説明

凝集剤及び汚濁排水の処理方法

【課題】 汚濁排水の浄化に用いられ、粗大な沈降フロックの生成を促進し、清澄な処理水が取得できる凝集剤及びそれを用いる汚濁排水の処理方法を提供する。
【解決手段】 有機高分子凝集剤粉末と硫酸アルミニウム粉末と石膏粉末と炭酸ソーダ粉末と無水アルカリ金属珪酸塩粉末との混合物よりなる凝集剤であって、その成分配合組成が、(1)有機高分子凝集剤粉末3〜6w%、(2)石膏粉末45〜60w%、(3)炭酸ソーダ粉末15〜30w%、(4)硫酸アルミニウム粉末12〜20w%、(5)無水カリウム水ガラス粉末又は無水リチウム水ガラス粉末4〜10w%、である凝集剤。
該凝集剤を、懸濁物(SS)濃度が50〜20,000mg/1リットルの汚濁排水に、高速攪拌下に100〜30,000ppmの範囲で添加・混合させた後、静置して懸濁物(SS)をフロックとして沈降分離して清澄水を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種汚濁排水の水処理用凝集剤及びそれを用いる汚濁排水の処理方法に関する。
特に、各種の建設汚泥、河川・港湾等の浚渫汚泥、浄水場汚泥、工場排水汚泥等の汚濁排水及び各種の工事、建設現場で発生する汚濁廃水の水処理に好適に使用され、フロックの沈降清澄速度を一層早めることができる優れる水処理用凝集剤及びその凝集剤を用いる各種汚濁排水の水処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下水処理場等における下水の汚濁排水、し尿及び有機性産業汚濁排水は、高度に水処理されて河川、海等に排出されている。また、地盤改良、トンネル掘削、ビル建設現場等で発生する工事・建設汚濁(又は泥奨)廃水や、河川、港湾等の工事現場で発生する浚渫泥奨や、各種産業における工場廃水浄化設備等で発生する各種産業汚濁廃水も、それぞれ高度に水処理されてリサイクル又は再利用水として使用され又は、河川、海等に排出されている。
【0003】
このような汚泥・汚濁廃水の終末処理に使用される水処理用凝集剤は、これら汚泥・汚濁廃水中に浮遊する混濁浮遊物を効果的に沈降させて清澄な水にさせるのに用いられている。
【0004】
このような水処理凝集剤には、硫酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム(PAC)、塩化アルミニウム、塩化第二鉄、ポリ硫酸第二鉄(ポリ鉄)等の無機系凝集剤が挙げられ、また、通常、ノニオン系、アニオン系、カチオン系の有機高分子凝集剤が組合わせて、汚濁排水、汚濁廃水の水処理に使用されている。
そして、これらの凝集剤は、単に汚泥・汚濁廃水に添加させれば、浮遊混濁物が、凝集・沈降・清澄化されるものである。
【0005】
例えば、その処理工程として、有機性汚泥に硫酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム(PAC)、塩化アルミニウム、ポリ硫酸第二鉄(ポリ鉄)等の従来から使用されている無機凝集剤の単独又は2種以上を組み合わせて添加させ、次いで、有機高分子凝集剤を添加させて脱水ろ過するに当たって、pHを4以下になるまで無機凝集剤を添加させた後、アルカリ剤を添加させてpHを4〜7に調整し、次いで両性高分子凝集剤を添加させて、浮遊汚泥汚濁物を低含水率のろ過ケーキとして処理されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−269500号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
汚泥・汚濁廃水を沈降清澄化させる水処理用凝集剤には、従来から、通常、凝集用主剤及び高分子凝集剤を含めての凝集助剤とを組み合わせて用いられている。
すなわち、従来から硫酸第二鉄、塩化第二鉄、ポリ硫酸第二鉄(ポリ鉄)等の鉄塩系の凝集剤のみでは、十分な凝集効果が得られず、また、消石灰等を併用してpH調整を要したりする傾向にあり、また、硫酸アルミ塩・硫酸鉄塩の塩基性混和凝集剤や、ポリ塩化アルミニウム(PAC)や、珪酸アルカリ水溶液の珪酸ゾル(又はコロイダルシリカ)等の液状凝集剤も、単独使用では一長一短があって万能ではない。
また、これら凝集剤は、何れも「水和反応」→「ゾル・ゲル化」→「フロック凝集化」等の作用は、廃水のpH領域に依存して、すなわち鉄イオン及びアルミイオン等のゼータ電位の調整下に凝集剤としての作用を発揮させる。従って、従来からこのような浮遊分散する汚泥・汚濁物の「凝集・フロック・沈降」化には、ゼータ電位との関連付け下に実績評価がなされている。その実績評価として、フロック化促進効果及びフロック粒径を増大化させるためから、それぞれ、アニオン性、カチオン性、ノニオン性等の高分子凝集剤を組み合わせて、架橋作用を発揮させる高分子凝集剤の併用が不可欠であることも事実である。
【0008】
本発明の目的は、各種の生活廃水、産業廃水の処理に、フロック形成速度が大きく、また、最終到達フロック径が大きく、沈降速度を速くして、上澄み液が短時間で得られる粉末状凝集剤の提供と、それを使用する汚濁排水の処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、本願発明は以下の凝集剤及びそれを用いる汚濁排水の処理方法である。
[1] 有機高分子凝集剤粉末と無機凝集剤粉末との混合物から凝集剤において、無水アルカリ金属珪酸塩粉末を添加・混合してなることを特徴とする凝集剤。
[2] 有機高分子凝集剤粉末と硫酸アルミニウム粉末と石膏粉末と炭酸ソーダ粉末と無水アルカリ金属珪酸塩粉末との混合物よりなる凝集剤であって、その成分配合組成が下記のものであることを特徴とする凝集剤。
(1)有機高分子凝集剤粉末 3〜6w%
(2)石膏粉末 45〜60w%
(3)炭酸ソーダ粉末 15〜30w%
(4)硫酸アルミニウム粉末 12〜20w%
(5)無水アルカリ金属珪酸塩粉末 4〜10w%
[3] 無水アルカリ金属珪酸塩粉末が、粒径5.0〜0.01μmの微小粒径のものであることを特徴とする[1]又は[2]に記載の凝集剤。
[4] 有機高分子凝集剤粉末がアクリルアミドであり、石膏粉末が半水石膏粉末であり、無水アルカリ金属珪酸塩がカリウム水ガラスの乾燥物であることを特徴とする[1]〜[3]のいずれか1項に記載の凝集剤。
[5] 有機高分子凝集剤粉末がアクリルアミドであり、石膏粉末が半水石膏粉末であり、無水アルカリ金属珪酸塩がリチウム水ガラスの乾燥物であることを特徴とする[1]〜[3]のいずれか1項に記載の凝集剤。
[6] 前記高分子凝集剤粉末が、平均粒子径60〜200μmであることを特徴とする[1]〜[5]のいずれか1項に記載の凝集剤。
[7] 懸濁物(SS)濃度が50〜20,000mg/1リットルの汚濁排水に前記[1]〜[6]のいずれか1項に記載の凝集剤を、高速攪拌下に100〜30,000ppmの範囲で添加・混合させた後、静置して懸濁物(SS)を粗大フロックとして沈降分離して清澄水を得ることを特徴とする汚濁排水の処理方法。
【0010】
本発明の水処理用凝集剤において、
(1)有機高分子凝集剤粉末は、公知のものが使用されるが、特にアクリルアミド系のものが好ましい。その配合量は3〜6w%が好ましい。粉末状の高分子凝集剤としては、アニオン系又はノニオン系で、例えば、アニオン系;ポリアクリル酸ソーダ、ポリスルホメチル化ポリアクリドアミド、また、ノニオン系;ポリアクリドアミド、ポリエチレンpキサイドが挙げられる。
また、無機凝集剤粉末も、公知のものが使用されるが、例えば硫酸アルミニウム、石膏、炭酸ソーダ等が使用される。
(2)そして、本願発明では、無水アルカリ金属珪酸塩粉末が添加・混合されるが、カリウム水ガラス又はリチウム水ガラスの乾燥物が好ましく、その配合量は4〜10w%が好ましい。特にこれらの水ガラスの乾燥物は、それらの液状水ガラスを乾燥して得られるものであって、、水ガラス粉末は、水ガラスを、例えばスプレードライ法で乾燥することにより得ることでき、フロックの粗大化に寄与するものである。無水アルカリ金属珪酸塩粉末の粒径は、微細なものが好ましく、5.0〜0.01μmのものが好ましい。それがより微細であればあるほど、フロックの生成時間がより短時間となるため、汚泥の急速分離に好ましい。
(3)石膏粉末としては、半水石膏が好ましく、その配合量は45〜60w%が好ましい。
(4)炭酸ソーダ粉末としては、市販のものでよいが、その配合量は15〜30w%が好ましい。
(5)硫酸アルミニウム粉末としては、市販のものでよいが、その配合量は12〜20w%が好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本願発明によれば、高速攪拌下で懸濁物(SS)を急速に粗大フロック化及び沈降分離することができる。
【0012】
本願発明の水処理凝集剤は、従来の凝集剤に比較して、急速な粗大フロックの生成ができ、より完全に汚水中の懸濁物を粗大フロック化して清澄な処理水を取得することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本願発明による凝集剤について、その実施に係わる最良形態を更に説明する。
【実施例】
【0014】
実施例1:
本願発明実施例の凝集剤の成分配合組成は、下記のとおりである。
(1)有機高分子凝集剤粉末 0.4kg
(2)半水石膏粉末 5.0kg
(3)炭酸ソーダ粉末 2.5kg
(4)硫酸アルミニウム粉末 1.5kg
(5)無水珪酸カリウム粉末 0.6kg
上記(1)〜(5)の各粉末を秤量し、それらを攪拌機にて混合して本願発明の凝集剤を製造した。
次に、前記実施例で得られた凝集剤を、懸濁物(SS)濃度が50〜20,000mg/リットルの汚濁排水に、高速攪拌下に凝集剤を100〜30,000ppmの範囲で添加・混合させ、静置した。
高速攪拌をすると直ちに、懸濁物(SS)が大きなフロックとなって生成した。
攪拌を停止すると、それらのフロックは数秒間で下底に沈降し、その上に懸濁物(SS)濃度が10〜50ppm以下の透明な清澄水が生成した。
以上のように、本願発明の凝集剤は、懸濁物中に強撹拌下で添加・混合することで、懸濁物のフロック化とその沈降分離が迅速に実行できる。
なお、上記高速攪拌下とは、120rpm以上の撹拌速度が好ましく、このような処理方法で各種の汚濁排水を処理することができる。
【0015】
実施例2:
本願発明実施例の凝集剤の成分配合組成は、下記のとおりである。
(1)有機高分子凝集剤粉末 0.4kg
(2)半水石膏粉末 5.0kg
(3)炭酸ソーダ粉末 2.5kg
(4)硫酸アルミニウム粉末 1.5kg
(5)無水珪酸リチウム粉末 0.6kg
上記(1)〜(5)の各粉末を秤量し、それらを攪拌機にて混合して本願発明の凝集剤を製造した。
次に、前記実施例で得られた凝集剤を、懸濁物(SS)濃度が50〜20,000mg/リットルの汚濁排水に、高速攪拌下に凝集剤を100〜30,000ppmの範囲で添加・混合させ、静置した。
高速攪拌をすると直ちに、懸濁物(SS)が大きなフロックとなって生成した。
攪拌を停止すると、それらのフロックは数秒間で下底に沈降し、その上に懸濁物(SS)濃度が10〜50ppm以下の透明な清澄水が生成した。
以上のように、本願発明の凝集剤は、懸濁物中に強撹拌下で添加・混合することで、懸濁物の粗大なフロック化とその沈降分離が迅速に実行できる。
なお、上記高速攪拌下とは、120rpm以上の撹拌速度が好ましく、このような処理方法で各種の汚濁排水を処理することができる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機高分子凝集剤粉末と無機凝集剤粉末との混合物から凝集剤において、無水アルカリ金属珪酸塩粉末を添加・混合してなることを特徴とする凝集剤。
【請求項2】
有機高分子凝集剤粉末と硫酸アルミニウム粉末と石膏粉末と炭酸ソーダ粉末と無水アルカリ金属珪酸塩粉末との混合物よりなる凝集剤であって、その成分配合組成が下記のものであることを特徴とする凝集剤。
(1)有機高分子凝集剤粉末 3〜6w%
(2)石膏粉末 45〜60w%
(3)炭酸ソーダ粉末 15〜30w%
(4)硫酸アルミニウム粉末 12〜20w%
(5)無水アルカリ金属珪酸塩粉末 4〜10w%
【請求項3】
無水アルカリ金属珪酸塩粉末が、粒径5.0〜0.01μmの微小粒径のものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の凝集剤。
【請求項4】
有機高分子凝集剤粉末がアクリルアミドであり、石膏粉末が半水石膏粉末であり、無水アルカリ金属珪酸塩がカリウム水ガラスの乾燥物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の凝集剤。
【請求項5】
有機高分子凝集剤粉末がアクリルアミドであり、石膏粉末が半水石膏粉末であり、無水アルカリ金属珪酸塩がリチウム水ガラスの乾燥物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の凝集剤。
【請求項6】
前記高分子凝集剤粉末が、平均粒子径60〜200μmであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の凝集剤。
【請求項7】
懸濁物(SS)濃度が50〜20,000mg/1リットルの汚泥排水に請求項1〜6のいずれか1項に記載の凝集剤を、高速攪拌下に100〜30,000ppmの範囲で添加・混合させた後、静置して懸濁物(SS)を粗大フロックとして沈降分離して清澄水を得ることを特徴とする汚泥排水の処理方法。


【公開番号】特開2010−172883(P2010−172883A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−21885(P2009−21885)
【出願日】平成21年2月2日(2009.2.2)
【出願人】(509033114)株式会社 地水 (3)
【出願人】(509033402)
【出願人】(508271919)
【Fターム(参考)】