説明

処理液塗布装置及び画像形成装置

【課題】処理液中の異物を回収する廃タンクを用いずに、処理液貯留部内の処理液中に混入した異物を処理液貯留部から除去することを課題とする。
【解決手段】処理液貯蔵パン214内の処理液201を塗布ローラ212へ供給し、塗布ローラにより用紙100に処理液を塗布した後、紙粉等の異物が混入した状態で塗布ローラ上に残留する処理液を処理液貯蔵パンに回収し、回収した処理液中に混入した異物をポンプ222によって液体搬送路221から処理液溜まり201bへ移送して、後続の用紙100へ供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像記録媒体等の処理液塗布対象に処理液を塗布する処理液塗布装置及び画像記録媒体に対して処理液を付与する画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の画像形成装置としては、主に、プリンタ、ファクシミリ、複写装置、プロッタ、これらの複合機などの製品として知られ、複数の画像形成方式が存在する。例えばインク液滴を吐出する記録ヘッドを用いた液体吐出記録方式の画像形成装置が知られている。この液体吐出記録方式の画像形成装置は、記録ヘッドから画像記録媒体に対してインク滴を吐出して、画像形成(記録、印字、印写、印刷も同義語で使用される場合がある。)を行う。画像記録媒体とは、紙に限定するものではなく、OHPなどを含み、画像を構成するインク滴等の液体あるいはトナー等の固体が付着可能なものを意味し、被記録媒体あるいは記録媒体、記録紙、記録用紙などとも称されることがある。液体吐出記録方式の画像形成装置には、記録ヘッドが主走査方向に移動しながら液滴を吐出して画像を形成するシリアル型の画像形成装置と、記録ヘッドが移動しない状態で液滴を吐出して画像を形成するライン型ヘッドを用いるライン型の画像形成装置とがある。
【0003】
液体吐出方式の画像形成装置とは、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス等の画像記録媒体に液体を吐出して画像形成を行う装置を意味する。ここでいう「画像形成」には、文字や図形等の意味を持つ画像を画像記録媒体に付与することだけでなく、パターン等の意味を持たない画像を画像記録媒体に付与すること(単に液滴を画像記録媒体に着弾させること)も含まれる。また、インクとは、所謂インクに限るものではなく、吐出されるときに液体となるものであれば特に限定されるものではなく、例えばDNA試料、レジスト、パターン材料なども含まれる液体の総称として用いる。更に、画像とは、平面に付与されるものに限らず、立体物に付与されるもの、あるいは、立体物自体を造形して形成される像も含まれる。また、画像形成装置には、液体吐出方式のものに限らず、電子写真方式で画像形成を行うものなども含まれるが、以下の説明では、インクを吐出する液体吐出方式の画像形成装置を例に挙げて説明する。
【0004】
この液体吐出方式の画像形成装置においては、液滴で形成される画像記録媒体上のドットがひげ状に乱れるフェザリングと呼ばれる不具合、異なる種類の液滴(例えば色の異なるインク液滴)が互いに隣接している箇所で液滴が相互に混ざり合うカラーブリード等の不具合が生じることがある。また、液体吐出方式の画像形成装置においては、画像形成後の画像記録媒体上の液滴が乾くまでに時間がかかるという不具合も存在する。このような不具合を抑制する技術としては、従来、その不具合を抑制し得る所定の処理液を画像形成前の画像記録媒体に付与し、その処理液の効能によって、画像記録媒体に着弾した液滴が乱れるのを抑制したり、液滴の乾燥時間を短くしたりするものが知られている。
【0005】
このように画像記録媒体に対して処理液を付与する処理液付与装置は、塗布ローラ等の塗布部材に付着している処理液を画像記録媒体に塗布することで、画像記録媒体に処理液を付与する処理液塗布装置が一般に利用されている。処理液塗布装置では、処理液貯留部に貯留された処理液を塗布部材上に付着させ、塗布部材上の処理液を画像記録媒体に塗布した後、塗布部材上に残留した処理液を再び処理液貯留部に戻して再利用するものが多い。このような処理液塗布装置においては、画像記録媒体に対する処理液塗布の際、画像記録媒体上の紙粉などの異物(主に粉体物)が塗布部材上に付着することが多いため、その異物が処理液とともに処理液貯留部に戻され、処理液貯留部内に蓄積していく。
【0006】
特許文献1には、処理液貯留部に貯留されている処理液に含まれる紙粉等の異物を処理液貯留部から除去する除去手段を備えた処理液塗布装置が開示されている。この除去手段は、その排出流路が処理液貯留部の底部に接続されており、処理液貯留部の底部に沈殿した異物を排出流路から排出することができるようになっている。排出流路は、廃タンクに接続されており、除去された異物は廃タンク内に収容される。この処理液塗布装置によれば、処理液貯留部内の処理液中に混入した異物を処理液貯留部から除去でき、処理液貯留部内に異物が蓄積されることによる種々の不具合を抑制できる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1に記載の処理液塗布装置においては、処理液貯留部に貯留されている処理液中の異物が廃タンク内に徐々に溜まっていくので、いずれ廃タンク内の異物を取り除いたり、空の廃タンクに交換したりするといった廃タンクのリセット作業が発生するという問題があった。更には、処理液塗布装置から除去した異物を処分する処分作業が発生するという問題もあった。
また、これらの作業頻度を低減するためには大容量の廃タンクを採用する必要があるが、この場合には画像形成装置の大型化を引き起こすという問題が発生する。
【0008】
本発明は、以上の問題に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、廃タンクのリセット作業や異物の処分作業が不要で、かつ、大容量の廃タンクを採用する必要性もなく、処理液貯留部内の処理液中に混入した異物を処理液貯留部から除去可能な処理液塗布装置及びこれを備えた画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、処理液塗布対象に接触して処理液を塗布する塗布部材と、処理液を貯留する処理液貯留部と、上記処理液貯留部内の処理液を上記塗布部材へ供給する供給手段と、処理液塗布後に上記塗布部材に残留した処理液を上記処理液貯留部に回収する処理液回収手段とを備えた処理液塗布装置において、上記処理液塗布対象への処理液塗布時に上記塗布部材に付着して上記処理液回収手段により回収される処理液中に混入した異物を、後続の処理液塗布対象へ供給する異物供給手段を有することを特徴とするものである。
また、請求項2の発明は、請求項1の処理液塗布装置において、上記異物供給手段は、上記処理液回収手段により回収される処理液中に混入した異物を上記供給手段とは別個に上記塗布部材へ付着させ、該塗布部材を介して該異物を上記後続の処理液塗布対象へ供給することを特徴とするものである。
また、請求項3の発明は、請求項2の処理液塗布装置において、上記塗布部材は塗布ローラであり、上記供給手段は、上記処理液貯留部内の処理液と上記塗布ローラの外周面とに接触して、該処理液貯留部から汲み上げた処理液を該塗布ローラの外周面に供給し、該塗布ローラの外周面上に処理液の膜を形成するスクイーズローラであり、上記処理液回収手段は、処理液塗布後に上記塗布部材に残留した処理液を、上記スクイーズローラを介して上記処理液貯留部に回収するものであり、上記異物供給手段は、上記処理液回収手段により回収される処理液中に混入した異物を、上記塗布ローラと上記スクイーズローラとの当接箇所の上部に溜まる処理液中に搬送することを特徴とするものである。
また、請求項4の発明は、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の処理液塗布装置において、上記異物供給手段は、上記処理液回収手段により処理液とともに上記処理液貯留部内に回収されて該処理液貯留部の底部に沈殿した異物を、上記後続の処理液塗布対象へ供給することを特徴とするものである。
また、請求項5の発明は、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の処理液塗布装置において、上記処理液貯留部は、上記供給手段により上記塗布部材へ供給される処理液を貯留する第1貯留部と、上記処理液回収手段により回収される処理液中に混入した異物を一時的に貯留する第2貯留部とに区画されており、上記異物供給手段は、上記第2貯留部に一時的に貯留された異物を、上記後続の処理液塗布対象へ供給することを特徴とするものである。
また、請求項6の発明は、請求項5の処理液塗布装置において、上記第1貯留部と上記第2貯留部とを区画する区画部材に、該第1貯留部内の処理液は該第2貯留部へ流入させるが、該第2貯留部内の処理液は該第1貯留部へ流入させない処理液流入制御手段を有することを特徴とするものである。
また、請求項7の発明は、請求項6の処理液塗布装置において、上記第2貯留部に一時的に貯留された異物を該第2貯留部から排出する排出口は、該第2貯留部の長手方向において、上記処理液流入制御手段により上記第1貯留部内の処理液が該第2貯留部へ流入する流入口とは異なる位置に設けられていることを特徴とするものである。
また、請求項8の発明は、画像記録媒体上に画像を形成する画像形成装置において、上記画像記録媒体に対して処理液を塗布する処理液塗布手段として、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の処理液塗布装置を用いることを特徴とするものである。
【0010】
本発明においては、処理液回収手段により回収される処理液中に混入した紙粉等の異物を後続の処理液塗布対象へ供給するので、異物は処理液塗布対象へ付着して処理液塗布装置から除去されることになる。したがって、異物を廃棄するための廃タンクが不要となる。その結果、廃タンクのリセット作業や異物の処分作業が不要となり、また大容量の廃タンクの採用による装置の大型化も防止できる。
なお、本発明によれば、処理液中に混入した異物が後続の処理液塗布対象へ付着することになるが、異物供給手段による処理を連続的にあるいは高い頻度で断続的に行うことで、異物供給手段により処理液塗布対象に付着する異物の付着量は微量となる。よって、後続の処理液塗布対象に付着する異物による不具合は生じないか、軽微である。
【発明の効果】
【0011】
以上、本発明によれば、廃タンクのリセット作業や異物の処分作業が不要で、かつ、大容量の廃タンクを採用する必要性もなく、処理液貯留部内の処理液中に混入した異物を処理液貯留部から除去できるという優れた効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施形態の処理液塗布装置を搭載した画像形成装置の全体構成を示す模式図である。
【図2】構成例1の処理液塗布装置における塗布処理部の概略構成を示す模式図である。
【図3】構成例2の処理液塗布装置における塗布処理部の概略構成を示す模式図である。
【図4】構成例3の処理液塗布装置における塗布処理部の一部を示す模式図である。
【図5】同処理液塗布装置における処理液貯蔵パン214の構成を示す部分破断斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を適用した処理液塗布装置の一実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本実施形態の処理液塗布装置を搭載した画像形成装置の全体構成を示す模式図である。
本実施形態の画像形成装置1は、処理液塗布対象としての画像記録媒体である用紙100に液滴を吐出して画像を形成する画像形成手段としての記録ヘッドユニット101と、用紙100を搬送する搬送ベルト102と、用紙100を収容する給紙トレイ103と、記録ヘッドユニット101よりも用紙搬送方向上流側で用紙100に処理液を塗布する処理液塗布装置200とを備えている。
【0014】
記録ヘッドユニット101は、液滴を吐出する複数のノズルを用紙幅相当分の長さに配列したノズル列を有するライン型液体吐出ヘッドから構成され、それぞれイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色のインク滴を吐出する記録ヘッド101y,101m,101c,101kを備えている。シリアル型画像形成装置として記録ヘッドをキャリッジに搭載する構成とすることもできる。
【0015】
搬送ベルト102は、無端状ベルトであり、搬送ローラ121とテンションローラ122との間に掛け渡されて周回するように構成している。この搬送ベルト102に対する用紙100の保持は、例えば静電吸着、空気の吸引による吸着などを行う構成とすることやその他の公知の搬送手段を用いることができる。また、ローラ対による搬送手段を用いることもできる。
【0016】
給紙トレイ103に収容された用紙100はピックアップローラ131で1枚ずつ分離給紙されて搬送ローラ対132によってレジストローラ対133に送られる。そして、レジストローラ対133から所定のタイミングで搬送ローラ対134によって搬送路135を介して処理液塗布装置200に送られ、処理液塗布装置200により処理液が塗布されて搬送ベルト102上に送り込まれて保持される。そして、搬送ベルト102の周回移動で搬送されて記録ヘッドユニット101から各色の液滴が吐出されて画像が形成され、その後排紙トレイ104に排出される。
【0017】
本実施形態の処理液塗布装置200は、処理液201を収容した新処理液槽202と、この新処理液槽202から処理液201を圧送するポンプ203と、ポンプ203で供給路204を介して供給された処理液201を用紙100に塗布するための塗布処理部210とを備えている。ここで、処理液201は、用紙100の表面に塗布することで用紙100の表面を改質する改質材である。例えば、処理液201は、予め用紙100(前述したように材質としての紙に限定されない。)にムラなく塗布しておくことで、インクの水分を速やかに用紙100に浸透させると共に色成分を増粘させ、更には乾燥も早めることによって滲み(フェザリング、ブリーディング等)や裏抜けを防止し、生産性(単位時間当たりの画像出力枚数)をあげることを可能にする定着剤(セット剤)である。この処理液201は、組成的には、例えば界面活性剤(アニオン系、カチオン系、ノニオン系のいずれか、若しくはこれらを2種類以上混合させたもの)に対して、水分の浸透を促進するセルロース類(ヒドロキシプロピルセルロース等)とタルク微粉体の様な基剤を加えた溶液等を挙げることができる。更に、微粒子を含有することもできる。
【0018】
〔構成例1〕
以下、本実施形態の処理液塗布装置200の一構成例(以下、本構成例を「構成例1」という。)について説明する。
図2は、本構成例1の処理液塗布装置200における塗布処理部210の概略構成を示す模式図である。
塗布処理部210は、用紙100を搬送する搬送ローラ211と、搬送ローラ211に対向して用紙100に処理液201を塗布する塗布部材としての塗布ローラ212と、新処理液槽202から供給される処理液201を貯留する処理液貯留部としての処理液貯蔵パン214と、処理液貯蔵パン214内の処理液201に触れて汲み上げて塗布ローラ212の外周面に供給して処理液201の液膜201cを形成するスクイーズローラ213とを有している。塗布ローラ212は搬送ローラ211に接するとともに、スクイーズローラ213にも接するように配置されている。また、スクイーズローラ213は、処理液貯蔵パン214に貯留されている処理液201の液面に接触するように配置されている。各ローラ211,212,213の回転方向は図2に示すとおりである。
【0019】
処理液塗布工程では、スクイーズローラ213が回転することで、処理液貯蔵パン214から処理液201が汲上げられて、スクイーズローラ213と塗布ローラ212とで形成される谷部分に処理液溜まり201bが形成される。塗布ローラ212とスクイーズローラ213とは加圧接触しているので、谷部分に溜められた処理液溜まり201b内の処理液の一部がスクイーズローラ213と塗布ローラ212とのニップ部(接触部)を通過するときに薄い液膜層201cとなって、処理液201が搬送ローラ211と塗布ローラ212との間を通過し、用紙100上に塗布される。用紙100に塗布されずに塗布ローラ212の外周面に残留した処理液は、塗布ローラ212の回転に伴って処理液貯蔵パン214内の処理液201と接触し、処理液貯蔵パン214内に回収される。
【0020】
ところで、本実施形態の処理液塗布装置200は、用紙100に対して処理液を塗布することで用紙100に処理液を付与する方式である。そのため、塗布ローラ212による処理液塗布時に、用紙100の紙粉や用紙100上に付着していたチリなどの異物が、塗布ローラ212上に付着する。そして、このように異物が付着した塗布ローラ212がスクイーズローラ213に接すると、スクイーズローラ213へも異物が付着する。その結果、スクイーズローラ213に付着した異物が処理液貯蔵パン214の処理液201に浸ることで、スクイーズローラ213から離脱し、処理液貯蔵パン214の処理液201中に異物が蓄積されていく。処理液貯蔵パン214内に蓄積される異物の量が増大すると、例えば、処理液貯蔵パン214内の処理液の粘度が増大しすぎて、処理液201が有する本来の機能が発揮できないなどの不具合を引き起こす。このような不具合を防止するためには、処理液貯蔵パン214内に異物が蓄積されないようにするか、蓄積される異物の量が増えないようにすることが重要となる。
【0021】
そこで、本構成例1においては、スクイーズローラ213と塗布ローラ212との谷部分で形成される処理液溜まり201bと処理液貯蔵パン214の底部とを接続する液体搬送路221を形成し、ポンプ222によって処理液貯蔵パン214の底部に沈殿した異物を処理液201とともに処理液溜まり201bへ移送する異物供給手段としての異物戻し機構220が設けられている。これにより、用紙100への処理液塗布時に塗布ローラ212に付着した紙粉等の異物は、スクイーズローラ213を介して処理液貯蔵パン214内に混入し、その処理液貯蔵パン214内に沈殿すると、処理液201とともに液体搬送路221からポンプ222によって処理液溜まり201bへと移送される。処理液溜まり201bに移送された異物は、スクイーズローラ213と塗布ローラ212とのニップ部(接触部)を通過して、処理液201とともに塗布ローラ212上に付着する。そして、塗布ローラ212上に付着した異物は、処理液201とともに用紙100上に塗布されて、本処理液塗布装置200の処理液貯蔵パン214から排出される。
【0022】
本構成例1においては、用紙100への処理液塗布時に塗布ローラ212に付着した極少量の異物が、処理液貯蔵パン214内に沈殿するたびにその処理液貯蔵パン214から連続的に除去される。よって、処理液貯蔵パン214内の処理液中に存在する異物の量は常に微量であり、不具合を発生させるほどの量の異物が処理液貯蔵パン214内に蓄積されることはない。
また、本構成例1においては、後続の用紙100に戻される異物の量は、その都度少量である。しかも、異物が戻される用紙100にもともと存在している異物(紙粉等)の一部は塗布ローラ212へ付着するので、その分を差し引くと、処理液塗布後の当該用紙100上に存在する異物の量は、処理液塗布前に存在している異物の量と比較して大差なく、少なくとも大幅に増大することはない。したがって、本構成例1のように異物を用紙100へ供給する場合でも、その異物が画像へ悪影響を与えることはない。
【0023】
なお、本構成例1において、ポンプ222による液体搬送路221を介した異物の移送を連続的に行わずに、一定間隔(例えば100枚処理ごと)にポンプ222を駆動させて断続的に行うように構成してもよい。この場合、ポンプ222の駆動時間を抑制できるので消費電力の低減を図ることができる。
【0024】
また、本構成例1においては、印字動作開始とともにポンプ203及びポンプ222を駆動し、ポンプ203による新処理液槽202から処理液貯蔵パン214への処理液201の供給と、ポンプ222による異物が混入した処理液の移送とを開始する。処理液貯蔵パン214には、図示しない液面検知手段が設けられており、処理液貯蔵パン214内の処理液が満タンになったことを検知できるように構成されている。この液面検知手段により処理液貯蔵パン214が満タンになったことが検知されると、ポンプ203の駆動を停止させる。その後、所定時間が経過するまでは、ポンプ222による異物が混入した処理液の移送を継続する。
【0025】
〔構成例2〕
次に、本実施形態の処理液塗布装置200の他の構成例(以下、本構成例を「構成例2」という。)について説明する。
図3は、本構成例2の処理液塗布装置200における塗布処理部210の概略構成を示す模式図である。
本構成例2において、処理液貯蔵パン214は、区画部材215によって、スクイーズローラ213により塗布ローラ212へ供給される処理液201を貯留する第1貯留部214Aと、スクイーズローラ213により回収される処理液201d中に混入した異物を一時的に貯留する第2貯留部214Bとに区画されている。本構成例2の液体搬送路221は、処理液貯蔵パン214内の第2貯留部214Bの底部に接続されている。よって、用紙100への処理液塗布時に塗布ローラ212に付着した紙粉等の異物は、処理液塗布時に塗布ローラ212上に残留した処理液201dとともに、スクイーズローラ213を介して第2貯留部214Bに送られ、その第2貯留部214B内で沈殿することにより、処理液201dとともに液体搬送路221からポンプ222によって処理液溜まり201bへと移送される。その後は、上記構成例1と同様に、用紙100上に塗布されることで、本処理液塗布装置200の処理液貯蔵パン214から排出される。
【0026】
本構成例2では、スクイーズローラ213には清掃部材216が当接している。処理液塗布時に塗布ローラ212上に残留してスクイーズローラ213上に付着した処理液(紙粉等の異物が混入した処理液)201dは、清掃部材216によってスクイーズローラ213上から除去される。清掃部材216によって除去された処理液201dは、処理液貯蔵パン214の第2貯留部214B内に落下する。このような清掃部材216を設けることで、紙粉等の異物が混入した処理液201dを第2貯留部214B内へ回収でき、その処理液201dが第1貯留部214A内の処理液201と混ざるのを防止することができる。
【0027】
上記構成例1の場合、スクイーズローラ213が処理液貯蔵パン214内の処理液201を汲み上げる際に、その処理液貯蔵パン214内の処理液201が攪拌される。そのため、処理液貯蔵パン214内に回収された異物が沈殿しにくいので、処理液貯蔵パン214内の異物を迅速に処理液溜まり201bへ移送して処理液貯蔵パン214から排出することが困難である。
これに対し、本構成例2によれば、スクイーズローラ213によって汲み上げられる処理液201を貯留する第1貯留部214Aと、異物が混入した処理液201dを貯留する第2貯留部214Bとが、区画部材215によって区画されている。よって、スクイーズローラ213が処理液201を汲み上げる際、第1貯留部214A内の処理液201は攪拌されるが、第2貯留部214B内の処理液201dは攪拌されることがない。よって、異物が混入した処理液201dが一時貯留される第2貯留部214B内においては、スクイーズローラ213による攪拌の影響がなく、異物が迅速に沈殿していく。よって、本構成例2によれば、処理液貯蔵パン214内の異物を迅速に処理液溜まり201bへ移送して処理液貯蔵パン214から排出することができる。
【0028】
〔構成例3〕
次に、本実施形態の処理液塗布装置200の更に他の構成例(以下、本構成例を「構成例3」という。)について説明する。
図4は、本構成例3の処理液塗布装置200における塗布処理部210の一部を示す模式図である。
本構成例3の基本構成は、上記構成例2と同様であるが、本構成例3では、区画部材215に、第1貯留部214A内の処理液201は第2貯留部214Bへ流入させるが、第2貯留部214B内の処理液201dは第1貯留部214Aへ流入させない処理液流入制御手段としての方向制御弁217が設けられている点で、上記構成例2と異なっている。
【0029】
本構成例3によれば、ポンプ222の駆動により第2貯留部214B内の処理液201dの水位が下がった場合、水頭差によって第1貯留部214Aから未使用の処理液201が流入する。これにより、第2貯留部214B内の処理液201dの水位は、第1貯留部214A内の水位とほぼ同等に維持される。よって、ポンプ222の駆動により第2貯留部214B内の処理液201dが少なくなって処理液201dの粘度が過剰に高まるのを抑制できる。その結果、処理液201dの粘度が高まって流動性が低下し、ポンプ222による処理液201dの搬送性が低下するのを防ぐことができる。また、乾燥によって第2貯留部214B内の液体が蒸発し、第2貯留部214B内に異物が固着する事態を防止できるので、第2貯留部214B内に異物が固着して第2貯留部214B内から液体搬送路221への処理液201dの排出が妨げられるなどの不具合が発生せず、安定した異物の排出を実現できる。
【0030】
また、本構成例3においては、図5に示すように、第2貯留部214Bに一時的に貯留された異物を第2貯留部214Bから排出する排出口221aが、第2貯留部214Bの長手方向(スクイーズローラ213又は塗布ローラ212の回転軸方向)において、方向制御弁217により第1貯留部214Aの処理液201が第2貯留部214Bへ流入する流入口217aとは異なる位置に設けられている。これにより、方向制御弁217から第2貯留部214Bへ流入する処理液201の流れと、排出口221aから流出する処理液201dの流れとによって、図中矢印Cに示すように、第2貯留部214Bの長手方向に沿って排出口221aへ向かう処理液201dの流れが生じる。その結果、その処理液201dの流れに乗って第2貯留部214B内の異物を排出口221aへ向かって移動させることができる。よって、第2貯留部214B内の異物を効率よく排出口221aから排出することができる。
【0031】
特に、本構成例3では、液体搬送路221につながった排出口221aと方向制御弁217につながった流入口217aとが第2貯留部214Bの長手方向両端部に配置されている。よって、第2貯留部214B内の長手方向全域にわたって処理液201dの流れを生じさせることができ、第2貯留部214B内の異物を更に効率よく排出口221aから排出することができる。
【0032】
以上、本実施形態(各構成例1〜3を含む。以下、同じ。)に係る画像形成装置1は、画像記録媒体としての用紙100上に画像を形成する液体吐出記録方式の画像形成装置であり、その用紙100に対して処理液201を塗布する処理液塗布装置200を備えている。この処理液塗布装置200は、処理液塗布対象である用紙100に接触して処理液201を塗布する塗布部材としての塗布ローラ212と、処理液201を貯留する処理液貯留部としての処理液貯蔵パン214と、処理液貯蔵パン214内の処理液201を塗布ローラ212へ供給する供給手段、及び、処理液塗布後に塗布ローラ212に残留した処理液を処理液貯蔵パン214に回収する処理液回収手段として機能するスクイーズローラ213とを備えている。そして、この処理液塗布装置200は、用紙100への処理液塗布時に塗布ローラ212に付着してスクイーズローラ213により回収される処理液中に混入した紙粉等の異物を、後続の用紙100へ供給する異物供給手段としての異物戻し機構220を備えている。これにより、不具合を発生させるほどの量の異物が処理液貯蔵パン214内に蓄積されることはなくなる。しかも、処理液貯蔵パン214内の異物は用紙100へ付着して処理液塗布装置200から除去されるので、異物を廃棄するための廃タンクが不要となる。よって、廃タンクのリセット作業や異物の処分作業が不要となり、更には廃タンクを備えた画像形成装置よりも装置の小型化を図ることができる。
特に、本実施形態においては、処理液中に混入した異物をスクイーズローラ213とは別個に塗布ローラ212へ付着させ、塗布ローラ212を介して異物を後続の用紙100へ供給する。よって、異物を後続の用紙100へ付着させるための部材を塗布ローラ212と別個に設ける必要がなくなり、装置の小型化等を図ることができる。
また、本実施形態において、異物戻し機構220は、スクイーズローラ213により回収される処理液中に混入した異物を、塗布ローラ212とスクイーズローラとの当接箇所の上部に溜まる処理液(処理液溜まり201b)中に搬送する。これにより、異物を少量ずつ塗布ローラ212上に付着させることができ、用紙100上に異物が局所的に戻される事態を防止できる。
また、本実施形態において、異物戻し機構220は、処理液とともに処理液貯蔵パン214内に回収されて処理液貯蔵パン214の底部に沈殿した異物を、後続の用紙100へ供給する構成であるため、異物とともに移送される処理液の量を少なくでき、効率の良い異物の移送を容易に実現できる。
また、上記構成例2及び3において、処理液貯蔵パン214は、スクイーズローラ213により塗布ローラ212へ供給される処理液を貯留する第1貯留部214Aと、スクイーズローラ213により回収される処理液中に混入した異物を一時的に貯留する第2貯留部214Bとに区画されており、異物戻し機構220は、第2貯留部214Bに一時的に貯留された異物を後続の用紙100へ供給するように構成されている。これにより、処理液貯蔵パン214の一部分(第2貯留部214B)に異物を集中させることができ、処理液貯蔵パン214からの異物の排出を効率よく行うことができる。また、第1貯留部214Aから処理液201を汲み上げる際に第1貯留部214A内の処理液201が攪拌されても、第2貯留部214B内の処理液201d(異物が混入した処理液)が攪拌されることはない。したがって、第2貯留部214B内の異物を迅速に沈殿させて、処理液貯蔵パン214内から迅速に異物を排出できる。
特に、上記構成例3では、第1貯留部214Aと第2貯留部214Bとを区画する区画部材215に、第1貯留部214A内の処理液201は第2貯留部214Bへ流入させるが、第2貯留部214B内の処理液201dは第1貯留部214Aへ流入させない処理液流入制御手段としての方向制御弁217が設けられている。これにより、ポンプ222の駆動により第2貯留部214B内の処理液201dが少なくなって処理液201dの粘度が過剰に高まるのを抑制でき、処理液201dの粘度上昇による処理液201dの搬送性低下を防止できる。また、乾燥によって第2貯留部214B内の液体が蒸発して第2貯留部214B内に異物が固着する事態を防止でき、安定した異物の排出を実現できる。
また、上記構成例3においては、第2貯留部214Bに一時的に貯留された異物を第2貯留部214Bから排出する排出口221aは、第2貯留部214Bの長手方向において、方向制御弁217により第1貯留部214A内の処理液201が第2貯留部214Bへ流入する流入口217aとは異なる位置に設けられている。これにより、第2貯留部214B内において排出口221aへ向かう処理液201dの流れを生じさせることができ、第2貯留部214B内の異物を効率よく排出口221aから排出することができる。
【0033】
なお、本実施形態では、塗布部材、供給手段及び回収手段が、いずれもローラ部材である塗布ローラ212及びスクイーズローラ213である場合について説明したが、無端状ベルトなどの他の構成であってもよい。
また、本実施形態では、画像形成前の用紙100に処理液201を塗布する場合について説明したが、画像形成後の用紙100に何らかの処理液を塗布する場合についても、同様の効果が得られる。
【符号の説明】
【0034】
1 画像形成装置
100 用紙
101 記録ヘッドユニット
102 搬送ベルト
200 処理液塗布装置
201 処理液
202 新処理液槽
203 ポンプ
204 供給路
210 塗布処理部
211 搬送ローラ
212 塗布ローラ
213 スクイーズローラ
214 処理液貯蔵パン
214A 第1貯留部
214B 第2貯留部
215 区画部材
216 清掃部材
217 方向制御弁
220 異物戻し機構
221 液体搬送路
222 ポンプ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0035】
【特許文献1】特開2010−82556号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理液塗布対象に接触して処理液を塗布する塗布部材と、
処理液を貯留する処理液貯留部と、
上記処理液貯留部内の処理液を上記塗布部材へ供給する供給手段と、
処理液塗布後に上記塗布部材に残留した処理液を上記処理液貯留部に回収する処理液回収手段とを備えた処理液塗布装置において、
上記処理液塗布対象への処理液塗布時に上記塗布部材に付着して上記処理液回収手段により回収される処理液中に混入した異物を、後続の処理液塗布対象へ供給する異物供給手段を有することを特徴とする処理液塗布装置。
【請求項2】
請求項1の処理液塗布装置において、
上記異物供給手段は、上記処理液回収手段により回収される処理液中に混入した異物を上記供給手段とは別個に上記塗布部材へ付着させ、該塗布部材を介して該異物を上記後続の処理液塗布対象へ供給することを特徴とする処理液塗布装置。
【請求項3】
請求項2の処理液塗布装置において、
上記塗布部材は塗布ローラであり、
上記供給手段は、上記処理液貯留部内の処理液と上記塗布ローラの外周面とに接触して、該処理液貯留部から汲み上げた処理液を該塗布ローラの外周面に供給し、該塗布ローラの外周面上に処理液の膜を形成するスクイーズローラであり、
上記処理液回収手段は、処理液塗布後に上記塗布部材に残留した処理液を、上記スクイーズローラを介して上記処理液貯留部に回収するものであり、
上記異物供給手段は、上記処理液回収手段により回収される処理液中に混入した異物を、上記塗布ローラと上記スクイーズローラとの当接箇所の上部に溜まる処理液中に搬送することを特徴とする処理液塗布装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の処理液塗布装置において、
上記異物供給手段は、上記処理液回収手段により処理液とともに上記処理液貯留部内に回収されて該処理液貯留部の底部に沈殿した異物を、上記後続の処理液塗布対象へ供給することを特徴とする処理液塗布装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の処理液塗布装置において、
上記処理液貯留部は、上記供給手段により上記塗布部材へ供給される処理液を貯留する第1貯留部と、上記処理液回収手段により回収される処理液中に混入した異物を一時的に貯留する第2貯留部とに区画されており、
上記異物供給手段は、上記第2貯留部に一時的に貯留された異物を、上記後続の処理液塗布対象へ供給することを特徴とする処理液塗布装置。
【請求項6】
請求項5の処理液塗布装置において、
上記第1貯留部と上記第2貯留部とを区画する区画部材に、該第1貯留部内の処理液は該第2貯留部へ流入させるが、該第2貯留部内の処理液は該第1貯留部へ流入させない処理液流入制御手段を有することを特徴とする処理液塗布装置。
【請求項7】
請求項6の処理液塗布装置において、
上記第2貯留部に一時的に貯留された異物を該第2貯留部から排出する排出口は、該第2貯留部の長手方向において、上記処理液流入制御手段により上記第1貯留部内の処理液が該第2貯留部へ流入する流入口とは異なる位置に設けられていることを特徴とする処理液塗布装置。
【請求項8】
画像記録媒体上に画像を形成する画像形成装置において、
上記画像記録媒体に対して処理液を塗布する処理液塗布手段として、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の処理液塗布装置を用いることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−218229(P2012−218229A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−84172(P2011−84172)
【出願日】平成23年4月6日(2011.4.6)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】