説明

凝血活性が増加した第VII因子または第VIIa因子変種

本発明は、L39、I42、S43、K62、L65、F71、E82、およびF275からなる群より選択される少なくとも一つの部分において置換を含む新規第VII因子または第VIIa因子変種に関する。そのような変種は、ヒト野生型第VIIa因子と比較して凝血活性の増加を示す。本発明はまた、治療において、特に多様な凝固関連障害の治療のために、そのような第VII因子または第VIIa因子変種を用いることに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、L39、I42、S43、K62、L65、F71、E82、およびF275からなる群より選択される位置において置換を含む新規FVIIまたはFVIIa変種に関する。そのような変種は凝血活性の増加を示す。本発明はまた、治療において、特に多様な凝固関連障害を治療するためにそのようなポリペプチド変種を用いることに関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
血液凝固は、最終的にフィブリン凝血が起こる様々な血液成分(または因子)の複雑な相互作用からなるプロセスである。一般的に、「凝固カスケード」と呼ばれる事象に関与する血液成分は、プロ酵素またはチモーゲン、すなわち、活性化因子の作用によって活性型に変換される酵素的に不活性なタンパク質である。これらの凝固因子の一つはFVIIである。
【0003】
FVIIは、肝臓において合成され、血液中に分子量53 kDaの一本鎖糖タンパク質として分泌されるビタミンK依存的血漿タンパク質である(BrozeおよびMajerus、J. Biol. Chem. 1980;255:1242〜1247)。FVIIチモーゲンは、単一の部位R152-I153でのタンパク質溶解切断によって活性型(FVIIa)に変換され、それによって単一のジスルフィド結合によって結合された二つの鎖が得られる。組織因子(TF)と複合体を形成したFVIIaである、FVIIa複合体は第IX因子と第X因子の双方をその活性型に変換することができ、その後迅速なトロンビン形成およびフィブリン形成に至る反応が起こる(OsterudおよびRapaport、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 1977;74:5260〜5264)。
【0004】
FVIIは、ビタミンK依存的カルボキシル化を含む翻訳後改変を受け、それによって分子のN末端領域においてγ-カルボキシグルタミン酸残基10個が得られる。このように、配列番号:1に示される残基番号6位、7位、14位、16位、19位、20位、25位、26位、29位および35位は、FVII活性にとって重要なGlaドメインにおけるγカルボキシグルタミン酸残基である。他の翻訳後改変には、145位および322位での天然に存在する二つのN-グリコシル化部位での、ならびに52位および60位での天然に存在する二つのO-グリコシル化部位でのそれぞれ糖部分の結合が含まれる。
【0005】
ヒトFVII(hFVII)をコードする遺伝子は、第13染色体のq34-qter9にマッピングされている(de Grouchyら、Hum Genet. 1984;66:230〜233)。これはエキソン9個を含み、12.8 Kbに及ぶ(O'Haraら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 1987;84:5158〜5162)。FVIIの遺伝子構築およびタンパク質構造は、他のビタミンK依存的前凝固タンパク質と類似であり、エキソン1aおよび1bはシグナル配列をコードし;エキソン2はポリペプチドおよびGlaドメイン;エキソン3は短い疎水性領域;エキソン4および5は上皮細胞増殖因子様ドメイン;およびエキソン6〜8はセリンプロテアーゼ触媒ドメインをコードする(Yoshitakeら、Biochemistry 1985;24:3736〜3750)。
【0006】
hFVIIa(Pikeら、P.N.A.S. U.S.A.、1999;96:8925〜30、およびKemball-Cookら、J. Struct. Biol. 1999;127:213〜223)、X線結晶学的方法を用いて可溶性組織因子と複合体を形成したhFVIIa(Bannerら、Nature 1996;380:41、およびZhangら、J. Mol. Biol. 1999;285:2089)、およびhFVIIのより小さい断片(Muranyiら、Biochemistry 1998;37:10605およびKaoら、Biochemistry 1999;38:7097)の実験的三次元構造に関する報告がある。
【0007】
FVIIのいくつかのタンパク質工学による変種が報告されている。例えば、DickinsonおよびRuf、J. Biol. Chem. 1997;272:19875〜19879;Kemball-Cookら、J. Biol. Chem. 1998;273:8516〜8521、Bharadwajら、J. Biol. Chem. 1996;271:30685〜30691、Rufら、Biochemistry、1999;38:1957〜1966;米国特許第5,560,580号;米国特許第5,288,629号;国際公開公報第01/83725号;国際公開公報第02/22776号;国際公開公報第02/077218号;国際公開公報第03/027147号;国際公開公報第02/38162号;国際公開公報第03/037932号;国際公開公報第99/20767号;国際公開公報第00/66753号;および国際公開公報第01/58935号を参照されたい。
【0008】
BHKまたは他の哺乳類細胞におけるFVIIの発現(国際公開公報第92/15686号、国際公開公報第91/11514号、および国際公開公報第88/10295号)ならびに真核細胞におけるFVIIおよびkex2エンドプロテアーゼの同時発現(国際公開公報第00/28065号)に関する報告が存在する。
【0009】
ヒト組み換え型FVIIaの市販の調製物は、ノボセブン(NovoSeven)(登録商標)として販売されている。ノボセブン(登録商標)は、血友病AまたはB患者における出血事例の治療に適応されている。ノボセブン(登録商標)は、市販されている出血事例の有効かつ信頼できる治療のための唯一のrFVIIaである。
【0010】
152位のアルギニンおよび/または153位のイソロイシンが改変されているFVIIの不活性型が、国際公開公報第91/11514号において報告されている。これらのアミノ酸は活性化部位に存在する。国際公開公報第96/12800号は、セリンプロテアーゼ阻害剤によるFVIIaの不活化を記述している。α-アミノ基I153位でのFVIIaのカルバミル化による不活化は、Petersenら、Eur. J. Biochem. 1999;261:124〜129によって記述されている。不活性型は、TFとの結合および凝固活性の阻害に関して野生型FVIIaまたはFVIIaと競合することができる。FVIIaの不活性型は、心筋梗塞または血栓症発作のリスクがある敗血症患者のような高凝固状態にある患者を治療するために用いることが示唆されている。
【0011】
国際公開公報第98/32466号は、多くの他のタンパク質の中でも、FVIIをPEG化してもよいことを示唆しているが、この点に関してさらに如何なる情報も含んでいない。
【0012】
国際公開公報第01/58935号は、中でも半減期が増加したFVIIまたはFVIIa分子を開発するための新規戦略を開示する。
【0013】
循環中のrFVIIaの半減期は2.3時間であると、FDA参照番号第96-0597号の「NovoSeven(登録商標)の承認に関する概略の基礎」に報告されている。所望の治療または予防効果を得て維持するためには、比較的高用量を頻回投与することが必要である。その結果、適切な用量の調節を得ることが難しく、頻繁な静脈内投与が必要であるために、患者の生活様式は制限される。
【0014】
rFVIIa治療は、TFに対するその結合が改善されるように操作されるFVIIa型を用いることができればより有効となりうるであろう。特定の理論に拘束されることなく、そのようなFVIIa変種は以下のメカニズムによって治療を改善することができるであろう:TFに対する親和性が増加した改変FVIIa分子は、TF上の不活性FVIIまたは不活化FVIIaを置換することができるために、出血のより有効な治療を可能にして、それによって凝固経路のより強い増幅を媒介し、したがって、凝血形成プロセスを加速して、おそらくより強い凝血形成を媒介することができるであろう。このように、そのような改善されたFVIIaは、例えば外傷患者における制御できない出血を停止させる場合により有効であろう。
【0015】
この有効性の増加は、これが活性なTFを有する細胞(内皮細胞)が存在する唯一の場所であることから、組織損傷部位に局在するであろう。このように、有効性が増加するのみならず、TFに対する親和性が増加した改変FVIIaは、組織損傷部位、すなわち内皮に露出している細胞に、すなわち、前凝固活性の増加が望ましい部位に、活性が局在するために、より安全な前凝固剤治療となるであろう。
【0016】
したがって、本発明の主な目的は、凝血活性の増加(凝血時間の短縮)および/またはより強い凝血の生成能のような、凝血有効性が増加したFVII/FVIIa変種を提供することである。変種は、燐脂質膜結合親和性の増加を得るようにさらに操作してもよい。そのような変種は、そのような分子が、例えばTF-産生単球から発芽したいわゆる微粒子との融合を通して、血小板に存在するTFを標的とする可能性があることから、FVIIaの有効性をさらに増加するであろう。この標的化によって、すなわちトロンビンおよびフィブリン形成部位で、残りの凝血カスケードによる第X因子生成の増加が同時に存在するであろう。
【0017】
現在のrFVIIa治療におけるもう一つの問題は、タンパク質分解に関する分子の相対的不安定性である。タンパク質分解は、凍結乾燥産物と比較して調製物を溶液で得る際の主要な障害である。安定な溶液製剤を得る長所は、患者の取り扱いの容易さ、および緊急の場合に、おそらく生命を救うことになりうるより速やかな作用である。主要なタンパク質分解部位での部位特異的変異誘発によってタンパク質分解を予防する試みは、国際公開公報第88/10295号に開示されている。FVII/FVIIaの安定化液体製剤を調製するもう一つの試みは、国際公開公報第03/055512号に記述されている。
【0018】
このように、本発明のさらなる目的は、上記の改善された特性の他に、タンパク質分解に対してより安定である、すなわちタンパク質分解に対する感受性が減少したFVII/FVIIa変種を提供することである。
【0019】
循環中の半減期がより長い分子は、必要な投与回数が減少するであろう。現在のFVIIa産物と頻回注射との関係、および同時に増強される治療効果と共により最適な治療的FVIIaレベルを得る可能性を考慮すると、循環中の半減期が増加したFVIIまたはFVIIa分子が明らかに必要である。タンパク質の循環中の半減期を増加させる一つの方法は、タンパク質の腎クリアランスを確実に低下させることである。これは、タンパク質に腎クリアランスの低下を付与することができる化学物質にタンパク質を結合させることによって行ってもよい。さらに、タンパク質に対して化学物質を結合させる、またはタンパク質分解に露出されるアミノ酸を置換することによって、タンパク質分解に至るタンパク質分解酵素との接触が有効に遮断される可能性がある。ポリエチレングリコール(PEG)は、治療タンパク質産物の調製において用いられているそのような一つの化学部分である。
【0020】
このように、本発明のなおさらなる目的は、上記の改善された特性の他に、増加した機能的インビボ半減期および/または増加した血清半減期を有するFVII/FVIIa変種を提供することである。
【0021】
上記に記載された目的は、本明細書において開示された改善されたFVII/FVIIa変種によって達成される。
【発明の開示】
【0022】
発明の簡単な概要
本発明は、L39、I42、S43、K62、L65、F71、E82、およびF275からなる群より選択される少なくとも一つの位置において置換を含む改善された組換え型FVIIまたはFVIIa変種を提供する。FVII分子のTF結合部位におけるこれらのアミノ酸置換によって、凝血活性の改善が得られる。
【0023】
興味深い態様において、FVIIまたはFVIIa変種は、得られた変種が、燐脂質膜結合親和性の増加、機能的インビボ半減期の増加および/または血漿半減期の増加を有するようにさらに改変されている。なお他の態様において、変種は、生物学的利用率の増加および/またはタンパク質分解に対する感受性の低下を有するようにさらに改変されている。その結果、そのような変種による医学的処置は、現在利用できるrFVIIa化合物に対して、より低い用量、制御されない出血におけるより速い作用、および選択的により長い注射間隔のような、多くの長所を提供する。
【0024】
したがって、第一の局面において、本発明は、変種の配列が、L39、I42、S43、K62、L65、F71、E82、およびF275からなる群より選択される少なくとも一つの位置において置換を含むが、
但し、該変種は以下ではない:

配列番号:1に示すアミノ酸配列を有するヒト第VII因子(hFVII)またはヒト第VIIa因子(hFVIIa)と比較してアミノ酸改変1〜15個を含むアミノ酸配列を有する第VII因子(FVII)または第VIIa因子(FVIIa)ポリペプチド変種に関する。
【0025】
第二の局面において、本発明は、変種の配列が、L39、I42、S43、K62、L65、F71、E82、およびF275からなる群より選択される少なくとも一つの位置において置換を含む、配列番号:1に示すアミノ酸配列を有するヒト第VIIa因子(hFVIIa)と比較してアミノ酸改変1〜15個を含むアミノ酸配列を有する第VIIa因子(FVIIa)ポリペプチド変種に関する。Cheung and Stafford、Thom Res. 1995、79:199〜206に開示されるL39E変異を含むFVII変種は、本出願の範囲内ではない。同様に、米国特許第5,580,560号に開示されるI42N/S/A/Q変異を含むFVII/FVIIa変種は、本発明の範囲内ではない。
【0026】
本発明のもう一つの局面は、本発明の変種をコードするヌクレオチド配列に関する。
【0027】
さらなる局面において、本発明は、本発明のヌクレオチド配列を含む発現ベクターに関する。
【0028】
なおさらなる局面において、本発明は、本発明のヌクレオチド配列または本発明の発現ベクターを含む宿主細胞に関する。
【0029】
さらにさらなる局面において、本発明は、本発明の変種と、薬学的に許容される担体または賦形剤とを含む薬学的組成物に関する。
【0030】
本発明のさらにもう一つの局面は、医薬品として用いられる、本発明の変種または本発明の薬学的組成物に関する。
【0031】
本発明のさらなる局面は、添付の特許請求の範囲だけでなく、下記の記載の内容からも明らかになる。
【0032】
発明の詳細な開示
定義
本出願および本発明の状況において、以下の定義を適用する。
【0033】
「結合型(または互換的に「結合型ポリペプチド変種」)」とは、一つまたは複数のポリペプチドを、ポリマー分子、親油性化合物、糖部分または有機誘導体化物質のような一つまたは複数の非ポリペプチド部分に共有結合させることによって形成された不均一な(組成の意味においてまたはキメラ)分子を示すと解釈される。好ましくは、結合型は、適切な濃度および条件で可溶性である、すなわち血液のような生理的液体において可溶性である。本発明の結合型ポリペプチド変種の例には、グリコシル化および/またはPEG化ポリペプチドが含まれる。
【0034】
「共有結合」または「共有結合した」という用語は、ポリペプチド変種および非ポリペプチド部分が、互いに直接共有結合しているか、または架橋、スペーサー、もしくは連結部分または複数の部分のような、介在する部分もしくは複数の部分を通して、間接的に共有結合していることを意味する。
【0035】
本明細書において使用される場合、「非ポリペプチド部分」という用語は、本発明のポリペプチド変種の結合基と結合することができる分子を意味する。そのような分子の好ましい例には、ポリマー分子、糖部分、親油性化合物または有機誘導体化物質、特に糖部分が含まれる。本発明のポリペプチド変種の意味において用いられる場合、非ポリペプチド部分は、ポリペプチド変種の結合基を通してポリペプチド変種のポリペプチド部分に結合すると理解されよう。先に説明したように、非ポリペプチド部分は、結合基に直接共有結合してもよく、または架橋スペーサーもしくはリンカー部分もしくは複数のリンカー部分のような介在部分もしくは複数の介在部分を通して結合基に間接的に共有結合してもよい。
【0036】
「ポリマー分子」は、単量体がいずれもアミノ酸残基ではない、二つまたはそれ以上の単量体の共有結合によって形成された分子である。「ポリマー」は、「ポリマー分子」という用語と互換的に用いてもよい。この用語はまた、インビトログリコシル化によって結合された糖質分子、すなわち、選択的にクロスリンク剤を用いて糖質分子をポリペプチド変種の結合基に共有結合させることを含む、通常インビトロで行われる合成グリコシル化を含むと解釈される。インビトログリコシル化は、後に詳細に考察する。
【0037】
「糖部分」は、インビボグリコシル化によって(グリコシル化ポリペプチド変種の形でポリペプチド変種結合型を産生するために)ポリペプチド変種に結合することができる、一つまたは複数の単糖類残基を含む糖質含有分子を示すと解釈される。「インビボグリコシル化」という用語は、すなわちポリペプチド変種の発現のために用いられるグリコシル化細胞における翻訳後プロセシングの際に、例えばN-結合およびO-結合グリコシル化によって、インビボで起こる糖部分の任意の結合を意味すると解釈される。正確なオリゴ糖構造は、当該グリコシル化生物に依存するところが大きい。
【0038】
「N-グリコシル化部位」は、配列N-X-S/T/Cを有し、式中Xはプロリンを除く任意のアミノ酸残基、Nはアスパラギン、およびS/T/Cはセリン、トレオニン、またはシステインのいずれか、好ましくはセリンまたはトレオニンであり、最も好ましくはトレオニンである。好ましくは、アスパラギン残基に対して+3位のアミノ酸残基は、プロリン残基ではない。
【0039】
「O-グリコシル化部位」は、セリンまたはトレオニン残基のOH-基である。
【0040】
「結合基」という用語は、ポリペプチド変種の官能基、特にポリマー分子、親油性分子、糖部分または有機誘導体化物質のような非ポリペプチド部分を結合させることができるそのアミノ酸残基または糖質部分の官能基を示すと解釈される。有用な結合基およびそのマッチする非ポリペプチド残基は、下記の表から明らかであると思われる。



【0041】
インビボN-グリコシル化の場合、「結合基」という用語は、N-グリコシル化部位を構成するアミノ酸残基を示すために通常でない意味で用いられる(配列N-X-S/T/C、Xはプロリンを除く任意のアミノ酸残基、Nはアスパラギン、およびS/T/Cはセリン、トレオニン、またはシステイン、好ましくはセリンまたはトレオニン、および最も好ましくはトレオニン)。N-グリコシル化部位のアスパラギン残基は、それに対して糖部分がグリコシル化の際に結合する部位であるが、そのような結合は、N-グリコシル化部位の他のアミノ酸残基が存在しなければ、起こり得ない。
【0042】
したがって、非ポリペプチド部分が糖部分であって、結合がインビボN-グリコシル化によって得られる場合、ポリペプチド変種のアミノ酸配列の改変に関連して用いられる「非ポリペプチド部分の結合基を含むアミノ酸残基」という用語は、機能的インビボN-グリコシル化部位がアミノ酸配列に導入されるかまたはその配列から除去されるように、インビボN-グリコシル化部位を構成する一つまたは複数のアミノ酸残基を変化させるという意味であると理解すべきである。
【0043】
本出願において、アミノ酸名および原子名(例えば、CA、CB、CD、CG、SG、NZ、N、O、C等)は、IUPAC命名法(「IUPAC Nomenclature and Symbolism for Amino Acids and Peptides(residue names, atoms etc.)」、Eur. J. Biochem. 138:9〜37(1984)と共に、Eur. J. Biochem. 152:1(1985)の修正版)に基づいてタンパク質データバンク(PDB)(www.pdb.org )によって定義される通りに用いられる。
【0044】
「アミノ酸残基」という用語は、アラニン(AlaまたはA)、システイン(CysまたはC)、アスパラギン酸(AspまたはD)、グルタミン酸(GluまたはE)、フェニルアラニン(PheまたはF)、グリシン(GlyまたはG)、ヒスチジン(HisまたはH)、イソロイシン(IleまたはI)、リジン(LysまたはK)、ロイシン(LeuまたはL)、メチオニン(MetまたはM)、アスパラギン(AsnまたはN)、プロリン(ProまたはP)、グルタミン(GlnまたはQ)、アルギニン(ArgまたはR)、セリン(SerまたはS)、トレオニン(ThrまたはT)、バリン(ValまたはV)、トリプトファン(TrpまたはW)、およびチロシン(TyrまたはY)残基からなる群に含まれるアミノ酸残基を示すと解釈される。
【0045】
アミノ酸の位置を同定するために用いられる用語を以下に説明する:G124は、配列番号:1に示すアミノ酸配列において124位がグリシン残基で占められていることを示す。G124Rは、124位のグリシン残基がアルギニン残基に置換されていることを示す。もう一つの置換は、「/」で示され、例えばN145S/Tは、145位のアスパラギンがセリンまたはトレオニンのいずれかに置換されているアミノ酸配列を意味する。多数の置換は「+」で示し、例えばK143N+N145S/Tは、143位のリジン残基のアスパラギン残基への置換および145位のアスパラギン残基のセリンまたはトレオニン残基への置換を含むアミノ酸配列を意味する。G124の後のアラニン残基の挿入のような、さらなるアミノ酸残基の挿入は、G124GAで示される。G124の後で二つのさらなるアラニン残基が挿入される場合、G124GAA等によって示される。本明細書において用いる場合、「X位に挿入」または「X位での挿入」という用語は、アミノ酸残基がアミノ酸残基XとX+1とのあいだに挿入されることを意味する。アミノ酸残基の欠失は、星印で示される。例えば、124位のグリシン残基の欠失は、G124*によって示される。
【0046】
特に明記していない限り、本明細書において行ったアミノ酸残基の番号付けは、ヒト野生型FVII/FVIIaのアミノ酸配列(配列番号:1)に対してなされている。
【0047】
特異的変異に関連して用いられる「異なる」という用語は、明記されたアミノ酸の差とは別にさらなる差が存在することを認めることを意図する。例えば、39、42、43、62、65、71、82、および/または275位での明記された置換の他に、FVIIまたはFVIIaポリペプチド変種は他の置換を含んでもよい。そのようなさらなる改変または差の例には、N-および/またはC-末端での一つまたはそれ以上のアミノ酸残基(例えば、アミノ酸残基1〜10個)の切断、またはN-および/またはC-末端での一つまたはそれ以上の余分の残基の付加、例えばN-末端でのメチオニン残基の付加と共に「保存的アミノ酸置換」、すなわち類似の特徴を有するアミノ酸、例えば小さいアミノ酸、酸性アミノ酸、極性アミノ酸、塩基性アミノ酸、疎水性アミノ酸、および芳香族アミノ酸の群内で行われる置換が含まれてもよい。
【0048】
そのような保存的置換の例を以下の表に示す。

【0049】
さらなる改変のさらに他の例には、機能的インビボ半減期の増加または血清半減期の増加を生じる改変が含まれる。そのような改変の特定の例を下記に示す。その上、本発明のポリペプチド変種は、燐脂質膜結合親和性の増強を生じるさらなる改変を含んでもよい。特定の例を下記に示す。
【0050】
「ヌクレオチド配列」という用語は、二つまたはそれ以上のヌクレオチド分子の連続した枝を指すと解釈される。ヌクレオチド配列は、ゲノム、cDNA、RNA、半合成、合成起源、または任意の組み合わせの配列であってもよい。
【0051】
「ポリメラーゼ連鎖反応」または「PCR」という用語は一般的に、例えば米国特許第4,683,195号に記述されるように、インビトロでの望ましいヌクレオチド配列の増幅法を指す。一般的に、PCR法は、鋳型核酸に選択的にハイブリダイズすることができるオリゴヌクレオチドプライマーを用いるプライマー伸長合成の反復サイクルを含む。
【0052】
「ベクター」という用語は、宿主細胞内で複製することができ、または宿主細胞ゲノムに組み入れられることができ、それ自体、適合性の宿主細胞(ベクター-宿主系)と共に異なる機能を行うため、ヌクレオチド配列のクローニングを促進するため、すなわち使用可能な量の配列を産生するため、配列によってコードされる遺伝子産物の発現を指示するため、および宿主細胞のゲノムにヌクレオチド配列を組み入れるために、有用であるプラスミドまたは他のヌクレオチド配列を指す。ベクターは、それが行う機能に応じて異なる成分を含むと思われる。
【0053】
「細胞」、「宿主細胞」、「細胞株」、および「細胞培養」は、本明細書において互換的に用いられ、そのような用語には全て細胞の増殖または培養に起因する子孫が含まれると理解すべきである。
【0054】
「形質転換」および「トランスフェクション」は、DNAを細胞に導入するプロセスを指すために互換的に用いられる。
【0055】
「機能的に結合した」とは、酵素的ライゲーションによる、または配列の正常な機能が行うことができるように互いに対して配置されている、二つまたはそれ以上のヌクレオチド配列の共有結合を指す。例えば、配列前または分泌リーダーをコードするヌクレオチド配列は、ポリペプチドの分泌に関与するプレタンパク質として発現される場合には、ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列に機能的に結合している。プロモーターまたはエンハンサーは、それが配列の転写に影響を及ぼす場合には、コード配列に機能的に結合する。リボソーム結合部位は、それが翻訳を促進するために存在する場合、コード配列に機能的に結合している。一般的に、「機能的に結合した」とは、結合されるヌクレオチド配列が隣接しているが、分泌リーダーの場合には、隣接して読み取り枠に存在することを意味する。連結は、簡便な制限部位でのライゲーションによって行われる。そのような部位が存在しない場合、合成オリゴヌクレオチドアダプターまたはリンカーを、標準的な組み換えDNA法と共に用いる。
【0056】
本発明の状況において、「改変」または「アミノ酸改変」という用語は、アミノ酸側鎖の置換、アミノ酸残基の置換、アミノ酸残基の欠失、および/または関心対象のアミノ酸残基の挿入を含むと意図される。
【0057】
「変異」および「置換」という用語は、本明細書において互換的に用いられる。
【0058】
「導入する」という用語は、既存のアミノ酸残基の置換による、またはさらなるアミノ酸残基の挿入によるアミノ酸残基の導入を指す。
【0059】
「除去する」という用語は、除去されるアミノ酸残基をもう一つのアミノ酸残基に置換することによって、または除去されるアミノ酸残基を欠失(置換せずに)することによるアミノ酸残基の除去を指す。
【0060】
「FVII」または「FVIIポリペプチド」という用語は、一本鎖形状で提供されるFVII分子を指す。FVIIポリペプチドの一つの例は、配列番号:1に示されるアミノ酸配列を持つ野生型ヒトFVII(hFVII)である。しかし、「FVIIポリペプチド」という用語はまた、配列番号:1の断片または変種、特に配列が、配列番号:1と比較してアミノ酸改変1〜15個、好ましくは1〜10個のような少なくとも一つのアミノ酸改変を含む変種のようなhFVII様分子にも及ぶ。
【0061】
「FVIIa」または「FVIIaポリペプチド」という用語は、活性化された二本鎖型で提供されるFVIIa分子を指す。FVIIaのアミノ酸配列を記述するために配列番号:1のアミノ酸配列を用いる場合、一本鎖型のR152とI153のあいだのペプチド結合が切断されていること、鎖の一つがアミノ酸残基1〜152位を含み、他の鎖がアミノ酸残基153〜406位を含むと理解されると思われる。
【0062】
「rFVII」および「rFVIIa」という用語はそれぞれ、組み換え技術によって産生されたFVIIおよびFVIIa分子を指す。
【0063】
「hFVII」および「hFVIIa」という用語はそれぞれ、配列番号:1に示されるアミノ酸配列を有する野生型ヒトFVIIおよびFVIIaを指す。
【0064】
「rhFVII」および「rhFVIIa」という用語は、組み換え手段によって産生された配列番号:1に示されるアミノ酸配列を有するヒト野生型FVIIおよびFVIIaを指す。rhFVIIaの例は、ノボセブン(登録商標)である。
【0065】
本明細書において用いられる場合、「Glaドメイン」という用語は、配列番号:1のアミノ酸残基1〜45位に及ぶと解釈される。したがって、「Glaドメイン外に存在する位置」という用語は、配列番号:1のアミノ酸残基46〜406位を含む。
【0066】
省略語「FX」、「TF」および「TFPI」はそれぞれ、X因子、組織因子および組織因子経路阻害剤を意味する。
【0067】
「プロテアーゼドメイン」という用語は、N末端から数えて153〜406位に関して用いられる。
【0068】
「触媒部位」という用語は、FVII/FVIIa分子のS344、D242、およびH193からなる触媒三残基を意味するために用いられる。
【0069】
「親」という用語は、本発明に従って改変/改善される分子を指すと解釈される。本発明によって改変される親ポリペプチドは、如何なるFVIIポリペプチドまたはFVIIaポリペプチドであってもよく、このように如何なる起源、例えばヒト以外の哺乳類起源に由来してもよいが、親ポリペプチドはhFVIIまたはhFVIIaであることが好ましい。
【0070】
「変種」は、その親ポリペプチドから一つまたはそれ以上のアミノ酸残基、通常、アミノ酸残基1〜10個、例えばアミノ酸残基1〜8個、1〜6個、1〜5個、または1〜3個のような、アミノ酸残基1〜15個(例えば、アミノ酸残基1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、または15個)が異なるポリペプチドである。通常、親ポリペプチドはhFVIIまたはhFVIIaである。このように、「変種」は、典型的に、親ポリペプチドと比較してアミノ酸改変1〜10個、例えばアミノ酸改変1〜8個、1〜6個、1〜5個、または1〜3個のような、アミノ酸改変1〜15個(例えば、アミノ酸改変1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、または15個)を含む。先に説明したように、親ポリペプチドは通常、hFVIIまたはhFVIIaである。本発明に従うポリペプチド変種は、以下の位置の少なくとも一つにおいて配列番号:1とは異なるであろうと理解されるであろう:L39、I42、S43、K62、L65、F71、E82および/またはF275。
【0071】
本発明の状況において、「改変」という用語は、挿入、欠失、置換、およびその組み合わせを含む。本発明に従うポリペプチド変種は、親ポリペプチドと比較して少なくとも一つの位置で改変されるであろうと理解されるであろう。
【0072】
「アミド溶解活性」という用語は、本明細書に記述の「アミド溶解アッセイ」において測定された活性を意味すると意図される。「アミド溶解活性」を示すために、本発明の変種はその活性化型で、本明細書に記述の「アミド溶解活性」においてアッセイした場合に、rhFVIIaのアミド溶解活性の少なくとも10%を有しなければならない。本発明の好ましい態様において、変種はその活性化型において、本明細書に記述の「アミド溶解アッセイ」においてアッセイした場合にrhFVIIaのアミド溶解活性の少なくとも30%、例えば少なくとも40%のような、少なくとも20%、より好ましくは少なくとも60%、例えば少なくとも70%のような、少なくとも50%、さらにより好ましくは少なくとも90%のような、少なくとも80%を有する。興味深い態様において、変種はその活性化型において、rhFVIIaのアミド溶解活性の75〜125%のアミド溶解活性のような、rhFVIIaと実質的に同じアミド溶解活性を有する。
【0073】
「凝血活性」という用語は、本明細書に記述の「全血アッセイ」において測定された活性を意味するために用いられる。「全血アッセイ」において測定される活性は、凝血形成を得るために必要な時間であると理解されるであろう。このように、より短い凝血時間は、より速い凝血活性に対応する。
【0074】
「凝血活性の増加」という用語は、比較可能な条件で決定した場合および本明細書に記述の「全血アッセイ」において測定した場合に、ポリペプチド変種の凝血時間が、rhFVIIaによって得られた活性と比較して統計学的に有意に短縮していることを示すために用いられる。
所定の物質に関連して用いられる「免疫原性」という用語は、物質の免疫系からの反応の誘導能を示すことを意図する。免疫応答は、細胞性または抗体媒介反応であってもよい(例えば、免疫原性の詳しい定義に関しては、Roitt:Essential Immunology(第8版、Blackwell)を参照されたい)。通常、抗体の反応性の減少は、免疫原性の減少の指標となると思われる。免疫原性の減少は、例えばインビボまたはインビトロでの当技術分野で既知の任意の適した方法を用いることによって決定してもよい。
【0075】
「機能的インビボ半減期」という用語は、その通常の意味において用いられ、すなわちポリペプチド変種の生物活性の50%が生体/標的臓器になお存在している時間、またはポリペプチド変種のアミド分解(amidolytic)もしくは凝固活性が最初の値の50%である時間である。
【0076】
機能的なインビボ半減期を決定するための代用として、「血清半減期」、すなわち排泄される前にポリペプチド変種の50%が血漿または血流において循環している時間を決定してもよい。血清半減期の決定はしばしば機能的インビボ半減期を決定するより単純であり、血清半減期の程度は通常、機能的インビボ半減期の程度の良好な指標である。または、血清半減期に対する用語には、「血漿半減期」、「循環中半減期」、「血清クリアランス」、「血漿クリアランス」、および「クリアランス半減期」が含まれる。ポリペプチド変種は、細網内皮系(RES)、腎臓、脾臓、または肝臓の一つまたは複数の作用によって、組織因子、SEC受容体、もしくは他の受容体媒介排泄によって、または特異的もしくは非特異的タンパク質分解によって排泄される。通常、クリアランスは、大きさ(糸球体濾過速度のカットオフに関して)、電荷、結合した炭化水素鎖、およびタンパク質の細胞受容体の存在に依存する。保持される機能性は通常、前凝固、タンパク質溶解、または受容体結合活性から選択される。機能的インビボ半減期および血清半減期は、当技術分野で既知の任意の適した方法によって決定してもよい。
【0077】
機能的インビボ半減期または血清半減期に関して用いられる場合の「増加した」という用語は、ポリペプチド変種の関連する半減期が、同等の条件で決定した場合にhFVIIaまたはrhFVIIa(例えばノボセブン(登録商標))のような参照分子の半減期と比較して統計学的に有意に増加していることを示すために用いられる(典型的には、ラット、ウサギ、またはブタなどの実験動物において決定される)。
【0078】
「AUCiv」または「静脈内投与した場合の曲線下面積」は、その通常の意味において、すなわちポリペプチド変種が静脈内投与されている場合、特にラットに静脈内投与されている場合の、血清-時間曲線における活性下面積として用いられる。典型的に、測定された活性は、本明細書において先に定義された「凝固活性」である。実験的活性-時間点が決定された後、AUCivは、GraphPad Prism 3.01のようなコンピュータープログラムによって計算することが都合がよい可能性がある。
【0079】
異なる分子のAUCiv値間の直接比較を(例えば、本発明の変種とrhFVIIaとのあいだで)行うためには、同じ量の活性を投与すべきであると理解されると思われる。その結果、AUCiv-値は、典型的に標準化されて(すなわち、注射量の差に関して補正される)、投与されたAUCiv/用量として表記される。
【0080】
「タンパク質分解に対する感受性の低下」という用語は主に、比較できる条件で決定した場合に、ポリペプチド変種が、hFVIIaまたはrhFVIIa(例えば、ノボセブン(登録商標))と比較してタンパク質分解に対する感受性が低下していることを意味すると解釈される。好ましくは、タンパク質分解は、少なくとも25%(例えば、25〜50%、25〜75%、または25〜100%)のような少なくとも10%(例えば、10〜25%または10〜50%)、より好ましくは少なくとも50%(例えば、50〜75%、または50〜100%)のような少なくとも35%、さらにより好ましくは、少なくとも75%(例えば、75〜100%)のような少なくとも60%、または少なくとも90%減少する。最も好ましくはタンパク質分解は少なくとも99%減少する。
【0081】
「腎クリアランス」という用語は、腎臓によって、例えば糸球体濾過、尿細管排泄または尿細管細胞における分解によって起こる任意のクリアランスを示すためにその通常の意味において用いられる。腎クリアランスは、大きさ(直径)、流体力学容積、対称性、形状/硬度、および電荷を含むポリペプチドの物理的特徴に依存する。通常、分子量約67 kDaは、腎クリアランスに関するカットオフ値であると見なされる。腎クリアランスは、任意の適したアッセイ法、例えば確立されたインビボアッセイ法によって確立してもよい。典型的に、腎クリアランスは、標識された(例えば、放射標識または蛍光標識)ポリペプチドを患者に投与すること、および患者から採取した尿中の標識活性を測定することによって決定される。腎クリアランスの低下は、比較できる条件で対応する参照ポリペプチド、例えばヒト野生型FVIIaと比較して決定される。好ましくは、ポリペプチド変種の腎クリアランス速度は、hFVIIaまたはrhFVIIa(例えばノボセブン(登録商標))と比較して少なくとも50%、好ましくは75%、および最も好ましくは少なくとも90%減少する。
【0082】
「その側鎖の少なくとも25%が分子の表面に露出する」および「その側鎖の少なくとも50%が分子の表面に露出する」という用語は、計算等を詳細に説明する実施例1を参照して定義される。
【0083】
「その側鎖の少なくとも25%が分子の表面に露出する」および「その側鎖の少なくとも50%が分子の表面に露出する」という用語を、インビボN-グリコシル化部位の導入に関連して用いる場合、これらの用語は、糖部分が実際に結合している位置におけるアミノ酸側鎖の表面到達性を指すことに注意しなければならない。多くの場合において、それに対して糖部分が実際に結合するアルギニン残基と比較して+2位にセリンまたはトレオニン残基を導入する必要があり(当然であるが、この位置がセリンまたはトレオニン残基によって既に占有されていない場合)、セリンまたはトレオニン残基が導入されるこれらの位置は、隠される、すなわちその側鎖の25%または50%未満が分子の表面に露出する。
【0084】
本発明の記述および請求の範囲において、例えば、非ポリペプチド部分、アミノ酸残基、置換、緩衝液等の状況において、例えば非ポリペプチド部分の状況における「一つの」成分という如何なる表現も、特にそうでないと明記していない限り、またはこれが当てはまらないことが特定の文脈から明らかでない限り、そのような成分の一つまたはそれ以上を指すと意図される。例えば、「A、B、およびCからなる群より選択される成分」という表現には、A、B、およびCの全ての組み合わせ、すなわちA、B、C、A+B、A+C、B+C、またはA+B+Cが含まれると意図される。
【0085】
ポリペプチド、ヌクレオチド配列、または他の成分は、例えば、当初由来する細胞において通常会合している他の成分のような、それが通常会合している成分(他のペプチド、ポリペプチド、タンパク質(複合体、例えば天然の配列に伴う可能性があるポリメラーゼおよびリボソームを含む)、核酸、細胞、合成試薬、細胞混入物、細胞成分等)から部分的または完全に分離されている場合に、「単離されている」。ポリペプチド、ヌクレオチド配列、または他の成分は、それが組成物、混合物、または成分のコレクションに存在する優勢な種である(すなわち、モルに基づいてそれが組成物における他の任意の個々の種より豊富である)ように、その天然の環境の他の成分から部分的または完全に回収または分離されている場合に、単離されている。いくつかの場合において、調製物は、単離された種の約60%より多く、約70%より多く、または約75%より多く、典型的に約80%より多く、または好ましくは約90%より多くからなる。
【0086】
「組織因子結合部位」、「活性部位領域」および「活性部位結合裂の隆起」という用語は、上記の部位/領域が決定される、実施例1を参照して定義される。
【0087】
「疎水性アミノ酸残基」という用語には、以下のアミノ酸残基:Ile、Leu、Met、Val、Phe、TyrおよびTrpが含まれる。
【0088】
「荷電アミノ酸残基」という用語は、以下のアミノ酸残基:Lys、Arg、His、Asp、およびGluを含む。
【0089】
「陰性荷電アミノ酸残基」という用語には、以下のアミノ酸残基:AspおよびGluが含まれる。
【0090】
「陽性荷電アミノ酸残基」という用語には、以下のアミノ酸残基:Lys、Arg、およびHisが含まれる。
【0091】
「極性アミノ酸残基」という用語は、以下のアミノ酸残基を含む:Gly、Ser、Thr、Cys、Tyr、Asn、およびGln。
【0092】
本明細書において用いられるように、「哺乳類」という用語には、ヒト、ヒト以外の霊長類(例えば、ヒヒ、オランウータン、サル)、マウス、ブタ、ウシ、ヤギ、ネコ、ウサギ、ラット、モルモット、ハムスター、ウマ、サル、ヒツジ、または他のヒト以外の哺乳類が含まれる。
【0093】
「有効量」という用語は、所望の結果を生じるために十分な用量または量を意味する。所望の結果は、用量または量のレシピエントにおける客観的または主観的改善を含んでもよい。
【0094】
本発明の変種
その最も広い局面において、本発明は、変種の配列が、L39、I42、S43、K62、L65、F71、E82、およびF275からなる群より選択される少なくとも一つの位置において置換を含み、但し、該変種は以下ではない:

配列番号:1に示すアミノ酸配列を有するヒト第VII因子(hFVII)またはヒト第VIIa因子(hFVIIa)と比較してアミノ酸改変1〜15個を含むアミノ酸配列を有する第VII因子(FVII)または第VIIa因子(FVIIa)ポリペプチド変種に関する。
【0095】
本発明のさらに興味深い態様において、FVIIまたはFVIIa変種は、置換L39Eを含む。
【0096】
本発明のさらに興味深い態様において、FVIIまたはFVIIa変種は、置換L39Qを含む。
【0097】
本発明のさらに興味深い態様において、FVIIまたはFVIIa変種は、置換L39Hを含む。
【0098】
本発明のさらに興味深い態様において、FVIIまたはFVIIa変種は、置換I42Rを含む。
【0099】
本発明のさらに興味深い態様において、FVIIまたはFVIIa変種は、置換S43Qを含む。
【0100】
本発明のさらに興味深い態様において、FVIIまたはFVIIa変種は、置換K62Eを含む。
【0101】
本発明のさらに興味深い態様において、FVIIまたはFVIIa変種は、置換K62Rを含む。
【0102】
本発明のさらに興味深い態様において、FVIIまたはFVIIa変種は、置換L65Qを含む。
【0103】
本発明のさらに興味深い態様において、FVIIまたはFVIIa変種は、置換L65Sを含む。
【0104】
本発明のさらに興味深い態様において、FVIIまたはFVIIa変種は、置換F71Dを含む。
【0105】
本発明のさらに興味深い態様において、FVIIまたはFVIIa変種は、置換F71Yを含む。
【0106】
本発明のさらに興味深い態様において、FVIIまたはFVIIa変種は、置換F71Eを含む。
【0107】
本発明のさらに興味深い態様において、FVIIまたはFVIIa変種は、置換F71Qを含む。
【0108】
本発明のさらに興味深い態様において、FVIIまたはFVIIa変種は、置換F71Nを含む。
【0109】
本発明のさらに興味深い態様において、FVIIまたはFVIIa変種は、置換E82Qを含む。
【0110】
本発明のさらに興味深い態様において、FVIIまたはFVIIa変種は、置換E82Nを含む。
【0111】
本発明のさらに興味深い態様において、FVIIまたはFVIIa変種は、置換F275Hを含む。
【0112】
本発明の非常に興味深い態様において、本発明のFVIIまたはFVIIa変種は、L65Q、F71Y、K62EおよびS43Qからなる群より選択される、特にL65Q、K62EおよびS43Qからなる群より選択される置換を含む。
【0113】
上記の置換の一つまたはそれ以上を組み合わせれば都合がよい可能性があると理解されるであろう。したがって、本発明のさらに興味深い態様において、変種は、

からなる群より選択される位置における置換のように、L39、I42、S43、K62、L65、F71、E82およびF275からなる群より選択される位置で少なくとも二つ(二つのような)の置換を含む。本発明のこの態様に従って、変種は、L65+F71、L65+K62、L65+S43、F71+K62、F71+S43、およびK62+S43からなる群より選択される位置で少なくとも二つの(二つのような)置換、特にL65+K62、L65+S43、およびK62+S43からなる群より選択される位置で少なくとも二つの(二つのような)置換を含むことが好ましい。より詳しく述べると、本発明の変種は、

からなる群より選択される少なくとも二つの(二つのような)置換、好ましくはL65Q、F71Y、K62EおよびS43Qからなる群より選択される少なくとも二つの(二つのような)置換、より好ましくはL65Q、K62E、およびS43Qからなる群より選択される少なくとも二つの(二つのような)置換を含んでもよい。特定の例には、L65Q+F71Y、L65Q+K62E、L65Q+S43Q、F71Y+K62E、F71Y+S43QおよびK62E+S43Q、特にL65Q+K62E、L65Q+S43QおよびK62E+S43Qが含まれる。
【0114】
本発明のなおさらに興味深い態様において、変種は、

、好ましくはK62+L65+F71、S43+L65+F71、S43+K62+L65、およびS43+K62+F71からなる群より選択される位置、特に、S43+K62+L65における置換のような、L39、I42、S43、K62、L65、F71、E82、およびF275からなる群より選択される位置において少なくとも三つの(三つのような)置換を含む。
【0115】
より詳しく述べると、本発明の変種は、L65Q、F71Y、K62EおよびS43Qからなる群より選択される少なくとも三つの(三つのような)置換を含んでもよい。特定の例には、L65Q+F71Y+K62E、L65Q+F71Y+S43Q、L65Q+K62E+S43Q、およびF71Y+K62E+S43Q、特にL65Q+K62E+S43Qが含まれる。
【0116】
本発明の変種は、hFVIIaまたはrhFVIIaと比較して凝血活性の増加(または凝血時間の短縮)を有する。本発明の好ましい態様において、変種の凝血形成に達するまでの時間(tvariant)と、hFVIIaまたはrhFVIIaの凝血形成に達するまでの時間(twt)の比は、本明細書に記述する「全血アッセイ」においてアッセイした場合、多くて0.9である。より好ましくは、比(tvariant/twt)は、0.7のような、多くて0.75であり、さらにより好ましくは比(tvariant/twt)は、多くて0.6であり、最も好ましくは、比(tvariant/twt)は、本明細書に記述する「全血アッセイ」においてアッセイした場合、多くて0.5である。
【0117】
本発明のさらに興味深い態様において、変種は、配列番号:1と比較して、アミノ酸改変(例えば、置換)1〜5個、例えばアミノ酸改変(例えば、置換)1〜3個のような、アミノ酸改変(例えば、置換)1〜10個を含む。
【0118】
例えば、変種は、下記の「Glaドメインにおける改変」と題する章で説明するように、Glaドメインにおいてなされた少なくとも一つのアミノ酸改変、および/または下記の「さらなる糖部分の導入」と題する章で説明するようにN-グリコシル化部位の導入に至る少なくとも一つのアミノ酸改変、および/またはTFPI結合親和性を減少させる少なくとも一つのアミノ酸改変を含んでもよい。後者の改変の例は、下記の「その他の改変」と題する章において記述されている。
【0119】
さらなる改変
上記のように、本発明のFVIIまたはFVIIa変種は、さらなる改変、特にFVIIまたはFVIIa分子にさらに有利な特性を付与するさらなる改変を含んでもよい。このように、上記の一つまたはそれ以上の置換、すなわちL39、I42、S43、K62、L65、F71、E82、F275H位の一つまたはそれ以上における置換の他に、変種は、少なくとも一つのさらなるアミノ酸改変、特に少なくとも一つのさらなるアミノ酸置換を含んでもよい。
【0120】
FVIIまたはFVIIaポリペプチドの構造および機能の多すぎる破壊を避けるため、本発明のFVIIまたはFVIIaポリペプチド変種は、典型的に、配列番号:1と少なくとも96%の同一性、例えば配列番号:1と少なくとも97%の同一性、配列番号:1と少なくとも98%の同一性、または配列番号:1と少なくとも99%の同一性のような、配列番号:1と少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。アミノ酸配列の同一性は、例えば、1999年6月のClustalWプログラム、バージョン1.8を用いて、デフォルトパラメータを用いて整列させた配列(Thompsonら、1994、「ClustalW:Improving the sensitivity of progressive multiple sequence alignment through sequence weighting, position-specific gap penalties and weight matrix choice」、Nucleic Acids Research, 22:4673〜4680)から、またはGENEDOCバージョン2.5(Nicholas, K.B.、Nicholas H.B. Jr., およびDeerfield, D.W. II、1997「GeneDoc:Analysis and Visualization of Genetic Variation」、EMBNEW. NEWS 4:14;Nicholas K.B. and Nicholas H.B. Jr., 1997「GeneDoc:Analysis and Visualization of Genetic Variation」)を用いて、PFAMファミリーデータベース、バージョン4.0(http://pfam.wustl.edu/)(Nucleic Acids Res. 1999、1月1日、27(1):260〜2)から簡便に決定される。
【0121】
Glaドメインにおける改変
本発明の興味深い態様において、変種はGlaドメインにおいて少なくとも一つのアミノ酸改変(少なくとも一つのアミノ酸置換および/または挿入のような)を含む。好ましくは、6、7、14、16、19、20、25、26、29、および35位には改変を行わない。
【0122】
如何なる特定の理論にも制限されることなく、凝血時間の増加は、活性化血小板の表面に存在する燐脂質膜に対するFVIIa分子の結合親和性の増強によって得られる可能性があると現在考えられている。この親和性の増強によって、他の凝固因子、特に第X因子に対して非常に近位に存在する活性化FVIIaポリペプチドのより高い局所濃度が得られると考えられる。このように、FXからFXaへの活性化率は、単にFXに対する活性化FVIIポリペプチドのモル比がより高いために、より高くなるであろう。次に、FXの活性化率の増加によって、より大量の活性化トロンビンが得られ、このようにフィブリンのクロスリンク速度はより高くなる。
【0123】
このように、本発明のこの局面に従う好ましい態様において、ポリペプチド変種は、その活性化型において、rhFVIIaポリペプチドと比較して増強された燐脂質膜結合親和性を有する。燐脂質膜結合親和性は、Nelsestuenら、Biochemistry 1977、30:10819〜10824に記載されるアッセイのような、当技術分野で既知の方法によって、または米国特許第6,017,882号の実施例1に記述されるように、測定してもよい。
【0124】
燐脂質膜結合親和性の増加に至るFVII Glaドメインにおける改変は、当技術分野において記述されている(例えば、国際公開公報第99/20767号および国際公開公報第00/66753号)。改変されるGlaドメインにおける特に興味深い位置は、P10、K32、D33、A34と共に、A3とF4のあいだのアミノ酸残基の挿入である。
【0125】
このように、本発明の好ましい態様において、変種は、上記の一つまたはそれ以上の改変の他に、P10、K32、D33、およびA34、ならびにその組み合わせからなる群より選択される位置での置換を含む。
【0126】
もう一つの興味深い態様において、該置換の少なくとも一つを、A3およびF4のあいだのアミノ酸残基の挿入と組み合わせる。
【0127】
特に好ましい位置は、P10およびK32であり、すなわち本発明の特に興味深い態様において、置換は、P10とK32のあいだでなされ、好ましくはP10Q+K32Eである。
【0128】
好ましくは、32位においてなされる置換はK32Eであり、10位でなされる置換はP10Q、33位でなされる置換はD33F、および34位でなされる置換はA34Eである。A3とF4のあいだに挿入されるアミノ酸残基は、好ましくは疎水性アミノ酸残基であり、特に挿入はA3AYである。本発明の興味深い態様において、変種は、以下のさらなる改変の少なくとも一つを含む:A3AY、P10Q、K32E、D33F、A34E、またはその組み合わせ。最も好ましくは、変種は、以下のさらなる改変の一つを含む:

【0129】
Glaドメイン外での改変
循環中のrhFVIIaの半減期は2.3時間であると、FDA参照番号第96-0597号の「NovoSeven(登録商標)承認に関する概要の基礎」において報告された。所望の治療または予防効果を得て維持するためには、比較的高用量および頻回投与が必要である。その結果、適切な用量の調節を得ることが難しく、頻回静脈内投与が必要であるために、患者の生活様式は制限される。
【0130】
循環中の半減期がより長くおよび/または生物学的利用率が増加した(静脈内投与した場合のrhFVIIaと比較して増加した曲線下面積のような)分子は、必要な投与回数を減少させるであろう。現在のrhFVIIa産物と頻回注射との関連、および同時に増強された治療効果が得られるより最適な治療FVIIaレベルを得る可能性を考慮すると、改善されたFVIIまたはFVIIa様分子が明らかに必要である。
【0131】
したがって、本発明のさらなる目的は、半減期が増加したおよび/または生物学的利用率が増加した(静脈内投与した場合に、rhFVIIaと比較して曲線下面積の増加のような)、および凝血活性が増加した改善されたFVIIまたはFVII分子(FVIIまたはFVIIa変種)を提供することである。
【0132】
したがって、本発明の興味深い態様において、本発明の変種はさらに、該結合基がGlaドメイン外に存在する位置に導入されている、非ポリペプチド部分に関して少なくとも一つの導入された結合基をさらに含む。
【0133】
このように、本発明の興味深い変種は、rhFVIIaと比較した場合に、その活性化型で静脈内投与した場合、特にラットに静脈内投与した場合に曲線下面積(AUCiv)の増加を生じる変種である。より詳しく述べると、本発明の興味深い変種は、特にラットに(静脈内)投与した場合に、その活性化型の該変種のAUCivとrhFVIIaのAUCivの比が、少なくとも1.5、例えば少なくとも1.75のような少なくとも1.25、より好ましくは少なくとも3のような少なくとも2、さらにより好ましくは少なくとも5のような少なくとも4である変種である。
【0134】
この作用は、rhFVIIaと比較して増加した機能的インビボ半減期および/または増加した血清半減期に対応する可能性がある。したがって、本発明のもう一つの興味深い態様において、その活性化型の変種の機能的インビボ半減期または血清半減期と、rhFVIIaの機能的インビボ半減期または血清半減期の比は、少なくとも1.25である。より好ましくは、その活性化型の変種の関連する半減期とrhFVIIaの関連する半減期の比は、少なくとも1.75、例えば少なくとも2のような少なくとも1.5であり、さらにより好ましくは少なくとも4、例えば少なくとも5のような少なくとも3である。
【0135】
タンパク質の循環中の半減期を増加させる一つの方法は、タンパク質の腎クリアランスを確実に減少させることである。これは、タンパク質に腎クリアランスの減少を付与することができる化学部分にタンパク質を結合させることによって行ってもよい。
【0136】
さらに、タンパク質に化学部分を結合させる、またはタンパク質分解に露出されるアミノ酸を置換することによって、タンパク質分解に至るタンパク質分解酵素との接触が有効に遮断される可能性がある。ポリエチレングリコール(PEG)は、治療タンパク質産物の調製において用いられているそのような化学物質の一つである。国際公開公報第98/32466号は、他の多くのタンパク質の中でも、FVIIをPEG化してもよいことを示唆しているが、この点に関してさらに如何なる情報も含まない。国際公開公報第01/58935号は、中でも半減期が増加したFVIIまたはFVIIa分子を開発するための新規戦略を開示する。
【0137】
AUCiv、機能的インビボ半減期および/または血清半減期の増加に至る適した多くの改変が、国際公開公報第01/58935号に開示されている。国際公開公報第01/58935号に開示される変種は、改善されたFVIIまたはFVIIa分子を開発するための全般的な新規戦略の結果である。国際公開公報第01/58935号に記述される特定の改変は、本明細書において既に記述した改変と組み合わせると都合がよい可能性がある。
【0138】
ポリペプチド変種はまた、ポリペプチド変種の触媒部位を阻害するためのセリンプロテアーゼ阻害剤に結合させてもよい。または、得られた変種を不活性にするために、触媒部位(S344、D242、およびH193)に存在する一つまたはそれ以上のアミノ酸残基を変異させてもよい。そのような変異の一例にはS344Aが含まれる。
【0139】
非ポリペプチド部分の結合基を含む導入されたアミノ酸残基は、選択される非ポリペプチド部分の性質に基づいて、およびほとんどの場合、ポリペプチド変種と非ポリペプチド変種との結合が得られる方法に基づいて選択される。例えば、非ポリペプチド部分がポリエチレングリコールまたはポリアルキレンオキシド由来分子のようなポリマー分子である場合、結合基を含むアミノ酸残基は、リジン、システイン、アスパラギン酸、グルタミン酸、ヒスチジン、およびチロシンからなる群より選択してもよく、好ましくはリジン、システイン、アスパラギン酸およびグルタミン酸、より好ましくはリジンおよびシステイン、特にシステインから選択される。
【0140】
非ポリペプチド部分の結合基を親ポリペプチドに導入する場合、改変されるアミノ酸残基の位置は、好ましくは親FVIIまたはFVIIaポリペプチドの表面に存在し、より好ましくは、その側鎖の少なくとも25%(本明細書に記述の実施例1に定義するように)が表面に露出される、好ましくはその側鎖の少なくとも50%が表面に露出されるアミノ酸残基によって占有される。そのような位置は、本明細書の材料および方法の章において記述されるように、hFVIIまたはhFVIIa分子の3D構造の分析に基づいて同定されている。
【0141】
さらに、本発明のこの局面に従う改変される位置は、好ましくは組織因子結合部位の外部、および/または活性部位領域の外部、および/または活性部位結合裂の隆起の外部に存在するFVIIまたはFVIIa分子の一部から選択される。これらの部位/領域は、本明細書における実施例1において同定される。しかし、特定の状況において、例えば、不活性ポリペプチド変種が望ましい場合、そのような領域において、または近位で改変を行うことは都合がよいかも知れないことを強調しなければならない。例えば、N-グリコシル化部位の結合基のような非ポリペプチド部分の一つまたはそれ以上の結合群を、FVIIまたはFVIIa分子の活性部位領域または活性部位結合裂の隆起に導入することが都合がよいかも知れないと企図される。活性部位領域、組織因子結合部位、および活性部位結合裂の隆起は、本明細書の実施例1において定義され、以下の残基によって構成される:

【0142】
結合基の最適な分布を決定するために、hFVIIまたはhFVIIaポリペプチドの3D構造に基づいて、FVIIまたはFVIIaポリペプチドの表面に存在するアミノ酸残基間の距離を計算する。より詳しく述べると、そのような結合基を含むアミノ酸残基のCB's間の距離、または結合基を含む一つのアミノ酸残基の官能基(リジンに関してNZ、アスパラギン酸に関してCG、グルタミン酸に関してCD、システインに関してSG)と結合基を含むもう一つのアミノ酸残基のCBとの距離を決定する。グリシンの場合、CBの代わりにCAが用いられる。本発明のポリペプチド変種のFVIIまたはFVIIa部分において、該距離はいずれも、不均一な結合を回避または減少させるために、好ましくは8Åより大きく、特に10Åより大きい。
【0143】
結合基を導入する場合、そのような基を含むアミノ酸残基をその位置に、好ましくはそのような位置を占めるアミノ酸残基の置換によって導入する。
【0144】
FVIIまたはFVIIaポリペプチドにおいて存在して、結合に利用できる結合基の正確な数は、結合によって得ることが望まれる作用に依存する。得られる作用は、例えば、結合の性質および程度に依存する(例えば、非ポリペプチド部分の同一性、それらが結合されるべき場所または結合が回避されるべき場所等での、ポリペプチド変種を結合させるために望ましいまたは可能な非ポリペプチド部分の数)。
【0145】
機能的インビボ半減期は中でも、タンパク質の分子量に依存し、このように半減期の増加を提供するために必要な結合基の数は、疑問となる非ポリペプチド部分の分子量に依存する。一つの態様において、本発明のポリペプチド変種は、Laemmli, U.K.、Nature 227(1970)680〜85に従うSDS-PAGEによって測定すると、分子量少なくとも67 kDa、特に少なくとも70 kDaを有する。FVIIそのものの分子量は約53 kDaであり、したがって、所望の効果を得るためには、さらに10〜20 kDaが必要である。これは、例えば、10 kDa PEG分子2〜4個を結合させることによって提供してもよく、またはそうでなければ本明細書に記述するように提供してもよい。
【0146】
親FVIIまたはFVIIaポリペプチドにおいてGlaドメイン外部で改変されるアミノ酸残基(配列番号:1に示されるアミノ酸配列と比較して)の総数は、典型的に、10を超えないであろう。好ましくは、FVIIまたはFVIIa変種は、配列番号:1に示すアミノ酸残基46〜406位からのアミノ酸残基1〜10個、典型的にアミノ酸残基1〜8個または2〜8個、例えば、アミノ酸残基1〜4個または1〜3個のようなアミノ酸残基1〜5個または2〜5個、例えば、配列番号:1に示すアミノ酸残基46〜406位のアミノ酸残基1、2、または3個が異なるアミノ酸配列を含む。
【0147】
同様に、本発明のポリペプチド変種は、(さらなる)非ポリペプチド部分1〜10個、典型的に(さらなる)非ポリペプチド部分1〜8個または2〜8個、好ましくは(さらなる)非ポリペプチド部分1〜4個または1〜3個のような(さらなる)非ポリペプチド部分1〜5個または2〜5個、例えば(さらなる)非ポリペプチド部分1、2、または3個を含んでもよい。そのようなさらなる非ポリペプチド部分は、Glaドメイン外に存在する結合基に共有結合すると理解されるであろう。
【0148】
さらなる糖部分の導入
本発明の好ましい態様において、グリコシル化部位、特にN-グリコシル化部位のような、インビボグリコシル化部位のような糖部分の結合基は、Glaドメインの外部に存在する位置に導入されている。
【0149】
本発明の状況において用いる場合、「天然に存在するグリコシル化部位」という用語は、N145、N322、S52、およびS60位でのグリコシル化部位を含む。同様に、「天然に存在するO-グリコシル化部位」という用語には、S52およびS60位が含まれるが、「天然に存在するN-グリコシル化部位」という用語には、N145およびN322位が含まれる。
【0150】
このように、本発明の非常に興味深い態様において、非ポリペプチド部分は、糖部分であり、導入された結合基はグリコシル化部位、好ましくは、O-グリコシル化部位またはN-グリコシル化部位のようなインビボグリコシル化部位、特にN-グリコシル化部位である。典型的に、グリコシル化部位、特にN-グリコシル化部位1〜10個、好ましくはグリコシル化部位、特にN-グリコシル化部位1〜8個、1〜6個、1〜4個、または1〜3個がGlaドメインの外部に存在する位置に導入されている。例えば、グリコシル化部位、特にN-グリコシル化部位1、2、または3個が、Glaドメインの外部に、好ましくは置換によって導入されている。同様に、変種は、導入された糖部分1〜10個、好ましくは導入された糖部分1〜8個、1〜6個、1〜4個、または1〜3個を含んでもよい。例えば、変種は、導入された糖部分1、2、または3個を含んでもよい。
【0151】
一つまたはそれ以上のグリコシル化部位を含むポリペプチド変種を調製するために、ポリペプチド変種は、グリコシル化部位、またはインビトログリコシル化を受ける部位で糖(オリゴ糖)部分を結合することができる宿主細胞において発現されなければならないと理解されるであろう。グリコシル化する宿主細胞の例は、下記の「糖部分の共役」と題する章においてさらに示す。
【0152】
グリコシル化部位、特にN-グリコシル化部位を導入してもよい位置の例には、その側鎖の少なくとも50%が表面に露出している(本明細書における実施例1に定義するように)アミノ酸残基を含む位置のような、その側鎖の少なくとも25%が表面に露出している(本明細書における実施例1に定義するように)アミノ酸残基を含む位置が含まれるがこれらに限定されない。位置は、好ましくは組織因子結合部位および/または活性部位領域および/または活性部位裂の隆起の外部に存在する分子の一部から選択される。これらの部位/領域は、本明細書の実施例1において同定されている。「その側鎖の少なくとも25%(または少なくとも50%)が表面に露出している」という用語をN-グリコシル化部位の導入に関連して用いる場合、この用語は、糖部分が実際に結合する位置でのアミノ酸側鎖の表面到達性を指す。多くの場合、糖部分が実際に結合するアスパラギン残基に対して+2の位置にセリンまたはトレオニン残基を導入する必要があり(当然、この位置が、セリンまたはトレオニン残基によって既に占有されていない場合)、セリンまたはトレオニン残基が導入されるこれらの位置は、埋もれる、すなわち表面に露出するのはその側鎖の25%未満である。
【0153】
N-グリコシル化部位を作製するそのような置換の特異的および好ましい例には、

およびその組み合わせからなる群より選択される置換が含まれる。より好ましくは、N-グリコシル化部位は、

およびその組み合わせからなる群より選択される置換によって導入される。さらにより好ましくは、N-グリコシル化部位は、T106N、A175T、I205T、V253N、T267N+S269Tおよびその組み合わせからなる群より選択される置換によって導入される。最も好ましくは、N-グリコシル化部位は、T106N、I205T、V253N、T267N+S269Tおよびその組み合わせからなる群より選択される置換によって導入される。
【0154】
一つの態様において、置換によって一つのみのN-グリコシル化部位が導入されている。もう一つの態様において、二つまたはそれ以上(二つのような)N-グリコシル化部位が置換によって導入されている。二つのN-グリコシル化部位を作製する好ましい置換の例には、


からなる群より選択される置換が含まれる。より好ましくは、置換は、


からなる群より選択され、さらにより好ましくは

からなる群より選択される。
【0155】
なおさらなる態様において、三つまたはそれ以上(三つのような)のN-グリコシル化部位が置換によって導入されている。三つのN-グリコシル化部位を作製する好ましい置換の例には、

からなる群より選択される置換が含まれる。最も好ましくは、置換は

からなる群より選択される。
【0156】
上記のように、N-グリコシル化部位は、組織因子結合部位の一部を形成せず、または本明細書において定義される活性部位領域もしくは活性部位結合裂の隆起の一部も形成しない位置で導入されることが好ましい。そのようなグリコシル化変種は、本明細書において既に定義されるように、活性なポリペプチド変種のクラスに主に属するであろうと考えられる。
【0157】
上記の章において言及した如何なる改変も組み合わせてもよいと理解されるであろう。
【0158】
その他の改変
本発明のさらなる態様において、FVIIまたはFVIIa変種は、上記の章で記述した改変の他にも、国際公開公報第02/22776号において記述される変異のような、ポリペプチドの固有の活性を増加させることが知られている変異を含んでもよい。
【0159】
好ましい置換の例には、V158D、E296D、M298Q、L305V、およびK337Aからなる群より選択される置換が含まれる。より好ましくは、該置換は、

からなる群より選択される。
【0160】
本発明のさらなる態様において、FVIIまたはFVIIa変種は、上記の章で記述した改変の他にも、TFPIによる阻害の減少を引き起こす変異を含んでもよい。一つの例には、Neuenschwanderら、Biochemistry 1995、34:8701〜8707によって開示された置換K341Qが含まれる。その他の例には、D196K、D196N、G237L、G237GAA、およびその組み合わせが含まれる。
【0161】
既に上記のように、変種は、保存的アミノ酸置換を含んでもよい。
【0162】
本発明の最も好ましい変種の特定の例
FVIIまたはFVIIaの最も好ましい変種の特定の例を下記に示す:

【0163】
上記の好ましい変種の如何なるものも、Glaドメインの外部で行われる少なくとも一つのさらなる改変と組み合わせてもよいと理解されるであろう。特に、上記の好ましい変種の如何なるものも、

からなる群より選択される置換と組み合わせてもよい。
【0164】
非ポリペプチド部分
本開示に基づいて、当業者は、N-グリコシル化部位に関して先に記述したアプローチと同じアプローチを用いて、他の結合基を含むアミノ酸残基を置換によって親ポリペプチドに導入してもよいことを承知していると思われる。例えば、酸性基(グルタミン酸またはアスパラギン酸)、チロシンまたはリジンを含む一つまたは複数のアミノ酸残基を上記の位置に導入してもよい。特に、一つまたは複数のシステイン残基を上記の位置に導入してもよい。
【0165】
上記でさらに示されるように、結合型変種の非ポリペプチド部分は、好ましくはポリマー分子、親油性化合物、糖部分(インビボグリコシル化によって)および有機誘導体化剤からなる群より選択される。これらの物質は全て、変種ポリペプチドに所望の特性、特にAUCivの増加、機能的インビボ半減期の増加および/または血漿半減期の増加を付与する可能性がある。変種ポリペプチドは通常、唯一のタイプの非ポリペプチド部分に結合するが、二つまたはそれ以上の異なるタイプの非ポリペプチド部分、例えばポリマー分子と糖部分、親油性基と糖部分、有機誘導体化剤と糖部分、親油性基とポリマー分子等に結合してもよい。二つまたはそれ以上の異なる非ポリペプチド部分との結合は、同時または連続的に行ってもよい。
【0166】
本発明の結合型変種を調製する方法
以下の「ポリマー分子との結合」、「糖部分との結合」、「有機誘導体化物質との結合」、および「親油性化合物との結合」の章において、特定のタイプの非ポリペプチド部分との結合を記述する。一般的に、本発明に従う結合型変種は、変種ポリペプチドの発現のために行われる条件で適当な宿主細胞を培養すること、および変種ポリペプチドを回収することによって作製してもよく、a)変種ポリペプチドは少なくとも一つのN-またはO-グリコシル化部位を含み、宿主細胞はインビボグリコシル化を行うことができる真核宿主細胞である、および/またはb)変種ポリペプチドは、インビトロで非ポリペプチド部分との結合を受ける。
【0167】
結合は、結合される非ポリペプチド部分の数、そのような分子の大きさおよび形状(例えば、それらが直鎖状であるか分岐であるか)、ならびにポリペプチドに存在する1つ(または複数)の結合部位に関して最適な分子を産生するようにデザインしなければならないと理解されると思われる。用いられる非ポリペプチド部分の分子量は、例えば、得られる所望の効果に基づいて選択してもよい。例えば、結合の主な目的が、高い分子量(例えば、腎クリアランスを減少させるために)を有する結合型変種を得ることである場合、通常、所望の分子量を得るために可能な限り小数の高分子量非ポリペプチド部分と結合することが望ましい。高い程度の遮へいが望ましい場合、これは、非常に多数の低分子量非ポリペプチド部分(例えば、分子量300 Da〜2 kDaのような分子量約300 kDa〜約5 kDaを有する)を用いることによって得てもよい。
【0168】
ポリマー分子との結合
変種ポリペプチドにカップリングされるポリマー分子は、天然または合成ホモポリマーまたはヘテロポリマーのような任意の適したポリマー分子であってもよく、典型的に分子量約500〜20,000 Daのような、分子量の範囲が約300〜100,000 Da、より好ましくは約500〜15,000 Daの範囲、さらにより好ましくは約3〜10 kDaの範囲のような約2〜12 kDaの範囲の分子である。本明細書において特定の分子量に関連して「約」という用語を用いる場合、「約」という用語は、通常、おおよその平均分子量を示し、所定のポリマー調製物において特定の分子量の分布が存在するという事実を反映する。
【0169】
ホモポリマーの例には、ポリオール(すなわち、ポリ-OH)、ポリアミン(すなわち、ポリ-NH2)、およびポリカルボン酸(すなわちポリ-COOH)が含まれる。ヘテロポリマーは、ヒドロキシル基およびアミン基のような異なるカップリング基を含むポリマーである。
【0170】
適したポリマー分子の例には、ポリエチレングリコール(PEG)およびポリプロピレングリコール(PPG)のようなポリアルキレングリコール(PAG)を含むポリアルキレンオキシド(PAO)、分岐PEGs、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリカルボキシレート、ポリ-(ビニルピロリドン)、ポリエチレン-コ無水マレイン酸、ポリスチレン-コ無水マレイン酸、カルボキシメチルデキストランを含むデキストラン、または免疫原性を減少させるおよび/または機能的インビボ半減期および/または血清半減期を増加させるために適した他の任意の生体ポリマーからなる群より選択されるポリマーが含まれる。ポリマー分子のもう一つの例は、ヒトアルブミンまたはもう一つの大量に存在する血漿タンパク質である。一般的に、ポリアルキレングリコールに由来するポリマーは生体適合性、非毒性、非抗原性、非免疫原性であり、様々な水溶性特性を有し、生きている生物から容易に排泄される。
【0171】
PEGは、例えばデキストランのような多糖類と比較すると、クロスリンクすることができる反応基がごく少数であることから、好ましいポリマー分子である。特に、一官能基PEG、例えばメトキシポリエチレングリコール(mPEG)は、そのカップリング化学が比較的単純であることから(ポリペプチド上の結合基を結合するために使用できる反応基は1個に過ぎない)重要である。その結果、クロスリンクのリスクが消失すると、得られた結合型変種はより均一となり、ポリマー分子と変種ポリペプチドとの反応はより容易に制御される。
【0172】
1つ(または複数)のポリマー分子を変種ポリペプチドに共有結合させるために、ポリマー分子のヒドロキシル末端基は、活性型で、すなわち反応官能基(その例には一級アミノ基、ヒドラジド(HZ)、チオール、コハク酸塩(SUC)、スクシニミジルスクシネート(SS)、スクシニミジルスクシンアミド(SSA)、スクシニミジルプロピオネート(SPA)、スクシニミジルブチレート(SBA)、スクシニミジルカルボキシメチレート(SCM)、ベンゾトリアゾールカーボネート(BTC)、N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)、アルデヒド、ニトロフェニルカーボネート(NPC)、およびトレシレート(TRES)が含まれる)を有して提供されなければならない。適した活性化ポリマー分子は、例えばシェアウォーターポリマーズインク(Sheawater Polymers, Inc.)、ハンツビル、アリゾナ州、アメリカまたはポリマスクファーマシューティカルズ(PolyMASC Pharmaceuticals plc、イギリス)から市販されている。
【0173】
または、ポリマー分子は、例えば国際公開公報第90/13540号に開示されるように当技術分野で既知の慣例的な方法によって活性化することができる。本発明において用いるための活性化された直線または分岐ポリマー分子の特定の例は、シェアウォーターポリマーズインク、1997年および2000年のカタログ(参照として本明細書に組み入れられる、Functionalized Biocompatible Polymers for Research and Pharmaceuticals、Polyethylene Glycol and Derivatives)に記述されている。
【0174】
活性化PEGポリマーの特定の例には、以下の直線状PEGsが含まれる。NHS-PEG(例えば、SPA-PEG、SSPA-PEG、SBA-PEG、SS-PEG、SSA-PEG、SC-PEG、SG-PEG、およびSCM-PEG)、およびNOR-PEG、BTC-PEG、EPOX-PEG、NCO-PEG、NPC-PEG、CDI-PEG、ALD-PEG、TRES-PEG、VS-PEG、IODO-PEG、およびMAL-PEG、ならびにPEG2-NHSのような分岐PEGs、ならびにその双方が参照として本明細書に組み入れられる、米国特許第5,932,462号および米国特許第5,643,575号に開示されるPEGが含まれる。さらに、参照として本明細書に組み入れられる以下の出版物は、有用なポリマー分子および/またはPEG化化学を開示している:米国特許第5,824,778号、米国特許第5,476,653号、国際公開公報第97/32607号、欧州特許第0 229 108号、欧州特許第0 402 378号、米国特許第4,902,502号、米国特許第5,281,698号、米国特許第5,122,614号、米国特許第5,219,564号、国際公開公報第92/16555号、国際公開公報第94/04193号、国際公開公報第94/14758号、国際公開公報第94/17039号、国際公開公報第94/18247号、国際公開公報第94/28024号、国際公開公報第95/00162号、国際公開公報第95/11924号、国際公開公報第95/13090号、国際公開公報第95/33490号、国際公開公報第96/00080号、国際公開公報第97/18832号、国際公開公報第98/41562号、国際公開公報第98/48837号、国際公開公報第99/32134号、国際公開公報第99/32139号、国際公開公報第99/32140号、国際公開公報第96/40791号、国際公開公報第98/32466号、国際公開公報第95/06058号、欧州特許第0 439 508号、国際公開公報第97/03106号、国際公開公報第96/21469号、国際公開公報第95/13312号、欧州特許第0 921 131号、米国特許第5,736,625号、国際公開公報第98/05363号、欧州特許第0 809 996号、米国特許第5,629,384号、国際公開公報第96/41813号、国際公開公報第96/07670号、米国特許第5,473,034号、米国特許第5,516,673号、欧州特許第0 605 963号、米国特許第5,382,657号、欧州特許第0 510 356号、欧州特許第0 400 472号、欧州特許第0 183 503号、および欧州特許第0 154 316号。
【0175】
システイン残基とのカップリングにとって特に好ましい活性化PEGポリマーの特定の例には、以下の直線状PEGsが含まれる。ビニルスルホン-PEG(VS-PEG)、好ましくはビニルスルホン-mPEG(VS-mPEG);マレイミド-PEG(MAL-PEG)、好ましくはマレイミド-mPEG(MAL-mPEG)、およびオルトピリジル-ジスルフィド-PEG(OPSS-PEG)、好ましくはオルトピリジル-ジスルフィド-mPEG(OPSS-mPEG)。典型的にそのようなPEGまたはmPEGポリマーは、大きさが約5 kDa、約10 kDa、約12 kDa、または約20 kDaであると思われる。
【0176】
ポリペプチド変種と活性化ポリマー分子との結合は、任意の通常の方法、例えば下記の参照文献(同様に、ポリマー分子の活性化にとって適した方法も記述する)に記載される方法を用いることによって行われる:HarrisおよびZalipsky編、「Poly(ethylene glycol)Chemistry and Biological Applications」、AZC、ワシントン;R.F. Taylor(1991)、「Protein immobilisation. Fundamental and applications」、マーセルデッカー、ニューヨーク;S.S. Wong(1992)、「Chemistry of Protein Conjugation and Crosslinking」、CRC出版、ボカレイトン;G.T. Hermansonら(1993)、「Immobilized Affinity Ligand Techniques.」、アカデミック出版、ニューヨーク。
【0177】
当業者は、用いる活性化法および/または結合化学が、変種ポリペプチド(その例は上記に示す)の1つ(または複数)の結合基のみならず、ポリマーの官能基(例えば、アミン、ヒドロキシル、カルボキシル、アルデヒド、スルフィドリル、スクシニミジル、マレイミド、ビニスルホンまたはハロアセテートである)に依存することを承知していると思われる。PEG化は、変種ポリペプチド上で使用できる全ての結合基との結合に対して行ってもよく(すなわち、ポリペプチドの表面に露出された結合基)、または一つもしくはそれ以上の特異的結合基、例えば、米国特許第5,985,265号に記載のN末端アミノ基もしくはシステイン残基に対して行ってもよい。さらに、結合は、一段階でまたは段階的に行ってもよい(例えば、国際公開公報第99/55377号に記載されるように)。
【0178】
システイン残基に対するPEG化に関して(上記を参照されたい)、FVIIまたはFVIIaは通常、PEG化の前にジチオスレイトール(DDT)のような還元剤によって処理する。還元剤はその後、脱塩のような任意の通常の方法によって除去する。PEGのシステイン残基への結合は典型的に、温度4℃〜25℃、pH 6〜9の適した緩衝液において16時間までの期間起こる。
【0179】
PEG化は、結合されるPEG分子数、そのような分子の大きさおよび形状(例えば、直線状であるか分岐であるか)、ならびに変種ポリペプチドにおける1つ(または複数)の結合部位に関して最適な分子を産生するようにデザインされると理解されると思われる。用いるポリマーの分子量は、例えば得られる所望の効果に基づいて選択してもよい。
【0180】
タンパク質上の一つの結合基のみに対する結合に関連して(例えば、N末端アミノ基)、直線または分岐であってもよいポリマー分子は高い分子量、好ましくは分子量約15〜25 kDa、例えば約20 kDaのような約10〜25 kDaを有することが都合がよい。
【0181】
通常、ポリマーの結合は、使用できる可能な限り多くのポリマー結合基とポリマー分子とを反応させることを目的とする条件で行われる。これは、ポリペプチドに対してポリマーの適したモル過剰によって行われる。典型的に、活性化ポリマー分子対ポリペプチドのモル比は、約200:1まで、または約100:1までのような約1000:1である。しかし場合によっては、比は、最適な反応を得るために約50:1、10:1、5:1、2:1、または1:1までのようにいくぶん低くてもよい。
【0182】
ポリマー分子をリンカーを通してポリペプチドにカップリングさせることも同様に本発明に従って企図される。適したリンカーは、当業者に周知である。好ましい例は、塩化シアヌール(Abuchowskiら、J. Biol. Chem. 1977:252:3578〜3581;米国特許第4,179,337号;Shaferら、J. Polym. Sci. Polym. Chem. Ed. 1986:24:375〜378)である。
【0183】
結合後、残っている活性化ポリマー分子は、当技術分野において既知の方法に従って、例えば反応混合物に一級アミンを加えることによってブロックして、得られた不活化ポリマー分子を適した方法によって除去する。
【0184】
状況に応じて、例えば、変種ポリペプチドのアミノ酸配列、用いられる活性化PEG化合物の特性、およびPEG対ポリペプチドのモル比を含む特異的PEG化条件に応じて、PEG化の程度が変化してもよく、一般に、PEG対変種ポリペプチドの比が高くなればなるほど、PEG化の程度が高くなることが理解されよう。しかし、任意の所定のPEG化プロセスから得られたPEG化変種ポリペプチドは、通常、わずかに異なる程度のPEG化を有する結合型ポリペプチド変種の確率論的分布を含むと思われる。
【0185】
糖部分との結合
一つまたは複数のグリコシル化部位を含むFVII分子のインビボグリコシル化を得るために、変種ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を、グルコシル化する真核細胞発現宿主に挿入しなければならない。発現宿主細胞は、真菌(糸状菌または酵母)、昆虫もしくは動物細胞、またはトランスジェニック植物細胞から選択してもよい。一つの態様において、宿主細胞はCHO細胞、BHKもしくはHEK、例えばHEK 293細胞のような哺乳類細胞、またはSF9細胞のような昆虫細胞、または出芽酵母(S. cerevisiae)もしくはピチア・パストリス(Pichia pastoris)のような酵母細胞、または先に言及した任意の宿主細胞である。
【0186】
糖部分(デキストランのように)の、変種ポリペプチドのアミノ酸残基への共有結合インビトロカップリングも同様に、例えば国際公開公報第87/05330号およびAplinら、CRC Crit. Rev. Biochem. 1981:259〜306に記述されるように用いてもよい。糖部分またはPEGのタンパク質およびペプチド結合Gln残基へのインビトロカップリングは、トランスグルタミナーゼ(TGアーゼ)によって行うことができる。トランスグルタミナーゼは、いわゆるクロスリンク反応においてタンパク質およびペプチド結合Gln残基へのドナーアミン基の転位を触媒する。ドナーアミン基は、リジン残基におけるε-アミノ基のようにタンパク質またはペプチド結合であってもよく、または小さいもしくは大きい有機分子の一部となりうる。TGアーゼ触媒クロスリンクにおけるアミノ供与体として機能する小さい有機分子の例は、プトレッシン(1,4-ジアミノブタン)である。TGアーゼ触媒クロスリンクにおけるアミノ供与体として機能するより大きい有機分子の例は、アミン含有PEG(Satoら、Biochemistry 1996:35:13072〜13080)である。
【0187】
TGアーゼは一般的に、非常に特異的な酵素であり、タンパク質表面上に露出した全てのGln残基が、必ずしもアミノ含有物質とのTGアーゼ触媒クロスリンクに到達できるわけではない。反対に、本来TGアーゼの基質として機能するGln残基はごく少数であるが、Gln残基が良好なTGアーゼ基質であることを左右する正確なパラメータはなおも不明である。このように、タンパク質をTGアーゼ触媒クロスリンク反応に対して感受性があるようにするために、しばしば、TGアーゼ基質として非常に良好に機能することが知られているアミノ酸配列の枝を都合のよい位置に付加することが必須である。いくつかのアミノ酸配列、例えば、サブスタンスP、エラフィン、フィブリノーゲン、フィブロネクチン、α2-プラスミン阻害剤、α-カゼインおよびβ-カゼインが、優れた天然のTGアーゼ基質である、またはこれを含むことが知られている。
【0188】
有機誘導体化物質との結合
変種ポリペプチドの共有結合改変は、変種ポリペプチドの一つまたは複数の結合基を有機誘導体化物質に反応させることによって行ってもよい。適した誘導体化物質および方法は当技術分野で周知である。例えば、システイニル残基は最も一般的に、クロロ酢酸、またはクロロアセトアミドのようなα-ハロアセテート(および対応するアミン)に反応して、カルボキシメチルまたはカルボキシアミドメチル誘導体を生じる。システイニル残基も同様に、ブロモトリフルオロアセトン、α-ブロモ-β-(4-イミドゾイル)プロピオン酸、クロロアセチルホスフェート、N-アルキルマレイミド、3-ニトロ-2-ピリジルジスルフィド、メチル2-ピリジルジスルフィド、p-塩化水銀ベンゾエート、2-塩化水銀-4-ニトロフェノール、またはクロロ-7-ニトロベンゾ-2-オキサ-1,3-ジアゾールとの反応によって誘導体化される。ヒスチジル残基は、ヒスチジル側鎖に対して比較的特異的であるジエチルピロカーボネートとpH 5.5〜7.0での反応によって誘導体化される。パラ-ブロモフェナシルブロミドも同様に有用である。反応は、好ましくはpH 6.0で0.1 Mカコジル酸ナトリウム中で行われる。リジニルおよびアミノ末端残基は、コハク酸または他のカルボン酸無水物と反応する。これらの物質による誘導体化は、リジニル残基の電荷を逆転させる作用を有する。α-アミノ含有残基を誘導体化するために適した他の試薬には、メチルピコリミデートのようなイミドエステル、ピリドキサルホスフェート、ピリドキサル、クロロ水素化ホウ素、トリニトロベンゼンスルホン酸、O-メチルイソウレア、2,4-ペンタンジオン、およびグリオキシレートとのトランスアミナーゼ触媒反応が含まれる。アルギニル残基は、一つまたはいくつかの通常の試薬、中でもフェニルグリオキサル、2,3-ブタンジオン、1,2-シクロヘキサンジオン、およびニンヒドリンとの反応によって改変される。アルギニン残基の誘導体化は、グアニジン官能基のpKaが高いために、反応をアルカリ条件で行う必要がある。
【0189】
さらに、これらの試薬は、リジンのグループと反応するのみならず、アルギニングアニジノ基とも反応する可能性がある。カルボキシル側鎖(アスパルチルまたはグルタミル)は、カルボジイミド(R-N=C=N-R')との反応によって選択的に改変され、式中、RおよびR'は、1-シクロヘキシル-3-(2-モルフォリニル-4-エチル)カルボジイミドまたは1-エチル-3-(4-アゾニア-4,4-ジメチルペンチル)カルボジイミドのような異なるアルキル基である。さらに、アスパルチルおよびグルタミル残基は、アンモニウムイオンとの反応によってアスパラギニルおよびグルタミニル残基に変換される。
【0190】
親油性化合物との結合
変種ポリペプチドおよび親油性化合物は、互いに直接またはリンカーを用いて結合させてもよい。親油性化合物は、飽和または不飽和脂肪酸、脂肪酸ジケトン、テルペン、プロスタグランジン、ビタミン、カロチノイド、もしくはステロイドのような天然の化合物、または一つもしくはそれ以上のアルキル、アリール、アルケニル、もしくは他の多数の不飽和化合物を有する炭素酸、アルコール、アミン、およびスルホン酸のような合成化合物であってもよい。選択的にリンカーを通しての変種ポリペプチドと親油性化合物との結合は、例えばBodanszky、Peptide Synthesis、ジョンウィリー、ニューヨーク、1976および国際公開公報第96/12505号に記載されるように、当技術分野で既知の方法に従って行ってもよい。
【0191】
セリンプロテアーゼ阻害剤の結合
セリンプロテアーゼ阻害剤の結合は、国際公開公報第96/12800号に記述される方法に従って行うことができる。
【0192】
タグを付けたポリペプチドの結合
もう一つの態様において、ポリペプチド変種は、タグ、すなわちアミノ酸残基1〜20個のような典型的に1〜30個で構成されるアミノ酸配列またはペプチド枝との融合タンパク質として発現される。迅速かつ容易な精製を可能にするのみならず、タグは、タグをつけたポリペプチド変種と非ポリペプチド部分との結合を得るための簡便なツールである。特に、タグは、タグを付けたポリペプチド変種をタグを通して固定することができるマイクロタイタープレートまたは常磁性ビーズのような他の担体において結合を得るために用いてもよい。例えば、マイクロタイタープレートにおけるタグをつけたポリペプチド変種との結合によって、タグを付けたポリペプチド変種を培養ブロス(原則として如何なる精製も行わずに)から直接マイクロタイタープレートに固定して、結合に供することができるという長所を有する。それによって、プロセスの段階の総数(発現から結合)を減少させることができる。さらに、タグは、スペーサー分子として機能してもよく、結合される固定ポリペプチド変種に対する到達性の改善を保証する。タグをつけたポリペプチド変種を用いる結合は、本明細書に開示する非ポリペプチド部分の如何なるものに対してであってもよく、例えばPEGのようなポリマー分子に対する結合であってもよい。
【0193】
用いる特定のタグの同一性は、タグがポリペプチド変種と共に発現されることができて、適した表面または担体材料に固定することができる限り、重要ではない。多くの適したタグが、例えばデンマークのユニザイム・ラボラトリーズ(Unizyme Laboratories)から市販されている。ポリペプチド変種からのタグのその後の切断は、市販の酵素を用いて行ってもよい。
【0194】
本発明のFVII/FVIIa変種の不活化
本発明のもう一つの興味深い態様において、本明細書に開示の変種を不活化してもよい。不活化型は、TFとの結合に関して野生型FVIIまたはFVIIaと競合することができ、凝血活性を阻害することができることから、そのような不活化変種は非常に強力な組織因子アンタゴニストであろうと考えられる。このように、もう一つの局面において、本発明は、本明細書に記述のその不活化型のFVII/FVIIa変種と共に薬剤として用いるためのそのような不活化FVII/FVIIa変種に関する。より詳しく述べると、本発明の不活化変種は、哺乳類におけるFVIIa/TF-関連疾患または障害を治療または予防する薬剤を製造するために用いてもよい。例えば、本発明の不活化変種は、敗血症患者、深部静脈血栓症患者、心筋感染症(myocardial infection)または血栓発作のリスクを有する患者、肺動脈塞栓症、急性冠血管症候群(心筋梗塞および不安定狭心症)患者、冠血管心手術を受ける患者、血管形成術を受ける患者の心事象およびレストノシス(restonosis)の予防、末梢血管疾患患者のような、高凝固状態にある患者の予防または治療のような、抗凝固活性が望ましい疾患を治療または予防する薬剤を製造するために用いてもよい。本発明の不活化変種はまた、呼吸疾患、腫瘍の増殖、および転移を治療する薬剤を製造するために用いてもよい。同様に、本発明の不活化変種は、そのような不活化結合体または組成物の有効量をそれを必要とする哺乳類に投与することを含む、FVIIa/TF関連疾患または障害(上記の疾患または障害の一つまたはそれ以上のような)を有する哺乳類を治療する方法において用いてもよい。
【0195】
本明細書において用いられるように、本発明の変種に関連して用いる場合の「不活化」という用語は、本明細書に記述の「全血アッセイ」において測定した場合にhFVIIAまたはrhFVIIaの凝血活性の5%未満を有する変種を意味すると意図される。
【0196】
本明細書に記述の変種は、当技術分野で周知の方法によって不活化してもよい。例えば、活性なFVIIまたはFVIIaポリペプチドは、国際公開公報第96/12800号に記述される方法に従って、αアミノ基I153をカルバミル化することによって、またはポリペプチドをセリンプロテアーゼ阻害剤と複合体を形成させることによって、不活化してもよい。適したセリン阻害剤タンパク質は、例えば、有機燐化合物、スルファニルフルオリド、ペプチドハロメチルケトン、好ましくはダンシル-Phe-Pro-Argクロロメチルケトン、ダンシル-Glu-Glu-Argクロロメチルケトン、ダンシル-Phe-Phe-Arg-クロロメチルケトン、もしくはPhe-Phe-Arg-クロロメチルケトン、またはアザペプチドからなる群より選択される。
【0197】
または、本発明の変種は、R152、I153、S344、D242、およびH193からなる群より選択される位置を占める少なくとも一つのアミノ酸残基を除去することによって不活化してもよい。除去は、先に同定されたアミノ酸残基の一つまたはそれ以上を置換または欠失することによって行ってもよい。好ましくは、除去は、置換、特に保存的置換によって行う。したがって、本明細書において用いられる不活化FVIIまたはFVIIaポリペプチドは、以下の置換の一つまたはそれ以上を含んでもよい:R152X、I153X、S344X、D242X、またはH193X、式中Xは任意のアミノ酸残基であり、好ましくは保存的置換が起こるアミノ酸残基である。例えば、不活化FVIIまたはFVIIaポリペプチドは、Xがリジン以外の任意のアミノ酸残基である(リジンはプロテアーゼ切断部位の一部を形成するため)変異R152Xを含む。特異的置換の他の例には、I153A/V/L;S344T/A/G/Y、好ましくはS344A;D242E/Aおよび/またはH193R/Aが含まれる。
【0198】
もう一つのアプローチには、活性部位領域においてまたはその近位で改変を行うことが含まれる。例えば、N-グリコシル化部位の結合基のような非ポリペプチド部分に関する一つまたはそれ以上の結合基を、FVIIまたはFVIIa変種の活性部位領域または活性部位結合裂の隆起に導入することが都合がよいかも知れないと企図される。活性部位領域、組織因子結合部位、および活性部位結合裂の隆起は、本明細書の実施例1において定義される。
【0199】
このように、そのようなN-グリコシル化部位を作製する置換の特定の例には、

およびその組み合わせからなる群より選択される置換が含まれる。好ましくは、置換は、

およびその組み合わせからなる群より選択される。より好ましくは、置換は、

およびその組み合わせからなる群、特にG291Nから選択される。
【0200】
典型的に、不活化変種は、野生型hFVIIaまたはrhFVIIaと比較して有意に低下した凝血活性を有する。好ましくは、不活化変種は、本明細書に記述の全血アッセイにおいてアッセイした場合に、hFVIIaまたはrhFVIIaの凝血活性の4%未満である。より好ましくは、活性化変種は、本明細書に記述の全血アッセイにおいてアッセイした場合に、hFVIIaまたはrhFVIIaの凝血活性の2%未満、例えば凝血活性の1%未満のような、凝血活性の3%未満を有する。
【0201】
理解されるように、本発明の不活化変種に関する細部および詳細(例えば、好ましい置換、変種の処方等)は、適当であれば、本発明の(活性な)変種の局面と同じまたは類似であろう。このように、本発明の不活化変種に関する説明および細部は、適当であれば、本明細書に開示の活性変種に必要な変更を加えて適用されるであろう。
【0202】
本発明のポリペプチド変種を調製する方法
グリコシル化型であってもよい、本発明のポリペプチド変種は、当技術分野で既知の任意の適した方法によって産生してもよい。そのような方法には、ポリペプチド変種をコードするヌクレオチド配列を構築する段階および適した形質転換またはトランスフェクトした宿主において配列を発現させる段階が含まれる。好ましくは宿主細胞は、哺乳類細胞のようなγカルボキシル化宿主細胞である。しかし、本発明のポリペプチド変種は、あまり効率的ではないが、化学合成もしくは化学合成の組み合わせまたは化学合成と組み換えDNA技術の組み合わせによって産生してもよい。
【0203】
本発明のポリペプチド変種をコードするヌクレオチド配列は、ヒト野生型FVIIをコードするヌクレオチド配列を単離または合成すること、次に、1つ(または複数)の関連するアミノ酸残基の導入(すなわち挿入または置換)または除去(すなわち欠失または置換)を行うためにヌクレオチド配列を変化させることによって構築してもよい。
【0204】
ヌクレオチド配列は、通常の方法に従って部位特異的変異誘発によって簡便に改変される。または、ヌクレオチド配列は、化学合成によって、例えばオリゴヌクレオチドが所望のポリペプチド変種のアミノ酸配列に基づいてデザインされるオリゴヌクレオチドシンセサイザーを用いて、好ましくは組み換え型ポリペプチド変種が産生される宿主において都合がよいコドンを選択することによって、調製される。例えば、所望のポリペプチド変種の一部をコードするいくつかの小さいオリゴヌクレオチドを合成して、PCR、ライゲーション、またはライゲーション連鎖反応(LCR)(Barany、PNAS 88:189〜193、1991)によって構築してもよい。個々のオリゴヌクレオチドは典型的に、相補的構築のために5'または3'オーバーハングを含む。
【0205】
高スループットスクリーニングのためのポリペプチド変種を産生するため、他のヌクレオチド配列改変法、例えば米国特許第5,093,257号に開示されるように同種クロスオーバーを含む方法、および遺伝子シャッフリングを含む方法、すなわち開始ヌクレオチド配列と比較して多くのヌクレオチド変化を有する新しいヌクレオチド配列が得られる二つまたはそれ以上の相同なヌクレオチド配列間の組み換えを含む方法を使用できる。遺伝子シャッフリンク(DNAシャッフリンクとしても知られる)は、ヌクレオチド配列のランダムな断片化および再構築の一つまたは複数のサイクルを行った後に、所望の特性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を選択するためのスクリーニングを行うことを含む。相同性に基づく核酸シャッフリングが起こるためには、ヌクレオチド配列の関連する部分が、好ましくは少なくともも60%同一であるように、少なくとも50%同一であり、より好ましくは少なくとも80%同一であるように、少なくとも70%同一である。組み換えはインビトロまたはインビボで行うことができる。
【0206】
適したインビトロ遺伝子シャッフリング法の例は、Stemmerら(1994)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91、10747〜10751;Stemmer(1994)、Nature 370:389〜391;Smith(1994)、Nature 370:324〜325;Zhaoら、Nat. Biotechnol. 1998、3月、16(3):258〜61;Zhao, H.およびArnold, FB.、Nucleic Acids Research、1997、25(6):1307〜1308;Shaoら、Nucleic Acids Research 1998、1月15日号;26(2):681〜83;および国際公開公報第95/17413号によって開示されている。
【0207】
適したインビボシャッフリング法の例は、国際公開公報第97/07205号に開示される。インビトロまたはインビボ組み換えによる核酸配列の変異誘発に関する他の技術は、例えば国際公開公報第97/20078号および米国特許第5,837,458号に開示されている。特異的シャッフリング技術の例には、「ファミリーシャッフリング」、「合成シャッフリング」、および「コンピュータシュミレーションによるシャッフリング」が含まれる。
【0208】
ファミリーシャッフリングは、異なる種からの相同な遺伝子ファミリーに一つまたは複数のシャッフリングサイクルを行うこと、およびその後スクリーニングまたは選択を行うことを含む。ファミリーシャッフリング技術は、例えばCrameriら(1998)、Nature 391:288〜291;Christiansら(1999)、Nature Biotechnology 17:259〜264;Changら(1999)、Nature Biotechnology 17:793〜797;およびNessら(1999)、Nature Biotechnology 17:893〜896に開示されている。
【0209】
合成シャッフリングは、例えば対象となる相同な遺伝子の配列アラインメントに基づいて、重なり合う合成オリゴヌクレオチドのライブラリを提供することを含む。合成によって産生されたオリゴヌクレオチドを組み換えて、得られた組み換え型核酸配列をスクリーニングして、望ましければ、その後のシャッフリングサイクルのために用いる。合成シャッフリング技術は国際公開公報第00/42561号に開示されている。
【0210】
コンピュータシュミレーションによるシャッフリングは、コンピューターシステムを用いて行われるまたはモデリングされ、それによって核酸を物理的に操作する必要性が部分的または完全になくなるDNAシャッフリング技術を指す。コンピュータシュミレーションによるシャッフリングに関する技術は、国際公開公報第00/42560号に開示されている。
【0211】
一度構築されると(合成、部位特異的変異誘発、または別の方法によって)、ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を組み換えベクターに挿入して、望ましい形質転換宿主細胞においてFVIIの発現にとって必要な制御配列に機能的に結合させる。
【0212】
必ずしも全てのベクターおよび発現制御配列が本明細書に記述のポリペプチド変種をコードするヌクレオチド配列を発現するために等しく十分に機能するとは限らないことは当然理解される。必ずしも全ての宿主が同じ発現系によって等しく十分に機能するとは限らないと思われる。しかし、当業者は、不要な実験を行うことなくこれらのベクター、発現制御配列、および宿主において選択を行ってもよい。例えば、ベクターを選択する場合、ベクターはその中で複製しなければならないため、または染色体に組み入れられなければならないために宿主を検討しなければならない。ベクターのコピー数、そのコピー数の制御能、および抗生物質マーカーのようなベクターによってコードされる他の任意のタンパク質の発現も同様に、検討しなければならない。これらには、例えば配列の相対強度、その制御性、特に可能性がある二次構造に関してポリペプチドをコードするヌクレオチド配列とのその適合性が含まれる。宿主は、選択したベクターとのその適合性、ヌクレオチド配列によってコードされる産物の毒性、その分泌特徴、ポリペプチド変種を正確に折りたたむ能力、その発酵または培養必要条件、およびヌクレオチド配列によってコードされる産物の精製の容易さを検討することによって選択しなければならない。
【0213】
組み換えベクターは、自律的に複製するベクター、すなわちその複製が染色体の複製に依存しない染色体外実体として存在するベクター、例えばプラスミドであってもよい。または、ベクターは、宿主細胞に導入した場合、宿主細胞のゲノムに組み入れられ、それが組み入れられている1つ(または複数)の染色体と共に複製するベクターである。
【0214】
ベクターは好ましくは、その中で本発明のポリペプチド変種をコードするヌクレオチド配列が、ヌクレオチド配列の転写にとって必要なさらなるセグメントに機能的に結合している発現ベクターである。ベクターは、典型的にプラスミドまたはウイルスDNAに由来する。本明細書において言及した宿主細胞における発現にとって適した多くの発現ベクターが市販され、または文献に記述されている。真核宿主にとって有用な発現ベクターには、例えばSV40、ウシ乳頭腫ウイルス、アデノウイルス、およびサイトメガロウイルスからの発現制御配列が含まれる。特異的ベクターは、例えば、pCDNA3.1(+)/Hyg(インビトロゲン(Invitrogen)、カールスバッド、カリフォルニア州、アメリカ)およびpCI-neo(ストラタジーン(Stratagene)、ラホヤ、カリフォルニア州、アメリカ)である。酵母細胞にとって有用な発現ベクターには、2μプラスミドおよびその誘導体、POT1ベクター(米国特許第4,931,373号)、Okkels、Ann. New York Acad. Sci. 782:202〜207、1996に記載されるpJSO37、およびpPICZ A、B、またはC(インビトロゲン)が含まれる。昆虫細胞にとって有用なベクターには、pVL941、pBG311(Cateら、「Isolation of the Bovine and Human Genes for Mullerian Inhibiting Substance And Expression of the Human Gene In Animal Cells」、Cell 45:685〜98(1986))、pBluebac 4.5およびpMelbac(いずれもインビトロゲンから入手可能)が含まれる。細菌宿主にとって有用な発現ベクターには、pBR322、pET3a、およびpET12a(いずれもノバゲンインク(Novagen Inc.)、ウィスコンシン州、アメリカ)を含む大腸菌(E. coli)に由来するプラスミド、RP4、ファージDNA、例えばファージλの膨大な誘導体、例えばNM989、およびM13および糸状一本鎖DNAファージのような他のDNAファージのようなより広い宿主範囲のプラスミドのような既知の細菌プラスミドが含まれる。
【0215】
本発明において用いられる他のベクターには、ポリペプチド変種をコードするヌクレオチド配列のコピー数を増幅させるベクターが含まれる。そのような増幅可能なベクターは、当技術分野で周知である。それらには、例えば、DHFR増幅(例えば、Kaufman、米国特許第4,470,461号、KaufmanおよびSharp、「Construction Of A Modular Dihydrafolate Reductase cDNA Gene:Analysis Of Signals Utilized For Efficient Expression.」、Mol. Cell Biol. 2:1304〜19(1982)を参照されたい)およびグルタミンシンターゼ(「GS」)増幅(例えば、米国特許第5,122,464号および欧州特許第338,841号を参照されたい)によって増幅することができるベクターが含まれる。
【0216】
組み換えベクターはさらに、ベクターを対象となる宿主細胞において増幅させることができるDNA配列を含んでもよい。そのような配列の例(宿主細胞が哺乳類細胞の場合)は、SV40複製開始点である。宿主細胞が酵母細胞である場合、ベクターを複製させることができる適した配列は、酵母プラスミド2μ複製遺伝子REP1-3および複製開始点である。
【0217】
ベクターはまた、選択マーカー、例えばジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)をコードする遺伝子もしくは分裂酵母(Schizosaccharomyces pombe)のTPI遺伝子(P.R. Russell、Gene 40、1985:125〜130によって記述される)のように、その遺伝子産物が宿主細胞において欠損を補足する遺伝子、または薬物、例えばアンピシリン、カナマイシン、テトラサイクリン、クロラムフェニコール、ネオマイシン、ハイグロマイシン、もしくはメソトレキセートに対する抵抗性を付与する遺伝子を含んでもよい。出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)に関しては、選択マーカーには、ura3およびleu2が含まれる。糸状菌に関しては、選択マーカーにはamdS、pyrG、arcB、niaD、およびsCが含まれる。
【0218】
「制御配列」という用語は、本明細書において、本発明のポリペプチド変種の発現にとって必要または都合がよい全ての成分が含まれると定義される。それぞれの制御配列は、ポリペプチド変種をコードする核酸配列に対して本来の配列であってもよく外来配列であってもよい。そのような制御配列には、リーダー配列、ポリアデニル化配列、プロペプチド配列、プロモーター、エンハンサーまたは上流活性化配列、シグナルペプチド配列、および転写ターミネーターが含まれるがこれらに限定されない。少なくとも制御配列にはプロモーターが含まれる。
【0219】
広く多様な発現制御配列を本発明において用いてもよい。そのような有用な発現制御配列には、上述の発現ベクターの構造遺伝子に関連した発現制御配列と共に、原核もしくは真核細胞、またはウイルスの遺伝子の発現を制御することが知られている任意の配列および様々なその組み合わせが含まれる。
【0220】
哺乳類細胞において転写を指示するために適した制御配列の例には、SV40およびアデノウイルスの後期および初期プロモーター、例えばアデノウイルス2の主要後期プロモーター、MT-1(メタロチオネイン遺伝子)プロモーター、ヒトサイトメガロウイルス前初期遺伝子プロモーター(CMV)、ヒト伸長因子1α(EF-1α)プロモーター、ショウジョウバエ(Drosophila)最小熱ショックタンパク質70プロモーター、ラウス肉腫ウイルス(RSV)プロモーター、ヒトユビキチンC(UbC)プロモーター、ヒト成長ホルモンターミネーター、SV40またはアデノウイルスE1b領域ポリアデニル化シグナルおよびコザック共通配列(Kozak, M.、J. Mol. Biol. 1987、8月20日号;196(4):947〜50)が含まれる。
【0221】
哺乳類細胞における発現を改善するために、ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列の5'非翻訳領域に合成イントロンを挿入してもよい。合成イントロンの例は、プラスミドpCI-Neoからの合成イントロンである(プロメガ社(Promega Corporation)、ウィスコンシン州、アメリカから入手可能)。
【0222】
昆虫細胞において転写を指示するために適した制御配列の例には、ポリヘドリンプロモーター、P10プロモーター、オートグラファカルフォリニカ(Autographa californica)核多角体ウイルス塩基性タンパク質プロモーター、バキュロウイルス前初期遺伝子1プロモーターおよびバキュロウイルス39K遅延型初期遺伝子プロモーター、およびSV40ポリアデニル化配列が含まれる。酵母宿主細胞において用いるために適した制御配列の例には、酵母α-接合系、酵母トリオースホスフェートイソメラーゼ(TPI)プロモーター、酵母解糖遺伝子またはアルコールデヒドロゲナーゼ遺伝子のプロモーター、ADH2-4cプロモーターおよび誘導型GALプロモーターが含まれる。糸状菌宿主細胞において用いるために適した制御配列の例には、ADH3プロモーターおよびターミネーター、アスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)TAKAアミラーゼトリオースホスフェートイソメラーゼまたはアルカリプロテアーゼをコードする遺伝子に由来するプロモーター、黒色アスペルギルス(A. niger)α-アミラーゼ、黒色アスペルギルスまたはアスペルギルス・ニジュランス(A. nidulans)グルコアミラーゼ、アスペルギルス・ニジュランスアセトアミダーゼ、リゾムコール・ミーヘイ(Rhizomucor miehei)アスパラギン酸プロテナーゼまたはリパーゼ、TPI1ターミネーターおよびADH3ターミネーターが含まれる。細菌宿主細胞において用いるために適した制御配列の例には、lac系、trp系、TACまたはTRC系のプロモーター、およびファージλの主要プロモーター領域が含まれる。
【0223】
シグナルペプチドの存在または非存在は、例えば、発現されるポリペプチド変種を産生するために用いられる発現宿主細胞(それが細胞内または細胞外ポリペプチドであるか否かによらず)、およびそれが分泌を得るために望ましいか否かに依存すると思われる。糸状菌において用いるために、シグナルペプチドは、簡便にアスペルギルス種のアミラーゼもしくはグルコアミラーゼをコードする遺伝子、リゾムコール・ミーヘイのリパーゼもしくはプロテアーゼ、またはヒュミコラ・ラヌギノーサ(Humicola lanuginosa)リパーゼをコードする遺伝子に由来してもよい。シグナルペプチドは好ましくはアスペルギルス・オリゼTAKAアミラーゼ、黒色アスペルギルス中性α-アミラーゼ、黒色アスペルギルス酸安定アミラーゼ、または黒色アスペルギルスグルコアミラーゼをコードする遺伝子に由来する。昆虫細胞において用いる場合、シグナルペプチドは、鱗翅類マンジュカ・セクスタ(Lepidopteran manduca sexta)脂肪動員ホルモン前駆体(参照、米国特許第5,023,328号)のような昆虫遺伝子(参照、国際公開公報第90/05783号)、ミツバチメリチン(インビトロゲン)、エクジステロイドUDPグルコシルトランスフェラーゼ(egt)(Murphyら、Protein Expression and Purification、4:349〜357(1993))、またはヒト膵臓リパーゼ(hpl)(Methods in Enzymology 284:262〜272、1997)に由来することが都合がよい。哺乳類細胞において用いるために好ましいシグナルペプチドは、hFVIIまたはマウスIgκ軽鎖シグナルペプチド(Coloma, M.(1992)、J. Imm. Methods 152:89〜104)である。酵母細胞において用いるために適したシグナルペプチドは、出芽酵母(米国特許第4,870,008号)に由来するα-因子シグナルペプチド、改変カルボキシペプチダーゼシグナルペプチド(参照、L.A. Vallsら、Cell 48、1987:887〜897)、酵母BAR1シグナルペプチド(参照、国際公開公報第87/02670号)、酵母アスパラギン酸プロテアーゼ3(YAP3)シグナルペプチド(参照、M. Egel-Mitaniら、Yeast 6、1990:127〜137)、および合成リーダー配列TA57(国際公開公報第98/32867号)であることが判明している。大腸菌細胞において用いるために適したシグナルペプチドは、シグナルペプチドompA(欧州特許第581821号)であることが判明している。
【0224】
ポリペプチド変種をコードする本発明のヌクレオチド配列は、部位特異的変異誘発、合成、PCRまたはその他の方法によって調製されたか否かによらず、選択的に、シグナルペプチドをコードするヌクレオチドを含んでもよい。シグナルペプチドは、ポリペプチド変種が発現される細胞から分泌される場合に存在する。そのようなシグナルペプチドは、存在する場合、ポリペプチド変種の発現に関して選択された細胞によって認識されるペプチドでなければならない。シグナルペプチドは、典型的には、ヒト野生型FVIIに通常会合するものであると考えられる。
【0225】
細菌(特に好ましくはないが)、真菌(酵母を含む)、植物、昆虫、哺乳類、または他の適当な動物細胞または細胞株と共にトランスジェニック動物または植物を含む、任意の適した宿主を用いてポリペプチド変種を産生してもよい。細菌宿主の例には、バチルス(Bacillus)、例えば、短バチルス(B. brevis)もしくは枯草菌(B. subtilis)、もしくは放線菌(Streptomyces)のようなグラム陽性菌、または大腸菌株のようなグラム陰性菌が含まれる。細菌宿主細胞へのベクターの導入は、例えばプロトプラスト形質転換によって(例えば、ChangおよびCohen、1979、Molecular General Genetics 168:111〜115を参照されたい)、コンピテント細胞(例えば、YoungおよびSpizizin、1961、Journal of Bacteriology 81:823〜829、またはDubnauおよびDavidoff-Abelson、1971、Journal of Molecular Biology 56:209〜221を参照されたい)、電気穿孔(例えば、ShigekawaおよびDower、1988、Biotechniques 6:742〜751を参照されたい)、または抱合(例えば、KoehlerおよびThorne、1987、Journal of Bacteriology 169:5771〜5278)を用いて行ってもよい。適した糸状菌宿主細胞の例には、アスペルギルス、例えばアスペルギルス・オリゼ、黒色アスペルギルス、またはアスペルギルス・ニジュランス、フザリウム(Fusarium)、またはトリコデルマ(Trichoderma)の株が含まれる。真菌細胞は、プロトプラスト形成、プロトプラストの形質転換、および既知の方法による細胞壁の再生を含むプロセスによって形質転換してもよい。アスペルギルス宿主細胞を形質転換するために適した方法は、欧州特許第238 023号および米国特許第5,679,543号に記述されている。フザリウム種を形質転換するために適した方法は、Malardierら(1989)、Gene 78:147〜156および国際公開公報第96/00787号に記述されている。適した酵母宿主細胞の例には、サッカロミセス、例えば出芽酵母、分裂酵母、クリベロミセス(Klyveromyces)、P. パストリスまたはP. メタノリカ(P. methanolica)のようなピチア、H. ポリモルファのようなハンセヌラ(Hansenula)、またはヤロウィア(Yarrowia)の株が含まれる。酵母は、BeckerおよびGuarente、Abelson, J. N.およびSimon, M.I.編、「Guide to Yeast Genetics and Molecular Biology」、Methods in Enzymology 194:182〜187、アカデミック出版、ニューヨーク;Itoら、1983、Journal of Bacteriology 153:163;Hinnenら、1978、Proceedings of the National Academy of Sciences USA 75:1920;およびクロンテックラボラトリーズインク(Clontech Laboratories Inc.、パロアルト、カリフォルニア州、アメリカ)によって開示される方法(イーストメーカー(Yeastmaker)(商標)酵母形質転換システムキットの製品プロトコールにおいて)を用いて形質転換してもよい。適した昆虫宿主細胞の例には、スポドプテラ・フルギペルダ(Spodoptera frugiperda)(Sf9またはSf21)のような鱗翅類細胞株、またはトリコプルシオア・ニ(Trichoplusioa ni)細胞(ハイファイブ(High Five))(米国特許第5,077,214号)が含まれる。昆虫細胞の形質転換およびそこでの異種ポリペプチドの産生は、インビトロゲンによって記述されたとおりに実施してもよい。適した哺乳類宿主細胞の例には、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞株(例えば、CHO-K1;ATCC CCL-61)、ミドリザル細胞株(COS)(例えば、COS1(ATCC CRL-1650)、COS 7(ATCC CRL-1651));マウス細胞(例えば、NS/O)、ベビーハムスター腎(BHK)細胞株(例えば、ATCC CRL-1632またはATCC CCL-10)、およびヒト細胞(例えば、HEK 293(ATCC CRL-1573))と共に、組織培養での植物細胞が含まれる。さらに適した細胞株が当技術分野で既知であり、アメリカンタイプカルチャーコレクション、ロックビル、メリーランド州のような公共の寄託所から入手可能である。同様に、CHO細胞のような哺乳類細胞は、ポリペプチド変種の改善されたグリコシル化を提供するために、例えば米国特許第5,047,335号に記述されるようなシアリルトランスフェラーゼ、例えば1,6-シアリルトランスフェラーゼを発現するように改変してもよい。
【0226】
分泌を増加するために、本発明のポリペプチド変種をエンドプロテアーゼ、特にKex2エンドプロテアーゼ(例えば国際公開公報第00/28065号に記述)のような、PACE(対の塩基性アミノ酸変換酵素)(例えば、米国特許第5,986,079号に記述)と共に産生することは特に興味深い可能性がある。
【0227】
外因性DNAを哺乳類宿主細胞に導入する方法には、燐酸カルシウム媒介トランスフェクション、電気穿孔、DEAE-デキストラン媒介トランスフェクション、リポソーム媒介トランスフェクション、ウイルスベクター、およびライフテクノロジーズ(Life Technologies Ltd.)、ペイスリー、イギリスによって記述されるリポフェクタミン2000を用いるトランスフェクション法が含まれる。これらの方法は当技術分野で周知であり、例えばAusbelら(編)、1996、「Current Protocols in Molecular Biology」、ジョンウィリー&サンズ、ニューヨーク、アメリカに記述されている。哺乳類細胞の培養は、例えば「Animal Cell Biotechnology, Methods and Protocols」、Nigel Jenkins編、1999、ヒューマンプレスインク、トトワ、ニュージャージー州、アメリカおよびHarrison, MAおよびRae, IF、「General Techniques of Cell Culture」、ケンブリッジ大学出版、1997に開示されているように、確立された方法に従って行う。
【0228】
本発明の産生法において、細胞は、当技術分野で既知の方法を用いてポリペプチド変種の産生に適した栄養培地において培養する。例えば、細胞は、ポリペプチドが発現および/または単離される適した培地および条件で行われる実験的または工業的発酵装置において、振とうフラスコ培養、小規模または大規模発酵(連続、バッチ、フェドバッチ、または固相発酵を含む)によって培養してもよい。培養は、炭素および窒素源ならびに無機塩を含む適した栄養培地において、当技術分野で既知の方法を用いて行う。適した培地は、販売元から入手可能であるか、または公表された組成(例えば、アメリカンタイプカルチャーコレクションのカタログ)に従って調製してもよい。ポリペプチド変種が栄養培地に分泌される場合、ポリペプチドは、培地から直接回収することができる。ポリペプチド変種が分泌されない場合、これは細胞溶解物から回収することができる。
【0229】
得られたポリペプチド変種は、当技術分野で既知の方法によって回収してもよい。例えば、ポリペプチド変種は、遠心、濾過、抽出、噴霧乾燥、蒸留、または沈殿を含むがこれらに限定されない通常の方法によって栄養培地から回収してもよい。
【0230】
ポリペプチドは、クロマトグラフィー(例えば、イオン交換、アフィニティ、疎水性、クロマトフォーカシング、およびサイズ排除)、電気泳動法(例えば、調整的等電点電気泳動)、溶解度の差(例えば、硫酸アンモニウム沈殿)、HPLC、または抽出(例えば、「Protein Purification」、J.C. JansonおよびLars Ryden編、VCH出版、ニューヨーク、1989を参照されたい)を含むがこれらに限定されない当技術分野で既知の多様な方法によって精製してもよい。
【0231】
本発明の一本鎖ポリペプチド変種は、文献に記述されている多数の方法によって二本鎖ポリペプチド変種に精製および活性化することができる(BrozeおよびMajerus、1980、J. Biol. Chem. 255:1242〜47およびHednerおよびKisiel、1983、J. Clin. Invest. 71:1836〜41)。それによって一本鎖ポリペプチド変種を精製することができるもう一つの方法は、米国特許第5,700,914号に記述されるように精製の際にZnイオンを組み入れることによって精製することができる。
【0232】
好ましい態様において、ポリペプチド変種は、一本鎖ポリペプチド変種として精製され、さらに任意にPEG化される。任意にPEG化された一本鎖ポリペプチド変種は、固定された酵素(例えば、第IIa因子、第IXa因子、第Xa因子および第XIIa因子)または陽性荷電イオン交換マトリクス等を用いる自己活性化のいずれかを用いることによって活性化される。
【0233】
最初にその一本鎖型のポリペプチド変種を精製してから、PEG化を行い(望ましければ)、最後に上記の方法の一つによって、またはPedersenら、1989、BIochemistry 28:9331〜36に記述される自己活性化によって活性化することが都合がよい。活性化の前にPEG化を行う長所は、R152-I153の切断によって形成された新しいアミノ末端のPEG化が回避される点である。この新しいアミノ末端のPEG化は、D242とI153のアミノ基とのあいだの水素結合の形成が活性にとって必要であることから、分子を不活性にすると思われる。
【0234】
本発明の薬学的組成物とその用途
さらなる局面において、本発明は、組成物、特に本発明のポリペプチド変種と薬学的に許容される担体または賦形剤とを含む薬学的組成物に関する。
【0235】
本発明に従うポリペプチド変種または薬学的組成物は、医薬品として用いてもよい。
【0236】
高い凝固効率のために、本発明のポリペプチド変種、または本発明の薬学的組成物は、外傷、血小板減少症、抗凝固治療を受けている患者、および静脈瘤出血または他の上部消化管出血を有する肝硬変患者のような肝硬変患者、および正所肝臓移植または肝切除を受ける患者(輸血を伴わない手術を可能にする)に関連する制御できない出血事象のような、制御できない出血事象を含む出血の治療に特に有用である。
【0237】
外傷は、外因性物質によって引き起こされる生きている組織への損傷として定義される。これは米国における死因の第4位であり、経済に対しても大きい財政的負担となっている。
【0238】
外傷は、鈍的外傷または貫通性外傷のいずれかに分類される。鈍的外傷によって、内部圧迫、臓器損傷、および内出血が起こるが、貫通性外傷(物質が体を貫通して組織、血管および臓器を破壊した結果として)によって外部出血が起こる。
【0239】
外傷の結果としての出血は、一連の問題を開始しうる。例えば、最初の末梢および腸管膜の血管収縮によって生理的代償メカニズムが始まり、中心循環への血液の短絡が起こる。循環が回復しない場合、血液量減少ショック(不適切な還流による多臓器不全)が続いて起こる。全身の組織が酸素を要求するようになるため、嫌気的代謝が始まる。しかし、同時に乳酸を与えると血液のpHは低下して、代謝性アシドーシスが起こる。アシドーシスが重度で補正されない場合、患者は多臓器不全を引き起こして死亡する可能性がある。
【0240】
大多数の外傷患者が、その場面の環境条件により、救命救急室に到着時低体温であるが、不適切な保護、静脈内輸液投与および進行中の出血は、低体温状態を悪化させる。凝固因子の欠損は、失血または輸血が原因で起こりうる。そのあいだに、アシドーシスおよび低体温症は、血液凝固メカニズムを妨害する。このように、凝固障害が起こると、次にこれが外科的出血部位を隠して、機械的出血の制御を妨害する可能性がある。低体温症、凝固障害およびアシドーシスはしばしば、「外傷による三死因」として特徴付けられている。
【0241】
外傷は、重度の事象によって引き起こされる可能性がある。例えば、交通事故によって多くの異なるタイプの外傷が起こる。いくつかの交通事故は、貫通性外傷を引き起こす可能性があるが、多くの交通事故は、頭部および体の双方に鈍的外傷を負わせる可能性がある。しかし、これらの様々なタイプの外傷は全て、患者に凝固障害を引き起こしうる。交通事故は、米国における事故死の第一位である。アメリカでは交通事故によって年間42,000人以上が死亡する。多くの外傷患者は、準医療活動従事者による処置を受けながらERの到着前または搬送途中で事故の現場で死亡する。
【0242】
もう一つの例には、銃による損傷が含まれる。銃による損傷は、大量の出血を引き起こしうる外傷である。それらは貫通性であり、弾丸が体内を通過すると、それが体躯または脚であれ、組織を破壊する。アメリカでは年間約40,000人が銃による損傷のために死亡する。
【0243】
さらなる例には、墜落が含まれる。墜落によって交通事故と類似の外傷タイプのプロフィールが起こる。高いところから硬い物体または地面に墜落すると、貫通性外傷と減速鈍的外傷の双方を引き起こしうる。アメリカにおいて、墜落は、事故死の一般的な原因であり、その数は約13,000例に及ぶ。
【0244】
なおさらなる例には、機械の事故が含まれる。より少数の人々が、機械に当たるまたは挟まれて、機械による事故関連死のために死亡する。数値は小さいが有意であり、約2,000人である。
【0245】
なおさらなる例には、刺し傷が含まれる。刺し傷も同様に、大量の出血を引き起こしうる貫通性の損傷である。刺し傷において損傷を受ける可能性が最も高い臓器は、肝臓、小腸、および結腸である。
【0246】
肝硬変は、肝実質に対する持続的な繰り返し損傷の最終的な続発症である。最終的な結果は、肝葉の正常な構築を維持せず、このように肝機能の悪化を引き起こす再生性の結節を分離する広範囲の線維様組織の形成である。患者は、ビタミンK依存的凝固因子の枯渇の結果としてプロトロンビン時間の延長を引き起こす。病原性に、肝硬変は、強度の繰り返しの持続的な肝細胞損傷の任意の形が原因で起こりうる慢性的な肝損傷の最終的な一般的経路として見なすべきである。肝硬変は、慢性アルコール中毒、慢性ウイルス性肝炎(B型、C型、およびD型)および自己免疫性肝炎を含む直接的な肝損傷と共に、原発性胆汁性肝硬変、原発性硬化性胆管炎、および胆管閉鎖を含む胆管損傷による間接的な損傷によって引き起こされる可能性がある。あまり一般的でない肝硬変の原因には、嚢胞性線維症、α-1-アンチトリプシン欠損症、ヘモクロマトーシス、ウィルソン病、ガラクトース血症、および糖原病のような遺伝性疾患による直接的な肝損傷が含まれる。
【0247】
移植は、疾患を治療するための基本的な介入である場合の末期肝硬変患者に残される主な最終手段である。移植に適格となるためには、患者はChildのBまたはCと分類されると共に、さらなる選択基準を満たさなければならない。昨年、アメリカだけでも移植4,954例が実施された。
【0248】
切除を受ける患者に関連して年間6,000例の出血事例があると推定されている。これは、移植数と比較してわずかに高いように思われるがこの方法の置かれた立場と相関する。
【0249】
静脈瘤出血の発生率に関する正確なデータを得ることは難しい。わかっている重要な事実は、診断時、静脈瘤は、非代償性患者の約60%、および代償性患者の30%に存在し、これらの静脈瘤患者の約30%が出血を経験して、静脈瘤出血のそれぞれの事例は、30%の死亡リスクに関連していることである。
【0250】
血小板減少症は、三つのメカニズムの一つによって引き起こされる−骨髄産生の減少、脾臓分離の増加、または血小板破壊の加速。血小板減少症は出血の危険因子であり、血小板輸血は出血の発生率を減少させる。予防的血小板輸血の閾値は10,000個/μlである。発熱または感染症を有しない患者において、閾値5000個/μlは、自然発生出血を予防するために十分である可能性がある。侵襲性岐法の場合、血小板50,000個/μlが通常の標的レベルである。繰り返し輸血後に血小板に対する抗体を産生する患者では、出血は極めて制御が困難となりうる。
【0251】
このように、さらなる局面において、本発明は、凝血形成が望ましい疾患または障害の治療のために医薬品を製造するために本発明のポリペプチド変種に関する。本発明のなおさらなる局面は、本発明のポリペプチド変種または薬学的組成物の有効量をそれを必要とする哺乳類に投与することを含む、凝血形成が望ましい疾患または障害を有する哺乳類を治療する方法に関する。
【0252】
凝血形成が望ましい疾患/障害の例には、脳出血を含む出血および、外傷のような制御されない出血が含まれるが、これらに限定されない。さらなる例には、生体移植を受ける患者、切除を受ける患者、血小板減少患者、肝硬変患者、ならびに、静脈瘤出血、血友病A、血友病Bおよびフォンウィルブランド病を有する患者が含まれる。
【0253】
本発明のポリペプチド変種は治療的有効量で、通常、ノボセブン(登録商標)のようなrFVII治療において用いられる用量とほぼ平行な用量でまたはより低い用量で患者に投与される。本明細書における「治療的有効量」とは、それが投与される病態に関連して望ましい作用を生じるために十分な用量を意味する。正確な用量は、状況に依存し、既知の技術を用いて当業者によって確認可能となると思われる。通常、用量は、治療される病態または適応の重症度または拡大を予防または弱めることができなければならない。本発明のポリペプチド変種または組成物の有効量は、中でも疾患、用量、投与スケジュール、ポリペプチド変種もしくは組成物が単独で投与されるのかまたは他の治療物質と共に投与されるのか、組成物の血漿半減期、および患者の全身健康に依存することは当業者には明らかであると思われる。好ましくは、本発明のポリペプチド変種または組成物は、有効量、特に凝固障害を正常にするために十分な用量で投与される。
【0254】
本発明のポリペプチド変種は好ましくは、薬学的に許容される担体または賦形剤を含む組成物において投与される。「薬学的に許容される」とは、それが投与される患者において如何なる望ましくない作用も引き起こさない担体または賦形剤を意味する。そのような薬学的に許容される担体および賦形剤は当技術分野で周知である(例えば、「Remington's Pharmaceutical Sciences」、第18版、A.R. Gennaro編、マック出版社[1990];「Pharmaceutical Formulation Development of Peptides and Proteins」、S. FrokjaerおよびL. Hovgaard編、Taylor およびFrancis[2000];および「Handbook of Pharmaceutical Excipients」、第3版、A. Kibbe編、ファーマシューティカル出版[2000]を参照されたい)。
【0255】
本発明のポリペプチド変種は、周知の方法によって薬学的組成物に調製することができる。適した組成物は、E.W. Martin(マック出版社、第16版、1980)による「Remington's Pharmaceutical Sciences」に記述されている。
【0256】
本発明のポリペプチド変種は、「そのまま」および/またはその塩の形で用いることができる。適した塩には、ナトリウム、カリウム、およびマグネシウムのようなアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩と共に、例えば亜鉛塩が含まれるがこれらに限定されない。これらの塩または複合体は、結晶および/または非晶系構造として存在してもよい。
【0257】
本発明の薬学的組成物は単独または他の治療物質と共に投与してもよい。これらの物質は、同じ薬学的組成物の一部として組み入れてもよく、または本発明のポリペプチド変種とは個別に、同時にまたはもう一つの治療スケジュールに従って投与してもよい。さらに、本発明のポリペプチド変種または薬学的組成物は、他の治療に対する補助剤として用いてもよい。
【0258】
本発明の目的に関して「患者」には、ヒトおよび他の哺乳類の双方が含まれる。このように、方法はヒトの治療および獣医学応用の双方に適用可能である。本発明のポリペプチド変種を含む薬学的組成物は、多様な剤形、例えば液体、ゲル、凍結乾燥、または圧縮個体の形で製剤化してもよい。好ましい剤形は治療される特定の適応に依存し、当業者に明らかであると思われる。
【0259】
特に、本発明のポリペプチド変種を含む薬学的組成物は、凍結乾燥または安定な可溶性型で調製してもよい。ポリペプチド変種は、当業者に既知の多様な方法によって凍結乾燥してもよい。ポリペプチド変種は、本明細書に記述のようにタンパク質分解部位の除去または保護による安定な溶解型であってもよい。安定な溶解調製物を得る長所は、患者がより容易に取り扱いできる点にあり、緊急の場合には、生命を救うようになりうるより迅速な作用である。好ましい剤形は、治療される特定の適応に依存し、当業者に明らかであると思われる。
【0260】
本発明の製剤の投与は、経口、皮下、静脈内、脳内、鼻腔内、経皮、腹腔内、筋肉内、肺内、膣内、直腸内、眼内、または他の任意の許容される方法を含むがこれらに限定されない多様な方法で行うことができる。製剤は、注入によって連続的に投与することができるが、ポンプまたは埋め込みのような当技術分野で周知の技術を用いるボーラス注射が許容される。場合によっては、製剤は溶液またはスプレーとして直接適用してもよい。
【0261】
非経口投与
薬学的組成物の好ましい例は、非経口投与のためにデザインされた溶液、特に好ましくは水溶液である。多くの場合において、薬学的溶液製剤は、直ちに使用するために適用な液体型で提供されるが、そのような非経口製剤はまた凍結または凍結乾燥型で提供してもよい。前者の場合、組成物は使用前に融解しなければならない。凍結乾燥調製物は一般的にその液体対応物より安定であることが当業者によって認識されていることから、後者の型は、組成物に含まれる活性化合物の安定性を広く多様な保存条件で増強するために用いられる。そのような凍結乾燥調製物は、注射用滅菌水または滅菌生理食塩液のような一つまたは複数の薬学的に許容される希釈剤を加えることによって使用前に溶解する。
【0262】
非経口投与の場合、それらは適当であれば、所望の程度の純度を有するポリペプチド変種を、当技術分野で典型的に用いられる(その全てが「賦形剤」と呼ばれる)一つまたは複数の薬学的に許容される担体、賦形剤、または安定化剤、例えば緩衝剤、安定化剤、保存剤、等張剤、非イオン性界面活性剤、または洗浄剤、抗酸化剤、および/または他の雑多な添加剤と混合することによって凍結乾燥製剤または水溶液として保存するために調製される。
【0263】
緩衝剤は、生理的条件を模倣する範囲にpHを維持するために役立つ。それらは典型的に、約2 mM〜約50 mMの範囲の濃度で存在する。本発明において用いるために適した緩衝剤には、クエン酸緩衝液(例えば、クエン酸一ナトリウム-クエン酸二ナトリウム混合物、クエン酸-クエン酸三ナトリウム混合物、クエン酸-クエン酸一ナトリウム混合物等)、コハク酸緩衝液(例えば、コハク酸コハク酸一ナトリウム混合物、コハク酸-水酸化ナトリウム混合物、コハク酸-コハク酸ニナトリウム混合物等)、酒石酸緩衝液(例えば、酒石酸-酒石酸ナトリウム混合物、酒石酸-酒石酸カリウム混合物、酒石酸-水酸化ナトリウム混合物等)、フマル酸緩衝液(例えば、フマル酸-フマル酸一ナトリウム混合物、フマル酸-フマル酸二ナトリウム混合物、フマル酸一ナトリウム-フマル酸二ナトリウム混合物等)、グルコン酸緩衝液(例えば、グルコン酸-グルコン酸ナトリウム混合物、グルコン酸-水酸化ナトリウム混合物、グルコン酸-グルコン酸カリウム混合物等)、シュウ酸緩衝液(例えば、シュウ酸-シュウ酸ナトリウム混合物、シュウ酸-水酸化ナトリウム混合物、シュウ酸-シュウ酸カリウム混合物等)、乳酸緩衝液(例えば、乳酸-乳酸ナトリウム混合物、乳酸-水酸化ナトリウム混合物、乳酸-乳酸カリウム混合物等)、および酢酸緩衝液(例えば、酢酸-酢酸ナトリウム混合物、酢酸-水酸化ナトリウム混合物等)のような有機酸および無機酸の双方ならびにその塩が含まれる。さらなる可能性は燐酸緩衝液、ヒスチジン緩衝液、およびトリスのようなトリメチルアミン塩である。
【0264】
安定化剤は、充填剤から、治療物質を安定化させて、変性または容器の壁への接着を防止するために役立つ添加剤に至るまで機能の範囲が及びうる賦形剤の広い範囲の分類を指す。典型的な安定化剤は、多価糖アルコール(先に記述したとおり);アルギニン、リジン、グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アラニン、オルニチン、L-ロイシン、2-フェニルアラニン、グルタミン酸、トレオニン等のようなアミノ酸;イノシトールのようなシクリトールを含む、乳糖、トレハロース、スタキオース、マンニトール、ソルビトール、キシリトール、リビトール、ミオイニシトール、ガラクチトール、グリセロール等のような有機糖または糖アルコール;ポリエチレングリコール;アミノ酸ポリマー;尿素、グルタチオン、チオクト酸、チオグリコール酸ナトリウム、チオグリセロール、α-モノチオグリセロール、およびチオ硫酸ナトリウムのような硫黄含有還元剤;低分子量ポリペプチド(すなわち、<10残基);ヒト血清アルブミン、ウシ血清アルブミン、ゼラチン、または免疫グロブリンのようなタンパク質;ポリビニルピロリドンのような疎水性ポリマー;キシロース、マンノース、果糖およびブドウ糖のような単糖類;乳糖、マルトース、および蔗糖のような二糖類;ラフィノースのような三糖類、およびデキストランのような多糖類となりうる。安定化剤は典型的に活性タンパク質の重量に基づいて重量で約0.1〜10,000倍の範囲で存在する。
【0265】
保存剤は、微生物の増殖を遅らせるために加え、典型的に約0.2%〜1%(w/v)の量で加える。本発明において用いるために適した保存剤には、フェノール、ベンジルアルコール、メタクレゾール、メチルパラベン、オクタデシルジメチルベンジル塩化アンモニウム、ハロゲン化ベンザルコニウム(例えば、塩化、臭化、またはヨウ化ベンザルコニウム)、塩化ヘキサメトニウム、メチルもしくはプロピルパラベンのようなアルキルパラベン、カテコール、レゾルシノール、シクロヘキサノールおよび3-ペンタノールが含まれる。
【0266】
等張剤は、液体組成物の等張性を確実にするために加えられ、これには多価糖アルコール、好ましくは、グリセリン、エリスリトール、アラビトール、キシリトール、ソルビトール、およびマンニトールのような三価またはそれ以上の糖アルコールが含まれる。多価アルコールは、他の成分の相対量を考慮に入れて、重量で0.1%〜25%、典型的に1〜5%の量で存在しうる。
【0267】
非イオン性界面活性剤または洗浄剤(「湿潤剤」としても知られる)は、治療物質の溶解を助けるためのみならず、攪拌による凝集に対して治療的ポリペプチドを保護するために存在してもよく、これによっても製剤はポリペプチドの変性を引き起こすことなく表面の剪断応力に曝露される。適した非イオン性界面活性座には、ポリソルベート(20、80等)、ポリオキサマー(184、188等)、プルロニック(Pluronic)(登録商標)ポリオール、ポリオキシエチレンソルビタンモノエーテル(ツィーン(Tween)(登録商標)-20、ツィーン(登録商標)-80等)が含まれる。
【0268】
さらなる多様な賦形剤には、充填剤または増量剤(例えば、デンプン)、キレート化剤(例えば、EDTA)、抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸、メチオニン、ビタミンE)および共溶媒が含まれる。
【0269】
活性物質はまた、例えばコロイド脱混合減少技術または界面重合によって調製されるマイクロカプセル、例えばヒドロキシメチルセルロース、ゼラチン、またはポリ-(メチルメタクリレート)マイクロカプセル、コロイド状薬物輸送システム(例えば、リポソーム、アルブミンミクロスフェア、ミクロ乳剤、ナノ粒子、およびナノカプセル)、またはマクロ乳剤に捕獲してもよい。そのような技術は、上記の「Remington's Pharmaceutical Sciences」に開示されている。
【0270】
インビボ投与で用いられる非経口製剤は、滅菌でなければならない。これは例えば、滅菌濾過膜を通しての濾過によって容易に行われる。
【0271】
徐放性調製物
徐放性調製物の例には、ポリペプチド変種を含む固体疎水性ポリマーの半透過性マトリクス、被膜またはマイクロカプセルのような適した形を有するマトリクスが含まれる。徐放性マトリクスの例には、ポリエステル、ハイドロゲル(例えば、ポリ(2-ヒドロキシエチル-メタクリレート)、またはポリ(ビニルアルコール))、ポリラクチド、L-グルタミン酸とエチル-L-グルタメートのコポリマー、非分解性エチレン-酢酸ビニル、プロリーゼ(ProLease)(登録商標)技術またはルプロンデポット(Lupron Depot)(登録商標)(乳酸-グリコール酸コポリマーおよび酢酸リュープロリドからなる注射用ミクロスフェア)のような分解性の乳酸-グリコール酸コポリマー、ならびにポリ-D-(-)-3-ヒドロキシ酪酸が含まれる。エチレン-酢酸ビニルおよび乳酸-グリコール酸のようなポリマーは、100日までまたはそれ以上のような長期間分子を放出することができるが、特定のハイドロゲルはより短期間タンパク質を放出する。封入されたポリペプチドが体内に長期間留まる場合、それらは、37℃で水分に曝露された結果として変性または凝集する可能性があり、生物活性が失われ、免疫原性が変化する可能性がある。関与するメカニズムに応じた安定化に関して、合理的戦略を考案することができる。例えば、凝集メカニズムが、チオ-ジスルフィド結合を通しての分子間S-S結合形成であることが判明すれば、安定化は、スルフヒドリル残基を改変すること、酸性溶液からの凍結乾燥、適当な添加剤を用いての水分含有量の制御、および特異的ポリマーマトリクス組成物の開発によって得てもよい。
【0272】
本発明は、以下の非制限的な実施例においてさらに説明する。
【0273】
材料および方法
アクセス可能表面積(ASA)
コンピュータープログラムアクセス(B. LeeおよびF.M. Richards、J. Mol. Biol. 55:379〜400(1971))バージョン2(著作権1983年、エール大学)を用いて、構造における個々の原子のアクセス可能表面積(ASA)を計算する。この方法は典型的に、大きさ1.4Åのプローブを用い、プローブの中心によって形成される面積としてアクセス可能表面積(ASA)を定義する。この計算の前に、他の原子がタンパク質に直接関連しないように、全ての水分子および全ての水素原子を、座標の組から除去しなければならない。
【0274】
側鎖の分画ASA
側鎖原子の分画ASAは、側鎖における原子のASAの合計を、伸長したAla-x-Alaトリペプチドにおけるその残基タイプの側鎖原子のASAを表す値によって除することによって計算する(Hubbard、CampbellおよびThornton(1991)、J. Mol. Biol. 220:507〜530を参照されたい)。本実施例において、CA原子はグリシン残基の側鎖の一部として見なされ、残りの残基ではない。以下の表は、側鎖に関する標準的な100%ASAとして用いられる。

【0275】
構造において検出されない残基は、それらが柔軟な領域に存在すると考えられることから100%露出を有すると定義される。6位、7位、14位、16位、19位、20位、25位、26位、29位および35位でのγ-カルボキシグルタミン酸は全て、100%露出されると定義される。
【0276】
原子間距離の決定
原子間距離は、分子グラフィックスソフトウェア、例えばInsightII(登録商標)バージョン98.0、MSIインクを用いて最も容易に決定される。
【0277】
活性部位領域
活性部位領域は、触媒三残基(残基H193、D242、S344)の任意の原子の10Å以内に少なくとも一つの原子を有する任意の残基であると定義される。
【0278】
組織因子結合部位の決定
TF結合部位は、TF結合の際にそのアクセス可能表面積が変化した全ての残基を含むとして定義される。これは、少なくとも二つのASA計算によって決定され、一つは1つ(または複数)のリガンド/1つ(または複数)の受容体複合体における単離された1つ(または複数)のリガンドについて、およびもう一つは完全な1つ(または複数)のリガンド/1つ(または複数)の受容体複合体についてである。
【0279】
タンパク質分解に対する感受性低下の測定
タンパク質分解は、タンパク質分解が自己タンパク質分解である、米国特許第5,580,560号、実施例5に記載されるアッセイ法を用いて測定することができる。
【0280】
さらに、タンパク質溶解の減少は、放射標識試料を用いて、血液試料を採取してこれらにSDS-PAGEおよびオートラジオグラフィーを行うことによって、rhFVIIaと本発明のポリペプチド変種とのタンパク質分解を比較するインビボモデルにおいて試験することができる。
【0281】
タンパク質分解を決定するために用いられるアッセイ法によらず、「タンパク質分解の減少」は、クーマシー染色SDS-PAGEゲルのゲルスキャニング、HPLCによって測定されるように、または下記の組織因子比依存的活性アッセイ法を用いて野生型と比較して保存された触媒活性によって測定されるように、rhFVIIaによって得られた分解と比較した切断の測定可能な減少を意味すると解釈される。
【0282】
ポリペプチド変種の分子量の測定
ポリペプチド変種の分子量は、SDS-PAGE、ゲル濾過、ウェスタンブロット、マトリクス支援レーザー脱離質量分析、または平衡遠心、例えばLaemmli, U.K.、Nature 227(1970)、680〜85によるSDS-PAGEによって決定される。
【0283】
組織因子結合親和性の決定
変種が組織因子に結合する能力は、Dickinsonら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 1996、93:14379〜14384;Robergeら、Biochemistry 2001、40:9522〜9531;およびRufら、Biochemistry 1999、38(7):1957〜1966に記述される三つのBIAcore(登録商標)アッセイの一つまたはそれ以上を用いて評価してもよい。
【0284】
TFPI阻害の決定
TFPIによるFVII阻害は、Changら、Biochemistry 1999、38:10940〜10948に記述されるアミド溶解アッセイにおいてモニターすることができる。
【0285】
TFPI親和性の決定
変種がTFPIに結合する能力は、Dickinsonら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 1996、93:14379〜14384;Robergeら、Biochemistry 2001、40:9522〜9531;およびRufら、Biochemistry 1999、38(7):1957〜1966に記述される三つのBIAcore(登録商標)アッセイの一つまたはそれ以上を用いて評価してもよい。
【0286】
燐脂質膜結合親和性の決定
燐脂質膜結合親和性は、Nelsestuenら、Biochemistry 1977、30:10819〜10824または米国特許第6,017,882号の実施例1に記述されるように決定してもよい。
【0287】
TF依存的第X因子活性化アッセイ
本アッセイは、Nelsestuenら、J. Biol. Chem. 2001、276:39285〜39381の39826頁に詳細に記述されている。
【0288】
簡単に説明すると、アッセイされる分子(hFVII、rhFVIIa、またはその活性化型での本発明のポリペプチド変種)を、BSAを含むトリス緩衝液において、燐脂質源(好ましくは、ホスファチジルコリンとホスファチジルセリンを8:2で)および再脂質添加された第X因子と混合する。明記されたインキュベーション期間の後、過剰量のEDTAを加えて反応を停止させる。次に、第Xa因子の濃度を、発色基質(S-2222、クロモゲニックス(Chromogenix))を添加した後の405 nmでの吸光度の変化から測定する。バックグラウンドからの補正後、rhFVIIa(awt)の組織因子非依存的活性を、10分後の吸光度の変化として決定し、本発明のポリペプチド変種の組織因子非依存的活性(avariant)を、10分後の吸光度の変化として決定する。その活性化型のポリペプチド変種の活性と、rhFVIIaの活性との比をavariant/awtとして定義する。
【0289】
凝血アッセイ
FVIIaおよびその変種の凝血活性を一段階アッセイにおいて測定し、凝血時間をトロンボトラックIV凝固計(メディノー(Medinor))において記録した。第VII因子枯渇ヒト血漿(アメリカンディアグノスチカ(American Diagnostica))を再構築して、室温で15〜20分平衡にした。次に、血漿50 μlを凝固計のカップに移した。
【0290】
FVIIaおよびその変種をグリオキサリン緩衝液(5.7 mMバルビツレート、4.3 mMクエン酸ナトリウム、117 mM NaCl、1 mg/ml BSA、pH 7.35)において希釈した。試料50 μlをカップに加えて、37℃で2分間インキュベートした。
【0291】
トロンボプラスチン(メディノー)を水に溶解して、CaCl2を最終濃度4.5 mMで加えた。トロンボプラスチン100 μlを加えて反応を開始した。
【0292】
TFの非存在下で凝血活性を測定するために、トロンボプラスチンを加えない同じアッセイを用いた。PRISMソフトウェアを用いてデータを分析した。
【0293】
全血アッセイ
FVIIaおよびその変種の凝血アッセイを一段階アッセイにおいて測定し、凝血時間をトロンボトラックIV凝固計(メディノー(Medinor))において記録した。FVIIaまたはその変種100 μlを、10 mMグリシルグリシン、50 mM NaCl、37.5 mM CaCl2、pH 7.35を含む緩衝液において希釈して、反応カップに移した。10%0.13 Mクエン酸ナトリウムを抗凝固剤として含む血液50 μlを加えて凝血反応を開始した。エクセルまたはプリズムソフトウェアを用いてデータを分析した。
【0294】
アミド溶解アッセイ
変種が小さいペプチド基質を切断できるか否かは、発色基質S-2288(D-Ile-Pro-Arg-p-ニトロアニリド)を用いて測定することができる。FVIIaをアッセイ緩衝液(50 mM Na-ヘペス、pH 7.5、150 mM NaCl、5 mM CaCl2、0.1%BSA、1 U/mlヘパリン)において約10〜90 nMに希釈した。さらに、可溶性TF(sTF)をアッセイ緩衝液において50〜450 nMに希釈する。アッセイ緩衝液120 μlをFVIIa試料20 μlおよびsTF 20 μlと混合する。室温で軽く振とうさせながら5分間インキュベートしてから37℃で10分間インキュベートした後、S-2288基質を1 mMとなるように加えて反応を開始させ、405 nmでの吸光度をいくつかの時点で決定する。
【0295】
ELISAアッセイ
FVII/FVIIa(または変種)濃度をELISAによって決定する。マイクロタイタープレートのウェルを、プロテアーゼドメインに対する抗体の2 μg/mlのPBS溶液を用いてコーティングした(100 μl/ウェル)。室温で一晩コーティングした後、ウェルをTHT緩衝液(100 mM NaCl、50 mMトリス-塩酸、pH 7.2、0.05%ツイーン20)によって4回洗浄した。その後、1%カゼイン(100 mM NaCl、50 mMトリス-塩酸、pH 7.2を用いて2.5%保存液を希釈)200 μlをブロッキングのためにウェルに加える。室温で1時間インキュベートした後、ウェルを空にして、試料100 μl(選択的に希釈緩衝液(THT+0.1%カゼイン)において希釈)を加える。室温でさらに1時間インキュベートした後、ウェルをTHT緩衝液によって4回洗浄して、EGF様ドメイン(1 μg/ml)に対するビオチン標識抗体100 μlを加える。室温でさらに1時間インキュベートしてTHT緩衝液によって4回洗浄した後、ストレプトアビジン-西洋ワサビペルオキシダーゼ(DAKO A/S、グロストルップ、デンマーク、10000倍希釈)100 μlを加える。室温でさらに1時間インキュベートしてからTHT緩衝液によって4回洗浄した後、TMB(3,3',5,5'-テトラメチルベンジジン、ケメンテック(Kem-en-Tch)A/S、デンマーク)100 μlを加える。室温の暗所で30分間インキュベートした後、1 M H2SO4 100 μlを加えて、OD450 nmを測定する。rhFVIIa(NovoSeven(登録商標))を用いて標準曲線を調製する。
【0296】
または、FVII/FVIIaもしくは変種をプロテアーゼドメインよりむしろGlaドメインを通して定量してもよい。このELISAの状況において、ウェルをEGF様ドメインに対する抗体によって一晩コーティングして、検出のために、カルシウム依存的ビオチン標識モノクローナル抗Glaドメイン抗体を用いる(2 μg/ml、100 μl/ウェル)。この状況において、5 mM CaCl2をTHTおよび希釈緩衝液に加える。
【0297】
実施例
実施例1
Bannerら、J. Mol. Biol. 1996、285:2089による、可溶性組織因子との複合体におけるhFVIIaのX-線構造を、本実施例のために用いる。参考文献における残基の番号付けは、配列に従っていないことに注意されたい。本明細書において本発明者らは、配列番号:1に従う連続番号を用いた。6、7、14、16、19、20、25、26、29および35位でのγ-カルボキシグルタミン酸は、本明細書において全てGlu(三文字略語)またはE(一文字略語)と命名する。残基143〜152位は、構造には存在しない。
【0298】
表面の露出
方法において記述される非標準的および/または欠失残基の到達性に関する定義と共にFVII断片のみに関する部分的ASA計算を行うことによって、25%より多いその側鎖が表面に露出した以下の残基が得られた:

【0299】
以下の残基は、50%より多いその側鎖が表面に露出した:


【0300】
組織因子結合部位
ASA計算を行うと、ヒトFVIIにおける以下の残基は、複合体においてそのASAを変化させる。これらの残基は、組織因子結合部位を構成すると定義された:

【0301】
活性部位領域
活性部位領域は、触媒トライアド(残基H193、D242、S344)における任意の原子から10Åの距離以内に少なくとも一つの原子を有する任意の残基であると定義される:

【0302】
活性部位結合裂の隆起
活性部位結合裂領域の隆起は、

としてFVIIa構造1FAK.pdbのFVIIa構造の肉眼的検分によって定義された。
【0303】
実施例2
哺乳類細胞におけるrhFVIIの発現に関する発現カセットのデザイン
ヒト血液凝固第VII因子をコードする完全長のcDNAの短い型をその天然の短いシグナルペプチド(Hagenら、1986、PNAS 83:2412)と共に含む配列番号:2に示すDNA配列を、哺乳類細胞において高い発現を促進するために合成した。最初に、ATG開始コドンコンテクストをコザックコンセンサス配列(Kozak, M.、J. Mol. Biol. 1987年8月20日、196(4):947〜50)に従って、ATG開始コドンの上流のコンセンサス配列と完全にマッチするように改変した。次に、天然のヒト血液凝固因子cDNAのオープンリーディングフレームを、高度に発現されたヒト遺伝子において頻繁に用いられるコドンに向けてコドン使用を偏らせることによって改変した。さらに、有効な翻訳の終止を促進するために、二つの翻訳終止コドンをオープンリーディングフレームの末端に挿入した。完全な合成および発現最適化ヒトFVII遺伝子を、70量体DNAオリゴヌクレオチドから構築して、標準的なPCR技術を用いて5'および3'末端でそれぞれ、BamHIおよびHindIII部位を挿入するエンドプライマーを用いて最終的に増幅した。
【0304】
第VII因子の発現カセットを含む生成されたPCT産物をクローニングするためのベクターを、pCINeo(プロメガ(Promega))からのイントロンのクローニングによって調製した。pCI-Neoからの合成イントロンを、標準的なPCR条件およびプライマー:

を用いて増幅して、332 bpのPCR断片を得た。断片をNheIおよびBamHIによって切断してからpCDNA3.1/HygR(インビトロジェン(Invitrogen)から得た)にクローニングすると、PF#34が得られた。
【0305】
ヒト第VII因子に関する発現カセットを、PF#34のBamHIおよびHindIII部位のあいだにクローニングして、プラスミドPF#226を得た。
【0306】
UCOEに基づく発現プラスミドCET720のNheIおよびPmeI部位のあいだのFVII-変種遺伝子のクローニングを可能にするために、NheI部位を欠損するPF#226の誘導体を作製した。PF#226を鋳型として用いて、プライマーCBProFpr219(配列番号:5)およびCBProFpr499(配列番号:6)を用いて、DNA断片をPCRによって作製した。この断片をXbaIおよびXhoIによって切断して、PF#226のXbaIおよびXhoI部位のあいだにクローニングすると、プラスミド#444が得られた。本発明の変種をコードするPF#444誘導体プラスミドを、鋳型としてPF#444および注文製の合成プライマーを用いて標準的なPCRに基づく部位特異的変異誘発によって構築した。対応するPF444誘導体からの変種遺伝子をNheIおよびPmeIによって切除することによって、特異的なCET720に基づく発現プラスミドを作製し、これを次にNheIおよびPmeI切断CET720にクローニングした。例えば、FVII S43Q変種をコードするCET720-誘導体pB0088は、pB0075からNheIおよびPmeIによって変種遺伝子を切除することによって作製され、これをNheIおよびPmeI切断CET720にクローニングした。
【0307】
実施例3
本発明のポリペプチド変種をコードする発現ベクターの構築
一次PCRに関して以下のプライマーを対で用いた:




【0308】
実施例4
CHO K1細胞におけるFVIIまたはFVII変種の発現
細胞株CHO K1(ATCC #CCL-61)を、MEMα、10%FCS(ギブコ/BRL、カタログ番号10091)、P/S、および5 μg/mlフィロキノンを用いてT-25フラスコにおいて50%コンフルエンスで播種して、コンフルエントとなるまで増殖させた。コンフルエント単層細胞に、リポフェクタミン2000トランスフェクション試薬(ライフテクノロジーズ(Life Technologies))を用いて、製造元の説明書に従って、関連する上記のプラスミド5 μgをトランスフェクトさせた。トランスフェクションの24時間後、試料を採取して、例えばヒト第VII因子のEGF1ドメインを認識するELISAを用いて定量した。この時点で、安定なトランスフェクタントのプールを作製する目的で、適切な選択(例えば、ヒグロマイシンB)を細胞に行ってもよい。CHO K1細胞、およびプラスミドに対する選択マーカーとしてヒグロマイシンB耐性遺伝子を用いる場合、これは通常、1週間以内に得られる。
【0309】
実施例5
ポリペプチド変種を発現するCHO-K1細胞の作製
CHO-K1トランスフェクタントプールのバイアルを融解して、細胞を、MEMα、10%FCS、フィロキノン(5 μg/ml)、100 U/mlペニシリン、100 μg/mlストレプトマイシン25 mlを含む175 cm2組織フラスコに播種して、24時間増殖させた。細胞を回収して、希釈し、細胞密度1/2〜1個/ウェルで96ウェルマイクロタイタープレートに播種した。1週間増殖させた後、細胞20〜100個のコロニーがウェルに存在し、コロニー1個のみを含むウェルを標識した。さらに2週間後、コロニー1個のみを含む全てのウェルにおける培地を新鮮な培地200 μlに交換した。24時間後、培地試料を採取して、例えばELISAによって分析した。高産生クローンを選択して、これをFVIIまたはその変種を産生させるために用いた。
【0310】
実施例6
ポリペプチド変種の小規模精製とプロトロンビン活性化因子によるその後の活性化
FVIIまたはその変種を以下のように精製して活性化した。技法は4℃で行った。100 mM NaClおよび10 mM CaCl2を、回収した培養培地1200 mlに加えた後、pHを7.5に調節して濾過滅菌した。樹脂1 mlあたり共役抗体約5.5 mgを用いて、CNBr活性化セファロースFFに対してモノクローナル抗体カルシウム依存的抗Gla-ドメイン抗体を共役させることによって、アフィニティカラムを調製した。調製した培養培地を、10 mMトリス、100 mM NaCl、35 mM CaCl2、pH 7.5によって予め平衡にした2 mlモノクローナル抗体アフィニティカラムに一晩適用した。次に、FVIIを結合させたモノクローナル抗体アフィニティマトリクスを、カラムからのカラム材料を空のチューブに移すことによって、中身を出した。
【0311】
FVIIまたはその変種を、アフィニティマトリクスに結合させた状態で、タイパン(Oxyuranus scutellatus(OSII))からのトロンビン活性化剤と共にインキュベートすることによってFVIIaに活性化させた。カラム材料を再度充填した後、10 mMトリス、25 mM NaCl、5 mM EDTA、pH 8.6を用いて溶出することによって、FVIIaを回収した。
【0312】
第一のクロマトグラフィー段階からの溶出液を、10 mMトリス、25 mM NaCl、5 mM EDTA、pH 8.6によって予め平衡にしたPOROS HQ50カラムからなる第二のおよび最終的なクロマトグラフィーカラムに直接ローディングした。FVIIaは、カラムを10 mMトリス、25 mM NaCl、pH 8.6によって洗浄した後、10 mMトリス、25 mM NaCl、35 mM CaCl2、pH 7.5を用いてPOROS HQ50カラムから溶出した。POROS HQ50カラムから溶出したFVIIaをさらに改変を行うことなく-80℃で保存した。
【0313】
実施例7
ポリペプチド変種の大規模精製とその後の活性化
FVIIおよびFVII変種は以下のように精製する。技法は4℃で行う。大規模産生から回収した培養培地を、ミリポアTFFシステムを用いて、30 kDaカットオフペリコンメンブレンを用いて限外濾過する。培地を濃縮した後、クエン酸塩を5 mMとなるように加えて、pHを8.6に調節する。必要であれば、伝導率を10 mS/cm未満に低下させる。その後、試料を、50 mM NaCl、10 mMトリス、pH 8.6によって平衡にしたQ-セファロースカラムに適用する。100 mM NaCl、10 mMトリス、pH 8.6によってカラムを洗浄してから150 mM NaCl、10 mMトリス、pH 8.6によって洗浄した後、FVIIを10 mMトリス、25 mM NaCl、35 mM CaCl2、pH 8.6を用いて溶出する。
【0314】
第二のクロマトグラフィー段階に関して、モノクローナルカルシウム依存的抗Glaドメイン抗体をCNBr活性化セファロースFFに対して共役させることによってアフィニティカラムを調製する。樹脂1 mlあたり抗体約5.5 mgを共役させる。カラムを10 mMトリス、100 mM NaCl、35 mM CaCl2、pH 7.5によって平衡にする。NaClは、濃度100 mM NaClとなるように試料に加えて、pHを7.4〜7.6に調節する。試料のO/N適用後、カラムを100 mM NaCl、35 mM CaCl2、10 mMトリス、pH 7.5によって洗浄して、FVIIタンパク質を100 mM NaCl、50 mMクエン酸塩、75 mMトリス、pH 7.5によって溶出する。
【0315】
第三のクロマトグラフィーに関して、試料の伝導率を必要であれば10 mS/cm未満に低下させて、pHを8.6に調節する。次に、試料をQ-セファロースカラム(50 mM NaCl、10 mMトリス、pH 8.6によって平衡にした)に、有効な活性化を得るためにゲル1 mlあたりタンパク質約3〜5 mgの密度で適用する。適用後、カラムを50 mM NaCl、10 mMトリス、pH 8.6によって3〜4カラム容積(cv)/時間の流速で約4時間洗浄する。FVIIタンパク質を、40 cvで500 mM NaCl、10 mMトリス、pH 8.6の0〜100%の勾配を用いて溶出した。FVII含有分画をプールする。
【0316】
最終クロマトグラフィー段階に関して、伝導率を10 mS/cm未満に低下させる。その後、試料をQ-セファロースカラム(140 mM NaCl、10 mMグリシルグリシン、pH 8.6によって平衡にした)に、ゲル1 mlあたりタンパク質約3〜5 mgの濃度で適用する。次に、カラムを140 mM NaCl、10 mMグリシルグリシン、pH 8.6によって洗浄して、FVIIを140 mM NaCl、15 mM CaCl2、10 mMグリシルグリシン、pH 8.6によって溶出する。溶出液を10 mM CaCl2となるように希釈して、pHを6.8〜7.2に調節する。最後に、ツイーン80を0.01%となるように加えて、-80℃で保存するためにpHを5.5に調節する。
【0317】
実施例8
実験結果
本発明の変種(先の実施例6において記述されたように精製)に「全血アッセイ」を行ったところ、変種はrhFVIIaと比較して有意に増加した凝血活性(または凝血時間の短縮)を示すことが判明した。実験結果を図1〜3に示す。
【図面の簡単な説明】
【0318】
【図1】「全血アッセイ」においてアッセイした場合の[L65Q]rhFVIIa、[S43Q]rhFVIIa、[L39E]rhFVIIaおよび[E82Q]rhFVIIaに関する凝血時間対濃度を示す。比較のために、rhFVIIa(OSII-活性化)およびNovoSeven(登録商標)の結果を含める。◇rhFVIIa(OSII-活性化);◆NovoSeven(登録商標);●[L65Q]rhFVIIa;△[S43Q]rhFVIIa;×[L39E]rhFVIIa;○[E82Q]rhFVIIa。
【図2】「全血アッセイ」においてアッセイした場合の[I42R]rhFVIIaおよび[L39Q]rhFVIIaに関する凝血時間対濃度を示す。比較のために、NovoSeven(登録商標)の結果を含める。◆NovoSeven(登録商標);◇[I42R]rhFVIIa;●[L39Q]rhFVIIa。
【図3】「全血アッセイ」においてアッセイした場合の[F71D]rhFVIIa、[K62E]rhFVIIa、[F71Y]rhFVIIa、[L65S]rhFVIIa、および[F71E]rhFVIIaに関する凝血時間対濃度を示す。比較のために、NovoSeven(登録商標)の結果を含める。◆NovoSeven(登録商標);◇[F71D]rhFVIIa;●[K62E]rhFVIIa;○[F71Y]rhFVIIa;×[L65S]rhFVIIa;黒三角[F71E]rhFVIIa。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
変種の配列が、L39、I42、S43、K62、L65、F71、E82、およびF275からなる群より選択される少なくとも一つの位置において置換を含むが、
但し、該変種は以下ではない:

配列番号:1に示すアミノ酸配列を有するヒト第VII因子(hFVII)またはヒト第VIIa因子(hFVIIa)と比較してアミノ酸改変1〜15個を含むアミノ酸配列を有する第VII因子(FVII)または第VIIa因子(FVIIa)ポリペプチド変種。
【請求項2】
変種の配列が、L39E、L39Q、L39H、I42R、S43H、S43Q、K62E、K62R、L65Q、L65S、F71D、F71Y、F71E、F71Q、F71N、E82Q、E82N、E82K、およびF275Hからなる群より選択される少なくとも一つの置換を含むが、
但し、該変種は以下ではない:

請求項1記載の変種。
【請求項3】
置換がL65Qである、請求項2記載の変種。
【請求項4】
置換がF71Yである、請求項2記載の変種。
【請求項5】
置換がK62Eである、請求項2記載の変種。
【請求項6】
置換がS43Qである、請求項2記載の変種。
【請求項7】
L65Q、F71Y、K62E、およびS43Qからなる群より選択される少なくとも二つの置換を含む、請求項1〜6のいずれかに記載の変種。
【請求項8】
L65Q、F71Y、K62E、およびS43Qからなる群より選択される二つの置換を含む、請求項7記載の変種。
【請求項9】
置換が

からなる群より選択される、請求項7または8に記載の変種。
【請求項10】
L65Q、F71Y、K62E、およびS43Qからなる群より選択される少なくとも三つの置換を含む、請求項1記載の変種。
【請求項11】
L65Q、F71Y、K62E、およびS43Qからなる群より選択される三つの置換を含む、請求項10記載の変種。
【請求項12】
置換が、

からなる群より選択される、請求項10または11に記載の変種。
【請求項13】
Glaドメインにおける少なくとも一つのアミノ酸改変を含む、請求項1〜12のいずれかに記載の変種。
【請求項14】
Glaドメインにおける少なくとも一つの改変が、P10、K32、D33、およびA34からなる群より選択される少なくとも一つの位置で置換を含む、請求項13記載の変種。
【請求項15】
A3とF4位のあいだに少なくとも一つのアミノ酸残基の挿入をさらに含む、請求項14記載の変種。
【請求項16】
置換がK32位で行われる、請求項14または15記載の変種。
【請求項17】
置換がK32Eである、請求項16記載の変種。
【請求項18】
置換がP10位で行われる、請求項14〜17のいずれかに記載の変種。
【請求項19】
置換がP10Qである、請求項18記載の変種。
【請求項20】
置換がP10とK32位において行われる、請求項14〜19のいずれかに記載の変種。
【請求項21】
置換がP10Q+K32Eである、請求項20記載の変種。
【請求項22】
疎水性アミノ酸残基が3位と4位のあいだに挿入される、請求項15記載の変種。
【請求項23】
挿入がA3AYである、請求項22記載の変種。
【請求項24】
6、7、14、16、19、20、25、26、29、および35位では改変が行われない、請求項13〜23のいずれかに記載の変種。
【請求項25】
非ポリペプチド部分の結合基を含む少なくとも一つのアミノ酸残基がGlaドメインの外部に存在する位置に導入されている、先行請求項のいずれかに記載の変種。
【請求項26】
少なくとも一つの非ポリペプチド部分が少なくとも一つの結合基に共有結合している、請求項25記載の変種。
【請求項27】
非ポリペプチド部分が糖部分である、請求項26記載の変種。
【請求項28】
結合基がグリコシル化部位である、請求項25〜27のいずれかに記載の変種。
【請求項29】
グリコシル化部位が置換によって導入される、請求項28記載の変種。
【請求項30】
導入されたグリコシル化部位がインビボグリコシル化部位である、請求項29記載の変種。
【請求項31】
導入されたインビボグリコシル化部位がO-グリコシル化部位である、請求項30記載の変種。
【請求項32】
導入されたインビボグリコシル化部位がN-グリコシル化部位である、請求項30記載の変種。
【請求項33】
N-グリコシル化部位が、その側鎖の少なくとも25%が表面に露出しているアミノ酸残基を含む位置で導入される、請求項32記載の変種。
【請求項34】
N-グリコシル化部位が、その側鎖の少なくとも50%が表面に露出しているアミノ酸残基を含む位置で導入される、請求項33記載の変種。
【請求項35】
N-グリコシル化部位が、

およびその組み合わせからなる群より選択される置換によって導入される、請求項32〜34のいずれかに記載の変種。
【請求項36】
N-グリコシル化部位が、

およびその組み合わせからなる群より選択される置換によって導入される、請求項35記載の変種。
【請求項37】
N-グリコシル化部位が、T106N、A175T、I205T、V253N、T267N+S269Tおよびその組み合わせからなる群より選択される置換によって導入される、請求項36記載の変種。
【請求項38】
一つのN-グリコシル化部位が置換によって導入されている、請求項32〜38のいずれかに記載の変種。
【請求項39】
二つまたはそれ以上のN-グリコシル化部位が置換によって導入されている、請求項32〜37のいずれかに記載の変種。
【請求項40】
二つのN-グリコシル化部位が置換によって導入されている、請求項39記載の変種。
【請求項41】
N-グリコシル化部位が、

からなる群より選択される置換によって導入されている、請求項39または40記載の変種。
【請求項42】
N-グリコシル化部位が、

からなる群より選択される置換によって導入されている、請求項41記載の変種。
【請求項43】
三つまたはそれ以上のN-グリコシル化部位が置換によって導入されている、請求項32〜37のいずれかに記載の変種。
【請求項44】
三つのN-グリコシル化部位が置換によって導入されている、請求項43記載の変種。
【請求項45】
N-グリコシル化部位が、

からなる群より選択される置換によって導入されている、請求項43または44記載の変種。
【請求項46】
N-グリコシル化部位が、

からなる群より選択される置換によって導入されている、請求項45記載の変種。
【請求項47】
変種が157、158、296、298、305、334、336、337、および374からなる群より選択される位置で少なくとも一つの改変をさらに含む、先行請求項のいずれかに記載の変種。
【請求項48】
改変がV158D、E296D、M298Q、L305V、K337A、およびその組み合わせからなる群より選択される置換である、請求項47記載の変種。
【請求項49】
K341Q、D196K、D196N、G237L、およびG237GAAからなる群より選択される少なくとも一つの改変をさらに含む、先行請求項のいずれかに記載の変種。
【請求項50】
その活性化型である、先行請求項のいずれかに記載の変種。
【請求項51】
請求項1〜50のいずれかにおいて定義された変種をコードするヌクレオチド配列。
【請求項52】
請求項51において定義されたヌクレオチド配列を含む発現ベクター。
【請求項53】
請求項51において定義されたヌクレオチド配列と、請求項52において定義された発現ベクターとを含む宿主細胞。
【請求項54】
宿主細胞が、インビボグリコシル化を行うことができるγカルボキシル化細胞である、請求項53記載の宿主細胞。
【請求項55】
請求項1〜50のいずれかにおいて定義された変種と、薬学的に許容される担体または賦形剤とを含む薬学的組成物。
【請求項56】
薬剤として用いるための、請求項1〜50のいずれかにおいて定義された変種または請求項55において定義された薬学的組成物。
【請求項57】
凝血形成が望ましい疾患または障害を治療する薬剤を製造するための請求項1〜50のいずれかにおいて定義される変種の利用。
【請求項58】
疾患または障害が、出血;外傷のような制御されない出血;硬変;血小板減少症;血友病Aおよび血友病Bからなる群より選択される、請求項57記載の使用。
【請求項59】
疾患または障害が外傷である、請求項58記載の使用。
【請求項60】
疾患または障害が鈍的外傷である、請求項59記載の使用。
【請求項61】
疾患または障害が貫通性外傷である、請求項59記載の使用。
【請求項62】
請求項1〜50のいずれかにおいて定義された変種または請求項55において定義された薬学的組成物の有効量を、それを必要とする哺乳類に投与することを含む、凝血形成が望ましい疾患または障害を有する哺乳類を治療する方法。
【請求項63】
疾患または障害が、出血;外傷のような制御されない出血;硬変;血小板減少症;血友病Aおよび血友病Bからなる群より選択される、請求項62記載の方法。
【請求項64】
疾患または障害が外傷である、請求項63記載の方法。
【請求項65】
疾患または障害が鈍的外傷である、請求項64記載の方法。
【請求項66】
疾患または障害が貫通性外傷である、請求項64記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2006−517089(P2006−517089A)
【公表日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−538776(P2004−538776)
【出願日】平成15年9月26日(2003.9.26)
【国際出願番号】PCT/DK2003/000632
【国際公開番号】WO2004/029091
【国際公開日】平成16年4月8日(2004.4.8)
【出願人】(505117401)マキシゲン ホルディングス リミテッド (1)
【Fターム(参考)】