説明

凝縮水処理装置およびこれを備えた燃焼装置

【課題】凝縮水の排出経路に設けられている逆止弁に異常が生じたときに、その旨を的確に察知することができる凝縮水処理装置を提供する。
【解決手段】熱回収に伴って発生した凝縮水を燃焼装置Bから受けて貯留する容器2と、この容器2内における凝縮水の貯留量が一定量に達したときに駆動を開始し、前記凝縮水の所定量を容器外部に排出させるポンプPと、凝縮水の排出経路75に設けられている逆止弁79と、を備えている、凝縮水処理装置Aであって、燃焼器91の運転に対応してポンプPの予測駆動回数を算出する処理、ポンプPの実駆動回数をカウントする処理、およびそのカウント数を前記予測駆動回数に基づいて決定された異常判別用基準回数と比較する処理を含む異常判別処理を実行し、かつ前記カウント数が前記異常判別用基準回数を超えているときに、逆止弁79は異常であると判断する判断手段6を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃焼器により発生させた燃焼ガスから熱回収を行なう給湯装置などの燃焼装置、およびこのような燃焼装置に組み合わされ、燃焼ガスの温度が露点以下に低下することにより発生する酸性の凝縮水を処理するのに用いられる凝縮水処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、凝縮水処理装置としては、たとえば特許文献1に記載されたものがある。同文献に記載された凝縮水処理装置は、燃焼器によって発生された燃焼ガスから顕熱および潜熱を回収するタイプの燃焼装置に組み込まれている。燃焼ガスから潜熱を回収すると、これに伴って燃焼ガス中の水蒸気が凝縮して凝縮水が発生するが、この凝縮水は、燃焼ガス中の硫黄酸化物や窒素酸化物などを吸収したPH3程度の強酸性となる。前記凝縮水処理装置は、そのような強酸性の凝縮水を一時的に貯留させる容器、この容器に接続されたポンプ、および逆止弁を有している。前記ポンプは、前記容器内における凝縮水の水位が所定の高さまで上昇すると駆動を開始し、前記凝縮水を浴槽内に送り込むようになっている。このことにより、浴槽の湯を酸性湯にすることができる。前記逆止弁は、凝縮水の排水管を上向きに施工した場合に、ポンプ停止時にこの排水管内の凝縮水がポンプや容器内に向けて逆流することを防止する。
【0003】
一方、凝縮水処理装置の他の例としては、たとえば特許文献2に記載されているような中和処理装置もある。この中和処理装置は、凝縮水が導入される容器内に中和剤が収容された構成を有しており、この中和剤の作用により凝縮水は中和されてから容器の外部に排出される。したがって、強酸性の凝縮水がそのまま一般の排水経路に流される場合とは異なり、環境保護を図るのに好ましいものとなる。このような中和処理装置においても、前記特許文献1に記載されたものと同様に、凝縮水を容器外部に排出させる経路には、ポンプおよび逆止弁を設けた構成とすることができる。
【0004】
しかしながら、前記したような凝縮水処理装置において、凝縮水の排出経路にポンプとともに逆止弁を設けた場合には、次に述べるように改善すべき課題がある。
【0005】
すなわち、凝縮水処理装置の容器内には、凝縮水に加えて、燃焼装置内の煤、埃、あるいはその他の夾雑物が流入し、これが逆止弁まで到達する場合がある。とくに、中和処理装置の場合には、欠けや割れを生じた中和剤が逆止弁の取り付け位置まで流れ、噛み込みを生じる可能性もある。このようなことから、凝縮水処理装置を実際に使用している際には、逆止弁が開いたまま閉じなくなる異常事態の発生が想定し得る。
【0006】
ところが、従来においては、そのような逆止弁の異常が発生した場合に、これを適切に察知し得る手段は、なんら提案されていないのが実情である。従来においては、逆止弁に異常が発生した場合であっても、その旨は適切に検出されず、異常状態が放置されたままとなる。これでは、ポンプの停止時において、排水経路内の凝縮水が容器内に逆流する虞れがある。このような逆流が生じると、容器内の凝縮水を排出するためのポンプの駆動回数が必然的に多くなり、無駄なエネルギ消費がなされる。さらには、ポンプの駆動音の発生回数が多くなるため、これが耳障りになる場合もある。
【0007】
【特許文献1】特許第3153361号公報
【特許文献2】特開2003−320380号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、前記した事情のもとで考え出されたものであって、凝縮水の排出経路に設けられている逆止弁に異常が生じたときには、その旨を的確に察知し、その異常状態に対して好適に対処することが可能な凝縮水処理装置、およびこれを備えた燃焼装置を提供することをその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を講じている。
【0010】
本発明の第1の側面により提供される凝縮水処理装置は、燃焼器により発生された燃焼ガスから熱交換器を利用して熱回収を行なう燃焼装置に組み合わされて使用され、前記熱回収に伴って発生した凝縮水を前記燃焼装置から受けて内部に貯留する容器と、この容器内における凝縮水の貯留量が一定量に達したときに駆動を開始し、前記凝縮水の所定量を容器外部に排出させるポンプと、このポンプによって凝縮水が排出される経路に設けられている逆止弁と、を備えている、凝縮水処理装置であって、前記燃焼器の運転に対応して前記ポンプの予測駆動回数を算出する処理、前記ポンプの実駆動回数をカウントする処理、およびそのカウント数を前記予測駆動回数に基づいて決定された異常判別用基準回数と比較する処理を含む異常判別処理を実行し、かつ前記カウント数が前記異常判別用基準回数を超えているときに、前記逆止弁は異常であると判断する判断手段を備えていることを特徴としている。
【0011】
前記判断手段は、燃焼器の運転に対応してポンプの駆動回数を予測しているが、凝縮水排出経路の逆止弁が開いたままとなる異常が発生していると、凝縮水排出経路から容器内に向けて凝縮水が逆流するため、ポンプの実駆動回数は、予測駆動回数よりも多くなる。したがって、予測駆動回数(またはこれに適当な修正を加えた値)とポンプの実駆動回数とを比較すれば、凝縮水の逆流が発生しているか否か、ひいては逆止弁に異常が発生しているか否を判断することが可能となる。本発明は、このような原理に基づいて逆止弁の異常の有無を判断しており、逆止弁の異常を的確に検出することができる。その結果、逆止弁の異常が検出されないまま放置されて、ポンプが頻繁に駆動されるといった不具合を適切に解消し得ることとなる。
【0012】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記ポンプの予測駆動回数は、前記燃焼器の燃焼時間とその燃焼度合い、燃料消費量、または前記凝縮水の計量値と、前記ポンプの一回の駆動による凝縮水の排出量とに基づいて算出され、前記異常判別用基準回数は、前記予測駆動回数よりも大きな値とされている。
【0013】
このような構成によれば、ポンプの予測駆動回数を正確に算出することが可能となり、異常判別用基準回数を適切な値にするのに好適となる。また、異常判別用基準回数を予測駆動回数よりも大きな値とすれば、本来の予測駆動回数に多少の誤差がある場合であっても、その誤差には殆ど関係なく、逆止弁が異常である可能性がかなり高くなった段階で逆止弁が異常であると判断させることが可能となる。したがって、逆止弁が異常であると判断された場合、その判断結果の正確度、および信頼度を高くすることができる。
【0014】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記ポンプの予測駆動回数は、前記容器内への雨水の予測進入量を加味して算出される構成とされている。
【0015】
燃焼装置は、屋外に設置される場合が多く、このような屋外設置の場合には、たとえば燃焼装置の排気口から雨水が燃焼装置内に進入し、これが凝縮水用の流路を通って凝縮水処理装置の容器内に進入してくる場合がある。前記構成によれば、そのような雨水の進入条件をも考慮して逆止弁の異常の有無を判断することが可能となるために、異常の旨の判断がより正確なものとなる。
【0016】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記異常判別処理は、前記ポンプの実駆動のカウント数が前記異常判別用基準回数を超える都度、繰り返して実行され、前記逆止弁が異常であるとの判断は、前記カウント数が前記異常判別用基準回数を超える回数が、所定の複数回に達したときに行なわれる構成とされている。
【0017】
このような構成によれば、逆止弁が異常であるとの判断が慎重になされることとなり、逆止弁が異常である可能性が非常に高いと考えられる場合に、逆止弁が異常であるとの判断が下されることとなる。したがって、異常の旨の判断結果の信頼性がより高められる。
【0018】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記判断手段は、所定の第1設定時間を計測するタイマ機能を有し、前記ポンプの実駆動のカウント数が前記異常判別基準回数を超えないときには、前記第1設定時間の周期で、前記異常判別処理が繰り返して実行されるように構成されている。
【0019】
このような構成によれば、逆止弁が異常であるか否かの処理が継続して実行されることとなり、逆止弁の異常発生時期を問わず、これを適切に検出することが可能となる。
【0020】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記判断手段は、前記第1設定時間よりも長い第2設定時間をも計測可能なタイマ機能を有しているとともに、前記第2設定時間にわたって、前記ポンプの予測駆動回数の算出処理、および前記ポンプの実駆動回数のカウント処理を実行した後に、そのカウント数を前記予測駆動回数に基づいて決定された異常判別用基準回数と比較する追加の異常判別処理を実行可能であり、かつこの追加の異常判別処理において、前記カウント数が前記異常判別用基準回数を超えているときにも、前記逆止弁は異常であると判断するように構成されている。
【0021】
このような構成によれば、相対的に短時間である第1設定時間の周期で繰り返される異常判別処理と、相対的に長時間である第2設定時間の周期で繰り返される追加の異常判別処理とが並行して実行される。逆止弁に異常が発生した場合には、これをできる限り早期に察知できるようにすることが要望されるが、前記第1設定時間の短時間周期で繰り返される異常判別処理によれば、そのような要望に的確に応えることができる。ただし、異常判別処理の繰り返し周期が短い場合には、容器内への凝縮水の逆流が多い場合の検出には適するものの、容器内への凝縮水の逆流が比較的少ない場合には、これを正確に察知することは難しい。これに対し、前記第2設定時間の長時間周期で繰り返される追加の異常判別処理によれば、凝縮水の逆流が比較的少ない場合であってもこれを適切に察知することが可能となる。したがって、凝縮水の逆流が多い場合と少ない場合とのいずれであっても、その検出を適切に行なうことができる。
【0022】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記判断手段は、前記追加の異常判別処理を前記第2設定時間の周期で繰り返して実行し、前記逆止弁が異常であるとの判断は、前記カウント数が前記異常判別用基準回数を超える回数が、所定の複数回に達したときに行なわれる構成とされている。
【0023】
このような構成によれば、前記追加の異常判別処理による異常判断についても、慎重に行なわれることとなって、誤判断を無くすのに好適となる。
【0024】
本発明の第2の側面により提供される凝縮水処理装置は、燃焼器により発生された燃焼ガスから熱交換器を利用して熱回収を行なう燃焼装置に組み合わされて使用され、前記熱回収に伴って発生した凝縮水を前記燃焼装置から受けて内部に貯留する容器と、この容器内における凝縮水を容器外部に排出させるポンプと、このポンプによって凝縮水が排出される経路に設けられている逆止弁と、を備えている、凝縮水処理装置であって、前記燃焼装置から前記容器内に凝縮水が流入したか否かの判断が可能であるとともに、前記ポンプの駆動電流を監視し、前記ポンプの駆動が開始されたときにその駆動電流が所定値を超えていればその駆動を継続させ、かつ前記駆動電流が前記所定値以下になると前記ポンプを停止させる制御を実行する制御手段を備えており、この制御手段は、前記ポンプの駆動電流が所定値以下となって前記ポンプを停止させてから所定時間の経過後に前記ポンプを再駆動させる動作が行なわれたときに、その再駆動時のポンプの駆動電流が前記所定値を超えているとともに、前記所定時間中に前記燃焼装置から前記容器内に凝縮水は流入していないと判断したときに、前記逆止弁は異常であると判断するように構成されていることを特徴としている。
【0025】
前記制御手段は、ポンプを駆動させた際の駆動電流に基づいて凝縮水が適正に排出されているか否かの判断、ひいては容器内に凝縮水が存在するか否かについての判断を行なっている。すなわち、容器内に凝縮水が存在し、この凝縮水をポンプが適切に排出しているときの駆動電流は大きく、所定値を超えるのに対し、容器内に凝縮水が存在せず、ポンプが空運転をしているときには、その駆動電流は小さく、前記所定値以下となる。したがって、ポンプの駆動電流が所定値を超えるか否かによって、容器内に凝縮水が存在するか否かを判断することができる。したがって、容器内に凝縮水が存在しない状態でポンプの駆動が停止されてから所定時間の経過後にポンプを再駆動させた場合において、その所定時間中に燃焼装置から容器内に凝縮水が新たに流入していないにも拘わらず、前記ポンプの再駆動時の駆動電流が所定値を超え、凝縮水の排出がなされているという状況は、正常ではなく、凝縮水が容器内に逆流していると考えることができる。本発明は、このような原理に基づいて逆止弁の異常の有無を判断しており、逆止弁の異常を的確に検出することができ、逆止弁の異常が検出されないまま放置されてポンプが頻繁に駆動するといった不具合を適切に解消し得る効果が得られる。さらに、本発明によれば、ポンプの駆動電流に基づいてポンプのオン・オフ駆動などを行なっているために、その制御は容易であり、また容器内の凝縮水の水位検出手段を不要にすることができるといった利点も得られる。
【0026】
本発明の第3の側面により提供される燃焼装置は、燃焼器と、この燃焼器により発生された燃焼ガスから熱回収を行なう熱交換器と、を備えた燃焼装置であって、本発明の第1または第2の側面により提供される凝縮水処理装置をさらに備えていることを特徴としている。
【0027】
このような構成によれば、本発明の第1または第2の側面により提供される凝縮水処理装置について述べたのと同様な効果が得られる。
【0028】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行なう発明の実施の形態の説明から、より明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明の好ましい実施の形態を、図面を参照して具体的に説明する。
【0030】
図1〜図3は、本発明に係る凝縮水処理装置の一実施形態を示している。図1によく表われているように、本実施形態の凝縮水処理装置Aは、中和剤1を収容した容器2を有する凝縮水中和処理装置として構成されており、上部および下部の2つの水位検出部5A,5B、ポンプP、逆止弁79、ならびに制御部6をさらに備えている。制御部6は、本発明でいう判断手段の一例に相当している。
【0031】
容器2は、ポリプロピレンあるいはその他の合成樹脂製のブロー成形品である。この容器2は、凝縮水用の導入口21を有するヘッダ部H、中和剤収容室22、および排出口24を有する貯水室23を備えている。ヘッダ部Hは、容器2の上部に設けられており、その上壁部40には凝縮水用の導入口21を有する筒状部21aが起立して形成されている。この筒状部21aは、凝縮水を供給してくる配管76を嵌合させて接続するのに利用される。
【0032】
上部の水位検出部5Aは、容器2内における凝縮水の水位が異常上昇したときにこれを検出するための部分であり、一対の電極50を用いて構成されている。これらの電極50は、たとえば耐酸性を有するステンレス製のネジ体をヘッダ部Hの上壁部40にねじ込んでその下部を上壁部40の下方に突出させた構成である。図面には示されていないが、これら一対の電極50の上部には、電圧が印加された一対の配線コードが接続されている。一対の電極50は、容器2内などに詰まりのない正常時には凝縮水に浸漬しておらず、これらの電極50間は電気的に非導通状態にある。これに対し、容器2内に詰まりが生じ、凝縮水の水位が一対の電極50の下端高さと同一の水位LH2まで異常上昇すると、それら一対の電極50がともに凝縮水に浸漬して電気的に導通する。制御部6は、このような導通、非導通に基づき、凝縮水が水位LH2であるか否かを判断可能であり、水位LH2が検出されたときには、異常の旨の報知処理が実行されるように構成することができる。
【0033】
ヘッダ部Hのうち、電極50が下向きに突出している部分、およびその周辺部分は、中和剤1の進入が規制された空間部41として形成されている。図2(b)によく表われているように、容器2の上部の両側壁部25aの互いに対向する一部分25a'どうしは接近しており、細い幅L1に絞られたスリット部42が形成されている。このスリット部42は、その幅L1がたとえば後述するスリット28Aの開口幅s1と略同一であり、凝縮水は通過させるものの、中和剤収容室22から空間部41への中和剤1の進入を阻止する。空間部41に中和剤1が存在したのでは、電極50と中和剤1とが接触し、凝縮水の水位が本来の異常水位ではないにも拘わらず、異常水位であると誤検出される虞れを生じるが、前記構成によれば、そのような虞れが回避される。
【0034】
中和剤収容室22は、ヘッダ部Hが設けられている上段部22aと、この上段部22aの一端(図1の右端)に繋がってその下方に位置する下段部22bとを有する上下2段構造である。このように中和剤収容室22を上下2段構造にすれば、容器2の全体の厚みを薄くしつつ、中和剤1の収容量を多くすることができる。したがって、容器2を幅狭なスペースに設置するのに好適となる。中和剤収容室22内への中和剤1の投入は、上段部22aの上壁部に形成された蓋43a付きの投入口43から行なわれる。なお、図2(a),(b)によく表われているように、下段部22bおよび貯水室23は、上段部22bに対して適当な寸法L2だけ容器2の厚み方向にオフセットされている。このような構成によれば、給湯装置内の屈曲した空間スペースを利用して、この凝縮水処理装置Aを適切に設置することが可能となる。オフセット寸法L2は、実際の空間スペースの屈曲形状に対応するように適宜選択することが可能である。もちろん、このオフセット寸法L2をゼロにしてもかまわない。
【0035】
図1に表われているように、上段部22aには、仕切部44aおよび起立壁44bが設けられている。導入口21から上段部22a内に導入された凝縮水は、矢印N1〜N4に示すように、まずヘッダ部Hの下方に進行してから仕切部44aの下方の隙間を通過した後に、起立壁44bの上部を越えてから上段部22aの終端領域220に進み、その後下段部22bを下向きに進むようになっている。このように凝縮水を上下方向に蛇行させると、その流路長が長くなり、中和処理を不足なく行なうのに好適となる。
【0036】
貯水室23は、下段部22bを通過してきた凝縮水をポンプPによって適切に排出し得るように適当量だけ一時的に貯留させるための部分である。ただし、本実施形態においては、この貯水室23は、下段部22bに対して補助室23aを介して繋がっており、この補助室23aを規定する一対の起立壁26,46には、凝縮水を通過させる一方、中和剤1の通過を抑制するスリット28A,28Bが形成されている。
【0037】
前記部分の構成をさらに詳細に説明すると、図3(a),(b)に示すように、起立壁26は、容器2の下段部分の厚み方向に対向する一対の側壁部25bの一部25b'どうしが、容器2の厚み方向中心寄りに接近して接合された構成である。ただし、同図(a)に示すように、スリット28Aは、前記した部分25b'どうしが接触せず、隙間を隔てていることにより形成されている。このスリット28Aの開口幅s1は、たとえば4mmである。中和剤1としては、本来的にはこのスリット28Aを通過しないサイズのものが用いられている。スリット28Bおよび起立壁46の形成方法も、前述したスリット28Aおよび起立壁26と同様であり、起立壁46は、容器2の一対の側壁部25bのそれぞれの一部25b”が容器2の厚み方向中心寄りに接近していることにより形成されている。それらが互いに接近してはいるものの、互いに隙間を介して接合されていない部分が、スリット28Bである。このスリット28Bの開口幅s2は、たとえば3mmであり、スリット28Aの開口幅s1よりも小さくされている。中和剤1は、容器2内への投入時や容器2の運搬時の衝撃などに起因して割れや欠けを生じたり、あるいは酸性の凝縮水との接触によって痩せるために、一部の中和剤がスリット28Aを通過する場合もあるが、スリット28Aの開口幅s2はさらに小さくされているために、そのような中和剤がこのスリット28Aを通過して貯水室23に流れていくことが適切に抑制される。
【0038】
図1によく表われているように、スリット28Bの下端は、スリット28Aの上端よりも、適当な寸法L3だけ高くなっている。このため、凝縮水は、矢印N5,N6に示すように進行し、凝縮水がスリット28Bの下端よりも高い水位になった場合にその液面部分の凝縮水のみが貯水室23に流入するようになっている。このような凝縮水の流れも、中和剤1が貯水室23に流入することを抑制する。また、起立壁46は、凝縮水を塞き止める役割を果たすために、通常時においては、下段部22bおよび第1空間部23aには、凝縮水がスリット28Bの下端と同一高さ(仮想線Laで示す高さ)の水位に貯留される。このように凝縮水が貯留されると、導入口21から容器2内に燃焼ガスが仮に流入しても、この燃焼ガスが貯水室23内に流入することは前記凝縮水の貯留部によって適切に阻止される。なお、起立壁46の下部や、下段部22bの底部には、補助排出口49a,49bが設けられている。これらは、たとえば冬季における凝縮水の凍結防止などを目的として、補助室23aや中和剤収容室22内に溜まっている凝縮水を抜くためのものである。したがって、通常時においては、これら補助排出口49a,49bから凝縮水が排出されないように、それらに接続された配管(図示略)の先端部は閉じられている。
【0039】
貯水室23の上部には、この貯水室23内に連通する内部流路32を有する通気管体部3が連設されている。この通気管体部3は、貯水室23内を容器2の外部に連通させるための部分であり、ポンプPの駆動時には貯水室23内が負圧になることを防止し、またポンプPの非駆動時において凝縮水が貯水室23に流入するときには貯水室23内のエアを外部に排出させて凝縮水の流入を円滑にする役割を果たす。この通気管体部3は、詰まりに起因して容器2内における凝縮水の水位が異常上昇した際にこの通気管体部3の先端部開口部31aから凝縮水が外部に溢れ出ないように、上方に向けて高く延びている。この通気管体部3の先端寄り部分は、略コ字状に屈曲しており、先端開口部31aは下向きとなっているが、これは先端開口部31aに塵などが進入することを防止するのに役立つ。
【0040】
水位検出部5Bは、貯水室23内における凝縮水の高低2段階の水位LH1,LLを検出するための部分であり、長さが略同一の2本の電極51a,51b、これらよりも短い電極51c、およびこれらの上端を支持するベース部材52を備えている。この水位検出部5Bにおいては、たとえば電極51bがグランド接続されており、凝縮水が水位LH1以上となって2本の電極51b,51cがともに凝縮水に浸漬すると、これらの間が導通し、その旨が制御部6によって検出されるようになっている。なお、その際には、電極51aも凝縮水に浸漬しており、電極51a,51b間も導通している。凝縮水の水位が水位LLよりも下がると、電極51a,51b間が非導通状態となり、その旨が制御部6によって検出されるようになっている。
【0041】
ポンプPは、モータ駆動されるたとえば渦巻きポンプなどの遠心ポンプであり、容器2の下方に配され、かつ配管75を介して容器2の排出口24と接続されている。もちろん、ポンプPとしては、他の種類のポンプを用いることもできる。逆止弁79は、ポンプPの下流側の配管75に設けられている。この逆止弁79は、ポンプPとは分離したかたちで設けられていなくてもよく、たとえば吐出口に逆止弁が組み付けられているポンプを用いる場合には、これに加えてそれとは別の逆止弁を追加して設ける必要はない。
【0042】
制御部6は、たとえばCPUやこれに付属するメモリなどを備えて構成されたものであり、水位検出部5Bを利用した凝縮水の水位検出に基づき、ポンプPの駆動制御、および逆止弁79の異常判別処理などを実行する。ただし、その詳細については後述する。この制御部6は、後述する給湯装置Bの各部の動作制御や各種のデータ処理制御をも実行するものである。
【0043】
図4は、凝縮水処理装置Aを備えた給湯装置の一例を模式的に示している。
【0044】
同図に示す給湯装置Bは、缶体90内に配されたガスバーナまたはオイルバーナなどの燃焼器91と、この燃焼器91に燃焼用空気を供給する送風ファン92と、燃焼器91によって発生された燃焼ガスから熱回収を行なう1次および2次の熱交換器93A,93Bと、これら給湯装置Bの各部を覆う外装ケース94とを備えている。燃焼器91や送風ファン92の駆動は、制御部6によって制御される。また、この制御部6には、液晶パネルなどの表示手段69aや各種の操作スイッチ69bを備えた操作用リモコン69が接続されている。この給湯装置Bにおいては、入水口930から水管93a内に供給された水は、2次熱交換器93Bおよび1次熱交換器93Aをそれぞれ通過して加熱された後に出湯口931に到達し、その後所定の給湯先に送り出される。一方、燃焼ガスは、1次熱交換器93Aによって顕熱が回収された後に、2次熱交換器93Bによって潜熱が回収され、その後排気口99から外部に排出される。潜熱回収に伴って2次熱交換器93Bにおいて発生した酸性の凝縮水は、受け部材95によって受けられてから、配管76を介して凝縮水処理装置Aの容器2内に流入するようになっている。
【0045】
なお、図4においては、外装ケース94内に凝縮水処理装置Aの全体が収容された構成とされているが、本発明はこれに限定されない。凝縮水処理装置Aの全体を外装ケース94の外部に配置させた構成としてもよいし、あるいはポンプPや逆止弁79などの一部分を外装ケース94の外部に配置させた構成とすることもできる。
【0046】
次に、凝縮水処理装置Aおよび給湯装置Bの作用、ならびに制御部6の動作処理手順の一例について、図5および図6のフローチャートを参照しつつ説明する。
【0047】
なお、制御部6は、最長1日の周期で逆止弁79の異常判別処理を繰り返す動作と、5日間の一定周期で逆止弁79の異常判別処理を繰り返す動作とを並行して実行するように構成されている。1日および5日の期間は、本発明でいう第1期間および第2期間の一例に相当する。後述するように、最長1日の周期で繰り返される異常判別処理は、逆止弁79が大きく開いた状態に故障するなどして、容器2内への凝縮水の逆流が比較的多い状態を検出するのに適する。これに対し、5日間の周期で繰り返される異常判別処理は、凝縮水の逆流が少ない状態を検出するのに適する。
【0048】
まず、1日周期で異常判断を行なう場合について説明する。給湯装置Bの電源投入がなされて制御部6が起動すると、この制御部6は、1日用のタイマをスタートさせる(S1)。次いで、制御部6は、ポンプPの予測駆動回数Na、ポンプPの実駆動のカウント数Nb、および異常であるとの最終判断を下すのに利用される異常カウンタ値Ncのそれぞれの初期値をゼロにセットする(S2〜S4)。なお、後述するように、たとえば給湯装置B内に雨水が進入してこれが凝縮水処理装置Aの容器2内に進入することを考慮するような場合には、予測駆動回数Naの初期値を1以上の数値に設定するといった処理を行なってもよい。
【0049】
その後、燃焼器91が燃焼駆動されると、制御部6は、その燃焼駆動による凝縮水の発生量V1を算出する(S5:YES,S6)。この発生量V1の算出は、燃焼器91の燃焼時間およびその燃焼度合いに基づいて行なうことが可能である。より具体的には、たとえば燃焼時間の100msec毎に燃焼器91の燃焼号数を積算していき、その積算量が1mLの凝縮水を生成する燃焼号数を超える都度、凝縮水の発生量として1mLを加算していく。1mLの凝縮水を生成する燃焼号数の積算量については、たとえば試験により予め求めた値を使用すればよい。また、凝縮水の発生量V1の求め方としては、燃焼器91の燃料消費量を監視しておき、その消費量に基づいて凝縮水の発生量を算出させるようにしてもかまわない。この場合、燃料消費量と凝縮水の発生量との対応関係を予め求めておく必要があるが、この対応関係も試験により求めればよい。凝縮水の実際の発生量は、燃焼器91の燃焼の仕方に加え、たとえば給湯装置Bに対する入水温度や入水流量などによっても左右される。したがって、前記した凝縮水の発生量V1は、多少の誤差を含む概略値である。また、本発明においては、凝縮水の発生量V1を演算により求めることに代えて、たとえば配管76の適所に流量計を取り付けるなどして、実際に発生した凝縮水の量を計測してもかまわない。
【0050】
制御部6は、前記のようにして凝縮水の発生量V1を求めた場合には、その発生量V1が所定量V2を超えたか否かを判断する(S7)。この所定量V2は、ポンプPの1回の駆動動作によって排出される凝縮水の量である。本実施形態においては、凝縮水が容器2内に流入し、その水位が水位HL1まで上昇すると、その時点で制御部6はポンプPを駆動させ、その後水位LLになるとポンプPを停止させる。したがって、前記の所定量V2は、貯水室23内における水位LL,LH1間の容積である。なお、ポンプPの駆動回数とは、凝縮水が水位LH1から水位LLになるまでの間にポンプPが仮に一時的に停止されてから再開される動作がなされる場合であっても、これを1回とする概念である。制御部6は、凝縮水の発生量V1が所定量V2を超えれば、予測駆動回数Naを1つ増加させるものの、そうでない場合には、予測駆動回数Naをそのままの値に維持させる(S7,S8)。
【0051】
また、制御部6は、ポンプPのオン、オフ、すなわちポンプPを実際に1回駆動させた場合には、ポンプPの実駆動のカウント数Nbを1つ増加させる(S9:YES,S10)。次いで、制御部6は、このカウント数Nbを、予測駆動回数Naに一定の安全係数α1を乗じた値Na・α1と比較する(S11)。この値Na・α1は、本発明でいう異常判別用基準回数の一例に相当し、安全係数α1は、「1」よりも大きい値である。この安全係数α1は、逆止弁79が異常であるか否かの判断を慎重に行ない、誤判断を防止するための係数である。制御部6は、前記した比較の結果、Nb>Na・α1の関係にあると判断したときには、異常カウンタ値Ncを1つ増加させる(S15)。逆止弁79が開いたまま維持される異常が発生し、凝縮水が容器2内に逆流する状態が発生した場合には、ポンプPが実際に駆動される回数が多くなり、Nb>Na・α1の関係となる。ただし、既述したように、予測駆動回数Naは、誤差を含む値であるなどの理由から、そのような関係が1回成立しただけで逆止弁79が異常であると判断したのでは、誤判断の虞れがある。そこで、本実施形態では、制御部6は異常判断処理に慎重を期すべく、異常カウンタ値Ncが「1」になっただけでは(S16:NO,S17:NO)、異常であるとの判断を下さない。この場合、ステップS5に戻り、前記した動作手順を繰り返す。
【0052】
前記した動作手順の繰り返し時において、異常カウンタ値Ncが「2」になると、制御部6は、その時点で警告処理を行なう(S17:YES,S18)。この警告は、たとえば異常の可能性が高い旨、あるいはその後給湯装置Bの緊急停止が起こり得ることを示す旨を操作リモコン69において画像表示させ、あるいはランプ表示を行なわせるといった処理である。次いで、異常カウンタ値Ncが「3」になると、その時点で制御部6は、逆止弁79が異常であると判断する(S16:YES,S19)。このように、異常カウンタ値Ncが「3」になった段階で異常があると判断すれば、異常カウンタ値Ncが、「1」または「2」の場合に異常であると判断する場合と比較すると、誤検出の可能性が低く、異常である旨の判断結果の信頼性が高いものとなる。制御部6は、異常の旨の判断を行なうと、その後操作リモコン69を利用して異常の旨の報知処理を行なうとともに、給湯装置Bの燃焼運転を強制的に停止させる処理を実行する(S16:YES,S19〜S21)。このような処理により、ユーザは逆止弁79に異常がある旨を適切に察知することができ、また逆止弁79に異常があるにも拘わらず、給湯装置Bがその後も継続して運転使用されることも適切に回避される。
【0053】
一方、前記したような異常判断がなされることなく、1日タイマがタイムアップしたときには(S12:YES)、制御部6は、その後異常カウンタや操作リモコン69における警告などをクリアさせてから(S13,S14)、1日タイマを再スタートさせる(S12:YES,S13,S14,S1)。そして、前記したステップS2以降の制御を繰り返して実行する。このことにより、逆止弁79についての異常判断処理動作が継続して実行される。
【0054】
次に、図6に示す動作処理について説明する。まず、制御部6が起動すると、5日タイマをスタートさせる(S31)。その後のステップS32〜S40は、先に述べた図5のステップS2〜S10と同様である。ただし、この図6に示す動作においては、5日タイマがタイムアップしない時点では(S41:NO)、ステップS35〜S40の動作が繰り返して実行され、異常判断は行なわれない。この動作処理においては、5日の期間中に燃焼器91が駆動されたり、ポンプPが駆動される都度、予測駆動回数Naやカウント数Nbの値が増加していくこととなる。
【0055】
5日タイマがタイムアップになると、制御部6は、カウント数Nbを、予測駆動回数Naに所定の安全係数α2を乗じた異常判別用基準回数Na・α2と比較する(S41:YES,S42)。この安全係数α2は、先の安全係数α1と同様に、誤判断を防止するための係数であり、やはり「1」よりも大きい値である。この安全係数α2は、安全係数α1と同一の数値にしてもよいが、短期間での異常判定よりも長期間での異常判定の方が正確な判定が可能であるため、α1>α2の関係とすることもできる。
【0056】
前記した比較の結果、Nb>Na・α2の関係にある場合、制御部6は異常カウンタ値Ncを1つ増加させる(S43)。この異常カウンタ値Ncが、「1」になった場合、制御部6は、異常である旨の判断を行なうことなく、5日タイマを再スタートさせる(S44:NO,S50:NO,S31)。そして、その後5日間は、前記した一連の動作を繰り返して実行し、またそれを終了した後にはさらに5日タイマをスタートさせ、それ以降も同様な動作を繰り返し実行する。そのような動作がなされることにより、異常カウンタ値Ncが、「3」になると、制御部6は、その時点で警告処理を実行する(S50:YES,S51)。そして、その後異常カウンタ値Ncが「5」になると、制御部6は、その時点で逆止弁79は異常であると判断し、その旨の報知処理や給湯装置Bの運転停止処理を実行する(S44:YES,S45〜S47)。これらの警告処理や報知処理は、図5を参照して説明した警告処理や報知処理と同様な処理とすることが可能である。
【0057】
なお、5日タイマがタイムアップした時点で、Nb>Na・α2の関係にない場合は(S41:YES,S42:NO)、異常カウンタや故障警告のクリア処理が行なわれてから、5日タイマが再スタートされる(S48,S49,S31)。したがって、Nb>Na・α2の関係が連続して5回発生した場合にのみ、ステップS45の異常の旨の判断がなされる。
【0058】
本実施形態においては、図5および図6に示した動作処理が並行して行なわれるために、配管75の凝縮水が容器2内に逆流する量が多い場合と少ない場合とのいずれの場合においても、逆流が生じている旨を適切に検出することが可能ある。すなわち、図5に示した動作処理においては、先に説明したとおり、ポンプPが駆動される都度、ステップS11のポンプPの実駆動のカウント数Nbと異常判別用基準回数(Na・α1)との比較が行なわれている。したがって、凝縮水の逆流が多く、ポンプPの実駆動回数も多くなった場合には、異常カウンタ値Ncが早期に「3」となり、逆止弁79が異常である旨を迅速かつ的確に発見することができる。ただし、図5に示す動作処理では、最長1日のスパンで異常判別を行なっているために、凝縮水の逆流が少ない場合、そのようなスパンではその状態を検出することは難しい。これに対し、図6に示す動作処理では、5日のスパンをかけてポンプPの実駆動回数を検出しているために、1日のスパンでは検出されない凝縮水の少量の逆流も適切に検出することができる。もちろん、本発明では、異常判別処理の繰り返し周期は、1日や5日に限定されるものではない。
【0059】
また、前記した動作処理では、ステップS11のNb>Na・α1の関係、またはステップS42のNb>Na・α2の関係が、1回成立しただけでは、逆止弁79が異常であるとの判断を行なっておらず、そのような関係が予め定められた複数回に達した時点で初めて異常であるとの判断を行なっている。したがって、その判断の信頼性を高いものとなる。さらに、ポンプPの実駆動のカウント数Nbと比較される異常判別用基準回数は、予測駆動回数Naに1よりも大きい安全係数α1,α2を乗じた値であるために、逆止弁79に異常が無いにも拘わらず、異常であると誤判断される虞れを無くすのにより好適となる。
【0060】
なお、本発明においては、ポンプPの予測駆動回数Naを算出する場合に、容器2内への雨水の進入量を考慮してもよい。すなわち、給湯装置Bを屋外に設置した場合、雨水が排気口99から缶体90内に進入し、これが配管76を通過して容器2内に流入する場合がある。雨水の進入量を正確に予測することは困難であるが、たとえば給湯装置Bの設置地域の過去の雨量の統計値に基づくなどして、その進入量をある程度推定することは可能であり、そのような推定値をも考慮して予測駆動回数Naを算出してもよい。また、雨水の進入予測量を考慮して予測駆動回数Naを算出することに代えて、雨水の進入予測量に基づく予測駆動回数の値を独自に求め、これを考慮して異常判別用基準回数の値を決定してもよい。より具体的には、たとえば先に述べたステップS11,S42における判定式を、Nb>Na・α1+β1、Nb>Na・α2+β2(ただし、β1,β2は、雨水の進入による予測ポンプ駆動回数である)に変更してかまわない。雨水の進入量を考慮して異常判別用基準回数を決定すれば、雨水が容器2内に仮に流入したとしても、その流入量が推定範囲内である限りは、それに起因して誤判断がなされることは適切に回避される。雨水の進入量に関する推定値は、全国一律に設定してもよいし、設置地域に応じてその値を変更できるようにしてもよい。また、季節に応じて適宜その値を修正可能な構成、あるいは自動修正される構成としてもよい。
【0061】
上述した実施形態においては、制御部6が凝縮水の発生量を求めるようにされているため、これを利用して、次に述べるような、凝縮水の漏れ検出処理を行なわせることも可能である。すなわち、この漏れ検出処理においては、まず制御部6は、貯水室23内の凝縮水が水位LLになった時点からの凝縮水の発生量V3を求める処理を実行する。次いで、その発生量V3が、貯水室23内の水位LL,LH1間の容積V2に達したにも拘わらず、凝縮水が水位LH1に達した旨が所定時間内に検出されない場合には、凝縮水が排出経路において漏れていると考えられるため、制御部6には異常であるとの判断を行なわせる。凝縮水の発生量V3の算出などに際しては多少の誤差が発生するために、この誤差に起因する誤判断を防止することを目的として、その発生量V3または容積V2に安全係数を乗じた値(発生量V3についてはその値を小さくする係数、容積V2についてはその値を大きくする係数)を用いて、それらを比較するようにしてもよい。
【0062】
図7は、制御部6の動作処理手順の他の例を示している。
【0063】
本実施形態における制御部6は、ポンプPの駆動電流Iaを監視しており、その駆動電流Iaの大きさに基づいて各種の処理を実行している。制御部6は、ポンプPまたはそのドライバに電力を供給するための電力供給回路を備えており、この電力供給回路に流れる電流に基づいてポンプPの駆動電流Iaを把握するようになっている。
【0064】
具体的な動作を説明すると、まず制御部6は、ポンプPの駆動が開始された後には(S61)、前回のポンプPの駆動時から今回のポンプPの駆動開始時までに燃焼器91が燃焼駆動したか否かを判断する(S62)。ポンプPの駆動は、容器2内の凝縮水が水位LH1になった時点で行なわせてもよいが、本実施形態の場合には、タイマ設定によって駆動を開始させるようにすることもできる。燃焼器91が燃焼駆動したか否かの判断は、凝縮水が発生したか否かを判断するためであり、燃焼器91が燃焼駆動していない場合には凝縮水は発生しておらず、給湯装置Bから容器2内への凝縮水の流入は無いものと考えられる。反対に、燃焼器91が燃焼駆動している場合には、給湯装置Bから容器2内に凝縮水が新たに流入していると考えることができる。
【0065】
制御部6は、燃焼器91が燃焼駆動していないと判断した場合であって、かつポンプPの起動後の駆動電流Iaが所定値Ioを超えているときには(S62:YES,S63:YES)、ポンプPを継続運転させる(S64)。ポンプPが凝縮水を排出している際にはこのポンプPに適度な負荷が作用しているため駆動電流Iaが大きくなるのに対し、凝縮水を排出していない場合には駆動電流Iaが小さくなるが、所定値Ioは、そのような2つの状態を見分けるための閾値である。駆動電流Iaが所定値Io以下となったときには(S65:YES)、ポンプPによる凝縮水の排出がなされておらず、容器2の貯水室23は空になったと考えられる。したがって、その際にはポンプPの駆動は停止される(S66)。
【0066】
また、ステップS62において、燃焼器91の燃焼駆動がないと判断され(S62:NO)、容器2内に凝縮水が新たに進入していない状況と考えられる場合に、駆動電流Iaが所定値Ioよりも小さいときには(S67:NO)、この状態は正常である。ただし、この場合には、ポンプPが空運転状態であるため、その後直ちにポンプPを停止させることとなる(S66)。凝縮水処理装置Aに異常がない場合には、前記したような動作が繰り返して実行される。
【0067】
一方、前記とは異なり、ステップS67において、駆動電流Iaが所定値Ioを超えているときには(S67:YES)、容器2内に凝縮水が新たに進入していないにも拘わらず、凝縮水を排出している状態と見做すことができるために、逆止弁79に異常があり、凝縮水の逆流が生じている可能性があると考えられる。したがって、この場合には、次に述べるような異常判別処理が開始される。
【0068】
すなわち、制御部6は、その後ポンプPを継続運転させ、駆動電流Iaが所定値Io以下になると、その駆動を停止させる(S68〜S70)。これは、貯水室23内の凝縮水を排出し、貯水室23を空にするための動作である。次いで、ポンプPの停止時から所定時間が経過した時点で、制御部6はポンプPを再駆動させる(S71)。そして、制御部6は、その再駆動時における駆動電流Iaが所定値Ioを超えているとともに、前記所定時間において燃焼器91の燃焼駆動は無いと判断したときには、逆止弁79は異常であると判断する(S72:YES,S73:YES,S74)。この異常判別処理では、貯水室23を空の状態にした後にポンプPを再駆動させているが、その間に燃焼器91の駆動がなされず、容器2内に凝縮水が新たに流入していないにも拘わらず、その再駆動時の駆動電流Iaが所定値Ioを超えて凝縮水を排出している状態になることは、正常状態ではない。この場合には、逆止弁79が故障しており、前記所定時間内に凝縮水が容器2内に逆流していると考えられる。このような原理に基づき、制御部6は、逆止弁79の異常を適切に判断することとなる。前記所定時間を長くするほど、凝縮水の逆流検出を正確に行なうことが可能であるが、その具体的な数値はとくに限定されるものではない。制御部6は、前記の異常の旨の判断を行なった後には、その旨の報知処理やポンプPの駆動停止処理を行なう(S74,S75)。報知処理は、先に述べたのと同様な処理でよく、またこれに伴って、給湯装置Bの運転停止処理を行なわせてもよい。
【0069】
また、制御部6は、次に述べるように、凝縮水の排出経路の詰まり検出処理も実行可能である。すなわち、ステップS62において燃焼器91の燃焼駆動があった場合にも拘わらず(S62:YES)、ステップS63において駆動電流Iaが所定値Ioを超えないときには(S63:NO)、凝縮水が容器2内に存在するにも拘わらず、凝縮水の排出がなされていないと考えられ、配管75やその他の凝縮水の排水経路に詰まりがある可能性が高い。この場合、制御部6は、ポンプPを直ちに停止させ、その停止回数をカウントする(S76,S77)。そして、その停止回数が、所定数に達していなければ、その停止状態を維持し、その後は本来の適当なタイミングでポンプPの駆動を開始させて凝縮水の排出処理を実行させる(S78:NO,S61)。そして、そのようなポンプPの駆動がなされることにより、前記したような状態が繰り返して生じ、ステップS78におけるカウント数が所定数になると、制御部6は、その時点で凝縮水の排出経路の詰まり異常が発生していると判断し、その旨の報知処理を行なう(S78:YES,S79,S80)。前記異常の判断を慎重に行なうべく前記所定数の数値は複数とされているが、この数値を「1」にしてもよい。
【0070】
本実施形態によれば、ポンプPの駆動電流Iaに基づいて凝縮水の排出のための動作制御が適切になされており、たとえば水位検出部5Bを不要にすることも可能である。加えて、逆止弁79の異常や、凝縮水の排出経路の詰まり異常などについても、駆動電流Iaに基づいて非常に容易な処理によって正確に検出することが可能であり、制御部6の動作用プログラムの内容を簡易にすることもできる。
【0071】
本発明は、上述した実施形態の内容に限定されない。本発明に係る凝縮水処理装置、および燃焼装置の各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。
【0072】
上述の実施形態においては、凝縮水処理装置の容器が中和剤を上下2段に収容させる構造とされているが、本発明はこれに限定されず、1段構造としてもよいことは勿論である。中和剤としては、炭酸カルシウム以外の物質を用いることが可能である。水位検出手段としては、たとえばフロートを利用した構成とし、凝縮水の水位を多段階または無段階で検出できるようにすることもできる。
【0073】
本発明に係る凝縮水処理装置は、中和処理を行なうものに限定されない。たとえば、前述した特許文献1に記載されているもののように、給湯装置の熱交換器から酸性の凝縮水を容器内に受けて貯留し、この凝縮水を酸性のままポンプによって適当なタイミングで所望の位置に送り出すといった凝縮水の貯留および送り出し処理を行なう装置として構成することも可能である。
【0074】
本発明に係る燃焼装置とは、瞬間式の一般給湯用の給湯装置、風呂給湯装置、床暖房用の給湯装置、あるいは融雪用の給湯装置など、各種の給湯装置を含むことは勿論のこと、給湯以外の用途に用いられるものも含む概念である。燃焼ガスを燃焼器の上方に進行させるいわゆる正燃方式のものに代えて、たとえば燃焼ガスを下向きに進行させながら熱交換を行なういわゆる逆燃方式のものに構成することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明に係る凝縮水処理装置の一例を示す要部断面図である。
【図2】(a)は、図1の左側面図であり、(b)は、その一部断面側面図である。
【図3】(a)は、図1のIIIa−IIIa断面図であり、(b)は、図1のIIIb−IIIb断面図である。
【図4】本発明に係る給湯装置の一例を模式的に示す説明図である。
【図5】図1に示す凝縮水処理装置の制御部の動作処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図6】図1に示す凝縮水処理装置の制御部の動作処理手順の他の例を示すフローチャートである。
【図7】図1に示す凝縮水処理装置の制御部の動作処理手順の他の例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0076】
A 凝縮水処理装置
B 給湯装置(燃焼装置)
P ポンプ
1 中和剤
2 容器
6 制御部(判断手段,制御手段)
23 貯水室
75 配管
79 逆止弁
91 燃焼器
93B 2次熱交換器(熱交換器)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼器により発生された燃焼ガスから熱交換器を利用して熱回収を行なう燃焼装置に組み合わされて使用され、
前記熱回収に伴って発生した凝縮水を前記燃焼装置から受けて内部に貯留する容器と、
この容器内における凝縮水の貯留量が一定量に達したときに駆動を開始し、前記凝縮水の所定量を容器外部に排出させるポンプと、
このポンプによって凝縮水が排出される経路に設けられている逆止弁と、
を備えている、凝縮水処理装置であって、
前記燃焼器の運転に対応して前記ポンプの予測駆動回数を算出する処理、前記ポンプの実駆動回数をカウントする処理、およびそのカウント数を前記予測駆動回数に基づいて決定された異常判別用基準回数と比較する処理を含む異常判別処理を実行し、かつ前記カウント数が前記異常判別用基準回数を超えているときに、前記逆止弁は異常であると判断する判断手段を備えていることを特徴とする、凝縮水処理装置。
【請求項2】
前記ポンプの予測駆動回数は、前記燃焼器の燃焼時間とその燃焼度合い、燃料消費量、または前記凝縮水の計量値と、前記ポンプの一回の駆動による凝縮水の排出量とに基づいて算出され、
前記異常判別用基準回数は、前記予測駆動回数よりも大きな値とされている、請求項1に記載の凝縮水処理装置。
【請求項3】
前記ポンプの予測駆動回数は、前記容器内への雨水の予測進入量を加味して算出される構成とされている、請求項2に記載の凝縮水処理装置。
【請求項4】
前記異常判別処理は、前記ポンプの実駆動のカウント数が前記異常判別用基準回数を超える都度、繰り返して実行され、
前記逆止弁が異常であるとの判断は、前記カウント数が前記異常判別用基準回数を超える回数が、所定の複数回に達したときに行なわれる構成とされている、請求項1ないし3のいずれかに記載の凝縮水処理装置。
【請求項5】
前記判断手段は、所定の第1設定時間を計測するタイマ機能を有し、
前記ポンプの実駆動のカウント数が前記異常判別基準回数を超えないときには、前記第1設定時間の周期で、前記異常判別処理が繰り返して実行されるように構成されている、請求項4に記載の凝縮水処理装置。
【請求項6】
前記判断手段は、前記第1設定時間よりも長い第2設定時間をも計測可能なタイマ機能を有しているとともに、
前記第2設定時間にわたって、前記ポンプの予測駆動回数の算出処理、および前記ポンプの実駆動回数のカウント処理を実行した後に、そのカウント数を前記予測駆動回数に基づいて決定された異常判別用基準回数と比較する追加の異常判別処理を実行可能であり、かつこの追加の異常判別処理において、前記カウント数が前記異常判別用基準回数を超えているときにも、前記逆止弁は異常であると判断するように構成されている、請求項5に記載の凝縮水処理装置。
【請求項7】
前記判断手段は、前記追加の異常判別処理を前記第2設定時間の周期で繰り返して実行し、
前記逆止弁が異常であるとの判断は、前記カウント数が前記異常判別用基準回数を超える回数が、所定の複数回に達したときに行なわれる構成とされている、請求項6に記載の凝縮水処理装置。
【請求項8】
燃焼器により発生された燃焼ガスから熱交換器を利用して熱回収を行なう燃焼装置に組み合わされて使用され、
前記熱回収に伴って発生した凝縮水を前記燃焼装置から受けて内部に貯留する容器と、
この容器内における凝縮水を容器外部に排出させるポンプと、
このポンプによって凝縮水が排出される経路に設けられている逆止弁と、
を備えている、凝縮水処理装置であって、
前記燃焼装置から前記容器内に凝縮水が流入したか否かの判断が可能であるとともに、前記ポンプの駆動電流を監視し、前記ポンプの駆動が開始されたときにその駆動電流が所定値を超えていればその駆動を継続させ、かつ前記駆動電流が前記所定値以下になると前記ポンプを停止させる制御を実行する制御手段を備えており、
この制御手段は、前記ポンプの駆動電流が所定値以下となって前記ポンプを停止させてから所定時間の経過後に前記ポンプを再駆動させる動作が行なわれたときに、その再駆動時のポンプの駆動電流が前記所定値を超えているとともに、前記所定時間中に前記燃焼装置から前記容器内に凝縮水は流入していないと判断したときに、前記逆止弁は異常であると判断するように構成されていることを特徴とする、凝縮水処理装置。
【請求項9】
燃焼器と、この燃焼器により発生された燃焼ガスから熱回収を行なう熱交換器と、を備えた燃焼装置であって、
請求項1ないし8のいずれかに記載の凝縮水処理装置をさらに備えていることを特徴とする、燃焼装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−54782(P2007−54782A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−245776(P2005−245776)
【出願日】平成17年8月26日(2005.8.26)
【出願人】(000004709)株式会社ノーリツ (1,293)
【Fターム(参考)】