説明

凍結粉砕スパイス含有食品

【課題】従来の手法で調製される粉砕スパイスを添加した食品に比べ、香味がより強く、かつ香味の持続時間もより長い、粉砕スパイスを添加した食品の提供。
【解決手段】粉砕スパイスを含む食品であって、前記粉砕スパイスは、1又は2種以上のスパイス原料を、0℃未満の低温条件下で粉砕して得られる凍結粉砕スパイスである、食品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スパイスを含む食品に関し、より詳細には、凍結粉砕したスパイスを含む食品に関する。
【背景技術】
【0002】
スパイスは、食べ物や料理に味や香りを付けたりするのに用いる、植物性の調味料、または薬味である。古くから様々な食品において、味や保存性等を改良するために用いられてきており、現在においてもその効果をさらに高めるために種々の工夫がなされている。
【0003】
例えば、香味の劣化が少なく、優れた香気を有する粉砕香辛料を製造するため、香辛料ホールを果実部と種皮部とに分け、該果実部を45℃以下でかつ実質的に密封状態で粉砕し、これとは別に該種皮部を粉砕し、これらを混合する粉砕香辛料の製造方法が知られている(特許文献1)。
【0004】
また、原料を0〜40℃に保持して粉砕を行うことにより、香気、風味をほとんど損なうことなく粒度の細かい粉末香辛料を得る方法(特許文献2)も知られている。またさらに、スパイスを微粉砕し、12時間以内に窒素置換しながらアルミパックに充填・密封することで、香味強度、香味持続時間を増やす方法(特許文献3)なども知られている。
【0005】
ところで、近年の嗜好の多様化により、より強いスパイスの香気、風味を有する食品が求められるようになっている。しかしながら、このような要求に応え得るスパイスあるいはスパイスを含有する食品は従来得られておらず、より強い香気、風味を有するスパイスあるいはスパイス含有食品が求められていた。
【特許文献1】特開平6−90700号公報
【特許文献2】特開平8−242808号公報
【特許文献3】特開平2005−168386号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、従来の手法で調製される粉砕スパイスを添加した食品に比べ、香味がより強く、かつ香味の持続時間もより長い、粉砕スパイスを添加した食品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、驚くべき事に、1又は2種以上のスパイス原料を、0℃未満の低温条件下で粉砕して得られる凍結粉砕スパイスを食品に添加すると、従来の手法で調製される粉砕スパイスを添加した食品に比べ、香味がより強く、口に入れてから香味を感じるまでの時間がより早く、かつ香味の持続時間もより長い食品となることを見出し、さらに改良を重ねて、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明は以下の項1〜8の食品に係るものである。
項1.粉砕スパイスを含む食品であって、前記粉砕スパイスは、1又は2種以上のスパイス原料を、0℃未満の低温条件下で粉砕して得られる凍結粉砕スパイスである、食品。
項2.スパイス原料の粉砕が、当該スパイス原料を0℃未満に冷却してから行われる、項1に記載の食品。
項3.スパイス原料の粉砕が、−100℃以下の低温条件下で行われる、項1又は2に記載の食品。
項4.スパイス原料の粉砕が、当該スパイス原料を液体窒素に接触させることで冷却してから行われる、項1〜3のいずれかに記載の食品。
項5.スパイス原料の粉砕が、窒素雰囲気下で行われる、項1〜4のいずれかに記載の食品。
項6.凍結粉砕スパイスの95重量%以上が149メッシュを通過する、項1〜5のいずれかに記載の食品。
項7.粉砕スパイスを含む食品が、粉砕スパイスを含む食肉加工食品である、項1〜6のいずれかに記載の食品。
項8.
スパイス原料が、コショウ、コリアンダー、ナツメグ、セージ、メース、カルダモン、ガーリック、キャラウエー、オールスパイス、シナモン、オレガノ、マジョラム、オニオン、タイム、クローブ、アンゼリカ、アニス、シソ、ジンジャー、タラゴン、チリペッパー、ケーパー、ターメリック、バジル、ローレル、ディルシード、ホースラディッシュ、フェンネル、パプリカ、パセリ、ペパーミント、ローズマリー、サフラン、チャイブ、セロリ、シロガラシ、セサミ、スターアニス、バニラ、マスタード、唐辛子、及びワサビからなる群より選ばれる1又は2種以上である、項1〜7のいずれかに記載の食品。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る粉砕スパイスを添加した食品は、従来の手法で調製される粉砕スパイスを添加した食品に比べ、より香味が強く、口に入れてから香味を感じるまでの時間がより早く、かつ香味の持続時間も長い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明について、さらに詳細に説明する。
【0011】
本発明は、1又は2種以上のスパイス原料を、0℃未満の低温条件下で粉砕して得られる凍結粉砕スパイスを含む食品に係る。

<凍結粉砕スパイスの調製について>
本発明の食品に用いるスパイスの原料は、植物性の調味料または薬味として通常用いられるであれば特に制限されるものではない。なお、植物性の調味料または薬味において、一部のものをハーブと呼び、スパイスと区別することがあるが、本発明におけるスパイスはそのような分類に制限されるものではなく、ハーブと呼ばれ得るものも、食べ物や料理に味や香りを付けたりするのに用いる植物性の調味料または薬味であれば本発明のスパイスの中に含まれる。
【0012】
本発明のスパイス原料として用いるのに好ましい植物としては、例えば、コショウ(ブラックペッパー、ホワイトペッパー、グリーンペッパー等)、コリアンダー、ナツメグ、セージ、メース、カルダモン、ガーリック、キャラウエー、オールスパイス、シナモン、オレガノ、マジョラム、オニオン、タイム、クローブ、アンゼリカ、アニス、シソ、ジンジャー、タラゴン、チリペッパー、ケーパー、ターメリック、バジル、ローレル、ディルシード、ホースラディッシュ、フェンネル、パプリカ、パセリ、ペパーミント、ローズマリー、サフラン、チャイブ、セロリ、シロガラシ、セサミ、スターアニス、バニラ、マスタード、唐辛子、ワサビ等を挙げることができるが、これらに限定されない。これらの植物は、目的等に応じて1種又は2種以上を用いることができる。
【0013】
なお、本発明においてスパイス原料とは、スパイスとして通常用いられる植物の部分のことであり、種類に応じて植物のどの部分を用いるかは公知である。例えば、コショウ、ナツメグ、メ−ス、サンショー、オールスパイス、トウガラシ、パプリカ、マンダリン(陳皮)、カルダモン、ジュニパーベリー、スターアニス、バニラビーンズ等であれば果実、コリアンダー、クミン、フェンネル、キャラウェイ、アニス、マスタード、セロリーシード、ディルシード、フェネグリーク、麻の実等であれば種子、タイム、セージ、ローレル、バジル、オレガノ、マジョラム、シソ、タラゴン、パセリ、ローズマリー等であれば葉(葉茎、花穂)、ジンジャー、ターメリック、ガーリック、オニオン、ホースラディッシュ、ワサビ等であれば根(根茎、鱗茎)、シナモン、カシア等であれば樹皮、サフラン、クローブ等であれば花(雌しべ、蕾)である。
【0014】
本発明の食品に用いるスパイスは、スパイス原料を、0℃未満の低温条件下で粉砕して得られる、凍結粉砕スパイスである。
【0015】
粉砕方法は、低温で粉砕を行い得るものであれば、特に制限されるものではなく、通常スパイスの粉砕に用いられ得る各種粉砕方法を用いることができる。ピンミル(高速粉砕)方式、ロールミル方式、スタンプミル方式、ボールミル方式などが例示できる。なお、前述の通り、粉砕は0℃未満の低温条件下で行われるが、より好ましくは−20℃以下、さらに好ましくは−50℃以下、さらにより好ましくは−100℃以下で行われる。
【0016】
また、粉砕は、スパイスが粉砕時に空気酸化されるのを抑制するため、酸素が存在しない雰囲気下で行うのが好ましい。例えば、炭酸ガス下、或いは窒素ガス下で行うことが好ましい。なかでも窒素雰囲気下で行うことが好適である。
【0017】
さらに、粉砕は、粉砕に供したスパイス原料全量の95重量%以上が149メッシュを通過するまで行うことが好ましい。また、粉砕に供したスパイス原料全量の95重量%以上が149メッシュを通過し、かつ65重量%以上が200メッシュを通過するまで行うことが、より好ましい。なお、通常のスパイスの粉砕は、スパイス原料全量の75%以上が30〜149メッシュとなる程度に行われる(このようなスパイスを以下「通常粉砕スパイス」ということがある)。また、「粗挽き」とはスパイス原料が全体的に10〜42メッシュとなった場合をいう(このようなスパイスを以下「粗挽きスパイス」ということがある)。
【0018】
なお、ここでのメッシュの数値はJIS規格に記載のもの(JIS標準篩網)であり、線径及び開口は、例えば10メッシュ(線径:0.840mm、開口:1.700mm)、30メッシュ(線径:0.340mm、開口:0.500mm)、42メッシュ(線径:0.250mm、開口:0.355mm)、149メッシュ(線径:0.07mm、開口:0.1mm)、200メッシュ(線径:0.052mm、開口:0.075mm)である。

粉砕には、1又は2種以上のスパイス原料を供することができ、一度に2種以上を粉砕してもよいし、別々に粉砕したものを、粉砕後に合わせてもよい。
【0019】
また、本発明の食品に用いるスパイスは、スパイス原料自体をあらかじめ0℃未満の低温にまで冷却した後、これを低温条件下で粉砕する凍結粉砕により得られる、凍結粉砕スパイスであることが好ましい。
【0020】
スパイス原料を冷却する方法としては、スパイス原料を0℃未満の低温に冷却できるものであれば特に制限されないが、できるだけ低温(好ましくは−20℃以下、より好ましくは−50℃以下、さらに好ましくは−100℃以下)に冷却できる方法が好ましい。特に、スパイス原料を液体窒素に接触させることにより冷却する方法が好適である。この場合、液体窒素中にスパイス原料を漬けるなどして接触させ、0.5〜10分放置する。
【0021】
このようにして得られる凍結粉砕スパイスは、食品に添加した際、通常粉砕スパイス及び粗挽きスパイスに比べ、香味の持続時間及び咀嚼時の香味の強さが増加し、嚥下後の香味の強さ、焼き冷まし後の香味の強さも強くなる。
【0022】
<凍結粉砕スパイス添加食品について>
凍結粉砕スパイスを添加する食品としては、スパイスの添加により香味や薬味を付与することができ、上述した本発明の効果が妨げられないものであれば特に制限さない。例えば、肉類、魚類、穀類、野菜類、キノコ類、海草類、卵類、乳類等の食材又はこれらを用いた料理(例えば、カレー、シチュー、スープ、唐揚げ、ステーキ、マリネ、粥、ピザ、サラダ、チャーハン、寿司等)に添加することができる。また、例えばこれらの食材又は料理の製造過程においても、添加することができる。
【0023】
凍結粉砕スパイスの添加量としては、本願の効果が望ましく発揮される量であれば特に制限されず、添加食品およびスパイスの種類に応じて適宜設定することができる。
【0024】
凍結粉砕スパイスの添加量は、典型的には食品全量に対して0.0001〜30重量%である。好ましくは0.001〜10重量%、より好ましくは0.005〜5重量%である。
【0025】
特に、食肉加工食品(例えばハム・ベーコン類、ソーセージ類、ハンバーグ、ミートボール、フライドチキン等)においては、肉の味に良く適合したスパイス(例えばコショウ、コリアンダー、セージ、ナツメグ、オールスパイス、カルダモン、キャラウェイ、クローブ、メース、マジョラム、タイム、ターメリック、ローズマリー、ガーリック、オニオン、ジンジャーなど)を加工工程において添加、混合することで、風味、香味等を向上させ得ることが知られているが、凍結粉砕スパイスであれば、より風味、香味等を際立たせることができ、好ましい。具体的には、食肉加工食品の加工工程において本願の凍結粉砕スパイスを添加、混合した場合、従来の粉砕スパイス(例えば通常粉砕スパイス及び粗挽きスパイス)を添加、混合したものに比べ、香味の持続時間及び咀嚼時の香味の強さが増加し、嚥下後の香味の強さ、焼き冷まし後の香味の強さ、香気の強さ等も増加する。
【0026】
凍結粉砕スパイスの添加量は、例えばソーセージ類であれば、好ましくは食品全量に対して0.05〜2.5重量%であり、より好ましくは0.05〜1.5重量%であり、さらに好ましくは0.05〜0.25重量%である。また、ハム・ベーコン類であれば、好ましくは食品全量に対して0.001〜2.5重量%であり、より好ましくは0.001〜1.5重量%であり、さらに好ましくは0.001〜0.5重量%である。
【0027】
<凍結粉砕スパイス添加食品の製造方法について>
凍結粉砕スパイスは、各種食品製造工程において公知のスパイス添加、混合方法に従って、食品製造工程において添加、混合され得る。添加、混合されるまで、凍結粉砕スパイスは低温で保存するのが好ましい。例えば冷蔵庫(10℃以下)内で、好ましくは冷凍庫(−15℃以下)内で保存される。なお、凍結粉砕スパイスが保存される際には、酸素非浸透性又は酸素難透過性の容器あるいは包装に入れられ、密封されていることが好ましい。
【0028】
例えば、食肉加工食品を製造する工程において、凍結粉砕スパイスを添加、混合する場合は、食肉加工食品の種類に応じて、適宜好適な公知のスパイス添加、混合方法を選択し、用いればよい。例えば、ソーセージ類を製造する場合であれば、原料肉は主に豚肉と牛肉を使用し、まず、異物チェックと脂肪層とすじ肉の除去後、チョッパ−(挽肉機)で挽肉にする。背脂肪も同様に挽く。挽肉にした原料肉と食塩、糖類、澱粉、植物性蛋白、調味料、リン酸塩、保存料、発色剤等とともに適量の凍結粉砕スパイスをミキサーにて混和し、一晩もしくは熟成風味を重視する場合は3日以上、冷蔵庫で塩漬する。塩漬肉をケーシングに充填し、乾燥・スモーク・蒸煮等の熱処理を行い製品とする。
【実施例】
【0029】
以下、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の例に限定されるものではない。
参考例1:凍結粉砕スパイスの調製
白コショウ原料、コリアンダー原料、ナツメグ原料を、それぞれ50重量部、1重量部、1重量部となるように混合した混合原料を用意し、これを液体窒素に浸して5分静置した。液体窒素から取り出してすぐに高速回転衝撃式粉砕機(スーパーミル、(株)奈良機械製造所)に投入し、−100℃の窒素雰囲気下において粉砕を行った。得られた凍結粉砕スパイスは、全量の95重量%が149メッシュ以下であり、65重量%が200メッシュ以下であった。
【0030】
対照として、粗挽きスパイス及び通常粉砕スパイスも製造した。原料は凍結粉砕スパイスと同じもの(白コショウ原料、コリアンダー原料、ナツメグ原料の混合原料)を用いた。粗挽きスパイスは、全量が10メッシュを通過し、42メッシュを通過しないように、ハンマーミル条件を適宜設定して常温で粉砕し製造した。また、通常粉砕スパイスは、全量の75重量%が149メッシュ以上となるように、ハンマーミル条件を適宜設定して常温で粉砕し製造した。
【0031】
試験例1:凍結粉砕スパイスを添加したソーセージの製造1
参考例1で製造した凍結粉砕スパイスを加工工程において添加、混合したウインナーソーセージを、次のようにして製造した。すなわち、まず、下記表1に示すように原料を用意した。なお、この場合において、表中の「香辛料」が凍結粉砕スパイスを表す。
【0032】
【表1】

【0033】
そして、豚肉の脂肪層、すじ等を取り、豚肉6700gと豚脂肪1800gを5〜8mm径の穴を有するプレートを用いてチョッピングした後、ミキサーに入れて撹拌しながら、塩漬剤として、食塩130g、亜硝酸塩(10%NaN0)12g、L−アスコルビン酸ナトリウム3g、ピロリン酸ナトリウム20gを加え、さらに砂糖30g、グルタミン酸ナトリウム20g、氷水1540gを加え良く混和した。混和後、バットに移し、ラップして5℃〜7℃で一晩塩漬した。このようにして得た塩漬肉をミキサーに入れ、凍結粉砕スパイス54gを加え約5分間脱気混合し、ケーシングに充填し、乾燥・スモーク・蒸煮等の加熱を行いウインナーソーセージを製造した(このウインナーソーセージを実施例1とする)。
【0034】
また、凍結粉砕スパイスのかわりに、同じく参考例1で製造した通常粉砕スパイス、あるいは粗挽きスパイスを、表1の「香辛料」として用い、同様にしてウインナーソーセージを製造した。通常粉砕スパイスを用いて製造したウインナーソーセージを比較例1、粗挽きスパイスを用いて製造したウインナーソーセージを比較例2とする。
【0035】
なお、当該製造方法で用いたスパイスの混合比及び量(白コショウ0.5重量%、コリアンダー0.01重量%、ナツメグ0.01重量%)は、通常粉砕スパイスを用いてウインナーソーセージを製造する場合に好適とされるものである。
【0036】
試験例2:官能評価試験1
試験例1で製造した、実施例1:凍結粉砕スパイス添加ウインナーソーセージ(以下「凍結スパイスウインナー」と略すことがある)、比較例1:通常粉砕スパイス添加ウインナーソーセージ(以下「通常スパイスウインナー」と略すことがある)、比較例2:粗挽きスパイス添加ウインナーソーセージ(以下「粗挽きスパイスウインナー」と略すことがある)、をそれぞれを加熱調理し、官能評価試験を行った。
【0037】
まず、ホットプレートを220℃に加熱し、斜めに1/2カットした上記3種のウインナーをそれぞれ、側面2分、断面1分、再度側面2分、の順で計5分間加熱調理した。各ウインナーは、調理後10分以内に官能試験に供した。ただし、焼き冷まし後のウインナーとしては、調理後30分経過したものを官能試験に供した。
【0038】
また、パネラーは20代〜50代の男女9名とし、官能試験はアンケートにより行った。
【0039】
試食順は、比較例2、比較例1、実施例1(すなわち、粗挽きスパイスウインナー、通常スパイスウインナー、凍結スパイスウインナー)の順とした。なお、パネラーは各ウインナー1種類食するたびに水を飲んで口を濯ぐようにし、また、パネラーにはどのようなウインナーを食しているかは知らせずに試験を行った。
【0040】
評価の方法としては、「香味を感じるまでの時間」及び「香味の持続時間」については、口に入れてからの時間(単位:秒)をストップウォッチで計測した。また、「咀嚼時の香味の強さ」「嚥下後の香味の強さ」「焼き冷まし後の香味の強さ」の各項目については、1〜5の五段階評価を行った。
【0041】
すなわち、「咀嚼時の香味の強さ」「嚥下後の香味の強さ」及び「焼き冷まし後の香味の強さ」については下記の五段階で評価した。
【0042】
弱い :1
やや弱い:2
普通 :3
やや強い:4
強い :5
結果を図1〜図5に示す。なお、図中では、「凍結」は凍結スパイスウインナーを、「通常」は通常スパイスウインナーを、「粗挽き」は粗挽きスパイスウインナーを示す。また、*はp<0.01を、**はp<0.05を示す。
【0043】
図1に示すように、凍結スパイスウインナーは、香味を感じるまでの時間が、他の2種のウインナーに比べて1秒以上も短くなることがわかった。
【0044】
図2に示すように、凍結スパイスウインナーは、香味の持続時間が、他の2種のウインナーに比べて有意に長くなることがわかった。
【0045】
図3に示すように、凍結スパイスウインナーは、咀嚼時の香味の強さが、他の2種のウインナーに比べて有意に強くなることがわかった。
【0046】
図4に示すように、凍結スパイスウインナーは、嚥下後の香味の強さが、粗挽きスパイスウインナーに比べて有意に強くなり、また、通常スパイスウインナーに比べても強くなることがわかった。
【0047】
また、図5に示すように、焼き冷まし後であっても、凍結スパイスウインナーは、香味の強さが、他の2種のウインナーに比べて強いことがわかった。
【0048】
試験例3:凍結粉砕スパイスを添加したソーセージの製造2
試験例1と同様の製造工程により、凍結粉砕スパイス添加ウインナーソーセージを製造した。但し、実施例1では、凍結粉砕スパイスの添加量が0.52重量%であったところ、これと同じ添加量のものの他に、0.26重量%を製造し、実施例2とした。なお、以下、凍結粉砕スパイス添加量が0.52重量%であるもの(実施例1)を1.0倍凍結スパイスウインナー、0.26重量%であるもの(実施例2)を0.5倍凍結スパイスウインナーということがある。
【0049】
なお、実施例2の製造にあたり、実施例1に比べてスパイス添加量が減少した分だけ、豚肉の使用量を増やした。
【0050】
試験例4:官能試験2
実施例1、実施例2の凍結スパイスウインナー、及び試験例2で製造した比較例1の通常スパイスウインナー(以下、1.0倍通常スパイスウインナーということがある)の、計3種を用いて試験例2と同様にして、アンケートによる官能評価を行った。
【0051】
すなわち、加熱調理は試験例2と同様に行い、パネラーも試験例3と同じ人とした。パネラーは各ウインナー1種類食するたびに水を飲んで口を濯ぐようにし、また、パネラーには、どのようなウインナーを食しているかは知らせずに試験を行った。
【0052】
なお、試食順は比較例1、実施例2、実施例1、(すなわち、1.0倍通常スパイスウインナー、0.5倍凍結スパイスウインナー、1.0倍凍結スパイスウインナー)の順とした。
【0053】
また、評価の方法としては、「香味の持続時間」については、口に入れてからの時間をストップウォッチで計測し、また、「咀嚼時の香味の強さ」「嚥下後の香味の強さ」「焼き冷まし後の香味の強さ」の各項目については、試験例2と同様の1〜5の五段階評価を行った。
【0054】
結果を図6〜図9に示す。なお、図中では、「通常」は1.0倍通常スパイスウインナーを、「凍結0.5」は0.5倍凍結スパイスウインナーを、「凍結1.0」は1.0倍凍結スパイスウインナーを示す。また、*はp<0.01を、**はp<0.05を示す。
【0055】
図6に示すように、0.5倍凍結スパイスウインナーは1.0倍通常スパイスウインナーとほぼ同等の時間、香味が持続し、さらに、1.0倍凍結スパイスウインナーは0.5倍凍結スパイスウインナー及び1.0倍通常スパイスウインナ−よりも10秒以上も長く香味が持続することがわかった。
【0056】
図7に示すように、咀嚼時において、0.5倍凍結スパイスウインナーは1.0倍通常スパイスウインナ−とほぼ同等の香味の強さを示すことがわかった。さらに、咀嚼時において、1.0倍凍結スパイスウインナーは0.5倍凍結スパイスウインナー及び1.0倍通常スパイスウインナ−よりも有意に強い香味を示すことがわかった。
【0057】
図8に示すように、嚥下後、0.5倍凍結スパイスウインナーは1.0倍通常スパイスウインナ−とほぼ同等の香味の強さを示すことがわかった。さらに、嚥下後、1.0倍凍結スパイスウインナーは0.5倍凍結スパイスウインナーよりも有意に強い香味を示し、また、1.0倍通常スパイスウインナ−よりも強い香味を示すことがわかった。
【0058】
図9に示すように、焼き冷まし後、0.5倍凍結スパイスウインナーは1.0倍通常スパイスウインナ−とほぼ同等の香味の強さを示すことがわかった。さらに、焼き冷まし後、1.0倍凍結スパイスウインナーは0.5倍凍結スパイスウインナーよりも有意に強い香味を示し、また、1.0倍通常スパイスウインナ−よりも強い香味を示すことがわかった。
【0059】
以上の結果から、0.5倍量の凍結粉砕スパイスを添加した食品は、1.0倍量の通常粉砕スパイスを添加した食品と、ほぼ同等の香味効果(例えば、香味の持続時間、咀嚼時の香味の強さ、嚥下後の香味の強さ、焼き冷まし後の香味の強さ等)を有することが確認できた。さらにまた、凍結粉砕スパイスを添加した食品は、同量の通常粉砕スパイスを添加した食品より大幅に強い香味効果を示すことも確認できた。従って、凍結粉砕スパイスを添加した食品は、従来のスパイスを添加した食品に比べ、格段に香味が際立つものであることがわかった。
【0060】
また、このことから、凍結粉砕スパイスを用いれば、通常粉砕スパイスを用いる場合に比べ、同等の香味効果を得るために必要な使用スパイス量を大幅に節約することが可能であり、凍結粉砕スパイスを含む食品は、使用スパイス量の大幅な節約を可能とすることもわかった。
【0061】
試験例5:スパイス添加ソーセージの香気成分の解析
実施例1、実施例2、比較例1、及び比較例2の各ウインナーソーセージの香気成分を、ヘッドスペースガスクロマトグラフィー(GC)法により、以下のようにして解析した。
【0062】
まず、ウインナー6本(約100g)を一回測定分の試料として用い、各ウインナーを半分になるよう斜めに切断し、これらを試験例2と同様にして加熱調理した。調理終了後、各ウインナー片をさらに縦1/2に切断し、それぞれ新たな切断面が上向きになるように、1Lのセパラブル筒型平底フラスコに配置した。この時、各ウインナー片は互いに重なり合わないよう注意した。ウインナーを配置したセパラブル筒型平底フラスコはクランプにて完全に密封した。捕集剤としてはTENAX-TA管(GLSciences社)を用いた。なお、ウインナーを配置したセパラブル筒型平底フラスコとTENAX-TA管とを接続するにあたって、これらの間に氷冷した50mlの水分トラップ用のナス型フラスコ2個を連結した。また、フラスコには、窒素ボンベも接続し、TENAX-TA管にはミニポンプも接続した。
【0063】
試料(調理済みウインナー)を前記セパラブル筒型平底フラスコ内に入れた状態でフラスコに接続したボンベより2分間窒素ガス(1L/min)にてパージを行った後、窒素ガス流入下でTENAX-TA管の末端部に接続したミニポンプを用いて吸引し(700ml/min)、香気成分の捕集を行った。なお、当該香気成分捕集時、フラスコはマントルヒーターにて約70℃に加温した。
【0064】
捕集した香気成分は加熱脱着導入装置(GERSTEL社製;TDS2, CIS4)を装備したGC/MS(Agilent社製;GC6890、MSD5973N)を用いて分析を行った。加熱脱着温度は200℃、2.5分、トラップ温度は−150℃で実施した。トラップした試料はスプリットレスでカラムに導入した。カラムはInertCap-WAX(GL Science社製;0.25mm×60m, I.D. 0.25μm)を使用し、70℃にて5分間保持した後、3℃/分で240℃まで昇温後、240℃で1時間保持して測定した。キャリアガスはヘリウム1.9ml/分とした。
【0065】
実施例1、比較例1、及び比較例2(すなわち、1.0倍凍結スパイスウインナー、1.0倍通常スパイスウインナー、及び粗挽きスパイスウインナー)の香気解析結果(クロマトグラム)を図10に、実施例1、実施例2及び比較例1(すなわち、1.0倍凍結スパイスウインナー、0.5倍凍結スパイスウインナー及び1.0倍通常スパイスウインナー)の香気解析結果(クロマトグラム)を図11にそれぞれ示す。また、表2に、実施例1、実施例2、比較例1、及び比較例2のクロマトグラムを解析して得られた、各種香気成分ピークの相対面積値、及び各例中での各種香気成分のピーク面積値の割合(各種香気成分の面積の合計を100とする)を示す。また、実施例1、実施例2、比較例1、比較例2の4サンプルは、同じ検出モード及び設定で分析を行った。
【0066】
なお、図表中、実施例1は<凍結粉砕:1.0>又は<凍結粉砕>と、実施例2は<凍結粉砕:0.5>と、比較例1は<通常粉砕:1.0>又は<通常粉砕>と、比較例2は<粗挽き>と表記する。
【0067】
【表2】

【0068】
図10及び表2に示されるように、各種香気成分の量は、いずれも凍結スパイスウインナーが最も多く、続いて通常スパイスウインナー、粗挽きスパイスウインナーの順に多かった。このことから、凍結粉砕スパイスを添加したウインナーからは、より多くの香気成分が発せられることがわかった。
【0069】
また、図11及び表2に示されるように、各種香気成分の量は、いずれも1.0倍凍結スパイスウインナーが最も多く、続いて1.0倍通常スパイスウインナー、0.5倍凍結スパイスウインナーの順に多かった。このことから、凍結粉砕スパイスであれば、通常粉砕スパイスに比べ、同量を添加した食品において、より多くの香気を発することがわかった。
【0070】
以上の結果からも、凍結粉砕スパイスを添加した食品は、従来のスパイスを添加した食品に比べ、格段に香味が際立つものであることが確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】凍結スパイスウインナー、通常スパイスウインナー、及び粗挽きスパイスウインナーを食したときの、香味を感じるまでの時間(単位は秒)を比較したグラフを示す。
【図2】凍結スパイスウインナー、通常スパイスウインナー、及び粗挽きスパイスウインナーを食したときの、香味の持続時間(単位は秒)を比較したグラフを示す。なお、*はp<0.01を示す。
【図3】凍結スパイスウインナー、通常スパイスウインナー、及び粗挽きスパイスウインナーを食したときの、咀嚼時の香味の強さを比較したグラフを示す。なお、*はp<0.01を示す。
【図4】凍結スパイスウインナー、通常スパイスウインナー、及び粗挽きスパイスウインナーを食したときの、嚥下後の香味の強さを比較したグラフを示す。なお、**はp<0.05を示す。
【図5】凍結スパイスウインナー、通常スパイスウインナー、及び粗挽きスパイスウインナーを食したときの、焼き冷まし後の香味の強さを比較したグラフを示す。
【図6】1.0倍通常スパイスウインナー、0.5倍凍結スパイスウインナー、及び1.0倍凍結スパイスウインナーを食したときの、香味の持続時間(単位は秒)を比較したグラフを示す。
【図7】1.0倍通常スパイスウインナー、0.5倍凍結スパイスウインナー、及び1.0倍凍結スパイスウインナーを食したときの、咀嚼時の香味の強さを比較したグラフを示す。なお、**はp<0.05を示す。
【図8】1.0倍通常スパイスウインナー、0.5倍凍結スパイスウインナー、及び1.0倍凍結スパイスウインナーを食したときの、嚥下後の香味の強さを比較したグラフを示す。なお、*はp<0.01を示す。
【図9】1.0倍通常スパイスウインナー、0.5倍凍結スパイスウインナー、及び1.0倍凍結スパイスウインナーを食したときの、焼き冷まし後の香味の強さを比較したグラフを示す。なお、*はp<0.01を示す。
【図10】凍結スパイスウインナー、通常スパイスウインナー、及び粗挽きスパイスウインナーが発する香気成分を、クロマトグラフィーで分析した結果を示す。
【図11】1.0倍通常スパイスウインナー、0.5倍凍結スパイスウインナー、及び1.0倍凍結スパイスウインナーが発する香気成分を、クロマトグラフィーで分析した結果を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉砕スパイスを含む食品であって、
前記粉砕スパイスは、1又は2種以上のスパイス原料を、0℃未満の低温条件下で粉砕して得られる凍結粉砕スパイスである、
食品。
【請求項2】
スパイス原料の粉砕が、当該スパイス原料を0℃未満に冷却してから行われる、請求項1に記載の食品。
【請求項3】
スパイス原料の粉砕が、−100℃以下の低温条件下で行われる、請求項1又は2に記載の食品。
【請求項4】
スパイス原料の粉砕が、当該スパイス原料を液体窒素に接触させることで冷却してから行われる、請求項1〜3のいずれかに記載の食品。
【請求項5】
スパイス原料の粉砕が、窒素雰囲気下で行われる、請求項1〜4のいずれかに記載の食品。
【請求項6】
凍結粉砕スパイスの95重量%以上が149メッシュを通過する、請求項1〜5のいずれかに記載の食品。
【請求項7】
粉砕スパイスを含む食品が、粉砕スパイスを含む食肉加工食品である、請求項1〜6のいずれかに記載の食品。
【請求項8】
スパイス原料が、コショウ、コリアンダー、ナツメグ、セージ、メース、カルダモン、ガーリック、キャラウエー、オールスパイス、シナモン、オレガノ、マジョラム、オニオン、タイム、クローブ、アンゼリカ、アニス、シソ、ジンジャー、タラゴン、チリペッパー、ケーパー、ターメリック、バジル、ローレル、ディルシード、ホースラディッシュ、フェンネル、パプリカ、パセリ、ペパーミント、ローズマリー、サフラン、チャイブ、セロリ、シロガラシ、セサミ、スターアニス、バニラ、マスタード、唐辛子、及びワサビからなる群より選ばれる1又は2種以上である、請求項1〜7のいずれかに記載の食品。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2010−51251(P2010−51251A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−220283(P2008−220283)
【出願日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【出願人】(591105801)丸大食品株式会社 (19)
【出願人】(591016839)長岡香料株式会社 (20)
【Fターム(参考)】