説明

凹凸形成装置および情報入力装置

【課題】明確な凸形状を形成させるとともに、凸形状の形成位置の位置ずれを抑制し、かつ、凸形状の形状、大きさおよび位置を変化させることが可能な凹凸形成装置および情報入力装置を提供する。
【解決手段】この凹凸形成パネル10(凹凸形成装置)は、上部電極11a(第1電極)と下部電極11c(第2電極)と、絶縁性を有し、上部電極11aと下部電極11cとに挟み込まれているエラストマ層11bとを含む凹凸形成層11(変形部)と、下部電極11cと絶縁体層12を介して対向するように配置された複数の固定端形成電極13(第3電極)とを備え、下部電極11cと固定端形成電極13とによって固定端を形成するとともに、上部電極11aおよび下部電極11cにより、エラストマ層11bを伸長させて固定端に挟まれた領域に凸部を形成するように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、凹凸形成装置および情報入力装置に関し、特に、変形部が変形することにより凹凸形状を形成する凹凸形成装置および情報入力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、変形部が変形することにより凹凸形状を形成する凹凸形成装置および情報入力装置などが知られている(たとえば、特許文献1〜4参照)。
【0003】
上記特許文献1には、一対の電極と、電気的刺激により体積が増減する高分子ゲル層(エラストマ層)と、高分子ゲル層の下端面に設けられた膨潤液保持層とを備え、一対の電極間に高分子ゲル層と膨潤液保持層とが挟み込まれるように、装置の全面にわたって一様に設けられた凹凸形成パネルが開示されている。この凹凸形成パネルでは、任意の位置の高分子ゲル層に電圧が印加されると、電圧が印加された位置の高分子ゲルが膨潤液を吸収または排出することにより、高分子ゲルの体積が増減するので、任意の高分子ゲル層の厚みが変化する。これにより、パネルの任意の部分に凹凸形状を形成するように構成されている。
【0004】
また、上記特許文献2には、複数のセルによって区分けされたパネルシートと、パネルシートのセルの側面にそれぞれ設けられた磁石と、磁石の移動を制御する制御部とを備えたタッチパネル装置が開示されている。このタッチパネル装置では、隣り合うセルの磁石の極を制御部により変化させることによって、磁石同士に斥力または引力が生じる。これにより、セル同士の位置関係が変化して、パネルシートの任意の部分に凹凸形状を形成するように構成されている。
【0005】
また、上記特許文献3には、一対の電極および一対の電極に挟み込まれた起歪層(エラストマ層)を含む動作部(変形部)と、動作部の両端を支持するフレーム部(固定端)とを備えた電気信号変位変換装置が開示されている。この電気信号変位変換装置では、電気信号が起歪層に伝えられることにより、起歪層が歪み、固定端によって両端を支持されている動作部は厚み方向に変位する。これによって、一定形状の凸形状が装置上の決められた位置に生じる。これにより、電気信号変位変換装置に凹凸形状を形成するように構成されている。
【0006】
また、上記特許文献4には、一対のシートと、一対のシートに挟み込まれた可逆的に伸張制御可能な素子と、素子に信号を伝えるための端子とを備えた凹凸表示装置が開示されている。この凹凸表示装置では、任意の素子に信号が伝えられることにより、素子がシートに対して垂直な方向に変形してシートを盛り上げることによって、装置の任意の部分の厚みを変化させる。これにより、装置の任意の部分に凹凸形状を形成するように構成されている。
【0007】
【特許文献1】特開平11−203025号公報
【特許文献2】特開2006−285785号公報
【特許文献3】特開平8−114408号公報
【特許文献4】特開平6−332601号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1に記載の凹凸形成パネルでは、高分子ゲルが装置の全面にわたって一様に設けられているため、電圧が印加された位置の高分子ゲルの体積変化に伴って、その周辺の高分子ゲルも影響を受けて体積変化する。このため、明確な凸形状を形成させることができないという問題点があると考えられる。
【0009】
また、上記特許文献2に記載のタッチパネル装置では、同じ極を持つ磁石同士に働く斥力により、磁石の移動方向と垂直な方向である装置の面方向への変位が発生するため、セルの位置がずれる場合がある。これにより、セルが複数個集まって凸形状を形成する場合には、凸形状の形成位置がずれる場合があるいう問題点があると考えられる。
【0010】
また、上記特許文献3に記載の電気信号変位変換装置では、動作部の両端をフレーム部によって固定する必要があるため、一定形状の凸形状を装置上の決められた位置にしか生じさせることしかできず、凸形状の形状、大きさおよび位置を変化させることができないという問題点がある。
【0011】
また、上記特許文献4では、素子について可逆的に伸長制御可能と記載されているのみであり、素子の具体的な構造ならびに動作の詳細が記載されていない。このため、凹凸形成の詳細が開示されていない。
【0012】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、明確な凸形状を形成させるとともに、凸形状の形成位置の位置ずれを抑制し、かつ、凸形状の形状、大きさおよび位置を変化させることが可能な凹凸形成装置および情報入力装置を提供することである。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0013】
この発明の第1の局面による凹凸形成装置は、第1電極と、第1電極と対向するように設けられた第2電極と、絶縁性を有し、第1電極と第2電極とに挟み込まれているエラストマ層とを含む変形部と、変形部の第2電極と絶縁体層を介して対向するように配置された複数の第3電極とを備え、第2電極と第3電極とにそれぞれ異なる電荷を与えることにより、第2電極と第3電極とを静電引力により引き合わせることによって固定端を形成するとともに、第1電極および第2電極に電圧を印加することにより、エラストマ層を伸長させて固定端に挟まれた領域に凸部を形成するように構成されている。
【0014】
この第1の局面による凹凸形成装置では、上記のように、第2電極と第3電極とにそれぞれ異なる電荷を与えることにより、第2電極と第3電極とを静電引力により引き合わせることによって固定端を形成するとともに、第1電極および第2電極に電圧を印加することにより、エラストマ層を伸長させて固定端に挟まれた領域に凸部を形成するように構成する。このように構成することによって、凸形状の形成領域の周辺を取り囲むように固定端を設けることにより、凸形状の形成領域は明確な凸部を形成するように凸形状に変形することができるので、変形部において明確な凸形状を形成させることができる。また、固定端を形成することによって、凹凸形成装置の固定端に挟まれた領域に凸部が形成されるので、固定端により凸形状の形成位置の位置ずれを抑制することができる。また、第3電極の電荷を与える位置を変化させることにより、第2電極と第3電極とが静電引力によって引き合う位置が変化する。この結果、凹凸形成装置において固定端の位置を変化させることができるので、変形部において凸形状の形状、大きさおよび位置を変化させることができる。
【0015】
上記第1の局面による凹凸形成装置において、好ましくは、第3電極は、マトリクス状に設けられている。このように構成すれば、固定端を凹凸形成装置の任意の位置に設けることができるので、変形部において任意の位置に凸形状を形成させることができる。
【0016】
上記第1の局面による凹凸形成装置において、好ましくは、絶縁体層の硬度は、エラストマ層の硬度よりも大きくなるように構成されている。このように構成すれば、固定端の形成時に第2電極と第3電極とを静電引力により引き合わせた場合にも、第2電極と第3電極との間に挟み込まれている絶縁体層が変形するのを抑制することができるので、絶縁体層の変形に起因して固定端の位置がずれるのを抑制することができる。この結果、凸形状の形成位置の位置ずれを、より確実に、抑制することができる。
【0017】
上記第1の局面による凹凸形成装置において、好ましくは、第2電極は、第3電極とそれぞれ対向するように複数設けられている。このように構成すれば、全面に形成された第2電極と比べて、第2電極の総面積を小さくすることができる。これにより、全面に形成された第2電極に電圧を印加する場合と比べて、第1電極および第2電極による凸形状を形成するための消費電力と、第2電極および第3電極による固定端を形成するための消費電力とを小さくすることができる。
【0018】
この発明の第2の局面による情報入力装置は、第1電極と、第1電極と対向するように設けられた第2電極と、絶縁性を有し、第1電極と第2電極とに挟み込まれているエラストマ層とを含む変形部と、変形部の第2電極と絶縁体層を介して対向するように配置された複数の第3電極とを含み、第2電極と第3電極とにそれぞれ異なる電荷を与えることにより、第2電極と第3電極とを静電引力により引き合わせることによって固定端を形成するとともに、第1電極および第2電極に電圧を印加することにより、エラストマ層を伸長させて固定端に挟まれた領域に凸部を形成するように構成されている凹凸形成装置と、凹凸形成装置に重ねて配置される表示装置とを備え、凹凸形成装置は、表示装置に表示される入力用画像に応じて凹凸形成装置の変形部を凹凸形状に変形させることによって、所定の形状の入力用凸部を形成するように構成されている。
【0019】
この発明の第2の局面による情報入力装置では、上記のように、第2電極と第3電極とにそれぞれ異なる電荷を与えることにより、第2電極と第3電極とを静電引力により引き合わせることによって固定端を形成するとともに、第1電極および第2電極に電圧を印加することにより、エラストマ層を伸長させて固定端に挟まれた領域に凸部を形成するように構成されている。このように構成することによって、凸形状の形成領域の周辺を取り囲むように固定端を設けることにより、凸形状の形成領域は明確な凸部を形成するように凸形状に変形することができるので、変形部において明確な凸形状を形成させることができる。また、固定端を形成することによって、固定端に挟まれた領域に凸部が形成されるので、固定端により凸形状の形成位置の位置ずれを抑制することができる。また、第3電極の電荷を与える位置を変化させることにより、第2電極と第3電極とが静電引力によって引き合う位置が変化する。この結果、固定端の位置を変化させることができるので、変形部において凸形状の形状、大きさおよび位置を変化させることができる。また、凹凸形成装置に重ねて配置される表示装置に表示される入力用画像に応じて変形部を凹凸形状に変化させることにより、所定の形状の入力用凸部を形成するように構成することによって、表示装置が表示する入力用画像(テンキーの画像や再生または停止ボタンなどの画像、チャンネル選択ボタンの画像など)に応じた入力用凸部を形成することができる。
【0020】
この場合において、好ましくは、凹凸形成装置は、表示装置の上方に配置された場合に、表示装置に表示された入力用画像を視認することが可能な光透過率を有する部材により構成されている。このように構成すれば、凹凸形成装置を表示装置の上方に重ねた状態で入力用画像を視認することができるので、使用者が触れる側に凹凸形成装置を配置することが可能になる。これにより、凹凸形成装置の変形部により形成された入力用凸部の凸形状を使用者がより明確に感じ取ることができるので、確実な入力操作を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0022】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態によるリモートコントローラの全体構成を示した斜視図である。また、図2〜図5は、図1に示した本発明の第1実施形態によるリモートコントローラの詳細な構造を示した図である。図1〜図5を参照して、本発明の第1実施形態によるリモートコントローラ100の構成について説明する。なお、本実施形態では、情報入力装置の一例であるリモートコントローラ100に本発明を適用した場合について説明する。
【0023】
本発明の第1実施形態によるリモートコントローラ100は、図1および図2に示すように、凹凸形成パネル10と、表面保護膜20と、入力用画像を表示する表示装置30と、それらを収納する筐体40とを備えている。リモートコントローラ100には、図1に示すように、表面保護膜20の表面から上方に突出するように入力用凸部101が形成されている。なお、凹凸形成パネル10は、本発明の「凹凸形成装置」の一例である。
【0024】
ここで、第1実施形態では、リモートコントローラ100の凹凸形成パネル10は、図2に示すように、平面的に見て、表示装置30と同一の長方形形状を有し、表示装置30の上方に重ねて配置される。また、凹凸形成パネル10は、表示装置30に表示される入力用画像に応じて凹凸形状に変化されるように構成されている。
【0025】
また、リモートコントローラ100の表面保護膜20は、図2に示すように、平面的に見て、凹凸形成パネル10と同一の長方形形状を有し、凹凸形成パネル10の上方に重ねて配置される。
【0026】
ここで、第1実施形態では、表面保護膜20は、表示装置30に表示された入力用画像を視認することが可能な光透過率を有する材料で、かつ、後述する凹凸形成パネル10の凹凸形成層11が凸形状に変形するのに伴って弾性変形可能な材料により構成されている。
【0027】
また、リモートコントローラ100の表示装置30は、図2に示すように、平面的に見て、凹凸形成パネル10および表面保護膜20と同一の長方形形状を有する。この表示装置30は、たとえば、テンキーの画像、再生または停止ボタンなどの画像、チャンネル選択ボタンの画像などの必要とされる入力情報に応じた入力用画像を表示するように構成されている。
【0028】
ここで、第1実施形態では、リモートコントローラ100の凹凸形成パネル10は、図2および図5に示すように、凹凸形成層11と、絶縁体層12と、複数の固定端形成電極13と、固定端形成電極13が設けられている基板14とを含む。なお、凹凸形成層11および固定端形成電極13は、それぞれ本発明の「変形部」および「第3電極」の一例である。
【0029】
また、凹凸形成パネル10の凹凸形成層11は、図2および図5に示すように、上部電極11aと、エラストマ層11bと、下部電極11cとを有する。また、凹凸形成層11を構成する上部電極11a、エラストマ層11bおよび下部電極11cは、それぞれ凹凸形成パネル10と同一の長方形形状を有している。
【0030】
ここで、第1実施形態では、エラストマ層11bは、絶縁性を有し、電圧印加により必要量の伸びが得られるエラストマからなる層である。このエラストマ層11bは、表示装置30により表示された入力用画像を視認することが可能な光透過率を有する材料からなり、たとえば、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、またはシリコン樹脂などからなる。また、上部電極11aおよび下部電極11cは、導電性を有し、エラストマ層11bが凸形状に変形するのに伴って弾性変形することが可能な材料で、かつ、表示装置30により表示された入力用画像を視認することが可能な光透過率を有する材料により構成されており、たとえば、ITO(酸化インジウムスズ)やZnO(酸化亜鉛)などの透明導電膜からなる。また、エラストマ層11bは、図2および図5に示すように、上部電極11aおよび下部電極11cとそれぞれ上面および下面の全面で接触することにより、上部電極11aと下部電極11cとに挟み込まれている。なお、上部電極11aおよび下部電極11cは、本発明の「第1電極」および「第2電極」の一例である。
【0031】
また、第1実施形態では、凹凸形成パネル10の絶縁体層12は、図2および図5に示すように、凹凸形成層11の下部電極11cおよび固定端形成電極13とそれぞれ上面および下面の全面で接触することにより、下部電極11cと固定端形成電極13とに挟み込まれている。また、絶縁体層12は、図2および図5に示すように、凹凸形成パネル10と同一の長方形形状を有しており、凹凸形成層11のエラストマ層11bよりも小さい厚みを有する。
【0032】
また、第1実施形態では、絶縁体層12は、表示装置30により表示された入力用画像を視認することが可能な光透過率を有する材料からなり、たとえば、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、またはシリコン樹脂などからなる。また、絶縁体層12は、凹凸形成層11のエラストマ層11bよりも硬度の大きい材料からなる。たとえば、同一モノマーからなる樹脂であっても、絶縁体層12に用いる材料をエラストマ層11bに用いる材料よりも架橋度を大きくすることにより、絶縁体層12を凹凸形成層11のエラストマ層11bよりも硬度を大きくすることが可能である。
【0033】
また、第1実施形態では、凹凸形成パネル10の固定端形成電極13が上面に設けられた基板14は、図2および図5に示すように、上面には固定端形成電極13を介して絶縁体層12が設けられており、下面には表示装置30が設けられていることにより、絶縁体層12と表示装置30とに挟み込まれている。これにより、基板14の上面に設けられた固定端形成電極13と、絶縁体層12の上面に設けられた凹凸形成層11の下部電極11cとは、絶縁体層12を介して対向するように配置されることになる。また、凹凸形成パネル10の基板14は、ガラス基板などの絶縁性を有し、表示装置30により表示された入力用画像を視認することが可能な光透過率を有する材料からなる。
【0034】
また、第1実施形態では、凹凸形成パネル10の固定端形成電極13は、図2〜図5に示すように、凹凸形成パネル10の基板14の全面にわたってマトリクス状に複数設けられている。ここで、複数の固定端形成電極13は、一般的に知られた、いわゆるアクティブマトリクス方式により設けられている。具体的には、基板14は、複数のTFT(薄膜トランジスタ)14aを有し、固定端形成電極13は、X方向に延びるゲート線14bおよびY方向に延びるデータ線14cとTFT14aを介して接続されている。ゲート線14bにアドレス信号が印加されると、ゲート線14bと接続されたX方向の全ての固定端形成電極13が接続されているTFT14aはオン状態になる。このとき、それぞれのデータ線14cに印加された電圧は、アドレス信号の印加されたゲート線14bと接続された固定端形成電極13のそれぞれに、オン状態のTFT14aを介して印加される。一方、アドレス信号が印加されないゲート線14bに接続されるTFT14aはオフ状態になっていることにより、そのオフ状態のTFT14aに接続される固定端形成電極13には、電圧が印加されたデータ線14cからの電圧は印加されない。したがって、任意のゲート線14bにアドレス信号を印加し、かつ、任意のデータ線14cに所定の電圧を印加することにより、マトリクス状に配列された固定端形成電極13のうち、任意の固定端形成電極13に電圧を印加することが出来るように構成されている。
【0035】
また、第1実施形態では、固定端形成電極13は、導電性を有し、かつ、表示装置30により表示された入力用画像を視認することが可能な光透過率を有する材料で構成されており、たとえば、ITO(酸化インジウムスズ)やZnO(酸化亜鉛)などの透明導電膜からなる。
【0036】
図5〜図9は、本発明の第1実施形態による凹凸形成パネルの変形の状態を説明するための、図3の200−200線に沿った断面図である。次に、図5〜図9を参照して、本発明の第1実施形態における凹凸形成パネル10の変形動作を説明する。
【0037】
凹凸形成パネル10の凹凸形成層11は、図5に示すように、電圧無印加時は平板形状を有している。ここで、図6に示すように、凹凸形成層11の下部電極11cに負の電荷を与え、任意の固定端形成電極13に正の電荷を与えると、下部電極11cと任意の固定端形成電極13とは、絶縁体層12を挟んで静電引力により引き合わされる。これにより、下部電極11cのうち正の電荷を与えられた固定端形成電極13と対向する部分は、移動することができなくなるので、下部電極11cのうち固定端形成電極13と対向する部分と固定端形成電極13とにより、固定端が構成される。その後、上部電極11aに正の電荷を与えると、上部電極11aと下部電極11cとは、エラストマ層11bを挟んで静電引力により引き合わされる。ここで、エラストマ層11bは電圧印加により必要量の伸びが得られるエラストマからなるので、上部電極11aと下部電極11cとが引き合わされるのに伴い、凹凸形成パネル10の面方向であるX方向およびY方向(図3参照)に伸張しようとする。このとき、下部電極11cの固定端形成電極13と対向する部分は、固定端形成電極13と固定端を構成しており移動することができないので、エラストマ層11bは伸張が制限される。これにより、エラストマ層11bが座屈変形することによって凸形状に変化する。これに伴い、エラストマ層11bとそれぞれ上面および下面の全面で接触している、上部電極11aおよび下部電極11cの固定端を構成していない部分は、エラストマ層11bと同様に凸形状に変化する。この結果、図7に示すように、凹凸形成層11の任意の位置に凸形状が形成される。
【0038】
また、上部電極11a、下部電極11cおよび固定端形成電極13の電荷を解除した後に、再度別の位置の固定端形成電極13に正の電荷を与えるとともに、下部電極11cに負の電荷を与え、その後、上部電極11aに正の電荷を与えると、形成された凹凸形成層11の凸形状(図8参照)は、上部電極11a、下部電極11cおよび固定端形成電極13の電荷を解除する前の凸形状(図7参照)とは形状、大きさおよび位置が変化する。
【0039】
また、使用者が、凹凸形成層11の凸形状を押圧すると、図9に示すように、凸形状は変形する。しかし、押圧を解除すると、図8に示すような押圧する前の凸形状と同様の凸形状が凹凸形成層11上に復元される。
【0040】
次に、本発明の第1実施形態におけるリモートコントローラ100の入力用凸部101の形成動作を説明する。
【0041】
表示装置30の入力用画像が表示されると同時に、信号が凹凸形成パネル10の基板14上のゲート線14bおよびデータ線14cに伝達される。そして、入力用画像が表示されている位置に対応する凹凸形成パネル10の位置に凸形状を形成するために、その凸形状の形成領域の外縁部に位置する固定端形成電極13に正の電荷が与えられる。この状態で、下部電極11cに負の電荷を与えると、入力用画像が表示されている位置に対応する凹凸形成パネル10の凸形状の形成領域の外縁部を取り囲むように固定端が形成される。その後、上部電極11aに正の電荷を与えると、入力用画像が表示されている位置に対応する凹凸形成パネル10の位置に、凸形状が形成される。これにより、図1に示すように、リモートコントローラ100上の入力用画像が表示されている位置に、所定の形状の入力用凸部101が形成される。
【0042】
第1実施形態では、上記のように、固定端形成電極13を、凹凸形成パネル10の基板14の全面にわたってマトリクス状に複数設けるとともに、固定端形成電極13と、凹凸形成層11の下部電極11cとを、対向するように配置する。このように構成することによって、凸形状の形成領域の外縁部を取り囲むように固定端を設けることにより、凸形状の形成領域は明確な凸部を形成するように凸形状に変形することができるので、凹凸形成層11において明確な凸形状を形成させることができる。また、固定端を形成することによって、凹凸形成パネル10の固定端に挟まれた領域に凸部が形成されるので、固定端により凸形状の形成位置の位置ずれを抑制することができる。また、固定端形成電極13の正の電荷を与える位置を変化させることにより、固定端形成電極13と下部電極11cとが静電引力によって引き合う位置が変化する。この結果、凹凸形成パネル10において固定端の位置を変化させることができるので、凹凸形成層11において凸形状の形状、大きさおよび位置を変化させることができる。
【0043】
また、第1実施形態では、上記のように、絶縁体層12は、凹凸形成層11のエラストマ層11bよりも硬度の大きい材料からなることによって、固定端の形成時に下部電極11cと固定端形成電極13とを静電引力により引き合わせた場合にも、下部電極11cと固定端形成電極13との間に挟み込まれている絶縁体層12が変形するのを抑制することができるので、絶縁体層12の変形に起因して固定端の位置がずれるのを抑制することができる。この結果、凸形状の形成位置の位置ずれを、より確実に、抑制することができる。
【0044】
また、第1実施形態では、上記のように、凹凸形成パネル10を、表示装置30に表示される入力用画像に応じて凹凸形状に変化させるように設けることによって、表示装置30が表示する入力用画像に応じた入力用凸部101を形成することができる。
【0045】
また、第1実施形態では、上記のように、凹凸形成層11の上部電極11a、エラストマ層11bおよび下部電極11cと、絶縁体層12と、固定端形成電極13と、基板14と、表面保護膜20とを、表示装置30により表示された入力用画像を視認することが可能な光透過率を有する材料からなるように構成することによって、凹凸形成パネル10を表示装置30の上方に重ねた状態で入力用画像を視認することができるので、使用者が触れる側に凹凸形成パネル10を配置することが可能になる。これにより、凹凸形成パネル10の凹凸形成層11により形成された入力用凸部101の凸形状を使用者がより明確に感じ取ることができるので、確実な入力操作を行うことができる。
【0046】
(第2実施形態)
図10は、本発明の第2実施形態によるリモートコントローラの全体構成を示した分解斜視図である。図11〜図14は、図10に示した本発明の第2実施形態によるリモートコントローラの詳細な構造および動作を示した図である。図10〜図14を参照して、この第2実施形態では、上記第1実施形態と異なり、凹凸形成パネル110の基板14上にマトリクス状に複数設けられている固定端形成電極13と対向するように、凹凸形成パネル110の凹凸形成層111の下部電極111cがマトリクス状に複数設けられている例について説明する。
【0047】
本発明の第2実施形態による凹凸形成パネル110の凹凸形成層111は、図10および図12に示すように、上部電極11aと、エラストマ層11bと、複数の下部電極111cと、下部電極111cが設けられている基板111dとを有する。
【0048】
ここで、第2実施形態では、凹凸形成層111の下部電極111cは、図10〜図12に示すように、凹凸形成パネル110の基板14上にマトリクス状に複数設けられている固定端形成電極13と対向するように、マトリクス状に複数設けられている。具体的には、図11に示すように、Y方向に延びる配線111eが基板111d上の全面にわたって設けられている。そして配線111e上の一定間隔ごとに下部電極111cが接続されている。これにより、凹凸形成層111の基板111dの全面にわたって、下部電極111cがマトリクス状に複数設けられることになる。
【0049】
また、第2実施形態では、下部電極111cが設けられた基板111dは、表示装置30に表示された入力用画像を視認することが可能な光透過率を有する材料で、かつ、凹凸形成層111のエラストマ層11bが凸形状に変形するのに伴って変形可能な材料により構成されている。
【0050】
図13および図14は、本発明の第2実施形態による凹凸形成層の変形の状態を説明するための、図11の300−300線に沿った拡大断面図である。次に、図13および図14を参照して、本発明の第2実施形態における凹凸形成パネル110の変形動作を説明する。
【0051】
凹凸形成パネル110の凹凸形成層111は、図13に示すように、電圧無印加時は平板形状を有している。ここで、図14に示すように、凹凸形成層111の下部電極111cに負の電荷を与え、凹凸形成層111の上部電極11aに正の電荷を与えると同時に、任意の固定端形成電極13に正の電荷を与える。これにより、上部電極11aと下部電極111cとが静電引力により引き合うと同時に、下部電極111cと対向する正の電荷が与えられた固定端形成電極13と、下部電極111cとが静電引力により引き合う。この際、上部電極11aと下部電極111cとが引き合うことによって、下部電極111cが正の電荷が与えられた固定端形成電極13と対向する位置からずれた場合であっても、下部電極111cと対向する正の電荷が与えられた固定端形成電極13と、下部電極111cとに働く静電引力により、下部電極111cには元の位置に戻る力が働く。これにより、正の電荷が与えられた固定端形成電極13と対応する位置に下部電極111cが配置されることによって、凹凸形成層111において、凸形状の形成と固定端の形成とを同時に行うことが可能である。この結果、図14に示すように、凹凸形成パネル110に凸形状が形成される。
【0052】
第2実施形態では、上記のように、凹凸形成層111の下部電極111cを、凹凸形成パネル110の基板14上にマトリクス状に複数設けられている固定端形成電極13と対向するように、マトリクス状に複数設けることによって、第1実施形態における全面に形成された下部電極11cと比べて、下部電極111cの総面積を小さくすることができる。これにより、全面に形成された下部電極11cに電圧を印加する場合と比べて、上部電極11aおよび下部電極111cによる凸形状を形成するための消費電力と、下部電極111cおよび固定端形成電極13による固定端を形成するための消費電力とを小さくすることができる。
【0053】
なお、第2実施形態のその他の構成、動作および効果は、上記第1実施形態と基本的に同様である。
【0054】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0055】
たとえば、上記第1実施形態および第2実施形態では、本発明の情報入力装置の一例としてリモートコントローラ100を示したが、本発明はこれに限らず、リモートコントローラ以外の情報入力装置にも適用可能である。
【0056】
また、上記第1実施形態および第2実施形態では、図2および図10に示すように、凹凸形成パネル10および110が表示装置30の上方に重ねて配置されている例を示したが、本発明はこれに限らず、凹凸形成パネルが表示装置の下方に配置されていてもよい。
【0057】
また、上記第1実施形態では、固定端形成電極13を凹凸形成パネル10の全面にわたってマトリクス状に複数設ける例を示すとともに、上記第2実施形態では、凹凸形成層111の下部電極111cを、凹凸形成パネル110の全面にわたってマトリクス状に複数設ける例を示したが、本発明はこれに限らず、固定端形成電極および下部電極をマトリクス状以外のたとえば千鳥配列をなすように配置してもよい。
【0058】
また、上記第2実施形態では、凹凸形成層111の下部電極111cをマトリクス状に複数設ける例を示したが、本発明はこれに限らず、凹凸形成層の上部電極もマトリクス状に複数設けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の第1実施形態によるリモートコントローラの全体構成を示した斜視図である。
【図2】本発明の第1実施形態によるリモートコントローラの全体構成を示した分解斜視図である。
【図3】本発明の第1実施形態による基板上に設けられた固定端形成電極の構成を示した平面図である。
【図4】本発明の第1実施形態による基板上に設けられた固定端形成電極の構成を示した拡大平面図である。
【図5】本発明の第1実施形態による凹凸形成パネルの構成を示した、図3の200−200線に沿った断面図である。
【図6】本発明の第1実施形態による、固定端を形成した後の凹凸形成パネルの変形前の状態を示した、図3の200−200線に沿った拡大断面図である。
【図7】本発明の第1実施形態による、固定端を形成した後の凹凸形成パネルの変形後の状態を示した、図3の200−200線に沿った拡大断面図である。
【図8】本発明の第1実施形態による、固定端を変化させた場合における凹凸形成パネルの変形後の状態を示した、図3の200−200線に沿った拡大断面図である。
【図9】本発明の第1実施形態による、固定端を変化させた場合における変形後の凹凸形成パネルおよび表面保護膜を使用者が押圧した状態を模式的に示した、図3の200−200線に沿った拡大断面図である。
【図10】本発明の第2実施形態によるリモートコントローラの全体構成を示した分解斜視図である。
【図11】本発明の第2実施形態による凹凸形成層の構成を示した平面図である。
【図12】本発明の第2実施形態による凹凸形成層の構成を示した、図11の300−300線に沿った断面図である。
【図13】本発明の第2実施形態による凹凸形成パネルの変形前の状態を示した、図11の300−300線に沿った拡大断面図である。
【図14】本発明の第2実施形態による、固定端を形成した後の凹凸形成パネルの変形後の状態を示した、図11の300−300線に沿った拡大断面図である。
【符号の説明】
【0060】
10、110 凹凸形成パネル(凹凸形成装置)
11、111 凹凸形成層(変形部)
11a 上部電極(第1電極)
11b エラストマ層
11c、111c 下部電極(第2電極)
12 絶縁体層
13 固定端形成電極(第3電極)
30 表示装置
100 リモートコントローラ
101 入力用凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極と、前記第1電極と対向するように設けられた第2電極と、絶縁性を有し、前記第1電極と前記第2電極とに挟み込まれているエラストマ層とを含む変形部と、
前記変形部の前記第2電極と絶縁体層を介して対向するように配置された複数の第3電極とを備え、
前記第2電極と前記第3電極とにそれぞれ異なる電荷を与えることにより、前記第2電極と前記第3電極とを静電引力により引き合わせることによって固定端を形成するとともに、前記第1電極および前記第2電極に電圧を印加することにより、前記エラストマ層を伸長させて前記固定端に挟まれた領域に凸部を形成するように構成されている、凹凸形成装置。
【請求項2】
前記第3電極は、マトリクス状に設けられている、請求項1に記載の凹凸形成装置。
【請求項3】
前記絶縁体層の硬度は、前記エラストマ層の硬度よりも大きくなるように構成されている、請求項1または2に記載の凹凸形成装置。
【請求項4】
前記第2電極は、前記第3電極とそれぞれ対向するように複数設けられている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の凹凸形成装置。
【請求項5】
第1電極と、前記第1電極と対向するように設けられた第2電極と、絶縁性を有し、前記第1電極と前記第2電極とに挟み込まれているエラストマ層とを含む変形部と、前記変形部の前記第2電極と絶縁体層を介して対向するように配置された複数の第3電極とを含み、前記第2電極と前記第3電極とにそれぞれ異なる電荷を与えることにより、前記第2電極と前記第3電極とを静電引力により引き合わせることによって固定端を形成するとともに、前記第1電極および前記第2電極に電圧を印加することにより、前記エラストマ層を伸長させて前記固定端に挟まれた領域に凸部を形成するように構成されている凹凸形成装置と、
前記凹凸形成装置に重ねて配置される表示装置とを備え、
前記凹凸形成装置は、前記表示装置に表示される入力用画像に応じて前記凹凸形成装置の変形部を凹凸形状に変形させることによって、所定の形状の入力用凸部を形成するように構成されている、情報入力装置。
【請求項6】
前記凹凸形成装置は、前記表示装置の上方に配置された場合に、前記表示装置に表示された入力用画像を視認することが可能な光透過率を有する部材により構成されている、請求項5に記載の情報入力装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2009−181198(P2009−181198A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−17919(P2008−17919)
【出願日】平成20年1月29日(2008.1.29)
【出願人】(000201113)船井電機株式会社 (7,855)
【Fターム(参考)】