凍結対策の流量制御弁
【課題】流量制御弁の樹脂製ハウジングが凍結によって破損することを回避する。
【解決手段】樹脂製ハウジング10内に形成された湯水通路12内で、弁体24a,24bが取付られた弁軸22を進退動させて湯水の流量を制御する。弁軸22を支える軸受部材30は、内部に湯水通路12となる空間34が形成され、ハウジング10の端面から挿入して取り付けられており、軸受部材30とハウジング10の内周面との間には空気溜まり36が形成されている。こうすれば空気溜まり36が断熱層となるので、軸受部材30内の湯水通路12に外気温の低下が伝わり難く、軸受部材30内の湯水通路12は最後に凍結するようにできる。このため、挿入されている軸受部材30を湯水の圧力で押し戻すなどして、湯水の圧力を減少させることができるので、樹脂製のハウジング10でも、凍結による破損を回避することが可能となる。
【解決手段】樹脂製ハウジング10内に形成された湯水通路12内で、弁体24a,24bが取付られた弁軸22を進退動させて湯水の流量を制御する。弁軸22を支える軸受部材30は、内部に湯水通路12となる空間34が形成され、ハウジング10の端面から挿入して取り付けられており、軸受部材30とハウジング10の内周面との間には空気溜まり36が形成されている。こうすれば空気溜まり36が断熱層となるので、軸受部材30内の湯水通路12に外気温の低下が伝わり難く、軸受部材30内の湯水通路12は最後に凍結するようにできる。このため、挿入されている軸受部材30を湯水の圧力で押し戻すなどして、湯水の圧力を減少させることができるので、樹脂製のハウジング10でも、凍結による破損を回避することが可能となる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給湯装置などで用いられる流量制御弁に関する。
【背景技術】
【0002】
給湯装置などでは、湯水(湯または水)の流量を増加・減少させたり、流路を切り換えたり、複数の流路への分配割合を変更したり、あるいは異なる流路からの混合割合を変更したりする目的で各種の流量制御弁が用いられる。これら流量制御弁は、ハウジング内に湯水通路および弁口が形成され、その湯水通路内で、先端に弁体が設けられた弁軸を弁軸方向に進退動させて弁体と弁口との間の間隔を変更することにより、湯水の流量制御を行っている。また、多くの場合、弁軸の移動には電動モーターが用いられるが、流量制御弁の用途によっては手動で行われる場合もある。
【0003】
このような流量制御弁は、内部に湯水が残ったまま放置されると、冬季などの外気温の低下によって内部の湯水が凍結し、そのときの体積膨張によってハウジングに過大な圧力が作用することがある。そこで、このような場合にも流量制御弁の破損を回避可能とするために、流量制御弁の内部にコイルバネを設けて凍結時の体積膨張を吸収可能とした技術が提案されている(特許文献1)。あるいは、ハウジングが破損する前に電動モーターの取付板を塑性変形させることで、凍結時の体積膨張を吸収可能とした技術も提案されている(特許文献2)。
【0004】
また近年では、流量制御弁の軽量化およびコスト軽減を目的として、ハウジングの材料が、黄銅などの金属材料からPPS(ポニフェニレンスルファイド)などの樹脂材料に変更されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−92093号公報
【特許文献2】特開2006−292131号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、ハウジングが樹脂化された流量制御弁に対しては、上述した提案の技術では、流量制御弁の破損を回避することができない場合があるという問題があった。すなわち、ハウジング内の湯水は、全ての箇所の湯水が同時に凍結するわけではなく、外気温が伝わり易いハウジングの内壁面に沿った箇所から凍結し始める。このため、たとえば氷に引っ掛かるなどして、凍結時の体積膨張を吸収する機構の作動開始が遅れることが起こり得る。そして、樹脂製のハウジングは金属製のハウジングに対して強度が低いので、体積膨張を吸収する機構の作動開始が遅れると、ハウジングが破損してしまうことが起こり得る。
【0007】
この発明は、従来の技術が有する上述した課題に対応してなされたものであり、樹脂製のハウジングであっても、湯水の凍結によってハウジングが破損することを回避することが可能な流量制御弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するために、本発明の流量制御弁は次の構成を採用した。すなわち、
樹脂製のハウジング内に湯水通路および弁口が形成され、弁体が取付けられた弁軸を、該湯水通路内で該弁軸方向に進退動させることにより、該弁体と前記弁口との間を通過する湯水の流量を制御する流量制御弁において、
前記弁軸が進退動可能に貫通し、内部に湯水通路となる空間が形成された軸受部材が、前記ハウジングの該湯水通路が開口する端面から挿入して取り付けられており、
前記軸受部材と、前記湯水通路を形成する前記ハウジングの内周面との間には、空気溜まりが形成されていることを特徴とする。
【0009】
このような構成を有する本発明の流量制御弁においては、軸受部材の外側に空気溜まりが形成されている。このため、たとえ湯水通路内の湯水が凍結する程度まで外気温が低下した場合でも、軸受部材の外側に形成された空気溜まりが断熱層となるため、軸受部材の内部に形成された湯水通路の湯水には外気温の低下が伝わり難く、軸受部材に接する部分はなかなか凍結することが無い。このため、湯水通路内の凍結が進んで、ハウジングが破損するおそれが生じる程度まで湯水通路内の圧力が高くなった場合でも、たとえば、湯水通路内に挿入されている軸受部材を湯水の圧力で押し戻すなどして湯水の圧力を減少させることができる。その結果、たとえハウジングが樹脂化されていた場合でも、凍結によってハウジングが破損することを回避することが可能となる。尚、軸受部材の内部に形成された空間は、ハウジングに組み付けた状態で、湯水通路上流からの湯水が流れ込むような空間であれば良く、死水領域となるような空間であっても構わない。
【0010】
また、上述した本発明の流量制御弁においては、ハウジング内に挿入される側の軸受部材の端面に凹部を形成しておき、軸受部材がハウジング内に挿入されると、その凹部内に湯水通路内の湯水が入り込むようにしておく。そして、この凹部の外側に存在する軸受部材の側面と、ハウジングの内周面との間に、空気溜まりが形成されるようにしても良い。
【0011】
このような形状としておけば、軸受部材の凹部内の湯水に対しては、空気溜まりによる断熱効果を大きくすることができる。その結果、軸受部材の凹部内の湯水を、より確実に凍結し難くすることができる。
【0012】
また、上述した本発明の流量制御弁においては、ハウジングの内周面、あるいは、その内周面と向き合う軸受部材の側面の少なくとも一方を凹形状に形成しておくことによって、空気溜まりが形成されるようにしても良い。
【0013】
こうすれば、軸受部材をハウジング内に挿入するだけで空気溜まりを形成することが可能であり、空気溜まりを形成するための特別な部品や、特別な組み立て工程を要しない。このため、凍結によってハウジングが破損するおそれのない流量制御弁を、簡単に且つ製造コストを全く増加させることなく製造することが可能となる。
【0014】
また、上述した本発明の流量制御弁においては、軸受部材の次のような位置、すなわち、軸受部材をハウジング内に挿入する方向に向かって、空気溜まりの位置よりも少なくとも先端側の位置に、ハウジングの内周面と当接して湯水をシールするシール部材を設けるようにしても良い。
【0015】
こうすれば、シール部材によって、湯水通路内の湯水が空気溜まりに入り込み難くなる。その結果、空気溜まりをより確実に断熱層として機能させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本実施例の流量制御弁1の構造を示す分解組立図である。
【図2】弁軸22の中心軸を通る断面で切断することによって本実施例の流量制御弁1の内部構造を示した断面図である。
【図3】内部に湯水が残った状態で流量制御弁1を冷却したときの温度変化を示した説明図である。
【図4】本実施例の流量制御弁1が空気溜まり36によってハウジング10の破損を回避するメカニズムを示した説明図である。
【図5】変形例の流量制御弁2の内部構造を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下では、上述した本願発明の内容を明確にするために、次のような順序に従って実施例を説明する。
A.流量制御弁の構造:
B.凍結によるハウジングの破損回避メカニズム:
C.変形例:
【0018】
A.流量制御弁の構造 :
図1は、本実施例の流量制御弁1の構造を示す分解組立図である。本実施例の流量制御弁1は、略円筒形状をしたハウジング10と、ハウジング10内に収容される略軸形状の弁部20と、弁部20の上からハウジング10内に収容される軸受部30と、内部に弁部20および軸受部30が収納された状態でハウジング10に蓋をする取付板40と、取付板40をハウジング10にネジ止めするためのネジ50などから構成されている。
【0019】
このうちハウジング10は、内部に湯水通路12が形成されており、側面の上部および下部には、湯水通路12と連通する第1ポート14aおよび第2ポート14bが形成されている。これら第1・第2ポート14a,bと反対側の側面には、第1ポート14aと第2ポート14bとの中間の位置で湯水通路12に連通する第3ポート14cが設けられている。また、ハウジング10は、PPSなどの樹脂材料によって形成されている。
【0020】
弁部20は、金属材料によって形成された棒状の弁軸22と、弁軸22の先端に取り付けられて略円錐形状に形成された二つの弁体(第1弁体24aおよび第2弁体24b)などから構成されている。これら第1・第2弁体24a,24bは、円錐形状の底面が互いに背中合わせとなる向きに取り付けられ、それらの間には、弦巻バネ26が押し縮められた状態で組み込まれている。また、第1・第2弁体24a,24bは樹脂材料によって形成されているが、第1・第2弁体24a,24bの一部には、ゴム材料で円環形状に形成されたシート部24sが組み付けられている。
【0021】
軸受部30は、樹脂材料によって形成された略円柱形状の部材であり、略円柱形状の中心軸上に弁軸22の通る貫通穴32が形成されている。軸受部30の内部には、底面側からは全体の約2/3の高さの位置まで、大きな凹部34が形成されており、側面側には凹部34と連通する開口部35が形成されている。また、開口部35が形成されている側と反対側の外周側面には、約半周に亘って側面を凹ませることによって、空気溜まり36が形成されている。この軸受部30は、ハウジング10の湯水通路12内に挿入されるが、挿入されたときに湯水通路12の内周面に当接して湯水をシールするためのシールリング37,38が、軸受部30の上部および下部に設けられている。また、軸受部30の上面には、軸受部30の回り止めを行うために、小さな凸状の回り止め33が形成されている。尚、本実施例においては、軸受部30が本発明の「軸受部材」に該当し、シールリング38が本発明の「シール部材」に該当する。
【0022】
取付板40は、板厚が約0.6〜1ミリメートルの鋼板によって形成されている。ハウジング10の湯水通路12内に、弁部20および軸受部30を収容した後、ネジ50を用いてハウジング10にネジ止めする。このとき、取付板40に設けられた切欠き43に、軸受部30の上面に設けられた回り止め33が嵌め込まれ、その結果、軸受部30の開口部35の位置と、ハウジング10の第1ポート14aの位置とが一致するようになっている。また、取付板40には、弁軸22を介して第1・第2弁体24a,24bを移動させるためのアクチュエーター(電動モーターなど)が取り付けられる取付穴44も設けられている。
【0023】
図2は、弁軸22の中心軸を通る断面で切断することによって本実施例の流量制御弁1の内部構造を示した断面図である。図示されるように、流量制御弁1が組み立てられた状態では、ハウジング10内の湯水通路12と、軸受部30内の凹部34とが連通し、凹部34は開口部35を介して第1ポート14aと連通する。そして、軸受部30の凹部34が湯水通路12に向かって開口する部分には、第1弁口16aが形成されている。更に、第2ポート14bと連通する側の湯水通路12には、湯水通路12の内径が少しだけ絞られて、第1弁口16aと向かい合うように第2弁口16bが形成されている。
【0024】
また、弁軸22は軸受部30の貫通穴32に挿通されており、弁軸22の先端側には、第1・第2弁体24a,24bが取り付けられている。尚、軸受部30の貫通穴32には、円筒形のシール部材39が嵌め込まれ、弁軸22との間から湯水が漏れ出さないようにシールしつつ、弁軸22を軸方向に進退動させることが可能となっている。そして弁軸22を、図上で上下方向に移動させると、第1弁体24aのシート部24sと、第1弁口16aの周囲に設けられた弁座17aとの距離、あるいは、第2弁体24bのシート部24sと、第2弁口16bの周囲に設けられた弁座17bとの距離が変化する。その結果、たとえば第3ポート14cからの湯水を第1ポート14aと第2ポート14bとに分配するのであれば、分配比率を変更することが可能となる。逆に、第1ポート14aおよび第2ポート14bからの湯水を混合して第3ポート14cから流出させるのであれば、混合比率を変更することが可能となる。尚、弁軸22を移動させる方法としては種々の方法を用いることができる。たとえば、電動モーターとネジ機構とを組み合わせて弁軸22を移動させてもよいし、あるいは、手動によって弁軸22を回転させることによって移動させても良い。更には、手動で弁軸22を直接引き上げたり押し下げたりしてもよい。
【0025】
ここで、図1を用いて前述したように、本実施例の流量制御弁1では、軸受部30の外周側面の一部が凹形状に形成されており、湯水通路12を形成するハウジング10の内周面との間に空気溜まり36が形成されている。このため、ハウジング10が樹脂材料で形成されているにも拘わらず、湯水の凍結によってハウジング10が破損することを回避可能となっている。以下、この点について詳しく説明する。
【0026】
B.凍結によるハウジングの破損回避メカニズム :
図3は、内部に湯水が残った状態で流量制御弁1を冷却したときの温度変化を示した説明図である。図示した例では、外気温を20℃から−20℃まで約30分かけて低下させたときに、流量制御弁1内の三箇所(第3ポート14cの内部、第1ポート14a側の湯水通路12、第2ポート14b側の湯水通路12)で計測した湯水の温度変化が示されている。ここで、「第1ポート14a側の湯水通路12」とは、第3ポート14cを入口側、第1ポート14aおよび第2ポート14bを出口側としたときに、第1弁体24aの少し下流側となる部分である。また、「第2ポート14b側の湯水通路12」とは、第2弁体24bの少し下流側の部分である。
【0027】
尚、図2には、第3ポート14cの内部で湯水の温度変化を計測した箇所が「A」と表示されている。以下では、この計測箇所(第3ポート14cの内部)を「A箇所」と呼ぶことがある。また、その他の計測箇所、すなわち第1ポート14a側の湯水通路12、および第2ポート14b側の湯水通路12には、それぞれ「B」、「C」と表示されている。以下では、これらの計測箇所を、それぞれ「B箇所」、「C箇所」と呼ぶことがある。
【0028】
図3中に示した破線は外気温を示している。また、A箇所(第3ポート14cの内部)の温度は一点鎖線で示されており、C箇所(第2ポート14b側の湯水通路12)の温度は二点鎖線で、B箇所(第1ポート14a側の湯水通路12)の温度は実線で示されている。図示されるように、外気温を低下させると、少し遅れてA箇所の温度が低下し、更に少し遅れてB箇所およびC箇所の温度が低下する。ここで、A箇所(第3ポート14cの内部)の方が、B箇所およびC箇所よりも早く温度が低下しているのは、第3ポート14cが流量制御弁1の本体部分から突設した状態となっているので、本体部分の内側にあるB箇所およびC箇所よりも、外気によって冷やされ易いためである。
【0029】
A箇所の温度が0℃に達すると、第3ポート14c内の湯水が凍結し始める。凍結が進行している間は、温度は0℃に保たれるが、第3ポート14c内の全ての湯水が凍結すると、その後は外気温の低下と共にA箇所の温度も低下していく。また、B箇所(第1ポート14a側の湯水通路12内)およびC箇所(第2ポート14b側の湯水通路12内)の温度も、大まかにはA箇所の温度とほぼ同様に変化する。すなわち、外気温の低下と共に0℃まで温度が低下した後、暫くの間、0℃を保ってから更に温度が低下する。
【0030】
ここで、実線で示したB箇所の温度変化と、二点鎖線で示したC箇所の温度変化とを比較すると、凍結が開始されるまで(0℃に達するまで)の間は、大きな差は見られない。しかし、凍結が完了するまでの時間、および凍結完了後の温度変化に差が現れる。すなわち、C箇所に比較して、B箇所は凍結完了までに時間がかかり、凍結完了後はゆっくりと温度低下する。これは、B箇所は外側に空気溜まり36が設けられているため、この空気溜まり36が断熱層となって温度低下を抑制しているためと考えられる。もちろん、空気溜まり36によって断熱しても凍結を遅らせるだけであって、凍結を回避することはできない。しかし、B箇所での凍結を遅らせることができれば、以下のようなメカニズムによってハウジング10の破損を回避することが可能となる。
【0031】
図4は、本実施例の流量制御弁1が、空気溜まり36によってハウジング10の破損を回避するメカニズムを示した説明図である。図4(a)には、湯水の凍結が未だあまり進んでいない状態が示されている。前述したように湯水の凍結は、流量制御弁1の本体部分(第1・第2弁体24a,24bが収納された部分)よりも、第3ポート14cの部分の方が早く凍結し始める。これは、第3ポート14cが流量制御弁1の本体部分から突出しており、外気との接触面積が大きいので冷却され易いためである。同様な理由から、第1ポート14aおよび第2ポート14bの部分も、流量制御弁1の本体部分より早く凍結し始める。その結果、湯水が凍結し始めた初期の段階では、図4(a)に示したように、凍結した氷によって第1ポート14a〜第3ポート14cが閉塞された状態となり、これ以降の凍結による体積膨張は、全て湯水通路12内の圧力を上昇させることになる。
【0032】
図4(b)には、流量制御弁1の内部で湯水の凍結が、少し進んだ状態が示されている。図4(a)と比較すると、第3ポート14cから、第1弁体24aと第2弁体24bとの間、更には第2ポート14bに亘る範囲で湯水が凍結している。しかし、B箇所(第1ポート14a側の湯水通路12)では、B箇所(第1ポート14a側の湯水通路12)の外側に設けられた空気溜まり36が断熱層となって、外気からの冷気が伝わり難くなっているため、凍結しないままに保たれている。
【0033】
このため、たとえ凍結が進んで湯水通路12内の圧力が高くなっても、ハウジング10が破壊される前に軸受部30が押し上げられて圧力を逃がすことができるので、ハウジング10が破壊されることを回避することができる。すなわち、図1に示したように本実施例の流量制御弁1では、軸受部30はハウジング10内に挿入されて、板厚の薄い(本実施例では0.6〜1ミリメートル)取付板40で上から押さえられているだけなので、凍結によって湯水通路12内の圧力が高くなると、取付板40が塑性変形あるいは弾性変形して軸受部30が押し上げられる。このため、ハウジング10が破壊される前に、湯水通路12内の圧力を逃がすことができ、ハウジング10の破損を回避することができる。
【0034】
また、図2に示したように、本実施例の流量制御弁1では、軸受部30の湯水通路12と面する側に凹部34が形成されており、この凹部34の外周側に空気溜まり36が形成されている。このため、空気溜まり36で断熱されて、外気温の低下が凹部34内の湯水に伝わり難くなっている。加えて、軸受部30は樹脂材料で形成されているので、軸受部30を金属材料で形成した場合のように、軸受部30が凹部34内の湯水を直接冷ましてしまうこともない。その結果、軸受部30の凹部34内の湯水が凍結することを、確実に抑制することが可能となっている。
【0035】
更に、本実施例の流量制御弁1では、単に、ハウジング10の湯水通路12に軸受部30を挿入するだけで空気溜まり36を形成することが可能であり、空気溜まり36を形成するための特別な部品や特別な組み立て手順を要しない。加えて、ハウジング10の内周面と軸受部30との間から湯水が漏れないようにシールするシールリング37,38が、そのまま、空気溜まり36への湯水の進入を抑制する機能も果たしている。このため、流量制御弁1の製造コストを増加させることなく、ハウジング10の破損を簡単に回避することが可能となる。
【0036】
また、本実施例の流量制御弁1によれば、次のような点検・保守上の利点も得ることができる。先ず、第1ポート14a〜第3ポート14cは、凍結の初期の段階で閉塞されてしまうので高い圧力がかかることはなく、これらの箇所が破損することはない。更に、ハウジング10が破損する前に軸受部30が押し上げられるので、流量制御弁1が破損する場合には必ず取付板40の変形を伴っている。このため、流量制御弁1の破損の有無を点検する場合には、取付板40の変形有無のみを点検すればよく、破損していた場合にも取付板40を取り替えるだけで良いので、点検・保守作業がたいへん容易となる。
【0037】
C.変形例 :
上述した実施例では、流量制御弁1が、第1ポート14a〜第3ポート14cの三つのポートを有する制御弁であるものとして説明した。しかし、流量制御弁1は、必ずしも三つのポートを有する制御弁である必要はなく、図5に示すような二つのポートを有する流量制御弁2に対しても、本発明を好適に適用することができる。
【0038】
図5に示した変形例の流量制御弁2は、図2に示した本実施例の流量制御弁1から第2ポート14bを取り除いたような構成となっている。すなわち、ハウジング10内に形成された湯水通路12に対して、二つのポート14d,14eが側面から接続されており、一方のポート14e側の湯水通路12には弁口16dが形成され、弁口16dの周囲には弁座17dが形成されている。そして、この弁口16dに対向させて、弁体24dが設けられており、弁体24dが先端に取り付けられた弁軸22は、軸受部30を貫通している。この軸受部30は、樹脂材料によって形成されており、湯水通路12を形成するハウジング10内に挿入されている。また、軸受部30の湯水通路12側には凹部34が形成されており、凹部34の外側に対応する周側面には、ほぼ全周に亘って空気溜まり36が形成されるようになっている。
【0039】
このような変形例の流量制御弁2においても、軸受部30の内側に形成された凹部34の湯水は、外側に形成された空気溜まり36によって周囲が断熱されているので、他の箇所よりも凍結し難くなっている。このため、たとえ二つのポート14d,14eが何れも凍結によって閉塞した場合でも、ハウジング10が破損する前に取付板40が変形して軸受部30が押し上げられるので、ハウジング10の破損を回避することが可能となる。
【0040】
以上、本実施例および変形例について説明したが、本発明は上記の実施例あるいは変形例に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施することが可能である。
【符号の説明】
【0041】
1…流量制御弁、 2…流量制御弁、 10…ハウジング、
12…湯水通路、 14a〜c…第1ポート〜第3ポート
14d,e…ポート、 16a…第1弁口、 16b…第2弁口、
16d…弁口、 17a,b…弁座、 17d…弁座、
20…弁部、 22…弁軸、 24a…第1弁体、
24b…第2弁体、 24d…弁体、 24s…シート部
26…弦巻バネ、 30…軸受部、 32…貫通穴、
33…回り止め、 34…凹部、 35…開口部、
36…空気溜まり、 37…シールリング、 39…シール部材、
40…取付板、 43…切欠き、 44…取付穴、
50…ネジ
【技術分野】
【0001】
本発明は、給湯装置などで用いられる流量制御弁に関する。
【背景技術】
【0002】
給湯装置などでは、湯水(湯または水)の流量を増加・減少させたり、流路を切り換えたり、複数の流路への分配割合を変更したり、あるいは異なる流路からの混合割合を変更したりする目的で各種の流量制御弁が用いられる。これら流量制御弁は、ハウジング内に湯水通路および弁口が形成され、その湯水通路内で、先端に弁体が設けられた弁軸を弁軸方向に進退動させて弁体と弁口との間の間隔を変更することにより、湯水の流量制御を行っている。また、多くの場合、弁軸の移動には電動モーターが用いられるが、流量制御弁の用途によっては手動で行われる場合もある。
【0003】
このような流量制御弁は、内部に湯水が残ったまま放置されると、冬季などの外気温の低下によって内部の湯水が凍結し、そのときの体積膨張によってハウジングに過大な圧力が作用することがある。そこで、このような場合にも流量制御弁の破損を回避可能とするために、流量制御弁の内部にコイルバネを設けて凍結時の体積膨張を吸収可能とした技術が提案されている(特許文献1)。あるいは、ハウジングが破損する前に電動モーターの取付板を塑性変形させることで、凍結時の体積膨張を吸収可能とした技術も提案されている(特許文献2)。
【0004】
また近年では、流量制御弁の軽量化およびコスト軽減を目的として、ハウジングの材料が、黄銅などの金属材料からPPS(ポニフェニレンスルファイド)などの樹脂材料に変更されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−92093号公報
【特許文献2】特開2006−292131号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、ハウジングが樹脂化された流量制御弁に対しては、上述した提案の技術では、流量制御弁の破損を回避することができない場合があるという問題があった。すなわち、ハウジング内の湯水は、全ての箇所の湯水が同時に凍結するわけではなく、外気温が伝わり易いハウジングの内壁面に沿った箇所から凍結し始める。このため、たとえば氷に引っ掛かるなどして、凍結時の体積膨張を吸収する機構の作動開始が遅れることが起こり得る。そして、樹脂製のハウジングは金属製のハウジングに対して強度が低いので、体積膨張を吸収する機構の作動開始が遅れると、ハウジングが破損してしまうことが起こり得る。
【0007】
この発明は、従来の技術が有する上述した課題に対応してなされたものであり、樹脂製のハウジングであっても、湯水の凍結によってハウジングが破損することを回避することが可能な流量制御弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するために、本発明の流量制御弁は次の構成を採用した。すなわち、
樹脂製のハウジング内に湯水通路および弁口が形成され、弁体が取付けられた弁軸を、該湯水通路内で該弁軸方向に進退動させることにより、該弁体と前記弁口との間を通過する湯水の流量を制御する流量制御弁において、
前記弁軸が進退動可能に貫通し、内部に湯水通路となる空間が形成された軸受部材が、前記ハウジングの該湯水通路が開口する端面から挿入して取り付けられており、
前記軸受部材と、前記湯水通路を形成する前記ハウジングの内周面との間には、空気溜まりが形成されていることを特徴とする。
【0009】
このような構成を有する本発明の流量制御弁においては、軸受部材の外側に空気溜まりが形成されている。このため、たとえ湯水通路内の湯水が凍結する程度まで外気温が低下した場合でも、軸受部材の外側に形成された空気溜まりが断熱層となるため、軸受部材の内部に形成された湯水通路の湯水には外気温の低下が伝わり難く、軸受部材に接する部分はなかなか凍結することが無い。このため、湯水通路内の凍結が進んで、ハウジングが破損するおそれが生じる程度まで湯水通路内の圧力が高くなった場合でも、たとえば、湯水通路内に挿入されている軸受部材を湯水の圧力で押し戻すなどして湯水の圧力を減少させることができる。その結果、たとえハウジングが樹脂化されていた場合でも、凍結によってハウジングが破損することを回避することが可能となる。尚、軸受部材の内部に形成された空間は、ハウジングに組み付けた状態で、湯水通路上流からの湯水が流れ込むような空間であれば良く、死水領域となるような空間であっても構わない。
【0010】
また、上述した本発明の流量制御弁においては、ハウジング内に挿入される側の軸受部材の端面に凹部を形成しておき、軸受部材がハウジング内に挿入されると、その凹部内に湯水通路内の湯水が入り込むようにしておく。そして、この凹部の外側に存在する軸受部材の側面と、ハウジングの内周面との間に、空気溜まりが形成されるようにしても良い。
【0011】
このような形状としておけば、軸受部材の凹部内の湯水に対しては、空気溜まりによる断熱効果を大きくすることができる。その結果、軸受部材の凹部内の湯水を、より確実に凍結し難くすることができる。
【0012】
また、上述した本発明の流量制御弁においては、ハウジングの内周面、あるいは、その内周面と向き合う軸受部材の側面の少なくとも一方を凹形状に形成しておくことによって、空気溜まりが形成されるようにしても良い。
【0013】
こうすれば、軸受部材をハウジング内に挿入するだけで空気溜まりを形成することが可能であり、空気溜まりを形成するための特別な部品や、特別な組み立て工程を要しない。このため、凍結によってハウジングが破損するおそれのない流量制御弁を、簡単に且つ製造コストを全く増加させることなく製造することが可能となる。
【0014】
また、上述した本発明の流量制御弁においては、軸受部材の次のような位置、すなわち、軸受部材をハウジング内に挿入する方向に向かって、空気溜まりの位置よりも少なくとも先端側の位置に、ハウジングの内周面と当接して湯水をシールするシール部材を設けるようにしても良い。
【0015】
こうすれば、シール部材によって、湯水通路内の湯水が空気溜まりに入り込み難くなる。その結果、空気溜まりをより確実に断熱層として機能させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本実施例の流量制御弁1の構造を示す分解組立図である。
【図2】弁軸22の中心軸を通る断面で切断することによって本実施例の流量制御弁1の内部構造を示した断面図である。
【図3】内部に湯水が残った状態で流量制御弁1を冷却したときの温度変化を示した説明図である。
【図4】本実施例の流量制御弁1が空気溜まり36によってハウジング10の破損を回避するメカニズムを示した説明図である。
【図5】変形例の流量制御弁2の内部構造を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下では、上述した本願発明の内容を明確にするために、次のような順序に従って実施例を説明する。
A.流量制御弁の構造:
B.凍結によるハウジングの破損回避メカニズム:
C.変形例:
【0018】
A.流量制御弁の構造 :
図1は、本実施例の流量制御弁1の構造を示す分解組立図である。本実施例の流量制御弁1は、略円筒形状をしたハウジング10と、ハウジング10内に収容される略軸形状の弁部20と、弁部20の上からハウジング10内に収容される軸受部30と、内部に弁部20および軸受部30が収納された状態でハウジング10に蓋をする取付板40と、取付板40をハウジング10にネジ止めするためのネジ50などから構成されている。
【0019】
このうちハウジング10は、内部に湯水通路12が形成されており、側面の上部および下部には、湯水通路12と連通する第1ポート14aおよび第2ポート14bが形成されている。これら第1・第2ポート14a,bと反対側の側面には、第1ポート14aと第2ポート14bとの中間の位置で湯水通路12に連通する第3ポート14cが設けられている。また、ハウジング10は、PPSなどの樹脂材料によって形成されている。
【0020】
弁部20は、金属材料によって形成された棒状の弁軸22と、弁軸22の先端に取り付けられて略円錐形状に形成された二つの弁体(第1弁体24aおよび第2弁体24b)などから構成されている。これら第1・第2弁体24a,24bは、円錐形状の底面が互いに背中合わせとなる向きに取り付けられ、それらの間には、弦巻バネ26が押し縮められた状態で組み込まれている。また、第1・第2弁体24a,24bは樹脂材料によって形成されているが、第1・第2弁体24a,24bの一部には、ゴム材料で円環形状に形成されたシート部24sが組み付けられている。
【0021】
軸受部30は、樹脂材料によって形成された略円柱形状の部材であり、略円柱形状の中心軸上に弁軸22の通る貫通穴32が形成されている。軸受部30の内部には、底面側からは全体の約2/3の高さの位置まで、大きな凹部34が形成されており、側面側には凹部34と連通する開口部35が形成されている。また、開口部35が形成されている側と反対側の外周側面には、約半周に亘って側面を凹ませることによって、空気溜まり36が形成されている。この軸受部30は、ハウジング10の湯水通路12内に挿入されるが、挿入されたときに湯水通路12の内周面に当接して湯水をシールするためのシールリング37,38が、軸受部30の上部および下部に設けられている。また、軸受部30の上面には、軸受部30の回り止めを行うために、小さな凸状の回り止め33が形成されている。尚、本実施例においては、軸受部30が本発明の「軸受部材」に該当し、シールリング38が本発明の「シール部材」に該当する。
【0022】
取付板40は、板厚が約0.6〜1ミリメートルの鋼板によって形成されている。ハウジング10の湯水通路12内に、弁部20および軸受部30を収容した後、ネジ50を用いてハウジング10にネジ止めする。このとき、取付板40に設けられた切欠き43に、軸受部30の上面に設けられた回り止め33が嵌め込まれ、その結果、軸受部30の開口部35の位置と、ハウジング10の第1ポート14aの位置とが一致するようになっている。また、取付板40には、弁軸22を介して第1・第2弁体24a,24bを移動させるためのアクチュエーター(電動モーターなど)が取り付けられる取付穴44も設けられている。
【0023】
図2は、弁軸22の中心軸を通る断面で切断することによって本実施例の流量制御弁1の内部構造を示した断面図である。図示されるように、流量制御弁1が組み立てられた状態では、ハウジング10内の湯水通路12と、軸受部30内の凹部34とが連通し、凹部34は開口部35を介して第1ポート14aと連通する。そして、軸受部30の凹部34が湯水通路12に向かって開口する部分には、第1弁口16aが形成されている。更に、第2ポート14bと連通する側の湯水通路12には、湯水通路12の内径が少しだけ絞られて、第1弁口16aと向かい合うように第2弁口16bが形成されている。
【0024】
また、弁軸22は軸受部30の貫通穴32に挿通されており、弁軸22の先端側には、第1・第2弁体24a,24bが取り付けられている。尚、軸受部30の貫通穴32には、円筒形のシール部材39が嵌め込まれ、弁軸22との間から湯水が漏れ出さないようにシールしつつ、弁軸22を軸方向に進退動させることが可能となっている。そして弁軸22を、図上で上下方向に移動させると、第1弁体24aのシート部24sと、第1弁口16aの周囲に設けられた弁座17aとの距離、あるいは、第2弁体24bのシート部24sと、第2弁口16bの周囲に設けられた弁座17bとの距離が変化する。その結果、たとえば第3ポート14cからの湯水を第1ポート14aと第2ポート14bとに分配するのであれば、分配比率を変更することが可能となる。逆に、第1ポート14aおよび第2ポート14bからの湯水を混合して第3ポート14cから流出させるのであれば、混合比率を変更することが可能となる。尚、弁軸22を移動させる方法としては種々の方法を用いることができる。たとえば、電動モーターとネジ機構とを組み合わせて弁軸22を移動させてもよいし、あるいは、手動によって弁軸22を回転させることによって移動させても良い。更には、手動で弁軸22を直接引き上げたり押し下げたりしてもよい。
【0025】
ここで、図1を用いて前述したように、本実施例の流量制御弁1では、軸受部30の外周側面の一部が凹形状に形成されており、湯水通路12を形成するハウジング10の内周面との間に空気溜まり36が形成されている。このため、ハウジング10が樹脂材料で形成されているにも拘わらず、湯水の凍結によってハウジング10が破損することを回避可能となっている。以下、この点について詳しく説明する。
【0026】
B.凍結によるハウジングの破損回避メカニズム :
図3は、内部に湯水が残った状態で流量制御弁1を冷却したときの温度変化を示した説明図である。図示した例では、外気温を20℃から−20℃まで約30分かけて低下させたときに、流量制御弁1内の三箇所(第3ポート14cの内部、第1ポート14a側の湯水通路12、第2ポート14b側の湯水通路12)で計測した湯水の温度変化が示されている。ここで、「第1ポート14a側の湯水通路12」とは、第3ポート14cを入口側、第1ポート14aおよび第2ポート14bを出口側としたときに、第1弁体24aの少し下流側となる部分である。また、「第2ポート14b側の湯水通路12」とは、第2弁体24bの少し下流側の部分である。
【0027】
尚、図2には、第3ポート14cの内部で湯水の温度変化を計測した箇所が「A」と表示されている。以下では、この計測箇所(第3ポート14cの内部)を「A箇所」と呼ぶことがある。また、その他の計測箇所、すなわち第1ポート14a側の湯水通路12、および第2ポート14b側の湯水通路12には、それぞれ「B」、「C」と表示されている。以下では、これらの計測箇所を、それぞれ「B箇所」、「C箇所」と呼ぶことがある。
【0028】
図3中に示した破線は外気温を示している。また、A箇所(第3ポート14cの内部)の温度は一点鎖線で示されており、C箇所(第2ポート14b側の湯水通路12)の温度は二点鎖線で、B箇所(第1ポート14a側の湯水通路12)の温度は実線で示されている。図示されるように、外気温を低下させると、少し遅れてA箇所の温度が低下し、更に少し遅れてB箇所およびC箇所の温度が低下する。ここで、A箇所(第3ポート14cの内部)の方が、B箇所およびC箇所よりも早く温度が低下しているのは、第3ポート14cが流量制御弁1の本体部分から突設した状態となっているので、本体部分の内側にあるB箇所およびC箇所よりも、外気によって冷やされ易いためである。
【0029】
A箇所の温度が0℃に達すると、第3ポート14c内の湯水が凍結し始める。凍結が進行している間は、温度は0℃に保たれるが、第3ポート14c内の全ての湯水が凍結すると、その後は外気温の低下と共にA箇所の温度も低下していく。また、B箇所(第1ポート14a側の湯水通路12内)およびC箇所(第2ポート14b側の湯水通路12内)の温度も、大まかにはA箇所の温度とほぼ同様に変化する。すなわち、外気温の低下と共に0℃まで温度が低下した後、暫くの間、0℃を保ってから更に温度が低下する。
【0030】
ここで、実線で示したB箇所の温度変化と、二点鎖線で示したC箇所の温度変化とを比較すると、凍結が開始されるまで(0℃に達するまで)の間は、大きな差は見られない。しかし、凍結が完了するまでの時間、および凍結完了後の温度変化に差が現れる。すなわち、C箇所に比較して、B箇所は凍結完了までに時間がかかり、凍結完了後はゆっくりと温度低下する。これは、B箇所は外側に空気溜まり36が設けられているため、この空気溜まり36が断熱層となって温度低下を抑制しているためと考えられる。もちろん、空気溜まり36によって断熱しても凍結を遅らせるだけであって、凍結を回避することはできない。しかし、B箇所での凍結を遅らせることができれば、以下のようなメカニズムによってハウジング10の破損を回避することが可能となる。
【0031】
図4は、本実施例の流量制御弁1が、空気溜まり36によってハウジング10の破損を回避するメカニズムを示した説明図である。図4(a)には、湯水の凍結が未だあまり進んでいない状態が示されている。前述したように湯水の凍結は、流量制御弁1の本体部分(第1・第2弁体24a,24bが収納された部分)よりも、第3ポート14cの部分の方が早く凍結し始める。これは、第3ポート14cが流量制御弁1の本体部分から突出しており、外気との接触面積が大きいので冷却され易いためである。同様な理由から、第1ポート14aおよび第2ポート14bの部分も、流量制御弁1の本体部分より早く凍結し始める。その結果、湯水が凍結し始めた初期の段階では、図4(a)に示したように、凍結した氷によって第1ポート14a〜第3ポート14cが閉塞された状態となり、これ以降の凍結による体積膨張は、全て湯水通路12内の圧力を上昇させることになる。
【0032】
図4(b)には、流量制御弁1の内部で湯水の凍結が、少し進んだ状態が示されている。図4(a)と比較すると、第3ポート14cから、第1弁体24aと第2弁体24bとの間、更には第2ポート14bに亘る範囲で湯水が凍結している。しかし、B箇所(第1ポート14a側の湯水通路12)では、B箇所(第1ポート14a側の湯水通路12)の外側に設けられた空気溜まり36が断熱層となって、外気からの冷気が伝わり難くなっているため、凍結しないままに保たれている。
【0033】
このため、たとえ凍結が進んで湯水通路12内の圧力が高くなっても、ハウジング10が破壊される前に軸受部30が押し上げられて圧力を逃がすことができるので、ハウジング10が破壊されることを回避することができる。すなわち、図1に示したように本実施例の流量制御弁1では、軸受部30はハウジング10内に挿入されて、板厚の薄い(本実施例では0.6〜1ミリメートル)取付板40で上から押さえられているだけなので、凍結によって湯水通路12内の圧力が高くなると、取付板40が塑性変形あるいは弾性変形して軸受部30が押し上げられる。このため、ハウジング10が破壊される前に、湯水通路12内の圧力を逃がすことができ、ハウジング10の破損を回避することができる。
【0034】
また、図2に示したように、本実施例の流量制御弁1では、軸受部30の湯水通路12と面する側に凹部34が形成されており、この凹部34の外周側に空気溜まり36が形成されている。このため、空気溜まり36で断熱されて、外気温の低下が凹部34内の湯水に伝わり難くなっている。加えて、軸受部30は樹脂材料で形成されているので、軸受部30を金属材料で形成した場合のように、軸受部30が凹部34内の湯水を直接冷ましてしまうこともない。その結果、軸受部30の凹部34内の湯水が凍結することを、確実に抑制することが可能となっている。
【0035】
更に、本実施例の流量制御弁1では、単に、ハウジング10の湯水通路12に軸受部30を挿入するだけで空気溜まり36を形成することが可能であり、空気溜まり36を形成するための特別な部品や特別な組み立て手順を要しない。加えて、ハウジング10の内周面と軸受部30との間から湯水が漏れないようにシールするシールリング37,38が、そのまま、空気溜まり36への湯水の進入を抑制する機能も果たしている。このため、流量制御弁1の製造コストを増加させることなく、ハウジング10の破損を簡単に回避することが可能となる。
【0036】
また、本実施例の流量制御弁1によれば、次のような点検・保守上の利点も得ることができる。先ず、第1ポート14a〜第3ポート14cは、凍結の初期の段階で閉塞されてしまうので高い圧力がかかることはなく、これらの箇所が破損することはない。更に、ハウジング10が破損する前に軸受部30が押し上げられるので、流量制御弁1が破損する場合には必ず取付板40の変形を伴っている。このため、流量制御弁1の破損の有無を点検する場合には、取付板40の変形有無のみを点検すればよく、破損していた場合にも取付板40を取り替えるだけで良いので、点検・保守作業がたいへん容易となる。
【0037】
C.変形例 :
上述した実施例では、流量制御弁1が、第1ポート14a〜第3ポート14cの三つのポートを有する制御弁であるものとして説明した。しかし、流量制御弁1は、必ずしも三つのポートを有する制御弁である必要はなく、図5に示すような二つのポートを有する流量制御弁2に対しても、本発明を好適に適用することができる。
【0038】
図5に示した変形例の流量制御弁2は、図2に示した本実施例の流量制御弁1から第2ポート14bを取り除いたような構成となっている。すなわち、ハウジング10内に形成された湯水通路12に対して、二つのポート14d,14eが側面から接続されており、一方のポート14e側の湯水通路12には弁口16dが形成され、弁口16dの周囲には弁座17dが形成されている。そして、この弁口16dに対向させて、弁体24dが設けられており、弁体24dが先端に取り付けられた弁軸22は、軸受部30を貫通している。この軸受部30は、樹脂材料によって形成されており、湯水通路12を形成するハウジング10内に挿入されている。また、軸受部30の湯水通路12側には凹部34が形成されており、凹部34の外側に対応する周側面には、ほぼ全周に亘って空気溜まり36が形成されるようになっている。
【0039】
このような変形例の流量制御弁2においても、軸受部30の内側に形成された凹部34の湯水は、外側に形成された空気溜まり36によって周囲が断熱されているので、他の箇所よりも凍結し難くなっている。このため、たとえ二つのポート14d,14eが何れも凍結によって閉塞した場合でも、ハウジング10が破損する前に取付板40が変形して軸受部30が押し上げられるので、ハウジング10の破損を回避することが可能となる。
【0040】
以上、本実施例および変形例について説明したが、本発明は上記の実施例あるいは変形例に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施することが可能である。
【符号の説明】
【0041】
1…流量制御弁、 2…流量制御弁、 10…ハウジング、
12…湯水通路、 14a〜c…第1ポート〜第3ポート
14d,e…ポート、 16a…第1弁口、 16b…第2弁口、
16d…弁口、 17a,b…弁座、 17d…弁座、
20…弁部、 22…弁軸、 24a…第1弁体、
24b…第2弁体、 24d…弁体、 24s…シート部
26…弦巻バネ、 30…軸受部、 32…貫通穴、
33…回り止め、 34…凹部、 35…開口部、
36…空気溜まり、 37…シールリング、 39…シール部材、
40…取付板、 43…切欠き、 44…取付穴、
50…ネジ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂製のハウジング内に湯水通路および弁口が形成され、弁体が取付けられた弁軸を、該湯水通路内で該弁軸方向に進退動させることにより、該弁体と前記弁口との間を通過する湯水の流量を制御する流量制御弁において、
前記弁軸が進退動可能に貫通し、内部に湯水通路となる空間が形成された軸受部材が、前記ハウジングの該湯水通路が開口する端面から挿入して取り付けられており、
前記軸受部材と、前記湯水通路を形成する前記ハウジングの内周面との間には、空気溜まりが形成されていることを特徴とする流量制御弁。
【請求項2】
請求項1に記載の流量制御弁において、
前記軸受部材は、前記ハウジング内に挿入される側の端面に、前記湯水通路となる空間を形成するための凹部を備えており、
前記空気溜まりは、前記凹部の外側の前記軸受部材と、前記ハウジングの内周面との間に形成されていることを特徴とする流量制御弁。
【請求項3】
請求項1または請求項2の何れかに記載の流量制御弁において、
前記空気溜まりは、前記ハウジングの内周面、あるいは該内周面と向き合う前記軸受部材の側面の少なくとも一方が凹形状に形成されることによって形成されていることを特徴とする流量制御弁。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3の何れか一項に記載の流量制御弁において、
前記軸受部材には、該軸受部材を前記ハウジング内に挿入する方向に向かって、前記空気溜まりの位置よりも少なくとも先端側に、前記ハウジングの内周面と当接して湯水をシールするシール部材が設けられていることを特徴とする流量制御弁。
【請求項1】
樹脂製のハウジング内に湯水通路および弁口が形成され、弁体が取付けられた弁軸を、該湯水通路内で該弁軸方向に進退動させることにより、該弁体と前記弁口との間を通過する湯水の流量を制御する流量制御弁において、
前記弁軸が進退動可能に貫通し、内部に湯水通路となる空間が形成された軸受部材が、前記ハウジングの該湯水通路が開口する端面から挿入して取り付けられており、
前記軸受部材と、前記湯水通路を形成する前記ハウジングの内周面との間には、空気溜まりが形成されていることを特徴とする流量制御弁。
【請求項2】
請求項1に記載の流量制御弁において、
前記軸受部材は、前記ハウジング内に挿入される側の端面に、前記湯水通路となる空間を形成するための凹部を備えており、
前記空気溜まりは、前記凹部の外側の前記軸受部材と、前記ハウジングの内周面との間に形成されていることを特徴とする流量制御弁。
【請求項3】
請求項1または請求項2の何れかに記載の流量制御弁において、
前記空気溜まりは、前記ハウジングの内周面、あるいは該内周面と向き合う前記軸受部材の側面の少なくとも一方が凹形状に形成されることによって形成されていることを特徴とする流量制御弁。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3の何れか一項に記載の流量制御弁において、
前記軸受部材には、該軸受部材を前記ハウジング内に挿入する方向に向かって、前記空気溜まりの位置よりも少なくとも先端側に、前記ハウジングの内周面と当接して湯水をシールするシール部材が設けられていることを特徴とする流量制御弁。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【公開番号】特開2012−219877(P2012−219877A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−84853(P2011−84853)
【出願日】平成23年4月6日(2011.4.6)
【出願人】(000115854)リンナイ株式会社 (1,534)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年4月6日(2011.4.6)
【出願人】(000115854)リンナイ株式会社 (1,534)
【Fターム(参考)】
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