説明

凝集ゼオライト系吸着剤、その製造方法、およびその芳香族C8留分からp−キシレンを吸着する方法

【課題】p−キシレンの分離のための選択度の優れたゼオライト吸着剤を提供する。
【解決手段】Si/Al比が1≦Si/Al≦1.15であり少なくとも70%がバリウムで交換され、さらに任意にカリウムで交換されたフォージャサイトと、好ましくはゼオライト化が可能なことが好ましいバインダーとを主成分とする凝集ゼオライト吸着剤である。前記吸着剤は、ゼオライト粉末とバインダーとを凝集させ、バリウムイオンによってゼオライトのイオン交換を行い、得られたイオン交換吸着剤を活性化することによって得られる。前記吸着剤は、芳香族C炭化水素分画に含まれるp−キシレンの液相における擬似流動床法による吸着に特に適している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の属する分野は、キシレン類の分離のためのゼオライト吸着剤に関するものであり、特にp−キシレンの工業的製造に関する。
【背景技術】
【0002】
高純度p−キシレンは、工業的に再生されており、特に、PET製造を目的としたテレフタル酸への転化のために再生されている。
【0003】
従来技術では、バリウム、カリウム、またはストロンチウムなどのイオンを単独または混合物として使用してイオン交換したゼオライトXまたはYからなる吸着剤が、少なくとも1種類の他の芳香族C異性体を含む混合物中からp−キシレンを選択的に吸着するために効率的であると認識されてきた。米国特許第3,558,730号、第3,558,732号、第3,626,020号、および第3,663,638号は、芳香族C異性体混合物からp−キシレンを効率的に分離する、バリウムおよびカリウムで交換したアルミノケイ酸塩を含有する吸着剤を開示している。これらの吸着剤は、液相法における吸着剤として使用され、米国特許第2,985,589号に記載のものと同等の擬似向流型のものに好ましく、特に、気相法におけるベンゼンのジアルキル化工程などに由来する芳香族C分画に適用される。
【0004】
p−キシレンの分離のための工業的方法の性能は、吸着剤と、その吸着容量と、通常はp−キシレンそのもの(PX)、m−キシレン(MX)、o−キシレン(OX)、およびエチルベンゼン(EB)であるC芳香族からなる媒体中からp−キシレンに対して示す吸着剤の選択性とに大きく依存し、同様に、吸着したp−キシレンを吸着剤から脱着するためのトルエンやp−ジエチルベンゼンなどの脱着剤の能力にも依存する。
【0005】
化合物(A)を基準とした化合物(B)に関する吸着剤の選択性Sel(B/A)は、吸着相中の化合物の濃度比を、平衡状態の非吸着相中の化合物の濃度比で割ったものとして定義される。
【0006】
選択性の式は次のように与えられ、
【0007】
【数1】

式中の(B)zと(B)sは、それぞれゼオライト中および溶液中のBの濃度を表し、式中の(A)zと(A)sは、それぞれゼオライト中および溶液中のAの濃度を表す。これらの量を求める方法については後に概略を示す。
【0008】
キシレン類を分離するために従来技術で使用されたゼオライトはフォージャサイト構造型に属し、米国特許第2,882,244号および米国特許第3,130,007号において最初に記載され、これらは三次元的に結合して完全に大きさの定まったケージを有する結晶性アルミノケイ酸塩である。フォージャサイト類は一般式:
(1±0.1)M2/nO;Al;W SiO;Y H
に対応し、式中、
Mは、原子価nの、少なくとも1種類のアルカリ金属陽イオンまたはアルカリ土類金属陽イオンを表し、
Yは、Mの性質および結晶の水和の程度に依存する8以下の数であり、
Wは、シリカリッチフォージャサイト(フォージャサイトY)とアルミナリッチフォージャサイト(フォージャサイトX)の間を区別を可能にする因子である。フォージャサイトXはW≦3の範囲内にあり、フォージャサイトYはW>3の範囲内にあるもので、Si/Al比が1.5に関してどちら側にあるかを判断するものである。本発明の目的のため、低シリカ含有率のフォージャサイト(低シリカX(Low Silica X)の意味で当業者が使用する略語LSXで呼ばれるもの)としてW<2.3(Si/Al<1.15)をさらなる便宜的な区別として導入する。
【0009】
従来技術では、キシレン類を分離するための吸着剤としては、バリウムで交換されSi/Al原子比が1.2〜2.6の間であるフォージャサイト類の吸着剤のみが認識されていた。この方法では、当業者は、それらの挙動を予測するための簡単で十分信頼できる基準を見いだすことができないように思われる。従って、ますます改良された吸着剤の探索は、幾分手当たり次第の探索によって進行しており、例えば、米国特許第3,878,127号によって開示され特許請求される水酸化ナトリウム溶液で予備処理したゼオライトXの実際のバリウム交換による結果などが挙げられる。この出願人は、実施例に記載される試験に従って測定したp−キシレン/m−キシレンまたはp−キシレン/o−キシレン選択度が少なくとも2.0、有利には少なくとも2.5である吸着剤を提案している。本発明は、説明で明らかとなる多くの利点を伴ってこの結果を実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第3,558,730号明細書
【特許文献2】米国特許第3,558,732号明細書
【特許文献3】米国特許第3,626,020号明細書
【特許文献4】米国特許第3,663,638号明細書
【特許文献5】米国特許第2,985,589号明細書
【特許文献6】米国特許第2,882,244号明細書
【特許文献7】米国特許第3,130,007号明細書
【特許文献8】米国特許第3,878,127号明細書
【発明の概要】
【0011】
本発明の主題は、Si/Al原子比が1≦Si/Al≦1.15となり、その交換可能部位の少なくとも70%がバリウムイオンで占有され任意に30%までがカリウムで占有された(一般に残りの部分はバリウムとカリウム以外のアルカリ金属イオンまたはアルカリ土類金属イオンで構成される)少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%のフォージャサイトを含み、バインダーを加えて凝集させた凝集ゼオライト吸着剤であり、好ましいフォージャサイトはバリウム単独あるいはバリウム+カリウムについての全交換率が90%以上のものである。
【0012】
本発明による凝集ゼオライト吸着剤製造法の1つは、最初にSi/Al比が1≦Si/Al≦1.15であるゼオライト粉末にバインダー、好ましくはゼオライト化可能なバインダーを加えて凝集させることからなる。
【0013】
凝集という用語は、押出し成形、造粒、圧縮、または吹付けなど当業者には公知である任意の技術を使用して、ゼオライトとバインダーとの混合物から固形粒子を製造することを意味すると解釈する。凝集物中の実際のバインダー含有率は、一般に吸着剤の全質量の30%は超えず、好ましくは20%を超えない。これらの吸着剤の効率は、凝集バインダーとしてカオリン族の粘土、実際にはカオリナイトまたはハロイサイト、から選択すること、および粒子をゼオライト化することによって実質的に向上する。
【0014】
バインダーのゼオライト化は、粒子をか焼した後に、濃度が好ましくは少なくとも0.5Mである、アルカリ溶液、水酸化ナトリウム、または水酸化ナトリウムと水酸化カリウムの混合物に凝集物を浸漬することによって行われ、この第1のか焼の主な成果は粒子を硬化させることであるが、メタカオリンに転化することによって粘土の活性化も起こる。高温で実施することによって工程における反応速度が向上し、浸漬時間が短縮されるので、ゼオライト化は加熱条件下で行うことが好ましい。これによって、少なくとも50%のバインダーのゼオライト化が容易に起こり、すなわち一般に少なくとも85%、好ましくは少なくとも90%の活性フォージャサイト型ゼオライトと、15%以下、好ましくは10%以下の吸着に関して不活性な材料とからなる吸着剤が得られる。
【0015】
バリウム交換は、完全に従来の方法によって行われ、好ましくは最低目標交換率が少なくとも70%、好ましくは少なくとも90%を達成できるように連続的に交換することによって行われる。
【0016】
カリウム交換は、バリウム交換の前に行うことも後に行うこともできるが、すでにカリウムイオンを含有するフォージャサイトLSX粉末を凝集させることも可能である。
【0017】
活性化は、本発明の吸着剤の製造における最終段階である。その目的は、含水率を固定することであり、より簡単には最適の制限内で吸着剤を強熱することで減少させる。実施するための最も実際的な方法は、熱活性化によるものであり、好ましくは180〜250℃の間で行われる。
【0018】
本発明は、芳香族C異性体分画(留分)からp−キシレンを回収する方法の改良からも構成され、その方法は、吸着剤としてSi/Al比が1≦Si/Al≦1.15であり交換可能部位の少なくとも70%がバリウムイオンに占有される(残りはアルカリ金属イオンまたはバリウム以外のアルカリ土類金属イオンバリウムで構成される)フォージャサイトを主成分とし、バインダー、好ましくはゼオライト化可能なバインダー、で凝集させたゼオライト吸着剤を使用することからなる。本発明による凝集ゼオライト吸着剤は、液相中または気相中での工程への使用に適している。
【0019】
従って、所望の生成物は、分取吸着液体クロマトグラフィー(バッチ式)、有利には擬似流動床中、すなわち擬似向流または擬似並流によるもの、特に擬似向流によるもので分離することができる。
【0020】
擬似向流型吸着の工業用装置の操作条件は、一般に以下のようになる:
吸着床の数 6〜30
ゾーンの数 少なくとも4
温度 100〜250℃、好ましくは150〜190℃
圧力 0.2〜3MPa
供給原料への脱着剤の流速 1〜2.5
(例えば吸着装置単独(独立型)の場合1.4〜1.8、結晶化装置と組み合わせた吸着装置の場合1.1〜1.4)
再循環量 3.5〜12、好ましくは4〜6。
【0021】
参考文献としては、米国特許第2,985,589号、第5,284,992号、および第5,629,467号を挙げることができる。
【0022】
擬似並流吸着工業用装置の操作条件は、再循環量が一般に0.8〜7の間であることを除けば、概して擬似向流の場合と同様である。参考文献としては、米国特許第4,402,832号および第4,498,991号を挙げることができる。
【0023】
脱着溶剤は、トルエンなどの供給原料よりも沸点の低い脱着剤でもよいが、p−ジエチルベンゼン(PDEB)などの供給原料よりも沸点の高い脱着剤であってもよい。
【0024】
欧州特許EP486,384号または米国特許第5,173,462号に記載の製造方法に従って調製されるSi/Al比がほぼ1であるフォージャサイト類が、本発明では好ましい。C芳香族分画に含まれるp−キシレンの吸着における本発明による吸着剤の選択性は、900℃で測定した強熱による減量が一般に4.0〜7.7%の間、好ましくは5.2〜7.7%の間となる場合に最適となる。水と少量の二酸化炭素が強熱による減量の一部をなす。
【0025】
以下の非限定的な実施例によって、本発明をより明確に理解できるであろう。
【実施例】
【0026】
これらの実施例には、本発明の吸着剤のある特性量の測定または評価が含まれる。
【0027】
p−キシレンの分離工程における吸着剤による選択性を評価するために、p−キシレン(PX)とその芳香族C異性体(MX、OX)の間の分離力だけでなく、p−キシレンとエチルベンゼン(EB)の間の分離力(これはある分画ではエチルベンゼンが多く含まれ他のC異性体が含まれないことがあるので重要である)、さらにp−キシレンと脱着剤の分離力(効率的な脱着のための条件である低いPX/脱着剤選択性が得られることはまさに重要であるので)の測定を可能にする試験を行う。
【0028】
この試験は、2,2,4−トリメチルペンタンに溶解した80gの芳香族混合物中に、吸着剤(17g)を浸漬し、熱的に予備活性化して、空気の非存在下で冷却することからなる。
【0029】
混合物の正確な組成は以下の通りである:
PX 2%
MX 2%
OX 2%
EB 2%
脱着剤(トルエンまたはp−ジエチルベンゼン) 2%
2,2,4−トリメチルペンタン 残り。
【0030】
この混合物を150℃のオートクレーブで4時間処理し、この条件は吸着が確実に平衡に達するために十分な長さである。次に液体の一部を除去して、−30℃で凝縮させて、ガスクロマトグラフィーで分析を行った。次に、吸着相中および非吸着相中の濃度から、吸着したp−キシレン量と、他の芳香族や脱着剤に対するp−キシレンの選択性とを求めることができる。2,2,4−トリメチルペンタンは非常にわずかしか吸着しなかったので、これらの結果には影響を及ぼさなかった。
【0031】
実施例1〜9では使用した脱着剤はトルエンであり、実施例10ではパラジエチルベンゼンである。
【0032】
実施例1:対照吸着剤の調製
850gのゼオライトX粉末(か焼相当で表される)と、150gのシャラント(Charentes)カオリナイト(か焼相当で表される)と、6gのカルボキシメチルセルロース(押出し操作時に水を保持するための保持補助剤)と、押出し成形に適した量の水とを均一に混合することによって、Si/Al比=1.25およびNa/Al比=1の工業用ゼオライトNaXを凝集させる。その押出し物を乾燥させ、粉砕して相当直径が0.7mmとなる粒子を回収して、次に窒素気流下550℃で2時間か焼する。25℃において分圧0.5で測定したそのトルエン吸着容量は20.2%であり;これは細孔体積が20.2/0.86=0.235cm/gであると解釈される(細孔体積の計算において、液相の密度を吸着したトルエンの密度、すなわち0.86と等しいと見なしている)。この粒子に、0.5M/lの塩化バリウム溶液を95℃で4段階で使用してイオン交換を行う。各段階で、溶液の体積を固形分質量で割った比が20ml/gであり、各段階で交換を4時間続ける。各交換の間で、過剰の塩を除去するために固形分を数回洗浄する。次にこれを窒素気流下250℃の温度で2時間かけて活性化させる。そのトルエン吸着容量は14.8%であり、これは細孔体積0.17cm/gに相当する。強熱による減量も測定すると(これは吸着剤に存在する残留水量が得られるため重要な量である)、強熱による減量は4.5%となった。
【0033】
選択性試験を実施した結果は以下の通りである。
【0034】
【表1】

吸着したp−キシレン量は0.054cm/gである。
【0035】
この吸着剤中の有効なゼオライト含有率はほぼ85%である。
【0036】
実施例2:本発明による吸着剤の調製
欧州特許EP0,486,384号または米国特許第5,173,462号に記載の方法に従って得たSi/Al比=1.01のゼオライトXの950g(か焼相当)に、170g(か焼相当)のシャラントカオリナイトと、6gのカルボキシメチルセルロースと、正確な押出しによってペーストを得るために適した量の水とを加えて凝集させる。次に押出し物を乾燥させ、その後温度600℃で2時間かけて乾燥窒素気流下でか焼する。次にそれを相当直径0.7mmの粒子を得るために粉砕する。
【0037】
こうして得た粉砕材料について、実施例1で既に記載したバリウム交換処理を行い、温度220℃で熱活性化する。こうして得た生成物は、強熱による減量が5%であり、トルエン吸着容量は13%(細孔体積0.15cm/g)である。
【0038】
この吸着剤は、選択性試験により以下の値を得る。
【0039】
【表2】

試験中に吸着したp−キシレンの量は0.057cm/gであり、これは細孔体積の差にもかかわらず実施例1の吸着剤についての測定と同程度である。エチルベンゼンに対してより優れた選択性も示し、処理の必要な減量にこの異性体量が多い場合に好都合となりうる。p−キシレンのトルエンに対する選択性の値は、脱着剤の適度な消費によるp−キシレンの脱着にとって全体的に好適である。
【0040】
実施例3:本発明による吸着剤の調製
前述のように、Si/Al比=1.01であるゼオライトXの950gを、170gのシャラントカオリナイトと、6gのカルボキシメチルセルロースと、適切な量の水とともに凝集させる。混合物を押出し成形する。押出し物を乾燥し、乾燥窒素気流下で温度600℃で2時間かけてか焼して、次に相当直径が0.7mmとなるように粉砕する。
【0041】
次にこの凝集物10gを、220g/lの水酸化ナトリウム溶液17mlに95℃で3時間浸漬する。これを次に水で4回洗浄する。
【0042】
ゼオライト化の効果を評価するために、生成物の一部の少量を乾燥窒素気流下で550℃に加熱すると、トルエン吸着容量21.6%が得られた。全体の活性ゼオライト含有率は95%であると推定され、これは凝集吸着剤の初期の含有率よりも大きい。
【0043】
次にこの固形物を、実施例1に概要を示したものと同じ条件でバリウムで交換する。乾燥窒素下において220℃で2時間の活性化の後には、トルエン吸着容量15%(細孔体積:0.175cm/g)と強熱による減量5.2%を得る。
【0044】
このように調製した吸着剤を、選択性試験により評価する。
【0045】
以下の結果を得る。
【0046】
【表3】

【0047】
試験の間に吸着したp−キシレン量は0.066cm/gである。種々の異性体に対する選択性は好都合なことに実施例2の吸着剤に匹敵しており、これはこれら2つの生成物の活性成分がゼオライトLSXであることを反映している。吸着したp−キシレンの実質的な増加は、バインダーがゼオライト化したためにLSXが多くなったことに起因する。
【0048】
実施例4〜7:種々の最終的か焼を行った本発明による吸着剤の調製および試験
活性化温度を180℃〜300℃の間で変更したことのみを除いて、実施例3のように試料調製を繰り返す:実施例4は180℃、実施例5は200℃、220℃(実施例3の繰返し)、実施例6は250℃、実施例7は300℃である。
【0049】
これらの生成物の特性の比較を以下の表に示す。
【0050】
【表4】

【0051】
PX/OXおよびPX/MXの好ましい目標選択率である少なくとも2.5は、イオン交換した生成物の活性化段階の後に測定した強熱による減量(大まかに言えば含水率)が5.2〜7.7%の場合のゼオライトが満たしており、これは実際には180〜220℃の間の温度における熱活性化によって達成される。
【0052】
PX/EBの好ましい目標選択率である少なくとも2.5は、強熱による減量(大まかに言えば含水率)が4.4〜5.2%の場合のゼオライトが満たしており、これは実際には220〜250℃の温度における熱活性化によって達成される。
【0053】
250℃における活性化は、これらの性能水準に対して少々悪影響を及ぼすが、にもかかわらずその生成物は、比較的エチルベンゼンの多い処理分画に対して有利なままである。
【0054】
実施例8
実施例3に示すように凝集試料を調製して、それらをカリウムで交換し、次に以下の手順に従う。
【0055】
1MのKCl溶液を25℃で4回の連続的段階で使用して、バインダーをゼオライト化させた凝集物の完全なカリウム交換を行う。各段階において、溶液の体積/固形物の質量の比は20ml/gであり、各回において交換は4時間続ける。交換の段階と段階の間には、過剰の塩を除去するために固形物を数回洗浄する。得られた生成物は、カリウム交換率が97.5%である。次にこれについて、実施例1の記載と同一のバリウム交換操作を2回行う。これらすべての操作の後、窒素気流下において温度200℃で2時間かけて固形物を最終的に活性化させる。これは以下の特性を有する:
バリウム交換率 74.3%
カリウム交換率 24%
トルエン吸着容量 15%
細孔体積 0.174cm/g
900℃における減量 6.4%。
【0056】
このように調製した吸着剤は、選択性試験において以下の値を得る。
【0057】
【表5】

試験の間に吸着したp−キシレン量は0.06cm/gである。
【0058】
実施例9
Si/Al比=1.12のゼオライトXの950g(か焼相当)(この合成は、H.Lechertの「X型ゼオライトの結晶化の研究(Investigation on the crystallization of X−type zeolites)」,Zeolites,1991,Vol.11,pp.720−728、を参考にして行っている)を、170g(か焼相当)のシャラント産カオリナイトと、6gのカルボキシメチルセルロースと、得られるペーストが正確に押し出せるために適量である水とともに凝集させる。続いて押出し物を乾燥し、次に乾燥窒素気流下において温度600℃で2時間か焼する。次に、粒子の相当直径が0.7mmとなるように粉砕を行う。
【0059】
こうして得た粉砕材料について、実施例1に記載のバリウム交換処理を行い、温度220℃で2時間熱活性化させる。こうして得た生成物は強熱による減量が5.2%でトルエン吸着容量は13.7%(細孔体積0.159cm/g)である。
【0060】
この吸着剤は、選択性試験によって以下の値を得る。
【0061】
【表6】

試験の間に吸着したp−キシレン量は0.059cm/gである。
【0062】
実施例10
実施例3で調製した吸着剤について、p−ジエチルベンゼンを脱着剤として使用し、同一の選択性試験を行うと、以下の値を得る。
【0063】
【表7】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
Si/Al原子比が1≦Si/Al≦1.15であり交換可能部位の少なくとも70%がバリウムイオンで占有され任意に30%までがカリウムで占有された(残りは一般にバリウムおよびカリウム以外のアルカリ金属イオンまたはアルカリ土類金属イオンで構成される)少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%のフォージャサイトを含み、バインダーで凝集させた凝集ゼオライト吸着剤。
【請求項2】
ゼオライト化可能なバインダー、好ましくはカオリナイトまたはハロイサイトなどのカオリン族の粘土で凝集させた請求項1に記載の吸着剤。
【請求項3】
バリウム単独またはバリウム+カリウムによる全体の交換率が90%以上である請求項1または2に記載の吸着剤。
【請求項4】
900℃で測定した強熱による減量が4.0〜7.7%の間、好ましくは5.2〜7.7%の間である請求項1から3のいずれかに記載の吸着剤。
【請求項5】
a)ゼオライト粉末にバインダーを加えて凝集させる段階と、
b)前記凝集物をか焼する段階と、
c)水酸化ナトリウム、または水酸化ナトリウムと水酸化カリウムの混合物のアルカリ溶液中に前記凝集物を浸漬することによって前記バインダーを任意にゼオライト化する段階と、
d)バリウム交換および任意にカリウム交換を行う段階と、
e)活性化する段階
とを含む請求項1から4のいずれか1項に記載の吸着剤を得る方法。
【請求項6】
段階e)における前記活性化が180〜250℃の温度で行われる熱活性化であることを特徴とする請求項5に記載の吸着剤を得る方法。
【請求項7】
段階c)における前記アルカリ溶液の濃度が少なくとも0.5Mであることを特徴とする請求項5または6に記載のゼオライト化可能なバインダーを含む吸着剤を得る方法。
【請求項8】
請求項1から4のいずれか1項に記載の吸着剤を脱着剤の存在下で使用してp−キシレンを吸着させることによって液相中で芳香族C異性体分画からp−キシレンを回収する方法。
【請求項9】
擬似流動床型である請求項8に記載のp−キシレン回収方法。
【請求項10】
擬似向流型である請求項9に記載のp−キシレン回収方法。
【請求項11】
擬似並流型である請求項9に記載のp−キシレン回収方法。
【請求項12】
請求項1から4のいずれか1項に記載の吸着剤を脱着剤の存在下で使用してp−キシレンを吸着させることによって、気相中で芳香族C異性体分画からp−キシレンを回収する方法。
【請求項13】
前記脱着剤がトルエンまたはp−ジエチルベンゼンである請求項8から12のいずれか1項に記載のp−キシレン回収方法。

【公開番号】特開2012−167006(P2012−167006A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−45046(P2012−45046)
【出願日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【分割の表示】特願2000−507471(P2000−507471)の分割
【原出願日】平成10年8月18日(1998.8.18)
【出願人】(500092608)
【出願人】(500069954)
【Fターム(参考)】