処理設備
【課題】被処理物に対して処理を行って処理物を得る複数の工程室と、被搬送物を搬送してこれら工程室に対して被搬送物の受け渡しを行う搬送領域とが設けられた処理設備において、工程室と搬送領域との間を区画すると共に当該工程室と搬送領域との間において被搬送物の受け渡しを行う予備清浄室を設けながら、内部の領域の配置レイアウトの自由度が大きい処理設備を提供すること。
【解決手段】複数の工程室21が平面的に配置された処理フロア1の階下に、搬送容器Cの搬送を行う搬送領域が形成された物流フロア2を設けると共に、工程室21と搬送領域との間にエアロック室50を設ける。また、フロア1、2間の床面11に受け渡し口22を設けて、物流フロア2を走行する搬送車5により、受け渡し口22を介して物流フロア2と処理フロア1との間で搬送容器Cの受け渡しを行う。
【解決手段】複数の工程室21が平面的に配置された処理フロア1の階下に、搬送容器Cの搬送を行う搬送領域が形成された物流フロア2を設けると共に、工程室21と搬送領域との間にエアロック室50を設ける。また、フロア1、2間の床面11に受け渡し口22を設けて、物流フロア2を走行する搬送車5により、受け渡し口22を介して物流フロア2と処理フロア1との間で搬送容器Cの受け渡しを行う。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被処理物に対して処理を行う工程室が複数設けられた処理設備に関する。
【背景技術】
【0002】
医薬品などの固形製剤を製造する工場などの処理設備には、図39に示すように、例えば作業者が処理装置を用いて処理を行うための工程室102が複数箇所に設けられており、各々の工程室102において、被処理物である粉体原料やこの粉体原料から得られた中間生成物などの処理物に対して、秤量、造粒、篩過、錠剤への成形(打錠)、検査あるいは包装などの処理が行われる。これらの被処理物、中間生成物及び処理物は、コンテナなどの搬送容器内に収納された状態で例えばスタッカークレーン100と呼ばれる搬送機構により各工程室102間において受け渡される。そのため各工程室102は、スタッカークレーン100が配置された搬送室101の両側に沿って並べられる。図39中、105は搬送口、104は未内装(未使用)のエリア(部屋)であり、この未内装エリア104は、工場を建設した後の増産時などにおいて、内装工事、搬送口105の形成及び処理装置の搬入などの改造工事が行われて工程室102として使用される。また、図39において103は作業者が工程室102に出入りするための作業者用通路、107は処理装置の部材や配電盤を設置するための機械室であり、これら作業者用通路103及び機械室107は搬送室101に干渉しないように配置される。
【0003】
しかしながら、このようにスタッカークレーン100を用いる場合には、既述のように搬送室101と工程室102との間の位置関係が決まっているので、工場内の各領域の配置レイアウトの自由度が小さい。そのため、この工場では、新規設備(処理装置)の導入や工場建設後の増産などに柔軟に対応できなかったり、あるいは工場の建設コストが高くなったりする配置レイアウトを取らざるを得ない。即ち、例えば工程室102内に新しい処理装置を機械室107から搬入する場合には、これら機械室107と工程室102との間における作業者用通路103の壁面を取り壊すことになる。この時、作業者用通路103の内部雰囲気が汚染されないように、工事する領域106を作業者用通路103から区画しようとすると、作業者用通路103が領域106により途中で遮られて作業者が行き来できなくなる。その場合には、工場の一部または工場全体の操業を停止する必要があるので、この工場では新規設備を導入しにくい(工程室102と機械室107とが隣接していない)配置レイアウトを採っていると言える。また、未内装エリア104に搬送口105を形成する時において、搬送室101内の雰囲気が汚染されないように当該搬送口105の周囲における搬送室101を区画する場合には、スタッカークレーン100の移動が妨げられてしまう。従って、未内装エリア104に予め搬送口105を形成しておく必要があるので、当該未内装エリア104には、この搬送口105の位置に対応できる処理装置しか導入できない。そのため、増設できる工程室102の種類が限られてしまい、工場建設後の増産に柔軟に対応できない。
【0004】
また、作業者用通路103を通行する作業者の例えば衣服などを介したコンタミを防止するために、工程室102に入室する作業者の通路と工程室102から退室する作業者の通路とを別々に設ける場合には、これら2つの通路は作業者の作業性の面から工程室102と同じフロアに各々設けられることが好ましい。しかし、各々の工程室102が側方側から別の工程室102、搬送室101及び作業者用通路(入室用通路)103により囲まれているので、これら通路の一方(退室用通路)は、例えば搬送室101と工程室102との間において、当該搬送室101に沿って設けられることになる。そのため、搬送容器は、退室用通路の例えば上方位置を介して、当該上方位置に設けられたベルトコンベアなどの水平搬送機構を利用して、搬送室101から工程室102内に搬入されることになる。この場合には、各工程室102には、搬送容器の搬入される高さ位置と、作業者が処理を行う高さ位置(例えば工程室102の床面の高さレベル)との間において、搬送容器を昇降させるリフタなどの昇降装置が必要になるので、コストアップに繋がってしまう。
【0005】
また、搬送室101が工場を2分するように配置されるので、例えば各工程室102内の大気の給排気を行うためのダクトや、各工程室102内を見学するための見学者通路を設ける場合には、配置できるスペースが限られてしまう。更に、搬送室101内の雰囲気と工程室102内の雰囲気とを区画してコンタミの流入出(クロスコンタミ)を抑えるために、あるいは工程室102内の清浄度を確保するために、開閉可能な開閉扉を備えた図示しないエアロック室を当該搬送室101と工程室102との間に配置しようとすると、工場内の各領域の配置レイアウトの自由度がより一層小さくなってしまう。
【0006】
特許文献1には、粉体を機器40に投入する粉粒体投入システムについて記載されているが、既述の課題については何ら検討されていない。また、特許文献2には、スタッカークレーン1やフォークリフトについて記載されているが、フォークリフトの移動路(搬送軌道12の上方領域)が2階の床面を貫通するように1階及び2階に亘って形成されると共に複数のヤード3〜9を環状に囲むように形成されているので、既述の課題を解決できるものではない。また、このようなフォークリフトを用いて物(搬送容器)の動線と人(作業者)の動線とを分離しようとすると、既述のスタッカークレーン100を用いた工場と同様のレイアウトとなってしまう。更に、特許文献3には基板処理装置について記載されているが、既述の課題は検討されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−30914
【特許文献2】特開平4−25572(743頁下段左欄14行目〜同18行目、同頁下段右欄15行目〜同16行目)
【特許文献3】特開平9−275127
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明はこのような事情の下になされたものであり、その目的は、被処理物に対して処理を行って処理物を得る複数の工程室と、被処理物または処理物からなる被搬送物を搬送してこれら工程室に対して被搬送物の受け渡しを行う搬送領域とが設けられた処理設備において、工程室と搬送領域との間を区画すると共に当該工程室と搬送領域との間において被搬送物の受け渡しを行う予備清浄室を設けながら、内部の領域の配置レイアウトの自由度が大きい処理設備を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の処理設備は、
清浄雰囲気に維持され、被処理物に対して処理を行って処理物を得るための工程室が複数配置された第1の階と、
この第1の階の階下に設けられ、被処理物または処理物からなる被搬送物を搬送するための搬送領域が形成された第2の階と、
前記工程室のうち少なくとも1つの工程室及び前記搬送領域の間に介在し、これらの間で被搬送物を搬送するときに被搬送物が一旦置かれる予備清浄室と、
この予備清浄室における工程室側の壁部の第1の搬送口を開閉する第1の開閉部と、
前記予備清浄室における前記搬送領域側の壁部の第2の搬送口を開閉する第2の開閉部と、
前記第2の階を上方側から臨む位置における第1の階と第2の階との間の床面に形成され、第1の階と第2の階との間において被搬送物の受け渡しを行うための受け渡し口と、
この受け渡し口を介して第1の階と第2の階との間で被搬送物の受け渡しを行うために、第2の階において水平に移動自在に設けられ、被搬送物を昇降自在に保持する受け渡し機構を有する搬送車と、を備えたことを特徴とする。
前記予備清浄室は、第1の階に設けられていても良い。その場合には、前記第1の階における前記受け渡し口の上方領域を前記工程室の雰囲気から区画する区画壁が設けられ、
前記第1の搬送口は、前記区画壁に設けられていても良いし、
前記予備清浄室は、前記第1の階における前記受け渡し口の上方領域に設けられ、
前記第2の搬送口は、前記受け渡し口を兼用していても良い。
前記予備清浄室は、第2の階に設けられていても良いし、その場合には前記第1の搬送口は、前記受け渡し口を兼用していても良い。
前記予備清浄室は、第2の階から受け渡し口を介して第1の階に跨って設けられていても良い。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、複数の工程室が配置された第1の階の階下に、被処理物または処理物からなる被搬送物の搬送を行う搬送領域が形成された第2の階を設けると共に、工程室のうち少なくとも1つの工程室と搬送領域との間に、当該工程室と搬送領域との間を区画しながら被搬送物の受け渡しを行う予備清浄室を設けている。そして、第1の階と第2の階との間の床面に受け渡し口を形成すると共に第2の階を走行する搬送車を設けて、受け渡し口を介して搬送車により第1の階と第2の階との間で被搬送物の受け渡しを行うことによって、前記少なくとも1つの工程室と第2の階との間において予備清浄室を介して被搬送物を受け渡している。そのため、工程室が配置された第1の階と被搬送物の搬送を行う第2の階とを上下に区画できるので、予備清浄室を設けながら、第1の階に配置される各領域の配置レイアウトの自由度を大きく取ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の生産工場の要部を概略的に示す縦断面図である。
【図2】本発明の生産工場の一例を示す斜視図である。
【図3】前記工場を示す縦断面図である。
【図4】前記工場を示す縦断面図である。
【図5】前記工場を示す平面図である。
【図6】前記工場を示す平面図である。
【図7】前記工場において被処理物が収納される搬送容器の一例を示す斜視図である。
【図8】前記搬送容器が受け渡される受け渡し部材の一例を示す斜視図である。
【図9】前記工場で用いられるスタッカークレーンを示す斜視図である。
【図10】前記工場における工程室の一例を示す縦断面図である。
【図11】前記工場における工程室の一例を示す縦断面図である。
【図12】前記工場の作用の一例を示す縦断面図である。
【図13】前記工場の作用の一例を示す平面図である。
【図14】前記工場の作用の一例を示す縦断面図である。
【図15】前記工場の作用の一例を示す縦断面図である。
【図16】前記工場の作用の一例を示す縦断面図である。
【図17】前記工場の作用の一例を示す縦断面図である。
【図18】前記工場の作用の一例を示す縦断面図である。
【図19】前記工場の作用の一例を示す平面図である。
【図20】前記工場の作用の一例を示す縦断面図である。
【図21】前記工場の作用の一例を示す平面図である。
【図22】前記工場の作用の一例を示す縦断面図である。
【図23】前記工場の作用の一例を示す平面図である。
【図24】前記工場の作用の一例を示す縦断面図である。
【図25】前記工場の作用の一例を示す平面図である。
【図26】前記工場の他の例を示す縦断面図である。
【図27】前記工場の他の例を示す縦断面図である。
【図28】前記工場の他の例を示す縦断面図である。
【図29】前記工場の他の例を示す縦断面図である。
【図30】前記工場の他の例を示す縦断面図である。
【図31】前記工場の他の例を示す縦断面図である。
【図32】前記工場の他の例を示す縦断面図である。
【図33】前記工場の他の例を示す平面図である。
【図34】前記工場の他の例を示す平面図である。
【図35】前記工場の他の例を示す縦断面図である。
【図36】前記工場の他の例を示す縦断面図である。
【図37】前記工場の他の例を示す平面図である。
【図38】前記工場の他の例を示す縦断面図である。
【図39】従来の工場の一例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の処理設備の一例として、被処理物である原料粉末から製品(処理物)である医薬品の固形製剤を製造する医薬品製造工場を例に挙げて、図1〜図11を参照して説明する。先ず、この工場の要部について図1を参照して概略的に説明すると、この工場には、原料粉末やこの原料粉末から得られる中間生成物などの処理物に対して、例えば保管、秤量、後述の搬送容器Cへの原料粉末の充填、造粒、篩過、錠剤への成形(打錠)、コーティング、検査及び包装などの処理を行うための工程室21が平面的に複数配置された第1の階をなす処理フロア1が設けられており、この処理フロア1の階下には、被処理物または処理物が内部に収納された被搬送物である搬送容器Cを搬送して工程室21に対して受け渡すための第2の階である物流フロア2が配置されている。処理フロア1と物流フロア2との間の床面11には、搬送容器Cの受け渡しを行うための受け渡し口22が複数箇所に形成されている。これらの工程室21のうち少なくとも一つの工程室21には、当該工程室21の雰囲気と物流フロア2において搬送容器Cが搬送される搬送領域の雰囲気との間を区画しながらこれら工程室21と物流フロア2との間で搬送容器Cの受け渡しを行うために、予備清浄室をなすエアロック室50が設けられている。この例ではエアロック室50は、処理フロア1において工程室21の内部領域に配置されている。これら処理フロア1及び物流フロア2により階層構造体3が構成されている。尚、前記「検査」及び「包装」もこの明細書では「処理」という用語に含まれるものとする。
【0013】
続いて、工場の各部の詳細について説明する。物流フロア2には、図4に示すように、搬送容器Cを搬送して工程室21との間において受け渡しを行うために、例えばAGF(Auto Guided Forklift)などである搬送車5が複数台配置されており、各々の搬送車5は、水平方向に走行(移動)する走行車本体5aと、搬送容器Cを昇降自在に保持する受け渡し機構であるフォーク5bと、を備えている。このフォーク5bによって、例えば箱型の容器である搬送容器Cは、図7に示すように、高さ方向における概略中央位置において左右両側から支持される。また、フォーク5bは後述するように、搬送車5が水平移動する時には下方側の物流フロア2側に縮退し、工程室21及びエアロック室50との間において搬送容器Cを受け渡す時には、受け渡し口22を介して処理フロア1側に伸び出すように構成されている。
【0014】
物流フロア2の床面11には、図5に示すように、例えば磁気テープなどの搬送路6が付設されており、この搬送路6は、例えば受け渡し口22の各々の下方位置を楕円状に結ぶ本線(周回軌道)6aと、この本線6aから分岐する複数の分岐路6bと、を備えている。分岐路6bは、例えば搬送車5が故障した時やメンテナンスを受ける時に当該搬送車5を作業者が退避させる退避分岐路8aと、この退避分岐路8aに退避した搬送車5に代えて搬送を行う予備の搬送車5が待機する予備分岐路8bと、搬送車5が後述の受け渡し部材15に臨む位置を走行できるように配置された受け渡し用分岐路8cと、から構成されている。搬送車5の下面側には、搬送路6(搬送領域)に沿って水平方向に移動できるように、当該搬送路6を検知する図示しない検知部が設けられている。
【0015】
図5中9は、床面11における搬送車5の停止位置例えば受け渡し口22の下方位置に付設された磁気棒などのマーカーであり、搬送車5は下面に設けられた図示しないセンサーなどによりマーカー9の位置を読みとり、後述の制御部10の指示によりこのマーカー9の上方において停止して、搬送容器Cの受け渡し動作を行うこととなる。この物流フロア2の床面11には、受け渡し口22の下方位置などにおいて搬送車5が180°反転できるように、例えば本線6aから分岐して円状に伸びる図示しない反転用搬送路が設けられていても良い。また、この搬送車5としては、例えば作業者がマニュアルで運転(操縦)するフォークリフトなどであっても良い。尚、物流フロア2内には、工場の補強のために、搬送車5の動作に干渉しない位置に床面11と天井面とを接続する複数の柱部が設けられているが、図示を省略している。
【0016】
また、この例においては、既述の図2〜図4に示すように、処理フロア1と物流フロア2とからなる階層構造体3が複数階層例えば2層積層されており、上下の階層の物流フロア2、2同士の間で搬送容器Cを搬送するために、バーチカルリフターやエレベータなどの昇降装置、この例ではスタッカークレーン12が工場に外部側から隣接して設けられている。このスタッカークレーン12は、工場の端部例えば後述
の打錠室25に隣接する位置において、複数階層の物流フロア2に亘って設けられた昇降室13内に配置されている。この昇降室13と物流フロア2との間の壁面には、図3に示すように、これら昇降室13と物流フロア2との間において搬送容器Cの受け渡しを行うための搬送口14、14が各々開口している。物流フロア2においてこの搬送口14に臨む位置には、スタッカークレーン12と搬送車5との間において搬送容器Cを受け渡すための受け渡し部材15が設けられている。この受け渡し部材15は、図8に示すように、例えば搬送容器Cの搬送方向(後述の搬送台45の進退方向)に対して互いに離間して並ぶ2つの棒状部材15a、15aから構成されている。尚、図2においては、スタッカークレーン12や搬送口14及びエアロック室50の描画を省略している。また、図4においては便宜的にこのスタッカークレーン12を描画している。
【0017】
昇降室13内の床面には、図5に示すように、工場の外壁に沿って水平に配置されたレール41が設けられている。スタッカークレーン12は、図9に示すように、互いに間隔を開けて鉛直方向に伸びる2本の柱部42、42及びこの柱部42、42を上下から支持する基部43、43を備えている。この図9中44及び46は夫々リフト及び車輪であり、スタッカークレーン12がレール41上を走行すると共に、柱部42、42に沿って搬送容器Cを昇降できるように構成されている。このリフト44上には、搬送容器Cを載置するための搬送台45が設置されており、この搬送台45は、前記棒状部材15a、15aの離間寸法よりも狭く形成されると共に、階層構造体3(物流フロア2)に対して水平方向に進退自在に構成されている。
【0018】
そして、このスタッカークレーン12から物流フロア2に搬送容器Cを搬送する時には、例えばこの搬送台45上に搬送容器Cを載置して、既述の搬送口14を介して棒状部材15a、15aの上方位置にスタッカークレーン12から当該搬送台45を伸張させ、次いで搬送台45が棒状部材15a、15a間を下側に通過するようにリフト44を下降させることにより、受け渡し部材15上に搬送容器Cが載置されることになる。また、物流フロア2から搬送容器Cを受け取る時には、この順番と逆の順序でスタッカークレーン12が動作することとなる。そして、既述の搬送車5がこの受け渡し部材15から搬送容器Cを受け取る時には、搬送車5が受け渡し部材15に臨む位置に移動すると共に、例えば搬送容器Cの下方側からあるいはこの搬送容器Cの高さ方向における概略中央位置において搬送容器Cを支持して持ち上げることになる。搬送車5から受け渡し部材15に搬送容器Cを引き渡す時には、この搬送動作と逆の順番で搬送車5が動作する。尚、スタッカークレーン12は、荷物用エレベーター、バーチカルリフター、またはバーチカルコンベア等の昇降装置であってもよい。
【0019】
続いて、処理フロア1について詳述する。この処理フロア1には、既述の図2、図4及び図6に示すように、複数の工程室21が前後方向(図2中Y方向)に一列に配置されており、この工程室21の列が左右方向(図2中X方向)に平行に互いに離間するように複数列例えば2列配置されている。各々の工程室21内には、既述の処理を行うための処理装置27が設けられている。工程室21の床面11(処理フロア1と物流フロア2との間の床面11)には、搬送容器Cの受け渡しを行うための受け渡し口22が複数箇所に形成されている。そして、処理フロア1において、各々の受け渡し口22の外縁から当該処理フロア1の内部領域側に離間した位置には、図1(b)及び図6に示すように、処理フロア1の床面11から天井面に向かって伸びるように、処理フロア1の雰囲気と物流フロア2の雰囲気とを区画するための区画壁22aが当該受け渡し口22の周囲に設けられている。この区画壁22aには、開閉扉22bにより開閉される開口部22cが形成されている。この開閉扉22bは、当該開閉扉22bの両側の領域(受け渡し口22の上方領域と工程室21内の雰囲気)との間において、気流が行き来しにくいようにこれら領域を区画するためのものである。従って、開閉扉22bは、当該開閉扉22bと開口部22cとの間に形成された隙間を介して、これら両側の領域の間に形成された圧力差に応じて、これら領域の一方側から他方側に雰囲気が少しずつ通流するように構成されている。後述の扉48a及び搬入出口24についても同様である。既述の図1(b)では、区画壁22aにより囲まれる床面11よりも受け渡し口22を小さく描いているが、受け渡し口22は、実際には当該区画壁22aの下方側が全面に亘って開口した状態となっている。
【0020】
処理フロア1に配置された複数の工程室21のうち少なくとも1つの工程室21の内部には、図10(b)に示すように、物流フロア2の雰囲気(受け渡し口22の上方領域)と当該工程室21の内部雰囲気との間を区画するために、予備清浄室であるエアロック室50が当該受け渡し口22に近接して配置されている。以下、予備清浄室としてエアロック室50を例に説明する。
この工程室21は、物流フロア2との間の粉じんの流入出(クロスコンタミ)を抑えるために、あるいは当該工程室21の内部雰囲気の清浄度を保つために設けられた領域であり、例えば秤量、造粒、篩過、錠剤への成形(打錠)などの処理が行われる。尚、図10(b)では、エアロック室50の壁面を一部切り欠いて示しており、また区画壁22aを省略している。
【0021】
このエアロック室50の壁面部には、互いに対向するように開口部(搬送口)50a、50aが形成されており、これらの開口部50a、50aを互いに独立して開閉できるように、開閉部52、52が設けられている。この開閉部52についても、既述の開閉扉22bと同様に、当該開閉部52と開口部50aとの間に形成された隙間を介して、これら両側の領域の間に形成された圧力差に応じて、これら領域の一方側から他方側に雰囲気が少しずつ通流するように構成されている。尚、エアロック室50の開口部50a、50aは、互いに直交して設けられても良い。このエアロック室50には、内部領域を陽圧または引圧にするための図示しないガス(大気)供給部が設けられている場合もある。この例においては、エアロック室50の一つの開閉部52(後述の第2の開閉部52b)が区画壁22aの開閉扉22bを兼用している。この開閉部52は、例えば左右方向に開閉する引き戸、上下方向に開閉する懸戸あるいは下方側から上方側に巻き上げられる巻き上げ戸などであり、後述の制御部10からの指示あるいは作業者により、搬送車5が受け渡し口22の下方位置において搬送容器Cの受け渡し動作を行う時には各々開閉される。このエアロック室50の内部には、搬送容器Cを載置するための載置部50bが設けられている場合があり、その場合に載置部50bは、当該エアロック室50に対する搬送容器Cの搬送方向に沿って搬送容器Cを進退自在に保持できるように、当該搬送方向に対して直交する方向に互いに離間する2つのコンベアやローラーコンベアなどの水平搬送機構により構成されている。具体的には、この載置部50bは、図10(b)に示すように、例えば前記進退方向に離間して並ぶ複数例えば3つの回動部120と、前記進退方向に沿ってこれら回動部120に巻回されたベルトなどの駆動部121と、から構成されており、搬送車5によって搬送容器Cが上面に載置されると、工程室21に設けられた後述の搬送部53に向かって当該搬送容器Cを搬送するように構成されている。尚、図10(b)では、載置部50bの高さ寸法や長さ寸法については模式的に示している。また、後述するように、工程室21内に搬送容器Cを例えば一時的に保管する場合には、図6に示すように、この保管する領域(保管領域48)と区画壁22aまたはエアロック室50の壁面との間には、扉48aにより開閉自在な開口部48bが形成される。尚、図2ではエアロック室50を省略している。
【0022】
ここで、既述の受け渡し口22は、図6に示すように、各々の工程室21毎に個別に設けられている場合もあるし、一つの受け渡し口22が互いに隣接する複数例えば2つの工程室21、21において共用されている場合もある。この受け渡し口22の配置位置について、例えば受け渡し口22の形成された工程室21を第1の工程室21a、受け渡し口22の形成されていない工程室21を第2の工程室21bと呼ぶと、第1の工程室21aの受け渡し口22は、第2の工程室21bに近接配置されている。そして、第1の工程室21aと第2の工程室21bとの間の壁面には、搬送容器Cの受け渡しを行うための搬入出口24が形成されている。また、この搬入出口24は例えばドアなどの開閉機構24aにより開閉されるように構成されており、搬送容器Cは、第2の工程室21bに対して、受け渡し口22、第1の工程室21a及び搬入出口24を介して搬送車5により搬送される。従って、既述の処理装置27は、第1の工程室21aでは受け渡し口22に配置されており、第2の工程室21bでは搬入出口24に近接する位置に設けられている。
【0023】
各々のエアロック室50における開閉部52、52は、一方が当該エアロック室50の配置された工程室21を臨むように配置され、他方が受け渡し口22を臨むように配置されている。これらの開閉部52、52のうち工程室21を臨む開閉部52を第1の開閉部52a、受け渡し口22を臨む開閉部52を第2の開閉部52bと呼ぶと、工程室21には、これら開閉部52a、52bを介して搬入出される搬送容器Cをエアロック室50内の載置部50bと処理装置27との間において搬送するために、例えばコンベアなどの搬送部53が配置されている場合がある。この搬送部53は、既述の載置部50bと同様に構成されており、第1の開閉部52aを介して搬送容器Cが載置部50bにより工程室21内に搬入されると、当該搬送容器Cを下方側から支持して工程室21内に引き込むように構成されている。搬送部53は2つのコンベアの他、ローラーコンベアであってもよい。
【0024】
また、例えば打錠処理を行う工程室21、即ち図11に示す打錠室25は、間仕切り26によって投入区域25aと処理区域25bとの上下2層に区画されている。この打錠室25には、物流フロア2と処理フロア1との間の床面11(処理区域25bの床面)及び間仕切り26を上下に亘って貫通するように、既述の受け渡し口22が各々形成されている。即ち、投入区域25a及び処理区域25bには、夫々専用の受け渡し口22、22が形成されており、この例ではこれら2つの受け渡し口22、22は平面で見た時の位置が重なっていると言える。投入区域25a及び処理区域25bにおいて受け渡し口22、22の外縁から投入区域25a側及び処理区域25b側に夫々離れた位置には、既述のエアロック室50、50が各々設けられており、このエアロック室50の開口部50aは、開閉部52により各々開閉される。
【0025】
処理区域25bには、被処理物に対して打錠処理を行うための処理装置(打錠機)27が設けられており、この処理装置27の上方位置における間仕切り26には、開口部26aが形成されている。投入区域25aには、当該投入区域25aから開口部26aを介して下方の処理装置27に被処理物を投入するための管状の投入路27aの一端側が開口している。この投入区域25aには、処理装置27の上方位置と開閉扉22bに近接する位置との間で搬送容器Cの受け渡しを行うための受け渡し部28が設けられている。
【0026】
受け渡し部28は、投入区域25aへの搬送容器Cの搬送方向に沿って互いに離間するように配置された例えば2組のコンベアなどであり、搬送車5との間において搬送容器Cの受け渡しを行う受け渡し位置と、処理装置27の上方位置と、の間において搬送容器Cを水平に搬送するように構成されている。また、処理区域25bにおいて、処理装置27の側方位置には、処理装置27において打錠処理が行われた処理物を収納するための搬送容器Cが搬送部53上に載置されている。図11中27bは、処理装置27において打錠処理が終了した処理物を取り出して、処理区域25bに載置された搬送容器Cに収納するための搬送部材である。尚、図6においては、この打錠室25を簡略化して示している。また、搬送車5において搬送容器Cを上下に昇降させる機構については、図11などでは簡略化して示している。
【0027】
また、工程室21としては、例えば図6に未使用エリア31として示すように、内壁面や床面に内装が施されていない領域(部屋)が設けられている場合がある。この未使用エリア31は、工場を建設した後に、例えば医薬品を増産するために工程室21を増設する場合などに工程室21として使用される領域であり、そのため工場を建設した時点では使用されていない領域である。この未使用エリア31においては、受け渡し口22が形成されておらず、隣接する工程室21の受け渡し口22を共用することになる。また、処理装置27の種類により搬送容器Cが設置される高さ位置(搬入出口24の高さ位置)が異なることから、この未使用エリア31には搬入出口24が形成されておらず、工程室21を増設する時に、当該工程室21(未使用エリア31)内に設けられる処理装置27の種類などに応じて搬入出口24が工事により形成されることになる。また、工程室21を増設する時には、この搬入出口24の工事と共に、内装工事や後述の処理装置27を搬入する工事などが行われることになる。尚、予めドアなどにより開閉される搬入出口24を形成しておいても良い。
【0028】
工程室21の列の左側の側面及び右側の側面の一方側及び他方側には、各々機械室61及びこの工程室21内において作業を行う作業者が当該工程室21内に出入りするための作業者用通路62が当該工程室21の列に沿うように設けられている。この例においては、図2及び図4に示すように、工場の外壁に沿うように処理フロア1の両側に機械室61、61が配置され、2つの工程室21、21の列に挟まれるように(内側に)作業者用通路62、62が設けられている。この機械室61において工場の外部に面する壁面(外壁)には、既述の処理装置27の搬入出を行うための図示しないドアが形成されている。作業者用通路62の天井面は、工程室21の天井面よりも所定の高さだけ低くしてもよい。
【0029】
この機械室61は、例えば、工程室21内の処理装置27に関連する部材例えば集塵機や空調機あるいは配電盤などの機械設備61aを設置するための領域であり、工程室21や物流フロア2、あるいは作業者用通路62などよりも清浄度が低いレベルに設定されている。これらの工程室21と機械室61との間の壁面には、処理装置27と機械設備61aとを接続する配線や配管を引き回すための図示しない開口部が形成されている。また、この機械室61は、後述するように、工場の外部と工程室21との間において処理装置27を例えば入れ替える場合に、工場の外壁(機械室61の側面)に形成された図示しないドアから当該機械室61を介して処理装置27を搬送するための領域である。このように処理装置27を入れ替える(交換する)例としては、例えば工程室21内の古い処理装置27を新しい処理装置27に切り替える場合、あるいは当該工程室21内における処理の種類が変更になる場合などがある。
【0030】
この時、処理装置27の入れ替えを行わない場合もあるし、また処理装置27の大きさも処理の種類に応じて様々である。そのため、機械室61と工程室21との間において処理装置27を搬入出する場合には、例えば工事を行うことにより、機械室61と工程室21との間の壁面にその都度開口部が形成されることになる。尚、この壁面に予め開口部を形成しておき、処理装置27の搬送を行わない時には扉等で塞ぐようにしても良い。また、この機械室61は、工程室21に面する壁面以外の3つの側面のうちのいずれかの側面が工場の外壁に接するように配置されていれば良い。尚、図6においては、既述の機械設備61aを模式的に1つだけ描画している。
【0031】
そして、この処理フロア1には、これらの工程室21、機械室61及び作業者用通路62からなる処理ステーション7が平行に複数列に亘って例えば2列に設けられており、作業者用通路62の側面における工程室21とは反対側の面には、例えば作業者用通路62の側壁及び工程室21の側壁に形成された図示しない窓を介して見学者が工程室21内を見学するための見学者用通路63が作業者用通路62(工程室21)に沿って配置されている。この見学者用通路63の天井面は、作業者用通路62の天井面と同じ程度の高さレベルに設定されている。この例では、見学者用通路63を介して左右両側の作業者用通路62、工程室21及び機械室61が左右対称となるように配置されており、従ってこの場合には、左右の2つの処理ステーション7において見学者用通路63を兼用している。尚、図4及び図6中29は、作業者用通路62から工程室21内に作業者が出入りするためのドアである。また、これらの作業者用通路62、物流フロア2及び工程室21内は、コンタミの発生を抑えるために清浄な雰囲気に保たれている。
【0032】
作業者用通路62及び見学者用通路63の上方には、工程室21の側面の上部側に隣接するように、例えば天井面が工程室21の天井面と同程度の高さレベルとなるように配置された通気路(ダクト)35が設けられており、この通気路35は、前後方向に並ぶ工程室21に沿って長く形成されている。この通気路35は、工程室21の雰囲気を工場の外部に排気したり、あるいは工場の外部などから清浄な大気を吸引したりするための領域であり、各工程室21から例えば工場の外部に伸びる図示しない給気路や排気路が引き回されている。
【0033】
この工場は、図5に示すように、スタッカークレーン12及び搬送車5の搬送動作や開閉扉22b及び開閉部52の開閉動作を制御する制御部10を備えている。この制御部10は、CPU、メモリ及びプログラム格納部を備えており、被処理物に対して処理を行って処理物が得られるように、工場の各部(搬送車5、開閉扉22b、開閉部52及びスタッカークレーン12)に対して制御信号を出力するように構成されている。このプログラム格納部内に格納されるプログラムは、例えばハードディスク、コンパクトディスク、マグネットオプティカルディスクあるいはメモリーカードなどの図示しない記憶媒体から制御部10にインストールされる。
【0034】
次に、この工場の作用について図12〜図25を参照して説明する。先ず、例えば物流フロア2と同じ階層に設けられた図示しない倉庫から、搬送車5により原料粉末が収納された図示しない梱包容器である被搬送物を受け取る。この梱包容器は、搬送車5によって工程室21の一つに搬入され、開梱されて内部の原料粉末が搬送容器Cに移される。続いて、例えば500kg程度の重量となるように原料粉末が収納された搬送容器Cは、図12(a)に示すように、搬送車5によってこの搬送容器C内の被処理物に対して処理が行われる工程室21に向かって搬送される。即ち、図13に示すように、搬送車5が既述の搬送路6における軌道を検出しながら搬送路6(本線6a)に沿って例えば時計回りに移動する。次いで、搬送車5は工程室21の受け渡し口22の下方位置に設けられたマーカー9を検知すると停止して、所定の受け渡し動作を行う。具体的には、搬送車5が図12(b)に示すように受け渡し口22を介してフォーク5bを上昇させると、制御部10により受け渡し口22の側方側の開口部22cが開放される。次いで、搬送車5は、開口部22cを介して工程室21内に搬送容器Cを搬入し、処理装置27に搬送容器Cが設置される高さ位置よりも僅かに高い高さ位置において、搬送容器Cが例えば処理装置27の上方に位置するように例えば後退する。そして、図12(c)に示すように、フォーク5bを下降させて例えば処理装置27に搬送容器Cを受け渡す。
【0035】
しかる後、搬送車5は図14(a)に示すように、受け渡し口22の下方位置まで前進し、同図(b)に示すようにフォーク5bを物流フロア2内に縮退させる。開口部22cは、開閉扉22bにより閉じられる。この搬送車5は、次の搬送を行うために搬送路6に沿って例えば時計回りに移動していく。そして、作業者は作業者用通路62からこの工程室21内に入室すると共に、通気路35を介して当該工程室21内あるいは処理装置27の内部の雰囲気を調整して、この処理装置27を用いて搬送容器C内の被処理物に対して処理を行うことになる。その後、この工程室21内において処理が行われた処理物は、例えば搬送容器C内に収納されて、搬入された順番と逆の順序で搬送車5により物流フロア2へと搬出されていくことになる。そして、この搬送容器Cは、搬送車5により図示しない倉庫あるいは次の処理を行うための工程室21へと搬送路6に沿って例えば時計回りに搬送されていく。この搬送容器C内の処理物は、続く工程室21においては被処理物として処理が行われる。
【0036】
この時、次の処理を行う工程室21において先の処理が終わっていない場合には、例えば図14(c)に示すように、例えば受け渡し口22の下方位置において既述の図示しない反転用搬送路に沿って搬送車5が移動して例えば180°反転する。そして、搬送車5は工程室21内における処理装置27や作業者に干渉しない位置(保管領域48)に搬送容器Cを載置して、別の搬送を行うために移動する。その後、当該工程室21において先の処理が終わると、例えば作業者により、あるいは搬送車5により、この干渉しない位置に載置された搬送容器Cが処理装置27に設置されることになる。
【0037】
また、例えば受け渡し口22を共有している工程室21bでは、図15(a)に示すように、この工程室21bに隣接する工程室21aの受け渡し口22から搬送車5のフォーク5bが上方に向かって伸び出し、次いで同図(b)に示すように搬入出口24を介して搬送容器Cが当該工程室21bに搬入されて、この工程室21b内の処理装置27に載置されることとなる。
【0038】
エアロック室50の設けられた工程室21に搬送容器Cを搬入する場合には、図16(a)に示すように、第1の開閉部52aが閉じられたまま、第2の開閉部52bが開放される。そして、同図(b)に示すように、搬送車5により搬送容器Cをエアロック室50内に搬入し、載置部50bに載置する。次いで、同図(c)に示すように、フォーク5bをエアロック室50から退避させて、第2の開閉部52bを閉じる。続いて、図17(a)に示すように、第1の開閉部52aを開放して、同図(b)に示すように、載置部50b及び搬送部53によって搬送容器Cをエアロック室50から工程室21の内部領域例えば処理装置27の上方位置などに搬入する。こうしてエアロック室50の2つの開閉部52a、52bの共開き(工程室21と物流フロア2との連通)がないので、工程室21の内部雰囲気が清浄に保たれた状態で搬送容器Cが搬入される。この時、エアロック室50は、内部雰囲気が陽圧または引圧に保たれて、当該エアロック室50内へのコンタミが抑制されている。この工程室21において、受け渡し口22が共用されている場合には、搬送容器Cは、工程室21aの受け渡し口22及び搬入出口24を介して、工程室21bのエアロック室50に搬入される。
【0039】
そして、次の処理を行う工程室21が例えばこの物流フロア2の上層側の階層構造体3に配置されている場合には、図18(a)及び図19に示すように、搬送車5が受け渡し用分岐路8cに沿って受け渡し部材15に向かって移動して、この受け渡し部材15に搬送容器Cを載置する。スタッカークレーン12は、この受け渡し部材15に臨む位置に搬送台45を移動させて搬送容器Cを受け取る。そして、スタッカークレーン12は、上層側の階層構造体3における物流フロア2の受け渡し部材15に臨む位置に搬送容器Cを上昇させる。次いで、図18(b)に示すように、スタッカークレーン12は、この受け渡し部材15を介して搬送車5に搬送容器Cを受け渡す。こうして下層側の物流フロア2(搬送車5)から上層側の物流フロア2に対して搬送容器Cが搬送され、続く処理が順次行われていくことになる。また、上層側の物流フロア2から下層側の物流フロア2に搬送容器Cが搬送される場合も、同様に搬送車5及びスタッカークレーン12により搬送容器Cが受け渡されることになる。尚、スタッカークレーン12は、荷物用エレベーター、バーチカルリフター、またはバーチカルコンベア等の昇降装置であってもよい。
【0040】
また、既述の打錠処理を行う工程室21(打錠室25)の投入区域25aに搬送容器Cを搬送する場合には、図20(a)に示すように、処理区域25bの受け渡し口22及び投入区域25aの受け渡し口22を介して、搬送車5が搬送容器Cを投入区域25aと同じ高さ位置まで上昇させて、エアロック室50内に搬入する。この搬送容器Cは、エアロック室50から投入区域25aの受け渡し部28を介して処理装置27の上方位置に搬送されていく。また、同図(b)に示すように、例えば別の搬送車5は、受け渡し口22から処理物を収納する空の搬送容器Cをエアロック室50を介して処理区域25bに搬入する。そして、作業者がこの打錠室25内に設けられた図示しない階段を上って、投入区域25aの搬送容器Cの下面に設けられた図示しない投入口に投入路27aの開口端を接続し、この搬送容器Cから被処理物を処理装置27に投入する。この被処理物は、処理装置27において打錠処理が行われて、搬送部材27bにより処理区域25bの搬送容器C内に処理物として収納される。
【0041】
打錠処理を所定の時間行うと、搬送車5により処理物が収納された搬送容器Cが打錠室25(処理区域25b)からエアロック室50を介して搬出され、例えば別の搬送車5により再度空の搬送容器Cがエアロック室50を介して処理区域25bに搬入されて、打錠処理が続けられる。そして、例えば投入区域25aの搬送容器C内の被処理物がなくなるか少なくなるまで、搬送車5による処理区域25bへの搬送容器Cの搬入出が行われる。その後、投入区域25aの搬送容器Cが空になったり被処理物が少なくなったりした場合には、搬送車5により当該搬送容器Cが搬出されることになる。
以上の工程室21における例えば処理装置27や作業者の動作は、例えば見学者用通路63を通行する見学者により見学(点検)される。そして、例えば複数の階層の工程室21において被処理物に対して複数の処理を順次行うことにより、最終製品である医薬品が製造される。
【0042】
次に、工程室21内の処理装置27を取り替える(入れ替える)場合について説明する。先ず、図21(a)及び図22(a)に示すように、工事により工程室21内に発生する粉塵などが当該工程室21から物流フロア2や作業者用通路62あるいは他の工程室21に出て行かないように、受け渡し口22あるいは搬入出口24を例えば板状の覆い部材65により密閉すると共に、ドア29を閉じる。次いで、図21(b)に示すように、工事を行って機械室61と工程室21との間の壁面を取り壊す。また、受け渡し口22の周囲の区画壁22aやエアロック室50についても、処理装置27の搬送に干渉する場合には取り壊す。この工事により粉塵などが発生するが、工程室21を閉じているので、粉塵はこの工程室21から物流フロア2や作業者用通路62あるいは当該工程室21に隣接する工程室21には出て行かない。
【0043】
そして、図21(c)及び図22(b)に示すように、工程室21から処理装置27を機械室61を介して工場の外部に搬出し、例えば新しい処理装置27を当該工程室21内に搬入する。この時、機械室61が2階以上の高さの階層に配置されている場合には、処理装置27は例えば工場の外部からクレーンなどを用いて搬送される。その後、この工程室21内の清掃及び工程室21と機械室61との間の壁面が形成されて(修復されて)、区画壁22aやエアロック室50を再度形成すると共に覆い部材65を取り外して既述のように処理が再開される。尚、これらの図21及び図22においては、1つの工程室21のみを描画している。
【0044】
また、既述の未使用エリア31に対して新たに工程室21を設置する場合には、図23(a)及び図24(a)に示すように、この未使用エリア31と受け渡し口22を共用する(隣接する)工程室21において、同様に受け渡し口22を覆い部材65により塞ぎ、また必要に応じて区画壁22aやエアロック室50を取り壊し、図23(b)及び図24(b)に示すように、未使用エリア31とこの工程室21との間の壁面を工事により取り壊して搬入出口24を形成する。この搬入出口24の高さ位置は、例えば当該未使用エリア31に設置される処理装置27に応じて設定される。そして、例えばこの未使用エリア31に対して、内装工事及び機械室61との間の壁面を取り壊して新たに処理装置27を搬入する工事を行うことにより、この未使用エリア31に対して新たな工程室21が設けられることになる。
【0045】
この場合においても、工事を行っている時には、粉塵などは未使用エリア31及びこの未使用エリア31と受け渡し口22を共用する工程室21から、物流フロア2や作業者用通路62あるいは他の工程室21には出て行かない。そして、同様に清掃や機械室61との間の壁面の修復を行い、次いで区画壁22aやエアロック室50を形成した後、この未使用エリア31は工程室21として使用されることになる。
【0046】
そして、例えば搬送車5が故障した場合やメンテナンスを受ける場合には、図25に示すように、例えば作業者により当該搬送車5を退避分岐路8aに退避させ、予備分岐路8bにて待機する搬送車5を本線6aに移動させて、退避分岐路8aに退避した搬送車5に代えて搬送を受け持たせることになる。
【0047】
上述の実施の形態によれば、複数の工程室21が平面的に配置された処理フロア1の階下に、搬送容器Cの搬送を行う搬送領域が形成された物流フロア2を設けると共に、工程室21のうち少なくとも1つの工程室21にエアロック室50を設けている。そして、処理フロア1と物流フロア2との間の床面11に受け渡し口22を設けて、物流フロア2を走行する搬送車5により受け渡し口22を介してエアロック室50に搬送容器Cを搬入して、このエアロック室50から工程室21に搬送容器Cを搬入している。このように、本発明では、従来から用いられていた工程室21への側方側からの搬送容器Cの搬送という考え方に対して、階下の物流フロア2と階上の処理フロア1とにおいて搬送容器Cを受け渡すといった新規な考え方を採っている。そのため、処理フロア1には搬送容器Cの搬送を行う搬送路を設けなくて済むので、いわば物の動線である物流フロア2と人の動線である作業者用通路62とを上下に区画して別個に配置すると共に、エアロック室50を設けながら、処理フロア1の各領域(工程室21、機械室61、作業者用通路62及び見学者用通路63)の配置レイアウトの自由度を大きく取ることができる。
【0048】
従って、例えば工程室21と機械室61とを隣接させることができる。通常、機械室61が工場の外壁に面していることから、工場を建設した後に工程室21内の処理装置27を入れ替える場合には、機械室61を介して工場の外部と工程室21との間で処理装置27等の機器を運搬することになる。そのため、工程室21と機械室61とが隣接していると、例えば作業者用通路62を塞ぐ工事などを行うことなく、また他の工程室21に影響を及ぼすことなく、工事を行う工程室21における処理を停止するだけで処理装置27を導入できる。この結果、処理装置27を容易に且つ速やかに交換でき、従って新規設備の導入に柔軟に対応できる。また、例えば別途作業者用通路62を引き回すなど、工事を想定したレイアウトを採る必要がないので、工場の設計を行いやすい利点もあるし、また工場の設置面積を抑えることができる。
【0049】
更に、未使用エリア31に対して工程室21を増設する場合においても、この未使用エリア31と受け渡し口22を共用する工程室21の処理を停止するだけで工事を行うことができるので、例えば医薬品の増産などにも容易に対応することができる。また、未使用エリア31に対して工程室21を増設する場合には、当該未使用エリア31(工程室21)に設置される処理装置27に合わせて搬入出口24の高さ位置を設定できるので、未使用エリア31を様々な工程室21に対応させることができる。
従って、工場を建設した後に例えば医薬品の新しい製造方法や処理装置27などの新技術が開発された場合でも、容易にこれらの新技術を工場に導入できるので、また増産などにも容易に対応できるので、自由度の高い工場を得ることができる。
【0050】
また、搬送車5に水平移動と搬送容器Cの昇降動作とを行わせていることから、各々の工程室21毎に搬送容器Cを載置する高さ位置がまちまちであっても、各々の工程室21には昇降装置が不要になり、そのため工場を安価に建設できる。即ち、例えばコーティングを行う工程室21では、処理装置27が大型のため、搬送容器Cの載置される高さ位置が処理フロア1の床面11から例えば2.5m程度高い位置となったりする場合もあるが、その場合であっても当該工程室21には昇降装置を設けることなく、搬送車5により搬送容器Cの搬入出を直接行うことができる。
【0051】
更に、搬送車5により階下から階上へ搬送容器Cを受け渡していることから、隣接する工程室21、21間において受け渡し口22を共用できるので、受け渡し口22の設置数を抑えることができる。更にまた、物流フロア2と作業者用通路62とを別個に設けていることから、搬送車5と作業者との衝突を防ぐことができるし、作業者による搬送容器Cや被処理物あるいは処理物への干渉を防止できる。また、見学者用通路63を工程室21の側方位置に設けることができるので、例えば工程室21の上方に設ける場合よりも例えば処理装置27の動作などを確実に見学(点検)することができる。
【0052】
更に、水平な物流フロア2において搬送車5により搬送容器Cを搬送していることから、例えば複数階層の工程室21に沿って高さ方向にスタッカークレーンの搬送室を設ける場合に比べて、当該物流フロア2内を例えば作業者が容易に清掃することができる。また、物流フロア2には複数の搬送車5を設けているので、例えば1台が故障した場合やメンテナンスを行う場合でも、当該搬送車5の受け持つ搬送を他の搬送車5が肩代わりすることができる。
【0053】
また、上下の階層の物流フロア2、2間に亘って搬送容器Cを搬送する必要がある場合、スタッカークレーン12により搬送容器Cを昇降させることができるので、階層構造体3を積層でき、工場の設置面積を抑えることができる。この時、スタッカークレーン12の昇降室13は複数階層の物流フロア2に面するように、つまり工場の外壁などに面するように自由に設置できるので、工場内のレイアウトに干渉しない。
【0054】
既述の例では、物流フロア2と工程室21との間にエアロック室50を設けるにあたって、いわば工程室21の内部領域にエアロック室50を設けたが、例えば図26に示すように、機械室61と作業者用通路62との間において工程室21に隣接するようにエアロック室50を設けても良い。また、エアロック室50に2つの開閉部52a、52bを設ける場合に、これら開閉部52a、52bのうち物流フロア2側の第2の開閉部52bについては、図27に示すように、例えば受け渡し口22の下方側において当該受け渡し口22を覆う位置と、この受け渡し口22から側方側に外れた位置との間で水平方向に進退自在に構成しても良い。この場合には、受け渡し口22がエアロック室50の開口部50aを兼用していると言える。この図27において、物流フロア2側の開閉部52bを受け渡し口22の上方位置に設けても良いし、あるいは床面11の内部領域から側方側の受け渡し口22を塞ぐようにスライドするようにしても良い。
【0055】
また、搬送車5によってエアロック室50内に搬送容器Cを直接受け渡すようにしたが、図28に示すように、エアロック室50から受け渡し口22に向かって先端側の保持部55aが水平方向に伸び出すように進退自在且つ、当該保持部55aにおいて搬送容器Cを下方側から保持できるスライド機構(スライドステーション)55を当該エアロック室50内に受け渡し部として設けても良い。このスライド機構55は、例えばエアシリンダーなどのシリンダー、ラック及びピニオン、またはチェーン及びモーターなどの駆動機構によって、例えばリニアガイドに沿って保持部55aを水平方向にスライドさせる機構である。
更に、搬送車5によって受け渡し口22から搬入された搬送容器Cを例えば作業者によってエアロック室50を介して工程室21内に搬入する場合には、あるいはエアロック室50の搬送容器Cから空気輸送などで内容物を工程室21内に搬入する場合には、図29に示すように、エアロック室50や工程室21に載置部50b及び搬送部53を設けなくても良い。
【0056】
更にまた、図30(a)に示すように、処理フロア1と物流フロア2とに跨がるようにエアロック室50を設けても良い。このエアロック室50は、内部に受け渡し口22が位置するように、即ち当該受け渡し口22を物流フロア2側及び処理フロア1側から各々臨むように設けられる。従って、受け渡し口22は、物流フロア2から見た時に、工程室21を下方側から臨む位置におけるエアロック室50の天井面に形成されていると言える。この場合において、搬送容器Cは、搬送車5と共に物流フロア2におけるエアロック室50内に搬入されて、処理フロア1側のエアロック室50に搬入された後、工程室21に搬入される。また、同図(b)のように、第1の開閉部52aを受け渡し口22に近接配置して、エアロック室50内の搬送車5により、工程室21に搬送容器Cを直接受け渡すようにしても良い。この場合には、処理フロア1におけるエアロック室50及び受け渡し口22の占める面積が小さくなるので、当該処理フロア1を有効に利用することができる。
【0057】
また、搬送車5と共に搬送容器Cをエアロック室50に進入させる場合には、図31に示すように、2つの開閉部52a、52bのうち工程室21側の第1の開閉部52aについては、既述の図27と同様に、受け渡し口22の下方または上方あるいは床面11の内部領域において水平方向に進退自在に設けても良い。この場合には、エアロック室50は、工程室21の下方側における物流フロア2に配置されることになる。
【0058】
尚、既述のように、搬送車5は搬送容器Cを高さ方向における概略中央位置において側方側から保持し、一方スタッカークレーン12は下方側から搬送容器Cを保持するように構成されているので、既述の受け渡し部材15を設けずに、これらの搬送車5とスタッカークレーン12との間において搬送容器Cを直接受け渡すようにしても良い。また、搬送車5については、当該搬送車5上においてフォーク5bを進退させる機構や搬送車5の進退方向に対して左右方向にフォーク5bを移動させる機構を持たせても良いし、あるいは搬送車5上においてフォーク5b(搬送容器C)の向きを調整できるようにしても良い。
【0059】
また、既述のように、搬送車5は搬送容器Cを中央部において両側から保持しているので、物流フロア2の床面11に対して搬送容器Cを直接受け渡しできる。従って、図32(a)に示すように、例えば処理が終了した搬送容器Cや、処理の途中で一時的に保管する搬送容器Cあるいは空になった搬送容器Cを物流フロア2における搬送車5の動作に干渉しない位置に載置しても良い。このように物流フロア2をいわば倉庫(載置領域)として用いることで、倉庫用のスペースを別途設けることなく搬送容器Cを安価に保管できる。更に、図32(b)に示すように、物流フロア2に棚71を設けて、この棚71を倉庫として用いても良い。
【0060】
また、以上の例においては、2つの隣接する工程室21a、21b間で受け渡し口22を共有する例について説明したが、図33に示すように、隣接する3つの工程室21の中央の工程室21aに受け渡し口22を形成し、この受け渡し口22を当該工程室21aに隣接する工程室21b、21cで共有しても良い。この時、例えば受け渡し口22と工程室21c(21b)の搬入出口24とが離れている場合には、受け渡し口22と当該搬入出口24との間にコンベア91を設けても良い。
【0061】
更に、図34(a)に示すように、コンベア91を設けずに、工程室21b、21cの搬入出口24、24に各々近接するように、工程室21aに2つの受け渡し口22、22を形成しても良いし、あるいは同図(b)に示すように、工程室21b、21cの各々の搬入出口24、24に近接するように大きく受け渡し口22を形成しても良い。この場合には、例えば受け渡し口22の上方領域を介して工程室21aと機械室61との間において処理装置27を搬送する時には、例えば受け渡し口22を塞ぐように例えば金属製の図示しない運搬路が設けられ、処理装置27はこの運搬路上を搬送されることになる。尚、図33及び図34においては、受け渡し口22の周囲の区画壁22aなどについては記載を省略している。
また、未使用エリア31を工程室21に改造する場合について説明したが、この工場において例えば工程室21に代えて配置されている図示しない倉庫を工程室21に改造する場合にも同様に工事が行われることになる。
【0062】
更に、既述の例では、打錠室25に対して搬送容器Cの受け渡しを行うにあたって、投入区域25aに対して搬送容器Cの受け渡しを行う受け渡し口22と、処理区域25bに対して搬送容器Cの受け渡しを行う受け渡し口22とを平面的に同じ位置に設けたが、図35に示すように、これらの受け渡し口22、22を夫々別の位置に設けても良い。即ち、打錠室25に平面的に2つの受け渡し口22、22を形成して、投入区域25a及び処理区域25bに対して搬送容器Cの受け渡しを行う経路を独立して夫々専用に設けても良い。従って、処理区域25bに対して搬送容器Cの受け渡しを行う受け渡し口22の上方位置は、間仕切り26が配置されている。また、各々の投入区域25a及び処理区域25bには、各々の受け渡し口22、22に近接してエアロック室50、50が配置される。この場合には、夫々の投入区域25a及び処理区域25bに対してアクセスする搬送車5を共通化しても良いし、個別に設けても良く、個別に設ける場合にはこれら搬送車5、5の走行する物流フロア2内を区画しても良い。この例においても、エアロック室50と共に物流フロア2に棚71を設けても良い。尚、図34においては、2つの受け渡し口22、22を左右に離間して配置しているが、受け渡し口22、22の形成位置としては、これら受け渡し口22、22に対してアクセスする搬送車5、5同士が干渉しないように、例えば横並びに近接して設けても良い。
【0063】
更にまた、上下の物流フロア2、2間において搬送容器Cを搬送するためにスタッカークレーン12を設けたが、物流フロア2、2間にて搬送容器Cを搬送しない場合には、このスタッカークレーン12を設けなくても良い。また、階層構造体3を複数階層例えば2層に亘って積層したが、図36に示すように1層であっても良い。
【0064】
また、処理フロア1と物流フロア2とを設けることによって工場の各領域の配置レイアウトの自由度が大きいことは既に述べたが、既述の例とは異なるレイアウトの工場について、図37及び図38を参照して説明する。この工場には、既述の機械室61に代えて、工程室21の並びに沿うように作業者用通路95が設けられており、この作業者用通路95と各工程室21との間の側面には、作業者のためのドア29が各々設けられている。この作業者用通路95は、工程室21に出入りする作業者の例えば衣服を介したコンタミを防止するために、各々の工程室21に入室する作業者の通路と退室する作業者の通路とを別々にするために設けたものである。従って、作業者用通路62、95のうち一方は各々の工程室21に入室する作業者のための通路であり、作業者用通路62、95のうち他方はこれら工程室21から退室する作業者のための通路である。
【0065】
このように2つの作業者用通路62、95を工程室21に各々隣接するように配置した場合であっても、工程室21には物流フロア2から搬送容器Cを搬入できるので、各々の工程室21には、搬送容器Cを昇降させるためのリフタなどの昇降装置が不要である。従って、処理フロア1と物流フロア2とを上下に区画しているので、建設費のコストアップを抑えながら処理フロア1のレイアウトを種々変更できる。尚、既述の機械室61に代えて工程室21に隣接するように、搬送容器Cの内部または外部を洗浄するための洗浄室を設けてもよい。
【0066】
また、既述の各例では、工程室21を前後方向に一列に配置したが、搬送車5により下方側の物流フロア2から処理フロア1に対して搬送容器Cの受け渡しを行っていることから、ある一つの工程室21から側方側を見た時に、周囲の全ての4つの面に別の工程室21が配置されているレイアウトも採ることができる。具体的には、処理フロア1において工程室21が配置される領域を縦横夫々3つの領域に壁面を用いて区画して、当該領域を夫々工程室21として用いても良い。この場合には、例えば各々工程室21には、床面11に受け渡し口22が各々形成され、作業者は9つの工程室21のうち中央の工程室21に対しては、当該工程室21の周囲の工程室21を介して出入りする。即ち、工程室21が配置された処理フロア1の階下に物流フロア2を設けることによって、当該処理フロア1には搬送容器Cの搬送用の搬送軌道を設ける必要がないので、例えば既述のスタッカークレーン100だけに頼って搬送容器Cの搬送を行う場合と比べて、処理フロア1のレイアウトの自由度を極めて高くすることができる。
【0067】
ここで、受け渡し口22を共有する工程室21a、21bをこの処理フロア1内に配置したが、いずれの工程室21についても受け渡し口22を形成しても良い。その場合には、未使用エリア31については隣接する工程室21と受け渡し口22と共用しても良いし、あるいはこの未使用エリア31に予め受け渡し口22を形成しても良い。また、隣接する工程室21a、21bにおいて受け渡し口22を共用する場合には、工程室21aにおける受け渡し口22をこれらの工程室21a、21bの間の壁面に沿って長く形成しても良い。このように受け渡し口22を形成することにより、搬入出口24を形成する位置について、高さ位置だけでなく横方向についても自由度が高くなる。
【0068】
以上の各例において、エアロック室50を備えた工程室21と、このエアロック室50が設けられていない工程室21とが配置された場合について説明したが、全ての工程室21にエアロック室50を配置しても良い。また、既述の例では固形製剤を製造する医薬品工場を例に本発明について説明したが、例えばこのような固形製剤以外にも、被処理物に対して処理を行う工程室21が複数設けられた処理設備例えば食品、化学品を製造する工場などに本発明を適用しても良い。
【符号の説明】
【0069】
C 搬送容器
1 処理フロア
2 物流フロア
5 搬送車
21 工程室
22 受け渡し口
50 エアロック室
【技術分野】
【0001】
本発明は、被処理物に対して処理を行う工程室が複数設けられた処理設備に関する。
【背景技術】
【0002】
医薬品などの固形製剤を製造する工場などの処理設備には、図39に示すように、例えば作業者が処理装置を用いて処理を行うための工程室102が複数箇所に設けられており、各々の工程室102において、被処理物である粉体原料やこの粉体原料から得られた中間生成物などの処理物に対して、秤量、造粒、篩過、錠剤への成形(打錠)、検査あるいは包装などの処理が行われる。これらの被処理物、中間生成物及び処理物は、コンテナなどの搬送容器内に収納された状態で例えばスタッカークレーン100と呼ばれる搬送機構により各工程室102間において受け渡される。そのため各工程室102は、スタッカークレーン100が配置された搬送室101の両側に沿って並べられる。図39中、105は搬送口、104は未内装(未使用)のエリア(部屋)であり、この未内装エリア104は、工場を建設した後の増産時などにおいて、内装工事、搬送口105の形成及び処理装置の搬入などの改造工事が行われて工程室102として使用される。また、図39において103は作業者が工程室102に出入りするための作業者用通路、107は処理装置の部材や配電盤を設置するための機械室であり、これら作業者用通路103及び機械室107は搬送室101に干渉しないように配置される。
【0003】
しかしながら、このようにスタッカークレーン100を用いる場合には、既述のように搬送室101と工程室102との間の位置関係が決まっているので、工場内の各領域の配置レイアウトの自由度が小さい。そのため、この工場では、新規設備(処理装置)の導入や工場建設後の増産などに柔軟に対応できなかったり、あるいは工場の建設コストが高くなったりする配置レイアウトを取らざるを得ない。即ち、例えば工程室102内に新しい処理装置を機械室107から搬入する場合には、これら機械室107と工程室102との間における作業者用通路103の壁面を取り壊すことになる。この時、作業者用通路103の内部雰囲気が汚染されないように、工事する領域106を作業者用通路103から区画しようとすると、作業者用通路103が領域106により途中で遮られて作業者が行き来できなくなる。その場合には、工場の一部または工場全体の操業を停止する必要があるので、この工場では新規設備を導入しにくい(工程室102と機械室107とが隣接していない)配置レイアウトを採っていると言える。また、未内装エリア104に搬送口105を形成する時において、搬送室101内の雰囲気が汚染されないように当該搬送口105の周囲における搬送室101を区画する場合には、スタッカークレーン100の移動が妨げられてしまう。従って、未内装エリア104に予め搬送口105を形成しておく必要があるので、当該未内装エリア104には、この搬送口105の位置に対応できる処理装置しか導入できない。そのため、増設できる工程室102の種類が限られてしまい、工場建設後の増産に柔軟に対応できない。
【0004】
また、作業者用通路103を通行する作業者の例えば衣服などを介したコンタミを防止するために、工程室102に入室する作業者の通路と工程室102から退室する作業者の通路とを別々に設ける場合には、これら2つの通路は作業者の作業性の面から工程室102と同じフロアに各々設けられることが好ましい。しかし、各々の工程室102が側方側から別の工程室102、搬送室101及び作業者用通路(入室用通路)103により囲まれているので、これら通路の一方(退室用通路)は、例えば搬送室101と工程室102との間において、当該搬送室101に沿って設けられることになる。そのため、搬送容器は、退室用通路の例えば上方位置を介して、当該上方位置に設けられたベルトコンベアなどの水平搬送機構を利用して、搬送室101から工程室102内に搬入されることになる。この場合には、各工程室102には、搬送容器の搬入される高さ位置と、作業者が処理を行う高さ位置(例えば工程室102の床面の高さレベル)との間において、搬送容器を昇降させるリフタなどの昇降装置が必要になるので、コストアップに繋がってしまう。
【0005】
また、搬送室101が工場を2分するように配置されるので、例えば各工程室102内の大気の給排気を行うためのダクトや、各工程室102内を見学するための見学者通路を設ける場合には、配置できるスペースが限られてしまう。更に、搬送室101内の雰囲気と工程室102内の雰囲気とを区画してコンタミの流入出(クロスコンタミ)を抑えるために、あるいは工程室102内の清浄度を確保するために、開閉可能な開閉扉を備えた図示しないエアロック室を当該搬送室101と工程室102との間に配置しようとすると、工場内の各領域の配置レイアウトの自由度がより一層小さくなってしまう。
【0006】
特許文献1には、粉体を機器40に投入する粉粒体投入システムについて記載されているが、既述の課題については何ら検討されていない。また、特許文献2には、スタッカークレーン1やフォークリフトについて記載されているが、フォークリフトの移動路(搬送軌道12の上方領域)が2階の床面を貫通するように1階及び2階に亘って形成されると共に複数のヤード3〜9を環状に囲むように形成されているので、既述の課題を解決できるものではない。また、このようなフォークリフトを用いて物(搬送容器)の動線と人(作業者)の動線とを分離しようとすると、既述のスタッカークレーン100を用いた工場と同様のレイアウトとなってしまう。更に、特許文献3には基板処理装置について記載されているが、既述の課題は検討されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−30914
【特許文献2】特開平4−25572(743頁下段左欄14行目〜同18行目、同頁下段右欄15行目〜同16行目)
【特許文献3】特開平9−275127
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明はこのような事情の下になされたものであり、その目的は、被処理物に対して処理を行って処理物を得る複数の工程室と、被処理物または処理物からなる被搬送物を搬送してこれら工程室に対して被搬送物の受け渡しを行う搬送領域とが設けられた処理設備において、工程室と搬送領域との間を区画すると共に当該工程室と搬送領域との間において被搬送物の受け渡しを行う予備清浄室を設けながら、内部の領域の配置レイアウトの自由度が大きい処理設備を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の処理設備は、
清浄雰囲気に維持され、被処理物に対して処理を行って処理物を得るための工程室が複数配置された第1の階と、
この第1の階の階下に設けられ、被処理物または処理物からなる被搬送物を搬送するための搬送領域が形成された第2の階と、
前記工程室のうち少なくとも1つの工程室及び前記搬送領域の間に介在し、これらの間で被搬送物を搬送するときに被搬送物が一旦置かれる予備清浄室と、
この予備清浄室における工程室側の壁部の第1の搬送口を開閉する第1の開閉部と、
前記予備清浄室における前記搬送領域側の壁部の第2の搬送口を開閉する第2の開閉部と、
前記第2の階を上方側から臨む位置における第1の階と第2の階との間の床面に形成され、第1の階と第2の階との間において被搬送物の受け渡しを行うための受け渡し口と、
この受け渡し口を介して第1の階と第2の階との間で被搬送物の受け渡しを行うために、第2の階において水平に移動自在に設けられ、被搬送物を昇降自在に保持する受け渡し機構を有する搬送車と、を備えたことを特徴とする。
前記予備清浄室は、第1の階に設けられていても良い。その場合には、前記第1の階における前記受け渡し口の上方領域を前記工程室の雰囲気から区画する区画壁が設けられ、
前記第1の搬送口は、前記区画壁に設けられていても良いし、
前記予備清浄室は、前記第1の階における前記受け渡し口の上方領域に設けられ、
前記第2の搬送口は、前記受け渡し口を兼用していても良い。
前記予備清浄室は、第2の階に設けられていても良いし、その場合には前記第1の搬送口は、前記受け渡し口を兼用していても良い。
前記予備清浄室は、第2の階から受け渡し口を介して第1の階に跨って設けられていても良い。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、複数の工程室が配置された第1の階の階下に、被処理物または処理物からなる被搬送物の搬送を行う搬送領域が形成された第2の階を設けると共に、工程室のうち少なくとも1つの工程室と搬送領域との間に、当該工程室と搬送領域との間を区画しながら被搬送物の受け渡しを行う予備清浄室を設けている。そして、第1の階と第2の階との間の床面に受け渡し口を形成すると共に第2の階を走行する搬送車を設けて、受け渡し口を介して搬送車により第1の階と第2の階との間で被搬送物の受け渡しを行うことによって、前記少なくとも1つの工程室と第2の階との間において予備清浄室を介して被搬送物を受け渡している。そのため、工程室が配置された第1の階と被搬送物の搬送を行う第2の階とを上下に区画できるので、予備清浄室を設けながら、第1の階に配置される各領域の配置レイアウトの自由度を大きく取ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の生産工場の要部を概略的に示す縦断面図である。
【図2】本発明の生産工場の一例を示す斜視図である。
【図3】前記工場を示す縦断面図である。
【図4】前記工場を示す縦断面図である。
【図5】前記工場を示す平面図である。
【図6】前記工場を示す平面図である。
【図7】前記工場において被処理物が収納される搬送容器の一例を示す斜視図である。
【図8】前記搬送容器が受け渡される受け渡し部材の一例を示す斜視図である。
【図9】前記工場で用いられるスタッカークレーンを示す斜視図である。
【図10】前記工場における工程室の一例を示す縦断面図である。
【図11】前記工場における工程室の一例を示す縦断面図である。
【図12】前記工場の作用の一例を示す縦断面図である。
【図13】前記工場の作用の一例を示す平面図である。
【図14】前記工場の作用の一例を示す縦断面図である。
【図15】前記工場の作用の一例を示す縦断面図である。
【図16】前記工場の作用の一例を示す縦断面図である。
【図17】前記工場の作用の一例を示す縦断面図である。
【図18】前記工場の作用の一例を示す縦断面図である。
【図19】前記工場の作用の一例を示す平面図である。
【図20】前記工場の作用の一例を示す縦断面図である。
【図21】前記工場の作用の一例を示す平面図である。
【図22】前記工場の作用の一例を示す縦断面図である。
【図23】前記工場の作用の一例を示す平面図である。
【図24】前記工場の作用の一例を示す縦断面図である。
【図25】前記工場の作用の一例を示す平面図である。
【図26】前記工場の他の例を示す縦断面図である。
【図27】前記工場の他の例を示す縦断面図である。
【図28】前記工場の他の例を示す縦断面図である。
【図29】前記工場の他の例を示す縦断面図である。
【図30】前記工場の他の例を示す縦断面図である。
【図31】前記工場の他の例を示す縦断面図である。
【図32】前記工場の他の例を示す縦断面図である。
【図33】前記工場の他の例を示す平面図である。
【図34】前記工場の他の例を示す平面図である。
【図35】前記工場の他の例を示す縦断面図である。
【図36】前記工場の他の例を示す縦断面図である。
【図37】前記工場の他の例を示す平面図である。
【図38】前記工場の他の例を示す縦断面図である。
【図39】従来の工場の一例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の処理設備の一例として、被処理物である原料粉末から製品(処理物)である医薬品の固形製剤を製造する医薬品製造工場を例に挙げて、図1〜図11を参照して説明する。先ず、この工場の要部について図1を参照して概略的に説明すると、この工場には、原料粉末やこの原料粉末から得られる中間生成物などの処理物に対して、例えば保管、秤量、後述の搬送容器Cへの原料粉末の充填、造粒、篩過、錠剤への成形(打錠)、コーティング、検査及び包装などの処理を行うための工程室21が平面的に複数配置された第1の階をなす処理フロア1が設けられており、この処理フロア1の階下には、被処理物または処理物が内部に収納された被搬送物である搬送容器Cを搬送して工程室21に対して受け渡すための第2の階である物流フロア2が配置されている。処理フロア1と物流フロア2との間の床面11には、搬送容器Cの受け渡しを行うための受け渡し口22が複数箇所に形成されている。これらの工程室21のうち少なくとも一つの工程室21には、当該工程室21の雰囲気と物流フロア2において搬送容器Cが搬送される搬送領域の雰囲気との間を区画しながらこれら工程室21と物流フロア2との間で搬送容器Cの受け渡しを行うために、予備清浄室をなすエアロック室50が設けられている。この例ではエアロック室50は、処理フロア1において工程室21の内部領域に配置されている。これら処理フロア1及び物流フロア2により階層構造体3が構成されている。尚、前記「検査」及び「包装」もこの明細書では「処理」という用語に含まれるものとする。
【0013】
続いて、工場の各部の詳細について説明する。物流フロア2には、図4に示すように、搬送容器Cを搬送して工程室21との間において受け渡しを行うために、例えばAGF(Auto Guided Forklift)などである搬送車5が複数台配置されており、各々の搬送車5は、水平方向に走行(移動)する走行車本体5aと、搬送容器Cを昇降自在に保持する受け渡し機構であるフォーク5bと、を備えている。このフォーク5bによって、例えば箱型の容器である搬送容器Cは、図7に示すように、高さ方向における概略中央位置において左右両側から支持される。また、フォーク5bは後述するように、搬送車5が水平移動する時には下方側の物流フロア2側に縮退し、工程室21及びエアロック室50との間において搬送容器Cを受け渡す時には、受け渡し口22を介して処理フロア1側に伸び出すように構成されている。
【0014】
物流フロア2の床面11には、図5に示すように、例えば磁気テープなどの搬送路6が付設されており、この搬送路6は、例えば受け渡し口22の各々の下方位置を楕円状に結ぶ本線(周回軌道)6aと、この本線6aから分岐する複数の分岐路6bと、を備えている。分岐路6bは、例えば搬送車5が故障した時やメンテナンスを受ける時に当該搬送車5を作業者が退避させる退避分岐路8aと、この退避分岐路8aに退避した搬送車5に代えて搬送を行う予備の搬送車5が待機する予備分岐路8bと、搬送車5が後述の受け渡し部材15に臨む位置を走行できるように配置された受け渡し用分岐路8cと、から構成されている。搬送車5の下面側には、搬送路6(搬送領域)に沿って水平方向に移動できるように、当該搬送路6を検知する図示しない検知部が設けられている。
【0015】
図5中9は、床面11における搬送車5の停止位置例えば受け渡し口22の下方位置に付設された磁気棒などのマーカーであり、搬送車5は下面に設けられた図示しないセンサーなどによりマーカー9の位置を読みとり、後述の制御部10の指示によりこのマーカー9の上方において停止して、搬送容器Cの受け渡し動作を行うこととなる。この物流フロア2の床面11には、受け渡し口22の下方位置などにおいて搬送車5が180°反転できるように、例えば本線6aから分岐して円状に伸びる図示しない反転用搬送路が設けられていても良い。また、この搬送車5としては、例えば作業者がマニュアルで運転(操縦)するフォークリフトなどであっても良い。尚、物流フロア2内には、工場の補強のために、搬送車5の動作に干渉しない位置に床面11と天井面とを接続する複数の柱部が設けられているが、図示を省略している。
【0016】
また、この例においては、既述の図2〜図4に示すように、処理フロア1と物流フロア2とからなる階層構造体3が複数階層例えば2層積層されており、上下の階層の物流フロア2、2同士の間で搬送容器Cを搬送するために、バーチカルリフターやエレベータなどの昇降装置、この例ではスタッカークレーン12が工場に外部側から隣接して設けられている。このスタッカークレーン12は、工場の端部例えば後述
の打錠室25に隣接する位置において、複数階層の物流フロア2に亘って設けられた昇降室13内に配置されている。この昇降室13と物流フロア2との間の壁面には、図3に示すように、これら昇降室13と物流フロア2との間において搬送容器Cの受け渡しを行うための搬送口14、14が各々開口している。物流フロア2においてこの搬送口14に臨む位置には、スタッカークレーン12と搬送車5との間において搬送容器Cを受け渡すための受け渡し部材15が設けられている。この受け渡し部材15は、図8に示すように、例えば搬送容器Cの搬送方向(後述の搬送台45の進退方向)に対して互いに離間して並ぶ2つの棒状部材15a、15aから構成されている。尚、図2においては、スタッカークレーン12や搬送口14及びエアロック室50の描画を省略している。また、図4においては便宜的にこのスタッカークレーン12を描画している。
【0017】
昇降室13内の床面には、図5に示すように、工場の外壁に沿って水平に配置されたレール41が設けられている。スタッカークレーン12は、図9に示すように、互いに間隔を開けて鉛直方向に伸びる2本の柱部42、42及びこの柱部42、42を上下から支持する基部43、43を備えている。この図9中44及び46は夫々リフト及び車輪であり、スタッカークレーン12がレール41上を走行すると共に、柱部42、42に沿って搬送容器Cを昇降できるように構成されている。このリフト44上には、搬送容器Cを載置するための搬送台45が設置されており、この搬送台45は、前記棒状部材15a、15aの離間寸法よりも狭く形成されると共に、階層構造体3(物流フロア2)に対して水平方向に進退自在に構成されている。
【0018】
そして、このスタッカークレーン12から物流フロア2に搬送容器Cを搬送する時には、例えばこの搬送台45上に搬送容器Cを載置して、既述の搬送口14を介して棒状部材15a、15aの上方位置にスタッカークレーン12から当該搬送台45を伸張させ、次いで搬送台45が棒状部材15a、15a間を下側に通過するようにリフト44を下降させることにより、受け渡し部材15上に搬送容器Cが載置されることになる。また、物流フロア2から搬送容器Cを受け取る時には、この順番と逆の順序でスタッカークレーン12が動作することとなる。そして、既述の搬送車5がこの受け渡し部材15から搬送容器Cを受け取る時には、搬送車5が受け渡し部材15に臨む位置に移動すると共に、例えば搬送容器Cの下方側からあるいはこの搬送容器Cの高さ方向における概略中央位置において搬送容器Cを支持して持ち上げることになる。搬送車5から受け渡し部材15に搬送容器Cを引き渡す時には、この搬送動作と逆の順番で搬送車5が動作する。尚、スタッカークレーン12は、荷物用エレベーター、バーチカルリフター、またはバーチカルコンベア等の昇降装置であってもよい。
【0019】
続いて、処理フロア1について詳述する。この処理フロア1には、既述の図2、図4及び図6に示すように、複数の工程室21が前後方向(図2中Y方向)に一列に配置されており、この工程室21の列が左右方向(図2中X方向)に平行に互いに離間するように複数列例えば2列配置されている。各々の工程室21内には、既述の処理を行うための処理装置27が設けられている。工程室21の床面11(処理フロア1と物流フロア2との間の床面11)には、搬送容器Cの受け渡しを行うための受け渡し口22が複数箇所に形成されている。そして、処理フロア1において、各々の受け渡し口22の外縁から当該処理フロア1の内部領域側に離間した位置には、図1(b)及び図6に示すように、処理フロア1の床面11から天井面に向かって伸びるように、処理フロア1の雰囲気と物流フロア2の雰囲気とを区画するための区画壁22aが当該受け渡し口22の周囲に設けられている。この区画壁22aには、開閉扉22bにより開閉される開口部22cが形成されている。この開閉扉22bは、当該開閉扉22bの両側の領域(受け渡し口22の上方領域と工程室21内の雰囲気)との間において、気流が行き来しにくいようにこれら領域を区画するためのものである。従って、開閉扉22bは、当該開閉扉22bと開口部22cとの間に形成された隙間を介して、これら両側の領域の間に形成された圧力差に応じて、これら領域の一方側から他方側に雰囲気が少しずつ通流するように構成されている。後述の扉48a及び搬入出口24についても同様である。既述の図1(b)では、区画壁22aにより囲まれる床面11よりも受け渡し口22を小さく描いているが、受け渡し口22は、実際には当該区画壁22aの下方側が全面に亘って開口した状態となっている。
【0020】
処理フロア1に配置された複数の工程室21のうち少なくとも1つの工程室21の内部には、図10(b)に示すように、物流フロア2の雰囲気(受け渡し口22の上方領域)と当該工程室21の内部雰囲気との間を区画するために、予備清浄室であるエアロック室50が当該受け渡し口22に近接して配置されている。以下、予備清浄室としてエアロック室50を例に説明する。
この工程室21は、物流フロア2との間の粉じんの流入出(クロスコンタミ)を抑えるために、あるいは当該工程室21の内部雰囲気の清浄度を保つために設けられた領域であり、例えば秤量、造粒、篩過、錠剤への成形(打錠)などの処理が行われる。尚、図10(b)では、エアロック室50の壁面を一部切り欠いて示しており、また区画壁22aを省略している。
【0021】
このエアロック室50の壁面部には、互いに対向するように開口部(搬送口)50a、50aが形成されており、これらの開口部50a、50aを互いに独立して開閉できるように、開閉部52、52が設けられている。この開閉部52についても、既述の開閉扉22bと同様に、当該開閉部52と開口部50aとの間に形成された隙間を介して、これら両側の領域の間に形成された圧力差に応じて、これら領域の一方側から他方側に雰囲気が少しずつ通流するように構成されている。尚、エアロック室50の開口部50a、50aは、互いに直交して設けられても良い。このエアロック室50には、内部領域を陽圧または引圧にするための図示しないガス(大気)供給部が設けられている場合もある。この例においては、エアロック室50の一つの開閉部52(後述の第2の開閉部52b)が区画壁22aの開閉扉22bを兼用している。この開閉部52は、例えば左右方向に開閉する引き戸、上下方向に開閉する懸戸あるいは下方側から上方側に巻き上げられる巻き上げ戸などであり、後述の制御部10からの指示あるいは作業者により、搬送車5が受け渡し口22の下方位置において搬送容器Cの受け渡し動作を行う時には各々開閉される。このエアロック室50の内部には、搬送容器Cを載置するための載置部50bが設けられている場合があり、その場合に載置部50bは、当該エアロック室50に対する搬送容器Cの搬送方向に沿って搬送容器Cを進退自在に保持できるように、当該搬送方向に対して直交する方向に互いに離間する2つのコンベアやローラーコンベアなどの水平搬送機構により構成されている。具体的には、この載置部50bは、図10(b)に示すように、例えば前記進退方向に離間して並ぶ複数例えば3つの回動部120と、前記進退方向に沿ってこれら回動部120に巻回されたベルトなどの駆動部121と、から構成されており、搬送車5によって搬送容器Cが上面に載置されると、工程室21に設けられた後述の搬送部53に向かって当該搬送容器Cを搬送するように構成されている。尚、図10(b)では、載置部50bの高さ寸法や長さ寸法については模式的に示している。また、後述するように、工程室21内に搬送容器Cを例えば一時的に保管する場合には、図6に示すように、この保管する領域(保管領域48)と区画壁22aまたはエアロック室50の壁面との間には、扉48aにより開閉自在な開口部48bが形成される。尚、図2ではエアロック室50を省略している。
【0022】
ここで、既述の受け渡し口22は、図6に示すように、各々の工程室21毎に個別に設けられている場合もあるし、一つの受け渡し口22が互いに隣接する複数例えば2つの工程室21、21において共用されている場合もある。この受け渡し口22の配置位置について、例えば受け渡し口22の形成された工程室21を第1の工程室21a、受け渡し口22の形成されていない工程室21を第2の工程室21bと呼ぶと、第1の工程室21aの受け渡し口22は、第2の工程室21bに近接配置されている。そして、第1の工程室21aと第2の工程室21bとの間の壁面には、搬送容器Cの受け渡しを行うための搬入出口24が形成されている。また、この搬入出口24は例えばドアなどの開閉機構24aにより開閉されるように構成されており、搬送容器Cは、第2の工程室21bに対して、受け渡し口22、第1の工程室21a及び搬入出口24を介して搬送車5により搬送される。従って、既述の処理装置27は、第1の工程室21aでは受け渡し口22に配置されており、第2の工程室21bでは搬入出口24に近接する位置に設けられている。
【0023】
各々のエアロック室50における開閉部52、52は、一方が当該エアロック室50の配置された工程室21を臨むように配置され、他方が受け渡し口22を臨むように配置されている。これらの開閉部52、52のうち工程室21を臨む開閉部52を第1の開閉部52a、受け渡し口22を臨む開閉部52を第2の開閉部52bと呼ぶと、工程室21には、これら開閉部52a、52bを介して搬入出される搬送容器Cをエアロック室50内の載置部50bと処理装置27との間において搬送するために、例えばコンベアなどの搬送部53が配置されている場合がある。この搬送部53は、既述の載置部50bと同様に構成されており、第1の開閉部52aを介して搬送容器Cが載置部50bにより工程室21内に搬入されると、当該搬送容器Cを下方側から支持して工程室21内に引き込むように構成されている。搬送部53は2つのコンベアの他、ローラーコンベアであってもよい。
【0024】
また、例えば打錠処理を行う工程室21、即ち図11に示す打錠室25は、間仕切り26によって投入区域25aと処理区域25bとの上下2層に区画されている。この打錠室25には、物流フロア2と処理フロア1との間の床面11(処理区域25bの床面)及び間仕切り26を上下に亘って貫通するように、既述の受け渡し口22が各々形成されている。即ち、投入区域25a及び処理区域25bには、夫々専用の受け渡し口22、22が形成されており、この例ではこれら2つの受け渡し口22、22は平面で見た時の位置が重なっていると言える。投入区域25a及び処理区域25bにおいて受け渡し口22、22の外縁から投入区域25a側及び処理区域25b側に夫々離れた位置には、既述のエアロック室50、50が各々設けられており、このエアロック室50の開口部50aは、開閉部52により各々開閉される。
【0025】
処理区域25bには、被処理物に対して打錠処理を行うための処理装置(打錠機)27が設けられており、この処理装置27の上方位置における間仕切り26には、開口部26aが形成されている。投入区域25aには、当該投入区域25aから開口部26aを介して下方の処理装置27に被処理物を投入するための管状の投入路27aの一端側が開口している。この投入区域25aには、処理装置27の上方位置と開閉扉22bに近接する位置との間で搬送容器Cの受け渡しを行うための受け渡し部28が設けられている。
【0026】
受け渡し部28は、投入区域25aへの搬送容器Cの搬送方向に沿って互いに離間するように配置された例えば2組のコンベアなどであり、搬送車5との間において搬送容器Cの受け渡しを行う受け渡し位置と、処理装置27の上方位置と、の間において搬送容器Cを水平に搬送するように構成されている。また、処理区域25bにおいて、処理装置27の側方位置には、処理装置27において打錠処理が行われた処理物を収納するための搬送容器Cが搬送部53上に載置されている。図11中27bは、処理装置27において打錠処理が終了した処理物を取り出して、処理区域25bに載置された搬送容器Cに収納するための搬送部材である。尚、図6においては、この打錠室25を簡略化して示している。また、搬送車5において搬送容器Cを上下に昇降させる機構については、図11などでは簡略化して示している。
【0027】
また、工程室21としては、例えば図6に未使用エリア31として示すように、内壁面や床面に内装が施されていない領域(部屋)が設けられている場合がある。この未使用エリア31は、工場を建設した後に、例えば医薬品を増産するために工程室21を増設する場合などに工程室21として使用される領域であり、そのため工場を建設した時点では使用されていない領域である。この未使用エリア31においては、受け渡し口22が形成されておらず、隣接する工程室21の受け渡し口22を共用することになる。また、処理装置27の種類により搬送容器Cが設置される高さ位置(搬入出口24の高さ位置)が異なることから、この未使用エリア31には搬入出口24が形成されておらず、工程室21を増設する時に、当該工程室21(未使用エリア31)内に設けられる処理装置27の種類などに応じて搬入出口24が工事により形成されることになる。また、工程室21を増設する時には、この搬入出口24の工事と共に、内装工事や後述の処理装置27を搬入する工事などが行われることになる。尚、予めドアなどにより開閉される搬入出口24を形成しておいても良い。
【0028】
工程室21の列の左側の側面及び右側の側面の一方側及び他方側には、各々機械室61及びこの工程室21内において作業を行う作業者が当該工程室21内に出入りするための作業者用通路62が当該工程室21の列に沿うように設けられている。この例においては、図2及び図4に示すように、工場の外壁に沿うように処理フロア1の両側に機械室61、61が配置され、2つの工程室21、21の列に挟まれるように(内側に)作業者用通路62、62が設けられている。この機械室61において工場の外部に面する壁面(外壁)には、既述の処理装置27の搬入出を行うための図示しないドアが形成されている。作業者用通路62の天井面は、工程室21の天井面よりも所定の高さだけ低くしてもよい。
【0029】
この機械室61は、例えば、工程室21内の処理装置27に関連する部材例えば集塵機や空調機あるいは配電盤などの機械設備61aを設置するための領域であり、工程室21や物流フロア2、あるいは作業者用通路62などよりも清浄度が低いレベルに設定されている。これらの工程室21と機械室61との間の壁面には、処理装置27と機械設備61aとを接続する配線や配管を引き回すための図示しない開口部が形成されている。また、この機械室61は、後述するように、工場の外部と工程室21との間において処理装置27を例えば入れ替える場合に、工場の外壁(機械室61の側面)に形成された図示しないドアから当該機械室61を介して処理装置27を搬送するための領域である。このように処理装置27を入れ替える(交換する)例としては、例えば工程室21内の古い処理装置27を新しい処理装置27に切り替える場合、あるいは当該工程室21内における処理の種類が変更になる場合などがある。
【0030】
この時、処理装置27の入れ替えを行わない場合もあるし、また処理装置27の大きさも処理の種類に応じて様々である。そのため、機械室61と工程室21との間において処理装置27を搬入出する場合には、例えば工事を行うことにより、機械室61と工程室21との間の壁面にその都度開口部が形成されることになる。尚、この壁面に予め開口部を形成しておき、処理装置27の搬送を行わない時には扉等で塞ぐようにしても良い。また、この機械室61は、工程室21に面する壁面以外の3つの側面のうちのいずれかの側面が工場の外壁に接するように配置されていれば良い。尚、図6においては、既述の機械設備61aを模式的に1つだけ描画している。
【0031】
そして、この処理フロア1には、これらの工程室21、機械室61及び作業者用通路62からなる処理ステーション7が平行に複数列に亘って例えば2列に設けられており、作業者用通路62の側面における工程室21とは反対側の面には、例えば作業者用通路62の側壁及び工程室21の側壁に形成された図示しない窓を介して見学者が工程室21内を見学するための見学者用通路63が作業者用通路62(工程室21)に沿って配置されている。この見学者用通路63の天井面は、作業者用通路62の天井面と同じ程度の高さレベルに設定されている。この例では、見学者用通路63を介して左右両側の作業者用通路62、工程室21及び機械室61が左右対称となるように配置されており、従ってこの場合には、左右の2つの処理ステーション7において見学者用通路63を兼用している。尚、図4及び図6中29は、作業者用通路62から工程室21内に作業者が出入りするためのドアである。また、これらの作業者用通路62、物流フロア2及び工程室21内は、コンタミの発生を抑えるために清浄な雰囲気に保たれている。
【0032】
作業者用通路62及び見学者用通路63の上方には、工程室21の側面の上部側に隣接するように、例えば天井面が工程室21の天井面と同程度の高さレベルとなるように配置された通気路(ダクト)35が設けられており、この通気路35は、前後方向に並ぶ工程室21に沿って長く形成されている。この通気路35は、工程室21の雰囲気を工場の外部に排気したり、あるいは工場の外部などから清浄な大気を吸引したりするための領域であり、各工程室21から例えば工場の外部に伸びる図示しない給気路や排気路が引き回されている。
【0033】
この工場は、図5に示すように、スタッカークレーン12及び搬送車5の搬送動作や開閉扉22b及び開閉部52の開閉動作を制御する制御部10を備えている。この制御部10は、CPU、メモリ及びプログラム格納部を備えており、被処理物に対して処理を行って処理物が得られるように、工場の各部(搬送車5、開閉扉22b、開閉部52及びスタッカークレーン12)に対して制御信号を出力するように構成されている。このプログラム格納部内に格納されるプログラムは、例えばハードディスク、コンパクトディスク、マグネットオプティカルディスクあるいはメモリーカードなどの図示しない記憶媒体から制御部10にインストールされる。
【0034】
次に、この工場の作用について図12〜図25を参照して説明する。先ず、例えば物流フロア2と同じ階層に設けられた図示しない倉庫から、搬送車5により原料粉末が収納された図示しない梱包容器である被搬送物を受け取る。この梱包容器は、搬送車5によって工程室21の一つに搬入され、開梱されて内部の原料粉末が搬送容器Cに移される。続いて、例えば500kg程度の重量となるように原料粉末が収納された搬送容器Cは、図12(a)に示すように、搬送車5によってこの搬送容器C内の被処理物に対して処理が行われる工程室21に向かって搬送される。即ち、図13に示すように、搬送車5が既述の搬送路6における軌道を検出しながら搬送路6(本線6a)に沿って例えば時計回りに移動する。次いで、搬送車5は工程室21の受け渡し口22の下方位置に設けられたマーカー9を検知すると停止して、所定の受け渡し動作を行う。具体的には、搬送車5が図12(b)に示すように受け渡し口22を介してフォーク5bを上昇させると、制御部10により受け渡し口22の側方側の開口部22cが開放される。次いで、搬送車5は、開口部22cを介して工程室21内に搬送容器Cを搬入し、処理装置27に搬送容器Cが設置される高さ位置よりも僅かに高い高さ位置において、搬送容器Cが例えば処理装置27の上方に位置するように例えば後退する。そして、図12(c)に示すように、フォーク5bを下降させて例えば処理装置27に搬送容器Cを受け渡す。
【0035】
しかる後、搬送車5は図14(a)に示すように、受け渡し口22の下方位置まで前進し、同図(b)に示すようにフォーク5bを物流フロア2内に縮退させる。開口部22cは、開閉扉22bにより閉じられる。この搬送車5は、次の搬送を行うために搬送路6に沿って例えば時計回りに移動していく。そして、作業者は作業者用通路62からこの工程室21内に入室すると共に、通気路35を介して当該工程室21内あるいは処理装置27の内部の雰囲気を調整して、この処理装置27を用いて搬送容器C内の被処理物に対して処理を行うことになる。その後、この工程室21内において処理が行われた処理物は、例えば搬送容器C内に収納されて、搬入された順番と逆の順序で搬送車5により物流フロア2へと搬出されていくことになる。そして、この搬送容器Cは、搬送車5により図示しない倉庫あるいは次の処理を行うための工程室21へと搬送路6に沿って例えば時計回りに搬送されていく。この搬送容器C内の処理物は、続く工程室21においては被処理物として処理が行われる。
【0036】
この時、次の処理を行う工程室21において先の処理が終わっていない場合には、例えば図14(c)に示すように、例えば受け渡し口22の下方位置において既述の図示しない反転用搬送路に沿って搬送車5が移動して例えば180°反転する。そして、搬送車5は工程室21内における処理装置27や作業者に干渉しない位置(保管領域48)に搬送容器Cを載置して、別の搬送を行うために移動する。その後、当該工程室21において先の処理が終わると、例えば作業者により、あるいは搬送車5により、この干渉しない位置に載置された搬送容器Cが処理装置27に設置されることになる。
【0037】
また、例えば受け渡し口22を共有している工程室21bでは、図15(a)に示すように、この工程室21bに隣接する工程室21aの受け渡し口22から搬送車5のフォーク5bが上方に向かって伸び出し、次いで同図(b)に示すように搬入出口24を介して搬送容器Cが当該工程室21bに搬入されて、この工程室21b内の処理装置27に載置されることとなる。
【0038】
エアロック室50の設けられた工程室21に搬送容器Cを搬入する場合には、図16(a)に示すように、第1の開閉部52aが閉じられたまま、第2の開閉部52bが開放される。そして、同図(b)に示すように、搬送車5により搬送容器Cをエアロック室50内に搬入し、載置部50bに載置する。次いで、同図(c)に示すように、フォーク5bをエアロック室50から退避させて、第2の開閉部52bを閉じる。続いて、図17(a)に示すように、第1の開閉部52aを開放して、同図(b)に示すように、載置部50b及び搬送部53によって搬送容器Cをエアロック室50から工程室21の内部領域例えば処理装置27の上方位置などに搬入する。こうしてエアロック室50の2つの開閉部52a、52bの共開き(工程室21と物流フロア2との連通)がないので、工程室21の内部雰囲気が清浄に保たれた状態で搬送容器Cが搬入される。この時、エアロック室50は、内部雰囲気が陽圧または引圧に保たれて、当該エアロック室50内へのコンタミが抑制されている。この工程室21において、受け渡し口22が共用されている場合には、搬送容器Cは、工程室21aの受け渡し口22及び搬入出口24を介して、工程室21bのエアロック室50に搬入される。
【0039】
そして、次の処理を行う工程室21が例えばこの物流フロア2の上層側の階層構造体3に配置されている場合には、図18(a)及び図19に示すように、搬送車5が受け渡し用分岐路8cに沿って受け渡し部材15に向かって移動して、この受け渡し部材15に搬送容器Cを載置する。スタッカークレーン12は、この受け渡し部材15に臨む位置に搬送台45を移動させて搬送容器Cを受け取る。そして、スタッカークレーン12は、上層側の階層構造体3における物流フロア2の受け渡し部材15に臨む位置に搬送容器Cを上昇させる。次いで、図18(b)に示すように、スタッカークレーン12は、この受け渡し部材15を介して搬送車5に搬送容器Cを受け渡す。こうして下層側の物流フロア2(搬送車5)から上層側の物流フロア2に対して搬送容器Cが搬送され、続く処理が順次行われていくことになる。また、上層側の物流フロア2から下層側の物流フロア2に搬送容器Cが搬送される場合も、同様に搬送車5及びスタッカークレーン12により搬送容器Cが受け渡されることになる。尚、スタッカークレーン12は、荷物用エレベーター、バーチカルリフター、またはバーチカルコンベア等の昇降装置であってもよい。
【0040】
また、既述の打錠処理を行う工程室21(打錠室25)の投入区域25aに搬送容器Cを搬送する場合には、図20(a)に示すように、処理区域25bの受け渡し口22及び投入区域25aの受け渡し口22を介して、搬送車5が搬送容器Cを投入区域25aと同じ高さ位置まで上昇させて、エアロック室50内に搬入する。この搬送容器Cは、エアロック室50から投入区域25aの受け渡し部28を介して処理装置27の上方位置に搬送されていく。また、同図(b)に示すように、例えば別の搬送車5は、受け渡し口22から処理物を収納する空の搬送容器Cをエアロック室50を介して処理区域25bに搬入する。そして、作業者がこの打錠室25内に設けられた図示しない階段を上って、投入区域25aの搬送容器Cの下面に設けられた図示しない投入口に投入路27aの開口端を接続し、この搬送容器Cから被処理物を処理装置27に投入する。この被処理物は、処理装置27において打錠処理が行われて、搬送部材27bにより処理区域25bの搬送容器C内に処理物として収納される。
【0041】
打錠処理を所定の時間行うと、搬送車5により処理物が収納された搬送容器Cが打錠室25(処理区域25b)からエアロック室50を介して搬出され、例えば別の搬送車5により再度空の搬送容器Cがエアロック室50を介して処理区域25bに搬入されて、打錠処理が続けられる。そして、例えば投入区域25aの搬送容器C内の被処理物がなくなるか少なくなるまで、搬送車5による処理区域25bへの搬送容器Cの搬入出が行われる。その後、投入区域25aの搬送容器Cが空になったり被処理物が少なくなったりした場合には、搬送車5により当該搬送容器Cが搬出されることになる。
以上の工程室21における例えば処理装置27や作業者の動作は、例えば見学者用通路63を通行する見学者により見学(点検)される。そして、例えば複数の階層の工程室21において被処理物に対して複数の処理を順次行うことにより、最終製品である医薬品が製造される。
【0042】
次に、工程室21内の処理装置27を取り替える(入れ替える)場合について説明する。先ず、図21(a)及び図22(a)に示すように、工事により工程室21内に発生する粉塵などが当該工程室21から物流フロア2や作業者用通路62あるいは他の工程室21に出て行かないように、受け渡し口22あるいは搬入出口24を例えば板状の覆い部材65により密閉すると共に、ドア29を閉じる。次いで、図21(b)に示すように、工事を行って機械室61と工程室21との間の壁面を取り壊す。また、受け渡し口22の周囲の区画壁22aやエアロック室50についても、処理装置27の搬送に干渉する場合には取り壊す。この工事により粉塵などが発生するが、工程室21を閉じているので、粉塵はこの工程室21から物流フロア2や作業者用通路62あるいは当該工程室21に隣接する工程室21には出て行かない。
【0043】
そして、図21(c)及び図22(b)に示すように、工程室21から処理装置27を機械室61を介して工場の外部に搬出し、例えば新しい処理装置27を当該工程室21内に搬入する。この時、機械室61が2階以上の高さの階層に配置されている場合には、処理装置27は例えば工場の外部からクレーンなどを用いて搬送される。その後、この工程室21内の清掃及び工程室21と機械室61との間の壁面が形成されて(修復されて)、区画壁22aやエアロック室50を再度形成すると共に覆い部材65を取り外して既述のように処理が再開される。尚、これらの図21及び図22においては、1つの工程室21のみを描画している。
【0044】
また、既述の未使用エリア31に対して新たに工程室21を設置する場合には、図23(a)及び図24(a)に示すように、この未使用エリア31と受け渡し口22を共用する(隣接する)工程室21において、同様に受け渡し口22を覆い部材65により塞ぎ、また必要に応じて区画壁22aやエアロック室50を取り壊し、図23(b)及び図24(b)に示すように、未使用エリア31とこの工程室21との間の壁面を工事により取り壊して搬入出口24を形成する。この搬入出口24の高さ位置は、例えば当該未使用エリア31に設置される処理装置27に応じて設定される。そして、例えばこの未使用エリア31に対して、内装工事及び機械室61との間の壁面を取り壊して新たに処理装置27を搬入する工事を行うことにより、この未使用エリア31に対して新たな工程室21が設けられることになる。
【0045】
この場合においても、工事を行っている時には、粉塵などは未使用エリア31及びこの未使用エリア31と受け渡し口22を共用する工程室21から、物流フロア2や作業者用通路62あるいは他の工程室21には出て行かない。そして、同様に清掃や機械室61との間の壁面の修復を行い、次いで区画壁22aやエアロック室50を形成した後、この未使用エリア31は工程室21として使用されることになる。
【0046】
そして、例えば搬送車5が故障した場合やメンテナンスを受ける場合には、図25に示すように、例えば作業者により当該搬送車5を退避分岐路8aに退避させ、予備分岐路8bにて待機する搬送車5を本線6aに移動させて、退避分岐路8aに退避した搬送車5に代えて搬送を受け持たせることになる。
【0047】
上述の実施の形態によれば、複数の工程室21が平面的に配置された処理フロア1の階下に、搬送容器Cの搬送を行う搬送領域が形成された物流フロア2を設けると共に、工程室21のうち少なくとも1つの工程室21にエアロック室50を設けている。そして、処理フロア1と物流フロア2との間の床面11に受け渡し口22を設けて、物流フロア2を走行する搬送車5により受け渡し口22を介してエアロック室50に搬送容器Cを搬入して、このエアロック室50から工程室21に搬送容器Cを搬入している。このように、本発明では、従来から用いられていた工程室21への側方側からの搬送容器Cの搬送という考え方に対して、階下の物流フロア2と階上の処理フロア1とにおいて搬送容器Cを受け渡すといった新規な考え方を採っている。そのため、処理フロア1には搬送容器Cの搬送を行う搬送路を設けなくて済むので、いわば物の動線である物流フロア2と人の動線である作業者用通路62とを上下に区画して別個に配置すると共に、エアロック室50を設けながら、処理フロア1の各領域(工程室21、機械室61、作業者用通路62及び見学者用通路63)の配置レイアウトの自由度を大きく取ることができる。
【0048】
従って、例えば工程室21と機械室61とを隣接させることができる。通常、機械室61が工場の外壁に面していることから、工場を建設した後に工程室21内の処理装置27を入れ替える場合には、機械室61を介して工場の外部と工程室21との間で処理装置27等の機器を運搬することになる。そのため、工程室21と機械室61とが隣接していると、例えば作業者用通路62を塞ぐ工事などを行うことなく、また他の工程室21に影響を及ぼすことなく、工事を行う工程室21における処理を停止するだけで処理装置27を導入できる。この結果、処理装置27を容易に且つ速やかに交換でき、従って新規設備の導入に柔軟に対応できる。また、例えば別途作業者用通路62を引き回すなど、工事を想定したレイアウトを採る必要がないので、工場の設計を行いやすい利点もあるし、また工場の設置面積を抑えることができる。
【0049】
更に、未使用エリア31に対して工程室21を増設する場合においても、この未使用エリア31と受け渡し口22を共用する工程室21の処理を停止するだけで工事を行うことができるので、例えば医薬品の増産などにも容易に対応することができる。また、未使用エリア31に対して工程室21を増設する場合には、当該未使用エリア31(工程室21)に設置される処理装置27に合わせて搬入出口24の高さ位置を設定できるので、未使用エリア31を様々な工程室21に対応させることができる。
従って、工場を建設した後に例えば医薬品の新しい製造方法や処理装置27などの新技術が開発された場合でも、容易にこれらの新技術を工場に導入できるので、また増産などにも容易に対応できるので、自由度の高い工場を得ることができる。
【0050】
また、搬送車5に水平移動と搬送容器Cの昇降動作とを行わせていることから、各々の工程室21毎に搬送容器Cを載置する高さ位置がまちまちであっても、各々の工程室21には昇降装置が不要になり、そのため工場を安価に建設できる。即ち、例えばコーティングを行う工程室21では、処理装置27が大型のため、搬送容器Cの載置される高さ位置が処理フロア1の床面11から例えば2.5m程度高い位置となったりする場合もあるが、その場合であっても当該工程室21には昇降装置を設けることなく、搬送車5により搬送容器Cの搬入出を直接行うことができる。
【0051】
更に、搬送車5により階下から階上へ搬送容器Cを受け渡していることから、隣接する工程室21、21間において受け渡し口22を共用できるので、受け渡し口22の設置数を抑えることができる。更にまた、物流フロア2と作業者用通路62とを別個に設けていることから、搬送車5と作業者との衝突を防ぐことができるし、作業者による搬送容器Cや被処理物あるいは処理物への干渉を防止できる。また、見学者用通路63を工程室21の側方位置に設けることができるので、例えば工程室21の上方に設ける場合よりも例えば処理装置27の動作などを確実に見学(点検)することができる。
【0052】
更に、水平な物流フロア2において搬送車5により搬送容器Cを搬送していることから、例えば複数階層の工程室21に沿って高さ方向にスタッカークレーンの搬送室を設ける場合に比べて、当該物流フロア2内を例えば作業者が容易に清掃することができる。また、物流フロア2には複数の搬送車5を設けているので、例えば1台が故障した場合やメンテナンスを行う場合でも、当該搬送車5の受け持つ搬送を他の搬送車5が肩代わりすることができる。
【0053】
また、上下の階層の物流フロア2、2間に亘って搬送容器Cを搬送する必要がある場合、スタッカークレーン12により搬送容器Cを昇降させることができるので、階層構造体3を積層でき、工場の設置面積を抑えることができる。この時、スタッカークレーン12の昇降室13は複数階層の物流フロア2に面するように、つまり工場の外壁などに面するように自由に設置できるので、工場内のレイアウトに干渉しない。
【0054】
既述の例では、物流フロア2と工程室21との間にエアロック室50を設けるにあたって、いわば工程室21の内部領域にエアロック室50を設けたが、例えば図26に示すように、機械室61と作業者用通路62との間において工程室21に隣接するようにエアロック室50を設けても良い。また、エアロック室50に2つの開閉部52a、52bを設ける場合に、これら開閉部52a、52bのうち物流フロア2側の第2の開閉部52bについては、図27に示すように、例えば受け渡し口22の下方側において当該受け渡し口22を覆う位置と、この受け渡し口22から側方側に外れた位置との間で水平方向に進退自在に構成しても良い。この場合には、受け渡し口22がエアロック室50の開口部50aを兼用していると言える。この図27において、物流フロア2側の開閉部52bを受け渡し口22の上方位置に設けても良いし、あるいは床面11の内部領域から側方側の受け渡し口22を塞ぐようにスライドするようにしても良い。
【0055】
また、搬送車5によってエアロック室50内に搬送容器Cを直接受け渡すようにしたが、図28に示すように、エアロック室50から受け渡し口22に向かって先端側の保持部55aが水平方向に伸び出すように進退自在且つ、当該保持部55aにおいて搬送容器Cを下方側から保持できるスライド機構(スライドステーション)55を当該エアロック室50内に受け渡し部として設けても良い。このスライド機構55は、例えばエアシリンダーなどのシリンダー、ラック及びピニオン、またはチェーン及びモーターなどの駆動機構によって、例えばリニアガイドに沿って保持部55aを水平方向にスライドさせる機構である。
更に、搬送車5によって受け渡し口22から搬入された搬送容器Cを例えば作業者によってエアロック室50を介して工程室21内に搬入する場合には、あるいはエアロック室50の搬送容器Cから空気輸送などで内容物を工程室21内に搬入する場合には、図29に示すように、エアロック室50や工程室21に載置部50b及び搬送部53を設けなくても良い。
【0056】
更にまた、図30(a)に示すように、処理フロア1と物流フロア2とに跨がるようにエアロック室50を設けても良い。このエアロック室50は、内部に受け渡し口22が位置するように、即ち当該受け渡し口22を物流フロア2側及び処理フロア1側から各々臨むように設けられる。従って、受け渡し口22は、物流フロア2から見た時に、工程室21を下方側から臨む位置におけるエアロック室50の天井面に形成されていると言える。この場合において、搬送容器Cは、搬送車5と共に物流フロア2におけるエアロック室50内に搬入されて、処理フロア1側のエアロック室50に搬入された後、工程室21に搬入される。また、同図(b)のように、第1の開閉部52aを受け渡し口22に近接配置して、エアロック室50内の搬送車5により、工程室21に搬送容器Cを直接受け渡すようにしても良い。この場合には、処理フロア1におけるエアロック室50及び受け渡し口22の占める面積が小さくなるので、当該処理フロア1を有効に利用することができる。
【0057】
また、搬送車5と共に搬送容器Cをエアロック室50に進入させる場合には、図31に示すように、2つの開閉部52a、52bのうち工程室21側の第1の開閉部52aについては、既述の図27と同様に、受け渡し口22の下方または上方あるいは床面11の内部領域において水平方向に進退自在に設けても良い。この場合には、エアロック室50は、工程室21の下方側における物流フロア2に配置されることになる。
【0058】
尚、既述のように、搬送車5は搬送容器Cを高さ方向における概略中央位置において側方側から保持し、一方スタッカークレーン12は下方側から搬送容器Cを保持するように構成されているので、既述の受け渡し部材15を設けずに、これらの搬送車5とスタッカークレーン12との間において搬送容器Cを直接受け渡すようにしても良い。また、搬送車5については、当該搬送車5上においてフォーク5bを進退させる機構や搬送車5の進退方向に対して左右方向にフォーク5bを移動させる機構を持たせても良いし、あるいは搬送車5上においてフォーク5b(搬送容器C)の向きを調整できるようにしても良い。
【0059】
また、既述のように、搬送車5は搬送容器Cを中央部において両側から保持しているので、物流フロア2の床面11に対して搬送容器Cを直接受け渡しできる。従って、図32(a)に示すように、例えば処理が終了した搬送容器Cや、処理の途中で一時的に保管する搬送容器Cあるいは空になった搬送容器Cを物流フロア2における搬送車5の動作に干渉しない位置に載置しても良い。このように物流フロア2をいわば倉庫(載置領域)として用いることで、倉庫用のスペースを別途設けることなく搬送容器Cを安価に保管できる。更に、図32(b)に示すように、物流フロア2に棚71を設けて、この棚71を倉庫として用いても良い。
【0060】
また、以上の例においては、2つの隣接する工程室21a、21b間で受け渡し口22を共有する例について説明したが、図33に示すように、隣接する3つの工程室21の中央の工程室21aに受け渡し口22を形成し、この受け渡し口22を当該工程室21aに隣接する工程室21b、21cで共有しても良い。この時、例えば受け渡し口22と工程室21c(21b)の搬入出口24とが離れている場合には、受け渡し口22と当該搬入出口24との間にコンベア91を設けても良い。
【0061】
更に、図34(a)に示すように、コンベア91を設けずに、工程室21b、21cの搬入出口24、24に各々近接するように、工程室21aに2つの受け渡し口22、22を形成しても良いし、あるいは同図(b)に示すように、工程室21b、21cの各々の搬入出口24、24に近接するように大きく受け渡し口22を形成しても良い。この場合には、例えば受け渡し口22の上方領域を介して工程室21aと機械室61との間において処理装置27を搬送する時には、例えば受け渡し口22を塞ぐように例えば金属製の図示しない運搬路が設けられ、処理装置27はこの運搬路上を搬送されることになる。尚、図33及び図34においては、受け渡し口22の周囲の区画壁22aなどについては記載を省略している。
また、未使用エリア31を工程室21に改造する場合について説明したが、この工場において例えば工程室21に代えて配置されている図示しない倉庫を工程室21に改造する場合にも同様に工事が行われることになる。
【0062】
更に、既述の例では、打錠室25に対して搬送容器Cの受け渡しを行うにあたって、投入区域25aに対して搬送容器Cの受け渡しを行う受け渡し口22と、処理区域25bに対して搬送容器Cの受け渡しを行う受け渡し口22とを平面的に同じ位置に設けたが、図35に示すように、これらの受け渡し口22、22を夫々別の位置に設けても良い。即ち、打錠室25に平面的に2つの受け渡し口22、22を形成して、投入区域25a及び処理区域25bに対して搬送容器Cの受け渡しを行う経路を独立して夫々専用に設けても良い。従って、処理区域25bに対して搬送容器Cの受け渡しを行う受け渡し口22の上方位置は、間仕切り26が配置されている。また、各々の投入区域25a及び処理区域25bには、各々の受け渡し口22、22に近接してエアロック室50、50が配置される。この場合には、夫々の投入区域25a及び処理区域25bに対してアクセスする搬送車5を共通化しても良いし、個別に設けても良く、個別に設ける場合にはこれら搬送車5、5の走行する物流フロア2内を区画しても良い。この例においても、エアロック室50と共に物流フロア2に棚71を設けても良い。尚、図34においては、2つの受け渡し口22、22を左右に離間して配置しているが、受け渡し口22、22の形成位置としては、これら受け渡し口22、22に対してアクセスする搬送車5、5同士が干渉しないように、例えば横並びに近接して設けても良い。
【0063】
更にまた、上下の物流フロア2、2間において搬送容器Cを搬送するためにスタッカークレーン12を設けたが、物流フロア2、2間にて搬送容器Cを搬送しない場合には、このスタッカークレーン12を設けなくても良い。また、階層構造体3を複数階層例えば2層に亘って積層したが、図36に示すように1層であっても良い。
【0064】
また、処理フロア1と物流フロア2とを設けることによって工場の各領域の配置レイアウトの自由度が大きいことは既に述べたが、既述の例とは異なるレイアウトの工場について、図37及び図38を参照して説明する。この工場には、既述の機械室61に代えて、工程室21の並びに沿うように作業者用通路95が設けられており、この作業者用通路95と各工程室21との間の側面には、作業者のためのドア29が各々設けられている。この作業者用通路95は、工程室21に出入りする作業者の例えば衣服を介したコンタミを防止するために、各々の工程室21に入室する作業者の通路と退室する作業者の通路とを別々にするために設けたものである。従って、作業者用通路62、95のうち一方は各々の工程室21に入室する作業者のための通路であり、作業者用通路62、95のうち他方はこれら工程室21から退室する作業者のための通路である。
【0065】
このように2つの作業者用通路62、95を工程室21に各々隣接するように配置した場合であっても、工程室21には物流フロア2から搬送容器Cを搬入できるので、各々の工程室21には、搬送容器Cを昇降させるためのリフタなどの昇降装置が不要である。従って、処理フロア1と物流フロア2とを上下に区画しているので、建設費のコストアップを抑えながら処理フロア1のレイアウトを種々変更できる。尚、既述の機械室61に代えて工程室21に隣接するように、搬送容器Cの内部または外部を洗浄するための洗浄室を設けてもよい。
【0066】
また、既述の各例では、工程室21を前後方向に一列に配置したが、搬送車5により下方側の物流フロア2から処理フロア1に対して搬送容器Cの受け渡しを行っていることから、ある一つの工程室21から側方側を見た時に、周囲の全ての4つの面に別の工程室21が配置されているレイアウトも採ることができる。具体的には、処理フロア1において工程室21が配置される領域を縦横夫々3つの領域に壁面を用いて区画して、当該領域を夫々工程室21として用いても良い。この場合には、例えば各々工程室21には、床面11に受け渡し口22が各々形成され、作業者は9つの工程室21のうち中央の工程室21に対しては、当該工程室21の周囲の工程室21を介して出入りする。即ち、工程室21が配置された処理フロア1の階下に物流フロア2を設けることによって、当該処理フロア1には搬送容器Cの搬送用の搬送軌道を設ける必要がないので、例えば既述のスタッカークレーン100だけに頼って搬送容器Cの搬送を行う場合と比べて、処理フロア1のレイアウトの自由度を極めて高くすることができる。
【0067】
ここで、受け渡し口22を共有する工程室21a、21bをこの処理フロア1内に配置したが、いずれの工程室21についても受け渡し口22を形成しても良い。その場合には、未使用エリア31については隣接する工程室21と受け渡し口22と共用しても良いし、あるいはこの未使用エリア31に予め受け渡し口22を形成しても良い。また、隣接する工程室21a、21bにおいて受け渡し口22を共用する場合には、工程室21aにおける受け渡し口22をこれらの工程室21a、21bの間の壁面に沿って長く形成しても良い。このように受け渡し口22を形成することにより、搬入出口24を形成する位置について、高さ位置だけでなく横方向についても自由度が高くなる。
【0068】
以上の各例において、エアロック室50を備えた工程室21と、このエアロック室50が設けられていない工程室21とが配置された場合について説明したが、全ての工程室21にエアロック室50を配置しても良い。また、既述の例では固形製剤を製造する医薬品工場を例に本発明について説明したが、例えばこのような固形製剤以外にも、被処理物に対して処理を行う工程室21が複数設けられた処理設備例えば食品、化学品を製造する工場などに本発明を適用しても良い。
【符号の説明】
【0069】
C 搬送容器
1 処理フロア
2 物流フロア
5 搬送車
21 工程室
22 受け渡し口
50 エアロック室
【特許請求の範囲】
【請求項1】
清浄雰囲気に維持され、被処理物に対して処理を行って処理物を得るための工程室が複数配置された第1の階と、
この第1の階の階下に設けられ、被処理物または処理物からなる被搬送物を搬送するための搬送領域が形成された第2の階と、
前記工程室のうち少なくとも1つの工程室及び前記搬送領域の間に介在し、これらの間で被搬送物を搬送するときに被搬送物が一旦置かれる予備清浄室と、
この予備清浄室における工程室側の壁部の第1の搬送口を開閉する第1の開閉部と、
前記予備清浄室における前記搬送領域側の壁部の第2の搬送口を開閉する第2の開閉部と、
前記第2の階を上方側から臨む位置における第1の階と第2の階との間の床面に形成され、第1の階と第2の階との間において被搬送物の受け渡しを行うための受け渡し口と、
この受け渡し口を介して第1の階と第2の階との間で被搬送物の受け渡しを行うために、第2の階において水平に移動自在に設けられ、被搬送物を昇降自在に保持する受け渡し機構を有する搬送車と、を備えたことを特徴とする処理設備。
【請求項2】
前記予備清浄室は、第1の階に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の処理設備。
【請求項3】
前記第1の階における前記受け渡し口の上方領域を前記工程室の雰囲気から区画する区画壁が設けられ、
前記第1の搬送口は、前記区画壁に設けられていることを特徴とする請求項2に記載の処理設備。
【請求項4】
前記予備清浄室は、前記第1の階における前記受け渡し口の上方領域に設けられ、
前記第2の搬送口は、前記受け渡し口を兼用していることを特徴とする請求項2または3に記載の処理設備。
【請求項5】
前記予備清浄室は、第2の階に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の処理設備。
【請求項6】
前記第1の搬送口は、前記受け渡し口を兼用していることを特徴とする請求項5に記載の処理設備。
【請求項7】
前記予備清浄室は、第2の階から受け渡し口を介して第1の階に跨って設けられていることを特徴とする請求項1に記載の処理設備。
【請求項1】
清浄雰囲気に維持され、被処理物に対して処理を行って処理物を得るための工程室が複数配置された第1の階と、
この第1の階の階下に設けられ、被処理物または処理物からなる被搬送物を搬送するための搬送領域が形成された第2の階と、
前記工程室のうち少なくとも1つの工程室及び前記搬送領域の間に介在し、これらの間で被搬送物を搬送するときに被搬送物が一旦置かれる予備清浄室と、
この予備清浄室における工程室側の壁部の第1の搬送口を開閉する第1の開閉部と、
前記予備清浄室における前記搬送領域側の壁部の第2の搬送口を開閉する第2の開閉部と、
前記第2の階を上方側から臨む位置における第1の階と第2の階との間の床面に形成され、第1の階と第2の階との間において被搬送物の受け渡しを行うための受け渡し口と、
この受け渡し口を介して第1の階と第2の階との間で被搬送物の受け渡しを行うために、第2の階において水平に移動自在に設けられ、被搬送物を昇降自在に保持する受け渡し機構を有する搬送車と、を備えたことを特徴とする処理設備。
【請求項2】
前記予備清浄室は、第1の階に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の処理設備。
【請求項3】
前記第1の階における前記受け渡し口の上方領域を前記工程室の雰囲気から区画する区画壁が設けられ、
前記第1の搬送口は、前記区画壁に設けられていることを特徴とする請求項2に記載の処理設備。
【請求項4】
前記予備清浄室は、前記第1の階における前記受け渡し口の上方領域に設けられ、
前記第2の搬送口は、前記受け渡し口を兼用していることを特徴とする請求項2または3に記載の処理設備。
【請求項5】
前記予備清浄室は、第2の階に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の処理設備。
【請求項6】
前記第1の搬送口は、前記受け渡し口を兼用していることを特徴とする請求項5に記載の処理設備。
【請求項7】
前記予備清浄室は、第2の階から受け渡し口を介して第1の階に跨って設けられていることを特徴とする請求項1に記載の処理設備。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【公開番号】特開2012−1345(P2012−1345A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−139802(P2010−139802)
【出願日】平成22年6月18日(2010.6.18)
【特許番号】特許第4630386号(P4630386)
【特許公報発行日】平成23年2月9日(2011.2.9)
【出願人】(000004411)日揮株式会社 (94)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月18日(2010.6.18)
【特許番号】特許第4630386号(P4630386)
【特許公報発行日】平成23年2月9日(2011.2.9)
【出願人】(000004411)日揮株式会社 (94)
【Fターム(参考)】
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