説明

処理されたセルロース系繊維およびそれから製造された吸収性物品

【課題】本発明はポリアクリル酸のテロマーで処理されたセルロース系繊維を提供する。
【解決手段】少なくとも65の浸透係数および約70℃〜約105℃のTgdを有するアクリル酸のホスフィナート含有テロマーで形成される繊維内架橋を有するセルロース系繊維。さらに、当該セルロース系繊維を含む吸収性物品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は高い流体吸収特性を有するセルロース系繊維、およびそのようなセルロース系繊維から製造された吸収性物品、およびそのような繊維および構造体を製造する方法に関する。特に、本発明はアクリル酸のホスフィナート含有テロマーを有するセルロース系繊維およびそのような繊維を含む吸収性構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
実質的に個別化された(individualized)形態に架橋された繊維およびそのような繊維を製造するための様々な方法が当該技術分野において記載されている。用語「個別化された架橋繊維」とは、繊維内の化学的架橋結合を主として有するセルロース系繊維をいう。すなわち、架橋結合は別々の繊維間よりも、単一の繊維のセルロース分子間に主として存在する。個別化された架橋繊維は概して吸収性製品用途に有用である。その繊維自体およびそれら繊維を含む吸収性構造体は概して、従来の架橋されていない繊維に対して、少なくとも1つの有意な吸収性特性における向上を示す。しばしば、吸収性におけるその向上はは吸収容量の観点から報告される。さらに、個別化された架橋繊維から製造された吸収性構造体は、架橋されていない繊維から製造された吸収性構造体と比較して、概して増強された湿潤回復性および増強された乾燥回復性を示す。用語「回復性(resilience)」とは、セルロース系繊維から製造されたパッドが圧縮力の解放時に拡がって元の状態に戻る能力をいう。乾燥回復性は、特に、繊維が実質的に乾燥した条件にあって、適用された圧縮力の解放時に吸収性構造体が拡がる能力ことをいう。湿潤回復性は、特に、繊維が湿潤の条件にあって、適用された圧縮力の解放時に吸収性構造体が拡がる能力をいう。
【0003】
架橋繊維に関して、架橋前にまたは架橋プロセスの間に、個別の繊維構造体の内部に充分に架橋剤が浸透しかつ分布することが重要である。繊維内への不充分な浸透および分布は、低減された繊維内架橋をもたらし、架橋繊維およびそれから形成される吸収性構造体の性能特性を悪くするであろう。
【0004】
概して、個別化された架橋繊維を製造するための3つのカテゴリーのプロセスが報告されてきた。これらのプロセスは、後述するように、乾燥架橋プロセス、水溶液架橋プロセス、および実質的に非水性の溶液架橋プロセスとして本明細書において参照される。
【0005】
乾燥架橋技術を用いて個別化された架橋繊維を製造するプロセスは米国特許第3,224,926号、L.J.Bernardinに記載されている。個別化された架橋繊維はセルロースドライラップに架橋剤を噴霧し、その繊維を機械的作用によって離解し、そして架橋を起こす高温でその繊維を乾燥させることにより、その繊維が実質的に個別の状態でありつつ、製造される。その繊維は、架橋の前に脱水される結果として、膨潤されていないつぶれた状態で本質的に架橋される。米国特許第3,224,926号に例示されるような、繊維が膨潤されておらずつぶれた状態でありつつ、架橋が引き起こされるプロセスが「乾燥架橋」繊維を製造するためのプロセスと呼ばれる。乾燥架橋繊維は、架橋結合により概して高度に硬くされており、そしてそれから製造される吸収性構造体は比較的高い湿潤および乾燥回復性を示す。乾燥架橋繊維は低い流体保持値によりさらに特徴づけられる。
【0006】
水溶液架橋繊維を製造するプロセスが、例えば、米国特許第3,241,553号、F.H.Steigerに開示されている。個別化された架橋繊維は、架橋剤および触媒を含有する水溶液中で繊維を架橋することにより製造される。この方法で製造される繊維は、本明細書において、以後、「水溶液架橋」繊維と呼ばれる。セルロース系繊維に対する水の膨潤効果のために、水溶液架橋繊維は、つぶれておらず膨潤された状態でありつつ架橋される。乾燥架橋繊維に対して、米国特許第3,241,553号に開示されるような水溶液架橋繊維はより大きな柔軟性およびより低い剛性を有し、そしてより高い流体保持値(FRV)によって特徴づけられる。水溶液架橋繊維から製造される吸収性構造体は、乾燥架橋繊維から製造された構造体よりも低い湿潤および乾燥回復性を示す。
【0007】
上述のような架橋繊維は、おむつのような低密度の吸収性製品用途、および女性用生理用品のような、より高い密度の吸収性製品用途にも有用であると考えられている。しかし、従来の繊維を超えるそれらの不利益およびコストの観点から、そのような繊維は有意な商業的成功をもたらす充分な吸収性利点を提供していない。また、ホルムアルデヒドおよびホルムアルデヒド付加生成物のような文献において参照される架橋剤で架橋された繊維の商業的な魅力は安全の問題のために損なわれる。
【0008】
例えば、すべてHerronらへの米国特許第5,137,537号、第5,183,707号および米国特許第5,190,563号におけるように、セルロース系繊維を架橋するために特定のポリカルボン酸の使用が知られている。HerronはC−Cポリカルボン酸で架橋された個別化されたセルロース系繊維を含む吸収性構造体を開示する。ポリカルボン酸架橋剤により形成されるエステル架橋結合は、アセタール架橋結合を形成するモノ−およびジ−アルデヒド架橋剤から得られた架橋結合とは異なっている。ホルムアルデヒドおよびホルムアルデヒド付加生成物とは異なり、C−Cポリカルボン酸架橋剤は人の肌に使用するのに非毒性かつ安全である。
【0009】
好ましいポリカルボキシル架橋剤の1つ、すなわちクエン酸は比較的低い価格で大量に入手可能であって、それをホルムアルデヒドおよびホルムアルデヒド付加生成物に対して商業的に競争に勝てるようにする。残念なことに、クエン酸は架橋反応を進めるのに長い硬化時間および多量の触媒を必要とする場合があり、これはコストを増大させる。さらに、高温で、クエン酸は不安定で、白色のセルロース系繊維を変色(すなわち黄色化)させることとなり、かつ不快な臭気が生じる場合がある。
【0010】
セルロース繊維を架橋するためのポリマー系ポリカルボン酸の使用は、また、欧州特許第0765416B1号および米国特許第5,549,791号に知られている。これらの文献は、分子量500〜40,000を有するポリマー系ポリアクリル酸架橋剤で架橋された個別化されたセルロース系繊維を開示し、この架橋剤はポリアクリル酸ポリマー、アクリル酸とマレイン酸のコポリマー、およびポリアクリル酸とポリマー系モノアルキルホスフィナートおよびポリマー系モノアルキルホスホネートのコポリマーである。記載されるポリマー系ポリアクリル架橋剤はセルロース系繊維とエステル架橋結合を形成するのに特に好適である。重要なことに、エステル架橋繊維はクエン酸のようなアルファヒドロキシ酸で架橋されたものよりも光沢がある傾向がある。さらに、ポリマー系ポリアクリル架橋剤は高温で安定であり、よってより効率的な架橋を促進する。
【0011】
繊維内架橋セルロース繊維およびそれから形成される吸収性構造体を製造するためのポリマー系ポリカルボン酸架橋剤の使用は、ホルムアルデヒドおよび/またはホルムアルデヒド付加生成物並びにC−Cポリカルボン酸架橋剤に関連する多くの不利益を克服するように思える。しかし、ポリマー系ポリカルボン酸架橋剤で架橋された繊維を製造することに関連するコストは、顕著な商業的成功を結果的にもたらすには高くなりすぎる場合がある。よって、人の肌に使用するのに安全であり、高い流体吸収特性を有する吸収性構造体を提供し、かつ商業的にも実行可能であるセルロース系繊維架橋剤を見いだす必要性が依然として存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許第3,224,926号明細書
【特許文献2】米国特許第3,241,553号明細書
【特許文献3】米国特許第5,137,537号明細書
【特許文献4】米国特許第5,183,707号明細書
【特許文献5】米国特許第5,190,563号明細書
【特許文献6】欧州特許第0765416B1号明細書
【特許文献7】米国特許第5,549,791号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、アクリル酸のホスフィナート含有テロマー架橋剤で架橋された個別化された繊維およびそのような繊維から製造された吸収性構造体であって、ここで、その架橋された繊維から製造されたその吸収性構造体は、公知のポリマー系ポリカルボン酸架橋繊維から製造された吸収性構造体と比較して、より高レベルの吸収容量を有し、かつ公知のポリマー系ポリカルボン酸架橋繊維から製造された吸収性構造体と比較してより高い回復性を示す、前記繊維および前記吸収性構造体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、少なくとも65の浸透係数(Penetration Factor)および約70℃〜約105℃のTgdを有するアクリル酸のホスフィナート含有テロマー(phosphinate−containing telomer of acrylic acid)で形成された繊維内架橋を有するセルロース系繊維を包含する。
本発明のさらなる態様は、テロマーがテロゲンとしてジ亜リン酸またはその塩のホスフィナート残基を;およびモノマーとしてアクリル酸またはアクリル酸と少なくとも1種のコモノマー、ここで存在するコモノマーの合計量はアクリル酸モノマーとコモノマーの合計重量の10重量%以下である、を有する。
本発明のさらなる態様は、テロマーがアクリル酸モノマーとコモノマーとを含有し、当該コモノマーがマレイン酸、イタコン酸、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、3−アリルオキシ−1,2−プロパンジオール、トリメチロールプロパンアリルエーテルまたはジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートから選択される。
本発明のさらなる態様は、テロマーが約75℃〜約100℃のTgdを有する。
本発明のさらなる態様は、テロマーが約80℃〜約95℃のTgdを有する。
本発明のさらなる態様は、テロマーが少なくとも70の浸透係数を有する。
本発明のさらなる態様は、テロマーが少なくとも75の浸透係数を有する。
さらに、本発明は、上記テロマーで架橋された吸収性物品を包含する。
【発明の効果】
【0015】
本発明のホスフィナート含有テロマーは繊維構造体内で向上された流動性および移動性を有し、よって、より効率的な繊維内架橋を促進する。さらに、アクリル酸のホスフィナート含有テロマーで架橋されたこれら個別化されたセルロース系繊維から製造された吸収性構造体は増強された湿潤回復性および乾燥回復性並びに向上された吸収性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
アクリル酸のホスフィナート含有テロマー架橋剤は、処理された繊維の製造において知られた多くの方法の任意の1つによりセルロース繊維に適用されうる。例えば、繊維シートがホスフィナート含有テロマーを含む浴を通過するように、ホスフィナート含有テロマーは繊維と接触させることができる。あるいは、ホスフィナート含有テロマー溶液を繊維に噴霧し、または噴霧および加圧し、または浸せきおよび加圧することをはじめとするホスフィナート含有テロマーを適用する別の方法も本発明の範囲内にある。
【0017】
「テロマー」は連鎖移動剤の存在下に形成される付加ポリマーであって、モノマー単位の数平均は約15を超えない。本明細書に使用されるものとして、用語「アクリル酸のホスフィナート含有テロマー(phosphinate−containing telomer of acrylic acid)」とは、モノアルキル置換ホスフィナート基を有するアクリル酸のテロマーおよびアクリル酸のコポリマー、ジアルキル置換ホスフィナート基を有するアクリル酸のテロマーおよびアクリル酸のコポリマー、並びにその混合物を有するアクリル酸のテロマーおよびアクリル酸のコポリマーをいう。このようなホスフィナート基の例は、米国特許第5,294,686号の第5欄から第6欄20行目に開示されている。この’686号特許において言及されているように、ホスフィナート含有テロマーはジ亜リン酸ナトリウムテロゲンから製造され、これはホスフィナート含有テロマーだけでなく、他のリン含有テロマーも生じさせる。本発明においては、本発明者らはホスフィナート含有テロマーが純粋であるべきことを示唆していない。他の種が存在していてもよい。
【0018】
概して、本発明の繊維内(intrafiber)架橋セルロース繊維はホスフィナート含有テロマー架橋剤をセルロース繊維に適用し、処理されたマットを個別の繊維に分け、次いでホスフィナート含有テロマーとセルロース系繊維内の反応性部位との間の架橋形成を生じさせるのに充分な温度で架橋剤を硬化させることにより形成されうる。ホスフィナート含有テロマー架橋剤は、架橋を生じさせるのに充分な温度および時間で、架橋剤処理された繊維を加熱することにより硬化されてもよい。架橋の速度および程度は繊維の水分含量、温度およびpH、並びに触媒の量および種類をはじめとする複数の要因に依存する。架橋剤の硬化のためには時間−温度相関が存在することを当業者は認識するであろう。概して、硬化の程度およびその結果としての架橋の程度は硬化温度の関数である。本発明のポリマー系ポリカルボン酸架橋剤は好ましくは約140℃〜約200℃の範囲の温度で硬化される。
【0019】
概して、本発明のセルロース繊維は米国特許第5,447,977号に記載されるようなシステムおよび装置によって製造されることができる。簡単に言うと、セルロース繊維のマットを繊維処理帯域を通して運ぶための運搬装置;ホスフィナート含有テロマー架橋剤のような処理物質をソースから繊維処理帯域にある繊維に適用するためのアプリケータ;マットを含む個別のセルロース繊維を完全に分離して、実質的に壊れていないセルロース繊維を含んでなる繊維アウトプット(fiber output)を形成するための繊維化装置(fiberizer);並びに残留する水分をフラッシュ蒸発させかつ架橋剤を硬化させ、乾燥し硬化した架橋繊維を形成するための、繊維化装置に連結された乾燥機を含むシステムおよび装置によって、その繊維は製造される。
【0020】
さまざまな天然起源のセルロース系繊維が本発明に適用可能である。軟木(softwood)、硬木(hardwood)またはコットンリンターからの消化された繊維が好ましくは利用される。アフリカハネガヤ、バガス、ケンプ、亜麻並びに他の木質系およびセルロース系繊維源からの繊維が本発明の原料物質として使用されてもよい。繊維はスラリーで、シートにされていない形態でまたはシート形態で供給されてもよい。湿潤ラップ、乾燥ラップまたは他のシート形態として供給される繊維が、好ましくは、そのシートを機械的に崩壊、典型的には繊維を架橋剤と接触させた後に崩壊させることにより固定されていない形態にされる。最も好ましくは、繊維は乾燥履歴のない繊維である。ドライラップの場合には、繊維へのダメージを最小化するために機械的崩壊前に繊維を湿らせることが有利である。本発明と併せて使用される最適な繊維源は意図される特定の最終用途に依存する。概して、化学的パルピングプロセスにより製造されるパルプ繊維が好ましい。完全に漂白された、部分的に漂白された、および未漂白の繊維が適用可能である。その優れた光沢および消費者へのアピールのために漂白されたパルプを使用することがしばしば望まれる場合がある。本発明のプロセスに使用するためには、少なくとも部分的に漂白された木質繊維が好ましい。紙タオル、並びにおむつ、サニタリーナプキン、生理用品および他の類似の吸収性紙製品のための吸収性パッドの様な製品については、その優れた吸収特性のために、サザンソフトウッド(southern softwood)パルプからの繊維を利用することが特に好ましい。
【0021】
本明細書において使用される、「シート」または「マット」は、一緒に共有結合されていないセルロース繊維または他の繊維を含む、任意の不織シート様構造を意味する。繊維は木材パルプまたはコットン「ラグ」、麻、草、茎、殻、トウモロコシの茎もしくはシートにすることができるセルロース繊維の任意の他の好適なソースをはじめとする他のソースから得ることができる。他のソースからも利用可能であるが、本発明において使用するのに有利な非架橋セルロース系繊維は、主として木材パルプに由来する。本発明において使用するのに好適な木材パルプ繊維は、クラフトプロセスおよび亜硫酸プロセスなどの周知の化学プロセスから、その後に漂白するかまたは漂白しないかにかかわらず得ることができる。パルプ繊維は熱化学的方法、ケミサーモメカニカル方法またはこれらの組み合わせにより処理されることもできる。好ましいパルプ繊維は化学的方法により製造される。砕木繊維、リサイクルされたまたは二次(secondary)木材パルプ繊維、並びに漂白されたおよび未漂白の木材パルプ繊維が使用されてもよい。軟木および硬木が使用されてもよい。木材パルプ繊維の選択の詳細は当業者に周知である。これらの繊維は、Weyerhaeuser Companyをはじめとする多くの会社から商業的に入手可能である。例えば、本発明に使用できるサザンパインから製造される好適なセルロース繊維はWeyerhaeuser Companyから、表示CF416、CF405、NF405、PL416、FR416、FR516およびNB416で入手できる。ノーザンソフトウッド(northern softwoods)からの溶解パルプとしては、そのすべてが95%のアルファ含有量を有するMAC11 Sulfite、M919、WEYCELLおよびTR978、並びに91%のアルファ含有量を有するPHがあげられる。高純度マーセル化(mercerized)パルプ、例えばBuckeyeから入手可能なHPZ、HPZ111、HPZ4およびHPZ−XS、並びにRayonierから入手可能なPorosonier−Jも好適である。
【0022】
架橋セルロース繊維は、それぞれが複数のセルロース分子を含み、セルロース分子上のヒドロキシル基の少なくとも一部分が、外部から添加された「架橋性物質」または「架橋剤」と呼ばれる化学試薬を用いた架橋反応を介して、同じ繊維における隣接するセルロース分子上のヒドロキシル基と共有結合している個別の繊維である。好適な架橋剤は概して、上述の隣接ヒドロキシル基間に共有結合された「橋」を生じさせる二官能性型のものである。
【0023】
架橋セルロース繊維は、高いロフト(loft)、低い密度、高い水吸収性、回復性および軽い重量のような1以上の所望の特性を有する木材パルプに由来する材料における特有の適用性を有している。結果として、架橋セルロース繊維はおむつおよびパッドのような使い捨て可能な製品にみられる吸収性構造体における使用のための候補物である。
【0024】
本発明者らは、本発明に適用可能な架橋剤がアクリル酸のホスフィナート含有テロマーおよびその混合物を含むことを見いだした。特に好ましいホスフィナート含有テロマー架橋剤としては、モノアルキルホスフィナート置換およびジアルキルホスフィナート置換ポリアクリル酸ポリマーおよびアクリル酸コポリマーがあげられ、これはセルロース系繊維に最もよく浸透し、乾燥温度(90−120℃)で優れた流動特性を示す。これらのポリマーは、本発明において記載されるように、セルロース繊維に浸透し、個別化されたセルロース繊維における繊維内架橋を効果的に形成するためのその能力のために好ましく、および本明細書において後述される架橋プロセスにおいて使用される場合のセルロース光沢へのそのネガティブでない効果のために好ましい。そのポリマーは、参照によって組み込まれる米国特許第5,256,746号および第5,294,686号に記載される。
【0025】
本発明における使用に好適なアクリル酸のホスフィナート含有テロマーは特に低いガラス転移温度を有する。これらのテロマーのTg乾燥(Tgd)は、乾燥されたポリ(アクリル酸)テロマーのTgよりも15℃低く、好ましくは20℃低く、最も好ましくは30℃低い。特に好ましいホスフィナート含有テロマーは約87℃のガラス転移温度Tgを有し、これは文献において言及される市販のアクリル酸のホスフィナート含有テロマーよりも33℃低い。ホスフィナート含有テロマーは、連鎖移動剤としてのジ亜リン酸およびその塩(市販のジ亜リン酸ナトリウム)を用いてアクリル酸を重合することにより製造され、これは参照によって組み込まれる米国特許第5,256,746号および米国特許第5,294,686号に記載される。ホスフィナート含有テロマーは、個別のセルロース系繊維の内側に容易に浸透し分布し、高レベルの吸収性、回復性および光沢を有する架橋繊維を提供し、並びに人の肌に対して安全でかつ非刺激性なので、ホスフィナート含有テロマーが特に好ましい。本発明において有用なこの種のポリマーはRohm and Haas Companyから入手可能である。
【0026】
本発明に適用可能な他のホスフィナート化ポリアクリル酸ポリマーはアクリル酸とコモノマーとのホスフィナート化コポリマーであり、ここで当該コモノマーはマレイン酸、イタコン酸、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、3−アリルオキシ−1,2−プロパン−ジオール、トリメチロールプロパンアリルエーテルまたはジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートの1種以上から選択される。好ましくは、ポリマーの非ホスフィナート化部分のアクリル酸の量は90重量%以上であり、コモノマーの量は10重量%以下である。コポリマーは概して上述のガラス転移温度Tgdを有する。
【0027】
本発明における使用に好適なホスフィナート含有テロマーはセルロース系繊維に浸透し、優れた流動特性−乾燥温度90−120℃での低い粘性を示す。これらテロマーは繊維内架橋のために特に好適である。
【0028】
上述のホスフィナート含有テロマーおよびコポリマーは単独で、またはクエン酸のような他のポリカルボン酸と組み合わせて使用されうる。ポリアクリル酸ポリマーの分野の当業者は、上述のホスフィナート含有テロマー架橋剤が遊離の酸の形態およびその塩などの様々な形態で存在できることを認識するであろう。遊離の酸の形態が好ましいが、すべての形態が本発明の範囲内に含まれるべきであることが意味される。
【0029】
本発明の個別化された架橋繊維は、繊維と反応したポリマー系ポリアクリル酸架橋剤の有効量を繊維内架橋結合の形態で有する。本明細書に使用される、「架橋剤の有効量」とは、従来の未架橋繊維と比較して、繊維自体および/または個別化された架橋繊維を含む吸収性構造体の少なくとも1つの有意な吸収特性における改良を提供するのに充分な架橋剤の量をいう。有意な吸収特性の一例はドリップ容量(drip capacity)であり、これは吸収性構造体の流体吸収容量と流体吸収速度とを組み合わせた測定である。ドリップ容量を決定するための手順の詳細な記載は後述される。
【0030】
個々に架橋されたセルロースパルプ繊維または乾燥されたシングレート化(singulated)セルロースパルプ繊維は、吸収性パーソナル物品、婦人衛生パッド、および尿失禁用製品を製造するのに望まれる。
【0031】
本発明に従って製造された繊維は剛性並びに回復性、低い悪臭および高い光沢の独自の組み合わせを有し、これはその繊維から製造された吸収性構造体が高レベルの吸収性を維持し、かつ高レベルの回復性および乾燥圧縮吸収性構造体の湿潤に対する高レベルの拡張応答性を示すことを可能にする。特に本発明のアクリル酸のホスフィナート含有テロマーで処理された繊維は、限界のまたは低減された温度条件下で架橋される場合に、比較のポリマー系架橋剤を用いて類似の低減された温度条件下で架橋された繊維から製造された吸収性構造体よりも、高い吸収性を有する架橋繊維から製造された吸収性構造体を提供する。理論に拘束されることを望むものではないが、そのような条件下で、本発明のホスフィナート含有テロマーは、セルロース系繊維の内側に深く浸透し、より低減された硬化温度で乾燥状態で移動可能および流動可能になる増大された能力のために、向上された架橋性を提供するものと考えられる。そのような移動可能および流動可能状態における本発明のホスフィナート含有テロマーは、セルロース上のヒドロキシル基により容易にアクセスし、エステル基を形成するかまたはエステル交換反応を起こすと考えられる。アクリル酸のホスフィナート含有テロマーもモノアルキルホスフィ(オン)ナートおよびジアルキルホスフィナートの形態で、エステル結合形成の位置で触媒を提供する。そのような繊維は以下の工程を含む次の方法を実施することにより製造される:
a.セルロース系繊維を提供する工程;
b.アクリル酸のホスフィナート含有テロマーからなる群から選択される架橋剤を含む溶液と前記繊維を接触させる工程;
c.前記繊維を実質的に個別の形態に機械的に離散させる工程;
d.前記繊維を乾燥させ、前記繊維が実質的に個別の形態である間に、前記架橋剤と前記繊維とを反応させて架橋結合を形成し、繊維内架橋を形成する工程;
e.任意選択的に、処理された繊維を乾燥させ、繊維がシート状、マットまたはウエブ形態である間に、前記架橋剤を前記繊維と反応させて架橋結合を形成し、繊維内架橋結合を形成する工程。
【0032】
セルロース繊維に架橋剤(上述のテロマーなど)を適用し、繊維を個別の繊維に離散させ、繊維を硬化させて繊維内架橋を形成するための様々な方法、デバイス、およびシステムが記載されている。
【0033】
例えば、米国特許第3,440,135号は、架橋剤をセルロース系繊維マットに適用し、次いでそのマットを湿潤にしたまま繊維化装置、例えばハンマーミルを通してマットを繊維化し、および得られる緩んだ繊維を2段階乾燥機で乾燥させるためのメカニズムを開示する。第1の乾燥段階は繊維から水蒸気をフラッシュするのに充分な温度であり、第2の乾燥段階は架橋剤の硬化をもたらす温度である。
【0034】
米国特許第6,436,231号は非架橋セルロース繊維で構成される1以上のマットから多量の個別の架橋セルロース繊維を製造するための装置を記載する。その装置は、繊維処理帯域で架橋性物質をセルロース繊維のマットに適用するアプリケータ;繊維化装置入り口を有する繊維化装置;マットを繊維処理帯域を通し、かつ硬化のために停止することなく繊維化装置入り口に直接運ぶコンベアを含む。繊維化装置はマットのセルロース繊維を、実質的に壊れていない個別のセルロース繊維の繊維アウトプットに離散させるのに充分なハンマー打ち力を提供する。繊維化装置に結合された乾燥機は繊維アウトプットを受け取り、その繊維アウトプットを乾燥させ、架橋性物質を硬化させ、それにより乾燥し硬化した繊維を形成する。繊維化装置は好ましくは処理されたマットを繊維化し、低いニット(nit)レベルを有する繊維アウトプットを形成する。
【0035】
米国特許出願公開第20060113707号は、繊維内架橋高バルク繊維を製造するための、セルロース繊維のシート内での架橋剤の高い添加レベルおよび均一な分布を達成できる方法およびシステムを記載する。1つの方法においては、架橋剤は、カーテンヘッダーまたはカーテンシャワーを有する流体分配器を通って、第1と第2の対向する面を有する移動しているセルロース繊維のシートに適用される。
【0036】
架橋剤は流体分配器からセルロース繊維のシートの第1の面上に分配され、セルロース繊維のシートの第1の面への架橋剤の適用の後、分配工程の下流で、セルロース繊維のシートの第2の面が架橋剤と接触させられる。セルロース繊維のシートの第2の面を架橋剤と接触させる好ましい方法は、プレス機のロールとセルロース繊維のシートの第2の面との間に形成されるニップに架橋剤を運ぶ第2の流体分配器を使用することである。シートに様々な種類の架橋剤を添加するために、および/または必要に応じてこれらの薬剤のさらなる適用のために追加のヘッダーが使用されてもよい。このシステムの他の態様は加圧ロール、2本のロールを含む水平オフセット加圧機、または2本のロールを含む垂直加圧機を含み、シートのすべての表面領域が充分に架橋剤と接触されることを確実にするため、架橋剤の池を生じさせる。よって、架橋剤で含浸されたそのようなシートから製造された個別化された架橋繊維は望まれるバルクを示す。
【0037】
米国特許第7,018,508号は、比較的低いノット(knot)含量を有するシングル化(singulated)、架橋および乾燥された繊維を形成するための装置および方法を記載し、その方法は本発明のセルロース系繊維を製造するために使用されうる。この方法に従って、架橋剤および空気を含む湿潤パルプがジェット乾燥機中に導入される。ジェット乾燥機中でパルプは乾燥され、シングル化パルプ繊維を形成する。そのパルプはジェット乾燥機から取り出され空気から分離される。架橋繊維を製造するために、乾燥システムは、場合によって、硬化ステーションを含むことができる。乾燥シングル化繊維を製造する従来の方法に組み込まれることができない多くの処理物質、例えば粘稠溶液または粒子が、ジェット乾燥機で乾燥されかつシングル化される前に、供給されるパルプに適用されることができる。この方法は、ハンマーミル処理された繊維よりも大きなキンク(kink)、カールおよび個別のねじれを有するシングル化架橋繊維を形成する。
【0038】
米国特許第6,620,293号および第7,018,511号は主として、シートまたはボード形態の繊維内架橋マーセル化セルロース系繊維を製造するための方法を開示し、これはより経済的であることに加えて、生成物中により少ないニットおよびノットしか生じさせず、かつ向上された吸収特性をもたらす。これらの方法は、処理された繊維が架橋される前に、処理された繊維が、個別化された繊維形態に離解されるかまたは機械的に分けられる工程をそれらが含まないという点で、上述の方法とは異なっている。
【0039】
繊維が架橋剤および触媒(触媒が使用される場合には)と接触しうる様々な方法が存在する。繊維が架橋剤および触媒(触媒が使用される場合には)と接触する特定の方法にかかわらず、セルロース系繊維、架橋剤および触媒が好ましくは混合され、および/または充分に繊維に浸され、個別の繊維との充分な接触および個別の繊維の含浸を確実にする。
【0040】
セルロース系繊維は、有効量の、好ましくは、乾燥繊維重量を基準に計算して、約0.1重量%〜約10.0重量%、より好ましくは約3.0重量%〜約8.0重量%の架橋剤が繊維と反応し、繊維内架橋結合を形成するのに充分な量の架橋剤と接触させられる。
【0041】
好ましくは架橋剤は、架橋剤が個別の繊維構造体の内側に浸透する様な条件下で、液体媒体中で繊維と接触させられる。繊維処理は噴霧器、飽和器、サイズプレス、ニッププレス、ブレードアプリケーターシステムおよび発泡体アプリケータを用いてなされることができ、架橋剤を適用することができる。好ましくは、架橋剤は均一に適用される。マットの至るとことに均一に化学物質を分布させるのを助ける対になった含浸ローラーの間に湿潤繊維を通すことができる。ローラーは協同的に軽い圧力(例えば、1−2psi)をマット上に適用し、その幅にわたって、マットの内部に均一に架橋剤を向かわせる。
【0042】
繊維が架橋剤および触媒(触媒が使用される場合には)と接触させられる特定の方法にかかわらず、セルロース系繊維、架橋剤および触媒が好ましくは混合されおよび/または繊維に充分に浸され、個別の繊維との充分な接触および個別の繊維の含浸を確実にする。本発明のホスフィナート含有テロマー架橋剤はセルロース系基体への予想外の浸透能力を提供し、このことは架橋前の繊維構造体内での架橋剤の実質的な浸透および分布のための接触時間を低減させる。
【0043】
架橋剤はアクリル酸のホスフィナート含有テロマー、特に少なくとも90重量%のアクリル酸を反応性モノマーとして有するアクリル酸のホスフィナート含有コ−テロマーを包含する。架橋性物質は当該技術分野で周知の任意の様々な他の成分を含む液体溶液である。必要な場合には、架橋性物質は、架橋性物質の分子とセルロース分子との間の結合反応を促進するための触媒を含むことができる。しかし、本発明のアクリル酸のホスフィナート含有テロマーは触媒を必要とせず、そしてpHが特定の範囲内に保たれるならば、架橋は有利な速度で達成されうる(より詳細に後述される)。
【0044】
繊維が架橋剤で処理された後、架橋剤が繊維と反応する前に、それらは好ましくは、「フラッフ(fluff)」として知られる低密度の、個別化された繊維形態まで機械的に離解される。当該技術分野において現在知られているまたは今後知られるようになりうる様々な方法によって機械的離解が行われることができる。
【0045】
離解工程は、乾燥工程を別にして、追加のカールをもたらすと考えられている。その後の乾燥は、繊維のカールした配置により増強されるねじれの程度で、繊維のねじれを伴う。本明細書において使用される、繊維「カール」とは、繊維の長手軸周りの繊維の幾何学的曲りをいう。「ねじれ」とは繊維の長手軸の垂直断面周りの繊維の回転をいう。本発明の好ましい態様の繊維は、個別化された、繊維内結合形態で架橋されており、並びに高度にねじれておよびカールしている。乾燥および架橋の間、繊維を実質的に個別の形態に維持することは、乾燥の間に繊維がねじれ、それによりそのようなねじれて、カールした状態で架橋されることを可能にする。繊維がねじれおよびカールしうるような条件下で繊維を乾燥することは実質的に拘束されていない条件下で繊維を乾燥することと称される。一方で、繊維はシート状の形態で乾燥されることもできる。
【0046】
セルロース系繊維を離解するための適用可能な方法は、これに限定されるものではないが、米国特許第3,987,968号に記載されるような装置、Waringブレンダーを用いた処理および繊維を回転ディスクリファイナー、ハンマーミルまたはワイヤブラシと接線方向に接触させることがあげられる。好ましくは、そのような離解の間空気の流れが繊維の方向に向けられ、繊維を実質的に個別の形態に分けるのを助ける。フラッフを形成するために使用される特定の機械的装置にかかわらず、最初に少なくとも約20%の水分を含有しながら、より好ましくは約20〜約60%の水分を含有しながら、繊維は好ましくは機械的に処理される。機械的離解の結果として付与されるカールまたはねじれに加えて、高コンシステンシーの繊維または部分的に乾燥された繊維の機械的リファイニングも繊維にカールまたはねじれをもたらすために利用されうる。
【0047】
繊維が架橋剤(および触媒、ただし触媒が使用される場合)で処理されたら、繊維内結合が実質的に存在しない繊維と架橋剤が反応させられる。架橋剤は反応して単独のセルロース鎖のヒドロキシル基間、または単独のセルロース系繊維の近接して位置するセルロース鎖のヒドロキシル基間の架橋結合を形成する。
【0048】
本発明の範囲を限定することを示すかまたは意図するものではないが、ポリカルボン酸架橋剤のカルボキシル基はセルロースのヒドロキシル基と反応してエステル結合を形成すると考えられる。安定な架橋結合を提供する望ましい結合タイプであると考えられるエステル結合の形成は、酸性反応条件下で有利である。よって、架橋剤と繊維との間の接触の時間の間に、酸性架橋条件、すなわち、約1.5〜約5の範囲のpHが本発明の目的のために好ましく、より好ましくは約pH2.0〜約4.5であり、最も好ましくはpH約2.1〜約3.5である。
【0049】
セルロース系繊維は概して脱水され、場合によって乾燥されるべきである。作業可能なおよび最適なコンシステンシーは使用される離解装置の種類に応じて変化するであろう。好ましい実施態様においては、セルロース系繊維は約20%〜約80%のコンシステンシーまで脱水され、最も有利には乾燥される。より好ましくは、繊維は約40%〜約80%のコンシステンシーレベルまで脱水および乾燥される。これら好ましい範囲内まで繊維を乾燥することは、概して、より高い水分レベルに関連するノットの過剰形成なしに、およびより低い水分レベルに関連する高レベルの繊維損傷なしに、個別化された形態への繊維の離解を容易にするであろう。
【0050】
脱水はパルプの機械的加圧、遠心分離または空気乾燥のような方法により達成されうる。脱水後、次いで繊維は機械的に離解される。
【0051】
次いで、離解された繊維は、フラッシュ乾燥またはジェット乾燥のような当該技術分野で周知の方法により60%〜100%コンシステンシーまで乾燥される。この段階は、繊維から水が取り除かれるときに、追加のねじれおよびカールを繊維に与える。この追加の乾燥工程により取り除かれる水の量は変化することができるが、より高いコンシステンシーへのフラッシュ乾燥は、60%−100%の範囲の低い部分でのコンシステンシーへのフラッシュ乾燥がもたらすよりも、より高レベルの繊維ねじれおよびカールをもたらすと考えられる。好ましい実施態様において、繊維は約90%−95%コンシステンシーまで乾燥される。このレベルのフラッシュ乾燥は、100%コンシステンシーに到達するのに必要とされる、より高いフラッシュ乾燥温度および保持時間を必要とすることなく、所望のレベルの繊維ねじれおよびカールを提供すると考えられる。60%−100%の範囲の高い部分である90%−95%のようなコンシステンシーまで繊維をフラッシュ乾燥することは、フラッシュ乾燥に続く硬化段階で達成されなければならない乾燥の量も低減する。
【0052】
次いで、フラッシュまたはジェット乾燥された繊維は、架橋剤を硬化、すなわち、セルロース系繊維と反応させるのに有効な時間の間、好適な温度に加熱される。架橋の速度および程度は繊維の乾燥度、温度、pH、触媒および架橋剤の量および種類、並びに架橋が行われる間繊維を加熱および/または乾燥するのに使用される方法に応じて変化する。特定の温度での架橋形成は、連続空気通過(air through)乾燥が伴われる場合には、静的オーブンで乾燥/加熱にかけられる場合よりも、ある初期水分含量の繊維について、より高速で起こるであろう。架橋剤の硬化には多くの温度−時間相関が存在することを当業者は認識するであろう。静的大気条件下、約30分〜60分の期間での、約145℃〜約165℃の乾燥温度は、概して、約10%未満の水分含量を有する繊維について許容できる硬化効率を提供するであろう。当業者はより高い温度および強制空気対流(forced air convection)が硬化に必要とされる時間を低減させることも認識するであろう。よって、空気通過オーブンにおける、約2分〜20分の期間での、約170℃〜約190℃の乾燥温度も、概して、約10%未満の水分含量を有する繊維について許容できる硬化効率を提供するであろう。硬化温度は約225℃未満、好ましくは約200℃未満に維持されるべきであり、これは繊維のこのような高温への曝露が繊維の暗色化または他の損傷をもたらしうるからである。
【0053】
理論に拘束されるわけではないが、アクリル酸のホスフィナート含有テロマー架橋剤とセルロース系繊維との化学反応は、これら物質の混合物が硬化オーブンにおいて加熱されるまで始まらないと考えられている。硬化段階の間、セルロースに浸透したアクリル酸のテロマーは、まず乾燥し、繊維内を流動する。次に、アクリル酸のホスフィナート含有テロマーとセルロース分子との間でエステル架橋結合が触媒され形成される。繊維構造体内での、特に低減されたまたは限界の(marginal)硬化温度での、本発明のホスフィナート含有テロマーの向上された移動度および流動可能特性のために、エステル化のレベルは増大し、結果として、類似する低減されたまたは限界の硬化温度で、先行技術のポリマーで架橋された繊維と比較して、向上された吸収特性を有する繊維を生じさせるとさらに考えられている。また、アクリル酸のホスフィナート含有テロマーは、エステル結合形成の位置でモノアルキルホスフィ(オン)ネートおよびジアルキルホスフィナートの形成における触媒を提供する。
【0054】
これらのエステル架橋は熱の影響下で、セルロース繊維上のエステル基と隣接する非エステル化ヒドロキシル基との間で起こるエステル交換反応により移動可能である。向上されたポリマー流動性および移動度、並びにその結果としての、類似の硬化温度で先行技術のポリマーで架橋された繊維と比較してさらに向上された吸収特性を有する繊維をもたらすので、最初のエステル結合が形成された後に起こるエステル交換のプロセスは、本発明のホスフィナート含有テロマーで、特に限界のまたは低減された硬化温度で、同様に容易にされると考えられる。
【0055】
架橋の最大レベルは、繊維が本質的に乾燥している(約5%未満の水分を有する)場合に達成されるであろう。この水の不存在のために繊維は、実質的に非膨潤で、つぶれた状態で架橋される。結果として、それらは本発明に適用できる範囲と比較して低い流体保持値(FRV)を特徴的に有する。FRVは、浸せきされ次いで繊維内の流体を取り除くために遠心分離機にかけられた繊維のサンプルによって吸収されて残っている、乾燥繊維基準で計算された流体の量をいう。架橋繊維が吸収できる流体の量は、飽和時に膨潤するその能力に応じて、または言い換えれば、最大レベルへの膨潤の際のその内部直径もしくは体積に応じて変化する。これは、言い換えれば、架橋のレベルに依存する。与えられた繊維およびプロセスについて繊維内架橋のレベルが増加するにつれて、繊維のFRVが減少するであろう。よって、繊維のFRV値は、飽和時の繊維の物理的条件を構造的に記述する。他に特に示されない限りは、本明細書において記載されるFRVデータは繊維の水保持値(WRV)の観点で報告される。他の流体、例えば塩水、および合成尿も分析のための流体媒体として有利に利用されうる。概して、本発明の方法のような、硬化が乾燥に大きく依存する手順によって架橋された特定の繊維のFRVは、主として架橋剤および架橋のレベルに依存するであろう。本発明に適用可能な架橋剤レベルで、この乾燥架橋方法によって架橋された繊維のWRVは、概して、約60未満、かつ約25を超える。架橋工程に続いて、所望の場合には、繊維は洗浄される。洗浄後、繊維は非流動化(defluidized)および乾燥される。繊維は、依然湿潤条件にある間は、非流動化および乾燥工程の間に、架橋繊維をねじれさせおよびカールさせる第2の機械的離解工程にかけられうる。繊維を離解するための上述のと同じ装置および方法がこの第2の機械的離解工程に適用可能である。このパラグラフに使用されるように、用語「離解(defibration)」とは、繊維を実質的に個別の形態に機械的に分けるために使用されうる何らかの手順をいい、たとえ繊維がそのような形態ですでに提供されていてもよい。よって、「離解」は、個別の形態でまたはより圧縮された形態で、繊維を機械的に処理する工程をいい、そのような機械的処理工程はa)繊維がすでに実質的に個別の形態でないならば、繊維を実質的に個別の形態に分け、およびb)乾燥の際に繊維にカールおよびねじれを与える。
【0056】
乾燥架橋方法によって個別化された架橋繊維を製造する別の方法においては、上述のように架橋剤を含む溶液とセルロース系繊維が接触させられる。架橋剤と接触される前または後のいずれにおいても、繊維はシート形態で提供される。シート形態である間に繊維は乾燥され、架橋され、好ましくは約120℃〜約160℃の温度に繊維を加熱することによって架橋される。架橋に続いて、繊維は実質的に個別の形態に機械的に分けられる。これは好ましくは、米国特許第3,987,968号に記載されるもののような繊維フラッフィング装置を用いた処理によって行われるか、または当該技術分野で周知でありうるような繊維を離解するための他の方法で行われてもよい。有効量の架橋剤、好ましくはセルロース無水グルコースのモル数ベースで計算され、かつ離解後に測定された、約0.1重量%〜約10.0重量%の架橋剤が、繊維内架橋結合の形態で繊維と反応されるように、このシート架橋方法に従って製造される個別化された架橋繊維は充分な量の架橋剤で処理される。シート形態の間に、繊維を乾燥し架橋する他の効果は、繊維と繊維の結合が、増大した乾燥で繊維がねじれおよびカールするのを抑制することである。繊維が実質的に拘束されない条件下で乾燥され、続いてねじれて、カールした形態で架橋されるという方法に従って製造された個別化された架橋繊維と比較して、上述のシート硬化方法によって製造された比較的ねじれていない繊維を含む吸収性構造体は、より低い湿潤回復性および湿潤に対するより低い応答性を示すことが期待される。
【0057】
乾燥工程と架橋工程との間に、繊維を実質的に個別の形態に機械的に分けることも意図される。すなわち、シート形態のままで、繊維は架橋剤と接触させられ、その後乾燥される。架橋の前に繊維は個別化され、繊維内架橋を容易にする。この別の架橋方法は、当業者に明らかであろう他の変法と共に、本発明の範囲内にあると意図される。
【0058】
本発明に適用可能な架橋方法の他のカテゴリーは、非水性溶液硬化架橋方法である。乾燥架橋方法に適用可能な同じ種類の繊維が非水性溶液架橋繊維の製造に使用することができる。架橋剤の有効量が続いて繊維と、および所望の場合には好適な触媒と反応するような充分な量の架橋剤で、その繊維は処理される。使用される架橋剤および触媒(もし使用される場合には)の量はコンシステンシー、温度、架橋性溶液および繊維中の水分含量、架橋性溶液中の架橋剤および希釈剤の種類、並びに望まれる架橋の量の様な反応条件に応じて変化するであろう。架橋剤は、繊維が実質的に非水性架橋性溶液中に沈められている間に反応させられる。非水性架橋性溶液は、これらに限定されないが酢酸、プロパン酸またはアセトンのような非水性の水混和性極性希釈剤を含む。架橋性溶液は限定された量の水または他の繊維膨潤性液体を含むことができるが、水の量は好ましくは、何らかの実質的なレベルの繊維膨潤を誘導するのに不充分である。架橋性媒体としての使用に適用可能な架橋性溶液系は、参照により組み込まれる米国特許第4,035,147号に開示されるものを含む。
【0059】
本発明の架橋繊維はエアレイド(air laid)吸収性コアの製造に直接利用されうる。さらに、その剛性および回復特性のために、架橋繊維は圧縮されていない低密度のシートにウェットレイド(wet laid)されることができ、これはその後に乾燥される場合、さらなる機械的加工をすることなく、吸収性コアとしてそのまま有用である。架橋繊維は、販売または遠い場所への移送のために圧縮されたパルプシートとしてウェットレイドされることもできる。
【0060】
従来の未架橋セルロース系繊維から製造されたパルプシートに対して、本発明の架橋繊維から製造されたパルプシートは従来のパルプシート密度まで圧縮するのがより困難である。よって、吸収性コアの製造に従来使用されているもののような、未架橋繊維と架橋繊維を組み合わせることが望まれる場合がある。剛性の架橋繊維を含むパルプシートは、好ましくは、シートの全乾燥重量を基準にして、個別化された架橋繊維と混合された、約5〜約90%の未架橋セルロース系繊維を含む。特に、シートの全乾燥重量を基準にして、約5%〜約30%の高度にリファインされた未架橋セルロース系繊維を含むのが好まれる。このような高度にリファインされた繊維は、約300ml CSF未満、好ましくは100ml CSF未満の叩解度までリファインまたはビートされる。未架橋繊維は好ましくは、個別化された架橋繊維の水性スラリーと混合される。次いで、この混合物はその後の離解および吸収性パッドの形成のための緻密化(densified)パルプシートに形成されてもよい。未架橋繊維の組み込みは、その後に形成される吸収性パッドに対して驚くほど少ない吸収性の損失を付与しつつ、緻密化形態へのパルプシートの圧縮を容易にする。未架橋繊維は、架橋繊維と未架橋繊維との混合物からのパルプシートからまたはその混合物から直接に製造された、パルプシートおよび吸収性パッドの引っ張り強さをさらに増大させる。架橋繊維と未架橋繊維とのブレンドが最初にパルプシートにされ次いで吸収性パッドにされるか、またはそのブレンドが直接に吸収性パッドにされるかに関わらず、その吸収性パッドはエアレイドまたはウェットレイドであってもよい。個別化された架橋繊維から製造された、または未架橋繊維も含む混合物から製造されたシートまたはウエブは、好ましくは約800g/m未満の坪量および約0.60g/cm未満の密度を有するであろう。本発明の範囲を限定することを意図するものではないが、おむつ、タンポンおよび他の生理用製品などの使い捨て物品における吸収性コアとしての直接の適用のためには、300g/m〜約600g/mの坪量および0.07g/cm〜約0.30g/cmの密度を有するウェットレイドシートが特に意図される。これらのレベルより高い坪量および密度を有する構造体は、その後に粉砕およびエアレイイングまたはウェットレイイングし、吸収性用途により有用である低い密度および坪量の構造体を形成するためにより有用であると考えられる。さらに、そのような、より高い坪量および密度の構造体は湿潤に対して驚くべき高い吸収性および応答性も示す。本発明の繊維について意図される他の用途は約0.03g/cc未満であり得る密度を有する低密度ティッシュシートを包含する。
【0061】
本明細書に記載される架橋繊維は、これらに限定されるものではないが、ティッシュシート、使い捨ておむつ、生理用品、生理用ナプキン、タンポンおよび包帯をはじめとする様々な吸収性物品に有用であり、前記物品のそれぞれは本明細書において記載された個別化された架橋繊維を含む吸収性構造体を含む。従来、おむつおよび生理用品のための吸収性コアは、剛性でない未架橋セルロース系繊維から作られており、その吸収性コアは約0.06g/cc〜約0.12g/ccの乾燥密度を有する。湿潤の際に、その吸収性コアは通常、体積の減少を示す。
【0062】
本発明の架橋繊維は、従来の未架橋繊維または公知の架橋繊維から製造される等しい密度の吸収性パッドと比較して、実質的により高い流体吸収特性、例えば吸収容量を包含するがこれに限定されない、を有する吸収性パッドを製造するために使用されうることが見いだされた。本発明の繊維から製造されるパッドは、従来のフラッフ化繊維から製造されたパッドよりも実質的に低い平衡湿潤密度を有することができる。本発明の繊維は平衡湿潤密度より高い密度まで圧縮されることができ、湿潤の際に拡大し、それにより未架橋繊維で得られるよりも有意に大きな程度まで吸収容量を増大させるであろう薄いパッドを形成することができる。
【0063】
個別化された架橋繊維から製造される吸収性構造体は実質的に水不溶性のヒドロゲル形成性物質の別個の粒子を追加的に含むことができる。ヒドロゲル形成性物質は流体を吸収し、穏やかな圧力下でそれを保持することができる化学物質である。
【0064】
好適なヒドロゲル形成性物質はシリカゲルのような無機物質または架橋ポリマーのような有機化合物であり得る。ヒドロゲル形成性物質に関連して参照される場合には、架橋は、架橋剤とセルロース系繊維とが反応して個別化された架橋繊維を形成することの関連において意図されるよりもより広い意味であると見なすものと理解されるべきである。架橋ヒドロゲル形成性ポリマーは、共有結合、イオン性結合、ファンデルワールス結合または水素結合により架橋されうる。ヒドロゲル形成性物質の例としては、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、エチレン無水マレイン酸コポリマー、ポリビニルエーテル、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルモルホリノン、ビニルスルホン酸のポリマーおよびコポリマー、ポリアクリレート、ポリアクリルアミド、ポリビニルピリジンなどがあげられる。他の好適なヒドロゲル形成性物質は、本明細書に組み込まれるAssarssonら米国特許第3,901,236号に開示されているものがある。吸収性コアにおける使用に特に好ましいヒドロゲル形成性ポリマーは加水分解されたアクリロニトリルグラフト化デンプン、アクリル酸グラフト化デンプン、ポリアクリレート、およびイソブチレン無水マレイン酸コポリマーまたはこれらの混合物である。
【0065】
ヒドロゲル形成性物質は、個別化された架橋繊維を含む吸収性構造体の全体に分布させられていてもよく、または吸収構造体の特定の層または区画にわたる分布に限定されていてもよい。他の態様においては、個別化された架橋繊維を含むことができる繊維、吸収性構造体に対して並んで置かれるシートまたはフィルム上に、ヒドロゲル形成性物質が接着または積層される。このようなシートまたはフィルムは、ヒドロゲル形成性物質が層の間に含まれるように多層化されうる。別の態様においては、ヒドロゲル形成性物質は吸収性構造体の表面繊維上に直接接着されうる。
【0066】
多くの製品において使用される場合に、架橋セルロース繊維は「ノット(knots)」または「ニット(nits)」の様な当該技術分野で周知の特定の欠点を過剰に有する場合がある。ノットはセルロース系繊維シートの不完全な繊維化後に残る繊維の集塊である。ニットは個別の繊維を一緒に共有結合(繊維間結合)させる架橋剤の能力による、架橋性物質により一緒に保持される繊維の硬い緻密な集塊として定義されうる。ニットは概して、約0.04mm〜約2.00mmの表面積を有するものとして当該技術分野で見なされる。ニットは通常、0.8g/cmより大きな密度を有し、約1.1g/cmの密度が典型的である。ニットを含む繊維は、事実上、従来の繊維化装置では互いに分離することができない。その結果として、これらの扱いにくい粒子は最終製品に組み込まれることとなり、そこでそれらは製品の美的または機能的品質の実質的な悪化を生じさせる場合がある。例えば、ニットは実質的に吸収性製品の吸収性、回復性およびロットを低減させる場合がある。本発明のホスフィナート含有テロマー架橋剤は繊維に素早く浸透し分布して、その結果、繊維表面上の粘着性を生じさせ、繊維間接着並びにノットおよびニットの形成をもたらしうるセルロース系繊維の表面上での架橋剤の残留濃度を最小にする。このことは、個別化された架橋繊維のすばやい経済的な加工、架橋繊維廃棄物の低減および高い吸収性製品の製造を達成するのに非常に重要となっている。
【0067】
本発明において有用な木材パルプ繊維は、本発明で使用する前に前処理されることもできる。この前処理は、繊維を水蒸気にかけるような物理的処理、または化学的処理を包含しうる。
【0068】
限定として構成されるものではないが、繊維を前処理する例は、繊維への難燃剤、並びに繊維の表面化学を改質する界面活性剤、または水もしくは溶媒のような他の液体の添加を含む。他の前処理としては、抗微生物剤、顔料および緻密化または軟化剤の組み込みがあげられる。熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂のような他の化学物質で前処理された繊維も使用されてよい。前処理の組み合わせも使用されてよい。
【0069】
当該技術分野で周知の粒子バインダーおよび/または緻密化/軟化剤で処理されたセルロース系繊維が本発明に従って使用されてもよい。粒子バインダーは超吸収性ポリマーなどのような他の物質をセルロース系繊維に接着させるのに役立つ。好適な粒子バインダーおよび/または緻密化/軟化剤で処理されたセルロース系繊維、並びにそれらをセルロース系繊維と組み合わせるための方法は次の米国特許および特許出願に開示されている:米国特許第5,543,215号、第5,538,783号、第5,300,192号、第5,352,480号、第5,308,896号、第5,589,256号および第5,672,418号、すべて参照により本明細書に組み込まれる。
【0070】
処理供給源により送達される処理物質は、これらに限定されるものではないが、界面活性剤、架橋剤、疎水性物質、鉱物粒子、超可塑剤(superplasticizer)、水低減剤(water reducing agent)、発泡体、特定の最終用途繊維特性のための他の物質、および処理物質の組み合わせを含むことができる。界面活性剤は、パルプ繊維に、繊維と繊維との結合を低減させること、吸収性または完成したウエブの摩擦の低減を向上させることのような所望の特性を付与する。界面活性剤はテッシュおよびタオル製造において使用され、並びに多くの増大のためにテキスタイル産業に広範囲に使用される。界面活性剤の種類には、アニオン性、カチオン性、非イオン性または両性/双性イオン性界面活性物質が含まれる。アニオン性界面活性剤の例としては、ステアリン酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、硫酸ポリエーテル、ホスフェート、ポリエーテルエステル、およびスルホスクシネートがあげられる。カチオン性界面活性剤の例としては、ドデシルアミン塩酸塩、臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、臭化セチルトリメチル−アンモニウム、および臭化セチルピリジニウムがあげられる。界面活性剤の1つの種は、脂肪型の基を含む4級アンモニウム化合物をベースにしたカチオン性界面活性剤である。非イオン性界面活性剤の例としては、ポリエチレンオキシド、ソルビタンエステル、ポリオキシエチレンソルビタンエステル、エトキシル化コカミン(Chemeen TM PCC Chemax)、Surfynol(TM Air Products)界面活性剤およびアルキルアリールポリエーテルアルコールがあげられる。両性または双性イオン性界面活性剤の例としては、ドデシルベタインがある。市販の界面活性剤の例としては、EKA Chemicals Inc. Berolcell 587K、これはカチオン性界面活性剤である、およびProcess Chemicals,LLC Softener CWW、これは糸の潤滑剤として使用されるカチオン性界面活性剤である、があげられる。より白色のまたはより光沢の本発明の個別化された架橋繊維を提供するために、米国特許出願公開第US20050217809A1号に記載されるような、1種以上の染料を含む白色化剤(whitening agent)が繊維処理に含まれることができ、続いて過酸化水素および場合によって水酸化ナトリウムの漂白剤で処理されることができる。白色化剤は青色染料を含む。代表的な青色染料はCiba Speciality Chemicals,High Point,NCからのIrgalite Blue RL、Irgalite Blue RM、Pergasol Blue PTD(以前は、Pergasol Blue BVC)、Pergasol Blue NLFおよびPergasol Blue 2R−Zの名称のもの;Bayer AGからのLevacel製品およびClariantからのCastasol製品として商業的に入手可能である。好適な青色染料はアゾ染料およびアゾ金属錯体染料を含む。Pergasol Blue PTDおよびPergasol Blue NLFはアゾ染料である。Pergasol Blue 2R−Zはアゾ金属錯体染料である。セルロース系繊維は架橋剤での処理の前に、剥離剤(debonding agent)で処理されることができる。剥離剤は繊維間結合を最小化する傾向があり、繊維が互いにより容易に分かれることを可能にする。剥離剤はカチオン性、非イオン性またはアニオン性であることができる。カチオン性剥離剤が非イオン性またはアニオン性剥離剤よりも優れていると思われる。剥離剤は典型的にはセルロース系繊維ストックに添加される。
【0071】
好適なカチオン性剥離剤は4級アンモニウム塩を含む。これらの塩は典型的には1または2つの低級アルキル置換基、および脂肪、比較的長鎖の炭化水素であるかまたは脂肪、比較的長鎖の炭化水素を含む1または2つの置換基を有する。非イオン性剥離剤は典型的には脂肪−脂肪族アルコール、脂肪−アルキルフェノールおよび脂肪−芳香族と、エチレンオキシド、プロピレンオキシドまたはこれら2種の物質の混合物と反応された脂肪酸との反応生成物を含む。
【0072】
剥離剤の例は、米国特許第3,395,708号、第3,544,862号、第4,144,122号、第3,677,886号、第4,351,699号、第4,476,323号、および第4,303,471号に開示されており、これらすべては参照により組み込まれる。好ましくはBerol Chemicals,Incorporated of Metairie,LouisianaからのBerocell584のような、あらゆる好適な剥離剤を使用することができる。剥離剤は繊維の重量に対して、0.25重量%の剥離剤の量で使用されうる。
【0073】
セルロース繊維のマットは好ましくは、使用までロールの形態で貯蔵される伸されたシート形態である。そのマットは別々のサイズの複数の梱包されたシート(示されない)の1つであってよいが、概してロールは連続方法により経済的に適用可能である。マットのセルロース繊維は、ペーパーミルにおけるようなパルプ化方法などにより製造される不織形態であるべきであり、かつ漂白されていても、未漂白であってもよい。マットは広範囲の任意の坪量を有することができる。マットは、シート様構造を貯蔵するのに適した任意の形態で供給されることができると理解される。また、マットは製紙装置のヘッドボックスから直接に、または任意の好適な方法で形成された別のものから得られうる。
【0074】
通常、マットを含む、セルロース繊維は完全に乾燥されている必要はない。セルロースは親水性物質なので、空気乾燥後であったとしても、その分子は典型的には特定のレベルの残留水分を有する。残留水分のレベルは概して10%w/w以下であり、これは「湿潤」として検出可能ではない。
【実施例】
【0075】
ポリマー試験方法
浸透係数を測定する手順
中和前のアクリル酸のホスフィナート含有ポリマーの5.0重量%溶液がRohm and Haas Companyから市販されているQRXP−1676(アクリル酸含有ポリマータイプ3)から製造された。この物質304.65gが、活性化された76mmYM1再生セルロース系膜(細孔サイズ1.3nm)、ガラス流出物容器および窒素タンクを備えたFisher Scientificから入手可能な400ml Millipore UltraFiltration Stirred Cellに入れられた。セルは約300mlの印まで満たされ、40psigで、オーバーナイトでよく撹拌された。次の日に、セルを通る流れは著しく減少し、セルに275.35gのDI水が入れられ、約8時間維持された。完了後、保持物はDI水の助けと共に取り出された。固形分測定によって、58.7重量%のアクリル酸含有ポリマータイプ3が膜を通過したと決定された。よって、この物質についての浸透係数は58.7であった。
【0076】
同様に、2種の別のアクリル酸のホスフィナート含有テロマーである、タイプ1およびタイプ2は再生セルロース系膜(YM1)を用いて透析された。再度、中和前の5.0重量%溶液の約304.6gが、未使用の、新たに活性化されたYM1限外濾過膜を備えた、同じUltraFiltration Stirred Cellに入れられた。限外濾過条件は上述のと同じであった。完了後、保持物がDI水の助けと共に取り出された。固形分測定によって、指定されたタイプ1およびタイプ2のアクリル酸のホスフィナート含有テロマーの88.7重量%および70.7重量%が、それぞれ膜を透過した(すなわち、それらは、それぞれ88.7および70.7の浸透係数を有していた)と決定された。
【0077】
【表1】

【0078】
gd(フロー)を測定する手順
温度におけるポリマー種の流動特性はガラス転移温度および温度の関数としての力学的特性を測定することにより決定されうる。本発明者らはアクリル酸のホスフィナート含有テロマーおよびポリマーのコレクションを集め、中和前の、完全に乾燥したアクリル酸のホスフィナート含有テロマーおよびポリマーのガラス転移−力学的特性(Tgd)を測定した。約15:1〜4:1のアクリル酸対ジ亜リン酸ナトリウムの比率を有する5種類のアクリル酸のホスフィナート含有テロマーおよびポリマーのコレクションは、米国特許第5,294,686号に記載されるように付加重合により製造された。これらのサンプルは、次いで、凍結乾燥され、水の非存在下のそれらの流動特性を評価するためにそのTgdが決定された。そのサンプルはTA Instrumentsにより製造されたモデル2010示差走査熱量計を用いて分析された。サンプルはオープンスタンダードアルミニウムパンにおいて、窒素雰囲気で実行された。参照パンが含まれた。熱量計中の窒素流動速度は50mL/分であった。サンプルは室温から150℃まで、20℃/分の勾配割合で2回加熱された。最初の加熱勾配は、すべての残留する吸収された水がサンプルから除去されるのを確実にするために行われた。乾燥ガラス転移温度(glass transition temperature dried;Tgd)は、Tgdとして参照される第2の加熱サイクルからのデータを用いて決定された。データはTA Instrumentsにより提供されるUniversal Analysisソフトウェアパッケージを用いて分析された、表2参照。
【0079】
【表2】

【0080】
文献(ポリマーハンドブック第3版1989)はポリ(アクリル酸)のTgが106℃(379°K)であることを報告する。記載される方法によって測定されたTg値は、Tgを抑制するいかなる可塑性水(plasticizing water)も完全に取り除き、よって(Tgd)と称される。記載される方法によって、Tgdの複数の決定値は0.5℃未満の変動を有する。アクリル酸ポリマータイプ5およびアクリル酸ポリマータイプ4のような乾燥アクリル酸のホスフィナート含有ポリマーは、約120℃のTgdを有し、Rohm and Haas CompanyからのAcumer商標9932として商業的に入手可能である。
【0081】
ホスフィナート含有テロマーのサイズが、セルロース繊維の代わりとして役割を果たすセルロース系透析膜を通過するのに充分である場合には、Tgdは実質的に抑制される。アクリル酸ホスフィナート含有ポリマータイプ3のTgdは108.5℃で、透析セル60%通過に近い。しかし、アクリル酸ホスフィナート含有テロマータイプ1におけるように、セルロースに対する透過性が約90%に増加された場合には、Tgdは有意に低減され、かつ温度における流動特性は劇的に増加される。アクリル酸ホスフィナート含有テロマータイプ1については、Tgdは約30℃低減される。よって、ポリ(アクリル酸)について測定されたより約20℃低いTgdを有しかつ優れたセルロース膜透過性および流動特性を有する、充分に乾燥したアクリル酸のホスフィナート含有テロマーは架橋セルロース繊維の製造に最も適している。
【0082】
粘弾性特性を測定する手順
次に、本発明者らは、Rheometrics Mechanical Spectrometer(RMS800)を用いて、8mmパラレルプレート配置、および1Hzの適用周波数を用いて、温度の関数としての動的貯蔵および損失弾性率特性を測定した。サンプルは凍結乾燥された粉体として、170℃に予備加熱されたプレート上にロードされる。パラレルプレート間の溶融物は2℃/分で60℃まで冷却される。動的貯蔵および損失弾性率、G’およびG”のそれぞれが決定された。G’およびG”の値から、それぞれのポリマーについての温度の関数としての複素粘度(complex viscosity)が得られた。
【0083】
110℃で測定された低い粘度を示すホスフィナート含有テロマーも優れた繊維浸透および低いTgdを示す。
【0084】
【表3】

【0085】
固定された使用温度(110℃)について、最も低いTgdのホスフィナート含有テロマーは最も低い粘度を有している。低いTgdに相関する比較的低い粘度は、同じ温度でより高い粘度を有するより高いTgdポリマーと比較して、バインダーの「ウェットアウト(wet out)」を可能にする。
【0086】
繊維試験方法
水保持値を決定するための手順
セルロース系繊維の水保持値を決定するために次の手順が利用されうる。
約0.4gの繊維に対して約0.3gのサンプルが、約100mlの蒸留水または脱イオン水を有する変換コンテナ中に、室温で、約15〜約20時間の間、浸される。浸された繊維はフィルター上に集められ、遠心チューブの60メッシュスクリーン付き底部の上方約11/2インチで支えられた80メッシュワイヤバスケットに移される。このチューブはプラスチックカバーで覆われ、サンプルは1500〜1700重力の相対遠心力で、19〜21分間遠心分離処理される。遠心分離処理された繊維は、次いで、バスケットから取り出され秤量される。秤量された繊維は105℃で一定の重量になるまで乾燥され、再度秤量される。水保持値は次の通り計算される:
【数1】

式中、W=遠心分離処理された繊維の湿潤重量;D=その繊維の乾燥重量;W−D=吸収された水の重量。
【0087】
ドリップ容量を決定するための手順
吸収性コアのドリップ容量を決定するために次の手順が利用されうる。ドリップ容量はそのコアの吸収容量および吸収速度の組み合わせられた測定として使用される。
【0088】
架橋繊維から形成された4インチ×4インチ、重量約6.3gの吸収性パッドがスクリーンメッシュ上に配置される。合成尿がパッドの中心に8ml/sの割合で適用される。合成尿の最初の液滴がパッドの底または側面から出てきたときに、合成尿の流れが停止される。ドリップ容量は、合成尿の導入前と後でのパッドの質量の差を繊維の質量(乾燥基準)で割ることにより算出される。
【0089】
セルロース繊維と反応されるホスフィナート含有テロマーの量を決定するための手順
セルロース繊維と架橋されたアクリル酸のホスフィナート含有テロマーの量を決定するのに好適な様々な分析方法が存在する。いずれの好適な方法が使用されてもよい。本発明の実施例における個別化された架橋繊維のセルロース系成分と反応して、繊維内架橋結合を形成する好適なアクリル酸のホスフィナート含有テロマーの量を決定する目的のためには、次の手順が使用される。処理溶液の全質量、並びに遠心分離工程で集められたろ液および洗浄溶液の全質量が記録される。処理溶液、並びに遠心分離工程で集められたろ液および洗浄溶液のサンプルは、エタノール/水媒体中で水酸化カリウム溶液で滴定され、これらの溶液中に存在する酸の当量を決定する。処理溶液、ろ液、および洗浄溶液中に存在する固形分テロマーの質量はテロマーの当量重量(グラム/当量)に滴定によってそれぞれの溶液中に認められた酸の当量をかけることにより算出される。繊維内架橋として繊維に結合したテロマーの量は処理前の処理溶液中のテロマーの質量とろ液および洗浄溶液におけるテロマーの合計質量との差により算出される。セルロース繊維と反応したテロマーの量は次のように計算される:
【数2】

式中、T=処理溶液中のテロマーの質量、F=ろ液中のテロマーの質量、W=洗浄溶液中のテロマーの質量、D=乾燥繊維の質量。
【0090】
個別化された架橋繊維のセルロース形成分と反応して繊維内架橋結合を形成する、好ましいアクリル酸およびコモノマーのホスフィナート含有テロマー(そのようなテロマーはポリマーに化学的に結合した特定の無機元素を含む)の量を決定する目的のためには、次の手順が使用されうる。最初に、架橋繊維のサンプルは充分な熱水で洗浄され、未反応の架橋性化学物質または触媒を取り除く。次に、繊維は平衡湿分含量まで乾燥される。次に、湿分バランスまたは他の好適な装置を用いて、サンプルの絶乾重量が決定される。次いで、サンプルは炉内で、サンプル中のすべての有機物質を除去するのに好適な温度で燃やされ、すなわち「灰化」される。そのサンプルから残留する無機物質が過塩素酸などの強酸に溶解される。次いで、この酸溶液は、セルロース繊維に適用された最初のポリマー((全ポリマー)/(無機元素)の周知の質量比)に存在していた無機元素の質量を決定するために分析される。誘導結合プラズマ原子発光分析(ICP AES)はこの溶液を分析するために使用されうる1方法である。セルロース系繊維上で架橋されるポリマーの量は、次いで、次の式により算出されうる:
【数3】

式中、W=上述のように測定される、セルロース繊維に架橋されているポリマーに結合された、サンプルの無機元素の質量(グラム単位);
R=全ポリマーの質量を、そのポリマーに結合した無機元素の質量で割ることにより画定される比率;
=分析されるセルロース系繊維サンプルの絶乾重量(グラム単位)。
【0091】
実施例1
本発明の個別化された架橋繊維は、架橋剤として、乾燥ガラス転移温度Tgd推定約87℃を有する、アクリル酸のホスフィナート含有テロマー(テロマータイプ1)を使用した乾燥架橋方法により製造される。アクリル酸のホスフィナート含有テロマー架橋繊維を生じさせるために使用される手順は次の通りである:
1.それぞれのサンプルについて、20g(乾燥ベース)の乾燥履歴のない(never dried)サザン軟木クラフトパルプが提供される。繊維は約5%の水分含量を有する(95%コンシステンシーに等しい)。
2.その繊維を、約6.14gのホスフィナート含有アクリル酸テロマーと、スラリーのpHを3.0に調節するのに充分な量の水酸化ナトリウム溶液または硫酸溶液と、残部の脱イオン水とを含む179gの水溶液に添加することによりスラリーが形成され、その結果その繊維のコンシステンシーは10重量%であり、全スラリー重量は200gである。その繊維は約60分間スラリーに浸される。この工程は、「浸漬」とも呼ばれる。
3.繊維は次いで遠心分離において、約35%〜約50%のコンシステンシー範囲まで脱水される。
4.次いで、脱水された繊維は、繊維コンシステンシーが約60%〜70%になるまで室温の空気で空気乾燥される。繊維は、続行される前に数時間平衡化される。
5.次いで、実質的に個別化されているが、最小量の繊維損傷しかない繊維を生じさせるカスタムラボラトリーリファイナーを、空気乾燥された繊維が通過することにより離解される。個別化された繊維がリファイナーを出るとき、それらはフィルタースクリーン上に集められる。リファイナーを出るとき、繊維は硬化される準備ができている。
6.次いで、離解した繊維はトレイの上に置かれ空気通過乾燥オーブン中で、添加されるホスフィナート含有アクリル酸テロマーの量、繊維の乾燥度などに実際に応じた時間の長さおよび温度で硬化される。この実施例においては、サンプルは約190℃の温度で10分間硬化される。架橋はオーブン中の期間の間に完了される。
7.硬化された繊維は室温の脱イオン水で1分間すすがれ、60℃の脱イオン水中に2.5%の繊維コンシステンシーで1時間沈められ、室温の脱イオン水で1分間2回目のすすぎをされ、約35−50%の繊維コンシステンシーまで遠心分離処理され、そして25℃の強制空気(forced aid)オーブン中で約60−70%のコンシステンシーまで空気乾燥される。
8.空気乾燥された繊維は短い滞留時間でカスタムラボラトリーリファイナーを通され、105℃の強制空気オーブン中で乾燥度まで乾燥され、50%の相対湿度の周囲空気中で平衡化される。
【0092】
この実施例においては、繊維が洗浄された後、乾燥繊維重量基準で5.3重量%のホスフィナート含有アクリル酸テロマーが、繊維内架橋結合の形態で繊維中に存在する。
重要なことに、得られる個別化された架橋繊維は、従来の未架橋の繊維および公知の架橋繊維と比較して、湿潤に対する向上された応答性を有し、かつ人の肌に近接して安全に使用されうる。
【0093】
実施例IIA
比較例の個別化された架橋繊維は、架橋剤として約90%の浸透係数を有するアクリル酸のホスフィナート非含有テロマーを利用した乾燥架橋方法により製造される。実施例Iを製造するために使用された方法がこの例のためにも使用される。
この例においては、処理および硬化後、乾燥繊維基準で5.4重量%のアクリル酸のホスフィナート非含有テロマーが繊維中に存在するが、繊維を洗浄した後はわずか2.6重量%のアクリル酸のホスフィナート非含有テロマーしか、繊維内架橋結合の形態で繊維上に残っていなかった。
【0094】
実施例IIB
比較例の個別化された架橋繊維は、テロマー固形分を基準として23.8重量%のジ亜リン酸ナトリウム触媒を加えた実施例IIAで記載されるアクリル酸のホスフィナート非含有テロマーを利用した乾燥架橋方法により製造される。
この例においては、繊維を洗浄後、乾燥繊維基準で5.1重量%のアクリル酸のホスフィナート非含有テロマーが繊維内架橋結合の形態で繊維中に存在しており、これは実施例IIAでの架橋の低い量と対照的である。
【0095】
実施例I、IIAおよびIIBの個別化された架橋繊維はエアレイドされ吸収性パッドを形成し、そのパッドは続いて先に説明した手順を用いてドリップ容量について試験される。この結果は以下の表に報告される。
【0096】
【表4】

【0097】
本発明のアクリル酸のホスフィナート含有テロマーで架橋された繊維から製造された吸収性パッドは、高い浸透係数(〜90%)を有するアクリル酸のホスフィナート非含有テロマーで架橋された繊維から製造された吸収性パッドと比較して、多量のジ亜リン酸塩触媒がそのホスフィナート非含有テロマーに添加される場合と比較してさえ、実質的に増大されたドリップ容量をもたらした。
【0098】
実施例III
本発明の個別化された架橋繊維は、架橋剤として推定約87℃の乾燥ガラス転移温度Tgd(テロマータイプ1)を有するアクリル酸のホスフィナート含有テロマーを用いる乾燥架橋方法によって製造される。実施例Iをもたらすために使用された手順がこの実施例についても使用され、ただし次の改変を伴った:工程6において、サンプルは170℃の温度で10分間硬化され、工程7および8が省略される。
この実施例において、乾燥繊維セルロース基準で推定6重量%のアクリル酸のホスフィナート含有テロマーが繊維内架橋結合の形態で繊維中に存在する。
【0099】
実施例IV
比較の個別化された架橋繊維が、架橋剤として推定約110℃の乾燥ガラス転移温度Tgd(テロマータイプ3)を有するアクリル酸のホスフィナート含有ポリマーを用いる乾燥架橋方法によって製造される。実施例IIIをもたらすために使用された手順がこの例についても使用された。
この例においては、乾燥繊維セルロース基準で推定6重量%のアクリル酸のホスフィナート含有ポリマーが繊維内架橋結合の形態で繊維中に存在する。
【0100】
実施例IIIおよび実施例IVの個別の架橋繊維はエアレイドされ吸収性パッドを形成し、そのパッドは続いて先に説明した手順を用いてドリップ容量について試験された。その結果は以下の表に報告される。
【0101】
【表5】

【0102】
低減された硬化条件で、Tgd87℃の本発明のアクリル酸のホスフィナート含有テロマーで架橋された繊維から製造された吸収性パッドは、類似の硬化条件で比較のTgd110℃のアクリル酸のホスフィナート含有ポリマーで架橋された繊維から製造された吸収性パッドと比較して、増大したドリップ容量をもたらした。
【0103】
実施例V
本発明の個別化された架橋繊維が、架橋剤として推定約93℃の乾燥ガラス転移温度Tgdのアクリル酸のホスフィナート含有テロマー(テロマータイプ1−2)を使用する乾燥架橋方法によって製造される。実施例Iをもたらすために使用された手順がこの実施例についても使用されたが、ただし以下の改変が伴われた:工程6においては、サンプルは190℃の温度で5分間硬化され、工程7および8は省略される。
この実施例において、乾燥繊維セルロース基準で5.8重量%のアクリル酸のホスフィナート含有テロマーが繊維内架橋結合の形態で繊維中に存在する。
【0104】
実施例VI
比較の個別化された架橋繊維が、架橋剤として推定約119℃の乾燥ガラス転移温度Tgdを有する先行技術のアクリル酸のホスフィナート含有ポリマー(ポリマータイプ4)を使用する乾燥架橋方法によって製造される。実施例Vをもたらすために使用された手順がこの例についても使用された。ここでの処理溶液は実施例Vのものと等しい量の固形分を含んでいた。
この例においては、乾燥繊維セルロース基準で5.3重量%の先行技術のアクリル酸のホスフィナート含有ポリマーが繊維内架橋結合の形態で繊維中に存在する。
【0105】
実施例Vおよび実施例VIの個別化された架橋繊維はエアレイドされ吸収性パッドを形成し、そのパッドはその後、先に記載された手順を用いてドリップ容量について試験される。結果は以下の表に報告される。
【0106】
【表6】

【0107】
93℃のTgdの本発明のアクリル酸のホスフィナート含有テロマーは、先行技術の119℃のTgのアクリル酸のホスフィナート含有ポリマーと比較して、セルロース系繊維の増大した浸透をもたらし、かつ本発明のアクリル酸のホスフィナート含有テロマーで架橋された繊維から製造された吸収性パッドは、類似の硬化条件で比較の先行技術のアクリル酸のホスフィナート含有ポリマーで架橋された繊維から製造された吸収性パッドと比較して、増大したドリップ容量をもたらした。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも65の浸透係数、および約70℃〜約105℃のTgdを有するアクリル酸のホスフィナート含有テロマーで形成される繊維内架橋を有するセルロース系繊維。
【請求項2】
テロマーが、テロゲンとしてジ亜リン酸またはその塩のホスフィナート残基を;並びにモノマーとしてアクリル酸、またはアクリル酸と少なくとも1種のコモノマーとを、存在するコモノマーの合計量がアクリル酸モノマーとコモノマーとの合計重量の10重量%以下で含む、請求項1に記載のセルロース系繊維。
【請求項3】
テロマーがアクリル酸モノマーと、マレイン酸、イタコン酸、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、3−アリルオキシ−1,2−プロパン−ジオール、トリメチロールプロパンアリルエーテルまたはジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートから選択されるコモノマーとを含む、請求項2に記載のセルロース系繊維。
【請求項4】
テロマーが約75℃〜約100℃のTgdを有する請求項1に記載のセルロース系繊維。
【請求項5】
テロマーが約80℃〜約95℃のTgdを有する請求項1に記載のセルロース系繊維。
【請求項6】
テロマーが少なくとも70の浸透係数を有する請求項1に記載のセルロース系繊維。
【請求項7】
テロマーが少なくとも75の浸透係数を有する請求項1に記載のセルロース系繊維。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載のセルロース系繊維を含む吸収性物品。

【公開番号】特開2009−191434(P2009−191434A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−2490(P2009−2490)
【出願日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【出願人】(590002035)ローム アンド ハース カンパニー (524)
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
【Fターム(参考)】