説明

処理装置及びプログラム

【課題】 背景ノイズを計測し、計測した背景ノイズに基づいて通信タイミングを決定する処理装置等の提供。
【解決手段】 処理装置100は、少なくとも一つの無線タグ200との間で通信を行う通信部110と、無線タグ200から送信される情報の収集を行う処理部120と、を含む。そして、処理部120は、無線タグ200との通信に失敗した場合に、背景ノイズの計測処理を行って、背景ノイズの計測データを取得し、取得した背景ノイズの計測データに基づいて、無線タグ200との次の通信タイミングを決定する。さらに、通信部110は、決定された通信タイミングで無線タグ200との通信を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、処理装置及びプログラム等に関係する。
【背景技術】
【0002】
無線通信において、ノイズに対して通信品質を向上させることは必須の課題であり、各種の技術が考案されている。ノイズに強い変調方式など各種の手法が考案されている中で、通信時のノイズを実際に解析して動的にノイズに対抗しようとする手法も考えられている。
【0003】
その代表的な手法としては、特許文献1に示すような手法がある。特許文献1に示される手法は、音声通信などに用いられることを想定している。
【0004】
音声通信を行う場合には、通信タイミングがシビアであり、ミリ秒単位でのリアルタイム性が求められる。そのため、音声通信を行う場合には、通信タイミングを数分ずらすといった時間軸での操作は意味を成さない。
【0005】
さらに、音声通信を行う場合には、ノイズ値の時間的な変動が激しく、ノイズが小さくなる期間が一瞬しかなかったり、ノイズ値が高い状態が維持されたりすることも多い。そのため、ノイズ値が小さくなるまで待つ、というようなことも想定外であった。
【0006】
特許文献1に示す手法では、ノイズ値が大きければ、それに対抗して大きな信号強度で通信を行う。
【0007】
また、他にもノイズを解析する手法の中には、特許文献2に記載されているように、ノイズ値を測定し、基準レベルと比較することにより通信品質の良否を判定する手法もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平7−162353号公報
【特許文献2】特開平9−162864号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1で示す手法では、ノイズ値を解析して送信信号強度を決定しているが、送信信号強度を大きくできない場合も存在する。このような場合には、特許文献1に示す手法では、ノイズ値が大きい場合には通信を行うことができない。
【0010】
また、特許文献2に示す手法では、ノイズ値の解析結果を表示するだけで、それ以降の通信制御方法については記載されていない。
【0011】
本発明の幾つかの態様によれば、背景ノイズを計測し、計測した背景ノイズに基づいて通信タイミングを決定することができる処理装置及びプログラム等を提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様は、少なくとも一つの無線タグとの間で通信を行う通信部と、前記無線タグから送信される情報の収集を行う処理部と、を含み、前記処理部は、前記無線タグとの通信に失敗した場合に、背景ノイズの計測処理を行って、前記背景ノイズの計測データを取得し、取得した前記背景ノイズの前記計測データに基づいて、前記無線タグとの次の通信タイミングを決定し、前記通信部は、決定された前記通信タイミングで前記無線タグとの通信を行うことを特徴とする処理装置に関係する。
【0013】
これにより、背景ノイズを計測し、計測した背景ノイズに基づいて通信タイミングを決定することが可能となる。
【0014】
また、本発明の一態様では、前記処理部は、前記背景ノイズの前記計測データに基づいて、前記無線タグとの通信のリトライ条件が満たされたかどうかを判断し、前記無線タグとの通信の前記リトライ条件が満たされたと判断する場合に、前記無線タグに対して通信のリトライ処理を行なってもよい。
【0015】
これにより、リトライ条件が満たされた場合に、次の通信タイミングを設定し、無線タグと通信を行うこと等が可能になる。
【0016】
また、本発明の一態様では、ノイズデータベースの情報を記憶する記憶部を含み、前記記憶部は、所定の周期で計測された前記背景ノイズの前記計測データと、前記無線タグと通信を行うか否かを判定するために用いる通信判定用データと、を含む前記ノイズデータベースの情報を記憶し、前記処理部は、前記背景ノイズの前記計測データを取得した場合に、前記記憶部に記憶される前記ノイズデータベースの更新処理を行い、前記ノイズデータベースから得られる前記通信判定用データと、前記背景ノイズの前記計測データとの比較処理を行うことにより前記通信タイミングを決定してもよい。
【0017】
これにより、例えば、使用する通信判定用データを変更することにより、通信タイミングを変更すること等が可能になる。
【0018】
また、本発明の一態様では、前記処理部は、前記ノイズデータベースから、前記背景ノイズの前記計測データに含まれるノイズ値と、前記通信判定用データに含まれる所与の閾値とを取得し、前記背景ノイズの前記ノイズ値と、前記所与の閾値との比較処理を行うことにより、前記通信タイミングを決定してもよい。
【0019】
これにより、例えば、ノイズ値として背景ノイズの受信信号強度を用いる場合には、現在の背景ノイズの受信信号強度と閾値との大小関係をリトライ条件とすること等が可能になる。
【0020】
また、本発明の一態様では、前記処理部は、前記背景ノイズの前記計測処理を行う場合に、通信記録情報を取得し、前記記憶部は、前記背景ノイズの前記ノイズ値と、前記ノイズ値が測定された通信環境下での前記通信記録情報とが関連付けられた前記計測データを含む前記ノイズデータベースの情報を記憶してもよい。
【0021】
これにより、例えば、背景ノイズのノイズ値の平均値や標準偏差などを求めて、記憶し、リトライ条件に用いること等が可能になる。
【0022】
また、本発明の一態様では、前記処理部は、前記背景ノイズの前記ノイズ値の平均値と標準偏差とに基づいて前記通信判定用データを特定し、特定された前記通信判定用データと、前記背景ノイズの前記計測データとの比較処理を行うことにより、前記通信タイミングを決定してもよい。
【0023】
これにより、例えば、背景ノイズのノイズ値のばらつきを考慮して、リトライ条件に用いられる受信信号強度の閾値を求めること等が可能になる。
【0024】
また、本発明の一態様では、前記処理部は、前期通信部が未使用アドレスへのアクセスを行うことにより得られたデータを、前記背景ノイズの前記計測データとして取得してもよい。
【0025】
これにより、どの無線タグとも通信を行わない状態で、背景ノイズの計測処理を行うこと等が可能になる。
【0026】
また、本発明の一態様では、前期処理部は、前記通信部から取得した前記データの内容と、正解データの内容との相関関係を示す通信成功レベルを求め、前記通信成功レベルに基づいて、前記通信部から取得した前記計測データが前記背景ノイズを表すデータであるか否かを判定してもよい。
【0027】
これにより、背景ノイズと無線タグが送信した信号とを区別すること等が可能になる。
【0028】
また、本発明の一態様では、前記処理部は、前記無線タグとの通信に失敗した場合に、通常通信時の通信周期よりも短い周期で、前記背景ノイズの前記計測処理を行い、取得した前記背景ノイズの前記計測データに基づいて、前記無線タグとの次の前記通信タイミングを決定してもよい。
【0029】
これにより、短い周期で背景ノイズのノイズ値が変動した場合にも、通信可能なタイミングを逃さずに、通信を行うこと等が可能になる。
【0030】
また、本発明の一態様では、前記処理部は、前記背景ノイズの前記計測データに基づいて、前記無線タグとの通信に用いるアンテナ部を切り替えてもよい。
【0031】
これにより、背景ノイズの影響により処理装置と無線タグ間の通信ができなくなった場合にも、使用するアンテナ部を他のアンテナ部に切り替えて通信を行うこと等が可能になる。
【0032】
また、本発明の他の態様では、上記各部としてコンピューターを機能させるプログラムに関係する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本実施形態のシステム構成図。
【図2】本実施形態の詳細なシステム構成図。
【図3】無線タグとの通信処理の説明図。
【図4】ノイズデータベースの説明図。
【図5】通信成功レベルと無線タグの分布率の関係を示すグラフ。
【図6】口径が異なる各アンテナと通信可能な無線タグの説明図。
【図7】本実施形態の処理の流れを説明するフローチャート。
【図8】背景ノイズの計測処理の詳細を説明するフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本実施形態について説明する。まず、本実施形態の概要を説明し、次に本実施形態のシステム構成例について説明する。そして、本実施形態の手法について説明し、最後に、フローチャートを用いて本実施形態の処理の詳細について説明する。なお、以下に説明する本実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また、本実施形態で説明される構成の全てが、本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0035】
1.概要
無線通信において、ノイズに対して通信品質を向上させることは必須の課題であり、各種の技術が考案されている。ノイズに強い変調方式など各種の手法が考案されている中で、通信時のノイズを実際に解析して動的にノイズに対抗しようとする手法も考えられている。
【0036】
その代表的な手法としては、前述した特許文献1に示すような手法がある。特許文献1に示される手法は、音声通信などに用いられることを想定している。
【0037】
音声通信を行う場合には、通信タイミングがシビアであり、ミリ秒単位でのリアルタイム性が求められる。そのため、音声通信を行う場合には、通信タイミングを数分ずらすといった時間軸での操作は意味を成さない。
【0038】
さらに、音声通信を行う場合には、ノイズ値の時間的な変動が激しく、ノイズが小さくなる期間が一瞬しかなかったり、ノイズ値が高い状態が維持されたりすることも多い。そのため、ノイズ値が小さくなるまで待つ、というようなことも想定外であった。
【0039】
特許文献1に示す手法では、ノイズ値が大きければ、それに対抗して大きな信号強度で通信を行う。しかし、実際には、送信信号強度を大きくできない場合も存在する。このような場合には、特許文献1に示す手法では、ノイズ値が大きい場合には通信を行うことができない。
【0040】
また、他にもノイズを解析する手法の中には、特許文献2に記載されているように、ノイズ値を測定し、基準レベルと比較することにより通信品質の良否を判定する手法もある。しかし、特許文献2には、ノイズ値の解析結果を表示するだけで、それ以降の通信制御方法については記載されていない。
【0041】
本実施形態で対象とするノイズは、強力であるが、その大きさが大きく変動する性質を持つ。また、ノイズ値の変動は、主に分単位であり、音声通信での変動期間よりも長い期間である。すなわち、分単位のリアルタイム性を満たせば十分である。
【0042】
本実施形態では、このような背景ノイズが計測される通信環境で、無線タグからデータを受信することが目的となる。
【0043】
具体例を挙げると、工事現場などでは、内部振動機等の強力な電磁ノイズを放射する装置が数多く使われており、またこれらは適宜、人力で動かされて各所で使用されている。そして、これらの装置の電源も、人力にて適宜ON、OFFされるので、距離的、時間的なノイズ値の変動は非常に大きい。
【0044】
このような突発的に変動する電磁ノイズ環境は、無線通信上は望ましくないが、工事現場内での進捗状況の計測などを無線通信により行おうとする場合、避けられない環境条件となる。
【0045】
しかし、前述した通り、距離的、時間的な変動が大きいため、一時的に電磁ノイズのノイズ値が下がる場合もある。なお、本実施形態において想定する作業は必ず移動しながら繰り返される性質があり、また、数十分単位で繰り返されるとする。
【0046】
また、工事は人(作業者)が行うものであって、リアルタイムといっても数分〜10分程度の時間内で状況を把握できればよく、例えばミリ秒単位での動作が可能な電子機器に対しては相対的に非常に長いタイムスパンの中で1回以上の通信が成立すれば目的を達することになる。
【0047】
そこで、このような課題の性質から、本実施形態の処理装置は、背景ノイズ(環境ノイズ)を計測し、例えば、背景ノイズのノイズ値が閾値よりも低くなるタイミングを見計らって通信を行い、背景ノイズによる通信障害を回避する。つまり、特許文献1に示す手法とは異なり、送信信号強度ではなく、通信タイミングを制御することにより、課題の解決を図る。
【0048】
2.システム構成例
まず、図1に本実施形態のシステム構成例を示す。
【0049】
本実施形態の処理装置100が用いられる作業現場には、例えば図1のように、複数の無線タグ200が配置されている。そして、処理装置100と処理装置100のアンテナ部が、例えば図1のように、作用現場に配置されている。
【0050】
無線タグ200は、処理装置100のいずれかのアンテナ部と無線通信を行い、処理装置100に情報を送信する。そして、処理装置100は各無線タグ200から得られるデータを収集する。なお、無線タグ200が送信する情報は、例えば、無線タグが収集したセンサー情報や、あらかじめ内容が決められたビット列などである。
【0051】
さらに、作業現場と離れた位置に、情報処理装置300が配置されている。作業者50は情報処理装置300を用いて、処理装置100が収集したデータを通信により取得し、作業現場の様子を確認する。
【0052】
ここで、本実施形態が想定している作業現場では、ノイズ源、例えば内部振動機等の強力な電磁ノイズを放射する装置を持った作業者40が作業を行いつつ、数分置きに場所を移動する。すなわち、作業者40が作業をしている場所の周囲において、ノイズ値が大きくなる。
【0053】
次に、図2に本実施形態の処理装置の構成例を示す。処理装置100は、通信部110と、処理部120と、記憶部130と、アンテナ部140と、を含む。なお、処理装置100は、図2の構成に限定されず、これらの一部の構成要素を省略したり、他の構成要素を追加したりするなどの種々の変形実施が可能である。
【0054】
次に各部で行われる処理について説明する。
【0055】
通信部110は、処理装置100と無線タグ200間で、無線通信により情報の送受信を行う。また、通信部110は、後述するアンテナ部140の制御を行う。さらに、通信部110は、情報処理装置300と、例えば、WiFiやBluetooth(登録商標)などの通信規格で情報の送受信を行う。なお、処理装置100の通信部110と情報処理装置300は、有線により通信を行うものであってもよく、無線により通信を行うものであってもよい。他にも、インターネットを経由して情報をやり取りしてもよい。
【0056】
処理部120は、記憶部130からのデータや、通信部110において受信した情報等に基づいて種々の処理を行う。この処理部120の機能は、各種プロセッサー(CPU等)、ASIC(ゲートアレイ等)などのハードウェアや、プログラムなどにより実現できる。
【0057】
記憶部130は、データベースを記憶したり、処理部120等のワーク領域として用いたりするもので、その機能はRAM(ランダムアクセスメモリー)等のメモリーやHDD(ハードディスクドライブ)などにより実現できる。
【0058】
アンテナ部140は、高周波エネルギーを電波(電磁波)として空間に放射(送信)、あるいは逆に空間の電波(電磁波)を高周波エネルギーへ相互に変換(受信)する装置である。なお、本実施形態のアンテナ部140は、送受信機能を有している。
【0059】
さらに、アンテナ部140は、処理装置100に対して、1つまたは複数設けられ、図1に示すように、作業現場に配置される。また、アンテナ部140が複数設けられる場合には、各アンテナの口径が異なっていてもよい。
【0060】
3.本実施形態の手法
以上の本実施形態では、少なくとも一つの無線タグ200との間で通信を行う通信部110と、無線タグ200から送信される情報の収集を行う処理部120と、を含む。そして、処理部120は、無線タグ200との通信に失敗した場合に、背景ノイズの計測処理を行って、背景ノイズの計測データを取得し、取得した背景ノイズの計測データに基づいて、無線タグ200との次の通信タイミングを決定する。さらに、通信部110は、決定された通信タイミングで無線タグ200との通信を行う。
【0061】
図3を用いて具体例を説明する。まず、処理装置REは複数のアンテナ部AT1〜AT4を有している。また、本実施形態では、1つのアンテナ部当たり、3つの無線タグとの通信が可能であり、無線タグとアンテナ部間が最短距離となる組み合わせで通信を行うものとする。例えば、無線タグRT1と無線タグRT2は、アンテナ部AT3と通信を行う。なお、本実施形態の処理装置はこれに限定されない。
【0062】
しかし、本例において想定する作業環境では、図3に示す作業者WKが、内部振動機等の強力な電磁ノイズを放射する装置を持って作業を行うため、領域NA1のような、背景ノイズが非常に高い領域が出来てしまう。この場合には、無線タグRT1と無線タグRT2は、アンテナ部AT3と正常な通信を行うことができない。
【0063】
ただし、前述したように、作業者WKはアンテナ部AT3の近くから移動しないわけではなく、作業終了後には、例えば、アンテナ部AT1の近くに移動する。この場合には、アンテナ部AT1の周囲に背景ノイズが高い領域NA2ができ、無線タグRT3とアンテナ部AT1間で正常に通信ができなくなる。一方で、アンテナ部AT3の周囲の領域は、背景ノイズが低い元の状態に戻るため、無線タグRT1と無線タグRT2は、アンテナ部AT3と正常に通信を行うことが可能になる。すなわち、このタイミングに通信を行えば良い。
【0064】
そこで、前述したように本実施形態では、処理部が、無線タグとの通信に失敗した場合に、背景ノイズの計測処理を行って、背景ノイズの計測データを取得し、取得した背景ノイズの計測データに基づいて、無線タグとの次の通信タイミングを決定する。さらに、通信部は、決定された通信タイミングで無線タグとの通信を行う。
【0065】
ここで、背景ノイズ(環境ノイズ)とは、常に存在する雑多な雑音(ノイズ)であり、いわゆる空中雑音のことである。特別なノイズ源が存在しない限り、無線タグや処理装置が出力する信号強度と比較して強度が小さいので、無線タグとアンテナ部との距離が比較的近ければ、通信の障害とはならず、問題とならない。
【0066】
また、計測データとは、計測処理の結果得られるデータのことである。例えば、後述するノイズ値や、通信記録情報のことである。なお、計測処理の具体例については、後述する。
【0067】
これにより、背景ノイズを計測し、計測した背景ノイズに基づいて通信タイミングを決定することが可能となる。例えば、相対的に背景ノイズが小さい時を通信タイミングとして設定し、通信すること等が可能となる。
【0068】
また、本実施形態では、特定の環境のノイズ特性(時間変動が大きい)について鑑みて、送受信のタイミングを操作して通信性能を上げようとするものであり、送信回路のパワーを変化させるための回路などの追加回路等が不要である点においても、優位である。
【0069】
なお、図3の例において、領域NA1内にアンテナ部AT3が含まれる場合には、無線タグRT1と無線タグRT2は、通信相手をアンテナ部AT3ではなく、アンテナ部AT4に変更しても良いが、この手法については後述する。
【0070】
また、処理部120は、背景ノイズの計測データに基づいて、無線タグ200との通信のリトライ条件が満たされたかどうかを判断し、無線タグ200との通信のリトライ条件が満たされたと判断する場合に、無線タグ200に対して通信のリトライ処理を行ってもよい。
【0071】
リトライ条件の具体例については後述する。
【0072】
これにより、リトライ条件が満たされた場合に、次の通信タイミングを設定し、無線タグと通信を行うこと等が可能になる。
【0073】
また、本実施形態の処理装置は、ノイズデータベースの情報を記憶する記憶部130を含んでもよい。そして、記憶部130は、所定の周期で計測された背景ノイズの計測データと、無線タグ200と通信を行うか否かを判定するために用いる通信判定用データと、を含むノイズデータベースの情報を記憶してもよい。さらに、処理部120は、背景ノイズの計測データを取得した場合に、記憶部130に記憶されるノイズデータベースの更新処理を行い、ノイズデータベースから得られる通信判定用データと、背景ノイズの計測データとの比較処理を行うことにより通信タイミングを決定してもよい。
【0074】
ここで、ノイズデータベースとは、例えば、図4に示すような背景ノイズの計測データ6100と、通信判定用データ6300と、を含むデータベース6000のこと等をいう。
【0075】
また、通信判定用データとは、処理装置が無線タグと通信を行うか否かを判定するために用いるデータである。通信判定用データ6300は、具体的には、背景ノイズの受信信号強度の閾値(図4では、リトライ用閾値6310)などである。なお、通信判定用データ6300は他にも、背景ノイズの計測処理を行なっている場合に、現在計測しているデータが背景ノイズに起因するものか否かを判定するために用いるデータ(図4では、背景ノイズ判定用閾値6320)を含んでもよい。具体的には、背景ノイズ判定用閾値6320は、後述する図8のステップS22で用いる通信成功レベルの閾値等が該当する。
【0076】
さらに、ノイズデータベース6000は、背景ノイズの計測データ6100や通信判定用データ6300以外のデータを含んでいてもよい。例えば、図4に示すノイズデータベース6000は、上記のデータの他にも無線タグの計測データ6200を含む。
【0077】
例えば図4に示すように、無線タグの計測データ6200は、無線タグ別の通信成功時の受信信号強度6222や通信成功回数のデータ6224、通信成功レベル6226、無線タグ別の通信失敗時の受信信号強度6242や通信失敗回数のデータ6244、通信成功レベル6246、各通信成功レベルの無線タグ検出率6260などを含んでもよい。
【0078】
なお、ノイズデータベース6000は、図4に示したデータの一部を含まなくてもよく、様々な変形が可能である。
【0079】
これにより、例えば、使用する通信判定用データを変更することにより、通信タイミングを変更すること等が可能になる。次項にて詳細に説明するが、例えば、一定時間以上、背景ノイズの受信信号強度が通常時よりも高い状態であり、背景ノイズの受信信号強度が小さくなる見込みがないと判定した場合などに、閾値を小さくするなど、状況に応じて、リトライ条件を緩和すること等が可能となる。
【0080】
また、処理部120は、ノイズデータベースから、背景ノイズの計測データに含まれるノイズ値と、通信判定用データに含まれる所与の閾値とを取得し、背景ノイズのノイズ値と、所与の閾値との比較処理を行うことにより、通信タイミングを決定してもよい。
【0081】
ここで、ノイズ値とは、図4に示すように背景ノイズの計測データ6100のうちの一つであり、背景ノイズの大きさや、背景ノイズが通信に与える影響の大きさを表す指標となる値のことをいう。具体的には、ノイズ値は、背景ノイズの受信信号強度(振幅値)6122などのことをいう。
【0082】
さらに、所与の閾値とは、図4に示すように通信判定用データのうちの一つであり、例えば、背景ノイズの受信信号強度をノイズ値として用いる場合には、背景ノイズの受信信号強度についての閾値(図4では、リトライ用閾値6310)であってもよい。
【0083】
これにより、例えば、ノイズ値として背景ノイズの受信信号強度を用いる場合には、現在の背景ノイズの受信信号強度と閾値との大小関係をリトライ条件とすること等が可能になる。背景ノイズの受信信号強度は、作業者にとっても直感的に理解しやすい指標であるため、実用上優位である。
【0084】
また、処理部120は、背景ノイズの計測処理を行う場合に、通信記録情報を取得してもよい。そして、記憶部130は、背景ノイズのノイズ値と、ノイズ値が測定された通信環境下での通信記録情報とが関連付けられた計測データを含むノイズデータベースの情報を記憶してもよい。
【0085】
ここで、通信記録情報とは、図4に示すように背景ノイズの計測データのうちの一つである。通信記録情報6140は、例えば、後述するノイズ値の平均値・標準偏差6142(以下、標準偏差をσと記載することがある)や、通信成功レベル6144などがある。ただし、本実施形態の通信記録情報はこれらに限定されず、この他のデータを含んでもよく、一部のデータを含まなくても良く、様々な変形が可能である。
【0086】
なお、通信成功レベルは、例えば、あらかじめ内容が決められたデータを無線タグが送信した場合に、処理装置が受信したデータと、無線タグが送信したデータに対応する正解データとを相互相関関数などを用いて評価することにより求めることができる。
【0087】
これにより、例えば、背景ノイズのノイズ値の平均値・標準偏差などを求めて、記憶すること等が可能になる。また、これらの通信記録情報をリトライ条件の判定等において用いること等が可能となる。
【0088】
また、処理部120は、背景ノイズのノイズ値の平均値と標準偏差とに基づいて通信判定用データを特定し、特定された通信判定用データと、背景ノイズの計測データとの比較処理を行うことにより、通信タイミングを決定してもよい。
【0089】
ここで、後述するように、例えば背景ノイズの計測処理は、一度に複数回(例えば20回程度)行う。そこで、各回で計測されたノイズ値を平均し、これをノイズ値の平均値として用いてもよい。または、背景ノイズの受信信号強度の移動平均値等をノイズ値の平均値として用いても良い。
【0090】
また、ノイズ値の標準偏差とは、例えば、背景ノイズの受信信号強度についての標準偏差等である。背景ノイズの受信信号強度の移動平均値をノイズ値の平均値として用いる場合には、移動平均を行う所定の期間と同じ期間内に測定した背景ノイズの受信信号強度のみを対象として標準偏差を求めることが望ましい。
【0091】
これにより、例えば、背景ノイズのノイズ値のばらつきを考慮して、リトライ条件に用いられる受信信号強度の閾値を求めること等が可能になる。
【0092】
また、処理部120は、通信部110が未使用アドレスへのアクセスを行うことにより得られたデータを、背景ノイズの計測データとして取得してもよい。
【0093】
ここで、背景ノイズの計測処理の具体例について説明する。まず、各無線タグには固有のアドレスが割り当てられている。通常通信時には、そのアドレスに向けて、処理装置が呼び出しを行い、無線タグが応答し、通信が成立する。
【0094】
一方、背景ノイズの計測処理を行う場合には、処理装置は、「存在しないことが保証された」無線タグのアドレスへの呼びかけを行う。すなわち、どの無線タグにも割り当てていないアドレスを背景ノイズの計測処理用アドレスとして用いる。呼びかけを行なった無線タグは存在しないので電波を返信するものは存在しない。この場合には、当然、通信失敗となるが、そのときの受信信号の振幅値(受信信号強度)を測定する。これにより、特定の無線タグから信号が出力されていない状態で、背景ノイズのみを測定することができる。また、この時に測定された受信信号の振幅値等が背景ノイズの計測データとなる。
【0095】
これにより、どの無線タグとも通信を行わない状態で、背景ノイズの計測処理を行うこと等が可能になる。
【0096】
また、処理部120は、通信部110から取得したデータの内容と、正解データの内容との相関関係を示す通信成功レベルを求め、通信成功レベルに基づいて、通信部110から取得した計測データが背景ノイズを表すデータであるか否かを判定してもよい。
【0097】
これにより、背景ノイズと無線タグが送信した信号とを区別すること等が可能になる。なお、具体例については、後述する。
【0098】
また、処理部120は、無線タグ200との通信に失敗した場合に、通常通信時の通信周期よりも短い周期で、背景ノイズの計測処理を行い、取得した背景ノイズの計測データに基づいて、無線タグ200との次の通信タイミングを決定してもよい。
【0099】
これにより、短い周期で背景ノイズのノイズ値が変動した場合にも、通信可能なタイミングを逃さずに、通信を行うこと等が可能になる。
【0100】
また、処理部120は、背景ノイズの計測データに基づいて、無線タグ200との通信に用いるアンテナ部140を切り替えてもよい。
【0101】
図6を用いて具体例を説明する。その前に前提として、本実施形態のアンテナ部140は、口径が大きければ大きいほど受信感度が良くなり、通信可能な無線タグの数も増える。逆に、アンテナ部140の口径が小さければ受信感度が悪くなるが、受信する背景ノイズのノイズ値も小さくなる。ただし、アンテナ部140の口径が小さくなれば、その分、通信可能な無線タグの数が減ることになる。また、受信感度が悪い場合は無線タグに近づけて、背景ノイズに強くするという方法もある。
【0102】
図6に示す処理装置REにはアンテナ部AT1〜AT3が設けられている。また、図6では、アンテナ部AT1を、他のアンテナ部と比較して口径が大きいことを示すために大きく描画した。アンテナ部AT1は、通信領域CA1内に配置されている無線タグRT1〜RT8と通信することができる。一方、アンテナ部AT2は、通信領域CA2内に配置されている無線タグRT1とRT2と通信することができ、アンテナ部AT3は、通信領域CA3内に配置されている無線タグRT5とRT6と通信することができる。
【0103】
このとき、作業者WKがノイズ源を持って、図6に示す位置で作業を始め、背景ノイズが高い領域NAが発生したとする。この場合には、これまでアンテナ部AT1と通信しており、領域NAに含まれる無線タグRT1〜RT3は、アンテナ部AT1を介して処理装置REと通信できなくなってしまう。
【0104】
そこで、前述したように、各無線タグが通信に用いるアンテナ部を切り替えればよい。本例においては、処理装置REの処理部が、無線タグRT1とRT2の通信対象となるアンテナ部をアンテナ部AT1からアンテナ部AT3へと切り替えて通信を行う。一方、他のアンテナ部の通信可能領域に位置しない無線タグRT3は、アンテナ部を切り替えることができない。
【0105】
これにより、背景ノイズの影響により処理装置と無線タグ間の通信ができなくなった場合にも、使用するアンテナ部を他のアンテナ部に切り替えて通信を行うこと等が可能になる。
【0106】
なお、本実施形態の処理装置等は、プログラムにより実現してもよい。この場合には、CPU等のプロセッサーがプログラムを実行することで、本実施形態の処理装置等が実現される。具体的には、情報記憶媒体に記憶されたプログラムが読み出され、読み出されたプログラムをCPU等のプロセッサーが実行する。ここで、情報記憶媒体(コンピューターにより読み取り可能な媒体)は、プログラムやデータなどを格納するものであり、その機能は、光ディスク(DVD、CD等)、HDD(ハードディスクドライブ)、或いはメモリー(カード型メモリー、ROM等)などにより実現できる。そして、CPU等のプロセッサーは、情報記憶媒体に格納されるプログラム(データ)に基づいて本実施形態の種々の処理を行う。即ち、情報記憶媒体には、本実施形態の各部としてコンピューター(操作部、処理部、記憶部、出力部を備える装置)を機能させるためのプログラム(各部の処理をコンピューターに実行させるためのプログラム)が記憶される。
【0107】
4.処理の詳細
以下では、図7のフローチャートを用いて、本実施形態の処理の流れについて説明する。
【0108】
まず、特定ノイズ源が無い時(通常時)の背景ノイズの計測処理を行う(S1)。なお、以下では、ステップS1における背景ノイズの計測処理結果を、第1のノイズ計測処理結果と呼ぶ。
【0109】
ここで、ステップS1において行う処理の詳細な流れを図8のフローチャートを用いて説明する。
【0110】
まず、前述したように、本実施形態の処理装置は、「存在しないことが保証された」無線タグのアドレス、すなわち未使用アドレスへの呼びかけを行う(S20)。
【0111】
そして、そのときの受信信号の振幅値(受信信号強度)を計測する(S21)。これにより、特定の無線タグから信号が出力されていない状態で、背景ノイズのみを計測することができる。また、この時に計測された受信信号の振幅値等を背景ノイズの計測データとする。
【0112】
しかし、無線タグが、誤って未使用アドレスへの呼び出しに応答を返してしまうことがある。この場合には、正確に背景ノイズの計測処理を行うことはできない。
【0113】
そこで、ステップS21で取得した背景ノイズの計測データに基づいて、通信成功レベルを算出する(S22)。そして、算出した通信成功レベルに基づいて、ステップS21において計測した計測データが背景ノイズを表すデータであるか、又はいずれかの無線タグが送信した信号を表すデータであるかを判定する(S23)。ステップS23において、計測データが背景ノイズを表すデータではないと判定された場合には処理を終了する。
【0114】
前述したように、通信成功レベルは、例えば、あらかじめ内容が決められたデータを無線タグが送信した場合に、処理装置が受信したデータと、無線タグが送信したデータに対応する正解データとを相互相関関数などを用いて評価することにより求めることができる。
【0115】
ここで、ステップS22とステップS23の処理の意味を図5のグラフを用いて説明する。図5のグラフは、横軸が前述した通信成功レベル、縦軸が無線タグの分布率を示している。
【0116】
まず、「存在する無線タグ」の系列について図5のグラフを説明する。例えば、通信成功レベルが10を示す無線タグは全ての無線タグのうち約67%である。また、通信成功レベルが9を示す無線タグは全ての無線タグのうち約3%である。このように通信成功レベルが高い値を示す無線タグは、特別なノイズ源が近くになく、背景ノイズが小さい領域に配置されているものである。例えば図3で言えば、無線タグRT4のような無線タグである。一方、通信成功レベルが1〜5といった低い値を示す無線タグは、例えば図3で言えば作業者WKが近くで作業をしており、背景ノイズが大きい領域に配置されている無線タグRT3のような無線タグである。
【0117】
これに対して、背景ノイズの計測処理を行う際には、前述したように処理装置が未使用アドレスを呼び出して、その時の受信信号の振幅等を背景ノイズの計測データとする。本実施形態の処理装置は、このようにして取得した背景ノイズの計測データを、「存在しない無線タグ」からの応答として、通信成功レベルを算出する(S22)。図5にはその通信成功レベルと「存在しない無線タグ」の分布を、「存在する無線タグ」とは別の系列で示している。
【0118】
図5によると、「存在しない無線タグ」のほとんどは、通信成功レベル1〜5といった低い値を示すことがわかる。これは、背景ノイズが全くデタラメな信号であるためである。正解データとランダムな信号とを相互相関関数などにより評価すると、一般的に通信成功レベルは小さくなる。
【0119】
以上のように、図5の例では、「存在する無線タグ」については、背景ノイズが小さい時には通信可能レベルが8〜10となり、背景ノイズが大きい時には通信可能レベルが1〜5となることが多い。一方、「存在しない無線タグ」については、背景ノイズの大小に関わらず、通信可能レベルが1〜5となることが多く、厳密には通信可能レベル7(TH2)以下を示す。このように、「存在する無線タグ」と「存在しない無線タグ」の通信成功レベルの分布傾向ははっきりと異なる。そのため少なくとも、通信成功レベルが8以上の計測データは、背景ノイズではなく、特定の無線タグからの送信信号を表すデータであると判定することができる。ステップS23では、例えば、通信成功レベル8(TH1)を閾値に設定して、背景ノイズを表すデータであるか否かを判定している。
【0120】
なお、「存在しない無線タグ」が示す通信成功レベルは、偶然にデータが一致したことにより上下するため、「存在しない無線タグ」同士の通信成功レベルの大小自体には意味はなく、背景ノイズの大小は受信信号強度等により判断する。
【0121】
次に、ステップS20〜ステップS23の処理を所定の回数だけ(例えば20回)繰り返し(S24)、所定回数だけ背景ノイズの計測処理を実施した場合に、背景ノイズの平均の信号振幅値、標準偏差σを算出する(S25)。さらに、本実施形態では、背景ノイズの平均の信号振幅値に対して3σを加えた値を計算し、記憶する。通常時のほぼ全ての背景ノイズは、上記の平均の信号振幅値に対して3σを加えた値よりも小さいと期待できる。逆にこの値を継続的に超えるノイズ信号振幅が到来した場合、「通常時」とは異なるノイズ状況にあると判断できるためである。以上で、図8の処理を終了する。
【0122】
次に、図7のフローチャートに戻り、各無線タグとの通信処理及びデータ処理を行う(S2)。
【0123】
具体的には、データを取得したい無線タグに割り当てられている固有アドレスに向けて、処理装置が読み出し命令を行う。そして、無線タグはデータ送信命令を受信し、データを送信する。
【0124】
無線タグから送信されたデータを処理装置が受信することに成功した場合には、データ受信時の信号振幅強度を無線タグ毎に記憶し、さらに、信号振幅強度を積算して、信号強度積算値を求める。なお、上記は積算値でなく移動平均値としても良い。上記の通信成功時の信号強度は、SN比(signal-to-noise ratio:信号対雑音比)を考える上での判定基準となる。例えば、背景ノイズの受信信号強度が、この信号強度の特定の割合(例えば2分の1、あるいは10分の1)を超えた場合には、SN比が低下し、信号がとりにくくなった状態にあると判断できる。
【0125】
また、データ受信成功時には、通信成功回数もタグ毎にカウントする。そして、信号強度積算値を成功回数で除算することにより、無線タグの通信成功時の平均通信信号強度が求められる。また、成功回数と、データ受信失敗時にカウントする失敗回数とを加算して総試行数を求め、総試行回数で成功回数を除算すれば通信成功率が得られる。なお、これらの情報は、図4に示す無線タグの計測データに該当する。
【0126】
一方、処理装置が、無線タグから送信されたデータを受信することに失敗した場合にも、成功した場合と同様に、データ受信失敗時の受信信号振幅強度を無線タグ毎に記憶し、さらに、信号強度積算値を求める。なお、上記は積算値でなく移動平均値としても良い。さらに、通信失敗回数も無線タグ毎にカウントする。なお、ステップS2において、データの受信に失敗した場合などには、各無線タグとの通信を複数回繰り返しても良い。
【0127】
次に、全ての無線タグと通信が成功したか否か判定する(S3)。全ての無線タグと通信が成功したと判定する場合には、通常時のタイマー値(例えば5分)を設定する(S4)。そして、タイマーを更新し(S5)、タイマーが満了したか否かを判定する(S6)。タイマーが満了していないと判定した場合には、ステップS5に戻り、タイマー値を更新する。一方、タイマーが満了したと判定した場合には、ステップS2に戻り、再度各無線タグとの通信処理を開始する。
【0128】
また、ステップS3において、一つでも通信が失敗した無線タグがあると判定した場合には、特定ノイズ源想定時の背景ノイズの計測処理を行う(S7)。処理の内容は、図8のステップS20〜S25の処理と同様である。ただし、第1のノイズ計測処理結果とは別に、ステップS7の計測処理の結果(背景ノイズのノイズ値や平均値、標準偏差等のデータ)を記憶しておくことが望ましい。なお、以下では、ステップS7における背景ノイズの計測処理結果を、第2のノイズ計測処理結果と呼ぶ。
【0129】
次に、ノイズ時用タイマー値を設定する(S8)。ノイズ時用タイマー値は、ステップS4で設定した通常タイマー値よりも短い値であり、例えば通常タイマー値が5分である場合には、ノイズ時用タイマー値を1分に設定する。
【0130】
そして、ノイズ時用タイマー値を更新し(S9)、ノイズ時用タイマー値が満了したか否かを判定する(S10)。ノイズ時用タイマー値が満了していないと判定した場合には、ステップS9に戻り、ノイズ時用タイマー値を更新する。
【0131】
一方、ノイズ時用タイマーが満了したと判定した場合には、再度特定ノイズ源想定時の背景ノイズの計測処理を行う(S11)。この場合にも、処理の内容は、図8のステップS20〜S25の処理と同様であり、第1のノイズ計測処理結果及び第2のノイズ計測処理結果とは別に、ステップS11の計測処理の結果(背景ノイズのノイズ値や平均値、標準偏差等のデータ)を記憶しておくことが望ましい。以下では、ステップS11における背景ノイズの計測処理結果を、第3のノイズ計測処理結果と呼ぶ。
【0132】
そして、測定した背景ノイズの計測データに基づいて、ノイズデータベースから通信判定用データを特定する(S12)。言い換えれば、本実施形態の処理装置は、ステップS11で求められる背景ノイズの計測データに応じてリトライ条件を切り替える。
【0133】
例えば本実施形態では、以下で説明する6つのリトライ条件を規定する。後述するように、下記のリトライ条件を満たした場合に、通信のリトライを行う。
【0134】
まず、第1のリトライ条件は、「第3のノイズ計測処理結果のノイズ値の平均値が、(第1のノイズ計測処理結果のノイズ値の平均値+σ)以下であること」である。これは、背景ノイズの大きさが、通常レベルに戻ったと判断できるためである。全てのリトライ条件の中で、最も厳しい条件である。
【0135】
次に、第2のリトライ条件は、「第3のノイズ計測処理結果のノイズ値の平均値が、(第1のノイズ計測処理結果のノイズ値の平均値+3σ)以下の範囲内に含まれること」である。第2のリトライ条件は、第1のリトライ条件を緩和したものである。
【0136】
さらに、第3のリトライ条件は、「ステップS11において計測した背景ノイズの信号強度積算値が、ステップS2において無線タグからのデータ受信が成功した時の受信信号強度積算値の2分の1以下であること」である。前述したように、背景ノイズは大きいが、十分なSN比が確保できるため、リトライする。
【0137】
そして、第4のリトライ条件は、「第3のノイズ計測処理結果のノイズ値の平均値が、(第2のノイズ計測処理結果のノイズ値の平均値−σ)であること」である。これは、ステップS7の時よりも、背景ノイズが小さくなっていると判断することができるためである。
【0138】
さらに、第5のリトライ条件は、「第3のノイズ計測処理結果のノイズ値の平均値が、第2のノイズ計測処理結果のノイズ値の平均値以下であること」である。第5のリトライ条件は、第4のリトライ条件を緩和したものである。
【0139】
最後に、第6のリトライ条件は、「背景ノイズの計測結果に関わりなく、ノイズ時用タイマー値が満了すること」である。この場合には、いくら待っても背景ノイズが小さくなることが期待できないため、単純に通信機会を増やす。
【0140】
また、最初は通信成功レベルが高くなるような状態で通信のリトライを行えるような条件に従うが、あまり高い条件にこだわっているとリトライをする機会が巡ってこない可能性が出てくる。そのため、後述するステップS13において、リトライ条件を満たさないと判定される度に、リトライ条件を緩和していく手法などを用いても良い。例えば、第1のリトライ条件から第2のリトライ条件に緩和したり、第4のリトライ条件から第5のリトライ条件に緩和したりするなどが考えられる。当然、他の組み合わせも可能である。
【0141】
最後に、通信判定用データと背景ノイズの計測データとを比較して、通信の再試行を行うか否かを判定する(S13)。通信の再試行を行うと判定した場合には、ステップS2に戻り、再度各無線タグとの通信処理を開始する。一方、通信の再試行を行わないと判定した場合には、ステップS8に戻り、ノイズ時用タイマー値を再設定する。
【0142】
以上のように本実施形態について詳細に説明したが、本発明の新規事項および効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できるであろう。従って、このような変形例はすべて本発明の範囲に含まれるものとする。例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義または同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また、処理装置の構成、動作も本実施形態で説明したものに限定されず、種々の変形実施が可能である。
【符号の説明】
【0143】
100 処理装置、110 通信部、120 処理部、130 記憶部、
140 アンテナ部、200 無線タグ、300 情報処理装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つの無線タグとの間で通信を行う通信部と、
前記無線タグから送信される情報の収集を行う処理部と、
を含み、
前記処理部は、
前記無線タグとの通信に失敗した場合に、背景ノイズの計測処理を行って、前記背景ノイズの計測データを取得し、取得した前記背景ノイズの前記計測データに基づいて、前記無線タグとの次の通信タイミングを決定し、
前記通信部は、
決定された前記通信タイミングで前記無線タグとの通信を行うことを特徴とする処理装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記処理部は、
前記背景ノイズの前記計測データに基づいて、前記無線タグとの通信のリトライ条件が満たされたかどうかを判断し、
前記無線タグとの通信の前記リトライ条件が満たされたと判断する場合に、前記無線タグに対して通信のリトライ処理を行うことを特徴とする処理装置。
【請求項3】
請求項2において、
ノイズデータベースの情報を記憶する記憶部を含み、
前記記憶部は、
所定の周期で計測された前記背景ノイズの前記計測データと、前記無線タグと通信を行うか否かを判定するために用いる通信判定用データと、を含む前記ノイズデータベースの情報を記憶し、
前記処理部は、
前記背景ノイズの前記計測データを取得した場合に、前記記憶部に記憶される前記ノイズデータベースの更新処理を行い、
前記ノイズデータベースから得られる前記通信判定用データと、前記背景ノイズの前記計測データとの比較処理を行うことにより前記通信タイミングを決定することを特徴とする処理装置。
【請求項4】
請求項3において、
前記処理部は、
前記ノイズデータベースから、前記背景ノイズの前記計測データに含まれるノイズ値と、前記通信判定用データに含まれる所与の閾値とを取得し、
前記背景ノイズの前記ノイズ値と、前記所与の閾値との比較処理を行うことにより、前記通信タイミングを決定することを特徴とする処理装置。
【請求項5】
請求項3又は4において、
前記処理部は、
前記背景ノイズの前記計測処理を行う場合に、通信記録情報を取得し、
前記記憶部は、
前記背景ノイズの前記ノイズ値と、前記ノイズ値が測定された通信環境下での前記通信記録情報とが関連付けられた前記計測データを含む前記ノイズデータベースの情報を記憶することを特徴とする処理装置。
【請求項6】
請求項3乃至5のいずれかにおいて、
前記処理部は、
前記背景ノイズの前記ノイズ値の平均値と標準偏差とに基づいて前記通信判定用データを特定し、
特定された前記通信判定用データと、前記背景ノイズの前記計測データとの比較処理を行うことにより、前記通信タイミングを決定することを特徴とする処理装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかにおいて、
前記処理部は、
前記通信部が未使用アドレスへのアクセスを行うことにより得られたデータを、前記背景ノイズの前記計測データとして取得することを特徴とする処理装置。
【請求項8】
請求項7において、
前期処理部は、
前記通信部から取得した前記データの内容と、正解データの内容との相関関係を示す通信成功レベルを求め、前記通信成功レベルに基づいて、前記通信部から取得した前記計測データが前記背景ノイズを表すデータであるか否かを判定することを特徴とする処理装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかにおいて、
前記処理部は、
前記無線タグとの通信に失敗した場合に、通常通信時の通信周期よりも短い周期で、前記背景ノイズの前記計測処理を行い、取得した前記背景ノイズの前記計測データに基づいて、前記無線タグとの次の前記通信タイミングを決定することを特徴とする処理装置。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれかにおいて、
前記処理部は、
前記背景ノイズの前記計測データに基づいて、前記無線タグとの通信に用いるアンテナ部を切り替えることを特徴とする処理装置。
【請求項11】
少なくとも一つの無線タグとの間で通信を行う通信部と、
前記無線タグから送信される情報の収集を行う処理部として、
コンピューターを機能させ、
前記処理部は、
前記無線タグとの通信に失敗した場合に、背景ノイズの計測処理を行い、前記計測処理の結果として前記背景ノイズの計測データを取得し、取得した前記背景ノイズの前記計測データに基づいて、前記無線タグとの次の通信タイミングを決定し、
前記通信部は、
決定された前記通信タイミングで前記無線タグとの通信を行うことを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−98699(P2013−98699A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−238729(P2011−238729)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】