な種類の食品を保存するため、臭い及び/又は菌が発生しやすくなっている。さらに、冷蔵庫を使用する年数が長くなるほど臭気及び/又は菌が蓄積し、除去が難しくなる。冷蔵庫内に臭い及び/又は菌が蓄積すると、新たに収納した食品の汚染が進行するおそれがある。そのため、この臭い及び/又は菌を除去する技術が数多く開発されている。
【0003】
特に、臭気は除去スピードが速いほど臭いの蓄積を抑制することができるため、臭い、菌の発生源を分解、変性する方法として、活性炭に吸着させる方法、光触媒を作用させる方法、プラズマ放電等で発生させたオゾンを作用させる方法等の様々な方法がある。その中でも、紫外線を水又は光触媒に照射することによって脱臭及び/又は除菌を行う方法は、高い電圧を使う必要が無いため、安全性が高いので、特に汎用性の高い製品の臭い及び/又は菌の除去に適した方法である。
【0004】
紫外線照射について云えば、紫外線のエネルギーは波長が短いほど高くなり、臭い及び/又は菌の除去能力が高くなる反面、オゾンの発生と人体への影響が出るため、安全性に課題がある。一方、紫外線の波長が長いと安全性は確保できるが、紫外線が持つエネルギーが小さくなるため、臭い及び/又は菌を除去する能力が低下してしまう。
【0005】
そこで、長波長の紫外線を集光して光強度を上げることによって安全かつ臭い及び/又は菌の除去能力が高い紫外線を用いた殺菌方法がある(例えば、特許文献1を参照)。この特許文献1によると、350nm〜380nmの波長域に主発光ピークを有するLED発光チップと、この発光チップの発光を集束する集光レンズとを備え、LEDが発光チップの発光を集光レンズで集光して放射することによって、ウイルスを不活性化して有色の液体を殺菌する紫外線殺菌装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−161095号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記の特許文献1に示すように、長波長の紫外線を集光することによってエネルギーを高くし、殺菌に用いる方法は安全性及び殺菌効果が高くなるが、上記の特許文献1に示すように、LEDを用いる場合、エネルギーの高い光を長時間照射すると発光素子および発光部を覆うプラスチック性部材の劣化が起こる。発光素子や発光部を覆うプラスチック性部材が劣化するとLEDの光強度が低下し、紫外線のエネルギーが低くなるため、臭い及び/又は菌の除去効果が低下するという課題が生じる。
【0008】
上記の特許文献1においては、様々な殺菌効果を検証しているが、30分までの紫外線照射までしか実施しておらず、長期間の使用については配慮されていない。
【0009】
本発明の目的は、紫外線照射手段の発光素子及び発光部を覆う部材の劣化を抑制し、長寿命化した紫外線照射手段を冷蔵庫内に備えることで、臭い及び/又は菌の除去効果を長期間持続させることができる冷蔵庫を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するために、本発明は主として次のような構成を採用する。
食品を保存する独立した複数の貯蔵室を設けた冷蔵庫において、紫外線領域に主発光ピークをもつ発光素子を封入部材に封入したLEDが、前記貯蔵室を冷却する冷気流路内に配置され、前記LEDはその封入部材がガラス製部材であり、前記ガラス製部材は中心線上に集光させるためのレンズ形状を有し、前記冷気流路を形成する容器内に、前記LEDと、前記LEDに対向して紫外線照射領域内に配された、保水材、光触媒、又は水噴霧手段と、を有する構成とする。
【0011】
また、前記冷蔵庫において、前記冷気流路を形成する容器が、野菜室への冷気量を調整する野菜室冷却ダンパの近傍に配置される構成とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、紫外線を放射するLED素子をガラスの部材内に封入することで、従来のプラスチックよりも長寿命とすることができ、さらに、冷蔵庫内の低温下で使用することによって放熱が効率的となるため、素子の劣化を抑制し、臭い及び/又は菌の除去効果が継続する冷蔵庫を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態に係る冷蔵庫の正面外形を示す概略図である。
【図2】本実施形態に係る冷蔵庫の庫内の構成を表す図1のX−X断面図である。
【図3】本実施形態に係る冷蔵庫におけるOHラジカル発生装置と冷気流路の要部拡大図である。
【図4】本実施形態に関するOHラジカル発生装置内のガラスUVLEDの詳細構造を示す図である。
【図5】本実施形態に関するガラスUVLEDと従来のプラスチック容器封入のLEDの寿命を比較する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施形態に係る冷蔵庫について、図1〜図5を参照しながら以下詳細に説明する。まず、図1と図2を用いて本発明の実施形態に係る冷蔵庫の全体構成を説明する。図1は本発明の実施形態に係る冷蔵庫の正面外形を示す概略図であり、図2は本実施形態に係る冷蔵庫の庫内の構成を表す図1のX−X断面図である。図1と図2において、1は冷蔵庫、2は冷蔵室(冷蔵温度帯室)、3は製氷室(冷凍温度帯室)、4は上段冷凍室(冷凍温度帯室)、5は下段冷凍室(冷凍温度帯室)、6は野菜室(冷蔵温度帯室)、7は冷却器、8は冷却器収納室、9は庫内送風機(送風機)、10は断熱箱体、11は冷蔵室送風ダクト、12は上段冷凍室送風ダクト、13は冷気ダクト、15は冷蔵室ダクト、17は冷凍室戻り口、18は野菜室戻りダクト、19は機械室、20は冷蔵室冷却ダンパ、21は蒸発皿、22は除霜ヒータ、23は樋、24は圧縮機、27はOHラジカル発生装置、28,29は断熱仕切壁、31は制御基板、33は冷蔵室温度センサ、34は冷凍室温度センサ、35は冷却器温度センサ、50は冷凍室冷却ダンパ、59は野菜室冷却ダンパの開口部、60は冷凍室、61は野菜室冷却ダンパ、62はドレイン水排水路、63は水供給手段、64は水生成手段、をそれぞれ表す。
【0015】
図1において、本実施形態に係る冷蔵庫1は、上方から、冷蔵室2、製氷室3、上段冷凍室4、下段冷凍室5、野菜室6から構成されている。なお、以下の説明では、製氷室3と上段冷凍室4と下段冷凍室5の総称として冷凍室60とも称する。
【0016】
冷蔵室2は前方側に、左右に分割された観音開きの冷蔵室扉2a,2bを備え、製氷室3、上段冷凍室4、下段冷凍室5、野菜室6は、それぞれ引き出し式の製氷室扉3a、上段冷凍室扉4a、下段冷凍室扉5a、野菜室扉6aを備えている。以下の説明では、冷蔵室扉2a,2b,製氷室扉3a、上段冷凍室扉4a、下段冷凍室扉5a、野菜室扉6aを単に扉2a,2b,3a,4a,5a,6aと称する。
【0017】
また、冷蔵庫1は、扉2a,2b,3a,4a,5a,6aの各扉の開閉状態をそれぞれ検知する図示しない扉センサと、扉開放状態と判定された状態が所定時間、例えば、1分間以上継続された場合に、使用者に報知する図示しないアラームと、冷蔵室2及び野菜室6の温度設定と冷凍室60の温度設定をする図示しない温度設定器等を備えている。
【0018】
図2において、冷蔵庫1の庫外と庫内は、発泡断熱材(発泡ポリウレタン)を充填することにより形成される断熱箱体10により隔てられている。冷蔵庫1の断熱箱体10は複数の真空断熱材25を実装している。
【0019】
庫内は、断熱仕切壁28により、冷蔵室2と上段冷凍室4及び製氷室3(図1参照、図2中で製氷室3は図示されていない)とが隔てられ、断熱仕切壁29により、下段冷凍室5と野菜室6とが隔てられている。扉2a,2b(図1参照)の庫内側には複数の扉ポケット32が備えられている。また、冷蔵室2は複数の棚36により縦方向に複数の貯蔵スペースに区画されている。
【0020】
図2に示すように、上段冷凍室4、下段冷凍室5及び野菜室6は、それぞれの室の前方に備えられた扉3a,4a,5a,6aと一体に、収納容器3b,4b,5b,6bがそれぞれ設けられており、扉4a,5a,6aの図示しない取手部に手を掛けて手前側に引き出すことにより収納容器4b,5b,6bが引き出せるようになっている。図1に示す製氷室3にも同様に、扉3aと一体に、図示しない収納容器(図2で3bとして表示)が設けられ、扉3aの図示しない取手部に手を掛けて手前側に引き出すことにより収納容器3bが引き出せるようになっている。
【0021】
図2に示すように(適宜に図3を参照)、野菜室6への野菜室冷却ダンパ61の開口部59の下に脱臭除菌装置であるOHラジカル発生装置27を配置している。OHラジカル発生装置27の冷気取り入れ口は、野菜室冷却ダンパ61の開口部59と同等の広さになっており、さらに、OHラジカル発生装置27から野菜室6へ冷気が吹き出す際に、野菜室6の上方部から下方部の全体に冷気が行き渡るように、図3に示す冷却流路67の水平長を短くすることが望ましい。
【0022】
また、冷却器7は下段冷凍室5の略背部に備えられた冷却器収納室8内に設けられており、冷却器7の上方に設けられた庫内送風機(送風機)9により冷却器7と熱交換して冷やされた空気(以下、冷却器7で冷やされてできた低温空気を冷気と称する)が冷蔵室送風ダクト11、上段冷凍室送風ダクト12、下段冷凍室送風ダクトである冷気ダクト13及び図示しない製氷室送風ダクトを介して、冷蔵室2、上段冷凍室4、下段冷凍室5、製氷室3の各室へ送られる。各室への送風は冷蔵室冷却ダンパ20と野菜室冷却ダンパ61と冷凍室冷却ダンパ50の開閉により制御される。野菜室6への送風の一例は、冷却器7、送風機7、不図示の送風ダクト、野菜室冷却ダンパ61、開口部59、冷気流路67(図3参照)、野菜室6、戻り流路6d、野菜室戻りダクト18、を順に流れて循環経路を形成する。
【0023】
冷却器7及びその周辺の冷却器収納室8の壁に付着した霜が除霜によって融解することで生じた除霜水は、冷却器収納室8の下部に備えられた樋23に流入した後に、ドレイン水排水路62を介して機械室19に配された蒸発皿21に達し、圧縮機24、及び機械室19内に配設される図示しない凝縮器の発熱により蒸発させられる。
【0024】
また、冷却器7を正面から見て上部には冷却器7に取り付けられた冷却器温度センサ35、冷蔵室2には冷蔵室温度センサ33、下段冷凍室5には冷凍室温度センサ34がそれぞれ備えられており、それぞれ冷却器7の温度(以下、冷却器温度と称する)、冷蔵室2の温度(以下、冷蔵室温度と称する)、下段冷凍室5の温度(以下、冷凍室温度と称する)を検知できるようになっている。さらに、冷蔵庫1は、庫外の温度を検知する図示しない外気温度センサを備えており、野菜室6にも野菜室温度センサ33aが配置されている。なお、本実施形態では、イソブタンを冷媒として用い、冷媒封入量は約80gであり少量にしている。
【0025】
冷蔵庫1の天井壁上面側にはCPU、ROM及びRAM等のメモリ、インターフェース回路等を搭載した制御基板31が配置されており(図2を参照)、制御基板31は、上述した外気温度センサと、冷却器温度センサ35と、冷蔵室温度センサ33と、野菜室温度センサ33aと、冷凍室温度センサ34と、扉2a,2b,3a,4a,5a,6aの各扉の開閉状態をそれぞれ検知する上述した扉センサと、冷蔵室2内壁に設けられた図示しない温度設定器と、下段冷凍室5内壁に設けられた図示しない温度設定器等と、それぞれ接続されている。さらに、制御基板31は、上記のROMにあらかじめ搭載されたプログラムにより、圧縮機24のON/OFF等の制御、冷蔵室冷却ダンパ20及び冷凍室冷却ダンパ50を個別に駆動するそれぞれのアクチュエータ(不図示)の制御、庫内送風機9のON/OFF制御と回転速度制御、上述した扉開放状態を報知するアラームのON/OFF等の制御を行う。
【0026】
次に、本発明の実施形態に係る冷蔵庫における紫外線照射による脱臭除菌を行うOHラジカル発生装置について、図3と図4を参照しながら以下説明する。図3は本実施形態に係る冷蔵庫におけるOHラジカル発生装置と冷気流路の要部拡大図であり、図4は本実施形態に関するOHラジカル発生装置内のガラスUVLEDの詳細構造を示す図である。
【0027】
図3と図4において、27はOHラジカル発生装置、63は水供給手段、65は保水手段、66はガラスUVLED、67は冷気流路、68aは冷却器からOHラジカル発生装置内への冷気の流れ、68bはOHラジカル発生装置冷気流路内の冷気の流れ、69はLED素子を封入したレンズ型ガラス製カバー、70はLED素子、71は台座、72は陰極側リード線、73は陽極側リード線、をそれぞれ表す。
【0028】
図3において、野菜室5へ冷気を吹き出す野菜室冷却ダンパ61の開口部59の近傍に冷気流路67を設け、冷気が上から下へ流れるため、脱臭除菌装置であるOHラジカル発生装置27の冷気流路67の冷気取入れ口は上向きの構造を備えている。また、冷気流路67内にLED素子70(図4を参照)をガラス69内に封入し、紫外線を発生させるLED66(以下、ガラスUVLEDと称する)と保水手段(保水材とも称する)65を備えている。
【0029】
ここで、脱臭と除菌の作用について述べると、レンズ型ガラス製カバーを含めた紫外線照射手段であるLED66が、保水手段65に含まれる水に紫外線を照射して反応させることによって、OHラジカルを発生させ、このOHラジカルが冷気流れ68bとともに野菜室6の食品に注がれることでOHラジカルの分解力によって除菌並びに脱臭効果が奏されるのであり、さらに、冷気流路67を通る循環する冷気中の菌に対して紫外線照射による殺菌作用も奏させることができる。
【0030】
また、図3に示す冷気流路67を形成するプラスチック容器のLED66に対向する壁面に光触媒を塗布する構成(保水材に代えて)を採用すると、紫外線が光触媒にエネルギを与えることで、光触媒の主として脱臭機能を高めることができ、この光触媒近傍を通る循環する冷気に含まれる臭気を除去する脱臭機能を高めることができる。この際に、紫外線による除菌作用も奏し得る。さらに、光触媒を担持したフィルタを図3に示す冷気流路67中にに配置する構成(保水材を用いずに)を採用すると、紫外線の照射によってフィルタ中の光触媒の脱臭機能が一層向上し、フィルタ中を通過する循環冷気の脱臭機能を奏させることができる。このように、冷気流路67用の容器に塗布した光触媒又は光触媒を担持したフィルタを使用することで、野菜室の食品に対して脱臭と除菌作用を奏するのである。
【0031】
図3に示す本実施形態では、ガラスUVLED66の下方部に保水手段65及び水供給手段63を備えた構成例を示しているが、これに限らず、水噴霧手段を備えてもよい。また、紫外線を照射して脱臭および/又は抗菌の作用を奏させる、例えば、冷気流路67用の容器に光触媒を塗布した構造、光触媒を塗布した部材を冷気流路67用の容器に取り付ける構造、又は光触媒を担持したフィルタを冷気流路中に配置する構造、であっても良い。さらに、図3に示す少なくともLEDを含む冷却流路形成用容器を野菜室冷却ダンパ61の直下流側に配置することに代えて、冷却ファン9の近傍に配置して全貯蔵室の脱臭除菌を図るようにしてもよい。
【0032】
また、図4で説明するが本実施形態ではレンズ型ガラスで紫外線を集光しているため、野菜室を循環する冷気流路67中であって、上述した保水材又は光触媒の配置の直後に、臭いおよび/又は菌を収集させる部材、例えばハニカム形状の部材又は布などをガラスUVLED66の集中照射範囲内に配置する構成をとると、紫外線を効率的に作用させることができるため、脱臭及び/又は抗菌の効果をさらに向上させることができる。
【0033】
さらに、本実施形態では紫外線を照射するLEDを想定して説明しているが、可視光範囲の主発光ピークを持つ素子をガラス製部材の中に封入したLEDを、可視光型の触媒に作用させることで、脱臭又は抗菌の効果が得られるため、LEDを可視光照射の素子に変更してもよい。
【0034】
図4においてガラスUVLEDの拡大した構成が示されており、図4の図示例では、紫外線発光素子70はガラス69の容器内に封入されており、劣化が少なく且つ導電性の高い銅線を電源に接続する構造となっている。また、紫外線発光素子70を覆うガラス69は略球面となっており、先端部が最も厚みが大きく、集光レンズの機能を奏する形状となっている。紫外線の集光の中心線上で紫外線放射強度が最も強くなる。また、紫外線発光素子70をガラスの中に埋設してしまうと放熱効率が悪くなるため、ガラス69の容器内に紫外線発光素子を封入した形状となっている。
【0035】
また、LEDは、周囲環境の温度が低いほど出力が大きくなり寿命も向上する性質があり、冷蔵庫が低温条件となっていることから、ガラスUVLED66を冷蔵庫内に設置することで素子の放熱効率が向上し、室温条件で使用するよりもさらに長寿命化することが可能となる。
【0036】
また、図2と図3においては、野菜室6の冷気流路内にガラスUVLED66を備えているが、冷蔵庫内全体に冷気を送る冷却ファン7の近傍にガラスUVLED66を備える冷気流路を設けることにより、庫内全体の脱臭効果が向上するので、冷却ファン7の近傍にガラスUVLED66を備えてもよい。また、ガラス容器に代えて、プラスチック容器に発光素子を封入したLEDの場合は、ガラスの放熱特性(熱伝導性の良さ)に対抗してガラス容器の場合よりも容器を薄肉にすることによって、ガラス容器と同様の効果を得ることができる。上述したように、LEDは、周囲環境の温度が低いほど出力が大きくなり寿命も延びるので、冷蔵庫内の冷却器7近傍にLED66を設けることによって、寿命と光の出力について大きく向上させることができる。
【0037】
次に、本実施形態の冷蔵庫の奏する効果について図5を参照しながら以下説明する。図5は、ガラスUVLEDと従来のプラスチック容器に発光素子を封入したLEDとの寿命を比較したグラフである。図5において、74はガラス製の部材に発光素子を封入したLEDを750時間運転したときの出力特性、75は従来の樹脂製の部材に発光素子を封入したLEDを750時間運転したときの出力特性を示す。
【0038】
図5から分かるように、プラスチック製の部材に発光素子を封入したLEDの場合、光の屈折率が高いため、前半の300時間までは出力が100%に近い値となっているが、時間が経過するにつれてLED自体の温度が高くなるため、プラスチックの部材とLED素子の劣化が進行する。特に、プラスチックは温度による体積変化が激しいため、劣化が進行しやすくなる。また、LED素子は温度に弱いため、750時間後は出力が50%付近まで低下してしまう。
【0039】
一方、ガラス製の部材に発光素子を封入したLEDは、ガラスは耐熱性に優れた素材であるため、劣化の要因はLED素子のみとなる。したがって、750時間後でも出力は80%まで保たれている。
【0040】
また、図5の実験は室温環境を想定して20℃の環境で試験をしているが、冷蔵庫は10℃以下の環境となるため、放熱性が向上する。従って、温度による素子の劣化を低減させることができるため、ガラス製部材に発光部材を封入したLEDの出力特性74は、初期出力の80%以上になると考えられる。このことから、プラスチックに比べ、ガラス製の部材に発光素子を封入した方がLEDの寿命が長くなり、脱臭及び/又は除菌効果を継続的に得ることが可能となる。
【0041】
本発明の実施形態について、より具体的な構成例を説明すると、野菜室冷却ダンパ下流側の冷却流路には、紫外線領域に主発光ピークを持ってガラス製部材内に封入された発光素子を有するLEDと、このLEDに対向する位置に配された保水材を備え、冷気流路は、OHラジカルが冷気流路用のプラスチック容器に付着せず、OHラジカルが冷気に担持されやすい風速、例えば、0.5m/s以上の風速を有するようにすること。また、発光素子を封入するガラス製部材の形状は、放射する紫外線を集光させることが容易となる図3と図4に示すような砲弾形状(先端が断面円弧形状の凸型)であること。
【0042】
また、冷却流路には、紫外線領域に主発光ピークを持ってガラス製部材内に封入された発光素子を有するLEDと、このLEDに対向する位置に配された光触媒を備え、冷気流路は、冷気流路内の温度や湿度の変動が大きい位置である野菜室冷却ダンパの吹き出し口の直下流側に設けること。光触媒は、冷却流路構成部材(プラスチック容器)に塗布する又は練り込む形状とすること、または光触媒を有するフィルタ形状とすること。また、LEDの先端部と光触媒(保水材でも同様)との間隔は、紫外線が光触媒に有効的に作用する距離である20mm以内とすること(LED素子の発光強度が1mW/cm以上である条件下で)。
【0043】
以上説明したように、本発明の実施形態に関する上述した構成を採用することによって、次のような効果を奏させることができる。即ち、紫外線を放射するLED素子をガラス製の部材内に封入することで、従来のプラスチック部材内封入のものよりも長寿命となり、さらに冷蔵庫内で使用することによって放熱が効率的であるため、LED素子の劣化を抑制し、臭い及び/又は菌の除去効果が長期間継続する冷蔵庫を得ることができる。
【符号の説明】
【0044】
1 冷蔵庫
2 冷蔵室(冷蔵温度帯室)
3 製氷室(冷凍温度帯室)
4 上段冷凍室(冷凍温度帯室)
5 下段冷凍室(冷凍温度帯室)
6 野菜室(冷蔵温度帯室)
7 冷却器
8 冷却器収納室
9 庫内送風機(送風機)
10 断熱箱体
11 冷蔵室送風ダクト
12 上段冷凍室送風ダクト
13 冷気ダクト
15 冷蔵室ダクト
17 冷凍室戻り口
18 野菜室戻りダクト
19 機械室
20 冷蔵室冷却ダンパ
21 蒸発皿
22 除霜ヒータ
23 樋
24 圧縮機
27 OHラジカル発生装置
28,29 断熱仕切壁
31 制御基板
33 冷蔵室温度センサ
33a 野菜室温度センサ
34 冷凍室温度センサ
35 冷却器温度センサ
50 冷凍室冷却ダンパ
59 野菜室冷却ダンパの開口部
60 冷凍室
61 野菜室冷却ダンパ
62 ドレイン水排水路
63 水供給手段
64 水生成手段
65 保水手段(保水材)
66 ガラスUVLED
67 冷気流路
68a 冷却器からOHラジカル発生装置内への冷気の流れ
68b OHラジカル発生装置冷気流路内の冷気の流れ
69 LED素子を封入したレンズ型ガラス製カバー
70 LED素子
71 台座
72 陰極側リード線
73 陽極側リード線
74 ガラス製部材に発光素子を封入したLEDを750時間運転したときの出力特性
75 樹脂製部材に発光素子を封入したLEDを750時間運転したときの出力特性

【特許請求の範囲】
【請求項1】
食品を保存する独立した複数の貯蔵室を設けた冷蔵庫において、
紫外線領域に主発光ピークをもつ発光素子を封入部材に封入したLEDが、前記貯蔵室を冷却する冷気流路内に配置され、
前記LEDはその封入部材がガラス製部材であり、前記ガラス製部材は中心線上に集光させるためのレンズ形状を有し、
前記冷気流路を形成する容器内に、前記LEDと、前記LEDに対向して紫外線照射領域内に配された、保水材、光触媒、又は水噴霧手段と、を有する
ことを特徴とする冷蔵庫。
【請求項2】
請求項1において、
前記冷気流路を形成する容器が、野菜室への冷気量を調整する野菜室冷却ダンパの近傍に配置されることを特徴とする冷蔵庫。
【請求項3】
請求項1において、
前記冷気流路を形成する容器が、前記独立した複数の貯蔵室全体に冷気を送る冷却ファンの近傍に配置されることを特徴とする冷蔵庫。
【請求項4】
請求項1、2または3において、
前記発光素子と前記ガラス製部材とが接触しない封入形状であることを特徴とする冷蔵庫。
【請求項5】
請求項2において、
前記保水材は、圧縮機の設置された機械室に設けられた水生成手段から水を供給されて保水するものであり、前記LEDの発光素子からの紫外線照射によって前記保水材の水が反応してOHラジカルを発生させる
ことを特徴とする冷蔵庫。
【請求項6】
請求項2において、
前記光触媒は、前記LEDの発光素子の紫外線照射範囲内で前記冷気流路を形成する容器の内面に塗布されたもの、または、光触媒を担持したフィルタであって前記冷気流路を形成する容器に配置されたもの、である
ことを特徴とする冷蔵庫。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−78053(P2012−78053A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−225654(P2010−225654)
【出願日】平成22年10月5日(2010.10.5)
【出願人】(399048917)日立アプライアンス株式会社 (3,043)
【Fターム(参考)】