説明

凝集剤原液希釈装置

【課題】 希釈槽内に水と凝集剤原液を送り込み、これらを撹拌羽根で撹拌して凝集剤原液を水で希釈することにより所定濃度の凝集剤を得、その凝集剤をフロック化装置に送り込む凝集剤原液希釈装置のコストを低減する。
【解決手段】 希釈槽1に、原液供給ポンプ6によって凝集剤原液を定量供給すると共に、水供給ポンプ8によって水を定量供給し、希釈槽1に送り込まれた凝集剤原液と水を撹拌羽根で撹拌して凝集剤を得、その凝集剤を原液供給ポンプ6と水供給ポンプ8の加圧作用によってフロック化装置11に圧送する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凝集剤原液を水によって希釈する凝集剤原液希釈装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
汚泥や廃豆腐などの液体を含む処理対象物から液体を分離する固液分離装置は従来より周知である(特許文献1及び2参照)。かかる固液分離装置によって処理対象物を固液分離するには、処理前の処理対象物に凝集剤を加えて、これをフロック化する必要がある。このため、従来より、凝集剤原液希釈装置によって、凝集剤原液を水で希釈して凝集剤を得、その凝集剤をフロック化装置に送ると共に、処理対象物をフロック化装置に送り込み、その処理対象物に凝集剤を加えて、これをフロック化している。
【0003】
図6は、従来の凝集剤原液希釈装置10Aの概略部分断面図である。ここに示した凝集剤原液希釈装置10Aは、希釈槽1Aを有し、この希釈槽1Aに凝集剤原液と水とが供給され、これらが撹拌羽根2Aによって撹拌されて凝集剤Sとされる。このように凝集剤原液を水によって希釈して得られた凝集剤Sが、剤移送ポンプ3Aによって、図示していないフロック化装置に送られる。
【0004】
希釈槽1Aには、図示していないレベル検知器が付設されていて、希釈槽1A内の凝集剤Sの量が減少し、その高さレベルが所定のところまで低下したことがレベル検知器によって検知されると、その検知信号に基づいて弁4Aが開けられ、矢印Aで示すように、その弁4Aを通して水が希釈槽1Aに送り込まれる。同時に、原液供給ポンプ5Aが作動を開始し、原液貯留タンク9A内の凝集剤原液が矢印Bで示すように希釈槽1Aに送り込まれる。このようにして、希釈槽1Aに供給された水と凝集剤原液が、回転する撹拌羽根2によって撹拌される。希釈槽1Aに予め決められた量の凝集剤原液が供給されると、原液供給ポンプ5Aの作動が停止され、希釈槽1Aへの凝集剤原液の供給が止められる。一方、希釈槽1A内の凝集剤Sの高さレベルが上昇し、そのレベルが所定高さとなったことがレベル検知器によって検知されると、弁4Aが閉じられて希釈槽1Aへの水の供給が停止される。このようにして1回の水と凝集剤原液の供給動作を完了する。希釈槽1A内の凝集剤Sの高さレベルが所定のところに低下する毎に、かかる供給動作が行われる。
【0005】
上述のように、1回の供給動作時に、希釈槽1Aには、予め決められた量の水と凝集剤原液が供給されて撹拌されるので、所定濃度の凝集剤が得られ、かかる凝集剤によって処理対象物を、固液分離に適した状態にフロック化することができる。希釈槽1Aに水と凝集剤原液が供給されているときも、その希釈槽1Aから凝集剤がフロック化装置に送り込まれている。
【0006】
ところで、従来の凝集剤原液希釈装置においては、上述の供給動作時に、希釈槽1Aに供給される水の流量、すなわち単位時間当りに希釈槽1Aへ送り込まれる水の量が一定していない。上述した水と凝集剤原液の供給動作が1回行われる間に、希釈槽1Aに送り込まれる水の総量と、凝集剤原液の総量の比率は一定となるように制御されるが、水と凝集剤原液の供給動作時の瞬間、瞬間における水の供給量と凝集剤原液の供給量の比率は一定していないのである。このため、希釈槽1Aの容量が小さいと、所定濃度から大きく離れた濃度の凝集剤がフロック化装置に送られ、固液分離に適したフロック化が行われなくなるおそれがある。そこで、従来は、大容量の希釈槽1Aを用い、この希釈槽1Aに送り込まれた水と凝集剤原液を撹拌羽根2Aによって充分に撹拌し、得られた凝集剤が所定濃度となるようにしている。
【0007】
ところが、上述のような大きな希釈槽1Aを用いれば、凝集剤原液希釈装置全体が大型化すると共に、そのコストが上昇する欠点を免れない。また、従来の凝集剤原液希釈装置の場合には、希釈槽内の凝集剤の高さレベルを検知するレベル検知器が必要であり、これによっても凝集剤原液希釈装置のコストが上昇していた。
【0008】
【特許文献1】特開平5−228695号公報
【特許文献2】特開2004−357615号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上述した新規な認識に基づきなされたものであり、その目的とするところは、従来よりも小型の希釈槽を使用できると共に、コストを低減できる凝集剤原液希釈装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記目的を達成するため、希釈槽と、該希釈槽に凝集剤原液を定量供給する原液供給ポンプと、前記希釈槽に水を定量供給する水供給ポンプと、前記希釈槽に送り込まれた凝集剤原液と水を撹拌する撹拌手段とを具備し、該撹拌手段により凝集剤原液と水を撹拌して得た凝集剤を、前記原液供給ポンプと水供給ポンプの加圧作用によって、フロック化装置に圧送するように構成されている凝集剤原液希釈装置を提案する(請求項1)。
【0011】
また、上記請求項1に記載の凝集剤原液希釈装置において、前記希釈槽は、凝集剤原液の希釈動作時に、凝集剤原液が流入する原液流入口と、水が流入する水流入口と、凝集剤が流出する剤流出口以外は、外部に対して開口していない密閉状態にあることが好ましい(請求項2)。
【0012】
さらに、上記請求項1又は2に記載の凝集剤原液希釈装置において、前記凝集剤原液が希釈槽に流入する原液流入口が細孔によって構成されていると有利である(請求項3)。
【0013】
また、上記請求項3に記載の凝集剤原液希釈装置において、前記細孔の径が0.5乃至3mmに設定されていると有利である(請求項4)。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、従来よりも小型な希釈槽を用いることが可能となると共に、凝集剤原液希釈装置のコストを低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態例を図面に従って詳細に説明する。
【0016】
図1は、凝集剤原液希釈装置10と、フロック化装置11と、固液分離装置12の配置状態を示す概略図である。ここに示した凝集剤原液希釈装置10は、希釈槽1と、凝集剤原液を収容した原液貯留タンク9と、その原液貯留タンク9内の凝集剤原液を希釈槽1に送り込む原液供給ポンプ6と、希釈槽1に水を送り込む水供給ポンプ8とを有している。
【0017】
図2は、希釈槽1の垂直拡大断面図である。この図に示すように、希釈槽1は、上壁部13と周壁部14と底壁部15とを有し、これらの壁部13,14,15によって内部空間が区画されている。かかる希釈槽1は、地表面や床面などの載置面上に固定配置された支持台16上に固定支持されている。
【0018】
希釈槽1の周壁部14には、凝集剤原液が流入する原液流入口17と、水が流入する水流入口19がそれぞれ形成され、上壁部13には凝集剤が流出する剤流出口18が形成されている。原液流入口17には、原液導管20の一端側が接続され、その原液導管20の他端側は、図1に示すように原液供給ポンプ6の原液吐出口に接続されている。また水流入口19には、水導管21の一端側が接続され、その水導管21の他端側は水供給ポンプ8の水吐出口に接続されている。さらに、剤流出口18は、剤導管22を介してフロック化装置11の剤導入口に接続されている。
【0019】
希釈槽1の内部空間下部には、撹拌羽根2が配置され、その撹拌羽根2の軸7は、希釈槽1の底壁部15を貫通して下方に延び、支持台16に支持されたモータ23に連結され、このモータ23によって撹拌羽根2が回転駆動される。
【0020】
図1に示したフロック化装置11と、固液分離装置12としては、それ自体周知な適宜な形式の装置を採用することができる。例えば、固液分離装置12として、特開平5−228695号公報や特開2004−357615号公報に記載された装置を用い、フロック化装置11としても、例えば特開2004−352615号公報に記載された装置を採用することができる。
【0021】
固液分離装置によって各種の処理対象物を固液分離処理することができるが、ここでは汚泥を固液分離するものとする。かかる固液分離動作が行われるとき、水供給ポンプ8と原液供給ポンプ6は共に作動し、水供給ポンプ8から送り出された水が水導管21を流通して希釈槽1の内部空間に矢印Xで示すように送り込まれる。同様に原液供給ポンプ6によって、原液貯留タンク9内の凝集剤原液が送り出され、その凝集剤原液が原液導管20を流通して希釈槽1の内部空間に矢印Yで示すように送り込まれる。希釈槽1の内部空間に送り込まれた凝集剤原液と水は、モータ23によって回転駆動された撹拌羽根2によって撹拌される。このように、本例の凝集剤原液希釈装置においては、軸7を備えた撹拌羽根2と、これを回転駆動するモータ23とによって、希釈槽に送り込まれた凝集剤原液と水を撹拌する撹拌手段が構成されている。勿論、他の適宜な形式の撹拌手段を採用することもできる。
【0022】
上述のように、希釈槽1に送り込まれた凝集剤原液と水を撹拌手段によって撹拌することにより、凝集剤原液を水によって希釈した凝集剤が得られる。かかる凝集剤は、矢印Zで示すように、剤導管22を流通してフロック化装置11に送り込まれる。一方、このフロック化装置11には、図1に示した導管24を通して汚泥が供給され、その汚泥と凝集剤が撹拌され、汚泥がフロック化される。かかる汚泥が固液分離装置12に送られ、ここでその汚泥から水分が分離され、矢印Fで示すようにその水分が下方に流下し、水分の減少した汚泥が、矢印Gで示すように固液分離装置12から排出される。
【0023】
なお、図2には、希釈槽1に供給される凝集剤原液、水及びこれらを撹拌して得られた凝集剤についての図示は省略してある。
【0024】
ここで、図1に示した原液供給ポンプ6と水供給ポンプ8として定量ポンプが用いられていて、原液供給ポンプ6は希釈槽1に凝集剤原液を定量供給し、水供給ポンプ8も希釈槽1に水を定量供給する。より具体的に示すと、原液供給ポンプ6は、ほぼ一定の流量の凝集剤原液を希釈槽1に供給し、水供給ポンプ8もほぼ一定の流量の水を希釈槽1に供給する。原液供給ポンプ6によって希釈槽1に送り込まれる凝集剤原液の流量をmcm/secとし、水供給ポンプ8によって希釈槽1に送られる水の流量をncm/secとしたとき、そのmとnの値が常にほぼ一定に保たれるのである。水と凝集剤原液の供給動作時の単位時間あたりの凝集剤原液供給量と水の供給量の比率m:nを予め適切な値に定めておく。これによって、希釈槽1に送り込まれた凝集剤原液と水を撹拌羽根2で撹拌することにより所定濃度の凝集剤を得ることができ、しかも、その濃度を常にほぼ一定に保つことができる。このため、従来のように希釈槽の容量を特に大きくしなくとも、フロック化装置11に常に所定濃度の凝集剤を送り込むことができ、汚泥を固液分離に適した状態にフロック化することができる。このように希釈槽1を小さくできるので、その製造コストを低く抑えることができ、しかも凝集剤原液希釈装置10の全体を小型化することが可能となる。
【0025】
しかも、本例の凝集剤原液希釈装置10においては、原液供給ポンプ6と水供給ポンプ8によって凝集剤原液と水を希釈槽1に定量供給するので、従来の凝集剤原液希釈装置においては必須の構成であったレベル検知器が不要となり、これによっても凝集剤原液希釈装置のコストを低減することが可能である。
【0026】
さらに、本例の凝集剤原液希釈装置10においては、凝集剤原液と水を原液供給ポンプ6と水供給ポンプ8によって希釈槽1に送り込む点に着目し、これらのポンプ6,8による加圧力によって、希釈槽1内の凝集剤を、フロック化装置11に送り込むように構成されている。撹拌手段により凝集剤原液と水を撹拌して得た凝集剤を、原液供給ポンプ6と水供給ポンプ8の加圧作用によって、フロック化装置11に圧送するのである。より具体的には、希釈槽1が、凝集剤原液の希釈動作時に、凝集剤原液が流入する原液流入口17と、水が流入する水流入口19と、凝集剤が流出する剤流出口18以外は、外部に対して開口していない密閉状態にある。これにより、原液供給ポンプ6と水供給ポンプ8による加圧力が希釈槽1内の凝集剤に作用し、その凝集剤が、剤流出口18から排出され、剤導管22を流通してフロック化装置11に送られる。この構成によれば、従来の凝集剤原液希釈装置においては必須の構成であった剤移送ポンプを省くことができる。
【0027】
凝集剤原液の希釈動作時以外の時期には、希釈槽1が、原液流入口17と、水流入口19と、剤流出口18以外に、外部に対して開口する部分があってもよい。例えば、希釈槽1の底壁部15に、図示していない剤排出口を形成しておき、凝集剤原液の希釈動作時以外の時期に、その剤排出口を開き、希釈槽1の内部の凝集剤を剤排出口から外部に排出させ、希釈槽1の内部を清掃することができる。これに対し、凝集剤原液の希釈動作時には、剤排出口を蓋によって閉鎖し、希釈槽1が、原液流入口17と水流入口19と剤流出口18以外は外部に対して開口していない密閉状態となるようにする。これにより、希釈槽1内の凝集剤を、原液供給ポンプ6と水供給ポンプ8の加圧作用により、支障なくフロック化装置11に送り出すことができる。
【0028】
ところで、凝集剤原液は、その原液を水に供給すると、当該凝集剤原液がゲル化し、凝集剤原液の粘度が急激に高まる性質を有している。従って、図5に示すように、希釈槽1の周壁部14に大きな径の原液流入口17を形成し、この流入口17から凝集剤原液を希釈槽1内の水に流し込んだとすると、その凝集剤原液がゲル化し、図5に矢印Cで示した領域が、ゲル化した凝集剤原液によって詰まってしまい、原液流入口17から希釈槽1内に凝集剤原液が流入しなくなるおそれがある。
【0029】
そこで、本例の凝集剤原液希釈装置10においては、図3に拡大して示すように、凝集剤原液が希釈槽1に流入する原液流入口17が、希釈槽1の周壁部14に形成された細孔25によって構成されている。細孔25の径Dは、0.5乃至3mmに設定され、好ましくは0.5乃至1.5mmに設定される。凝集剤原液がこのような細孔25を流通して、原液流入口17から希釈槽1内に流入し、その原液と水が撹拌羽根2によって撹拌されるので、原液流入口17の近傍領域がゲル化した凝集剤原液によって詰まってしまうおそれはない。細孔25の数、すなわち原液流入口17の数は、1つであっても複数であってもよく、凝集剤原液の性質などによってその数を設定する。
【0030】
図2及び図3に示した希釈槽1においては、その周壁部14に直に細孔25が形成されているが、図4に示すように、希釈槽1の周壁部14に雌ねじの形成された貫通孔26を形成し、その貫通孔26に雄ねじの形成された入口部材27をねじ込んで、その入口部材27を周壁部14に着脱可能に固定し、その入口部材27に図3に示したところと同様な細孔25を形成しておくこともできる。この構成によれば、細孔25の数とその径Dの大きさの異なる複数の入口部材27を用意しておき、凝集剤原液の性質に最も適した細孔25を備えた入口部材27を選択して、これを周壁部14に取り付けて使用することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】凝集剤原液希釈装置とフロック化装置と固液分離装置の配置状態を示した概略図である。
【図2】希釈槽の垂直拡大断面図である。
【図3】図2の矢印IIIで示した部分の拡大断面図である。
【図4】細孔が形成された入口部材を希釈槽の周壁に着脱可能に固定した構成を示す、図3と同様な断面図である。
【図5】原液流入口の径が大きいときの不具合を説明する断面図である。
【図6】従来の凝集剤原液希釈装置の一例を示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0032】
1 希釈槽
6 原液供給ポンプ
8 水供給ポンプ
10 凝集剤原液希釈装置
11 フロック化装置
17 原液流入口
18 剤流出口
19 水流入口
25 細孔
D 径

【特許請求の範囲】
【請求項1】
希釈槽と、該希釈槽に凝集剤原液を定量供給する原液供給ポンプと、前記希釈槽に水を定量供給する水供給ポンプと、前記希釈槽に送り込まれた凝集剤原液と水を撹拌する撹拌手段とを具備し、該撹拌手段により凝集剤原液と水を撹拌して得た凝集剤を、前記原液供給ポンプと水供給ポンプの加圧作用によって、フロック化装置に圧送するように構成されている凝集剤原液希釈装置。
【請求項2】
前記希釈槽は、凝集剤原液の希釈動作時に、凝集剤原液が流入する原液流入口と、水が流入する水流入口と、凝集剤が流出する剤流出口以外は、外部に対して開口していない密閉状態にある請求項1に記載の凝集剤原液希釈装置。
【請求項3】
前記凝集剤原液が希釈槽に流入する原液流入口が細孔によって構成されている請求項1又は2に記載の凝集剤原液希釈装置。
【請求項4】
前記細孔の径が0.5乃至3mmに設定されている請求項3に記載の凝集剤原液希釈装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−346632(P2006−346632A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−178416(P2005−178416)
【出願日】平成17年6月17日(2005.6.17)
【出願人】(591007022)アムコン株式会社 (28)
【Fターム(参考)】