説明

凍結保護剤としての核酸の生合成に関する化合物の使用

凍結又は凍結乾燥された微生物培養の生存可能性及び代謝活性を保持するために有用である新しいタイプの凍結保護剤が開示されている。該凍結保護剤は、核酸の生合成に関与する化合物を含んで成る。かかる培養の調製方法ならびに使用が記されている。かかる培養は、食品及び飼料製品の製造におけるスタータ培養液としても有用である。本発明のスタータ培養液には、例えばラクトコッカス(Lactococcus)種ならびにその他の種などの乳酸菌が含まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願に対するクロスリファレンス
本出願は、その各々の開示の全体が本明細書に参考として内含されている2003年7月2日付けの米国仮出願第60/484,126号及び2003年7月2日付けの欧州特許出願第欧州特許第03077079.6号の利益を請求するものである。
【背景技術】
【0002】
本発明は、凍結保護剤としての核酸生合成に関与する化合物及び凍結及び凍結乾燥された微生物培養の分野に関する。より特定的には、本発明は、凍結保護活性に加えて発酵又は転換されるべく培養内に接種された時点で増大した代謝培養活性を付与する、かかる作用物質の使用によって得られる培養液に関する。かかる凍結又は凍結乾燥培養液は、数多くの食品及び飼料製品の製造において有用である。
発明の背景
【0003】
大部分の乳製品を含めた食品及び飼料製品の製造に微生物が関与している。細菌培養液、特に一般に乳酸菌として分類される細菌の培養液は、全ての発酵された乳製品、チーズ及びバターの製造において絶対不可欠である。しかしながら、食品及び飼料製品を加工するには或る種の非細菌微生物例えば或る種の酵母及び真菌の培養液が使用される。これらの微生物の培養液は、往々にしてスタータ培養駅と呼ばれ、数多くの機能を実施することによりさまざまな乳製品に特異的特長を付与する。スタータ培養液は、乳製品業界ならびにワイン製造業界及びジュース製造業界、食肉加工業界といったようなさまざまな業界において広く使用されている。
【0004】
微生物の培養液は同様に、食料品のバイオプリザベーションにおいても重要な用途がある(Anderson et al.,1997)。
【0005】
商業的乳製品スタータ培養液は一般にラクトース及びクエン酸発酵用細菌から成る。乳酸菌というのは、乳酸を含めた酸の産生と共に種を発酵するグラム陽性菌、非運動性菌、微好気性菌又は嫌気性細菌の一群を指す。産業的には、最も有用な乳酸菌のいくつかとしては、ラクトコッカス(Lactococcus)種、ストレプトコッカス(Streptococcus)種、エンテロコッカス(Enterococcus)種、ラクトバシラス(Lactobacillus)種、ロイコノストック(Leuconostoc)種及びペジオコッカス(Pediococcus)種が含まれる。
【0006】
乳酸菌の一般的に使用されている乳製品スタータ培養液は一般に、30℃の最適な成長温度を有する好中温性生物及び約35℃〜約45℃の範囲内の最適な成長温度を有する好熱性生物に分類される。好中温性生物に属する生物の例としては、ラクトコッカス・ラクチス(Lactococcus lactis)亜種ラクチス(lactis)、ラクトコッカス・ラクチス(Lactococcus lactis)亜種クレモリス(cremoris)、ロイコノストック・メセンテロイデス(Leuconostoc mesenteroides)亜種クレモリス(cremoris)、ペジオコッカス・ペントサセウス(Pediococcus pentosaceus)、ラクトコッカス・ラクチス(Lactococcus lactis)亜種ラクチス(lactis)次亜種ジアセチラクチス(diacetylactis)及びラクトバシルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)亜種アラカゼイ(aracasei)が含まれる。好熱性乳酸菌種の例としては、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)、エンテロコッカス・ファエシウム(Enterococcus faecium)、ラクトバシルス・デルブルエキイ(Lactobacillus delbrueckii)亜種ラクチス(lactis)、ラクトバシルス・ヘルベチカス(Lactobacillus helveticus)、ラクトバシルス・デルブルエキイ(Lactobacillus delbrueckii)亜種ブルガリカス(bulgaricus)及び ラクトバシルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)が含まれる。
【0007】
乳製品スタータ培養は同様に、その特定の種組成及び好ましい産業的用途に応じても分類される。純粋スタータ培養は、単一の種のみを含み、一方混合培養は2つ以上の異なる種を含む。スタータ培養は往々にして、それらが最適な成長又は最大の酵素活性を示す温度に従って分類される。好中温性スタータ培養は、標準的には、約30℃の最適温度を有し、一方好熱性培養は約35〜45℃の最適温度を有する(Nielsen及びUllum、1999)。市販の好中温性混合培養液の例としては、次のものが含まれる;
− ラクトコッカス・ラクチス(Lactococcus lactis)亜種ラクチス(lactis)及びラクトコッカス・ラクチス(Lactococcus lactis)亜種クレモリス(cremoris)を含む「O−培養液」、
− ラクトコッカス・ラクチス(Lactococcus lactis)亜種ラクチス(lactis)、ラクトコッカス・ラクチス(Lactococcus lactis)亜種クレモリス(cremoris)及びラクトコッカス・ラクチス(Lactococcus lactis)亜種ラクチス(lactis)次亜種ジアセチラクチス(diacetylactis)を含む「D−培養液」、
− ラクトコッカス・ラクチス(Lactococcus lactis)亜種 lactis、ラクトコッカス・ラクチス(Lactococcus lactis)亜種 クレモリス(cremoris)及びロイコノストック(Leuconostoc)種を含む「L−培養液」、
− ラクトコッカス・ラクチス(Lactococcus lactis)亜種ラクチス(lactis)、ラクトコッカス・ラクチス(Lactococcus lactis)亜種クレモリス(cremoris)、ラクトコッカス・ラクチス(Lactococcus lactis)亜種ラクチス(lactis)次亜種ジアセチラクチス(diacetylactis)及びロイコノストック(Leuconostoc)種を含む「LD−培養液」
【0008】
穴の無いチーズ(チェダー、チェシャー、フェタ)を作るためにはO培養が使用される。バターを作るにはD−培養が使用される。小さな穴のあるチーズ(例えばカテッジチーズ)及びCO2生成が低い凝乳製品を作るためにはL−培養が用いられる。普通の穴のあるチーズ、凝乳製品(ジャンケット)及びサワーバターを作るにはLD培養液が使用される。商業的には、LD培養液が現在最も多く使用される混合培養液の1つである。
【0009】
市販の好熱性混合培養液の例としては、以下のものが含まれる:
− ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus) 及び ラクトバシルス・デルブルエキイ(Lactobacillus delbrueckii) 亜種ブルガリカス(bulgaricus)、を含む「ヨーグルト培養液」、及び
− ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)及び ラクトバシルス・ヘルベチカス(Lactobacillus helveticus)、を含む「好熱性チーズ培養液」。
【0010】
ヨーグルト培養液は、ヨーグルト及び特殊なイタリアンチーズを作るために使用され、好熱性チーズ培養液は、エメンタールチーズ及び特殊なイタリアンチーズを作るのに使用される。
【0011】
さらに、特にチーズ製造においては、乳製品スタータ培養液としてプロピオニバクテリウム(Propionibacterium)種が往々にして用いられる。同様に、食品スタータ培養としては、ブレビバクテリウム(Brevibacterium)属及びビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属に属する生物も一般に使用される。
【0012】
もう1つの微生物スタータ培養群は、ある種のチーズ及び飲料の製造において有用である酵母培養及び糸状菌培養を含む真菌培養液である。例としては、ペニシリウム・ロックフォルティ(Penicillium roqueforti)、ペニシリウム・カンジダム(Penicillium candidum)、ジオトリウム・カンジダム(Geotrichum candidum)、トルラ・ケフィア(Torula kefir)、サッカロミセス・ケフィア(Saccharomyces kefir)及びサッカロミセス・セレビシアエ(Saccharomyces cerevisiae)が含まれる。
【0013】
スタータ培養は、例えばさまざまなソーセージ及びサラミの製造のため、食肉加工業界においても広く使用される。
【0014】
市販のスタータ培養液は一般に凍結培養液として流通している。低温の凍結培養液では、細胞内の大部分の代謝活性は停止し、細胞は、この懸濁しているものの生存可能な状態で長期間維持され得る。
【0015】
濃縮凍結培養液は、生産コンテナ内に培養液を直接接種できることから、商業的に非常に興味深いものである。濃縮凍結培養液を使用することにより、エンドユーザーは、スタータ培養液が増幅される、そうでなければ必然的に時間のかかる中間発酵工程を回避し、汚染の危険性を著しく低減させる。濃縮培養は、DVS−direct vat setTM培養と呼ぶことができる。
【0016】
濃縮凍結培養液に対する一代替案として、濃縮凍結乾燥DVSTM培養液を調製することができる。これらの培養は、冷蔵せずに出荷できるという点でさらに有利である。
【0017】
一般に、生きた細胞の生存可能性に対して凍結及び解凍が及ぼすと考えられる損傷効果は、細胞の脱水及び凍結中の細胞質ゾル内の氷結晶の形成が原因であるとされてきた。
【0018】
凍結中の細胞質ゾル内の氷結晶化を無くするか又は最小限におさえるように制御され害が最も少ないやり方で細胞質ゾルの濃縮をもたらすために、数多くの凍結保護剤が発見されてきた。
【0019】
F. J. Chavarri et al. による論文(Biotechnology letters, 第10,1,11−16巻(1988年)、「苦みのないストレプトコッカス・ラクチス(Streptococcus Lactis)菌株由来の凍結濃縮スタータのための凍結保護剤」は、凍結した純粋ストレプトコッカス・ラクチス(Streptococcus lactis)培養の貯蔵生存可能性が5%のラクトース又は5%のスクロースの添加によって改善され得るということを記述している。ラクトース又はスクロースは、凍結保護剤として作用した。ストレプトコッカス・ラクチス(Streptococcus lactis)は、ラクトコッカス・ラクチス(Lactococcus lactis)亜種ラクチス(lactis)の旧名称である。
【0020】
同様にして、R. Carcoba et alによる論文(Eur Food Res Technol(2000)211,433−437,「新規スタータ菌株ラクトロコッカス・ラクチス(Lactrococcus lactis)亜種ラクチス(lactis) CECT5180の凍結及び凍結乾燥細胞の生存可能性及び酸性化活性に対する抗凍害剤の影響」)は、糖(ラクトース、スクロース及びトレハロース)、グルタミン酸及びゼラチンといったような異なる凍結保護剤の添加により、ラクトコッカス・ラクチス(Lactococcus lactis)亜種ラクチス(lactis)培養の貯蔵生存可能性を改善できるということを記述している。
【0021】
凍結乾燥培養の生存可能性も同様に凍結保護剤の使用により改善可能である。例えば、欧州特許第259739号は、凍結乾燥培養のための一定数の異なる凍結保護剤について記述している。
【0022】
炭水化物、タンパク質及び或る種の表面活性剤といったような凍結保護を提供するためのさまざまなアプローチが存在してきた。
【0023】
一般に、凍結保護効果を得るためには、比較的大量の凍結保護剤が必要とされる。これは、一部の周囲環境内ではさほど重要でない問題を呈するが、凍結保護剤によりひき起こされる発酵又は加工済み製品の味のわずかな望ましくない逸脱でも不利であり得る食品加工業界にとっては、有意な問題を呈する。我々は、大量の凍結保護剤を含有するあらゆる市販の濃縮凍結培養液に気づいていないのである。
【0024】
炭水化物、タンパク質及び表面活性剤以外の作用物質が、低温での培養液の安定性を改善するために使用されてきた。
【0025】
国際公開第00/39281号は、凍結又は凍結乾燥培養液の安定性ではなくむしろ液体スタータ培養液の代謝活性を安定化させるための、DNA合成の生合成に関与する化合物及びIMPの使用について記述している。
【0026】
国際公開第00/19817号は、任意の単一成分ではなく組合せ化合物が凍結保護のために使用されている凍結保護組成物について記述している。該組合せは、カルシウムチャネル遮断薬、細胞栄養マトリクス、水及びアデノシンを内含する。ただし、カルシウムチャネル遮断薬といったような薬学活性化合物の使用は、食品業界での利用分野にとっては受容可能である。
【0027】
特開平05308956号は、線状重合されたアルファーLラムノース(分子、D−グルクロン酸/分子及びD−グルコース2分子及び例えばATDで一単位が構成されている高分子多糖を含む亜硝酸菌の培養のための培地について記述している。この培地内で培養された亜硝酸菌は、凍結し培養することができる。該培地の成分が、凍結前に濃縮培養液に添加された時点で凍結保護剤として機能し得るということを指摘する記述は全くない。
【0028】
食品業界において使用される濃縮培養液に添加することのできる有効な凍結保護剤に対するニーズがなおも存在している。
発明の要約
【0029】
商業的に適切な濃縮凍結乳酸菌培養液についての有意な貯蔵安定性上の問題点は何もないと考えられた。大部分の生きた細胞が凍結とそれに続く解凍により損害を受けるということは周知であるが、生存可能性の問題は一般に、商業的に適切な濃縮凍結乳酸菌培養液にとって有意なものとみなされなかった。その結果、市販の濃縮凍結培養液は、有意な量の凍結保護剤を有していない。これは、一部の市販のスタータ培養液が凍結及び解凍の損傷効果に対しきわめて高い耐性があると思われるということを理由としている可能性がある。
【0030】
例えば、2〜3ヵ月間凍結されていた市販の濃縮乳酸菌培養液で、一定数の安定性研究が実施された。作られてから2〜3ヵ月たった凍結培養液は、−45℃の温度で1ヵ月以上の期間にわたり培養活性の著しい劣化を全く示さなかった。その結果、商業的に適切な培養は有意な貯蔵安定性の問題を有していないと考えられた。
【0031】
当本発明人らは、例えば、凍結したLD−培養が、最初の1〜3週間の凍結貯蔵期間中に有意な活性損失を示すことを考察した(例1に示されている通り)。最初の数週間の後、さらなる活性損失は比較的有意でなく、上述の先行する既知の結果と一致していた。
【0032】
発明人らは、認識されていない安定性の問題が、一部のタイプの商業的に適切な濃縮凍結乳酸菌培養液、例えば市販の凍結LD−培養については、凍結及び最初の貯蔵工程に関するものであることを識別した。特に、培養が標準的には−50℃前後である近代的な業務用冷凍室が提供する温度で貯蔵されている場合である。
【0033】
発明人らは、安定性の問題を対処すると同時に培養の増大した代謝活性を付与する新しい種類の凍結保護剤を識別した。
【0034】
本発明の1つの実施形態は、核酸の生合成に関与する1又は複数の化合物又は任意のかかる化合物の誘導体から成る群から選択された1又は複数の凍結保護剤を含む、濃縮凍結又は凍結乾燥培養液に関する。
【0035】
凍結保護剤は好ましくは、凍結又は凍結乾燥する前に生菌に添加される。
【0036】
本発明は同様に、生存可能な生物に対し、核酸の生合成に関与する1又は複数の化合物又は任意のかかる化合物の1又は複数の誘導体から成る群から選択された1又は複数の凍結保護剤を添加する工程;凍結材料を得るために材料を凍結する工程、及び適切な要領で凍結(又は凍結乾燥)材料を包装する工程を含む、凍結培養液又は凍結乾燥培養液の製造方法をも提供している。凍結乾燥培養液の製造の場合、該方法は、包装工程に先立って凍結材料からの水の昇華が行なわれる工程を含んで成る。
【0037】
本発明に従うと、本発明に従った培養の使用を含む、食品及び飼料製品の調製方法も提供されている。好ましくは、食品は、牛乳ベースの製品、食肉製品、野菜製品及び飲料の中から選択される。
【0038】
本明細書で記述されている新しい種類の凍結保護剤のさらなる利点は、それらが還元された細胞の生存可能性ならびに代謝活性を保持し発酵又は加工した製品の味にいかなる不利な形での影響も及ぼさないということにある。
定義
【0039】
本発明の詳細な実施形態の論述に先立ち、本発明のさまざまな態様及び実施形態に関連する特定の用語の定義を提供する。
【0040】
本明細書で使用される「乳酸菌」(LAB)という用語は、(優勢に産生される酸としての)乳酸、酢酸及びプロテイン酸の産生を伴って糖を発酵させるグラム陽性、徴好気性又は嫌気性細菌を意味する。工業的に最も有用な乳酸菌は、ラクトコッカス種(Lactococcus species)、ストレプトコッカス(Streptococcus)種、ラクトバシルス(Lactobacillus)種、ロイコノストック(Leuconostoc)種、ペジオコッカス(Pediococcus)種、ブレビバクレリウム(Brevibacterium)種、エンテロコッカス(Enterococcus)種及びプロピオニバクテリウム(Propionibacterium)種の中に見い出される。さらに、単独で又は乳酸菌との組合せの形で食物スタータ培養液として頻繁に用いられる厳密に嫌気性の細菌、ビフィズス菌すなわちビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)種の群に属する細菌が、一般に乳酸菌の群の中に含まれる。
【0041】
「濃縮」培養という後は、1mlにつき少なくとも108CFU、より好ましくは少なくとも109CFU、より好ましくは少なくとも1010CFU、より好ましくは少なくとも1011CFU、又はより好ましくは少なくとも1012CFUである生存可能な細胞含有量(コロニー形成単位、CFU)をもつ組成物を意味する。例を見ればわかるように、濃縮培養液は例えば遠心分離により得ることができる。
【0042】
「包装」という用語は広義で理解すべきである。それは、ユーザーに対し提供され得るような形で凍結又は凍結乾燥培養液が包装されることを意味する。それは、びん、テトラパック(登録商標)、袋などに包装可能である。
【0043】
「凍結保護剤」という用語は、凍結及び凍結乾燥培養液の凍結及び貯蔵初期工程によって誘発された損傷効果に対する耐性を改善することのできる物質を意味する。当該状況下では、それは単一の特定的凍結保護剤であってもよいし、或いは又2つ以上の異なる作用物質であってもよい。従って培養材料内の凍結保護剤のw/w百分率は、凍結保護剤(単複)の量の合計として理解されるべきである。1つの物質が凍結及び貯蔵初期工程によって誘発される損傷効果に対する凍結培養液の耐性を改善することのできる凍結保護剤であるか否かを見極める好ましい方法は、本明細書に記述されているように、培養液を2つの試料に分割し、そのうちの一方に規定量の凍結保護剤を添加し、その両方を凍結させ、凍結と同日に、そして凍結貯蔵下に保たれる場合には定期的に(例えば最高1年)培養の適切な培地(例えば牛乳)中の酸性化活性を測定することにある。その凍結保護剤を伴う培養液が貯蔵期間全体にわたって見られる活性を改善した(例えば牛乳酸性化活性の改善)場合、その物質は凍結保護剤である。適切な牛乳酸性化活性検定が、本明細書の実施例において示されている。
【0044】
本発明の実施形態が、以下で単なる例として記述されている。
発明の詳細な開示
【0045】
以下で論述するように、濃縮凍結又は凍結乾燥培養液は安定したものとしてみなされている。しかしながら、当該分野における一般的考え方とは異なり、発明人らは、驚くべきことに、例えば市販の凍結LD培養液といったような一部のタイプの商業的に適切な濃縮凍結乳酸菌培養液について、凍結及び貯蔵初期工程に関連するこれまで認識されなかった安定性の問題を観察した。以下の例1を参照のこと。かかる安定性の問題は、商業的に凍結された又は凍結乾燥された培養を適切な形で試験した時点で広く発見されることになると考えられている。
【0046】
この問題を克服するために、それを克服できるかどうかを見るために考えられる一定数の作用物質を試験した。試験した作用物質の中には、凍結していない液体スタータ培養液の安定性を改善するべく発明人らにより以前に示された核酸の生合成に関与する1又は複数の化合物から成る群から選択された作用物質(単複)が存在していた。
【0047】
国際公開第00/39281号は、液体スタータ培養液の代謝活性を安定化させるべくDNA合成の生合成に関与する化合物及びIMPの使用について記述しているが、冷却中液体状態にとどまっている培養液とは異なり、凍結する培養液には、凍結プロセスに直接関係する一定数の潜在的な損傷の問題が発生する。
【0048】
凍結温度では、微生物は、培養が凍結し始め氷が細胞外及び細胞内の両方で形成されるにつれて、死枯及び損傷を受ける。氷の形成は、細胞に対し物理的なダメージを課し、その上細胞を脱水させることになる細胞外浸透圧を生成する。凍結の結果としての水相のイオン強度及びpHの変化は同様に、自らの安定性についてこれらの要因に依存している数多くの細胞成分及び巨大分子の構造及び機能を分断することになる(Adams,2000)。
【0049】
液体対凍結細胞の安定性の問題の差異は、さらに、Mazur(1961)により報告された実験によって例示され得る。この実験では、酵母細胞を−15℃で浴内に浸漬した。結果として、系が液体にとどまった場合97%の細胞が生き延びたが、外部培地が−15℃で凍結した場合27%の細胞しか生き延びなかった(Mazur1961)。
【0050】
従って、有効な凍結保護剤によって提供されなくてはならない方策は、その凍結保護剤が液体培養液又は凍結培養液のいずれを保護するように設計されているかによって非常に大きく異なり、従って、液体培養液の有効な凍結保護剤である添加剤は、凍結培養液には有効であり得ない。かかる添加剤の1例はNa−ギ酸塩である。国際公開第00/39281号に報告されているように、液体乳酸菌スタータ培養液濃縮物の貯蔵安定性を増大させるためには3%のNa−ギ酸塩が有効である。しかしながら以下の例15に示されているように、3%のNa−ギ酸塩は凍結乳酸菌スタータ培養液の貯蔵安定性を低減させる。
【0051】
従って、核酸生合成に関与する或る種の化合物及びIMPが凍結及び凍結乾燥濃縮培養液の両方の安定性を改善させることを実験が示したとき、それは全く驚くべきことであった。
【0052】
以下の実施例2で示されているように、かかる1つの化合物、イノシン−5’−一リン酸(IMP)の添加は、凍結及び貯蔵初期工程により誘発される損傷効果に対する耐性を著しく改善する。IMPの添加は同様に、以下の実施例9で示されているように凍結乾燥培養液の安定性を著しく改善させる。以下の実施例10から、IMPのみならず、核酸生合成に関与する化合物から成る群から選択されたより広範囲の作用物質が凍結保護剤として有効であるということは明白である。
【0053】
実施例10に示されているように、ヌクレオチド及びヌクレオシドの両方を凍結保護剤として使用することができる。かくして、好ましい実施形態においては、凍結及び貯蔵初期工程によって誘発される損傷効果に対する耐性を改善するために有用である凍結保護化合物は、プリン塩基、ピリミジン塩基、ヌクレオシド及びヌクレオチドの群を含む、核酸生合成に関与する化合物を含む群から選択された化合物である。かかる化合物の例としては、イノシン−5’−一リン酸(IMP)、アデノシン−5’−一リン酸(AMP)、グアノシン−5’−一リン酸(GMP)、ウラノシン−5’−一リン酸(UMP)、シチジン−5’−一リン酸(CMP)、アデニン、グアニン、ウラシル、シトシン、グアノシン、ウリジン、シチジン、ヒポキサンチン、キサンチン、ヒポキサンチン、オロチジン、チミジン、イノシン及びかかる化合物のうちのいずれかの化合物の誘導体又はその混合物がある。
【0054】
上述のように、国際公開第00/19817号はカルシウム遮断薬、細胞栄養マトリクス、水及びアデノシンの組合せを凍結保護組成物として提供しているが、例えばアデノシンといったような単一成分の考えられる凍結保護活性については論述されていない。しかしながら、アデノシンが細菌培養液の安定性を低減させているように思われる実施例12及び15に例示されている通り、アデノシンが凍結保護剤として有効でない可能性もある。さらに、Demetrion(国際公開第00/19817号)は、2.7〜3.6mMの量のアデノシンを使用した。さらに、我々の実験は、凍結保護剤としてイノシンが非常に有効であり、アデノシン及びイノシンの両方共がプリンヌクレオチドであることを示している。この観察事実は、一リン酸塩にまで拡張できる。我々の実験は、凍結保護剤としてIMPは有効であるがAMPは有効でないことを示している。このことは、生物内ではイノシン酸(IMP)が加水分解脱アミノ化によりアデニル酸(AMP)から合成されることから、さらに一層驚くべきことである(White, 1973年)。かくして、本発明の好ましい実施形態においては、1又は複数の凍結保護剤は、ピリミジンヌクレオチド及びイノシンの群から選択される。
【0055】
本発明のさらに好ましい実施形態においては、1又は複数の凍結保護剤はヌクレオシド一リン酸の群から選択される。好ましい実施形態においては、少なくとも1つの又は唯一の凍結保護剤がIMPである。
【0056】
炭水化物又はタンパク様タイプの抗凍結剤は、一般に、解凍した又は還元された培養の代謝活性を増大させるものとして記述されていない。本発明の凍結保護剤は、その凍結保護活性に加えて、発酵、加工又は変換されるべく培地内に接種された時点で、培養液の代謝活性の増大をも付与する(ブースタ効果)。
【0057】
かくして、本発明の1実施形態は、凍結保護剤が凍結保護性に加えてブースタ効果をも有する1つの作用物質又は複数の作用物質の混合物である凍結又は凍結乾燥培養液である。
【0058】
「ブースタ効果」というブースタ害保護剤が、発酵又は変換されるべく培地内に接種された時点で解凍された又は還元された培養に対し増大した代謝活性(ブースタ効果)を付与するような状況を記述するために使用される。生存可能性及び代謝活性は、同義的概念ではない。商業用の凍結又は凍結乾燥培養液は、その生存可能性を保持できるが、その代謝活性の有意な部分を失なっている可能性があり、例えば培養液は、より短かい時間であれ貯蔵状態に保たれたときその酸産生(酸性化)活性を失なう可能性がある。かくして、生存可能性及びブースタ効果を、異なる検定により評価しなくてはならない。生存可能性は、コロニー形成単位の判定といったような生存可能性検定によって査定されるが、一方ブースタ効ブースタの生存可能性との関係における解凍された又は還元された培養の適切な代謝活性を定量化することによって査定される。以下で記述される酸性化活性検定は、解凍された又は還元された培養の適切な代謝活性を定量化する検定の一例である。ブースタ効果はさらに実施例3中で示されている。
【0059】
本明細書では、酸生成活性が例証されているものの、本発明は、培養のあらゆるタイプの代謝活性の安定化を包含するように意図されている。かくして、「代謝活性」という用語は、培養の脱酸素活性、その酸生成活性、すなわち例えば乳酸、酢酸、ギ酸及び/又はプロピオン酸の産生、又はその代謝産物産生活性例えばアセトアルデヒド、(α−アセトラクタート、アセトイン、ジアセチル及び2,3−ブチレングリコール(ブタンジオール)といった芳香化合物の産生を意味する。
【0060】
本発明の実施形態においては、凍結培養液は、凍結材料の%w/wで測定して、約0.2%〜約20%の凍結保護剤又は複数の凍結保護剤の混合物を含有する又は含んでいる。しかしながら、凍結材料の重量での%w/wとして測定して2〜5%の範囲内を含めた、0.2〜15%の範囲内、より好ましくは0.2〜10%の範囲内、より好ましくは0.5〜7%の範囲内そしてより好ましくは1〜6%の範囲内の凍結保護剤又はその混合物といった量で、凍結保護剤又はその混合物を添加することが好ましい。好ましい実施形態においては、培養液は、凍結材料の重量での%w/wとして測定して約3%の凍結保護剤又はその混合物を含む。約3%という凍結保護剤の好適量は、100mM範囲内の濃度に対応する。本発明の実施形態の各態様について、範囲は記述された範囲の増分でありうるということを認識すべきである。
【0061】
培養の「材料」という用語は、生菌及び凍結保護剤の両方を内含する培養の適切な物質を意味する。考えられる包装材料は含まれない。従って、培養の材料の重量は、考えられる包装材料の重量を含まない。
【0062】
培養液が凍結乾燥培養液である場合には、10〜24重量%の範囲を含めて、0.8重量%〜60重量%の範囲内又は0.8〜55重量%の範囲内、又は1.3〜40重量%の範囲内、又は3〜30重量%の範囲内又は6〜25重量%の範囲内にある量で凍結保護剤又はその混合物を添加することが好ましい。好ましい実施形態においては、凍結乾燥培養液は、凍結乾燥材料の重量での%w/wとして測定して約16%の凍結保護剤又はその混合物を含む。
【0063】
さらに、凍結又は凍結乾燥培養液は、酵母エキス、糖、酸化防止剤、不活性ガス及びビタミンなどの栄養素を含むさらなる従来の添加剤を含有してよい。同様に、本発明に従った培養に対するさらなる添加剤として、Tween(登録商標)化合物を内含する界面活性剤を使用することも可能である。
【0064】
付加的に本発明に従った培養液に添加され得るかかる従来の添加剤のさらなる例は、タンパク質、タンパク質加水分解物及びアミノ酸の中から選択可能である。これらの好適な例としては、グルタミン酸、リジン、Na−グルタマート、Na−カゼイナート、麦芽エキス、粉末スキムミルク、粉末乳清、酵母エキス、グルテン、コラーゲン、ゼラチン、エラスチン、ケラチン及びアルブミン又はそれらの混合物から成る群から選択されたものが含まれる。
【0065】
より好ましくは、従来の添加剤は炭水化物である。これらの適切な例としては、ペントース(例えばリボース、キシロース)、ヘキソース(例えばフルクトース、マンノース、ソルボース)、ジサッカリド(例えばスクロース、トレハロース、メリビオース、ラクチュロース)、オリゴサッカリド (例えばラフィノース)、オリゴフルトース (例えばアクチライト、フリブロロース)、ポリ−サッカリド(例えばマルトデキストリン、キサンタンガム、ペクチン、アルギナート、微結晶性セルロース、デキストラン、PEG)及び砂糖アルコール(ソルビトール、マンニトール及びイノシトール)から成る群から選択されたものが含まれる。
【0066】
本発明は、あるゆる濃縮凍結又は凍結乾燥培養液に関するものであるが、大部分の乳製品を内含する食品及び飼料製品の製造に関与する微生物の培養に特に向けられている。好ましい実施形態は、大部分の乳製品を含めた食品及び飼料製品の製造である。本発明の好ましい実施形態は、細菌培養液、特に一般に乳酸菌として分類され全ての発酵乳製品、チーズ及びバターの製造において絶対不可欠である細菌の培養液を含む。かかる細菌の培養液は、往々にしてスタータ培養液と呼ばれ、数多くの機能を実施することによりさまざまな乳製品に特定的特長を付与する。しかしながら、或るタイプのチーズ及び飲料の製造において特に使用される酵母培養液及び糸状菌培養液を含めた真菌培養液を含む培養液も、スタータ培養液と呼ばれる。同様に、その他のタイプの食品及び飼料製品を加工するために用いられる培養もスタータ培養液と呼ばれる。貯蔵生牧草の製造において用いられる培養液も、往々にしてスタータ培養液と呼ばれる。
【0067】
本発明に従うと、乳製品業界を含む食物又は飼料業界で使用されているあらゆるスタータ培養液生物を使用することができる。かくして、スタータ培養液は、乳酸菌(LAB)種、ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)種、ブレビバクテリウム(Brevibacterium)種、プロピオニバクテリウム(Propionibacterium)種又は真菌種、例えばトルラ(Torula) 種、ペニシリウム(Penicilium)種、クリプトコッカス(Cryptococcus)種、デブラリオミセス(Debraryomyces)種、クリベロミセス(Klyveromyces)種及び サッカロミセス(Saccharomyces)種を含む群から選択された1又は複数の生物を含むことができる。乳酸菌(LAB)群の適切な培養は、ラクトバシルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)、エンテロコッカス(Enterococcus)種、ペジオコッカス(Pediococcus)種、ロイコノストック(Leuconostoc)種、オエノコッカス(Oenococcus)種、ラクトコッカス(Lactococcus)種を含めたラクトコッカス(Lactococcus)種、ストレプトコッカス(Streptococcus)種、 ラクトバシルス(Lactobacillus)種の一般的に使用されている菌株を内含し、かつ例えばチェダー、フェタ及びカテッジチーズといった締まったテクスチュアをもつチーズの製造に一般に使用されているラクトコッカス・ラクチス(Lactococcus lactis)亜種ラクチス(lactis)及びラクトコッカス・ラクチス(Lactococcus lactis)亜種 クレモリス(cremoris)を含む広く利用されているラクトコッカス・ラクチス(Lactococcus lactis)を内含する。
【0068】
スタータ培養液生物は、上述の乳酸菌株又はその他のあらゆるスタータ培養液菌株のうちの1又は複数のものの遺伝子組換え菌株から選択可能であるということがわかるだろう。本明細書で使用されている「遺伝子組換え細菌」という表現は、その用語の従来の意味で使用される。すなわち、それは、スルホン酸エタンメタン(EMS)又はNメチル−N’−ニトロ−N−ニトログアニジン(NTG)といったような化学的突然変異原での処理を含めた従来用いられているあらゆる突然変異原化処理、UV光又は古典的突然変異誘発を含む自然発生突然変異体に細菌菌株を付すことによって得られる菌株を意味する。さらにランダム突然変異誘発とそれに続く天然突然変異体すなわち組換え型DNA−技術を使用することのない突然変異体の選択によって、遺伝子組換え細菌を提供することが可能である。さらに、乳酸菌及びその他の潜在的な有用なスタータ培養液生物の突然変異体を、部位特異的突然変異誘発及びPCR技術及びひとたび同定・単離された場合の特異的DNA配列のその他のインビトロ又はインビボ修飾を含むこのような技術によって提供することができると考えられる。かくして、さらに、組換え型DNA技術の使用により有用なスタータ培養液生物を得ることができると考えられている。特に、特定の生物に固有であったDNA配列の組換えすなわち自己クローニングにより有用なスタータ培養液生物を得る可能性は、食物の調節という見地から見て魅力的である。
【0069】
乳製品業界で有用であることから、該スタータ培養液は、例えばストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)及びラクトバシルス・デルブルエキイ(Lactobacillus delbrueckii)亜種ブルガリカス(bulgaricus)の混合物といったような異なる乳酸菌種の菌株の混合物を内含する菌株の混合物を含み得る。
【0070】
一般に使用されている乳製品スタータ培養液菌株は、一般に、当該状況においては約30℃の最適成長温度をもつ生物である「好中温性生物」及び当該状況下では約40〜約45℃の範囲内の最適成長温度をもつ生物である「好熱性生物」に分けられる。
【0071】
本発明のスタータ培養液のための菌株の選択は、製造されるべき発酵食品及び飼料製品の特定のタイプにより左右されることになる。例えば、チーズ及びバターの製造のためには、ラクトコッカス(Lactococcus)種、ロイコノストック(Leuconostoc)種及びラクトバシルス(Lactobacillus)種の好中温性培養が広く使用されている。かくして、1つの実施形態においては、本発明に従った培養は、約30℃の最適成長温度をもつ1又は複数の好中温性生物を含んでいる。このような好中温性生物に属する標準的な生物としては、ラクトコッカス・ラクチス(Lactococcus lactis)、ラクトコッカス・ラクチス(Lactococcus lactis)亜種クレモリス(cremoris)、ロイコノストック・メセンテロイデス(Leuconostoc mesenteroides)亜種クレモリス(cremoris)、ペジオコッカス・ペントサセウス(Pediococcus pentosaceus)、ラクトコッカス・ラクチス(Lactococcus lactis)亜種ラクチス(lactis)次亜種ジアセチラクチス(diacetylactis)、ラクトバシルス・カゼイ(Lactobacillus casei)及びラクトバシルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei) 亜種アラカゼイ(aracasei)が含まれる。
【0072】
本発明のさらにもう1つの実施形態においては、本発明に従った培養は、約40℃〜約45℃の最適成長温度をもつ1又は複数の好熱性生物を含む。ヨーグルト及びその他の発酵乳製品を生産するのに好熱性生物を使用することが多いが、例えばエメンタールチーズ及び特殊なイタリアンチーズといった或る種のチーズも又、好熱性培養を用いることによって生産される。かかる好熱性生物に属する標準的生物としては、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)、エンテロコッカス・ファエシウム(Enterococcus faecium)、ラクトバシルス・デルブルエキイ(Lactobacillus delbrueckii)亜種ラクチス(lactis)、ラクトバシルス・ヘルベチカス(Lactobacillus helveticus)、ラクトバシルス・デルブルエキイ(Lactobacillus delbrueckii) 亜種ブルガリカス(bulgaricus)及びラクトバシルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)を含む群から選択された生物が含まれる。
【0073】
特に、乳酸菌培養液(LAB培養液)は、商業的に広く使用されてきた。かくして、本発明の好ましい実施形態は、ラクトコッカス(Lactococcus)種、ストレプトコッカス(Streptococcus)種、エンテロコッカス(Enterococcus)種、ラクトバシルス(Lactobacillus)種、ロイコノストック(Leuconostoc)種、ペジオコッカス(Pediococcus)種、及びビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)種を含む群から選択された1又は複数の生物を含むLAB−培養液である。
【0074】
市販のスタータ培養液は、その利用分野に従って分類されることが多い。O−培養液は、穴の無いチーズ(チェダー、チェシャ、フェタ)を作るのに用いられ、標準的にラクトコッカス・ラクチス(Lactococcus lactis)亜種ラクチス(lactis)及びラクトコッカス・ラクチス(Lactococcus lactis)亜種クレモリス(cremoris)を含む群から選択された1又は複数の生物を含む。D−培養液は、バターを作るのに用いられ、標準的に、1又は複数のラクトコッカス(Lactococcus)種、すなわちラクトコッカス・ラクチス(Lactococcus lactis)亜種ラクチス(lactis)、ラクトコッカス・ラクチス(Lactococcus lactis)亜種クレモリス(cremoris)及びラクトコッカス・ラクチス(Lactococcus lactis)亜種ラクチス(lactis)次亜種ジアセチラクチス(diacetylactis)を含む。小さな穴しか伴わないチーズ(カテッジチーズ)及びCO2生成が少ない凝乳製品を生産するためには、L−培養液を使用するのが都合がよい。標準的にL−培養液内の生物は、ラクトコッカス・ラクチス(Lactococcus lactis)亜種ラクチス(lactis)、ラクトコッカス・ラクチス(Lactococcus lactis)亜種クレモリス(cremoris)及びロイコナストック(Leuconastoc)種である。そして最後に、普通の穴サイズをもつチーズ、凝乳製品(ジャンケット)及びサワーバターを作るためにはLD−培養液が使用される。商業的には、LD培養液が現在最も多く使用されている混合培養液の1つである。LD−培養液は標準的には、ラクトコッカス・ラクチス(Lactococcus lactis)亜種ラクチス(lactis)、ラクトコッカス・ラクチス(Lactococcus lactis)亜種クレモリス(cremoris)、ラクトコッカス・ラクチス(Lactococcus lactis)亜種ラクチス(lactis)次亜種ジアセチラクチス(diacetylactis)及びロイコノストック(Leuconostoc)種を含む群から選択された1又は複数の生物を含む。
【0075】
その他のタイプの混合スタータ培養液の場合がそうであるように、LD−培養液内の個の細菌種の特定的量は、特定の必要とされる用途に従って変動し得る。当業者であればこれを認識しており、必要とされているニーズに従って好ましい混合培養液組成を決定することができる。
【0076】
例えば、芳香が要求される場合には、芳香を作り出す細菌ラクトコッカス・ラクチス(Lactococcus lactis)亜種ラクチス(lactis) 次亜種ジアセチラクチス(diacetylactis)及びロイコノストック(Leuconostoc)種が好まれるはずである。
好ましいLD−培養液には以下のものが含まれる。
【0077】
表1.LD−培養液の組成
【表1】

【0078】
以上の範囲内で、0.25〜6%のロイコノストック(Leuconostoc)種及び7〜30%のラクトコッカス・ラクチス(Lactococcus lactis)亜種ラクチス(lactis)次亜種ジアセチラクチス(diacetylactis)を有することが好ましい。
【0079】
当然のことながら、4つの異なるLAB種の合計百分率和は100%を超えることができない。しかしながら、言及した4つの細菌以外の細菌がLD−培養液内に存在する場合、それは100%未満であり得る。ここで実施例2は、安定化されたLD−培養液の一例を提供している。
【0080】
真菌培養は、本発明に従って使用できるもう1つの微生物スタータ培養液群である。酵母培養液及び糸状菌培養液といったような真菌培養液は一般に或る種のチーズ及び飲料の製造において一般に使用される。現在使用されている真菌培養液の例としては、ペニシリウム・ロックフォルティ(Penicillium roqueforti)、ペニシリウム・カンジダム(Penicillium candidum)、ジオトリウム・カンジダム(Geotrichum candidum)、トルラ・ケフィア(Torula kefir)、サッカロミセス・ケフィア(Saccharomyces kefir) 及び サッカロミセス・セレビシアエ(Saccharomyces cerevisiae)が含まれる。
【0081】
本発明の特定の好ましい実施形態は、ラクトバシラス・アシドフィラス菌を含む培養液である。
【0082】
さらなる態様においては、本発明は、1)核酸の生合成に関与する1又は複数の化合物又は任意のこのような化合物の1又は複数の誘導体から成る群から選択された凍結保護剤を生存可能な生物の濃縮培養液に対して添加する工程、2)凍結された材料を得るために材料を凍結させる工程及び3)凍結材料を適切な形で包装する工程を含む、凍結培養液の製造方法を提供している。
【0083】
凍結及び包装工程は、多数のやり方で実施可能であることがわかるだろう。
【0084】
凍結工程は、細胞の生存率を確実にするように最適化されるべきである。或る種の細胞(例えば大部分のLABは、直接凍結することができ、つまり、すでに凍結保存温度にある作用物質と直接接触させることができる。直接的方法には、液体窒素、液体CO2又は液体ヘリウムといったような「低温」流体内に直接細胞を滴下、噴霧、射出又は注入することが含まれる。当該状況下では、低温というのは、−50℃未満の温度、好ましくは−150℃(123°K)未満の温度を意味する。細胞を、液体窒素凍結された鋼ブロックといったような冷却した固体に直接接触させることもできる。低温流体を、細胞コンテナ上に直接注ぎ込むこともできる。直接方法は同様に、低温で、空気を含む気体と細胞を接触させることをも包含する。窒素又はヘリウムの低温気体流を細胞懸濁液上に直接吹きつけたり、その中に泡立てたりすることもできる。間接的方法には、コンテナ内に細胞を入れ、低温の固体、液体又は気体とこのコンテナを接触させることが関与する。間接的凍結方法のためのコンテナは、気体又は液体に対し不浸透性である必要はない。例えばプラスチック袋又はテトラパック(登録商標)が適当である。
【0085】
1つの好ましい実施形態においては、培養液は例えば遠心分離又は限外ろ過法によって濃縮され、凍結保護剤(単複)が培養液に添加され、培養液はその後、液体N2中に滴下によって添加され凍結培養顆粒を形成する。凍結培養顆粒はこのとき収集され包装されてユーザーに提供されることになる。凍結培養顆粒は、びん、テトラパック(登録商標)、袋又はこの目的に適したあらゆるコンテナの中に包装可能である。凍結され包装された培養顆粒は標準的に、発酵されるか又は加工されるよう培地の接種に使用されることになるまで確実に凍結状態にとどまるようにする温度に保たれての温度で流通させられる。
【0086】
さらにもう1つの態様においては、本発明は、1)核酸の生合成に関与する1又は複数の化合物又は任意のこのような化合物の1又は複数の誘導体を含む又はこれらから成る群から選択された凍結保護剤を生存可能な生物に対して添加する工程、2)凍結された材料を得るために材料を凍結させる工程、3)凍結材料から水を昇華させる工程、及び4)適切な形で凍結乾燥された材料を包装する工程を含む凍結乾燥培養液を製造する方法を提供している。凍結保護剤(単複)の添加、任意の濃縮工程、凍結(又は凍結乾燥)及び包装工程は、記述通りに実施可能である。
【0087】
凍結培養液は低温で出荷され貯蔵される必要があるものの、凍結乾燥(freeze-dried又はlyophilised)培養液は、乾燥した条件に保たれることを条件として、長時間冷蔵無しで出荷、貯蔵できる。しかしながら、凍結乾燥培養液の場合でさえ、0℃未満での貯蔵が推奨される。
【0088】
標準的には、本発明に従った凍結培養液及び凍結乾燥培養液は両方共、市販のDVS(登録商標)−スタータ又はRedi-Set(登録商標)培養として提供される。DVS(登録商標)スタータ培養液の1つの利点は、それらを凍結又は凍結乾燥された細胞の形で培地の入った生産用発酵装置又はコンテナに直接添加できるという点にある。その結果、生存可能な細胞がほぼ瞬間的に再生される。商業的に流通しているスタータ培養液の多くは、乳酸菌培養液であり、従って、本発明の好ましい実施形態は、記述通りに得られる凍結又は凍結乾燥乳酸菌(LAB)培養液である。
【0089】
さらなる態様においては、本発明は、本発明に従った凍結又は凍結乾燥培養液を用いる工程を含んで成る食品及び飼料製品の調製方法に関する。
【0090】
特定の1実施形態においては、食品はチーズ、ヨーグルト、バター又は液体発酵乳製品例えばバターミルク、Ymer、バター又は飲むヨーグルトといった乳製品である。本発明のもう1つの実施形態においては、食品は、カマンベール、ブリー、アルゼンチン・ポート・サリュー、クレシェンツァ及びゴルゴンゾラを含めた(ただしこれらに制限されるわけではない)ソフトチーズタイプ;エメンタール及びグリュイエールを含めた(ただしこれらに制限されるわけではない)エメンタールチーズタイプ;カテッジチーズを含めた(ただしこれらに制限されるわけではない)カテッジチーズタイプ;フェタ及びホワイトチーズを含めた(ただしこれらに制限されるわけではない)フェタチーズ;ゴーダ、エダム、マスダマール、サン・ポラン、ラクレット、マンチェゴ及びプラトを含めた(ただしこれらに制限されるわけではない)コンチネンタルチーズタイプ;モッツァレラ、ピザチーズ、プロボローネ、及びカスカウァルを含めた(ただしこれらに制限されるわけではない)パスタフィラタチーズタイプ;チェダー、テリトリアルス、アメリカンチェダー、モントレージャック及びコルビーを含めた(ただしこれらに制限されるわけではない)チェダーチーズタイプ;及びグラーナ、パルメザン及びスブリンツを含めた(ただしこれらに制限されるわけではない)グラナチーズタイプ、を含むチーズである。
【0091】
その上、該食品は、食肉製品、野菜製品、及びワインやビールといった飲料の中から選択可能である。
【0092】
本発明に従った方法のもう1つの有意な利用分野は、いわゆるプロビオティックとしての液体スタータ培養液の使用である。「プロバイオティック」という用語は、当該状況において、ヒト又は動物により生存可能な細胞の形で摂取された時点で例えば胃腸管内の有害な微生物を抑制すること、免疫系を増強すること又は栄養素の消化に貢献することによって健康条件を改善させる微生物培養として理解される。かかるプロバイオティック活性のある製品の典型的な例としては「スイート・アシドフィラスミルク」がある。
【0093】
さらなる実施形態においては、本発明に従った方法は、その保存を目的としてサイロ貯蔵されるべき飼料作物内に、又は同じく動物の給餌用にそれを保存する目的で食肉解体臓物及び魚の臓物といったタンパク質富有動物廃棄物中に細菌培養液が接種される、例えば牧草、穀物材料、エンドウ豆、アルファルファ又はサトウ大根の葉といった貯蔵生牧草などの動物用飼料の生産において使用される。
【0094】
本発明はさらに、以下の制限的な意味のない実施例及び図の中で例示されている。
【実施例】
【0095】
材料と方法
培養:
以下の市販の培養液を使用した: F1DaN、CHN14及びCHN19。3つの培養液は全て、F−DVSTMFI−Da N(Chr.Hansen A/S:品番501691)、F−DVSTMCH−N14(Chr.Hansen A/S:品番200118)、F−DVSTMCH−N19(Chr.Hansen:品番501593)としてChr. Hansen A/S、デンマークから凍結したDirect Vat Cultures(F−DVSTM)の形で市販されている凍結LD−培養液である。
発酵培地及び発酵条件:
LD−培養液の培養のための培地組成:
【0096】
LD−培養液を、以下の組成をもつ培地内で培養した:カゼイン加水分解物(Oxoid, Basingstoke, UK, 製品コードL41)、30g/l;Primatone RL(Quest, Naarden, The Netherlands, 製品コード5X59051)、30g/l;大豆ペプトン(Oxoid, Basingstoke, UK, 製品コードL44)、30g/l;酵母エキス(Oxoid, Basingstoke, UK, 製品コードL21)、15g/l;MgSO4、1.5g/l;Na−アスコルビン酸塩、3g/l;及びラクトース50g/l。
【0097】
培地をUHT処理によって滅菌した(8秒間143℃)。仕上った培地のpHは6.5であった。
LD−培養液のための発酵条件:
【0098】
接種材料として上述の培養1%(w/w)を用いて30℃で100l入り発酵タンク内で発酵を実施した。上部空間内に窒素がある状態で約0.2バールの上部空間圧力で嫌気的発酵を実施した。培養液をpH6.0まで酸性化させた。その後13.4NのNH4OHを制御しながら添加することにより、pHを6.0に維持した。
【0099】
さらなる塩基消費が全く検出されなかった場合、それぞれの培地を約10℃まで冷却した。
LD−培養液の発酵後処理
【0100】
冷却の後、発酵ブロス中の細菌を遠心分離により10〜20倍に濃縮し、その後相反する指示のないかぎり1気圧の圧力で液体窒素中でペレットとして凍結させた。凍結後さまざまな時点でペレットの酸性化活性を測定し、相反する指示のないかぎり、さらなる分析まで残りのペレットを−50℃で貯蔵した。
添加物:
【0101】
示された添加物を得た:イノシン−5’−モノ一リン酸(Alsiano A/S, Birkeroed, DK)、アデノシン−5’−一リン酸(AMP)(Sigma A2252)、ウラノシン−5’−一リン酸(UMP)(Sigma U6375)、シチジン−5’−一リン酸(CMP)(Sigma C1006)、ギ酸ナトリウム(Kirsch Pharma, Salzgitter, DE)、アデノシン(Alsiano A/S, Birkeroed, DK)、グアノシン(Alsiano A/S, Birkeroed, DK)及びイノシン(Alsiano A/S, Birkeroed, DK)。
酸性化活性検定及びCFU分析:
【0102】
凍結培養液を、9.5%(w/w)の固形物質を含む200mlのUHT滅菌し還元したスキムミルク(RSM)中に0.01%(w/w)のレベルで接種し、30分間99℃で加熱した(LAB−ミルク)。基質材料の酸性化を可能にするべく6時間30℃でRSMをインキュベートした。例6:分析手順QAm−052「酸性化活性−UHT」、Chr. Hansen A/S(デンマーク)に記述する通りに、酸性化活性を測定した。
DANBO温度−プロフィールに従ったチーズの生産シミュレーション
【0103】
この場合はDANBOチーズである任意の製品の生産のために乳製品業において使用された場合に培養液が標準的に遭遇することになる温度経時変化を反映する温度プロフィールに従って、酸性化を実施する。
【0104】
pHは表2に示されている通りの定時点で測定する。
表2。ダンボー−プロフィール
【表2】

【0105】
実施例7:分析手順 QAm−043、酸性化活性−「プログラミングされた温度プロフィール」Chr. Hansen A/S(デンマーク)に説明されるとおり、酸化活性を測定した。
【0106】
実施例8:分析手順 Q−AM−071、「微生物の列挙」Chr-Hansen A/S(デンマーク)に説明されるとおり、CFU分析を測定し、計算した。
実施例1: Fl−DaNの凍結LD−培養の安定性研究
【0107】
この例では、商業的に生産されたLD−培養液:F−DVSTMFI−DaN(Chr. Hansen A/S:品番501691)の酸性化活性によって測定された安定性を6ヶ月の期間にわたり追跡した。該培養を材料及び方法の節で記述した通りに−50℃で生産し貯蔵した。
【0108】
一般的なものとは対照的に、液体窒素中にペレットとして培養を凍結させた直後に実施し、その後−50℃で1、2、12、20及び188日間の貯蔵後にこの例の第1回活性測定を行った。
【0109】
この実験の結果は、図1に示されている。
【0110】
酸性化活性は、ごく最初の数日間の貯蔵中に劇的に減少した。わずか1週間の貯蔵の後、酸性化活性は0.26pH単位で低減した。この低減は、わずか1週間の貯蔵後の酸性化活性の50%の低減と同等である。2週間の貯蔵後、培養の酸性化活性のさらなる損失はさほど顕著でなくなり、培養の酸性化活性は、残った期間中わずかにしか減少しなかった。
【0111】
この実験の予想外の結果により、発明者らは、例えば市販の凍結LD−培養液といったようないくつかのタイプの市販の関連濃縮凍結乳酸菌培養液の凍結及び貯蔵初期工程に関係する有意でかつこれまで認識されていなかった安定性の問題が存在することに気づいた。
実施例2: 凍結保護剤としてIMPを用いたCH N14の凍結LD−培養液の安定性研究
【0112】
この例は、凍結保護剤としてIMPと共に処方されたCH N14の凍結direct vat set 培養(F−DVS)を用いた安定性研究について記述している。該実験においては、IMPの濃度を濃縮バイオマス1グラムあたり3%w/wに保った。IMPを、30%w/wの無菌溶液として濃縮物に添加した。
【0113】
発酵後、F−DVSTMCH N14の発酵ブロスからバイオマスを収穫し、遠心分離を介して濃縮した。細胞濃縮物を各々300グラムの2部分に分割し、IMPをその一方に添加した。添加物及び濃縮物を30分間混合し、液体窒素中で凍結させ、その後−50℃で貯蔵した。凍結培養液は、凍結材料1gあたり少なくとも1010コロニー形成単位(CFU)という生菌含有量を有していた。−50℃で3日間貯蔵した後に牛乳(LAB−ミルク)中の培養活性を測定し、該活性を最長65日まで定期的に追跡した。
【0114】
酸性化活性として示されたCH N14のF−DVSTMについての安定性プロフィールは図2中に要約されている。
【0115】
添加物を含まないF−DVSTMCH N14が活性を失ってゆくことは明白である。安定性の低減は、−50℃で65日間の貯蔵後CH N14について0.25pH単位に等しい。0.25pH単位は、酸性化活性の50%損失にほぼ等しい(すなわち、安定化された培養液は、安定化されていない培養液のおよそ2倍高い活性をもつ)。
実施例3: 温度プロフィール後に試験された凍結保護剤としてIMPを用いたF−DVSTM CH N14の凍結LD−培養液の安定性研究。
【0116】
この実験では、実施例2に記述されている培養液由来の試料を、−50℃で約2ヶ月間貯蔵した後に試験した。酸性化活性を、シミュレートされた「ダンボー(DaNbo)」温度プロフィールに従ったインキュベーションの間の複数の時点で測定した(表2参照)。発酵培地は、ダンボーチーズの商業的生産に一般に使用されている牛乳と類似の低温殺菌全乳であった。
【0117】
凍結工程に先立って添加されたイノシン−5’−一リン酸(IMP)を伴う及び伴わない培養液の酸性化活性を比較した。
【0118】
低温殺菌全乳の入った1組のボトルに、追加のIMPなしで凍結CH N14培養液を接種した。この場合、添加された培養液の量は、それぞれ0.01%、0.02%及び0.03%、(w/w%)であった。
【0119】
低温殺菌全乳が入ったもう1組のボトルに、凍結に先立って3%(w/w%)のIMPが添加された凍結CH N14培養液を接種した。この場合、添加された培養液の量は0.01%(w/w%)であった。
【0120】
実施例2中に見られるように、IMPを伴わない培養液は、約50%の酸性化活性を喪失し、これは、IMPが添加された培養液が、IMPが添加されていない類似の量の類似の培養液に比較してほぼ2倍の活性を有しているということと等価である。
【0121】
IMPのブースタ効果を例示するために、IMPが添加されていない試料に3つの異なる量のCH N14培養液を用いて接種した。実施例1で得られた結果(すなわち、IMPが添加されていない培養液の貯蔵の間に50%をわずかに下回る活性が失われる)から判断すると、IMPが添加された培養液の0.01%接種材料の酸性化活性は、IMPが添加されていない培養液の0.01%〜0.02%接種材料の酸性化活性の間のどこかにくるものと予想される。
【0122】
しかし、図3中に例示される通り、これはあてはまっていない。IMPが添加された培養液の0.01%接種材料の酸性化活性は、結局、IMPが添加されていない培養液の0.02%〜0.03%接種材料の酸性化活性の間のどこに来るかわかった。この追加活性を我々は、添加されたIMPのブースタ効果に原因あるとしている。
【0123】
この実験は、培養液に対するIMPの添加が、IMPが添加されていない類似の量の類似の培養液の添加に比較して2〜2.5倍高い活性を結果としてもたらすことを示している。
【0124】
実施例2では、牛乳がかなりきびしい熱滅菌手順に付されていたことから(すなわちLABミルク)ブースタ効果は実施例2の中では明白ではない。我々の経験では、チーズの製造に用いられる牛乳は標準的に低温殺菌牛乳であるため、このような牛乳においてブースタ効果が最も顕著である。
実施例4: CH−N19の凍結中の活性損失。
【0125】
この例は、培養凍結保護剤としてIMPを用いて処方したCH N19培養液の凍結中の活性損失について記述している。実験中、IMPの濃度を、濃縮バイオマス(無菌の30%w/w溶液として添加)1グラムあたり3%w/wに保った。
【0126】
発酵後にCH−N 19培養液の発酵ブロスからバイオマスを収穫し、遠心分離を介して濃縮した。細胞濃縮物を300グラムの2部分に分割し、その一方にIMPを添加した。添加物及び濃縮物を30分間混合し、その後2つの部分150gずつを液体窒素中で凍結させた。培養液は、凍結材料1gあたり少なくとも1010コロニー形成単位(CFU)という生菌含有量を有していた。IMPが添加されている又はされていない凍結及び非凍結培養液を、生産直後にその酸性化活性について試験した。牛乳(加熱滅菌されたLAB−ミルク)中の培養活性を測定した。
【0127】
図4に示されている結果は、IMPを添加することなく培養液を凍結させた場合、酸性化活性損失が0.06pH単位であったことを示している。0.06pH単位の損失は、5〜10%の酸性化活性損失と等価である。しかしながら、IMPがこの培養液に添加されていた場合は、有意な活性損失が全く観察されなかった。0.01pH単位の差異は、図中のエラーバーによって示されるような標準誤差と同じ規模のものである。
【0128】
IMPが同様に凍結保護剤として作用しかつこの種の培養液の凍結が及ぼす影響を弱めることができるという結論が得られた。
実施例5: F−DVSTMFl−DaNの培養液を用いたIMPについての用量応答
【0129】
この例は、凍結保護剤としてIMPを用いて処方したFl−DaNの凍結培養液(F−DVSTM)を用いた用量応答研究について記述している。実験中、IMPの濃度は、濃縮バイオマス1グラムあたり0%、0.1%、0.5%、1%、3%及び6%w/wであった。添加剤を30%の無菌溶液として濃縮物に添加した。
【0130】
発酵後に、Fl−DaNの発酵ブロスからバイオマスを収穫し、遠心分離を介して濃縮した。細胞濃縮物を300グラムの6部分に分割し、各部分に対してIMPを添加した。凍結プロセス中の工業的状況に類似した状況をシミュレートするために、添加物及び濃縮物を混合し8℃で5時間貯蔵し、その後液体窒素中で凍結させ、さらに−50℃で貯蔵した。かくしてこの例を先行する例と比較することはできない。該凍結培養液は、凍結材料1gあたり少なくとも1010コロニー形成単位(CFU)という生菌含有量を有していた。凍結培養液が処方された同日に牛乳(LAB−ミルク)中の培養活性を測定した。
【0131】
結果は図5に示されている。
【0132】
これらの結果から、IMPが添加されずに凍結された濃縮培養液が、最大の酸性化活性損失を示したことは明らかである。最適な結果(すなわち、酸性化活性の最小の減少)は、3%(w/w%)IMPを添加した場合に得られた。
実施例6: 分析手順QAm−052、「酸性化活性−UHT」、Chr. Han sen A/S (デンマーク)。
応用
【0133】
この方法は、酸性化活性を決定するために用いられる。
原理
【0134】
F−DVSTM及びFD−DVS製品について:
【0135】
培養液を希釈して牛乳中に接種する。一定の与えられた温度及び時間でインキュベートする。インキュベーション後にpHを測定する。
【0136】
凍結Redi−Set(登録商標)(F−RS)及び凍結乾燥Redi−Set(登録商標)FD−RS製品について:
【0137】
これらの製品については、活性分析は2つの成長工程から成る。一定の与えられた温度及び時間にわたり牛乳中で培養液を成長させることによりバルクスタータを調製する。その後牛乳中にバルクスタータを接種して、新たにインキュベートした後にpHを測定する。
分析パラメータ
【0138】
製品分析パラメータの記述は、実験室情報管理システム(Laboratory Information Management System (LIMS))中で読みとることができる。例:牛乳のタイプ、第1回及び第2回秤量時の牛乳の温度、インキュベーション時間、インキュベーション温度、試料のための接種百分率及び対照標準。
器具と試薬
【0139】
pH−計;pH電極;校正用緩衝液、pH7.00±0.01及びpH4.01±0.01;サーモスタット付き水浴、精度±0.2℃;温度センサー;天秤、精度小数点第2位を最小値として0.01g;回転器具;温度計;時計;磁気撹拌装置;磁石;50ml入りビーカー。
手順
【0140】
分析の準備:
【0141】
註: 全てのフラスコは同一バッチ由来すなわち、同一日付のものでなければならない。
【0142】
分析開始の16時間以上前に、全てのボトルの蓋を緩めておく。水浴(単複)をインキュベーション温度に調節する。第1回秤量用のボトルを接種温度に調節する(低温又は高温のいずれの牛乳でも良い)。pH4.01及びpH7.00の緩衝液を、pH計校正の少なくとも30分前にインキュベーション温度で水浴中に置く。
【0143】
註: インキュベーション前に4℃で氷浴中に置かれる試料については、水浴の加熱は、タイマーにより開始される。
【0144】
分析前の試料の調製
【0145】
凍結培養液: 凍結試料/対照標準を第1回秤量の前にドライアイス入りの発泡材ボックス内に置かれ、全ての秤量が行われるまでその中に保たれる。
【0146】
使用前に解凍される凍結培養液:
【0147】
凍結製品については、カートン1個全体が使用される場合、該製品は、現地の指示事項などに従って解凍される。解凍後は、試料は、使用するまで最長30分間4℃に保つことができる。缶詰の凍結培養液については、中味を解凍するために、缶を20分間22℃で水浴中に置く。解凍後、培養液を使用まで最長30分間4℃に保つことができる。
【0148】
凍結乾燥培養液:
【0149】
凍結乾燥試料/対照標準を、分析開始まで少なくとも15分間室温に順化させる。
【0150】
接種手順
【0151】
第1回秤量/希釈:
【0152】
第1回秤量用のボトルを天秤の上に置き、目盛をゼロに設定する。
【0153】
製品/対照標準の秤量は、牛乳内で直接行われる。
【0154】
接種が中温の牛乳中で実施される場合は、第1回秤量のための時間が常に入力される。接種材料の実際の量(第1回秤量)は、少なくとも小数点第2にまで入力される。
【0155】
製品が分布してしまうまで又は最大10回、凍結及び解凍製品を入念に振盪し、その後ボトルを約50秒間放置する。
【0156】
凍結乾燥製品の場合、5分間又は製品が分布してしまうまで回転器具(2速)が使用される。
【0157】
註: L.アシドフィルス、ビフィドバクテリウム又はL.カゼイの凍結乾燥製品の場合、全ての接種は無菌実験台中で実施される。
【0158】
第2回秤量
【0159】
第2回秤量用のボトルを天秤の上に置き、目盛をゼロに設定する。
【0160】
凍結及び解凍製品の場合、第2回秤量を実施する前に希釈ボトルを入念に振盪する。第2回秤量は、現行の品質管理(Qc)手順に従って1分で実施する。
【0161】
凍結乾燥製品の場合、第2回秤量は現行のQcに従って実施する。
【0162】
接種が低温/中温の場合、第2回秤量のための時間が入力される。接種材料(第2回秤量)の実際量は、少なくとも小数点第2位まで入力される。
【0163】
活性ボトルを回して次の試料/対照のために接種手順を反復する。
【0164】
同一の第1回秤量から接種される活性ボトルは、連続的に接種される。
【0165】
註: 混合製品の秤量:
【0166】
最初に、各対照標準/単一株から1つの第1回秤量を準備する。これらの各々から同一の活性ボトルに対して第2回秤量を実施し、かくしてこれは全ての対照標準/単一株を含むことになる。
【0167】
凍結製品の場合、最初の秤量から最後の第2回秤量までの時間は、最長5分でなければならない。凍結乾燥製品については、最初の第1回秤量から最後の第2回秤量までの時間は、最長10分でなければならない。
【0168】
最後に、未接種の牛乳ボトルを水浴中に置く。
【0169】
第1回秤量が低温牛乳中で行われる製品の場合:
時間(measurement) = 時間2.weighing + 時間incubation
又は、第1回秤量が高温の牛乳で行われる製品の場合:
時間(measurement) = 時間1st weighing + 時間incubation
【0170】
註: さらに長時間酸性化についても分析される製品の場合、このための接種は酸性化活性についての接種と同時に実施することができる。
【0171】
酸性化活性のために使用された第1回秤量に基づき、インキュベーション温度まで加熱される水浴中でのインキュベーションまで4℃に置かれる低温活性牛乳の中で第2回秤量を行うことができる。この場合、ボトルは、一定の与えられたインキュベーション時間よりも30分長くインキュベートされる。
【0172】
註: 酸性化時間が長いために試料/対照標準の接種及びpH測定の両方が通常の作業時間では不可能である製品については、第1回及び第2回秤量を低温牛乳中で実施することができる。
【0173】
活性牛乳の接種後、冷却しながら水浴中にボトルを置く。コンタクトウォッチからの温度センサーを未接種牛乳の入ったボトル中に置く、それを水浴中に置く。一定の与えられた時間で水の加熱が開始するようにコンタクトウォッチを接続させ、最初の製品についての温度で、インキュベーション時間が開始する。
【0174】
註: 1つ以上の水浴を使用する必要がある場合、対照標準は、接続された試料と一緒に同じ水浴中でインキュベートされなければならない。
【0175】
電極測定
【0176】
電極の校正とメンテナンスに関する現行の指示事項に従って校正を実施する。
pH計の測定
【0177】
試料/対照標準中で時間measurementでpHを測定しなければならない。時間が1分を超えて超過した場合、それを書き留める。時間が2分を超えて超過する場合は、測定を省略する。測定時点の直前に、ボトルを180°回転させる。
【0178】
pH測定は、ボトル中又は磁石撹拌しながら50ml入りビーカー内に注ぎ込まれる試料中で実施される。
【0179】
pHは少なくとも小数点第2位まで入力する。
【0180】
該測定に関して考えられる指摘事項を入力する。全て試料/対照標準及び未接種牛乳が測定されるまで測定手順を継続する。未接種の牛乳ボトル中で水浴の温度を測定し、業務日誌中に入力する。
【0181】
最後に、校正用緩衝液中のpHを測定する。
実施例7: 分析手順QAm−043、酸性化活性−「プログラミングされた温度プロフィール」Chr. Hansen A/S (デンマーク)。
応用
【0182】
この方法は、Pearce試験に従って、又、酸性化が実施されるその他の状況では、例えばダンボー・プロフィールなどの温度プロフィールに従って酸性化活性を決定するために用いられる。唯一Pearce試験のみがIDF規格(国際乳製品連盟規格)に内含されている。
原理
【0183】
酸性化は、一定の与えられた乳製品の生産のために乳製品場で使用された場合に培養液が標準的に遭遇する温度経過を反映する温度プロフィールに従って実施される。
【0184】
Pearce試験の場合、これはチェダー製品を生産する間のチーズ製造温度である。
【0185】
pHは定時刻に測定する。
【0186】
分析中にレンネットが添加されない培養液の場合、連続pH測定を適用することができる。
分析パラメータ
【0187】
製品特定的である分析パラメータは、LIMS中に示されている。
【0188】
温度プロフィールの定義(Pearceプロフィールが用いられない製品の場合)。
【0189】
使用すべき対照標準
【0190】
pH測定のタイプ。
【0191】
試料及び対照標準についての接種百分率
【0192】
希釈牛乳: 206.9g、低温(4℃)LAB−ミルク(すなわち、9.5%(w/w)の固形分を含み30分間99℃に加熱された、UHT−滅菌還元スキムミルク(RSM))。
【0193】
活性牛乳: 200g、低温(4℃)、低温殺菌全乳、脂肪分3.5%。
【0194】
レンネット: Naturen(登録商標) 標準190、水で1:40に希釈されたもの。
器具と試薬
【0195】
pH計/半連続pH測定のためのpH計eks。Radiometers(登録商標) PHM92。
【0196】
pH電極 Radiometer(登録商標) PFC2401。
【0197】
緩衝液: pH7.00±0.01及びpH4.01±0.01。
【0198】
あらかじめ決定された温度プロフィール±0.2℃に従って加熱するようにプログラミングされたサーモスタットを伴う水浴。
【0199】
温度センサー。
【0200】
小数点第2位を最小値として0.01gの精度を有する天秤。
【0201】
時計。
【0202】
磁気撹拌装置。
【0203】
磁石。
【0204】
50ml入りビーカー。
【0205】
小型プラスチックカップ。
【0206】
回転器具。
手順
【0207】
分析の準備
【0208】
全てのボトルは、同じバッチ、すなわち同じの日付のついたものでなければならない。
【0209】
水浴(単複)を、使用すべき温度プロフィールの初期温度に調節する。
【0210】
希釈用(=第1回 秤量)及び活性用(第2回秤量)のボトルを、使用直前まで4℃に置く。
【0211】
pH4.01とpH7.00の緩衝液を、pH計の校正より少なくとも30分前に規定の測定温度±0.2℃で水浴中に置く。
【0212】
分析前の試料の前処理.
【0213】
凍結培養液:
【0214】
凍結試料/対照標準を、第1回秤量の前にドライアイス入りの発泡材ボックス内に置き、全ての秤量が行われてしまうまでそこに保つ。
【0215】
使用前に解凍される凍結培養液:
【0216】
カートン1個全体が使用される凍結製品については、現行の指示事項に従って製品を解凍する。
【0217】
解凍後は、使用前に最長30分間4℃に試料を保つことができる。
【0218】
凍結乾燥培養液:
【0219】
凍結乾燥試料/対照標準を、分析開始まで少なくとも15分間室温に順化させる。
【0220】
試料は、それが後日再試験に使用される予定であること条件として、+8℃で貯蔵することができる。
【0221】
接種手順
【0222】
製品/標準対照の秤量は直接牛乳中で実施される。
【0223】
接種材料の実際の量(第1回秤量)は、少なくとも小数点第2にまで入力される。
【0224】
凍結及び解凍製品は約4回反転させ、その後ボトルを約50秒間放置する。
【0225】
凍結乾燥製品については、回転器具を使用しなければならない。5分間又は製品が完全に溶解するまで器具を高速で運転しなければない。これは、テーブル上にボトルをしばらく放置し、その後ボトルの底の見て溶液を点検することにより検査される。
【0226】
註:
【0227】
作業手順上都合が良い場合は、低温の第1回秤量を第2回秤量前に室温で最長15分間放置しておくことができる。
【0228】
第2回秤量:
【0229】
第2回秤量を実施する前に、希釈ボトルを回転させる。
【0230】
接種材料(第2回秤量)の実際量は、少なくとも小数点第2位まで入力される。
【0231】
活性ボトルを回転させて次の試料/対照のために接種手順を反復する。
【0232】
同一の第1回秤量から接種される活性ボトルは、連続的に接種される。
【0233】
第2回秤量の前後いずれかに、2mlのレンネットを各ボトルに添加する。その後、レンネットが分布した状態となるようにこのボトルを回転させる。
【0234】
ダンボー・プロフィールにはレンネットを添加しない。
【0235】
(IDFの規格ではない)
【0236】
その後、6に記述されている通りに、複数のボトルを一度にインキュベートする。
【0237】
最後に、未接種牛乳ボトル2本を水浴中に置く。1本は、水浴温度の測定用、そしてもう1本はブラインドの牛乳中のpH測定用である。
インキュベーション
【0238】
註: さらに多くの水浴が必要である場合、対応する試料を伴う対照標準を、同一水浴中でインキュベートしなければならない。
【0239】
全ての活性ボトルは、温度プロフィールについて規定の開始温度で余熱された水浴中で同時にインキュベートされる。
【0240】
該温度プロフィールは、ボトルが水浴中に置かれるのと同時に開始される。
【0241】
それ以降、インキュベーション温度は、一定の温度プロフィールに従うようにプログラミングされたサーモスタットにより制御される。Pearce試験については、表3を、及びダンボーについては表4を参照のこと。
【0242】
水浴中の水位は、牛乳の液面よりも最低2cm高くなければならない。
牛乳。表3。Pearceプロフィール中の温度プログラム(IDFに準ずる)
【表3】

表4: ダンボー−プロフィール
【表4】

【0243】
註: 3時間30分の時点で、冷却水のスイッチを入れる。
* 手動で06:00時間±2分後のpH測定は、25.5℃±0.5℃の水浴中温度に対応する。
pH電極の校正
【0244】
電極の校正及びメンテナンスに関する現行の指示事項に従って初期温度で校正を実施する。
pHの測定
【0245】
インキュベーションの後、ボトルを十分に振盪させてpHを測定する。
【0246】
pH測定は、ボトル中又は磁石撹拌のついた50ml入りのビーカー内に注き込まれる試料中で実施される。
【0247】
pHは少なくとも小数点第2位まで入力する。
【0248】
該測定に関して考えられる指摘事項を入力する。
【0249】
全て試料/標準対照及び未接種牛乳が測定されるまで測定手順を継続する。
【0250】
最後に、校正用緩衝液中のpHを測定する。
【0251】
連続pH測定
【0252】
pH値は、温度プロフィールが開始された瞬間からサンプリングされる。インキュベーションが完了した後、初期温度で両方の緩衝液中の測定pH値を記録する。
実施例8: 分析手順Q−AM−071、「微生物の列挙」Chr- Hansen A/S (デンマーク)
適用範囲
【0253】
この方法は、様々なスタータ培養液中の乳酸菌の列挙及び交差汚染物質の計数に用いられる。該方法は、現行の品質管理(Qc)手順に従った関係する培養の分析的プログラムと共にしか応用可能でなく、そのため本明細書中の分析的パラメータを参照しなければならない。
原理
【0254】
該方法は、定量的方法であり、結果はCFU/gとして報告される。
【0255】
既知の量の試料を希釈剤で均質化し、十進希釈物を調製する。適切な希釈物をLeesment 寒天と混合するか、表面上に展延する。インキュベーション後、全てのコロニーを計数する。
サンプリング
【0256】
試料が検査対象製品を可能な限り代表するような形で、立証済みの微生物学的原理に従って試料を採取する。
器具及び ガラス製品
【0257】
250ml入りボトル
【0258】
栓付きの20ml試験管
【0259】
オートクレーブ、±1℃で作動
【0260】
感度±0.2のpH計
【0261】
±0.01gで作動する天秤
【0262】
旋回ミキサー
【0263】
ストマッチャー
【0264】
無菌のストマッチャーバッグ、400ml
【0265】
±1℃で作動するインキュベータ
【0266】
水浴、±1℃で作動
【0267】
無菌ピペット
【0268】
ペトリ皿、9cm
【0269】
無菌のDrigalskiスパチュラ
培地
表5。希釈剤、内容物
【表5】

【0270】
調製
【0271】
成分を1000mlの蒸留水中に懸濁させる。頻繁に撹拌しながら沸点まで加熱する。希釈剤をボトル又は試験管内に分注し、15分間121℃でオートクレーブ処理する。
【0272】
オートクレーブ処理後のpH: 7.0±0.2。
【0273】
オートクレーブ処理後のボトル内容量: 99.0±1.0ml。
【0274】
オートクレーブ処理後の試験管内容量: 9.00±0.05ml。
【0275】
希釈剤(表5)をすぐに使用しなくてはならない場合には、20℃以下まで冷却すること。
【0276】
貯蔵
【0277】
調製された希釈剤(表5)は、暗所に5℃で6ヶ月間貯蔵することができる。
表6。Leesment寒天、内容物
【表6】

【0278】
調製
【0279】
成分を1000mlの蒸留水中に懸濁させる。完全な溶液になるまで頻繁に撹拌しながら沸点まで加熱する。培地をボトル中に分配し、15分間121℃でオートクレーブ処理する。オートクレーブ処理後のpH:6.8±0.2。
【0280】
培地を直ちに使用しなければならない場合は、水浴中で約47℃まで冷却すること。全てのCR−培養液について、使用前に50%のグルコース溶液2mlを200mlのLeesment寒天(表6)に添加しなければならない。
【0281】
展延平板固定用に培地を使用する場合、12−15mlの溶融培地をペトリ皿中に注ぎ、無菌実験台内で30分間培地を固まらせ乾燥させる。
【0282】
グルコース溶液
【0283】
2.0gのグルコースを100mlの蒸留水中で解凍する。次に溶液を0.20nMのフィルターを用いて無菌濾過する。
【0284】
Leesment-グルコース寒天
【0285】
使用直前に、2mlの50%グルコース溶液を200mlのElement寒天(表6)に添加する。
【0286】
貯蔵
【0287】
調製されたLeesment 寒天(表6)は、暗所に5℃で6ヶ月間貯蔵することができる。
【0288】
プラスチック袋中に包装された注入済み平板は、暗所に5℃で10日間貯蔵することができる。
手順
【0289】
註: 試料を秤量してから、試料を注入平板固定する或いは展延平板固定するまでの分析期間は、30分を超過してはならない。
【0290】
微生物学的検査を開始する前に、沸騰水浴中で又はオートクレーブ内での沸騰により培地を溶融させ、次に水浴中でこれを47±1℃まで冷却する。
【0291】
註: 予備注入された平板を使用しなければならない場合、平板固定前に培地の表面は乾燥していなければならない。
【0292】
関係する製品の分析プログラム又はQcでは、以下のものが与えられる:
【0293】
a) 第1の希釈物(D1)に用いられるグラム量(X)
【0294】
b) ストマッチャー内での分数(M)
【0295】
c) 適切な希釈物(D2)
【0296】
d) 播種すべき量(Aml)
【0297】
e) インキュベーションパラメータ
【0298】
f) 平板固定方法
【0299】
希釈物の調製
【0300】
無菌ストマッチャーバッグ中にXグラムの製品を秤量し、第1の希釈物(Dl)を作るのに充分な量の無菌希釈剤を秤量することによって添加する。バッグをストマッチャー内に置き、(M)分間処理する。都合が良い場合は、バッグの内容物を空の無菌ボトル内に注ぐ。無菌ピペットを用いて、最も低い希釈物から無菌の希釈剤が入ったボトル又は試験管内に0.1又は1.0mlずつ移して、次の希釈物を作る(今度はこれが最も低いものになる)。
【0301】
ボトルを30°の角度で7秒間20〜25回振盪させることによりボトルの内容物を混合する。試験管の内容量を旋回ミキサー上で、3×1秒間最大速度で混合する。
【0302】
泡が収まらせ、適切な希釈物(D2)(単複)に到達するまで項目4と5を反復する。
【0303】
注入平板固定。
【0304】
無菌ピペットを用いて、Amlの適切な希釈物(D2)をペトリ皿の中に移す。10〜12mlの溶融培地を47±1℃以下の温度で各ペトリ皿の中に注ぎ、試料と十分に混合する。無菌性の対照として10〜12mlの溶融培地を空のペトリ皿内に注ぐ。培地が固まるまで皿を清浄な水平の表面上に放置する。皿を裏返して、関係する製品Qcに従ってインキュベートする。
【0305】
展延平板固定。
【0306】
無菌ピペットを用いてAmlの適切な希釈物(D2)を培地の表面上に移す。無菌のDrigalskiスパチュラを用いて試料を培地全体にわたり展延する。無菌性の対照として未接種のペトリ皿を用いる。皿を裏返す前に培地に試料を吸収させて、関係する製品Qc従ってインキュベートする。
コロニーの計数
【0307】
合計生存細胞計数するためには、30〜300個のコロニーを含むペトリ皿を選択する。全てのコロニーを計数する。
【0308】
交差汚染物質を計数するためには、300個を超えるコロニーを含まないペトリ皿を選択する。全てのコロニーを計数する。
【0309】
註: 交差汚染物質の計数によって、分析対象の製品がピンポイントコロニーを生成することがあり、これが背景に曇りを生じさせることになる。従って、 曇りの中のピンポイントコロニーよりも大きいコロニーのみを計数する。
計算
【0310】
計数後、標準の統計学的手順に従って平板計数上についてχ2試験を実施しなければならない。
【0311】
註: 該方法が交差汚染物質のために使用される場合、χ2試験は実施されない。
【0312】
χ2試験が受け入れられない場合、結果は認められず分析は反復される。
【0313】
χ2試験が受け入れられた場合、CFU/gの平均数(N)を以下の等式に従って計算する:
N=(Σc)/((nl+0.ln2)d)
ここで:
Σcは、全てのペトリ皿上で計数されたコロニーの合計であり;
nlは、 第1の希釈物のペトリ皿数であり;
n2は、第2の希釈物のペトリ皿数であり;
dは、第1の希釈物に対応する希釈計数である。
結果の報告
【0314】
計算された計数は、上述の例の通りに又は有効数を2桁として丸めた数値で報告することができる。
【0315】
外部に報告される結果は、常に丸めた数値でなくてはならない。

【0316】
19,184は丸めて19,000となり、1.9×104として報告される。
【0317】
294×108は丸めて290×108となり、2.9×1010として報告される。
【0318】
数字が3桁の場合、3桁目の数字を最も近いゼロに丸める。すなわち、3桁目の数字が5で前の桁の数字が偶数の場合は、切り下げる。前の桁の数字が奇数の場合は、切り上げる。
【0319】
28,500は28,000に丸める。
【0320】
11,500は12,000に丸める
実施例9: FI−DaNの凍結乾燥LD−培養の安定性研究
【0321】
この例では、凍結保護剤としてのIMPを伴って又は伴わないで処方されたFl−DaNの凍結乾燥培養液(FD−DVS)の製造中の改変度の比較を行う。実験においては、IMPの濃度を濃縮バイオマス1グラムあたり0%及び3%w/wであった。添加剤を30%の無菌溶液として濃縮物に添加した。
【0322】
発酵後、Fl−DaNの発酵ブロスからバイオマスを収穫し遠心分離を介して濃縮した。細胞濃縮物を300グラムの2つの部分に分割し、その一方にIMPを添加した。凍結プロセス中の工業的状況において遭遇する状況をシミュレートするために、添加物及び濃縮物を混合し、8℃で5時間貯蔵し、その後液体窒素中で凍結させ、さらに凍結乾燥の前に1日間−50℃で貯蔵した。凍結乾燥が完了した後、培養を分析まで−50℃で貯蔵した。凍結培養液は、凍結材料1gあたり少なくとも1010コロニー形成単位(CFU)という生菌含有量を有していた。−50℃で7日間貯蔵した後に牛乳(LAB−ミルク)中の培養活性を測定した。
【0323】
結果は図6に示されている。
【0324】
IMPが添加されていない凍結乾燥DVS Fl−Dnがより多くの活性を損失したことは明白である。安定性の減少は、−50℃で7日間の貯蔵後Fl−DnNについて0.25pH単位に等しい。0.25pH単位は、酸性化活性の50%損失にほぼ等しい。
実施例10: 凍結保護剤として核酸の生合成に関与する異なる化合物を用いたF−DVSTMFI−DaNの凍結LD−培養液の安定性研究。
【0325】
この例は、凍結保護剤としてヌクレオチドIMP又はGMP(グアノシン−5’−一リン酸)又はヌクレオシド、イノシンのいずれかを伴って処方された凍結direct vat set 培養液F−DVSTMFI−DaN(Chr. Hansen A/S 品番501691)を用いた安定性研究について記述している。実験中、IMP、GMP又はイノシンの濃度は、濃縮バイオマス1グラムあたり3%w/wに保たれた。IMP及びGMPは、25%w/wの無菌水溶液として濃縮物に添加され、一方イノシンは乾燥粉末として添加された。イノシンの場合、IMP又はGMPの添加の場合に加えられた量に等しい量で、培養に水が添加された。
【0326】
発酵後、F−DVSTMFI−DaNの発酵ブロスからバイオマスを収穫し遠心分離を介して濃縮した。細胞濃縮物を各々300グラムの4つの部分に分割し、部分の1つに対してIMP、GMP又はイノシンを添加し、1つには何も添加しなかった。添加物及び濃縮物を30分間混合し、液体窒素中で凍結させ、その後−50℃で貯蔵した。凍結培養液は、凍結材料1gあたり少なくとも1010のコロニー形成単位(CFU)という生菌含有量を有していた。培養液を凍結させたのと同じ日に牛乳(LAB−ミルク)中の培養活性を測定し、該活性を最長13日まで定期的に追跡した。
【0327】
酸性化活性として示されたF−DVSTMFI−DaNについての安定性プロフィールは、図7に要約されている。
【0328】
添加物を含まないF−DVSTMFI−DaNが活性を損失してゆくということは明白である。イノシンにより安定化された培養に比べて、イノシンが添加されていない培養液の安定性の減少は、−50℃で13日間の貯蔵後F−DVSTMFI−DaNについて0.41pH単位に等しい。0.41pH単位は、酸性化活性の60%損失に対応する。同様に、GMPが添加された又はされていないF−DVSTMFI−DaN培養の間の安定性の差異は、0.31pH単位に等しく、これは、酸性化活性の50%損失に対応する。
実施例11: 凍結保護剤として核酸の生合成に関与する異なる化合物を用いたF−DVSTMFI−DaNの凍結LD−培養の長期安定性の研究。
【0329】
この例は、凍結保護剤としてヌクレオチドIMP又はGMP(グアノシン−5’−一リン酸)又はヌクレオシド、イノシンのいずれかを伴って処方された凍結direct vat set培養液F−DVSTMFI−DaN(Chr. Hansen A/S:品番501691)を用いた長期安定性の研究について記述している。活性を長時間にわたり監視したという点を除いて、実験の詳細は例10に記述されている通りである。
【0330】
酸性化活性として示されたF−DVSTMFI−DANについての安定性プロフィールは、図8に要約されている。
【0331】
F−DVSTMFI−DaNの初期工程の貯蔵中に報告された傾向は、21日、さらには49日に至るまで延長可能であると思われる。同様に、長期貯蔵の間、イノシンは、それ自体IMPより優れているGMPよりもさらに一層優れたF−DVSTMFI−DaNの凍結保護物質であるように思われる。さらに、この実験は、貯蔵の初期工程中に凍結保護剤としてイノシンを用いることの利点を、長期貯蔵状況にまで拡大できるというを示している。かくして凍結保護剤としてイノシンを使用した結果として、長期貯蔵後でさえ酸性化活性が2倍以上強化された製品がもたらされるものと予想される。
【0332】
市販の凍結培養液の平均貯蔵寿命が1年であることから、これは重要な結果である。
実施例12: 異なる添加物がFl−DaNの凍結乾燥LD−培養の安定性に及ぼす効果。
【0333】
この例は、凍結保護剤として作用し得る一定数の異なる添加物を伴う或いは伴わずに処方されたFl−DaNの凍結乾燥LD−培養液(FD−DVS)の安定性について記述している。実験中、図中には相反する指示のない限り、様々な添加物の濃度は濃縮バイオマス1グラムあたり3%w/wであった。
【0334】
発酵後、材料と方法の節で記述した通りにFI−DaNの発酵ブロスからバイオマスを収穫し遠心分離を介して濃縮した。細胞濃縮物を一定数の部分に分割し、各々の部分に添加した。凍結プロセス中の工業的状況において遭遇する状況をシミュレートするために、添加物及び濃縮物を混合し8℃で5時間貯蔵し、その後液体窒素中で凍結させ、さらに凍結乾燥前に1日間−50℃で貯蔵した。凍結乾燥が完了した後、分析まで培養液を−50℃で貯蔵した。凍結乾燥培養液は、凍結乾燥材料1gあたり少なくとも1010コロニー形成単位(CFU)という生菌含有量を有していた。−50℃で1日及び2ヶ月間貯蔵した後に酸性化活性検定により牛乳(LAB−ミルク)中の培養活性を測定した。
【0335】
結果は図9及び10に示されている。
【0336】
この実験から、異なる添加物が凍結乾燥DVSTMFl−DnN培養液の安定性に対して非常に異なる効果を及ぼすことが明白である。さらに、この実験は、貯蔵の初期工程中に最適であるように思われる添加物が長期貯蔵中は必ずしも最適でないことも示している。これは、3%w/wのイノシン又はアデノシンを培養液に添加することの効果により例示される。−50℃で1日のみの貯蔵後に試験した場合、3%w/wイノシン及び3%w/wアデノシンの両方が、培養液の安定性を確保する上できわめて効率が良いと思われるが、−50℃で2ヶ月間の貯蔵後では、3%w/wのCMP、UMP又はIMPのほうが好ましいことが明らかであった。驚くべきことに、−50℃で2ヶ月間の安定性実験の結果(図10)は、アデノシンが培養液にとって有害であることを示している。比較のために、周知の凍結保護剤であるMSG(グルタミン酸一ナトリウム) (Font de Valdez、1983)が実験に含み入れられている。さらに、3%w/wが凍結培養液にとっては不利であることから、ギ酸ナトリウムの濃度がl/2%w/wであることにも留意すべきであろう。下記の実施例15を参照のこと。
実施例13: 添加物組合せが、毎分1℃の凍結速度で凍結された凍結L. bulgaricus培養液の安定性に及ぼす効果。
【0337】
この例は、凍結L. bulgaris培養液の製造が暗示する活性に対し、2つの潜在的凍結保護剤(IMP及びイノシン)の組合せの添加が及ぼす効果について記述している。該例では、かかる添加を伴う及び伴わない培養液の活性が比較された。
【0338】
L. bulgaricus培養液を、40℃で12時間MRSブロス(Difco)中で培養した。培養液を12℃まで冷却し、培養のpHを6.0に調整した。冷却の後、発酵ブロス中の細菌を遠心分離により10〜20回濃縮し、添加物を加え、その後−50℃に到達するまで毎分約1℃の冷却速度を保証する制御された冷却を伴う冷凍装置の中で緩慢に凍結させた。培養液を、翌日、酸性化検定が実施される前まで(約18時間)−50℃で貯蔵した。検定が0.02%w/wの接種材料をベースとしており5時間40℃で実施されたという点を除き、材料及び方法の節で記述した通りに酸性化検定を実施した。
【0339】
実験中、3%w/wIMP及び2%w/wイノシンを凍結保護剤として添加し、ここでw/wは濃縮バイオマス1グラムあたりの添加剤の重量を表す。IMP及びイノシンを水溶液として濃縮物に添加し、その結果培養液の体積は13%増大した。この増大は、図11に提示されているデータ中では考慮されていない。かくして、凍結保護効果は、図中に示されているものよりさらに大きいものである。
【0340】
この実験は、本発明に従った2つの添加物の組合せが、3%w/wのIMP及び2%w/wのイノシンの場合に、培養液を著しく安定したものにすることを示している。安定性の差異は、−50℃で1日貯蔵した後のL. ブルガリカス(bulgaricus)培養液について0.26pH単位に等しい。0.26pH単位は酸性化活性の50%の差異にほぼ等しい(すなわち、安定化された培養液は、安定化されていない培養に比べておよそ2倍の活性をもつ)。この実験はさらに、IMP及びイノシンの凍結保護効果を、緩慢に凍結させた培養液を含むようにも拡張できることを示している。
実施例14: 添加物組合せが凍結B. インファンチス(infantis)の生存度に及ぼす効果。
【0341】
この例では、3%w/wのIMP及び2%w/wのイノシン組合せが、緩慢に凍結させた ビフィドバクテリウム・インファンチス(Bifidobacterium infantis)の安定性に及ぼす効果が探究されている。
【0342】
ビフィドバクテリウム・インファンチス(Bifidobacterium infantis)培養液を、MRSブロス(Difco)中で培養した。培養液を12℃まで冷却し、培養液pHを6.0に調節した。冷却の後、発酵ブロス中の細菌を遠心分離により10〜20回濃縮し、添加物を加え、その後濃縮培養液を液体窒素中に滴下することによって急速に(培養液A)か又は−50℃に到達するまで毎分約1℃の冷却速度を保証する制御された冷却で冷凍装置中で培養液を冷却することによって緩慢に(培養液B及び培養液C)培養液を凍結させた。翌日、「材料及び方法」に記述されている通りに生存度検定(CFU検定)を実施する前まで(約18時間)培養液を−50℃で貯蔵した。
【0343】
この実験は、ビフィドバクテリウム・インファンチス(Bifidobacterium infantis)の急速に凍結させた培養(培養液A)に比べて、緩慢に凍結させた培養液(B)の生存度が大幅に低減することを示した。重要なことに、この実験はさらに、本発明に従った2つの添加物(すなわち、この場合は3%w/wのIMP及び2%w/wのイノシン組合せ)が、凍結に先立って添加された場合(培養液C)には、緩慢に凍結させた培養液のCFU数が急速に凍結させた培養とほぼ同一であったことも示している。
【0344】
我々は、3%w/wのIMP及び2%w/wのイノシンの組合せが、緩慢に凍結させたB. インファンチス(infantis)用の凍結保護添加剤として有効であるとの結論を下す者である。
例15: 異なる添加物が凍結培養液F− DVSTMCH−N 19の安定性に及ぼす効果.
【0345】
この例では、凍結保護剤として作用し得る、一定数の異なる添加物を伴って及び伴わずに処方されたCH−N19培養液の凍結direct vat set培養液(F−DVSTM)の安定性について記述している。
【0346】
発酵後、F−DVSTMCH−N19の発酵ブロスからバイオマスを収穫し遠心分離を介して濃縮した。細胞濃縮物を一定数の部分に分割し、図中に示される通りに様々な添加物を添加した。様々な添加物の濃度は、濃縮バイオマス1グラムあたりの%w/wとして図中に示されている。
【0347】
添加物及び濃縮物を30分間混合し、液体窒素中で滴下凍結させ、その後−50℃で貯蔵した。
【0348】
−50℃で1日(図13)及び6日(図14)間の貯蔵後に、牛乳(LAB−ミルク)中の培養活性を酸性化活性として測定した。活性検定は、0.005%w/vの接種材料及び30℃で6時間インキュベーションに基づいている。
【0349】
実施例12でも同様に見られるように、この実験は、様々な添加物が凍結培養液の安定性に対してきわめて異なる効果を及ぼすことを示していた。興味深いことに、この実験はアデノシン及びアデノシン−5’−一リン酸の両方が培養液の活性にとって有害であることを示していた。該実験は同様に、3%w/wのギ酸ナトリウムが凍結培養液の活性に不利であるという証拠も提供していた。
実施例16: ゴーダ45+チーズ生産のためのCH−Nl9TMが添加されたIMP及びイノシン(実施例15による)の添加を用いた試行
150kgのチーズバット内でのゴーダ45+の生産
1.牛乳
【0350】
15秒間最高72℃で低温殺菌され(有機牛乳、15秒間76〜78℃)、次に5℃まで冷却された状態でデンマークのBorup Dairyから生乳が納入された。タンパク質含有量は、通常タンパク質3.4〜3.7%で変動することになる。受入れた牛乳を、脂肪分及びタンパク質%についてMilkoscanner(Foss Electric A/S、Hillerod、デンマーク)で分析した。牛乳の温度を計測し、細菌学的分析用に試料を採取した。使用するまで、牛乳を冷蔵室内に貯蔵した。
2.標準化
【0351】
ゴーダ45+生産用の牛乳は、(3.4%のタンパク質含有量で)3.00%の脂肪分含有量を有していなければならず、こうして最終製品のチーズで固形分中の脂肪分が最大45%という結果になる。脂肪分対タンパク質の比は、当該技術分野の標準的方法を用いて計算した。計算された量のクリーム又はスキムミルクを添加することによってチーズ牛乳を標準化した。標準化の後、牛乳を熱交換器中で32℃の予備熟成温度まで予熱し、チーズバット内に圧送した。レンネットが牛乳中に分散されるまで緩慢な撹拌(235rpm)を継続した。
3.CaCl2及び硝石
【0352】
硝石を0.020%の濃度、すなわち牛乳150kgあたり30gで添加する。CaCl2を牛乳に対して、必要な場合は34%溶液から、牛乳150kgあたり0〜20gの量で添加する。
4.培養
【0353】
この実験では、4つのバッチを生産し比較した。第1のバッチセット内では、凍結前にIMP及びイノシンが添加されている0.005%のF−DVS CH−N19を1つのバッチに接種した(バッチ1B)。基準バッチ培養液には、IMP及びイノシンが添加されていない0.01%のF−DVS CH−N19を接種した(バッチ1A)。第2のバッチセットには、凍結前にIMP及びイノシンが添加されている0.005%のF−DVS CH−N19を接種した(バッチ2B)。基準バッチには、IMPを及びイノシンが添加されていない0.01%のF−DVS CH−N19を接種した(バッチ2A)。レンネットの添加前に培養液を32℃で35分間成長させた。
5.レンネット
【0354】
レンネットCHY−MAX Plus(200IMCU/mL)を、0.022%w/w(150kgあたり30.0g)の量で添加した。使用前にレンネットを、清浄で低温の水道水中でその体積の3倍に希釈した。レンネットを添加した後1分未満の時間撹拌(235rpm)を継続し、撹拌器をバットから取り出した。レンネットの添加から35分後に牛乳が凝固したと思われる。
ゴーダ45+の製造
【0355】
牛乳の凝固は通常30〜45分かかる。凝塊を、糸間5mmのフレームカッターによりカットした。フレームカッターは最初、チーズバット内を端から端までに水平方向に移動させ、次に端から端まで垂直に移動させた。次に、5mmの立方体が得られるまで、バットの側面を下りながら凝塊を側面から側面まで3回垂直にカットした。この工程で、ホエイの損失を最小限にするために、カードを非常に入念に処理した。撹拌器をバット内に戻し、カードを15〜20分間緩慢(350rpm)に予備撹拌した。15〜20分後、45kgのホエイを排出し、撹拌器を20分間さらに高速の撹拌レベル(415rpm)に調整した。20分以内で温度を、第1のバッチセットについては38℃及び第2のバッチセットについては40℃にまで上昇させて加温を開始した。緩慢で着実な制御された温度上昇が求められた。38℃又は40℃に到達した後、合計撹拌時間を85分として(38℃又は40℃で35〜45分間を意味する)、撹拌を継続した。
6.圧搾
【0356】
95分間の撹拌後、撹拌器を取出しカードをバット内で沈殿させた。次にカードをピッチング動作に付して、予備圧搾プレートと油圧シリンダー用いて予備圧搾して30分間2.5バールの圧力をカードに付加した。予備圧搾の後、カードを2つのブロックにカットした。チーズブロックを、予備圧搾中と同じ側を下に向けて適切な型(30×30cm)の中に置いた。次に、型を圧搾ユニット内に置いて20分間2バールで圧搾し、その後1〜2時間4〜6バールで圧搾した。圧搾が終了した後、チーズの高さを測定し、チーズを秤量し、識別してpHを分析した。最後に、pHが5.7に達するまでチーズを型の中に貯蔵し、その後直接塩水中で加塩に付した。
7.加塩
【0357】
最終製品チーズ中の塩分含有量が約1.7%に達するように10〜12℃の温度で20%NaCl+0.25%CaCl2の塩水中で20〜24時間加塩を実施した。所望の塩分含有量を得るためには、塩水加塩中チーズを適切に分離させ浸漬することが重要である。加塩後、包装に先立ちチ−ズを1〜2時間乾燥させた。
8.包装
【0358】
包装前に、チーズにナタマイシン(Natamycin)(水中300ppm)を噴霧し、その後にCryovac(登録商標)プラスチック袋(BK1L)中に真空包装し、硬質プラスチックボックス(30×30cm)中に入れた。包装後、ボックスを4週間14℃で貯蔵し、その後5〜8℃で貯蔵した。
培養液条件: バッチ1:
A.) IMP及びイノシンが添加されている実験培養液F−DVS CH−N19。
加温温度38℃。接種0.005%
【表7】

B.) IMP及びイノシンが添加されていない基準培養液F−DVS CH−N19
加温温度38℃。接種0.01%
【表8】

バッチ2:
A.) IMP及びイノシンが添加されている実験培養液F−DVS CH−N19。
加温温度40℃。接種0.005%
【表9】

B.) IMP及びイノシンが添加されていない基準培養液F−DVS CH−N19
加温温度40℃。接種0.01%
【表10】

結果:
【0359】
8週間後にチーズを評価した。チーズが、4週熟成後のこの種のチーズの必要条件(水分、塩分、脂肪分)範囲内にあることを保証するために化学的分析を判定した。チーズが確実に正しい穴の形成、テクスチャー及び風味を有するようにするために、チーズの官能的評価も同様に行われた。
【0360】
以下の欠陥についてチーズ製品をさらに分析した:
【0361】
1.) 外部欠陥(形状、外皮、色、におい)。
【0362】
2.) 内部欠陥(色、構造、コンシステンシー)。
【0363】
3.) におい及び味の欠陥。
【0364】
0、3、6、8、9、10、11、12又は13という数字の1つを用いてバッチを評定した。13という評点が最高点である。
バッチ1
【0365】
1A.) 基準。Vat406F−DVSCHN−19 加温温度38℃
・ 穴の形成は良好であった。11。
・ においは良好、快適かつ雑臭がなかった。特性11。
・ 味はゴーダに望まれるとおりであり、非常に良好であった。11(バター風味、わずかに酸味と塩味がありナッツの香りがする)。
【0366】
1B.) IMP及びイノシンが添加されたVat407F−DVSCHN−19。加温温度38℃
・ 穴の形成は良好であった。11。
・ 香りは良好、快適かつ雑臭がなかった。特性11。
・ 味はゴーダに望まれるとおりであり、非常に良好であった。11(バター風味、わずかに酸味と塩味がありナッツの香りがする)。
・ 既存の培養と試験対象の培養に由来するチーズの間に差異は全く検出されなかった。
バッチ2
【0367】
2A.) 基準Vat404F−DVSCH−N19。加温温度40℃
・ 望ましい穴の形成が十分でなかった。穴は小さすぎた。特性9。
・ においは良好、快適かつ雑臭がなかった。特性11。
・ 味はゴーダに望まれるとおりであった。やや塩味が強すぎるかもしれないが、非常に良好である、11。
【0368】
2B.) IMP及びイノシンを伴うVat405.F−DVS CH−N19。加温 温度38℃。
・ 穴の形成はもう一方のものよりもわずかに良好であったが、それでもさらに大きな穴が望ましい。10.
・ においは良好、快適かつ雑臭がなかった。特性11。
・ 味はゴーダに望まれるとおりであった。やや塩味が強すぎるかもしれないが、非常に良好である、11。
・ 既存の培養と試験対象の培養に由来するチーズの間に差異は全く検出されたなかった。
実施例17: チェダー チーズ生産のためのF−DVS R−604に対してIMP及びイノシンの添加を伴う試行
150kg入りのチーズバット内でのチェダーチーズ生産のための標準的指示事項
【0369】
チェダーは、最も広く生産されているチーズのひとつである。もともとこのチーズは、英国のみで作られていたが、現在は世界中、主にオーストラリア、カナダ、アイルランド、ニュージーランドそして米国で作られている。チェダーチーズ製造の基本的な原理はどの国でも同じであり、修正はわずかなものにすぎない。
【0370】
色は薄いクリーム色から濃い黄色までの範囲が考えられる。一部のケースでは、オレンジ/赤の色を与えるためにアンナットが添加される。テクスチャーは硬く締っており、このチーズはカットしたときに崩れない。大半のチェダーは、3〜5ヶ月間熟成させた時点で販売され、非常にマイルドである。熟成した良質のチェダーはナッツの風味と独特の歯ごたえがあり、9〜12ヶ月後に.最も熟成する。
【0371】
この手順は、伝統的なチェダーの製造手順を記述しており、培養接種材料に対するIMP及びイノシンを用いた凍結保護効果を判定するのに役に立つ。
3.牛乳
【0372】
牛乳はBorup Dairy(デンマーク)から発注され生乳として納入され、15秒間約72℃(162°F)で低温殺菌された後に約30〜32℃まで冷却される。色のついたチェダーが望まれる場合には、牛乳5000lあたりChr. HansenのアナットA320WSを475〜600ml添加する。F−DVS R−604に対するIMP及びイノシンの存在下での凍結保護効果を比較するために培養液の並行バッチを調製する。
4.培養
【0373】
IMP及びイノシン無しで凍結保護されたF−DVS R−604の対照培養液 (バッチ1)を、接種材料として培養5000リットルあたり約750gの濃度で添加する。IMP及びイノシンを用いて凍結保護されたF−DVS R−604の試験培養液(バッチ2)を、接種材料として培養5000リットルあたり約500gの濃度で添加する。
5.レンネット
【0374】
各バッチに対して牛乳100lあたり2.5〜3gの量でレンネットCHY−MAX Powder Extra を添加する。レンネットの添加後、30〜45分以内にゲルが形成することになる。
6.チェダー チーズの製造
【0375】
試験対象の各バッチについて可能な限り厳密に下記の手順に従った。カードを5×5mmの小さな立方体にカットする。次に、40〜50分の時間にわたり温度を約38〜40℃まで上昇させる。所要の水分含有量に応じて30〜50分間カード及びホエイを撹拌する。
7.チェダリング
【0376】
カードとホエイを分離し、カードを融合させる。次にカードを「チェダリング」する。融合されたカードをブロックにカットし、10〜15分毎に反転させる。ブロックからのホエイの酸性度がpH5.5〜5.6に達したら、カードを細切する。細切(ミリング)作業には、大きなカードブロックを指サイズの小片にカットすることが関与する。
8.加塩
【0377】
約2%の塩分をカードに添加して、チーズ中1.6〜1.8%(水分中の塩分4.5〜5%)の最終塩分濃度を得る。
9.包装
【0378】
成型及び圧搾は、急激な機械式圧搾で部分真空下のタワー内で行われる。チーズは、20kgのブロックの形で形成されプラスチック袋中に真空包装される。所望の風味の強さ(すなわち、マイルド又はマチュア)に応じて、チーズを3〜12ヶ月間7〜10℃で熟成させる。
結論
【0379】
IMP及びイノシンを用いて凍結保護された接種材料の使用が最終的なチェダーチーズ製品に影響を及ぼすか否かを決定するため、各バッチから生産されたチェダーチーズを、味、テクスチャー及びその他の品質について比較することになる。IMP及びイノシンの混合物を含有する接種材料は、IMP及びイノシンの混合物が欠如した接種材料と事実上同一品質のチーズを生産することになる。本発明のさらなる利点は、接種材料がIMP及びイノシンの混和物を含有する場合、少ない量の濃縮接種材料を使用できるということにある。
実施例18: カッテージ チーズ生産のためのF−DVS ST−M3に対してIMP及びイノシンの添加を伴う試行
150kg入りのチーズバット内でのカッテージチーズの生産のための標準的指示事項
【0380】
カッテージチーズは、体重に対して敏感な英国及び米国で非常に人気のある低脂肪分ソフトチーズである。プレーンなカッテージチーズは非常に淡白であり、チャイブ、オニオンなどを加えて製品に香りをつけるのが一般的である。カッテージチーズの製造法としてはショートセット法とロングセット法の2種類が用いられている。両方の詳細が提供されている。最初にショートセット法について記述し、次に第5節でロングセット法について記述する。
1.牛乳
【0381】
牛乳はBorup Dairy(デンマーク)から発注され生乳として納入され、15秒間約72℃(162°F)で低温殺菌された後に約34℃まで冷却される。
2.培養液
【0382】
ショートセット法のためには、IMPを及びイノシン無しで凍結保護されたF−DVS ST−M3の対照培養液(バッチ1)を、接種材料として培養液5000リットルあたり約2500gの濃度で添加する。IMP及びイノシンを用いて凍結保護されたF−DVS ST0−M3の試験培養液(バッチ2)を、接種材料として培養5000リットルあたり約2000gの濃度で添加する。
3.レンネット
【0383】
各バッチに対して牛乳5000lあたり0.2〜0.5gの量でレンネットCHY−MAX Powder Extra を添加する。
4.カッテージ チーズの製造
【0384】
試験対象の各バッチについて可能な限り厳密に下記の手順に従う。pHが4.65〜4.8に達するまで4.5〜5時間牛乳をインキュベートする。カードを約12mmの均等な立方体にカットする。カードを10〜15分間静置する。カードを非常に穏やかに撹拌し、55〜58℃の温度までの加温を開始し、これは60〜75分以内に達成される。カードが十分に硬くなった時点で、ホエイを排出する。次にカードを洗浄し、以下の通りに3回排出する。
【0385】
まず、水(13〜15℃)で洗浄してカードの温度を29〜32℃に下げる。次に、水(13〜15℃)で洗浄してカードの温度18℃に下げる。最後に、水(2〜5℃)で洗浄してカードの温度を2〜5℃まで下げる。最終的な排出の後、カードは、甘い又は培養されたドレッシングとすぐにブレンドできる状態となる。ドレッシングは、クリーム、牛乳及びスキムミルクパウダーの様々な組合せから作ることができる。
5. ロングセット法
【0386】
該プロセスは、培養の接種濃度、インキュベーション温度及びインキュベーション時間を除いて、ショートセット法で使用し得るものと類似である。ロングセット法については、IMP及びイノシン無しで凍結保護されたF−DVS ST−M3の対照培養液(バッチ1)を、接種材料として培養5000リットルあたり約500gの濃度で添加する。IMP及びイノシンを用いて凍結保護されたF−DVS ST−M3の試験培養液(バッチ2)を、接種材料として培養5000リットルあたり約300gの濃度で添加する。より低い接種濃度及び20〜22℃のインキュベーション温度は、所望の最終pHに達するためにより長いインキュベーション時間が必要となる結果をもたらし、通常14〜18時間かかることになる。
結論
【0387】
IMP及びイノシンを用いて凍結保護された接種材料の使用が最終的なカッテージチーズ製品に影響を及ぼすか否かを判定するため、各バッチから生産されたカッテージチーズを、味、テクスチャー及びその他の品質について比較することになる。IMP及びイノシンの混合物を含有する接種材料は、IMP及びイノシンの混合物が欠如した接種材料と事実上同じ品質のチーズを生産することになる。本発明のさらなる利点は、接種材料がIMP及びイノシンの混和物を含有する場合、少ない量の濃縮接種材料を使用できるということにある。
実施例19: モッツアレラ/ピザチーズ生産のためのF−DVS ST−M3に対してIMP及びイノシンの添加を伴う試行
150kg入りのチーズバット内でモッツアレラ/ピザチーズを生産するための標準的指示事項
【0388】
このタイプのモッツアレラは、大半がピザチーズとして使用される。これは、ソフトチーズモッツアレラよりも硬質であるためにすりおろしが容易だからである。固形分中の水分及び脂肪分含有量が異なる様々なタイプのモッツアレラが存在する。パートスキム、低水分モッツアレラがピザチーズとして通常用いられている。ほとんどの場合、カードを熱湯と混合しストレッチする前にpH5.0〜5.2まで発酵させる。培養液の選択が、ピザチーズの特性(すなわち、伸び、焦げ目、溶融及び脂の滲み出し)に対して大きな影響を有している。
1.牛乳
【0389】
牛乳はBorup Dairy(デンマーク)から発注され生乳として納入され、15秒間約72℃(162°F)で低温殺菌された後に約36〜38℃まで冷却される。
2.培養
【0390】
IMPを及びイノシン無しで凍結保護されたF−DVS ST−M3の対照培養液(バッチ1)を、接種材料として培養5000リットルあたり約750gの濃度で添加する。IMP及びイノシンを用いて凍結保護されたF−DVS ST−M3の試験培養液(バッチ2)を、接種材料として培養5000リットルあたり約500gの濃度で添加する。
3.レンネット
【0391】
各バッチに対して牛乳100lあたり1〜3gの量でレンネットCHY−MAX Powder Extra を添加する。
4.モッツアレラ チーズの製造
【0392】
試験対象の各バッチについて可能な限り厳密に下記の手順に従った。凝塊を5〜8mm の立方体にカットし、5分間ヒーリングさせる。次に、撹拌しながら15〜20分間温度を40〜43℃まで上昇させる。次にチーズをチェダーカード法を用いて取り扱い、ここで全てのホエイが排出され、カードはブロックにカットされ、発酵期間中ブロックは反転させられる。カードの細切は、pH5−5.25で行う。所望のpHが得られた時点で、チーズをストレッチング機械内に入れて75〜80℃で熱湯と混合する。このプロセスには約10〜15分の時間がかかり、カードの温度は約58〜65℃に達する。ストレッチされたチーズを型に入れて、冷水中でただちに5〜10℃まで冷却し、こうしてさらなる酸性化を停止させることになる。10℃以下の温度で飽和塩水中でチーズに加塩する。
【0393】
IMP及びイノシンを用いて凍結保護された接種材料の使用が最終的なモッツアレラ/ピザチーズ製品に影響を及ぼすか否かを判定するため、各バッチから生産されたモッツアレラ/ピザチーズを、味、テクスチャー及びその他の品質について比較することになる。IMP及びイノシンの混合物を含有する接種材料は、IMP及びイノシンの混合物が欠如した接種材料と事実上同じ品質のチーズを生産することになる。本発明のさらなる利点は、接種材料がIMP及びイノシンの混和物を含有する場合、少ない量の濃縮接種材料を使用できるということにある。
例20: マスダマール(Maasdammer)チーズ生産のためのF−DVS CH−N11に対してIMP及びイノシンが添加されている試行
150kg入りのチーズバット内でのマスダマールチーズ生産のための標準指示事項
【0394】
マスダマールは、オランダのマス河に因んで命名された1つのスイスチーズタイプである。該チーズは比較的大きな穴を形成すると同時に、プロピオン酸細菌が添加されているためにマイルドでかつナッツ様の風味を有している。
1.牛乳
【0395】
牛乳はBorup Dairy(デンマーク)から発注され生乳として納入され、15秒間約72℃(162°F)で低温殺菌されるか又は20秒間65〜70℃で熱処理された後に約30〜32℃まで冷却される。
2.培養液
【0396】
IMPを及びイノシン無しで凍結保護されたF−DVS CH−N11の対照培養液(バッチ1)を、接種材料として培養5000リットルあたり約750gの濃度で添加する。IMP及びイノシンを用いて凍結保護されたF−DVS CH−N11の試験培養液(バッチ2)を、接種材料として培養5000リットルあたり約500gの濃度で添加する。培養液を32℃で10〜40分間インキュベートする。
3.レンネット
【0397】
各バッチに対して牛乳100lあたり1〜3gの量でレンネットCHY−MAX Powder Extraを添加する。
4.マスダマール チーズの製造
【0398】
約30〜45分以内にゲルが形成することになる。凝塊を5〜7mmの立方体にカットし、カードを15〜25分間緩慢に撹拌する。約35〜45%のホエイを排出して、カード を15分間穏やかに撹拌する。約60℃で(初期体積の)約15〜20%の熱湯を添加する。カードの温度は約35〜38℃であり、これをおよそ30〜45分間撹拌する。大半のホエイを排出し、15〜30分間残りのホエイ下で2−4kg/cm2でカードを軽く圧搾する。 カードを適切なサイズのブロックにカットし、これらのブロックを型の中に嵌める。型を20分間軽く圧搾し、その後1〜2時間4〜6kg/cm2で圧搾する。 カードブロックをpH5.6〜5.7の低温塩水中に直接投入し、チーズの目標塩分濃度は1〜1.5%である。
【0399】
IMP及びイノシンを用いて凍結保護された接種材料の使用が最終的なマスダマール チーズ製品に影響を及ぼすか否かを判定するため、各バッチから生産されたマスダマールチーズを、味、テクスチャー及びその他の品質について比較することになる。IMP及びイノシンの混合物を含有する接種材料は、IMP及びイノシンの混合物が欠如した接種材料と事実上同じ品質のチーズを生産することになる。本発明のさらなる利点は、接種材料がIMP及びイノシンの混和物を含有する場合、少ない量の濃縮接種材料を使用できるということにある。
実施例21: ブリー/カマンベールチーズ生産のためのF−DVS CHN−12に対してIMP及びイノシンが添加されている試行
150kg入りのチーズバット内でのブリー/カマンベールチーズ生産のための標準的指示事項
【0400】
安定化したブリー/カマンベールは、カード製造の最後における最低pHが伝統的なブリー/カマンベールの場合の4.6〜4.8に比較して4.9〜5.4であるため、チーズの芯の軟化がそれほど時間に依存しないという点で伝統的なブリー/カマンベールと異なっている。チーズに対してその特徴である白い表面とその味を与えるために白い型が使用される。チーズpHを安定化させるためには次のような2つの主な方法がある:
【0401】
1.) 安定化法:カードを洗浄する、すなわちラクトースを取り除き、酪酸への転化に利用可能な糖の量を削減する。これが、所望の高いpHの達成する上で役立つ。安定化したブリー/カマンベールの場合、通常は30%の好中温性70%の好熱性といった割合で好中温性及び好熱性培養液の両方が使用される、。
【0402】
2.) 可溶化法:pHが所望のレベルに近くなった時点で、たとえば加塩又は冷却によってスタータを阻害する。このタイプは、好中温性培養液よりも低温に敏感なために好熱性培養液でのみ製造される。
1.牛乳
【0403】
牛乳はBorup Dairy(デンマーク)から発注され生乳として納入され、15秒間約72℃(162°F)で低温殺菌された後に約35〜37℃まで冷却される。
2.培養液
【0404】
IMPを及びイノシン無しで凍結保護されたF−DVS CHN−12の対照培養液 (バッチ1)を、接種材料として培養5000リットルあたり約250gの濃度で添加する。IMP及びイノシンを用いて凍結保護されたF−DVS CHN−12の試験培養液(バッチ2)を、接種材料として培養5000リットルあたり約200gの濃度で添加する。型の中に1000リットルあたり3〜5uの液体PCa1、PCa3又はPCaFD、ならびに0.5〜1uのGEO CD1を導入する。
3.レンネット
【0405】
各バッチに対して牛乳100lあたり2.5〜3gの量でレンネットCHY−MAX Powder Extra を添加する。
4.ブリー/カマンベール チーズの製造
【0406】
約30〜45分でゲルが形成されることになる。凝塊を10mmの立方体にカットし、ホエイの40%を排出する。約40〜45℃で同体積の水を添加する。培養液を時折穏やかに撹拌しながら30〜50分間放置する。カードをバットからすくい取って型の中に入れ、型を最初は1時間後に反転させ、2回目は3時間後に、そして3回目は8時間後に反転させる。カードを型から取り出し、18%の塩水に浸漬する。チーズ100キログラムあたり1〜2uのPCa1、PCa3又はPCaFDをチーズに噴霧する。チーズは1日間14〜15℃、85%の相対湿度で、次に12℃、95%の相対湿度で8〜10日間熟成させる。型での成長が満足のゆくものとなった時点で、チーズの表面を乾燥させ、包装して4℃で貯蔵する。各チーズは耐脂紙内に包装され、ボール紙又は薄木の箱に入れられる。
【0407】
IMP及びイノシンを用いて凍結保護された接種材料の使用が最終的なブリー/カマンベールチーズ製品に影響を及ぼすか否かを判定するため、各バッチから生産されたブリー/カマンベールチーズを、味、テクスチャー及びその他の品質について比較することになる。IMP及びイノシンの混合物を含有する接種材料は、IMP及びイノシンの混合物の欠如した接種材料と事実上同じ品質のチーズを生産することになる。本発明のさらなる利点は、接種材料がIMP及びイノシンの混和物を含有する場合、少ない量の濃縮接種材料を使用できるということにある。
実施例22: 3−リットルスケール中の培養液バターミルク生産のためのDVS FD−Nに対してIMP及びイノシンが添加されている試行
培養液バターミルク
提案される製法
前処理
【0408】
脂肪分0.5%の高品質で標準化された均質化牛乳をバット内で20分間90℃での低温殺菌により前処理する。
【0409】
3%IMPw/w及び2%イノシンを安定化剤としてDVS FD−N濃縮培養液に添加し、該混合物を次に凍結させた。ここで凍結製品の名称をF−DVSTMFD−Nとする。
【0410】
対照としてIMP及びイノシン無しでF−DVSTMFD−Nの培養液を凍結させた。全てのF−DVSTM培養液を使用に先立ち−50℃で2ヶ月間貯蔵した。
【0411】
0.005%の濃度で牛乳に接種するためにIMP及びイノシンを含有する(DVS FD−N)の濃縮培養液を使用し、 3リットルの発酵槽内で約4.5のpHまで25℃の温度で牛乳を培養した。IMP及びイノシン無しで凍結されたDVSTMFD−Nの対照培養液を、0.01%の濃度で牛乳に接種するために使用し、3リットルの発酵槽中で約4.5のpHまで25℃の温度で牛乳を培養した。
【表11】

後処理
【0412】
pHが4.51に達した時点で、最初は手動撹拌装置を用いてバケツ内で、次に1分間55ボルトでYstralミキサーを用いて製品を撹拌した。撹拌後、バケツを冷却浴の中に置き、ハンドミキサーで定期的に撹拌しながら18℃まで冷却した。次に製品をボトル中に注ぎ、8℃で貯蔵した。
結果:
【0413】
培養液バターミルクを1日目及び8日目に風味が適切などうかについて試験した:
1日目:
IMP及びイノシンを伴うFD−N: 新鮮、低CO2、香り良好
IMP及びイノシンを伴わないFD−N: 新鮮、低CO2、香り良好
8日目:
IMP及びイノシンを伴うFD−N: 新鮮、低CO2、香り良好
IMP及びイノシンを伴わないFD−N:: 高レベルの口当たり、新鮮、低CO2、香り良好
【0414】
IMP及びイノシンを伴わない0.01%のF−DVSの接種材料と比較して、IMP及びイノシンが添加されている0.005%のF−DVS FD−Nの接種材料のために同一の発酵時間及びpHを使用した。IMP及びイノシンの添加は、培養バターミルクの粘度又は芳香/風味にいかなる変化も生じさせなかった。
【0415】
IMP及びイノシンを伴わない接種材料に比べて、IMP及びイノシンの混合物を接種材料に添加した場合、接種材料の量を半分にすることができると思われる。実験接種材料又は対照接種材料のいずれを用いても、味及びテクスチャーに関して類似の品質のチーズが製造された。
参考文献:
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Gosta Bylund、MSc (1995)、「乳製品加工ハンドブック」、Tetra Pak Processing Systems、S-221 86 Lund、Sweden
Frank Kosikowski (1982)、「チーズ及び発酵乳食品」(第2版)、Published by Kosi- kowski & Associates、New York
【図面の簡単な説明】
【0416】
【図1】−50℃での初期貯蔵工程中の商業用凍結濃縮培養液(F−DVSTMF1−DaN、Chr. Hansen A/S 品番501691)の安定性を示している。培養の活性は、0.01%w/vである接種材料の量を用いた酸性化活性検定によって決定される。pHは、牛乳中で30℃で6時間インキュベートした後に測定された。註:pHが高くなればなるほど培養の酸性化活性は低くなっている(すなわち代謝活性が低くなる)ことを表わす。
【0417】
【図2】3%w/wのIMPの添加を伴う及び伴わない凍結濃縮培養液F−DVSTM(Chr. Hansen A/S品番200118号)の酸性化活性として表現された貯蔵安定性を示す。註:縦座標は、30℃、接種材料量0.01%w/vで6時間のインキュベーション後に測定したpHを示す。pHが高くなればなるほど、培養の酸性化活性は低くなっている(すなわち代謝活性が低くなる)ことを表わす。白色正方形はIMPが添加された培養を表わし、一方菱形はIMP無しの培養を表わす。
【0418】
【図3】IMPの添加を伴う及び伴わないF−DVDTMCH−N14培養液(Chr. Hansen A/S品番200118)の酸性化活性を示す。発酵は、−50℃で2ヵ月の貯蔵後の培養液で実施された。発酵は、表2のDanbo温度−プロフィールに従った低温殺菌全乳の中でテストされた。添加された培養液の量は%(w/v)単位で示されている。註:縦座標は、30℃で6時間のインキュベーションの後測定されたpHを示す。註:pHが高くなればなるほど培養の酸性化活性は低くなっている(すなわち代謝活性が低くなる)ことを表わす。
【0419】
【図4】F−DVSTM CH−N19培養液(Chr. Hansen A/S 品番501593)の凍結中の活性損失を例示している。培養は、それが生産された時点(0日目)と同じ活性についてテストされた。エラーバーは、標準偏差を示す。註:縦座標は、30℃、接種材料量0.01%w/vで6時間のインキュベーション後に測定したpHを示す。pHが高くなればなるほど、培養液の酸性化活性は低くなっている(すなわち代謝活性が低くなる)ことを表わす。
【0420】
【図5】添加されたIMPの量の関数としてのF−DVSTMF1−Da N培養液(Chr Hansen A/S品番号501691)の酸性化活性の損失を例示する。濃縮物は、凍結前に5時間8℃で液体として貯蔵された。エラーバーは標準偏差を表わす。註:縦座標は、30℃、接種材料量0.01%w/vで6時間のインキュベーション後に測定したpHを示す。pHが高くなればなるほど、培養液の酸性化活性は低くなっている(すなわち代謝活性が低くなる)ことを表わす。
【0421】
【図6】3%w/wのIMPの添加を伴う及び伴わない凍結乾燥濃縮培養液DVSTMF1−Da N培養液の酸性化活性として表現された貯蔵安定性を示す。培養液は、−50℃で7日間貯蔵の後、活性についてテストされた。エラーバーは標準偏差を表わす。註:縦座標は、30℃、接種材料量0.01%w/vで6時間のインキュベーション後に測定したpHを示す。pHが高くなればなるほど、培養の酸性化活性は低くなっている(すなわち代謝活性が低くなる)ことを表わす。
【0422】
【図7】3%w/wのIMP、GMP、イノシンの添加を伴う又は伴わない又は何の添加も無い初期貯蔵工程中の凍結濃縮培養液(F−DVSTMF1−DaN、Chr. Hansen A/S品番501691)の酸性化活性として表現される貯蔵安定性を示す。註:縦座標は、30℃、接種材料量0.01%w/vで6時間のインキュベーション後に測定したpHを示す。pHが高くなればなるほど、培養液の酸性化活性は低くなっている(すなわち代謝活性が低くなる)ことを表わす。黒色菱形は3%w/wのIMPの添加を、灰色正方形は3%w/wのGMPの添加、黒色三角形は3%w/wのイノシンの添加を、又丸はいかなる凍結保護添加剤も添加されなかったことを表わしている。
【0423】
【図8】3%w/wのIMP、GMP、イノシンの添加を伴う又は伴わない又は何の添加も無い貯蔵中の凍結濃縮培養液(F−DVSTMF1−DaN、Chr. Hansen A/S品番501691)の酸性化活性として表現される貯蔵安定性を示す。註:縦座標は、30℃、接種材料量0.01%w/vで6時間のインキュベーション後に測定したpHを示す。pHが高くなればなるほど、培養液の酸性化活性は低くなっている(すなわち代謝活性が低くなる)ことを表わす。黒色菱形は3%w/wのIMPの添加を、黒色正方形は3%w/wのGMPの添加、黒色三角形は3%w/wのイノシンの添加を、又十字形はいかなる凍結保護添加剤も添加されなかったことを表わしている。
【0424】
【図9】−50℃での1日の貯蔵の後のさまざまな添加物の添加を伴う及び伴わない凍結乾燥濃縮培養液F1−DaN培養液の酸性化活性として表現された貯蔵安定性を示す。註:縦座標は、30℃、接種材料量0.005%w/vで6時間のインキュベーション後に測定したpHを示す。pHが高くなればなるほど、培養液の酸性化活性は低くなっている(すなわち代謝活性が低くなる)ことを表わす。酸性化検定の結果は、各添加剤について表わされている。大部分の添加剤はプリン塩基、ピリミジン塩基、ヌクレオシド及びヌクレオチドである。IMPは、イノシン−5−一リン酸の略号であり、AMPはアデノシン−5’−一リン酸、UMPはウラノシン−5’−一リン酸、CMPはシチジン−5’−一リン酸、MSGは、グルタミン酸−ナトリウムの略号である。添加剤の百分率は、濃縮培養液に添加された添加剤の%w/wを意味する。%値が示されていない場合には、3%w/wが添加された。
【0425】
【図10】−50℃で2ヵ月貯蔵後のさまざまな添加物の添加を伴う及び伴わない凍結乾燥濃縮培養液F1−DaN培養の酸性化活性として表現された貯蔵安定性を示す。さらなる詳細については、図9の説明文を参照のこと。
【0426】
【図11】添加物の添加(3%IMP+2%イノシン)を伴う及び伴わない凍結L.bulgaricusの活性。1℃/分前後の凍結速度。黒色棒は、凍結に先立ち添加物が添加された培養液を表わす。酸性化検定は、0.02%w/wの接種材料に基づいており、40℃で5時間実施された。pHが高くなればなるほど培養の酸性化活性は低くなっている(すなわち代謝活性が低くなる)ことを表わす。
【0427】
【図12】急速凍結Bifidobacterium infantis 培養(A)を低速凍結された2つのB.infantis 培養液(B及びC)を比べたそれらの生存可能性に対する効果。培養液Cには、凍結保護剤として3%w/wのIMP及び2%w/wのイノシンが添加された。培養液B及びCについての凍結速度は1℃/分であり、一方培養液Aは、培養を液体窒素中に滴下することにより凍結された。
【0428】
【図13】−50℃で1日貯蔵した後のさまざまな添加物の添加を伴う及び伴わない急速凍結された濃縮培養液CH−N19培養の酸性化活性として表現された貯蔵安定性を示す。註:縦座標は、30℃、接種材料量0.005%w/vで6時間のインキュベーション後に測定したpHを示す。pHが高くなればなるほど、培養液の酸性化活性は低くなっている(すなわち代謝活性が低くなる)ことを表わす。酸性化活性の結果は、各々の添加物及び添加物組合せについて表わされている。
【0429】
【図14】−50℃で6時間貯蔵した後のさまざまな添加物の添加を伴う及び伴わない急速凍結された濃縮培養液CH−N19培養液の酸性化活性として表現された貯蔵安定性を示す。さらなる詳細については、図13の説明文を参照のこと。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
核酸の生合成に関与する1又は複数の化合物又は任意のかかる化合物の誘導体から成る群から選択された1又は複数の凍結保護剤を含む、凍結した又は凍結乾燥した培養液。
【請求項2】
1又は複数の凍結保護剤がプリン塩基、ピリミジン塩基、ヌクレオシド及びヌクレオチドから成る群から選択されている、請求項1に記載の培養液。
【請求項3】
1又は複数の凍結保護剤がヌクレオシド又はその誘導体である、請求項1に記載の培養液。
【請求項4】
ヌクレオシドがIMP、GMP及びAMPから成る群から選択されたヌクレオシド一リン酸である、請求項3に記載の培養液。
【請求項5】
凍結保護剤がイノシン−5’−一リン酸(IMP)である、請求項3に記載の培養液。
【請求項6】
1又は複数の凍結保護剤が、その凍結保護性に加えてブースタ効果を有する、請求項1、2又は5に記載の培養液。
【請求項7】
凍結材料の%w/wとして測定した場合に約0.1%〜約20%の凍結保護剤又はその混合物を含む、請求項1、2又は5に記載の培養液。
【請求項8】
凍結材料の%w/wとして測定した場合に、約2%〜約5%の凍結保護剤又はその混合物を含む、請求項7に記載の培養液。
【請求項9】
ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)種、ブレビバクテリウム(Brevibacterium)種、プロピオニバクテリウム(Propionibacterium)種、ラクトコッカス(Lactococcus)種、ラクトバシルス(Lactobacillus)種、ストレプトコッカス(Streptococcus)種、エンテロコッカス(Enterococcus)種、ペジオコッカス(Pediococcus)種、ロイコノストック(Leuconostoc)種、オエノコッカス(Oenococcus)種又は真菌種を含む1又は複数の生物を含んで成る、請求項1、2または5に記載の培養液。
【請求項10】
約30℃の最適成長温度を有する1又は複数の好中温性生物を含んで成る、請求項9に記載の培養液。
【請求項11】
ラクトコッカス・ラクチス(Lactococcus lactis)、ラクトコッカス・ラクチス(Lactococcus lactis)亜種クレモリス(cremoris)、ロイコノストック・メセンテロイデス(Leuconostoc mesenteroides)亜種、 クレモリス(cremoris)、ペジオコッカス・ペントサセウス(Pediococcus pentosaceus)、ラクトコッカス・ラクチス(Lactococcus lactis)亜種ラクチス(lactis)次亜種ジアセチラクチス(diacetylactis)、ラクトバシルス・カゼイ(Lactobacillus casei)亜種カゼイ(casei)及びラクトバシルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)亜種パラカゼイ(paracasei)を含む群から選択された1又は複数の好中温性生物を含んで成る、請求項10に記載の培養液。
【請求項12】
約35℃〜約45℃の最適成長温度をもつ1又は複数の好熱性生物を含む、請求項1、2又は5に記載の培養液。
【請求項13】
ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)、エンテロコッカス・ファエシウム(Enterococcus faecium)、ラクトバシルス・デルブルエキイ(Lactobacillus delbrueckii) 亜種ラクチス(lactis)、ラクトバシルス・ヘルベチカス(Lactobacillus helveticus)、ラクトバシルス・デルブルエキイ(Lactobacillus delbrueckii)亜種ブルガリカス(bulgaricus)及びラクトバシルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)を含む群から選択された1又は複数の好熱性生物を含む、請求項12に記載の培養液。
【請求項14】
i. ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)種、ブレビバクテリウム(Brevibacterium)種、プロピオニバクテリウム(Propionibacterium)種、ラクトコッカス(Lactococcus)種、ラクトバシルス(Lactobacillus)種、ストレプトコッカス(Streptococcus)種、エンテロコッカス(Enterococcus)種、ペジオコッカス(Pediococcus)種、ロイコノストック(Leuconostoc)種、オエノコッカス(Oenococcus)種又は真菌を含む1又は複数の生存可能な生物に対して凍結保護剤を添加する工程;
ii. 凍結材料を得るべく凍結保護剤及び1又は複数の生存可能な生物を内含する結果として得た混合物を凍結させる工程、及び
iii. 凍結した材料を包装する工程、
を含んで成る、凍結培養液製造方法。
【請求項15】
i. ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)種、ブレビバクテリウム(Brevibacterium)種、プロピオニバクテリウム(Propionibacterium)種、ラクトコッカス(Lactococcus)種、ラクトバシルス(Lactobacillus)種、ストレプトコッカス(Streptococcus)種、エンテロコッカス(Enterococcus)種、ペジオコッカス(Pediococcus)種、ロイコノストック(Leuconostoc)種、オエノコッカス(Oenococcus)種又は真菌株を含む1又は複数の生存可能な生物に対して凍結保護剤を添加する工程、
ii. 凍結した材料を得るべく凍結保護剤及び1又は複数の生存可能な生物を内含する結果として得た混合物を凍結する工程、
iii. 材料を凍結乾燥するため凍結した材料から水を昇華させる工程及び
iv. 凍結乾燥した材料を包装する工程、
を含んで成る、凍結乾燥培養液製造方法。
【請求項16】
生物が、ラクトコッカス・ラクチス(Lactococcus lactis)亜種ラクチス(lactis)及びラクトコッカス・ラクチス(Lactococcus lactis)亜種クレモリス(cremoris)のうちの1又は複数のものを内含するラクトコッカス(Lactococcus)種である、請求項9に記載の培養液。
【請求項17】
生物がラクトバシルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)を内含するラクトバシルス(Lactobacillus)種である、請求項9に記載の培養液。
【請求項18】
生物が、ペニシリウム(Penicillium)種、クリプトコッカス(Cryptococcus)種、デブラリオミセス(Debraryomyces)種、クリベロミセス(Klyveromyces)種及びサッカロミセス(Saccharomyces)種のうちの1又は複数のものを内含する真菌種である、請求項9に記載の培養液。
【請求項19】
生物が、ラクトコッカス・ラクチス(Lactococcus lactis)亜種ラクチス(lactis)及びラクトコッカス・ラクチス(Lactococcus lactis)亜種クレモリス(cremoris)のうちの1又は複数のものを内含するラクトコッカス(Lactococcus)種である、請求項14に記載の方法。
【請求項20】
生物がラクトバシルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)を内含するラクトバシルス(Lactobacillus)種である、請求項14に記載の方法。
【請求項21】
生物が、ペニシリウム(Penicillium)種、クリプトコッカス(Cryptococcus)種、デブラリオミセス(Debraryomyces)種、クリベロミセス(Klyveromyces)種及びサッカロミセス(Saccharomyces)種のうちの1又は複数のものを内含する真菌種である、請求項14に記載の方法。
【請求項22】
生物が、ラクトコッカス・ラクチス(Lactococcus lactis)亜種ラクチス(lactis) 及びラクトコッカス・ラクチス(Lactococcus lactis)亜種クレモリス(cremoris)のうちの1又は複数のものを内含するラクトコッカス(Lactococcus)種である、請求項15に記載の方法。
【請求項23】
生物がラクトバシルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)を内含するラクトバシルス(Lactobacillus)種である、請求項15に記載の方法。
【請求項24】
生物が、ペニシリウム(Penicillium)種、クリプトコッカス(Cryptococcus)種、デブラリオミセス(Debraryomyces)種、クリベロミセス(Klyveromyces)種及びサッカロミセス(Saccharomyces)種のうちの1又は複数のものを内含する真菌種である、請求項15に記載の方法。
【請求項25】
請求項1に記載の培養液と共に前駆体材料を培養する工程及び培養食品を得る工程を含んで成る、培養食品生産方法。
【請求項26】
培養食品が乳製品前駆体材料から生産される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
培養食品がバターミルクである、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
培養食品が、チェダー、ゴーダ、カテッジ、エメンタール、グラーナ、モッツァレラ/ピザ、マスダマール及び安定化したブリー又はカマンベールの中から選択されたチーズである、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
1又は複数のヌクレオチド凍結保護剤がイノシン又はその誘導体である、請求項2に記載の培養液。
【請求項30】
1又は複数の凍結保護剤がヌクレオチドである、請求項2に記載の培養液。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2007−506411(P2007−506411A)
【公表日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−517969(P2006−517969)
【出願日】平成16年7月2日(2004.7.2)
【国際出願番号】PCT/DK2004/000477
【国際公開番号】WO2005/003327
【国際公開日】平成17年1月13日(2005.1.13)
【出願人】(501216034)セーホーエル.ハンセン アクティーゼルスカブ (8)
【Fターム(参考)】