説明

冷間等方圧加圧装置用のゴム型

【課題】冷間等方圧加圧装置の成形容器内に収納して外面全面を加圧されるゴム型において、成形材料のコスト的な無駄をはじめ、加工コストや加工時間、ゴム型の製作コストなどについて無駄を省くことができるようにする。
【解決手段】本発明に係る冷間等方圧加圧装置用のゴム型1は、成形材料を供給可能にする上方開口の凹部25が設けられた型本体20と、この型本体20上に載せられることで凹部25の開口を閉鎖する蓋体21とを有し、型本体20に形成された凹部25の内面と蓋体21による凹部25の開口閉鎖面とによって成形材料を所定形状に成形するキャビティ27が形成され、キャビティ27は、下向きに半球状の凹部となる下加圧部30と、この下加圧部30の上方で当該下加圧部30に相反するように上向きに半球状の凹部となる上加圧部31と、下加圧部30と上加圧部21とをストレートの円筒面で連通させる中央余長部32とで構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷間等方圧加圧装置を用いて、セラミック粉末などの成形材料から球形等を呈した成形体を成形させる場合に好適に使用することができる冷間等方圧加圧装置用のゴム型に関するものである。
【背景技術】
【0002】
冷間等方圧加圧装置(CIP装置)は、縦型の筒形状の成形容器を装備したものであって、この成形容器内に対し、セラミック粉末などの成形材料を充填したゴム型を装填して、このゴム型の外面全面を加圧することにより、ゴム型内のキャビティ形状(成形室の形状)に沿わせて圧縮した成形体を製造させる装置である。
このCIP装置において、ゴム型内のキャビティ(成形室)を球状に形成させておくことにより、球状の成形体を成形する方法は公知である(例えば、特許文献1等参照)。
【0003】
特許文献1で使用されるゴム型は、成形材料を供給可能にする上方開口の凹部が設けられた型本体と、この型本体上に載せられることで凹部の開口を閉鎖する蓋体とを有したものとなっている。この型本体に形成された凹部の内面と蓋体による凹部の開口閉鎖面とによって、成形材料を所定形状に成形するキャビティが形成されている。型本体に形成される凹部は、上方へ抜ける径小円形の連通孔を介して外部に連通しており、一方で、蓋体には下方へ突出する円柱形の嵌合突起が設けられており、この蓋体を型本体の上部に載せたときに、嵌合突起が凹部の連通孔に嵌合するようになっている。
【0004】
蓋体に設けられ嵌合突起の下端部は、上方へ凹む球面として形成されたものであって、型本体に設けられた凹部の空洞内面(前記したように球状をしている)と同じ曲率半径を有している。それ故、型本体上に蓋体を載せた状態で、ゴム型内に形成されるキャビティは、球形に閉じた成形空間となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実公平5−34871号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1で開示されたゴム型において、型本体の凹部へ成形材料を充填後、凹部の連通孔内へ蓋体の嵌合突起を嵌め込んで密閉しても、嵌合突起の下端部(上方へ球面状に凹んだ部分)内へ成形材料を充填することはできない。すなわち、閉ざされた球形空間となるキャビティ内において、前記嵌合突起の下端部に、成形材料の未充填となる空隙が生じてしまう。
【0007】
そのため、このようなゴム型をCIP装置の成形容器内に装填して、成形体を製造しても、上半球部が扁平化した歪な球形しか得られないという不具合があった。この場合、真球度の高い球形の成形体を得るためには、成形後の研磨加工等において相当量の加工が必要となり、結果として、得ようとする球形サイズよりも小さなものしか得られないことになる。
【0008】
換言すれば、最終的に得ようとする球形サイズに比して、ゴム型のキャビティサイズは多量の加工代を見込んだ、かなり大型サイズとしておかなければならず、それ故に成形材料のコストに無駄が生じることになっていた。当然に、成形後の研磨加工などに拘わる加工コストや加工時間、ゴム型の製作コストなどにも無駄が含まれるものであった。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、成形材料のコスト的な無駄をはじめ、加工コストや加工時間、ゴム型の製作コストなどについて無駄を省くことができるようにした冷間等方圧加圧装置用のゴム型を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、本発明は次の手段を講じた。
即ち、本発明に係る冷間等方圧加圧装置用のゴム型は、冷間等方圧加圧装置の成形容器内に収納して外面全面を加圧される成形用ゴム型であって、前記成形用ゴム型は、成形材料を供給可能にする上方開口の凹部が設けられた型本体と、この型本体上に載せられることで前記凹部の開口を閉鎖する蓋体とを有し、前記型本体に形成された凹部の内面と蓋体による凹部の開口閉鎖面とによって成形材料を成形するキャビティが形成されており、前記キャビティは、下向きに半球状の凹部となる下加圧部と、この下加圧部の上方で当該下加圧部に相反するように上向きに半球状の凹部となる上加圧部と、これら下加圧部と上加圧部とをストレートの円筒面で連通させる中央余長部とで構成されていることを特徴とする。
【0010】
ここにおいて「半球状の凹部」とは、真球を構成させるような球面を備えたものだけに限らない。すなわち、横軸に対して縦軸をある程度長くした異形球や、反対に横軸に対して縦軸をある程度短くした異形球を構成させるような球面をも含むものとする(例えば、楕円球やカプセル状の長円球をはじめ、卵形のような曲率半径が一定でない異形球等を構成させる球面とすることも可能)。
【0011】
このような構成とすることにより、中央余長部の部分に充填されることになる成形材料の量を増量分として、型本体の充填室へ従来より多くの成形材料を充填できることになる。従って、この状態で型本体上へ蓋体を載せ、凹部を密閉状態のキャビティとさせ、そのうえで、このゴム型をCIP装置の成形容器内に装填して成形体を製造した場合は、上半球部が扁平化した歪な球形が得られたとしても、この成形体における上下方向の高さは、球の平面断面径に相当した寸法を確保できるものとなっている。
【0012】
従って、最終的に得ようとする球形サイズに比して、ゴム型のキャビティサイズは必要最小限のサイズでよいことになり、成形材料のコストを可及的に抑えることができる。当然に、成形後の研磨加工などに拘わる加工コストや加工時間などの無駄も省くことができる。
なお、中央余長部を設けることによっても、キャビティ形状は縦に延長されるようになるだけであって、型本体の充填室に対して成形材料を充填したり、成形後において型本体の充填室から成形体を取り出したりする際に、作業的な不具合(成形材料の充填や成形体の取り出しが困難になるなど)が生じることはない。またゴム型の製作コストが高コストになるような不具合も生じない。
【0013】
好ましくは、前記中央余長部の長さは、冷間等方圧加圧処理時に成形材料が収縮する収縮率に基づいて設定されているとよい。
このようにすることで、成形材料の無駄を可及的に抑えて加工に伴う歩留まりを良好にすることができる。
前記型本体には複数の凹部が区画形成されており、この型本体上に前記蓋体が載せられることで全ての凹部が蓋体により閉鎖されて各凹部に対応した複数のキャビティが形成されるものとしてもよい。
【0014】
このようにキャビティの形成数を増やすことにより、成形体の製造効率を高めることができる。
更に好ましくは、前記成形材料を供給可能にする上方開口の第2の凹部が形成された第2の型本体を有すると共に、前記型本体の下面には、前記第2の凹部を閉塞可能な第2の開口閉鎖面が形成されていて、前記型本体の上部に第2の型本体が配置されることで、第2の凹部と第2の開口閉鎖面とにより第2の型本体に第2のキャビティが形成される構成とするとよい。
【0015】
このようにキャビティの形成数を増やすことにより、成形体の製造効率を更に高めることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る冷間等方圧加圧装置用のゴム型は、成形材料のコスト的な無駄をはじめ、加工コストや加工時間、ゴム型の製作コストなどについて無駄を省くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】(A)は従来のゴム型を示した側断面図であり(B)は本発明に係るゴム型の第1実施形態を示した側断面図である。
【図2】第1実施形態のゴム型を用いて球状の成形体を製造する過程を示した説明図である。
【図3】CIP装置へ第1実施形態のゴム型を装填した状態を示した側断面図である。
【図4】本発明に係るゴム型の第2実施形態を示したものであって、(A)は平面図であり、(B)は(A)のA−A線断面図である。
【図5】本発明に係るゴム型の第3実施形態を示した側断面図である。
【図6】本発明に係るゴム型の第4実施形態を示した側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づき説明する。
[第1実施形態]
図1(B)及び図2は、本発明に係るゴム型の第1実施形態を示している。
このゴム型1は、例えば、図3に示すようなCIP装置2に対して好適に使用可能である。なお、本発明に係るゴム型1において、使用の対象とされるCIP装置2は特に限定されるものではないが、まずは、図3に例示したCIP装置2について予め簡単に説明しておく。
【0019】
図3のCIP装置2は、縦型の円筒形に形成された成形容器3と、この成形容器3の上部開口を塞ぐ円盤形の上蓋4と、成形容器3の下部開口を塞ぐ円盤形の下蓋5とを有している。
上蓋4の下部は、成形容器3の上部開口に内嵌合して密閉状態を保持する嵌合部4aとして一回り径小に形成されている。この上蓋4には、圧縮空気などの圧力媒体を成形容器3内へ導入したり排出したりするための通孔7が形成されている。
【0020】
これに対し、下蓋5の上部は、成形容器3の下部開口に内嵌合して密閉状態を保持する嵌合部5aとして一回り径小に形成されている。この下蓋5は、上下に貫通して中央開口8が設けられた外枠部10と、この外枠部10の中央開口8に対して上下動自在に嵌合された中央台部11とを有している。この中央台部11の上にゴム型1が載置されることになる。
【0021】
中央台部11は、その下部が受台12に支持されており、この受台12が中央台部11を伴って昇降動作可能になっている。受台12の下降時には、中央台部11の上端部が下蓋5の中央開口8から下方へ抜け出し、且つこの抜け出した中央台部11に対してゴム型1の載せ替えが可能となっている。また受台12の上昇時には、中央台部11の上面が下蓋5の中央開口8から上方へ突出するか又は外枠部10の上面と面一に合わされるようになっている。
【0022】
成形容器3内には、下蓋5の中央台部11に載置されるゴム型1に対してその外周面に接した状態で取り囲む円筒形の壁ゴム型15が設けられ、この壁ゴム型15の上部には、ゴム型1の上面に接した状態で壁ゴム型15に嵌合する蓋ゴム型16が設けられている。また更に、これら壁ゴム型15及び蓋ゴム型16を覆う状態で、逆コップ型をした外部ゴム型17が設けられるようになっている。
【0023】
このCIP装置2の作動時には、成形容器3の上下に嵌合装着された上蓋4及び下蓋5を上下に取り囲むように、プレスフレーム18が横嵌め状に取り付けられ、このプレスフレーム18によって軸方向の反発力が担持されるようになる。
次に、本発明に係るゴム型1について説明する。
このゴム型1は、型本体20と、この型本体20上に載せる蓋体21とを有している。言うまでもなく、型本体20及び蓋体21はゴムなどの弾性体により形成されている。
【0024】
図1に示すように、型本体20には、その内部に成形材料を充填可能な凹部25が形成されている。この凹部25は、やや縦長の球状(詳細は後述する)をした空洞25aに対してその天井部に上方へ抜ける円筒状の連通孔25bを形成させたものとなっている。
すなわち、型本体20の上面には連通孔25bによる上端開口が開口形成され、空洞25aの内部天井には連通孔25bによる下端開口が形成されており、この連通孔25bを通じて凹部25が上方外部に連通したものとなっている。
【0025】
空洞25aを平面視したときの空洞25aの内径Dに比べて、連通孔25bの内径dは径小となっている。そのため、空洞25aの天井部は、連通孔25bの下端開口に向かって徐々に径小化する(上すぼみになる)形状となっており、しかもこの径小化が、上方へ凹む球面となるように形成されている。
蓋体21は、型本体20の上部に載せられることでこの型本体20の凹部25(連通孔25b)を密閉するためのものである。この蓋体21の平面視形状は、型本体20の平面視形状及び大きさに合わせてあり、第1実施形態では円形としている。
【0026】
この蓋体21には、下面中央部から下方へ突出する円柱形の嵌合突起21aが設けられている。この嵌合突起21aは、蓋体21を型本体20の上部に載せたときに凹部25の連通孔25bに嵌り込むようになっている。この嵌合突起21aの下端部は上方へ凹む球面として形成されている。
嵌合突起21aの下端部に形成された球面の曲率半径は、凹部25における空洞25aの天井部に形成された環状球面の曲率半径と同一とされている。そのため、この嵌合突起21aが凹部25の連通孔25bに嵌合した状態として、下端部の球面と空洞25aの天井部に形成された環状の球面とが、互いに段差なく連続するようになっている。
【0027】
このように、型本体20上に蓋体21を載せたとき、凹部25の連通孔25bが嵌合突起21aによって塞がれる状態となり、その結果、このゴム型1には、空洞25aの内周面と嵌合突起21aの下端面とによって密閉されたキャビティ27(成形室)が形成されることになる。
このキャビティ27は、下向きに半球状の凹部となる下加圧部30と、この下加圧部30の上方で下加圧部30に相反するように上向きに半球状の凹部となる上加圧部31と、これら下加圧部30と上加圧部31とを上下方向にストレートの円筒面で連通させた中央余長部(以下、中央加圧部32と呼ぶ)で構成されている。
【0028】
すなわち、図1(A)に示した従来のゴム型100に設けられた球形のキャビティ101とは異なり、図1(B)から明らかなように、本発明に係るゴム型1では、中央加圧部32が存在することに起因して、このキャビティ27は縦長の球状に形成されている。
なお、下加圧部30及び上加圧部31に採用される「半球状の凹部」は、第1実施形態ではそれぞれ、直径がDの真球を構成させるような半球面を備えたものとしてある。
【0029】
下加圧部30及び中央加圧部32は、型本体20における凹部25の空洞25aのうち、天井部を除く領域により形成されている。これに対し、上加圧部31は、型本体20における凹部25の空洞25aのうち、天井部の領域と、蓋体21における嵌合突起21aの下端面との組み合わせで形成されている。
中央加圧部32は直径をDとする平面視円形の空間とされている。また中央加圧部32の内周面は、凹凸のない上下に直線状の円筒内面としてある。この中央加圧部32による下加圧部30と上加圧部31との連通距離hは、冷間等方圧加圧処理時に成形材料が収縮する収縮率を勘案して設定してある。
【0030】
第1実施形態では、製造しようとする成形体の形状を球形(ほぼ真球)とし、また成型材料としてセラミック粉末を使用するものとして、中央加圧部32による連通距離hを、キャビティ27を平面視したときの球の半径(D/2)に対する約10%程度とした。
なお、中央加圧部32による連通距離hを過剰に大きくすると、後述する成形後の加工量(機械加工などによって除去する肉量)が多くなるので、成形材料としての歩留まりは、むしろ悪化する傾向となる。従って、中央加圧部32による連通距離hの上限は、成形材料としての歩留まりが許容される範囲として決定すればよいことになる。
【0031】
ところで、上加圧部31の凹部となる形状を半球未満にしたと仮定する(上加圧部31の内部高さh1をD/2より小さくしたとする)。この場合、中央加圧部32が上加圧部31寄りに配置されることになるために、成形後に得られる成形体を加工する量が多少増加する傾向となるが、成形材料としての歩留まりが許容される範囲内であれば、このような中央加圧部32の配置も許容されることになる。
【0032】
一方、下加圧部30の凹部となる形状を半球未満にしたと仮定する(下加圧部30の内部高さh2をD/2より小さくしたとする)。この場合、中央加圧部32が下加圧部30寄りに配置されることになるが、このような中央加圧部32の配置は、成形後に得られる成形体としての形状を徒に歪にさせてしまうだけであり、好ましくない。
更に、中央加圧部32の内周面は、成形体の表面形状に強く影響することになる(型写しされる)ことになるので、中央加圧部32を、下加圧部30及び上加圧部31と合致する平面視円形とさせ、且つ、中央加圧部32の内周面を凹凸のないストレート面にすることは重要である。
【0033】
次に、図2(A)〜(D)に基づいて、第1実施形態のゴム型1を用いて球状の成形体を製造する状況を説明する。
図2(A)に示すように、型本体20の凹部25に対し、連通孔25bを介してセラミック粉末などの成形材料Mを充填する。おおよそ、連通孔25bの内部途中まで成型材料Mが達する程度に充填するのが好ましい。このとき、成形材料Mの充填面上部は球状ではなく略平らな状態になる。
【0034】
この状態で、図2(B)に示すように型本体20上に蓋体21を載せ、ゴム型1を組み立てる。これにより、型本体20の凹部25が密閉されることで形成されるキャビティ27には、その上部(蓋体21における嵌合突起21aの下方)に成形材料Mの充填されない空隙40が生じるようになる。
この状態で、ゴム型1をCIP装置2の成形容器3内に装填し、CIP装置2を作動させてゴム型1の外面全面を加圧する。これにより、キャビティ27内の成形材料Mは、図2(C)に示すように、その外面全面が加圧圧縮されて成形体Fとして形成される。
【0035】
この成形体Fにおいて、キャビティ27の下加圧部30により形成された下半分は、下向きに凸となる半球状に形成されている。しかし、キャビティ27の上加圧部31により形成された上半分は、キャビティ27の中央加圧部32の存在によって、やや上方へ間延びした異形の半球状に形成されている。しかも、キャビティ27内で成形材料Mの充填されないことによって生じた空隙40(図2(B)参照)が原因となり、上半分の上面は一部扁平になっている。
【0036】
但し、この成形体Fにおいて、上半分の高さは、下半分の高さ(下半球の球半径)と同等以上の寸法を確保したものとなっている。要するに、成形体F全体の上下方向寸法として、得ようとする最終的な成形体(球)の球直径を有しているのであって、成形体Fの上半分に対し、その上部寄りの外周を取り囲むように余分な肉部(図2(D)に示す符号G参照)が付随している状態と言える。
【0037】
図2(D)に示すように、このようにして形成された成形体Fをゴム型1から取り出し、この成形体Fにおいて、上半分の上部外周に付随する余分な肉部Gを、研磨などの機械加工等によって取り除き、最終的に得ようとする成形体の形状(球形状)に仕上げる。このとき、成形体Fに対する加工代や加工時間などは、余分な肉部Gを対象としたものだけで済む。
【0038】
以上の説明から明かなように、本発明に係るゴム型1であれば、キャビティ27を形成しているうち、中央加圧部32に充填されることになる成形材料Mの量を増量分として、型本体20の凹部25へ従来より多くの成形材料Mを充填できることになる。従って、この状態で成形体Fを形成させれば、上半球部が扁平化した歪な球形が得られたとしても、上下方向の高さは、球の平面断面径(得ようとする最終的な成形体の球直径)に相当した寸法を確保できるものとなっている。
【0039】
このように、最終的に得ようとする球形サイズに比して、ゴム型1のキャビティサイズは必要最小限のサイズでよいことになり、成形材料Mのコストを可及的に抑えることができる。当然に、成形後の研磨加工などに拘わる加工コストや加工時間などの無駄も省くことができる。 従って、成形材料Mの無駄を可及的に抑えて加工に伴う歩留まりを良好にすることができる。
【0040】
なお、ゴム型1において、キャビティ27に中央加圧部32を設けることにより、キャビティ形状は縦に延長されるようになるが、型本体20の凹部25として、連通孔25bの開口形状や開口大きさなどは、従来に比して何ら変更する必要はない。
そのため、成形材料Mの充填作業や成形体の取り出し作業は、従来通り行えるものとなっている。
[第2実施形態]
図4(A)及び(B)は、本発明に係るゴム型の第2実施形態を示している。
【0041】
第2実施形態のゴム型1では、型本体20において、その周壁部24の内側に複数(3個)の凹部25が区画形成されている。各凹部25の内部形状に関しては第1実施形態と同じとしてある。また蓋体21には、型本体20の凹部25に対応する配置であって、且つ連通孔25bの開口大きさに合致した嵌合突起21aが設けられている。
そのため、この型本体20の上に蓋体21が載せられることで、全ての凹部25が密閉されるようになり、その結果、各凹部25に対応した複数のキャビティ27が形成される。
【0042】
なお、図例では凹部25の形成数(即ち、キャビティ27の数)を3個としているが、2個としてもよいし、4個以上としてもよい。
このように、ゴム型1においてキャビティ27の形成数が増加されているので、CIP装置2が1回作動することに伴う成形体の生産量が増大するという利点がある。
[第3実施形態]
図5は、本発明に係るゴム型の第3実施形態を示している。
【0043】
第3実施形態のゴム型1は、型本体20に対し、その下部に、この型本体20を支持するようにしてその下方に第2型本体50(第2の型本体)が設けられている。
この第2型本体50は、第1実施形態で説明した型本体20と略同一構成を有しており、その内部に成形材料を充填可能な凹部53(第2の凹部)が形成されている。この凹部53は、やや縦長の球状をした空洞53aに対してその天井部に上方へ抜ける円筒状の連通孔53bを形成させたものとなっている。
【0044】
一方、型本体20の下面には、第2型本体50の凹部53に対応する配置であって、且つこの凹部53が有する連通孔53bの開口大きさに合致した嵌合突起55が設けられている。
そのため、この第2型本体50の上に型本体20が載せられることで、第2型本体50の凹部53が密閉されるようになり、その結果、この凹部53に対応したキャビティ57(第2のキャビティ)が形成される。
【0045】
このキャビティ57は、第1実施形態のキャビティ27と略同一の構成を有しており、下向きに半球状の凹部となる下加圧部60と、この下加圧部60の上方で下加圧部60に相反するように上向きに半球状の凹部となる上加圧部61と、これら下加圧部60と上加圧部61とを繋ぐ円筒状の中央加圧部62とで構成されたものとなっている。
このように、第3実施形態のゴム型1においては、キャビティ27,57の形成数が増加されているので、CIP装置2が1回作動することに伴う成形体の生産量が増大するという利点がある。
[第4実施形態]
図6は、第4実施形態のゴム型を示している。
【0046】
第4実施形態のゴム型1は、第2実施形態(図4(A)及び(B)参照)に採用した構成と、第3実施形態(図5参照)に採用した構成とを、両方採り入れたものである。
すなわち、型本体20に複数の凹部25が区画形成されていると共に、この型本体20の下部に、この型本体20を支持するようにして第2型本体50が設けられたものである。更に、この第2型本体50にも、複数の凹部53が区画形成されている。
【0047】
結果として、第2、第3の各実施形態に比べ、更に多くのキャビティ27,57が設けられることになるので、CIP装置2が1回作動することに伴う成形体の生産量はより一層、増大するという利点がある。
なお、本発明は、上記各実施形態に限定されるものではなく、実施の形態に応じて適宜変更可能である。
【0048】
例えば、キャビティ27の内部形状は特に限定されるものではない。成形体の形状から逆解析して、キャビティ27を変則的な形状(例えば、卵形など)にすることも、可能である。
【符号の説明】
【0049】
1 ゴム型
2 CIP装置(冷間等方圧加圧装置)
3 成形容器
20 型本体
21 蓋体
25 凹部
27 キャビティ
30 下加圧部
31 上加圧部
32 中央加圧部
50 型本体
53 第2の凹部
57 第2のキャビティ
60 下加圧部
61 上加圧部
62 中央加圧部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷間等方圧加圧装置の成形容器内に収納して外面全面を加圧される成形用ゴム型であって、
前記成形用ゴム型は、成形材料を供給可能にする上方開口の凹部が設けられた型本体と、この型本体上に載せられることで前記凹部の開口を閉鎖する蓋体とを有し、
前記型本体に形成された凹部の内面と蓋体による凹部の開口閉鎖面とによって成形材料を成形するキャビティが形成されており、
前記キャビティは、下向きに半球状の凹部となる下加圧部と、この下加圧部の上方で当該下加圧部に相反するように上向きに半球状の凹部となる上加圧部と、これら下加圧部と上加圧部とをストレートの円筒面で連通させる中央余長部とで構成されている
ことを特徴とする冷間等方圧加圧装置用のゴム型。
【請求項2】
前記中央余長部の長さは、冷間等方圧加圧処理時に成形材料が収縮する収縮率に基づいて設定されていることを特徴とする請求項1記載の冷間等方圧加圧装置用のゴム型。
【請求項3】
前記型本体には複数の凹部が区画形成されており、この型本体上に前記蓋体が載せられることで全ての凹部が蓋体により閉鎖されて各凹部に対応した複数のキャビティが形成されることを特徴とする請求項1又は2に記載の冷間等方圧加圧装置用のゴム型。
【請求項4】
前記成形材料を供給可能にする上方開口の第2の凹部が形成された第2の型本体を有すると共に、前記型本体の下面には、前記第2の凹部を閉塞可能な第2の開口閉鎖面が形成されていて、
前記型本体の上部に第2の型本体が配置されることで、第2の凹部と第2の開口閉鎖面とにより第2の型本体に第2のキャビティが形成されることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の冷間等方圧加圧装置用のゴム型。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−251336(P2011−251336A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−128856(P2010−128856)
【出願日】平成22年6月4日(2010.6.4)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】